タンパク質
タンパク質及びタンパク質を含む組成物を本明細書に提供する。本明細書で用いるとき、「タンパク質」は、広くは、ペプチド結合により連結した2つ以上のアミノ酸のポリマーを表す。ゆえに、例えば、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、及び酵素という用語は、タンパク質の定義内に含まれる。この用語は、タンパク質の発現後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化等も含む。タンパク質という用語は、アミノ酸のポリマーの特定の長さを暗示しない。タンパク質は、天然源から直接単離可能であってよいか、または組換え、酵素、または化学技術を利用して調製することができる。天然に存在するタンパク質の場合、そのようなタンパク質は、典型的に単離される。
「単離された」タンパク質は、その天然環境から取り出されているものである。例えば、単離されたタンパク質は、細胞質または細胞膜から取り出されているタンパク質であり、その天然環境のタンパク質、核酸、及び他の細胞物質の大半はもはや存在しない。
特定の源から「単離可能」であるとして特徴付けられるタンパク質は、適切な条件下で、特定の源によって生成されるタンパク質であるが、タンパク質は、代わりの源から、例えば、当業者に周知の組換え、化学、または酵素技術を使用して得られて良い。ゆえに、タンパク質を特定の源から「単離可能な」ものと特徴付けることは、タンパク質を得なければならない任意の特定の源、またはタンパク質を得なければならない任意の特定の条件もしくはプロセスを意味するものではない。
「精製された」タンパク質は、それに天然に付随する他の構成成分を、少なくとも60%、少なくとも75%、または少なくとも90%含まないものである。タンパク質が天然に存在する生物の外側で、例えば、化学または組換え手段により、生成されるタンパク質は、天然環境に決して存在しないために、定義上単離されて精製されたとみなされる。
本明細書に記載のタンパク質は、分子量、アミノ酸配列、タンパク質をコードする核酸、免疫学的活性、またはそのような特徴の2つ以上の任意の組み合わせを特徴とすることができる。タンパク質の分子量は、典型的にキロダルトン(kDa)で表示され、例えば、ゲル濾過、ゲル電気泳動、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、キャピラリー電気泳動、質量分析、液体クロマトグラフィー(HPLCを含む)、及び観察されたまたは予測されたアミノ酸配列から分子量を算出することを含む通常の方法を使用して決定することができる。本明細書に記載のタンパク質の分子量を、ゲル電気泳動により、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MS、本明細書でMALDIとも呼ぶ)により、または推論されるタンパク質配列の分子量を決定することにより、決定した(表1を参照されたい)。別段の指定がない限り、分子量は、還元及び変性条件下で、約4%のスタッキングゲル及び約10%の分離ゲルを有するSDSポリアクリルアミドゲルを使用して、タンパク質を分離することにより決定される分子量を指す。一実施形態では、SDS−PAGEにより同定されるタンパク質の分子量は、表示値の上下1、2、3、4、または5kDaの分子量を含む。一実施形態では、SDS−PAGEにより同定されるタンパク質の分子量は、表示値の上下1、2、3、4、または5kDaの分子量を含む。
本発明のタンパク質は、金属調節タンパク質であってよい。本明細書で用いるとき、「金属調節タンパク質」は、高金属条件における同じ微生物の増殖と比較して、低金属条件において微生物を増殖させるときに、より高レベルで微生物によって自然に発現されるタンパク質である。金属調節タンパク質の例としては、シデロフォア受容体タンパク質が挙げられる。低金属及び高金属条件は本明細書に記載する。例えば、Klebsiella spp.により生成される金属調節タンパク質の1つのクラスは、高金属条件における微生物の増殖中には検出可能なレベルで発現されないが、低金属条件における増殖中に検出可能なレベルで発現される。
低鉄条件での増殖後にK.pneumoniaeから単離可能な金属調節タンパク質の例は、100kDa〜60kDa、例えば、97kDa〜66kDaの分子量を有する。低鉄条件での増殖後にK.pneumoniaeから単離可能な金属調節タンパク質の特定の例は、SDS−PAGEにより決定して、87kDa、82kDa、78kDa、72kDa、及び68kDaのタンパク質を有する(表1)。82kDa、78kDa、72kDa、及び68kDaの分子量を有するタンパク質、ならびにタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を、図7〜10に示す。
K.pneumoniaeにより発現され、これから単離可能であると予測される、及び金属の獲得に関与すると予測される他の金属調節タンパク質は、83kDa、78kDa、78.4kDa、76.2kDa、74.7kDa、及び66.2kDaの分子量を有するタンパク質を含み、この場合、分子量は推論されるアミノ酸配列から決定される。これらのタンパク質、及びタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を、図11、12、15、及び17〜19に示す。金属調節タンパク質の追加の例は、本明細書に記載のタンパク質の組換えで生成されたものを含む。組換えで生成されたタンパク質は、mRNA転写物から翻訳可能なアミノ酸配列全体を含み得る。あるいは、組換えで生成された金属調節タンパク質は、翻訳可能アミノ酸配列全体の断片を含むことができる。例えば、組換えで生成された金属調節タンパク質は、切断可能配列をタンパク質のいずれかの末端で、例えば、切断可能シグナル配列をタンパク質のアミノ末端で欠いてよい。
他の金属調節タンパク質は、配列番号58、配列番号61、及び配列番号64(図36〜38)に示すタンパク質を含む。ゆえに、金属調節タンパク質は、例えば、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号49、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号58、配列番号61、または配列番号64に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質であることができる。
K.pneumoniaeにより発現され、これから単離可能であると予測される、及び金属の獲得に関与すると予測される他の金属調節タンパク質は、配列番号14、配列番号16、及び配列番号20に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質を含む。
金属調節されないタンパク質も本明細書に提供する。このようなタンパク質は、金属イオンの存在下、例えば、塩化第二鉄の存在下で発現され、低鉄条件において増殖させるときにも発現される。このようなタンパク質の例としては、ポーリンが挙げられる。K.pneumoniaeを含むKlebsiella spp.から単離可能なこのようなタンパク質の例は、26kDa〜45kDaの分子量を有する。一実施形態では、Klebsiella spp.により生成された非金属調節タンパク質は、35kDa及び33kDaであり、これはSDS−PAGEにより決定される。これらのタンパク質、及びタンパク質をコードするヌクレオチド配列の例を、図20及び21に示す。
ゆえに、金属調節されないタンパク質は、例えば、配列番号54、及び配列番号55に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質であることができる(図20及び21)。
タンパク質が金属調節タンパク質であるか否かは、タンパク質の存在を比較するのに有用である方法、例えば、ゲル濾過、ゲル電気泳動、例えばドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、キャピラリー電気泳動、質量分析、及び液体クロマトグラフィー、例えばHPLCを含む方法により決定することができる。微生物の別々の培養物を高金属条件及び低金属条件下で増殖させ、本発明のタンパク質を本明細書に記載のように単離し、各培養物中に存在するタンパク質を分離して比較する。典型的には、各培養物から等量のタンパク質を使用する。好ましくは、還元及び変性条件下で、約4%のスタッキングゲル及び約10%の分離ゲルを有するSDSポリアクリルアミドゲルを使用して、タンパク質を分離する。例えば、各培養物から総タンパク質の30マイクログラム(μg)を使用し、ゲルのウェルにロードしてよい。ゲルを泳動させ、タンパク質をクーマシーブリリアントブルー(Coomasie Brilliant Blue)で染色した後、2つのレーンを比較することができる。タンパク質が検出可能なレベルで発現されているか否かを決定するとき、培養物から総タンパク質の30μgをSDS−PAGEゲル上で分離し、当技術分野で公知の方法を使用してクーマシーブリリアントブルー(Coomasie Brilliant Blue)で染色する。目視可能なタンパク質は、検出可能なレベルで発現されているとみなし、目視できないタンパク質は、検出可能なレベルで発現されていないとみなす。
あるいは、タンパク質が金属調節されているか否かは、マイクロアレイに基づく遺伝子発現分析を使用して決定することができる。微生物の別々の培養物を高金属条件下及び低金属条件下で増殖させ、RNAを各培養物の細胞から抽出し、高金属条件において増殖させた細胞中のRNA発現と低金属条件において増殖させた細胞中のRNA発現との差異を検出し、比較する。例えば、標識cDNAを、8〜10μgの細菌RNAから公知かつ通常の方法を使用して調製することができる。標識cDNAは、K.pneumoniaeゲノムのマイクロアレイに適用することができる。このようなマイクロアレイは市販されており、このようなアレイを使用する遺伝子発現は通常行われるものである。
本明細書に記載のタンパク質は、免疫学的活性を有してよい。「免疫学的活性」は、動物において免疫学的応答を誘発するタンパク質の能力を表す。タンパク質に対する免疫学的応答は、タンパク質に対する細胞及び/または抗体媒介性免疫応答の動物における発達である。通常、免疫学的応答は、以下の作用:エピトープまたはタンパク質のエピトープに指向された、抗体の生成、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、及び/または細胞傷害性T細胞うちの1つまたは複数を含むが、これに限定されない。「エピトープ」は、特定のB細胞及び/またはT細胞が応答し、これにより抗体が生成される抗原上の部位を表す。免疫学的活性は、防護性であってよい。「防護性免疫学的活性」は、Klebsiella spp.,例えば、K.pneumoniaeまたはK.oxytocaによる感染を予防するまたは阻害する動物における免疫学的応答を誘発するタンパク質の能力を表す。タンパク質が防護性免疫学的活性を有するか否かは、例えば、実施例11〜14に記載の方法などの当技術分野で公知の方法により決定することができる。例えば、本明細書に記載のタンパク質、または本明細書に記載のタンパク質の組み合わせは、Klebsiella sppによる攻撃から動物を防護する。本発明のタンパク質は、血清活動活性を有してよい。「血清活動活性」は、Klebsiella spp.,例えば、K.pneumoniaeまたはK.oxytocaに感染した動物からの回復期血清中に存在する抗体と反応する候補タンパク質の能力を表す。いくつかの態様では、回復期血清は、K.pneumoniaeまたはK.oxytocaに感染した動物からのものであってよい。本発明のタンパク質は、免疫調節性活性を有してよい。「免疫調節性活性」は、特定の抗原に対する免疫応答を亢進する非特異的な様式で作用するタンパク質の能力を表す。タンパク質が免疫調節性活性を有するか否かを決定するための方法は、当技術分野で公知である。
本明細書に記載のタンパク質は、基準タンパク質の特徴を有することができる。特徴は、例えば、分子量、アミノ酸配列、活性、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。基準タンパク質は、グラム陰性微生物、例えば、Enterobacteriacea科のメンバー、好ましくは、Klebsiella spp.、より好ましくは、K.pneumoniaeにより発現されるものであることができる。K.pneumoniae菌株の例は、K.pneumoniae 1571である。
本明細書に記載のタンパク質は、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号58、配列番号61、または配列番号64のアミノ酸配列と、下記のように構造的に類似するアミノ酸配列を有することができる。一実施形態では、本明細書に記載のタンパク質は、配列番号14、配列番号16、または配列番号20のアミノ酸配列と、下記のようにと構造的に類似するアミノ酸の領域を含むことができる。
本明細書で用いるとき、タンパク質は、タンパク質のアミノ酸配列が、基準タンパク質と比較して特定量の配列類似性及び/または配列同一性を有する場合に、基準タンパク質と「構造的に類似」し得る。ゆえに、タンパク質は、基準タンパク質と比較して、十分なレベルのアミノ酸配列同一性、アミノ酸配列類似性、またはそれらの組み合わせを有する場合、基準タンパク質と「構造的に類似」し得る。
タンパク質配列類似性及びタンパク質配列同一性
2つのタンパク質の構造的類似性は、2つのタンパク質(例えば、本明細書に記載の候補タンパク質及び任意の適切な基準タンパク質)の残基を、それらの配列長に沿って同一のアミノ酸の数を最適化するように整列させることにより決定することができ、いずれかまたは両方の配列のギャップは、同一アミノ酸の数を最適化させるためのアライメントを作成する際に許容されるが、各配列のアミノ酸は、それでもなおそれらの適当な順序で残らなければいけない。基準タンパク質は、適切な場合は、本明細書に記載のタンパク質または任意の公知の金属調節タンパク質であってよい。候補タンパク質は、基準タンパク質と比較されるタンパク質である。候補タンパク質は、例えば、微生物から単離することができるか、組換え技術を使用して生成することができるか、または化学的にもしくは酵素的に合成されることができる。
本明細書以外に記載されているように修飾されない限り、アミノ酸配列のペアワイズ比較分析をGCGパッケージ(バージョン10.2、Madison WI)におけるBESTFITアルゴリズムを使用して実施することができる。あるいは、タンパク質は、Tatiana et al.によって記載され(FEMS Microbiol Lett,174,247−250(1999))、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のウェブサイト上で利用可能な、BLAST2検索アルゴリズムのBlastpプログラムを使用して比較してよい。すべてのBLAST2検索パラメータのための既定値を使用してよく、matrix=BLOSUM62;open gap penalty=11、extension gap penalty=1、gap x_dropoff=50、expect=10、wordsize=3、及びfilter onを含む。
2つのアミノ酸配列の比較において、構造的類似性は、「同一性」割合(%)によって表されてよく、または「類似性」割合(%)によって表されてよい。「同一性」は、同一のアミノ酸の存在を表す。「類似性」は、同一のアミノ酸だけでなく保存的置換の存在も表す。タンパク質におけるアミノ酸の保存的置換は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択されてよい。例えば、特に生物学的活性と直接的に関連がないタンパク質の領域において、特定のサイズまたは特徴(例えば、電荷、疎水性、または親水性)を有するアミノ酸の分類に属するアミノ酸を、タンパク質の活性を変化させることなく、別のアミノ酸に置換することができることは、タンパク質生化学の分野で周知である。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンを含む。極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン及びグルタミンを含む。正荷電(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リジン及びヒスチジンを含む。負荷電(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含む。保存的置換は、例えば、正電荷を維持するためのLysのArgへの置換及びその逆の置換;負電荷を維持するためのGluのAspへの置換及びその逆の置換;遊離−OHを維持するためのSerのThrへの置換;ならびに遊離−NH2を維持するためのGlnのAsnへの置換を含む。同様に、タンパク質の機能活性、例えば、免疫学的活性を排除しない1つまたは複数の連続または非連続アミノ酸の欠失または付加を含有するタンパク質の生物学的に活性な類似体も企図される。
ゆえに、本明細書で用いるとき、本明細書に記載のタンパク質への言及及び/または1つまたは複数の配列番号のアミノ酸配列への言及は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%アミノ酸配列類似性を基準アミノ酸配列に対して有するタンパク質を含むことができる。
あるいは、本明細書で用いるとき、本明細書に記載のタンパク質への言及及び/または1つまたは複数の配列番号のアミノ酸配列への言及は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%アミノ酸配列同一性を基準アミノ酸配列に対して有するタンパク質を含むことができる。
実施例9に記載し、表3に示すように、本明細書に記載の金属調節タンパク質は、保存されている。表3は、K.pneumoniae、E.coli、及びEnterobacterに存在する異なるタンパク質の高レベルの同一性割合(%)を示す。当業者は、異なる微生物により発現される金属調節タンパク質のアミノ酸配列を、容易に利用可能なアルゴリズム、例えばCLUSTALWを使用して容易に整列し、保存されているアミノ酸及び領域ならびに金属調節タンパク質にわたって可変であるアミノ酸及び領域を同定することができる。当業者は、修飾されたポリペプチドの活性に不当に影響を及ぼすことなく、置換、特に保存的置換が許容され得るタンパク質の領域をこのようなデータから推論することができる。
結果的に、本明細書に記載のタンパク質は、ある特定の変異体を含むことができ、それには、例えば、ポリペプチドが元々単離及び/もしくは同定された微生物種または菌株以外の微生物種または菌株から、生物学的または組換え的に生じる相同タンパク質が含まれる。
本明細書に記載のタンパク質は、1つまたは複数の追加の配列、例えば、カラムに捕捉することによる精製または抗体の使用を促進し得る、付加されたC末端及び/またはN末端アミノ酸のコード配列の付加を提供するように設計することもできる。そのようなタグとしては、例えば、ニッケルカラムでのタンパク質の精製を可能にするヒスチジンリッチタグが含まれる。そのような遺伝子改変技術及び好適な追加の配列は、分子生物学の分野で周知である。
本明細書に記載のタンパク質の「修飾」は、1つまたは複数の構成アミノ酸にて化学的にまたは酵素的に誘導体化されるタンパク質(またはその類似体、例えば、その断片)を含む。このような修飾は、例えば、側鎖修飾、骨格修飾、N末端修飾、及び/またはC末端修飾、例えば、アセチル化、水酸化、メチル化、アミド化、ならびに炭水化物及び/または脂質部分、補因子等の付着、ならびにそれらの組み合わせを含むことができる。本発明の修飾タンパク質は、未修飾タンパク質の生物学的活性、例えば、免疫学的活性を保持し得るか、または未改変タンパク質と比較して増減した生物学的活性を呈し得る。
本明細書に記載のタンパク質(生物学的に活性なその類似体及び/またその修飾体を含む)は、未変性(天然に存在する)、組換え、化学的に合成された、または酵素的に合成されたタンパク質を含むことができる。例えば、本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質を天然源から単離することによって調製されてよいか、または例えば、細菌または他の宿主細胞における融合タンパク質として調製することを含む、従来の方法によって組換えで調製されてよい。
基準微生物によって発現されるタンパク質は、基準微生物を低金属条件下で本明細書に記載のように増殖させること及び明細書中に開示するプロセスによるタンパク質のその後の単離よって得ることができる。あるいは、基準微生物によって発現されるタンパク質は、微生物を低金属条件、例えば、金属調節条件において増殖させたときに高レベルで発現されるコード領域を同定することによって得ることができる。金属調節コード領域は、クローン化して発現させることができ、発現された金属調節タンパク質は、本明細中に記載のプロセスによって同定され得る。候補タンパク質は、微生物から単離可能であることができる、または微生物、好ましくは、グラム陰性微生物、より好ましくは、Enterobacteriaceae科のメンバー、例えば、Klebsiella spp.例えば、K.pneumoniae、またはK.oxytocaなどから同定することができる。候補タンパク質は、酵素的または化学的技術を使用して生成してもよい。
ポリヌクレオチド配列類似性及びポリヌクレオチド配列同一性
本明細書に記載のタンパク質はまた、タンパク質をコードするポリヌクレオチドに関して同定されてよい。ゆえに、本開示は、本明細書に記載のタンパク質をコードする、または標準的なハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリッド形成するポリヌクレオチド、及びそのようなポリヌクレオチド配列の補体を提供する。
本明細書で用いるとき、本明細書に記載のポリヌクレオチドに対する言及及び/または1つもしくは複数の配列番号の核酸配列に対する言及は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%配列同一性を、同定された基準ポリヌクレオチド配列に対して有するポリヌクレオチドを含むことができる。
この文脈では、「配列同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列間の同一性を表す。配列同一性は、2つのポリヌクレオチドの塩基を整列させて(例えば、候補配列のヌクレオチド配列と、タンパク質または配列番号41、42、43、44、45、46、49、51、52、53、54、55、58、61、もしくは64をコードするヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列を整列させて)、その配列長に沿って同一ヌクレオチドの数を最適化させることによって一般に決定され、いずれかまたは両方の配列のギャップは、共有されるヌクレオチドの数を最適化させるためのアライメントを作成する際に許容されるが、各配列のヌクレオチドは、それでもなおそれらの適当な順序で残らなければいけない。候補配列は、公知の配列と比較される配列、例えば、シグナル配列を伴わずにタンパク質をコードする、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、または29の適切な部分から選択される適切なヌクレオチド配列を含むヌクレオチドである。例えば、2つのポリヌクレオチド配列は、Tatiana et al.,FEMS Microbiol Lett.,1999;174:247−250によって記載され、ワールドワイドウェブncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で利用可能なBLAST2検索アルゴリズムのBlastnプログラムを使用して比較することができる。すべてのBLAST2検索パラメータのための既定値を使用してよく、reward for match=1、penalty for mismatch=−2、open gap penalty=5、extension gap penalty=2、gap x_dropoff=50、expect=10、wordsize=11、及びfilter onを含む。
本開示は、微生物の全細胞調製物も提供し、この場合微生物は、本明細書に記載のタンパク質のうちの1つまたは複数を発現する。微生物は、タンパク質を天然に発現することができるか、または操作されて、本明細書に記載のタンパク質のうちの1つまたは複数を組換え的に発現することができる。全細胞調製物中に存在する細胞を、細胞が複製できないが、微生物により発現される本明細書に記載のタンパク質の免疫学的活性を維持するように、不活性化してよい。典型的には、細胞を、グルタルアルデヒド、ホルマリン、またはホルムアルデヒドなどの薬剤への曝露により死滅させてよい。
組成物
本明細書に記載の組成物は、少なくとも1つの本明細書に記載のタンパク質、または1よりも大きな整数(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4)である数のタンパク質を含んでよい。特定のレベルの配列類似性及び/または同一性が本明細書に明示されない限り(例えば、少なくとも80%配列類似性、少なくとも90%配列同一性等)、同定された配列番号のアミノ酸配列に対する言及は、「タンパク質配列類似性及びタンパク質配列同一性」という題名の項目において本明細書に記載されている配列類似性のレベル及び/または配列同一性のレベルを有する変異体を含む。一実施形態では、本明細書に記載のタンパク質を含む組成物は、K.pneumoniaeなどの微生物により、低金属条件、例えば低鉄条件下で発現されるタンパク質のサブセットであり、天然に存在しないタンパク質の組み合わせである。
組換えで生成されたタンパク質は、ベクターが適切な宿主細胞へと導入されたときにタンパク質の発現を可能にするベクターから発現されてよい。宿主細胞は、1つまたは複数の組換えで生成された本明細書に記載のタンパク質を生成するように構築されてよく、それゆえ、本明細書に記載のタンパク質をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むさらに1つのベクターを含むことができる。ゆえに、各ベクターは、1つまたは複数の本明細書に記載のポリヌクレオチド、すなわち、本明細書に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。
ある特定の組成物、例えば、組換えで生成されたタンパク質を含むものは、最大数のタンパク質を含むことができる。いくつかの実施形態では、最大数のタンパク質は、最大総数のタンパク質を表すことができる。ある特定の組成物は、例えば、50タンパク質以下、例えば、40以下のタンパク質、30以下のタンパク質、25以下のタンパク質、20以下のタンパク質、15以下のタンパク質、10以下のタンパク質、9以下のタンパク質、8以下のタンパク質、7以下のタンパク質、6以下のタンパク質、5以下のタンパク質、4以下のタンパク質、3以下のタンパク質、2以下のタンパク質、または1以下のタンパク質を含むことができる。他の実施形態では、組換えで生成されたタンパク質の最大数は、同様の様式にて特定され得る。なおも他の実施形態では、組換えでなく生成されたタンパク質の最大数は、同様の様式にて特定され得る。
組成物は、1つの微生物から単離可能なタンパク質を含むことができる、または2つ以上の微生物の組み合わせから単離可能であることができる。例えば、組成物は、2つ以上のKlebsiella spp.,から、または1つのKlebsiella spp.及びKlebsiella属のメンバーではない異なる微生物から単離可能なタンパク質を含むことができる。
ある特定の実施形態では、組成物は、全細胞が本明細書に記載のタンパク質のうちの1つまたは複数を発現する、全細胞調製物を含むことができる。これらの実施形態のいくつかでは、全細胞は、Klebsiella spp.,であることができ、他の実施形態では、全細胞は、タンパク質のうちの1つまたは複数を発現するように遺伝子操作されたものである。いくつかの実施形態では、組成物は、2、3、4、5、または6つの菌株からの全細胞調製物を含むことができる。
一実施形態では、組成物は、Klebsiella spp.により低鉄において増殖中に発現されるポリペプチド及び少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、またはそれ以上の組換えで生成されたタンパク質を含む。例えば、Klebsiella spp.を、少なくとも1つの組換えタンパク質を発現するように操作することができるか、またはKlebsiella spp.から単離された組成物に、第二の細胞により発現される少なくとも1つの組換えタンパク質を補充することができる。一実施形態では、そのような組成物は、天然に存在しない。
組成物の具体的な例としては、以下を含むが、これらに限定されない。一実施形態では、組成物は、SDS−PAGEにより決定される、82kDa、78kDa、72kDa、及び68kDaから選択される分子量を有する少なくとも2つの金属調節タンパク質を含む。例えば、組成物は、82kDa、78kDa、72kDa、及び68kDa;82kDa、78kDa、及び72kDa;82kDa、78kDa、及び68kDa;82kDa、72kDa、及び68kDa;78kDa、72kDa、及び68kDa;82kDa及び78kDa;82kDa及び68kDa;または72kDa及び68kDaの分子量を有するタンパク質を含むことができる。任意選択で、組成物は、金属調節されない1つまたは2つのタンパク質を含み、この場合、タンパク質は、SDS−PAGEにより決定される、35kDa及び33kDaの分子量を有する。任意選択で、組成物は、SDS−PAGEにより決定される、87kDaの分子量を有する金属調節タンパク質を含む。任意選択で、組成物は、K.pneumoniaeにより発現され、これから単離可能であると予測される少なくとも1つの金属調節タンパク質、例えば、83kDa、78kDa、78.4kDa、76.2kDa、74.7kDa、または66.2kDaの分子量を有するタンパク質を含み、この場合、分子量は、推論されるアミノ酸配列から決定される。ゆえに、一実施形態では組成物は、82kDa、78kDa、72kDa、及び68kDaの分子量を有する2、3、または4つの金属調節タンパク質、金属調節されておらず35kDa及び33kDaの分子量を有する2つのタンパク質、ならびに87kDaの分子量を有する金属調節タンパク質を含む。
一実施形態では、組成物は、配列番号41、配列番号42、配列番号43、及び配列番号44から選択されるタンパク質と構造的に類似する少なくとも2つのタンパク質を含む。例えば、組成物は、配列番号41、配列番号42、配列番号43、及び配列番号44;配列番号41、配列番号42、及び配列番号43;配列番号41、配列番号42、及び配列番号44;配列番号41、配列番号43、及び配列番号44;配列番号42、配列番号43、及び配列番号44;配列番号41、配列番号42;配列番号41、及び配列番号44;配列番号43、及び配列番号44と構造的に類似するタンパク質を含むことができる。任意選択で、組成物は、配列番号54及び配列番号55と構造的に類似する追加の2つのタンパク質を含む。任意選択で、組成物は、配列番号45、配列番号46、配列番号49、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号58、配列番号61、及び配列番号64から選択されるタンパク質と構造的に類似する少なくとも1つのタンパク質を含む。任意選択で、組成物は、配列番号14、配列番号16、または配列番号20のアミノ酸配列と構造的に類似するアミノ酸の領域を含むタンパク質と構造的に類似する少なくとも1つのタンパク質を含む。
一実施形態では、組成物は、配列番号41、配列番号58、配列番号61、及び配列番号64から選択されるタンパク質と構造的に類似する少なくとも2つのタンパク質を含む。例えば、組成物は、配列番号41、配列番号58、配列番号61、及び配列番号64;配列番号41、配列番号58、及び配列番号61;配列番号41、配列番号58、及び配列番号64;配列番号41、配列番号61、及び配列番号64;配列番号58、配列番号61、及び配列番号64;配列番号41及び配列番号58;配列番号41及び配列番号64;または配列番号61、及び配列番号64と構造的に類似するタンパク質を含むことができる。任意選択で、組成物は、配列番号54及び配列番号55と構造的に類似する追加の2つのタンパク質を含む。任意選択で、組成物は、配列番号42、配列番号43、及び配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号49、配列番号51、配列番号52、及び配列番号53から選択されるタンパク質と構造的に類似する少なくとも1つのタンパク質を含む。任意選択で、組成物は、配列番号14、配列番号16、または配列番号20のアミノ酸配列と構造的に類似するアミノ酸の領域を含むタンパク質と構造的に類似する少なくとも1つのタンパク質を含む。
任意選択で、本明細書に記載のタンパク質は、キャリアタンパク質に共有結合またはコンジュゲートして、タンパク質の免疫学的特性を改善することができる。有用なキャリアタンパク質は当該分野で公知である。本明細書に記載のタンパク質の化学的カップリングは、公知かつ通常の方法を使用して行うことができる。例えば、様々なホモ二官能性及び/またはヘテロ二官能性架橋試薬、例えば、ビス(スルホスクシンイミジル)スベリン酸塩、ビス(ジアゾベンジジン)、アジプイミド酸ジメチル、ピメリミド酸ジメチル、スペリイミド酸ジメチル(dimethyl superimidate)、スベリン酸ジサクシンイミジル、グルタルアルデヒド、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミド、スルホ−m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミド、スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘアン(cycloheane)−1−カルボキシレート、スルホスクシンイミジル4−(p−マレイミド−フェニル)ブチレート及び(1−エチル−3−(ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミドを使用することができる(例えば、Harlow and Lane,Antibodies,A Laboratory Manual,generally and Chapter 5,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York,NY(1988))を参照されたい)。
本明細書に記載の組成物は、低濃度のリポ多糖類(LPS)を含むことができる。LPSは、大半のグラム陰性微生物の外膜の成分であり(例えば、Nikaido and Vaara,Outer Membrane,In:Escherichia coli and Salmonella typhimurium,Cellular and Molecular Biology、Neidhardt et al.,(eds.)American Society for Microbiology,Washington,D.C.,pp.7−22(1987)を参照されたい)、典型的には、多糖類(O−特異的鎖、外部及び内部コア)及び脂質A領域を含む。LPSの脂質A成分は、LPS構造の最も生物学的に活性な成分であり、哺乳類において広範囲の病態生理学的作用を一緒になって誘導する。最も劇的な作用は、発熱、播種性血管内凝固、補体活性化、低血圧ショック、及び死亡である。LPSの非特異的免疫刺激活性は、LPSを含む組成物の投与部位で肉芽腫の形成を増強し得る。そのような反応は、動物に過度のストレスをもたらし、それにより、動物はある期間にわたって飼料または水を摂取しなくなる可能性があり、その動物の感染性病態を悪化させる。加えて、注射部位での肉芽腫の形成は、注射部位での組織の傷跡または傷のために死体の状態を悪化させる可能性を増加させ得る。
LPSの濃度は、当技術分野で通常の方法を使用して決定することができる。そのような方法は、LPSによる色素結合の測定(例えば、Keler and Nowotny,Analyt.Biochem.,156,189(1986)を参照されたい)またはカブトガニ血球抽出成分(LAL)検査の使用(例えば、Endotoxins and Their Detection With the Limulus Amebocyte Lystate Test,Alan R.Liss,Inc.,150 Fifth Avenue,New York,NY(1982)を参照されたい)を典型的に含む。LAL検査と典型的に使用される4つの基本的な商用の方法がある:ゲル凝固試験;濁度(分光光度的)試験;比色試験;及び発色試験。ゲル凝固アッセイの例は、商標名E−TOXATE(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO;Sigma 技術告示番号210を参照されたい)、及びPYROTELL(Associates of Cape Cod,Inc.,East Falmouth,MA)の下で利用可能である。典型的には、アッセイ条件は、組成物をカブトガニ、Limulus polyphemusの循環アメーバ様細胞のライセートを含有する調製物と接触させることを含む。LPSに曝露されたとき、ライセートは、混濁度ならびに粘性を増し、ゲル化し得る。約0.1ミリリットルの組成物をライセートに加える。典型的には、組成物のpHは、6〜8であり、好ましくは、6.8〜7.5である。組成物とライセートとの混合物は、1時間37℃にて静置してインキュベートする。インキュベーション後、混合物を観察して、混合物がゲル化しているか否かを決定する。ゲル化は、エンドトキシンの存在を示す。組成物中に存在するエンドトキシンの量を決定するために、エンドトキシンの標準化溶液の希釈物を作製し、組成物を試験するのと同時に試験する。エンドトキシンの標準化溶液は、例えば、Sigma Chemical(カタログ番号210−SE)、U.S.Pharmacopeia(Rockville,MD,カタログ番号235503)、及びAssociates of Cape Cod,Inc.,(カタログ番号E0005)から市販されている。一般に、本発明の組成物を、微生物から本明細書に記載の方法(例えば、細胞を破砕及び可溶化すること、ならびに不溶性ポリペプチドを回収することを含む方法)によりポリペプチドを単離することによって調製するとき、本発明の組成物中のLPSの量は、同じ条件下で破砕されているが可溶化されていない同量の同じ微生物の混合物中に存在するLPSの量より少ない。典型的には、本明細書に記載の組成物中のLPSのレベルは、優先順位の低い順に、同じ微生物を可溶化することではなく、破砕することにより調製される組成物におけるLPSのレベルと比べて、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%低減する。一実施形態では、本明細書に記載の組成物中のLPSのレベルは、同じ微生物を可溶化することではなく、破砕することにより調製される組成物におけるLPSのレベルと比べて90%超、95%超、または99%超低減する。
本明細書に記載の組成物は、薬学的に許容され得るキャリアを任意選択でさらに含む。「薬学的に許容され得る」は、希釈剤、キャリア、賦形剤、塩等が組成物の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害でないことを表す。典型的には、組成物は、本明細書に記載のように使用される場合、薬学的に許容され得るキャリアを含む。本明細書に記載の組成物は、抗原に対する免疫応答を刺激するために好適な経路を含む、選択された投与経路に適応する様々な形態で医薬調製物に製剤化されてよい。ゆえに、本明細書に記載の組成物は、公知の経路、例えば、経口;皮内、経皮及び皮下を含む非経口;筋肉内、静脈内、腹腔内等を介して、ならびに局所的に、例えば鼻腔内、肺内、乳房内、膣内、子宮内、皮内、経皮及び経直腸等を介して投与することができる。組成物は、動物の体全体にわたって、分泌型IgA抗体の生成などの粘膜免疫を刺激するために、鼻または呼吸粘膜への(例えば、スプレーまたはエアロゾルを介した)投与などによって、粘膜表面に投与することができることが予測される。
本明細書に記載の組成物は、持続または遅延放出性インプラントを介して投与することもできる。本発明に従う使用に好適なインプラントは公知であり、例えば、Emery and Straub(WO 01/37810(2001))、及びEmery et al.,(WO 96/01620(1996))にて開示されるものを含む。インプラントは、エアロゾルまたはスプレーにより投与するのに十分に小さいサイズで生成することができる。インプラントはナノスフェア及びミクロスフェアを含むこともできる。
本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載のある特定の状態を処置するのに十分な量で投与されてよい。本明細書に記載の組成物中に存在するタンパク質または全細胞の量は変動することができる。例えば、タンパク質の投与量は、0.01マイクログラム(μg)〜300mg、典型的には0.1mg〜10mgであることができる。一実施形態では、タンパク質の投与量は、少なくとも700μg、少なくとも900μg、または少なくとも1,000μgであってよい。一実施形態では、投与量は、1,800μg以下、1,600μg以下、1,400μg以下、または1,200μg以下であってよい。組成物が全細胞調製物であるとき、細胞は、例えば、102細菌/ml、103細菌/ml、104細菌/ml、105細菌/ml、106細菌/ml、107細菌/ml、108細菌/ml、または109細菌/mlの濃度で存在することができる。注射可能な組成物(例えば、皮下、筋肉内等)については、タンパク質は、投与される組成物の総体積が、0.5ml〜5.0ml、典型的には1.0〜2.0mlであるような量で組成物中に存在してよい。組成物が全細胞調製物であるとき、細胞は好ましくは投与される組成物の総体積が、0.5ml〜5.0ml、典型的には1.0〜2.0mlである量で組成物中に存在する。投与される量は、選択される特定のタンパク質、動物の体重、健康状態及び年齢、ならびに投与経路を含むがこれらに限定されない様々な因子に応じて変動してよい。ゆえに、所与の単位剤形中に含まれるタンパク質の絶対重量は、広範に変動することができ、因子、例えば動物の種、年齢、体重、及び健康状態、ならびに投与方法によって依存する。このような因子は、当業者により決定することができる。本発明に好適な投与量の他の例は、Emery et al.,(米国特許第6,027,736号)において開示される。
製剤は、好都合には、単位剤形にて存在してよく、薬学分野において周知の方法により調製されてよい。薬学的に許容され得るキャリアを有する組成物を調製する方法は、活性化合物(例えば、本明細書に記載のタンパク質または全細胞)を、1つまたは複数の副成分を構成するキャリアと会合させる工程を含む。一般的に、製剤は、均一にかつ本質的に、活性化合物を液体キャリア、細かく分割された固体キャリア、またはその両方と会合させ、次いで、必要ならば、生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。
組成物は、アジュバントも含むことができる。「アジュバント」は、非特異的様式で作用して、特定の抗原に対する免疫応答を亢進することができる薬剤を表し、ゆえにアジュバントは、任意の所与の免疫化組成物において必要な抗原の量、及び/または目的の抗原に対する十分な免疫応答を発生させるために必要な注射の頻度を減らす可能性がある。アジュバントは、例えば、IL−1、IL−2、乳化剤、ムラミルジペプチド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)、アブリジン、水酸化アルミニウム、油、サポニン、アルファ−トコフェロール、ポリサッカリド、乳化パラフィン(例えば、商標名EMULSIGENでMVP Laboratories,Ralston,Nebraskaから入手可能なものを含む)、ISA−70、RIBI及び当技術分野で周知の他の物質を含んでよい。本明細書に記載のタンパク質が免疫調節性活性を有し得、このようなタンパク質が、直接的にT細胞及び/もしくはB細胞アクチベーターとして機能する、または様々なサイトカインの合成を増強する特定の細胞型に作用する、または細胞内のシグナル伝達経路を活性化するアジュバントとして使用され得ることが期待される。このようなタンパク質は、免疫応答を増強して現存する組成物の防御指数を増加させることが期待される。
別の実施形態では、薬学的に許容され得るキャリアを含む本明細書に記載の組成物は、生物学的応答修飾因子、例えば、IL−2、IL−4及び/またはIL−6、TNF、IFN−α、IFN−γ、ならびに免疫細胞に影響する他のサイトカインを含むことができる。免疫化組成物は、当技術分野で公知の他の構成成分、例えば、抗生物質、防腐剤、抗酸化剤、またはキレート剤も含むことができる。
作製方法
本発明は、本明細書に記載のタンパク質を得るための方法も提供する。本発明のタンパク質及び全細胞は、Enterobacteriaceae科のメンバーから単離可能であってよい。本発明のタンパク質を得るため及び全細胞調製物を作製するために有用な微生物は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)などの保存機関から市販されている。加えて、そのような微生物は、当技術分野で通常かつ公知の方法により容易に手に入れることができる。微生物は、野外分離株として感染動物に由来してよく、微生物を使用して本発明のタンパク質及び/または全細胞調製物を得てよい、または将来の使用のために、例えば、−20℃〜−95℃、または−40℃〜−50℃の凍結貯蔵所にて、20%グリセロールを含有する細菌学的培地、及び同様の培地中で保管してよい。
本発明のタンパク質を微生物から得るとき、微生物は、低金属条件下でインキュベートすることができる。本明細書で用いるとき、「低金属条件」という語句は、微生物に金属調節タンパク質を検出可能なレベルで発現させる量の遊離金属を含有する、環境、典型的には細菌学的培地を表す。本明細書で用いるとき、「高金属条件」という語句は、微生物に、本明細書に記載の金属調節タンパク質のうちの1つまたは複数を検出可能なレベルで発現させないか、またはそのようなタンパク質を低金属条件下の金属調節タンパク質の発現と比較して低減したレベルで発現させる量の遊離金属を含有する環境を表す。いくつかの場合では、「高金属条件」は、金属が豊富な天然環境及び/または金属が豊富な培地中での金属キレート剤を伴わない培養を含むことができる。対照的に、いくつかの場合では、「低金属条件」は、以下により詳述するような金属キレート剤を含む培地中での培養を含むことができる。金属は、周期表中に存在するものであり、第1〜17群(IUPAC表記;CAS表記下では、それぞれ、群I−A、II−A、III−B、IV−B、V−B、VI−B、VII−B、VIII、I−B、II−B、III−A、IV−A、V−A、VI−A、及びVII−Aとも称される)に存在する。好ましくは、金属は、第2群から12群、より好ましくは、第3〜12群のものである。さらにより好ましくは、金属は、鉄、亜鉛、銅、マグネシウム、ニッケル、コバルト、マンガン、モリブデン、またはセレニウムであり、最も好ましくは、鉄である。
低金属条件は、通常、金属キレート化合物の細菌学的培地への添加、少量の金属を含有する細菌学的培地の使用、またはこれらの組み合わせの結果得られる。高金属条件は、通常、キレート剤が培地中に存在しない、金属を培地に添加する、またはこれらを組み合わせた場合に生じる。金属キレート剤の例は、天然及び合成化合物を含む。天然化合物の例は、植物フェノール化合物、例えばフラボノイドを含む。フラボノイドの例は、銅キレート剤カテキン及びナリンゲニン、ならびに鉄キレート剤ミリセチン及びケルセチンを含む。合成銅キレート剤の例は、例えば、テトラチオモリブデートを含み、合成亜鉛キレート剤の例は、例えば、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)−エチレンジアミンを含む。合成鉄キレート剤の例は、2,2’−ジピリジル(当技術分野でα,α’−ビピリジルとも称される)、8−ヒドロキシキノリン、エチレンジアミン−ジ−O−ヒドロキシフェニル酢酸(EDDHA)、デスフェリオキサミンアミンメタンスルホン酸塩(デスフェロール)、トランスフェリン、ラクトフェリン、オボトランスフェリン、生物学的シデロフォア、例えば、カテコラート及びヒドロキサメート、ならびにクエン酸塩を含む。一般的な二価カチオンキレート剤の例は、CHELEX樹脂である。好ましくは、2,2’−ジピリジルが鉄キレート化のために使用される。典型的には、2,2’−ジピリジルは、微生物の増殖特徴に応じて、少なくとも0.0025マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)、少なくとも0.25μg/ml、少なくとも25μg/ml、少なくとも50μg/mlの濃度、またはより高い量で培地に添加される。
fur遺伝子中に突然変異を有するKlebsiella spp.が、本発明の金属調節タンパク質のすべてではないが多くに構成的発現をもたらすことが期待される。Klebsiella spp.におけるfur突然変異の生成は、通常の方法、例えば、グラム陰性菌における遺伝子ノックアウト突然変異を生じるのに有用なトランスポゾン、化学、または部位特異的突然変異誘発を使用して生成することができる。
微生物をインキュベートするために使用される培地及び微生物をインキュベートするために使用される培地の体積は、変動することができる。本明細書に記載のタンパク質のうちの1つまたは複数を生成する能力に関して微生物を評価するとき、微生物は、適切な体積、例えば10ミリリットル〜1リットルの培地中で増殖させることができる。微生物を、例えば、動物への投与における使用のためのタンパク質を得るために増殖させるとき、微生物は、より大量のタンパク質の単離を可能にするために発酵槽で増殖させてよい。発酵槽において微生物を増殖させるための方法は、当技術分野で通常かつ公知のものである。微生物の増殖のために使用される条件は、好ましくは、金属キレート剤、より好ましくは、鉄キレート剤、例えば、2,2’−ジピリジル、pH6.5〜7.5、好ましくは、6.9〜7.1、及び37℃の温度を含む。
本発明のいくつか態様では、微生物は、増殖後回収されてよい。回収は、微生物をより小さな体積へと濃縮すること、及び増殖培地と異なる培地中に懸濁することを含む。微生物を濃縮するための方法は、当技術分野で通常かつ公知のものであり、例えば、濾過または遠心分離を含む。典型的には、濃縮された微生物は、適切な緩衝液中に懸濁される。使用することができる緩衝液の例は、pH8.5のトリス塩基(7.3グラム/リットル)を含有する。任意選択で、最終緩衝液はまた、タンパク質分解を最小化する。これは、最終緩衝液をpH8.0超、好ましくは、少なくとも8.5とすること、及び/または1つまたは複数のプロテアーゼ阻害剤(例えば、フェニルメタンスルホニルフッ化物)を含むことによって達成することができる。任意選択で、かつ好ましくは、濃縮した微生物を、破砕するまで−20℃以下で凍結させる。
微生物を全細胞調製物として使用する場合、回収した細胞を通常かつ既知の方法を使用して処理して、細胞を不活性化してよい。あるいは、本明細書に記載のタンパク質を調製するために微生物を使用する場合、微生物は、当技術分野で通常かつ公知の化学的、物理的、または機械的方法を使用して粉砕してよく、それには例えば、沸騰、フレンチプレス、超音波処理、(例えば、リゾチームを用いる消化による)ペプチドグリカンの消化、またはホモジナイゼーションが含まれる。ホモジナイゼーションに有用である好適なデバイスの例は、モデルC500−B AVESTINホモジナイザー(Avestin Inc,Ottawa Canada)である。本明細書で用いるとき、「破砕」は、細胞を細かく砕くことを表す。微生物の破砕は、当技術分野で通常かつ公知の方法によって測定することができ、それには例えば、光学濃度の変更が含まれる。典型的には、微生物の1:100希釈物の透過率が破砕の前に40%〜60%であるとき、透過率は、破砕後に80%まで増加する(20%〜40%の増加)。物理的または機械的方法を使用する場合、破砕中の温度は、タンパク質分解をさらに最小化するために、典型的には低く、好適には4℃で維持する。化学的方法を使用する場合、細胞破砕に最適化するために温度を上昇させてよい。また、化学的方法と、物理的方法と、機械的方法との組み合わせを使用して、微生物の細胞壁を可溶化してよい。本明細書で用いるとき、「可溶化する」という用語は、細胞物質(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物)を、微生物が破砕された緩衝液の水相中に溶解すること、及び不溶性細胞物質の凝集物の形成を表す。理論によって制限されることを意図せず、可溶化の条件が、例えば、遠心分離によって容易に単離可能であるほど十分に大きい不溶性凝集物中への本明細書に記載のタンパク質の凝集をもたらすと考えられる。
本発明のタンパク質のうちの1つまたは複数を含む不溶性凝集物は、当技術分野で通常かつ公知の方法によって単離されてよい。一実施形態では、不溶性凝集物は、限外濾過によって単離されてよい。一実施形態では、不溶性凝集物は、遠心分離によって単離されてよい。典型的には、タンパク質、例えば膜タンパク質の遠心分離は、100,000xgの遠心力によって達成することができる。このような遠心力の使用は超遠心機の使用を必要とし、大容量の試料を処理するための大規模化はしばしば困難であり、これらのタイプの遠心分離機では経済的でない。本明細書に記載の方法は、連続フロー遠心分離機、例えば、250ml/分の流速、17psi、46,000xg〜60,000xgの遠心力で使用することができる、T−1 Sharples(Alfa Laval Separations,Warminster,PA)の使用を可能にするのに十分大きい不溶性凝集物の生成を提供する。他の大規模遠心分離機、例えば、チューブ状ボウル型、チャンバー型、及びディスク型構造のものを使用することができる。そのような遠心分離機は、当技術分野で通常使用され、公知であり、Pennwalt、Westfalia及びAlpha Lavalなどの製造業者から市販されている。
最後に回収したタンパク質を、当技術分野で公知の方法を使用して、例えば、ダイアフィルトレーション、沈殿、疎水性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、もしくは親和性クロマトグラフィー、または限外濾過及び例えば、アルコール中でダイアフィルトレーションによりタンパク質を洗浄することにより、適切な緩衝液に対して洗浄かつ/または透析する。単離後、タンパク質を、緩衝液中に懸濁し、低温、例えば−20℃以下で保管する。
全細胞調製物が作製される本発明のこれらの態様では、増殖後、微生物を、グルタルアルデヒド、ホルマリン、またはホルムアルデヒドなどの薬剤を、培養物中の細胞を不活性化させるのに十分な濃度で添加することで死滅させることができる。例えば、ホルマリンは、0.3%の濃度(vol:vol)で添加することができる。細胞を不活性化するのに十分な期間の後、細胞を、例えば、ダイアフィルトレーション及び/または遠心分離により回収し、洗浄することができる。
他の態様では、本発明の単離されたタンパク質は、組換えで調製されてよい。組換えで調製するとき、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを同定し、適切な発現宿主へとクローニングしてよい。組換え発現宿主は、適切な培地において増殖し、破砕されてよく、タンパク質は上記のように単離されてよい。あるいは、組換えタンパク質が封入体を形成するとき、通常の方法を使用して、組換えタンパク質を単離及び精製することができる。例えば、封入体は、発現宿主から抽出することができ、封入体内に存在するタンパク質は上述のように可溶化される。
使用方法
本明細書に記載の組成物を使用する方法も提供する。本方法は、動物に有効量の本明細書に記載の組成物を投与することを含む。動物は、例えば、鳥類(例えば、ニワトリまたは七面鳥を含む)、ウシ科(例えば、ウシを含む)、ヤギ科(例えば、ヤギを含む)、ヒツジ科(例えば、ヒツジを含む)、ブタ科(例えば、ブタを含む)、バイソン科(例えば、バッファローを含む)、ウマ科(例えば、ウマを含む)、伴侶動物(例えば、イヌまたはネコを含む)、シカ科のメンバー(例えば、シカ、エルク、ムース、カリブー及びトナカイを含む)、またはヒトであることができる。
いくつかの態様では、本方法は、動物への組成物の追加の投与(例えば、1つまたは複数のブースター投与)を、二次免疫応答を増強するまたは刺激するためにさらに含んでよい。ブースターは、初回投与後、例えば、組成物の初回投与の1〜8週間、好ましくは、2〜4週間後に投与することができる。後続のブースターは、毎年、1回、2回、3回、4回、またはそれ以上投与することができる。理論によって制限されることを意図せず、本発明のいくつかの態様では、動物は、動物に投与された組成物のタンパク質上に存在するエピトープと同一であるかまたはこれに構造的に関連するエピトープを有する組成物中に存在するタンパク質を発現する微生物への曝露により野外で攻撃されることになるために、毎年のブースターは必要とされないことが予想される。
一態様では、本発明は、例えば、動物における抗体の生成を誘発することにより、または組換え技術により、抗体を作製するための方法を対象とする。生成される抗体は、組成物中に存在する少なくとも1つのタンパク質と特異的に結合する抗体を含む。本発明のこの態様では、「有効量」は、動物における抗体の生成をもたらすのに有効な量である。動物が本発明の組成物中に存在するタンパク質と特異的に結合する抗体を生成しているか否かを決定するための方法は、本明細書に記載のように決定することができる。本発明は、本発明のタンパク質に特異的に結合する抗体、及びそのような抗体を含む組成物をさらに含む。
本方法を使用して、組成物のタンパク質が単離された微生物以外の微生物により発現されるタンパク質と特異的に結合する抗体を生成してよい。本明細書で用いるとき、タンパク質と「特異的に結合する」ことができる抗体は、抗体の合成を誘発した抗原のエピトープと相互作用する、または構造的に関連するエピトープと相互作用する抗体である。本発明の組成物中に存在するタンパク質の少なくともいくつかは、異なる種及び異なる属の微生物のタンパク質内に保存されているエピトープを典型的に含む。したがって、一微生物に由来する組成物を使用して生成された抗体は、他の微生物により発現されたタンパク質に結合し、グラム陰性生物に対する広域スペクトルの防御を提供することを期待される。抗体が特異的に結合し得るグラム陰性微生物の例としては、Vibrionaceae科のメンバー(例えば、Vibrio choleraeを含む)、Campylobacter spp.(例えば、C.jejuniを含む)、Enterobacteriaceae科のメンバー(例えば、Klebsiella spp.、E.coli、Shigella spp.、Salmonella spp.、Proteus spp.、Serratia spp.、及びYersinia spp.を含む)、Pasteurellaceae科のメンバー、好ましくは、Pasturella spp.(例えば、P.multocida及びP.haemolyticaを含む)、ならびにPseudomonadaceae科のメンバー、好ましくは、Pseudomonas spp.、(例えば、Pseudomonas aeruginosaを含む)が挙げられる。Klebsiella spp.の例としては、K.pneumoniae及びK.oxytocaが挙げられる。Salmonella spp.の例としては、Salmonella enterica serovars.、Bredeney、Dublin、Agona、Blockley、Enteriditis、Typhimurium、Hadar、Heidelberg、Montevideo、Muenster、Newport senftenberg、Salmonella cholerasuis、及びS.typhiが挙げられる。E.coliの菌株の例としては、例えば、E.coli血清型O1a、O2a、O78、及びO157、異なるO:H血清型、例えば、0104、0111、026、0113、091、腸内毒素原性E.coliの溶血性菌株、例えばK88+、F4+、F18ab+、及びF18ac+、ならびにE.coliの尿路病原性菌株が挙げられる。それゆえ、本明細書に記載のタンパク質の組成物を使用して生成された抗体を使用して、発生元、源、及び/またはタンパク質獲得の様式に依存せずタンパク質を同定及び特徴決定し得る。
本発明は、本発明のタンパク質または本発明のタンパク質上に存在するエピトープに構造的に関連するエピトープを有するタンパク質を発現する微生物を標的とするためのかかる抗体の使用も対象とする。化合物は、抗体に共有結合することができ、この場合化合物は、例えば、トキシンであることができる。同様に、かかる化合物は、細菌シデロフォアに共有結合して微生物を標的とすることができる。本発明の抗体またはその断片(例えば、Fab断片)の化学的カップリングまたはコンジュゲーションは、公知かつ通常の方法を使用して行うことができる。
一態様では、本発明は、グラム陰性微生物により引き起こされる、ヒトを含む動物における感染症を処置することも対象とする。本明細書で用いるとき、「感染症」という用語は、グラム陰性微生物の動物の体内での存在を表し、これは、臨床的に顕著であってもなくてもよい。感染症を処置することは、予防的であることができる、またはその代わりに、動物が微生物に感染した後に開始することができる。予防的である、例えば、対象が微生物に感染する前に、または任意の感染症が亜臨床的であるうちに開始する処置は、感染症の「リスクがある」対象の処置であると本明細書で表す。本明細書で用いるとき、「リスクがある」という用語は、動物が、記載のリスクを実際に有するまたは有さない可能性があることを表す。ゆえに、典型的には、微生物による感染症の「リスクがある」動物は、微生物による感染症の任意の検出可能な兆候がまだ顕在化していなくても、微生物に感染したと特定されている領域に存在する、かつ/または微生物に曝露する可能性が高い動物であり、これは動物が亜臨床的量の微生物を有している可能性の有無にかかわらない。したがって、組成物の投与は、動物が最初に微生物と接触する前、最中、または後に行うことができる。動物が微生物と最初に接触した後に開始される処置は、微生物による感染症の症状の重症度及び/または臨床的徴候を低減させること、微生物を完全に除去すること、及び/または組成物が投与されていない動物と比較して臨床的に明らかな感染症を経験する可能性を低減させることをもたらし得る。本方法は、有効量の本発明の組成物を、グラム陰性微生物により引き起こされる感染症を有するまたは有するリスクがある動物に投与すること、及び感染症を引き起こす微生物の数が低減しているか否かを決定することを含む。グラム陰性微生物は、例えば、Vibrionaceae科のメンバー(例えば、Vibrio choleraeを含む)、Campylobacter spp.(例えば、C.jejuniを含む)、Enterobacteriaceae科のメンバー(例えば、Klebsiella spp.、E.coli、Shigella spp.、Salmonella spp.、Proteus spp.、Serratia spp.、Yersinia spp.、Enterobacter spp.及びCitrobacter spp.を含む)、Pasteurellaceae科のメンバー、好ましくは、Pasturella spp.(例えば、P.multocida及びP.haemolyticaを含む)、またはPseudomonadaceae科のメンバーであってよい。一実施形態では、動物は、K.pneumoniaeまたはK.oxytocaにより引き起こされる感染症を有するまたは有するリスクがある。本発明のこの態様では、「有効量」は、組成物を投与していない動物と比較して、動物内の特定の微生物の数を減少させる、または動物が臨床的に明らかな感染症を経験する可能性を減少させるのに有効な量である。感染症がグラム陰性微生物、例えば、K.pneumoniaeまたはK.oxytocaにより引き起こされているか否かを決定するための方法は、感染症が低減しているか否かを決定するための方法と同様、当技術分野で通常かつ公知のものである。
別の態様では、本発明は、グラム陰性微生物による感染症により引き起こされ得る動物におけるある特定の状態の1つまたは複数の症状または臨床的兆候を処置するための方法を対象とする。本方法は、有効量の本発明の組成物を、状態を有するもしくは有するリスクがある、または状態の症状及び/もしくは臨床的兆候を呈している動物に投与すること、ならびに状態の少なくとも1つの症状及び/または臨床的兆候が変化した、好ましくは減少したか否かを決定することを含む。グラム陰性微生物は、例えば、Vibrionaceae科のメンバー(例えば、Vibrio choleraeを含む)、Campylobacter spp.(例えば、C.jejuniを含む)、Enterobacteriaceae科のメンバー(例えば、Klebsiella spp.、E.coli、Shigella spp.、Salmonella spp.、Proteus spp.、Serratia spp.、及びYersinia spp.を含む)、Pasteurellaceae科のメンバー、好ましくは、Pasturella spp.(例えば、P.multocida及びP.haemolyticaを含む)、またはPseudomonadaceae科のメンバーであってよい。一実施形態では、動物は、K.pneumoniaeまたはK.oxytocaにより引き起こされる状態を有する。一実施形態では、動物は、尿路病原性E.coliにより引き起こされる状態を有する。グラム陰性微生物感染により引き起こされる症状及び/または臨床的兆候の例は、当業者に公知である。
グラム陰性感染により引き起こされる状態に関連する症状及び/または臨床的兆候の処置は、予防的であることができる、またはさもなければ、本明細書に記載の状態の発症後に開始することができる。本明細書で用いるとき、「症状」という用語は、患者により経験される及び微生物による感染症により引き起こされる疾患または状態の主観的エビデンスを表す。本明細書で用いるとき、「臨床的兆候」または、簡潔に、「兆候」という用語は、微生物による感染症により引き起こされる疾患または状態の客観的エビデンスを表す。本明細書で言及する状態に関連する症状及び/または臨床的兆候ならびにそのような症状の評価は、当技術分野で通常かつ公知である。予防的である、例えば、対象で微生物により引き起こされる状態の症状または兆候が顕在化する前に開始される処置は、状態を発症する「リスクがある」対象の処置と本明細書で称する。ゆえに、典型的には、状態を発症する「リスクがある」動物は、微生物により引き起こされる任意の状態の症状または兆候がまだ顕在化していなくても、状態を有する動物が診断されている領域に存在する、かつ/または状態を引き起こす微生物に曝露する可能性が高い動物である。したがって、組成物の投与は、本明細書に記載の状態の発症の前、最中、または後に行うことができる。状態の発症後に開始された処置は、状態のうちの1つの症状もしくは兆候の重症度の低減、または症状もしくは兆候の完全な除去をもたらし得る。本発明のこの態様では、「有効量」は、疾患の症状もしくは兆候の顕在化を予防する、疾患の症状もしくは兆候の重症度を低減させる、かつ/または症状もしくは兆候を完全に除去するのに有効な量である。動物におけるグラム陰性微生物感染症の成功処置例を、実施例11〜19に開示しており、これは、本明細書に記載の組成物を投与することによるマウスモデルにおけるK.pneumoniaeにより引き起こされた疾患に対する防御を実証している。このマウスモデルは、K.pneumoniaeにより引き起こされる疾患の研究用に一般的に認可されているモデルである。
一実施形態では、状態は、ウシなどの産乳動物における乳房炎である。本方法は、有効量の本明細書に記載の組成物を、乳房炎を有するまたは有するリスクがある産乳動物に投与すること、及び乳房炎の少なくとも1つの症状または兆候が減少したか否かを決定することを含む。乳房炎は、乳腺の炎症を表す。これは、乳汁における物理的、化学的及び通常細菌学的変化ならびに腺組織における病理学的変化を特徴とする。これらの腺の変化はしばしば、いくつかの症候性状態、例えば、乳汁の変色、凝塊の存在、及び多数の白血球の存在をもたらす。臨床的に、乳房炎は、しばしば乳房の変形をもたらす乳腺における膨張、発熱、疼痛及び硬結として見られる。多くの場合、亜臨床的な感染症の診断は、乳汁の白血球含量または体細胞数(SCC)に依存する間接的検査に大きく依存するようになっている。乳房に感染する最も一般的な生物は、大腸菌群、例えば、K.pneumoniae、K.oxytoca、E.coli、Enterobacter spp.、Serratia spp.、Proteus spp.、及びCitrobacter sppである。比較的頻度は低いが乳房炎を引き起こす他の生物には、Pseudomonas spp.、Brucella spp.、Corynebacterium spp.、Mycoplasma spp.、及びPasteurella spp.が含まれる。
別の実施形態では、状態は、ウシなどの動物の乳汁における高体細胞数(SSC)である。本方法は、有効量の本明細書に記載の組成物を、高体細胞数を有するまたは有するリスクがある産乳動物に投与すること、及び動物から得た乳汁中の体細胞数が組成物を受ける前の動物から得た乳汁と比較して体細胞数が低下しているか否かを決定することを含む。別の実施形態では、動物の乳汁中の体細胞数を低下させるための方法を本明細書に提供する。体細胞は、動物の白血球を含み、典型的には通常の乳汁において低レベルで存在する。乳汁中の高レベルの体細胞は、例えば、乳汁1ミリリットル当たり200,000を超える細胞である。乳汁中の高レベルの体細胞は、感染症(乳房炎)の指標であってよいが、感染症と関係がない可能性もある。SCCは、典型的には、乳製品工場により、当技術分野で通常の方法を使用してモニターされる。SCCは、750,000細胞/ml未満、400,000細胞/ml未満、または200,000細胞/ml未満まで減少する。
別の実施形態では、状態は、ウシなどの産乳動物による低産乳量を処置することである。本方法は、有効量の本発明の組成物を、低産乳量を有するまたは有するリスクがある産乳動物に投与すること、及び動物による産乳量が組成物を受ける前の動物による産乳量と比較して増加したか否かを決定することを含む。別の実施形態は、ウシなどの産乳動物における産乳量を増加させるための方法を対象とする。本方法は、本明細書に記載の組成物を産乳動物に投与すること、及び動物による産乳量が組成物を受ける前の動物による産乳量と比較して増加したか否かを決定することを含む。本明細書に記載の組成物の投与後の産乳動物による産乳量は、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、または少なくとも3%増加する。ウシによる産乳量は、組成物の投与の前及び投与の2週間、8週間、または16週間後に決定することができる。
本発明はまた、グラム陰性微生物によるコロニー形成を低減させるための方法、例えば、グラム陰性微生物の付着部位、例えば、骨格系(例えば、骨、軟骨、腱及び靭帯)、筋系(例えば、骨格筋及び平滑筋)、循環系(例えば、心臓、血管、毛細血管及び血液)、神経系(例えば、脳、脊髄、及び末梢神経)、呼吸系(例えば、鼻、気管肺、気管支、細気管支、肺胞)、消化系(例えば、口、唾液腺、食道、肝臓、胃、大腸及び小腸)、排泄系(例えば、腎臓、尿管、膀胱及び尿道)、内分泌系(例えば、視床下部、下垂体、甲状腺、膵臓及び副腎)、生殖系(例えば、卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、精巣、及び精嚢)、リンパ/免疫系(例えば、リンパ液、リンパ節及び管、単核または白血球、例えばマクロファージ、好中球、単球、好酸球、好塩基球、及びリンパ球、例えばT細胞及びB細胞等)、及び特定の細胞系(例えば、前駆細胞、上皮細胞、幹細胞)等の組織をブロックすることも提供する。一実施形態では、グラム陰性微生物は、K.pneumoniaeまたはK.oxytocaである。
動物においてコロニー形成を低減させることは、予防的に行われてよい、またはその代わりに動物が微生物によりコロニー形成された後に開始することができる。予防的な、例えば、対象が微生物によりコロニー形成される前に、またはいずれのコロニー形成もまだ検出されない間に開始される処置は、微生物によるコロニー形成の「リスクがある」対象の処置と本明細書中で称する。ゆえに、典型的には、微生物によるコロニー形成の「リスクがある」動物は、まだ微生物によるコロニー形成の任意の検出可能な兆候がまだ顕在化していなくても、微生物によりコロニー形成されたと特定されている領域に存在する、かつ/または微生物に曝露する可能性が高い動物であり、これは動物が微生物のサブコロニー形成数を保有している可能性の有無にかかわらない。したがって、組成物の投与は、動物が微生物と最初に接触する前、最中、または後で行うことができる。動物が微生物と最初に接触した後に開始される処置は、微生物によるコロニー形成の程度を低減させること、微生物を完全に除去すること、及び/または組成物が投与されていない動物と比較して動物が微生物によりコロニー形成される可能性を低減させることをもたらし得る。ゆえに、本方法は、有効量の本発明の組成物を、グラム陰性微生物によりコロニー形成されたまたはコロニー形成されるリスクがある動物に投与することを含む。本発明のこの態様では、「有効量」は、微生物による動物のコロニー形成を低減させるために十分な量であり、この場合、コロニー形成を低減させることは、微生物によるコロニー形成の程度を低減させること、微生物を完全に除去すること、及び/または組成物が投与されていない動物と比較して動物が微生物によりコロニー形成される可能性を低減させることのうちの1つまたは複数を表す。微生物による動物のコロニー形成を評価するための方法は、当技術分野で通常かつ公知である。例えば、微生物による動物の腸管のコロニー形成は、動物の糞便中の微生物の存在を測定することによって決定することができる。微生物による動物のコロニー形成を低減させることにより、同じまたは異なる種の他の動物への微生物の伝搬が減少することが期待される。
本発明の組成物を使用して、細菌感染症に対する能動または受動免疫を提供することができる。通常、組成物は、能動免疫を提供するために動物に投与されることができる。しかしながら、組成物を使用して、生成している動物から回収し受動免疫を提供するために他の動物に投与することができる、抗体などの免疫生成物の生成を誘発することもできる。免疫成分、例えば抗体を回収して、組成物(好ましくは、抗体を含有する)を、血清、血漿、血液、初乳等から受動免疫療法のために調製することができる。モノクローナル抗体及び/または抗イディオタイプを含む抗体組成物も、公知の方法を使用して調製することができる。キメラ抗体は、重鎖及び軽鎖両方のヒト由来の定常領域ならびに抗原特異的であるマウス由来の可変領域を含む(Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1984,81(21):6851−5;LoBuglio et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86(11):4220−4;Boulianne et al.,Nature,1984,312(5995):643−6.)。ヒト化抗体は、マウス定常及びフレームワーク(FR)(可変領域のもの)を、ヒト対応物と置換する(Jones et al.,Nature,1986,321(6069):522−5;Riechmann et al.,Nature,1988,332(6162):323−7;Verhoeyen et al.,Science,1988,239(4847):1534−6;Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86(24):10029−33;Daugherty et al.,Nucleic Acids Res.,1991,19(9):2471−6.)。あるいは、ヒトモノクローナル抗体の生成のために、ほぼ完全にヒト起源のものである抗体を生成するように遺伝子操作されているある特定のマウス菌株を使用することができ;免疫化の後、これらのマウスのB細胞を回収し、不死化する(Bruggeman and Taussig,Curr.Opin.Biotechnol.,1997,8(4):455−8;Lonberg and Huszar,Int.Rev.Immunol.,1995;13(1):65−93;Lonberg et al.,Nature,1994,368:856−9;Taylor et al.,Nucleic Acids Res.,1992,20:6287−95.)。受動抗体組成物及びその断片、例えば、scFv、Fab、F(ab’)2もしくはFvまたはそれらの他の修飾形態は、血清、血漿、血液、初乳等の形態でレシピエントに投与されてよい。しかしながら、抗体は、血清、血漿、血液、初乳等から、周知の方法を使用して、濃縮または再構成形態、例えば、洗浄液、薬剤含浸包帯(impregnated dressing)及び/または局所剤等における後の使用のために単離されてよい。受動免疫調製物は、急性全身性疾病の処置、または母親の初乳を介して十分なレベルの受動免疫を受けることができなかった若齢の動物の受動免疫化に特に有益であり得る。受動免疫化に有用な抗体は、全身性または局所的感染症中に、本発明のタンパク質または本発明のタンパク質上に存在するエピトープと構造的に関連するエピトープを有するタンパク質を発現する細菌を直接標的とすることができる様々な薬物または抗生物質にコンジュゲートすることにも有用であり得る。
動物モデル、特にマウスモデルは、本発明の組成物を実験的に評価するために利用可能である。これらのマウスモデル(例えば、Meno and Amako,1991,Microbiol.Immuniol.,35(10):841−848;Vered et al.,2014,BMC Genomics,15:865;Kurupati et al.,Clinical Vaccine Immunol.,18(1):82−88;Lundberg et al.,2013,Human Vaccines Immunotherapeutics,9(3):497−505;及びToky et al.,2003,Folia Microbiol(Praha),48(5):665−669)は、Klebsiella属のメンバー、特にK.pneumoniaeにより引き起こされる疾患の研究のために一般に認可されているモデルである。Klebsiella属のメンバーが動物、例えばウシにおいて疾患を引き起こす場合、天然の宿主を使用して、本明細書に記載の組成物を実験的に評価することができる。
しかしながら、マウスモデルにおける防御は、組成物がKlebsiella sppによる感染症に対して動物に防御を与えることができるか否かを評価するための唯一の方法ではない。適応免疫応答は、2つの主な分類からなる:体液性(抗体)応答及び細胞性(T細胞)応答。細菌性病原体による感染後、感染部位の樹状細胞は、微生物抗原と遭遇し、シグナル伝達分子、例えば、表面受容体及びサイトカインを特定の細菌に関して保存された分子パターンに応答して生成する。これらのシグナルは、病原体の性質によって成形され、理想的には宿主を疾患から防御する適切な抗体及びT細胞応答をもたらす。一部の細菌性疾患が主に抗体機能により制御される一方で、他のものは防御のためにT細胞応答または抗体及びT細胞応答の両方を必要とする。ワクチンの生物学的な目的は、防御を提供する免疫応答を同定し、そしてヒトにおいてこれらの応答のうちの1つまたは複数を再現するためのワクチンを設計することである。
抗体は、感染症に対する防御の付与において多くの異なる機能、例えば、補体固定、オプソニン作用、中和、及び/または凝集機能を有することができる。さらには、抗体の一部のサブクラスは、特定の機能において他のものより良好であり;例えば、補体固定に関しては、ヒトIgGサブクラスについて次の順位が存在する:IgG3>IgG1>IgG2>IgG4)。
抗体免疫学的機能は種々の方法で研究することができる。例えば、ウェスタンブロット法は、分離タンパク質のサイズに基づく抗原特異的結合を同定するために使用し、一方で標準的な酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)は、血清内の抗体価についての定量的情報を生じるために使用される。抗体表面結合試験は、血清中の抗体がインタクト細菌の表面上の抗原を認識できるか否かを決定するために使用され、これは抗体がin vivoで作用する潜在能力を有するか否かの重要な指標である。ゆえに、当業者は、抗体結合アッセイ、例えば、ウェスタンブロット法、ELISA(例えば、ヒト抗血清を使用する)、及び/または表面結合は、微生物感染症に対する免疫学的活性を提供する特異的に結合される抗原と正の相関があると認識する。しかしながら、当業者は、例えば、ウェスタンブロット法、ELISA、または表面結合アッセイなどのアッセイにおける抗体結合の欠如が、アッセイされた抗原が微生物感染症に対して免疫学的活性を提供し損ねることを意味しないことをさらに認識している。
抗体は、栄養(例えば、鉄)の獲得を遮断することまたは浸透圧溶解をもたらす補体媒介性膜穿孔処理を開始することによって細菌死を媒介することができる。殺菌性抗体を、血清を生存培養物と混合し、当業者に公知の適切な条件下で生存可能な細菌の存在について測定することによりアッセイすることができる。細菌の死滅レベルを決定するための抗体及び補体結合細菌がヒトまたはマウス貪食細胞に結合されるオプソニン化貪食作用アッセイ(OPA)などの技術は、抗体機能を研究するために有用である。同様の酸化バーストアッセイは、抗体及び補体結合細菌との相互作用後に新しいヒトまたはマウス好中球による活性酸素種(ROS)のレベルを評価するために使用することができる。
いくつかの場合では、候補タンパク質が細胞媒介性免疫学的活性を有し、それゆえ、候補タンパク質が、抗体生成誘発の不在下で、免疫学的活性を呈し得ることを決定することができる。細胞傷害性またはCD8 T細胞が、直接様々なエフェクター機構を介して感染した細胞を主に死滅させる一方、ヘルパーCD4 T細胞はサイトカインに関する重要なシグナル伝達を提供するように機能する。これらのT細胞クラスは、それらが生成するサイトカインに基づいてさらに細分化することができ、異なるサブクラスは異なる細菌病原体に対して有効である。T細胞は、これらの表現型をフローサイトメトリーで評価することによって試験されることが多く、この場合、抗体は、T細胞を、例えば、活性化されたばかりのCD4+T細胞、メモリーCD8+T細胞等としての分類を可能にする特定の表面マーカーのレベルを可視化するために使用される。加えて、サイトカイン及びT細胞の他の生成物は、リンパ組織からT細胞を単離しこれらを同族抗原で再刺激することによって試験することができる。抗原刺激の後に、T細胞は、例えば、フローサイトメトリーでカップリングされる細胞内サイトカイン染色、または細胞上清の回収、及び15〜25個のサイトカインを同時に測定するためのLuminexビーズ技術の使用によって可視化され得るサイトカインを生成する。
ゆえに、マウスモデルに加えて、当業者は、本明細書に記載の方法に相応する免疫学的活性は、以下:微生物病原体に曝露された動物からの血清が、候補タンパク質に特異的に結合する抗体を含有することを示すウェスタンブロットデータ、候補タンパク質に特異的に結合する抗体が、微生物病原体に特異的に結合することを示す細胞表面結合アッセイ、オプソニン化貪食作用データ、及びサイトカイン誘導のうちのいずれか1つまたは複数と相関し得ると認識する。
本発明の別の態様は、本明細書に記載のタンパク質と特異的に結合する抗体を検出するための方法を提供する。これらの方法は、例えば、動物が、本明細書に記載のタンパク質と特異的に結合する抗体を有するか否かを検出すること、及び本明細書に記載のタンパク質を発現する、または本明細書に記載のタンパク質とエピトープを共有するタンパク質を発現する微生物により引き起こされる状態を有し得るか否かを診断することにおいて有用である。このような診断システムはキットの形態をとってよい。本方法は、抗体を本明細書に記載のタンパク質を含む調製物と接触させて混合物を得ることを含む。抗体は、生体試料、例えば、血液、乳汁、または初乳中に存在し得る。本方法は、タンパク質:抗体複合体を形成するために、抗体がタンパク質と特異的に結合することを可能にする条件下で混合物をインキュベートすることをさらに含む。本明細書で用いるとき、「タンパク質:抗体複合体」という用語は、抗体がタンパク質に特異的に結合するときに結果として生じる複合体を表す。本明細書に記載のタンパク質を含む調製物は、タンパク質:抗体複合体の形成に適切な条件を提供する試薬、例えば緩衝液も含んでよい。タンパク質:抗体複合体は、その後検出される。抗体の検出は、当技術分野で公知であり、例えば、免疫蛍光またはペルオキシダーゼを含むことができる。本明細書に記載のタンパク質に特異的に結合する抗体の存在を検出するための方法は、抗体を検出するために使用されている様々な形式、例えばラジオイムノアッセイ及び酵素結合免疫吸着アッセイにおいて使用することができる。
キット
本発明は、本明細書に記載のタンパク質と特異的に結合する抗体を検出するためのキットも提供する。検出される抗体は、K.pneumoniaeまたはK.oxytocaなどのグラム陰性微生物により引き起こされる感染症を有すると疑われる動物から得てよい。別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載のタンパク質を検出するためのキットを提供する。
キットは、本明細書に記載のタンパク質のうちの少なくとも1つ(例えば、1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ等)、または本明細書に記載の抗体を、好適なパッケージング材料内に、少なくとも1つのアッセイに十分な量で含む。任意選択で、他の試薬、例えば、本発明を実施するために必要な緩衝液及び溶液も含まれる。例えば、キットは、本明細書に記載のタンパク質に特異的に結合する抗体の検出を可能にするための試薬、例えば、動物から得られた抗体に特異的に結合するように設計された検出可能に標識された二次抗体も含んでよい。パッケージングしたタンパク質の使用のための説明書も典型的に含まれる。本明細書で用いるとき、「パッケージング材料」という語句は、キットの内容物を収容するために使用される1つまたは複数の物理的構造を表す。パッケージング材料は、通常、無菌の混入物を含まない環境を提供するために周知の方法により構築される。パッケージング材料は、タンパク質を、本発明のタンパク質と特異的に結合する抗体を検出するために使用することができることを示すラベルを有してよい。加えて、パッケージング材料は、キット内の材料が抗体を検出するためにどのように使用されるかを示す説明書を含有する。本明細書で用いるとき、「パッケージ」という用語は、一定の限度内でタンパク質、及び他の試薬、例えば二次抗体を保持することができる、容器、例えばガラス、プラスティック、紙、ホイル等を表す。ゆえに、例えば、パッケージは、マイクログラム量のタンパク質が添付されているマイクロタイタープレートウェルであることができる。パッケージは、二次抗体も含有することができる。「使用説明書」は、典型的には試薬濃度または少なくとも1つのアッセイ方法パラメータ、例えば混合される試薬及び試料の相対量、試薬/試料混合物の維持時間、温度、緩衝液条件等を説明する具体的な表現を含む。
本発明は、以下の実施例によって説明される。本明細書中に記載の本発明の範囲及び趣旨に従って、具体的な例、材料、量、及び手順は、広義に解釈するべきであることを理解されたい。
実施例1
Klebsiella pneumonia、Klebsiella oxytoca及びEnterobacterの臨床分離株の単離
Klebsiella pneumonia、Klebsiella oxytoca及びEnterobacterの分離株を、担当獣医が診断して大腸菌性乳房炎の臨床的兆候(すなわち異常な乳汁;水様粘性、凝塊、血液、乳腺炎、膿の存在、乳房の膨張及び乳汁試料の細菌培養物の同定)を示す商業的な酪農牛群のウシの感染乳房から単離した。Klebsiella pneumonia、Klebsiella oxytoca及びEnterobacterのマスターシードストックを、分離株のそれぞれを、30マイクログラム/ミリリットル(μg/ml)の2,2−ジピリジル(Sigma−Aldrich St.Louis,MO)を含有する5000mlのトリプチックソイブロス(Difco Laboratories,Detroit,MI)へと接種することにより調製した。培養物を、200rpmで6時間、37℃にて攪拌しながら増殖させた。細菌を、10,000xgにて遠心分離により回収した。各分離株からの細菌ペレットを、20%グリセロールを含有する500mlトリプチックソイブロスへと再懸濁し、2ml低温貯蔵用バイアル(1ml/バイアル)へと無菌的に分注して、−90℃で保管した。各分離株には、マスターシードとしてそれを示す識別番号を与えた。例えば;17のKlebsiella pneumonia分離株を同定し、1101、1437、1438、1439、1440、1563、1565、1566、1567、1569、1570、1571、1572、1573、1574、1575、及び1576と指定した。Klebsiella oxytocaは、1564と指定し、Enterobacterは、1568と指定した。Klebsiella pneumoniaeのウシマスターシード番号は1571、Klebsiella oxytocaのウシマスターシード番号は1564、Enterobacterのウシマスターシード番号は1568と指定した。Klebsiella pneumoniaeのヒト分離株のマスターシード番号を準備し、LM21と指定した(本明細書では1748とも称する)。基準菌株として使用するヒトUTI E.coli分離株はCFT073と指定した。各分離株のマスターシードを増殖させて、ワーキングシードとし、これを次いで、金属調節タンパク質の生成のために使用した。小実験室規模プロセスを開発して、複数のKlebsiella分離株の初期金属調節タンパク質発現を検査した一方で、大規模生成プロセスを開発し、これは、発酵、細菌回収、破砕、可溶化、濃縮、ダイアフィルトレーション、及び最終ワクチン抗原の単離を含む。金属調節タンパク質発現のための小規模及び大規模化プロセスは両方とも、一次元SDS−PAGEにより検査したとき、同一のタンパク質プロファイルを生成した。
実施例2
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるKlebsiella oxytocaからのKlebsiella pneumoniaeの同定及び分化。
疾患の臨床的兆候を呈しているヒト及びウシの両種からのKlebsiella oxytoca 1564分離株からKlebsiella pneumoniae 1571を分化させるために、マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を、Chander et al.(2011,Intern J Appl Res Vet Med.9:138−142)により記載されている種特異的プライマーを用いて使用した。アガロースゲル上のバンドの位置は、Klebsiella pneumoniae 1571では108bp、及びK.oxytoca 1564では343bpであり、菌株同一性を確認した(図1)。
プライマー及びPCR増幅:実施例1のワーキングシードを、血液寒天上に2通りでプレーティングした。プレートを、35〜40℃で18〜24時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを目視検査し、純粋であると決定した。2通りの純粋培養プレートのうちの1つからの単一の良好に単離されたコロニーを、100μL滅菌水に懸濁した。懸濁液を、10分間沸騰させて、細胞を溶解し、室温にて冷却させた。次いで、懸濁液を、2分間13,000rpmにてテーブルトップ微量遠心機にて遠心分離した。DNA鋳型を含有する上清を、新しい、滅菌微量遠心機管へと移し、使用まで−20℃で保管した。
種特異的プライマーを、単一反応混合物中でK.pneumoniae及びK.oxytocaの増幅のために使用した(表2)。K.oxytoca及びK.pneumoniaeの陽性対照が、アッセイに含まれた。Escherichia coliのプライマー無し陰性対照も含まれた。PCR反応は、QiagenマルチプレックスPCRキットを製造業者の使用説明に従って使用して設定した。反応混合物は:各プライマー(フォワード及びリバース)の25μL 2x QiagenマルチプレックスPCRマスターミックス;5μL 10xプライマーミックス;15μL RNase不含水;5μL粗DNA鋳型;及び50μL総体積からなる。PCRのための反応条件は以下の通りとした:初期変性を95℃にて15分間;30サイクルの変性を94℃で30秒間;アニーリングを55℃で1.5分間;及び伸長を72℃で1.5分間。
PCR生成物を、0.5xトリス/ホウ酸/EDTA(TBE)中1%アガロースゲル(臭化エチジウムで予め染色)上での電気泳動及びUV透過照明法により可視化した。100bpのDNAラダーを分子量マーカーとして使用した(図1)。
実施例3
金属イオン制限の条件下で増殖させた複数の分離株の金属調節タンパク質発現をスクリーニングするためのプロセス
金属調節タンパク質のスクリーニングならびに以下の実施例で使用された免疫化組成物を、疾患の臨床的兆候を有するウシ種から得たKlebsiella pneumoniae由来のタンパク質を使用して調製した。
K.pneumoniaeの複数の野外分離株、1563、1565、1566、1567、1569、1570、1571、1572、1573、1574、1575、及び1576ならびにK.oxytocaの単一分離株1564及びEnterobacterの単一分離株1568を、乳房炎の臨床的兆候を示す複数の酪農牛群から回収した。K.pneumoniaeのヒト分離株LM21も、金属調節タンパク質についてスクリーニングした。各分離株を、鉄制限の条件下で増殖させ、鉄制限下で発現されたタンパク質の外膜プロファイルをSDS−PAGEにより検査した(図2)。簡潔には、検査されるそれぞれの分離株を、300μM 2,2−ジピリジルを含有するTSBへと接種し、37℃でインキュベートした。12時間にわたるインキュベーションの後、培養物を500mlの鉄限定培地へと継代培養(1:100)し、37℃でインキュベートした。8時間後、各培養物を、10,000xgで20分間遠心分離し、40mlの浸透圧衝撃緩衝液(7.3g/lトリス塩基;1.86g/l EDTA、pH8.9へと再懸濁し、超音波処理により破砕して、懸濁液を得た。懸濁剤を、32,000xgで12分間遠心分離して、清澄化した、つまり大きな細胞残屑を除去した。上清を回収し、4℃にて24時間、4%ラウロイルサルコシンナトリウムの添加により可溶化した。洗浄剤−不溶性外膜タンパク質−富化画分を32,000xgで2.5時間にわたる4℃での遠心分離により回収した。タンパク質ペレットを、200μlトリス−緩衝液(pH7.2)に再懸濁した。
各分離株に由来するタンパク質富化抽出物を、4%スタッキングゲル及び10%分離ゲルを使用してSDS−PAGEゲル上でサイズ分画した。電気泳動のための試料を、10μlの試料と30μlのSDS還元試料緩衝液(62.5mMトリス−HCL pH6.8、20%グリセロール、2%SDS、5%β−メルカプトエタノール)を配合することにより調製し、4分間沸騰させた。試料を、18mA定電流で5時間にわたり4℃にて、Protein II xiセルパワーサプライ(BioRad Laboratories,Richmond,CA,モデル1000/500)を使用して電気泳動した。ウシ及びヒト起源のK.pneumonia、K.oxytocaEnterobacterの複数の分離株に由来するタンパク質を比較する電気泳動プロファイルを図2に示す。
タンパク質富化抽出物のSDS−PAGEパターンは、検査したすべての分離株の中で高度の保存性を示し、金属調節タンパク質に関する分子量の範囲は、97kDa〜66kDaであり、非金属調節タンパク質、例えば、ポーリンに関する範囲は、35kDa〜33kDa(表1)であった。電気泳動プロファイルを、Phoretix 1D Proゲルソフトウェア(Total Lab;United Kingdom)を使用して分析して、各菌株間のバンドパターン及び分子量較正を評価した。
実施例4
一次元SDS−PAGEによる鉄過剰及び鉄欠乏下での金属調節タンパク質の分析
Klebsiella pneumoniae 1571の金属調節タンパク質の上方制御のより良好な展望を得るために、分離株を、鉄過剰及び鉄欠乏培地条件にて増殖させた。簡潔には、生物を、2つの別々の500mlボトルへと継代培養することにより予め調製しておいた凍結マスターシードストックから増殖させた。一方のボトルは、300μM 2,2−ジピリジル(Sigma−Aldrich St.Louis,MO)を含有する200mlの滅菌TSBを含有し、第二のボトルは、200μM塩化第二鉄(Sigma−Aldrich St.Louis,MO)を含有する200mlのトリプチックソイブロスを含有した。培養物を、37℃にて200rpmで継続的に撹拌しながら12時間インキュベートした。12時間のインキュベーション期間の後、培養物を、500mの鉄過剰及び/または鉄欠乏培地のいずれかへと継代培養(1:100)し、37℃にて8時間インキュベートした。8時間後、各培養物を、10,000xgで20分間遠心分離し、40mlの浸透圧衝撃緩衝液(7.3g/lトリス塩基;1.86g/l EDTA)、pH8.9に再懸濁した。懸濁液を、32,000xgで12分間遠心分離して、清澄化した、つまり大きな細胞残屑を除去した。上清を回収し、4℃にて24時間にわたる4%ラウロイルサルコシンナトリウムの添加により可溶化した。洗浄剤−不溶性外膜タンパク質富化画分を、32,000xgで2.5時間にわたる4℃での遠心分離により回収した。タンパク質ペレットを、200μlトリス−緩衝液(pH7.2)へと再懸濁した。
各分離株に由来するタンパク質富化抽出物を、4%スタッキングゲル及び10%分離ゲルを使用してSDS−PAGEゲル上でサイズ分画した。電気泳動のための試料を、10μlの試料と30μlのSDS還元試料緩衝液(62.5mMトリス−HCL pH6.8、20%グリセロール、2%SDS、5%β−メルカプトエタノール)を配合することにより調製し、4分間沸騰させた。試料を、18mA定電流で5時間にわたり4℃にて、Protein II xiセルパワーサプライ(BioRad Laboratories,Richmond,CA,モデル1000/500)を使用して電気泳動した。鉄過剰及び鉄欠乏増殖条件下で増殖させた、K.pneumoniaに由来するタンパク質プロファイルを比較する電気泳動プロファイルを図3に示す。
実施例5
金属調節タンパク質の大規模製造プロセス
発酵
低温貯蔵用バイアルのワーキングシード(109CFU/mlにて1ml)を使用して、34マイクログラム/リットルの2,2−ジピリジル(Sigma)、2.5グラム/リットルの酵母抽出物(Bacto)及びグリセロール(3%vol/vol)を含有するデキストロース(Bacto)を含まない500mlの37℃トリプチックソイブロス(TSB)に接種した。培養物を、160rpmで攪拌しながら37℃にて16時間インキュベートし、次いで、上記培地を2つの1.5Lボトルに分けた。この二次培養物をさらに2.5時間、37℃にて増殖させた。この培養物を使用して、Mazu DF204消泡剤(150ml)を添加した300リットルの上述の培地を充填した400L DCI−Biolafitte SIP発酵槽(DCI,St.Cloud,MN)に接種した。発酵のパラメータは以下の通りとした:17〜120リットルのエアー/分、0〜60リットルのエアー/分及び5ポンド/平方インチ(psi)の背圧で分散させ、500回転/分まで撹拌を増加することによって、60%+/−20%に溶存酸素(DO)を維持した。50%NaOH及び25%H3PO4で自動滴定することによってpHを6.9〜7.2に一定に保持した。温度は37℃に維持した。発酵を、5.5時間にわたって継続して増殖させ、その時点で、発酵槽の温度を15℃まで下げ、25%H3PO4でpHを5.0まで下げることによって発酵を終了させた(1:20希釈にて540ナノメートルで光学密度15)。培養物を、回収に備えて200リットルのタンク(LEE Process Systems and Equipmentモデル2000LDBT)へと無菌で移した。
回収
細菌発酵物を、Waukeshaモデル130 U2供給ポンプ(Waukesha Cherry−Burrell,Delevan,WI)に接続された、4つの30ft2アルファ0.1umオープンチャネルフィルター(Pall Filtron,カタログ番号PSM10C52)を備えたPall Filtron Tangential Flow Maxisette−25(Pall Filtron Corporation,Northboro,MA)を使用して濃縮及び洗浄した。300リットルの元々の培養物体積を、30〜40psiのフィルター入口圧力及び2〜15psiのリテンテート圧力を使用して60リットルまで減少させた。次いで、細菌リテンテートを、2.72グラム/リットル酢酸ナトリウム三水和物で構成された200リットルの酢酸ナトリウム三水和物溶液pH5.0を使用して洗浄した。60リットルの細菌リテンテートを、次いで、14.52グラム/リットルのトリス塩基及び8.6のpHに調整された1.86グラム/リットルのEDTAを含有する100リットルの浸透圧衝撃緩衝液(OMS)で洗浄した。OMS中のEDTAは、細胞壁からの多くのLPSの除去に役立ち、一方で上昇したpHは、凍結及び破砕後のタンパク質分解の多くを防いだ。プロテアーゼ阻害剤を、上昇したpHの代わりにまたはこれに加えて使用してよい。リテンテートを、次いで、40リットルになるまで濃縮して、任意の混入している外因性タンパク質の除去を助け、次いでさらに200リットルの上記OMSを加えて、すべての細菌を洗浄してフィルターを通して回収タンクへと入れた。リテンテートを、200リットルタンクにある間に底部に搭載した磁気駆動のミキサーを使用して十分に混合した。リテンテートをガンマ照射した5リットルのInvitro(商標)容器へと無菌で分注(5リットル)し、貯蔵のために−20℃の冷凍庫に入れた。細菌ペレットを凍結させることにより細胞壁構造が弱まり、下流での破砕をより効率的にする。ペレット質量を、1ml試料の発酵した培養物及び最終回収物を遠心分離することにより算出した。予め秤量した1mlコニカル管を、13,000rpmで10分間Microfuge 18にて遠心分離した。上清を捨て、ペレットを滅菌水に再懸濁した。この混合物を再度、13,000rpmで5分間遠心分離してから、再度デカンテーションした。この洗浄したペレットを125℃のオーブンに75分間置いてから、秤量し、外挿して、回収体積ペレット質量を決定した。発酵プロセスにより、2.3キログラムの乾燥ペレット質量が得られた。
細菌回収のための代替方法を使用することができる。細菌回収は、中空糸フィルター法の使用により行われてよい。細菌培養物は、0.2μM〜5kDaの範囲のサイズであるフィルターカートリッジを使用して;好ましくは、750kDaカートリッジを用いて、回収する。培養物は、体積を2〜20分の1へと減少し、続いて、1〜5回、緩衝液を用いたダイアフィルトレーションにより洗浄され、その後4℃で貯蔵または−20℃で凍結される。この様式では、望ましくない培地タンパク質、細菌タンパク質及びLPSは、培養物から除去される。別の代替的な細菌回収が、工業規模遠心分離機の使用により、例えば、ディスクスタック遠心分離機の使用により行われてよい。
破砕(ホモジナイゼーション)
OMS中の凍結した細菌細胞スラリーを4℃で解凍した(2.3kgのペレット質量)。各容器からの培養物懸濁液を、13リットルOMS pH8.5を含有する底部に搭載されたミキサー(LightninミキサーモデルMBI610H55)を有する200リットルのプロセスタンク(モデル200LDBT)へと無菌で吸引した。OMSの体積は、ペレット質量に30.8L/Kgを乗じることによりホモジナイゼーション体積を算出し、ホモジナイゼーション体積を取り、発酵回収物からの細菌の体積を引くことにより決定した。バルク細菌懸濁液を18Hzで18時間継続的に混合しながら4℃まで冷却し、この時点で、それはホモジナイゼーションにより破砕した。簡潔には、細胞懸濁液を含有する200リットルタンクを、AvestinモデルEF−C500Bホモジナイザー(Avestin,Rosemont,IL)に接続した。第二の200リットルプロセスタンク(空)をホモジナイザーに接続し、それによりプロセスタンク中の液体はホモジナイザーを通して空のタンクへと通過し再度戻すことができ、これにより、クローズドシステムを維持しながら複数回のホモジナイズするための通過を可能にした。ホモジナイゼーション中の温度は、4℃に維持した。各通過の開始時に、流体を、ホモジナイザー(500リットル/時間)を通してWaukeshaモデル30U2ポンプ(Waukesha)を介して60psiにて循環させ、元々のタンクへと戻し、一方でホモジナイザー圧は11,000〜30,000psiに調整した。最初の通過前に、2つのホモジナイズ前の試料をホモジナイザーから取り出して、破砕の程度を決定するかつpHをモニタリングするためのベースラインを確立した。破砕の程度は、非ホモジナイズ試料と比較して、透過率(1:100希釈で540nmでの%T)によりモニターした。ホモジナイザーの通過数を、可溶化の効率及び最終産物の品質に直接相関する、細胞壁の完全性及び破砕の程度の変動性に基づいて異なる生物に関して標準化した。例えば、破砕されたSalmonellaがホモジナイザーを2回通過すると、最終透過率は、1:100希釈で78〜83%Tとなった。同じペレット質量及び開始ODを有するE.coliは、2回目の通過後、(1:100希釈で)80〜86%の%Tを得た。同一条件下で、細菌はそれらの細胞壁完全性が異なり、その破砕の能力が変動することが観察されている。この変動性は、金属調節タンパク質の可溶化及び修復の程度及び効率に影響し得る。一般に、細胞は、最小でも2回の通過の後、少なくとも80%の透過率に達するまでホモジナイザーを通過する。
ホモジナイゼーションの後、ラウロイルサルコシンナトリウム(Hamptosyl L−30,Chem/Serv)を、ホモジナイズした細菌懸濁液へと可溶化のために無菌で加えた。加えたサルコシン(30%)の量は、リットル単位で可溶化体積の0.083倍に等しい(可溶化体積は、発酵乾燥ペレット質量に34.7L/Kgを乗じることにより決定した)。タンクを、ホモジナイザーから取り除き、2〜7℃の冷蔵庫に入れ、18Hzで12〜96時間混合した。この時間は、可溶化を完了するのに有益であった。上昇したpH(8.0〜8.5)でOMS中の可溶化時間を増加させると、金属調節タンパク質が一つに凝集して大きな不溶性凝集物を形成し、これは遠心分離により除去が容易であることが発見された。可溶化後の最適なODは、通常、540nmで25〜30%Tであった。タンパク質回収の12〜24時間前に、0.15%のホルマリンを防腐剤として、最終可溶化体積に加えた。
タンパク質回収
可溶化されたプロセス流体内の凝集した金属調節タンパク質を、T−1 Sharples(Alfa Laval Seperations,Warminster,PA)を使用して遠心分離により回収した。簡潔には、可溶化したホモジネートのタンクを、200ml/分の供給速度、11psi、30,000rpmの遠心速度で12台のSharpleへと供給した。流出液を、第二の200リットルプロセスタンクへとクローズド無菌ループを介して回収し、クローズドシステムを維持しながら遠心分離機を複数回通過できるようにした。遠心分離中の温度は、4℃に維持した。可溶化したホモジネートを、150ml/分の供給速度、21psi、50,000rpmの遠心速度で遠心分離機を最大12回通過させた。タンパク質を、最初の通過後に回収し、廃棄し、その時点で可溶化した流体は、元々の体積の1/3まで濃縮された。体積の低減は、2〜12回の通過のプロセス時間を短縮させた。簡潔には、可溶化されたホモジネートタンクを、濃縮用のWaukeshaモデル130U2供給ポンプに接続された3つの30.1ft2スクリーン−チャネルシリーズオメガ10kd Maxisetteフィルター(Pall Filtron)を備えたPall Filtron AT25Holderに接続した。濃縮後、プロセスが完了するまで遠心分離を継続した。各通過後にタンパク質を回収した。タンパク質を回収し、防腐剤として0.3%ホルマリン(Sigma)を含有するトリス−緩衝液pH8.5を含有する2つの8リットル容器へと再懸濁及び分注した。容器を、ミキサーモデルTurbula T10B(M.O.Industries,Wippany,New jersey)に入れ、タンパク質が緩衝液中に再懸濁するまで混合した。
ダイアフィルトレーション
タンパク質懸濁液を、ダイアフィルトレーションにより4℃で洗浄して、タンパク質に結合している可能性がある任意の混入サルコシンを除去した。タンパク質の2つの容器を、20Hzで混合する底部に搭載したLightninミキサー、モデルMBI610H55を備えた、0.3%ホルマリンを含有するトリス−緩衝液pH8.5の40ml TBW/gタンパク質回収物を含有する200リットルタンク中に吸引した。プロセスタンクを33℃インキュベーターに最小で12時間にわたってタンパク質不活性化のために入れた。プロセスタンクを、Waukeshaモデル30U2供給ポンプに接続された2つの26.9ft2スクリーン−チャネルシリーズオメガ10K Centrasetteフィルター(Pall Filtron)を備えた、Millipore Pellicon Tangential Flow Filterアセンブリ(Millipore Corporation,Bedford,MA)へと無菌で接続した。溶液を、おおよそ35リットルになるまで濃縮し、0.1%ホルマリン溶液を含有する200リットルのトリス−緩衝液、pH7.4で再懸濁した。溶液を、再度おおよそ35リットルになるまで濃縮し、0.1%ホルマリン溶液を含有する200リットルのトリス−緩衝液、pH7.4で再度再懸濁した。次いで、溶液を、おおよそ35リットルになるまで濃縮し、0.1%ホルマリン溶液を含有する80リットルのトリス−緩衝液、pH7.4で再懸濁した。次いで、溶液を、タンパク質ペレット質量の6.5倍の標的体積まで濾過により濃縮した。タンパク質濃縮物を、滅菌20リットルNalgene容器へと無菌で分注し、33℃のインキュベーターに12〜24時間にわたって、最終抗原不活性化のために入れた。
このプロセスにより、LPSの量が低減し、サルコシン残渣が非常に少ないまたはこれを含まない、金属調節タンパク質を含有する組成物を生成した。タンパク質を、SDS−PAGEにより純度及びバンドプロファイルについて検査し、細菌汚染、残存サルコシン及びLPSについても検査した。完了した生成物のバンドプロファイルは、電気泳動により検査して一貫したパターンを示した。組成物を、サルコシンに関して、改変した寒天ゲル拡散試験の使用により検査し、この検査では、ヒツジ赤血球(5%)を寒天ベース(1.5%)へと組み込んだ。ウェルを、寒天へと切り入れ、完了した生成物の試料を、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.51.0及び2.0%で公知の濃度のサルコシンの対照試料とともに、ウェルに入れた。ゲルを、25℃で24時間インキュベートし、溶血の程度を、対照と比較して決定した。このプロセスは、0.05%未満の検出可能なサルコシンのレベルを除去した。この濃度で対照試料における最小溶血が示された。LPSの濃度を、商標名PYROTELL(Associates of Cape Cod,Inc.,East Falmouth,MA)の下で利用可能なカブトガニ血球抽出成分(LAL)試験により検査した。
凍結及びホモジナイゼーションによる細胞溶解の後、タンパク質を中空糸法により回収してよい。細菌ライセートを、濾過して、全細胞及び大きな残屑を微粒子及び可溶性タンパク質から分離する。これは、0.2μM〜5kDaの範囲のサイズの中空糸カートリッジ(好ましくは、0.65μM公称孔径を有する)を使用して達成され得る。この様式では、全未溶解細胞及び大きな残屑は保持され、場合によってはフィルターにより濃縮され、一方で目的のタンパク質及び微粒子はフィルターを通過し、回収される。加えて、目的のタンパク質の回収を増加させるために、緩衝液で1〜20回リテンテートを洗浄することが望ましくあり得る。
上記の一次回収に続いて、微粒子の細菌膜を、上記のようにサルコシンで可溶化し、その後、さらに分画するまたはタンパク質を回収し、中空糸法により洗浄する。これは次の3つの機能を果たす:望ましくないサイトゾルタンパク質の除去、LPSを含む望ましくない膜成分の除去、ならびに所望の金属調節タンパク質及びポーリンタンパク質のより高い分子量形態への疎水性凝集。可溶化工程の後、溶液を、0.2μM〜5kDaの範囲のサイズの中空糸カートリッジ;好ましくは、実験室及び/またはパイロットスケール限外濾過カートリッジ(例えば、(UFP−750−E−6A)サイズ6A限外濾過中空糸カートリッジ(63.5cm L);ポリスルホン膜(任意選択で750 000NMWC孔径を有する)(GE Healthcare Pittsburgh,PA)を使用して濾過する。この工程はまた、濃縮(2〜20倍)ならびに緩衝液及びエタノールを用いるダイアフィルトレーション洗浄工程(1倍〜20倍)を含んで、望ましくないタンパク質、膜成分、DNA及びサルコシンの除去を向上させ、ゆえに回収した金属調節タンパク質及びポーリンタンパク質の純度を増加させることができる。
上記のように調製された組成物中に存在するタンパク質の例を図4に示す。5つの高分子量タンパク質(そのうち4つは、図4にて、FepA、FecA、FhuA、及びCirAとして同定され、1つは、FepAと同定されるバンドの上へと移動する)及び図4においてOmpC及びOmpA)と同定される2つの低分子量バンドが、SDS−PAGEゲル上でタンパク質を分離した後に観察された。
実施例6
Klebsiella pneumoniae分離株1571の金属調節タンパク質の特徴決定
K.pneumoniae菌株1571から実施例5に記載のように調製された組成物のタンパク質を、MALDI−TOF MSを使用して特徴決定した。これらの方法は、K.oxytoca及びEnterobacter分離株についても使用された。
K.pneumoniae菌株1571から実施例5に記載のように調製された組成物のタンパク質を、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MS)を使用して特徴決定した。組成物の一部を、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲルを使用して分離した。組成物のタンパク質を分離した後、ゲルを、クーマシーブリリアントブルーまたは銀のいずれかで染色して、タンパク質を可視化した。この方法は、K.oxytoca及びEnterobacter分離株から得た組成物を特徴決定するためにも使用された。
材料及び方法
切除及び洗浄。タンパク質をSDS−PAGEを使用して分離し、タンパク質を可視化するために染色した後、ゲルを10分間水で2回洗浄した。目的の各タンパク質バンドを、試料中に存在するゲルの量を減らすためにタンパク質バンドに可能な限り近いところで切ることによって切除した。6つのゲル断片を図4中でFepA、FecA、FhuA、CirA、OmpC、及びOmpAと同定される6つのバンドを使用して調製した。
各ゲル切片を、1×1mm立方体へと切り、1.5ml管へと入れた。ゲル片を、水で15分間洗浄した。洗浄工程において使用されたすべての溶媒体積は、ゲル切片の体積の2倍におおよそ等しかった。次に、ゲル切片を、水/アセトニトリル(1:1)で15分間洗浄した。タンパク質が銀で染色されているとき、水/アセトニトリル混合物を除去し、ゲル片をSpeedVac(ThermoSavant,Holbrook,NY)にて乾燥させ、次いで下記のように還元し、アルキル化した。ゲル片が銀染色されていないとき、水/アセトニトリル混合物を除去し、ゲル片が粘着性の白色に変わるまでアセトニトリルを加えて被覆し、その時点で、アセトニトリルを除去した。ゲル片を、100mM NH4HCO3中に再水和し、5分後、ゲル片の体積の2倍に等しいアセトニトリルの体積を加えた。これを、15分間インキュベートし、液体を除去し、ゲル片をSpeedVacにて乾燥させた。
還元及びアルキル化。乾燥させたゲル片を、10mM DTT及び100mM NH4HCO3に再水和し、45分間56℃にてインキュベートした。管を室温まで冷却した後、液体を除去し、同じ体積の55mMヨードアセトアミドと100mM NH4HCO3との混合物を即座に加えた。これを、30分間にわたって室温で暗所にてインキュベートした。液体を除去し、ゲル片が粘着性の白色に変わるまでアセトニトリルを加えて被覆し、その時点でアセトニトリルを除去した。ゲル片を100mM NH4HCO3に再水和し、5分後、ゲル片の体積の2倍に等しいアセトニトリルの体積を加えた。これを、15分間インキュベートし、液体を除去し、ゲル片をSpeedVacにて乾燥させた。ゲルがクマシーブルーで染色され、残存するクマシーがまだ残っている場合、100mM NH4HCO3/アセトニトリルでの洗浄を繰り返した。
ゲル内消化。ゲル片をSpeedVacにて完全に乾燥させた。ゲル片を消化緩衝液(50mM NH4HCO3、5mM CaCl2、12.5ナノグラム/マイクロリットル(ng/μl)トリプシン)に4℃で再水和した。十分な緩衝液を加えて、ゲル片を被覆し、必要に応じてさらに加えた。ゲル片を氷上で45分間インキュベートし、上清を除去し、トリプシンを含まない5〜2μlの同じ緩衝液で置き換えた。これを、37℃にて一晩エアーインキュベーター中でインキュベートした。
ペプチドの抽出。十分な体積の25mM NH4HCO3を加えて、ゲル片を被覆し、15分間(典型的には浴超音波処理器内で)インキュベートした。同じ体積のアセトニトリルを加え、15分間(可能であれば浴超音波処理器内で)インキュベートし、上清を回収した。NH4HCO3の代わりに5%ギ酸を用いて、抽出を2回繰り返した。十分な体積の5%ギ酸を加えてゲル片を被覆し、15分間(典型的には浴超音波処理器内で)インキュベートした。同じ体積のアセトニトリルを加え、15分間(典型的には浴超音波処理器内で)インキュベートし、上清を回収した。抽出物をプールし、10mM DTTを加えて1mM DTTの最終濃度とした。試料をSpeedVacにて乾燥させて、おおよそ5μlの最終体積とした。
ペプチドの脱塩。試料を、ZIPTIPピペットチップ(C18、Millipore,Billerica,MA)を製造業者の指示通りに使用して脱塩した。簡潔には、試料を、再構成溶液(5:95アセトニトリル:H2O、0.1%〜0.5%トリフルオロ酢酸)中で再構成し、遠心分離し、pHを調べて、3未満であると確認した。ZIPTIPを、10μlの溶液1(50:50アセトニトリル:H2O、0.1%トリフルオロ酢酸)を吸引し、吸引したアリコートを廃棄することによって水和した。この後、10μlの溶液2(脱イオン化H2O中の0.1%トリフルオロ酢酸)を吸引し、吸引したアリコートを廃棄した。試料を、10μlの試料をゆっくりとチップへと吸引し、それを試料管へと排出し、これを5〜6回繰り返すことによりチップへとロードした。10マイクロリットルの溶液2を、チップへと吸引し、溶液を排出により廃棄し、このプロセスを5〜7回繰り返して洗浄した。ペプチドを、2.5μlの氷冷溶液3(60:40、アセトニトリル:H2O、0.1%トリフルオロ酢酸)を吸引し、排出し、次いで同じアリコートをチップの内外へ3回再吸引することにより溶出した。溶液をチップから排出した後、管にキャップをし、氷上で保管した。
質量分析のペプチドマッピング。ペプチドを10μl〜30μlの5%ギ酸中に懸濁し、MALDI−TOF MS(Bruker Daltonics Inc.,Billerica,MA)により分析した。ペプチド断片の質量スペクトルを製造者の指示通りに決定した。簡潔には、トリプシン消化から生じるペプチドを含有する試料をマトリックスであるシアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸と混合し、標的へ移し、乾燥させた。乾燥試料を質量分析計に置き、照射し、そして各イオンの飛行時間を検出し、組成物中に存在する各タンパク質のペプチドマスフィンガープリントを決定するために使用した。公知のポリペプチドを、機器を標準化するために使用した。
データ分析。Mascot search engineのペプチドマスフィンガープリント検索方法(Matrix Science Ltd.,London,UK、及びwww.matrixscience.com、Perkins et al.,1999,Electrophoresis 20,3551−3567を参照されたい)を使用して、各質量スペクトルにおいて実験上観察されたペプチドの質量を、タンパク質の予測される質量と比較した。検索パラメータは以下を含んだ:データベース、NCBInr;分類、細菌(真正細菌);検索のタイプ、ペプチドマスフィンガープリント;酵素、トリプシン;固定修飾、カルバミドメチル(C)または無し;可変修飾、酸化(M)、カルバミドメチル(C)、組み合わせ、または無し;質量値、モノアイソトピック;タンパク質質量、無制限;ペプチド質量許容度、±100ppm〜±300ppmもしくは450ppm、または±1Da;ペプチド電荷状態、Mr;最大欠失切断、0または1;クエリー数、25。
ポリペプチドのSDS−PAGE分析は、使用されたSDS−PAGE条件下で、タンパク質がSDS−PAGEにより決定された82kDa、78kDa、72kDa、68kDa、35kDa及び33kDaにて移動したことを示した(表1)。追加のタンパク質は、光バンドであり、87kDaで移動した。MALDI分析及びアミノ酸配列に基づいて予測された分子量は、SDS−PAGEを使用した、またMALDIを使用した、推定されたタンパク質の分子量間で良好な一致があったと示した(表1)。図4のタンパク質は、MALDIにより同定した。これらの分析は、各ペプチドマスフィンガープリントに関して最良タンパク質一致を表すタンパク質配列をもたらした。FepAと標識されたバンドに関する最良タンパク質一致は、NCBI基準配列WP_012068422.1であり;FecAと標識されたバンドに関する最良タンパク質一致は、NCBI基準配列NP_943400.1であり;FhuAと標識されたバンドに関する最良タンパク質一致は、NCBI基準配列WP_004178624.1であり;CirAと標識されたバンドに関する最良タンパク質一致は、NCBI基準配列WP_015958738.1であり;OmpCと標識されたバンドに関する最良タンパク質一致は、NCBI基準配列WP_015958749.1であり;OmpAと標識されたバンドに関する最良タンパク質一致は、NCBI基準配列WP_002898408.1であった。
ゲノム配列
ゲノムDNAをKlebsiella pneumoniae 1571分離株から、ChargeSwitch gDNA ミニ細菌キット(Life Technologies,Carlsbad,CA、製品番号:CS11301)を使用して単離した。ゲノムDNAの抽出の前に、分離株の新しい培養物を、5%ヒツジ血液を有するトリプチケースソイ寒天II(Becton,Dickinson and Company,Franklin Lakes,NJ,製品コード:221261)上で一晩37℃にて増殖させた。手法は、製造業者のプロトコルに従った。ゲノムDNAの最終収量は33.7μgであり、これを配列決定まで−20℃で保管した。ゲノムDNAを、配列決定のために、ACGT,Inc.に提出した(Wheeling,IL)。
標的遺伝子の同定
分離株の完全なゲノム配列を受け取った後、tblastnアライメントを、国立生物工学情報センター(NCBI)データベースを用いて行って、目的の潜在的な遺伝子を同定した。Klebsiella pneumoniae 1571ゲノム配列の最初の分析は、MALDIによる6つのバンドのデータ分析の結果を使用した。この分析は、Klebsiella pneumoniae 1571ゲノム配列中に存在する遺伝子によりコードされる以下のタンパク質の同定をもたらした:FepA、FecA、FhuA、CirA、OmpC、及びOmpA。これらのタンパク質、及びそれらをコードする遺伝子を、それぞれ、図10、7、8、9、20、及び21に開示する。完全なゲノム配列の別の分析は、配列内のTon B依存性ホモログに基づいた。アルゴリズムパラメータは、Matrix:BLOSUM62及びGap Costs:Existence:11 Extension:1とした。blastx検索を使用して、tblastnアライメントで見出された相同遺伝子により翻訳されたタンパク質を同定した。アルゴリズムパラメータは、Matrix:BLOSUM62及びGap Costs:Existence:11 Extension:1とした。金属調節ポリペプチドの同定した相同体のペアワイズ配列アライメント。アルゴリズムパラメータは、Matrix:BLOSUM62、Gap Open:14、Gap Extend:4、Alternative Matches:1とした。
他の金属調節タンパク質BtuB、YbiL、YncD、IroN、IutA、FitA、FcuA、フェリックエンターバクチン(Ferric Enterbactin)コリシンB/D受容体及びFoxAに対する潜在的な相同体を同定するために、「tblastn」アライメントを、Klebsiella pneumoniae分離株の配列決定したゲノムに対して行った。9個の潜在的な相同体が、ゲノム内でそれぞれ最も高い同一性を有する配列を見ることによって同定され、これらを図11〜19に開示する。潜在的な相同体のうちの3つの部分ヌクレオチド配列及び予測されたアミノ酸配列を同定した(YncD、IroN、及びFitA、それぞれ図13、14、及び16)。
実施例7
ホルスタイン種去勢雄牛の高度免疫化(Hyper−immunization)及びポリクローナル抗体の調製
月齢4カ月の2頭のホルスタイン種去勢雄牛に、実施例5及び6に記載のKlebsiella pneumoniae 1571組成物を使用して28日間隔で3回皮下注射してワクチン接種した。免疫化組成物は、SDS−PAGEにより決定された87kDa、82kDa、78kDa、72kDa、68kDa、35kDa、及び33kDaの分子量を有するポリペプチドを含んだ。タンパク質を、単一のワクチン製剤へと乳化させた。簡潔には、320mg抗原(金属調節タンパク質及びポーリン)を355mlの生理食塩水に混合した。抗原溶液を、80mlのEMULSIGENへと乳化させて、2mlの注射可能な体積中に22.5%EMULSIGEN濃度で1500μg総タンパク質の最終用量を得た。3回目のワクチンの28日後、各去勢雄牛からの2.0リットルの血液をプールし、4℃で24時間凝固させた。血清を、全血液から3000xgにて30分間の遠心分離により分離した。血清800mlを、10,000xgで30分間再度遠心分離して、任意の混入細胞残屑を除去し、滅菌50mlコニカル管(Fisher Scientific)中25ml体積へと一定分量に分け、使用まで−80℃で凍結させた。25ミリリットルの高度免疫化血清を、標準的な硫酸アンモニウム沈殿を使用して精製した。簡潔には、外因性血清タンパク質を、まず抗体沈殿の前に、0.5体積の飽和硫酸アンモニウムpH7.2を加えることにより除去した。溶液を、100rpmで24時間4℃にて撹拌した。溶液を、3000xgで30分間再度遠心分離した。上清を回収し、十分な飽和硫酸アンモニウムを加えることにより沈殿させて、55%飽和の最終濃度を得た。溶液を100rpmで24時間4℃にて撹拌した。沈殿物を、3000xgで30分間遠心分離した。各試料からの最終ペレットを、2ml PBS pH7.2に再懸濁した。沈殿した抗体を、次いで、50,000分子カットオフ透析チューブ(Pierce,Rockford Ill.)を使用して、30時間にわたって、リン酸緩衝生理食塩水の3回の1リットル交換に対して透析して、硫酸アンモニウムを除去した。最初の2リットルの交換は、0.02%アジ化ナトリウムで保存した。最後の1リットル緩衝液交換は、保存剤を含有しなかった。透析液を回収し、3000xgで30分間にわたり再度遠心分離して、任意の残存残屑を除去した。抗体溶液を使用前に4℃で48時間未満にわたって保管した。各試料は、血液寒天上に置いて、無菌性を確認した。
実施例8
Klebsiella pneumoniae 1571金属調節タンパク質とKlebsiella、E.coli及びEnterobacterの他の菌株との交差反応性
実施例7のKlebsiella pneumoniae 1571の精製された金属調節タンパク質に対して生成された高度免疫化血清を、異なる属及び種からの細菌に対するその交差反応性について検査した。実施例3からの金属調節タンパク質(Klebsiella 1564、1569、1571、LM21、Enterobacter 1568、及びE.coli O157)に、電気泳動に供し、その後、実施例7に記載のKlebsiella pneumoniae 1571高度免疫化血清を用いたウェスタンブロット分析に供した。E.coli O157からの金属調節タンパク質も実施例3に記載の通りに調製して検査した。
E.coli O157、ウシ及びヒト起源のKlebsiella、ならびにEnterobacterの精製された金属調節タンパク質を、電気泳動に供し、その後、実施例7に記載のKlebsiella pneumoniae 1571の高度免疫化血清を用いたウェスタンブロット分析に供した。簡潔には、外膜調製物をSDS−PAGEゲル上で4%スタッキングゲル及び7.5%分離ゲルを使用してサイズ分画した。10μl試料を10μlのSDS還元試料緩衝液(62.5mMトリス−HCL ph6.8、20%グリセロール、2%SDS、5%β−メルカプトエタノール)と配合し、4分間沸騰させた。試料を、18mA定電流で5時間にわたり4℃にて、Protein II xiセル及びモデル1000/500パワーサプライ(BioRad Laboratories,Richmond,CA)を使用して電気泳動した。バンド移動を、広範囲のカレイドスコープ標準物(BioRad)を用いて可視化して、エレクトロブロット転写に役立て、ブロット上の分子量基準としてビオチン化された広範囲標準物を用いた(図5A及び5Bを参照されたい)。ウェスタンブロット分析については、タンパク質を、ゲルからトランス−ブロットニトロセルロース膜(BioRad)上へと一晩、4℃で50Vにて、Towbin緩衝液(25mMトリス、192mMグリシン、20%メタノール)中で、BioRadトランス−ブロット転写セル及びPac 300パワーサプライ(BioRad)を使用して、エレクトロブロットした。ニトロセルロース膜を、トリス緩衝食塩水(TBS−20mMトリス、500mM NaCl、pH7.5)中3%フィッシュゼラチン(Sigma Chemical,St.Louis,Mo)を使用して1時間、37℃で振とうしながら、ブロックした。膜を、37℃で乾燥させ、3%フィッシュゼラチンを含有するTBS中でブロックし、このプロセスを繰り返した。次いで、膜を、実施例7に記載したように免疫化した去勢雄牛から収集したポリクローナル高度免疫化血清でプローブした。一次抗体を、1%フィッシュゼラチン、0.05%Tween 20及び0.2%アジ化ナトリウム(抗体緩衝液)を含有するTBS中に1/50に希釈した。膜を、一次抗体溶液と一晩シェーカー上で室温にてインキュベートした。次いで、膜を、0.05%Tween 20を含有するTBS(TTBS)中で2回洗浄し、アルカリホスファターゼ−コンジュゲートマウス抗ウシIgGクローンBG−18(Sigma)の1/10,000希釈物及びアビジン−コンジュゲートアルカリホスファターゼ(BioRad)の1/3000希釈物を含有する抗体緩衝液へと移した。膜を、37℃にて2時間シェーカー上でインキュベートし、次いで、TTBS中で4回洗浄して未結合コンジュゲートを除去した。ブロットを、1×AP発色緩衝液(BioRad)中にアルカリ性リン酸塩発色試薬A及びBを含有する基質溶液中で30分間、37℃にてシェーカー上で分離させた。その結果得られたウェスタンイムノブロットを、BioRad GS−800濃度計を使用して記録した。(図5A及び5Bを参照されたい)。
ウェスタンブロット分析により、実施例5の精製された金属調節タンパク質に対して調製された陽性抗血清が、E.coli O157(レーン2)K.oxytoca(レーン3)、K.pneumoniae 1569(レーン4)K.pneumoniae LM21(レーン5)、Klebsiella pneumoniae 1571(レーン6)及びEnterobacter 1568(レーン7)の複数の金属調節タンパク質と強く反応したことが明らかになった。これらの結果は、Klebsiella pneumoniaeの金属調節タンパク質が高度の抗原相同性をKlebsiellaの異なる菌株ならびに細菌の異なる属及び種に対して有することを示す。
実施例9
金属調節タンパク質の配列同一性
他のKlebsiella、E.coli及びEnterobacter分離株に対するKlebsiella pneumoniae 1571の様々な金属調節タンパク質の相同性をさらに実証するために、複数のペプチド(CirA、FcuA、FecA、FhuA、及びIutA)のアミノ酸配列同一性を調べて、相同性の割合(%)を決定した。分離株はまた、特定の疾患状態、例えば、ウシ種における乳房炎ならびにヒトにおける敗血症、肺炎、新生児敗血症、肝膿瘍、尿路感染症、脳脊髄感染症及びETEC下痢症に基づいて選択された。タンパク質配列を、NCBIのタンパク質BLAST(blastp)の規定設定を使用して分析した。eゼロに等しいe値との一致及び95%を超えるクエリーカバレッジは、相同であるとみなした。表3は、Klebsiella pneumoniae 1571と、農業動物及びヒトの両方において異なる疾患状態を誘導したKlebsiella、E.coli、及びEnterobacterの他の分離株との間で共有される金属調節タンパク質を示す。すべての分離株が検査されたすべての鉄調節タンパク質を含有するわけではないが、表3から見られるように、大半の金属調節タンパク質がKlebsiella菌株にわたって99〜100%同一性に達した。加えて、Klebsiella pneumoniae 1571ワクチン菌株において見出された金属調節タンパク質の大半が、E.coli及びEnterobacterの他の分離株と比較して、60%を超えて最大で99%までの有意な同一性を示す。個別の金属調節タンパク質が600を超えるアミノ酸から構成されること、及び免疫応答が5〜20アミノ酸の範囲のエピトープを認識することを考慮すると、これらのタンパク質が優れた標的抗原であることが明確に実証される。ゆえに、金属調節タンパク質を使用して調製されたワクチンは、ヒト及び動物集団の両方における広域スペクトルの疾患状態の原因となる複数のグラム陰性病原体を対象とする広範防御性のワクチンを提供することが期待される。
実施例10
病原性を増強するためのマウスにおけるKlebsiella pneumoniae 1571の連続継代
病原性を増強するために、Klebsiella pneumoniae 1571を、新しい宿主種であるマウスにおいて連続的に継代した。簡潔には、実施例1の上記の培養物を使用して、2匹のマウスに0.1または0.2mlのいずれかで1.0×109CFU/mlの分離株を皮下注射した。接種の24時間後、マウスは罹患したが死亡していなかった。マウスを、頚椎脱臼により安楽死させ、各肝臓を、炎に当てたループ(flamed loop)を使用して培養し、血液寒天上にプレーティングした。プレートを37℃で24時間インキュベートした。0.2用量からのコロニーの数は、血液寒天プレート上で増殖し、これは、分離株が全身に達したことを示す。これらのコロニーを、単離のために画線し、同じ隊を使用して再度マウスを介して継代させた。最終的なマウス継代では、攻撃の24時間後にすべてのマウスが死亡したが、これは、分離株が、結果のパラメータとして死亡を伴う病原性の増強により新しい宿主種において増殖するように適応したことを明らかに実証している。分離株を、最終肝臓単離物から継代培養し、増殖させて凍結した攻撃シードとした。簡潔には、血液プレートからの単一コロニーを、32gm TSB、5gm酵母抽出物、及び2,2−ジピリジルを25μg/リットルで含有する20mlのTSBに継代培養した。培養物を、200rpmで2時間撹拌し、その時点で、37℃に予め加温しておいた同じ培地に継代培養した。2時間後、10mlの培養物を100mlの予め加温しておいたTSBへと上述のように移したが、但し、2,2−ジピリジルの濃度を25μg/lとした。この培養物を、それらが540nmでOD1.0に達するまで増殖させ、その時点で、8000rpmで10分間遠心分離し、90mlの冷TSBに上記のように再懸濁したが、但し、これは20%グリセロールを含有した。1mlの細菌懸濁液のアリコートを、2mlクライオバイアルへと分注し;ラベルを付けて、使用まで−90℃で保管した。
実施例11
Klebsiella pneumoniae 1571に由来する免疫化組成物の調製
実施例5に記載の通りにKlebsiella pneumoniae 1571から作製されたタンパク質を使用して、マウスへの投与のための組成物を調製して、生存病毒の同種及び異種攻撃に対するワクチンの有効性を決定した。Harlan Breeding Laboratories(Indianapolis,IN)から得た、16〜22グラムの体重の80匹の雌CF−1マウスを、4つの群(20マウス/群)、2つのワクチン接種群及び2つのプラセボ群に等しく分けた。マウスは、ポリカーボネートマウスケージ(Ancore Corporation,Bellmore,NY)に収容した。4つのケージを、各処置群に使用して(5マウス/ケージ)、各ケージのマウスの数を最小限にした。群を、1〜4と番号付けした。群1をKlebsiellaプラセボと指定し、群2をE.coliプラセボと指定し、群3及び4は両方とも実施例5のKlebsiella pneumoniae 1571組成物を用いてワクチン接種した。ワクチン組成物は図4に示すタンパク質を含有した。
実施例12
マウスワクチン接種
ストックワクチンを、タンパク質懸濁液(1000μg総タンパク質/ml)を市販のアジュバントである、EMULSIGEN(MVP Laboratories,Ralston,Nebraska)へと22.5%vol/volのアジュバント濃度を得るように乳化することにより調製した。マウス用量を投与して、0.1mlの注射可能な体積中に100μg総タンパク質の最終用量を得た。プラセボを、上記製剤中で抗原を生理食塩水と置き換えること、及び懸濁液をEMULSIGENへと22.5%のアジュバント濃度を得るように乳化させることにより、調製した。食餌及び水は、すべてのマウスに自由に与えた。マウスは、2回、21日間隔でプラセボ及び/またはKlebsiella pneumoniaeワクチンを皮下でワクチン接種させた。
実施例13
攻撃生物の調製
実施例10に記載のKlebsiella pneumoniae分離株1571を、群1及び3の同種攻撃に使用し、群2及び4のマウスは、E.coli CFT073で攻撃した(異種攻撃)。簡潔には、凍結ストックからの攻撃分離株を、血液寒天プレート上に画線し、37℃で18時間インキュベートした。KlebsiellaプレートまたはE.coliプレートのいずれかからの単一のコロニーを、25μg/ml 2,2’ジピリジルを含有するトリプチックソイブロス(Difco)の2つの50mlボトルのうちの1つに継代培養した。培養物を、540nmにて0.95〜1.0のODが達成されるまで200rpmで回転させながら37℃で6時間インキュベートし、その時点で、10,000xgで10分間4℃にて遠心分離して、細菌をペレット化した。細菌ペレットを、生理食塩水中4℃にて遠心分離により2回洗浄した。最終ペレットを、生理食塩水中100mlに再懸濁し戻し、攻撃に使用した。攻撃の直前に、1mlの上記細菌懸濁液を、10倍まで連続希釈して、CFU/マウス用量の数を数えた。
実施例14
攻撃
マウスに対して、二回目のワクチン接種の28日後に攻撃を行った。群1及び3のマウスを、0.1ml体積中5.7×107CFUのKlebsiella pneumoniae 1571を用いて腹腔内攻撃し、群2及び4のマウスは、0.1ml体積中1.3×107CFUのE.coli CFT073を用いて腹腔内攻撃した。マウスを、攻撃後10日間にわたって死亡率に関して毎日モニターした。
群1及び3(同種攻撃)における攻撃されたマウスの死亡率を比較すると、群3のワクチン接種マウスは高度の防御(90%生存能(livability))を示し、対照的に、そのプラセボ対照が示した生存率はわずか25%であった。比較して、Klebsiella 1571組成物を用いてワクチン接種し、E.coli CFT073で攻撃された(異種攻撃)マウスは、60%生存能で有意な程度の防御を示し、対照的に、そのプラセボ対照が有した生存能は、投与されたワクチンの用量でわずか30%であった。より高用量の抗原、例えば、150ug〜200ugで免疫化すると、より高度の防御がもたらされ得ることが期待される。結果は、Klebsiella pneumoniae 1571組成物が、細菌の別の属に対する防御能力を有することを明確に実証する(図6)。
実施例15
発現クローンの構築及び組換え金属調節タンパク質の精製
金属調節タンパク質FecA(Klebsiella pneumoniae菌株1571由来)のアミノ酸配列(配列番号41、4番目のアミノ酸はNである)、ならびにCirA、FepA及びIutA(E.coli菌株CFT073由来)のアミノ酸配列(図36〜38)を、アセンブリのためにGeneArt(Life Technologies,Carlsbad,CA)に提出した。GeneOptimizer(Life Technologies)ソフトウェアを使用して、最適化された遺伝子合成のために、タンパク質配列をDNAへと逆翻訳した。配列を、N末端に6×ヒスチジンタグを付加する、pQE30Xa発現ベクター(Qiagen,Valencia,CA)へとクローニングし、このベクターを使用して、XL−1 blue E.coli菌株を形質転換した。組換え金属調節タンパク質を標準的な方法を使用して発現及び精製した。凍結細菌ストック(100ul)を使用して、プラスミド維持のために100ug/mlアンピシリンを有する20mlのLuria−Bertaniブロスに接種して、培養物を37℃で振とうインキュベーター(250rpm)中で増殖させた。16時間後、培養物を100ug/mlアンピシリンを有する1LのLuria−Bertaniブロスへと1:50に希釈し、0.6の光学密度(600nm)まで増殖させ、次いで1mM IPTGで4時間誘導した。細菌ペレットを、4,000xgで20分間4℃にて遠心分離することにより回収し、リン酸緩衝食塩水中で洗浄し、次いで、100ug/mlリゾチームを有する20mMトリス緩衝液に再懸濁した。次いで、細胞を、50%デューティ比及び5出力(Branson Sonifier,Danbury,CT)にて8分間氷上で超音波処理することにより破砕した。ライセートを、遠心分離に10分間40,000xgで4℃にて供して、不溶性物質を除去した。可溶性上清を、固定化金属親和性クロマトグラフィー(HisTrap FF5ml、GE Healthcare)により処理して、ヒスチジンタグ付き組換えタンパク質を精製し、次いで、アニオン交換クロマトグラフィーを行って純度を増加させ、エンドトキシンを除去した。タンパク質濃度は、BCA法(Pierce)を使用して推定し、タンパク質純度は、SDS−PAGE濃度測定により70パーセント超で測定した。エンドトキシンは、カブトガニ血球抽出成分を使用する細菌エンドトキシンに関するカイネティック比濁試験を使用して40EU/mgタンパク質未満であると確認した。これらの結果を表4にまとめる。
実施例16
複数のワクチン製剤を評価するマウス敗血症モデルにおけるワクチン媒介性防御
マウス敗血症モデルを、以下のワクチン組成物;Klebsiella pneumoniaeウシ菌株1571、Klebsiella pneumoniaeヒト菌株LM21の抽出金属調節タンパク質(実施例5に記載の通りに調製)、及び4つの組換え金属調節タンパク質FecA、CirA、FepA及びIutAを含有する製剤(実施例15に記載の通りに調製)を評価するために選択した。16〜22グラムの体重の80匹の雌CF−1マウスを、Charles River Laboratory(Wilmington,MA)から購入し、6群(10マウスを含有する群1を除いて、一群あたり15マウス)に無作為に分けた。群は、1〜6と番号付けした。群1、2、及び3は対照と指定した。群1は、ナイーブ対照(非ワクチン接種/攻撃)とし、群2は、50%不完全フロイントアジュバント、10μg CpG及び2.5μgモノホスホリルリピドA(MPLA)を有するアジュバント対照(ワクチン接種/攻撃)とし、群3は、50%不完全フロイントアジュバントを有するアジュバント対照(ワクチン接種/攻撃)とした。群4、5、及び6は、それらの適切なアジュバント対照群に相関するそれらのそれぞれのワクチン製剤を用いてワクチン接種した(表5)。マウスは、ポリカーボネートマウスケージ(Ancore Corporation,Bellmore,NY)に収容した。3つのケージを、各処置群に使用して(5マウス/ケージ)、各ケージのマウスの数を最小限にした。すべてのマウスを、最初のワクチン接種の1週間前に順化させた。個別のワクチン製剤を、Klebsiella pneumonia 1571を攻撃生物と使用して、マウス敗血症モデルにおける死亡に対するそれらの防御能力に関して評価した(実施例10)。
実施例17
ワクチン調製及びワクチン接種
ワクチン調製のために、Klebsiella菌株1571及びLM21のそれぞれに由来する100マイクログラムのタンパク質抽出物または20gのリン酸緩衝食塩水中の各組換えタンパク質を、それらの適切な試験アジュバントで製剤化した(表5を参照されたい)。マウスは、肩甲下腰帯にて皮下で0.1mlの適切なワクチンを用いて14日間隔で3回免疫化した。すべてのマウスに対して、二回目のワクチン接種の42日後に攻撃した。
実施例18
攻撃生物の調製
Klebsiella pneumoniae 1571細菌攻撃分離株を、実施例10に記載の凍結ストックから調製した。簡潔には、凍結ストックからの攻撃分離株を、血液寒天プレート上に画線し、37℃で18時間インキュベートした。単一のコロニーを、25μg/ml 2,2’ジピリジルを含有する100mlのトリプチックソイブロス(Difco)へと継代培養した。培養物を、540nmで0.95〜1.0のODに達するまで200rpmで回転させながら37℃で6時間インキュベートし、その時点で、10,000xgで10分間4℃にて遠心分離して、細菌をペレット化した。細菌ペレットを、遠心分離により生理食塩水中で4℃にて一度洗浄した。最終ペレットを、生理食塩水中100mlに再懸濁し戻し、攻撃に使用した。すべてのマウスに、0.1ml体積中8.5×107コロニー形成ユニットのKlebsiella pneumoniae 1571を腹腔内攻撃した。攻撃の直前に、1mlの上記細菌懸濁液を、10倍まで連続希釈して、CFU/マウス用量の数を数えた。
実施例19
攻撃結果
ナイーブ及びプラセボ対照のうち、群1のナイーブマウスの80パーセント(80%)が、攻撃後に死亡し、それに比べて群2のマウスでは73%が死亡し、群3のマウスでは80%が死亡した(表6)。これらの結果により、アジュバント単独では、攻撃に対する防御を提供しないことが実証され、これは、アジュバントにより誘導された非特異的免疫性がなかったことを示す。比較して、Klebsiella 1571由来のワクチン組成物を使用して(攻撃に対して同種)群4においては3匹のマウスのみが死亡した(80%生存率)(表6、図22)。比較して、Klebsiella 1748由来のワクチン組成物を使用して(攻撃に対して異種)群5では4匹のマウスのみが死亡した(74%生存率)(表6、図22)。これらの結果は、Klebsiella pneumonia 1571から調製したワクチン組成物が、同種及び異種攻撃に対する防御免疫性またはKlebsiellaの複数の菌株に対する防御を提供することができることを明確に実証する。
比較して、最初にMALDIにより同定され、次いで、FecA、CirA、FepA及びIutAを含むE.coliからクローニング、発現、及び精製された組換えタンパク質のワクチン組成物も、有意な程度の防御を攻撃に対して誘導した。組換えタンパク質を用いてワクチン接種した(単回用量の20μgの各タンパク質で試験した)マウスの53パーセント(53%)が、攻撃から生存した。より高い濃度(例えば、マイクログラム用量)の組換えタンパク質が、抽出されたタンパク質群と比較して同等の防御をもたらすと予測される。加えて、この組成物中のエンドトキシンの量は、100EU/用量未満であった。これを考慮して、LPSは、ワクチン組成物に混入し得る菌体抗原がE.coli由来であるが、Klebsiellaに由来しないために、菌体抗原の存在に基づき防御を提供しなかったと述べることができる。この情報及び攻撃菌株の異種特性に基づき、防御の程度は、ワクチン組成物中の組換えタンパク質に起因すると結論付けることができる。
実施例20
ホルスタイン種若雌牛における乳房内攻撃に対するKlebsiella pneumonia 1571由来の金属調節タンパク質の有効性
乳房炎は、乳腺及び乳房組織の炎症であり、乳牛の主要な風土病である。これは通常、Klebsiellaなどの様々な細菌種による乳頭管の細菌侵入に対する免疫応答として生じる。この実験研究では、Klebsiella pneumonia 1571に由来する金属調節タンパク質を含むサブユニットワクチンを使用して、ホルスタイン種若雌牛における生存乳房間攻撃に対する有効性を評価した。この実験研究のワクチン接種及び非ワクチン接種プラセボ対照間のワクチン有効性を確立するために使用した試験パラメータは、1)乳房内攻撃後の定量的クリアランス、2)体細胞数、3)ワクチン接種に対する血清学的反応、4)乳汁の質、5)直腸の温度及び6)攻撃後の乳房炎症とした。
実施例21
ワクチン調製
実施例5に記載の通りにKlebsiella pneumoniae 1571から作製されたワクチン組成物は、SDS−PAGEにより決定される、87kDa、82kDa、78kDa、72kDa、68kDa、35kDa、及び33kDaの分子量を有するポリペプチドを含んだ。菌株1571に由来する免疫化組成物を使用して、抽出したタンパク質懸濁液(600μg総タンパク質/ミリリットル)を市販のアジュバント(EMULSIGEN,MVP Laboratories,Ralston Nebr.)へとIKAプロセスパイロット2000/4−DR(IKA,Cincinnati,Ohio)を使用して22.5%vol/volのアジュバント濃度を有する2.0mlの注射可能な体積中1,200μg総タンパク質の最終用量を得るように乳化することにより、実験用ワクチンを調製した。プラセボワクチンを、上記プロトコルにおいてタンパク質懸濁液を生理食塩水に置き換えることで調製した。
実施例22
実験設計及び牛群のワクチン接種
分娩前おおよそ60日の8頭のホルスタイン種若雌牛を、4頭の若雌牛/群からなる2つの群に無作為に割り当てた。若雌牛を、耳タグにより識別し、大きな商業酪農場でおおよそ500頭のウシと混合させた。群−1の若雌牛は、プラセボ対照としての役割を果たし、群−2の若雌牛は、実施例21のKlebsiella pneumonia 1571ワクチン組成物を用いてワクチン接種した。若雌牛は、右上肩の皮下に21日間隔で2mlのプラセボ及び/またはKlebsiella pneumoniae 1571ワクチンを用いて2回ワクチン接種した。若雌牛は、1日2回、彼らの生産段階に適切な混合飼料を与えられた。すべての若雌牛には、試験中、自由に水を飲ませた。
血液を、最初のワクチン接種時、2回目のワクチン接種時、及び再度2回目のワクチン接種の2週間後に採取した。すべての血液は、滅菌した13x75ミリメートル(mm)バキュテイナ採血管、ブランドSST番号369783(Becton Dickinson,Franklin Lakes,N.J.)に採取した。凝固後、採血管を800xgで30分間遠心分離し、分析まで−80℃で凍結させた。分娩のおおよそ30日後の若雌牛を、乳房内攻撃のために別の施設へと移送した。
実施例23
Klebsiella pneumonia 1571におけるナリジクス酸耐性の選択
実施例1のKlebsiella pneumoniae 1571分離株を、ナリジクス酸耐性にした。攻撃菌株において公知の抗生物質に対する耐性を誘発することは、環境におけるその有病率のために攻撃された試料に混入し得る他のKlebsiella菌株からの攻撃菌株の分化を助ける。抗生物質耐性を誘導するために、Klebsiella 1571菌株を、漸増濃度のナリジクス酸中で増殖させた。簡潔には、35gmトリプチックソイ、5gm酵母抽出物、及び2,2−ジピリジルを25μgで含有するTSBの2つの1.0リットルストック溶液を調製し、30分間オートクレーブし、次いで、4℃まで冷却した。ナリジクス酸を、1リットルTSBストック溶液のうちの1つに、0.2uフィルターを通して膜濾過により加えて、150μg/mlの最終濃度とした。そうして150μgナリジクス酸を含有するTSBを、20mlストック(50mlコニカル管)溶液へと、ナリジクス酸を伴わないTSBを希釈剤として使用して希釈して、以下の濃度を得た;0(ナリジクス酸無し)、25μg/ml、50μg/ml、75μg/ml、100μg/ml、及び非希釈150μg。
実施例1のKlebsiella 1571分離株を、凍結貯蔵庫から取り出し、血液寒天上にプレーティングし、37℃で24時間インキュベートし、その時点で、単一コロニーを採取し、非ナリジクス酸TSB管のうちの1つに無菌で接種し、3時間37℃で、200rpmで攪拌しながらインキュベートした。接種の3時間後、2mlの培養物を、予め37℃まで加温した20mlの25μgナリジクス酸管へと移した。培養物を、37℃にて、200rpmで迅速に撹拌しながら3時間増殖させた。このプロセスを2回繰り返し、次いで、次の濃度のナリジクス酸に移した。増殖が生じなかった場合、プロセスを前回の濃度で繰り返し、それから次の漸増濃度へと移した。これを、増殖が最高濃度のナリジクス酸で確立されるまで各濃度で行った。増殖が150μg/mlレベルで確立されたら、培養物を、150μg/mlナリジクス酸を含有するEMB上にプレーティングした。分離株の単一コロニーを選択し、150μg/mlナリジクス酸を含有する100ml TSB(上記の培地)へと移した。培養物を、37℃で4.5時間または540nmにて1.0のODが達成されるまで増殖させた。次いで、培養物を、8000rpmで20分間遠心分離し、その時点で、上清を廃棄し、ペレットを、上記の通りだが20%グリセロール及び25μg/ml 2,2−ジピリジルを含有する90mlのTSB培地に再懸濁した。細菌懸濁液の1mlアリコートを、2mlクライオバイアルに分注し、使用まで−90℃で保管した。
実施例24
Klebsiella pneumonia 1571を用いた乳房内攻撃
攻撃の前に、各若雌牛の全4つの分房からの乳汁試料を回収し、細菌学的な分析を行って、いずれの分房も感染していないことを決定した。攻撃の当日、実施例23の凍結ストックからのKlebsiella 1571のナリジクス酸耐性菌株を、リン酸緩衝食塩水(PBS)pH7.2に所定のレベルまで希釈して、1.0ml体積中に100コロニー形成ユニット(CFU)の攻撃用量を得た。乳頭カニューレを使用して、すべての若雌牛に対して、それぞれの乳房の乳頭管を通して1つの分房に攻撃した。次いで、攻撃用量を、乳頭及び乳房内へと手で搾り上げた。若雌牛を、それらの直腸の温度、乳汁の質、及び乳房の炎症の差異について各搾乳の際にモニターした。加えて、体細胞数の決定及び攻撃生物の計数のために、乳汁試料を各若雌牛の攻撃した分房から採取した。若雌牛を、攻撃後7日間1日2回搾乳し、その時点で試験を終了した。
結果
ワクチン接種に対する血清学的反応
ワクチン接種に対する血清学的反応を、ELISAによりモニターした。各血清試料を、Klebsiella Pneumonia 1571抗原を捕捉分子として個別に使用して実行した。簡潔には、96ウェルプレートをKlebsiella Pneumonia 1571抗原を用いて高度免疫化されているシチメンチョウからのシチメンチョウ血清の1:1,000希釈物でコーティングした。コーティング後、プレートを、PVA/PBSでブロックし、Klebsiella 1571抗原からの抗原を、ウェルに加えてインキュベートした。次いで、抗原を、除去し、プレートを洗浄し、評価すべきウシ血清の1:1,000希釈物をプレートに2通りで加えた。血清を除去し、プレートを洗浄した。ヒツジ抗ウシコンジュゲートをプレートに1:20,000希釈で加え、インキュベートした。コンジュゲートを、プレートから除去した。プレートを洗浄し、基質を発色のために加え、発色をその後分光光度計で読み取った。S/P算出については、陰性対照血清からの平均シグナルを、すべてのOD値から差し引いた。評価される試料については、試料の平均ODを、平均陽性対照試料ODで割った。
図23は、Klebsiella Pneumonia 1571ワクチン組成物を用いてワクチン接種した若雌牛の血清学的反応を示す。ワクチン接種したすべての若雌牛は、抗体反応を、プラセボ対照とは対照的に最初のワクチン接種の21日後に示した。このあと、2回目のワクチン接種の21日後に抗体の増加を伴う既往反応を示した。
酪農業においてKlebsiella pneumoniaにより引き起こされる乳房炎は、しばしば異常な乳汁として見られる乳汁の質の喪失の原因となる。例えば、乳房炎を有するウシは、フレーク、小さなスラグ、大きな凝塊を含む、または粘質の水っぽい粘性を有する乳汁をしばしば有し得る。これらの特徴は、臨床的乳房炎を示している。図24は、16日間にわたる各若雌牛に関する乳汁スコアを示す。1のスコアは正常、2はフレークの存在を表し、3は小さなスラグの存在を表し、4は大きなスラグまたは凝塊の存在を表し、5は、粘質または水っぽい粘性を表す。結果は、Klebsiella pneumonia 1571組成物を用いたワクチン接種が、乳汁の質の全体的な定量的計測を改善したことを示す。ワクチン接種は、非ワクチン接種対照と比較して乳汁の質を統計学的に改善した(p=0.042)。これは、すべての4つの非ワクチン接種対照が攻撃後に臨床的乳房炎を発症した一方で、ワクチン接種した若雌牛のうち2頭のみが乳房炎の定義を満たしたことから、乳房炎の低減と直接相関した。乳房炎の存在は、対照の場合と比較してワクチン接種の場合に有意に減少した(p=0.046)。
分娩の30日後、若雌牛を、100CFUのKlebsiella pneumonia 1571を用いて、乳頭管を通して乳房内で攻撃した。若雌牛を、攻撃後7日間連続で1日2回搾乳した。攻撃された分房からの乳汁試料を回収し、計数時まで−90℃で凍結させた。図25は、2回の攻撃前試料採取、及び14回の攻撃後連続的試料採取(すなわち、7日間連続で1日あたり2回の試料採取)に関するワクチン接種とプラセボ対照との間での乳汁試料中の攻撃生物の蔓延の差異を示す。対照と比較してワクチン接種した若雌牛の感染乳房に由来する乳汁中に放出されているKlebsiellaの量の有意な低減があった。試験期間を通して平均して、ワクチン接種した若雌牛は、試料採取した56のうちわずか15、つまり27%の陽性Klebsiella乳汁試料を有した。対照的に;プラセボ対照における陽性Klebsiella乳汁試料の数は、64%、つまり56のうち36が陽性であった。
実施例25
慢性感染酪農牛群におけるKlebsiella pneumoniaeに由来するワクチン組成物の評価
Klebsiella pneumoniaに帰する慢性乳房炎の病歴を有する商業的な酪農牛群を、実施例5に記載のワクチン組成物の評価のために選択した。この実験研究のワクチン有効性を確立するための基準は、以下:1)プラセボ対照と比較した、Klebsiellaワクチン接種の間でKlebsiella pneumoniaeにより引き起こされる臨床的乳房炎の罹患率及び発症率の減少、2)プラセボ対照と比較した、Klebsiellaワクチン接種の間で大腸菌性乳房炎の罹患率及び発症率の減少、3)プラセボ対照と比較した、Klebsiellaワクチン接種の間で体細胞数の改善(すなわち、低減)ならびに4)プラセボ対照と比較して、Klebsiellaワクチン接種の間で産乳量における改善(すなわち、増加)、の95%信頼区間を有する推定される発病防止率に基づく。
実施例26
ワクチン調製
実施例5に記載の通りにKlebsiella pneumoniae 1571から作製されたワクチン組成物は、SDS−PAGEにより決定した、87kDa、82kDa、78kDa、72kDa、68kDa、35kDa、及び33kDaの分子量を有するポリペプチドを含んだ。菌株1571に由来する免疫化組成物を使用して、抽出したタンパク質懸濁液(600μg総タンパク質/ミリリットル)を市販のアジュバント(EMULSIGEN,MVP Laboratories,Ralston Nebr.)へとIKAプロセスパイロット2000/4−DR(IKA,Cincinnati,Ohio)を使用して、22.5%vol/volのアジュバント濃度を有する2.0mlの注射可能な体積中1,200μg総タンパク質の最終用量を得るように乳化することにより、実験用ワクチンを調製した。プラセボワクチンを、上記プロトコルにおいて生理食塩水にタンパク質懸濁液を置き換えることにより調製した。
実施例27
実験設計及び牛群ワクチン接種
本試験は、Klebsiella pneumoniaeを制御する、検証的、無作為化、盲検、及びプラセボ対照有効性試験として実施された。合計で、569頭のホルスタインまたはジャージー種のウシ及び若雌牛を、本試験に登録した。ウシは、乾乳期にある時期を除いて単一のフリーストール牛舎に収容した。乾乳期の間、ウシは指定の乾乳牛舎へと移動させた。若雌牛は、分娩が近くなるまで若雌牛舎におり、分娩の時点で、フリーストール牛舎へと移動させて搾乳牛群に混ざった。ウシを無作為化してKlebsiella pneumoniae 1571ワクチン、またはアジュバントのみを含有するプラセボワクチンのいずれかを受けさせた。ウシ及び若雌牛は、登録の当日に2mlで皮下に注射し、3週間後に2回目の用量を投与した。乾乳期が近いウシ及び分娩が近いウシを除いて、全ウシ群ワクチン接種レジメンを行って試験を開始し、3週間後にブースター投与を行った。乾乳ウシプロトコルを設定して、すべてのウシ及び若雌牛に、217日間の有仔期間(days carrying calf)(DCC)を達したら、2用量のワクチンを、3〜4週間の間隔でワクチン接種した。実験設計を表7にまとめる。
結果
ワクチン接種に対する各ウシの血清学的反応を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により測定した。各群から20頭のウシを無作為に選択して、プラセボ対照と比較してKlebsiella pneumonia 1571組成物に対するワクチン接種後の血清学的反応を評価した。ウシから採血し、それらの血清を、最初のワクチン接種時、2回目のワクチン接種時、及びそれらの2回目のワクチン接種の2週間後に回収した。血清は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)による分析まで、凍結して保管した。
96(96)ウェルのポリスチレンプレートを、Klebsiella pneumoniae 1571ポリペプチドを標的抗原としてコーティングした。ポリペプチドは、SDS−PAGEにより決定された、87kDa、82kDa、78kDa、72kDa、68kDa、35kDa、及び33kDaの分子量を有した。各血清試料を、1:400から1:409,600へと4倍希釈し、2通りで検査した。各検査プレートは、公知の陽性対照血清(実施例7の高度免疫化血清)の標的希釈(1:400)の2つのウェルを含有した。これらの陽性対照ウェルは、1)確かな検査を保証するためのプレート内対照及び2)血清力価を算出する手段という目的を果たした。力価は、試料の希釈曲線がプレート上の陽性対照ウェルの平均OD値の50%と交わる点として定義した。コンピュータソフトウェアを使用して、インターセプトポイントを決定して、プレート上で検査した各血清試料に関する算出された力価値を生成及び報告した。
ワクチンポリペプチドに対する抗体は、ワクチンを1回目の投与後にKlebsiella pneumoniae 1571ワクチン接種において検出可能であり、2回目の投与の後、有意に増加した(図26)。この酪農場ではKlebsiella pneumoniaeによる感染が慢性的に発生し、天然曝露による死亡が継続的に生じていることは興味深い。しかしながら、この曝露は、金属調節タンパク質が、自然野外条件下及び感染中に細菌の表面上で発現されているとしても、金属調節タンパク質に対する免疫性を誘導しなかった。ウシが、調製された金属調節タンパク質のワクチン組成物を用いてワクチン接種されるまで、適応免疫応答はこれらの標的免疫原を生成しなかった。これは図26において見ることができ、ここで、ワクチン接種または刺激されてワクチン組成物における標的免疫原を認識するものと対照的に、非ワクチン接種動物は、Klebsiella pneumoniaに継続的に曝露されているとしても抗体反応を示さない。
実施例25からの血清を、ウェスタンブロット法により分析して、ワクチン製剤から何のタンパク質が認識されたかを決定した。ウェスタン分析は、WESキャピラリー電気泳動システム(Protein Simple,SanJose,CA)を使用して行った。精製されたポリペプチドを用いてワクチン接種したウシからの血清は、ワクチン組成物中の金属調節タンパク質と反応し、一方でプラセボを用いてワクチン接種したウシからの血清は反応しなかった。加えて、精製されたポリペプチドを用いてワクチン接種したウシは、組換えタンパク質FecAと反応したが、プラセボワクチン接種ウシからの血清は反応しなかった(図27)。これらのデータにより、ワクチンが金属調節タンパク質FecAを含有したことが確認された。また、これらのデータにより、Klebsiella pneumoniaeへの自然感染は、これらのタンパク質に対する強い免疫応答を誘導できないことを確認した。
実施例27からのウシを1日3回搾乳し、乳房の膨張、乳汁色の変化、フレーク状のまたは塊状の乳汁等の乳房炎の臨床的兆候についてモニターした。加えて、産乳量が通常レベルから低下しているウシのリストを毎日、農場経営者から牧夫に、乳房炎を確認するためのさらなる警告として提供した。ウシが乳房炎を有する疑いがある場合、2通りだが、独立した乳汁試料をNational Mastitis Councilの推奨慣行に従い、無菌で収集し、第一の試料が汚染されている場合(2を超える生物の単離)、第二の試料を検査することができる。
乳汁試料を、Veterinary Diagnostic Laboratoryに提出して、乳房炎事象に関する原因物質を決定した。好気性培養を、10μlを血液及びMacConkey寒天プレート上にプレーティングすることにより完了して、Klebsiella spp.、及び他の大腸菌群、例えば、E.coli spp、Enterobacter spp.、Citrobacter spp.、及びSerratia spp.を含む乳房炎病原体の存在及び同定を決定した。細菌同定手法は、州の診断検査室により行い、すべての分離株に関してMALDI−TOFによる細菌同定の確認を行った。2回目のワクチン接種の2週間以上後に発生した乳房炎事象は、試験の適格事象とみなした。
この試験のための泌乳1〜90日目のウシにおいて大腸菌群に起因すると確認された臨床的乳房炎は53例あり、Klebsiella乳房炎は20例あった。この発症率は、ワクチン有効性を判断するのに十分であった。
泌乳期の最初の90日間に大腸菌性乳房炎を有したウシは46頭であった。臨床的に罹患したウシの培養により同定される大腸菌群には、E.coli、Klebsiella、Enterobacter、Serratia及びCitrobacterが含まれる。これらのウシの30(30)頭は、プラセボ群(全体で225頭)であり、16頭はKlebsiella Pneumoniae 1571ワクチン群(全体で225頭)であった。ワクチン接種したウシにおける大腸菌性乳房炎の罹患率の47%減少は、統計学的に有意であった(p=0.0305)(図28)。
泌乳1〜90日目のウシにおいて大腸菌性乳房炎の53例の別々の症例があった。これらの事象の36(36)例は、プラセボ群のウシに由来し、17例は、Klebsiella Pneumoniae 1571ワクチン群のウシに由来した。ワクチン接種したウシにおける臨床的乳房炎の発症率の55%減少は、統計学的に非常に有意であった(p=0.0057)(図29)。
適切なワクチン防御により、酪農場では、大腸菌性乳房炎を有さないウシの割合が高くなることが期待される。図30は、大腸菌性乳房炎を有さないウシの割合を経時的に示し、プラセボ群のウシでは、Klebsiella Pneumoniae 1571ワクチン群のウシよりも早い速度で落ちる(すなわち、より多くのウシが大腸菌性乳房炎を有する)ことを実証する(p=0.02278)。
大腸菌性乳房炎を引き起こす最も一般的な生物は、Klebsiellaであり、続いてE.coliである。ウシが泌乳毎に4回、市販のJ5ワクチンでワクチン接種していた牛群においてこのように多くの大腸菌性乳房炎が見られたことは驚くベきことであった。乾燥させた肥料固形物の上にウシを寝かせることにより、高発症率の原因が部分的に明らかになる可能性がある。しかしながら、高攻撃に直面しても、Klebsiella pneumoniae 1571ワクチンを用いてワクチン接種したウシは、プラセボを用いてワクチン接種したウシと比較して、有意な防御を有した(図28及び29)。
酪農業における乳房炎に伴う別の大きな問題は再発性感染症である。単一の乳房炎エピソードの実際のコストはウシ及び乳汁の価格で変動するが、処置費、取替原価、及び販売可能な乳汁の低減からの経済的損失は、壊滅的であり得る。1991年に実施されたある実験では、1つの乳房炎エピソードのコストを107ドル/ウシとした(Hoblet et al.,1991,J.Am Vet Med.Assoc.,199:190−196)。これらのコストは、単一のウシに感染が再発したときにはもちろん増幅する。本試験では、再発性感染症は、プラセボ群において、Klebsiella pneumoniae 1571ワクチン群よりも頻繁に生じ、これは、表8に見ることができる。プラセボ群における9頭のウシがどのように再発性乳房炎事象を有し、5頭のウシが3または4回の再発性感染症を有したことに留意された。比較して、ワクチン接種群においては4頭のウシのみが、モニタリング期間に乳房炎の単回再発を有した。
Klebsiella乳房炎は、この牛群における最大の大腸菌性問題である。18頭のウシがその泌乳期の最初の90日間にKlebsiella乳房炎を有した。これらのウシのうち、14(14)頭が、プラセボ群(全体で225)であり、4頭のウシがKlebsiella Pneumoniae 1571ワクチン群であった(全体で225)(図31)。ワクチン接種群におけるKlebsiella乳房炎の罹患率の71%減少は、高く統計学的に有意であった(p=0.0171;)。前述のとおり、ISU Dairyの経験は、Klebsiella乳房炎を有するウシの60〜80%がその泌乳期間内に集団を離れるということである。臨床的Klebsiella乳房炎を有すると診断されたウシは、Klebsiella Pneumoniae 1571ワクチン群では4頭のみであったのに対し、プラセボ群では14頭であり、プラセボ群においてワクチン接種群よりも6〜8頭多くのウシがその泌乳期が終わる前に殺処分されるまたは死亡すると予測された。Klebsiella Pneumoniae 1571ワクチンを用いたワクチン接種は、乳房炎エピソードのコストを減らし、殺処分を減らすことも含む。
適切なワクチン防御により、酪農場では、Klebsiella乳房炎を有さないウシの割合が高くなることが期待される。図33は、Klebsiella乳房炎を有さないウシの割合を経時的に示し、プラセボ群のウシでは、Klebsiella Pneumoniae 1571ワクチン群のウシよりも早い速度で落ちる(すなわち、より多くのウシがKlebsiella乳房炎を有する)ことを実証する(p=0.0215)。
泌乳1〜90日目のウシにおいてKlebsiella乳房炎の20例の別々の症例があった。これらの事象の16(16)例は、プラセボ群のウシに由来し、この短い観察期間中に2頭のウシにおいてKlebsiella乳房炎が再発した。4例のみのKlebsiella乳房炎がKlebsiella Pneumoniae 1571ワクチン接種群に由来するウシで観察され、これらの動物の中で観察期間中に再発したものはなかった(図32)。ワクチン接種したウシにおけるKlebsiella乳房炎の発症率の75%減少は、統計学的に非常に有意であった(p=0.0056)。
ウシを、試験期間を通して1日3回搾乳し、生産された乳汁のポンド数は、酪農場でソフトウェアを介して電子的に記録した。ウシは、酪農改善協会(Dairy Herd Improvement Association)(DHIA)によりおおよそ1カ月毎に検査され、各ウシの乳汁中の体細胞数を決定し、Dairy Compソフトウェアに記録した。
ウシにより生成される乳汁の量は、全身健康状態の有用な指標であることができる。酪農業において、臨床的乳房炎が罹患したウシの産乳量を減少させることが周知である(Grohn,et.al.,2004,J.Dairy Sci.,87:3358−3374;Pinzon−Sanchez et al.,2011,J.Dairy Sci.,94:1873−1892)。本試験では、Klebsiella Pneumoniae 1571ワクチン接種ウシでは、最初の90DIMの間、プラセボウシよりも乳量が平均で1日あたり2.0ポンド多かった。90日間にわたって、これは、推定でウシ1頭あたり180ポンド多い乳量に相当することが予想され、その間にウシはピーク泌乳であると予測される。典型的には、酪農業では、ピーク乳汁のときに乳量が1ポンド増加するごとに、典型的な305日の泌乳期において200〜250ポンド多い乳量が得られる。それゆえ、ピーク泌乳でのワクチン接種ウシにおける2ポンドの増加は、典型的な305日の泌乳期に追加の400〜500ポンドの乳量をもたらすと予測される。90DIMまでのこの試験におけるウシ1頭あたりで生成される乳汁の平均ポンド数のグラフを図34に示す。
Klebsiella Pneumoniae 1571ワクチン接種ウシによる産乳量の統計学的に有意な増加(P=0.0000)は、2つの群間の臨床的乳房炎の差異のみに基づいて説明することは困難である。月毎の産乳量差異のより詳細な分析(図35)は、夏の数カ月における最大の差異を示す。興味深いことに、夏における条件は、大腸菌群が肥料中で生存するための理想的な条件を提供し、大腸菌性感染症の増加と関連する。
体細胞数(SCC)を日常的に使用して、乳汁の質をモニターし、典型的には臨床的乳房炎中に増加する。本試験で分析した臨床的乳房炎に加えて、SCCは、亜臨床的乳房炎の良好な指標でもある。乳汁結果において述べたように、臨床的乳房炎単独の場合にそのような産乳量の大きな増加が見られることは驚くべきことである。それゆえ、SCCを、被験動物における乳房健康状態の独立した指標として使用した。本試験では、体細胞数は、プラセボウシと比較して、Klebsiella pneumoniae 1571ワクチン接種ウシにおいて減少した。データは、カテゴリー的に、かつ数値的に分析することができる。カテゴリー的に、酪農業では、亜臨床的であっても、200,000超の細胞/mlの閾値を乳房炎の指標として使用する。プラセボでワクチン接種したウシからの乳汁は、200,000SCC/mlを25.4%の期間で上回っていたが、Klebsiella pneumoniae 1571ワクチンを用いてワクチン接種したウシからの乳汁は、このレベルを11.7%の期間でのみ上回った。Klebsiella pneumoniae 1571ワクチン群における臨床的に有意なSCCの保有率の54%減少は、統計学的に非常に有意であった(P=0.0000)。群間のSCCの定量的比較は、42%のワクチン接種におけるSCCの全体的な減少を示し、これも非常に有意であった(P=0.0000;付録C)。ワクチン接種ウシ間でのSCCの減少は、臨床的乳房炎の低減と一致しており、臨床的大腸菌性乳房炎のみならず、亜臨床的大腸菌性乳房炎にも起因する可能性がある産乳量の増加を説明するための見識を提供する。
本明細書中に記載される全特許、特許出願、及び公報、ならびに電子的に利用可能な資料(例えば、ヌクレオチド配列寄託、例えば、GenBank及びRefSeq、ならびにアミノ酸配列寄託、例えば、SwissProt、PIR、PRF、PDB、ならびにGenBank及びRefSeqの注釈付コード領域からの翻訳を含む)のすべての開示内容は、その全体が参照により組み込まれている。公報において参照される補足資料(例えば、補足表、補足図、補足材料及び方法、ならびに/または補足実験データ)も同様に、その全体が参照により組み込まれる。本出願の開示内容と参照により本明細書中に組み込まれる任意の文献の開示内容(複数可)との間に何らかの矛盾が存在する場合、本出願の開示内容が優先されるべきである。上述の詳細な説明及び実施例は、単に理解の明確化のために与えられている。これらから不必要に限定解釈してはならない。本発明は、示され記載される正確な詳細に限定されず、当業者にとって明らかである変更が、特許請求の範囲で定義される本発明内に含まれることになる。
別段の記載がない限り、本明細書及び特許請求の範囲の中で使用される成分の量、分子量等を表わす数値はいずれも、「約」という用語により、すべての場合において修飾されているものと理解されたい。したがって、これとは反対の記載が別途ない限り、本明細書及び特許請求の範囲中に記載される数値パラメータは概算値であり、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変動してよい。最低限でも、特許請求の範囲の同等物の原理を制限するものではないが、各数値パラメータを解釈する際には、少なくとも報告された有効桁数を考慮し、従来の端数処理の手法(rounding techniques)を用いるべきである。
発明の広い範囲を規定する数値範囲及びパラメータは概算値であるが、個々の実施例に記載した数値は、可能な限り正確に報告した。しかしながら、いずれの数値も、そのそれぞれの検査測定値に見られる標準偏差から生じる、必然的にある範囲を含有する。
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