JP2021082784A - 固体撮像素子および撮像装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 光電変換膜中に膜欠陥が形成された場合であっても、画素電極から膜電極に流出する電子を減少させて暗電流を減少させ、見かけ上、画素電極の電位が変動するのを防止することができる、光電変換膜積層型の固体撮像素子および撮像装置を提供する。【解決手段】 画素回路30上に光電変換膜20を積層するタイプのCMOS型固体撮像素子であって、光電変換膜20は、電子注入阻止層兼電界緩和層である酸化ニッケル層7、光電変換層兼電荷増倍層である結晶セレン層5、正孔注入阻止層である酸化ガリウム層4、膜電極であるITO層6の各層をこの順に積層されてなり、ITO層6には画素電極3へのリセット電圧に対して正の電圧を印加し、光電変換により発生した電子正孔対のうち正孔を光電変換膜20の走行キャリアとして用いるように構成されてなる。【選択図】図5

Description

本発明は、固体撮像素子および撮像装置に関し、詳しくは、画素サイズを微細化することで撮像素子のコンパクト化および多画素化を図り、高精細な画像を撮像し得る光電変換部を備えた固体撮像素子および撮像装置に関するものである。
従来、固体撮像素子、例えばCMOS撮像素子においては、高精細な画像を撮影することができるように、画素サイズの微細化および多画素化を図るための技術開発が進められてきた。しかし、画素サイズが微細化されたことにより、光を電気信号に変換する光電変換部の面積が狭くなり、感度の低下につながることが問題となっていることから、感度を向上させるために、裏面照射型や光電変換膜積層型の構造のものが注目されており、研究開発が進められている(下記非特許文献1を参照)。
このような光電変換膜積層型の固体撮像素子において、各単位画素が3トランジスタ型とされたものが知られている(下記特許文献1を参照)。
下記非特許文献1に開示された技術は、本願の図19に示すように、電荷増倍作用を有する光電変換膜420を画素回路430の陽極とされた画素電極403上に直接積層した画素構造を備えており、画素電極403にn型浮遊拡散容量408が接続されている。また、光電変換膜420は、正孔注入阻止層としての酸化ガリウム層404、光電変換層兼電荷増倍層としての結晶セレン層405、および陰極とされた膜電極としてのITO層406を、この順に直接積層してなる構造とされている。
画素回路430はp型基板401上にn型MOSトランジスタ部402を形成することで構成されている。なお、画素電極403はn型浮遊拡散容量408と電気的に接続されている。また、p型基板401と画素電極403の間には絶縁層409が設けられている。
図20は、図19中、A−A′線の断面の深さ方向に沿ったバンド構造を示すバンド図である。
すなわち図20は、上記光電変換層兼電荷増倍層として結晶セレン層405を、正孔注入阻止層として酸化ガリウム層404を、さらに、シリコン材料からなるn型浮遊拡散容量408とp型基板401を、各々用いた場合を例にとって説明している。半導体材料においては伝導帯の下端と価電子帯の上端の電位が表されている。膜電極(ITO層)406と画素電極403については金属の仕事関数が表されている。画素内部の状態を示す相対的な電位図とされている。
画素電極403とn型浮遊拡散容量408の電位は3.3Vであり、n型浮遊拡散容量408をリセットした状態のリセット電圧である。膜電極(ITO層)406には、画素電極403を基準とすると−13Vの電圧が印加された状態とされており、膜内の走行キャリアは電子である。
図21に、膜欠陥がなく、n型浮遊拡散容量408が飽和の状態のバンド構造のバンド図を示す。画素電極403とn型浮遊拡散容量408の電位が2.3Vの状態とされている。この図21において、結晶セレン層405では、入射光により電子正孔対が発生する。電子が膜内の走行キャリアとして画素電極403に向かって走行する。一方、n型浮遊拡散容量408と画素電極403の電位は、n型浮遊拡散容量408に信号の電子が入ると、リセット電圧の3.3Vから飽和時の2.3Vへ、n型浮遊拡散容量408の電位が小さくなる方向へ変化する。電位の変化が読み出し回路の入力レンジ内であれば、正常に動作する。
特開2013−070181号公報
S.Imura et al., "High-Sensitivity Image Sensors Overlaid With Thin-Film Gallium Oxide/Crystalline Selenium Heterojunction Photodiodes", IEEE Transactions on Electron Devices, Vol.63, No.1, pp.86-91, January 2016.
しかしながら、上記光電変換膜420を画素回路430上に直接積層により成膜する場合、異物が混入するなどして膜に欠陥が生じてしまうことが避けられない。
膜欠陥が生じたことで、n型浮遊拡散容量408の電位の変動が飽和より大きい状態となった場合のバンド構造を図22のバンド図に示す。
この図22は、画素電極403とn型浮遊拡散容量408の電位が0.0Vの場合を示すものである。この図22において、入射光により、結晶セレン層405では電子正孔対が発生するが、膜欠陥が生じていると、膜抵抗が低下し、膜電極(ITO層)406から画素電極403に向かって過剰に電子が流入する。このような過剰な電子(暗電流)が画素電極403に流入すると、見かけ上、画素電極403の電位が変動してしまう。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、光電変換膜中に膜欠陥が形成された場合であっても、画素電極から膜電極に流出する電子を減少させて暗電流を減少させ、見かけ上、画素電極の電位が変動するのを防止することができる、光電変換膜積層型の固体撮像素子および撮像装置を提供することを目的とするものである。
本発明に係る固体撮像素子は、
画素回路上に光電変換膜を積層するタイプのCMOS型固体撮像素子であって、
該画素回路は、p型基板上にn型MOSトランジスタが形成されるように構成するか、p型基板上またはn型基板上にp型ウエルが配され、該p型ウエル内にn型MOSトランジスタが形成されるように構成するとともに、該n型MOSトランジスタの上部に画素電極を配設してなり、
前記光電変換膜は、電子注入阻止層、光電変換層兼電荷増倍層、正孔注入阻止層、および膜電極の各層をこの順に積層されてなり、
該膜電極には、前記画素電極へのリセット電圧に対して正の電圧を印加し、
光電変換により発生した電子正孔対のうち正孔を前記光電変換膜の走行キャリアとして用いるように構成されてなることを特徴とするものである。
この場合において、前記電子注入阻止層が、前記光電変換層兼電荷増倍層に対して伝導帯下端のバンド不連続が正となる、電子注入阻止層兼電界緩和層として機能する材料であることが好ましい。
また、上述した固体撮像素子の、第1の発明グループにおいては、前記電子注入阻止層兼電界緩和層の構成材料として酸化ニッケルを用いることが好ましい。
この場合、上述した固体撮像素子の、第1の発明グループにおいては、前記酸化ニッケルを用いた前記電子注入阻止層兼電界緩和層の厚みが、10nm以上、かつ100nm以下とされていることが好ましい。
また、上述した固体撮像素子の、第1の発明グループにおいては、前記光電変換層兼電荷増倍層の構成材料として結晶セレンを用いることができる。
また、上記第1の発明グループにおいては、前記正孔注入阻止層の構成材料として酸化ガリウムを用いることができる。
また、上述した固体撮像素子の、第2の発明グループにおいては、
前記電子注入阻止層、前記光電変換層兼電荷増倍層および前記正孔注入阻止層として、単結晶材料を用いることができる。
また、上述した固体撮像素子の、第2の発明グループにおいては、前記光電変換層兼電荷増倍層としてi型インジウムリンを用いることができる。
また、上述した固体撮像素子の、第2の発明グループにおいては、前記正孔注入阻止層としてn型インジウムリンを用いることができる。
また、上述した固体撮像素子の、第2の発明グループにおいては、前記電子注入阻止層としてp型インジウムリンを用いることができる。
前記電子注入阻止層兼電界緩和層の構成材料としてアルミニウムヒ素アンチモン、ガリウムヒ素アンチモン、およびアルミニウムガリウムヒ素アンチモンの少なくとも1つを用いることができる。
さらに、本発明に係る撮像装置は、上記いずれかの固体撮像素子を備え、この固体撮像素子により得られた画像情報を出力する手段を備えたことを特徴とするものである。
本発明の固体撮像素子および撮像装置においては、画素回路が、p型、n型いずれかの基板上にp型ウエルを介してn型MOSトランジスタが配されるようにして構成され、または、p型基板上にn型MOSトランジスタが配されるようにして構成され、光電変換膜は、電子注入阻止層、光電変換層兼電荷増倍層、正孔注入阻止層および膜電極の各層をこの順に積層し、膜電極には画素電極へのリセット電圧に対して正の電圧を印加し、正孔をキャリアとして用いるように構成している。
このような構成とすることにより、光電変換膜内に膜欠陥が生じて、膜抵抗が低下した場合であっても、画素電極と膜電極の間に設けられた、電子注入阻止層のバンドギャップによるエネルギー障壁により、画素電極と膜電極の間の電子の移動がブロックされる。これにより、暗電流の発生が抑制され、見かけ上の、信号値の変動を抑制することができる。
本発明の第1実施形態(第2実施形態についても同様)に係る固体撮像素子の構成を模式的に示す図である。 第1実施形態(第2実施形態についても同様)に係る膜積層タイプで3トランジスタ型画素回路の等価回路を示す回路図である。 第1実施形態(第2実施形態についても同様)に係る固体撮像素子において、信号読出しを行った場合における画素回路へ入力される信号のタイムチャートを示すものである。 第1実施形態(第2実施形態についても同様)に係る固体撮像素子において、図3に示す信号のタイムチャートの(a)、(b)、(c)、(d)各タイミングにおけるエネルギーバンドの模式図である。 本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子の画素部の断面模式図である。 図5のA−A′線断面におけるバンド図であって、リセット時の状態を示す図である。 図5のA−A′線断面におけるバンド図であって、膜欠陥がなく飽和時の状態を示す図である。 図5のA−A′線断面におけるバンド図であって、膜欠陥があるため飽和より電位が大きくなった時の状態を示す図である。 図5の画素電極付近の断面電位分布図((a)電界緩和層ありの場合、(b)電界緩和層なしの場合)を示す。 図9の画素電極付近の断面電位分布図中、中央、端部1、端部2の各位置における電界強度に関するグラフを示す。 図5に示す固体撮像素子を用いて撮影した暗時の画像((a)電界緩和層ありの場合、(b)電界緩和層なしの場合)を示す。 図5に示す膜構成(膜電極6、酸化ガリウム層4、結晶セレン層5、酸化ニッケル層7、画素電極3を積層したもの)に対して10Vを印加した時のバンド図(実線で示す)、および比較例に係る膜構成(膜電極6、酸化ガリウム層4、結晶セレン層5、画素電極3を積層したもの)に対して10Vを印加した時のバンド図(点線で示す)をそれぞれ示すものである。 図5に示す膜構成における、電流密度の印加電圧依存性の計算結果(実線で示す)、および比較例に係る膜構成における、電流密度の印加電圧依存性の計算結果(点線で示す)をそれぞれ示すものである。 本発明の第2実施形態に係る固体撮像素子の構成を模式的に示す図である。 図14のA−A′線断面におけるバンド図であって、リセット時の状態を示す図である。 図14のA−A′線断面におけるバンド図であって、膜欠陥や転位がなく飽和時の状態を示す図である。 図14のA−A′線断面におけるバンド図であって、膜欠陥や転位があるため飽和より電位が大きくなった時の状態を示す図である。 図14に示す固体撮像素子を用いて撮影した画像であって、キャリアが正孔であり、膜電圧が+5Vであるときの画像を表したものである。 従来の固体撮像素子の画素部の断面模式図であって、p型ウエル内にnMOSを形成することで画素回路を構成し、膜のキャリアを電子とした図である。 図19のA−A′線断面におけるバンド図であって、リセット時の状態を示す図である。 図19のA−A′線断面におけるバンド図であって、膜欠陥がなく飽和時の状態を示す図である。 図19のA−A′線断面におけるバンド図であって、膜欠陥があるため飽和より電位が小さくなった時の状態を示す図である。 図19に示す従来技術の固体撮像素子を用いて撮影した画像であって、キャリアが電子であり、膜電圧が−5Vであるときの画像を表したものである。
以下、本発明の実施形態(第1実施形態および第2実施形態)に係る固体撮像素子について、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、単位画素の画素アレイを有する固体撮像素子、具体的には光電変換膜積層型CMOS撮像素子のシステム構成図である。光電変換膜積層型CMOS撮像素子100は、光電変換素子を含む単位画素102がアレイ状に2次元配列され、画素駆動配線103、垂直信号線104と接続している画素アレイ101を有するとともに、周辺回路として、列並列信号処理回路105、出力回路106、制御回路(タイミング制御回路107、リセット信号制御回路111)、水平走査回路108、垂直走査回路109およびマルチプレクサ回路110から構成されている。なお、列並列信号処理回路105は、アナログデジタル変換回路(ADC)を含む構成となっている。
ここで、列並列信号処理回路105および水平走査回路108が、図1中の上方および下方に配されているのは、片側に配された場合に比べ、列並列信号処理回路105のレイアウト幅を単位画素幅の2倍にしつつ、単位画素1列あたり1個の列並列信号処理回路を配置することができるという理由からである。
なお、本発明の第1実施形態に係る撮像装置は、例えば図1に示す固体撮像素子を備え、さらに、例えば出力回路106からの信号を、そのまま、または所望の信号形態に変換して外部に出力する信号出力部を備えた装置であり、例えば、カメラやセンサ等を含む広義の撮像装置である。
図2は、第1実施形態に係る固体撮像素子に用いられる、単位画素102の等価回路図を示すものである。図2に示す本実施形態に係る単位画素102の等価回路は、光電変換膜(PL)211から信号電荷を読み出す画素回路が、n型浮遊拡散容量(FD)213、リセットトランジスタ(RT)214、ソースフォロアアンプトランジスタ(SF)215、選択トランジスタ(SL)216、画素出力(OUT)217、電源(VDD)222から構成された3トランジスタ型画素回路102の回路構成とされている。
図2に示すように、光電変換膜(PL)211は、下部電極がビア(VIA)227を通してn型浮遊拡散容量(FD)213に接続される。n型浮遊拡散容量(FD)213をリセットするリセットトランジスタ(RT)214がn型浮遊拡散容量(FD)213と電源(VDD)222との間に接続される。n型浮遊拡散容量(FD)213はソースフォロアアンプトランジスタ(SF)215のゲート電極に接続される。ソースフォロアアンプトランジスタ(SF)215と選択トランジスタ(SL)216が電源(VDD)222と画素出力(OUT)217の間に接続される。
リセットトランジスタ(RT)214の電源(VDD)222とソースフォロアアンプトランジスタ(SF)215の電源(VDD)222は、別系統であってもよい。
なお、図2は3トランジスタ型の画素回路を示すものであるが、付加的な機能としてフィードバックリセット機能を備えた回路構成としてもよい。
図3に、本実施形態に係る単位画素102の画素回路における入力信号のタイムチャートを示す。具体的には、選択トランジスタ(SL)216、n型浮遊拡散容量リセットトランジスタ(RT)214の入力信号のタイムチャートを示す。
また、これらのラベルの後の(1)、(2)、(n)等の符号は、図1における画素アレイ101の何行目の単位画素であるのかを表している。また、アナログデジタル変換回路(ADC)のサンプリングタイミングのタイムチャートを示すものである。
図4に、図3の各タイミング(a)、(b)、(c)、(d)におけるエネルギーバンド模式図を示す。図3と図4における(a)のタイミングは、電荷蓄積時であることを示すものである。光電変換膜(PL)211の上部電極(膜電極)に、リセット電圧(VDD)222を基準として正電圧を加えており、光電変換膜(PL)211で信号電荷の正孔が発生し、光電変換膜(PL)211からVIA227を経てn型浮遊拡散容量(FD)213に信号電荷が移動し、n型浮遊拡散容量(FD)213で信号電荷が蓄積される。
(b)のタイミングでは、選択トランジスタ(SL)216がオンになり当該画素が選択され、n型浮遊拡散容量(FD)213に蓄積された信号電荷が読み出されて、アナログデジタル変換回路(ADC)においてアナログ値からデジタル値へ変換される。
(c)のタイミングでは、リセットトランジスタ(RT)214がオンになり、n型浮遊拡散容量(FD)213がリセット電圧(VDD)222の値にリセットされる。
(d)のタイミングでは、リセットトランジスタ(RT)214がオフになる。また、n型浮遊拡散容量(FD)213に混入したリセットノイズが読み出されて、アナログデジタル変換回路(ADC)においてアナログ値からデジタル値へ変換される。
図3においてM−1フレームの1行目の単位画素102のリセット後、リセットノイズの値が読み出される。Mフレームの1行目の読み出しまでが1回の蓄積時間になる。その後、単位画素102が選択されて、リセットノイズが重畳された信号がアナログデジタル変換されて読み出される。このMフレーム1行目のリセットノイズが重畳された信号がアナログデジタル変換された値と、M−1フレーム1行目のリセットノイズがアナログデジタル変換された値では、リセットノイズが同じものであるので、センサ外部でのデジタル相関二重サンプリング処理により、リセットノイズが相殺されて、信号のみを分離して抽出することができる(特開2015−167343号公報を参照)。
図5に、第1実施形態に係る固体撮像素子の画素構造の断面模式図を示す。この固体撮像素子は、画素回路30上に光電変換膜20を積層してなる。光電変換膜20は、電子注入阻止層兼電界緩和層としてのp型の酸化ニッケル層(NiO層(厚みは例えば20nm))7、光電変換層兼電荷増倍層としてのp型の結晶セレン層(c-Se(厚みは例えば300nm))5、正孔注入阻止層としてのn型の酸化ガリウム層(Ga(厚みは例えば20nm))4、および陽極である膜電極としてのITO層(厚みは例えば30nm)6が、この順に積層された構造とされている。
また、画素回路30は、p型基板1上にp型ウエルを形成し(図示せず)、このp型ウエル内にn型MOSトランジスタ部2を形成することで構成される。なお、陰極である画素電極3はn型浮遊拡散容量8と電気的に接続されている。また、p型基板1と画素電極3の間には絶縁層9が設けられている。
図6に、図5のA−A′線断面におけるバンド図であって、リセット時の状態を示す図を示す。
図6のバンド図は画素内部の状態を示す相対的な電位図であり、酸化ガリウム層4、結晶セレン層5、酸化ニッケル層7、およびn型浮遊拡散容量8とp型基板1(シリコンの半導体材料)に対しては、伝導帯下端と価電子帯上端が表されている。膜電極(ITO層)6と画素電極3については金属の仕事関数が表されている。
また、画素電極3とn型浮遊拡散容量8の電位は2.3Vであり、n型浮遊拡散容量8をリセットした状態におけるリセット電圧である。膜電極(ITO層)6においては、画素電極3のリセット電圧を基準として+13Vが印加されており、膜内の走行キャリアは正孔となっている。
また、酸化ニッケル層7は、結晶セレン層5に対して伝導帯下端のバンド不連続が正となる材料であり、本実施形態の構成としては、このようなバンド不連続が正となる材料を選択することが特徴とされている。
また、図7は、図5のA−A′線断面におけるバンド図であって、膜欠陥がなく飽和時の状態を示す図である。ここで、画素電極3とn型浮遊拡散容量8の電位は、上記n型浮遊拡散容量8のリセット時よりも1.0Vだけ大きくなって、3.3Vの状態である。
すなわち、光電変換層兼電荷増倍層としての結晶セレン層5においては、光入射により電子正孔対が発生する。そして本実施形態の場合、正孔が膜内の走行キャリアとして画素電極3方向に走行する。画素電極3方向に走行している正孔がn型浮遊拡散容量8に入ると、リセット電圧である2.3Vから飽和時電位の3.3Vへ、電位が大きくなる方向へ変化する。電位の変化が読み出し回路の入力レンジ内であれば、正常に動作する。
図8は、図5のA−A′線断面におけるバンド図であって、膜欠陥があるため飽和より電位が大きくなった時の状態を示すものである。
このとき、画素電極3方向に走行している正孔がさらに増加してn型浮遊拡散容量8に流入する。画素電極3とn型浮遊拡散容量8の電位は5.3Vの状態である。
すなわち、前述したように、本実施形態の場合、光電変換層兼電荷増倍層としての結晶セレン層5においては、光入射により電子正孔対が発生すると、正孔が膜内の走行キャリアとして画素電極3方向に走行する。
この状態において、光電変換膜20に膜欠陥が存在していると、膜抵抗が低下し、正孔の流れ(電流量)が大きくなる。そして、多量の正孔がn型浮遊拡散容量8に流入することにより、リセット電圧の2.3Vから、電位がさらに大きくなる方向に変化する。この図の場合、電位は5.3Vである。これは、p型基板1とn型浮遊拡散容量8の電位差が増加する方向に変化することになるので、n型浮遊拡散容量8の電子が図8右方の、エネルギーバンドの山を越えて隣の画素へ溢れるような状態となることはない。
これにより、膜欠陥による画像の白キズは膜欠陥がある場所にだけ限定的に小さく発生し、画面上に、従来技術において問題となっていた大きな丸い白キズが発生することはない。
また、n型浮遊拡散容量8とp型基板1間が逆バイアス状態となるので、過剰な電流は流れず、膜電圧が大幅に降下することはないので、膜電圧を、設定された所望の電圧まで印加することができる。
図9に、図5の画素電極3付近の断面電位分布図であって、電界緩和層(酸化ニッケル層7)ありの場合((a)の場合)と、電界緩和層なしの場合((b)の場合)を示す。電子注入阻止層である酸化ニッケル層7が電界緩和層も兼ねていることが表されている。酸化ニッケルは結晶セレンよりバンドギャップが大きいため、高い電界に対しても高耐圧を有している。また、図10に、図9の画素電極付近の断面電位分布図中、「中央」、「端部1」、「端部2」の各位置における電界強度に関するグラフを示す。
なお、この図10における電界強度の各値の計算値は、電界緩和層である酸化ニッケル層7の厚さを変え、酸化ニッケル層7の厚さに応じて膜電圧を変え、「中央」の位置での電界強度が一定になるように設定した状態で求めるようにした。
ここで、図9(b)の電解緩和層なしの図中、「中央」の位置での電界強度は44V/μmであった。「端部1」の位置での電界強度は、電界集中により画素電極3の端部における角部において強くなるため、111V/μmであった。一方、図9(a)の電界緩和層(酸化ニッケル層7)ありの図中、「中央」の位置での電界強度を44V/μmとしたとき、「端部2」の位置での電界強度は、画素電極3の端部における角部から若干離間した位置における電位分布となるため77V/μmであった。このように、20nmの厚みの酸化ニッケル層7を挿入することで、結晶セレン層5に加わる電界強度を2/3程度に抑制することができた。
図10から明らかなように、酸化ニッケル層7の厚みを10nm以上、かつ100nm以下の範囲内とすることが好ましい。すなわち、酸化ニッケル層7の厚みを10nm以上とすることで、電界強度をある程度(例えば、実用上有用である2割程度以上)抑制することができる。
また、酸化ニッケル層7の厚みを100nm以下とすることで、印加電圧の低減を図ることができる。すなわち、厚みが100nm程度となると、厚みをそれ以上増やしても電界強度はほとんど低下せず、効果が飽和してきているので、厚みの上限を100nmとすることで膜電極(ITO層6)への印加電圧の抑制を図ることが好ましい。
さらに、この厚みの範囲の下限を20nmとすることにより、トンネル効果を抑制することができ、電界強度抑制効果を一層向上させることができるのでより好ましい。また、この厚みの範囲の上限を60nmとすることにより、印加電圧の低減効果を一層向上させることができるのでより好ましい。
図11に、本実施形態に係る、図5に示す固体撮像素子を用いて撮影された暗時の画像を示す。
画面の横方向は400画素、縦方向は200画素のサイズとされている。
図11(a)は電界緩和層(酸化ニッケル層7)ありの場合であり、図11(b)は電界緩和層なしの場合である。膜電圧は+18Vである。図11(b)の電界緩和層なしの場合では、画像に小さい白キズが発生しているのに対し、図11(a)の電界緩和層ありの場合では、画像に小さい白キズを視認することができない。このように、本実施形態においては、電界緩和層である酸化ニッケル層7を挿入することによって、結晶セレン層5に加わる電界強度を抑制することができるので、白キズの発生を抑制する、という効果も奏することができる。
また、本実施形態においては、画素電極3に存在する電子が、膜電極6方向に移動することを阻止する意味からも、前述したように、画素電極3と結晶セレン層5の間に、電子注入阻止層として機能する酸化ニッケル層7を介在させ、電子に対するエネルギー障壁を形成している。すなわち、図6を用いて説明したように、画素電極3の電子に対して、酸化ニッケル層7の伝導帯下端の障壁は3V程度にもなり電子が膜電極6方向に移動するのを十分に阻止することができる。
図12では、膜電極6、酸化ガリウム層4、結晶セレン層5、酸化ニッケル層7、画素電極3の積層構造において10Vを印加した時のバンド図を実線で、膜電極6、酸化ガリウム層4、結晶セレン層5、画素電極3の積層構造において10Vを印加した時のバンド図を点線で、各々示す。この図12から、酸化ニッケル層7を配設したときには、上記エネルギー障壁が形成されることが明らかである。
また、図13では、酸化ニッケル層7を挿入した場合(本実施形態)における電流密度の印加電圧依存性の計算結果を実線で、酸化ニッケル層7を挿入しない場合(比較例)における電流密度の印加電圧依存性の計算結果を点線で、各々示す。なお、酸化ガリウム層4、結晶セレン層5、酸化ニッケル層7の物性値として、伝導帯下端、価電子帯上端、不純物濃度を使用しているが、それ以外はシリコンの物性値を使用して計算した。光強度は2.5μW/cmと0.0μW/cmの場合である。光強度0.0μW/cmの場合、酸化ニッケル層を挿入しない場合(点線)に比べ、酸化ニッケル層7を挿入した場合(実線)は、電子が画素電極3から膜電極6方向に移動することを良好に阻止できているため、電流密度(暗電流)が低減していることが明らかである。
このように酸化ニッケル層7からなる電子注入阻止層を形成することにより、見かけ上の信号値が、暗電流分だけ増加する状態となるのを防止することができる。
上記第1実施形態の態様に替えて、その他の種々の態様のものを採用し得る。例えば、上記第1実施形態のものにおいては、画素回路は、p型基板にp型ウエルを形成し、このp型ウエル内にn型MOSトランジスタを形成することにより構成しているが、これに替えて、n型基板にpウエルを形成し、このp型ウエル内にn型MOSトランジスタを形成することにより構成してもよい。また、p型ウエルを形成することなく、p型基板上にn型MOSトランジスタを形成することにより構成してもよい。
また、第1実施形態に係る固体撮像素子の光電変換膜は、電子注入阻止層兼電界緩和層、光電変換層兼電荷増倍層、正孔注入阻止層、および膜電極の各層をこの順に積層されてなるように構成されているが、これら各層の間に他の層を挿入するようにしてもよく、例えば、独立した、電子輸送層や正孔輸送層を上記層間に別途挿入するようにしてもよい。また、光電変換層と電荷増倍層を2つの層に分離してもよい。また、別の電子注入阻止層兼電界緩和層や正孔注入阻止層を別途挿入するようにしてもよい。
また、上記第1実施形態においては、各層や各領域において、上記とは異なる他の適切な材料を用いることができる。例えば正孔注入阻止層の材料として酸化ガリウムを用いているが、これに替えて酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化セリウム、酸化イットリウムおよび酸化インジウム等を用いることが可能である。
また、上記第1実施形態においては、光電変換層兼電荷増倍層として酸化ニッケルを用いているが、これに替えて、バンドギャップが大きく、耐圧が大きい他の材料を用いることもでき、例えば、酸化銅(CuO)を用いることが可能である。
上記第1実施形態において、光電変換膜20を画素回路30上に積層するとは、積層構造に構成される、ことを意味し、製造工程として、真空ポンプで高真空または低真空に真空引きした容器内で、材料をスパッタリング法や蒸着法により成膜することで光電変換膜を形成することができることに加えて、光電変換膜20を別の支持基板上に形成しておいて、その後、光電変換膜20を画素回路30上に接合することにより形成される場合も含まれる。
なお、従来技術において、光電変換膜420を画素回路430上に直接積層により成膜するとは、真空ポンプで高真空または低真空に真空引きした容器内で、材料をスパッタリング法や蒸着法により直接成膜することで、画素回路430上に光電変換膜420を形成することを意味する。光電変換膜420を直接積層により形成することで、光電変換膜420を構成する材料に多結晶またはアモルファス材料を用いることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、この第2実施形態は、上記第1実施形態と類似の構成、作用効果を有するほか、第2実施形態特有の構成および作用効果をも有しているので、本来は、第2実施形態の説明において、上記第1実施形態と共通する部分については省略することも可能であるが、以下の記載においては、発明の理解を容易、かつ円滑にするため、上記第1実施形態と重複する部分についても敢えて省略しないで説明する場合がある。
インジウムリンを材料としたアバランシェ増倍時の過剰雑音について、以下の参考文献には下記のような内容の報告がなされている。
<参考文献> L. J. J. Tan et al.,“Avalanche Noise Characteristics in Submicron InP Diodes”, IEEE Journal of Quantum Electronics, Vol.44, No.4, pp.378-382, 2008.
<報告内容>
インジウムリンでは、電子のイオン化率αより正孔のイオン化率βの方が高く、イオン化率比k=α/βは約0.25である。過剰雑音係数Fは、増倍率Mとイオン化率比kを用いて、F=Mk+(1−k)(2−1/M)で表され、イオン化率比kが小さいほど、過剰雑音係数Fは小さくなる。インジウムリンは走行キャリアを正孔として過剰雑音係数が小さいので、アバランシェフォトダイオードとして用いられることが知られている。したがって、インジウムリンを固体撮像素子の光電変換層兼電荷増倍層に使用することができれば、S/Nの良好な増倍が得られるので、好適である。
しかしながら、非特許文献1に記載された従来技術では、上記光電変換膜を画素回路上に直接積層することにより成膜する場合、異物が混入するなどして膜に欠陥が生じてしまうことが避けられない。
膜欠陥が生じたことで、n型浮遊拡散容量408の電位の変動が飽和より大きい状態となった場合のバンド構造を示すバンド図を図22に示す。
画素電極403とn型浮遊拡散容量408の電位が0.0Vの場合である。この図22において、入射光により、結晶セレン層405では電子正孔対が発生するが、膜欠陥が生じていると、膜抵抗が低下し、膜電極(ITO層)406から画素電極403に過剰な電子が流れる。
n型浮遊拡散容量408と画素電極403の電位は、過剰な電子が入ると、リセット電圧の3.3Vから、電位が0.0Vよりさらに小さくなる方向へ変化する。すると、n型浮遊拡散容量408の電子が溢れて隣の画素へ流入し、さらに隣の隣の画素へ流入することが繰り返される。このような状態となると、画像としては、元々の欠陥の大きさの例えば数百倍にも広がった大きな丸い白キズが発生する。これにより、膜電極(ITO層)406とp型基板401が順バイアス状態となるので、過剰な電子が流れ、膜電圧が降下し、膜電圧を、設定された所望の値まで印加することができなくなる。
図23は、上記従来技術の撮像素子により撮像された、膜電圧−5V、4K解像度の暗時の画像を示す。膜電圧の−5Vは、n型浮遊拡散容量408のリセット電圧を基準とした膜電極406の電圧である。画像には、大きな丸い白キズが発生している。膜欠陥は白キズの中央部の、本図では視認できない程度の微小な大きさであるが、上述したように、n型浮遊拡散容量408の電子が溢れて、隣の画素、さらにその隣の画素と次々に流入していくことによって、画面上に極めて大きな白キズが出現する。
また、膜電圧が降下するため、膜電圧を設定値まで印加することが困難となるので、電荷増倍現象を起こすために必要な電圧を印加することが難しくなる。よって、電荷増倍現象を確認することはできていない。
なお、光電変換膜中に転位が形成された場合にも、膜欠陥が形成された場合と同様の理由から画面上に極めて大きな白キズが出現する。
そこで、本実施形態の固体撮像素子および撮像装置においては、光電変換膜中に膜欠陥や転位が形成された場合であっても、画面上に大きな白キズが発生するのを防止することができるとともに、膜電圧を、設定された所望の値まで印加することができ、電荷増倍時のS/Nを向上させることができる、ように構成されている。
図14に、本実施形態に係る固体撮像素子の画素構造の断面模式図を示す。この固体撮像素子は、画素回路330上に光電変換膜320を接合してなる。光電変換膜320は、電子注入阻止層としてのp型のインジウムリン層(厚みは例えば20nm)307、光電変換層兼電荷増倍層としてのi型のインジウムリン層(厚みは例えば300nm)305、正孔注入阻止層としてのn型のインジウムリン層(厚みは例えば20nm)304がこの順に接合され、および膜電極としてのITO層(厚みは例えば30nm)306が、この順に積層された構造とされている。
また、画素回路330は、p型基板301上にp型ウエルを形成し(図示せず)、このp型ウエル内にn型MOSトランジスタ部302を形成することで構成される。なお、陰極である画素電極303はn型浮遊拡散容量308と電気的に接続されている。また、p型基板301と画素電極303の間には絶縁層309が設けられている。
図15は、図14のA−A′線断面におけるバンド図であって、リセット時の状態を示す図である。
図15のバンド図は画素内部の状態を示す相対的な電位図であり、n型インジウムリン層304、i型インジウムリン層305、p型インジウムリン層307、およびn型浮遊拡散容量308とp型基板301(シリコンの半導体材料)に対しては、伝導帯下端と価電子帯上端が表されている。膜電極(ITO層)306と画素電極303については金属の仕事関数が表されている。
また、画素電極303とn型浮遊拡散容量308の電位は2.3Vであり、n型浮遊拡散容量308をリセットした状態におけるリセット電圧である。膜電極(ITO層)306においては画素電極303のリセット電圧を基準として+13Vが印加されており、膜内の走行キャリアは正孔となっている。
図16は、図14のA−A′線断面におけるバンド図であって、膜欠陥や転位がなく飽和時の状態を示す図である。ここで、画素電極303とn型浮遊拡散容量308の電位は、上記n型浮遊拡散容量308のリセット時よりも1.0Vだけ大きくなって、3.3Vの状態である。
すなわち、正孔注入阻止層としてのn型インジウムリン層304および光電変換層兼電荷増倍層としてのi型インジウムリン層305においては、光入射により電子正孔対が発生する。そして本実施形態の場合、正孔が膜内の走行キャリアとして画素電極303方向に走行する。画素電極303方向に走行している正孔がn型浮遊拡散容量308に入ると、リセット電圧である2.3Vから飽和時電位の3.3Vへ、電位が大きくなる方向へ変化する。電位の変化が読み出し回路の入力レンジ内であれば、正常に動作する。
図17は、図14のA−A′線断面におけるバンド図であって、膜欠陥や転位があるため飽和より電位が大きくなった時の状態を示すものである。
このとき、画素電極303とn型浮遊拡散容量308の電位は5.3Vの状態である。
すなわち、前述したように、本実施形態の場合、正孔注入阻止層としてのn型インジウムリン層304および光電変換層兼電荷増倍層としてのi型インジウムリン層305においては、光入射により電子正孔対が発生すると、正孔が膜内の走行キャリアとして画素電極303方向に走行する。
この状態において、光電変換膜320に膜欠陥や転位が存在していると、膜抵抗が低下し、正孔電流量が大きくなる。そして、正孔がn型浮遊拡散容量308に入ると、リセット電圧の2.3Vから、電位がさらに大きくなる方向へ変化する。これは、p型基板301とn型浮遊拡散容量308の電位差が増加する方向に変化することになるので、n型浮遊拡散容量308の電子が図17右方の、エネルギーバンドの電子における山を越えて隣の画素へ溢れるような状態となることはない。
これにより、膜欠陥による画像の白キズは膜欠陥や転位がある場所にだけ限定的に小さく発生し、画面上には大きな丸い白キズが発生することはない。
また、n型浮遊拡散容量308とp型基板301間が逆バイアス状態となるので、過剰な電流は流れず、膜電圧が大幅に降下することはないので、膜電圧を、設定された所望の電圧まで印加することができる。
なお、図17のn型浮遊拡散容量308においては、価電子帯上端と伝導帯下端の間のバンドギャップが幅をもって形成されているので、正孔が画素電極のフェルミ準位からシリコンの価電子帯に移動することは阻止される。
図18は、本実施形態の固体撮像素子により得られた画像であって、膜電圧が+5Vで、4K解像度の暗時の画像を示す。膜電圧の+5Vは、n型浮遊拡散容量308のリセット電圧を基準とした膜電極306の電圧である。
この図18によれば、従来技術において問題となっていた、図23に示すような、大きな丸い白キズは発生していない。膜欠陥や転位による白キズは発生しているが、極めて限定的であるため目立たない。
電荷増倍作用を有する膜320を画素回路330上に接合する場合に、膜に欠陥や転位が生じてしまう現象を避けることが難しいことは、膜内の走行キャリアが電子、正孔のいずれであっても同様である。しかし、上記第2実施形態の固体撮像素子のように構成することで、信号の正孔がn型浮遊拡散容量308に入ったときに、リセット電圧から、電位がさらに大きくなる方向へ変化するようにすることで、大きな丸い白キズを発生させないようにすることができ、膜欠陥や転位による白キズは発生していても、画面上で目立たないようにすることができる。
さらに、本実施形態の固体撮像素子においては、シリコンの画素回路330上において、膜電極306に電荷増倍現象を起こす効果が得られるために必要な電圧を正常に印加することができる。
本実施形態の固体撮像素子および撮像装置においては、上述したように、画素回路330を、p型基板上にp型ウエルを設け、このp型ウエル内にn型MOSトランジスタを形成する手法、またはn型基板上にp型ウエルを設け、このp型ウエル内にn型MOSトランジスタを形成する手法、またはp型基板上にn型MOSトランジスタを形成する手法を用いて構成し、光電変換膜320は、電子注入阻止層、光電変換層兼電荷増倍層、正孔注入阻止層および膜電極306をこの順に積層し、膜電極306には画素電極309のリセット電圧に対して正の電圧を印加し、正孔をキャリアとして用いるように構成している。この場合において、光電変換膜320は、電子注入阻止層、光電変換層兼電荷増倍層、正孔注入阻止層の各層をこの順に接合することにより積層することが可能である。
このような構成においても、光電変換膜320内に膜欠陥や転位が生じていると、膜抵抗が低下し、膜電極306からn型浮遊拡散容量308に正孔が流れることになる。しかしながら、n型浮遊拡散容量308と画素電極303においては、正孔が入ると電位が大きくなり、p型基板301との電位差が増加するのでnMOSの多数キャリアである電子があふれて隣の画素へ流入する虞はない。これにより膜欠陥や転位の影響が周囲にまで及んで、画面上に大きな白キズが形成される状態を阻止することができる。
また、n型浮遊拡散容量308とp型基板301が逆バイアス状態となることにより、過剰な電流は流れず、膜電圧を、設定された所望の電圧まで印加することができる。
本発明の固体撮像素子および撮像装置については、上記第2実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様のものを採用し得る。例えば、図14における上記実施形態のものにおいては、画素回路330は、p型基板301にp型ウエルを形成し、p型ウエル内にn型MOSトランジスタを形成することにより構成しているが、これに替えて、n型基板にp型ウエルを形成し、p型ウエル内にn型MOSトランジスタを形成することにより構成してもよい。また、p型ウエルを形成することなく、p型基板上にn型MOSトランジスタを形成することにより構成してもよい。
また、第2実施形態の固体撮像素子の光電変換膜は、電子注入阻止層、光電変換層兼電荷増倍層、正孔注入阻止層の各層をこの順に接合され、および膜電極306をこの順に積層されてなるように構成されているが、これら各層の間に他の層を挿入するようにしてもよい。例えば、独立した、電子輸送層や正孔輸送層を上記層間に別途挿入するようにしてもよい。また、光電変換層と電荷増倍層を2つの層に分離してもよい。また、別の電子注入阻止層や正孔注入阻止層を別途挿入するようにしてもよい。
また、上記第2実施形態においては、各層や各領域において、上記とは異なる他の適切な材料を用いることができる。例えば、電子注入阻止層、光電変換層兼電荷増倍層、正孔注入阻止層の材料としてインジウムリンを用いているが、これに替えてゲルマニウム、インジウムガリウムヒ素リン(リン対ヒ素の組成がX:1−Xにおいて、Xが0.7以上)を用いることが可能である。また、一般に正孔のイオン化率が電子のイオン化率より高い材料を用いることが可能である。
また、電子注入阻止層として、上記第1実施形態において説明したような、光電変換層兼電荷増倍層に対して伝導帯下端のバンド不連続が正となる材料、を選択して電界を緩和し得る、電子注入阻止層兼電界緩和層を構成してもよい。電子注入阻止層兼電界緩和層の材料として、アルミニウムヒ素アンチモン、ガリウムヒ素アンチモン、アルミニウムガリウムヒ素アンチモン、酸化ニッケル等を用いることが可能である。
また正孔注入阻止層として、n型InPの不純物濃度が1018cm−3以上の高濃度としたn型InP層を用いることが可能である。また、正孔注入阻止層の材料として酸化ガリウム等を用いることが可能である。
また、上記第2実施形態において、光電変換膜320を画素回路330上に接合する、との用語を用いる場合があるが、その場合には、電子注入阻止層、光電変換層兼電荷増倍層、正孔注入阻止層の各層を別のダミー基板上に形成しておいて、その後、画素回路330上に接合することで構造を形成する場合を含むものである。本実施形態では、電子注入阻止層、光電変換層兼電荷増倍層、正孔注入阻止層の各層を別の支持基板上に形成しておいて、その後、電子注入阻止層の上面を画素回路330上に接合し、支持基板を除去した後、正孔注入阻止層の上に膜電極306を直接積層する態様を用いてもよいが、別の支持基板に膜電極306を含む光電変換膜320を積層したのち、膜電極306を含む光電変換膜320を画素回路330上に接合する手法を用いてもよい。光電変換膜320を接合により形成することで、光電変換膜320を構成する材料に単結晶材料を用いることができる。
1、301、401 p型基板
2、302、402 n型MOSトランジスタ部
3、303、403 画素電極
4、404 酸化ガリウム層
5、405 結晶セレン層
6、306、406 ITO層(膜電極)
7 酸化ニッケル層
8、308、408 n型浮遊拡散容量
9、309、409 絶縁層
20、320、420 光電変換膜
30、330、430 画素回路
100 光電変換膜積層型CMOS撮像素子
101 画素アレイ
102 単位画素
103 画素駆動配線
104 垂直信号線
105 列並列信号処理回路
106 出力回路
107 タイミング制御回路
108 水平走査回路
109 垂直走査回路
110 マルチプレクサ回路
111 リセット信号制御回路
211 光電変換膜(PL)
213 n型浮遊拡散容量(FD)
214 リセットトランジスタ(RT)
215 ソースフォロアアンプトランジスタ(SF)
216 選択トランジスタ(SL)
217 画素出力(OUT)
222 電源(VDD)
227 ビア(VIA)
304 n型InP層
305 i型InP層
307 p型InP層
ADC アナログデジタル変換回路

Claims (12)

  1. 画素回路上に光電変換膜を積層するタイプのCMOS型固体撮像素子であって、
    該画素回路は、p型基板上にn型MOSトランジスタが形成されるように構成するか、p型基板上またはn型基板上にp型ウエルが配され、該p型ウエル内にn型MOSトランジスタが形成されるように構成するとともに、該n型MOSトランジスタの上部に画素電極を配設してなり、
    前記光電変換膜は、電子注入阻止層、光電変換層兼電荷増倍層、正孔注入阻止層、および膜電極の各層をこの順に積層されてなり、
    該膜電極には、前記画素電極へのリセット電圧に対して正の電圧を印加し、
    光電変換により発生した電子正孔対のうち正孔を前記光電変換膜の走行キャリアとして用いるように構成されてなることを特徴とする固体撮像素子。
  2. 前記電子注入阻止層が、前記光電変換層兼電荷増倍層に対して伝導帯下端のバンド不連続が正となる、電子注入阻止層兼電界緩和層として機能する材料であることを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
  3. 前記電子注入阻止層兼電界緩和層の構成材料として酸化ニッケルを用いたことを特徴とする請求項2に記載の固体撮像素子。
  4. 前記酸化ニッケルを用いた前記電子注入阻止層兼電界緩和層の厚みが、10nm以上、かつ100nm以下とされていることを特徴とする請求項3に記載の固体撮像素子。
  5. 前記光電変換層兼電荷増倍層の構成材料として結晶セレンを用いたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の固体撮像素子。
  6. 前記正孔注入阻止層の構成材料として酸化ガリウムを用いたことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の固体撮像素子。
  7. 前記電子注入阻止層、前記光電変換層兼電荷増倍層および前記正孔注入阻止層として、単結晶材料を用いたことを特徴とする請求項1または2に記載の固体撮像素子。
  8. 前記光電変換層兼電荷増倍層としてi型インジウムリンを用いたことを特徴とする請求項1、2および7のうちいずれか1項に記載の固体撮像素子。
  9. 前記正孔注入阻止層としてn型インジウムリンを用いたことを特徴とする請求項1、2、7および8のうちいずれか1項に記載の固体撮像素子。
  10. 前記電子注入阻止層としてp型インジウムリンを用いたことを特徴とする請求項1、2および7〜9のうちいずれか1項に記載の固体撮像素子。
  11. 前記電子注入阻止層兼電界緩和層の構成材料としてアルミニウムヒ素アンチモン、ガリウムヒ素アンチモン、およびアルミニウムガリウムヒ素アンチモンの少なくとも1つを用いたことを特徴とする請求項1、2および7〜10のうちいずれか1項に記載の固体撮像素子。
  12. 請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の固体撮像素子を備え、この固体撮像素子により得られた画像情報を出力する手段を備えたことを特徴とする撮像装置。
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