JP2021069613A - 生体情報測定装置、及び生体情報測定プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】温度が変化することによって生じる、被測定者における酸素循環時間の測定のばらつきを抑制する。【解決手段】生体情報測定装置10は、被測定者の末端部位における温度が調節された状態で、被測定者の末端部位に含まれた測定部位における血中の酸素飽和度の変化を測定し、測定した血中の酸素飽和度の変化に基づいて、被測定者の酸素循環時間を推定する。【選択図】図7
Description
本発明は、生体情報測定装置、及び生体情報測定プログラムに関する。
特許文献1には、呼吸の気流の時間変化を示す気流信号、及び、酸素飽和度の時間変化を示す酸素飽和度信号を取得する信号取得部と、前記気流信号における第一時刻と、前記第一時刻での呼吸再開に対応した酸素飽和度の上昇を示す前記酸素飽和度信号における第二時刻との時間差に基づいて血液の酸素循環時間を測定する循環時間算出部とを有する循環時間測定装置が開示されている。
被測定者の酸素循環時間を測定し、例えば拍出量のように酸素循環時間と相関がある被測定者の生体情報を推定することがある。しかしながら、従来の測定では同じ被測定者であっても測定毎に酸素循環時間がばらつくことがあり、結果として酸素循環時間と相関がある被測定者の生体情報の推定値にもばらつきが生じることがあった。
これに対して、今回、酸素循環時間を測定する部位の温度変化が酸素循環時間のばらつきの一因になるとの知見が得られた。
本発明は、温度が変化することによって生じる、被測定者における酸素循環時間の測定のばらつきを抑制することができる生体情報測定装置、及び生体情報測定プログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1態様に係る生体情報測定装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、被測定者の血中酸素濃度を表す値を測定する測定部位を含んだ前記被測定者の胴体よりも末端側の末端部位における温度が調節された状態で、前記測定部位における前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化を測定し、測定した前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化に基づき、酸素が前記被測定者の体内に取り込まれてから血液を介して前記測定部位に到達するまでの時間を示す酸素循環時間を推定する。
第2態様に係る生体情報測定装置は、第1態様に係る生体情報測定装置において、前記プロセッサは、前記測定部位の温度を取得し、前記測定部位の温度が目的とする温度に達した場合に、前記測定部位における前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化を測定する。
第3態様に係る生体情報測定装置は、第1態様に係る生体情報測定装置において、前記プロセッサは、前記末端部位に前記末端部位の温度を変化させる物体が装着されてからの経過時間を測定し、前記経過時間が、前記末端部位の温度が前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の測定開始時の温度から変化するのに要する予め定めた待機時間以上となった場合に、前記測定部位における前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化を測定する。
第4態様に係る生体情報測定装置は、第2態様に係る生体情報測定装置において、目的とする温度が、前記末端部位の温度を変化させる物体で強制的に前記被測定者の前記測定部位における温度を上昇させる前の前記測定部位の温度より高い温度に設定される。
第5態様に係る生体情報測定装置は、第4態様に係る生体情報測定装置において、前記物体が熱を発生する加熱装置の場合、前記プロセッサは、前記末端部位の少なくとも一部分を加熱する前記加熱装置を制御して、前記測定部位の温度を調節する。
第6態様に係る生体情報測定装置は、第3態様に係る生体情報測定装置において、前記物体が熱を発生する加熱装置の場合、前記プロセッサは、前記末端部位の少なくとも一部分を加熱する前記加熱装置を制御して、前記測定部位の温度を調節すると共に、前記加熱装置の加熱量に応じて前記待機時間を調節する。
第7態様に係る生体情報測定装置は、第5態様または第6態様に係る生体情報測定装置において、前記プロセッサは、前記末端部位のうち、前記測定部位に血液を送り出す動脈が通っている箇所を加熱する前記加熱装置を制御して、前記測定部位の温度を調節する。
第8態様に係る生体情報測定装置は、第7態様に係る生体情報測定装置において、前記測定部位が指先の場合、前記プロセッサは、前記加熱装置によって前記被測定者の前記測定部位となる指先が含まれる方の腕の手首、または手を加熱して、前記被測定者の指先の温度を調節する。
第9態様に係る生体情報測定装置は、第5態様または第6態様に係る生体情報測定装置において、前記プロセッサは、前記測定部位を加熱する前記加熱装置を制御して、前記測定部位の温度を調節する。
第10態様に係る生体情報測定装置は、第5態様〜第9態様の何れかの態様に係る生体情報測定装置において、前記プロセッサは、前記測定部位の温度が目的とする温度を含む予め定めた温度範囲内に留まるように、前記加熱装置を制御する。
第11態様に係る生体情報測定装置は、第3態様または第4態様に係る生体情報測定装置において、前記物体が、前記末端部位の少なくとも一部分を覆って前記末端部位を保温する被覆材である。
第12態様に係る生体情報測定装置は、第11態様に係る生体情報測定装置において、前記測定部位が指先の場合、前記被覆材として手袋が用いられる。
第13態様に係る生体情報測定装置は、第2態様に係る生体情報測定装置において、目的とする前記測定部位の温度が、前回前記測定部位で前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化を測定した場合の温度に設定される。
第14態様に係る生体情報測定装置は、第1態様〜第13態様の何れかの態様に係る生体情報測定装置において、前記プロセッサは、推定した酸素循環時間を用いて、前記被測定者の拍出量を出力する。
第15態様に係る生体情報測定装置は、第2態様に係る生体情報測定装置において、前記末端部位の温度を検出する温度センサと、前記被測定者の生体に関する情報を表示する表示装置を備え、前記プロセッサは、前記温度センサから前記被測定者における前記末端部位の温度を取得すると共に、推定した酸素循環時間から得られる前記被測定者の拍出量を前記表示装置に表示させる。
第16態様に係る生体情報測定装置は、第3態様に係る生体情報測定装置において、前記被測定者の生体に関する情報を表示する表示装置を備え、前記プロセッサは、前記経過時間及び推定した酸素循環時間から得られる前記被測定者の拍出量を前記表示装置に表示させる。
第17態様に係る生体情報測定プログラムは、コンピュータに、被測定者の胴体よりも末端側の末端部位に設けられた、前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の測定対象となる測定部位の温度を取得し、前記測定部位の温度が目的とする温度に達した場合に、前記測定部位における前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化を測定し、測定した前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化に基づき、酸素が前記被測定者の体内に取り込まれてから血液を介して前記測定部位に到達するまでの時間を示す酸素循環時間を推定する処理を実行させるためのプログラムである。
第1態様及び第17態様によれば、温度が変化することによって生じる、被測定者における酸素循環時間の測定のばらつきを抑制することができる、という効果を有する。
第2態様によれば、測定部位の温度の変化から、血中酸素濃度を表す値の変化の測定時期を判定することができる、という効果を有する。
第3態様によれば、末端部位の温度を変化させる物体を装着してからの経過時間から、血中酸素濃度を表す値の変化の測定時期を判定することができる、という効果を有する。
第4態様によれば、測定部位の温度を平時の温度より低下させる場合と比較して、酸素循環時間のばらつきを抑制しやすい、という効果を有する。
第5態様によれば、測定部位を加熱しなくても酸素循環時間の測定のばらつきを抑制することができる、という効果を有する。
第6態様によれば、待機時間を固定値とする場合と比較して、測定毎の測定部位の温度のばらつきを抑制することができる、という効果を有する。
第7態様によれば、測定部位に血液を送り出す動脈が通っていない箇所を加熱する場合と比較して、効率的に測定部位の温度を上昇させることができる、という効果を有する。
第8態様によれば、上腕部を加熱する場合と比較して、効率的に指先の温度を上昇させることができる、という効果を有する。
第9態様によれば、測定部位の温度を目的とする温度まで上昇させることができる、という効果を有する。
第10態様によれば、測定部位の温度を特定の温度範囲内に維持することができる、という効果を有する。
第11態様によれば、熱源を用いて測定部位の温度を上昇させる場合と比較して、酸素循環時間の測定に伴う消費電力を抑制することができる、という効果を有する。
第12態様によれば、酸素循環時間の測定専用の被覆材を使用することなく、測定部位の温度を上昇させることができる、という効果を有する。
第13態様によれば、測定部位の温度に関して、毎回同じ条件の下で酸素循環時間を測定することができる、という効果を有する。
第14態様によれば、測定部位の温度を調節しない場合と比較して、拍出量のばらつきを抑制することができる、という効果を有する。
第15態様によれば、温度センサ及び表示装置を別途用意することなく、生体情報測定装置のみで拍出量の測定を行うことができる、という効果を有する。
第16態様によれば、表示装置を別途用意することなく、生体情報測定装置のみで拍出量の測定を行うことができる、という効果を有する。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の一例について詳細に説明する。なお、同じ構成要素及び同じ処理には全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を省略する。
生体情報測定装置10は生体8に関する情報(生体情報)のうち、特に循環器系に関する生体情報を測定する装置である。循環器系とは、例えば血液のような体液を体内で循環させながら輸送するための器官群を総称するものである。
循環器系に関する生体情報には複数の指標が存在するが、血液を血管に送り出す心臓の状態を示す指標の1つとして、例えば心臓から拍出される血液量を表す心拍出量(CO:Cardiac Output)が挙げられる。
心拍出量が基準値より低下すると、例えば左室駆出率が低下するタイプの心不全や脱水など血液量が低下した状態であることが示唆されるなど、心拍出量は様々な心臓疾患の検査、又は投薬効果の確認に利用されている。
心拍出量の測定方法には、例えば心拍出量の測定対象者である被測定者の肺動脈に、先端にバルーンが付いたカテーテルを挿入して測定する方法がある。
しかしながら、カテーテルを用いた心拍出量の測定方法では、被測定者の血管にカテーテルを挿入する必要があるため、他の測定方法に比べて被測定者における侵襲性が高くなる。
したがって、カテーテルを用いた心拍出量の測定方法よりも被測定者の負担が少なくなるように、被測定者の脈波から得られる血中の酸素飽和度を用いて心拍出量を測定する方法が研究されている。ここで血中の酸素飽和度とは、血中酸素濃度を表す値の一例であり、血液中のヘモグロビンがどの程度酸素と結合しているかを示す値であり、血中の酸素飽和度が低下するにつれて、例えば貧血等の症状が発生しやすくなることを示すものである。以降では、血中の酸素飽和度を単に「酸素飽和度」ということにする。脈波とは、心臓による血液の送り出しに伴う血管の拍動変化を示す値である。
まず、図1を参照して、生体情報のうち、酸素飽和度の測定方法について説明する。
図1に示すように、酸素飽和度は、被測定者の体(「生体8」という)に向けて発光素子1から光を照射し、受光素子3で受光した、被測定者の体内に張り巡らされている動脈4、静脈5、及び毛細血管6等で反射又は透過した光の強さ、すなわち反射光又は透過光の受光量を用いて測定される。
図2は、例えば生体8に吸収される光量の変化量を示す概念図である。吸光量グラフ92に示すように、生体8における吸光量は、時間の経過と共に変動する傾向が見られる。
生体8における吸光量の変動に関する内訳について見てみると、主に動脈4によって吸光量が変動し、静脈5及び静止組織を含むその他の組織では、動脈4に比べて吸光量が変動しないとみなせる程度の変動量であることが知られている。これは、心臓から拍出された動脈血は脈波を伴って血管内を移動するため、動脈4が動脈4の断面方向に沿って経時的に伸縮し、動脈4の厚みが変化するためである。なお、図2において、矢印94で示される範囲が、動脈4の厚みの変化に対応した吸光量の変動量を示している。
図2において、時刻taにおける受光量をIa、時刻tbにおける受光量をIbとすれば、動脈4の厚みの変化による光の吸光量の変化量ΔAは、(1)式で表される。
(数1)
ΔA=ln(Ib/Ia)・・・(1)
これに対して、図3は、動脈4を流れる酸素と結合したヘモグロビン(酸化ヘモグロビン)及び酸素と結合していないヘモグロビン(還元ヘモグロビン)の各波長に対する光の吸光量の一例を示す図である。図3において、吸光量グラフ96が酸化ヘモグロビンにおける光の吸光量を表し、吸光量グラフ97が還元ヘモグロビンにおける光の吸光量を表す。
図3に示すように、酸化ヘモグロビンは還元ヘモグロビンと比較して、約850nm近辺の波長を有する赤外線(infrared:IR)領域99の光を吸収しやすく、還元ヘモグロビンは酸化ヘモグロビンと比較して、特に約660nm近辺の波長を有する赤色領域98の光を吸収しやすいことが知られている。
更に、酸素飽和度は、異なる波長における吸光量の変化量ΔAの比率と比例関係があることが知られている。
したがって、他の波長の組み合わせに比べて、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとで吸光量の差が現われやすい赤外光(IR光)と赤色光を用いて、IR光を生体8に照射した場合の吸光量の変化量ΔAIRと、赤色光を生体8に照射した場合の吸光量の変化量ΔARedとの比率をそれぞれ算出することで、(2)式によって酸素飽和度Spが算出される。なお、(2)式においてkは比例定数である。
(数2)
Sp=k(ΔARed/ΔAIR)・・・(2)
すなわち、酸素飽和度を算出する場合、それぞれ異なる波長の光を照射する複数の発光素子1を生体8に照射する。具体的には、IR光を照射する発光素子1と赤色光を照射する発光素子1を生体8に用いる。この場合、IR光を照射する発光素子1と赤色光を照射する発光素子1との発光期間は重複してもよいが、望ましくは発光期間が重複しないよう発光させる。そして、各々の発光素子1による反射光又は透過光を受光素子3で受光して、各受光時点における受光量から(1)式及び(2)式、又は、これらの式を変形して得られる公知の式を算出することで、酸素飽和度が測定される。
上記(1)式を変形して得られる公知の式として、例えば(1)式を展開して、光の吸光量の変化量ΔAを(3)式のように表してもよい。
(数3)
ΔA=lnIb−lnIa・・・(3)
また、(1)式は(4)式のように変形することができる。
(数4)
ΔA=ln(Ib/Ia)=ln(1+(Ib-Ia)/Ia) ・・・(4)
通常、(Ib-Ia)≪Iaであることから、ln(Ib/Ia)≒(Ib-Ia)/Iaが成り立つため、(1)式の代わりに、光の吸光量の変化量ΔAとして(5)式を用いてもよい。
(数5)
ΔA≒(Ib-Ia)/Ia ・・・(5)
以降では、IR光を照射する発光素子1と赤色光を照射する発光素子1とを区別する場合、IR光を照射する発光素子1を「発光素子1A」といい、赤色光を照射する発光素子1を「発光素子1B」ということにする。
こうした測定方法によれば、発光素子1及び受光素子3を被測定者の体表に近づけることで酸素飽和度が測定されるため、血管にカテーテルを挿入して酸素飽和度を測定するよりも被測定者の負担が少なくなる。
なお、酸素飽和度は、被測定者の胴体よりも末端側の末端部位、例えば頭、腕、及び足で測定される。こうした末端部位のうち、発光素子1からIR光及び赤色光が照射され、酸素飽和度の測定対象となる部位を、特に「測定部位」という。
次に、図4を参照して、心臓からの血液の拍出量と相関がある指標の一例である酸素循環時間について説明する。
酸素循環時間とは、被測定者が呼吸をすることで、酸素が被測定者の体内に取り込まれてから血液を介して酸素飽和度の測定部位に到達するまでの時間のことをいう。また、ここでいう拍出量には、上述の心拍出量に限らず、1回拍出量、心係数等も含まれる。なお、心拍出量とは、心臓の単位時間(例えば1分)当たりの収縮によって動脈へ拍出される血液量と定義される。1回拍出量とは、心臓の1回の収縮によって動脈へ拍出される血液量と定義される。心係数とは、心拍出量を被測定者の体表面積で除して得られる係数と定義される。
酸素循環時間のうち、酸素が被測定者の肺から指先に到達するまでに要する時間を、特にLFCT(Lung to Finger Circulation Time)という。LFCTを測定するためには、被測定者の指先を酸素飽和度の測定部位とする。
酸素循環時間を測定する測定部位は、被測定者の末端部位であればどこでもよいが、以降では、被測定者の指先における酸素飽和度から酸素循環時間の一例であるLFCTを測定する例について説明することにする。
また、図4に示すように拍出量とLFCTとは相関がある。例えば拍出量の一例である心拍出量をCOとした場合、心拍出量COは、以下に示す(6)式により算出される。
(数6)
CO=(a0×S)/LFCT・・・(6)
ここで、a0は予め定めた定数、Sは被測定者の体表面積(m2)であり、LFCTの単位は秒である。このように拍出量と相関のあるLFCTは、上述した酸素飽和度の変化から測定される。
図5は、LFCTの測定原理を示した図である。なお、図5において、縦軸は酸素飽和度の逆数を表し、横軸は時間を表す。図5に示すようにLFCTは、一定期間呼吸を停止した後に呼吸を再開した時点から、酸素飽和度が回復し始めたことを示す変曲点までの時間を測定することで得られる。呼吸を再開した時点とは、呼吸を再開した時刻を含む予め定めた期間内の時刻のことであり、呼吸を再開した時点は時間的な幅を持つ。
このようにして測定されるLFCTは、同じ被測定者であっても測定毎にLFCTがばらつくことがあるためその原因を検討したところ、発明者は、例えば呼吸の停止期間のばらつきによるもの以外に、酸素飽和度の測定部位の温度変化によってもLFCTが変化するという知見を得た。
図6は、LFCTとLFCTの測定部位である指先の温度(「指尖温度」ともいう)との関係を示したグラフである。図6には、4名の被測定者A〜被測定者Dのそれぞれの指先の温度を変化させた場合におけるLFCTの変化の状況を示すグラフ24A〜24Dが示されている。グラフ24A〜24Dは、被測定者の指先が平時の温度にある場合にLFCTを測定した後、被測定者の前腕部を加熱して再度LFCTを測定し、その時の被測定者の指先の温度とLFCTとを関連付けて記録する作業を繰り返すことで得られたものであり、グラフ24Aが被測定者A、グラフ24Bが被測定者B、グラフ24Cが被測定者C、及びグラフ24Dが被測定者DのそれぞれのLFCTと指先の温度との関係を示している。平時の温度とは、末端部位を強制的に加熱または冷却しない状態における測定部位の温度のことである。
図6から被測定者A〜被測定者Dの各々について、指先の温度、すなわち、酸素飽和度の測定部位の温度が高くなるにしたがって、LFCTが短くなる傾向があることがわかる。これは、被測定者の末端部位の温度が低下している状態では、末端部位における末梢血管が収縮し、血液が末梢血管を流れにくくなる一方、被測定者の末端部位の温度が高くなるにしたがって、末端部位における末梢血管が拡大し、血液が末梢血管を流れやすくなるためであると推定される。したがって、被測定者の末端部位の温度が高くなるにしたがって、被測定者の肺から測定部位まで酸素が到達するのに要する時間、すなわちLFCTが短くなる傾向を示す。
なお、この結果は、酸素循環時間から例えば拍出量のような被測定者の心機能を表す値を推定する場合には、被測定者の末端部位の血管の状態を考慮して酸素循環時間を測定する必要があることを示唆している。
また、図6は、LFCTの測定を開始した時点の温度(「測定開始温度」という)が低いほど、温度上昇に対するLFCTの変化量が大きくなり、LFCTがばらつきやすくなる傾向があることを示している。例えばグラフ24Dに比べてLFCTの測定開始温度が低いグラフ24A、グラフ24B、及びグラフ24Cの方が、温度上昇に対するLFCTの変化量が大きくなっている。
温度上昇に対するLFCTの変化量について詳細に検討したところ、指先の温度が特定の温度(「基準温度d0」という)以上になってからLFCTの測定を開始すれば、LFCTの測定を基準温度d0未満から開始する場合に比べて、その後の指先の加熱によって発生するLFCTの変化量が低減しやすいという知見が得られた。これは、測定部位の温度が基準温度d0になれば、それ以上測定部位の温度が上昇しても、末端部位における末梢血管がそれ以上拡張しにくくなるため、LFCTの変化量が一定であるとみなせる予め定めた範囲(「許容範囲」という)に収まりやすくなる。
このことは、測定部位の温度を基準温度d0以上に上昇させてから、測定部位における酸素循環時間を測定することで、測定部位の温度変化に起因する酸素循環時間のばらつきを抑制できることを示唆していると共に、例えば酸素循環時間から推定される被測定者の心機能を表す値のばらつきも抑制できることを示唆している。
図7は、指先を酸素飽和度の測定部位とした生体情報測定装置10の外観例を示す図である。生体情報測定装置10は、例えば被測定者の手全体を覆う手袋状の形をしており、手の甲に相当する位置に本体部2が取り付けられ、指先に相当する位置にセンサ部9が取り付けられている。また、被測定者の末端部位(この場合、被測定者の手)を覆う被覆部には、加熱装置の一例である電熱線等の加熱素子15が配置されており、本体部2が加熱素子15を制御することで、指先の酸素飽和度を検出するセンサ部9における被測定者の温度が調節される。本体部2とセンサ部9は有線、または無線で接続され、各々の間でデータ通信が行われる。
なお、加熱素子15を被測定者の手を覆う生体情報測定装置10の被覆部全体に配置する必要はなく、加熱素子15を被覆部の一部に配置することで、本体部2は被測定者の手の少なくとも一部分を加熱するよう制御してもよい。また、センサ部9は生体情報測定装置10の被覆部から取り外し可能であっても、被覆部と一体化したものであってもよい。図7では被測定者の人差し指にセンサ部9が取り付けられているが、センサ部9の取り付け位置は人差し指に限られず、他の指であってもよい。
加熱素子15で酸素飽和度の測定部位である指先、すなわち、センサ部9が取り付けられている部分を加熱してもよいが、指先を直接加熱せずに、指先に血液を送り出す動脈が通っている箇所を加熱してもよい。この場合、加熱素子15によって温められた血液が指先に到達することで、指先の温度が上昇することになる。
図8は、生体情報測定装置10における回路構成の概要の一例を示す回路ブロック図である。
図8に示すように、生体情報測定装置10は発光素子1A、発光素子1B、受光素子3、発光制御部12、駆動回路14、加熱素子15、増幅回路16、A/D(Analog/Digital)変換回路18、温度センサ19、制御部20、及び表示ユニット22を含む。
このうち、発光素子1A、発光素子1B、受光素子3、増幅回路16、及び温度センサ19がセンサ部9に含まれ、発光制御部12、駆動回路14、A/D変換回路18、制御部20、及び表示ユニット22が本体部2に含まれる。また、既に説明したように、加熱素子15は生体情報測定装置10の被覆部に配置される。センサ部9と本体部2にそれぞれ含まれる回路ブロックの分け方は一例であり、例えば増幅回路16を本体部2に含めてもよい。また、センサ部9と本体部2を一体化させてもよい。
発光制御部12は、発光素子1A及び発光素子1Bに駆動電力を供給する電力供給回路を含む駆動回路14に、発光素子1A及び発光素子1Bの発光周期及び発光期間を制御する制御信号を出力する。なお、発光制御部12は、制御部20の一部として実現してもよい。
駆動回路14は、発光制御部12からの制御信号を受け付けると、制御信号で指示された発光周期及び発光期間に従って、発光素子1A及び発光素子1Bに駆動電力を供給し、発光素子1A及び発光素子1Bを駆動する。
受光素子3は、発光素子1Aから受光したIR光に対応する受光信号と、発光素子1Bから受光した赤色光に対応する受光信号を出力する。
増幅回路16は、受光素子3が出力した各々の光の強さに応じた受光信号を、A/D変換回路18の入力電圧範囲として規定される電圧レベルまで増幅する。
A/D変換回路18は、増幅回路16で増幅した電圧を入力として、当該電圧の大きさで表される受光素子3の受光量を数値化して出力する。
制御部20は、生体情報測定装置10に係る各機能を担うプロセッサの一例であるCPU(Central Processing Unit)20A、コンピュータを生体情報測定装置10として機能させる生体情報測定プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)20B、及びCPU20Aの一時的な作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)20Cを備える。
表示ユニット22は、CPU20Aによって処理された情報、具体的には被測定者の酸素飽和度の変化、LFCT、及び拍出量等の被測定者の生体情報を表示する表示装置の一例である。表示ユニット22には、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等が用いられる。
なお、本体部2にはボタン等の入力デバイスが配置されており、CPU20Aは、ボタンの押下状況からユーザの指示を把握し、ユーザの指示に基づいて生体情報測定装置10の制御を行う。
図9は、センサ部9における発光素子1A、発光素子1B、受光素子3、及び温度センサ19の配置例を示す図である。
図9に示すように、発光素子1A、発光素子1B、受光素子3、及び温度センサ19は、生体8(この場合、被測定者の指先)の一方の面に向かって並べて配置される。この場合、受光素子3は、毛細血管6で反射された発光素子1A及び発光素子1Bの光を受光する。
なお、発光素子1A、発光素子1B、及び受光素子3の配置は、図9の配置例に限定されない。例えば図10に示すように、発光素子1A及び発光素子1Bと、受光素子3とを、生体8を挟んで対向する位置に配置してもよい。この場合、受光素子3は、生体8を透過した発光素子1A及び発光素子1Bの光を受光する。
発光素子1A及び発光素子1Bには面発光レーザ素子が用いられるが、端面発光レーザ素子を用いてもよい。また、発光素子1A及び発光素子1Bの各々から照射される光はレーザ光でなくてもよい。例えば発光素子1A及び発光素子1Bに、発光ダイオード(Light-Emitting Diode: LED)または有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode: OLED)を用いてもよい。
図11は、受光素子3が出力した出力電圧のサンプリングタイミングの一例を示すグラフである。図11において、丸印の位置がサンプリングタイミングを示している。なお、図11において、縦軸は受光素子3の出力電圧を表し、横軸は時間を表す。
図11に示すように、受光素子3が発光素子1Aから受光した光に対応する出力電圧を、IR1、IR2、・・・、IRnとした場合に、時系列データとしてIR(t)=IR1、IR2、・・・、IRnが得られる。同様に、受光素子3が発光素子1Bから受光した光に対応する出力電圧を、Red1、Red2、・・・、Rednとした場合に、時系列データとしてRed(t)=Red1、Red2、・・・、Rednが得られる。このとき、両方の発光素子1A及び発光素子1Bに対して、発光しない期間を設け、暗状態での出力Dark1、Dark2、・・・、Darknを得るようにしてもよい。この場合、IR(t)は、IR1−Dark1、IR2−Dark2、・・・、IRn−Darknとしてもよい。同様に、Red(t)は、Red1−Dark1、Red2−Dark2、・・・、Redn−Darknとしてもよい。これらのデータのサンプリングは、発光期間の終了近くで出力が安定している状態で行うことが望ましい。
図12は、生体情報測定装置10の機能構成例を示すブロック図である。図12に示すように、生体情報測定装置10は脈波処理部30、酸素飽和度測定部32、酸素循環時間測定部34、心拍出量測定部36、及び出力部38を含む。
脈波処理部30は、センサ部9から受け付けたIR光及び赤色光のそれぞれの受光量を用いて、IR光から得られた被測定者の脈波を表す脈波信号と、赤外光から得られた被測定者の脈波を表す脈波信号をそれぞれ生成する。
酸素飽和度測定部32は、脈波処理部30から脈波信号を受け付けると、受け付けた脈波信号から被測定者の酸素飽和度を測定する。具体的には、酸素飽和度測定部32は脈波信号を用いて、動脈4の厚みの変化によるIR光の吸光量の変化量ΔAIRと、赤色光の吸光量の変化量ΔARedとをそれぞれ(1)式に従って算出する。そして、酸素飽和度測定部32は、算出した変化量ΔAIRと変化量ΔARedを用いて、例えば(2)式から被測定者の酸素飽和度を測定し、測定した酸素飽和度を酸素循環時間測定部34に通知する。
以降では一例として、酸素飽和度測定部32が被測定者の酸素飽和度を測定する例について説明するが、酸素飽和度測定部32は、被測定者の酸素飽和度の時間変化を示す値であればどのような値を測定してもよい。例えば、酸素飽和度測定部32は、酸素飽和度の逆数、又は変化量ΔARedと変化量ΔAIRの比率といった、酸素飽和度の時間変化と相関関係を有する値を測定してもよい。
酸素循環時間測定部34は、例えば本体部2に取り付けられているボタンの押下等によって、LFCTを測定するために呼吸を止めた被測定者から呼吸を再開したことを通知する再開通知を受け付けると、呼吸の再開を受け付けた時刻を時刻t1として記憶する。そして、酸素循環時間測定部34は、酸素飽和度測定部32で測定される酸素飽和度の変化を監視して、酸素飽和度の変曲点を検出する。酸素循環時間測定部34は、酸素飽和度の変曲点を検出した時刻を時刻t2として記憶し、時刻t1と時刻t2の差分で表される時間をLFCTとして測定する。なお、「変曲点を検出」するとは、酸素循環時間の測定に実質的に影響がない範囲で、変曲点から多少ずれた位置を検出する場合を含む。
そして、酸素循環時間測定部34は、測定した酸素循環時間を心拍出量測定部36に通知する。
心拍出量測定部36は酸素循環時間測定部34から受け付けたLFCTを用いて、被測定者の心拍出量を測定する。心拍出量は、上述した(6)式によって算出される。なお、心拍出量測定部36は心拍出量の他に、例えば心係数及び1回拍出量といったLFCTから得られる心機能を表す値を測定してもよい。
次に、図13を用いて生体情報測定装置10の動作について説明する。
図13は、被測定者が図7に示した手袋状の生体情報測定装置10を手に装着し、被測定者の指先にセンサ部9が取り付けられた状態で、生体情報測定装置10の操作者から心拍出量の測定指示を受け付けた場合に、CPU20Aによって実行される生体情報測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
生体情報測定処理を規定する生体情報測定プログラムは、例えば生体情報測定装置10のROM20Bに予め記憶されている。生体情報測定装置10のCPU20Aは、ROM20Bに記憶される生体情報測定プログラムを読み込み、生体情報測定処理を実行する。
ステップS10において、CPU20Aはセンサ部9を制御して、被測定者の指先における酸素飽和度の測定を開始する。
ステップS20において、CPU20Aは加熱素子15を制御して、測定部位を含む末端部位(この場合、被測定者の手)の加熱を開始し、末端部位の温度を調整する。
ステップS30において、CPU20Aは、温度センサ19が出力する被測定者の指先の温度を取得する。温度センサ19には、例えばサーミスタ、熱電対、測温抵抗体(Resistance Temperature Detector:RTD)、またはIC温度センサ等が用いられる。
ステップS40において、CPU20Aは、ステップS30で取得した被測定者の指先の温度が、予め定めた基準温度d0に到達したか否かを判定する。被測定者の指先の温度が基準温度d0に到達するとは、被測定者の指先の温度が基準温度d0以上になることをいう。被測定者の指先の温度がまだ基準温度d0に到達していない場合、ステップS30に移行し、CPU20Aは、被測定者の指先の温度が基準温度d0に到達するまで被測定者の指先の温度を監視する。
なお、すべての被測定者に対して共通の基準温度d0を用いてもよいが、被測定者毎に異なる基準温度d0を用いてもよい。基準温度d0は、例えば被測定者の指先における平時の温度より高い温度で、かつ、指先の温度を上昇してもLFCTの変化量が許容範囲に収まるような温度範囲のうち、下限の温度が用いられる。各々の被測定者に対して一度設定した基準温度d0は、生体情報測定処理の実行毎に変更しないことが好ましい。
加熱素子15による被測定者の手の加熱に伴い、被測定者の指先の温度が基準温度d0に到達した場合には、ステップS50に移行する。なお、加熱前における被測定者の指先の温度が既に基準温度d0に到達しているような場合には、ステップS40における最初の判定でステップS50に移行することになる。
なお、加熱素子15で加熱を行っても、指先の温度が基準温度d0以上にならない被測定者もいることから、ステップS40の判定処理における判定回数に上限を設け、判定回数が上限に達した場合には、図13に示す生体情報測定処理を終了してもよく、また、これ以上の温度の取得を中止し、ステップS50に移行するようにしてもよい。
被測定者の指先の温度が基準温度d0に到達したことから、以降も被測定者の手を加熱し続けて指先の温度が上昇したとしても、温度変化に伴うLFCTの変化量は許容範囲に収まる。しかしながら、温度変化に伴うLFCTの変化量をより小さくするためには、被測定者の指先の温度を基準温度d0以上の何れかの温度に固定することが好ましい。したがって、ステップS50において、CPU20Aは、被測定者の指先の温度が基準温度d0であるとみなせるような基準温度d0を含む予め定めた温度範囲内(例えば基準温度d0±1%)に留まるように、加熱素子15での加熱量を制御する温度維持制御を実行する。これにより、以降の処理では、被測定者の指先の温度が基準温度d0に維持された状態での酸素飽和度が測定されることになる。なお、被測定者の指先の温度を基準温度d0に維持する例は、温度維持制御による温度維持の一例であり、基準温度d0を超えた温度で被測定者の指先の温度を維持するようにしてもよい。
ステップS60において、CPU20Aは被測定者のLFCTを測定するため、例えば表示ユニット22を通じて被測定者に呼吸を停止するように指示する。被測定者への呼吸の停止の指示は文字や画像による視覚を通じた指示ではなく、例えば音声や振動で指示してもよい。また、CPU20Aは、被測定者が呼吸を停止してからの経過時間を計測するため、タイマを起動する。タイマは、例えばCPU20Aに内蔵されたタイマ機能が用いられる。
一方、生体情報測定装置10には、被測定者が必要以上に呼吸を停止したり、酸素飽和度が低下し始めないうちに呼吸を再開したりしないように、LFCTを測定するのに最適な呼吸の停止時間を示す規定時間が予め設定されている。したがって、ステップS70において、CPU20AはステップS60で被測定者が呼吸を停止してからの経過時間が規定時間に達したか否かを判定する。CPU20Aは、被測定者が呼吸を停止してからの経過時間が規定時間に達するまでステップS70の判定処理を繰り返し実行し、被測定者における呼吸の停止期間を監視する。
一方、被測定者が呼吸を停止してからの経過時間が規定時間に達した場合には、ステップS80に移行する。
ステップS80において、CPU20Aは、例えば表示ユニット22を通じて被測定者に呼吸を再開するように指示する。被測定者への呼吸の再開の指示は呼吸の停止の指示と同様に、文字や画像による視覚を通じた指示ではなく、例えば音声や振動で指示してもよい。また、CPU20Aは、被測定者が呼吸を再開してからの経過時間を計測するためにステップS60で起動したタイマを停止した後、タイマを再起動する。
被測定者が呼吸を再開した場合、図5を用いて説明したように、センサ部9で測定している被測定者の酸素飽和度が減少から上昇に転じる変曲点が現れるため、ステップS90において、CPU20Aは酸素飽和度の変化を測定し、変曲点を検出する。
ステップS100において、CPU20Aは、変曲点を検出した時点における経過時間をタイマから取得する。取得した経過時間は、被測定者が呼吸を再開してから酸素飽和度の変曲点が現れるまでの経過時間であることから、LFCTを表している。これにより、被測定者のLFCTの推定が終了したことから、CPU20Aはタイマを停止する。
ステップS110において、CPU20Aは、ステップS100で推定したLFCTを例えば(6)式に示した心拍出量の算出式に代入して、被測定者の心拍出量を推定する。
ステップS120において、CPU20Aは、ステップS110で推定した被測定者の心拍出量を出力する。ここでは一例として、CPU20Aは表示ユニット22に心拍出量を表示することで心拍出量の出力を行うが、心拍出量の出力形態に制約はなく、例えば、心拍出量を音声で通知してもよく、また、図示しない画像形成ユニットで心拍出量を用紙に印字してもよい。更に、CPU20Aが、図示しない通信回線を通じて図示しない外部装置のメモリに心拍出量を出力する形態も、心拍出量の出力形態に含まれる。
以上により、図13に示した生体情報測定処理を終了する。
図13に示した生体情報測定処理では、ステップS40で、被測定者の指先の温度が基準温度d0に到達したか否かを判定し、指先の温度が基準温度d0に到達した場合にLFCTの測定を開始する例について説明した。しかしながら、加熱素子15により被測定者の手が加熱されれば、時間の経過と共に被測定者の指先の温度が基準温度d0に到達するようになる。
したがって、CPU20Aは、被測定者の手に生体情報測定装置10が装着されてからの経過時間、より好ましくはステップS20で被測定者の手を加熱し始めてからの経過時間(「加熱時間」ともいう)を測定し、測定した経過時間が、被測定者の指先の温度が基準温度d0に到達するのに要する時間として予め定めた待機時間以上となった場合に、LFCTの測定を開始してもよい。
すなわち、CPU20Aは、被測定者の手に生体情報測定装置10が装着されてからの経過時間によって、被測定者の指先の温度が基準温度d0に到達したか否かを判定してもよい。この場合、生体情報測定装置10の温度センサ19は不要となる。
なお、加熱素子15の加熱量によって被測定者の指先の温度が基準温度d0に到達するまでに要する時間が変化することから、CPU20Aは、加熱素子15の加熱量によって待機時間を調節することが好ましい。
被測定者の手に生体情報測定装置10が装着されてからの経過時間は、例えば生体情報測定装置10が図13のステップS10で酸素飽和度の測定を開始してからの経過時間、またはステップS20で加熱を開始してからの経過時間によって表される。
なお、ここでは手袋状の生体情報測定装置10に取り付けられた加熱素子15によって被測定者の手を温め、被測定者の指先の温度が基準温度d0に達した場合における被測定者の酸素飽和度の変化から推定したLFCTを用いて、被測定者の心拍出量を出力する例を説明したが、生体情報測定装置10の形状は、必ずしも手袋状である必要はない。
例えば、図14に示すように、生体情報測定装置10は被測定者の手のひらや手の甲を被覆部で覆う代わりに、手首を覆うリストバンド状の形状であってもよい。リストバンド状の被覆部には加熱素子15が配置されており、手首を通る動脈の血液を温めることで、酸素飽和度の測定部位となる手の指先の温度が基準温度d0まで上昇することになる。この場合、被測定者の指先に取り付けられたセンサ部9と本体部2は、有線または無線で接続される。
更に言えば、被測定者の肩から肘までの上腕を加熱素子15が配置された被覆部で覆う生体情報測定装置10や、被測定者の肘から手首までの前腕を加熱素子15が配置された被覆部で覆う生体情報測定装置10であってもよい。
また、酸素飽和度を測定する測定部位は手に限らず、被測定者の末端部位であればどこでもよい。例えば、指先にセンサ部9が取り付けられた靴下状の生体情報測定装置10を被測定者に履いてもらって、被覆部に配置された加熱素子15で足を加熱し、被測定者における足の指先の温度が基準温度d0に達した場合に、足の指先で酸素飽和度を測定してもよい。
なお、靴下状の生体情報測定装置10で被測定者の足全体を加熱するのではなく、足首、大腿部、または下腿部を覆う被覆部に加熱素子15が配置された生体情報測定装置10で被覆部に覆われた部位を加熱しながら、足の指先に取り付けたセンサ部9で被測定者の酸素飽和度を測定してもよい。
また、足や手を覆う被覆部に加熱素子15が配置されていない生体情報測定装置10であっても、被覆部によって足や手が覆われることにより保温が行われるため、被測定者自身の体温によって測定部位の温度が上昇することになる。したがって、生体情報測定装置10は必ずしも加熱素子15を必要としない。加熱素子15が配置されていない生体情報測定装置10の被覆部は、末端部位の少なくとも一部分を覆って末端部位を保温する被覆材の一例となる。
この場合、図13のステップS20及びS50の処理は不要となる。また、保温による測定部位の温度の上昇速度は、加熱による測定部位の温度の上昇速度よりも遅い。したがって、CPU20Aは、例えば図13のステップS30及びS40で、測定部位の温度が基準温度d0に到達したか否かを判定する代わりに、被測定者が測定部位に生体情報測定装置10を装着してからの経過時間、すなわち、ステップS10で酸素飽和度の測定を開始してからの経過時間をタイマで計測し、タイマが予め定めた保温時間に達した場合にステップS60に移行して、被測定者に呼吸の停止を指示してもよい。
加熱素子15を用いずに被覆材で末端部位の少なくとも一部を覆って末端部位を保温すれば、被覆材の装着前後で末端部位の温度が変化することから、末端部位における温度の調節の一例となる。
上記では、温度変化に伴うLFCTのばらつきを抑制するため、測定部位の温度を平時の温度よりも高い温度まで上昇した上で、測定部位の温度変化が予め定めた温度範囲内に収まるようにしてLFCTを測定した。しかしながら、LFCTの測定時における測定部位の温度が測定毎に毎回変化しないようにすれば、温度変化に伴うLFCTのばらつきは抑制されることから、測定部位の温度を平時の温度よりも低い温度まで低下した上で、測定部位の温度変化が予め定めた温度範囲内に収まるようにしてLFCTを測定してもよい。
この場合、加熱素子15の代わりにペルチェ素子のような冷却素子を生体情報測定装置10の被覆部に配置し、CPU20Aは、温度センサ19で測定部位の温度を測定しながら、測定部位の温度が目的とする温度まで低下するように冷却素子の温度を制御すればよい。
睡眠中に一時的に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群の患者に、本実施の形態に係る生体情報測定装置10を装着して寝てもらえば、呼吸を再開したタイミングで睡眠中のLFCTが測定され、酸素飽和度や測定したLFCTを時刻情報と共にROM20Bに記憶することで、後から睡眠中の患者における酸素飽和度の変化や心拍出量といった生体情報が得られることになる。
この場合、被測定者における呼吸の停止及び再開のタイミングは、例えば被測定者の口や鼻の近傍に設けたエアフローセンサで、気流や温度の変化を検出することで特定される。
このように本実施の形態に係る生体情報測定装置10によれば、被測定者の末端部位に設けた測定部位にセンサ部9を取り付け、例えば加熱素子15、保温材、または冷却素子によって被測定部の温度を変化させながら測定部位における温度を取得する。測定部位の温度が目的とする温度に達した場合に、血中酸素濃度を表す値の変化を測定し、被測定者の酸素循環時間を推定すれば、測定部位の温度が異なる状況で血中酸素濃度を表す値の変化を測定する場合と比較して、酸素循環時間のばらつきが抑制される。
以上、実施の形態を用いて本発明について説明したが、本発明は実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で処理の順序を変更してもよい。具体的には、図13において、ステップS10とステップS20の処理を入れ替えて、末端部位の少なくとも一部の加熱を開始してから酸素飽和度の測定を行うようにしてもよい。
実施の形態では、一例として生体情報測定処理をソフトウェアで実現する形態について説明したが、図13に示したフローチャートと同等の処理を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはPLD(Programmable Logic Device)に実装し、ハードウェアで処理させるようにしてもよい。この場合、生体情報測定処理をソフトウェアで実現した場合と比較して、処理の高速化が図られる。
このように、CPU20Aを例えばASIC、FPGA、PLD、GPU(Graphics Processing Unit)、及びFPU(Floating Point Unit)といった特定の処理に特化した専用のプロセッサに置き換えてもよい。
実施の形態におけるCPU20Aの動作は、1つのCPU20Aによって実現される形態の他、複数のCPU20Aによって実現されてもよい。更に、実施の形態におけるCPU20Aの動作は、物理的に離れた位置に存在するコンピュータにおけるCPU20Aの協働によって実現されるものであってもよい。
また、上述した実施の形態では、生体情報測定プログラムがROM20Bにインストールされている形態について説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係る生体情報測定プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば、生体情報測定プログラムを、CD(Compact Disc)−ROM、またはDVD(Digital Versatile Disc)−ROM等の光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、本発明に係る生体情報測定プログラムをUSB(Universal Serial Bus)メモリやメモリカード等の可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。
更に、生体情報測定装置10は、図示しない通信回線に接続される図示しない外部装置から本発明に係る生体情報測定プログラムを取得するようにしてもよい。
1(1A、1B) 発光素子、2 本体部、3 受光素子、4 動脈、5 静脈、6 毛細血管、8 生体、9 センサ部、10 生体情報測定装置、12 発光制御部、14 駆動回路、15 加熱素子、16 増幅回路、18 A/D変換回路、19 温度センサ、20 制御部、20A CPU、20B ROM、20C RAM、22 表示ユニット、24A(24B、24C、24D) グラフ、30 脈波処理部、32 酸素飽和度測定部、34 酸素循環時間測定部、36 心拍出量測定部、38 出力部、92(96、97) 吸光量グラフ、94 矢印、98 赤色領域、99 赤外線領域
Claims (17)
- プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
被測定者の血中酸素濃度を表す値を測定する測定部位を含んだ前記被測定者の胴体よりも末端側の末端部位における温度が調節された状態で、前記測定部位における前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化を測定し、
測定した前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化に基づき、酸素が前記被測定者の体内に取り込まれてから血液を介して前記測定部位に到達するまでの時間を示す酸素循環時間を推定する
生体情報測定装置。 - 前記プロセッサは、前記測定部位の温度を取得し、
前記測定部位の温度が目的とする温度に達した場合に、前記測定部位における前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化を測定する
請求項1記載の生体情報測定装置。 - 前記プロセッサは、前記末端部位に前記末端部位の温度を変化させる物体が装着されてからの経過時間を測定し、
前記経過時間が、前記末端部位の温度が前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の測定開始時の温度から変化するのに要する予め定めた待機時間以上となった場合に、前記測定部位における前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化を測定する
請求項1記載の生体情報測定装置。 - 目的とする温度が、前記末端部位の温度を変化させる物体で強制的に前記被測定者の前記測定部位における温度を上昇させる前の前記測定部位の温度より高い温度に設定された
請求項2記載の生体情報測定装置。 - 前記物体が熱を発生する加熱装置の場合、
前記プロセッサは、前記末端部位の少なくとも一部分を加熱する前記加熱装置を制御して、前記測定部位の温度を調節する
請求項4記載の生体情報測定装置。 - 前記物体が熱を発生する加熱装置の場合、
前記プロセッサは、前記末端部位の少なくとも一部分を加熱する前記加熱装置を制御して、前記測定部位の温度を調節すると共に、前記加熱装置の加熱量に応じて前記待機時間を調節する
請求項3記載の生体情報測定装置。 - 前記プロセッサは、前記末端部位のうち、前記測定部位に血液を送り出す動脈が通っている箇所を加熱する前記加熱装置を制御して、前記測定部位の温度を調節する
請求項5または請求項6記載の生体情報測定装置。 - 前記測定部位が指先の場合、
前記プロセッサは、前記加熱装置によって前記被測定者の前記測定部位となる指先が含まれる方の腕の手首、または手を加熱して、前記被測定者の指先の温度を調節する
請求項7記載の生体情報測定装置。 - 前記プロセッサは、前記測定部位を加熱する前記加熱装置を制御して、前記測定部位の温度を調節する
請求項5または請求項6記載の生体情報測定装置。 - 前記プロセッサは、前記測定部位の温度が目的とする温度を含む予め定めた温度範囲内に留まるように、前記加熱装置を制御する
請求項5〜請求項9の何れか1項に記載の生体情報測定装置。 - 前記物体が、前記末端部位の少なくとも一部分を覆って前記末端部位を保温する被覆材である
請求項3または請求項4記載の生体情報測定装置。 - 前記測定部位が指先の場合、前記被覆材として手袋が用いられる
請求項11記載の生体情報測定装置。 - 目的とする前記測定部位の温度が、前回前記測定部位で前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化を測定した場合の温度に設定された
請求項2記載の生体情報測定装置。 - 前記プロセッサは、推定した酸素循環時間を用いて、前記被測定者の拍出量を出力する
請求項1〜請求項13の何れか1項に記載の生体情報測定装置。 - 前記末端部位の温度を検出する温度センサと、前記被測定者の生体に関する情報を表示する表示装置を備え、
前記プロセッサは、前記温度センサから前記被測定者における前記末端部位の温度を取得すると共に、推定した酸素循環時間から得られる前記被測定者の拍出量を前記表示装置に表示させる
請求項2記載の生体情報測定装置。 - 前記被測定者の生体に関する情報を表示する表示装置を備え、
前記プロセッサは、前記経過時間及び推定した酸素循環時間から得られる前記被測定者の拍出量を前記表示装置に表示させる
請求項3記載の生体情報測定装置。 - コンピュータに、
被測定者の胴体よりも末端側の末端部位に設けられた、前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の測定対象となる測定部位の温度を取得し、前記測定部位の温度が目的とする温度に達した場合に、前記測定部位における前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化を測定し、
測定した前記被測定者の血中酸素濃度を表す値の変化に基づき、酸素が前記被測定者の体内に取り込まれてから血液を介して前記測定部位に到達するまでの時間を示す酸素循環時間を推定する処理を実行させるための生体情報測定プログラム。
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