本発明者は、以下に記載する新たな課題を認識した。例えば、車両の前方1m〜100mのかなり広い範囲で多様な表示を行う場合、例えば、車両の近くに表示される車速表示等と、道路の路面に沿って車両の進行方向に広い範囲にわたって延在するナビ用矢印の図形等と、が同じ鮮明度で表示されると、遠近感が不自然となり、ユーザーが違和感を覚えることがある。上記の例では、遠方のナビ用矢印に合わせた鮮明度(視差による自然なぼけを考慮してやや低い解像度となるのが普通である)とすると、手前に見える車速表示等については鮮明度が不足しがちとなる。従来の立体視が可能なHUD装置では、このような課題については対策されていない。
特許文献1では、表示コンテンツの内容に応じて、3D表示と2D表示を切り替えて使用しているのであり、上記の本発明者によって検討された課題(例えば広範囲にわたる表示の際の不自然な遠近感の発生という課題)については何ら記載がなく、その対策についても記載がない。
なお、3Dと2Dの各表示を使い分けする方式では、異なる方式の表示を行うための個別の画像レンダリングが必要となり、表示制御装置の負担が増大するのは否めない。
また、特許文献2では、運転者の視点ずれによって、立体像が見えなくなることを防止するために、レンチキュラレンズの奇数行と偶数行とで光線の分離角を異ならせ、2つの立体視認領域を重ねて設けることで、立体視認可能範囲を広げることが記載されているのみであり、上記の本発明者によって検討された課題(例えば広範囲にわたる表示の際の不自然な遠近感の発生という課題)については何ら記載がなく、その対策についても記載がない。
なお、特許文献2の実施例では、ピッチは同じで、奇数行と偶数行とで曲率半径が異なるレンチキュラレンズを使用するが、仮に、奇数行と偶数行とで横方向のピッチも異ならせたとすると、同じ画像について、横方向の分解能が異なる(鮮明度が異なる)立体像が混在して表示されることになり、この場合はクロストーク等による表示品質の低下が生じる場合があることは否めない。
本発明は、表示制御部の負担を増やさずに、遠近感等による違和感を低減した立体像の視認が可能な立体表示装置(3Dディスプレイ)等を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
第1の態様において、立体表示装置は、
ユーザーの両眼に視差画像を投影することで立体視を提供する立体表示装置であって、
前記視差画像を表示する表示面を備える表示部と、
前記表示部に接触して、又は近接して配置され、左眼用視差画像及び右眼用視差画像の各光線を分離する光線分離機能をもつ光学部材と、
前記表示部の画像表示を制御する表示制御部と、
を有し、
前記光学部材は、
光を屈折させる第1の光学要素が、横方向に沿って第1のピッチで配列されて、前記横方向における第1の解像度を有する第1の光線分離部と、
前記横方向に直交する方向を縦方向とするとき、前記第1の光線分離部とは異なる縦方向の位置に配置されると共に、光を屈折させる第2の光線分離部が、前記横方向に沿って、前記第1のピッチよりも大きい第2のピッチで配置されることで、前記横方向における解像度が、前記第1の解像度よりも低い第2の解像度である第2の光線分離部と、
を有し、
前記表示制御部は、
前記第1の光線分離部に対応する前記表示面の第1の領域に、第1の表示対象の左眼用視差画像及び右眼用視差画像を表示させ、
前記第2の光線分離部に対応する前記表示面の第2の領域に、前記立体視における鮮明度が、前記第1の表示対象よりも低くてもよい第2の表示対象の左眼用視差画像及び右眼用視差画像を表示させる。
第1の態様では、立体表示装置(3Dディスプレイ)において、光学部材(3D光学部材:レンチキュラレンズやパララックスバリア(視差遮蔽物)等)を、少なくとも2つの光線分離部(第1、第2の光線分離部)により構成し、各部における横方向のピッチ(レンズや遮蔽物等である光学要素の横方向における配置間隔)を異ならせる。
また、表示制御部は、第1、第2の光線分離部に対応する表示部の各領域(第1、第2の領域)に、異なる表示対象についての、解像度が異なる画像(視差画像)を表示(配置)させる。
光学要素のピッチ(言い換えれば横方向に配置される光学要素の数)と、表示される3D映像の解像度とはトレードオフの関係にあり、ピッチが小さくなるほど(言い換えれば、横方向に配置される光学要素の数が多くなるほど)、横方向の解像度は高くなり、ピッチが大きくなるほど(言い換えれば、横方向に配置される光学要素の数が少なくなるほど)、横方向の解像度は低下する。なお、横方向の解像度は、画像処理の分野では、水平解像度と称されることがある。
例えば、表示面の第1の領域を、解像度を優先する領域とし、ここには、数字などの細かい文字等の視差画像を表示できるものとする。この場合は、第1の領域に対応する第1の光線分離部のピッチを小さく(狭く)設定して、鮮明な3D映像による、例えばユーザーへの正確な情報の提示を実現するのが好ましい。
また、第2の領域に、車両からかなり遠い位置に表示する標識の画像(視差画像)を表示するような場合、あるいは、HUD装置等における車両の前方の、かなり広い範囲にわたって路面に沿って延在するナビ用矢印の図形等の画像(視差画像)を表示するような場合は、この第2の領域は、視覚的な遠近感、あるいは奥行き感の表現を優先する領域ということができる。この場合は、第2の領域に対応する第2の光線分離部のピッチを、第1の光線分離部よりも大きく(広く)設定して、上記の文字等からなる3D映像よりも解像度が低下させた、遠近感(あるいは奥行き感)重視の3D映像(例えば、自然なぼけ(ぼかし)を有する3D映像)とするのが好ましい。
このようにして、高解像度の方が好ましい3D映像と、遠近感(奥行き感)等を重視してやや解像度を低下させてもよい(その方が好ましいといえる)3D映像と、を例えば同時に表示する場合であっても、ユーザーが各映像を対比して見たときに、各表示対象が適切な解像度で表示されて特に違和感が生じないようにすることができる。よって、例えば、ユーザーの眼に与える負担が軽減され、疲労感等を抑制することが可能となる。
また、本態様では、光学部材の構造設計によって解像度を制御していることから、基本的には画像処理による解像度制御は不要である。したがって、表示制御部の負担を増やさずに、遠近感等による違和感を低減した立体像の視認が可能な立体表示装置を提供することができる。
第1の態様に従属する第2の態様において、
前記光学部材は、レンチキュラレンズ、又はパララックスバリアであってもよい。
第2の態様では、光学部材として、レンチキュラレンズ、又はパララックスバリア(視差バリア)を使用する。現在の3Dディスプレイの分野で主流技術といわれる光学部材を使用することで、表示される映像品質を安定に維持することができる。
ここで、レンチキュラレンズは、例えば、縦方向(垂直方向)に細長い円筒状レンズ(シリンドリカルレンズ)を光学要素とし、複数の光学要素を、横方向に所定ピッチで配置(配列)させた3D映像表示に使用可能な光学部材の一種である。
また、パララックスバリア(視差バリア)は、例えば幅の細い短冊状(矩形形状)の遮蔽物を隙間(スリット)を設けつつ横方向に所定ピッチで配置したものであり、同じ画像であっても、遮蔽物によって、その画像の表示光の一部を遮蔽することで、左右の各眼用の、異なる映像の表示光(指向性のある表示光)を発生させる光学素子である。
第3の態様において、ヘッドアップディスプレイ装置は、
車両に設けられた反射透光部材に表示光を投影し、前記反射透光部材に反射された光により虚像を生成して表示するヘッドアップディスプレイ(HUD)装置であって、
第1又は第2の態様の立体表示装置と、
少なくとも1つの光反射部材を有し、前記立体表示装置からの光を少なくとも1回反射して、前記反射透光部材に前記表示光として投影するHUD装置の光学系と、
を有し、
前記立体表示装置における前記第1の光線分離部を経て分離された光が、前記HUD装置の光学系、及び前記反射透光部材にて反射され、その結果として得られる前記第1の表示対象についての虚像を第1の虚像とし、
前記立体表示装置における前記第2の光線分離部を経て分離された光が、前記HUD装置の光学系、及び前記反射透光部材にて反射され、その結果として得られる前記第2の表示対象についての虚像を第2の虚像とするとき、
前記第1の虚像の前記車両に最も遠い端点における、前記ユーザーの左右の各眼を基準とした第1の輻輳角をθaとし、前記第2の虚像の前記車両に最も近い端点における、前記ユーザーの左右の各眼を基準とした第2の輻輳角をθbとするとき、θa>θbである。
第3の態様では、立体表示装置から出射される光は、HUD装置の光学系において少なくとも1回反射され、表示光として車両の反射透光部材(ウインドシールド等)に投影(投射)され、この結果として、車両の前方(路面に沿って、車両から離れる方向)に結像する。
ここで、立体表示装置の第1の光線分離部から出射される光に基づいて、例えば車両の前方に第1の表示対象の虚像(第1の虚像、言い換えれば第1の立体虚像)が表示される。また、第2の光線分離部から出射される光に基づいて、第2の表示対象の虚像(第2の虚像、言い換えれば第2の立体虚像)が表示される。
第1の表示対象は、例えば、像の鮮明度が必要とされる文字等から構成される情報画像(具体的には例えば文字と数字で構成される車速表示)である。また、第2の表示対象は、例えば、車速表示よりも遠方において、道路の路面に重畳されて延在するナビゲーション用矢印の図形や、遠くに位置する道路標識や看板等であり、これらは、上述のとおり、遠近感あるいは奥行き感が重視される情報画像ということができる。
輻輳角が大きいということは、ユーザーの近くに虚像が認識されるということであり、輻輳角が小さいということは、より遠くに虚像が認識されるということである。本態様では、第1の表示対象(車速表示等)についての虚像(第1の虚像)は、HUD装置のユーザーに近くに位置するように認識され、このとき鮮明な虚像による正確な情報提示がなされる。
また、第2の表示対象(ナビ用矢印等の遠方の標識あるいは看板等)についての虚像(第の2の虚像)は、より遠くに認識され、このとき、第2の虚像は、第1の虚像に比べて鮮明度が相対的に低下し、したがって、例えば遠くに位置することによる、あるいは、近方から遠方へと延在することによる自然なぼかし(ぼけ)が、第2の虚像に適切に生じることになる。よって、各虚像を同時に表示するような場合であっても、各虚像は、ユーザー(あるいは車両)からの距離の程度に応じた適切な鮮明度にて表示され、ユーザーには違和感が生じない。
第3の態様に従属する第4の態様において、
前記第1の虚像についての輻輳角の取り得る最小値と最大値との差を第1の差分とし、前記第2の虚像についての輻輳角の取り得る最小値と最大値との差を第2の差分とするとき、前記第2の差分は、前記第1の差分よりも大きくてもよい。
第4の態様では、表示される虚像についての、輻輳角の取り得る最小値と最大値の差が相対的に大きいものが第2の虚像(鮮明度がやや低下している虚像)であり、その差が相対的に小さいものが第1の虚像(より高い鮮明度をもつ虚像)である。
例えば車両の前方において、広い範囲にわたって延在する長い奥行きをもつ虚像(路面に重畳されるもの等が含まれ、広義には路面に対して傾斜している視覚を与える「傾斜像」という概念に含まれる虚像とみることもできる)を第2の虚像とすることができる。路面に沿って延在するような虚像は、その虚像の車両に近い側の近方端と遠い側の遠方端との間の距離が大きく、遠近の差が大きいため、近方端の最大の輻輳角と遠方端の最小の輻輳角との差が大きくなる。
一方、第1の虚像は、例えば、奥行きが短い虚像(路面に直交するように、あるいは、直交する角度に近い角度で表示されてユーザーに正対する(向き合う)虚像を含み、広義には路面に対して立っている視覚を与える「立像」という概念に含まれる虚像とみることもできる)とすることができる。路面に対して立っている視覚を与えるような虚像は、近方端の最大の輻輳角と遠方端の最小の輻輳角との差が小さくなる。
よって、輻輳角の取り得る最小値と最大値との差の大きな表示対象を第2の表示対象として、その虚像(第2の虚像)を、例えば、車両からより遠方に表示し、差がより小さい表示対象を第1の表示対象として、その虚像(第1の虚像)を車両のより近くに表示することで、自然な遠近感を生じさせる、あるいは、生じさせ易くするという効果を得ることができる。
第3又は第4の態様に従属する第5の態様において、
前記第1の虚像は、前記ユーザーに対して正対するように表示するのが好ましい虚像であり、
前記第2の虚像は、前記ユーザーに対して、道路の路面に沿って延在するように表示するのが好ましい虚像、又は前記路面に重畳して表示するのが好ましい虚像である。
第5の態様では、第1の虚像は、ユーザーに正対する(向き合う)ような、立った視覚を与える立像とすることができ、第2の虚像は、路面に沿って(車両の進行方向に)延在する、あるいは路面に重畳されるような虚像とすることができる。本態様によれば、第1、第2の表示対象を、自然な遠近感で表示することができる。
第3乃至第5の何れか1つの態様に従属する第6の態様において、
前記第1の虚像は、前記車両が進行する路面に対して第1の角度θ1をなして表示され、
前記第2の虚像は、前記車両が進行する路面に対して第2の角度θ2をなして表示され、
前記第1の角度θ1は、45°<θ1≦90°を満たし、
前記第2の角度θ2は、0≦θ2≦45°を満たしてもよい。
第6の態様では、立像、傾斜像について、路面に対する角度θ1、θ2の範囲の一例を示している。閾値となる角度として、直角(90°)の半分の45°を使用し、45°以下であるか、45°を超えるかによってθ1、θ2を分けている。また、θ1は路面となす角が90°(路面との直交)であってもよく、また、θ2は路面となす角度が0°(路面への重畳)であってもよい。広義の立像と、広義の傾斜像を使い分けすることによって、多様な表示を同時に、自然な遠近感をもって表示することができる。
例えば、虚像を複数に分割し、各虚像に適切な横方向(水平方向)の解像度(分解能)を割当てることで,奥行きのある表示をすると同時に、より多くの文字情報を表示し、それらを違和感なく表示する、というようなことが可能となる。これにより、従来技術では困難であった、多様で高品質の立体虚像によるHUD表示が可能となり、HUD装置の高機能化が達成される。
第3乃至第6の何れか1つの態様に従属する第7の態様において、
前記第1の表示対象は、文字、図形、記号の少なくとも1つを含む、前記車両の情報、前記車両の周囲の情報、ナビゲーション情報の少なくとも1つである情報画像であり、
前記第2の表示対象は、前記車両、又は他車両の進行に関する矢印の図形、又は矢印以外の図形を含む情報画像であってもよい。
本態様では、情報伝達の正確性が重視される画像等を第1の表示対象(自車両の近方側に表示する虚像に対応する表示対象)とし、違和感のない視覚を与えること(違和感のない遠近感や奥行き感の視覚性)が重視される画像等を第2の表示対象(自車両の遠方側に表示する虚像に対応する表示対象)とする。
第1の表示対象としては、例えば、車両の情報、車両の周囲の情報、及びナビゲーション情報等を示す、文字やアイコン等をあげることができる。具体的には、車速表示、道路の制限速度情報、ターンバイターン情報(例えば、交差点名称情報、POI(地図上の特定地点)情報等)を例示することができる。
これらは、表示の正確性、あるいは素早い認知性等が要求され、また、車速表示等は常時表示されることも多いことから、ユーザーの手前側に、焦点の合った虚像にて見易く表示するのが好ましいことから、第1の表示対象に含めるのが好ましい。
また、第2の表示対象としては、例えば、自車両、又は他車両の進行に関する矢印の図形、及び矢印以外の図形を含む情報等があげられる。これらは、図形を主体としており、直感的な把握性や、違和感なく距離情報を感得できること等が重要である。また、遠くに位置する標識等も、周囲の実景のぼかしの程度に整合する、ぼかし量で表示して、ユーザーに違和感を生じさせないのが好ましい。その他、ルートガイドとしての矢印情報、凍結している路面領域を示す着色された図形情報、あるいは、ユーザーである運転者のハンドルや機器の操作等を支援するADAS(先進運転支援システム)の情報も同様である。したがって、これらは第2の表示対象に含めて、虚像表示面(傾斜面)の奥側の領域を用いて、奥行き感があり、適度にピンぼけもしているような表示を行うのがよい。これにより、目の疲労のない、適正な視覚性のある表示を実現することができる。
第3乃至第7の何れか1つの態様に従属する第8の態様において、
前記表示制御部は、前記第2の虚像が、時間経過と共に前記車両に近づくように移動させる表示制御を実行してもよい。
第8の態様では、虚像が、時間経過と共に、自車両に近づくように表示制御がなされる
具体例としては、車両の進行に合わせて、ナビゲーション用の各種表示を路面上で移動させる場合や、制限速度を示す標識等を、遠方から近方へと移動させる場合があげられる。
例えば、移動中の表示が、車両の遠方および中間位置にあるときは、解像度がやや低く抑えられ、移動の結果としてその表示が近方にまで到達すると、解像度が上昇して鮮明な視覚を与えることで、ダイナミックかつ違和感のない虚像表示制御を実施することができる。
第3乃至第8の何れか1つの態様に従属する第9の態様において、
前記表示制御部は、前記第2の表示対象が、緊急度又は重要度が通常よりも高い情報を含むと判定されるときは、前記第2の表示対象の左眼用視差画像及び右眼用視差画像を前記表示面の前記第2の領域に表示するに際し、前記第2の表示対象の左眼用視差画像及び右眼用視差画像に、解像度の低下を抑制する画像処理を施してもよい。
本態様では、表示制御部が、表示部の表示面に視差画像の表示をなす際に、個別に画像処理を行って、例えば、ぼかしを抑制したり、陰影や外形を強調したりして鮮明度を増す補正を行うことができる。
上述のとおり、本発明では、立体表示に使用される光学部材(レンチキュラレンズやパララックスバリア等)において、解像度が異なる複数の部分を設けて、各部分により分離されて生じる左眼用光線/右眼用光線に基づいて形成される第1、第2の虚像は、個別に適切な解像度とされる。
但し、解像度が相対的に低い方がよい表示対象の虚像であっても、場合によっては、その解像度の相対的な低下が不要であることもある。例えば、車両の前方で生じた交通事故を報知する注意喚起マークを遠方に表示する場合や割り込み車両が危険な位置にとどまっていることを報知する危険報知の場合のように重要な運転シーンにおける報知時の表示、または、高速道路の出口の報知のように、見逃しが許されない重要度の高い表示の場合等である。
このようなときは、表示制御部が、個別に画像処理を行って、個別に鮮明度を増す補正(強調処理等を含む)を行うことで、個別に救済することで、本実施形態の光学部材を使用した場合の悪影響が発生しないようにすることができる。この場合でも、個別の画像処理であることから、画像処理ソフトウエアやハードウエアの負担はそれほど増大しないので、問題は生じない。
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
図1を参照する。図1(A)は、ウインドシールドを介してユーザーが視認する虚像の一例を示す図、図1(B)は、立体視における輻輳角を示す図である。なお、図1(A)において、車両の幅方向(横方向、左右方向、あるいは水平方向)をx方向とし、車両の高さ方向(縦方向、上下方向あるいは路面40に直交する垂直方向)をy方向とし、車両の進行方向に沿う方向(前後方向)をz方向とする。なお、この点は、他の図面でも同じである。
車両1は、直線状の道路を進行している。なお、立体表示装置(3Dディスプレイ)を用いたHUD装置(立体視HUD装置)のユーザーは、ウインドシールド(フロントガラス)を介して、実景(背景)として、道路の側線51、53、センターライン55、及び信号機71を視認することができる。
図1(A)において、車両(自車両)1のウインドシールドが、被投影部材(光の反射性と透光性を備える部材)として機能する。被投影部材は、言い換えれば、反射透光部材2である。なお、被投影部材(反射透光部材2)であるウインドシールドは、コンバイナ等であってもよい。HUD装置は、車両1に設けられた反射透光部材2に表示光を投影し、反射透光部材2に反射された表示光により虚像を生成して表示する。
図1(A)における虚像は、ユーザーの左右の各眼に左眼用/右眼用の異なる画像(視差画像)の表示光を入射させることで表示される立体的な虚像(立体虚像)である。例えば、左目用画像と右目用画像との差(視差)が小さければ、ユーザーは、その画像が近傍にあるように知覚し、一方、左目用画像と右目用画像との差(視差)が大きければ、ユーザーは、その画像が遠方にあるように知覚する。
HUD装置(図1では不図示。図2の符号101)は、例えば、ダッシュボード(図1では不図示。図8の符号41)の内部に配置されている。
また、図1(A)の例では、ステアリングホイール(広義には、ステアリングハンドル)7の近傍に、HUD装置等のオン/オフの切り換えや、動作モード等を設定可能な操作部9が設けられている。また、フロントパネル11の中央には、表示装置(例えば、液晶表示装置)13が設けられている。表示装置13は、例えば、HUD装置による表示の補助用に用いることができる。なお、この表示装置13は、タッチパネル等を有する複合型のパネルであってもよい。
虚像は、ウインドシールド(反射透光部材)2内の、虚像表示領域3に表示される。虚像表示領域3は、立体表示装置(3Dディスプレイ:詳細は後述)における縦方向の画角、及び横方向の画角に応じて定まる。
図1(A)の例では、鮮明な車速表示(「50km/h」という表示)の虚像SPが表示されている。この車速表示SPの虚像は、広義には、「車両の幅方向における解像度が高い、あるいは、ぼかしが少ない鮮明な第1の虚像V1」であり、言い換えれば、ユーザーへの正確な情報伝達が重視される画像(鮮明度が高い画像)の第1の虚像V1ということができる。
この「鮮明度が高い画像」の第1の虚像V1は、ユーザーから見て手前側に常時表示される非重畳コンテンツ(対象への重畳が意図されない、例えば車両1の状態や車両1の周囲の状況等を示すもの)の表示であってもよく、また、文字、図形、記号等の少なくとも1つからなるナビゲーション表示等であってもよい。
一方、車速表示SPよりも遠方に、道路の路面40に沿って(例えば路面40に重畳されて)車両1の進行方向に延在するナビゲーション用矢印の図形の虚像69と、制限速度を示す標識(交通標識)の虚像65が表示されている。
これらの虚像69、65は、第1の虚像V1と比較して解像度がやや低く設定されている第2の虚像ということができる。言い換えれば、第2の虚像V2は適切にぼかされている(言い換えれば、ピンぼけされている)のであり、これによって、ユーザーに、違和感のない自然な視覚が与えられる。
図1(A)の例では、ぼかしの程度(ぼかし量)は、例えば、実景である信号機71と同程度である。これによって、虚像69の特に先端部の矢印の部分、あるいは、標識の虚像65が際立つことがなく、また、手前側に表示されている鮮明な車速表示の虚像SPと比較しても、自然な遠近感が表現されており、よって、ユーザーが違和感をもつことが抑制され、このため両眼の疲労も低減される。
第2の虚像V2は、広義には、「車両1の幅方向である横方向の解像度が、手前側(近方側)に表示される第1の虚像に比べて低下している虚像」であり、言い換えれば、ユーザーに違和感のない視覚を与えることが重視される画像(自然な遠近感(距離感)の視覚を与える画像)の虚像ということができる。
第2の虚像V2は、例えば、車両1、又は他車両の進行に関する矢印の図形、及び矢印以外の図形(例えば、進行方向を示す三角形の図形や、交通標識である円形の図形)を含む情報画像であってもよく、また、路面40に重畳されて、例えば車両1の進行方向に沿ってかなり長く延在する矢印等の図形(路面重畳図形)であってもよい。
ここで、図1(A)において、第1の虚像V1(車速表示SP)の、車両1に最も近い端点(近方端)をU0とし、車両1から最も遠い端点(遠方端)をU1とする。すなわち、この場合、第1の虚像V1の近傍端U0の左右画像の視差は、遠方端U1の左右画像の視差より大きく設定され得る。
また、第2の虚像V2の内の、矢印の虚像69における車両1に最も近い端点(言い換えれば最も下に見える端点)をU2とし、最も遠い端点(言い換えれば、最も上に見える端点)をU3とする。すなわち、この場合、第2の虚像V2の近傍端U2の左右画像の視差は、遠方端U3の左右画像の視差より大きく設定され得る。
図1(B)を参照する。第1の虚像V1としての車速表示の虚像SPの、車両1に最も遠い端点U1における、ユーザーの左右の各眼AL、ARを基準とした第1の輻輳角をθaとし、第2の虚像V2としての矢印の虚像69の、車両1に最も近い端点U2における、ユーザーの左右の各眼AL、ARを基準とした第2の輻輳角をθbとするとき、θa>θbである。これによって、ユーザー(人)は、車速表示の虚像SPを近方に認識(知覚、あるいは感得)し、一方、矢印の虚像69をより遠方に認識する。
ここで、図1(A)における端点U0〜U3に着目する。第1の虚像V1についての輻輳角の取り得る最小値(端点U1における輻輳角)と最大値(端点U0における輻輳角)との差を第1の差分とし、第2の虚像V2についての輻輳角の取り得る最小値(端点U3における輻輳角)と最大値(端点U2における輻輳角)との差を第2の差分とするとき、第2の差分は、第1の差分よりも大きい。
路面40に沿って延在する第2の虚像V2である矢印の図形の虚像69は、その虚像69の車両1に近い側の近方端U2と遠い側の遠方端U3との間の距離が大きく、遠近の差が大きいため、近傍端U2の左右画像の視差と遠方端U3の左右画像の視差との差が大きくなり、近方端U2の最大の輻輳角と遠方端U3の最小の輻輳角との差が大きくなる。
一方、第1の虚像V1としての車速表示SPは、奥行きが短い虚像であり、具体的には、路面40に直交するように、あるいは、直交する角度に近い角度で表示されてユーザーに正対する(向き合う)のが好ましい「立像」という概念に含まれる虚像とみることもできる。路面40に対して立っている視覚を与えるような車速表示の虚像SPは、近方端U0の最大の輻輳角と遠方端U1の最小の輻輳角との差が小さくなる。
よって、輻輳角の取り得る最小値と最大値との差の大きな表示対象(矢印の図形の画像等)を第2の表示対象(解像度(鮮明度)が相対的に低下した画像)として、その虚像(第2の虚像V2である矢印の図形の虚像69)を車両1からより遠方に表示し、差がより小さい表示対象(車速表示)を第1の表示対象(解像度(鮮明度)が相対的に高い画像)として、その虚像(第1の虚像V1である車速表示の虚像SP)を車両1のより近くに表示することで、自然な遠近感を生じさせる、あるいは、生じさせ易くするという効果を得ることができる。
次に、図2を参照する。図2(A)は、立体表示装置を用いた本発明のHUD装置の構成の一例を示す図、図2(B)は、2つに分離された各虚像の、路面に対する角度(傾斜角)の一例を示す図、図2(C)は、比較例としての、スクリーンに画像を投影して表示光を生成する方式のHUD装置の構成例を示す図である。
まず、図2(C)の比較例(2Dディスプレイを用いたHUD装置)について説明する。但し、図2(C)は本発明者により考えられたものであり、公知例ではない。先に示した図1(A)の運転シーンでは、例えば、車両1の前方10m〜100mというような、かなり広い範囲にわたる虚像の表示がなされている。このような広範囲にわたる虚像表示を、2Dディスプレイを用いたHUD装置にて行う場合の構成例が、図2(C)に比較例として示されている。
図2(C)に示されるHUD装置100は、投光部(投射部、あるいはプロジェクター)151と、画像を表示する表示面164を有する表示部(画像表示部と言う場合もあり、具体的には例えばスクリーン)161と、反射鏡(折り返しミラー)174と、曲面ミラー(凹面鏡)171と、カバーガラス176と、外装(筐体)121とを有する。
広範囲にわたる虚像表示は、大きなスクリーン160を光軸に対して傾斜して設置し、車両1の前方に、傾斜したスクリーン160の表示面164に対応して定まる、路面40に対して傾斜する虚像表示面(結像面)PS1を設けて、その虚像表示面PS1上で虚像表示距離に応じた位置に虚像Z1を表示させることで実現される。
但し、図2(C)の比較例では、2Dディスプレイ151(図中、破線で示される部分)は、上下方向の距離(高さ)H2がかなり長くなり、表示範囲をこれ以上広くとると、外装121の内部に収まらないという問題が生じ得る。この問題は、図2(A)の、本実施形態の3Dディスプレイを用いたHUD装置(立体視HUD装置)によって解消される。
すなわち、図2(A)では、立体表示装置(3Dディスプレイ)が採用されており、この立体表示装置は高密度の表示が可能であると共に小型であり、薄型でもある。また、薄型であることから、図2(A)では、図2(C)に比べて、3Dディスプレイを時計回りに、より回転させ、より傾斜させて設置している。これらによって、3Dディスプレイの高さH1は、図2(C)のH2に比べて十分に縮小され、外装121に容易に収めることができる。よって、HUD装置の小型化が実現される。
以下、図2(A)の構成について、より詳細に説明する。なお、図2(A)では、図2(C)と共通する部分には同じ参照符号を付している。図2(A)のHUD装置にて採用される立体表示装置231は、ユーザーの両眼に視差画像を投影することで立体視を提供する立体表示装置であって、視差画像を表示する表示面を備える表示部(例えばフラットパネルディスプレイ)210と、表示部210に接触して、又は近接して配置され、左眼用視差画像及び右眼用視差画像の各光線を分離する光線分離機能をもつ光学部材としてのレンチキュラレンズ220と、表示部210における画像表示を制御する表示制御部300と、を有する。また、表示部210及び光学部材としてのレンチキャラレンズ220によって、立体表示部(3Dディスプレイ部)230が構成される。
ここで、光学部材としてのレンチキュラレンズ220は、図2では不図示であるが図4(B)にて示すように、横方向の解像度(分解能)が異なる第1、第2の光線分離部220a、220bを有する。なお、これらの構造の詳細については後述する。
図2(A)では、立体表示装置(3Dディスプレイ)231から出射される光線として、e1、e2、e3の3本の光線が示されている。ここで、光線e1は、鮮明度(解像度)が相対的に高い画像に対応する光(画像を再現する光でもあるので、再現光(又は再生光)と称することもできる)であり、一方、光線e2、e3は、鮮明度(解像度)が相対的に低い画像に対応する光(再現光)である。以下、再現光という用語を使用して説明する。
再現光e1〜e3は、HUD装置101の光学系(反射部材としての折り返しミラー174及び曲面ミラー(凹面鏡、拡大鏡)171を備える)によって、少なくとも1回(図2(A)では合計で2回)の反射がなされて、これによって表示光E1〜E3となり(言い換えれば、表示光E1〜E3が生成され)、そして、ウインドシールド2に投射(投影)される。
これによって、第1の虚像V1(解像度α)と、第2の虚像(解像度β:β<α)が表示される。虚像が2つに分離され、各々の虚像が適切な解像度にて表示されるため、ユーザーが違和感を覚えることが抑制され、両眼の疲れ等も軽減される。
なお、図2(A)において、反射鏡(折り返しミラー)174は、成形された樹脂、例えばポリカーボネートに、金属、例えばアルミを蒸着した、光を反射するミラーである。曲面ミラー(凹面鏡)171は、例えば凹面(自由曲面であってもよい)を有するように成形した樹脂、例えばポリカーボネートに、金属、例えばアルミを蒸着したミラーであり、一種の拡大鏡としての機能を有し、表示光E1〜E3をウインドシールド2に向けて投射することで画像(映像)の投影を行う。カバーガラス176は、透明な樹脂、例えばポリカーボネート製のシートである。また、外装121は、HUD装置の構成要素を収容する筐体である。
なお、図2(A)の構成では、回動部(アクチュエータ)175によって曲面ミラー171を回動させて、傾きを適宜、調整することができる。また、調整部(アクチュエータ)173によって、立体表示装置(3Dディスプレイ)230の傾斜等を調整することもできる。
また、図2(A)の例では、第1の虚像V1(具体的には、図1(A)の車速表示の虚像SP)の車両1から遠い端点U1についての虚像表示距離(視点A、あるいは車両1上の基準点からの距離)はL1であり、第2の虚像V2(具体的には、図1(A)における矢印の図形の虚像69である)の車両1から近い端点U2についての虚像表示距離はL2であり、L2>L1である。
また、図2(A)において、第1の虚像V1に対応する仮想的な立体像(立体原画像)は、符号M(V1)にて示されている。また、第2の虚像V1に対応する仮想的な立体像(立体原画像)は、符号M(V2)にて示されている。
仮想的な立体像M(V1)、M(V2)は、例えば折り返しミラー174の位置(レンチキュラレンズ等から出射された再現光が結像する位置とする)に、仮に人の左右の眼が位置するとしたとき、その人によって認識され得るものである。言い換えれば、光線再現方式の立体表示装置231によって光線が再現された結果として、結像点に両眼が位置する人に感得され得る、見かけ上の立体像である。
図2(B)を参照する。図2(B)において、第1の虚像V1と路面40とがなす角度をθ1とし、第2の虚像V2と路面40とがなす角度をθ2とする。θ2>θ1である。
先に説明したように、第2の虚像V2(の内の矢印の図形の虚像69)は、ユーザーに対して、道路の路面40に沿って延在するように表示するのが好ましい虚像、又は路面40に重畳して表示するのが好ましい虚像である。言い換えれば、傾斜像として表示するのが好ましい虚像である。
一方、第1の虚像(車速表示の虚像SP)は、ユーザーに正対する(向き合う)ような、立った視覚を与える立像とするのが好ましい。表示対象の視覚的性質に応じて、立像と傾斜像を使い分けすることで、第1、第2の表示対象を、自然な遠近感で表示することができる。
また、「立体像」、「傾斜像」に関しては、特に定義があるわけではないが、客観的に表現するならば、図2(B)の例において、第1の虚像V1は、車両1が進行する路面40に対して第1の角度θ1をなして表示され、第2の虚像θ2は、車両1が進行する路面に対して第2の角度θ2をなして表示され、第1の角度θ1は、45°<θ1≦90°を満たし、第2の角度θ2は、0≦θ2≦45°を満たしてもよい、ということになる。
この場合、立像、傾斜像を区別する閾値となる角度として、直角(90°)の半分の45°を使用し、45°以下であるか、45°を超えるかによってθ1、θ2を分けている。また、θ1は路面40となす角が90°(路面との直交)であってもよく、また、θ2は路面となす角度が0°(路面への重畳)であってもよい。立像と傾斜像を使い分けすることによって、多様な表示を同時に、自然な遠近感をもって表示することができる。
例えば、虚像を複数に分割し、各虚像に適切な横方向(水平方向)の解像度(分解能)を割当てることで,奥行きのある表示をすると同時に、より多くの文字情報を表示し、それらを違和感なく表示する、というようなことが可能となる。これにより、従来技術では困難であった、多様で高品質の立体虚像によるHUD表示が可能となり、HUD装置の高機能化が達成される。また、例えば、立体表示装置の取り付け時に誤差が生じても、表示部(フラットパネルディスプレイ等)210における発光画素の位置を制御して、映像が生じる位置をずらす等の調整ができ、よって、取り付けの公差が緩和されると共に、製造コストを下げることもできる。
次に、図3を参照する。図3(A)は、立体表示装置の構成例を示す図、図3(B)は、立体表示装置を用いたHUD装置における虚像(立体虚像)の表示原理を示す図である。
図3(A)において、フラットパネルディスプレイ(液晶表示装置等)210の表示面211に、右眼用の画像(視差画像)QR、左眼用の画像(視差画像)QLが表示される。なお、「視差画像」とは、左右の眼が異なる位置にあることによって生じる視差(各眼が知覚する画像の差)が再現されている画像である。
表示部210の光出射側を前方とするとき、表示部210の前方に光学部材(図3(A)の例では符号RSを付して示している)が配置される。光学部材RSは光線分離部材として機能し、左上側に示されるように、具体的にはレンチキュラレンズ220、あるいは、パララックスバリア(視差バリア)225により構成することができる。但し、これらは例示であり、これらに限定されるものではない。レンチキュラレンズについては後述する。
また、パララックスバリア(視差バリア)は、例えば幅の細い短冊状(矩形形状)の遮蔽物225a〜225nを、隙間(スリット)SLを設けつつ横方向に所定ピッチで配置したものであり、同じ画像であっても、遮蔽物によって、その画像の表示光の一部を遮蔽することで、左右の各眼用の、異なる映像の表示光(指向性のある表示光)を発生させるものであり、光線を左右の各眼用に分離する点ではレンチキュラレンズと共通する。但し、光を遮断するため映像がやや暗くなることがあり、この点ではレンチキュラレンズの方が有利となる。
光学部材として、現在の3Dディスプレイの分野で主流技術といわれるレンチキュラレンズ、又はパララックスバリア(視差バリア)を使用することで、表示される映像品質を安定に維持することができる。
光線分離機能を有する光学部材RSで分離された光(画像を再現する各眼用の再現光E(L1)、E(R1))が、光の結像点に位置する両眼AL、ARに入光したとすると、人には、輻輳(光の交差)が生じている箇所にて、見かけ上の立体像IM(具体的には、図2(A)で示したM(V1)、M(V2)等)が見える。言い換えれば、このことは、立体像IMが、3Dディスプレイによって生成された、とみることもできる。なお、図3(A)の例では、輻輳角はθcである。
図3(B)を参照する。図3(B)では、視認者(車両の運転者等)の前にアイボックスEBが設定されており、アイポイントEP(C)は、アイボックスEBの中央に位置する。ウインドシールド2の前方に、左右の各眼に対応する仮想的な結像面PS(L)、PS(R)を設定したとすると、その重なりの領域の中央に虚像V(C)が位置する。虚像V(C)の輻輳角はθdであり、虚像V(C)は、視認者(ユーザー)には立体的な像として認識されることになる。
この立体的な虚像V(C)は、以下のようにして表示(形成)される。すなわち、図3(A)に示した3Dディスプレイにより生成された仮想的な立体像IMの、左右の各眼用の再現光e(L1)、e(R1)を、HUD装置の光学系に含まれる曲面ミラー(凹面鏡等)171にて反射させ(反射の回数は少なくとも1回)、これによって、表示光E(L1)、E(R1)としてウインドシールド2に投射(投影)し、その反射光が視認者の両眼に至り、ウインドシールド2の前方に像を結ぶことによって、虚像V(C)が表示(形成)されることになる。
次に、図4を参照する。図4(A)は、フラットパネルディスプレイ(表示部)及びレンチキュラレンズ(光学部材)を用いた立体表示装置における立体像の光線の再現について説明するための図、図4(B)は、横方向の解像度が異なる2つの光線分離部をもつ立体表示装置の構成例を示す図である。
図4(A)において、3Dディスプレイ部(立体表示部)230は、視差画像を表示する表示面215を備える表示部(フラットパネルディスプレイ等)210と、表示部210に接触して、又は近接して配置され、左眼用視差画像及び右眼用視差画像の各光線を分離する光線分離機能をもつ光学部材としてのレンチキュラレンズ220と、を有する。
光学部材としてのレンチキュラレンズ220は、複数の、光学要素としての円筒レンズ(シリンドリカルレンズ)F1〜Fnが、横方向(図4(B)の方向W)に沿って、所定ピッチで配置(配列)して、横方向に周期的なレンズアレイ構造を形成することで構成される。光学要素としての円筒レンズ(F1〜Fn)は、表示部210側を後方側とし、その反対側を前方側とするとき、背面が光を通過させる平面で、前面が球面レンズ(但し、非球面であることを排除するものではない)である縦長の円筒レンズ(シリンドリカルレンズ)である。図4(A)の例では、レンズの球面の曲率は一律としている。
なお、上記の「横方向W(図4(B)参照)」は、立体表示装置における横方向であり、この「横方向W」は、HUD装置101の、車両1の幅方向(左右方向、x方向)に対応する方向である。また、「縦方向H(図4(B)参照)」は、横方向に直交する方向であって、HUD装置101の、車両1の高さ方向(y方向)に対応する方向である。
表示部210は、表示面215において、左眼用の画像(視差画像)の画素L(L1〜Ln)と、右眼用の画像(視差画像)の画素R(R1〜Rn)とを、横方向に、交互に配置して画素行を形成し、画素行を縦方向にも配置することで、2次元の、複数の画素からなる画像面を形成した構成を有する(図5も参照)。
図4(A)では、左眼用画素(Lの画素)L1〜Lnの各々は、光学要素としての円筒レンズF1〜Fnの各々の左半分に対応する位置に配置(形成)される。右眼用画素(Rの画素)R1〜Rnの各々は、光学要素としての円筒レンズF1〜Fnの各々の右半分に対応する位置に配置(形成)される。なお、1画素は、さらに、R(赤)、G(緑)、B(青)の各サブピクセルからなるものとする。
先に図3(A)で説明したように、3Dディスプレイ部230の前方の、光の結像点911、913において、人の両眼AL、ARが位置したとすると、光線の輻輳が生じる箇所において、立体像IMを視認することができる。図4(A)では、左眼用画素L4〜L6の再現光として、E(L4)〜E(L6)が示され、右眼用画素R4〜R6の再現光として、E(R4)〜E(R6)が示されている。
次に、図4(B)を参照する。図4(B)に示されるレンチキュラレンズ220は、光を屈折させる第1の光学要素(円筒レンズ)F1a〜F8aが、横方向に沿って第1のピッチCW1で配列されて、横方向における第1の解像度を有する第1の光線分離部(言い換えれば、第1のレンチキュラレンズ部)220aを有する。
また、横方向に直交する方向を縦方向とするとき、第1の光線分離部220aとは異なる縦方向の位置(具体的には、第1の光線分離部220aの下側であって所定距離DHのをおいた位置)に配置されると共に、光を屈折させる第2の光学要素F1b〜F4bが、横方向に沿って、第1のピッチCW1よりも大きい第2のピッチCW2(ここでは、CW2は、CW1の2倍とする)で配置されることで、横方向における解像度が、第1の解像度よりも低い第2の解像度である第2の光線分離部(言い換えれば、第2のレンチキュラレンズ部)220bを有する。図4(B)の例では、第1の光線分離部220aの解像度は、第2の光線分離部220bの解像度の2倍に設定される。
なお、上記の「ピッチ」は、例えば、1つの円筒レンズの中央の位置から、隣接する円筒レンズの中央の位置までの距離である。
また、図4(B)において、符号210aは、第1の光線分離部(第1のレンチキュラレンズ部)220aに対応する第1の表示部である。また、符号210bは、第2の光線分離部(第2のレンチキュラレンズ部)220bに対応する第2の表示部である。
また、図4(B)において、符号215aは、第1の表示部210aの表示面を示し、符号215bは、第2の表示部210bの表示面を示す。
このようにして、第1、第2の光線分離部材(レンチキュラレンズ部)220a、220bの横方向における解像度を異ならせることで、鮮明度(解像度)が比較的高い虚像(図1(A)の第1の虚像V1)と、比較的低い虚像(図1(A)の第2の虚像V2)とを、同時に表示する場合等であっても、ユーザーには自然な遠近感が与えられ、眼の疲労も低減される。
次に、図5を参照する。図5は、立体表示装置における制御部(表示制御部を含む)の構成例、及び表示部(フラットパネルディスプレイ)における画素構成等を示す図である。
図5において、表示制御部300は、画像生成部(左眼用/右眼用視差画像生成部)310を有する。
表示制御部300は、画像生成部310を制御して、第1の光線分離部(第1のレンチキュラレンズ部)220aに対応する第1の表示部210aの表示面215aに、第1の表示対象(例えば、図1(A)の車速表示の画像)の左眼用視差画像GLa及び右眼用視差画像GRaを表示させる。
一方、第2の光線分離部220bに対応する第2の表示部210bの第2の表示面215bに、立体視における鮮明度が、第1の表示対象よりも低くてもよい第2の表示対象(例えば、図1(A)のナビ用矢印の画像や標識の画像)の左眼用視差画像GLb及び右眼用視差画像GRbを表示させる。
ここで、上記の表現にて、「第1の表示部210aの表示面215aに、左眼用視差画像GLa及び右眼用視差画像GRaを表示させる」と記載しているが、これは、「表示部210の表示面215の第1の領域Z1(図5において、破線の楕円で示されている)に、左眼用視差画像GLa及び右眼用視差画像GRaを表示させる」と言い換えることができる。いずれも内容的には等価である。
同様に、「第2の表示部210bに対応する第2の表示面215bに」という箇所は、「表示部210の表示面215の第2の領域Z2(図5において、破線の楕円で示される)に」と言い換えることができる。いずれも内容的には等価である。
また、図5において、第1の表示部210aの表示面215aには、RGBのサブピクセルからなる画素PXaが行方向及び列方向に配列されており、これによって、2次元の画素面(画像表示面)が形成されている。また、第2の表示部210bの表示面215bには、RGBのサブピクセルからなる画素PXb(横方向の画素サイズが、PXaの2倍である)が行方向及び列方向に配列されており、これによって、2次元の画素面(画像表示面)が形成されている。
次に、図6を参照する。図6(A)、(B)は路面に張り付くように虚像を表示する場合の表示例を示す図、図6(C)〜(E)は、ウインドシールドを介してユーザーが視認する虚像の他の例を示す図である。図6において、前掲の図面と共通する箇所には同じ符号を付している。図6では、路面HUD(路面重畳HUD)と呼ばれる、路面に虚像を重畳させて表示する技術に本発明を適用した例を示す。
図6(A)の例では、第2の虚像V2が、路面40上に水平に重なるようにして延在して表示されている。
また、図6(B)の例では、第2の虚像V2が、路面40の近くにおいて、やや傾斜して設定されている。
また、図6(C)の例では、ウインドシールド2の虚像表示領域3において、右側には第1の虚像V1としての車速表示SPが表示されており、その左側において、車両1の進行方向に沿って手前側から奥側へと延びる、左折を促すナビゲーション用矢印71が表示されている。
車速表示SPは、第1の虚像V1として表示されるため鮮明度が高く、視認性に優れる。また、ナビゲーション用矢印71は、車両1に近い側に基端部71aが存在し、遠い側に先端部71bが存在する。基端部71aは第1の虚像V1として鮮明に表示され、先端部71bは第2の虚像V2として、やや鮮明度が低下してぼかされて表示される。よって、自然な遠近感のある表示が、かなりの広範囲にわたって実現されている。
図6(D)の例では、車両誘導用の表示73が、路面40に重畳されて表示されている。車両誘導用の表示73は、基端部73aと先端部73bを有する。基端部73aは第1の虚像V1として鮮明に表示され、先端部73bは第2の虚像V2として、やや鮮明度が低下してぼかされて表示される。よって、自然な遠近感のある表示が、かなりの広範囲にわたって実現されている。
図6(E)の例では、遠方の右上に標識75が表示され、その標識75より手前の左側に、高速道路の出口(降り口)77を示す円形のマーク78が表示されている。
また、ある時点では、出口(EXIT)を示す車両誘導用の標識79が路面40に重畳されて、第2の虚像V2として表示されている。時間の経過と共に(言い換えれば、車両1の進行に合わせて)、その標識79が、車両1に近づくように移動する。その移動に伴い、標識79は第1の虚像V2として表示されるようになって鮮明度が増すことから、ユーザーには自然で、かつ見易い視覚が与えられる。
一方、高速道路の出口(降り口)77を示す円形のマーク78であるが、仮に、出口77で進入できずに通り過ぎてしまうと、ユーザーは次の出口まで行って再び戻ってくるという大きな負担を負うことになり、この運転シーンは、重大性(あるいは緊急性)が高い運転シーンということになる。この円形のマークは、第2の虚像として表示されるものである。
ここで、円形のマーク78は、出口77が遠方にある場合であっても鮮明に表示した方がよいのであれば、表示制御部300は、円形のマーク78については、個別に画像処理を行い、ぼかしのない鮮明な虚像(例えば、第1の虚像V1と同等の解像度、あるいは、それ以上の解像度を有する虚像)とする画像処理、あるいは円形のマークを強調する画像処理(言い換えれば、ぼかしを抑制する表示制御)を実施してもよい。
例えば、上記のような重要な運転シーンの場合、あるいは、遠方に障害物があることを報知するために注意喚起マークを表示するような場合(危険報知の場合)や、高速道路の出口の報知のように重要度の高い表示の場合等では、表示制御部300が、個別に画像処理を行って、鮮明度を増す個別の画像補正を行う場合が増えるものと考えられる。この場合でも、個別の画像処理であることから、画像処理ソフトウエアやハードウエアの負担はそれほど増大しないので、問題は生じない。
次に、図7を参照する。図7(A)は、HUD装置のシステム構成の一例を示す図、図7(B)は、表示制御部の構成例を示す図である。図7において、前掲の図と共通する光線分離部には、できるだけ同じ符号を付している。
図7(A)に示されるシステムは、制御部290に含まれる表示制御部(表示制御装置)300と、対象物検出部801と、車両情報検出部803と、先に図2や図3等に示した立体表示装置230(表示部(ディスプレイ)210を含む)と、第1アクチュエータ177と、第2アクチュエータ179と、を有する。
表示制御部(表示制御装置)300は、I/Oインターフェース741と、プロセッサ742と、メモリ743を有する。表示制御部(表示制御装置)300、対象物検出部801及び車両情報検出部803は、通信線(BUS等)に接続されている。
また、第1アクチュエータ177、第2アクチュエータ179は、図2(A)に示した回転部(回動機構)175や調整部173として利用することができる。これらは、光学系あるいは表示部の調整系ということもできる。
また、対象物検出部801は、例えば、車両1に設けられた車外センサ、車外カメラ等にて構成することができる。また、車両情報検出部803は、例えば、速度センサ、車両ECU、車外通信機器、目の位置を検出するセンサ、車両1のピッチ角(傾斜角)を検出するヨートレートセンサ等、あるいは、ハイトセンサにより構成することができる。表示制御部(表示制御装置)300は、対象物検出部801の検出情報や、車両情報検出部803からの情報に基づいて、例えば、表示対象について、個別にぼかしの程度を調整する画像処理を実施し、適切な遠近感の表示と、ユーザーへの情報の確実な報知とを両立させるのが好ましい。
また、1つ又はそれ以上のプロセッサ742は、例えば、路面40の位置情報を取得し、取得した情報に基づいて、第1、第2のアクチュエータ177、179のうちの少なくとも一方を駆動し、虚像表示位置の調整等を実行することも可能である。
図7(B)を参照する。図7(B)に示されるように、表示制御部(表示制御装置)300は、画像生成部(左眼用/右眼用視差画像生成部)310と、画像蓄積部(画像データベース)312と、左眼用画像バッファ332と、右眼用画像バッファ334と、画像インターフェース(I/F)336と、を有している。画像蓄積部(画像データベース)302には、表示対象についての、虚像表示距離に応じた視差画像サンプル等が記憶されている。画像生成部310は、その視差画像サンプルを読み出し、適宜、微調整等して表示するべき視差画像を生成する。その視差画像は、左右の各眼用の画像バッファ332、334に一時的に蓄積された後、画像I/F336を介して、左眼用視差画像GL及び右眼用視差画像GRが表示部(ディスプレイ)210に供給される。
また、車両1には、ユーザーの眼を撮像する瞳検出カメラ900と、ユーザーの視点位置を検出する視線位置検出部902と、が備えられている(全体構成は図8参照)。視線位置検出部902によって検出された視点位置の情報は、適宜、画像生成部310に供給される。画像生成部310は、視点位置の情報に基づいて、左眼用/右眼用の各視差画像を微調整等することができる。
次に、図8を参照する。図8は、HUD装置の全体の構成の一例を示す図である。前掲の図と同じ箇所には同じ符号を付している。また、図8では光学系52が設けられるが、この光学系52の構成として、先に図2(A)で示したものと同様の構成が採用され得る。また、光学系52の内部構成に関して、図2(A)に示される構成と同様の箇所には同じ参照符号を付している。
図8の例では、光学系52と、前方撮像カメラ17による撮像画像に基づいて画像処理を行う画像処理部21を有する運転シーン判定部19と、ナビゲーション部(ナビゲーションECU)400と、が設けられる。
光学系52は、画像が形成される表示面215を備える表示部(フラットパネルディスプレイ等)210、及び光学部材としてのレンチキュラレンズ(解像度が異なる少なくとも2つの光線分離部を備える)220で構成される立体表示装置230と、曲面ミラー(凹面鏡)171と、を有する。光学系52から表示光K(図2(A)における光線E1〜E3に相当する)がウインドシールド(反射透光部材2)に向けて出射され、この結果、先に説明したとおり、解像度が異なる第1、第2の虚像V1、V2が表示される。
表示制御部300は、画像インターフェース(I/F)336と、駆動部33と、虚像表示位置制御部34と、画像生成部310と、表示対象の適切な解像度を判定して第1、第2の何れの虚像として表示するのが好ましいかを判定したり、あるいはその重要度、緊急度等を判定したりする、表示対象の属性判定部36と、各種情報取得部39(車両1のピッチ角を算出等により取得するピッチ角取得部38を含む)と、を有する。
また、瞳検出カメラ900は、ユーザー22の眼を撮像し、視点位置検出部902は、瞳の撮像情報に基づいてユーザー22の視点位置を検出する。検出された視点位置の情報は、適宜、画像生成部310に供給される。
ナビゲーション部(ナビゲーションECU)400は、奥行きマッピング部402と、ナビ情報(道路案内情報、道路標識情報等)生成部404と、運転経路情報取得部406と、自車両位置情報取得部408と、地図情報取得部410と、記憶部(地図、道路案内情報、道路標識等のデータベースとして機能する)412と、を有する。ナビゲーション部(ナビゲーションECU)400には、車載ECU700が収集した車両情報等が、バス(BUS)を介して供給される。
また、通信部500が、例えば、車両10の外部に設置されている運転支援システム(又は他車に搭載されているADASシステム等)600との無線通信によって取得した各種の情報を、適宜、ナビゲーション部400の自車両位置情報取得部408及び地図情報取得部410に供給するようにしてもよい。また、GPS受信部502がGPS衛星から受信した位置情報等を、適宜、ナビゲーション部400の自車両位置情報取得部408及び地図情報取得部410に供給するようにしてもよい。
また、車両1には、各種センサ(ピッチ角検出用のヨートレートセンサ等を含めることができる)505が設けられている。また、車載ECU700により収集される各種の情報は、BUSを介してナビゲーション部400に供給され、また、各種情報の一部(符号J0で示している)は、ピッチ角取得部38及び各種情報取得部39にも供給される。情報J0には、現在の運転シーンにおける前方や後方、車両の周囲等における危険情報や、ユーザーに報知すべき情報の重要度判定の結果も含ませることができる。
表示制御部300は、この危険の程度や重要性の程度の情報を参照して、危険度や重要度の高い事象に関する表示については、表示の遠近に関係なく、解像度(鮮明度)を上昇させたり、特別の強調処理を実行させたりするなどして、ユーザーへの的確で迅速な情報の提供を実現してもよい。また、悪天候などで、ユーザーの視認性が通常時に比べて低下していると判断されるときは、虚像表示の鮮明度を高める等の画像処理を、適宜、行うこともできる。
表示制御部300において、各種情報取得部39に含まれるピッチ角取得部38は、画像処理部21から供給される画像情報、及び車載ECU700から供給される各種センサの情報等に基づいて、車両1の現在のピッチ角(言い換えれば車両1の傾斜)を算出する。
また、虚像表示位置制御部34は、例えば、運転シーン判定部19から提供される情報によって、車両1が例えば登り坂(あるいは下り坂)にさしかかっていると判定されるときは、ピッチ角等を考慮して、虚像の表示位置(路面に対する相対位置)を調整(補正)する。また、ナビゲーション部(ナビゲーションECU)400から供給される、表示対象である情報画像(ナビ情報等)の奥行き情報等に基づいて、虚像の表示位置を適宜、調整する。
画像生成部35は、入力される各種情報に基づいて、表示面165に表示する視差画像(視差原画像)を生成する。生成された視差画像(視差原画像)は画像I/F336に供給される。画像I/F336は、視差画像(視差原画像)のデータcvを、光学系52の表示部210に供給する。また、駆動部33は、例えば、曲面ミラー(凹面鏡)170を回動させるための制御信号等rvsを、アクチュエータ(図7(A)の符号177及び179の少なくとも1つ)に供給する。
次に、図9を参照する。図9は、表示制御部による表示処理の手順の一例を示すフローチャートである。
まず、車両のピッチ角を取得する(ステップS1)。次に、車両のピッチ角(傾き角)等を考慮して、虚像の表示位置の調整(補正)を行う(ステップS2)。
続いて、ステップS3の処理を実行する。ステップS3では、第1の光線分離部220aに対応する表示面215a(第1の領域Z1)に高解像度(かつ立像)である方が好ましい第1の虚像V1を表示させる。また、第2の光線分離部220bに対応する表示面215b(第2の領域Z2)に相対的に低解像度(かつ傾斜像)である方が好ましい第2の虚像V2を表示させる(図5参照)。また、第2の虚像V2であっても、重要度や緊急度等からみて鮮明に表示すべきものは、画像処理(解像度上昇処理、強調処理等)にて個別に解像度(鮮明度)を向上させる。
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、例えば、自車両からの距離が近い表示と遠い表示とが同時に表示されてユーザーがそれらを対比して見ることができるような場合においても、表示の鮮明度が一律ではなく、距離に応じた自然なぼかしの表示を視認でき、違和感が生じず、目の疲れを軽減することも可能である。
また、1つの表示が、時間の経過と共に自車両に近づいてくるような表示(表示の移動制御)を行う場合においても、ユーザーが過去の表示と現時点の表示とを対比できることから、上記の場合と同じ問題が生じ得るが、本実施形態によれば、自然な遠近感が得られ、上記の場合と同様の効果が得られ、特に問題は生じない。
また、本発明の実施形態によれば、鮮明度の高い表示と自然なぼかしの表示とを併用することで、多様な表示が可能となり、HUD装置の表現力(あるいは演出力)を向上させることも可能である。
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、表示制御部の負担を増やさずに、遠近感等による違和感を低減した立体像の視認が可能な立体表示装置(3Dディスプレイ)、及びこれを用いたHUD装置を提供することができる。
本明細書において、車両という用語は、広義に、乗り物としても解釈し得るものである。また、ナビゲーションに関する用語(例えば標識等)についても、例えば、車両の運行に役立つ広義のナビゲーション情報という観点等も考慮し、広義に解釈するものとする。また、HUD装置には、シミュレータ(例えば、航空機のシミュレータ)として使用されるものも含まれるものとする。また、表示部や光学部材の種類は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々のものを採用することができる。
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。