以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面に示されている構成には、図示と理解のしやすさの便宜上、サイズ及び縮尺等が実物のそれらから変更されている部分が含まれうる。
[洗浄処理システムの構成]
図1は、洗浄処理システム1の全体構成を示す横断平面図である。
洗浄処理システム1は、ウエハWに洗浄液を供給して洗浄処理を行う複数の洗浄装置2(図1に示す例では2台の洗浄装置2)と、洗浄処理後のウエハWに残留している乾燥防止用の液体(本実施形態ではIPA:イソプロピルアルコール)を、超臨界状態の処理流体(本実施形態ではCO2:二酸化炭素)と接触させて除去する複数の超臨界処理装置3(図1に示す例では2台の超臨界処理装置3)と、を備える。
この洗浄処理システム1では、載置部11にFOUP100が載置され、このFOUP100に格納されたウエハWが、搬入出部12及び受け渡し部13を介して洗浄処理部14及び超臨界処理部15に受け渡される。洗浄処理部14及び超臨界処理部15において、ウエハWは、まず洗浄処理部14に設けられた洗浄装置2に搬入されて洗浄処理を受け、その後、超臨界処理部15に設けられた超臨界処理装置3に搬入されてウエハW上からIPAを除去する乾燥処理を受ける。図1中、符合「121」はFOUP100と受け渡し部13との間でウエハWを搬送する第1の搬送機構を示し、符合「131」は搬入出部12と洗浄処理部14及び超臨界処理部15との間で搬送されるウエハWが一時的に載置されるバッファとしての役割を果たす受け渡し棚を示す。
受け渡し部13の開口部にはウエハ搬送路162が接続されており、ウエハ搬送路162に沿って洗浄処理部14及び超臨界処理部15が設けられている。洗浄処理部14には、当該ウエハ搬送路162を挟んで洗浄装置2が1台ずつ配置されており、合計2台の洗浄装置2が設置されている。一方、超臨界処理部15には、ウエハWからIPAを除去する乾燥処理を行う基板処理装置として機能する超臨界処理装置3が、ウエハ搬送路162を挟んで1台ずつ配置されており、合計2台の超臨界処理装置3が設置されている。ウエハ搬送路162には第2の搬送機構161が配置されており、第2の搬送機構161は、ウエハ搬送路162内を移動可能に設けられている。受け渡し棚131に載置されたウエハWは第2の搬送機構161によって受け取られ、第2の搬送機構161は、ウエハWを洗浄装置2及び超臨界処理装置3に搬入する。なお、洗浄装置2及び超臨界処理装置3の数及び配置態様は特に限定されず、単位時間当たりのウエハWの処理枚数及び各洗浄装置2及び各超臨界処理装置3の処理時間等に応じて、適切な数の洗浄装置2及び超臨界処理装置3が適切な態様で配置される。
洗浄装置2は、例えばスピン洗浄によってウエハWを1枚ずつ洗浄する枚葉式の装置として構成される。この場合、ウエハWを水平に保持した状態で鉛直軸線周りに回転させながら、洗浄用の薬液や薬液を洗い流すためのリンス液をウエハWの処理面に対して適切なタイミングで供給することで、ウエハWの洗浄処理を行うことができる。洗浄装置2で用いられる薬液及びリンス液は特に限定されない。例えば、アルカリ性の薬液であるSC1液(すなわちアンモニアと過酸化水素水の混合液)をウエハWに供給し、ウエハWからパーティクルや有機性の汚染物質を除去することができる。その後、リンス液である脱イオン水(DIW:DeIonized Water)をウエハWに供給し、SC1液をウエハWから洗い流すことができる。さらに、酸性の薬液である希フッ酸水溶液(DHF:Diluted HydroFluoric acid)をウエハWに供給して自然酸化膜を除去し、その後、DIWをウエハWに供給して希フッ酸水溶液をウエハWから洗い流すこともできる。
そして洗浄装置2は、DIWによるリンス処理を終えたら、ウエハWを回転させながら、乾燥防止用の液体としてIPAをウエハWに供給し、ウエハWの処理面に残存するDIWをIPAと置換する。その後、ウエハWの回転を緩やかに停止する。このとき、ウエハWには十分量のIPAが供給され、半導体のパターンが形成されたウエハWの表面はIPAが液盛りされた状態となり、ウエハWの表面にはIPAの液膜が形成される。ウエハWは、IPAが液盛りされた状態を維持しつつ、第2の搬送機構161によって洗浄装置2から搬出される。
このようにしてウエハWの表面に付与されたIPAは、ウエハWの乾燥を防ぐ役割を果たす。特に、洗浄装置2から超臨界処理装置3へのウエハWの搬送中におけるIPAの蒸発によってウエハWに所謂パターン倒れが生じてしまうことを防ぐため、洗浄装置2は、比較的大きな厚みを有するIPA膜がウエハWの表面に形成されるように、十分な量のIPAをウエハWに付与する。
洗浄装置2から搬出されたウエハWは、第2の搬送機構161によって、IPAが液盛りされた状態で超臨界処理装置3の処理容器内に搬入され、超臨界処理装置3においてIPAの乾燥処理が行われる。
[超臨界処理装置]
次に、超臨界処理装置(基板処理装置)3で行われる超臨界流体を用いた乾燥処理の詳細について説明する。まず、超臨界処理装置3においてウエハWが搬入される処理容器の構成例を説明する。
図2は、超臨界処理装置3の処理容器301の一例を示す外観斜視図であり、図3は、処理容器301の一例を示す断面図である。
処理容器301は、ウエハWを収容するとともに、ウエハWに対して超臨界流体等の高圧の処理流体を用いて処理を行うものである。この処理容器301は、ウエハWを収容する筐体状の容器本体311と、容器本体311内にウエハWを搬入および搬出するための搬送口312と、処理対象のウエハWを横向きに保持する保持板316と、この保持板316を支持するとともに、ウエハWを容器本体311内に搬入したとき搬送口312を密閉する第1蓋部材315とを備えている。また、容器本体311のうち、搬送口312とは異なる位置に、メンテナンス用開口(開口)321が設けられている。このメンテナンス用開口321は、メンテナンス時等を除き、第2蓋部材322によって塞がれている。
容器本体311は、ウエハWを収容するとともに、ウエハWに対して処理流体を用いた処理を行うものである。容器本体311は、例えば直径300mmのウエハWを収容可能な処理空間319が内部に形成された容器である。上述した搬送口312及びメンテナンス用開口321(例えば搬送口312と同等の大きさ及び形状の開口)は、処理空間319の両端にそれぞれ形成され、ともに処理空間319に連通している。
また、容器本体311のうち搬送口312側の壁部には、排出ポート314が設けられている。排出ポート314は、処理容器301の下流側に設けられる、処理流体を流通させるための排出側供給ライン65(図6参照)に接続されている。なお、図2には2つの排出ポート314が図示されているが、排出ポート314の数は特に限定されない。
搬送口312の上側及び下側にそれぞれ位置する第1上側ブロック312a及び第1下側ブロック312bには、それぞれ後述する第1ロックプレート327を嵌入するための嵌入孔325、323が形成されている。各嵌入孔325、323は、それぞれ第1上側ブロック312a及び第1下側ブロック312bを上下方向(ウエハWの面に対して垂直な方向)に貫通している。
保持板316は、ウエハWを保持した状態で容器本体311の処理空間319内に水平な状態で配置可能に構成された薄い板状の部材であり、第1蓋部材315に連結されている。なお、保持板316の第1蓋部材315側には排出口316aが設けられている。
容器本体311のうち、手前側(Y方向マイナス側)の領域には、第1蓋部材収容空間324が形成されている。第1蓋部材315は、保持板316を処理容器301内に搬入してウエハWに対して超臨界処理を行う際、第1蓋部材収容空間324に収容される。この場合、第1蓋部材315は、搬送口312を塞いで処理空間319を密閉する。
第1ロックプレート327は、処理容器301の手前側に設けられている。この第1ロックプレート327は、保持板316を処理位置まで移動させたとき、第1蓋部材315が容器本体311内の圧力によって移動することを規制する規制部材としての役割を果たす。この第1ロックプレート327は、第1下側ブロック312bの嵌入孔323、及び第1上側ブロック312aの嵌入孔325に嵌入される。このとき、第1ロックプレート327が閂としての役割を果たすため、第1蓋部材315及び保持板316は、その前後方向(図2及び図3中Y方向)の移動が規制される。そして、第1ロックプレート327は、嵌入孔323、325に嵌入されて第1蓋部材315を押さえるロック位置と、このロック位置から下方側に退避して第1蓋部材315を開放する開放位置との間で、昇降機構326により上下方向に移動する。この例では、第1ロックプレート327と嵌入孔323、325と昇降機構326とにより、第1蓋部材315が容器本体311内の圧力により移動することを規制する規制機構が構成されている。なお嵌入孔323、325には、それぞれ第1ロックプレート327を挿脱するために必要なマージンが設けられているので、嵌入孔323、325とロック位置にある第1ロックプレート327との間には僅かな隙間C1(図3)が形成されている。なお、図示の便宜上、図3では隙間C1を誇張して描いている。
メンテナンス用開口321は、容器本体311の壁面であって、搬送口312に対向する位置に設けられている。このようにメンテナンス用開口321と搬送口312とが対向することにより、第1蓋部材315及び第2蓋部材322によって容器本体311を密閉した際、処理空間319の圧力が、容器本体311の内面に略均等に加わる。このため、容器本体311の特定の箇所に応力が集中することが防止される。しかしながら、メンテナンス用開口321は、搬送口312に対向する位置以外の箇所、例えばウエハWの進行方向(Y方向)に対して側方の壁面に設けられていても良い。
第2上側ブロック321a及び第2下側ブロック321bは、それぞれメンテナンス用開口321の上側及び下側に位置している。この第2上側ブロック321a及び第2下側ブロック321bには、それぞれ第2ロックプレート337を嵌入させるための嵌入孔335、333が形成されている。各嵌入孔335、333は、それぞれ第2上側ブロック321a及び第2下側ブロック321bを上下方向(ウエハWの面に対して垂直な方向、Z方向)に貫通している。
容器本体311のうち、奥側(Y方向プラス側)の領域には、第2蓋部材収容空間334が形成されている。第2蓋部材322は、メンテナンス時等を除き、第2蓋部材収容空間334に収容されるとともに、メンテナンス用開口321を塞ぐ。また、第2蓋部材322には、供給ポート313が設けられている。供給ポート313は、処理容器301の上流側に設けられ、処理流体を流通させるための第1供給ライン63(図6参照)に接続されている。なお、図2には2つの供給ポート313が図示されているが、供給ポート313の数は特に限定されない。
第2ロックプレート337は、第2蓋部材322が容器本体311内の圧力によって移動することを規制する規制部材としての役割を果たす。この第2ロックプレート337は、メンテナンス用開口321の周囲の嵌入孔333、335に嵌入される。このとき、第2ロックプレート337が閂としての役割を果たすため、第2蓋部材322は、その前後方向(Y方向)の移動が規制される。そして、第2ロックプレート337は、嵌入孔333、335に嵌入されて第2蓋部材322を押さえるロック位置と、このロック位置から下方側に退避して第2蓋部材322を開放する開放位置との間で、上下方向に移動するように構成されている。本実施形態において、第2ロックプレート337は、手動で移動されるようになっているが、昇降機構326と略同様の昇降機構を設け、自動で移動させても良い。なお嵌入孔333、335には、第2ロックプレート337を挿脱するために必要なマージンが設けられているので、嵌入孔333、335とロック位置にある第2ロックプレート337との間には僅かな隙間C2(図3)が形成されている。なお、図示の便宜上、図3では隙間C2を誇張して描いている。
本実施形態において、第2蓋部材322は、第1供給ライン63に接続され、第2蓋部材322には多数の開孔332が設けられている。この第2蓋部材322は、第1供給ライン63からの処理流体を容器本体311の内部に供給する流体供給ヘッダーとしての役割を果たす。これにより、メンテナンス時に第2蓋部材322を取り外した際、開孔332の清掃等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。また、容器本体311内の搬送口312側の壁部には、排出ポート314に連通する流体排出ヘッダー318が設けられている。この流体排出ヘッダー318にも多数の開孔が設けられている。
第2蓋部材322及び流体排出ヘッダー318は相互に対向するように設置されている。流体供給部として機能する第2蓋部材322は、実質的に水平方向へ向けて処理流体を容器本体311内に供給する。ここでいう水平方向とは、重力が作用する鉛直方向と垂直な方向であって、通常は、保持板316に保持されたウエハWの平坦な表面が延在する方向と平行な方向である。容器本体311内の流体を排出する流体排出部として機能する流体排出ヘッダー318は、容器本体311内の流体を、保持板316に設けられた排出口316aを通り、容器本体311外に導いて排出する。流体排出ヘッダー318を介して容器本体311外に排出される流体には、第2蓋部材322を介して容器本体311内に供給された処理流体の他に、ウエハWの表面から処理流体に溶け込んだIPAが含まれる。このように第2蓋部材322の開孔332から容器本体311内に処理流体を供給することにより、また流体排出ヘッダー318の開孔を介して流体を容器本体311内から排出することにより、容器本体311内には、ウエハWの表面と略平行に流動する処理流体の層流が形成される。
また、容器本体311のうち搬送口312側の側面とメンテナンス用開口321側の側面とには、それぞれ真空吸引管348、349が接続されている。真空吸引管348、349は、それぞれ容器本体311のうち第1蓋部材収容空間324側の面と第2蓋部材収容空間334側の面とに連通している。この真空吸引管348、349は、それぞれ真空吸引力により第1蓋部材315及び第2蓋部材322を容器本体311側に引き付ける役割を果たす。
また、容器本体311の底面には、処理流体を容器本体311の内部に供給する底面側流体供給部341が形成されている。底面側流体供給部341は、容器本体311内に高圧流体を供給する第2供給ライン64(図6参照)に接続されている。底面側流体供給部341は、実質的に下方から上方に向けて処理流体を容器本体311内に供給する。底面側流体供給部341から供給された処理流体は、ウエハWの裏面から保持板316に設けられた排出口316aを通ってウエハWの表面に回り込み、第2蓋部材322からの処理流体とともに、保持板316に設けられた排出口316aを通って流体排出ヘッダー318から排出される。底面側流体供給部341の位置は、例えば容器本体311内に導入されたウエハWの下方とすることが好ましく、ウエハWの中心部の下方とすることが更に好ましい。このことにより、底面側流体供給部341からの処理流体をウエハWの表面に均一に回り込ませることができる。
図3に示すように、容器本体311の上下両面には、例えばテープヒーターなどの抵抗発熱体からなるヒーター345が設けられている。ヒーター345は、電源部346と接続されており、電源部346の出力を増減して、容器本体311及び処理空間319の温度を例えば100℃〜300℃の範囲に維持することができる。
[メンテナンス用開口周辺の構成]
次に、図4及び図5を参照して、メンテナンス用開口321の周囲の構成について更に説明する。
図4及び図5に示すように、第2蓋部材322のうち処理空間319側の側壁には、メンテナンス用開口321の周縁に対応する位置を取り囲むように凹部328が形成されている。この凹部328内にシール部材329を嵌め込むことにより、メンテナンス用開口321の周囲の側壁面に当接する第2蓋部材322側の側壁面にシール部材329が配置される。
シール部材329は、メンテナンス用開口321を囲むことが可能なように環状に形成されている。また、シール部材329の断面形状はU字状となっている。図4及び図5に示したシール部材329においては、U字の切り欠き329aは、環状のシール部材329の内周面に沿って形成されている。言い替えると、シール部材329には、U字状に囲まれた内部空間(切り欠き329a)が形成されていることになる。
このシール部材329が設けられた第2蓋部材322を用いてメンテナンス用開口321の周囲を塞ぐことにより、シール部材329は、第2蓋部材322と処理空間319との間の隙間を塞ぐように、第2蓋部材322と容器本体311との対向面の間に配置される。そして、この隙間は容器本体311内のメンテナンス用開口321の周りに形成されていることから、シール部材329の内周面に沿って形成された切り欠き329aは、当該処理空間319と連通した状態となっている。
切り欠き329aが処理空間319と連通しているシール部材329は、処理流体の雰囲気に晒されることになるが、処理流体は樹脂やゴム等の成分やそこに含まれる不純物を溶出させてしまう場合がある。そこで、シール部材329は、少なくとも処理空間319に向けて開口している切り欠き329aの内側を、液体IPAや処理流体に対する耐食性を備えた樹脂にて構成している。このような樹脂の例としては、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、パラキシレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられ、処理流体中への成分の微量の溶出があったとしても半導体装置に影響の少ない、非フッ素系の樹脂を用いることが好ましい。
以下、処理容器301内でウエハWに対して高圧の処理流体を用いて処理を行う際における、シール部材329を備えた処理容器301の作用について説明する。
まず処理空間319に高圧の処理流体が供給されておらず、容器本体311内の圧力が高められていない場合、真空吸引管349(図2及び図3)からの吸引力により、第2蓋部材322が容器本体311側に引き付けられる。このとき、図4に示すように、第2蓋部材322及び容器本体311の側壁面同士が直接対向してシール部材329を押し潰し、メンテナンス用開口321の周囲を気密に塞ぐ。第2蓋部材322と容器本体311とにより押し潰されたシール部材329は、切り欠き329aが狭くなる方向に変形する。切り欠き329aが完全に閉じられていない場合には、この時点で、第2蓋部材322と容器本体311との間の隙間を介して切り欠き329a内に処理空間319内の雰囲気が流れ込んでいる。
一方、開孔332から処理空間319内に高圧の処理流体を供給した場合、第2蓋部材322は、メンテナンス用開口321から遠ざかる方向に移動する。すなわち、第2蓋部材322は、処理流体から受ける圧力により、メンテナンス用開口321周囲の嵌入孔335、333と、第2ロックプレート337との間の隙間C2(図3)分だけ移動する。第2蓋部材322の移動により、第2蓋部材322と容器本体311との間の隙間が広がると、弾性を有するシール部材329の復元力により切り欠き329aが広がり、図5に示すように切り欠き329a(内部空間)内にも処理空間319の雰囲気(処理流体)がさらに進入する。
切り欠き329a内に処理流体が進入すると、切り欠き329aの内側からシール部材329を押し広げ、シール部材329の外周面(切り欠き329aとは反対側の面)を第2蓋部材322の凹部328側の面、及び容器本体311の側壁面に向けて押し付ける力が作用する。これにより、シール部材329の外周面が第2蓋部材322や容器本体311に密着し、これら第2蓋部材322と容器本体311との間の隙間を気密に塞ぐ。この種のシール部材329は、処理流体から受ける力により変形可能な弾性を備えつつ、処理空間319と外部との圧力差(例えば16〜20MPa程度))に抗して隙間を気密に塞いだ状態を維持することができる。
なお、本実施形態において、容器本体311の搬送口312についても、搬送口312と同様にして第1蓋部材315によって密閉されている。
すなわち、図3に示すように、第1蓋部材315の処理空間319側の側壁には、搬送口312の周縁に対応する位置を取り囲むように凹部338が形成されている。この凹部338内にシール部材339を嵌め込むことにより、搬送口312の周囲の側壁面に当接する第1蓋部材315側の側壁面にシール部材339が配置される。
シール部材339は、搬送口312を囲むことが可能なように環状に形成されている。また、シール部材339の断面形状はU字状となっている。このように、シール部材339が設けられた第1蓋部材315を用いて搬送口312を塞ぐことにより、シール部材339は、第1蓋部材315と搬送口312との間の隙間を塞ぐように、第1蓋部材315と容器本体311との対向面の間に配置される。このほか、第1蓋部材315及びシール部材339を用いて搬送口312を塞ぐための構成は、上述したメンテナンス用開口321を塞ぐための構成と略同様である。
[超臨界処理装置のシステム全体の構成]
図6は、超臨界処理装置3のシステム全体の構成例を示す図である。
処理容器301よりも上流側には流体供給タンク51が設けられており、超臨界処理装置3において処理流体を流通させるための供給ラインには、流体供給タンク51から処理流体が供給される。流体供給タンク51と処理容器301との間には、上流側から下流側に向かって、流通オンオフバルブ52a、オリフィス55a、フィルタ57及び流通オンオフバルブ52bが順次設けられる。なお、ここでいう上流側及び下流側の用語は、供給ラインにおける処理流体の流れ方向を基準とする。
流通オンオフバルブ52aは、流体供給タンク51からの処理流体の供給のオン及びオフを調整するバルブであり、開状態では下流側の供給ラインに処理流体を流し、閉状態では下流側の供給ラインに処理流体を流さない。流通オンオフバルブ52aが開状態にある場合、例えば16〜20MPa(メガパスカル)程度の高圧の処理流体が、流体供給タンク51から流通オンオフバルブ52aを介して供給ラインに供給される。オリフィス55aは、流体供給タンク51から供給される処理流体の圧力を調整する役割を果たし、オリフィス55aよりも下流側の供給ラインには、例えば16MPa程度に圧力が調整された処理流体を流通させることができる。フィルタ57は、オリフィス55aから送られてくる処理流体に含まれる異物を取り除き、クリーンな処理流体を下流側に流す。
流通オンオフバルブ52bは、処理容器301への処理流体の供給のオン及びオフを調整するバルブである。流通オンオフバルブ52bから処理容器301に延在する第1供給ライン63は、上述の図2及び図3に示す供給ポート313に接続し、流通オンオフバルブ52bからの処理流体は、図2及び図3に示す供給ポート313及び第2蓋部材322を介して処理容器301の容器本体311内に供給される。
なお図6に示す超臨界処理装置3では、フィルタ57と流通オンオフバルブ52bとの間において、供給ラインが分岐している。すなわちフィルタ57と流通オンオフバルブ52bとの間の供給ラインからは、流通オンオフバルブ52c及びオリフィス55bを介して処理容器301に接続する供給ライン(第2供給ライン64)、流通オンオフバルブ52d及びチェックバルブ58aを介してパージ装置62に接続する供給ライン、及び流通オンオフバルブ52e及びオリフィス55cを介して外部に接続する供給ラインが分岐して延在する。
流通オンオフバルブ52c及びオリフィス55bを介して処理容器301に接続する第2供給ライン64は、上述の図2及び図3に示す底面側流体供給部341に接続し、流通オンオフバルブ52cからの処理流体は、図2及び図3に示す底面側流体供給部341を介して処理容器301の容器本体311内に供給される。第2供給ライン64は、処理容器301への処理流体の供給のための補助的な流路として用いても良い。例えば処理容器301への処理流体の供給開始当初等のように、比較的多量の処理流体を処理容器301に供給する際に流通オンオフバルブ52cが開状態に調整され、オリフィス55bによって圧力が調整された処理流体を処理容器301に供給することができる。
流通オンオフバルブ52d及びチェックバルブ58aを介してパージ装置62に接続する供給ラインは、窒素等の不活性ガスを処理容器301に供給するための流路であり、流体供給タンク51から処理容器301に対する処理流体の供給が停止している間に活用される。例えば処理容器301を不活性ガスで満たして清浄な状態を保つ場合には、流通オンオフバルブ52d及び流通オンオフバルブ52bが開状態に調整され、パージ装置62から供給ラインに送られた不活性ガスはチェックバルブ58a、流通オンオフバルブ52d及び流通オンオフバルブ52bを介して処理容器301に供給される。
流通オンオフバルブ52e及びオリフィス55cを介して外部に接続する供給ラインは、供給ラインから処理流体を排出するための流路である。例えば超臨界処理装置3の電源オフ時において、流通オンオフバルブ52aと流通オンオフバルブ52bとの間の供給ライン内に残存する処理流体を外部に排出する際には、流通オンオフバルブ52eが開状態に調整され、流通オンオフバルブ52aと流通オンオフバルブ52bとの間の供給ラインが外部に連通される。
処理容器301よりも下流側には、流通オンオフバルブ52f、排気調整バルブ59、濃度計測センサ60及び流通オンオフバルブ52gが、上流側から下流側に向かって順次設けられている。
流通オンオフバルブ52fは、処理容器301からの処理流体の排出のオン及びオフを調整するバルブである。処理容器301から処理流体を排出する場合には流通オンオフバルブ52fは開状態に調整され、処理容器301から処理流体を排出しない場合には流通オンオフバルブ52fは閉状態に調整される。なお処理容器301と流通オンオフバルブ52fとの間に延在する供給ライン(排出側供給ライン65)は、図2及び図3に示す排出ポート314に接続されている。処理容器301の容器本体311内の流体は、図2及び図3に示す流体排出ヘッダー318及び排出ポート314を介して、流通オンオフバルブ52fに向かって送られる。
排気調整バルブ59は、処理容器301からの流体の排出量を調整するバルブであり、例えば背圧弁によって構成することが可能である。排気調整バルブ59の開度は、処理容器301からの流体の所望の排出量に応じて、制御部4の制御下で適応的に調整される。本実施形態では、例えば処理容器301内の流体の圧力が予め定められた圧力になるまで、処理容器301から流体が排出される処理が行われる。そのため排気調整バルブ59は、処理容器301内の流体の圧力が予め定められた圧力に達した際に、開状態から閉状態に移行するように開度を調整して処理容器301からの流体の排出を止めることができる。
濃度計測センサ60は、排気調整バルブ59から送られてくる流体に含まれるIPA濃度を計測するセンサである。
流通オンオフバルブ52gは、処理容器301からの流体の外部への排出のオン及びオフを調整するバルブである。流体を外部に排出する場合には流通オンオフバルブ52gは開状態に調整され、流体を排出しない場合には流通オンオフバルブ52gは閉状態に調整される。なお流通オンオフバルブ52gの下流側には、排気調整ニードルバルブ61a及びチェックバルブ58bが設けられている。排気調整ニードルバルブ61aは、流通オンオフバルブ52gを介して送られてくる流体の外部への排出量を調整するバルブであり、排気調整ニードルバルブ61aの開度は流体の所望の排出量に応じて調整される。チェックバルブ58bは、排出される流体の逆流を防ぐ弁であり、流体を確実に外部に排出する役割を果たす。
なお図6に示す超臨界処理装置3では、濃度計測センサ60と流通オンオフバルブ52gとの間において、供給ラインが分岐している。すなわち濃度計測センサ60と流通オンオフバルブ52gとの間の供給ラインからは、流通オンオフバルブ52hを介して外部に接続する供給ライン、流通オンオフバルブ52iを介して外部に接続する供給ライン、及び流通オンオフバルブ52jを介して外部に接続する供給ラインが分岐して延在する。
流通オンオフバルブ52h及び流通オンオフバルブ52iは、流通オンオフバルブ52gと同様に、流体の外部への排出のオン及びオフを調整するバルブである。流通オンオフバルブ52hの下流側には、排気調整ニードルバルブ61b及びチェックバルブ58cが設けられ、流体の排出量の調整及び流体の逆流防止が行われる。流通オンオフバルブ52iの下流側にはチェックバルブ58dが設けられ、流体の逆流が防止されている。流通オンオフバルブ52jも流体の外部への排出のオン及びオフを調整するバルブであり、流通オンオフバルブ52jの下流側にはオリフィス55dが設けられ、流通オンオフバルブ52jからオリフィス55dを介して外部に流体を排出することができる。ただし、図6に示す例では、流通オンオフバルブ52g、流通オンオフバルブ52h及び流通オンオフバルブ52iを介して外部に送られる流体の行き先と、流通オンオフバルブ52jを介して外部に送られる流体の行き先とは異なっている。したがって流体を、例えば流通オンオフバルブ52g、流通オンオフバルブ52h及び流通オンオフバルブ52iを介して図示しない回収装置に送る一方で、流通オンオフバルブ52jを介して大気に放出することも可能である。
処理容器301から流体を排出する場合、流通オンオフバルブ52g、流通オンオフバルブ52h、流通オンオフバルブ52i及び流通オンオフバルブ52jのうちの1以上のバルブが開状態に調整される。特に超臨界処理装置3の電源オフ時には、流通オンオフバルブ52jを開状態に調整して、濃度計測センサ60と流通オンオフバルブ52gとの間の供給ラインに残存する流体を外部に排出するようにしてもよい。
なお、上述の供給ラインの様々な箇所に流体の圧力を検出する圧力センサ及び流体の温度を検出する温度センサが設置される。図6に示す例では、流通オンオフバルブ52aとオリフィス55aとの間に圧力センサ53a及び温度センサ54aが設けられ、オリフィス55aとフィルタ57との間に圧力センサ53b及び温度センサ54bが設けられ、フィルタ57と流通オンオフバルブ52bとの間に圧力センサ53cが設けられ、流通オンオフバルブ52bと処理容器301との間に温度センサ54cが設けられ、オリフィス55bと処理容器301との間に温度センサ54dが設けられている。また処理容器301と流通オンオフバルブ52fとの間に圧力センサ53d及び温度センサ54fが設けられ、濃度計測センサ60と流通オンオフバルブ52gとの間に圧力センサ53e及び温度センサ54gが設けられている。さらに、処理容器301の内部である容器本体311内の流体の温度を検出するための温度センサ54eが設けられている。
また、超臨界処理装置3において処理流体が流れる任意の箇所にヒータHが設けられる。図6には、処理容器301よりも上流側の供給ライン(すなわち流通オンオフバルブ52aとオリフィス55aの間、オリフィス55aとフィルタ57の間、フィルタ57と流通オンオフバルブ52bの間、及び流通オンオフバルブ52bと処理容器301の間)においてヒータHが図示されているが、処理容器301及び処理容器301よりも下流側の供給ラインを含む他の箇所にヒータHが設けられていてもよい。したがって、流体供給タンク51から供給される処理流体が外部に排出されるまでの全流路においてヒータHが設けられてもよい。また特に、処理容器301に供給する処理流体の温度を調整する観点からは、処理容器301よりも上流側を流れる処理流体の温度を調整することができる位置にヒータHが設けられていることが好ましい。
さらに、オリフィス55aとフィルタ57の間には安全バルブ56aが設けられ、処理容器301と流通オンオフバルブ52fとの間には安全バルブ56bが設けられ、濃度計測センサ60と流通オンオフバルブ52gの間には安全バルブ56cが設けられている。これらの安全バルブ56a〜56cは、供給ライン内の圧力が過大になった場合等の異常時において供給ラインを外部に連通し、供給ライン内の流体を緊急的に外部に排出する役割を果たす。
[超臨界乾燥処理]
次に、超臨界状態の処理流体を用いたIPAの乾燥メカニズムについて説明する。
図7は、IPAの乾燥メカニズムを説明するための図であり、ウエハWが有する凹部としてのパターンPを簡略的に示した拡大断面図である。
超臨界処理装置3において超臨界状態の処理流体Rが処理容器301の容器本体311内に導入された当初は、図7(a)に示すように、パターンP間にはIPAのみが充填されている。
パターンP間のIPAは、超臨界状態の処理流体Rと接触することで、徐々に処理流体Rに溶解し、図7(b)に示すように徐々に処理流体Rと置き換わる。このとき、パターンP間には、IPA及び処理流体Rの他に、IPAと処理流体Rとが混合した状態の混合流体Mが存在する。
そして、パターンP間でIPAから処理流体Rへの置換が進行するに従って、パターンP間からはIPAが除去され、最終的には図7(c)に示すように、超臨界状態の処理流体RのみによってパターンP間が満たされる。
パターンP間からIPAが除去された後に、容器本体311内の圧力を大気圧まで下げることによって、図7(d)に示すように、処理流体Rは超臨界状態から気体状態に変化し、パターンP間は気体のみによって占められる。このようにしてパターンP間のIPAは除去され、ウエハWの乾燥処理は完了する。
上述の図7(a)〜(d)に示すメカニズムを背景に、本実施形態の超臨界処理装置3は、以下のようにしてIPAの乾燥処理を行う。
すなわち超臨界処理装置3によって行われる基板処理方法は、パターンPに乾燥防止用のIPAが液盛りされたウエハWを処理容器301の容器本体311内に搬入する工程と、流体供給部(すなわち流体供給タンク51、流通オンオフバルブ52a、流通オンオフバルブ52b及び第2蓋部材322)を介して容器本体311内に超臨界状態の処理流体を供給する工程と、容器本体311内において、ウエハWからIPAを除去する乾燥処理を、超臨界状態の処理流体を使って行う工程とを備える。
すなわち、まず超臨界処理装置3には、洗浄装置2において洗浄処理が実施されたウエハWが搬送される。この洗浄装置2では、例えばアルカリ性薬液であるSC1液によるパーティクルや有機性の汚染物質の除去、リンス液である脱イオン水(DIW)によるリンス洗浄、酸性薬液である希フッ酸水溶液(DHF)による自然酸化膜の除去、DIWによるリンス洗浄がこの順に行われ、最後にウエハ表面にIPAが液盛りされる。そしてウエハWは、この状態のまま洗浄装置2より搬出され、超臨界処理装置3の処理容器301へ搬送される。
この処理容器301への搬送は、例えば第2の搬送機構161を用いて行われる(図1参照)。処理容器301へウエハを搬送するときには、第2の搬送機構161が受け渡し位置において待機している保持板316にウエハWを受け渡した後、保持板316の上方位置から退避する。
次いで、保持板316を水平方向にスライドさせて、保持板316を容器本体311内の処理位置まで移動させる。このとき、第1蓋部材315は、第1蓋部材収容空間324内に収容され、搬送口312を覆う。続いて、真空吸引管348(図2及び図3)からの吸引力により、第1蓋部材315が容器本体311に引き付けられ、第1蓋部材315によって搬送口312が塞がれる。次に、昇降機構326によって第1ロックプレート327をロック位置まで上昇させて、第1ロックプレート327と第1蓋部材315の前面とを当接させ、第1蓋部材315の移動を規制する。
続いて、ウエハW表面に液盛りされたIPAが乾燥してしまう前に、流通オンオフバルブ52b、52cを開放して第1供給ライン63、第2供給ライン64を介して処理空間319に高圧の処理流体を供給する。これにより、処理空間319内の圧力を例えば14〜16MPa程度まで昇圧する。処理空間319の加圧に伴い、第1蓋部材315の凹部338に設けられた断面U字状のシール部材339が押し広げられ、第1蓋部材315と容器本体311との間の隙間を気密に塞ぐ。
一方、処理空間319内では、当該処理空間319内に供給された処理流体がウエハWに液盛りされたIPAと接触すると、液盛りされたIPAは徐々に処理流体に溶解し、徐々に処理流体と置き換わる。そして、ウエハWのパターン間でIPAから処理流体への置換が進行するに従って、パターン間からはIPAが除去され、最終的には超臨界状態の処理流体のみによってパターンP間が満たされる。この結果、ウエハWの表面は液体のIPAから処理流体に置換されていくことになるが、平衡状態において液体IPAと処理流体との間には界面が形成されないので、パターン倒れを引き起こすことなくウエハW表面の流体を処理流体に置換することができる。
その後、処理空間319内に処理流体を供給してから予め設定した時間が経過し、ウエハWの表面が処理流体にて置換された状態となったら、流通オンオフバルブ52fを開放して処理空間319内の雰囲気を流体排出ヘッダー318から容器本体311外方に向けて排出する。これにより、容器本体311内の圧力は次第に低下していき、処理空間319内の処理流体は超臨界の状態から気体の状態に変化する。このとき超臨界状態と気体との間には界面が形成されないので、ウエハWの表面に形成されたパターンに表面張力を作用させることなく、ウエハWを乾燥することができる。
以上のプロセスにより、ウエハWの超臨界処理を終えた後、処理空間319に残存している気体の処理流体を排出するため、不図示のパージガス供給ラインからN2ガスを供給して流体排出ヘッダー318へ向けてパージを行う。そして予め定めた時間だけN2ガスの供給を行いパージが完了し、容器本体311内が大気圧に復帰したら、第1ロックプレート327を開放位置まで降下させる。そして保持板316を受け渡し位置まで水平方向に移動させ、超臨界処理を終えたウエハWを第2の搬送機構161を用いて搬出する。
ところで、上述した超臨界処理を行っている間、第2ロックプレート337は、常時ロック位置まで上昇されている。これにより第2ロックプレート337と第2蓋部材322の後面とが当接し、第2蓋部材322の移動が規制される。そして処理空間319に高圧の処理流体が供給されておらず、容器本体311内の圧力が高められていない場合、第2蓋部材322及び容器本体311の側壁面同士が直接対向してシール部材329を押し潰し、メンテナンス用開口321の周囲を気密に塞ぐ。
一方、処理空間319に高圧の処理流体を供給した場合、第2蓋部材322は、メンテナンス用開口321周囲の嵌入孔335、333と、第2ロックプレート337との間の隙間C2分だけ処理空間319から遠ざかる方向(Y方向プラス側)に移動する。第2蓋部材322が移動することにより、第2蓋部材322と容器本体311との間の隙間が広がる。この場合、弾性を有するシール部材329の復元力により切り欠き329aが広がるので、シール部材329の外周面が第2蓋部材322や容器本体311に密着し、これら第2蓋部材322と容器本体311との間の隙間は気密に塞がれる。このように、上述した超臨界処理を行っている間、第2蓋部材322は、メンテナンス用開口321を塞いだままの状態を維持するようになっている。
[メンテナンス時の作用]
次に、上述した超臨界処理が終了し、処理容器301のメンテナンスを行う際の作用について説明する。
まず、処理空間319の内部を大気圧に開放する。次に、昇降機構326によって第1ロックプレート327を嵌入孔323、325から下方側に移動し、第1蓋部材315を開放する開放位置とする。次いで、第1蓋部材315及び保持板316を手前側(Y方向マイナス側)に移動する。これにより、保持板316は処理空間319から取り出され、第1蓋部材315は搬送口312から離間する(図8(a))。
次に、第2ロックプレート337を嵌入孔333、335から下方側に移動して、第2蓋部材322を開放する開放位置とする。次に、第2蓋部材322を奥側(Y方向プラス側)に移動し、第2蓋部材322をメンテナンス用開口321から離間する(図8(b))。
続いて、メンテナンス用開口321から清掃治具や工具等を挿入し、処理空間319の内部のメンテナンス作業(清掃、調整等)を行う。本実施形態においては、第2ロックプレート337を下方側に移動し、第2蓋部材322を取り外すだけで処理空間319の内部にアクセスすることが可能になるので、このようなメンテナンス作業を容易に行うことができる。また、供給ポート313が第2蓋部材322に接続されているので、上記処理空間319内のメンテナンス作業と併せて、供給ポート313や開孔332のメンテナンス作業(清掃、調整等)も容易に行うことができる。
このようにしてメンテナンス作業が終了した後、上記の逆のステップで容器本体311に対して第2蓋部材322及び第1蓋部材315をそれぞれ組み付ける。すなわち、まず第2蓋部材322を手前側(Y方向マイナス側)に移動し、第2蓋部材322によってメンテナンス用開口321を覆う。次に、真空吸引管349からの吸引力により、第2蓋部材322を容器本体311側に吸引する。次いで、第2ロックプレート337を上昇させ、第2ロックプレート337を嵌入孔333、335内に嵌入することにより、第2蓋部材322を押さえるロック位置とする。これにより、メンテナンス用開口321の周囲が気密に塞がれる。
次に、第1蓋部材315及び保持板316を奥側(Y方向プラス側)に移動することにより、保持板316を処理空間319内に進入させるとともに、第1蓋部材315によって搬送口312を覆う。次に、真空吸引管348からの吸引力により、第1蓋部材315を容器本体311側に吸引する。続いて、昇降機構326によって第1ロックプレート327を上昇させ、第1ロックプレート327を嵌入孔323、325に嵌入し、ロック位置とする。このようにして、搬送口312の周囲は気密に塞がれ、再び処理空間319が密閉される。その後、必要に応じて上述した超臨界処理を行う。
以上に説明したように、本実施形態によれば、容器本体311のうち、搬送口312とは異なる位置にメンテナンス用開口321が設けられ、メンテナンス用開口321は、第2蓋部材322によって塞がれる。これにより、第2蓋部材322を取り外すだけで、容器本体311の処理空間319に容易にアクセスすることができる。この場合、容器本体311のメンテナンス作業を容易に行うことができるので、メンテナンス作業の作業効率を高めることができる。
また、本実施形態によれば、第2蓋部材322が容器本体311内の圧力により移動することを規制する第2ロックプレート337が設けられている。これにより、第2ロックプレート337によって第2蓋部材322が移動することを防止し、容器本体311内の圧力によって第2蓋部材322がメンテナンス用開口321から外れてしまう不具合を防止することができる。
また、本実施形態によれば、容器本体311に嵌入孔323、325が設けられ、第2ロックプレート337は、嵌入孔323、325に嵌入されることにより第2蓋部材322を規制する。これにより、第2ロックプレート337を嵌入孔323、325から抜き取ることにより第2蓋部材322をメンテナンス用開口321から取り外すことができる。この場合、例えばボルトを取り外す作業等を行う必要がないので、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
さらに、本実施形態によれば、第2蓋部材322に、供給ポート313を介して、容器本体311内に処理流体を供給する第1供給ライン63を接続している。これにより、第2蓋部材322をメンテナンス用開口321から取り外した際に、供給ポート313等、処理流体を供給するための部材についてのメンテナンス作業も併せて行うことができる。
さらに、本実施形態によれば、メンテナンス用開口321は、搬送口312に対向する位置に設けられている。これにより、容器本体311の圧力が高められた際にメンテナンス用開口321等の特定の箇所に応力が集中することを防止し、容器本体311の耐久性を高めることができる。
さらに、本実施形態によれば、容器本体311の底面に、底面側流体供給部341を介して、容器本体311内に処理流体を供給する第2供給ライン64を接続している。これにより、補助的にウエハWの裏面側からも処理流体を容器本体311内に供給することができるので、処理容器301への処理流体の供給プロセスを多様化することができる。例えば、底面側流体供給部341を、処理容器301への処理流体の供給開始当初等、処理流体を低流速でウエハWに供給する際に用いても良く、この場合、ウエハWのパターン部の倒壊をより確実に防止することができる。
[処理容器の変形例]
次に、図9により超臨界処理装置3の処理容器301の変形例について説明する。図9は、処理容器301の変形例を示す側面図である。図9において、図1乃至図8に示す実施形態と同一部分には同一の符号を付してある。
図9において、処理容器301は、チャンバーベース402上に載置され、チャンバーベース402は、メインベース401の上方において、メインベース401に対して離間して配置されている。このメインベース401は、処理容器301を設置する基準となる部材であり、例えば洗浄処理システム1内で水平に固定されている。メインベース401とチャンバーベース402との間には、複数の水準調整機構403、404が設けられている。これら水準調整機構403、404は、メインベース401に対する処理容器301及びチャンバーベース402の位置水準(角度や高さ位置)を微調整するものであり、処理容器301の下方に位置する第1水準調整機構403と、処理容器301から平面方向に離れて位置する第2水準調整機構404とから構成されている。このうち第1水準調整機構403は、主として重量物である処理容器301を支持するとともにその高さ方向位置を調整するものであり、第2水準調整機構404よりも高い耐荷重性を有している。なお、第1水準調整機構403は、図9では1つのみ図示しているが、複数の第1水準調整機構403が設けられていても良い。また、第2水準調整機構404は、チャンバーベース402全体の水準を調整するものである。図9では、4つの第2水準調整機構404が図示されているが、第2水準調整機構404の数はこれに限られるものではない。
また、図9において、処理容器301の容器本体311は、全体として1つのブロック状に形成されている。容器本体311のうち、処理空間319の上方及び下方には、それぞれ2つずつヒーター用開口411が形成されている。各ヒーター用開口411は、搬送口312の長手方向(図9の紙面に垂直な方向)に沿って細長く延在している。各ヒーター用開口411には、それぞれ細長いヒーター用ブロック412が遊挿されている。すなわちヒーター用ブロック412の長手方向に垂直な断面形状は、ヒーター用開口411よりもわずかに小さく形成されており、これにより、ヒーター用ブロック412は、ヒーター用開口411に対して挿脱自在となっている。各ヒーター用ブロック412には、例えば抵抗発熱体からなる細長いヒーター345が設けられている。このヒーター345からの熱は、ヒーター用ブロック412を介して容器本体311に対して伝達される。なお、各ヒーター用ブロック412は、アルミニウム等の熱伝導性の良好な金属からなっていることが好ましい。
容器本体311の天面には、複数のタップ穴414が貫通形成され、各タップ穴414には、ボルト又はねじ等の押し付け部材413が螺着されている。そして各押し付け部材413をタップ穴414に対してねじ込んでいくことにより、押し付け部材413の先端がヒーター用ブロック412を下方に押圧する。これにより、ヒーター用ブロック412が、容器本体311に対して動かないように固定される。この場合、ヒーター用ブロック412の位置がヒーター用ブロック412の長手方向(図9の紙面に垂直な方向)に若干ずれていても、容器本体311にヒーター用ブロック412を確実に固定することができる。また、ヒーター用ブロック412が下方に押圧されることにより、ヒーター用ブロック412の下面が容器本体311に対して確実に密着するので、ヒーター345からの熱を容器本体311に対して効率的に伝達することができる。なお、図示していないが、容器本体311の底面における構成も略同様である。すなわち、容器本体311の底面に複数のタップ穴が貫通形成され、各タップ穴に螺着された押し付け部材によって、ヒーター用ブロック412が上方に押圧されている。
次に、図10により超臨界処理装置3の処理容器301の他の変形例について説明する。図10は、処理容器301の他の変形例を示す断面図である。図10において、図1乃至図8に示す実施形態と同一部分には同一の符号を付してある。
図10において、容器本体311内の搬送口312側には、流体排出ヘッダー318(図2及び図3)に代えて、流体排出管501が設けられている。この場合、流体排出管501は、略円筒状の部材からなっている。また、搬送口312側近傍における処理空間319の底面に、搬送口312の長手方向(X方向)に沿って細長い収容溝502が形成されている。流体排出管501は、この収容溝502に対して着脱可能に収容されている。流体排出管501には、多数の開孔503が長手方向に沿って略等間隔に設けられている。この流体排出管501は、容器本体311内の流体を排出する流体排出部として機能するものであり、処理空間319内の流体は、開孔503を介して容器本体311の外方に排出される。
流体排出管501の両端部には、それぞれ円形の固定リング504が取り付けられている。なお、図10においては、1つの固定リング504のみを示している。固定リング504のうち容器本体311側を向く面には、取付孔505が形成され、取付孔505は、外側開口部506と連通している。流体排出管501の一端部は、取付孔505に挿入されており、取付孔505内に配置されたパッキン507によって、流体排出管501と外側開口部506とが気密に密着されている。さらに外側開口部506の周囲において、排出ポート314が固定リング504に例えば溶接により固定されている。このようにして、処理空間319からの流体は、流体排出管501、取付孔505、外側開口部506及び排出ポート314を順次介して、外方に排出されるようになっている。
各固定リング504は、容器本体311の側面に形成された陥凹部508にそれぞれ収容され、ボルト等の取付部材511によって容器本体311に固定されている。また固定リング504のうち容器本体311側の面にパッキン509が嵌め込まれており、このパッキン509により固定リング504と容器本体311とが気密に密着されている。
図10において、固定リング504を容器本体311から取り外すことにより、流体排出管501を容器本体311から取り外すことができる。これにより、流体排出管501の清掃作業や交換作業を簡単に実施することができる。また、流体排出管501の開孔503を容易に形成することができる。
本発明は、上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形が加えられた各種態様も含みうるものであり、本発明によって奏される効果も上述の事項に限定されない。したがって、本発明の技術的思想及び趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲及び明細書に記載される各要素に対して種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
例えば、乾燥処理に用いられる処理流体はCO2以外の流体であってもよく、基板の凹部に液盛りされた乾燥防止用の液体を超臨界状態で除去可能な任意の流体を処理流体として用いることができる。また乾燥防止用の液体もIPAには限定されず、乾燥防止用液体として使用可能な任意の液体を使用することができる。
また、上記において、メンテナンス用開口321は、搬送口312の開口と同等の大きさの開口としたが、メンテナンス用開口321の大きさ、形状については、これに限定されるものではない。メンテナンス用開口321は、例えば、容器本体311に収容されたウエハWが取り出すことができる大きさ又は形状、また、割れたウエハWの破片を取り出すことができる大きさ又は形状に設けられてよく、また、清掃治具や工具等を挿入し、処理空間319の内部のメンテナンス作業(清掃、調整等)を行うことができる大きさ又は形状とすることができる。
また上述の実施形態及び変形例では、基板処理装置及び基板処理方法に本発明が適用されているが、本発明の適用対象は特に限定されない。例えば、上述の基板処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムや、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に対しても本発明は適用可能である。