JP2021058851A - 高温集塵セラミックフィルターエレメント - Google Patents

高温集塵セラミックフィルターエレメント Download PDF

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篤 末吉
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岳 小泉
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Abstract

【課題】 広い温度域において耐熱衝撃性を有し、ハンドリング性に優れ、振動等に耐える強度や構造を有し、除塵性能や圧力損失を変更できる設計の自由度を有する高温集塵セラミックフィルターエレメントを提供する。【解決手段】 好適には耐熱温度500℃以上の1種以上の耐熱性無機繊維をマット状に成形した集積体からなる基材を複数層に重ねてニードリング処理により一体化された積層体からなり、その集塵面側表面部に無機バインダーによる硬化層が形成されており、かさ密度が250〜600kg/m3であり、好適にはJIS K7312に準拠してタイプCデュロメータにより測定した表面部の硬度が45以上である。【選択図】 なし

Description

本発明は、煤塵を含み常温から高温までの温度域を有する排ガスの除塵用の高温集塵セラミックフィルターエレメントに関する。
下水汚泥焼却炉や工業用炉などから排出される高温の排ガスには、スス、未燃物などの粒子状物質からなる煤塵が含まれている。そのため、該高温の排ガスを処理するろ過集塵装置内には、該煤塵の除塵用の高温集塵セラミックフィルターエレメント(以下、フィルターエレメントとも称する)が取り付けられている。このフィルターエレメントの形状には様々なタイプが提案されており、例えば平面状、曲面状、又はろ過面積を広くするためジグザグ状に折り畳んだ形状、さらには両端が開口した円筒型や一端が開口し他端が封止された有底円筒状のいわゆるキャンドル型が提案されている。
上記のフィルターエレメントには、できるだけ小さな圧力損失で所望の除塵性能を発揮することが要求されるほか、高温の排ガスに連続的に暴露されるので約500℃以上の耐熱性が要求される。また、ろ過集塵装置の規模や方式、煤塵の種類や粒度によって要求される仕様が異なることがあるため、様々な除塵性能や圧力損失の上限値等に柔軟に対応できるように高い設計自由度を有していることが好ましい。さらには、取り扱いが容易になるように軽量で高強度であることが望ましい。
1次側(熱面側又は集塵面側とも称する)から2次側(冷面側とも称する)に高温の排ガスを透過させることで除塵を行う高温集塵セラミックフィルターエレメントは、通常は該冷面側からブロワーなどを引いて排ガスを吸引することで該集塵面側に煤塵を捕集する。そのため、時間の経過と共に集塵面側に煤塵が堆積していき、ある程度時間が経過すると圧力損失が大きくなりすぎて除塵性能が低下する。そこで、定期的に冷面側からパルスエアー(洗浄用高圧空気)を導入することで、フィルターエレメントに通常とは逆方向(すなわち、2次側から1次側の方向)にエアーを流し、これにより集塵面側に堆積した煤塵を払い落すいわゆる逆洗が一般的に行われる。これにより圧力損失がほぼ元通りに小さくなるので、除塵性能を回復させることができる。
ところで、上記の吸引による除塵とパルスエアーによる逆洗は、短時間で繰り返されるため、排ガスにより高温雰囲気に晒されている高温集塵セラミックフィルターエレメントは、逆洗時にパルスエアーによる冷風で急激に冷やされ、逆洗終了後は再び排ガスで高温雰囲気に晒される。このように高温集塵セラミックフィルターには熱応力が繰り返しかかるので、これにより容易に破損しないように耐熱衝撃性を有していることが求められる。特に、キャンドル型フィルターは軸方向の一端部のみで支持されているため、パルスエアーによる逆洗時に振動が生じやすく、この振動による曲げ応力が繰り返しかかるため、振動で破損しない強度や構造も必要となる。
また、フィルターエレメントは、上記の運転時だけでなく、輸送や設置のためのハンドリング時に破損しない強度や構造を有することが望まれる。さらに、近年はろ過集塵装置を小型化する傾向があり、これに合わせてキャンドル型フィルターの場合は軸方向の長さを長くしたり、隣接するフィルター同士の間隔を狭くしたりすることが行われている。その結果、地震等の揺れによりこれら隣接するフィルターが互いに接触しやすくなっており、その場合でも容易に破損しない程度の強度や構造が求められている。
上記のキャンドル型や円筒型のフィルターエレメントの製造方法としては、例えば特許文献1に開示されているような湿式成形法や、特許文献2に開示されているような射出成形法が知られている。なお、湿式成形法とは、無機繊維、無機バインダー、及び水を所定の配合割合で混合して得たスラリーを脱水成形して所定の形状の成形体を作製する方法であり、射出成形法とは、上記と同様に調製した無機繊維を含むスラリーを射出して成形体を成形する方法である。
しかしながら、従来のセラミックフィルターは強度不足で破損しやすいため、特許文献3に開示されているように、セラミックフィルターに保護装着用部材を取り付けることで、破損してもある程度は操業を継続できるようにする技術が提案されている。このように保護装着用部材を設けることでセラミックフィルターを補強することが可能になるものの、該部材の取り付けに手間とコストがかかるので、上記のような保護装着用部材を用いることなくセラミックフィルター自体を高強度にするか、又は加圧等により応力がかかったときにある程度変形しても破断にまでは至らない構造にするのが好ましい。
このようなセラミックフィルター自体の高強度化の技術として、特許文献4には、セラミック繊維からなる基材と、その表面に形成したフィルター層とから構成されるセラミックフィルターにおいて、ムライト質の長繊維を用いてフィラメントワインディング法により製織した後、アルミナゾル及びシリカゾルを含浸させて焼成することで基材を形成する方法が開示されており、これにより主としてムライトからなる結合部により結合固化されたセラミックフィルターエレメントの基材が得られると記載されている。
また、特許文献5には、積層したブランケット状セラミックファイバーをシリカゾル等のバインダーに含浸させた後、乾燥することで平板状の繊維質成形体を作製する技術が提案されている。この繊維質成形体は湿式成形品と比べてかさ比重が小さくて軽量であり、繊維の絡みが多いのでたわみ性に優れ、バインダーにより表面が適当な硬さを有するため、炉内において物体が当たっても損傷しにくく、耐熱衝撃性にも優れると記載されている。さらに特許文献6には、セラミックファイバーブランケットにシリカゾル等を無機接着剤として塗布してロール表面に巻回積層し、これにより円筒状にした成型品が提案されている。
特開2002―045627号公報 特表2005―523154号公報 特開2018―015682号公報 特開2001―046818号公報 特開平3―257079号公報 特開昭53―081518号公報
しかしながら、上記の湿式成形や射出成形による成形方法では、繊維を均一に分散するために解繊する必要がある。この解繊では繊維が折れて繊維長が短くなるため、繊維の絡みが少なくなって強度が不足することがあった。その対策として、繊維の配合割合を多くしたり、無機粒子や無機バインダーの配合割合を多くしたりする等の対処法があり、これにより強度を向上させることが可能になるが、その際、気孔率が小さくなる問題が生じることがあった。逆に、要求される除塵性能と圧力損失を優先させると、耐久試験や耐震試験において強度不足により破損することがあった。
また、特許文献4の技術は圧力損失が大きくなりすぎて、所望の除塵性能と圧力損失の条件を短期間で満たさなくなることがあった。さらに特許文献5及び6の技術は断熱材を用途にしているため、表面の硬さや強度及び耐熱衝撃性が優先されており、よって高温集塵セラミックフィルターエレメントの用途としては、圧力損失が高くなりすぎて適していないと考えられる。
上記のように、セラミックフィルターエレメントには繰り返しかかる熱応力や振動等で容易に破断することのない強度や構造が求められている。本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、常温から高温までの温度域において耐熱衝撃性を有し、輸送時や設置時のハンドリング性に優れ、運転時の振動や地震の揺れに耐える強度や構造を有し、様々な仕様に対応して除塵性能や圧力損失を変更できる設計の自由度を有する高温集塵セラミックフィルターエレメントを提供することを目的としている。
本発明者は、上記の種々の要件のうち、繰り返しかかる熱応力や振動等で容易に破断することがなく、低圧力損失を実現するには、セラミック繊維同士の絡みを多くすることが望ましいと考えて鋭意研究を重ねたところ、マット状の無機繊維からなる集積体を重ねてニードリング処理したものを用いることで、上記要件を満たす高温集塵セラミックフィルターエレメントが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る高温集塵セラミックフィルターエレメントは、1種以上の耐熱性無機繊維をマット状に成形した集積体からなる基材を複数層に重ねてニードリング処理により一体化された積層体からなり、その集塵面側表面部に無機バインダーによる硬化層が形成されており、かさ密度が250〜600kg/mであることを特徴とする。
本発明によれば、常温から1000℃程度の高温までの温度域において耐熱衝撃性を有し、輸送時や設置時のハンドリング性に優れ、運転時や地震時の揺れに対する強度を有し、除塵性能や圧力損失をある程度変更できる設計自由度を有する高温集塵セラミックフィルターエレメントを提供することができる。
本発明の実施形態に係る高温集塵フィルターエレメントの形状の具体例である平板形状(a)及び曲板形状(b)の斜視図である。 本発明の実施形態に係る高温集塵フィルターエレメントの形状の他の具体例であるジグザグ形状の斜視図である。 本発明の実施形態に係る高温集塵フィルターエレメントのさらに他の具体例である円筒型(a)及び角筒型(b)の斜視図である。 本発明の実施形態に係る高温集塵フィルターエレメントのさらに他の具体例であるキャンドル型の斜視図(a)及び縦断面図(b)である。
以下、本発明に係る高温集塵セラミックフィルターエレメントの実施形態について詳細に説明する。この本発明の実施形態の高温集塵セラミックフィルターエレメントは、1種以上の耐熱性無機繊維をマット状に成形した集積体を基材に用いている。該耐熱性無機繊維は、耐熱温度500℃以上1600℃以下の無機繊維であり、例えばアルミナ繊維、ムライト繊維、シリカ・アルミナ繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ・マグネシア・カルシア系繊維等の生体溶解性繊維等を挙げることができる。なお、耐熱温度T℃とは、最高使用温度T℃と称することもあり、雰囲気温度T℃で24時間加熱したときの加熱線収縮率が4.0%以下の場合をいう。
上記耐熱性無機繊維は、平均繊維径が2〜15μmであるのが好ましく、4〜10μmであるのがより好ましい。この平均繊維径が2μm未満では、最終的に成形したフィルターエレメントの圧力損失が大きくなりすぎるおそれがあり、逆にこの平均繊維径が15μmを超えると、靭性が損なわれやすくなるので最終的に成形したフィルターエレメントの耐熱衝撃性が悪化するおそれがある。また、上記耐熱性無機繊維は、平均繊維長が1000μm以上であるのが好ましく、3000μm以上であるのがより好ましい。さらに上記耐熱性無機繊維は、かさ密度が30〜160kg/mであるのが好ましく、80〜130kg/mであるのがより好ましい。
なお、上記の平均繊維長とは、測定対象となる繊維群を電子顕微鏡で撮影し、得られた画像上の任意の100本の繊維に対して、それらの長手方向の端から端までの直線距離を計測し、それらを算術平均して求めたものである。一方、上記の平均繊維径とは、測定対象となる繊維群を電子顕微鏡で撮影し、得られた画像上の任意の200本の繊維に対して、それらの任意の部分の幅を計測し、それらを算術平均して求めたものである。
上記のマット状の集積体には市販のものを用いることができ、例えば、アルミナ繊維ではデンカ株式会社製のアルセン(登録商標)、ムライト繊維では株式会社ITM製のファイバーマックス(登録商標)、ガラス繊維では日本グラスファイバー工業株式会社製のマットであるMNA(商品名)、シリカ繊維では日本グラスファイバー工業株式会社製のマットであるMSS(商品名)、シリカ・アルミナ繊維ではイソライト工業株式会社製のイソウール(商品名)、シリカ・マグネシア・カルシア系繊維等の生体溶解性繊維ではイソライト工業株式会社製のイソウールBSSR1300(商品名)などを好適に使用することができる。
上記のマット状の集積体からなる基材を複数層に重ねて所望の形状に成形した後、所定の寸法まで厚み方向に圧縮する。この圧縮された複数層の集積体に対して、その厚み方向にニードリング処理を行う。これにより、複数の集積体からなる基材が一体化した積層体を形成することができる。なお、ニードリング処理とは、上記の複数の集積体からなる基材に対して、その少なくとも一方の面(処理面)からニードルパンチ機の複数の針状体を繰り返し打ち込むことで繊維同士を交絡させるいわゆる針刺し処理のことである。このニードリング処理により個々の集積体内の繊維同士の交絡が生じるのみならず、隣接する集積体同士が繋がるので、積層体自体に変形が生じにくく、強度が向上する。
上記のニードリング処理においては、ニードリング密度として定義される針状体が打ち込まれる処理面の1cmあたりの打込み数が5〜200打であるのが好ましく、10〜100打であるのがより好ましい。このニードルリング密度が5打/cm未満では、複数の集積体からなる積層体の厚みの均一性が低下し、最終的にフィルターエレメントの形態に成形したときのろ過厚さが不均一になるおそれがある。逆に、このニードリング密度が200打/cmを超えると、耐熱性無機繊維が折損するおそれがある。
上記のニードリング処理により一体化した積層体は、フィルターエレメントとして用いる際に1次側となる表面部に無機バインダーによる硬化層が形成されている。上記の無機バインダーには、シリカゾル、アルミナゾル若しくはジルコニアゾル又はそれらの2種以上の混合物を用いるのが好ましい。上記の硬化層は、上記の無機バインダーに水を加えてスラリーにし、これを上記積層体の1次側の表面部に含浸させることで形成することができる。
上記の含浸させる方法には特に限定はなく、上記1次側の表面部にハケなどを用いて塗布してもよいし、該表面部にスプレー等により塗布してもよいし、該スラリーを調製した容器に該表面部を浸漬してもよい。その際、無機バインダーを含んだスラリーの固形分濃度は、最終的に作製するフィルターエレメントの所望のかさ密度若しくは空隙率、厚さ、硬度、曲げ特性、耐熱衝撃性等の諸特性を実現するために適宜設定される所定の含浸量又はスラリー乾燥後に残留する所定の固形分量を得るため、一般的には20〜50質量%が好ましい。このスラリーの固形分濃度が20質量%未満では、所望の含浸量が得られにくくなるおそれがあり、逆に50質量%を超えると粘度が高くなりすぎて含浸しにくくなり、含浸むらになったり、上記諸物性が悪化したりするおそれがある。上記の硬化層の厚みは0.4〜1.0mm程度が好ましく、この厚みから上記1次側の表面の1cm2あたりに必要な上記スラリーの量を求めることができる。
次に、上記にて積層体に含浸させた無機バインダーを含むスラリーを乾燥する。これにより、高温集塵フィルターエレメントとして用いるときに、煤塵を含む高温の排ガスが接触する1次側に無機バインダーによる硬化層からなる被覆層が形成される。上記の乾燥は、一般的に雰囲気温度90〜130℃で5〜10時間程度保持する乾燥条件が好ましい。上記の温度が90℃未満では十分に乾燥されなくなるおそれがあり、逆に130℃を超えると積層体の表層部で急激な水分の蒸発が起こり、これにより発生した蒸気の表面側への移行に伴って固形分が表面近傍に集中し、厚み方向での含浸むらが生じるおそれがある。また、乾燥時間が5時間未満では十分に乾燥されなくなるおそれがあり、逆に10時間を超えても乾燥により得られる効果はほとんど変わらないので不経済になる。
上記の乾燥処理後は、ろ過集塵装置への設置前に、必要に応じて該積層体を焼成処理する。その際の焼成条件としては、雰囲気温度500〜1000℃で0.3時間以上保持するのが好ましく、0.5時間以上保持するのがより好ましい。なお、上記ののろ過集塵装置への設置前の焼成処理に代えて、該ろ過集塵装置への設置直後に、操業開始段階の高温の排ガスにより積層体を焼成処理してもよい。上記のように焼成処理することで無機バインダーの強度が発現される。上記の焼成処理により、かさ密度250〜600kg/m、3点曲げ試験による破断が生じにくく、タイプCデュロメータによる硬度45以上、圧力損失100〜500Paのフィルターエレメントを作製することができる。
上記の圧力損失の値は、従来の湿式成形により作製したフィルターエレメントとほぼ同じ圧力損失の値を有しており、除塵性能においてもほぼ同等の性能を実現することができる。また、上記のかさ密度と硬度であれば、常温から1000℃程度の高温の温度域で用いても耐熱衝撃性に優れ、輸送時や設置時のハンドリング性に優れ、運転時の振動や地震を想定した耐震試験において容易に損傷しないようにすることができる。
本発明の実施形態の高温集塵セラミックフィルターエレメントは、ろ過集塵装置に合わせて様々な形状に成形することができ、例えば図1に示すような(a)平板状若しくは(b)曲板状、又はろ過面積をより広くするため、図2に示すようなジグザグ状に折り畳んだ形状、さらには図3に示すような(a)円筒型や(b)角筒型、図4に示すようなキャンドル型に成形することができる。なお、図1〜4には、フィルターエレメントFの1次側となる面に硬化層Sを形成した例が示されているが、この硬化層Sが形成される面は、図1〜4に示されている面とは反対側の面に形成してもよい。例えば、図3(a)では円筒状フィルターエレメントの外周側に硬化層Sが設けられているが、これに限定されるものではなく、内周側に硬化層を設けてもよい。この場合は該内周側が1次側となり、円筒形フィルターエレメントの内側から外側に向って降温の排ガスが透過することになる。
上記の円筒型や角筒型は、上記の集積体からなる基材を複数層に重ねて円柱状や角柱状の芯材に巻き付けて筒型とし、所定の厚さとかさ密度になるように、その外周側から圧縮して成型する方法で成形することができる。また、キャンドル型は、上記の集積体からなる基材から円柱体として切り取るか又は該基材をロール状に巻くことによって円柱体を別途作製し、これを上記方法で作成した円筒型の成形体の軸方向一端部の開口部分に挿入して封止する方法で成形することができる。この成形体に対して、前述したようにニードリング処理を行い、更に無機バインダーを含浸させて乾燥及び焼成することでフィルターエレメントを作製することができる。なお、上記の円筒型やキャンドル型の成形体の成形方法は一例であって、これらに限定されるものではない。
このようにして作製されるフィルターエレメントは、従来の湿式成形法のように繊維の解繊工程がないので、曲げ強度と耐熱衝撃性を高めることができる。すなわち、従来の湿式成形法は、繊維の解繊工程の際、繊維が折れてしまい短くなる。その結果、繊維同士の絡みが少なくなり、特に高負荷において小さい曲げ歪みで破断に至りやすくなるうえ、クラックの伝播を防ぐ機能が低下するので耐熱衝撃性が低下する。
これに対して、本発明の実施形態のフィルターエレメントは従来の湿式成形法による基材に比べて繊維長が長く、よって繊維同士の絡みを多くできるので、曲率の特に小さな円筒形やキャンドル型を形成する場合、あるいはジグザグ形状や角筒型を形成する場合のように、フィルターエレメントの作製段階において特に高負荷がかかるような曲げ歪みが大きくなる状態においても破断に至りにくく、また、クラックの伝播を阻止することができる。これにより、高い除塵性能と低い圧力損失を維持しつつ、優れた耐熱衝撃性を実現することが可能になる。
なお、上記の本発明の実施形態の高温集塵フィルターエレメントのかさ密度及び圧力損失等は、該フィルターエレメントの使用環境、煤塵の種類、所望の除塵性能や圧力損失の値等を考慮して、圧縮して成形体を形成するときのプレス圧、アルミナゾルやシリカゾル等の無機バインダーの種類の選択及びその含浸量、含浸回数等を適宜変えることで調整することができる。具体的には、かさ密度を高めたいときは成形体の形成時のプレス圧を高めればよく、曲げ特性を高めたいときはニードリング密度を高めればよく、硬度を高めたいときは含浸量や含浸回数を増やすことで硬化層の厚みを厚くすればよく、圧力損失を下げたいときは平均繊維径がより大きな耐熱性無機繊維が多く含まれるようにすればよい。
様々な耐熱性無機繊維を用いて下記に示す実施例及び比較例の高温集塵フィルターエレメントを作製し、それらの各々に対して、かさ密度、曲げ特性、硬度、耐熱衝撃性、圧力損失、除塵性能、及び除塵の耐久性について評価した。これら特性の評価は、下記の方法に基づいて行った。
(かさ密度)
高温集塵フィルターエレメントの寸法を測定して算出した体積でその質量を除算することで求めた。このかさ密度が250〜600kg/mの範囲内のものを「良」と評価した。
(曲げ特性)
高温集塵フィルターエレメントを長さ150mm×幅50mm×厚さ25mmに加工し、スパン100mmで支持したときの中央を載荷することによる3点曲げ試験により求めた。この方法で破断しないものを「良」と評価した。
(硬度)
高温集塵フィルターエレメントの1次側の硬度をJIS K7312に準拠してタイプCデュロメータにより測定し、45以上のものを「良」と評価した。なお、デュロメータとは、測定対象物の表面に計器の加圧面を当接させることで、該加圧面から突出する押針の突出方向に付勢するスプリングの力と該測定対象物の弾性力とをバランスさせ、その際指針が指示する0−100の範囲内の目盛りを読みとることで硬度を測定する計器である。
(耐熱衝撃性)
高温集塵フィルターエレメントを雰囲気温度1000℃に加熱した加熱炉に装入して15分間保持した後、取り出して常温空気雰囲気で15分間自然冷却させ、その後再び加熱炉に装入して同じ条件で15分間保持した後、取り出して常温空気雰囲気で15分間自然冷却をした。この加熱と冷却のサイクルを合計10サイクル繰り返したときの外観変化を目視で観察し、損傷ない場合に耐熱衝撃性は「良」と評価した。
(圧力損失)
室温の空気をろ過速度1m/minで高温集塵フィルターエレメントに流しながら、その1次側の圧力と2次側の圧力の圧力差を、静圧ピトー管を用いて測定した。この圧力差が100〜500Paのものを「良」と評価した。
(除塵性能)
高温集塵フィルターエレメントをろ過集塵装置に取り付け、室温の空気をろ過速度1m/minで高温集塵フィルターエレメントに流し、圧力0.25MPaの逆洗エアーを打ち込み間隔10秒(バルブ開放時間0.5秒)に設定して6時間運転を行った。その際、1時間おきに5gの試験用ダスト投入した。6時間経過後、捕集したダストの質量を供給したダストの全質量で除算して得た割合が95%以上のものを「良」と評価した。
(除塵の耐久性)
上記除塵性能試験での測定開始時の圧力損失の値をPとし、6時間後の圧力損失の値をPとしたとき、P/Pが0.6以上のものを「良」と評価した。
[実施例1]
耐熱性無機繊維としてシリカ・マグネシア・カルシア系の生体溶解性繊維質からなるイソライト工業株式会社製のかさ密度100kg/m、厚さ12.5mmのマット(BSSR)を2層にし、厚さ20mmになるように均等に圧縮して平板状に成型した。この平板状の積層体にニードリング処理を処理面1cmあたり50打の割合で打ち込んだ。このニードリング処理されたマットに、日産化学株式会社製の固形分濃度40質量%のシリカゾルのスラリー(スノーテックス40)を、フィルターエレメントとして用いるときの1次側に厚み0.4mmの硬化剤の層が形成されるように、スプレー法により含浸させた。これを雰囲気温度105℃で8時間かけて乾燥処理した後、雰囲気温度730℃で0.5時間かけて焼成処理した。
得られた平板状の高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度250kg/m、曲げ特性で破断がなく、硬度45、圧力損失100Paであり、これらの評価は全て「良」であった。また、耐熱衝撃性は10サイクル後でも損傷がなく、除塵性能は99%であり、除塵の耐久性は0.8であり、これらの評価も全て「良」であった。
[実施例2]
耐熱性無機繊維としてのマット(BSSR)を2層に代えて4層とした以外は上記実施例1と同様にして平板状の高温集塵フィルターエレメントを作製した。この高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度600kg/m、曲げ特性で破断がなく、硬度70、圧力損失500Paであり、これらの評価はいずれも「良」であった。また、耐熱衝撃性は10サイクル後でも損傷がなく、除塵性能は95%であり、除塵の耐久性は0.7であり、これらの評価も全て「良」であった。
[実施例3]
ムライト繊維質からなる株式会社ITM社製のかさ密度100kg/m、厚さ12.5mmのマット(ファイバーマックス)を耐熱性無機繊維に用いた以外は上記実施例1と同様にして平板状の高温集塵フィルターエレメントを作製した。得られた高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度250kg/m、曲げ特性で破断がなく、硬度65、圧力損失100Paであり、これらの評価はいずれも「良」であった。また、耐熱衝撃性は10サイクル後でも損傷がなく、除塵性能は99%であり、除塵の耐久性は0.8であり、これらの評価でも全て「良」であった。
[実施例4]
シリカ・アルミナ繊維質からなるイソライト工業株式会社製のかさ密度10kg/m、厚さ12.5mmのマット(イソウール1260)を耐熱性無機繊維に用いた以外は上記実施例1と同様にして平板状の高温集塵フィルターエレメントを作製した。得られた高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度260kg/m、曲げ特性で破断がなく、硬度65、圧力損失100Paであり、これらの評価は全て「良」であった。また、耐熱衝撃性は10サイクル後でも損傷がなく、除塵性能は99%であり、除塵の耐久性は0.7であり、これらの評価も全て「良」であった。
[実施例5]
アルミナ繊維質からなるデンカ株式会社製のかさ密度100kg/m、厚さ12.5mmのマット(アルセン)を耐熱性無機繊維に用いた以外は上記実施例1と同様にして平板状の高温集塵フィルターエレメントを作製した。得られた高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度250kg/m、曲げ特性で破断がなく、硬度65、圧力損失100Paであり、これらの評価は全て「良」であった。また、耐熱衝撃性は10サイクル後でも損傷がなく、除塵性能は99%であり、除塵の耐久性は0.8であり、これらの評価も全て「良」であった。
[実施例6]
ガラス繊維質からなる日本グラスファイバー工業株式会社製のかさ密度100kg/m、厚さ12mmのマット(MNA)を耐熱性無機繊維に用い、雰囲気温度を730℃に代えて400℃で0.5時間かけて焼成処理した以外は上記実施例1と同様にして平板状の高温集塵フィルターエレメントを作製した。得られた高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度260kg/m、曲げ特性で破断がなく、硬度60、圧力損失100Paであり、これらの評価は全て「良」であった。また、耐熱衝撃性は10サイクル後でも損傷がなく、除塵性能は99%であり、除塵の耐久性は0.8であり、これらの評価も全て「良」であった。
[実施例7]
シリカ繊維質からなる日本グラスファイバー工業株式会社製のかさ密度100kg/m、厚さ12mmのマット(MSS)を耐熱性無機繊維に用いた以外は上記実施例1と同様にして平板状の高温集塵フィルターエレメントを作製した。得られた高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度300kg/m、曲げ特性で破断がなく、硬度65、圧力損失300Paであり、これらの評価は全て「良」であった。また、耐熱衝撃性は10サイクル後でも損傷がなく、除塵性能は99%であり、除塵の耐久性は0.7であり、これらの評価も全て「良」であった。
[実施例8]
ムライト繊維質からなる株式会社ITM社製のかさ密度100kg/m、厚さ12.5mmのマット(ファイバーマックス)を耐熱性無機繊維に用い、これを外径90mmの芯材に2重に巻き付けて2層構造の円筒型とした後、肉厚20mmになるように外周側から均等に圧縮して成型した。
この円筒型成型体の外周面の1cmあたり50打打ち込むことでニードリング処理を行った。このニードリング処理された積層体の外周面側に実施例1と同様にしてシリカゾルを含浸させた後、その外周面側から雰囲気温度105℃で8時間かけて乾燥処理した後、芯材を取り出した。次に、上記マット(ファイバーマックス)を5重に巻き付けて円柱とした後、上記と同様のシリカゾルを含浸させた成型品を上記の円筒型成型体の軸方向一端部の開口部に挿入して封止した。以降は実施例1と同様の条件で乾燥処理及び焼成処理を行った。
得られたキャンドル型の高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度260kg/m、曲げ特性で破断がなく、硬度65、圧力損失100Paであり、これらの評価は全て「良」であった。また、耐熱衝撃性は10サイクル後でも損傷がなく、除塵性能は99%であり、除塵の耐久性は0.8であり、これらの評価も全て「良」であった。
[実施例9]
シリカ・マグネシア・カルシア系の生体溶解性繊維質からなるイソライト工業株式会社製のかさ密度100kg/m、厚さ12.5mmのニードルブランケット(BSSR1300)を耐熱性無機繊維に用い、無機バインダーに日産化学株式会社製の固形分濃度20質量%のアルミナゾルのスラリー(アルミナゾル520−A)を用いた以外は上記実施例1と同様にして平板状の高温集塵フィルターエレメントを作製した。
得られた高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度300kg/m、曲げ特性で破断がなく、硬度60、圧力損失100Paであり、これらの評価は全て「良」であった。また、耐熱衝撃性は10サイクル後でも損傷がなく、除塵性能は99%であり、除塵の耐久性は0.7であり、これらの評価も全て「良」であった。
[実施例10]
シリカ・マグネシア・カルシア系の生体溶解性繊維質からなるイソライト工業株式会社製のかさ密度100kg/m、厚さ12.5mmのニードルブランケット(BSSR1300)を耐熱性無機繊維に用い、無機バインダーに日産化学株式会社製の固形分濃度40質量%のジルコニアゾルのスラリー(ジルコニアゾルZR40−BL)を用いた以外は上記実施例1と同様にして平板状の高温集塵フィルターエレメントを作製した。
得られた高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度320kg/m、曲げ特性で破断がなく、硬度60、圧力損失100Paであり、これらの評価は全て「良」であった。また、耐熱衝撃性は10サイクル後でも損傷がなく、除塵性能は99%であり、除塵の耐久性は0.7であり、これらの評価も全て「良」であった。
[実施例11]
シリカ・マグネシア・カルシア系の生体溶解性繊維質からなるイソライト工業株式会社製のかさ密度100kg/m、厚さ12.5mmのニードルブランケット(BSSR1300)を耐熱性無機繊維に用い、無機バインダーにシリカゾルとアルミナゾルを質量比で1:1とした混合スラリーを用いた以外は上記実施例1と同様にして平板状の高温集塵フィルターエレメントを作製した。
得られた高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度300kg/m、曲げ特性で破断がなく、硬度60、圧力損失100Paであり、これらの評価は全て「良」であった。また、耐熱衝撃性は10サイクル後でも損傷がなく、除塵性能は99%であり、除塵の耐久性は0.7であり、これらの評価も全て「良」であった。
[比較例1]
シリカ・マグネシア・カルシア系の生体溶解性繊維質からなるイソライト工業株式会社製のニードルブランケット(BSSR1300)を耐熱性無機繊維に用い、これに無機バインダーとしてのシリカゾルと有機バインダーと水を混合してスラリーを調製した。得られたスラリーを外径90mmの成形型を用いて湿式成形することで、肉厚20mmのキャンドル型成型体を得た。この成型体を表面側から雰囲気温度105℃で8時間かけて乾燥処理した後、雰囲気温度730℃で0.5時間かけて焼成処理した。
得られたキャンドル型の高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度250kg/m、圧力損失500Paであり、耐熱衝撃性は10サイクル後でも損傷がなく、除塵性能は97%であり、除塵の耐久性は0.7であり、硬度が45であり、これら特性についてはいずれも評価が「良」であった。しかし、曲げ特性で破断が生じた。
[比較例2]
耐熱性無機繊維としてのマット(BSSR)を2層に代えて5層とした以外は上記実施例1と同様にし、ニードリング処理により成型した厚さ20mmの平板状の成型体を乾燥処理及び焼成処理して平板状の高温集塵フィルターエレメントを作製した。得られた高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度が650kg/mとなった。また、除塵性が90%、除塵の耐久性が0.4、圧力損失が600Paとなり、いずれもフィルターとして好適な評価基準を満たしていなかった。
[比較例3]
無機バインダーとして用いたシリカゾルの量を実施例1の90質量%とした以外は実施例1と同様にして平板状の高温集塵フィルターエレメントを作製した。得られた高温集塵フィルターエレメントは、かさ密度が240kg/mとなった。また、硬度が40となり、評価基準に比べて小さくなった。
F セラミックフィルターエレメント
S 硬化層

Claims (6)

  1. 1種以上の耐熱性無機繊維をマット状に成形した集積体からなる基材を複数層に重ねてニードリング処理により一体化された積層体からなり、その集塵面側表面部に無機バインダーによる硬化層が形成されており、かさ密度が250〜600kg/mであることを特徴とする高温集塵セラミックフィルターエレメント。
  2. 前記表面部は、JIS K7312に準拠してタイプCデュロメータにより測定した硬度が45以上であることを特徴とする、請求項1に記載の高温集塵セラミックフィルターエレメント。
  3. 前記耐熱性無機繊維は耐熱温度が500℃以上1600℃以下であって、アルミナ繊維、ムライト繊維、シリカ・アルミナ繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、及び生体溶解性繊維からなる群のうちの1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の高温集塵セラミックフィルターエレメント。
  4. 前記無機バインダーは、シリカゾル、アルミナゾル若しくはジルコニアゾル又はそれらの2種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の高温集塵セラミックフィルターエレメント。
  5. 前記セラミックフィルターエレメントは、前記ニードリング処理された基材が単層又は複層で平板状、曲板状、又はジグザグ状に折り畳んだ形状に成形されていることを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の高温集塵セラミックフィルターエレメント。
  6. 前記セラミックフィルターエレメントは、前記ニードリング処理された基材が単層又は複層で円筒若しくは角筒の形状に成形されており、かつその軸方向の両端部が開放されているか、若しくは一端部が封止されていることを特徴とする、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の高温集塵セラミックフィルターエレメント。
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