JP2021071329A - プラズモニックセンサ用の部材およびその製造方法 - Google Patents

プラズモニックセンサ用の部材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来よりも感度の高いプラズモニックセンサを構成することを可能にするプラズモニックセンサ用の部材とその製造方法を提供すること。【解決手段】プラズモニックセンサ用の部材とその製造方法が提供される。高分子材料製の基板の一方の主面に局在表面プラズモン共鳴を可能にする微細凹凸を形成し、該微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面を、ドライエッチングによって粗面化し、その後、該微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面上に金属膜を形成する。少なくとも凸部の表面の粗面化によって、金属膜を形成した後のプラズモニックセンサの感度が向上する。【選択図】図1

Description

本発明は、プラズモニックセンサ(とりわけ、局在表面プラズモン共鳴を主として検出に利用するセンサ)に好ましく利用され得る微細凹凸を持った部材、および、その製造方法に関する。
プラズモニックセンサの1つとして、金属ナノ構造において生じる局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサが知られている。金属ナノ構造とは、金属製のナノオーダーの微細な凸部が基板面上に配置された構造であって、凹部と凸部が全て同一金属からなる金属製凹凸構造や、金属ナノ粒子が基板面上に配置された構造なども含まれる。金属ナノ構造に光を照射すると、局在表面プラズモン共鳴が生じ、特定波長の光が吸収される。その特定波長(吸収波長)は、金属ナノ構造に接触する媒質の屈折率に応じて変化(シフト)する。このような金属ナノ構造に接触する媒質に応じて吸収波長がシフトする現象を利用することによって、該金属ナノ構造に該媒質が接触したことを検知するセンサ(バイオセンサなど)を構成することが可能になる(例えば、特許文献1)。局在表面プラズモン共鳴を利用したプラズモニックセンサでは、一般的に分光器を用いて、吸収スペクトル、透過スペクトル、または、反射スペクトルの変化を測定する手法が用いられているが、金属ナノ構造の条件によっては、特定波長の光強度の変化を計測するだけでも周囲媒質の変化が検知可能である(非特許文献1)。
従来のプラズモニックセンサに用いられる金属ナノ構造の製造方法としては、Au(金)やAg(銀)といった高コストな金属製のナノ粒子を誘電体製の基板上に固定する方法や、煩雑なリソグラフィー技術を用いて金属ナノ構造を形成する方法が挙げられる(例えば、特許文献2)。
近年、ナノインプリント(ナノオーダーの微細凹凸を転写する方法)を用いることによって、プラズモニックセンサとして利用可能な金属ナノ構造を持ったチップを安価にかつ大量に作製することが可能になった(非特許文献2)。非特許文献2では、先ず、アルミニウム板の一方の主面に対する二次陽極酸化処理によってナノポーラス構造(微細孔が細密状に配列された構造)が形成され、次に、該ナノポーラス構造を型として用いる転写(ナノインプリント)によって、シクロオレフィンポリマーのシート面に微細凹凸が形成され、さらに、該微細凹凸の表面(とりわけ、凸部の上面)にスパッタリングによりAu膜が付与されて、金属ナノ構造(Auナノ構造)が形成されている。以下、前記の微細凹凸中の個々の凸部をナノピラーとも呼び、該微細凹凸をナノピラー構造とも呼ぶ。
特開2005−181296号公報 国際公開公報WO 2007/097454 特開2012−162769号公報
Sarah Unser ら、"Localized Surface Plasmon Resonance Biosensing: Current Challenges and Approaches"、Sensors 2015, 15, 15684-15716 Masato, Saito ら、"Novel Gold-Capped Nanopillars Imprinted on a Polymer Film for Highly Sensitive Plasmonic Biosensing"、Analytical Chemistry 2012, 84, 5494-5500 Toshiya Sakata ら、"Potential Behavior of Biochemically Modified Gold Electrode for Extended-Gate Field-Effect Transistor"、Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 44, No. 4B, 2005, pp. 2860-2863
生体分子の分析などでは、該生体分子が極めて低い濃度であってもそれを検出することが求められる。よって、従来のプラズモニックセンサの検出感度をさらに高くすることが求められている。
本発明は、前記の課題を解決し、従来よりも感度の高いプラズモニックセンサを構成することを可能にするプラズモニックセンサ用の部材とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の主たる構成は、次のとおりである。
〔1〕プラズモニックセンサ用の部材であって、
当該部材は、高分子材料製の基板を有し、該基板は一方の主面に微細凹凸を有し、
前記微細凹凸は、所定の波長の光を受けた場合に局在表面プラズモン共鳴が発生するために必要な形態の凹凸であり、
前記微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面は、ドライエッチングによって粗面化された面となっており、かつ、
当該部材は、前記微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面上に形成された金属膜を有する、
前記プラズモニックセンサ用の部材。
〔2〕前記微細凹凸が、前記微細凹凸の原版の型に設けられた反転微細凹凸を前記高分子材料製のシートの一方の主面に転写することによって形成されたものである、上記〔1〕に記載のプラズモニックセンサ用の部材。
〔3〕前記微細凹凸の原版の型に設けられた反転微細凹凸が、アルミニウム板の一方の主面に陽極酸化処理を施すことによって形成されたナノポーラス構造である、上記〔2〕に記載のプラズモニックセンサ用の部材。
〔4〕前記高分子材料がシクロオレフィンポリマーである、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のプラズモニックセンサ用の部材。
〔5〕前記ドライエッチングが酸素プラズマエッチングである、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のプラズモニックセンサ用の部材。
〔6〕前記金属膜が、スパッタリングによって形成されたAu膜である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のプラズモニックセンサ用の部材。
〔7〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のプラズモニックセンサ用の部材の製造方法であって、
高分子材料製の基板の一方の主面に微細凹凸を形成する、微細凹凸形成工程を有し、記微細凹凸は、所定の波長の光を受けた場合に局在表面プラズモン共鳴が発生するために必要な形態の凹凸であり、
前記微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面をドライエッチングによって粗面化する、ドライエッチング工程を有し、かつ、
前記ドライエッチング工程の後において、前記微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面上に金属膜を形成する、金属膜形成工程を有する、
前記製造方法。
〔8〕前記微細凹凸形成工程では、前記微細凹凸の原版の型に設けられた反転微細凹凸を、前記高分子材料製のシートの一方の主面に転写することによって、前記微細凹凸を形成する、上記〔7〕に記載の製造方法。
〔9〕前記微細凹凸の原版の型に設けられた反転微細凹凸が、アルミニウム板の一方の主面に陽極酸化処理を施すことによって形成されたナノポーラス構造である、上記〔7〕または〔8〕に記載の製造方法。
〔10〕前記高分子材料がシクロオレフィンポリマーである、上記〔7〕〜〔9〕のいずれかに記載の製造方法。
〔11〕前記ドライエッチングが酸素プラズマエッチングである、上記〔7〕〜〔10〕のいずれかに記載の製造方法。
〔12〕前記金属膜が、スパッタリングによって形成されたAu膜である、上記〔7〕〜〔11〕のいずれかに記載の製造方法。
本発明によるプラズモニックセンサ用の部材(以下、当該部材ともいう)では、従来のプラズモニックセンサのために高分子材料面に形成されていた微細凹凸の少なくとも凸部の表面にドライエッチングが施され、その結果、該微細凹凸の少なくとも凸部の表面が粗面化され、ドライエッチングを受ける前の面の状態に比べて、より多くの凹部を持った面(粗面化された面)になっている。また、微細凹凸の表面にドライエッチングが施されると、個々の凸部自体の外径も、より小さくなる傾向にある。
本発明において、「ドライエッチングによって粗面化された面」とは、ドライエッチングの浸食作用によって、ドライエッチング前の面よりも多くの極微小な凹部が形成されたことによって極微細な凹凸状態になった面を意味する。なお、ここでいう「極微小な凹部」とは、もとの微細凹凸における凸部(さらには凹部)の表面に形成された、これら凸部や凹部よりも小さい凹部を意味する。同様に、「極微細な凹凸状態」とは、前記「極微小な凹部」の形成によって、もとの微細凹凸における凸部(さらには凹部)の表面に形成された、該微細凹凸よりも細かい凹凸状態を意味する。このような粗面化された面は、例えば、模式的には、図1(a)における凸部2aの表面と比べたときの、図1(b)における凸部2aの表面であり、また、実際の画像では、査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を用いて、図12(a)のSEM写真図における凸部の表面と比べたときの、図12(b)のSEM写真図における凸部の表面である。
後述するように、ドライエッチングは、反応性の気体(エッチングガス)、イオン、ラジカルによって材料をエッチングする方法である。「ドライエッチングによって粗面化された面」は、他のエッチング方法(典型的には、エッチング液を用いるウェットエッチングによって粗面化された面に比べて、残留物の有無の点で大きく異なる。当該部材はバイオセンサへの適用において、その有用性が特に顕著になる。エッチング液の残留はバイオセンシングに影響を与える可能性があるので、ウェットエッチングの後は、煩雑な洗浄プロセスが必要である。これに対して、ドライエッチング(とりわけ、プラズマエッチング)は、表面の粗面化とともに、表面の汚れ(有機物)も除去され得る。よって、本発明では、ドライエッチングによって粗面化された面が、プラズモニックセンサの感度向上に好ましく寄与する。
「ドライエッチングによって粗面化された面」における前記の極微細な凹凸状態は、ドライエッチングの後に残るドライエッチング独特の不規則なものであり、極微小な凹部の形態(開口の形状、開口のサイズ、凹部の深さ、配置パターン、隣合った極微小な凹部同士の間の中心間距離など)もまた、全て不定である。
また、ドライエッチング前の面は、微細凹凸のうち主として凸部の表面であって、けっして平坦な面ではない。図12(a)のSEM写真図に示されるように、ドライエッチング前の凸部は、不定の外周形状を有し、かつ、各凸部の表面は、総じて凸状を呈しながらも、不定の凹凸状態になった面である。
以上のように、(不定の凹凸状態となっているドライエッチング前の面が、ドライエッチングを受けてさらに粗面化され、より不規則かつより極微細な凹凸状態となった面)の様子は、構造または特性によって直接特定できないものであり、かつ、そのような特定は実際的ではない。よって、このような不可能・非実際的事情に鑑み、本発明では、微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面がドライエッチングを受けた後の表面を、「ドライエッチングによって粗面化された面」と規定している。
本発明では、ドライエッチングによって粗面化された面の上に、さらに金属膜が付与される。図14(b)に例示するように、ドライエッチングによって粗面化された面上に金属膜が付与されることによって、該粗面化された面の影響を受け、金属膜もまた従来よりも微細な凹凸を表面に有する膜となる。これにより、当該部材を用いて構成されたプラズモニックセンサは、従来のものよりも高い感度を有するものとなる。
本発明において、微細凹凸における凸部の表面と凹部の表面との間に明確な境界線は無いが、「凸部の表面」とは、凸部の周囲に位置する凹部の底面(最低点)を基準とした凸部の高さのうち、該凸部の最高点から30%程度までの範囲、好ましくは、該凸部の最高点から3%程度までの範囲〜該凸部の最高点から10%程度までの範囲に含まれる表面である。
本発明では、微細凹凸のうちの凸部の表面のみならず、凹部の表面も、ドライエッチングの作用によって粗面になっていてもよい。本発明において、「凹部の表面」とは、微細凹凸の表面のうち、前記した「凸部の表面」を除いた残部の面である。
局在表面プラズモン共鳴が発生するための重要な部分は、主として微細凹凸のうちの凸部の表面である。
当該部材において金属膜が付与された微細凹凸では、局在表面プラズモン共鳴のみならず、蛍光増強や、表面増強ラマン散乱の効果の発現も期待され得る。
当該部材と同様に、当該部材の製造方法では、従来のプラズモニックセンサのために高分子材料面に形成されていた微細凹凸の少なくとも凸部の表面にドライエッチングを施すドライエッチング工程を有することが重要である。このドライエッチング工程によって、該微細凹凸の少なくとも凸部の表面は粗面化され、また、個々の凸部の外径もより小さくなる傾向にある。そして、少なくとも該凸部の表面(粗面化された面)上に金属膜が付与されて、当該部材が提供される。上記のとおり、当該部材を用いて構成されたプラズモニックセンサは、従来のものよりも高い感度を有する。
図1(a)〜(c)は、本発明による部材の構成を模式的に示した断面図であり、図1(c)が当該部材の構成を示している。図1(c)では、分かり易く説明するために、金属膜だけにハッチングを施している。図1(c)における金属膜は、離散的であるように描いているが、各部の金属膜が互いにつながっていてもよい。また、図1は、本発明による製造方法を説明するための図でもあり、図1(a)〜(c)は、各工程における当該部材の状態を示している。 図2は、アルミニウム板に対する陽極酸化処理の工程を示す概略図である。 図3は、アルミニウム板に対する陽極酸化処理(とりわけ、二次陽極酸化処理)によって得られるナノポーラス構造を示す模式図である。図3(a)は、ナノポーラス構造の板面を見た図であり、領域を区別し易いように、アルミナの部分にハッチングを施している。図3(b)は、図3(a)のX1−X1断面図である。 図4は、アルミニウム板に対する二次陽極酸化処理によって得られるナノポーラス構造の板面の様子の一例を示す、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)によって得られた顕微鏡写真図(AFM写真図)である。 図5は、図3(b)に断面図として示したナノポーラス構造を型として用い、転写によって高分子材料製の基板面に微細凹凸を形成する様子を模式的に示す断面図である。 図6は、本発明の実施例において、ナノポーラス構造を型として用い、その反転微細凹凸を高分子材料製のシートの主面に転写(ナノインプリント)する際の工程を説明する図である。図では、各層を区別し易いように、型と高分子材料製のシート以外にハッチングを施している。 図7は、高分子材料製の基板面に形成された微細凹凸の所定領域(円形の領域)以外を、レジスト膜(SU−8)で覆い、さらにAu膜をスパッタリングによって形成した状態を示す光学顕微鏡写真図である。写真中の円形の領域は、直径約40μm程度である。 図8(a)は、酸素プラズマエッチングを行う前の微細凹凸の状態、とりわけ凸部(ナノピラー)の状態を示す、SEMによって得られた顕微鏡写真図(SEM写真図)である。図8(b)は、酸素プラズマエッチングを20秒行った場合のナノピラーの状態を示すSEM写真図である。いずれのSEM写真図も、高分子材料製の基板の両面のうち、ナノピラーが形成された面を見た図であり、各ナノピラーの上面および外周形状と、網状につながった凹部が見えている(図9〜図14も同様である)。また、図8(a)、(b)の各SEM写真図の下側に表示された倍率を示すスケールにおける目盛りの単位長さ(相隣り合う2本の目盛線の間の距離)は50nmであり、合計11本の目盛線全体の端から端までの長さが500nmである(図9〜図11、図13、図14も同様である)。 図9(a)は、酸素プラズマエッチングを40秒行った場合のナノピラーの状態を示すSEM写真図であり、図9(b)は、酸素プラズマエッチングを60秒行った場合のナノピラーの状態を示すSEM写真図である。 図10(a)は、酸素プラズマエッチングを90秒行った場合のナノピラーの状態を示すSEM写真図であり、図10(b)は、酸素プラズマエッチングを120秒行った場合のナノピラーの状態を示すSEM写真図である。 図11は、酸素プラズマエッチングを180秒行った場合のナノピラーの状態を示すSEM写真図である。 図12(a)は、酸素プラズマエッチングを行う前のナノピラーの状態を示すSEM写真図であり、図12(b)は、酸素プラズマエッチングを180秒行った場合のナノピラーの状態を示すSEM写真図である。図12(a)、(b)の各SEM写真図の下側に表示された倍率を示すスケールにおける目盛りの単位長さ(相隣り合う2本の目盛線の間の距離)は200nmであり、合計11本の目盛線全体の端から端までの長さが2μmである。 図13(a)は、酸素プラズマエッチングを行う前の、ナノピラーの状態を示すSEM写真図であり、図13(b)は、酸素プラズマエッチングを180秒行った場合のナノピラーの状態を示すSEM写真図である。 図14は、Au膜を形成した後のナノピラーの状態を示すSEM写真図であり、各ナノピラーの表面は、Au膜の表面である。図14(a)は、酸素プラズマエッチングを行わず、スパッタリングでAu膜を形成した場合のナノピラーの状態(即ち、従来と同様の状態)を示すSEM写真図である。図14(b)は、酸素プラズマエッチングを150秒行った後でパッタリングでAu膜を形成した場合のナノピラーの状態を示すSEM写真図である。 図15は、酸素プラズマエッチングの処理時間と屈折率感度との関係を示すグラフである。縦軸は屈折率感度を示し、横軸は、酸素プラズマエッチングの処理時間(0秒、20秒、40秒、60秒、90秒)を示している。各酸素プラズマエッチングの処理時間における4種類の棒グラフはAu膜の厚さが異なる場合の棒グラフであって、左側から順に、Au膜の厚さ30nmの場合(網掛の棒)、Au膜の厚さ40nmの場合(ハッチングの棒)、Au膜の厚さ50nmの場合(白色の棒)、Au膜の厚さ60nmの場合(黒色の棒)を示している。 図16は、酸素プラズマエッチング無しの場合の、屈折率の異なる液体に対する波長と透過光の強度との関係を示すグラフである。 図17は、酸素プラズマエッチングの処理時間が90秒の場合の、屈折率の異なる液体に対する波長と透過光の強度との関係を示すグラフである。 図18は、酸素プラズマエッチングの処理時間が180秒の場合の、屈折率の異なる液体に対する波長と透過光の強度との関係を示すグラフである。 図19は、本発明の実施例2における、ターゲットIgAの抗原抗体反応の前後の透過スペクトルの変化を示すグラフである。図19(a)は、酸素プラズマエッチングの処理時間が60秒の場合のグラフであり、図19(b)は、酸素プラズマエッチング無しの場合のグラフである。 図20は、本発明の実施例2における、特異(IgA)と非特異(CRP)抗原抗体反応の前後のプラズモンバンドの波長シフト量を示す棒グラフである。
以下、本発明によるプラズモニックセンサ用の部材を、その製造方法と共に、詳細に説明する。
図1(c)に構造の一例を示すように、当該部材10は、高分子材料製の基板1を有する。該基板1は、その両主面(1a、1b)のうち、少なくとも一方の主面1aに微細凹凸2を有する。図の例では、好ましい態様として、一方の主面1aだけに微細凹凸2が設けられている。微細凹凸2は、多数の微小な凸部2aが多数集合して構成されたものであり、隣合った凸部2a同士の間の部分が微小な凹部2bとなっている。図1の例では、微小な凹部は、各凸部の周囲を取り巻きながらネットワークのように互いに1つにつながっている。微細凹凸2は、所定の波長の光(以下、照射光ともいう)を受けた場合に局在表面プラズモン共鳴が発生するために必要な形態を有する凹凸である(局在表面プラズモン共鳴が発生するために必要な形態については後述する)。図1(b)に示すように、微細凹凸2のうちの少なくとも凸部2aの表面は、ドライエッチングを受けたことによって粗面化された面となっている。即ち、少なくとも凸部2aの表面には、ドライエッチングによって多数の極微小な凹部3が形成されている。そして、図1(c)に示すように、微細凹凸2のうちの少なくとも凸部2aの表面(前記の粗面化された面)上に金属膜4が設けられて、当該部材10となっている。
(基板の高分子材料)
基板に用いられる高分子材料は、特に限定はされないが、後述の型を用いた転写を行う点からは、熱可塑性樹脂が好ましく、シクロオレフィンポリマー、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、アクリル(ポリメタクリル酸メチル樹脂)、ポリスチレン、ポリエチレンなどが挙げられる。低吸水性、高透明性、精密成形性、耐薬品性、低不純物などの点からは、前記シクロオレフィンポリマーが好ましい材料として挙げられる。
(微細凹凸を含んだ基板全体の厚さ)
微細凹凸を含んだ基板全体の厚さは、特に限定はされないが、後述のセンサを構成するためのチップ(センサチップ)として用いる点や、取扱い上の点からは、13μm〜5000μm程度が挙げられ、当該部材を用いて構成される種々のプラズモニックセンサに応じた厚さが適宜決定され得る。微細凹凸の凸部の高さは一定ではないので、前記基板全体の厚さは、基板の裏面から各凸部の頂部までの距離の平均値であってよい(測定すべき凸部の数は適宜決定してよい)。
(基板の外周形状とその寸法)
基板の外周形状は、当該部材の外周形状でもある。基板の外周形状は、特に限定はされず、円形、正方形、長方形などが挙げられ、当該部材を用いて構成される種々のプラズモニックセンサに応じた形状が適宜決定され得る。
基板の外周形状の寸法は、センサチップが1以上得られる寸法が好ましい。該センサチップの外周形状とその寸法は、構成すべきプラズモニックセンサによっても異なるが、円形(直径20μm〜1000μm程度)、正方形(一辺の長さ20μm〜1000μm程度)などが例示される。
(基板の微細凹凸)
局在表面プラズモン共鳴が発生するためには、微細凹凸の表面の少なくとも凸部の表面上にさらに金属膜が設けられることが必要である。よって、本発明において「局在表面プラズモン共鳴が発生するために必要な形態の凹凸」とは、金属膜がさらに設けられた状態で照射光を受けた場合に、局在表面プラズモン共鳴が発生するような形態(形状、寸法、分布(配置パターンや隣合った凸部同士の中心間距離など))となっている凹凸である。そのような「局在表面プラズモン共鳴が発生するために必要な形態の凹凸」は、従来公知のプラズモニックセンサに用いられる微細凹凸を参照することができる。
(微細凹凸の凸部の形態の好ましい例)
基板面を見たときの微細凹凸の凸部の配置パターン(分散配置の形態)は、特に限定はされず、ドット状、ストライプ状、格子状、網状などであってよい。ドット状の配置パターンとは、多数のスポット状(単発的な島状)の凸部が、正方行列状、最密状またはランダム状に配置されたパターンである。後述のナノピラー構造は、スポット状の凸部が最密状に近い状態(整列が乱れてランダム状となっている部分を含む)に配置されたパターンであり、局在表面プラズモン共鳴を発生させるためには特に好ましいパターンである。
後述のナノポーラス構造を型として得られる微細凹凸(多数のナノピラーが最密に近い状態に配置された凹凸)では、隣合った凸部(ナノピラー)の中心間の距離は、30nm〜500nm程度である。各凸部の外周形状は、型の微細孔が丸穴に近いことから、基本的には円形であるが、実際には、図8、図12(a)、図13(a)に示すように、変形した不定の形状であり、サイズも一定ではない。各凸部の外径は、20nm〜300nm程度が例示される。凸部の配置パターンが、ストライプ状、格子状、網状の場合には、互いに隣り合った2つの凸部(対向する互いに平行な2辺)の中心間の距離や幅は、ドット状における中心間の距離や外径を参照し、局在表面プラズモン共鳴がより好ましく生じるように調整すればよい。
図8、図12(a)、図13(a)に例示するナノピラー構造のように、各凸部の外周形状が不定である場合には、各凸部の外径は、これらの図のようなSEMによって得られる基板面の画像において、凸部のフェレー(Feret)径(1つの凸部を挟む一定方向の二本の平行線の間隔)を採用することで、数値で表すことができる。各凸部の外周形状が一定である場合も、各凸部の外径は、前記と同様のフェレー径を採用してよい。
微細凹凸の凸部の高さ(凹部の深さ)は、特に限定はされないが、40nm〜1000nm程度が好ましい高さとして例示される。凸部の高さが40nm未満の場合、とりわけ30nm以下の場合、スパッタリングによる金層の堆積厚さを30nmとすると、凹部が金で埋まりかつ全てのAu膜が1つにつながって金キャップではなくなる可能性が高くなり、よって、局在表面プラズモン共鳴が生じなくなる可能性も高くなるので好ましくない。一方、凸部の高さが1000nm程度を超えて過度に高くなると、凸部の外径によって異なるが、凸部が倒れ易くなるので好ましくない。後述のナノポーラス構造を型として得られる微細凹凸では、個々の凸部(ナノピラー)の高さは、180nm〜220nm程度である。
(微細凹凸の好ましい形成方法:ナノインプリント)
微細凹凸の形成方法は、特に限定はされず、従来公知のリソグラフィー、レーザー加工、電子ビーム加工、エッチング処理、ナノインプリント(転写)などを用いて、局在表面プラズモン共鳴が発生するために必要なサイズの凹凸を形成することができる。
これらの微細凹凸の形成方法のなかでも、本発明では、安価に微細凹凸が得られるナノインプリントを推奨する。ナノインプリントでは、微細凹凸の原版の型に設けられた反転微細凹凸が、上記した高分子材料製のシートの一方の主面に転写されて、該微細凹凸が形成される。そして、本発明では、ナノインプリントの型として用いる反転微細凹凸として、アルミニウム板の一方の主面に陽極酸化処理を施すことによって形成されたナノポーラス構造を用いることを推奨する。このナノポーラス構造およびその製造方法については、上記特許文献3など従来技術を参照することができる。特許文献3では、ナノポーラス構造を「陽極酸化ポーラスアルミナ」と呼んでいる。
(アルミニウム板の主面に対する陽極酸化処理)
ナノポーラス構造を形成するための、アルミニウム板の主面に対する陽極酸化処理では、図2に例示するように、処理槽100内の電解液(リン酸、硫酸、シュウ酸、クロム酸など)110に、陽極130としてアルミニウム板を浸漬し、陰極120として例えばチタンを浸漬する。アルミニウム板の両面のうち陽極酸化処理を行わない面は、必要に応じて適宜保護してもよい。
図2の状態で、電圧を印加すると、図3(b)に示すように、アルミニウム板の主面では、アルミナ(酸化アルミニウム、Al)の形成が深部へと進行しながら、該主面に対して多数の微細孔h1が垂直方向に延びる。なお、図3(b)は、後述する二次陽極酸化処理後の最終的な微細孔の形態を示している。ここでは、説明の便宜上、二次陽極酸化処理後の微細孔を示す図を利用して、一次陽極酸化処理(最初の陽極酸化処理)の説明をする。一次陽極酸化処理の初期段階(表層付近)では、微細孔h1の配置パターンは不定であるが、陽極酸化処理を継続すると、多数の微細孔は深部において互いに特定の間隔を置いて位置するように変化し、二次陽極酸化処理と同様に、最密状に位置するようになる。多数の微細孔が最密状に位置するとは、図3(a)に示すように、正三角形を最小単位の網目とする網状の該正三角形の各頂点に微細孔h1の中心が位置することを意味する。なお、実際には、不規則に位置する微細孔も存在する。陽極酸化処理されるアルミニウムの純度がより高いと、微細孔の孔径や配列もより均一になる。本発明の実施例で用いた板のアルミニウムの純度は99.5%であり、不純物に起因して、微細孔の孔径や配列が不均一になっており、よって、それを型として得られたナノポーラスの外周形状、サイズ、配列も不均一である。
一次陽極酸化処理のステップであっても、陽極酸化処理によってアルミニウム板の主面にアルミナ部分132を形成すると、アルミナ部分132の底面(アルミニウム部分131との界面)には、図3(b)に示すように、微細孔h1の影響を受けた多数の凹部h2が形成される。該多数の凹部h2もまた、最密状に位置する。凹部h2が最密状に位置した時点で、一次陽極酸化処理を停止し、アルミナ部分132を除去する。アルミナ部分132の除去は、例えば、クロム酸エッチングによって行う。
次に、残されたアルミニウム部分131(その板面には、多数の凹部h2が最密状に位置している)に対して、2回目の陽極酸化処理(二次陽極酸化処理)を行うと、形成される微細孔は、上記の凹部h2の位置に影響を受けて、図3(b)に示すように、初期段階から最密状に位置し、深部へと伸びる。このようにして、二次陽極酸化処理の結果、図3(a)、(b)に示すように、板面に最密状に配置された多数の微細孔を含んだナノポーラス構造を持った板(以下、ナノポーラス板ともいう)133が得られる。図4は、ナノポーラス板のナノポーラス構造側の主面のAFM写真図であり、微細孔の開口は、略円形であり、総じて最密状に位置している。
ナノポーラス構造における隣合った開口の中心間距離は、30nm〜500nm程度であり、開口形状は概ね円形であり、口径は20nm〜300nm程度である。これら中心間距離や口径は、電解液の種類と濃度、電解液の温度、印加された電圧などによって調節することができる。
二次陽極酸化処理後のナノポーラス板(下層のアルミニウム部分131と、表層のナノポーラス構造となっているアルミナ部分132とを含む)全体の厚さ、アルミナ部分132の厚さ、および、微細孔の深さは、特に限定はされないが、転写(ナノインプリント)の型として用いる点からは、ナノポーラス板全体の厚さは100μm〜20mm程度が好ましく、アルミナ部分132の厚さは陽極酸化の条件に応じて決定され、微細孔の深さは40nm〜1000nm程度が好ましい。
アルミニウム板に対する一次陽極酸化処理、二次陽極酸化処理のための電圧は、20V〜120V程度が挙げられる。その他の条件については、特許文献3や、非特許文献1など従来技術を参照することができる。
(微細凹凸構造の転写)
微細凹凸構造の転写工程では、図5(a)に示すように、上記したナノポーラス板133を型として用い(即ち、ナノポーラス構造を反転微細凹凸として用い)、反転微細凹凸を高分子材料140に転写する。その後、型を除去することで、図5(b)に示すように、微細な多数の凸部(ナノピラー)141が集合した微細凹凸を有してなる高分子材料製の基板が得られる。この基板が、図1(a)に示す基板1である。
転写工程では、高分子材料の微細孔内への進入を微細孔内の空気が阻害しないように、真空下で行うことが好ましい。
型に対して離型処理(オプツールなどの離型剤を塗布する処理)を施すことによって、転写工程後に、高分子材料製の基板を型から容易に剥がすことができる。
基板の高分子材料の説明でも述べたとおり、転写工程で用いられる高分子材料は、熱ナノインプリント技術を用いる点から、熱可塑性樹脂が好ましく、シクロオレフィンポリマーが好ましい材料として例示される。転写に用いられる高分子材料の形態は特に限定はされないが、シート状が好ましい形態である。図6に示すように、高分子材料製のシートを用い、該シートに型を押し付ければ、反転微細凹凸が微細凹凸として該シートの主面に転写される。このような転写加工それ自体は、公知の転写技術、ナノインプリント技術を参照することができる。図6に示す加工の具体例は、実施例1に示す。
(照射光)
当該部材を用いて構成されたプラズモニックセンサに照射される所定の波長の光(照射光)の波長は、360nm〜2000nm程度である。照射光は、該波長360nm〜2000nmの成分の光を必ずしも全て含んでいる必要はなく、用途や光源に応じて、400nm〜800nmの波長を含む光など、適宜選択してよい。
(微細凹凸に対するドライエッチング)
本発明では、上記微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面が、ドライエッチングを受けたことによって粗面化された面となっていることが重要である。該粗面化された面は、凹部にも広がっていてもよい。
ドライエッチングは、反応性の気体(エッチングガス)、イオン、ラジカルによって材料をエッチングする方法である。基板の材料や求める粗面に応じて、プラズマエッチングなど、適切なドライエッチングを選択することができる。本発明において、好ましいプラズマエッチングとしては、酸素プラズマエッチングやアルゴンプラズマエッチングなどが例示される。
基板の材料がシクロオレフィンポリマー(COP)である場合の好ましいドライエッチングとして、酸素プラズマエッチングが挙げられる。COPに対する酸素プラズマエッチングでは、COPの表面に高エネルギー状態の酸素(酸素ラジカル)が照射され、COPを構成する炭素が該酸素と結合してCOとなって気化し、COPの表面が分解すると考えられる。この反応により、微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面は、プラズモニックセンサの感度が向上するように好ましく粗面化される。図1(a)に示すように、微細凹凸2が形成された基板(COP製)1に対して、酸素プラズマエッチングを所定の時間だけ行うことによって、微細凹凸2の表面(主として凸部(ナノピラー)2aの表面)がさらに局所的に削られる。これにより、図1(b)に示すように、少なくとも凸部2aの表面は、酸素プラズマエッチング処理を行う前よりも(即ち、従来よりも)、極微細な凹部3が多数形成された極微細な凹凸状態となる。よって、従来よりもプラズモニックセンサの感度が向上する。また、酸素プラズマエッチングによって、個々の凸部全体のサイズ(外径)も小さくなる。この外径の減少によっても、プラズモニックセンサの感度の向上が期待できる。COPと酸素プラズマエッチングとの組み合わせのように、基板に用いられる高分子材料に応じた適切なプラズマエッチングを選択することができる。
凸部の表面が粗面化されて極微細な凹凸状態になることによって、抗体の固定化が容易になるという効果も期待でき、これが感度向上の原因の一つと考えることが可能である。
(ドライエッチングを受けた粗面の表面粗さ)
上記微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面が、ドライエッチングによって粗面化された面か、ドライエッチング前の面かは、該凸部の表面のSEM写真を撮像し、ドライエッチングを行う前の該凸部の表面のSEM写真と比較することによって判別することができる。図13(a)、(b)の写真図の比較からも明らかなとおり、ドライエッチングによって粗面化された面は、ドライエッチング前の面に比べて、独特の極微細な凹凸状態を呈し、また、各凸部(各ナノピラー)の外径がより小さくなることで、凸部同士の間の隙間も大きくなっている。図13(a)に示す例のとおり、ドライエッチングを行う前の凸部の表面は、決して滑らかな面ではなく、最初から、ある程度の凹凸状態となっており、これがドライエッチングによって浸食を受け、本発明における効果を示すような極微細な凹凸状態へと変化する。このような最初から存在する凹凸状態における極微小な凸部の外形やサイズは不定である。例えば、図13(a)に示すドライエッチング前のSEM画像では、凸部(ここでは、区別のために「ベース凸部」と呼ぶ)の表面に最初から存在する極微小な凸部のフェレー径は、ベース凸部のフェレー径の30〜50%程度である。そして、図13(b)に示すドライエッチング後のSEM画像では、ベース凸部の表面が粗面化された結果、前記の極微小な凸部のフェレー径は、元のフェレー径よりも小さくなり、ベース凸部のフェレー径の10〜30%程度まで減少している。
(酸素プラズマエッチングの条件)
シクロオレフィンポリマー製の基板に形成された微細凹凸に対する好ましい酸素プラズマエッチングの条件は次のとおりである。
圧力:0.15〜0.25MPa
高周波出力:15〜500W、好ましい一例としては75W
プロセスガス:酸素
ガス流量:10〜200cc/mm、好ましい一例としては100cc/mm
処理時間:15〜300秒
前記の条件下で酸素プラズマエッチングを行うと、凸部の表面(ナノピラーの上面)は好ましく粗面化される。また、凸部の外径は、酸素プラズマエッチングを行う前の外径に比べて30秒ごとに7%〜15%程度減少する傾向を示す。
(金属膜)
前記微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面上には、局在表面プラズモン共鳴を生じさせための金属膜が形成される。該金属膜の材料は、局在表面プラズモン共鳴に利用可能な金属であり、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)などが挙げられ、これらを単独にまたは組み合わせて使用することができる。これらの金属の中でも、Auは、可視領域で強い局在電場の発現が見込め、かつ、大気中で比較的高い化学的安定性を有する点から好ましい金属である。
(金属膜の形成方法)
金属膜の形成方法は、特に限定はされず、スパッタリング、蒸着、イオンプレーティング、電気めっき、無電解めっき等が挙げられ、均一な金属膜の形成が可能である点からは、スパッタリングおよび蒸着が好ましい形成方法として挙げられる。スパッタリングは、蒸着に比べて、成膜すべき領域が大面積であっても均一に成膜できるので、より好ましい成膜法である。上記非特許文献3のFig.3には、真空蒸着によって形成されたAu膜の表面と、スパッタリングによって形成されたAu膜の表面の拡大画像が掲載されている。これら2つの拡大画像からも明らかなとおり、スパッタリングによって形成された金属膜の表面は、真空蒸着によって形成された金属膜の表面に比べて、明らかに凹凸が細かく、よって、膜厚も均一であるということができる。また、スパッタリングによって形成された金属膜は、蒸着などの他の堆積法によって形成された金属膜とは異なり、基板への付着力が大きいという特徴がある。また、スパッタリングは、成膜時間(スパッタリングを行う時間)だけによって膜厚を高精度に制御できるという特徴がある。以上の点から、スパッタリングによって形成されたAu膜は、より好ましい金属膜である。
金属膜の形成に利用可能なスパッタリング装置の作動原理、装置の構成、スパッタリングの条件は、特に限定はされない。スパッタリングによって形成された膜厚30nm〜90nmの金属膜であれば、スパッタリング装置の構成やスパッタリングの条件によらず、好ましく利用可能である。本発明の実施例で用いたスパッタリング装置は、アルバック社製のコンパクトスパッタ装置(品番ACS−4000)である。
(金属膜の厚さ)
金属膜の厚さは、微細凹凸の形態や金属膜の材料などに応じて異なるが、上記したナノポーラス構造から転写された微細凹凸にAu膜を形成する場合には、厚さは30nm〜90nmが好ましく、40nm〜60nmがより好ましい。金属膜の厚さは、成膜時間によって調節することができる。
金属膜の厚さは、均一であることが好ましい。金属膜は、離散的に形成されていてもよいし、1つの膜として微細凹凸の凸部の上面(粗面)全体を覆っていてもよい。ただし、粗面化した凸部の上面を平坦化するような過度の厚さや、微細凹凸全体を平坦化するような過度の厚さは好ましくない。
当該部材を用いたプラズモニックセンサの構成は、特許文献1など従来技術を参照することができる。マイクロ流体デバイスの流路、フローセルの流路、光ファイバの先端面などに当該部材を配置し、照射光源と受光素子を適宜設け、受光した光を光スペクトラム分析装置や光強度測定装置などによって分析や測定を行うことにより、検体液や生体液中のタンパク質、抗原、抗体などを検出することができる。
(当該部材の製造方法)
当該部材の製造方法は、図1(a)に示す微細凹凸形成工程と、図1(b)に示すドライエッチング工程と、図1(c)に示す金属膜形成工程とを少なくとも有する。
微細凹凸形成工程は、図1(a)に示すように、上記した高分子材料製の基板1の一方の主面1aに、上記した微細凹凸2を形成する工程である。微細凹凸2は、上記したとおり、所定の波長の光を受けた場合に局在表面プラズモン共鳴が発生するために必要なサイズの凹凸である。
ドライエッチング工程は、図1(b)に示すように、微細凹凸2のうちの少なくとも凸部2aの表面を、ドライエッチングによって粗面とする工程である。図1(b)に示す微細な多数の凹部3は、ドライエッチングによって形成されたものである。
金属膜形成工程は、図1(c)に示すように、前記ドライエッチング工程の後に、微細凹凸2のうちの少なくとも凸部2a(ドライエッチングによって粗面となっている)の表面上に金属膜4を形成する工程である。
これらの工程の詳細な説明は、上記した当該部材についての詳細な説明で述べたとおりである。
当該部材の好ましい製造方法の一例を以下に示す。
(ステップ1)
アルミニウム板の板面に陽極酸化処理を施すことによって、ナノポーラス構造を形成する。
(ステップ2)
前記のナノポーラス構造を、微細凹凸を形成するための型(反転微細凹凸)として用い、シクロオレフィンポリマー)製のシート面に、ナノインプリント(転写し)、ナノピラー構造(微細凹凸)を形成する。
(ステップ3)
ナノピラーの表面(とりわけ、凸部の表面)を、酸素プラズマエッチングによって粗面化する。
(ステップ4)
図7に示すように、センサ領域(センサとして利用する領域)の周囲をレジスト(SU−8)で覆う。該レジストについては下記でさらに詳述する。図7の例では、各センサ領域は、直径40μmの円形であって、中心間距離(ピッチ)40μmの正方行列状(14行×14列)に配置されている。レジスト膜などによって基板上の1つの微細凹凸を複数のセンサ領域へと分割することによって、マルチプレックス検出用のセンサ(同一反応における2種類以上の抗原を特異的に検出するセンサ)などとして利用することが可能になる。
(ステップ5)
センサ領域に露出している微細凹凸の表面(とりわけ、凸部の表面)に対して、スパッタリングによってAu膜を形成し、本発明の部材を得る。
上記ステップ4におけるレジスト(SU−8)は、公知のフォトレジストである。
塗布のプロセスでは、ナノピラー構造が形成された基板をスピナのステージに配置し、回転数500rpm程度で5〜15秒程度回転させる。この状態から200rpm/秒の割合で、回転数を3000rpmまで上げ、3000rpmで30秒回転させる。これによって、微細凹凸全体を覆う、厚さ10μmのSU−8膜が得られる。95℃のホットプレートで約3分間加熱し、SU−8膜の表面および内部を充分乾燥させる。乾燥したSU−8膜のセンサ領域以外の領域にUV光(波長350〜400nm)を照射して露光を行う。この例では、厚さ10μmのSU−8膜に対する露光量は200mJ/cmである。一般に用いられるレジストでは、露光した部分は架橋反応を起こし、現像液に溶ける(ポジティブ型)か、現像液に溶けずに残り(ネガティブ型)、これによってパターンが形成される。SU−8は、ネガティブ型であるが、露光しただけでは充分架橋反応を起こさず、架橋反応を促進させるために熱を加える必要がある。露光後のべ一クは、ホットプレート上で65℃、1分行った後、さらに、95℃、5分行う。その後、自然冷却し、SU−8膜が室温になった時点で現像液に入れ現像する。現像は20分行う。センサ領域内のナノピラー同士の間(凹部)間に入ったSU−8は、現像液によって完全には除去されず、残留する可能性があるが、酸素プラズマ処理による屈折率感度の向上への影響は無視することができる。
実施例1
本実施例では、(i)アルミニウム板に対する二次陽極酸化処理によってナノポーラス板を作製し、(ii)該ナノポーラス板を型として用いてCOPシートに微細凹凸を転写し、(iii)該微細凹凸に酸素プラズマエッチング(RF:75w、O:100cc)を行って少なくとも凸部の表面を粗面とし、(iv)少なくとも凸部上にAu膜(厚さ90nm)をスパッタリングによって形成し、(v)チップ形状に分割して、センサチップを実際に製造し、エッチングの時間を変えてその影響を調べた。
(i)ナノポーラス板の作製
純度99.5%のアルミニウム板(株式会社ニラコ製)に対して、一次陽極酸化処理および二次陽極酸化処理を行ない、微細孔がハニカム構造の如く規則的に並んだナノポーラス構造を持ったナノポーラス板を作成した。本実施例で用いたアルミニウム板は、縦26mm、横76mmの長方形の板であり、陽極酸化処理すべき片面は、鏡面研磨され、厚さは5mmである。
(i−1)一次陽極酸化処理
アルミニウム板を図2のように直流電源(PQ−120、MATSUSADA)の陽極に接続し、チタン板を該直流電源の陰極に接続し、アルミニウム板の鏡面研磨された板面とチタン板の板面とが平行になるよう両板を保持して、低温恒温水槽(NCB-1200、EYELA)中の0.3Mシュウ酸溶液中に固定した。シュウ酸溶液を0℃に保ち、前記直流電源によってアルミニウム板とチタン板との間に電圧80Vを1時間印加し、アルミニウム板の鏡面研磨された板面に陽極酸化処理(一次陽極酸化処理)を行った。
陽極酸化処理中は、シュウ酸溶液の温度および濃度を一定に保つため、撹拌子によって該シュウ酸溶液を常時撹拌した。
一次陽極酸化により陽極側のアルミニウムから生じたAl3+イオンと酸素が反応することで、陽極のアルミニウム板の表面には、ナノポーラス構造の層が形成された。
一次陽極酸化によるナノポーラス構造の形成後、リン酸(1.16%、w/v)とクロム酸(5%、w/v)の混合水溶液(温度:70℃)に30分間浸漬し、撹拌子によって該リン酸溶液を常時撹拌し、ナノポーラス構造を除去した。その結果、残ったアルミニウム板の表面には、図3(b)に示すように、ナノポーラス構造の微細孔h1の下方に対応した位置に凹部h2が残った。
(i−2)二次陽極酸化処理
前記凹部h2が形成されたアルミニウム板の表面に対して、さらに、陽極酸化処理(二次)を行った(0.3Mシュウ酸水溶液、80V、30秒)。その結果、アルミニウム板の表面には、規則的なパターンにて孔が配列されたナノポーラス構造が形成された。
最後に、70℃のリン酸溶液(1.6%、w/v)で、12.5分間エッチングを行ない、ナノポーラス構造の各微細孔の口径を大きくした。
得られたナノポーラス構造の微細孔の開口形状は円形であり、口径は平均150nm程度であり、隣り合った微細孔同士の間の中心間距離は、平均200nm程度であり、微細孔の深さは平均200nm程度であった。
図4は、二次陽極酸化処理で得られたナノポーラス構造の表面の開口の様子を示す原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy: AFM)の写真図である。
得られた各微細孔の口径、セル壁の厚さ(互いに隣接する孔同士の間の壁部の厚さ)、微細孔同士の間の中心間距離は、陽極酸化の電圧と温度に依存し、容易に制御することができる。当該実施例で用いたアルミニウム板中の不純物に起因して、微細孔の孔径は完全には均一ではなく、不規則な配列が含まれている。
(ii)シクロオレフィンポリマー製のシート(COPシート)への微細凹凸の転写
転写工程では、上記で得られたナノポーラス板のナノポーラス構造を型として用い、これをガラス転移温度以上に加熱したCOPシートに押し付けて転写し、微細凹凸を形成した。冷却後に型(ナノポーラス板)からCOPシートを剥離することにより、微細凹凸を持ったCOP基板を得た。この転写工程は、型を用いる複製プロセスであるため、安定した条件下で行うことができ、製品(転写された形状)は繰り返し精度に優れ、ナノスケール構造の大量生産も可能となる。
本実施例で用いた転写装置(ナノインプリント装置)は、SCIVAX株式会社製、品番X300である。該ナノインプリント装置のチャンバー内では、図6に示すように、上側に位置する押圧プレート200と、下側に位置するステージ210の間に、押圧プレートとステージをそれぞれ保護するための外径6インチ(厚さ0.625mm)のシリコンウェハー180、190、離型処理用の外径4インチ(厚さ0.525mm)のシリコンウェハー160、170を設置した。加工対象として生体適合性材料である厚さ188μmのCOPシート150(日本ゼオン株式会社、品番ZF−14−188)を、型であるナノポーラス板130の上に設置し、前記のシリコンウェハー160、170の間に配置した。用いたシリコンウェハーは、一例であって、適当なものを利用してよい。
上記したシリコンウェハー、COP樹脂製のシート、ナノポーラス板をナノインプリント装置内にセットし、仮型押しとして荷重150Nでの加圧を1分間行った。
シリコンウェハーとナノポーラス板には、転写後の離型を容易にするため離型剤処理を施した。該離型剤として、ハーベス社製のフッ素系離型剤(DURASURF)を、ダイキン工業製の溶剤(Perfluorohexane」で希釈したものを用いた。離型剤全体(100質量%)に対するフッ素系離型剤が占める割合は、0.1質量%である。
ナノインプリント時に空気が入り込むことを防ぐため、ナノインプリント装置内を減圧し、−80kPa程度の真空とした。減圧後、温度をCOP樹脂のガラス転移温度(136℃)を超える温度(160℃)まで上昇させた。
ナノポーラス板に対する加圧力が2MPaとなるように圧力を調節し、本型押しを10分間行った。
圧力一定のまま80℃まで冷却を行った。
型押しの荷重を150Nまで減少させた後、ナノインプリント装置内の真空を大気圧にもどし、該ナノインプリント装置からナノポーラス板とCOP樹脂製のシートを取り出し、微細凹凸が形成されたCOP樹脂製のシートを引っ張ってナノポーラス板から剥離した。
(iii)酸素プラズマエッチングによる表面加工
プラズマを用いた微細加工(プラズマエッチング)は、MEMS(micro-electro mechanical system)デバイス作製など先端技術分野で不可欠のトップダウン微細加工プロセスである。エッチング時のプラズマと基板表面との相互作用により、微細凹凸の凸部(ナノピラー)の表面は粗面化され、極微細な凹凸を持った面となった。本実施例では、上記で作製されたCOPシートの微細凹凸に、酸素プラズマエッチングを行ない、ナノピラーの表面を粗面化した。
酸素プラズマエッチング装置として、ヤマト科学株式会社製、PDC210を用いた。
酸素プラズマエッチングの条件は、放電出力75W、酸素ガスの流量100cc、常温(25℃)である。
本実施例では、エッチングの時間が微細構造に与える影響について検討した。
図8〜図13は、酸素プラズマエッチング処理の時間を変えた場合の、ナノピラーの状態を示すSEM写真図である。図13(a)と図13(b)との比較からも明らかなとおり、各ナノピラーの表面が酸素プラズマエッチング処理を受けて、より細かい極微細な凹凸状態となっていることがわかった。また、図8〜図11の比較、および、図12(a)と図12(b)との比較からも明らかなとおり、酸素プラズマエッチング処理の時間をより長くすることによって、ナノピラーの外径がより小さくなる傾向がみられた。
(iv)Au膜の形成
上記で酸素プラズマエッチング処理によって粗面化したナノピラーの表面に、スパッタリングによってAu膜を形成した。Au膜の厚さ30nm、40nm、50nm、60nmの実施品を作製した。
また、比較のために、酸素プラズマエッチング処理を行わないナノピラーの表面に、スパッタリングによってAu膜を形成した(Au膜の厚さ60nm)。図14(a)は、酸素プラズマエッチング処理を行わず、スパッタリングでAu膜(厚さ60nm)を形成した場合のSEM写真図であり、図14(b)は、酸素プラズマエッチング処理を150秒行った後でパッタリングでAu膜(厚さ60nm)を形成した場合のナノピラーの状態を示すSEM写真図である。
本実施例で用いたスパッタ装置は、アルバック株式会社のACS−4000である。図14(a)、(b)の比較から明らかなとおり、酸素プラズマエッチング処理によって粗面化された面上に形成されたAu膜の表面もまた、極微細な凹凸状となっていることがわかった。
(v)センサチップへの加工
上記で得られたプラズモニックセンサ用の部材を、刃物で分断し、プラズモニックセンサチップを得た。得られたセンサチップを用い、所定の波長の光を照射すれば、金スポットの自由電子の振動による局在表面プラズモン共鳴が発生し、プラズモン信号が検出できる。
(屈折率感度の測定)
屈折率(RI)が異なる4種類の液体(溶液超純水(RI=1.33)、1Mグルコース(RI=1.35)、エチレングリコール(RI=1.43)、グリセリン(RI=1.47))を、センサチップの微細凹凸(粗面化+Auキャップ)に接触させる液体として使用した。
測定に用いたセンサチップをスライドガラスの上に固定し、シート状シリコンゴム(アズワン)を用い、チップの周囲を枠のように囲い、該枠の内部に液体を充填した。測定の際、液体の表面を均一な平面にするため、枠と液体をカバーガラスで覆った。
光源としてOcean optics社製のHL−2000−FHSA(照射光の波長範囲360〜2000nm)を用い、センサチップの金スポット側に対して、スライドガラス面に垂直に照射光を入射させ、センサチップの裏面側へと透過した光を、分光器を用いて透過スペクトルを測定し、最大吸収波長のシフトを観察した。
(結果)
図15のグラフは、センサチップの微細凹凸(粗面化+Auキャップ)に屈折率が異なる媒質を接触させた場合の、各媒質に応じた最大吸収波長から計算した屈折率感度を示すグラフ図である。図15のグラフに示すように、酸素プラズマエッチングの処理時間が長くなるほど、屈折率感度が向上することがわかった。これにより、ドライエッチングによるセンサチップ感度向上が期待できることがわかった。また、Au膜の厚さ(30nm、40nm、50nm、60nm)も屈折率感度に影響を与えることがわかった。
「屈折率感度」は、金属ナノ構造の表面近傍の媒質の屈折率の変化に対して最大吸収波長の変化量により計算される。横軸を媒質の屈折率とし、縦軸を最大吸収波長として、屈折率と最大吸収波長の関係をプロットした時、その近似直線(一次関数)の傾きが「屈折率感度」である。
(プラズマエッチング時間による屈折率感度の変化)
酸素プラズマエッチングの処理時間を、0秒(処理無し)、90秒、180秒とし、かつ、それぞれにスパッタリングによる厚さ60nmのAu膜を形成して得た3種類のセンサチップのそれぞれの透過スペクトルを、図16〜図18に示す。図16〜図18は、上記した4種類の屈折率の液体について得られた透過スペクトルを示すグラフである(図16;酸素プラズマエッチング処理無し、図17;酸素プラズマエッチング処理90秒、図18;酸素プラズマエッチング処理180秒)。
図16〜図18のグラフから明らかなとおり、プラズマ処理時間を長くするほど、プラズモンバンドのシフト量が大きくなり、屈折率感度が向上する傾向がみられた。
実施例2
本実施例では、本発明によって得られた部材からセンサチップを作成し、イムノアッセイへの応用の可能性を調べた。
実施例1と同様にして作成したセンサチップ(酸素プラズマ処理時間60秒、スパッタリングによる厚さ60nmのAu膜)を用いて、イムノアッセイによるIgAの測定を行った。また、比較例として、酸素プラズマ処理無しのセンサチップも作製し、イムノアッセイによるIgAの測定を行った。
(抗体の固定化)
センサチップのAu膜に抗体を固定するために、先ず、センサチップ上のAu膜の表面に、−COOH基が付いた自己組織化単分子膜(Self-assembled monolayer, SAM)を形成した。次に、−COOH基を活性化させることによる活性エステルの状態を経て、抗体とアミド結合させることで、Au膜への抗体の固定化を行った。より、具体的な手順を以下に述べる。
SAMである10-Carboxyl-1-decanethiol(DOJINDO)の濃度が1mMとなるよう、エタノール(和光純薬工業)で調整した。
センサチップをその溶液に浸漬し、30分間静置した。その後、大量のエタノールで洗浄し、窒素ガスでセンサチップを乾燥させた。
透過スペクトルを測定し、センサチップ上に−COOH基が形成されたことを確認した。
N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)(Wako)およびカルボジイミド塩酸塩(WSC)(Wako)を、それぞれ0.2M、0.8Mになるように、超純水を500μLずつ加えた。
0.2MのNHS溶液と0.8MのWSC溶液を500μLずつ混合し、2つのセンサチップ上にそれぞれ200μL滴下し、室温で10分間静置した。
その後、大量の超純水で洗浄し、窒素ガスでセンサチップを乾燥させた。更に、透過スペクトルを測定し、センサチップ上に活性エステルが形成されていることを確認した。
1μg/mLのanti-IgA antibodyを、各センサチップ上に100μL滴下し、室温で30分間静置した。その後、大量のリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline 、PBS)で洗浄し、窒素ガスで各センサチップを乾燥させた。0.1%のウシ血清アルブミン(Bovine serum albumin、BSA)をブロッキング剤として、センサチップ上に100μLずつ滴下し、室温で30分間静置した。その後、大量のPBSで洗浄し、窒素ガスでセンサチップを乾燥させた。透過スペクトルの計測を行い、センサチップ上に抗体が固定化されていることを確認した。
抗原として50ng/mLのIgAをセンサチップ上に100μLずつ滴下し、室温で30分間静置した。その後、大量のPBSで洗浄し、窒素ガスでセンサチップを乾燥させた。最後に、透過スペクトルの計測を行い、センサチップ上に抗原抗体反応が生じたことを確認した。非特異的反応を起こすターゲットとして濃度100ng/mLのC−反応性蛋白(CRP)(CRP. Human Recombinant. Carrier-free,フナコシ)を用いた。
本実施例品として酸素プラズマエッチング処理を60秒施した後、スパッタリングによる厚さ60nmのAu膜を形成して得たセンサチップと、比較例品として、酸素プラズマエッチング処理無しでスパッタリングによる厚さ60nmのAu膜を形成したセンサチップを用い、実施例1と同様に測定した。
測定結果を図19(a)、(b)のグラフに示す。これらのグラフは、ターゲットIgAの抗原抗体反応前後の透過スペクトルの変化を示している。グラフ中の実線の曲線は、抗原抗体反応前の透過スペクトルを示し、グラフ中の破線の曲線は、抗原抗体反応後の透過スペクトルを示している。また、図19(a)のグラフは、酸素プラズマエッチングの処理時間が60秒の場合(本実施例品)の結果を示し、図19(b)は、酸素プラズマエッチング無しの場合(比較例品)の結果を示す。
図19(a)、(b)のグラフから明らかなとおり、酸素プラズマエッチング処理されたセンサチップのプラズモンバンドの波長シフト量は、酸素プラズマエッチング処理無しセンサチップのそれよりも大きいことがわかった。
図20は、特異(IgA)と非特異(CRP)の抗原抗体反応の前後のプラズモンバンドの波長シフト量を示すグラフである(n=5)。グラフ中の左側の一対の棒グラフは、酸素プラズマエッチング処理無し(0秒)のセンサチップの結果を示しており、グラフ中の右側の一対の棒グラフは、酸素プラズマエッチングの処理時間が60秒である場合のセンサチップの結果を示している。
図20のグラフから明らかなとおり、微細凹凸の凸部に対して酸素プラズマエッチング処理を行うことによって、同じ濃度のサンプルを用いた時、シフト量が大きくなることが分かった。
本発明によって、従来よりも感度の高いプラズモニックセンサを構成することが可能になり、抗原、蛋白質、癌細胞等の種類やその濃度の変化をより高い感度で検知することが可能になった。
1 基板
1a、1b 基板の主面
2 微細凹凸
2a 凸部
2b 凹部
3 ドライエッチングによって形成された粗面の凹部
4 金属膜
10 プラズモニックセンサ用の部材

Claims (12)

  1. プラズモニックセンサ用の部材であって、
    当該部材は、高分子材料製の基板を有し、該基板は一方の主面に微細凹凸を有し、
    前記微細凹凸は、所定の波長の光を受けた場合に局在表面プラズモン共鳴が発生するために必要な形態の凹凸であり、
    前記微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面は、ドライエッチングによって粗面化された面となっており、かつ、
    当該部材は、前記微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面上に形成された金属膜を有する、
    前記プラズモニックセンサ用の部材。
  2. 前記微細凹凸が、前記微細凹凸の原版の型に設けられた反転微細凹凸を前記高分子材料製のシートの一方の主面に転写することによって形成されたものである、請求項1に記載のプラズモニックセンサ用の部材。
  3. 前記微細凹凸の原版の型に設けられた反転微細凹凸が、アルミニウム板の一方の主面に陽極酸化処理を施すことによって形成されたナノポーラス構造である、請求項2に記載のプラズモニックセンサ用の部材。
  4. 前記高分子材料がシクロオレフィンポリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラズモニックセンサ用の部材。
  5. 前記ドライエッチングが酸素プラズマエッチングである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラズモニックセンサ用の部材。
  6. 前記金属膜が、スパッタリングによって形成されたAu膜である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラズモニックセンサ用の部材。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラズモニックセンサ用の部材の製造方法であって、
    高分子材料製の基板の一方の主面に微細凹凸を形成する、微細凹凸形成工程を有し、前記微細凹凸は、所定の波長の光を受けた場合に局在表面プラズモン共鳴が発生するために必要な形態の凹凸であり、
    前記微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面をドライエッチングによって粗面化する、ドライエッチング工程を有し、かつ、
    前記ドライエッチング工程の後において、前記微細凹凸のうちの少なくとも凸部の表面上に金属膜を形成する、金属膜形成工程を有する、
    前記製造方法。
  8. 前記微細凹凸形成工程では、前記微細凹凸の原版の型に設けられた反転微細凹凸を、前記高分子材料製のシートの一方の主面に転写することによって、前記微細凹凸を形成する、請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記微細凹凸の原版の型に設けられた反転微細凹凸が、アルミニウム板の一方の主面に陽極酸化処理を施すことによって形成されたナノポーラス構造である、請求項7または8に記載の製造方法。
  10. 前記高分子材料がシクロオレフィンポリマーである、請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 前記ドライエッチングが酸素プラズマエッチングである、請求項7〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. 前記金属膜が、スパッタリングによって形成されたAu膜である、請求項7〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
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