以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の一例について詳細に説明する。なお、同じ構成要素及び同じ処理には全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を省略する。
生体情報測定装置10は生体8に関する情報(生体情報)のうち、特に循環器系に関する生体情報を測定する装置である。循環器系とは、例えば血液のような体液を体内で循環させながら輸送するための器官群を総称するものである。
循環器系に関する生体情報には複数の指標が存在するが、血液を血管に送り出す心臓の状態を示す指標の1つとして、例えば心臓から拍出される血液量を表す心拍出量(CO:Cardiac Output)が挙げられる。
心拍出量が基準値より低下すると、例えば左室駆出率が低下するタイプの心不全や脱水など血液量が低下した状態であることが示唆されるなど、心拍出量は様々な心臓疾患の検査、または投薬効果の確認に利用されている。
心拍出量の測定方法には、例えば心拍出量の測定対象者である被測定者の肺動脈に、先端にバルーンが付いたカテーテルを挿入して測定する方法がある。
しかしながら、カテーテルを用いた心拍出量の測定方法では、被測定者の血管にカテーテルを挿入する必要があるため、他の測定方法に比べて被測定者における侵襲性が高くなる。
したがって、カテーテルを用いた心拍出量の測定方法よりも被測定者の負担が少なくなるように、被測定者の脈波から得られる血中の酸素飽和度を用いて心拍出量を測定する方法が研究されている。ここで血中の酸素飽和度とは、血中酸素濃度を表す値の一例であり、血液中のヘモグロビンがどの程度酸素と結合しているかを示す値であり、血中の酸素飽和度が低下するにつれて、例えば貧血等の症状が発生しやすくなることを示すものである。以降では、血中の酸素飽和度を単に「酸素飽和度」ということにする。脈波とは、心臓による血液の送り出しに伴う血管の拍動変化を示す値である。
まず、図1を参照して、生体情報のうち、酸素飽和度の測定方法について説明する。
図1に示すように、酸素飽和度は、被測定者の体(「生体8」という)に向けて発光素子1から光を照射し、受光素子3で受光した、被測定者の体内に張り巡らされている動脈4、静脈5、及び毛細血管6等で反射または透過した光の強さ、すなわち反射光または透過光の受光量を用いて測定される。
図2は、例えば生体8に吸収される光量の変化量を示す概念図である。図2に示すように、生体8における吸光量は、時間の経過と共に変動する傾向が見られる。
生体8における吸光量の変動に関する内訳について見てみると、主に動脈4によって吸光量が変動し、静脈5及び静止組織を含むその他の組織では、動脈4に比べて吸光量が変動しないとみなせる程度の変動量であることが知られている。これは、心臓から拍出された動脈血は脈波を伴って血管内を移動するため、動脈4が動脈4の断面方向に沿って経時的に伸縮し、動脈4の厚みが変化するためである。なお、図2において、矢印94で示される範囲が、動脈4の厚みの変化に対応した吸光量の変動量を示している。
図2において、時刻taにおける受光量をIa、時刻tbにおける受光量をIbとすれば、動脈4の厚みの変化による光の吸光量の変化量ΔAは、(1)式で表される。
(数1)
ΔA=ln(Ib/Ia)・・・(1)
これに対して、図3は、動脈4を流れる酸素と結合したヘモグロビン(酸化ヘモグロビン)及び酸素と結合していないヘモグロビン(還元ヘモグロビン)の各波長に対する光の吸光量の一例を示す図である。図3において、グラフ96が酸化ヘモグロビンにおける光の吸光量λredを表し、グラフ97が還元ヘモグロビンにおける光の吸光量λIRを表す。
図3に示すように、酸化ヘモグロビンは還元ヘモグロビンと比較して、約850nm近辺の波長を有する赤外線(infrared:IR)領域99の光を吸収しやすく、還元ヘモグロビンは酸化ヘモグロビンと比較して、特に約660nm近辺の波長を有する赤色領域98の光を吸収しやすいことが知られている。
更に、酸素飽和度は、異なる波長における吸光量の変化量ΔAの比率と比例関係があることが知られている。
したがって、他の波長の組み合わせに比べて、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとで吸光量の差が現われやすい赤外光(IR光)と赤色光を用いて、IR光を生体8に照射した場合の吸光量の変化量ΔAIRと、赤色光を生体8に照射した場合の吸光量の変化量ΔARedとの比率をそれぞれ算出することで、(2)式によって酸素飽和度Spが算出される。なお、(2)式においてkは比例定数である。
(数2)
Sp=k(ΔARed/ΔAIR)・・・(2)
すなわち、酸素飽和度を算出する場合、それぞれ異なる波長の光を照射する複数の発光素子1を生体8に照射する。具体的には、IR光を照射する発光素子1と赤色光を照射する発光素子1を生体8に用いる。この場合、IR光を照射する発光素子1と赤色光を照射する発光素子1との発光期間は重複してもよいが、望ましくは発光期間が重複しないよう発光させる。そして、各々の発光素子1による反射光または透過光を受光素子3で受光して、各受光時点における受光量から(1)式及び(2)式、または、これらの式を変形して得られる公知の式を算出することで、酸素飽和度が測定される。
上記(1)式を変形して得られる公知の式として、例えば(1)式を展開して、光の吸光量の変化量ΔAを(3)式のように表してもよい。
(数3)
ΔA=lnIb-lnIa・・・(3)
また、(1)式は(4)式のように変形することができる。
(数4)
ΔA=ln(Ib/Ia)=ln(1+(Ib-Ia)/Ia) ・・・(4)
通常、(Ib-Ia)≪Iaであることから、ln(Ib/Ia)≒(Ib-Ia)/Iaが成り立つため、(1)式の代わりに、光の吸光量の変化量ΔAとして(5)式を用いてもよい。
(数5)
ΔA≒(Ib-Ia)/Ia ・・・(5)
以降では、IR光を照射する発光素子1と赤色光を照射する発光素子1とを区別する場合、IR光を照射する発光素子1を「発光素子1A」といい、赤色光を照射する発光素子1を「発光素子1B」ということにする。
こうした測定方法によれば、発光素子1及び受光素子3を被測定者の体表に近づけることで酸素飽和度が測定されるため、血管にカテーテルを挿入して酸素飽和度を測定するよりも被測定者の負担が少なくなる。
なお、酸素飽和度は、被測定者の胴体よりも末端側の末端部位、例えば頭、腕、及び足で測定される。こうした末端部位のうち、発光素子1からIR光及び赤色光が照射され、酸素飽和度の測定対象となる部位を、特に「測定部位」という。
次に、図4を参照して、心臓からの血液の拍出量と相関がある指標の一例である酸素循環時間について説明する。
酸素循環時間とは、被測定者が呼吸をすることで、酸素が被測定者の体内に取り込まれてから血液を介して酸素飽和度の測定部位に到達するまでの時間のことをいう。また、ここでいう拍出量には、上述の心拍出量に限らず、1回拍出量、心係数等も含まれる。なお、心拍出量とは、心臓の単位時間(例えば1分)当たりの収縮によって動脈へ拍出される血液量で定義される。1回拍出量とは、心臓の1回の収縮によって動脈へ拍出される血液量で定義される。心係数とは、各々の被測定者における体格の差を補正するために、心拍出量を被測定者の体表面積で割った値で定義される。
酸素循環時間のうち、酸素が被測定者の肺から手の指先に到達するまでに要する時間を、特にLFCT(Lung to Finger Circulation Time)という。LFCTを測定するためには、被測定者の手の指先を酸素飽和度の測定部位とする。以降では、単に「指先」と記載している場合、被測定者の手の指先のことを表しているものとする。
酸素循環時間を測定する測定部位は、被測定者の末端部位であればどこでもよいが、以降では、被測定者の指先における酸素飽和度から酸素循環時間の一例であるLFCTを測定する例について説明することにする。
また、図4に示すように拍出量とLFCTとは相関がある。例えば拍出量の一例である心拍出量をCOとした場合、心拍出量COは、一例として以下に示す(6)式により算出される。
(数6)
CO=(a0×S)/LFCT・・・(6)
ここで、a0は予め定めた定数、Sは被測定者の体表面積(m2)であり、LFCTの単位は秒である。このように拍出量と相関のあるLFCTは、上述した酸素飽和度の変化から測定される。
図5は、LFCTの測定原理を示した図である。なお、図5において、縦軸は酸素飽和度の逆数を表し、横軸は時間を表す。図5に示すようにLFCTは、一定期間呼吸を停止した後に呼吸を再開した時点から、酸素飽和度が回復し始めたことを示す変曲点までの時間を測定することで得られる。呼吸を再開した時点とは、呼吸を再開した時刻を含む予め定めた期間内の時刻のことであり、呼吸を再開した時点は時間的な幅を持つ。
このようにして測定されるLFCTと心係数(Cardiac Index:CI)の間には、非特許文献1によって反比例の関係が成り立つことが示されている。
一方、図6は、複数の被測定者における各々のLFCTを実測した場合の、心係数とLFCTの対応関係の一例を示した図である。図6の横軸がLFCTを表し、縦軸が心係数を表す。図6において点線で示した曲線は、非特許文献1から得られる理論上の心係数とLFCTの対応関係を表す推定曲線95である。
図6における各点は、被測定者の各々について心係数の真値が予め判明している前提の下で被測定者のLFCTを測定し、被測定者の心係数の真値と測定したLFCTの対応関係を示した測定点である。図6における各々の測定点がそれぞれ異なる被測定者の測定結果を示している。
測定点が推定曲線95に近いほど、精度よくLFCTの測定が行われていることを表すが、実際には測定点が推定曲線95から外れている被測定者も存在する。
この状況を検討するため、発明者は各々の測定点をLFCTの測定部位である指先の温度が基準温度Td未満であるか否かに着目して、被測定者を2つの群に分類してみた。図6において、三角形で示される測定点92が、指先の温度が基準温度Td未満であった被測定者の測定点を表し、四角形で示される測定点93が、指先の温度が基準温度Td以上であった被測定者の測定点を表している。
これにより、発明者は、指先の温度が基準温度Td以上である被測定者群(A群という)の測定点93は、推定曲線95に沿って分布している一方、指先の温度が基準温度Td未満である被測定者群(B群という)の測定点92は、A群に属する被測定者の測定点93よりも推定曲線95から外れて分布する傾向があるとの知見を得た。
更に、発明者は、B群に属する被測定者の指先の温度と測定点92の分布について検討してみたところ、指先の温度が基準温度Tdより低くなるほど、測定したLFCTが心係数の真値から得られる被測定者の理論上のLFCTよりも長くなることで、理論上のLFCTと被測定者の実測したLFCTとのずれが大きくなり、測定点92が推定曲線95から外れる度合いが測定点93よりも高くなるとの知見を得た。
これは、測定部位を含む被測定者の末端部位の温度が低下している状態では、末端部位における末梢血管が収縮し、血液が末梢血管を流れにくくなる一方、被測定者の末端部位の温度が高くなるにしたがって、末端部位における末梢血管が拡大し、血液が末梢血管を流れやすくなるためであると推定される。したがって、被測定者の末端部位の温度が低くなるにしたがって、被測定者の肺から指先まで酸素が到達するのに要する時間、すなわちLFCTが長くなる傾向が見られるようになるものと考えられる。
換言すれば、測定した被測定者のLFCTが理論上のLFCTに近づくように、末端部位の温度に応じてLFCTを補正すれば、末端部位の温度を加味することなく測定したLFCTを用いて被測定者の拍出量を測定する場合と比較して、拍出量の測定精度が高まることになる。
ここでは一例として、測定部位の温度に基づく被測定者の心係数の真値と測定したLFCTの対応関係について説明したが、心拍出量は心係数に被測定者の体表面積を乗じた値であり、1回拍出量は心拍出量を心拍数で割った値であることから、測定部位の温度に基づく心拍出量の真値と測定したLFCTの対応関係、及び測定部位の温度に基づく1回拍出量の真値と測定したLFCTの対応関係についても同様の知見が得られることになる。更に、LFCTは酸素循環時間の一例であることから、上記の説明におけるLFCTを指先以外の末端部位で測定した酸素循環時間に読み替えてもよい。
図7は、末端部位の温度に応じて測定したLFCTを補正する生体情報測定装置10における回路構成の概要の一例を示す回路ブロック図である。
図7に示すように、生体情報測定装置10は発光素子1A、発光素子1B、受光素子3、発光制御部12、駆動回路14、増幅回路16、A/D(Analog/Digital)変換回路18、温度センサ19、制御部20、及び表示ユニット22を含む。
このうち、発光素子1A、発光素子1B、受光素子3、増幅回路16、及び温度センサ19は生体情報測定装置10のセンサ部9に組み込まれ、被測定者の測定部位に装着される。また、発光制御部12、駆動回路14、A/D変換回路18、制御部20、及び表示ユニット22は生体情報測定装置10の本体部2に組み込まれる。生体情報測定装置10のセンサ部9と本体部2は有線または無線の通信回線で接続され、相互に通信を行って被測定者の拍出量を測定する。
なお、生体情報測定装置10のセンサ部9と本体部2にそれぞれ含まれる回路ブロックの分け方は一例であり、例えば増幅回路16を生体情報測定装置10の本体部2に含めてもよい。
生体情報測定装置10のセンサ部9は、外部光が入力しないように被測定者の末端部位に密着するように取り付けられる。本実施形態に係るセンサ部9は一例として、被測定者の指先に取り付けられるが、足の指先や耳たぶといった被測定者の他の末端部位に取り付けてもよい。なお、生体情報測定装置10のセンサ部9と本体部2を分離させずに、同じ筐体内で一体的に構成するようにしてもよい。
発光制御部12は、発光素子1A及び発光素子1Bに駆動電力を供給する電力供給回路を含む駆動回路14に、発光素子1A及び発光素子1Bの発光周期及び発光期間を制御する制御信号を出力する。なお、発光制御部12は、制御部20の一部として実現してもよい。
駆動回路14は、発光制御部12からの制御信号を受け付けると、制御信号で指示された発光周期及び発光期間に従って、発光素子1A及び発光素子1Bに駆動電力を供給し、発光素子1A及び発光素子1Bを駆動する。
受光素子3は、発光素子1Aから受光したIR光に対応する受光信号と、発光素子1Bから受光した赤色光に対応する受光信号を出力する。
増幅回路16は、受光素子3が出力した各々の光の強さに応じた受光信号を、A/D変換回路18の入力電圧範囲として規定される電圧レベルまで増幅する。
A/D変換回路18は、増幅回路16で増幅した電圧を入力として、当該電圧の大きさで表される受光素子3の受光量を数値化して出力する。
制御部20は、生体情報測定装置10に係る各機能を担うプロセッサの一例であるCPU(Central Processing Unit)20A、コンピュータを生体情報測定装置10として機能させる生体情報測定プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)20B、及びCPU20Aの一時的な作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)20Cを備える。
表示ユニット22は、CPU20Aによって処理された情報、具体的には被測定者の酸素飽和度の変化、LFCT、及び拍出量等の被測定者の生体情報を表示する表示装置の一例である。表示ユニット22には、例えば液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等が用いられる。
なお、生体情報測定装置10の本体部2にはボタン等の入力デバイスが配置されており、表示ユニット22にはタッチパネルが取り付けられているが、必ずしも表示ユニット22にタッチパネルが取り付けられている必要はない。CPU20Aは、ボタン等の押下状況からユーザの指示を把握し、ユーザの指示に基づいて生体情報測定装置10の制御を行う。なお、ユーザとは、生体情報測定装置10の測定を行う測定者のことであり、例えば被測定者及び医療従事者が含まれる。
図8は、生体情報測定装置10のセンサ部9における発光素子1A、発光素子1B、受光素子3、及び温度センサ19の配置例を示す図である。
図8に示すように、発光素子1A、発光素子1B、受光素子3、及び温度センサ19は、生体8(この場合、被測定者の指先)の一方の面に向かって並べて配置される。この場合、受光素子3は、毛細血管6で反射された発光素子1A及び発光素子1Bの光を受光する。
なお、発光素子1A、発光素子1B、及び受光素子3の配置は、図8の配置例に限定されない。例えば図9に示すように、発光素子1A及び発光素子1Bと、受光素子3とを、被測定者の生体8を挟んで対向する位置に配置してもよい。この場合、受光素子3は、生体8を透過した発光素子1A及び発光素子1Bの光を受光する。
発光素子1A及び発光素子1Bには面発光レーザ素子が用いられるが、端面発光レーザ素子を用いてもよい。また、発光素子1A及び発光素子1Bの各々から照射される光はレーザ光でなくてもよい。例えば発光素子1A及び発光素子1Bに、発光ダイオード(Light-Emitting Diode:LED)または有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode:OLED)を用いてもよい。
図10は、受光素子3が出力した出力電圧のサンプリングタイミングの一例を示すグラフである。図10において、丸印の位置がサンプリングタイミングを表しており、図10の縦軸は受光素子3の出力電圧を表し、横軸は時間を表す。
図10に示すように、受光素子3が発光素子1Aから受光した光に対応する出力電圧を、IR1、IR2、・・・、IRnとした場合に、時系列データとしてIR(t)=IR1、IR2、・・・、IRnが得られる。同様に、受光素子3が発光素子1Bから受光した光に対応する出力電圧を、Red1、Red2、・・・、Rednとした場合に、時系列データとしてRed(t)=Red1、Red2、・・・、Rednが得られる。このとき、両方の発光素子1A及び発光素子1Bに対して、発光しない期間を設け、暗状態での出力Dark1、Dark2、・・・、Darknを得るようにしてもよい。この場合、IR(t)は、IR1-Dark1、IR2-Dark2、・・・、IRn-Darknとしてもよい。同様に、Red(t)は、Red1-Dark1、Red2-Dark2、・・・、Redn-Darknとしてもよい。これらのデータのサンプリングは、発光期間の終了近くで出力が安定している状態で行うことが望ましい。
図11は、生体情報測定装置10の機能構成例を示すブロック図である。図11に示すように、生体情報測定装置10は温度検出部30、脈波処理部32、酸素飽和度測定部34、酸素循環時間測定部36、心拍出量測定部38、及び出力部40を含む。
温度検出部30は、センサ部9に組み込まれている温度センサ19を用いて、被測定者の末端部位の温度、具体的には測定部位の温度を検出する。
脈波処理部32は、生体情報測定装置10のセンサ部9から受け付けたIR光及び赤色光のそれぞれの受光量を用いて、IR光から得られた被測定者の脈波を表す脈波信号と、赤外光から得られた被測定者の脈波を表す脈波信号をそれぞれ生成する。
酸素飽和度測定部34は、脈波処理部32から脈波信号を受け付けると、受け付けた脈波信号から被測定者の酸素飽和度を測定する。具体的には、酸素飽和度測定部34は脈波信号を用いて、動脈4の厚みの変化によるIR光の吸光量の変化量ΔAIRと、赤色光の吸光量の変化量ΔARedとをそれぞれ(1)式に従って算出する。そして、酸素飽和度測定部34は、算出した変化量ΔAIRと変化量ΔARedを用いて、例えば(2)式から被測定者の酸素飽和度を測定し、測定した酸素飽和度を酸素循環時間測定部36に通知する。
以降では一例として、酸素飽和度測定部34が被測定者の酸素飽和度を測定する例について説明するが、酸素飽和度測定部34は、被測定者の酸素飽和度の時間変化を示す値であればどのような値を測定してもよい。例えば、酸素飽和度測定部34は、酸素飽和度の逆数、または変化量ΔARedと変化量ΔAIRの比率といった、酸素飽和度の時間変化と相関関係を有する値を測定してもよい。
酸素循環時間測定部36は、例えば生体情報測定装置10の本体部2に取り付けられているボタンの押下等によって、LFCTを測定するために呼吸を止めた被測定者から呼吸を再開したことを通知する再開通知を受け付けると、呼吸の再開を受け付けた時刻を時刻t1として記憶する。そして、酸素循環時間測定部36は、酸素飽和度測定部34で測定される酸素飽和度の変化を監視して、酸素飽和度の変曲点を検出する。酸素循環時間測定部36は、酸素飽和度の変曲点を検出した時刻を時刻t2として記憶し、時刻t1と時刻t2の差分で表される時間をLFCTとして測定する。なお、「変曲点を検出」するとは、酸素循環時間の測定に実質的に影響がない範囲で、変曲点から多少ずれた位置を検出する場合を含む。
そして、酸素循環時間測定部36は、測定した酸素循環時間を心拍出量測定部38に通知する。
心拍出量測定部38は酸素循環時間測定部36から受け付けたLFCTを用いて、被測定者の心拍出量を測定する。心拍出量は、上述した(6)式によって算出される。なお、心拍出量測定部38は心拍出量の他に、例えば心係数及び1回拍出量といったLFCTから得られる心機能を表す値を測定してもよいが、ここでは拍出量の一例である心拍出量を測定するものとする。
出力部40は、心拍出量測定部38で測定された被測定者の心拍出量を、心拍出量の測定精度を示す信頼度と共に出力して、ユーザに測定結果を通知する。なお、信頼度の出力方法については後ほど詳細に説明する。
次に、図12を用いて生体情報測定装置10の動作について説明する。
図12は、被測定者が生体情報測定装置10のセンサ部9を測定部位の一例である指先に装着した状態で、生体情報測定装置10のユーザから心拍出量の測定指示を受け付けた場合に、CPU20Aによって実行される生体情報測定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
生体情報測定処理を規定する生体情報測定プログラムは、例えば生体情報測定装置10のROM20Bに予め記憶されている。生体情報測定装置10のCPU20Aは、ROM20Bに記憶される生体情報測定プログラムを読み込み、生体情報測定処理を実行する。
ステップS10において、CPU20Aは、温度センサ19で検出された被測定者の指先の温度を取得する。温度センサ19には、例えばサーミスタ、熱電対、測温抵抗体(Resistance Temperature Detector:RTD)、またはIC温度センサ等が用いられる。
ステップS20において、CPU20Aは、ステップS10で取得した被測定者の指先の温度が、基準温度Td以上であるか否かを判定する。被測定者の指先の温度が基準温度Td以上である場合、当該被測定者はA群に属する被測定者ということになる。A群に属する被測定者の場合、図6に示したように、被測定者のLFCTの真値とこれから測定して得られる被測定者のLFCTの測定値とのずれは誤差の許容範囲内に収まる傾向を示すため、信頼性の高いLFCTが測定されることになる。
したがって、ステップS30に移行し、CPU20Aはセンサ部9を制御して、被測定者の指先における酸素飽和度の測定を開始する。
なお、被測定者の温度を測定する部位は、生体情報測定装置10のセンサ部9が装着された測定部位を含む末端部位の範囲内であればどの部位であってもよく、必ずしも測定部位である必要はない。例えば酸素飽和度の測定対象が手の指先である場合に、手の甲の温度、手のひらの温度、手首の温度、前腕の温度、または上腕の温度を測定してもよいが、測定部位(この場合、手の指先)に近い部位であって、測定される温度が測定部位の温度と相関関係が認められるような部位が好ましい。
ステップS40において、CPU20Aは被測定者のLFCTを測定するため、例えば表示ユニット22を通じて被測定者に呼吸を停止するように指示する。被測定者への呼吸の停止の指示は文字や画像による視覚を通じた指示ではなく、例えば音声や振動で指示してもよい。また、CPU20Aは、被測定者が呼吸を停止してからの経過時間を計測するため、タイマを起動する。タイマは、例えばCPU20Aに内蔵されたタイマ機能が用いられる。
これに対して、生体情報測定装置10には、被測定者が必要以上に呼吸を停止したり、酸素飽和度が低下し始めないうちに呼吸を再開したりしないように、LFCTを測定するのに最適な呼吸の停止時間を示す規定時間が予め設定されている。したがって、ステップS50において、CPU20AはステップS40で被測定者が呼吸を停止してからの経過時間が規定時間に達したか否かを判定する。CPU20Aは、被測定者が呼吸を停止してからの経過時間が規定時間に達するまでステップS50の判定処理を繰り返し実行し、被測定者における呼吸の停止期間を監視する。
一方、被測定者が呼吸を停止してからの経過時間が規定時間に達した場合には、ステップS60に移行する。
ステップS60において、CPU20Aは、例えば表示ユニット22を通じて被測定者に呼吸を再開するように指示する。被測定者への呼吸の再開の指示は呼吸の停止の指示と同様に、文字や画像による視覚を通じた指示ではなく、例えば音声や振動で指示してもよい。また、CPU20Aは、被測定者が呼吸を再開してからの経過時間を計測するためにステップS40で起動したタイマを停止した後、タイマを再起動する。
被測定者が呼吸を再開した場合、図5を用いて説明したように、生体情報測定装置10のセンサ部9で測定している被測定者の酸素飽和度が減少から上昇に転じる変曲点が現れるため、ステップS70において、CPU20Aは酸素飽和度の変化を測定し、変曲点を検出する。なお、CPU20Aは、酸素飽和度の変化をROM20B等の記憶媒体に記憶する。
ステップS80において、CPU20Aは、変曲点を検出した時点における経過時間をタイマから取得する。取得した経過時間は、被測定者が呼吸を再開してから酸素飽和度の変曲点が現れるまでの経過時間であることから、LFCTを表している。これにより、被測定者のLFCTの推定が終了したことから、CPU20Aはタイマを停止する。
ステップS90において、CPU20Aは、ステップS80で推定したLFCTを例えば(6)式に示した心拍出量の算出式に代入して、被測定者の心拍出量を算出する。算出した心拍出量を被測定者の体表面積で割れば、被測定者の心係数が推定され、算出した心拍出量を被測定者の心拍数で割れば、被測定者の1回拍出量が推定される。
ステップS100において、CPU20Aは、ステップS90で算出した心拍出量を含む被測定者の生体情報を信頼度と共に出力する。既に説明したように、被測定者の指先の温度が基準温度Td以上ある状態で測定したLFCTは、測定誤差が許容範囲内に収まる傾向を示すため、このようなLFCTから算出された心拍出量の測定値に対する信頼性は高くなる。したがって、CPU20Aは図13に示すように、心拍出量の測定値と共に、測定した心拍出量の信頼度を「高」に設定した表示画面42を測定結果として表示ユニット22に表示する制御を行い、図12に示す生体情報測定処理を終了する。
ここでは一例として、CPU20Aは表示ユニット22に心拍出量及び信頼度を表示することで測定結果の出力を行うが、測定結果の出力形態に制約はなく、例えば、測定結果を音声で通知してもよく、また、図示しない画像形成ユニットで測定結果を用紙に印字してもよい。更に、CPU20Aが、図示しない通信回線を通じて図示しない外部装置のメモリに測定結果を記憶する形態も、測定結果の出力形態に含まれる。
一方、ステップS20の判定処理で被測定者の指先の温度が基準温度Td未満であると判定された場合には、ステップS22に移行する。
この場合、当該被測定者はB群に属する被測定者ということになる。B群に属する被測定者の場合、図6に示したように、被測定者のLFCTの真値とこれから測定して得られる被測定者のLFCTの測定値とのずれは誤差の許容範囲を超える傾向を示すため、指先の温度が基準温度Td以上の状況で測定されたLFCT及び心拍出量よりも、信頼性の低いLFCT及び心拍出量となる傾向が強くなる。
したがって、ステップS22に移行し、CPU20Aは、測定値の取り扱いに関しての注意をユーザに喚起する警告を出力する。例えばCPU20Aは、「測定部位の温度が低いため、測定結果の信頼度が低くなることがあります。」というように、このまま測定を継続する場合には注意すべき点があることをユーザに通知する。この警告の通知方法に制約はなく、CPU20Aは、警告を表示ユニット22に表示しても音声で通知してもよい。また、ステップS10で取得した指先の温度を出力するようにしてもよい。特に音声で警告を通知する場合、必ずしも言葉で通知する必要はなく、例えばブザー音等の音で通知してもよい。
警告を出力した後、ステップS24において、CPU20Aは、選択ダイアログ44を表示ユニット22に表示する。
図14は、選択ダイアログ44の一例を示す図である。選択ダイアログ44には、例えば「測定を継続しますか?それとも中止しますか?」というように、以降の測定を継続するか否かをユーザに問い合わせるメッセージが記載される。なお、警告を文字で表示する場合、CPU20Aは、ステップS22で表示する警告文を含む選択ダイアログ44を生成し、ステップS24で選択ダイアログ44と共に表示するようにしてもよい。
ユーザは、測定を継続する場合には、例えばタッチパネルを介して選択ダイアログ44の「継続」ボタンを押下し、測定を中止する場合には「中止」ボタンを押下する。
「継続」ボタンが押下された場合には、CPU20Aに「継続」を指示する選択情報が通知され、「中止」ボタンが押下された場合には、CPU20Aに「中止」を指示する選択情報が通知される。
したがって、ステップS26において、CPU20Aは、ユーザから拍出量の測定を中止するか否かを指示する選択情報を受け付けたか否かを判定する。選択情報を受け付けた場合にはステップS28に移行し、選択情報を受け付けていない場合には、選択情報を受け付けるまでステップS26の判定処理を繰り返し実行して、選択情報の受付状況を監視する。
ステップS28において、CPU20Aは、受け付けた選択情報が、測定の中止を指示する選択情報であるか否かを判定する。測定の中止を指示する選択情報の場合、CPU20Aは、以降の処理を中止して図12に示す生体情報測定処理を終了する。すなわち、CPU20Aは、被測定者のLFCT及び心拍出量の測定を行わない。
一方、測定の継続を指示する選択情報の場合、CPU20AはステップS30に移行し、既に説明した処理にしたがって、被測定者のLFCT及び心拍出量の測定を継続する。
ただし、選択ダイアログ44で測定の継続が指示されたことによって測定された心拍出量の測定精度は、被測定者の指先の温度が基準温度Td以上の状況で測定された心拍出量の測定精度よりも低下することになる。したがって、この場合CPU20Aは、例えば図13に示した表示画面42において、ステップS100で心拍出量と共に出力する信頼度を例えば「低」に設定して、測定された心拍出量が参考値であることをユーザに通知する。
図12に示す生体情報測定処理の例では、測定部位の温度を取得してから酸素飽和度の測定を開始するまでの期間に警告を出力したが、警告の出力タイミングに制約はなく、被測定者の指先の温度が基準温度Td未満の場合、例えば図12のステップS70とステップS80の間で警告を出力して、選択ダイアログ44を表示するようにしてもよい。すなわち、被測定者のLFCTを推定する直前で、以降の処理を継続するかユーザに確認してもよい。この場合、少なくとも酸素飽和度の変化は得られることから、後から被測定者のLFCTが必要になった場合にも対応できることになる。
なお、指先の温度が基準温度Tdより低くなるにつれて、測定したLFCTが真値よりも長くなる傾向を示すことから、CPU20Aは、ステップS10で取得した指先の温度が基準温度Tdより低くなるにつれて、測定した心拍出量の信頼度が低くなるように信頼度を設定してもよい。例えば基準温度Tdより低い温度Teを設定しておき、基準温度Td未満で、かつ、温度Te以上の温度範囲W1にステップS10で測定した指先の温度が含まれる場合には、CPU20Aは測定された心拍出量の信頼度を「中」に設定し、ステップS10で測定した指先の温度が温度Te未満の場合には、CPU20Aは測定された心拍出量の信頼度を「低」に設定してもよい。ここでは測定された心拍出量の信頼度の区分を「高」、「中」、及び「低」の3つに区分する例について説明したが、信頼度の区分数に制約はなく、4つ以上の区分に分割してもよい。
また、心拍出量の信頼度は数値で表してもよく、例えば最も低い信頼度を“1”に設定し、信頼度が高くなるにつれて、“2”、“3”、・・・“N”というように設定してもよい。ここで“N”は正の整数である。また、最も高い信頼度を“100%”に設定し、信頼度が低くなるにつれて信頼度が0%に近づくように、心拍出量の信頼度を設定してもよい。
このように、生体情報測定装置10が測定した生体情報の測定精度の度合いを表す信頼度は、心拍出量のように酸素循環時間と相関がある生体情報の測定値の取り扱いに関してユーザに注意喚起を行う警告の一例である。
なお、CPU20Aは、必ずしも心拍出量の信頼度を心拍出量の測定値と個別に表示する必要はなく、例えば心拍出量の信頼度が「高」の場合には心拍出量の文字色を緑色、「中」の場合には黄色、「低」の場合には赤色というように、被測定者の心拍出量の表示色を変えることで、測定した心拍出量の信頼度をユーザに通知してもよい。また、CPU20Aは、例えば「高」、「中」、「低」に分割した信頼度の区分ごとに異なる音を対応付けておき、測定した心拍出量の信頼度に応じて出力する音を変えることで、心拍出量の信頼度をユーザに通知してもよい。また、1種類の音しか出せず、測定した心拍出量の信頼度に応じて出力する音を変えることが困難な場合、測定した心拍出量の信頼度に応じて出力する音の音量を変えることで、心拍出量の信頼度をユーザに通知してもよい。
このように、本実施の形態に係る生体情報測定装置10によれば、測定部位の温度に応じて、酸素循環時間と相関がある生体情報の測定精度を推定し、推定した測定精度を測定値と共に出力することで、測定した生体情報の取り扱いに対して注意喚起を行う。
<変形例>
上述した実施の形態では、被測定者の指先の温度が基準温度Td未満である場合に、以降の測定を継続するか否かをユーザに判断させる例について説明したが、CPU20Aが以降の測定を継続するか否か自律的に判定するようにしてもよい。
図15は、被測定者が生体情報測定装置10のセンサ部9を測定部位の一例である指先に装着した状態で、生体情報測定装置10のユーザから心拍出量の測定指示を受け付けた場合に、CPU20Aによって実行される生体情報測定処理の変形例を示すフローチャートである。
図15に示すフローチャートが図12に示した生体情報測定処理のフローチャートと異なる点は、ステップS20の判定処理で被測定者の指先の温度が基準温度Td未満であると判定された場合に実行される処理がステップS21、S23、S25、及びS27に変更された点である。ここでは、図12に示した生体情報測定処理から変更された処理について説明を行う。
ステップS20の判定処理で被測定者の指先の温度が基準温度Td未満であると判定された場合、ステップS21に移行する。
ステップS21において、CPU20Aは、例えばROM20Bに記憶されている継続設定を取得する。継続設定とは、被測定者の指先の温度が基準温度Td未満である場合に、以降の測定を継続するか否かを予め設定した設定値であり、ユーザによって設定される。
ステップS23において、CPU20Aは、ステップS21で取得した継続設定が継続を指示する設定値に設定されているか否かを判定する。継続設定が継続を指示する設定値に設定されている場合、ステップS25に移行する。
ステップS25において、CPU20Aは、被測定者の指先の温度が基準温度Td未満ではあるが以降の処理を継続することをユーザに通知する警告を出力してステップS30に移行し、酸素飽和度の測定を開始する。
一方、ステップS23の判定処理で、継続設定が中止を指示する設定値に設定されている場合、ステップS27に移行する。
ステップS27において、CPU20Aは、被測定者の指先の温度が基準温度Td未満であるため以降の処理を中止することをユーザに通知する警告を出力して、図15に示す生体情報測定処理を終了する。
すなわち、CPU20Aは、被測定者の指先の温度が基準温度Td未満である場合、ユーザから通知される選択情報を待つことなく、継続設定の設定内容に応じて、以降の測定を継続するか否か自律的に判定する。測定を継続した場合、ステップS100で、ステップS90で算出した心拍出量を含む被測定者の生体情報が信頼度と共に出力される。
ステップS25で出力する、処理を継続することをユーザに通知する警告は、必ずしも酸素飽和度の測定を開始する前に出力する必要はなく、ステップS30を実行してからステップS100を開始するまでの間に出力すればよい。
なお、睡眠中に一時的に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群の患者に、本実施の形態に係る生体情報測定装置10を装着して寝てもらえば、呼吸を再開したタイミングで睡眠中における酸素飽和度の変化が測定される。したがって、測定部位の温度や酸素飽和度の変化を時刻情報と共にROM20Bに記憶することで、後から睡眠中の患者のLFCTや心拍出量といった生体情報が信頼度と共に得られることになる。
この場合、被測定者における呼吸の停止及び再開のタイミングは、例えば被測定者の口や鼻の近傍に設けたエアフローセンサで、気流や温度の変化を検出することで特定される。また、被測定者における呼吸の停止及び再開のタイミングを、脈波処理部30で生成された脈波信号から得られる呼吸波形を用いて特定してもよい。呼吸波形とは、生体8の呼吸状態を示す信号の波形であり、呼気及び吸気の時間変化を表す時系列信号の波形である。
被測定者の呼吸波形を得るため、CPU20Aは、IR光または赤色光から得られた何れか一方の脈波信号からピーク変曲点及びボトム変曲点を抽出し、ピーク変曲点間、及びボトム変曲点間をそれぞれスプライン補間等の公知の補間手法で補間して生成したピーク波形とボトム波形を生成する。「ピーク変曲点」とは、脈波の値が上昇から下降に転じる点であり、「ボトム変曲点」とは、脈波の値が下降から上昇に転じる点である。
そして、CPU20Aは、ピーク波形とボトム波形の差分波形を生成し、生成した差分波形に対して高速フーリエ変換を実施して、差分波形に含まれる周波数成分を算出する。更に、CPU20Aは、算出した周波数成分から最大周波数成分を求め、求めた最大周波数成分と隣り合う前後の成分の周波数をそれぞれ遮断周波数に設定した後、例えばバンドパスフィルタを用いてそれぞれの遮断周波数の間に含まれる周波数成分だけを残し、それ以外の周波数成分を除去することで呼吸波形を抽出する。
以上、実施の形態を用いて本発明について説明したが、本発明は実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本発明の要旨を逸脱しない範囲で処理の順序を変更してもよい。具体的には、図12及び図15のステップS70で酸素飽和度の変化を測定し始めてから、測定部位の温度を取得し、取得した温度が基準温度Td未満であるか否かを判定して、以降の測定を継続するか決定してもよい。
また、実施の形態では、一例として生体情報測定処理をソフトウェアで実現する形態について説明したが、図12及び図15に示したフローチャートと同等の処理を、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはPLD(Programmable Logic Device)に実装し、ハードウェアで処理させるようにしてもよい。この場合、生体情報測定処理をソフトウェアで実現した場合と比較して、処理の高速化が図られる。
このように、CPU20Aを例えばASIC、FPGA、PLD、GPU(Graphics Processing Unit)、及びFPU(Floating Point Unit)といった特定の処理に特化した専用のプロセッサに置き換えてもよい。
実施の形態におけるCPU20Aの動作は、1つのCPU20Aによって実現される形態の他、複数のCPU20Aによって実現されてもよい。更に、実施の形態におけるCPU20Aの動作は、物理的に離れた位置に存在するコンピュータにおけるCPU20Aの協働によって実現されるものであってもよい。
また、上述した実施の形態では、生体情報測定プログラムがROM20Bにインストールされている形態について説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係る生体情報測定プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば、生体情報測定プログラムを、CD(Compact Disc)-ROM、またはDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、本発明に係る生体情報測定プログラムをUSB(Universal Serial Bus)メモリやメモリカード等の可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。
更に、生体情報測定装置10は、図示しない通信回線に接続される図示しない外部装置から本発明に係る生体情報測定プログラムを取得するようにしてもよい。