以下、実施形態に係る仮締切り構築方法と仮締切り体について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
[実施形態に係る仮締切り体と閉塞型の仮締切り体構築方法]
はじめに、図1乃至図5を参照して、実施形態に係る仮締切り体の一例と閉塞型の仮締切り体構築方法の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る仮締切り体の一例に含まれる、開放型の仮締切り体の一例の斜視図であり、図2は、実施形態に係る仮締切り体の一例に含まれる、閉塞型の仮締切り体の一例の斜視図であり、図3は、閉塞型の仮締切り体の側方に仮設ゲートが取り付けられている状態を示す斜視図である。また、図4(a)から(c)、及び図5(a)から(c)は順に、実施形態に係る閉塞型の仮締切り体構築方法の一例を説明する工程図である。
仮締切りが構築されて気中作業環境下に置かれた状態で補修や改修が行われる堰柱10は、堰1(河口堰)を形成する(図9参照)。この補修は、例えば、大規模地震時の樋門損壊による農業用水源の喪失や塩害を防止するための耐震化対策の一環である、連続繊維巻き付け工法等による補強工事である。尚、図示例は、堰1として河口堰を例示しているが、堰には、分流堰や潮止堰、取水堰が含まれ、さらにはダムや水門、樋門が含まれる。従って、実施形態に係る仮締切り体は、様々な堰の補修工事に適用される。また、実施形態に係る仮締切り体は、堰の補修工事の他にも、水中にある橋台や橋脚等、水中に存在する様々な水中構造物の補修等工事に際して、その周囲を仮締切りする際にも適用可能である。
堰1は、河口の幅方向に間隔を置いて配設される複数の堰柱10と、隣接する堰柱10の有する昇降機構16により上下に昇降される本設ゲート14(門扉)(いずれも図9参照)とを有する。
また、水底には、図1に示すように、鉄筋コンクリート製の底盤15があり、底盤15の上方において水上まで堰柱10が立設している。堰柱10の側面11には、本設ゲート(図示せず)の端部が遊嵌される本設ゲート落とし込み溝12が設けられており、本設ゲート落とし込み溝12から離れた位置には、仮設ゲート73(図4参照)が落とし込まれる第1落とし込み溝13が設けられている。
図1に示すように、堰柱10の側面11の周囲の上流側と下流側にはそれぞれ、上流側箱体20と下流側箱体30が配設され、双方の箱体20,30の間の堰柱10の側方(堰柱10の左右の側方)には、第1隙間10aがある。上流側箱体20と下流側箱体30はいずれも平面視略コの字状を呈しており、それぞれの端部にある開口26,36を介して堰柱10の両端部がそれぞれの内部25,35に収容され、堰柱10に取り付けられている。
ここで、「上流側」と「下流側」とは、例えば、湖側と湾側、河川側と海側、河川のうちの山側と海側等、対象となる堰の設置位置等により、それらの内容は多様である。
上流側箱体20と下流側箱体30は、それぞれの端部にある開口26,36において、上流側壁体40と下流側壁体50を回動自在に備えており、図1では、上流側壁体40と下流側壁体50が開放された状態の、開放型の仮締切り体100が示されている。
上流側箱体20は、下段に配設される下段箱体21と、下段箱体21の上に搭載される、複数段(図示例は2段)の上段箱体22,23とを有する3段構造を呈しており、下段箱体21と上段箱体22,23が相互に接続されている。また、最上段の上段箱体23の最上面には、波圧抵抗用パネル24が取り付けられている。
一方、下流側箱体30も、下段に配設される下段箱体31と、下段箱体31の上に搭載される、複数段(図示例は2段)の上段箱体32,33とを有する三段構造を呈しており、下段箱体31と上段箱体32,33が相互に接続されている。また、最上段の上段箱体33の最上面には、波圧抵抗用パネル34が取り付けられている。
箱体20,30の構成については以下で詳説するが、箱体20,30は、図示例以外にも、1段もしくは3段以上の上段箱体を有していてもよいし、積層構造ではなくて一体構造であってもよい。
堰柱10の側面11と箱体20,30との間には、仮設支保工60を構成する複数の切梁62が架け渡されている。より具体的には、箱体20,30の内壁面に沿って間隔を置いて複数の支柱61が立設され、対向する支柱61は対を成し、対を成す支柱61の間に切梁62が架け渡されている。また、堰柱10の側面11の近傍においては、支柱63が堰柱10の側面11との間に僅かな第2隙間69を置いて立設され、この支柱63と対を成す内壁面に立設している支柱61との間に切梁62が架け渡されている。
そして、僅かな第2隙間69には、短尺切梁64が配設され、支柱63と堰柱10の側面11の間に架け渡されている。支柱61,63や切梁62は、例えばH形鋼等の形鋼材により形成され、切梁62はその途中位置や端部にキリンジャッキ等のジャッキ(図示せず)を備えている。また、短尺切梁64は、短尺のH形鋼等の形鋼材や鋼管、円管等により形成され、同様にジャッキ(図示せず)を備えていてよい。ジャッキを作動させることにより、切梁62に軸力が導入され、対向する支柱61,63にて箱体20,30に作用する外水圧等に対抗できるようになるとともに、切梁62と対応する短尺切梁64とにより、箱体20,30が堰柱10の側面11に固定される。
仮設支保工60に含まれる支柱63が、堰柱10の近傍において堰柱10の側面11との間に第2隙間69を置いて立設され、第2隙間69において、短尺切梁64が支柱63と堰柱10との間に架け渡されていることにより、堰柱10の側面11を補修等する際には、短尺切梁64の一部を盛り替えて第2隙間69に作業空間を形成することができる。従って、短尺切梁64の長さは、必要な作業空間を確保できる長さに設定される。
図示例の仮設支保工60の構成によれば、堰柱10の側面11の補修等に際して切梁が障害となる場合において、延長の長い切梁を盛り替える必要がなく、短尺切梁64を盛り替えるだけでよいことから、仮設支保工60を大掛かりに変更することなく、堰柱10の補修等を効率的に行うことができる。
箱体20,30のそれぞれの開口26,36の側方にある開口接合部20'、30'は、図2に示す閉塞型の仮締切り体200の形成に当たり、撤去されるようになっており、図2に示すように、開口接合部20'、30'の撤去された領域には、箱体20,30を支持する開口補強支柱65と、開口補強支柱65と堰柱10の側面11を繋ぐ開口補強短尺切梁66が設けられるようになっている。
箱体20,30には、対応する壁体40,50が、複数のヒンジ機構41,51を介して回動自在に取り付けられている。
各箱体20,30に対してそれぞれ、壁体40,50が回動自在に取り付けられていることにより、双方の壁体40,50の回動による壁体40,50の閉合(図2に示す状態)と開放(図1に示す状態)をスムーズに行うことができる。また、双方の壁体40,50が双方の箱体20,30の外側で回動することから、壁体40,50の回動が箱体20,30の内部の補修工事等に影響することがない。
尚、箱体20,30に対する壁体40,50の開閉形態は、図示例の他にも、双方の箱体20,30において、第1隙間10aに向かって壁体40,50がスライド自在に収納されていて、壁体40,50が収納されることにより第1隙間10aが開放され、壁体40,50がスライドして張り出すことにより第1隙間10aが閉合される形態であってもよい。さらには、壁体40,50を第1隙間10aに曳航し、重機やダイバー等によって双方の箱体20,30に壁体40,50を取り付けることにより第1隙間10aを閉合する手動形態などもある。
図2に示すように、閉塞型の仮締切り体200では、双方の壁体40,50の端部と堰柱10の側面との間にも、仮設支保工が構築される。具体的には、双方の壁体40,50の内側面に跨がるようにして壁体支持用支柱67が立設され、壁体支持用支柱67と堰柱10の側面11の間に壁体支持用短尺切梁68が架け渡される。
このように、堰柱10の側面11と箱体20,30との間に、仮設支保工60を構成する切梁62と短尺切梁64が架け渡されていることにより、堰柱10の周囲に箱体20,30を安定的に固定することができる。また、閉塞型の仮締切り体200においては、さらに、双方の壁体40,50と堰柱10との間にも、仮設支保工を構成する壁体支持用短尺切梁68が架け渡されていることにより、堰柱10に対して壁体40,50を安定的に固定することができる。
また、図3に示すように、閉塞型の仮締切り体200においては、上流側壁体40と下流側壁体50のいずれか一方の側方(図示例は、上流側壁体40の側方)に、仮設ゲート73が取り付けられている。
より具体的には、上流側壁体40の側方には、間隔をおいて第2落とし込み溝72を左右に備える複数の仮支柱71が立設している。この仮支柱71は、例えばH形鋼により形成され、ウエブと二つのフランジとにより第2落とし込み溝72が形成される。尚、以下で詳説するが、仮支柱71の下方は、鋼製の角パイプや円管等により形成される筒材71'(図20参照)が設けられていて、底盤15に予め設けられている既設の凸部15aに対して筒材71'を被せるようにして落とし込むことにより、仮支柱71が底盤15の上に立設するようになっている。
仮設ゲート73は、複数(図示例は3枚)の角落とし材74,75が相互に接続金物76を介して連結されることにより一体に形成されている。下方の2枚の角落とし材74は、例えば既に存在する既設角落とし材であり、上方の角落とし材75は、例えば新規の新設角落とし材である。尚、角落とし材の枚数は図示例に限定されず、さらには、全ての角落とし材が新設角落とし材であってもよい。新設角落とし材75の上面には、牽引具78から垂下される吊り材79の下端が係止される吊りフック75aが設けられている。
また、壁体40の側方には端部支持鋼材46が立設しており、端部支持鋼材46にて壁体側の端部にある仮設ゲート73の端面が支持されている。そして、壁体40の側面には第3落とし込み溝47が設けられており、壁体側の端部にある仮設ゲート73の端部は第3落とし込み溝47に落とし込まれている。
出水期には、図1に示す開放型の仮締切り体100が形成されることにより、第1隙間10aが開放されることによって、本設ゲート14を昇降自在としておき、堰柱10のうち、上流側箱体20と下流側箱体30にて包囲されている領域の補修工事等を行うことができる。
一方、渇水期には、双方の壁体40,50を閉合することによって、堰柱10の側面11の周囲を完全に閉塞する、閉塞型の仮締切り体200を形成することにより、堰柱10の周囲の全域の補修工事等を行うことができる。
さらに、上流側壁体40と下流側壁体50のいずれか一方の側方に、図3に示すように仮設ゲート73が取り付け自在であることから、例えば閉塞型の仮締切り体200の側方に仮設ゲート73が取り付けられることにより、本設ゲート14が開放された(上昇位置にある)状態でも、仮設ゲート73にて上流側と下流側の海水や河川水の行き来を遮断することができる。
次に、図4及び図5を参照して、実施形態に係る閉塞型の仮締切り体構築方法の一例を説明する。
閉塞型の仮締切り体構築方法では、まず、図4(a)に示すように、堰柱10の側面11の周囲のうち、上流側には上流側箱体20を配設し、下流側には下流側箱体30を配設し、双方の箱体20,30の間に第1隙間10aを設ける。また、それぞれの箱体20,30の内部には仮設支保工60を設置し、箱体20,30を堰柱10の側面11に固定することにより、開放型の仮締切り体100を構築する(以上、箱体設置工程)。
次に、本設ゲート14の昇降を可能にするべく、第1隙間10aのうち、本設ゲート14と干渉しない上流側において壁体支持用支柱67を立設し、壁体支持用支柱67と堰柱10の側面11を壁体支持用短尺切梁68で繋ぐ。
壁体支持用支柱67と堰柱10の側面11を壁体支持用短尺切梁68で繋いだ後、図4(b)に示すように、上流側壁体40をX1方向に回動させて第1隙間10aに張り出させ、上流側壁体40の端部を、仮設支保工を構成する壁体支持用支柱67と接続する(以上、一方壁体設置工程)。
次に、図4(c)に示すように、上流側壁体40の内側面に設けられている第3落とし込み溝47と、対応する堰柱10の第1落とし込み溝13に対して仮設ゲート73を落とし込む。
さらに、上流側壁体40の外側に端部支持鋼材46を立設し、間隔を置いて複数の仮支柱71を立設した後、上流側壁体40の外側面に設けられている第3落とし込み溝47と、隣接する仮支柱71の備える第2落とし込み溝72に対して仮設ゲート73を落とし込む。
さらに、隣接する仮支柱71の双方の第2落とし込み溝72に対して仮設ゲート73を落とし込むことにより、堰柱10の側面11の側方に連続した仮設ゲート73を施工する(以上、仮設ゲート設置工程)。
次に、図5(a)に示すように本設ゲート14を上昇させ、図5(b)に示すように、下流側壁体50をX2方向に回動させて第1隙間10aに張り出させ、下流側壁体50の端部を、仮設支保工を構成する壁体支持用支柱67と接続することにより、双方の壁体40,50によって第1隙間10aを閉塞して、双方の箱体20,30と双方の壁体40,50とにより構成される、閉塞型の仮締切り体200を構築する。
また、閉塞型の仮締切り体200が構築された後、図5(b)に示すように、開口接合部20'、30'の側方に盛り替え用の開口補強支柱65と開口補強短尺切梁66を設置する。次いで、図5(c)に示すように、堰柱10の側面11と、双方の壁体40,50と、開口接合部20'、30'とにより形成される壁体内部空間からの水抜きを行い、開口接合部20'、30'の撤去を行うことにより、堰柱10の側面11の周面の全域を連通させる(以上、第1隙間閉塞工程)。
ここで、第1隙間閉塞工程では、その他、箱体20,30の内部に注水して、開口接合部20'、30'に対する箱体20,30からの水圧と壁体内部空間からの水圧をバランスさせた後に、開口接合部20'、30'の側方に盛り替え用の開口補強支柱65と開口補強短尺切梁66を設置し、開口接合部20'、30'の撤去を行い、箱体20,30と壁体内部空間からの水抜きを行う方法が適用されてもよい。
図示する閉塞型の仮締切り体構築方法によれば、閉塞型の仮締切り体200が形成された後に壁体内部空間からの水抜きを行い、開口接合部20'、30'の撤去を行うことにより、閉塞型の仮締切り体200と堰柱10の側面11の全周との間の空間をドライ空間にでき、堰柱10の側面11の全周の補修等工事を行うことができる。
尚、例えば渇水期には、図4(a)の状態で、双方の箱体20,30によって包囲されている堰柱10の側面11の領域のみをドライ空間にして、補修等工事を行うことができる。
[実施形態に係る仮締切り体を構成する箱体と箱体の喫水調整方法]
次に、図6を参照して、実施形態に係る仮締切り体を構成する箱体の一例と、箱体の喫水調整方法の一例について説明する。ここで、図6Aは、実施形態に係る箱体の一例を示す縦断面図であり、図6Bは、図6AのB部の拡大図であり、かつ、実施形態に係る箱体の喫水調整方法を説明する図である。尚、以下、上流側箱体20を取り上げてその構成を説明するが、下流側箱体30の構成も実質的には上流側箱体20の構成と同様である。
箱体20は、下段に配設される下段箱体21と、下段箱体21の上に搭載される、複数段(図示例は2段)の上段箱体22,23とを有する3段構造を呈しており、下段箱体21と上段箱体22,23が相互に接続されている。また、最上段の上段箱体23の最上面には、波圧抵抗用パネル24が取り付けられている。
下段箱体21と上段箱体22,23はいずれも、複数の形鋼材からなる芯材20aと、芯材20aの外部水側に取り付けられている鋼製スキンプレート20bと,芯材20aの内側に取り付けられている鋼製スキンプレート20cにより形成されている。尚、必要に応じて、内側に取り付けられている鋼製スキンプレート20cを省略してもよい。
下段箱体21は、中空部21aと、中空部21aと外部水Wを連通する注排水管21cと、注排水バルブ21bと、給排気管21eと、給排気バルブ21dと、給排気管21eに圧力空気を供給する圧力空気供給部21fとを備えている。尚、図示例の他にも、上段箱体22,23も下段箱体21と同様に、中空部21aや注排水管21c、注排水バルブ21b等を備えていてもよい。また、図示例のように複数段の積層構造体でなく、平面視コの字状の一体構造体であってもよい。
図示例のように、箱体20が、下段箱体21と、複数段の上段箱体22,23とを有することにより、例えば箱体20の規模が大きい場合に、工場から作業ヤードである桟橋300(図7参照)までの陸上搬送等の際の搬送性が良好になり、桟橋300における箱体20の吊り下ろしの際に利用する重機の大型化を抑制でき、吊り下ろし性も良好になる。
また、箱体20が、芯材20aとなる複数の形鋼材と、芯材20aの少なくとも外部水側に取り付けられている鋼製スキンプレート20bとによって形成されていることにより、剛性が高く、可及的に軽量な箱体20を形成することができ、堰柱10の周囲に設置された際の耐水圧性に優れ、陸上搬送性に優れた箱体となる。
また、箱体20の最上面に、波圧抵抗用パネル24が取り付けられていることにより、箱体20の内部への海水等の浸入を抑制することができる。尚、波圧抵抗用パネル24は、波圧分のみを負担することから、例えば鋼製で薄厚のパネルが適用される。
注排水バルブ21bと給排気バルブ21dの少なくとも一方の開閉により、中空部21aに注水される外部水(バラスト)の量が調整されて箱体20の喫水が所望に調整され、この喫水の調整によって箱体20をZ1方向に浮沈させることができる。そのため、例えば喫水が十分に確保できない場合には、水底地盤Gを無駄に浚渫することなく、箱体20を所望に浮上させることにより、喫水を調整することが可能になる。
ここで、注排水バルブ21bと給排気バルブ21dの開閉は、箱体20に搭乗した作業員による手動操作にて行うことができる。あるいは、注排水バルブ21bと給排気バルブ21dがいずれも自動制御バルブであり、箱体20に喫水を計測するセンサが取り付けられていて、遠隔にいる管理者の備えるユーザ端末やコンピュータが、喫水データをセンサから受信し、喫水データに応じて注排水バルブ21b等に開閉指令を送信し、開閉指令に基づいて注排水バルブ21b等が自動開閉制御されるように構成してもよい。
箱体20を沈降させる際は、少なくとも、注排水バルブ21bによる中空部21aへの注水が実行される。一方、箱体20を浮上させる際は、給排気バルブ21dによる中空部21aへの給気と、注排水バルブ21bによる中空部21aからの排水が実行される。
[実施形態に係る箱体の搬送・設置方法と箱体搬送用のフロート台船]
次に、図7乃至図11を参照して、実施形態に係る箱体の搬送・設置方法の一例と箱体搬送用のフロート台船の一例について説明する。ここで、図7は、(a)から(c)の順に、実施形態に係る箱体の搬送・設置方法の一例を説明する工程図であり、かつ、実施形態に係る箱体搬送用のフロート台船の一例を説明する図である。また、図8Aは、箱体の内部に設けられているガイドユニットを説明する斜視図であり、図8Bは、図8AのB部の拡大図である。また、図9乃至図11は順に、実施形態に係る箱体の搬送・設置方法の一例のうち、箱体設置工程を詳細に説明する工程図である。尚、図示例では、フロート台船330にて上流側箱体20を搬送し、堰柱10に設置する方法を示すが、下流側箱体30も、作業ヤードとなる桟橋は相違するものの、実質的に同様の方法で搬送され、堰柱10に設置される。
まず、フロート台船330の構成を説明すると、図7(a)に示すように、フロート台船330は、箱体20が仮固定される入り江331を備え、入り江331には、引き戻しウインチ332と送り出しウインチ333が設けられている。フロート台船330は、入り江331に箱体20を仮固定した状態で、堰柱10の設置位置の近傍まで曳舟340(図7(b)参照)にて曳航されるようになっている。尚、フロート台船330は、自走式の台船であってもよい。
引き戻しウインチ332及び送り出しウインチ333と、箱体20との間には、ワイヤ334,335が取り付けられており、堰柱10に対して箱体20を設置する際には、引き戻しウインチ332と送り出しウインチ333にて双方のワイヤ334,335を介して箱体20の水平姿勢が調整される。
次に、箱体の搬送・設置方法の一例を説明する。箱体の搬送・設置方法では、まず、工場にて製作された、下段箱体21,上段箱体22,23がトラック310に積み込まれ、陸上輸送にて作業ヤードである桟橋300まで搬送される。
桟橋300にはフロート台船330が係留されており、桟橋300にある重機320により、まず下段箱体21が入り江331に吊り下ろされる。
入り江331に吊り下ろされた下段箱体21の上方に、重機320にて上段箱体22,23を順次吊り下ろし、下段箱体21と上段箱体22,23を相互に連結することにより、箱体20を形成する。この連結作業は、フロート台船330を作業床として行うことができる。また、箱体20の形成の過程で、下段箱体21の中空部21aに外部水を随時注水することにより、箱体20の喫水を所望に調整することができる。
入り江331にて形成された箱体20を入り江331に仮固定し、図7(b)に示すように、曳舟340にてフロート台船330を施工対象の堰柱10までX3方向に曳航する。
作業ヤードである桟橋300の側方にフロート台船330を係留し、桟橋300から重機320を利用して、下段箱体21や上段箱体22,23を入り江331に順次吊り下ろし、フロート台船330を作業床として、下段箱体21や上段箱体22,23を順次連結して箱体20を形成する。そして、箱体20の喫水を随時調整することにより、箱体20を所望に浮沈させた状態で入り江331に仮固定する。このように、入り江331を備えたフロート台船330を適用することにより、桟橋300からの下段箱体21等の入り江331への吊り下ろしから、フロート台船330を作業床として下段箱体21等を連結することによる箱体20の形成、フロート台船330への箱体20の仮固定、さらには箱体20の搬送までの一連の作業を、効率的に行うことができる(以上、箱体搬送工程)。
次に、図7(c)に示すように、施工対象の堰柱10に曳航されたフロート台船330を、複数の係留ワイヤ336を介して係留する。ここで、図示例の施工区域では、堰柱10の上方に空頭制限障害物400である管理道路等が存在しており、この空頭制限障害物400との干渉を防止しながら堰柱10に対して箱体20を設置する。
より詳細には、図7(c)及び図9に示すように、堰柱10の近傍にフロート台船330を係留した後、箱体20が空頭制限障害物400と干渉しないように喫水を調整し、設置に先行して箱体20を所望にX4方向に沈降させる。
次に、フロート台船330の入り江331では、引き戻しウインチ332及び送り出しウインチ333と、箱体20との間に取り付けられているワイヤ334,335とを利用して、ワイヤリングにより箱体20をX5方向に進退させながら姿勢調整を行い、箱体20の備える開口26を介して堰柱10の一部を箱体20の内部25に収容しながら、箱体20を堰柱10に設置する(以上、箱体設置工程)。
ここで、箱体20の内部には、図8A及び図8Bに示すように、箱体20の内側側面から内部に延設するガイド桟28と、ガイド桟28の先端において回転自在なガイドローラ29とにより構成される、複数のガイドユニット27が設けられている。複数のガイド桟28は、堰柱10の端部の側面11を側方から包囲するように組み付けられている。
ガイド桟28の先端には、外管28bと内管28aの二重管が取り付けられており、内管28aの先端にガイドローラ29が回転自在に取り付けられている。また、外管28bに対して内管28aが相対的に張り出し自在に構成されている。尚、内管に対して外管が張り出し自在に構成されていてもよい。
この内管28aの張り出し形態としては、二重管がシリンダ機構(図示せず)等を備えていて、シリンダ機構等を自動制御することによる自動張り出し形態や、作業員による手動張り出し形態などがある。
箱体搬送工程では、外管28bの内部に内管28aが収容された状態となっており、従って、堰柱10の端部が箱体20の内部25に収容された際には、堰柱10の側面11から各ガイドローラ29は後退した位置にある。
箱体設置工程に移行した後、外管28bに対して内管28aを堰柱10の側面側へ張り出させることにより、ガイドローラ29を堰柱10の側面11に当接させる。この状態で、引き戻しウインチ332と送り出しウインチ333を作動させてワイヤ334,335を利用したワイヤリングを行うことにより、各ガイドローラ29を堰柱10の側面11に滑らせながら箱体20の姿勢調整を行う。従って、堰柱10に対する箱体20の水平姿勢の調整(中でも微調整)を効率的に行うことが可能になる。
堰柱10に対する箱体20の水平姿勢の調整を行った後、例えば、下段箱体21の中空部21aに注水することにより、図8(b)及び図10に示すように、箱体20を堰柱10の側面11に沿って鉛直下方へX6方向に沈降させ、箱体20の下端を底盤15上に着底させる。そして、以下で詳説するように、箱体20の下端を底盤15の所定位置に固定することにより、箱体20の設置が完了する。
箱体20が設置された後、図11に示すように、箱体20を搬送してきたフロート台船330を退避させ、代わりに、重機320を搭載した別途のフロート台船330Aを箱体20に近接させ、ガイドユニット27を撤去し、箱体20の内部に仮設支保工60を設置する。
[実施形態に係る箱体の沈設固定方法と箱体の固定構造、箱体と底盤の止水構造と箱体と堰柱の止水構造]
次に、図12乃至図18を参照して、実施形態に係る箱体の沈設固定方法の一例と箱体の固定構造の一例、箱体と底盤の止水構造の一例と箱体と堰柱の止水構造の一例について説明する。ここで、図12は、実施形態に係る箱体の沈設固定方法の一例を説明する工程図であり、かつ、実施形態に係る箱体の固定構造(箱体と底盤の固定構造)の一例と、箱体と底盤の止水構造の一例を示す図である。また、図13は、(a)から(d)の順に、底盤の目地開き部の処理方法を示す工程図であり、図14は、(a)から(e)の順に、底盤の目地段差・欠損部の処理方法を示す工程図である。また、図15は、実施形態に係る箱体の固定構造(箱体と堰柱の固定構造)の一例と、箱体と堰柱の止水構造の一例を示す図である。また、図16Aは、壁体と仮設ゲートの接続部を示す斜視図であり、図16Bは、図16AのB部を拡大した平面図である。また、図17Aは、箱体と壁体のヒンジ機構の一例を示す側面図であり、図17Bは、図17AのB−B矢視図であって、ヒンジ機構における止水構造をともに示す平面図であり、図17Cは、図17AのC−C矢視図であって、ヒンジ機構における止水構造をともに示す平面図である。さらに、図18は、上流側壁体と下流側壁体が閉塞した際の双方の外部水側の端部側面の止水構造を示す平面図である。
箱体の沈設固定方法を説明しながら、この固定方法により形成される箱体の固定構造について説明する。ここで、「箱体の固定構造」には、箱体と底盤の固定構造と、箱体と堰柱の固定構造が含まれる。
箱体の沈設固定方法では、まず、堰柱10の下方にある底盤15に、ダイバー等が脚部ガイド鋼材18を設置する。脚部ガイド鋼材には、箱体20が設置される設置位置に沿って帯状に連続する脚部ガイドライナー17と、脚部ガイドライナー17の外側(箱体20が沈設される側)において、脚部ガイドライナー17の長手方向に間隔を置いて設けられている複数の案内部18とを有する。案内部18は、上端内側にテーパー片18aを備えている。
脚部ガイドライナー17はH形鋼等の形鋼材により形成されており、箱体20の着底位置において箱体20の輪郭に沿って内側に配設され、底盤15に対してボルト17bを介して固定されている山形鋼等の固定形鋼材17aにより、脚部ガイドライナー17の両側が挟まれ、位置決めされている。
脚部ガイドライナー17の外側面には、間隔を置いて複数の案内部18が溶接等により固定されている(以上、ガイド設置工程)。
図12に示すように、堰柱10の側面11に沿って鉛直下方にZ2方向へ沈降された箱体20の下端は、案内部18のテーパー片18aに沿ってZ3方向へ案内されながら底盤15の所定位置に着底される。このように、脚部ガイド鋼材17,18が底盤15に対して固定されていることから、案内部18に案内されて着底した箱体20は、帯状の脚部ガイドライナー17の外側に位置決めされ、脚部ガイド鋼材17,18を介して間接的に底盤15に固定され、箱体と底盤の固定構造120(箱体の固定構造の一例)が形成される(以上、沈設固定工程)。
沈設固定工程において、脚部ガイド鋼材である案内部18と箱体20の側面の脚部との間に隙間がある場合は、図12に示すように、隙間に対してライナープレート19を嵌め込んで隙間を塞ぐ。
このように、局所的に存在し得る隙間に対して、ライナープレート19を嵌め込んで隙間を塞ぐことにより、脚部ガイドライナー17の全長に亘り、箱体20の側面の脚部を脚部ガイド鋼材17,18との間に隙間なく位置決めすることができる。
図12に示すように、箱体と底盤の固定構造120が形成された状態においては、箱体と底盤の止水構造130も形成される。以下、箱体と底盤の止水構造130について説明する。
底盤15に着底された箱体20の脚部の側面の側方(外部水側)には、脚部鋼板20dが箱体20の側面(鋼製スキンプレート20b)との間に隙間を置いて第1隙間保持ボルト20hを介して固定されており、隙間には脚部用第1止水材20e(第1止水材の一例)が収容されて、その先端が底盤15に接している。
脚部用第1止水材20eの上方には、脚部用第1止水材20eを下方へY1方向に押し込む第1押し込みボルト20iが設けられており、第1押し込みボルト20iにて脚部用第1止水材20eが底盤15に押し込まれている。
ここで、脚部用第1止水材20eの先端には変形誘導孔20fが設けられており、底盤15へ押し込まれることにより、脚部用第1止水材20eの先端が変形誘導孔20fに誘導されて変形し、底盤15の表面の不陸に対して脚部用第1止水材20eの先端を入り込ませ易くなっている。
また、脚部用第1止水材20eには、縦方向の第1長孔20gが設けられており、第1隙間保持ボルト20hが第1長孔20gを貫通している。
このように、脚部用第1止水材20eにおいて縦方向の第1長孔20gが設けられ、第1隙間保持ボルト20hが第1長孔20gを貫通していることにより、脚部用第1止水材20eが底盤15へ押し込まれた際に、第1長孔20gの内部に留まる第1隙間保持ボルト20hは、脚部用第1止水材20eから押し込まれることなく、その姿勢を保持することができる。
一方、箱体20の脚部の下面の内側には、内部空気により伸縮自在である、もしくは水膨潤自在である、脚部用第2止水材21g(第2止水材の一例)が設けられている。空気の供給により、もしくは水膨潤により脚部用第2止水材21gが膨らむことで底盤15との間に止水構造を形成し、脚部用第1止水材20eと底盤15との間の止水構造を外部水が仮に通過してきた場合でも、脚部用第2止水材21gと底盤15との間の止水構造により外部水の箱体20の内部への通水を抑制もしくは抑止することができる。
このように、脚部用第1止水材20eと底盤15との間の止水構造と、脚部用第2止水材21gと底盤15との間の止水構造と、の二重止水構造により、箱体と底盤の止水構造130が形成される。
次に、底盤15における箱体20の設置位置(箱体20の脚部の下面位置)に存在する目地に、目地開き部がある場合と、目地段差・欠損部がある場合の補修方法について説明する。
まず、目地開き部がある場合の補修方法を概説すると、図13(a)に示すように、底盤15の目地Mの表面に目地開き部Hが存在し、目地開き部Hに堆積物Tが堆積している場合は、箱体20の着底に先行して、図13(b)に示すように、ダイバー等によりウォータージェット等で堆積物Tを除去し、目地開き部Hの清掃を行う。
次に、図13(c)に示すように、清掃された目地開き部Hに対して早強グラウトSGを充填し、表面を平滑処理した後、図13(d)に示すように、箱体20を沈設して底盤15に着底させることにより、目地開き部Hが早強グラウトSGにて埋められた上に箱体20が着底される。
次に、目地段差・欠損部がある場合の補修方法を概説すると、図14(a)に示すように、底盤15の目地Mの表面に目地段差・欠損部Dが存在し、目地段差・欠損部Dに堆積物Tが堆積している場合は、図14(b)に示すように、ダイバー等によりウォータージェット等で堆積物Tを除去した後、欠損形状を測量する。
沈設される箱体20の脚部の下面には、測量された欠損形状を埋める大きさの袋体21hが設けられており、図14(c)及び図14(d)に示すように、袋体21hを目地段差・欠損部Dに収容されるようにして箱体20を底盤15に着底させる。ここで、袋体21hは、例えばナイロン等の樹脂素材の袋体を適用できる。
次いで、図14(e)に示すように、箱体20の内部から袋体21hに早強グラウトSGを充填することにより、目地段差・欠損部Dを早強グラウトSGにて埋めることができる。
早強グラウトSGが充填される袋体21hが、脚部用第1止水材20eと脚部用第2止水材21gに加わることにより、箱体と底盤の止水構造130は局所的には三重止水構造となる。
箱体の沈設固定方法の説明に戻ると、沈設固定工程では、箱体20が底盤15の所定位置に沈設され、箱体と底盤の固定構造120と箱体と底盤の止水構造130が形成された後、さらに、堰柱10の側面11に対して箱体20を固定する。
具体的には、図15に示すように、箱体20の端部(堰柱10の側面11と当接する端部)には、押し出し機構85と、押し出し機構85により押し出し自在な支圧板88とが設けられている。
図示例の押し出し機構85は、二つのフリーナット86と、それぞれのフリーナット86の回転によって進退するロッド87とを備えており、二つのロッド87の先端に支圧板88が取り付けられている。
箱体20は、芯材20aと、外部水側の鋼製スキンプレート20bと、内側の鋼製スキンプレート20cとを有し、それぞれの鋼製スキンプレート20b、20cには不図示の開口が設けられている。
沈設固定工程では、各開口から作業員が手を入れて二つのフリーナット86を回転させることにより、二つのロッド87を堰柱10側へX8方向に張り出させ、支圧板88を堰柱10の側面11に圧接させることにより、箱体20は堰柱10に対して移動不可の状態で固定される。
また、堰柱10と箱体20の端部の固定箇所の内側には、堰柱10の側面11と箱体20の端部の側面に跨がる固定用治具82を取り付け、固定用治具82の一端を堰柱10の側面11に対して固定用ボルト83にて固定し、固定用治具82の他端を箱体20の側面に対して別途の固定用ボルト84にて固定する。尚、図示例の他にも、固定用治具82に代わって被係合部を取り付けておき、被係合部に対して固定用治具を係合させる形態であってもよい。このように、支圧板88を堰柱10の側面11に圧接させて箱体20を堰柱10に対して移動不可の状態で固定しながら、固定用治具82を介して堰柱10と箱体20をボルト固定することにより、箱体と堰柱の固定構造140(箱体の固定構造の一例)が形成される。
以上のように、沈設固定工程では、箱体20の脚部は、脚部ガイド鋼材17,18を介して底盤15に位置決め固定され、箱体20の壁面の端部は、押し出し機構85及び支圧板88と、固定用治具82及び固定用ボルト83,84とにより、堰柱10の側面11に対して強固に固定される。図15に示すように、箱体と堰柱の固定構造140が形成された状態においては、箱体と堰柱の止水構造150も形成される。以下、箱体と堰柱の止水構造150について説明する。
箱体20が堰柱10の側面11に固定されている端部の側面の側方(外部水側)には、側部鋼板80aが箱体20の側面(鋼製スキンプレート20b)との間に隙間を置いて第2隙間保持ボルト80fを介して固定されており、隙間には箱体端部第1止水板80b(第1止水板の一例)が収容されて、その先端が側面11にラップした状態で接している。
箱体端部第1止水板80bの他端には、箱体端部第1止水板80bを側方へY2方向に押し込む第2押し込みボルト80gが設けられており、第2押し込みボルト80gにて箱体端部第1止水板80bが堰柱10の側面11に押し込まれている。
ここで、箱体端部第1止水板80bには、水平方向に延設する第2長孔80cが設けられており、第2隙間保持ボルト80fが第2長孔80cを貫通している。
このように、箱体端部第1止水板80bにおいて水平方向の第2長孔80cが設けられ、第2隙間保持ボルト80fが第2長孔80cを貫通していることにより、箱体端部第1止水板80bが堰柱10側へ押し込まれた際に、第2長孔80cの内部に留まる第2隙間保持ボルト80fは、箱体端部第1止水板80bから押し込まれることなく、その姿勢を保持することができる。
また、箱体端部第1止水板80bと鋼製スキンプレート20bの間には、丸孔80eを備えた箱体端部第2止水板80d(第2止水板の一例)が介在し、その端部は堰柱10の側面11に当接している。そして、第2長孔80cを貫通する第2隙間保持ボルト80fが丸孔80eをさらに貫通している。
このように、第2長孔80cの側方に第2隙間保持ボルト80fが嵌まり込む丸孔80eを備えた箱体端部第2止水板80dがあることにより、第2長孔80cを介した箱体20の内部への外部水の通水を箱体端部第2止水板80dにて抑制もしくは抑止することができる。
さらに、鋼製スキンプレート20bの内側には、堰柱10の側面11と箱体の端面との間を閉塞するように、内部空気により伸縮自在である、もしくは水膨潤自在である、箱体端部第4止水材(第4止水材の一例)が設けられている。
空気の供給により、もしくは水膨潤により箱体端部第4止水材が膨らむことで堰柱10の側面11との間に止水構造を形成し、箱体端部第1止水板80bと箱体端部第2止水板80dとの止水構造を外部水が仮に通過してきた場合でも、箱体端部第4止水材と堰柱10の側面11との間の止水構造により、外部水の箱体20の内部への通水を抑制もしくは抑止することができる。
このように、箱体20の端部と堰柱10の側面11との間には、箱体端部第1止水板80bと箱体端部第2止水板80d、さらには箱体端部第4止水材による、三重止水構造である箱体と堰柱の止水構造150が形成される。
次に、図16を参照して、上流側壁体40と仮設ゲート73の端部の止水構造について説明する。尚、図16Aでは、例えば図3に示す端部支持鋼材46の図示を省略している。
図16Aに示すように、上流側壁体40の外部水側の側面には、鉛直方向に延設する一対の落とし込み溝形成用鋼材48が取り付けられている。
図16Bに示すように、一対の落とし込み溝形成用鋼材48の間に角落としされる仮設ゲート73の端部の両側面には、断面視P状の仮設ゲート端部止水材49が取り付けられている。一対の落とし込み溝形成用鋼材48の間に仮設ゲート73の端部が角落としされた際に、二条の仮設ゲート端部止水材49が対応する落とし込み溝形成用鋼材48と当接することにより、上流側壁体40と仮設ゲート73の端部の止水構造が形成される。
断面視P状の仮設ゲート端部止水材49を適用することにより、水圧がどの方向から作用した場合でも、十分な止水性が保証される。
次に、図17及び図18を参照して、上流側箱体20と上流側壁体40のヒンジ機構41とヒンジ機構41における止水構造を説明するとともに、上流側壁体40と下流側壁体50が閉塞した際の双方の外部水側の端部側面の止水構造について説明する。尚、下流側箱体30と下流側壁体50のヒンジ機構51とその止水構造についても、それらの構成は実質的に同様である。
図17A及び図17Bに示すように、箱体20と壁体40はそれぞれ、箱体ヒンジ42と壁体ヒンジ43を備え、箱体ヒンジ42と壁体ヒンジ43によりヒンジ機構41が構成されている。
図17Aに示すように、壁体ヒンジ43は、上下に第3隙間41aを置いて配設されている二枚の第1水平ヒンジ片43と、二枚の第1水平ヒンジ片43の有するピン孔43aを貫通するヒンジピン44とを備えている。一方、箱体ヒンジ42は、第3隙間41aに遊嵌されて、ヒンジピン44が貫通するピン孔42aが設けられている第2水平ヒンジ片42を備えている。そして、第2水平ヒンジ片42の厚みは、第3隙間41aの高さよりも小さく設定されている。
この構成により、第2水平ヒンジ片42に対して二枚の第1水平ヒンジ片43を上下移動させることによって、壁体40を上下移動させることができる。このことにより、底盤15上で壁体40を回動させる際に、底盤15の表面凹凸が大きな場合は、壁体40を随時上下移動させることによって、壁体40を底盤15の表面凹凸に干渉させることなくスムーズに回動させることが可能になる。
また、図17B及び図17Cに示すように、壁体ヒンジ43の備える第1水平ヒンジ片43の側面の少なくとも一部には、ヒンジ第1止水材45a(第1止水材の一例)が取り付けられており、箱体20の側面からは、壁体ヒンジ43に向かってヒンジ第2止水材45b(第2止水材の一例)が張り出している。そして、第1水平ヒンジ片43の回動範囲であるX7範囲(90度範囲)に亘って、ヒンジ第1止水材45aとヒンジ第2止水材45bが接触している。
この構成により、箱体20と壁体40の回動部(ヒンジ機構41)における高い止水性を保証することができる。
また、図18に示すように、上流側壁体40と下流側壁体50が閉塞した際の双方の外部水側の端部側面のうち、一方の端部側面には壁体閉合端部第3止水材91(第3止水材の一例)が取り付けられ、他方の端部側面には壁体閉合端部第4止水材92(第4止水材の一例)が取り付けられており、壁体閉合端部第4止水材92の端部が壁体閉合端部第3止水材91の外側から接触し、外部水の水圧によって壁体閉合端部第4止水材92の端部が壁体閉合端部第3止水材91に押圧されている。
この構成により、壁体閉合端部第4止水材92の端部を外部水の水圧によって壁体閉合端部第3止水材91に押圧することができ、双方の壁体40,50の閉合部における高い止水性を保証することができる。
[実施形態に係る仮設ゲートと仮設ゲート昇降システム]
次に、図19乃至図22を参照して、実施形態に係る仮設ゲートの一例と仮設ゲート昇降システムの一例について説明する。ここで、図19は、実施形態に係る仮設ゲートの一例の斜視図であり、図20は、実施形態に係る仮設ゲートの正面図である。また、図21は、ユーザ端末のハードウェア構成の一例を示す図であり、図22は、実施形態に係る仮設ゲート昇降システムの一例の全体構成を示すとともに、仮設ゲート昇降システムを構成する牽引具とユーザ端末の機能構成の一例を示す図である。
図19及び図20に示すように、堰柱10の側面11には第1落とし込み溝13が設けられ、堰柱10の側方には間隔をおいて第2落とし込み溝72を備える複数の仮支柱71が立設し、箱体20は第3落とし込み溝47を備えた壁体40を有している。
仮支柱71はH形鋼により形成され、ウエブと二つのフランジにより形成される左右の空間が第2落とし込み溝72を形成している。
また、仮支柱71の脚部は、角パイプ等の筒材71'により形成されており、底盤15に設けられている既設の凸部15aに筒材71'を被せることにより、仮支柱71の脚部が底盤15に立設される。筒材71'の側面下端には山形鋼等の固定治具71aが溶接されており、既設の凸部15aに筒材71'を被せた際に、固定治具71aの一片が底盤15に載置される。例えばダイバー等が、この一片を底盤15に対して固定ボルト71bにて固定することにより、底盤15に対して仮支柱71が固定される。
複数の仮支柱71の上端には支持梁77が設置され、支持梁77における各仮支柱71の間にそれぞれ、複数(図示例は2つ)の牽引具78が設置されている。このように、複数の仮支柱71の上端に設置されている支持梁77の各所に牽引具78が設置されていることにより、牽引具78を様々な設置することができ、また、設置位置を随時変更することができる。
仮設ゲート73は、例えば3枚の角落とし材74,75が相互に接続金物76を介して連結されることにより一体に形成されており、図示例では、下方の2枚の角落とし材74は既に存在する既設角落とし材であり、上方の角落とし材75は新規の新設角落とし材である。新設角落とし材75の上面には吊りフック75aが設けられており、牽引具78から垂下されるチェーン等の吊り材79の下端が吊りフック75aに係止されている。
牽引具78は電動チェーンブロックであり、以下で詳説するように、遠隔にて管理者が電動チェーンブロック78を駆動させることにより、仮設ゲート73のY3方向への昇降が実行されるようになっている。
図示例の仮設ゲート73によれば、仮設ゲート73が設置された場合においても、本設ゲート14と同様に仮設ゲート73を随時昇降させることができ、必要に応じて海水や河川水の行き来を許容することができる。また、図示例の仮設ゲート73によれば、固有の牽引具78にて各仮設ゲート73が昇降されることから、角落としされている場所が異なる全ての仮設ゲート73の一部もしくは全部を、所望に昇降させることができる。
次に、仮設ゲート昇降システムについて説明する。
図22に示すように、仮設ゲート昇降システム500は、仮締切り体200の備える仮設ゲート73の備える牽引具78と、管理者等の備えるユーザ端末95とを有する。電動チェーンブロック78とユーザ端末95がネットワーク98を介して接続されることにより、仮設ゲート昇降システム500が形成される。ユーザ端末95としては、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)やタブレット、スマートフォン等が挙げられる。
ネットワーク98には、インターネット等の公衆ネットワーク、携帯電話網等の無線ネットワーク、VPN(Virtual Private Network)等の専用ネットワーク、LAN(Local Area Network)等が含まれる。
図21に示すように、ユーザ端末95は、接続バス95jにより相互に接続されているCPU95e、主記憶装置95f、補助記憶装置95g、通信IF(interface)95h、及び入出力IF95iを備えている。主記憶装置95fと補助記憶装置95gは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。尚、上記の構成要素はそれぞれ個別に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
CPU95eは、MPU(Microprocessor)やプロセッサとも呼ばれ、CPU95eは、単一のプロセッサであってもよいし、マルチプロセッサであってもよい。CPU95eは、コンピュータからなるユーザ端末95の全体の制御を行う中央演算処理装置である。CPU95eは、例えば、補助記憶装置95gに記憶されたプログラムを主記憶装置95fの作業領域にて実行可能に展開し、プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことにより、所定の目的に合致した機能を提供する。
主記憶装置95fは、CPU95eが実行するコンピュータプログラムや、CPU95eが処理するデータ等を記憶する。主記憶装置95fは、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶装置95gは、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納し、外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶装置95gには、例えば、OS(Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、例えば、通信IF95hを介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。外部装置等には、例えば、ネットワークに接続する電動チェーンブロック78等が含まれる。
補助記憶装置95gは、例えば、主記憶装置95fを補助する記憶領域として使用され、CPU95eが実行するコンピュータプログラムや、CPU95eが処理するデータ等を記憶する。補助記憶装置95gは、不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM))を含むシリコンディスク、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)装置、ソリッドステートドライブ装置等である。また、補助記憶装置95gとして、CDドライブ装置、DVDドライブ装置、BDドライブ装置といった着脱可能な記録媒体の駆動装置が例示され、着脱可能な記録媒体として、CD、DVD、BD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等が例示される。
通信IF95hは、ユーザ端末95が接続するネットワーク98とのインターフェイスである。通信IF95hは、ネットワーク98を介して、各仮設ゲート73の備えるそれぞれの電動チェーンブロック78に対して駆動信号や駆動停止信号を送信する。
入出力IF95iは、ユーザ端末95に接続する機器との間でデータの入出力を行うインターフェイスである。入出力IF95iには、例えば、キーボード、タッチパネルやマウス等のポインティングデバイス、マイクロフォン等の入力デバイス等が接続する。ユーザ端末95は、入出力IF95iを介し、入力デバイスを操作する操作者からの操作指示等を受け付ける。また、入出力IF95iには、例えば、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や有機ELパネル(EL:Electroluminescence)等の表示デバイス、プリンタ、スピーカ等の出力デバイスが接続される。
図22に示すように、ユーザ端末95は、CPU95eによるプログラムの実行により、少なくとも、第2通信部95a、操作部95bの各種機能を提供する。
一方、電動チェーンブロック78は、第1通信部78aと牽引駆動部78bを有する。
ユーザ端末95の操作部95bによる指令信号は、第2通信部95aを介して電動チェーンブロック78の第1通信部78aに送信され、牽引駆動部78bにより、仮設ゲート73の昇降制御が実行される。
図示例の仮設ゲート昇降システム500によれば、ユーザ端末95を用いて遠隔にて仮設ゲート73の昇降制御を行うことができる。尚、各仮設ゲート73は、手動によるチェーンブロックにて昇降される形態であってもよい。
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。