JP2021059193A - 自転車 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の推進力アシスト機構よりも大きな踏力低減効果を得ることができる。【解決手段】推進力アシスト機構18は、クランク軸50よりも大きな開口を有するチェーンホイール板44、クランク軸50に嵌合される嵌合孔を有しペダル42にクランク52を介して連結された推進力アシスト板54、チェーンホイール板44を推進力アシスト板54に回動自在に支持する回動支持機構56、一方がチェーンホイール板44に支持され他方が推進力アシスト板54に支持され、ペダル42で推進力アシスト板54が回転して圧縮反力を発生する直動バネ部材58、を有し、回動支持機構56は、推進力アシスト板54が回転したときに、チェーンホイール板44の係合ピン62は直動バネ部材58の圧縮前に推進力アシスト板54の円弧状長孔60の下流端に係合し、圧縮後に上流端に係合する自転車。【選択図】図5

Description

本発明は自転車に係り、特に人がペダルを踏む踏力によって推進力をアシストさせる推進力アシスト機構を備えた自転車に関する。
通常の自転車と原動機付き自転車との中間的な自転車として電動アシスト自転車が良く知られている。この電動アシスト自転車は、自転車に搭載しているモータによって自転車の推進力をアシストするので、ペダルを踏む踏力を低減することができる。このため、踏力の弱い人でも疲れずに自転車に乗ることができるだけでなく坂道を簡単に上ることができる。
このように電動アシスト自転車は大きな利点がある反面、通常の自転車に比べて価格が高いという問題がある。
このような背景から、モータのような電動力を使用しないで、人がペダルを踏む踏力を利用して推進力をアシストさせることで通常の自転車に比べて踏力低減効果を得ることができ、且つ電動アシスト自転車よりも低価格な自転車が提案されている。
特許文献1のパワーギアのアシストを設けた自転車は、自転車の後方のチェーンギアにゴムのバネを反発させて回転力を強くするパワーギアを設け、前のギアに設けたクランクのペダルを踏んで前のギアからチェーンで後ろのギアに回転力を伝えると後ろの軸に設けたパワーギアのゴムのバネの反発力が働くので、強い回転力で坂道を登れるとされている。
また、非特許文献1には、特許文献1と同様のゴムのバネ(ドーナツ状のシリコンゴム)をチェーンホイール(チェーンギアともいう)に複数個取り付け、ペダルを踏む踏力でシリコンゴムを圧縮し、その圧縮反力でチェーンホイールの回転をアシストするギアシステムが開示されている。また、非特許文献1では、自転車にギアシステムを取り付ける際に車体のタイプや乗る人の踏力に応じて3種類の硬度(ソフト、ミディアム、ハード)のシリコンゴムを選択することができるとされている。これにより、自転車に乗る人に最適な圧縮反力のシリコンゴムを選ぶことができ乗り心地が良くなるとされている。
なお、上述の電動アシストに対して人がペダルを踏む踏力によって推進力をアシストさせる機構のことを推進力アシスト機構と言うことにする。
実用新案登録第3221432号公報
株式会社Olympic、"ペダルを踏む力を推進力に変える画期的なクランクギア! 『FREE POWER(フリーパワー)』"、[online]、掲載年月日不明、株式会社Olympic、[令和1年9月2日検索]、インターネット<URL:https://www.olympic-corp.co.jp/cycle/c20170913>
しかしながら、特許文献1や非特許文献1は、通常の自転車に比べれば踏力低減効果を得られるかもしれないが、まだまだ満足できるほどの踏力低減効果を得ることはできていない。このような背景から、更なる踏力低減効果を得ることができる推進力アシスト機構が要望されている。
また、特許文献1や非特許文献1は、ギアシステムに採用するシリコンゴムの硬度によって圧縮反力が決まってしまうので、例えば踏力の大きな男性と踏力の小さな女性が1台の自転車を兼用で使用する場合に問題がある。即ち、大きな圧縮反力を得るために硬度の硬いシリコンゴムを選択すると、踏力の小さな女性は脚に負担がかかり過ぎて乗り心地が悪くなる。逆に、脚の負担を考えて小さな圧縮反力を得るために硬度の柔らかいシリコンゴムを選択すると、踏力の大きな男性にとって物足りない。
そうかといって、ギアシステムの構造上、自転車を男性が使用する場合と女性が使用する場合とで、その都度、ギアシステムのシリコンゴムの硬度を変えることはできない。ギアシステムのシリコンゴムの硬度を変えるためには自転車店に行って変えてもらう必要がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、従来の推進力アシスト機構
よりも大きな踏力低減効果を得ることができる自転車を提供することを目的とする。
更には、推進力アシスト機構の直動バネ部材を圧縮するのに必要な圧縮力を、自転車に乗る人が自分で簡単に可変できる自転車を提供することを目的とする。
前記目的を達成するための自転車は、ペダルを踏む踏力によって推進力をアシストさせる推進力アシスト機構を駆動部に組み込んだ自転車において、推進力アシスト機構は、後輪のスプロケットとの間にチェーンが架け渡されると共に中心部にクランク軸の軸径よりも大きな開口が形成されたチェーンホイール板と、チェーンホイール板に対向して設けられ、中心にクランク軸に嵌合される嵌合孔を有すると共にペダルにクランクを介して連結された推進力アシスト板と、チェーンホイール板を推進力アシスト板にクランク軸の軸芯を中心に回動自在に支持する回動支持機構と、チェーンホイール板と推進力アシスト板との間であって軸芯周りに等間隔を置いて複数個配置され、一方端がチェーンホイール板に回動自在に支持されると共に他方端が推進力アシスト板に回動自在に支持され、ペダルを踏んで推進力アシスト板が回転することによって圧縮されて圧縮反力を発生する直動バネ部材と、を有し、回動支持機構は、チェーンホイール板と推進力アシスト板とのうちの一方に設けられ、軸芯周りに等間隔を置いて円弧状に直動バネ部材の数だけ形成されると共に直動バネ部材の圧縮長さと同等の円弧長さの円弧状長孔と、チェーンホイール板と推進力アシスト板とのうちの他方に形成され、円弧状長孔にそれぞれ係合する複数の係合ピンと、を有し、ペダルを踏んで推進力アシスト板が回転したときに、係合ピンは直動バネ部材の圧縮前に円弧状長孔における推進力アシスト板の回転方向下流端に係合すると共に圧縮後に回転方向上流端に係合することを特徴とする。
本発明の自転車によれば、推進力アシスト機構の回動支持機構を上記の如く構成することによって、直動バネ部材を圧縮するために推進力アシスト板が回転しても、直動バネ部材の圧縮動作中即ち係合ピンが円弧状長孔の回転方向上流端に突き当たるまでは、チェーンホイール板は連れ回りしない。
これにより、直動バネ部材の圧縮動作中はチェーンホイール板を回転させるための踏力は必要なく、直動バネ部材を圧縮させるだけの小さな踏力でペダルを踏めばよい。そして、直動バネ部材の圧縮動作が完了して圧縮反力が発生した時点で、チェーンホイール板を回転させるため踏力が必要になるが、そのときには直動バネ部材の圧縮反力がチェーンホイール板の回転をアシストする。
即ち、本発明における回動支持機構を設けることによって、直動バネ部材を圧縮するための踏力と、チェーンホイール板を回転させるための踏力とを縁切りすることができると共に、チェーンホイール板を回転させる時に直動バネ部材の圧縮反力を利用することができる。これにより、従来の推進力アシスト機構よりも大きな踏力低減効果を得ることができる。
また、本発明における回動支持機構を有することによって、推進力アシスト板の回転でチェーンホイール板が連れ回りしないので、直動バネ部材を最大限まで圧縮することができる。
このように、本発明の自転車は、推進力アシスト機構を効果的に発揮することができるので、自転車を楽に漕ぐことができると共に坂道も楽に上ることができる。特に、推進力アシスト機構の直動バネ部材のバネ力が大きい場合に、チェーンホイール板は連れ回りし易いので、本発明における回動支持機構は特に有効である。
本発明の自転車において、直動バネ部材は圧縮ばね又はガスダンパであることが好ましい。
潰すことで圧縮反力を得る従来のドーナツ状のシリコンゴムよりも直線的に圧縮動作することで圧縮反力を得る圧縮ばねやガスダンパの直動バネ部材の方が、円弧状長孔を係合ピンが移動する回動支持機構との組み合わせから好ましい。
本発明の自転車において、回動支持機構は、係合ピンに遊嵌された円筒状のカラー部材を更に有することが好ましい。
これにより、円弧状長孔を係合ピンが移動するときにカラー部材が転がるので係合ピンの移動がスムーズになる。したがって、直動バネ部材の圧縮動作をスムーズに行うことができると共に、推進力アシスト板の回転力がチェーンホイール板に一層伝達され難くできる。
本発明の自転車において、推進力アシスト機構とペダルとの関係は、少なくともペダルの上下死点の近傍で直動バネ部材が圧縮動作を行うように設計されていることが好ましい。これは、自転車のペダルを踏む場合、ペダルの上下死点の近傍では脚に力が入り難いからである。
本発明の自転車において、推進力アシスト機構は、チェーンホイール板に回動自在に支持される直動バネ部材の一方端支持位置と、クランク軸の軸芯との距離を調整することにより直動バネ部材を圧縮するのに必要な圧縮力を可変する圧縮力可変手段を更に有することが好ましい。
これにより、推進力アシスト機構の直動バネ部材を圧縮するのに必要な圧縮力を、自転車に乗る人の踏力に応じて自分で簡単に可変できる。したがって、踏力の大きな男性と踏力の小さな女性が1台の自転車を兼用で使用することができる。
本発明の自転車において、圧縮力可変手段は、チェーンホイール板に形成され、自然長な状態の直動バネ部材の他方端を揺動中心として直動バネ部材が揺動したときに直動バネ部材の一方端が描く揺動軌跡に沿って複数個形成されたボルト孔と、ボルト孔に直動バネ部材の一方端を回動自在に支持するボルト部材と、を有し、複数個のボルト孔を選択することにより直動バネ部材の一方端と前記軸芯との距離を調整する。
これは、圧縮力可変手段の一態様であり、自然長な状態の直動バネ部材とは、直動バネ部材が圧縮される前の状態を言う。
本発明の自転車において、圧縮力可変手段は、チェーンホイール板に形成され、自然長な状態の直動バネ部材の他方端を揺動中心として直動バネ部材が揺動したときに直動バネ部材の一方端が描く揺動軌跡に一致する円弧状の揺動用長孔と、直動バネ部材の一方端に設けられ、揺動用長孔に係合して揺動自在な揺動ピンと、揺動ピンを揺動用長孔の一方側に付勢する付勢バネと、付勢バネの付勢力に対抗して揺動ピンを揺動用長孔の他方側にロックするフック部材と、を有し、フック部材で揺動ピンをロックする場合とロックしない場合とを選択することにより直動バネ部材の一方端と軸芯との距離を調整する方法である。
これは、圧縮力可変手段の別態様を示したものである。
本発明の自転車において、直動バネ部材の他方端を中心とした揺動軌跡の揺動角度が10°から20°の範囲になるように形成されていることが好ましい。
本発明の自転車において、推進力アシスト板とクランクとは分割可能でクランク軸を介して連結されており、クランクはクランク軸に着脱自在に嵌合されると共にクランクとクランク軸との嵌合形状が鋸歯形状であることが好ましい。
これにより、推進力アシスト機構に対する軸芯周り方向のペダルの位置を細かく調整できるので、上記したペダルの上下死点の近傍で直動バネ部材が圧縮動作を行うように推進力アシスト機構とペダルとの関係を簡単に設定できる。
本発明の自転車によれば、従来の推進力アシスト機構よりも大きな踏力低減効果を得ることができる。更には、推進力アシスト機構の直動バネ部材を圧縮するのに必要な圧縮力を、自転車に乗る人が自分で簡単に可変できる。
本発明の自転車の全体構成を説明する説明図 推進力アシスト機構の構成部材を説明する図で、直動バネ部材として圧縮ばねを使用した説明図 推進力アシスト機構の構成部材を説明する図で、直動バネ部材としてガスダンパを使用した説明図 推進力アシスト機構の分解図 推進力アシスト機構の組立図 推進力アシスト機構の係合ピンにカラー部材を設けた説明図 推進力アシスト板とクランクとのクランク軸への取り付け構造を説明する説明図 圧縮力可変手段の一態様の説明図 圧縮力可変手段の別態様の説明図
以下添付図面に従って、本発明に係る自転車の好ましい実施の形態について詳述する。
[自転車の全体構成]
図1は、本発明の実施の形態の自転車の全体構成を説明する説明図である。
なお、以下の図の説明において、自転車の前輪側を前側と言い、後輪側を後側と言うことにする。また、自転車の前後方向に水平な直交方向を自転車の左右方向と言うことにする。
図1に示すように、自転車10は、主として、自転車10の骨組み部分を形成する本体部12と、本体部12に取り付けられた車輪部14と、自転車10を走行駆動する駆動部16と、駆動部16に組み込まれた推進力アシスト機構18とで構成される。
(本体部)
本体部12は、主としてフレーム20と、フレーム20から斜め下方前側に延設されたフロントフォーク22と、フロントフォーク22にステム24を介して着脱自在に連結されたハンドルバー26とで構成され、ハンドルバー26にブレーキバー26Aを有する。また、フレーム20とフロントフォーク22とは一体的に形成されると共にフロントフォーク22の下端部に前輪36が回転自在に支持される。
フレーム20は、ベースフレーム28と、ベースフレーム28に後輪38を回転自在に支持するステイフレーム30とで構成される。ベースフレーム28は、自転車10の前後方向に略水平に形成されたトップチューブ28Aと、トップチューブ28Aの前端部から斜め下方前側に延設された短尺なヘッドチューブ28Bと、ヘッドチューブ28Bの下端から斜め下方後側に延設されたダウンチューブ28Cと、トップチューブ28Aの後端部から斜め下方前側に延設されてダウンチューブ28Cの下端部に接続されるシートチューブ28Dとで略逆三角形に形成される。そして、シートチューブ28Dの上端部に、シートピラー32を介してサドル34が支持される。
ステイフレーム30は、トップチューブ28Aの後端部から斜め下方後側に延設されたシートステイ30Aと、ダウンチューブ28Cとシートチューブ28Dとの接続部から略水平後側に延設されたチェーンステイ30Bとで構成され、シートステイ30Aとチェーンステイ30Bとの延設された先端部同士が接続される。また、ダウンチューブ28Cとシートチューブ28Dとの接続部には、図示しない軸受(ボトムブラケット)が設けられ、軸受にクランク軸50が回動自在に支持される。
(車輪部)
車輪部14は、前輪36と後輪38とで構成され、それぞれの車輪36,38にはハブ36A,38A、ハブ36A,38Aから放射状に延びた多数のスポーク36B,38B、タイヤリング36C,38C、及びタイヤ36D,38Dを備える。前輪36と後輪38とには、ブレーキバー26Aによって操作されるブレーキ40,40がそれぞれ設けられる。
(駆動部)
駆動部16は、チェーンホイール板44と、後輪38のスプロケット46との間に無端状のチェーン48が架け渡されており、ペダル42の踏力によってチェーンホイール板44の回転を後輪38に伝達して後輪38を回転させることで自転車10を走行させるものである。
本発明の自転車10は、駆動部16に、ペダル42を踏む踏力によって推進力をアシストさせる推進力アシスト機構18を組み込んだ。以下、図2から図9によって推進力アシスト機構18について説明する。
[推進力アシスト機構の構成]
図2及び図3は、推進力アシスト機構18の主要な構成要素を示したものであり、図2は直動バネ部材58として圧縮ばね58Aを使用した場合、図3は直動バネ部材58としてガスダンパ58Eを使用した場合である。図4は、直動バネ部材58として圧縮ばね58Aを使用した場合の推進力アシスト機構18の分解図であり、各部材の連結関係を示している。図5は、図4の組立図であり、駆動部16に推進力アシスト機構18を組み込んだ組立図である。
なお、自転車10を走行させるときに推進力アシスト機構18の構成要素であるチェーンホイール板44及び推進力アシスト板54が回転する方向を下流側とし、逆方向を上流側と言うことにする。
図2から図5に示すように、推進力アシスト機構18は、主として、図1で説明した後輪38のスプロケット46との間にチェーン48が架け渡されるチェーンホイール板44と、推進力アシスト板54と、チェーンホイール板44を推進力アシスト板54にクランク軸50の軸芯Sを中心に回動自在に支持する回動支持機構56と、ペダル42を踏んで推進力アシスト板54が回転することによって圧縮されて圧縮反力を発生する複数個の直動バネ部材58と、で構成される。
なお、図5の推進力アシスト機構18の組立図に示すように、駆動部16に推進力アシスト機構18を組み込むことにより、クランク軸50の軸芯Sと、推進力アシスト板54の回転中心である軸芯Sと、チェーンホイール板44の回転中心である軸芯Sとは一致する。
<チェーンホイール板>
図2及び図3の(A)に示すように、チェーンホイール板44は、円板状に形成され、外周縁にはチェーン48(図1参照)が噛み合うギア形状が形成される。また、チェーンホイール板44の中央部には、クランク軸50(図4参照)の軸径よりも大きく軸芯Sを中心とした円形な中央開口部44Aが形成される。これにより、駆動部16に推進力アシスト機構18を組み込んだときに、クランク軸50はチェーンホイール板44の中央開口部44Aに接触することなく遊挿された状態になる。
また、チェーンホイール板44の外周縁と中央開口部44Aとの間のホイール面44Bには、軸芯S周りに沿って等間隔(120°間隔)に略四角形状な3個のホイール面開口部44C、44C…が形成される。3個のホイール面開口部44Cは、それぞれの縊れ開口部44D、44D…を介して中央開口部44Aに繋がっている。これにより、ホイール面44Bには、中央開口部44Aの側に突き出た3個の突出部44E,44E…が形成される。3個の突出部44Eには、それぞれ係合ピン62が設けられる。
また、ホイール面44Bであって3個のホイール面開口部44Cの軸芯S周り下流側位置には、チェーンホイール板44に直動バネ部材58の一方端を回動自在に支持するためのボルト孔44F,44Gがそれぞれ形成される。
なお、係合ピン62については、後記する回動支持機構56のところで詳しく説明し、ボルト孔44F,44Gについては、後記する圧縮力可変手段68のところで詳しく説明する。
<推進力アシスト板>
図4に示すように、チェーンホイール板44の外側(ペダル42の側)にチェーンホイール板44に対向して推進力アシスト板54が配設される。
図2の(C)及び図3の(C)に示すように、推進力アシスト板54は、外周部に等間隔(120°間隔)で直角三角形状の3個の突起部54A,54A…を有し、推進力アシスト板54の全体形状として風車型手裏剣に似た形状に形成される。そして、3個の突起部54Aの直角三角形状の頂点近傍には、推進力アシスト板54に直動バネ部材58の他方端を回動自在に支持するためのボルト孔54Bがそれぞれ形成される。即ち、推進力アシスト板54には、軸芯S周りに等間隔(120°間隔)で3個のボルト孔54B、54B…が形成される。
また、推進力アシスト板54は、軸芯Sを中心とした中央部に正方形な嵌合孔54Cが形成され、この嵌合孔54Cに径方向断面が正方形なクランク軸50(図4参照)が嵌合される。また、図4に示すように、クランク52の片端側(ペダル42の反対側)には、正方形な嵌合孔52Aが形成される。そして、クランク52の正方形な嵌合孔52Aが正方形なクランク軸50に嵌合され、ネジ52Bでクランク軸50に固定される。これにより、ペダル42を踏むことによってクランク52を介してクランク軸50と推進力アシスト板54とが一体的に回転する。
本実施の形態では、推進力アシスト板54とクランク52とは分割されており、クランク軸50を介して連結されるようにしたが、推進力アシスト板54にクランク52を直接固定することもできる。要は、ペダル42を踏むことでクランク52を介して推進力アシスト板54が回転すればよい。
また、推進力アシスト板54には、軸芯S周りに3個の円弧状長孔60が形成されているが、回動支持機構56において詳しく説明する。
<回動支持機構>
図2及び図3に示すように、回動支持機構56は、主として、推進力アシスト板54の軸芯S周りに等間隔(120°間隔)で形成された3個の円弧状長孔60,60…と、チェーンホイール板44の軸芯S周りに等間隔(120°間隔)で形成され、推進力アシスト板54の円弧状長孔60にそれぞれ係合する3個の係合ピン62,62…と、で構成される。
即ち、円弧状長孔60と係合ピン62とは、直動バネ部材58の数だけ形成されると共に、円弧状長孔60は直動バネ部材58の圧縮長さと同等の円弧長さに形成される。また、係合ピン62は、チェーンホイール板44における3個の突出部44Eの軸芯S周り下流位置に設けられ、ホイール面44Bに対して直角方向に立設される。
そして、推進力アシスト板54の3個の円弧状長孔60に、チェーンホイール板44の3個の係合ピン62をそれぞれ係合する。係合ピン62が推進力アシスト板54から外れないように、係合ピン62の先端部には円弧状長孔60の幅よりも大きな円板状の留め金62A(図5参照)が設けられる。これにより、クランク軸50の軸芯Sを回動中心として、チェーンホイール板44を推進力アシスト板54に回動自在に支持する。なお、留め金62Aの推進力アシスト板54に接する面には、滑り剤をコーティングすることが好ましい。
図6は回動支持機構56の好ましい態様であり、図6の(A)のチェーンホイール板44に設けた係合ピン62に、図6の(B)に示すように円筒状のカラー部材62Bを遊嵌するようにしたものである。
図6の(B)に示すように、カラー部材62Bの内径は、係合ピン62を回転軸としてスムーズに回転できる大きさに形成される。また、カラー部材62Bは滑り性を有するプラスチックで形成することができると共に係合ピン62の外周面又はカラー部材62Bの内周面に潤滑剤を塗布することが一層好ましい。
これにより、円弧状長孔60を係合ピン62が移動するときにカラー部材62Bが転がるので係合ピン62の移動がスムーズになる。
また、係合ピン62の根元には、中心に開口を有する円板状の滑り板62Cがチェーンホイール板44の面に固定されており、カラー部材62Bが転がったときにチェーンホイール板44との接触抵抗が小さくなるようにしている。
カラー部材62B及び滑り板62Cの材料としては、例えばフッ素樹脂系の材料を使用することができる。
本実施の形態では、上記の如く3個の直動バネ部材58を設けた場合で説明しているので、円弧状長孔60及び係合ピン62も3個になる。また、本実施の形態における回動支持機構56では、3個の円弧状長孔60を推進力アシスト板54に設けると共に3個の係合ピン62をチェーンホイール板44に設けた場合であるが、円弧状長孔60をチェーンホイール板44に設け、係合ピン62を推進力アシスト板54に設けることもできる。
<直動バネ部材>
図2の(B)及び図3の(B)に示すように、直動バネ部材58は、バネ本体58A,58Eと、バネ本体58A,58Eの両端部をチェーンホイール板44と推進力アシスト板54とに回動自在に支持するための一対の固定金具58B,58Cとで構成される。
一対の固定金具58B,58Cにおいて、直動バネ部材58の一方端をチェーンホイール板44に回動自在に支持するための固定金具を第1固定金具58Bとする。また、直動バネ部材58の他方端を推進力アシスト板54に回動自在に支持するための固定金具を第2固定金具58Cとする。したがって、直動バネ部材58の一方端と第1固定金具58Bとは同じ意味に、また直動バネ部材58の他方端と第2固定金具58Cとは同じ意味に使用する場合もある。
第1固定金具58Bと第2固定金具58Cには、ボルト部材64が遊貫する貫通孔58Dが形成される。ボルト部材64は、先端部のみに雄ネジ64Aが刻設され、雄ネジ64Aにナット部材66に刻設された雌ネジ(図示せず)が螺合される。
図4に示すように、直動バネ部材58は、チェーンホイール板44と推進力アシスト板54との間であって軸芯S周りに等間隔(120°間隔)を置いて3個配置される(図4参照)。
そして、ボルト部材64及びナット部材66によって、直動バネ部材58の第1固定金具58Bがチェーンホイール板44に回動自在に支持されると共に第2固定金具58Cが推進力アシスト板54に回動自在に支持される。
(推進力アシスト機構の各部材の組み立て方法)
次に、図4の分解図及び図5の組立図を使用して、推進力アシスト機構18の主たる構成要素であるチェーンホイール板44、推進力アシスト板54、回動支持機構56、直動バネ部材58の各部材の組み立て方法を説明する。
先ず、チェーンホイール板44に推進力アシスト板54を対向させて、チェーンホイール板44の3個の係合ピン62と推進力アシスト板54の3個の円弧状長孔60とを係合させる。この状態で、チェーンホイール板44と推進力アシスト板54との間に3個の直動バネ部材58を取り付ける。
即ち、チェーンホイール板44の第1ボルト孔44F又は44Gと直動バネ部材58の第1固定金具58Bの貫通孔58Dとにボルト部材64を挿通し、ボルト部材64の先端部をナット部材66に螺合する。また。推進力アシスト板54のボルト孔54Bと直動バネ部材58の第2固定金具58Cの貫通孔58Dとにボルト部材64を挿通し、ボルト部材64の先端部をナット部材66に螺合する。
これにより、図5に示すように、チェーンホイール板44と推進力アシスト板54との間であって軸芯S周りに等間隔(120°間隔)を置いて3個の直動バネ部材58が配置されると共に、チェーンホイール板44の3個の係合ピン62が推進力アシスト板54の3個の円弧状長孔60にそれぞれ係合された推進力アシスト機構18が構築される。
図5の(A)は直動バネ部材58の圧縮前の図であり、(B)は直動バネ部材58の圧縮後の図である。図5の(A)と(B)の対比から分かるように、直動バネ部材58の圧縮前において、推進力アシスト板54の回転方向(矢印X方向)からみたときに、係合ピン62は円弧状長孔60における下流端に係合し、圧縮後に上流端に係合するようになっている。
また、図5に示すように、3個の直動バネ部材58は、チェーンホイール板44に形成された3個のホイール面開口部44Cの位置に配置されることになる。これにより、直動バネ部材58の圧縮動作がチェーンホイール板44によって阻害されないようにしている。
次に、チェーンホイール板44を回動支持機構56によって回動自在に支持した推進力アシスト板54を、チェーンホイール板44が内側(フレーム20の側)になるようにしてクランク軸に取り付ける。即ち、推進力アシスト板54の中心部に形成された正方形な嵌合孔54Cを径断面形状が正方形なクランク軸50に嵌合させる。この場合、チェーンホイール板44の中央開口部44Aはクランク軸50に接触しない。
更に、ペダル42が取り付けられたクランク52の片端側の正方形な嵌合孔52Aをクランク軸50に嵌合してネジ52Bで止める。
これにより、推進力アシスト機構18は、図5から分かるように、ペダル42を踏んで推進力アシスト板54が回転することによって直動バネ部材58が圧縮されるので、直動バネ部材58には圧縮反力を発生する。
次に、上記の如く構成された自転車10における推進力アシスト機構18の作用について説明する。
(推進力アシスト機構の作用)
図5の(A)及び(B)に示すように、自転車10が進む方向にペダル42を踏んで推進力アシスト板54が矢印X方向に回転すると、推進力アシスト機構18の直動バネ部材58が矢印Z方向に圧縮されて圧縮反力が発生する。この圧縮反力が推進力アシスト板54に回動自在に支持されたチェーンホイール板44の回転力を増大させる。これにより、チェーンホイール板44の回転力が増大するので、自転車10の推進力をアシストすることができる。
かかる推進力アシスト機構18において、自転車10が進む方向に推進力アシスト板54が矢印X方向に回転して直動バネ部材58が矢印Z方向に圧縮されると(図5の(A)参照)、チェーンホイール板44の係合ピン62は直動バネ部材58の圧縮動作と並行して推進力アシスト板54の円弧状長孔60の下流端から上流端に向けて矢印Y方向に移動する移動動作を行う(図5の(B)参照)。そして、直動バネ部材58の圧縮動作が完了すると、係合ピン62は円弧状長孔60の上流端に突き当たるので、ペダル42を踏んで推進力アシスト板54を回転させる回転力がチェーンホイール板44に直接的に伝達してチェーンホイール板44を回転させる。
ところで、チェーンホイール板44はチェーン48及びスプロケット46を介して後輪38に繋がっており、後輪38は地面に接地している。このため、チェーンホイール板44には地面との間での回転抵抗力が働いており、チェーンホイール板44を回転させるためには大きな踏力でペダル42を踏む必要がある。特に、自転車10の漕ぎ始めや坂道では、自転車10の走行に対して大きな負荷がかかっており、大きな踏力でペダル42を踏む必要がある。
しかし、本発明の自転車10によれば、駆動部16に組み込んだ推進力アシスト機構18は、直動バネ部材58を圧縮するために推進力アシスト板54が回転しても、直動バネ部材58の圧縮動作中、即ち係合ピン62が円弧状長孔60の上流端に突き当たるまでは、チェーンホイール板44は連れ回りしない。したがって、直動バネ部材58の圧縮動作中はチェーンホイール板44を回転させるための踏力は必要なく、直動バネ部材58を圧縮させるだけの小さな踏力でペダル42を踏めばよい。
そして、直動バネ部材58の圧縮動作が完了して圧縮反力が発生した時点で、地面との間に回転抵抗力が働いたチェーンホイール板44を回転させるため大きな踏力が必要になるが、そのときには直動バネ部材58の圧縮反力がチェーンホイール板44の回転をアシストする。
即ち、推進力アシスト機構18の回動支持機構56によって、直動バネ部材58を圧縮するための踏力と、チェーンホイール板44を回転させるための踏力とを縁切りすることができ、しかもチェーンホイール板44を回転させる時に直動バネ部材58の圧縮反力を最大限利用することができる。
これにより、直動バネ部材58を圧縮する圧縮動作中は圧縮力に必要な踏力だけでペダル42を踏めばよいので、自転車10の漕ぎ始めや坂道走行においてペダル42を楽に漕ぐことができる。そして、直動バネ部材58の圧縮後にチェーンホイール板44を回転させるためのアシストを行う。したがって、従来の推進力アシスト機構よりも大きな踏力低減効果を得ることができる。
ところで、直動バネ部材58のバネの強さは、小さ過ぎると大きな圧縮反力を得ることができず、大き過ぎると直動バネ部材58を圧縮するための大きな踏力が必要になる。
直動バネ部材58のバネの強さや直動バネ部材58の設置数は、次のことを目安に設計するとよい。即ち、自転車10の走行に大きな負荷がかからない平坦な道を走行しているときはペダル42を踏んでも直動バネ部材58の圧縮動作が小さくなるように設計する(圧縮動作しない場合も含む)。直動バネ部材58のバネの強さが、平坦な道を走行しているときでもペダル42を踏んだときに大きく圧縮動作するほど弱い場合、大きな圧縮反力を得られないだけでなく、ペダル42の踏み心地が悪くなる。
そして、自転車10の走行に大きな負荷がかかる漕ぎ始めや坂道を走行しているときはペダル42を踏むと直動バネ部材58が圧縮動作するように設計する。
換言すると、自転車10の漕ぎ始めや坂道走行のときのみ推進力アシスト機構18が働いて、直動バネ部材58を圧縮する踏力と、チェーンホイール板44を回転させるための踏力とを縁切りするように、直動バネ部材58のバネの強さや直動バネ部材58の設置数を設計する。
したがって、本実施の形態のように、直動バネ部材58を軸芯S周りに直列に3個配置する場合、直動バネ部材58のバネの強さは500N(ニュートン)を中心として400〜600N(ニュートン)の範囲で、3個直列の合計では1500Nを中心として1200〜1800Nの範囲であることが好ましい。
なお、回動支持機構56を上記の如く構成したが、直動バネ部材58を圧縮するための踏力と、チェーンホイール板44を回転させるための踏力とを縁切りし、且つチェーンホイール板44を回転させる時に直動バネ部材の圧縮反力を利用することができる機構であれば、他の機構も使用可能である。
ちなみに、本発明における回動支持機構56を有しない場合、推進力アシスト板54の回転で直動バネ部材58を圧縮する圧縮動作中に推進力アシスト板54の回転力が直動バネ部材58を介してチェーンホイール板44に直接的に伝達される。これにより、直動バネ部材58の圧縮動作中に推進力アシスト板54の回転に連動してチェーンホイール板44を連れ回りさせようとする。
即ち、直動バネ部材58を圧縮するための踏力と、チェーンホイール板44を回転させるための踏力とを縁切りすることができないので、大きな踏力を必要とする。これにより、直動バネ部材58の圧縮動作中は脚に大きな負荷がかかるので、直動バネ部材58を設けた踏力低減効果が十分に発揮されない。
また、本発明における回動支持機構56を有することによって、推進力アシスト板54の回転でチェーンホイール板44が連れ回りしないので、直動バネ部材58を最大限まで圧縮することができる。これにより、直動バネ部材58の圧縮反力を自転車走行のアシストに最大限に活用することができる。
このように、本発明の自転車10は、推進力アシスト機構18を効果的に発揮することができるので、自転車10を楽に漕ぐことができると共に坂道も楽に上ることができる。特に、推進力アシスト機構18の直動バネ部材58のバネが強い(バネ力が大きい)場合に、チェーンホイール板44は連れ回りし易いので、本発明における回動支持機構56は特に有効である。
推進力アシスト機構18において、直動バネ部材58は圧縮ばね58A(図2)又はガスダンパ58E(図3)であることが好ましい。
潰すことで圧縮反力を得る従来のドーナツ状のシリコンゴムよりも直線的に圧縮動作することで圧縮反力を得る圧縮ばね58Aやガスダンパ58Eの直動バネ部材58の方が、円弧状長孔60を係合ピン62が移動する回動支持機構56との組み合わせから好ましい。
また、図5の(A)に示すように、推進力アシスト機構18は、少なくともペダル42の上下死点の近傍で直動バネ部材58が圧縮動作を行うように設計されていることが好ましい。この場合、ペダル42の上下死点の近傍で圧縮動作を行えばその他のペダル位置で直動バネ部材58の圧縮動作を行ってもよいことは勿論である。
自転車10のペダル42を漕ぐときに、ペダル42の上下死点の近傍では脚に力が入り難く、上下死点から90°の近傍では脚に力が入り易い。これは、サドル34に座ってペダル42を踏んだときの膝から折れ曲がる脚の角度が、上下死点の近傍では脚に力が入り難い角度であり、上下死点から90°の近傍では脚に力が入り易い角度であるためである。
したがって、本発明のように、少なくともペダル42の上下死点の近傍で直動バネ部材58が圧縮動作するように設計すれば、脚に力が入り難い上下死点でも楽にペダル42を踏むことができる。
図7は、ペダル42の上下死点の近傍で直動バネ部材58が圧縮動作するための推進力アシスト板54とクランク52とのクランク軸50への取り付け構造を示したものである。なお、図7にはチェーンホイール板44は省略して図示している。
図7に示すように、推進力アシスト板54とクランク52とは分割可能な構造に形成される。そして、推進力アシスト板54とクランク52とは、クランク軸50を介して連結されるようにする。クランク軸50は、自転車10のフレーム20に近い基端部50Aの径方向断面の形状が正方形に形成されると共に、先端部50Bは鋸歯形状に形成される。
また、推進力アシスト板54の中心に形成される嵌合孔54Cはクランク軸50の正方形な基端部50Aに係合するように正方形な孔として形成される。一方、図4では、クランク52の嵌合孔52Aは正方形で示したが、図7ではクランク軸50の先端部50Bの鋸歯形状に嵌合する鋸歯形状の孔として形成される。
これにより、推進力アシスト機構18に対する軸芯S周り方向のペダル42の位置を細かく調整できるので、上記したペダル42の上下死点の近傍で直動バネ部材58が圧縮動作を行うように推進力アシスト機構18とペダル42との関係を簡単に設定できる。
<圧縮力可変手段>
本発明の実施の形態の自転車10では、踏力の異なる人が兼用しても互いに満足できるように、直動バネ部材58を圧縮するための圧縮力を自転車に乗る人が自分で簡単に調整できる圧縮力可変手段68を推進力アシスト機構18に組み込むことが好ましい。次に、図8及び図9を使用して、圧縮力可変手段68について説明する。
図8及び図9に示すように、圧縮力可変手段68は、直動バネ部材58の他方端(推進力アシスト板54に支持されている側)を揺動中心として直動バネ部材58を揺動させて直動バネ部材58の一方端(チェーンホイール板44に支持されてる側)とクランク軸50の軸芯Sとの距離を調整することにより構成される。
この場合、直動バネ部材58は直線的に圧縮されるので、直動バネ部材58を揺動させることで直動バネ部材58の一方端と軸芯Sとの距離を精度良く調整できる。
図8は、圧縮力可変手段68の一態様を示す説明図である。なお、図8では、1個の直動バネ部材58のみにボルト部材64とナット部材66を図示したが、他の直動バネ部材58についても同様である。
図8の圧縮力可変手段68は、チェーンホイール板44に形成された複数個のボルト孔44F,44Gと、ボルト孔44F,44Gに直動バネ部材58の一方端を回動自在に支持するボルト部材64及びナット部材66とで構成される。複数個のボルト孔44F,44Gは、直動バネ部材58の一方端(チェーンホイール板44に支持されている側)が描く揺動軌跡に沿って複数個形成される。
なお、図8では、図2及び図3で示したように、ボルト孔44F,44Gとして、クランク軸50の軸芯Sから遠い第1ボルト孔44Fと、軸芯に近い第2ボルト孔44Gの2個の例で説明するが、2個に限定するものではない。
また、図2及び図3では、ボルト部材64の先端部に形成された雄ネジ64Aにナット部材66に形成された雌ネジ(図示せず)に螺合するようにしたが、チェーンホイール板44に形成したボルト孔44F,44Gに雌ネジを直接刻設してもよい。
そして、図8の(A)に示すように、踏力の大きな人や体重が重い人は、クランク軸50の軸芯Sからの距離L1が遠い第1ボルト孔44Fを選択して、直動バネ部材58の固定金具58Bをボルト部材64及びナット部材66でチェーンホイール板44に回動自在に支持する。
また、図8の(B)に示すように、踏力の小さな人や体重が軽い人は、クランク軸50の軸芯Sからの距離L2が近い第2ボルト孔44Gを選択して、直動バネ部材58の固定金具58Bをボルト部材64及びナット部材66でチェーンホイール板44に回動自在に支持する。
推進力アシスト機構18において、ペダル42を踏む踏力は、クランク52、クランク軸50、推進力アシスト板54、直動バネ部材58を介してチェーンホイール板44を回転させる回転力として伝達される。即ち、直動バネ部材58の一方端(チェーンホイール板44に支持されている側)がチェーンホイール板44に回転力を付与する作用点となる。
この場合、軸芯Sに近い第2ボルト孔44Gに作用点があるよりも軸芯Sに遠い第1ボルト孔44Fに作用点があった方がチェーンホイール板44に大きな回転力を付与でき、自転車10を速く走行させることができる。しかしその反面、軸芯Sに近い第2ボルト孔44Gに作用点があるよりも軸芯Sに遠い第1ボルト孔44Fに作用点があった方が直動バネ部材58を圧縮したときに直動バネ部材58が元の自然長に戻ろうとする反力が大きくなる。
換言すると、軸芯Sに近い距離L2の位置よりも遠い距離L1の位置に作用点があると、直動バネ部材58を圧縮するのに大きな踏力を必要とする。逆に、軸芯Sに遠い距離L1よりも近い距離L2の位置に作用点があると、直動バネ部材58を圧縮するのに小さな踏力で足りる。即ち、直動バネ部材58の一方端(チェーンホイール板44に支持される側)とクランク軸50の軸芯Sとの距離を調整することにより、直動バネ部材58を圧縮するのに必要な圧縮力を可変することができる。
したがって、踏力の大きな人や体重が重い人は、第1ボルト孔44Fを選択することにより、大きな踏力で直動バネ部材58を圧縮する必要がある反面、自転車10の走行速度を上げることができる。また、踏力の小さな人や体重が軽い人は、第2ボルト孔44Gを選択することにより、自転車10の走行速度を上げることはできないが、小さな踏力で直動バネ部材58を圧縮することができる。
このように、圧縮力可変手段68によれば、チェーンホイール板44に形成された第1ボルト孔と44Fと第2ボルト孔44Gの何れかを選択して直動バネ部材58の一方端をボルト部材64でチェーンホイール板44に取り付けるだけで、直動バネ部材58の圧縮に必要な圧縮力を簡単に可変できる。
これにより、踏力の異なる人や体重の異なる人が同じ自転車を兼用しても満足できるので、例えば男性と女性とが1台の自転車を兼用で使用することができる。
なお、図8の(A)に示すように、圧縮力可変手段68において、直動バネ部材58の他方端を中心とした揺動軌跡の揺動角度θが10°から20°の範囲になるように形成されていることが好ましい。
これは、揺動角度が10°を下回ると、直動バネ部材58を圧縮するときの圧縮力に殆ど違いがなくなるので可変する意味がない。また、揺動角度が20°を超えると、圧縮力の違いが大きくなり過ぎるので、自転車10に乗る人の踏力によって必ず圧縮力可変手段68を可変しなくてはならず、却って煩わしい。
図9は、圧縮力可変手段68の別態様を示す説明図である。
図9の(A)は、圧縮力可変手段68の別態様を推進力アシスト機構18に組み込んだときの説明図であり、(B)は圧縮力可変手段68の別態様の拡大図である。
図9の(A)及び(B)に示すように、圧縮力可変手段68は、チェーンホイール板44に形成された円弧状の揺動用長孔70と、直動バネ部材58の一方端(チェーンホイール板44に支持される側)に設けられ、揺動用長孔70に係合して揺動自在な揺動ピン72と、揺動ピン72を揺動用長孔70の一方側に付勢する付勢バネ74と、付勢バネ74の付勢力に対抗して揺動ピン72を揺動用長孔70の他方側にロックするフック部材76とで構成される。
揺動ピン72は、直動バネ部材58の第1固定金具58Bの貫通孔58Dに挿通される。また、揺動ピン72は付勢バネ74を介してチェーンホイール板44に固定された固定ピン78に連結される。
揺動用長孔70は、自然長な状態の直動バネ部材58の他方端(推進力アシスト板54に支持される側)を揺動中心として直動バネ部材58が揺動したときに直動バネ部材58の一方端(チェーンホイール板44に支持される側)が描く揺動軌跡に一致する。
そして、フック部材76で揺動ピン72をロックする場合とロックしない場合とを選択することにより直動バネ部材58の一方端とクランク軸50の軸芯Sとの距離を調整する。
これにより、別態様の圧縮力可変手段68の場合にも、直動バネ部材58の圧縮に必要な圧縮力を簡単に可変できる。
なお、別態様の圧縮力可変手段68の場合にも、揺動角度θは図8の圧縮力可変手段68の場合と同様であり、揺動用長孔72の円弧形状と直動バネ部材58の他方端とで形成される扇形状の中心角度が20度になるようにする。
以上説明した本実施の形態の自転車10は一態様であり、本発明を逸脱しない限り各種の態様をとることができる。
10…自転車、12…本体部、14…車輪部、16…駆動部、18…推進力アシスト機構、20…フレーム、22…フロントフォーク、24…ステム、26…ハンドルバー、26A…ブレーキバー、28…ベースフレーム、28A…トップチューブ、28B…ヘッドチューブ、28C…ダウンチューブ、28D…シートチューブ、30…ステイフレーム、30A…シートステイ、30B…チェーンステイ、32…シートピラー、34…サドル、36…前輪、38…後輪、40…ブレーキ、42…ペダル、44…チェーンホイール板、44A…中央開口部、44B…ホイール面、44C…ホイール面開口部、44D…縊れ開口部、44E…突出部、44F…ボルト孔、44G…ボルト孔、46…スプロケット、48…チェーン、50…クランク軸、52…クランク、52A…嵌合孔、54…推進力アシスト板、54A…突起部、54B…ボルト孔、54C…嵌合孔、56…回動支持機構、58…直動バネ部材、58A…圧縮ばね、58B…第1固定金具、58C…第2固定金具、58D…貫通孔、58E…ガスダンパ、60…円弧状長孔、62…係合ピン、62A…留め金、62B…カラー部材、62C…滑り板、64…ボルト部材、66…ナット部材、68…圧縮力可変手段、70…揺動用長孔、72…揺動ピン、74…付勢バネ、76…フック部材、78…固定ピン、S…軸芯、X…推進力アシスト板の回転方向、Y…係合ピンの移動方向、L1…軸芯から第1ボルト孔までの距離、L2…軸芯から第2ボルト孔までの距離

Claims (9)

  1. ペダルを踏む踏力によって推進力をアシストさせる推進力アシスト機構を駆動部に組み込んだ自転車において、
    前記推進力アシスト機構は、
    後輪のスプロケットとの間にチェーンが架け渡されると共に中心部にクランク軸の軸径よりも大きな開口が形成されたチェーンホイール板と、
    前記チェーンホイール板に対向して設けられ、中心にクランク軸に嵌合される嵌合孔を有すると共に前記ペダルにクランクを介して連結された推進力アシスト板と、
    前記チェーンホイール板を前記推進力アシスト板に前記クランク軸の軸芯を中心に回動自在に支持する回動支持機構と、
    前記チェーンホイール板と前記推進力アシスト板との間であって前記軸芯周りに等間隔を置いて複数個配置され、一方端が前記チェーンホイール板に回動自在に支持されると共に他方端が前記推進力アシスト板に回動自在に支持され、前記ペダルを踏んで前記推進力アシスト板が回転することによって圧縮されて圧縮反力を発生する直動バネ部材と、を有し、
    前記回動支持機構は、
    前記チェーンホイール板と前記推進力アシスト板とのうちの一方に設けられ、前記軸芯周りに等間隔を置いて円弧状に前記直動バネ部材の数だけ形成されると共に前記直動バネ部材の圧縮長さと同等の円弧長さの円弧状長孔と、
    前記チェーンホイール板と前記推進力アシスト板とのうちの他方に形成され、前記円弧状長孔にそれぞれ係合する複数の係合ピンと、を有し、
    前記ペダルを踏んで前記推進力アシスト板が回転したときに、前記係合ピンは前記直動バネ部材の圧縮前に前記円弧状長孔における前記推進力アシスト板の回転方向下流端に係合すると共に圧縮後に回転方向上流端に係合することを特徴とする自転車。
  2. 前記直動バネ部材は圧縮ばね又はガスダンパである請求項1に記載の自転車。
  3. 前記回動支持機構は、前記係合ピンに遊嵌された円筒状のカラー部材を更に有する請求項1又は2に記載の自転車。
  4. 前記推進力アシスト機構と前記ペダルとの関係は、少なくとも前記ペダルの上下死点の近傍で前記直動バネ部材が圧縮動作を行うように設計されている請求項1から3の何れか1項に記載の自転車。
  5. 前記推進力アシスト機構は、
    前記チェーンホイール板に回動自在に支持される前記直動バネ部材の一方端支持位置と前記クランク軸の軸芯との距離を調整することにより前記直動バネ部材を圧縮するのに必要な圧縮力を可変する圧縮力可変手段を更に有する請求項1から4の何れか1項に記載の自転車。
  6. 前記圧縮力可変手段は、
    前記チェーンホイール板に形成され、自然長な状態の前記直動バネ部材の前記他方端を揺動中心として前記直動バネ部材が揺動したときに前記直動バネ部材の前記一方端が描く揺動軌跡に沿って複数個形成されたボルト孔と、
    前記ボルト孔に前記直動バネ部材の前記一方端を回動自在に支持するボルト部材と、を有し、
    前記複数個のボルト孔を選択することにより前記直動バネ部材の前記一方端と前記軸芯との距離を調整する請求項5に記載の自転車。
  7. 前記圧縮力可変手段は、
    前記チェーンホイール板に形成され、自然長な状態の前記直動バネ部材の前記他方端を揺動中心として前記直動バネ部材が揺動したときに前記直動バネ部材の前記一方端が描く揺動軌跡に一致する円弧状の揺動用長孔と、
    前記直動バネ部材の前記一方端に設けられ、前記揺動用長孔に係合して揺動自在な揺動ピンと、
    前記揺動ピンを前記揺動用長孔の一方側に付勢する付勢バネと、
    前記付勢バネの付勢力に対抗して前記揺動ピンを前記揺動用長孔の他方側にロックするフック部材と、を有し、
    前記フック部材で前記揺動ピンをロックする場合とロックしない場合とを選択することにより前記直動バネ部材の前記一方端と前記軸芯との距離を調整する請求項5に記載の自転車。
  8. 前記直動バネ部材の前記他方端を中心とした前記揺動軌跡の揺動角度が10°から20°の範囲になるように形成されている請求項6又は7に記載の自転車。
  9. 前記推進力アシスト板と前記クランクとは分割可能で前記クランク軸を介して連結されており、前記クランクは前記クランク軸に着脱自在に嵌合されると共に前記クランクと前記クランク軸との嵌合形状が鋸歯形状である請求項1から8の何れか1項に記載の自転車。
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