JP2021074951A - 導電性積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属層とこの表面に積層された導電性高分子層を備え、前記導電性高分子層が前記金属層の抵抗を上昇させてしまうことが抑制された、導電性積層体及びその製造方法を提供する。【解決手段】金属層と、前記金属層の表面に積層された導電性高分子層とを備えた導電性積層体であって、前記導電性高分子層には、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が含まれ、前記ポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基のうち、一部は、エポキシ基含有化合物との反応により修飾されており、別の一部は、アミン化合物との反応により修飾されている、導電性積層体。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性積層体及びその製造方法に関する。
ガラスや樹脂フィルム等の透明基材の表面に透明導電層を形成した配線基板が、タッチパネルやディスプレイに使用されている。透明導電層は、導電性に優れた酸化インジウム一酸化スズ(ITO)等の金属酸化物で形成されることがある。このような導電性積層体には優れた導電性とともに透明であることが求められている。ところが、透明導電層の導電性向上に伴う層厚の増加に起因して、入射した光が導電性積層体を透過するときに、透明導電層の配線パターンが視認され易くなる、いわゆる「骨見え」と呼ばれる問題がある。この問題の解決方法として、例えば特許文献1では、透明導電層の上に、屈折率が互いに異なる複数のアンダーコート層を積層した導電性積層体が提案されている。
特開2016−013632号公報
ところで、アンダーコート層等の樹脂層を有する導電性積層体が液晶パネル等の電場の近傍に載置されると、樹脂層が帯電することにより、液晶パネル等が機能するために必要な電場を乱す問題がある。本発明者は、導電性積層体の帯電を防止するために、ITO等からなる金属層に導電性高分子を含む層を積層することを検討したが、導電性高分子にドープされたポリアニオンの影響により、金属層が錆び、金属層の抵抗が上昇してしまう新たな問題に直面した。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、金属層とこの表面に積層された導電性高分子層を備え、前記導電性高分子層が前記金属層の抵抗を上昇させてしまうことが抑制された、導電性積層体及びその製造方法を提供する。
[1] 金属層と、前記金属層の表面に積層された導電性高分子層とを備えた導電性積層体であって、前記導電性高分子層には、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が含まれ、前記ポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基のうち、一部は、エポキシ基含有化合物との反応により修飾されており、別の一部は、アミン化合物との反応により修飾されている、導電性積層体。
[2] 前記金属層の前記導電性高分子層とは反対側の表面に、ガラス基材又はフィルム基材が積層されている、[1]に記載の導電性積層体。
[3] 前記導電性高分子層の前記金属層とは反対側の表面に、樹脂層が積層されている、[1]又は[2]に記載の導電性積層体。
[4] 前記樹脂層には、アクリル樹脂が含まれている、[3]に記載の導電性積層体。
[5] 前記金属層が、ITOによって形成されている、[1]〜[4]の何れか一項に記載の導電性積層体。
[6] 前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、[1]〜[5]の何れか一項に記載の導電性積層体。
[7] 前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、[1]〜[6]の何れか一項に記載の導電性積層体。
[8] [1]〜[7]の何れか一項に記載の導電性積層体の製造方法であって、前記金属層の表面に、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体と、有機溶剤とを含む導電性高分子含有液を塗布することにより、前記導電性高分子層を形成する積層工程を含み、前記ポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基のうち、一部は、エポキシ基含有化合物との反応により修飾されており、別の一部は、アミン化合物との反応により修飾されている、導電性積層体の製造方法。
[9] 前記有機溶剤がメチルエチルケトンを含有する、[8]に記載の導電性積層体の製造方法。
[10] 前記アミン化合物が複素環式芳香族アミン又は3級アミンである、[8]又は[9]に記載の導電性積層体の製造方法。
[11] 前記アミン化合物がイミダゾール、トリブチルアミン、トリオクチルアミンである、[8]〜[10]の何れか一項に記載の導電性積層体の製造方法。
[12] 前記導電性高分子含有液が、バインダ成分をさらに含有する、[8]〜[11]の何れか一項に記載の導電性積層体の製造方法。
[13] 前記バインダ成分がポリエステル樹脂である、[12]に記載の導電性積層体の製造方法。
[14] 前記導電性高分子含有液を調製する調製工程を含み、前記調製工程において、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体と水系分散媒とを含む水系分散液に、エポキシ基含有化合物を添加した第一反応液を得て、前記ポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基の一部に、前記エポキシ基含有化合物を反応させることにより、前記導電性複合体を析出させた後、前記第一反応液から前記導電性複合体の析出物を回収し、前記析出物に有機溶剤を添加して、前記析出物が分散された調製液を得て、前記調製液にアミン化合物を添加した第二反応液を得て、前記ポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基の別の一部に、前記アミン化合物を反応させることにより、前記導電性高分子含有液を得る、[8]〜[13]の何れか一項に記載の導電性積層体の製造方法。
本発明の導電性積層体にあっては、導電性高分子層に含まれる導電性複合体のポリアニオンがエポキシ基含有化合物及びアミン化合物によって化学修飾されているので、金属層が錆びることによる金属層の抵抗上昇が防止されており、さらに帯電防止性を有する。
本発明の導電性積層体の製造方法によれば、本発明の導電性積層体を製造することができる。
≪導電性積層体≫
本発明の第一態様は、金属層と、前記金属層の表面に積層された導電性高分子層とを備えた導電性積層体であって、前記導電性高分子層には、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が含まれ、前記ポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基のうち、一部は、エポキシ基含有化合物との反応により修飾されており、別の一部は、アミン化合物との反応により修飾されている、導電性積層体である。
<金属層>
本態様の金属層は、金属を含む導電性の層である。このような金属としては、例えば、インジウム、スズ、チタン、亜鉛、タングステン、アルミニウム、ガリウム、銅、クロム等が挙げられる。透明で導電性が高い金属層を形成する観点から、金属層は、酸化インジウム一酸化スズ(ITO)、酸化インジウム一酸化スズ一酸化チタン(InTiTO)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム一酸化亜鉛(IZO)、酸化インジウム(In)、タングステンドープ酸化インジウム(IWO)、チタンドープ酸化インジウム(ITiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、フッ化スズ(SnF)、ルミドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、ガリウムアルミドープ酸化亜鉛(GAZO)等の金属酸化物で形成された金属層であることが好ましい。
前記金属層は、基材の表面の全体を覆う金属層であってもよいし、使用目的に応じて、配線や電極等にパターニングされた金属層であってもよい。
前記金属層の厚さは、導電性積層体の使用目的に応じて適宜設定され、透明導電層である場合には、例えば、1nm以上1μm以下であることが好ましく、5nm以上500nm以下であることがより好ましく、10nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であれば、導電性が向上し、上記範囲の上限値以下であれば、透明性が向上する。
前記金属層の厚さは、本態様の導電性積層体の断面において、任意の10箇所について公知方法により厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
前記金属層は、良好な導電性の目安として、例えば、0.1Ω/□以上100Ω/□以下の表面抵抗値を有することが好ましい。
<基材>
前記金属層の前記導電性高分子層とは反対側の表面に、ガラス基材又はフィルム基材が積層されていてもよい。
前記フィルム基材としては、例えば、プラスチックフィルムが挙げられる。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂のなかでも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
フィルム基材用の樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
フィルム基材には、導電性高分子含有液から形成される導電性高分子層の密着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
ガラス基材の平均厚みとしては、例えば、500μm以上5mm以下が挙げられる。
フィルム基材の平均厚みとしては、例えば、5μm以上500μm以下が挙げられる。
各基材の厚さは、本態様の導電性積層体の用途に応じて適宜選択される。
各基材の厚さは、本態様の導電性積層体の断面において、任意の10箇所について公知方法により厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
導電性積層体を光学用途に使用する場合には、ガラス基材、フィルム基材が透明であることが好ましい。具体的には、基材の全光線透過率が65%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率は、JIS K7136に従って測定した値である。
<導電性高分子層>
[導電性複合体]
まず、未修飾の導電性複合体について説明する。
本態様における導電性複合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含む。導電性複合体中のポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成している。
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるから、充分な導電性を確保できる。
導電性複合体中のポリアニオンにおいては、アニオン基の全てがπ共役系導電性高分子にドープしてはおらず、ドープに関与しない余剰のアニオン基がある。この余剰のアニオン基は親水基であり、アニオン基が修飾されていない導電性複合体の分散性は、水系分散媒においては高く、有機溶剤においては低い。
[導電性複合体の修飾]
次に、導電性複合体の修飾について説明する。
本態様における導電性複合体は、エポキシ基含有化合物(エポキシ化合物)と、アミン化合物との各反応によって修飾されている。具体的には、導電性複合体のポリアニオンのドープに関与していない余剰のアニオン基のうち、一部は、エポキシ化合物のエポキシ基との反応によって、親水性が低下している。また、前記余剰のアニオン基のうち、別の一部(エポキシ化合物と反応していない一部)は、アミン化合物との反応によって親水性が低下している。この結果、修飾された導電性複合体は未修飾の場合と比べて疎水化されており、有機溶剤に対する分散性が高まっている。
(置換基A)
前記余剰のアニオン基がエポキシ化合物と反応したことによって形成され得る置換基Aは、例えば次のような構造式で表される。
修飾された導電性複合体の詳細な分析は必ずしも容易ではないが、置換基(A)は下記式(A1)で示される基、又は下記式(A2)で表される基であると推測される。
Figure 2021074951
[式(A1)中、R11、R12、R13、及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、又は任意の置換基である。]
Figure 2021074951
[式(A2)中、mは2以上の整数であり、複数のR15、複数のR16、複数のR17、及び複数のR18はそれぞれ独立に、水素原子、又は任意の置換基であり、複数のR15は同一でも異なっていてもよく、複数のR16は同一でも異なっていてもよく、複数のR17は同一でも異なっていてもよく、複数のR18は同一でも異なっていてもよい。]
式(A1)及び式(A2)において、左端の結合手は、置換基(A)が、アニオン基のプロトンと置換していることを表す。置換されるプロトンを有するアニオン基として、例えば、「−SOH」のように酸素原子に結合した活性なプロトンを有するアニオン基が挙げられる。
式(A1)において、R11、R12、R13、及びR14の任意の置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。R11とR13とは結合して置換基を有していてもよい環を形成していてもよい。例えば、R11とR13とが前記炭化水素基であり、R11の1価の炭化水素基の任意の1つの水素原子を除いた2価の炭化水素基と、R13の1価の炭化水素基の任意の1つの水素原子を除いた2価の炭化水素基とが、前記水素原子が除かれた炭素原子同士で結合して環を形成する場合が挙げられる。
なかでも、式(A1)において、R11が水素原子又は炭素数10〜16のアルコキシアルキル基であり、R12が水素原子であり、R13が水素原子又は炭素数10〜16のアルコキシアルキル基であり、R14が水素原子であることが好ましい。
式(A2)において、R15、R16、R17、及びR18の任意の置換基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。R15とR17とは結合して置換基を有していてもよい環を形成していてもよい。環を形成する例は、上記と同様である。
なかでも、式(A2)において、R15が水素原子又は炭素数10〜16のアルコキシアルキル基であり、R16が水素原子であり、R17が水素原子又は炭素数10〜16のアルコキシアルキル基であり、R18が水素原子であることが好ましい。
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、水素原子(−H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(−CH−)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
置換基としての1価の基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、トリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基等)、等が挙げられる。
置換基としての2価の基としては、酸素原子(−O−)、−C(=O)−、−C(=O)−O−等が挙げられる。ただし、2つの酸素原子同士が隣接する場合を除く。
式(A2)において、mは2以上の整数であり、2〜100が好ましく、2〜50がより好ましく、2〜25がさらに好ましい。mが上記下限値以上であると、導電性複合体の疎水性が充分に高くなる。mが前記上限値以下であると、疎水性が高くなりすぎたり、導電性が低下したりするのを抑制することができる。
前記エポキシ基含有化合物(エポキシ化合物)は、1分子中にエポキシ基を1つ以上有する化合物である。導電性複合体を修飾する際の凝集又はゲル化を防止する点では、エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1つ有する化合物が好ましい。
エポキシ化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
1分子中にエポキシ基を1つ有する単官能エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシテトラデカン、グリシジルメチルエーテル、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシエイコサン、2−(クロロメチル)−1,2−エポキシプロパン、グリシドール、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシ−9−デカン、2−(クロロメチル)−1,2−エポキシブタン、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,2H,3H,3H−トリフルオロブタン、アリルグリシジルエーテル、テトラシアノエチレンオキサイド、グリシジルブチレート、1,2−エポキシシクロオクタン、グリシジルメタクリレート、1,2−エポキシシクロドデカン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタデカン、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,2H,3H,3H−ヘプタデカフルオロブタン、3,4−エポキシテトラヒドロフラン、グリシジルステアレート、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシコハク酸、グリシジルフェニルエーテル、イソホロンオキサイド、α−ピネンオキサイド、2,3−エポキシノルボルネン、ベンジルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−[2−(パーフルオロヘキシル)エトキシ]−1,2−エポキシプロパン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−(3−グリシジルオキシプロピル)トリシロキサン、9,10−エポキシ−1,5−シクロドデカジエン、4−tert−ブチル安息香酸グリシジル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、2−tert−ブチル−2−[2−(4−クロロフェニル)]エチルオキシラン、スチレンオキサイド、グリシジルトリチルエーテル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−フェニルプロピレンオキサイド、コレステロール−5α,6α−エポキシド、スチルベンオキサイド、p−トルエンスルホン酸グリシジル、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル、N−プロピル−N−(2,3−エポキシプロピル)ペルフルオロ−n−オクチルスルホンアミド、(2S,3S)−1,2−エポキシ−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−フェニルブタン、3−ニトロベンゼンスルホン酸(R)−グリシジル、3−ニトロベンゼンスルホン酸−グリシジル、パルテノリド、N−グリシジルフタルイミド、エンドリン、デイルドリン、4−グリシジルオキシカルバゾール、7,7−ジメチルオクタン酸[オキシラニルメチル]、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、炭素数10〜16の高級アルコールグリシジルエーテル等が挙げられる。
前記高級アルコールグリシジルエーテルとしては、炭素数10〜16の高級アルコールグリシジルエーテルの1種以上が好ましく、炭素数12〜14の高級アルコールグリシジルエーテルの1種以上がより好ましく、C12(炭素数12)高級アルコールグリシジルエーテル及びC13(炭素数13)高級アルコールグリシジルエーテルのうち少なくとも1種がさらに好ましく、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテルが特に好ましい。
1分子中にエポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,7−オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2:3,4−ジエポキシブタン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、イソシアヌル酸トリグリシジルネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2:3,4−ジエポキシブタン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル等が挙げられる。
エポキシ化合物は、有機溶剤への分散性が高くなることから、分子量が50以上2000以下であることが好ましい。また、低極性の有機溶剤への分散性が高くなることから、エポキシ化合物は、炭素数が2以上100以下のものが好ましく、5以上80以下のものがより好ましく、10以上50以下のものがさらに好ましい。
(置換基B)
前記余剰のアニオン基がアミン化合物と反応したことによって形成され得る置換基Bは、例えば次のような構造式で表される。
導電性複合体の詳細な分析は必ずしも容易ではないが、置換基(B)は下記式(B)で表される基であると推測される。
−HN212223 ・・・(B)
[式(B)中、R21〜R23はそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有してもよい炭化水素基であり、ただし、R21〜R23のうち少なくとも1つは置換基を有してもよい炭化水素基である。]
置換基(B)において、左端の結合手は、アニオン基の負電荷と、アミン化合物の正電荷とが結合していることを表す。負に荷電し得るアニオン基として、例えば「−SO 」のように、活性なプロトンが結合し得る酸素原子を有するアニオン基が挙げられる。
式(B)におけるR21〜R23は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基である。式(B)におけるR21〜R23はアミン化合物に由来する置換基である。
式(B)における炭化水素基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基の水素を置換してもよい置換基としては、フェニル基、水酸基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基の水素を置換してもよい置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、水酸基等が挙げられる。
前記アミン化合物は、第一級アミン(1級アミン)、第二級アミン(2級アミン)及び第三級アミン(3級アミン)よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。アミン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
第一級アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
第二級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
前記アミン化合物のうち、導電性複合体を容易に疎水化できることから、第三級アミンが好ましく、トリオクチルアミン及びトリブチルアミンの少なくとも一方がより好ましい。
低極性の有機溶剤への分散性が高くなることから、前記アミン化合物は、窒素原子上に炭素数が4以上の置換基を有することが好ましく、窒素原子上に炭素数が6以上の置換基を有することがより好ましい。
(置換基C)
前記余剰のアニオン基と反応したアミン化合物が、複素環式芳香族アミンである場合、これと反応したことによって形成された置換基Cは、例えば次のような構造式で表される。
−HN24 ・・・(C)
[式(C)中、N24は、プロトンが付加したことにより正に帯電した窒素原子を含む、複素環式芳香族アミンを表す。]
ここで、複素環式芳香族アミンとは、芳香環を構成する窒素原子を含む環式のアミン化合物を意味し、そのアミン化合物に結合する水素原子は任意に置換されていてもよい。
式(C)において、左端の結合手は、アニオン基の負電荷と、複素環式芳香族アミンの正電荷とが結合していることを表す。負に荷電し得るアニオン基として、例えば「−SO 」のように、活性なプロトンが結合し得る酸素原子を有するアニオン基が挙げられる。
複素環式芳香族アミンの塩基性が強すぎると、修飾された導電性複合体の導電性が低下することがあるため、複素環式芳香族アミンのうち、塩基性が弱い、イミダゾール系アミンが好ましい。ここで、イミダゾール系アミンとは、イミダゾール環を有する化合物を意味し、そのイミダゾール環に結合する水素原子は任意に置換されていてもよい。
イミダゾール環の水素原子を任意に置換してもよい置換基としては、例えば、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。これらの置換基を構成する水素原子は水酸基又はシアノ基によって置換されていてもよい。また、これらの置換基を構成する2価又は3価の基は、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N=、等に置換されていてもよい。また、イミダゾール環の水素原子を置換する置換基を2つ以上有する場合、これらの置換基同士が結合して環を形成していてもよい。
前記イミダゾール系アミンとしては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル) イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、2−アミノ−1−メチルベンズイミダゾール、2−ヒドロキシベンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)ベンズイミダゾール等が挙げられる。
なかでも、導電性複合体のアニオン基との反応性が良好であり、安価であることから、イミダゾールが好ましい。
(アニオン基の反応割合について)
本態様において、導電性複合体が有するポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基のうち、エポキシ化合物と反応したアニオン基の割合は10〜90%であると考えられ、20〜60%程度が妥当であると考えられる。また、導電性複合体が有するポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基のうち、アミン化合物と反応したアニオン基の割合は0.1〜50%であると考えられ、1〜30%程度が妥当であると考えられる。
後述する製造方法で説明するように、未修飾の導電性複合体に対して、まず、エポキシ化合物を反応させることにより、水系溶媒から析出するほどに疎水化するためには、上記の割合程度で修飾反応が起きていると考えられる。また、エポキシ化合物を反応させて疎水化した導電性複合体に対して、アミン化合物を反応させた場合、エポキシ化合物と反応せずに残存したアニオン基がアミン化合物と反応するので、エポキシ化合物の反応割合が多ければ、必然的にアミン化合物との反応割合が少なくなる。したがって、後述の製造方法で製造された導電性積層体の導電性高分子層に含まれる導電性複合体においては、エポキシ化合物と反応したアニオン基の方が、アミン化合物と反応したアニオン基よりも多くなり易い。
本態様の導電性積層体の導電性高分子層に含まれる導電性複合体の含有量としては、例えば、導電性高分子層の総質量に対して、1質量%以上90質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性高分子層の帯電防止性をより高め、導電性高分子層による前記金属層の錆びをより確実に防止することができる。
上記範囲の上限値以下であると、導電性高分子層にバインダ樹脂等の任意成分を含有させることができる。
[バインダ樹脂]
本態様の導電性積層体の導電性高分子層はバインダ樹脂を含んでいてもよい。バインダ樹脂は、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオン以外の樹脂であり、熱可塑性樹脂、導電性高分子層の形成時に硬化した硬化性樹脂等が挙げられる。
バインダ樹脂の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
バインダ樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記導電性高分子層に含まれるバインダ樹脂は、前記フィルム基材に含まれる樹脂と同じ種類の樹脂であることが好ましい。例えば、前記フィルム基材にポリエステル樹脂が含まれる場合、前記導電性高分子層に含まれるバインダ樹脂はポリエステル樹脂を含むことが好ましい。このように、前記導電性高分子層と前記フィルム基材に同種類の樹脂が含まれると、前記導電性高分子層と前記フィルム基材との密着性を向上させることができる。
前記導電性高分子層に含まれるバインダ樹脂の含有量としては、例えば、前記導電性高分子層の総質量に対して、1質量%以上99質量%以下が好ましく、10質量%以上90質量%以下がより好ましく、20質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記基材、前記金属層及び後述する樹脂層に対する導電性高分子層の密着性を向上させることができる。上記範囲の上限値以下であると、導電性高分子層に含まれる導電性複合体の相対的な含有量を増加させることができ、導電性高分子層の帯電防止性を高められる。
[高導電化剤]
本態様の導電性積層体の導電性高分子層は、その帯電防止性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。ここで、π共役系導電性高分子、ポリアニオン、前記アミン化合物、及び前記バインダ樹脂は、高導電化剤に分類されない。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
前記高導電化剤としては、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物(ジオール)が好ましく、プロピレングリコールがより好ましい。
本態様の導電性積層体の導電性高分子層に含有される高導電化剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
本態様の導電性高分子層における高導電化剤の含有割合は、導電性複合体100質量部に対して、例えば、1質量部以上100,000質量部以下とすることができ、100質量部以上1000質量部以下が好ましい。高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
[屈折率調整剤]
本態様の導電性積層体は、金属層の可視性(骨見え)を低減するために、導電性高分子層に屈折率調整剤を含んでいてもよい。ここで、π共役系導電性高分子、ポリアニオン、前記アミン化合物、及び前記バインダ樹脂は、屈折率調整剤に分類されない。
屈折率調整剤としては、例えば、数十nm程度の粒子径を有する、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、ケイ素、スズ、ニオブ等の金属の酸化物からなる無機微粒子が挙げられる。これらの無機微粒子が含まれると、導電性高分子層の屈折率が高まる。また、フッ素系有機樹脂素材、酸化ケイ素系ゾルゲル素材、酸化ケイ素系有機樹脂素材、酸化ケイ素系やフッ素系の微多孔質素材等の公知の屈折率調整剤が本態様の導電性高分子層に含まれていてもよい。
屈折率調整剤が含まれる導電性高分子層は、特許文献1に記載されているようなアンダーコート層としての機能を有し得る。金属層の可視性を低減する観点から、導電性高分子層の屈折率は、1.61以上1.80以下に調整されることが好ましい。
本態様の導電性高分子層における屈折率調整剤の含有量は、所望の屈折率に応じて、公知のアンダーコート層における屈折率調整剤の含有量と同様に調整される。
[その他の添加剤]
本態様の導電性積層体の導電性高分子層は、その他の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、バインダ樹脂、及び高導電化剤以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
本態様の導電性積層体の導電性高分子層が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
導電性高分子層の厚さは、10nm以上100μm以下であることが好ましく、20nm以上50μm以下であることがより好ましく、30nm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であれば、充分な帯電防止性を発揮でき、上記範囲の上限値以下であれば、導電性高分子層を容易に形成できる。
前記導電性高分子層の厚さは、本態様の導電性積層体の断面において、任意の10箇所について公知方法により厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
前記導電性高分子層は、良好な帯電防止性の目安として、例えば、1×10Ω/□以上1×1010Ω/□以下の表面抵抗値を有することが好ましく、1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下の表面抵抗値を有することがより好ましく、1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下の表面抵抗値を有することが好ましい。
本態様の導電性積層体において、前記導電性高分子層の厚さは前記金属層より薄くてもよいし、厚くてもよい。(前記導電性高分子層の厚さ/前記金属層の厚さ)で表される厚さ比は、例えば、0.01以上1000以下が好ましく、0.05以上500以下がより好ましく、0.1以上100以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性高分子層の帯電防止性をより高め、導電性高分子層による前記金属層の錆びをより確実に防止することができる。
上記範囲の上限値以下であると、前記導電性高分子層の前記金属層に対する密着性が向上する。
<樹脂層>
本態様の導電性積層体において、前記導電性高分子層の前記金属層とは反対側の表面に、樹脂層が積層されていてもよい。
前記樹脂層は、バインダ樹脂を含み、導電性複合体を含まない。バインダ樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
バインダ樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なかでも、硬度が高い樹脂層を形成することが容易なアクリル樹脂が好ましい。
アクリル樹脂を形成するアクリルモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ビスフェノールA・エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等のアクリレート;テトラエチレングリコールジメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート;ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリロイルホルモリン、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらアクリルモノマーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記樹脂層に含まれるバインダ樹脂は、前記導電性高分子層に含まれるバインダ樹脂と同じ種類のバインダ樹脂であってもよいし、異なるバインダ樹脂であってもよい。前記樹脂層と前記導電性高分子層に同種類のバインダ樹脂が含まれると、前記樹脂層と前記導電性高分子層との密着性を向上させることができる。
前記樹脂層に含まれるバインダ樹脂の含有量としては、例えば、樹脂層の総質量に対して、80質量%以上100質量%以下とすることができる。
前記樹脂層は、その他の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、及びバインダ樹脂以外の化合物からなる。
具体的な添加剤の例示は、前記導電性高分子層に含まれてもよい添加剤の具体例と同じであるので、ここではその例示を省略する。
前記樹脂層が添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められる。
前記樹脂層は、前述した屈折率調整剤を含んでいてもよい。この場合、屈折率調整剤が含まれる前記樹脂層は、特許文献1に記載されているようなアンダーコート層としての機能を有し得る。金属層の可視性を低減する観点から、前記層の屈折率は、1.61以上1.80以下に調整されることが好ましい。
本態様の前記樹脂層における屈折率調整剤の含有量は、所望の屈折率に応じて、公知のアンダーコート層における屈折率調整剤の含有量と同様に調整される。
前記樹脂層の厚さは、0.05μm以上100μm以下が好ましく、0.01μm以上50μm以下がより好ましく、0.5μm以上10μm以下がさらに好ましい。
前記樹脂層の厚さが前記下限値以上であると、前記導電性高分子層を外部から充分に保護することができる。前記上限値以下であると、前記樹脂層の前記導電性高分子層に対する密着性が向上する。
前記樹脂層の厚さは、本態様の導電性積層体の断面において、任意の10箇所について公知方法により厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
本態様の導電性積層体において、前記樹脂層の厚さは前記導電性高分子層より厚くてもよいし、薄くてもよい。(前記樹脂層の厚さ/前記導電性高分子層の厚さ)で表される厚さ比は、例えば、0.1〜3000が好ましく、0.2〜2000がより好ましく、0.3〜1000がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、前記導電性高分子層を外部から充分に保護することができる。前記上限値以下であると、前記樹脂層の前記導電性高分子層に対する密着性が向上する。
<作用効果>
本発明の導電性積層体にあっては、金属層の表面に導電性高分子層が積層されており、導電性高分子層に含まれる導電性複合体の余剰なポリアニオンがエポキシ基含有化合物及びアミン化合物によって化学修飾されているので、金属層が錆びることによる金属層の抵抗上昇が防止されている。このため、使用環境下で加熱された場合にも容易には錆びない。このように、金属層がポリアニオンの影響を受けて錆びることが防止されたメカニズムとして、ポリアニオンのアニオン基に結合していた活性なプロトン(酸)が化学修飾により置換及び中和されていることが要因として考えられる。
本発明の導電性積層体にあっては、導電性高分子層が帯電防止性を有するので、導電性積層体が外部からの電場を受けた場合にも、その帯電が防止されている。また、導電性高分子層の表面に樹脂層が形成されている場合においても、樹脂層の帯電が導電性高分子層によって抑制されている。
本発明の導電性積層体にあっては、金属層が配線や電極等にパターニングされていてもよい(パターン状に形成されていてもよい)。この場合、導電性高分子層は金属層と同様にパターニングされていてもよいし、ベタ塗で一面全体に形成されていてもよい。導電性積層体の全体の帯電防止性を高める観点から、ベタ塗で一面全体に形成されていることが好ましい。この場合、ベタ塗で一面全体に形成された導電性高分子層は、パターニングされた金属層の側面を含む表面(露出面)と、その金属層が形成された基材の表面に接する。
なお、金属層に比べて導電性高分子層の表面抵抗値の方が大きいので、パターニングされた金属層の表面にベタ塗で一面全体に導電性高分子層が積層されていても、金属層のパターニングが導電性高分子層によって解除されてしまう懸念はない。
≪導電性積層体の製造方法≫
本発明の第二態様は、第一態様の導電性積層体の製造方法であって、前記金属層の表面に、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体と、有機溶剤とを含む導電性高分子含有液を塗布することにより、前記導電性高分子層を形成する積層工程を含む。ここで、前記導電性複合体を構成する前記ポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基のうち、一部は、エポキシ基含有化合物との反応により修飾されており、別の一部は、アミン化合物との反応により修飾されている。
以下、修飾された導電性複合体の説明のうち、第一態様と重複する説明は省略する。
導電性高分子含有液が含む有機溶剤は、導電性複合体を分散又は溶解することができるので、分散媒又は溶媒ということができる。本明細書において、分散と溶解とを区別せずに単に分散ということがあり、分散媒と溶媒とを区別せずに単に分散媒ということがある。
導電性高分子含有液に含まれる導電性複合体は、前述したように修飾されて疎水化されているので、分散媒として有機溶剤が使用される。
(有機溶剤)
本態様における有機溶剤は、水溶性有機溶剤でもよいし、非水溶性有機溶剤でもよいし、水溶性有機溶剤及び非水溶性有機溶剤の混合溶剤でもよい。ここで、水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤であり、非水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g未満の有機溶剤である。
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロパノール)、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、非水溶性有機溶剤の1種以上と混合した有機溶剤を使用してもよい。
導電性高分子含有液の塗工性が良好になることから、水溶性有機溶剤としてはアルコール系溶剤又はケトン系溶剤が好ましい。また、後述する非水溶性有機溶剤との相溶性に優れることから、ケトン系溶剤がより好ましい。ケトン系溶剤のなかでも、メチルエチルケトンが特に好ましい。
非水溶性有機溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤等が挙げられる。炭化水素系溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
非水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
非水溶性有機溶剤のなかでも、バインダ成分の分散性が良好になる観点から、芳香族炭化水素系溶剤が好ましく、トルエンがより好ましい。
前記導電性高分子含有液の総質量に対する有機溶剤の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上99質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。有機溶剤の含有割合が上記範囲であると、導電性複合体を容易に分散させることができ、バインダ成分を含有させる余地がある。
(導電性複合体の含有量)
導電性高分子含有液の総質量に対する、導電性複合体の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、形成する導電性高分子層の帯電防止性をより高めることができる。
上記範囲の上限値以下であると、導電性複合体の分散性を高めることができる。
(バインダ成分)
導電性高分子含有液は、バインダ成分を含んでいてもよい。バインダ成分は、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオン以外の樹脂又はその前駆体であり、熱可塑性樹脂、又は、導電性高分子層形成時に硬化する硬化性のモノマー又はオリゴマーである。熱可塑性樹脂はそのままバインダ樹脂となり、硬化性のモノマー又はオリゴマーは硬化により形成した樹脂がバインダ樹脂となる。
バインダ成分は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
バインダ成分由来のバインダ樹脂の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン等が挙げられる。
なかでも、形成する導電性高分子層の帯電防止性が低下し難く、膜強度が高くなることから、ポリエステル樹脂が好ましい。また、ポリエステルフィルム基材を使用する場合、バインダ成分がポリエステル樹脂であると、フィルム基材に対する導電性高分子層の密着性を高くすることができる。
硬化性のモノマー又はオリゴマーは、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよいし、光硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよい。ここで、オリゴマーは、質量平均分子量が1万未満の重合体のことである。なお、質量平均分子量が1万を超えるポリマーは、硬化性を有さない。
硬化性のモノマーとしては、例えば、アクリルモノマー(アクリル化合物)、エポキシモノマー、オルガノシロキサン等が挙げられる。硬化性のオリゴマーとしては、例えば、アクリルオリゴマー(アクリル化合物)、エポキシオリゴマー、シリコーンオリゴマー(硬化型シリコーン)等が挙げられる。
バインダ成分としてアクリルモノマー又はアクリルオリゴマーを用いた場合には、加熱又は光照射により容易に硬化させることができる。バインダ成分としてオルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーを用いた場合には、導電性高分子層に離型性(易剥離性)を付与することができる。
硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、さらに硬化触媒を含むことが好ましい。例えば、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、加熱によりラジカルを発生させる熱重合開始剤を含むことが好ましく、光硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、光照射によりラジカルを発生させる光重合開始剤を含むことが好ましい。また、オルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーを含む場合には、硬化用の白金触媒を含むことが好ましい。
導電性高分子含有液におけるバインダ成分の含有割合は、導電性複合体100質量部に対して、10質量部以上10000質量部以下が好ましく、100質量部以上5000質量部以下がより好ましく、500質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。バインダ成分の含有割合が前記下限値以上であれば、導電性高分子含有液を前記金属層の表面に塗工する際の製膜性と膜強度を向上させることができる。バインダ成分の含有割合が前記上限値以下であれば、導電性複合体の含有割合の低下による帯電防止性の低下を抑制することができる。
(高導電化剤)
導電性高分子含有液は、帯電防止性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、2個以上のカルボキシル基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
ただし、高導電化剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、分散媒、アミン化合物、及びバインダ成分以外の化合物である。
高導電化剤のなかでも、帯電防止性がより向上することから、ヒドロキシ基を2つ有する直鎖状化合物であるグリコールが好ましく、プロピレングリコールがより好ましい。
導電性高分子含有液に含まれる高導電化剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
高導電化剤の含有割合は導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上2500質量部以下であることがさらに好ましい。高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による帯電防止性の向上が充分になされ、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する帯電防止性の低下を防止できる。
(その他の添加剤)
導電性高分子含有液には、その他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、分散媒、アミン化合物、バインダ成分、及び高導電化剤以外のものである。
具体的な添加剤の例示は、前記導電性高分子層に含まれてもよい添加剤の具体例と同じであるので、ここではその例示を省略する。
また、導電性高分子含有液には、前述した屈折率調整剤が含まれていてもよい。
導電性高分子含有液が添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
以上で説明した導電性高分子含有液は、修飾された導電性複合体を有機溶剤に分散させ、必要に応じてバインダ成分、高導電化剤、その他の添加剤を添加し、常法により各成分を分散させることにより調製することができる。
また、本態様の導電性積層体の製造方法において、修飾した導電性複合体を得る調製工程を行ってもよい。調製工程は積層工程の前に行われる。
[調製工程]
修飾した導電性複合体を含む導電性高分子含有液は、次の方法で得ることが好ましい。
すなわち、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する未修飾の導電性複合体と水系分散媒とを含む水系分散液に、エポキシ化合物を添加した第一反応液を得て、前記ポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基の一部に、前記エポキシ化合物を反応させることにより、前記導電性複合体を析出させた後、前記第一反応液から前記導電性複合体の析出物を回収し、前記析出物に有機溶剤を添加して、前記析出物が分散された調製液を得て、前記調製液にアミン化合物を添加した第二反応液を得て、前記ポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基の別の一部に、前記アミン化合物を反応させることにより、前記導電性高分子含有液を得ることができる。
(第一反応液)
未修飾の導電性複合体を構成するπ共役系導電性高分子及びポリアニオンの説明は、第一態様の説明と同様であるので省略する。
未修飾の導電性複合体を分散させる水系分散媒は、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合液である。水溶性有機溶剤としては、前述と同様に、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水系分散媒の総質量に対する水の含有量は、50質量%超であり、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。
未修飾の導電性複合体を含む水系分散液(導電性高分子水系分散液)の総質量に対する、導電性複合体の含有量は、0.01質量%以上4質量%以下が好ましく、0.05質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、エポキシ化合物との反応により疎水化された導電性複合体の析出が良好となる。
未修飾の導電性複合体は、例えば、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合させて得られる。また、市販の導電性高分子水系分散液を使用しても構わない。
前記水系分散液に添加するエポキシ化合物の説明は、第一態様の説明と同様であるので重複する説明は省略する。水系分散液に添加するエポキシ化合物の種類は1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
水系分散液に添加するエポキシ化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、100質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、200質量部以上6000質量部以下であることがより好ましく、300質量部以上3000質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体の疎水性を充分に向上させ、析出させた導電性複合体を収率良く回収することができる。上記範囲の上限値以下であると、導電性複合体が有する余剰のアニオン基の一部を残存させ、後段でアミン化合物を充分に反応させることができる。
導電性高分子水系分散液にエポキシ化合物を添加する前、添加と同時又は添加した後には、有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。添加する水溶性有機溶剤は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
前記水系分散液にエポキシ化合物を添加して得られる第一反応液では、導電性複合体を構成するポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基の一部に、エポキシ化合物のエポキシ基が開環反応することにより、アニオン基の一部の負電荷が消失する。これにより、導電性複合体が疎水化される。この疎水化を促進するために、導電性高分子水系分散液を加熱してもよい。加熱温度としては、例えば40〜80℃が挙げられる。
疎水化された導電性複合体は、水系分散媒中で分散できなくなり、析出して析出物となる。
第一反応液中に析出した導電性複合体を回収する方法は特に制限されず、例えば、濾過、デカンテーション、遠心分離、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等が挙げられる。
なかでも、第一反応液に含まれる疎水化された導電性複合体以外の成分と、疎水化された導電性複合体とを分離することが容易であることから、濾過又はデカンテーションが好ましい。ここで、濾過とは、第一反応液を通過させたフィルターに、導電性複合体の析出物を捕捉する操作である。また、デカンテーションとは、析出した導電性複合体を沈殿させ、上澄み液を除去する操作である。
濾過で分取する場合にはフィルターの目詰まりに対処する必要があるので、デカンテーションの方がより容易に分取できる。また、フィルター上で導電性複合体の固形物が濾過圧により圧縮されるので、濾過で分取した導電性複合体は、デカンテーションで分取した場合よりも固い状態となり易い。デカンテーションで得た導電性複合体は比較的柔らかいパウダー状態で得られるので、後で分散媒に容易に分散させることができる。従って、デカンテーションにより導電性複合体を回収することがより好ましい。
ろ過に使用するフィルターとしては、化学分析分野で用いられるろ紙が好ましい。このろ紙としては、例えば、アドバンテック社製ろ紙、保留粒子径7μm等が挙げられる。ここで、ろ紙の保留粒子径は目の粗さの目安であり、JIS P 3801〔ろ紙(化学分析用)〕で規定された硫酸バリウムなどを自然ろ過したときの漏えい粒子径により求められる。ろ紙の保留粒子径は、例えば2μm以上10μm以下とすることができる。この保留粒子径は、余剰のポリアニオン等を透過させて容易に分離できることから、5μm以上10μm以下であることが好ましい。
(第二反応液)
前記析出物に有機溶剤を添加し、前記析出物が分散された調製液を得て、前記調製液にアミン化合物を添加した第二反応液を得る。
前記析出物に添加する有機溶剤としては、第二態様で例示した、導電性高分子含有液を構成する有機溶剤が挙げられる。なかでも、前記析出物の分散性が良好である観点から、ケトン系溶剤が好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。
前記析出物に有機溶剤を添加して得た調製液について、高圧ホモジナイザー等を用いて、高い剪断力を付与しながら攪拌し、疎水化した導電性複合体を充分に分散させることが好ましい。
前記調製液の総質量に対する、疎水化された導電性複合体の含有量は、分散性を高めてアミン化合物との反応性を高める観点から、例えば、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.2質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上5.0質量%以下がさらに好ましい。
前記調製液に添加するアミン化合物の説明は、第一態様の説明と同様であるので重複する説明は省略する。調製液に添加するアミン化合物の種類は1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
前記調製液に添加するアミン化合物の添加量は、そのアミン化合物がイミダゾール系アミン(例えばイミダゾール)である場合、導電性複合体100質量部に対して、10質量部以上1000質量部以下が好ましく、20質量部以上200質量部以下がより好ましく、50質量部以上150質量部以下がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体にアミン化合物を充分に反応させることができる。上記範囲の上限値以下であると、目的の導電性高分子含有液中に過剰なアミン化合物が残存することを防止できる。
前記調製液に添加するアミン化合物の添加量は、そのアミン化合物が非イミダゾール系アミン(例えば3級アミン)である場合、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下が好ましく、5質量部以上50質量部以下がより好ましく、10質量部以上30質量部以下がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、導電性複合体にアミン化合物を充分に反応させることができる。上記範囲の上限値以下であると、目的の導電性高分子含有液中に過剰なアミン化合物が残存することを防止できる。
前記調製液にアミン化合物を添加して得られる第二反応液では、導電性複合体を構成するポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基のうち、前記エポキシ化合物と反応せずに残ったアニオン基の少なくとも一部に、アミン化合物が反応して結合する。この反応は、室温において進行し、数秒で完了する。
以上の方法により、第二反応液における反応が完了し、目的の導電性高分子含有液が得られる。
導電性高分子含有液には必要に応じて、前述したバインダ成分、高導電化剤、その他の添加剤を常法により添加してもよい。
[積層工程]
前記導電性高分子含有液を塗布する前記金属層は、前述した基材の表面に予め形成されていることが好ましい。
前記導電性高分子含有液を前記金属層の表面に塗布する方法は特に制限されず、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
前記金属層の表面へ塗布する導電性高分子含有液の量は、形成する導電性高分子層の厚さに応じて適宜設定される。良好な帯電防止性を得る観点から、固形分として、0.1g/m以上10.0g/m以下の範囲であることが好ましい。
前記金属層の表面へ塗布された導電性高分子含有液からなる塗膜を乾燥する方法としては、例えば、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定され、例えば、50℃以上150℃以下に設定できる。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記温度で乾燥する場合の乾燥時間としては、例えば、30秒以上3分以下とすることができる。
前記塗膜が活性エネルギー線硬化性のバインダ成分を含有する場合には、乾燥後の塗膜に活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射工程をさらに有してもよい。活性エネルギー線照射工程を有すると、導電性高分子層の形成速度を速くでき、導電性積層体の生産性が向上する。
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線等が挙げられる。紫外線の光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源を用いることができる。
紫外線照射における照度は、導電性高分子層を充分に硬化させる観点から、100mW/cm以上が好ましい。また、導電性高分子層を充分に硬化させる観点から、積算光量は50mJ/cm以上が好ましい。なお、本明細書における照度、積算光量は、トプコン社製UVR−T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD−T36、測定波長範囲;300nm以上390nm以下、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
[樹脂層の積層]
前記導電性高分子層の表面に前記樹脂層を形成する方法は特に制限されず、常法により、前述したバインダ樹脂やそのモノマー成分等を含む樹脂組成物を塗工して樹脂層を形成することができる。
また、前記樹脂組成物には、前述した屈折率調整剤が含まれていてもよい。
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、得られたポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000mlの溶媒を限外ろ過法により除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
(製造例2)導電性高分子水系分散媒の製造
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
次いで、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を5回繰り返し、濃度1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)が水系分散媒に分散された導電性高分子水系分散媒を得た。
(製造例3)疎水化された導電性複合体を含む導電性高分子含有液の製造
製造例2で得たPEDOT−PSSの水系分散液100gに、メタノール300g及びエポキシ化合物(共栄社化学株式会社製エポライトM−1230、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル)25gを加え、60℃で4時間加熱攪拌した。このとき、PEDOT−PSSにおいてPSSのPEDOTと結合していない余剰のスルホン酸基の一部にエポキシ化合物のエポキシ基が反応して結合した。この結果、PEDOT−PSSの水分散性が低下し、PEDOT−PSSとエポキシ化合物の反応生成物を含む導電性複合体が析出した。この析出物を濾過により回収し、1.575gの導電性複合体を得た。
次に、315gのメチルエチルケトンに上記の導電性複合体1.575gを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、調製液を得た。
(製造例4)
製造例2で得たPEDOT−PSSの水系分散液100gに、メタノール300g及びブチレンオキシド25gを加え、60℃で4時間加熱攪拌した。このとき、PEDOT−PSSにおいてPSSのPEDOTと結合していない余剰のスルホン酸基の一部にエポキシ化合物のエポキシ基が反応して結合した。この結果、PEDOT−PSSの水分散性が低下し、PEDOT−PSSとエポキシ化合物の反応生成物を含む導電性複合体が析出した。この析出物を濾過により回収し、1.3gの導電性複合体を得た。
次に、315gのメチルエチルケトンに上記の導電性複合体1.3gを添加し、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、調製液を得た。
(実施例1)
75mm×75mmのガラス上にITOをスパッタしたITOガラス(ITO層の厚さ:50nm)を準備し、ITO層の両横の末端5mmの部分にセロテープ(登録商標)でマスクした。
次に、製造例3の調製液100gにイミダゾール0.3gを添加し、さらに非晶性ポリエステル樹脂(バイロン240、東洋紡社製、固形分30%、トルエン溶液)10gを添加して塗料を得た。
マスクしたITOガラス上に#4のバーコーターを用いて前記塗料を塗布し、100℃で1分間乾燥し、ITO層上に導電性高分子層を形成した。
以上の方法により、ガラス/ITO層/導電性高分子層の順で積層された導電性積層体を得た。
(実施例2)
実施例1においてイミダゾールを0.6gにしたこと以外は同様にして導電性積層体を作製した。
(実施例3)
実施例1においてイミダゾールを0.15gにしたこと以外は同様にして導電性積層体を作製した。
(実施例4)
実施例1においてイミダゾール0.3gをトリオクチルアミン0.05gにしたこと以外は同様にして導電性積層体を作製した。
(実施例5)
実施例1においてイミダゾール0.3gをトリブチルアミン0.026gにしたこと以外は同様にして導電性積層体を作製した。
(実施例6)
実施例1において製造例3の調製液100gを製造例4の調製液100gにしたこと以外は同様にして導電性積層体を作製した。
(実施例7)
実施例1においてITOガラスを75mm×75mmのPETフィルム上にITOをスパッタしたITOフィルム(ITO層の厚さ:20nm)にしたこと以外は同様にして導電性積層体を作製した。
(実施例8)
75mm×75mmのガラス上にITOをスパッタしたITOガラスを準備し、ITO層の両横の末端5mmの部分にセロテープでマスクした。
次に、製造例3の調製液100gにイミダゾール0.3g添加し、さらに非晶性ポリエステル樹脂(バイロン240、東洋紡社製、固形分30%、トルエン溶液)10gを添加して塗料(A)を得た。また、ペンタエリスリトールトリアクリレート50gとイソプロパノール50gとイルガキュア184(BASF社製、光重合開始剤)2gを添加して塗料(B)を得た。
マスクしたITOガラス上に#4のバーコーターを用いて塗料(A)を塗布し、100℃で1分間乾燥し、ITO層上に導電性高分子層を形成した。続いて、導電性高分子層上に#4のバーコーターを用いて塗料(B)を塗布し、400mJの紫外線照射を行い、ハードコート層を形成した。
以上の方法により、ガラス/ITO層/導電性高分子層/ハードコート層の順で積層された導電性積層体を得た。
(比較例1)
実施例1においてイミダゾールを添加しなかったこと以外は同様にして導電性積層体を得た。
(比較例2)
実施例1において製造例3の調製液100gをメチルエチルケトン100gにしたこと以外は同様にして導電性積層体を得た。
<評価>
(表面抵抗値の測定)
各例で作製した導電性積層体の導電性高分子層の表面抵抗値を、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製、ハイレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。その測定結果を表1に示す。なお、表中の「Ω/□」はオームパースクエアの意味である。また、「1.0E+08」は、「1.0×10」を表す。
なお、実施例7の導電性積層体の表面抵抗は、ハードコート層の上に抵抗率計のプローブを載置して測定した。
(加熱試験)
各例で作製した導電性積層体を加熱することにより、ITO層が錆びる環境にあればそれを加速させる加熱試験を次のように行った。
各例で作製した導電性積層体の両端部のマスクを剥がし、ITO層(接点)を露出させ、デジタルマルチメータ(CUTTOM社製、CDM-17D)を用い、その端子を接点に接触させ、初期抵抗値Rを測定した。続いて、同じ導電性積層体を40℃で240時間加熱した後、加熱後抵抗値Rを測定した。加熱前後の抵抗値の上昇率をR/Rにより算出した。これらの結果を表1に示す。
Figure 2021074951
表1の結果から、本発明にかかる実施例1〜8にあっては、ITO層の表面に積層された導電性高分子層に含まれる導電性複合体が、エポキシ化合物とアミン化合物によって修飾されている。これにより、ITO層の錆びが抑制され、加熱試験後の抵抗上昇が抑制されていることが明らかである。
一方、比較例1では、導電性複合体がエポキシ化合物のみによって修飾されているので、ITO層の錆びが充分に抑制されておらず、加熱試験後の抵抗が大きく上昇した。
また、比較例2では、ITO層に積層された樹脂層は導電性複合体を含まないため表面抵抗値が高く、帯電防止性を有しない。

Claims (14)

  1. 金属層と、前記金属層の表面に積層された導電性高分子層とを備えた導電性積層体であって、
    前記導電性高分子層には、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が含まれ、
    前記ポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基のうち、一部は、エポキシ基含有化合物との反応により修飾されており、別の一部は、アミン化合物との反応により修飾されている、導電性積層体。
  2. 前記金属層の前記導電性高分子層とは反対側の表面に、ガラス基材又はフィルム基材が積層されている、請求項1に記載の導電性積層体。
  3. 前記導電性高分子層の前記金属層とは反対側の表面に、樹脂層が積層されている、請求項1又は2に記載の導電性積層体。
  4. 前記樹脂層には、アクリル樹脂が含まれている、請求項3に記載の導電性積層体。
  5. 前記金属層が、ITOによって形成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載の導電性積層体。
  6. 前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1〜5の何れか一項に記載の導電性積層体。
  7. 前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項1〜6の何れか一項に記載の導電性積層体。
  8. 請求項1〜7の何れか一項に記載の導電性積層体の製造方法であって、
    前記金属層の表面に、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体と、有機溶剤とを含む導電性高分子含有液を塗布することにより、前記導電性高分子層を形成する積層工程を含み、
    前記ポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基のうち、一部は、エポキシ基含有化合物との反応により修飾されており、別の一部は、アミン化合物との反応により修飾されている、導電性積層体の製造方法。
  9. 前記有機溶剤がメチルエチルケトンを含有する、請求項8に記載の導電性積層体の製造方法。
  10. 前記アミン化合物が複素環式芳香族アミン又は3級アミンである、請求項8又は9に記載の導電性積層体の製造方法。
  11. 前記アミン化合物がイミダゾール、トリブチルアミン、トリオクチルアミンである、請求項8〜10の何れか一項に記載の導電性積層体の製造方法。
  12. 前記導電性高分子含有液が、バインダ成分をさらに含有する、請求項8〜11の何れか一項に記載の導電性積層体の製造方法。
  13. 前記バインダ成分がポリエステル樹脂である、請求項12に記載の導電性積層体の製造方法。
  14. 前記導電性高分子含有液を調製する調製工程を含み、
    前記調製工程において、
    π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体と水系分散媒とを含む水系分散液に、エポキシ基含有化合物を添加した第一反応液を得て、
    前記ポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基の一部に、前記エポキシ基含有化合物を反応させることにより、前記導電性複合体を析出させた後、
    前記第一反応液から前記導電性複合体の析出物を回収し、
    前記析出物に有機溶剤を添加して、前記析出物が分散された調製液を得て、
    前記調製液にアミン化合物を添加した第二反応液を得て、
    前記ポリアニオンのドープに関与しない余剰のアニオン基の別の一部に、前記アミン化合物を反応させることにより、前記導電性高分子含有液を得る、請求項8〜13の何れか一項に記載の導電性積層体の製造方法。
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