本発明の実施形態について第1から第3実施形態を例に挙げ、各図面を参照しながら以下に説明する。
1.第1実施形態
まず第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る搬送システムXの概略構成に関するブロック図である。また図2は、搬送システムXが適用される倉庫4内の上方視点による様子を模式的に示している。
これらの図に示すように、搬送システムXは、管理装置1および複数個の移動体2を有している。本実施形態における搬送システムXは一例として、ネットショッピングの顧客(買い物客)から商品のオーダーを受付けて、その商品を倉庫4内に設置された各保管棚5から取り揃えるために利用される。
管理装置1は、倉庫4内に複数個が配された各移動体2との無線通信が可能であり、オーダー受付部11、オーダー管理部12、予定移動経路決定部13、および商品管理部14を有する。管理装置1の具体的形態は特に限定されず、装置の全体が倉庫4内に設置されても良く、一部が倉庫4の外部に設置されていても良い。
オーダー受付部11は、ネットショッピングに利用される通信網(インターネット等)に接続されており、各顧客からの商品のオーダーを24時間体制で受付ける(図6のステップS11を参照)。商品のオーダーの情報には、顧客が購入を希望する一または複数の商品の商品番号およびその購入数の他、その顧客を識別可能とする顧客番号等が含まれる。各顧客の氏名や住所等の情報は予め顧客から提供されており、管理装置1は、当該顧客それぞれに対して顧客番号を付与するとともに、顧客から提供された上記情報を対応する顧客番号に紐付けて記録している。顧客が自身の顧客番号を入力してネットショッピングのサイトにログインし、商品を選んだ上でオーダーの操作を行うと、顧客番号とともにオーダーされた商品の情報がオーダー受付部11に送られる。
オーダー管理部12は、顧客から受付けた商品のオーダーを管理する(図6のステップS12、および図7を参照)。予定移動経路決定部13は、商品のオーダー内容に基づいて、取り揃えるべき商品が保管された各保管棚5を経由するように、移動体2が移動する予定となる経路(予定移動経路)を決定する(図6のステップS13を参照)。予定移動経路決定部13が予定移動経路を決定するための具体的手法については、改めて詳細に説明する。
商品管理部14は、倉庫4内に保管される各商品の在庫や保管場所等を管理する。図3は、商品管理部14が管理する内容の具体例を示している。本図に示す例では、商品管理部14は商品の種類ごとに、「商品番号」、「商品名称」、「対応保管棚」、「在庫数」、および「在庫補充の要否」等の情報を保有する。なお「商品番号」は対応する商品を識別する番号であり、「対応保管棚」はその商品が保管された保管棚5を特定する情報(図2に示すA1〜J8)を示す。また、「在庫補充の要否」は、在庫数が所定の基準値を下回ったときに「要」となり、そうでないときには「否」となる。管理者はこの情報を参考にして、在庫が少なくなった商品を補充して品切れを防ぐことが出来る。なお、商品の補充は対応する保管棚5に対して行われ、商品が補充されたり売れたりしたことに応じて、対応する商品の「在庫数」の値は増減される。
移動体2は、報知部21、操作部22、カメラ部23、および駆動部24を有しており、倉庫4内における複数の保管棚5それぞれを結ぶ通路で移動可能である。また移動体2は、複数の商品を収容することが可能であり、収容済みの商品を所望の位置まで搬送することが出来る。
本実施形態の移動体2は、無人での飛行を可能とした飛行体となっており、空中を移動することが出来る。図4は、移動体2の外観を模式的に示している。このように本実施形態の例では、移動体2はいわゆるドローンとして形成されており、4個のプロペラ部25と、その下に設けられた本体部26を有する。なおドローンに関する一般的事項については公知であるため、ここではその詳細な説明を省略する。本体部26の一部は箱状に形成されており、その内部に複数の商品を収容することが可能である。搬送中に商品が落下しないよう、当該箱状の開口部には開閉自在とした扉部26aが設けられている。
報知部21は、各種情報を表示するタッチパネル型のディスプレイ21aを有しており、作業者等に対して各種情報を報知する(図6のステップS17、S20を参照)。なお報知部21は、ディスプレイ21aの代わりに、或いはディスプレイ21aとともにスピーカを有するようにし、各種情報が音声情報として報知されるようにしても良い。
操作部22は、作業者等による操作が可能となっており、当該作業者等からの各種の報告を受付ける役割を果たす(図6のステップS18、S21を参照)。なお本実施形態では、上述したタッチパネル型のディスプレイ21が操作部22として機能する。これにより、本実施形態のように移動体2が飛行体であっても容易に操作が可能である。カメラ部23は、移動体2の側面に設けた撮影レンズ23aを有し、周辺の状況を撮影して撮影情報(映像)を得ることが可能である。得られた撮影情報は、自機の動作制御等に利用される。
また移動体2は、室内でも使用可能なGPS(Global Positioning System)を備えていることにより、自機の位置を把握することができる。更に移動体2は、機械学習を行うようになっており、カメラ部23の映像に基づいて周囲の物体(柱、壁、他の移動体、人物、棚の絵、棚の中身など)のリアルタイムな物体認識が可能である。この物体認識の実現には、例えばYOLO(You Only Look Once)等のアルゴリズムが利用され得る。なお「機械学習」は、与えられた情報に基づいて反復的に学習を行うことにより、法則やルールを自律的に見つけ出す手法である。また上記の機械学習においては、深層学習(ディープラーニング)を採用して、多次元のデータ構造を円滑に処理可能としてもよい。この「深層学習」は、多層構造のニューラルネットワーク(人間の脳神経系の仕組みを模した情報処理モデル)を用いた機械学習である。
駆動部24は、倉庫4内を移動するために必要な部位を駆動する役割を果たす。本実施形態の場合、駆動部24は4個のプロペラ部25それぞれを独立して回転させることができ、移動体2の水平方向への移動に加え、その場での回転や上下動も可能とする。
なお、第1実施形態における移動体2は、比較的低い位置(保管棚5の高さと同等またはそれ以下)を飛行し、保管棚5を飛び越えないものとする。そのため第1実施形態での移動体2が通ることのできる通路は、倉庫4内の空間のうち保管棚5等の障害物が存在しない領域となる。一方、移動体2が保管棚5を飛び越えて移動可能である実施形態については、第2実施形態として改めて説明する。
また図2に示すように、倉庫4内には複数個(図2の例では6個)の移動体2の他、複数個の保管棚5、および収集スペース6が設けられている。図2に示す例では、「A1」〜「J8」で示す合計70個の保管棚5が設けられ、移動開始前(予定移動経路の情報を受ける前)の各移動体2が待機する待機スペース9および収集スペース6は、倉庫4内の端寄りの領域に配されている。このような倉庫4内の配置状態の情報は、管理装置1が予め保有している。
保管棚5は、バケット(商品を入れる容器)とともに商品を分類して保管することが可能な保管手段として機能し、保管棚5ごとに別の種類の商品が保管される。なお保管棚5として、商品を分類して保管することが可能な他の保管手段が採用されても構わない。また、同じ保管棚5に複数種の商品が保管されていても構わない。例えば、「A1」の保管棚5には10種類の商品が保管され、「A2」の保管棚5には別の10種類の商品が保管され、「A3」の保管棚5には更に別の10種類の商品が保管されるといった形態も採用可能である。各保管棚5は、図2に白抜き矢印で示す位置にて商品の出し入れが可能である。例えば「A1」の保管棚5については、当該保管棚5に面した通路側の位置(図2で見た場合、「A1」の保管棚5の左側の位置)において商品の出し入れが可能である。
図5は、倉庫4内における保管棚5周辺の様子を例示している。保管棚5には複数のバケット7が設けられており、各バケット7に商品8(移動体2の搬送対象)が収められている。収容作業を行う作業者は、バケット7内から商品8を取り出して移動体2へ収容することが出来る。その後、移動体2が移動することに伴って商品8が搬送されることになる。
また倉庫4内には、図2に破線枠で示す3個の担当エリア7a〜7cが設定されている。これらの担当エリアそれぞれは、同じ作業者が収容作業(保管棚5から商品を取り出して移動体2へ収容する作業)を担当するエリアである。担当エリア7aにはA1〜D7の28個の保管棚5(以下、これらのグループを「グループA」とする)が属し、担当エリア7bにはE1〜H6の26個の保管棚5(以下、これらのグループを「グループB」とする)が属し、担当エリア7cにはI1〜J8の16個の保管棚5(以下、これらのグループを「グループC」とする)が属している。このように複数の保管棚5はグループに分類されており、これらのグループの情報(各保管棚5がどのグループに属するかの情報等)は、管理装置1が予め保有している。
収集スペース6は、移動体2によって搬送された各商品を収集するスペースである。移動体2によって収集スペース6に搬送された各商品は、移動体2ごとに(換言すれば、商品のオーダーごとに)梱包され、顧客へ発送されることになる。なお倉庫4内には、収集スペース6において取出作業(搬送された各商品を移動体2から取出して、梱包可能な状態とする作業)を行う作業者が配置されている。
次に、搬送システムXの主な動作の流れについて、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
管理装置1は顧客からのアクセスを常時待機しており、顧客ごとの商品のオーダーを受付ける(ステップS11)。商品のオーダーを受付けると、管理装置1は、そのオーダーを新たに管理対象とする(ステップS12)。当該処理は1件分のオーダーを受付けるごとに実行されても良く、その他、例えば一定時間ごと或いは所定数のオーダーを受けるごとに実行されても良い。
図7は、オーダーの管理状況の一例を示している。本図に示すように管理装置1は、オーダー1件ごとに「オーダー管理番号」を付与し、これに対応する「顧客番号」、「オーダー受付日時」(オーダーを受付けた日時)、「発送済み日時」(オーダーされた商品の発送が完了した日時)、および「オーダー商品・対応保管棚」の情報を管理する。ここで「オーダー商品・対応保管棚」は、オーダーされた商品の種類ごとの商品番号、オーダーされた個数、および対応する保管棚5の情報を示す。図7に示す例によれば、オーダー管理番号No.00001のオーダーは、商品番号が「Q0245」の商品(B3の保管棚5に保管されている)3個と、商品番号が「Q0313」の商品(B7の保管棚5に保管されている)1個の注文ということになる。なお、商品ごとの商品番号や対応保管棚の情報は、先述した通り、商品管理部14によって管理されている(図3を参照)。このように管理装置1は、オーダーのあった各商品と保管棚5を対応付けるようにする。
更に管理装置1は、上述したオーダーの管理内容(特に、オーダー商品・対応保管棚の情報)に基づいて、移動体2の予定移動経路を決定する(ステップS13)。1台の移動体2に対する予定移動経路は、移動体2の待機スペース9から収集スペース6に至るまで、1件分のオーダーに含まれる各商品に対応したそれぞれの保管棚5(以下、「特定保管棚」と称することがある)を経由して、倉庫4内の通路を移動するように決定される。
決定されたオーダー1件分の予定移動経路の情報は、待機している移動体2のうちの何れか1台に伝送され、これを受けてその移動体2は、予定移動経路に従った移動を開始する(ステップS14)。なお本実施形態では、予定移動経路の情報に基づいて移動体2が自立的に移動するが、予定移動経路の情報に基づいて管理装置1が移動体2を遠隔操作するようにしても良い。
移動を開始した移動体2は、特定保管棚および収集スペース6の何れかに到着したかを監視しながら、予定移動経路に従って移動し続ける。何れかの特定保管棚に到着すると(ステップS15のYes)、移動体2は移動を停止し、その場で収容作業を担当する作業者に対して収容作業指示を報知する(ステップS17)。この収容作業指示には、移動体2に収容すべき商品の名称(或いは商品番号)と個数の情報が含まれる。また移動体2は、その場で作業者からの収容作業の完了報告を待機する(ステップS18)。
このとき移動体2は、収容作業を担当する作業者の位置を検知して、タッチパネル型のディスプレイ21a(操作手段)を当該作業者へ向けるようにその場で回転する。これにより、作業者による収容作業の完了報告の操作が行い易くなっている。収容作業の完了報告の操作がなされると(ステップS18のYes)、移動体2は、予定移動経路に従った移動を再開する(ステップS19)。
一方、収集スペース6に到着すると(ステップS16のYes)、移動体2は移動を停止し、取出作業を担当する作業者に対して取出作業指示を報知する(ステップS20)。また移動体2は、その場で作業者からの取出作業の完了報告を待機する(ステップS21)。このとき移動体2は、取出作業を担当する作業者の位置を検知して、タッチパネル型のディスプレイ21aを当該作業者へ向けるようにその場で回転する。収容作業の完了報告の操作がなされると(ステップS21のYes)、移動体2は、元の待機位置に移動し待機状態に戻る。
上述した一連の処理(ステップS11〜S22)は商品のオーダーごとに実施され、これにより、オーダーごとに効率良く商品を取り揃えることが可能である。ここで上記一連の処理をより理解容易とするため、一例としてH1、F1、B3、B7、I6、およびJ2の保管棚5が特定保管棚となった場合の具体的事例について説明する。
この場合、H1、F1、B3、B7、I6、およびJ2の保管棚5を経由して移動体2が移動するように、例えば図8に矢印で示す通りの予定移動経路が決定される(ステップS13)。この予定移動経路の情報を受けた移動体2は、基本的には、待機スペース9からH1、F1、B3、B7、I6、およびJ2の特定保管棚の位置(図8に丸印で示す位置)を順に経由して収集スペース6に到着することになる。但し、作業者や移動体2の状態等に応じて予定移動経路は適宜変更される場合があり、この場合には、変更後の予定移動経路に従って移動体2が移動する。予定移動経路の決定および変更の手法については、改めて詳細に説明する。
なお、特定保管棚の位置では、収容作業の完了報告があるまで移動体2が停止するため(ステップS17〜S18)、収容作業を容易に行うことが可能である。この間に作業者は、収容作業指示に従って収容作業を行い、当該作業を終えたら完了報告の操作を行うことになる。また、収集スペース6の位置では、取出作業の完了報告があるまで移動体2が停止するため(ステップS20〜S21)、取出作業を容易に行うことが可能である。この間に作業者は、取出作業指示に従って取出作業を行い、当該作業を終えたら完了報告の操作を行うことになる。移動体2から取出された商品は梱包され、オーダー元の顧客に発送される。発送が完了すると、現在の日時がそのオーダーについての発送済み日時(図7を参照)として記録され、当該オーダーに関する処理は全て終了する。
また管理装置1は、複数のオーダーに迅速に対応できるよう、複数の移動体2を同時期に移動させ、複数のオーダーに対応する商品搬送が並行して行われるように予定移動経路を決定する。この際に管理装置1は、移動体2同士の進路の重複を許容して予定移動経路を決定する処理を行う。また、複数の移動体2それぞれは、当該重複時の他の移動体2との衝突を回避して移動するようになっている。
図9は、2台の移動体2が同時期に移動するように決定された予定移動経路の一例を示し、一方の移動体2に対する予定移動経路が実線矢印で、他方の移動体2に対する予定移動経路が破線矢印で、それぞれ示されている。このように予定移動経路が決定された場合、図9に示すW1〜W4の領域において予定移動経路が重なっており、当該予定移動経路に従って2台の移動体2が同時期に移動すると、各移動体2の進路が重複する可能性がある。そのため、仮に移動体2同士の衝突を回避する対策が行われていなければ、当該進路の重複時に移動体2同士が衝突するという不具合が発生し得る。
この点に関して本実施形態では、複数の移動体2それぞれは、このような進路の重複時における他の移動体2との衝突を回避して移動するため、当該不具合の発生を未然に防ぐことが出来る。当該衝突を回避するため、移動中の移動体2は、自機のカメラ部23により得られる撮影情報に基づいて他の移動体2との衝突の虞があると判断した場合、予定移動経路に従いながらも衝突が回避されるように(他の移動体2とすれ違ったり、並進したりするように)進路を変更する。なお当該衝突を回避するための他の手法として、同時期に移動する各移動体2の予定移動経路を、通路の幅方向または高さ方向に予めずらしておく手法が採用されても良い。特に本実施形態に係る移動体2は飛行体であるため、互いに衝突しないように各移動体2が飛行する高さをずらしておくことが可能である。
なお移動体2は、自機のカメラ部23により得られる撮影情報に基づいて、自機の速度および他の移動体2との許容近接距離(他の移動体2との距離として許容される範囲の最小値)が変更可能とされていても良い。例えば、撮影情報から衝突の危険性が比較的高いと判断される場合、移動体2は自機の速度を下げるとともに許容近接距離を大きくすることによって、衝突をより確実に回避することが可能となる。また移動体2は、自機のカメラ部23により得られる撮影情報に基づいて何らかの障害物(例えば、通路上に立っている作業者)を検知したときに、当該障害物を回避して予定移動経路を移動するようにしても良い。
以上のように本実施形態では、複数台の移動体2を用いて商品搬送を並行して行うことができるため、1台の移動体2だけで商品搬送を行う場合に比べて搬送効率が大幅に向上する。特に、本実施形態のように収容作業を行う作業者が複数人配置された状況では、作業者が暇になる時間(収容作業の仕事が無い時間)を極力排除し、人件費が無駄に嵩むといった事態を防ぐことが出来る。また、移動体2同士の衝突も回避されるため、商品搬送を円滑に行うことが可能である。
また管理装置1は、予定移動経路を決定する際の基本方針として、作業者が収容作業を行わない時間を極力減らすことを最優先としつつ、商品の搬送時間を短くして出荷スピードを向上させるようにする。すなわち管理装置は、特定保管棚(オーダーに含まれる各商品に対応する保管棚5)のうち、現時点で収容作業を行っていない作業者(フリーの作業者)が担当することになる保管棚5(以下、「第1保管棚」と称することがある)と、移動体2の現在位置からの移動時間が最も短くなる保管棚5(以下、「第2保管棚」と称することがある)を検出し、経由の順番において第1保管棚と第2保管棚を優先する。
より具体的に説明すると、特定保管棚の個数がn個である場合、まず第1保管棚(P1とする)を優先し、その次にP1の保管棚を現在位置とした場合の第2保管棚(P2とする)を優先し、その次にP2の保管棚を現在位置とした場合の第2保管棚(P3とする)を優先し、その次にP3の保管棚を現在位置とした場合の第2保管棚(P4とする)を優先し、・・・、その次にPn−1の保管棚を現在位置とした場合の第2保管棚(Pnとする)を優先する、というようにして、特定保管棚の経由順が決定される。なお、第1保管棚が複数存在する状況下では、これらの第1保管棚の中で、移動体2の現在位置からの移動時間が短くなる方から順に優先度が高く設定される。
更に管理装置1は、最初の予定移動経路を決定して移動体2がこれに基づいて移動を開始した後であっても、刻々と変化する状況に応じて予定移動経路を変更し、当該経路を最適化する。例えば、当初は図10に実線矢印で示すように予定移動経路が決定されていたとしても、移動体2が図10にαで示す位置に到達した時点で担当エリア7c内の特定保管棚(「J2」の保管棚5)が第1保管棚になっていた場合、その時点で担当エリア7a内に第1保管棚が無ければ、図10に点線矢印で示すように、移動体2の次の移動先は「J2」の保管棚5となる。このような予定移動経路の変更に関する動作は、例えば、移動体2が何れかの特定保管棚へ到着する度に行われるようにしてもよい。
なお管理装置1は、作業者の担当状況(各担当エリアで何人の作業者が担当しているか)および各移動体2の状態(待機スペース9での待機状態、移動中の状態、及び作業完了報告待ちの状態の何れであるか)を常時把握しており、これらの情報に基づいてどの担当エリアにフリーの作業者が居るかを把握し、上記の第1保管棚を検出することが可能である。例えば、二人の作業者が担当する担当エリアにおいて、一台のみの移動体2が作業完了報告待ちの状態である状況下では、一人の作業者は収容作業中であるが、もう一人の作業者はフリーであることが分かる。更に管理装置1は、ある特定保管棚において所定数(例えば3台)以上の移動体2が作業完了報告待ちとなっている場合、その特定保管棚の優先度を下げるようにしてもよい。これにより移動体2の待ち時間を極力抑え、移動体2をより効率良く利用することが可能となる。
また移動体2は、次の移動先である特定保管棚において他の移動体2が所定個数(例えば2台)待機している場合、当該次の特定保管棚に対応した退避スペースへ移動して待機する。この退避スペースは、対応する保管棚5から極力近い位置において、他の移動体2の移動を妨げないように設けられたスペースである。一例として「B1」の保管棚5に対応する退避スペースは、図10にβで示すように、「B1」の保管棚5の近傍であり、かつ、倉庫4の壁際に設けたスペースに設定される。更に移動体2は、上記の退避スペースでの待機中に第1保管棚が検出された場合、当該第1保管棚へ移動するようになっている。これにより、移動体2の待ち時間を極力抑え、移動体2をより効率良く利用することが可能となる。
また管理装置1は、担当エリア7a〜7cの作業者それぞれの移動量を検出しておき、当該検出の結果に基づいて予定移動経路の決定或いは変更を行うようにしても良い。各作業者の移動量は、GPS等を利用して検出することが可能である。当該検出される移動量が出来るだけ小さくなるように予定移動経路の決定或いは変更を行うことにより、作業者の移動量を極力減らし、出来るだけ立ち止まった状態で収容作業に専念できるようにすることが可能となる。
また管理装置1は、収容作業指示の報知時(図6のステップS17を参照)から収容作業の完了報告(図6のステップS18を参照)の受付時までの時間(以下、「差分時間」と称する)を計測し、先述したグループA〜Cの何れかのグループでの差分時間が所定の基準値を超えた場合に、当該グループに属する保管棚5を少なくするようにしても良い。何れかのグループの差分時間が当該基準値を超えた場合、そのグループを担当する作業者には余裕が無いと推察される。そこでこの場合には、当該グループに属する保管棚5を少なくすることにより、このグループを担当する作業者に余裕を持たせ、作業を円滑に遂行させることが可能となる。当該グループから除かれた保管棚5は、別のグループに属させるようにしても良く、新たに設けたグループ(新たな作業者が担当するグループ)に属させるようにしても良い。
2.第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。なお第2実施形態は、移動体として天井搬送車が採用された点およびこれに関する点を除き、基本的に第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる点の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する点については説明を省略することがある。
本実施形態に係る移動体2aは、倉庫4の天井面に沿って移動する天井搬送車となっている。図11は、倉庫4の天井に設けられたレール30に沿って複数の移動体2aが移動する様子を、下方視点により模式的に示している。本図に示すように倉庫4の天井面には、平面方向(水平方向)へ拡がるようにレール30がメッシュ状(格子状)に配置されており、移動体2aはレール30に沿って平面方向へ自在に移動することが可能である。
例えば図11にδで示す移動体2aは、現在位置から本図に点線矢印で示す方向への移動が可能である。レール30は、倉庫4内の全ての保管棚5、収集スペース6、および待機スペース9に対応する位置を網羅するように、天井面の十分に広い範囲に設けられている。また、レール30は十分に密に配置されており、進路が重複する移動体2a同士が容易にすれ違ったり並進したりすることが可能である。
図12は、移動体2a(昇降ベルト33aが巻き取られた状態)の構成を模式的に示している。本図に示すように移動体2aは、レール30を走行するための駆動装置31と、商品を収容する箱状部32と、箱状部32を吊り下げ状態で昇降させる昇降部33と、箱状部32の大部分を下側から収容可能とした収容部34と、を備えている。
駆動装置31(本実施形態に係る駆動部の一部に相当する)は、モータによって駆動されて水平軸周りに回転する走行輪31aを有している。走行輪31aがレール30の上面を転動することにより、移動体2aは天井面のレール30に沿って移動することが可能である。
箱状部32は、開口部を介して内部に複数の商品を収容することが可能である。搬送中に商品が落下しないよう、当該開口部には開閉自在とした扉部32aが設けられている。また箱状部32の側壁には、周囲の被写体を撮影するための撮影レンズ32b(本実施形態に係るカメラ部の一部に相当する)、およびタッチパネル型ディスプレイ32c(本実施形態に係る報知部および操作部の一部に相当する)が取り付けられている。なお撮影レンズ32bは、移動体2aの移動中にも被写体を撮影することが出来るように、昇降ベルト33aが巻き取られた状態においても収容部34内に収容されない位置(本実施形態の例では、箱状部32の下端近傍)に設けられている。
昇降部33は、箱状部32を吊り下げ状態で昇降させる。本実施形態の例では、昇降部33は昇降ベルト33aが巻回されたプーリを有している。昇降部33は、このプーリを駆動させることによって昇降ベルト33aの繰り出しや巻き取りを行い、昇降ベルト33aの下端に連結された箱状部32を昇降させることができる。
本実施形態における移動体2aは、予定移動経路に従って移動する際には昇降ベルト33aを巻き取った状態、すなわち、図12に示すように箱状部32が天井面付近まで上昇した状態となる。これにより移動体2aは、保管棚5よりも高い空間を通路とし、倉庫4の天井面に沿って安定的に移動することが出来る。またこの状態では、箱状部32は収容部34内に収容されているため、移動体2aの移動の際における箱状部32の揺れ等は極力抑えられる。
なお、移動体2aは保管棚5よりも高い空間を通路とするため、移動する際に保管棚5が障害物とはならず、その分、各特定保管棚の間を短い距離で移動することが可能である。例えばB3、B7、I6、およびJ2が特定保管棚である場合、保管棚5が障害物となる状況下では、予定移動経路は例えば図13に点線矢印で示す経路とされる。しかし本実施形態では、一例として予定移動経路を図13に実線矢印で示す経路とすることができ、移動体の移動距離を非常に短くすることが可能である。そのため本実施形態では、オーダーのあった商品をより効率良く搬送することが可能となる。
移動体2aが特定保管棚或いは収集スペース6に到着した際には、図14に示すように、移動体2aが昇降ベルト33aを繰り出すことによって、箱状部32が作業者の手の届く高さにまで下降する。これにより、作業者による商品の収容作業や取出作業、およびタッチパネル型ディスプレイ32cの操作等が容易となる。収容作業の完了報告がなされたときには、箱状部32は天井面付近まで上昇して予定移動経路に従った移動を再開する。
3.第3実施形態
次に第3実施形態について説明する。なお第3実施形態は、移動体として無人搬送車が採用された点およびこれに関する点を除き、基本的に第1実施形態と同様である。以下の説明では、第1実施形態と異なる点の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する点については説明を省略することがある。
本実施形態に係る移動体2bは、倉庫4内の床面に沿って移動する無人搬送車(Automated Guided Vehicle:AGV)となっている。なお無人搬送車に関する一般的事項については公知であるため、ここではその詳細な説明を省略する。本実施形態の移動体2bは、床面を走行するため重い商品も容易に搬送することが可能であり、プロペラ等の飛行手段を備える必要がなく、比較的簡易な構成とすることが容易である。
図15は、移動体2bの外観を模式的に示している。本図に示すように移動体2bは、制御ユニット201、昇降ユニット202、第1収納部203、第2収納部204、撮影レンズ205、タッチパネル型ディスプレイ206、駆動輪207、および補助輪208を有している。
制御ユニット201は、左右の駆動輪207を駆動させるモーター(本実施形態に係る駆動部の一部に相当する)、バッテリー、および制御基板等を有しており、これらの前後左右をカバーで覆った形態となっている。なお、制御ユニットの上側には昇降ユニット202が、制御ユニットの下側には第2収納部204が、それぞれ設けられている。
昇降ユニット202は、昇降(上下移動)可能に構成されており、上側から商品を収納できる第1収納部203、周囲の被写体を撮影するための撮影レンズ205(本実施形態に係るカメラ部の一部に相当する)、およびタッチパネル型ディスプレイ206(本実施形態に係る報知部および操作部の一部に相当する)が取り付けられている。昇降ユニット202は、被写体の撮影によって作業者を認識すると、当該作業者による第1収納部203への商品の収容、および、当該作業者によるタッチパネル型ディスプレイ206の操作が行い易くなる位置に昇降する。なお作業者は、第1収納部203の他、第2収納部204にも商品を収容することが可能である。
第2収納部204の左右には駆動輪207が、第2収納部204の下側には補助輪208がそれぞれ設けられており、これらの回転によって移動体2bは倉庫4内の床面を移動する。なお、移動体2bを自動走行させる仕組みについては各種のものが適用可能であるが、一例として、通路の床面に位置設定用の光反射体を設置しておく仕組みが適用され得る。この仕組みが適用される場合、移動体2bの制御ユニット201には、倉庫4内の通路に対応するマップ情報、および、上記光反射体の位置情報が予め格納される。そして移動体2bは、当該光反射体にレーザー光を当ててその反射光を受光し、上記の予め格納された情報とともに当該受光によって得られた情報に基づいて、自機の現在位置等を把握することが可能である。
但し本実施形態では、第1および第2実施形態のように移動体2を空中に維持する必要はないが、移動体2b同士の位置を高さ方向にずらすことは難しい。そのため本実施形態に係る移動体2bは、進路の重複時における他の移動体2との衝突を回避して移動する形態として、通路の幅方向に進路をずらすようにする。当該衝突を回避するための手法として、同時期に移動する各移動体2bの予定移動経路を、通路の幅方向に予めずらしておく手法が採用されても良い。
4.その他
以上に説明した各実施形態に係る搬送システムXは、商品が分類して保管される複数の保管棚それぞれを結ぶ通路での移動が可能であり、前記商品を収容可能とした複数の移動体と、前記商品のオーダーに応じて、該オーダーに含まれる各商品に対応する保管棚を順次経由するように、移動体ごとの予定移動経路の決定処理を行う管理装置と、を有し、複数の移動体を予定移動経路に基づいて移動させ商品を搬送するシステムである。
更に管理装置は、移動体同士の進路の重複を許容して予定移動経路の決定処理を行い、複数の移動体それぞれは、前記重複時の他の移動体との衝突を回避して移動するようになっている。そのため各実施形態に係る搬送システムXによれば、移動体同士の衝突等の不具合を抑え、商品の搬送効率の向上や人件費の無駄の抑制等を図ることが可能となっている。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。