JP2021066924A - 絶縁被膜付き電磁鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】嫌気性アクリル系接着剤に対する接着強度、耐食性、及び耐テンションパッド性のいずれにも優れる絶縁被膜付き電磁鋼板を提供する。【解決手段】本開示の絶縁被膜付き電磁鋼板は、所定のトリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)と、重合性不飽和基を構造中に含有しないシランカップリング剤(B)と、板状シリカ(C)と、ウレタン樹脂(D)と、水と、を以下の条件(1)〜(3)を満足するように含有する表面処理剤を電磁鋼板の少なくとも片面に塗布、乾燥してなる絶縁被膜を有する。(1)前記(A)と前記(B)との質量比(A/B)が0.05〜1.00である。(2)前記(C)の含有量が、前記表面処理剤における(A)〜(D)の総質量に対し2〜30質量%である。(3)前記(D)の含有量が、前記表面処理剤における(A)〜(D)の総質量に対し2〜30質量%である。【選択図】なし

Description

本発明は、絶縁被膜付き電磁鋼板に関し、特に、自動車用モータや電気機器類の鉄心の素材に好適で、嫌気性アクリル系接着剤によって電磁鋼板を貼り合わせてコアを形成する用途に好適な、接着剤適合性に優れる絶縁被膜付き電磁鋼板に関する。
自動車用モータや電気機器類の鉄心などに使用される積層電磁鋼板は、従来、絶縁被膜を備える電磁鋼板を複数枚積み重ねた後、カシメや溶接などの方法により一体化することで製造されていた。近年、省エネルギーのため電気機器に対する高効率化の要求が増している。それに伴って、渦電流損を低減するために積層電磁鋼板に使用される電磁鋼板の板厚を薄くする傾向にある。しかしながら、電磁鋼板が薄い場合、カシメや溶接が難しいばかりか、積層電磁鋼板の端面が開きやすくなり、鉄心としての形状を保ち難い。
この問題を解決するため、カシメや溶接で電磁鋼板を一体化する技術に代えて、以下の2つの技術が提案されている。前者は、表面に接着性の絶縁被膜を形成した複数枚の電磁鋼板を熱圧着して、積層電磁鋼板を形成する技術である。後者は、絶縁被膜付き電磁鋼板に接着剤を塗布して、複数枚の電磁鋼板を貼り合せて、積層電磁鋼板を形成する技術である。後者の技術に適用される接着剤としては、嫌気性アクリル系接着剤が多用されることが知られている。
特許文献1には、「Siに結合するアルコキシ基以外の置換基が、水素、アルキル基、およびフェニル基から選ばれた少なくとも1種の非反応性置換基のみからなるトリアルコキシシランおよび/またはジアルコキシシラン(A)と、シランカップリング剤(B)とを、質量比(A/B):0.05〜1.0の下に含み、さらに、平均粒子径が0.08〜0.9μmかつアスペクト比が10〜100である板状シリカ(C)を、全固形分に対し2〜30質量%含む表面処理剤を電磁鋼板の少なくとも片面に塗布、乾燥して成る絶縁被膜を有することを特徴とする絶縁被膜付き電磁鋼板」が記載されている。この絶縁被膜は接着機能を有しないため、後者の技術に適用できる可能性がある。
特開2013−64195号公報
特許文献1の絶縁被膜付き電磁鋼板は、絶縁被膜中にクロム化合物を含まずとも、近年の電磁鋼板に求められる耐食性や耐テンションパッド性に優れている。なお、ここでいう「耐テンションパッド性」とは、コイルのスリットなどを行うために、電磁鋼板を押さえるために用いるフェルト状のテンションパッドで絶縁被膜の表面をこする際の絶縁被膜の剥がれにくさである。
しかしながら、本発明者らの検討によると、特許文献1の絶縁被膜付き電磁鋼板では、嫌気性アクリル系接着剤に対する接着強度を十分に得ることができず、この点において改良の余地があることが判明した。
そこで本発明は、上記課題に鑑み、嫌気性アクリル系接着剤に対する接着強度、耐食性、及び耐テンションパッド性のいずれにも優れる絶縁被膜付き電磁鋼板を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討したところ、電磁鋼板に絶縁被膜を形成するための表面処理剤の成分として、シランカップリング剤を主成分とし、トリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシランと板状シリカとを含むことに加えて、さらに所定量のウレタン樹脂を含有させることによって、上記の目的を達成できるとの知見を得た。
上記知見に基づき完成された本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]Siに結合するアルコキシ基以外の置換基が、水素、アルキル基、及びフェニル基から選ばれた少なくとも1種の非反応性置換基のみからなるトリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)と、
シランカップリング剤(B)と、
平均粒子径が0.08〜0.9μmで、かつ、アスペクト比が10〜100である板状シリカ(C)と、
ウレタン樹脂(D)と、
水と、
を以下の条件(1)〜(3)を満足するように含有する表面処理剤を電磁鋼板の少なくとも片面に塗布、乾燥してなる絶縁被膜を有する絶縁被膜付き電磁鋼板。
(1)前記トリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)と前記シランカップリング剤(B)との質量比(A/B)が0.05〜1.00である。
(2)前記板状シリカ(C)の含有量が、前記表面処理剤における(A)〜(D)の総質量に対し2〜30質量%である。
(3)前記ウレタン樹脂(D)の含有量が、前記表面処理剤における(A)〜(D)の総質量に対し2〜30質量%である。
[2]Siに結合するアルコキシ基以外の置換基が、水素、アルキル基、及びフェニル基から選ばれた少なくとも1種の非反応性置換基のみからなるトリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)と、
シランカップリング剤(B)と、
平均粒子径が0.08〜0.9μmで、かつ、アスペクト比が10〜100である板状シリカ(C)と、
ウレタン樹脂(D)と、
潤滑剤(E)と、
水と、
を以下の条件(1)〜(4)を満足するように含有する表面処理剤を電磁鋼板の少なくとも片面に塗布、乾燥してなる絶縁被膜を有する絶縁被膜付き電磁鋼板。
(1)前記トリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)と前記シランカップリング剤(B)との質量比(A/B)が0.05〜1.00である。
(2)前記板状シリカ(C)の含有量が、前記表面処理剤における(A)〜(E)の総質量に対し2〜30質量%である。
(3)前記ウレタン樹脂(D)の含有量が、前記表面処理剤における(A)〜(E)の総質量に対し2〜30質量%である。
(4)前記潤滑剤(E)の含有量が、前記表面処理剤における(A)〜(E)の総質量に対し0.5〜20質量%である。
本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板は、嫌気性アクリル系接着剤に対する接着強度、耐食性、及び耐テンションパッド性のいずれにも優れる。
以下、本発明の実施形態による絶縁被膜付き電磁鋼板について説明する。
(電磁鋼板)
本実施形態において、素材である電磁鋼板としては、特に制限はなく、従来から公知のものいずれもが適合する。すなわち、磁束密度の高いいわゆる軟鉄板(電気鉄板)やSPCCなどの一般冷延鋼板、また比抵抗を上げるためにSiやAlを含有させた無方向性電磁鋼板などいずれもが有利に適合する。
(表面処理剤)
本実施形態で用いる表面処理剤(電磁鋼板用表面処理剤)は、Siに結合するアルコキシ基以外の置換基が、水素、アルキル基、及びフェニル基から選ばれた少なくとも1種の非反応性置換基のみからなるトリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)と、シランカップリング剤(B)と、平均粒子径が0.08〜0.9μmで、かつ、アスペクト比が10〜100である板状シリカ(C)と、ウレタン樹脂(D)と、水とを含有し、任意で潤滑剤(E)を含有する。
[トリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)]
本実施形態で用いる表面処理剤は、トリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)を含む。
トリアルコキシシランの種類は特に限定されず、一般式R1Si(OR’)3で示され、それらの1種以上を用いることができる。R1は水素、アルキル基、及びフェニル基から選ばれる非反応性置換基である。R1がアルキル基の場合は、好ましくは炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基である。R’はアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜2の直鎖又は分岐のアルキル基である。例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びこれらの加水分解物などが使用できる。なかでも、電磁鋼板の耐食性がより優れるという観点から、R1がアルキル基であるトリアルコキシシランが好ましい。
ジアルコキシシランの種類は特に限定されず、一般式R2R3Si(OR’’)2で示され、それらの1種以上を用いることができる。ここで、R2及びR3は水素、アルキル基、及びフェニル基から選ばれる非反応性置換基である。R2及びR3がアルキル基の場合は、好ましくは炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基である。R’’はアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜2の直鎖又は分岐のアルキル基である。例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、及びこれらの加水分解物などが使用できる。なかでも、電磁鋼板の耐食性がより優れるという観点から、R2及びR3がアルキル基であるジアルコキシシランが好ましい。
[シランカップリング剤(B)]
本実施形態で用いる表面処理剤は、シランカップリング剤(B)を含む。シランカップリング剤(B)の種類は特に限定されず、一般式XSi(R4)n(OR)3-n(ここで、nは0、1又は2)で示され、それらの1種以上を同時に用いることができる。Xは、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、及びメルカプト基から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する分子鎖である。R4はアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜2の直鎖又は分岐のアルキル基である。ORは任意の加水分解性基であり、Rは例えばアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜2の直鎖又は分岐のアルキル基である。また、Rは例えばアシル基(−COR5)であり、R5は好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜2の直鎖又は分岐のアルキル基である。シランカップリング剤(B)として、例えば、N−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及びこれらの加水分解物などが使用できる。なかでも、電磁鋼板の耐食性がより優れるという観点から、アミノ基又はエポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。
[成分(A)と成分(B)の含有量比]
本実施形態において、トリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)とシランカップリング剤(B)との質量比(A/B)は、0.05〜1.00の範囲とする。質量比が1.00を超える場合、シランカップリング剤(B)の量が十分でなく、絶縁被膜の強靭性を十分に得ることができない。その結果、耐テンションパッド性の劣化やハンドリングでの傷や被膜剥離などが発生し易い。本開示では、トリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)よりもシランカップリング剤(B)を多く含有させることにより、耐テンションパッド性を顕著に向上させることができる。この観点から、質量比(A/B)は1.00以下とし、好ましくは0.50以下とする。一方で、質量比(A/B)が低すぎると、TIG溶接性が低下する。この観点から、質量比(A/B)は0.05以上とし、好ましくは0.10以上とする。
[板状シリカ(C)]
本実施形態で用いる表面処理剤は、板状シリカ(C)を含む。この板状シリカは、葉状シリカや鱗片状シリカとも呼ばれるもので、SiO2の薄層が多数積層された層状珪酸構造を有している。そして、かかる板状シリカとしては、非結晶性又は微結晶性を有するものが好ましい。板状シリカは、薄層の一次粒子が積層した凝集粒子を作製し、この凝集粒子を粉砕することによって得ることができる。かような板状シリカは層状の形態をとるため、一般的なシリカ粒子、例えばコロイダルシリカなどと比較して腐食物質透過抑制性に優れ、さらに水酸基が多いために密着性に優れ、かつ軟質であることから滑り性に優れる。また、板状シリカを含む表面処理剤を塗布した場合、塗布量が少なくなりがちな鋼板表面凸部においても表面処理剤が残り、鋼板表面の凹凸に従った均一な表面処理剤の塗布が可能となるため、耐食性に劣ることがない。
板状シリカ(C)は、平均粒子径が0.08〜0.9μmで、かつ、アクペクト比が10〜100の範囲であることが好ましく、平均粒子径は0.1〜0.5μm程度、アスペクト比は20〜90とすることがより好ましい。平均粒子径が0.08μm以上、かつアスペクト比が10以上の場合では、被膜形態への効果があり、被膜の均一化が十分となる。また、平均粒子径が0.9μm以下、かつアスペクト比が100以下の場合には、トリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)とシランカップリング剤(B)の絶縁被膜への取り込みが十分となり、耐テンションパッド性が十分となる。
板状シリカ(C)は、平均粒子径が0.1〜0.3μmで、かつ、アスペクト比が10〜50であると打抜き性に優れ、さらに好ましい。平均粒子径が0.1μm以上であれば、打抜きによる板状シリカの粉砕による粉の発生が多くなく、金型が汚れることがないため、打抜き性に優れる。また、板状シリカの平均粒子径が大きいほど打抜き時の金型磨耗が多くなる傾向があるが、平均粒子径が0.3μm以下では金型磨耗が問題とならず、打抜き性に優れる。さらに、アスペクト比が10〜50であると、前述のとおり打ち抜き時に変形しやすく、特に打抜き性に優れる。また、アスペクト比が50以下であれば、より鋼板表面の凹凸に従った均一な被膜形成が可能となるため、耐食性にも優れる。
なお、本明細書において板状シリカの「平均粒子径」は、絶縁被膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率2万倍で観察したときの、板状シリカの厚みに垂直な面における長径について、視野中の全ての粒子で平均した長さを意味するものとする。また、本明細書において板状シリカの「アスペクト比」とは、絶縁被膜の断面をSEMにて倍率2万倍で観察したときの、各粒子についての板状シリカの厚みに垂直な面における長径/最大厚みの比の値を、視野中の全ての粒子について平均した値を意味するものとする。
板状シリカ(C)の含有量は、表面処理剤における(A)〜(E)の総質量に対し2〜30質量%の範囲とし、20質量%以下とすることが好ましい。すなわち、当該含有量は、表面処理剤が潤滑剤(E)を含有しない場合には、(A)〜(D)の総質量に対する含有量を意味することとなる。含有量が2質量%以上であれば、均一塗布性に優れた電磁鋼板が得られ、含有量が30質量%以下であれば、耐食性及び耐テンションパッド性が低下しない。
[ウレタン樹脂(D)]
本実施形態で用いる表面処理剤は、ウレタン樹脂(D)を含むことが重要である。ウレタン樹脂(D)としては、ウレタン結合を複数有する共重合物であれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。
ウレタン樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、5000〜750000の範囲内とすることが好ましい。なお、本明細書において、ウレタン樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法にて、具体的には以下の方法で算出するものとする。GPC法における計測機器は、高速GPC装置(東ソー株式会社製HLC−8320GPC)を用いる。標準試料による既知の重量平均分子量と溶出時間との関係をあらかじめ求め、溶出時間から重量平均分子量が求まる検量線を作成する。以下の装置及び操作条件でウレタン樹脂の溶出時間を計測し、前記検量線を参照して、重量平均分子量(ポリスチレン換算)を算出する。
<装置及び操作条件>
分離カラム:東ソー株式会社製TSKgelSuperAWM−H(2本を直列に接続して使用)
検出器:示差屈折計
カラム温度:40℃
移動相:関東化学株式会社製N,N−ジメチルホルムアミド(10mmоl/L LiBr)
標準試料:標準ポリスチレンキット(東ソー株式会社製PStQuick B)
試料濃度:0.1質量%
試料注入量:30μL(マイクロリットル)
流速:0.5mL/min
ウレタン樹脂(D)の含有量は、表面処理剤における(A)〜(E)の総質量に対し2〜30質量%とすることが重要であり、15質量%以下とすることが好ましい。すなわち、当該含有量は、表面処理剤が潤滑剤(E)を含有しない場合には、(A)〜(D)の総質量に対する含有量を意味することとなる。含有量が2質量%以上の場合、嫌気性アクリル系接着剤に対する十分な接着強度が得られ、含有量が30質量%以下の場合、耐食性及び耐テンションパッド性が低下しない。
[潤滑剤(E)]
本実施形態で用いる表面処理剤は、打抜き性及び耐テンションパッド性を向上させるため、任意で潤滑剤(E)を含有することができる。潤滑剤(E)としては、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス、ライスワックス、テフロン(登録商標)ワックス、2硫化炭素、グラファイトなどが挙げられる。また、潤滑剤(E)としては、ノニオン性アクリル樹脂を用いてもよい。ノニオン性アクリル樹脂としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンなどのビニル系モノマーをポリエチレンオキサイド又はポリプロピレンオキサイドを構造上にもつノニオン系界面活性剤(乳化剤)の存在下、水中で乳化重合した水系エマルション等、ノニオン性乳化剤で乳化されたアクリル樹脂が挙げられる。これらの潤滑剤の中から、1種又は2種以上を用いることができる。
表面処理剤が潤滑剤(E)を含む場合、その含有量は、表面処理剤における(A)〜(E)の総質量に対し0.5〜20質量%とすることが好ましく、2〜15質量%がより好ましい。含有量が0.5質量%以上の場合、耐テンションパッド性の向上が十分に得られ、含有量が20質量%以下の場合、嫌気性アクリル系接着剤に対する接着特性が低下しない。
本実施形態で用いる表面処理剤は、水以外の成分が上記(A)〜(D)又は上記(A)〜(E)からなることが好ましいが、必要に応じて、その他の成分を、表面処理剤における(A)〜(E)の総質量に対して5質量%以下で含有してもよい。当該含有量は、表面処理剤が潤滑剤(E)を含有しない場合には、(A)〜(D)の総質量に対する含有量を意味することとなる。その他の成分としては、アルコール、ケトン、セロソルブ系の水溶性溶剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、pH調整剤、防菌防カビ剤などが挙げられる。これらの成分を添加することにより、表面処理剤の乾燥性、塗布外観、作業性、意匠性が向上する。
本実施形態で用いる表面処理剤は、上記した各成分を脱イオン水、蒸留水などの水中で混合することにより得られる。表面処理剤における(A)〜(E)の総質量の割合は適宜選択すればよいが、2〜16質量%の範囲とすることが好ましい。
(絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法)
本実施形態では、電磁鋼板の少なくとも片面に表面処理剤を塗布し、加熱乾燥することにより、絶縁被膜を形成する。表面処理剤を電磁鋼板に塗布する方法としては、ロールコート法、バーコート法、浸漬法、スプレー塗布法などが挙げられ、処理される電磁鋼板の形状などによって適宜最適な方法が選択される。より具体的には、例えば、電磁鋼板がシート状であればロールコート法、バーコート法又はスプレー塗布法を選択できる。スプレー塗布法は、表面処理剤を電磁鋼板にスプレーしてロール絞りや気体を高圧で吹きかけて塗布量を調整する方法である。電磁鋼板が成型品とされている場合であれば、表面処理剤に浸漬して引き上げ、場合によっては圧縮エアーで余分な表面処理剤を吹き飛ばして塗布量を調整する方法などが選択される。
電磁鋼板の表面に塗布した表面処理剤を、加熱乾燥する際の加熱温度(最高到達板温)は、通常80〜350℃であり、100〜300℃であることがより好ましい。加熱温度が80℃以上であれば、絶縁被膜中に主溶媒である水分が残存しないため、耐食性が劣化しない。また、加熱温度が350℃以下であれば、絶縁被膜のクラック発生が抑制されるため、耐食性が劣化しない。また、加熱時間は、使用される電磁鋼板の種類などによって適宜最適な条件が選択される。なお、生産性などの観点からは、0.1〜60秒が好ましく、1〜30秒がより好ましい。
絶縁被膜の付着量は特に限定しないが、片面当たり0.05〜5g/m2程度とすることが好ましい。付着量、すなわち絶縁被膜の全固形分質量は、アルカリ剥離による被膜除去後の重量減少から測定することができる。また、付着量が少ない場合には、アルカリ剥離法によって測定した付着量既知の標準試料を蛍光X線分析により測定し得た検量線から測定することができる。付着量が0.05g/m2以上であれば、耐食性と共に絶縁性を満足することができ、一方5g/m2以下であれば、被膜密着性が向上するだけでなく、塗装焼付時にふくれが発生せずに塗装性の低下を招くことがない。より好ましくは0.1〜3.0g/m2である。絶縁被膜は電磁鋼板の両面に形成することが好ましいが、目的によっては片面のみでもよく、他面は他の絶縁被膜としても構わない。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(1)素材
板厚:0.5mmの電磁鋼板[A230(JIS C 2552(2000))]を供試材として使用した。
(2)前処理(洗浄)
試験板の作製方法としては、まず上記の供試材の表面を、日本パーカライジング(株)製パルクリーンN364Sを用いて処理し、表面上の油分や汚れを取り除いた。次に、水道水で水洗して供試材表面が水で100%濡れることを確認した後、更に純水(脱イオン水)を流しかけ、100℃雰囲気のオーブンで水分を乾燥したものを試験板として使用した。
(3)表面処理剤
各成分を表1に示す組成(質量比)にて水中で混合し、表面処理剤を得た。なお、表面処理剤に対する成分(A)〜(E)の総質量の濃度は6.3g/Lとした。以下に、表1で使用した化合物について説明する。
[トリアルコキシシラン/ジアルコキシシラン(A)]
A1:メチルトリメトキシシラン
A2:ジメチルジメトキシシラン
[シランカップリング剤(B)]
B1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
B2:3−アミノプロピルトリメトキシシラン
B3:N−(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン
[板状シリカ(C)]
C1:平均粒子径0.2μm、アスペクト比20
C2:平均粒子径0.5μm、アスペクト比50
C3:平均粒子径0.1μm、アスペクト比10
[ウレタン樹脂(D)]
D1:ポリエーテル系ウレタン樹脂(重量平均分子量:7500)
D2:ポリエーテル系ウレタン樹脂(重量平均分子量:700000)
D3:ポリエステル系ウレタン樹脂(重量平均分子量:200000)
D4:ポリエステル系ウレタン樹脂(重量平均分子量:500000)
D5:ポリカーボネート系ウレタン樹脂(重量平均分子量:500000)
[潤滑剤(E)]
E1:ポリエチレンワックス(ケミパール900)
(4)処理方法
連続焼鈍ラインにおいて所定の材質を得るための焼鈍を行った後、鋼板が冷却された段階でロールコーター塗装にて表面処理剤を塗布し、オーブンにて最高到達板温が200℃となるようにして乾燥させ、被膜付着量0.5g/m2の絶縁被膜を両面に形成した。ロールコーター条件としては、3ロールでフルリバース方式とした。なお、乾燥温度は試験板表面の到達温度を示す。
(5)評価
[接着特性]
接着強度評価用試験片のサイズは、25mm×100mmとし、DIN EN 1465(2009−07)に準じてせん断引張試験片を作製し、せん断引張試験を実施した。具体的には、接着剤を介して2枚の試験片の絶縁被膜同士を接着させて、接着面と平行な方向に引張荷重をかけて、接着面が破壊される時の最大荷重を接着面積で割ることで、引張せん断強度を求めた。接着剤としては、アセック(株)製の嫌気性アクリル系接着剤AS5334を使用し、アクチベータとしては、アセック(株)製のAS8000を使用した。以下の判定基準で引張せん断強度を評価した。結果を表1に示す。なお、◎又は○であれば合格とした。
(判定基準)
◎:8MPa以上
○:5MPa以上8MPa未満
×:5MPa未満
[耐食性]
50mm×50mmに打ち抜いた供試材2枚を重ね合わせ、200gのオモリを乗せて50℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽で2週間放置した。重ね合わせた2面の平均の錆発生面積率を目視にて測定した。結果を表1に示す。なお、◎又は○であれば合格とした。
(判定基準)
◎:0%
○:0%超え5%未満
×:5%以上
[耐テンションパッド性]
面積が10mm×10mmのテンションパッドを用い、太平理化工業(株)製ラビングテスターにて、19.6N(2.0kgf)の荷重をかけ絶縁被膜表面を100往復擦った。擦った部分とその近傍の付着量測定を行い、100往復後の絶縁被膜残存率を算出した。付着量は、Siの蛍光X線強度を測定し、付着量既知の標準板により得られた検量線から求めた。結果を表1に示す。なお、◎又は○であれば合格とした。
(判定基準)
◎:90%以上
○:70%以上90%未満
×:70%未満
Figure 2021066924
本発明の絶縁被膜付き電磁鋼板は、嫌気性アクリル系接着剤に対する接着強度、耐食性、及び耐テンションパッド性のいずれにも優れているので、自動車用モータや電気機器類の鉄心の素材に好適である。

Claims (2)

  1. Siに結合するアルコキシ基以外の置換基が、水素、アルキル基、及びフェニル基から選ばれた少なくとも1種の非反応性置換基のみからなるトリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)と、
    シランカップリング剤(B)と、
    平均粒子径が0.08〜0.9μmで、かつ、アスペクト比が10〜100である板状シリカ(C)と、
    ウレタン樹脂(D)と、
    水と、
    を以下の条件(1)〜(3)を満足するように含有する表面処理剤を電磁鋼板の少なくとも片面に塗布、乾燥してなる絶縁被膜を有する絶縁被膜付き電磁鋼板。
    (1)前記トリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)と前記シランカップリング剤(B)との質量比(A/B)が0.05〜1.00である。
    (2)前記板状シリカ(C)の含有量が、前記表面処理剤における(A)〜(D)の総質量に対し2〜30質量%である。
    (3)前記ウレタン樹脂(D)の含有量が、前記表面処理剤における(A)〜(D)の総質量に対し2〜30質量%である。
  2. Siに結合するアルコキシ基以外の置換基が、水素、アルキル基、及びフェニル基から選ばれた少なくとも1種の非反応性置換基のみからなるトリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)と、
    シランカップリング剤(B)と、
    平均粒子径が0.08〜0.9μmで、かつ、アスペクト比が10〜100である板状シリカ(C)と、
    ウレタン樹脂(D)と、
    潤滑剤(E)と、
    水と、
    を以下の条件(1)〜(4)を満足するように含有する表面処理剤を電磁鋼板の少なくとも片面に塗布、乾燥してなる絶縁被膜を有する絶縁被膜付き電磁鋼板。
    (1)前記トリアルコキシシラン及び/又はジアルコキシシラン(A)と前記シランカップリング剤(B)との質量比(A/B)が0.05〜1.00である。
    (2)前記板状シリカ(C)の含有量が、前記表面処理剤における(A)〜(E)の総質量に対し2〜30質量%である。
    (3)前記ウレタン樹脂(D)の含有量が、前記表面処理剤における(A)〜(E)の総質量に対し2〜30質量%である。
    (4)前記潤滑剤(E)の含有量が、前記表面処理剤における(A)〜(E)の総質量に対し0.5〜20質量%である。
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