(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係るマッチングシステムS1の概要を示す機能ブロック図である。マッチングシステムS1は、第1の情報端末1と、第2の情報端末2と、第3の情報端末3と、サーバ4とで構成される。なお、図1において実線はデータの流れを、破線は人的な情報の流れを、一点鎖線は金銭(対価45)の流れを示している。
第1の情報端末1と第2の情報端末2とは、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、いわゆるAIスピーカ等の機器であって、音声、テキスト、画像の少なくとも一つのコンテンツを用いて、機器を使用する者との間で双方向(インタラクティブ)に情報をやりとりする。ここで、第1の情報端末1は、第1の利用者21a(ここでは売り手)が使用し、第2の情報端末2は、第2の利用者21b(ここでは買い手)が使用する。なお、以降の説明において第1の利用者21aと第2の利用者21bとを区別しないときは、単に「利用者21」と称する。第1の情報端末1と第2の情報端末2とは、利用者21が情報を入力し、更に利用者21に対して情報を提示/提供するインタフェース(例えば図示しない表示装置やスピーカ)を備えている。
第3の情報端末3も、第1の情報端末1あるいは第2の情報端末2と同様の機器で構成され、第3の利用者23(ここでは仲介業者。マッチングサイトの運営者であってもよい。)が使用する。
サーバ4には、情報入力部4aとマッチング処理部4bとが含まれている。以下、まず情報入力部4aについて説明する。情報入力部4aは、利用者21との間で対話を行うロボットとしての第1のチャットボット31a及び第2のチャットボット31bと、信頼性向上部4eとを含む。第1のチャットボット31aは、第1の情報端末1との間で双方向(インタラクティブ)かつリアルタイムに情報をやりとり(送受信)することで、第1の情報端末1を介して第1の利用者21aとの間でコミュニケーションを成立させる。また、第2のチャットボット31bは、第2の情報端末2との間で双方向かつリアルタイムに情報をやりとり(送受信)することで、第2の情報端末2を介して第2の利用者21bとの間でコミュニケーションを成立させる。
なお、ここでいう「リアルタイム」とは、真の即時応答を意味するものではない。現実問題としてサーバ4の応答時間(レスポンスタイム)はサーバ4の処理能力や処理するタスク・プロセスの負荷等に応じて変化する。従ってここでは、少なくとも利用者21との間でコミュニケーションを継続することが可能な応答時間の範囲でチャットボット31が利用者21に応答すれば、「リアルタイム」にやりとりを行っているものとする。
また、以降の説明において第1のチャットボット31aと第2のチャットボット31bとを区別しないときは、単に「チャットボット31」と称する。また、図1においては、便宜上、第1のチャットボット31aと第2のチャットボット31bとを区別して記載しているが、チャットボット31が利用者21を例えばID(IDentification:識別子)で判別して、各利用者21に対して個別に応答を行うように構成すれば、チャットボット31は単一であってもよい。
信頼性向上部4eは、チャットボット31が利用者21との間でコミュニケーションを図ることで、利用者21から提供された情報(第1の所定の情報及び第2の所定の情報)の信頼性を向上させる(信頼性向上部4eの機能及び動作については後に詳述する)。信頼性の向上が図られた、利用者21が提供した情報は、サーバ4から第3の情報端末3に送信され、第3の情報端末3を介して第3の利用者23に提供されるとともに、信頼性の向上が図られた、利用者21が提供した情報は、データベース4i(図2参照)に蓄積される。なお、サーバ4において情報入力部4aが機能を発揮しているとき、サーバ4は情報入力装置として機能することになる。
次にマッチング処理部4bについて説明する。マッチング処理部4bは、信頼性向上部4eによって信頼性が向上された、第1の利用者21a(売り手)が提供した情報及び第2の利用者21b(買い手)が提供した情報に基づいて、売り手と買い手との双方の条件を満たす、あるいは一部に条件に違いがあったとしても、多くの条件を満たしあう、売り手と買い手とを抽出し、マッチング候補として出力する。マッチング処理部4bは、マッチング候補を第3の情報端末3に送信するとともに、第1の利用者21a(売り手)に対してマッチング候補と第2の利用者21b(買い手)に関する情報とを送信し、また、第2の利用者21b(買い手)に対してマッチング候補と第1の利用者21a(売り手)に関する情報とを送信する。また、マッチング処理部4bは、マッチング候補をデータベース4i(図2参照)に格納する。
そして、更に第3の情報端末3は、マッチング候補と利用者21に関する情報をエージェント40(ここでは、自然人あるいは法人)に送信する。エージェント40は、入手したこれらの情報に基づいて、第1の利用者21aまたは(及び)第2の利用者21bにコンタクトを行う。また逆に利用者21はエージェント40にコンタクトを行うこともできる。これによって売り手と買い手との間で企業買収等の具体的な協議が開始される。
なお、マッチングシステムS1が介在することによって企業買収等が成立した場合、第1の利用者21a(売り手)は、第2の利用者21b(買い手)から対価45を受け取るとともに、第3の利用者23(仲介業者)に対し所定の手数料(対価45)を支払う。また、第2の利用者21b(買い手)は、第1の利用者21a(売り手)に対して、買収額としての金銭(対価45)を支払うとともに、第3の利用者23(仲介業者)に対し所定の手数料(対価45)を支払う。なお、図示はしていないが、第3の利用者23は、企業買収等が成立した場合等にエージェント40に対して報酬を支払う。
また、マッチングシステムS1が仲介業者としての第3の利用者23によって運営されているようなケースにおいて、当該仲介業者が他の仲介業者にマッチングシステムS1の使用を許諾(ライセンス)しているような場合は、当該仲介業者は他の仲介業者からマッチングシステムS1の使用料を受領する。
図2は、本発明の実施形態に係るマッチングシステムS1におけるサーバ4の構成を示すブロック図である。以降、図2に図1を併用して説明を続ける。サーバ4は例えば第3の利用者23の社屋等に設置されてもよく、いわゆるクラウドサーバであってもよい。サーバ4は例えばインターネット等のネットワーク6を介して第1の情報端末1、第2の情報端末2、第3の情報端末3と接続されている。サーバ4は、上述したチャットボット31、マッチング処理部4b、信頼性向上部4eの他に演算部4f、記憶部4g、送受信部4h、データベース4iを備える。これらの各要素はバス4jで接続され、バス4jを介して相互にデータの送受信を行う。
送受信部4hは、いわゆるネットワークインタフェースであり、ネットワーク6に接続して、サーバ4と第1の情報端末1〜第3の情報端末3との間で双方向にデータを送受信する。演算部4fは、CPU(Central Processing Unit)等で構成され、演算部4fは記憶部4gを構成するROM(Read Only Memory)、RAM(Random access memory)等に記憶された制御プログラムに従って他の構成要素を制御する。
データベース4iは、RAID(Redundant Arrays of Independent Disks)構成等を備えるいわゆる大容量ストレージ内に構築されている。データベース4iには、利用者21の個人情報、利用者21を識別するための識別しとしてのID、信頼性向上部4eによって信頼性が向上された利用者21が提供した情報、マッチング候補、後述する売り手記入フォームや買い手記入フォーム等の各種フォームに対するチェック項目等が格納されている。
なお、ここで、マッチング処理部4b、信頼性向上部4e、チャットボット31を構成する音声認識部4k及び発話生成部4mは、上述した演算部4fが記憶部4gに格納されたプログラムに従って動作することで機能を発揮する。即ち、図2は説明を容易にするためにサーバ4の物理的構成と機能的構成を一つの図として記載したものである。
チャットボット31を構成する音声認識部4kは、利用者21が発した音声をディジタル化した音声データを、送受信部4hを介して入手し、テキストデータに変換する。
テキストデータへの変換には、例えば、音響モデルによる音素認識を利用することができる。音素認識では、音響モデルを用いて音声の周波数成分や時間変化を解析し、音声波形から単音を抽出して、その特徴量を用いてそれぞれの言語の基本となる音素をパターンマッチングにより特定する。パターンマッチングの手法は、旧来は確率的手法としてのGaussian Mixture Model- Hidden Markov Model(GMM-HMM)が用いられていたが、昨今ではGMMの確率計算をディープニューラルネットワーク(DNN)に置き換えたDNN-HMMが広く用いられている。
他の手法として、言語モデルによるパターンマッチング技術を活用することも可能である。言語モデルによるパターンマッチングでは、音波から音素、音素から単語、単語から文に変換する過程で、各階層において最適化されたアルゴリズムを適用することで、音声データからテキストデータに変換する精度が向上する。
音声認識部4kが出力したテキストデータは、演算部4fに送信される。チャットボット31が利用者21からテキストデータを受信した場合は、このテキストデータが演算部4fに送信される。
さて、データベース4iには、言語の使用方法を蓄積した文書集合としてのコーパス、テキストデータを単語に分割し「表層形」「原形」「品詞」「読み」等を付与する語句リストとしての辞書が構築されている。更にデータベース4iには、予め学習したチャットボット31の応答パターンが格納されている。この観点で、本実施形態におけるチャットボット31は、いわゆる機械学習を応用したAIチャットボットであり、後述する利用者21とチャットボット31とのやりとりは応答パターンとして追加学習に供される。
演算部4fは、受信したテキストデータに対して言語を構成する最小単位である単語を切り出す形態素解析を行い、更にテキストデータの内容の曖昧性を排除するために構造解析を行う。次に演算部4fは、上述したコーパス、辞書を参照して得た複数の語彙の関係性に基づき、データベース4iを検索して、利用者21に対する応答に必要となる情報を取得する。このようにして得られた情報をチャットボット31の応答パターンと組み合わせることで、あるいは既にデータベース4iに格納されている応答パターンをそのまま利用することで、最終的に利用者21に応答するテキストデータが生成される。
なお、利用者21に対する応答には、利用者21からの質問に対して回答する回答テキストデータと、利用者21に対して質問を行う質問テキストデータとが含まれる。上述した信頼性向上部4eは、この回答テキストデータと質問テキストデータとによって(以降、回答テキストデータと質問テキストデータとを合わせて「応答テキストデータ」と称することがある。)、利用者21の提供した情報の信頼性を高める。
チャットボット31が音声によって利用者21とやりとりしている場合、演算部4fは生成した応答テキストデータを発話生成部4mに出力する。発話生成部4mは、入力された応答テキストデータに基づき、ディジタル音声データを生成し、演算部4fに送信する。演算部4fは入手したディジタル音声データ(応答音声データ)を、送受信部4hを介して利用者21が使用する情報端末(例えば第1の情報端末1)に送信する。チャットボット31がテキストデータを用いて利用者21とやりとりしている場合、演算部4fは、応答テキストデータをそのまま利用者21が使用する情報端末に送信する。利用者21は、受信した応答音声データあるいは応答テキストデータを情報端末で取得することで、チャットボット31との間でコミュニケーションが継続する。
以下、具体例を挙げて、チャットボット31と利用者21とのコミュニケーションを通じて行われる信頼性向上処理(即ち、信頼性向上部4eの処理)について説明する。なお、以下の説明において、利用者21は少なくとも表示画面を備える情報端末(タブレット端末やパーソナルコンピュータ)を使用しているものとする。また、チャットボット31は利用者21との間でテキストデータをやりとりするものとする。
さて、企業買収等においては、第1ステージ[興味]、第2ステージ[検討]、第3ステージ[着手]の3段階、及び具体的交渉の段階が存在する。なお、具体的交渉の段階は人と人(ともに、自然人あるいは法人)との間のコミュニケーションに基づくことが多いことから、以降の説明では具体的交渉の段階に関する説明を省略する。
ここで、第1ステージ[興味]は、例えば後継者不在のような理由で、自社を譲渡したいとの意思を持つ第1の利用者21aが、買い手を求めて自社を譲渡する可能性に関する情報を得るステージであり、また、事業拡大を果たしたい等の理由で、適切な企業を買収したいとの意思を持つ第2の利用者21bが、売り手を求めて自社の情報を提供するステージである。
第2ステージ[検討]は、売り手としての第1の利用者21aが、自社を譲渡する方針に至った際に自社の金銭的価値の評価がどの程度かを把握するステージである。具体的には、例えば決算書に記載された売上総利益、営業利益、経常利益等に基づき企業価値の評価を行うことになるが、企業価値を正確に把握するためには、減価償却や節税のための生命保険の積立等について様々な調整等(調整項目の記載)を行うことが必要となってくる。しかし、このような調整項目の詳細な情報については信頼性が欠如する傾向が強いとされている。
第3ステージ[着手]は、売り手としての第1の利用者21aがいわゆる「人」・「モノ」・「金」に関する自社の詳細な情報を、買い手としての第2の利用者21bに対して開示し、企業買収等の交渉を具体的に開始するステージである。一般に、「金」に関する情報は決算書や税務申告書等を第1の利用者21aから提供を受けることで充足するが、「人」や「モノ」に関する情報については、第1の利用者21aに従業員構成や取扱商品サービス等に関する情報を所定のフォームに記入してもらう必要がある。このとき、第1の利用者21aにとって、何をどう入力すればよいのかが不明であるといった問題がしばしば発生する。
まず、第1ステージ[興味]の段階における、利用者21とチャットボット31とのやりとり、及び信頼性向上処理の内容について説明する。[表1]は、企業買収等を受けようとする売り手としての第1の利用者21aがマッチングシステムS1に利用登録を行う際に、自社の基本情報及び譲渡希望条件を記入するフォーム(「第1の所定の情報」。以下、単に「売り手記入フォーム」と称することがある。)の一例である。なお、[表1]では、既に信頼性向上部4eによって信頼性が向上された情報が記載されている。
第1の利用者21aは、まず第1の情報端末1に表示された売り手記入フォームに必須項目を入力し、例えば表示画面に表示された「登録」のアイコンをタップ等する。売り手記入フォームは第1の情報端末1からサーバ4に送信され、記憶部4gに一時的に保存される。信頼性向上部4eはデータベース4iにアクセスして売り手記入フォームに関するチェック項目を得て、売り手記入フォームの内容に不備があると判断した際に、第1のチャットボット31aを起動して、第1の利用者21aとの間でチャットを開始する。もちろん、売り手記入フォームへの記入に先立ち、演算部4fが第1のチャットボット31aを起動して、第1のチャットボット31aが第1の利用者21aに対して記入を促すようにしても構わない(以降説明する、利用者21による各種フォームへの入力に際しても同じ)。また利用者21がマッチングシステムS1の利用に際して所定のアプリケーションを起動した際に、演算部4fがチャットボット31を起動して、利用者21に対する各種サービスの案内を行っても構わない。
本例においては、例えば会社名が単に「マゴコロ建設」となっている場合を仮定すると、第1の情報端末1の表示画面には「御社は株式会社ですか?」のテキストが表示される。第1の利用者21aが「はい。そうです。」と応答すれば、第1のチャットボット31aは「了解しました。」の旨を第1の利用者21aに通知するとともに、記載漏れの内容を信頼性向上部4eに出力し、信頼性向上部4eは売り手記入フォームの会社名を「マゴコロ建設株式会社」に修正し、修正された情報を、ネットワーク6を介して第1の情報端末1に送信する。
仮に、第1の利用者21aが「御社は株式会社ですか?」の質問に対して「いいえ。」と回答した場合、第1のチャットボット31aは、「それでは、御社の会社の形態は、合同会社、合名会社、合資会社のいずれですか?」と質問する。第1の利用者21aは、この第1のチャットボット31aの質問に対して、「合同会社です。」のように回答を行い、これを受けた信頼性向上部4eは、会社名を「マゴコロ建設合同会社」に修正し、この修正内容が第1の情報端末1に表示される。このように、第1の利用者21aと第1のチャットボット31aとの間では、双方向性(インタラクティブ性)と、コミュニケーションが継続する観点においてリアルタイムのチャットが行われる。
このように、信頼性向上部4eとチャットボット31とが協働することで得られた「信頼性が向上された情報」は、サーバ4から第1の情報端末1に送信される。これによって、第1の利用者21aは自ら第1の情報端末1を操作することなく、売り手記入フォームに記載された項目は「信頼性が向上された情報」に更新される。
更に、信頼性向上部4eは、例えば会社名をキーとしてインターネットを検索し、当該企業の情報を取得し、例えば本店所在地に誤りを発見した場合、第1のチャットボット31aは、その誤りを第1の利用者21aに指摘して、修正に導くようにすることも可能である。このようにして、信頼性が向上された売り手記入フォームはデータベース4iに記憶される。
即ち、本発明に係る情報入力装置(情報入力部4a)は、第1の利用者21aが使用する第1の情報端末1との間で通信を行って、第1の情報端末1から第1の利用者21aが提供する第1の所定の情報(ここでは、売り手記入フォーム)を取り込む情報入力装置であって、情報入力装置は、第1の情報端末1から第1の所定の情報を取り込む際に、第1の情報端末1との間でインタラクティブかつリアルタイムに通信を行って、第1の利用者21aから提供される第1の所定の情報の信頼性を高める信頼性向上部4eを備える。また、情報入力装置は、第1のチャットボット31aを用いて、第1の情報端末1を介して第1の利用者21aとの間で、少なくとも音声またはテキストによってコミュニケーションを図る。
[表2]は、企業買収等を行おうとする買い手としての第2の利用者21bがマッチングシステムS1に利用登録を行う際に、自社の基本情報及び買収希望条件を記入するフォーム(「第2の所定の情報」。以下、単に「買い手記入フォーム」と称することがある。)の一例である。なお、[表2]では、既に信頼性向上部4eによって信頼性が向上された情報が記載されている。
第2の利用者21bは、まず第2の情報端末2に表示された買い手記入フォームに必須項目を入力し、例えば表示画面に表示された「登録」のアイコンをタップ等する。買い手記入フォームは第2の情報端末2からサーバ4に送信され、記憶部4gに一時的に保存される。信頼性向上部4eはデータベース4iにアクセスして買い手記入フォームに関するチェック項目を得て、買い手記入フォームの内容に不備があると判断した際に、第2のチャットボット31bを起動して、第2の利用者21bとの間でチャットを開始する。この過程については[表1](売り手記入フォーム)を用いて説明した内容と実質的に同一であるので、説明は省略する。最終的に、買い手記入フォームはサーバ4のデータベース4iに格納される。
このように、信頼性向上部4eとチャットボット31とが協働することで得られた「信頼性が向上された情報」は、サーバ4から第2の情報端末2に送信される。これによって、第2の利用者21bは自ら第2の情報端末2を操作することなく、買い手記入フォームに記載された項目は「信頼性が向上された情報」に更新される。また、買い手記入フォームについても、第2の利用者21bと第2のチャットボット31bの間では、双方向性(インタラクティブ性)と、コミュニケーションが継続する観点においてリアルタイムのチャットが行われる。
サーバ4のマッチング処理部4bは、データベース4iに売り手記入フォームが新規に登録されると、これまでに既に登録されている買い手記入フォームとの間で、マッチング処理を実行する。またデータベース4iに買い手記入フォームが新規に登録されると、これまでに既に登録されている売り手記入フォームとの間で、マッチング処理を実行する。また、利用者21は売り手記入フォームおよび買い手記入フォームの修正が可能となっており、マッチング処理部4bはこれらの記入フォームに修正が生じた場合も、再度マッチング処理を実行する。そしてマッチング処理の結果は、例えば[表2]の基本情報に含まれる会社名(ここでは、日本ホールディングス株式会社)あるいは当該会社名と紐づけられたコード情報(図示せず)をキーとして、データベース4iに記憶される。更に、最終的に企業買収等が成立した際に、その事実を示すフラグ(以降、「成立フラグ」と称することがある。)もデータベース4iに併せて記憶される。
マッチング処理においては、記入フォームの各項目について重みづけ等を行って数値化(スコア化)してマッチング度を生成してもよく、マッチング処理部4bは、スコアの高い順にマッチング度のリストを生成してもよい。そしてマッチング処理部4bはマッチング処理の結果を演算部4fに出力し、演算部4fは、マッチング処理の結果を少なくとも、記入フォームを入力(あるいは修正)した利用者21に通知する。
もちろん、第1の利用者21a及び第2の利用者21bの双方にマッチング処理の結果を通知してもよい。更にマッチング処理の結果は、第3の利用者23(仲介業者)にも通知され、仲介業者を介してエージェント40にも通知される。当該通知は、チャットボット31を介して行われることを想定しているが、第1の情報端末1ないし第3の情報端末3に表示された所定のダイアログボックスを介して行われてもよい。更に、当該通知は単なるインフォメーションとしてではなく、適切なパートナー候補を推薦するという観点で、スコアに基づくレコメンドの形式によって行われてもよい。
即ち、本発明に係るマッチングシステムS1は、上述した情報入力装置(情報入力部4a)を備えるマッチングシステムであって、情報入力装置は、第2の利用者21bが使用する第2の情報端末2との間で通信を行って、第2の情報端末2から第2の利用者21bが提供する第2の所定の情報を取り込み、情報入力装置の信頼性向上部4eは、第2の情報端末2から第2の所定の情報を取り込む際に、第2の情報端末2との間でインタラクティブかつリアルタイムに通信を行って、第2の利用者21bから提供される第2の所定の情報の信頼性を高め、信頼性向上部4eによって信頼性の向上が図られた第1の所定の情報と第2の所定の情報とに基づいて、マッチング処理を行う。そして、情報入力装置は、第2のチャットボット31bを用いて、第2の情報端末2を介して第2の利用者21bとの間でコミュニケーションを図る。
更に、マッチング処理部4bは、例えば第2の利用者21bについてマッチング処理を実行する際に、データベース4iに記憶された成立フラグを参照し、第2の利用者21bが過去に現実に企業買収等を成立させた際の傾向を学習しておき、学習した結果に基づいて記入フォームの各項目の重みづけを修正し、マッチング度を算出してもよい。具体的には、第2の利用者21bが、例えば特定の地域に本店所在地が登記されている企業または事業として飲食業を営む企業を選択的に買収している傾向が学習されている場合、マッチング処理部4bはそのような過去の傾向を参酌してマッチング度を算出する。これによってマッチング処理において、例えば垂直統合や水平統合といった利用者21のシナジー具現化の方針に基づいてマッチング度を算出することが可能となる。
次に、第2ステージ[検討]の段階における、利用者21とチャットボット31とのやりとり、及び信頼性向上処理の内容について説明する。[表3]は、第2ステージ[検討]において、売り手(第1の利用者21a)が自社に興味を持っている買い手(第2の利用者21b)に開示する「価値評価フォーム」の一例を示す表である。価値評価フォームは損益計算書(Profit and Loss statement:PL)と貸借対照表(Balance sheet(BS))とに基づいて作成される。これは、売り手の価値は、損益計算書から導かれる実質年間収益力(企業の稼ぐ力)と、貸借対照表から導かれる実質純資産とをセットにして総合的に評価されることに基づく。ただし[表3]においては、損益計算書に基づく項目のみが抜粋して記載されている。また[表3]には、既に信頼性向上部4eによって信頼性が向上された情報が記載されている。
さて、企業の経営者等が自社を譲渡したいとの意思を持った場合、自社の価値評価(金銭的価値の評価)は重大な関心事となる。この価値評価の段階において、貸借対照表と損益計算書とは重要な資料となる。ここで第1の利用者21aが例えば損益計算書から、売上、総利益、営業利益、経常利益等の決算上の数値を抽出し、価値評価フォームに転記する際、転記ミスがない限り、数値の信頼性を保つことが可能だが、他方、企業価値を正確に評価するためには、減価償却や、節税のための生命保険の積立等の処理を考慮して調整を行う必要がある。この調整額は具体的には[表3]における「退任予定役員報酬(調整項目)」、「減価償却費(調整項目)」、「その他調整項目(1)」、「その他調整項目(2)」(以降、合わせて「調整項目」と称することがある。)に相当する。
しかしながら、このような調整項目(特に「その他調整項目」)については、財務部門を持たない中小企業等では、そもそも入力担当者に調整項目が何を意味しているかの知識が不足していることも多く、結果として情報としての信頼性を欠くものとなり易い。
本発明に係るマッチングシステムS1では、第1の利用者21aが価値評価フォームに入力する際においても、情報入力部4aの信頼性向上部4eは、第1の利用者21aの価値評価フォームの入力内容に対して第1のチャットボット31aと協働して情報の信頼性を向上する信頼性向上処理を実行する。
具体的には、信頼性向上部4eは、第1の利用者21aが価値評価フォーム(第1の所定の情報)を入力してサーバ4への登録作業を行う際に、例えば調整項目の欄に数値が記載されていない場合、第1のチャットボット31aを起動する。第1のチャットボット31aは第1の利用者21aに対して質問を発する。以下、第1の利用者21aと第1のチャットボット31aとの間でやりとりされるチャットの一例を示す。以下の例において、「C」は第1のチャットボット31aが生成して第1の情報端末1に表示されるテキストであり、「U」は第1の利用者21aが第1の情報端末1に入力したテキストである(以下、同じ)。
ここでは、[表3]において、2017年6月期の減価償却費の欄に数値が記載されていなかった場合を例示する。
C:「調整項目の欄に記載漏れがあるようです。調整項目に記載すべき事項について個別に確認いたしましょうか?」
U:「はい。確認してください。」
C:「御社では、2017年6月期に減価償却費が発生していますか?」
U:「発生しています。」
C:「それでは、当期の減価償却費を教えてください。」
U:「200万円です。」
ここで信頼性向上部4eは、第1の利用者21aが通知した額面を調整項目(ここでは減価償却費)に記入した[表3]を第1の情報端末1に送信し、第1の利用者21aは、追加内容を確認できる。更に、第1のチャットボット31aは、第1の利用者21aとの間でコミュニケーションを継続する。
C:「御社で生命保険の積立はやっていますか?」
U:「はい。積立をしています。」
C:「それでは、各期の積立額を教えてください。」
U:「各期とも300万円です。」
C:「承知しました。修正内容をその他調整項目(1)に記入しました。確認をお願いします。」
U:「確認しました。」
C:「ありがとうございます。それでは、修正された価値評価フォームを受領いたします。」
このようにして、信頼性が向上された価値評価フォームはデータベース4iに格納されると共に、買い手である第2の利用者21bに開示される。
なお、第1の利用者21aが例えば「調整項目とは何ですか?」のような質問を第1のチャットボット31aに行った際、第1のチャットボット31aはデータベース4iに格納された応答パターンの中から回答を選択して第1の利用者21aに通知する。もちろん、この際、説明用の静止画や動画等を配信してもよい。
もちろん、他の調整項目があれば、第1のチャットボット31aは、第1の利用者21aに追加/修正を促すチャットを行う。企業買収等に際して、財務上の数値は極めて重要な情報となる。本発明によれば、第1のチャットボット31aと信頼性向上部4eが協働することによって財務上の数値の信頼性が高められ、更にこれによって売り手と買い手との信頼関係が強固なものとなる。即ち、本実施形態の情報入力装置(情報入力部4a)は、信頼性向上部4eと第1のチャットボット31aとを協働させて、第1の利用者21aが提供した情報における財務上の数値の信頼性を向上させる。
以下、第2ステージ[着手]の段階において、信頼性向上部4eとチャットボット31とが協働して利用者21(特に、売り手としての第1の利用者21a)が提供する情報から財務上の不確実な情報を排除する例について[表3](価値評価フォーム)に[表1](売り手記入フォーム)を併用して説明する。
信頼性向上部4eは、[表3]に記載された「純資産」、「調整後営業利益」の値に基づき、以下の計算を実行して適正譲渡価格Cを算出する。
適正譲渡価格C=純資産+調整後営業利益×N・・・(式1)
なお(式1)は、これまで発明者が多数の企業買収等の事案を遂行する過程で導いた経験則に基づく式である。ここでNは、今後売り手において調整後営業利益が得られると見込まれる年数を意味するが、第2ステージ[検討]においては、適正譲渡価格Cはあくまでも譲渡価格の目安を示す数値として用いられ、例えばN=3と設定して計算される。
次に信頼性向上部4eは、算出された適正譲渡価格Cと、[表1]に記載された想定譲渡金額とを比較する。[表1]に示すように想定譲渡金額には例えば1〜3億のように幅がある。信頼性向上部4eは、適正譲渡価格Cが想定譲渡金額の範囲に収まっていないときチャットボット31を起動する。
売り手の想定譲渡金額の範囲よりも適正譲渡価格Cの方が小さいとき(即ち、売り手が自己の会社等を過大評価しているとき(これが大部分である))、チャットボット31は、第1の利用者21aに対して例えば「御社の価値評価フォームを拝見しました。私のこれまでの経験則上、御社の希望する想定譲渡金額では御社を購入する買い手はいないと考えられます。」のようにアドバイスを行う。逆に売り手の想定譲渡金額の範囲よりも適正譲渡価格Cの方が大きいとき(即ち、売り手が自己の会社等を過少評価しているとき)、チャットボット31は「もっと高い金額で譲渡できると考えられます。」のようにアドバイスを行う。
更に、チャットボット31は第1の利用者21aに対して、「売り手記入フォームの想定譲渡金額を適正と思われる範囲に修正しましょうか?」のように質問を発する。このアドバイスに対して第1の利用者21aが同意の旨を回答すると、[表1]の想定譲渡金額の欄が修正される。このようにして、信頼性向上部4eとチャットボット31とが協働することで(即ち、情報入力装置(情報入力部4a)が、信頼性向上部4eとチャットボット31とを協働させて)利用者21(ここでは、第1の利用者21a)が提供した情報から財務上の不確実な情報を排除し、かつ財務上の数値の信頼性を向上させる。即ち、情報入力装置は、利用者21から提供された情報の信頼性を高める処理を実行する。
なお、上述した例では、(式1)に基づいて適正譲渡価格Cを決定しているが、例えば、[表1]の直近売上・業種及び[表3]の各項目の数値を多次元ベクトルとして取り扱い、当該ベクトルと実際に企業買収等が成立したときの譲渡価格とを関連付けて学習させ(学習モデルはデータベース4iに構築しておく)、この学習モデルを用いて、適正譲渡価格Cを決定してもよい。適正譲渡価格Cは特に業種によって影響を受けることが多いとされており、この観点でも機械学習の適用は有用である。
なお、[表3](価値評価フォーム)は、第1の利用者21aが手作業によって損益計算書から必要項目を転記すると説明したが、例えば第1の利用者21aが紙媒体としての損益計算書をスキャナで読み取って、その画像データをサーバ4にアップロードし、サーバ4側でOCR(光学文字認識:Optical character recognition)を用いてテキストデータに変換したのち、必要項目を抽出することで価値評価フォームを作成してもよい。このように転記という手作業によらず価値評価フォームを作成する場合においても、本来的に損益計算書は利用者21が自ら作成するものであることから、財務上の不確実な情報を排除する処理を行うことには大きな意味がある。
以下、信頼性向上部4eとチャットボット31とが協働して利用者21(特に第1の利用者21a(売り手))が提供する情報から財務上の不確実な情報を排除する第2の例について説明する。
第2ステージ[着手]の段階においては、価値評価フォームに記載されている損益計算書に基づく情報の他に、貸借対照表に基づく情報も、決算日における企業の財政状態(資産、負債の内容)を示すことから、企業買収等に際して非常に重要な要素となる。上述したように、価値評価フォームには損益計算書に基づく情報とともに貸借対照表に基づく情報が記載されているが、貸借対照表に基づく情報も損益計算書と同様に利用者21が手入力で価値評価フォームに転記してもよく、OCRを用いて自動的に入力してもよい。
信頼性向上部4eは、貸借対照表に基づく情報を含む価値評価フォームに対して、例えば「棚卸資産」についてチェックを行い、棚卸資産が所定期間(ここでは、例えば3期)変動していないことや棚卸資産が異常に大きい(所定の閾値を用いて判定される)ことを検出した場合、チャットボット31を起動して、利用者21に対して価値評価フォームに財務上の不確実な情報が含まれることを通知し修正を促す。ここで、棚卸資産に変動がない状況は、例えば在庫が滞留していることを意味し、通常は売り手にとって不利な材料となる。また棚卸資産が異常に大きい状況は、不良在庫を抱えていること等を意味し、これも売り手にとって不利な材料となる。このような状況を検出した場合、信頼性向上部4eは利用者21(ここでは売り手としての第1の利用者21a)の利益を守るべく、財務上の不確実な情報を排除するよう機能する。
同様に、土地、建物等、有価証券等を含む固定資産が大幅に変動している状況や、固定資産に含まれるゴルフ会員権といった会員権の記載内容に不備を発見したときに、信頼性向上部4eがチャットボット31を起動して利用者21に修正を促すようにしてもよい。
このように第2の例においても、信頼性向上部4eとチャットボット31とが協働して利用者21が提供する情報から財務上の不確実な情報を排除する。損益計算書や貸借対照表は税務署に提出される書面であるが、これらは利用者21が自ら作成することから常に正しいとは限らず、信頼性向上部4eによって財務上の不確実な情報が排除されることは、売り手及び買い手の双方にとって有益である。
次に、第3ステージ[着手]の段階における、利用者21とチャットボット31とのやりとり、及び信頼性向上処理の内容について説明する。[表4]は、第3ステージ[着手]において、売り手としての第1の利用者21aが自社と交渉を行っている買い手としての第2の利用者21bに開示する財務資料の第1の例を示す表である(以降、[表4]を「財務資料フォーム(1)」と称することがある。)。なお、財務資料フォーム(1)は「第1の所定の情報」に相当するものである。また、[表4]では、既に信頼性向上部4eによって信頼性が向上された情報が記載されている。
財務資料フォーム(1)には、ここでは売り手の事業内容(取引相手)の詳細とSWOT分析の結果が記載されている。ここで、事業内容の詳細は、具体的な数値情報であり、第1の利用者21aがフォームへの記載ミスがない前提で信頼できる。しかしながら、一般にSWOT分析は売り手側が正しく自己評価をして判断することは難しいとされている。
この局面においても、マッチングシステムS1における信頼性向上部4eは第1のチャットボット31aと協働することで、SWOT分析の「強み」、「弱み」、「機会」、「脅威」を記載する支援を行う。ここでは、第1のチャットボット31aと第1の利用者21aとの間で、例えば以下のようなチャットがやりとりされる。
C:「御社の主力商品と同等の性能を持っている機器を、他社も販売していますか?」
U:「いえ、うちの商品は市場占有率がトップです。特許も取得しています。」
C:「特許を取得しているのなら他社は代替技術を使うか、御社からライセンスを受けるしかありませんね。代替技術では十分な性能は期待できないのですか?」
U:「はい。代替技術では性能が不十分なんです。」
C:「技術開発への投資額は利益の何%程度ですか?」
U:「およそ10%ですね。」
C:「相当な投資額ですね。御社の技術力は相当に高いのではないでしょうか?」
U:「はい。そう思います。独自技術ですからね。技術力には自信があります。」
C:「なるほど。御社の強みの一つは「技術力」なのですね。「強み」の欄に記載しますか?」
U:「はい。そうしてください。」
SWOT分析の他の項目についても、上記の例と同様に、信頼性向上部4eは第1のチャットボット31aと協働して、第1の利用者21aとのチャットを通じてSWOT分析を支援し、財務資料フォーム(1)の記載を充実したものとする。
なお、本実施形態では、データベース4iには[表5]に示すSWOT分析の「強み(S)」、「弱み(W)」、「機会(O)」、「脅威(T)」のサンプルが格納されており、信頼性向上部4eはデータベース4iからSWOT分析のサンプルを読みだして、利用者21に提示しつつ、チャットボット31と協働して利用者21がSWOT分析の各項目を的確に記載できるよう支援する。そして、利用者21が選択あるいは記載したSWOT分析の内容は、データベース4iに記憶される。
ここで重要なのは、SWOT分析等を通じて、第1の利用者21aに第1のチャットボット31aに対する信頼感が芽生える点にある。人がチャットボットに対して信頼関係等の感情を抱くことは、例えば2014年に中国で発表されたチャットボットであるXiaoice(シャオアイス)に対して「人間の女性に対するものと同等の愛情」を感じる男性が多数存在することでも実証されている。この観点において、本実施形態では企業買収等の最終局面(上述した、具体的交渉の段階)において、第1の利用者21aと第2の利用者21bとの間にエージェント40が介在しているが、このエージェント40をチャットボット31で置き換えることも可能である。具体的には人としてのエージェント40が利用者21との間で行ったアドバイス等(例えば、売り手と買い手との間の条件調整・売買価格調整・不備調整等の利害調整や、質問あるいは回答の時期調整・進捗が捗々しくない場合のタイミング調整等の進捗管理)の実績を、機械学習によって学習させて学習モデルを生成し、この学習モデルに基づいてチャットボット31が応答するように構成すればよい。
なお、上述の例では、財務資料フォーム(1)は、企業買収等を受けようと考える第1の利用者21aが、買い手側に提示する資料と想定して説明したが、この財務資料フォーム(1)は、マッチングシステムS1では買い手である第2の利用者21bにも提出を促すようアプリケーションプログラムが構成されている。そして、買い手が提出した財務資料フォーム(1)に対しても、信頼性向上部4eは第2のチャットボット31bと協働して、第2の利用者21bとのチャットを通じてSWOT分析を支援し、財務資料フォーム(1)の記載を充実したもの(即ち、信頼性が向上されたもの)とする。その理由は、マッチング処理部4bによるマッチング結果を解析して、例えば「御社のビジネスは、この会社と提携するとよりよいビジネスになります」等のレコメンドを行うことが可能となるからである。なお、このとき買い手が提出する財務資料フォーム(1)は、「第2の所定の情報」に対応する。
これによって、マッチングシステムS1は、複数の利用者21から提出されたSWOT分析の内容を「信頼性が向上された第1の所定の情報」及び「信頼性が向上された第2の所定の情報」として取り扱い、マッチング処理を行うことが可能となる。マッチング処理の結果は、例えばチャットボット31を介して「この企業は御社の弱みを潰してくれる。しかも財務条件もマッチングしています。私(チャットボット31)からコンタクトをしてみましょうか?」といったレコメンドを提供することも可能となる。このレコメンドに対して興味を持つ企業が現れれば、具体的な提携相手の情報を開示することも可能となる。
更に、マッチング処理において、マッチング処理部4bは、データベース4iに記憶された成立フラグを参照し、買い手(第2の利用者21b)が過去に現実に企業買収等を成立させた際の売り手(第1の利用者21a)のSWOT分析の内容を買い手毎に学習する。ここである買い手が過去に複数の企業買収等を成立させている場合、次に同じ買い手が企業買収等を検討する際、マッチング処理部4bは、学習された「過去に現実に企業買収等が成立した売り手のSWOT分析の内容」を参照し、これと一致あるいは類似するSWOT分析の内容が記載された財務資料フォーム(1)を提出している売り手を抽出し、買い手に企業買収等の候補としてレコメンドする。
即ち、本実施形態では、マッチング処理部4bは、「買い手(第2の利用者21b)による企業買収等が現実に成立した複数の売り手(第1の利用者21a)」に関する情報(ここではSWOT分析の内容)を学習し、買い手が新たに企業買収等を検討する際に、学習結果に基づき新たな売り手候補を抽出し、買い手に提示(レコメンド)する。
また、ある買い手(以降、「第1の買い手」と称することがある。)が過去に複数の企業買収等を成立させており、かつ第1の買い手が選択した売り手のSWOT分析の内容に一定の傾向が学習されている場合、第1の買い手と類似したSWOT分析の内容を持つ他の買い手(以降、「第2の買い手」と称することがある。)が企業買収等を検討する際、マッチング処理部4bは、第1の買い手に提示した企業買収等の候補を第2の買い手にレコメンドするようにしてもよい。これは、第1の買い手が選ぶ売り手に特定の傾向があれば、第1の買い手と類似する第2の買い手も、第1の買い手と同様の選択を行う蓋然性が高いと考えられることに基づく。
即ち、本実施形態では、マッチング処理部4bは、「買い手(第2の利用者21b)による企業買収等が現実に成立した複数の売り手(第1の利用者21a)」に関する情報(ここではSWOT分析の内容)を学習し、買い手と異なり、かつ買い手に関する情報と類似する情報を提供した他の買い手(第2の買い手)が企業買収等を検討する際に、学習結果に基づき新たな売り手候補を抽出し、他の買い手に提示(レコメンド)する。
なお、学習に供される「複数の売り手に関する情報」は、SWOT分析の内容に替えて[表1]に示す売り手記入フォームに記載された情報としてもよいし、SWOT分析の内容及び売り手記入フォームに記載された情報を合わせた情報であっても構わない。
[表6]は、第3ステージ[着手]において、売り手としての第1の利用者21aが自社と交渉を行っている買い手としての第2の利用者21bに開示する財務資料の第2の例を示す表である(以降、[表6]を「財務資料フォーム(2)」と称することがある。)。なお、財務資料フォーム(2)は「第1の所定の情報」に相当するものである。また[表6]では、既に信頼性向上部4eによって信頼性が向上された情報が記載されている。
財務資料フォーム(2)には、ここでは売り手の従業員構成が記載されている。即ち、財務資料フォーム(2)は「人」(組織)に関する情報が記載されている。ある程度の規模を有する企業では、通常は社員台帳が整っており、第1の利用者21aから仲介業者(第3の利用者23)に台帳データを送信してもらえれば事足りるが、従業員が10人規模の小企業になると社員台帳を始めとする台帳類が整備されていることは稀である。
このような小企業に対しては、第1の利用者21aは財務資料フォーム(2)に記入をすることとなる。この局面において、第1のチャットボット31aは第1の利用者21aに対して、「正社員は何人いて、派遣やパートの方は何人いますか?」のような質問を発する。また、年齢分布が記入されていない場合、第1のチャットボット31aは「20代の方は何人いますか?」のように、第1の利用者21aに対して情報の提供を促す。そして全ての年代の入力が完了した段階で、年齢分布における合計を算出する。信頼性向上部4eは、入力された数値に矛盾がないかをチェックし、矛盾がある場合は、例えば「入力いただいた数の合計が正社員数と派遣・パートの合計と一致しませんが、どこを訂正したらいいですか?」のように、第1のチャットボット31aを介して質問を発し、第1の利用者21aが提供した情報の数値上の矛盾を解消するとで、浄法の信頼度を向上させる。即ち、本実施形態の情報入力装置(情報入力部4a)は、信頼性向上部4eと第1のチャットボット31aとを協働させて、第1の利用者21aが提供した情報における数値上の矛盾を解消する。
さて、本実施形態のマッチングシステムS1は、単に企業買収のみならず、企業間の提携におけるマッチングにおいても有効に機能することは明らかである。この場合は、売買価格は問題とはならず、あくまでもSWOT分析に基づいてシナジーが期待でき、また会社の財務状況等の情報が双方に開示されれば、対等な立場での提携を行い得る。これによって、例えば企業買収等を受けようとする時期を5年以内として選択している企業であれば、企業買収等に先んじて一旦事業提携等を行って業容を拡大させ、更に価値を高めて事業を譲渡するといったケースにも対応できることとなる。
(第2実施形態)
さて、上述した特許文献1に記載された技術において、M&Aに関する適合性を表す指標であるスコアの基礎とされる情報は、売り手においては事業内容、事業エリア、従業員数、売上高、純資産、希望スキーム、希望売却額等とされ、また買い手においては事業内容、事業エリア、従業員数、売上高等とされている。これらの情報のうち、事業内容、事業エリア、従業員数、売上高、純資産については、いずれも事業に関連した客観的な事実に基づくものとなっている。
しかしながら、売り手についての事業内容、事業エリア、従業員数、売上高、純資産といった情報は、買い手に対して企業買収等が中長期的にメリットとなることを訴求しにくく、また買い手にとっても、同様に売り手を企業買収等によって傘下に収めることが、将来にわたってメリットになるか否かの判断材料とすることは難しい。
本発明の他の目的は、企業買収等で生じるメリットを売り手が買い手に対して訴求しやすく、また買い手にとって将来的にメリットとなる企業買収等を行なえるようマッチングを図ることが可能なマッチングシステムS1を提供することにある。
さて、第1実施形態では、第1ステージ[興味]の段階で、売り手は情報入力部4aを介して「売り手記入フォーム」(表1)をマッチングシステムS1に提供し、買い手は同様に「買い手記入フォーム」(表2)を提供している。そして第3ステージ[着手]の段階で、売り手(及び買い手)は財務資料フォーム(1)(表4)を提供している。
第2実施形態では、財務資料フォーム(1)のうち、SWOT分析に係る項目が第1ステージ[興味]の段階で提供され、マッチング処理部4bは、売り手に係る「売り手記入フォーム」及び売り手側のSWOT分析の内容と、買い手に係る「買い手記入フォーム」及び買い手側のSWOT分析の内容とを用いてマッチング処理を実行する。
第2実施形態においては、SWOT分析の内容は(表7)に示すように「マッチング診断のための質問」として利用者21に提示され、利用者21は(表7)に回答することで、SWOT分析の内容が情報入力部4aを介してマッチングシステムS1に提供される。
ここでは、売り手が提供した「売り手記入フォーム」及びSWOT分析の内容を「第1の企業情報」、買い手が提供した「買い手記入フォーム」及びSWOT分析の内容を「第2の企業情報」と称する。
第1の企業情報には、(表1)に示す「譲渡理由」、売り手のSWOT分析に基づく「強み(強いと考える分野)」・「弱み(弱いと考える分野)」・「機会(プラスと考える外部環境の変化)」・「脅威(マイナスと考える外部環境の変化)」といった、利用者21としての売り手の主観的かつ定性的な情報が含まれる。また第2の企業情報には、(表2)に示す「買収理由」、買い手のSWOT分析に係る「強み」・「弱み」・「機会」・「脅威」といった、利用者21としての買い手の主観的かつ定性的な情報が含まれる。
マッチング処理部4bは、第1の企業情報、第2の企業情報のうち、特にSWOT分析に基づく情報(以降、「SWOT分析情報」と称することがある。)を用いて、例えばある売り手が「人材スキル」について「弱み」を選択しており、ある買い手が「人材スキル」について「強み」を選択している場合、「人材」の項目において、これらの売り手と買い手とのマッチング度を高く算出する。即ち、マッチング処理部4bは(表7)に示す項目Q1〜Q6について、売り手の「弱み」や「脅威」を相殺する「強み」や「機会」を多く持つ売り手を抽出し、逆に買い手の「弱み」や「脅威」を相殺する「強み」や「機会」を多く持つ売り手を抽出する。このとき相殺する項目の数が多いほどマッチング度が高く評価・算出される。そしてマッチング度が高い順にマッチング候補が利用者21に提示される。
更にマッチング処理部4bは、実際に企業買収等が成立した場合、売り手及び買い手のSWOT分析情報を学習する。そして他の買い手のSWOT分析情報が提供されたとき、そのSWOT分析情報とマッチング度が高いSWOT分析情報を提供した売り手をマッチング候補として抽出し、更に他の売り手のSWOT分析情報が提供されたとき、そのSWOT分析情報とマッチング度が高いSWOT分析情報を提供した買い手をマッチング候補として抽出する。
なお、マッチング処理部4bは、(表7)に示すQ7の自由記述欄に記入されたテキスト情報を解析して単語を抽出し、実際に企業買収等が成立した場合に、売り手が記入したテキストから抽出された単語と、買い手が記入したテキストから抽出された単語との組み合わせを学習し、これに基づき特定の単語の組み合わせを持つ売り手と買い手とをマッチング候補として抽出してもよい。
例えば買い手の「弱み」を潰し、更には「強み」に変える売り手は、買い手にとって将来的な事業発展に繋がる相手と期待される。このようにして、マッチング処理部4bは、企業買収等で生じるメリットを売り手が買い手に対して訴求しやすく、また買い手にとって将来的にメリットとなる企業買収等を行なえるようマッチングを図る。
このように第2実施形態では、売り手及び買い手のSWOT分析情報に基づいてマッチングを行っているが、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の観点でマーケティング環境を把握する分析手法である3C分析に基づいてマッチングを行ってもよい。このように分析手法はSWOT分析に限るものではなく、主観的かつ定性的な分析項目を含む他の分析手法で得られた情報に基づいてマッチングを実行してもよいし、あるいはSWOT分析情報に他の分析手法で得られた情報を加味してマッチングを図ってもよい。他の分析手法には、例えばPEST分析、フォース分析、バリューチェーン分析、STP分析、4P分析等が含まれる。
更に、第2実施形態においても第1実施形態で詳細に説明した信頼性向上部4eによる信頼性向上処理が実行される。即ち、第2ステージ[着手]の段階において売り手が提供する価値評価フォーム(表3)も、第1の企業情報の一つであり、信頼性向上部4eは第1実施形態と同様に、価値評価フォームに対して財務上の数値(定量的な情報)の信頼性を向上させる。そして、信頼性向上処理においては、既に説明したチャットボット31が用いられる。
このように、第2実施形態のマッチングシステムS1は以下の特徴を備える。
売り手に関する第1の企業情報及び買い手に関する第2の企業情報を取り込む情報入力部4aと、前記第1の企業情報と前記第2の企業情報とに基づき、前記売り手と前記買い手との間でマッチング処理を実行するマッチング処理部4bと、を備え、前記マッチング処理部4bは、前記第1の企業情報及び前記第2の企業情報のうち、主観的かつ定性的な情報に基づいてマッチング処理を実行してマッチング候補を抽出する。
前記主観的かつ定性的な情報には、前記売り手及び前記買い手が行う事業の少なくとも「強み」及び「弱み」に関する分析情報が含まれる。
前記マッチング処理部は、現実にマッチングが成立した際の前記分析情報を学習するとともに、この学習結果に基づきマッチング処理を実行する。
前記売り手に関する第1の企業情報のうちの定量的な情報に対して、数値の信頼性を向上させる信頼性向上部4eを備える。
前記信頼性向上部4eは、前記情報入力部4aを介して前記売り手との間でインタラクティブかつリアルタイムにやりとりを行うことで、前記定量的な情報の信頼性を向上させる。
以上、本発明に係る情報入力装置及びマッチングシステムS1について特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらはあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、情報入力装置については、事業買収等のM&Aを例にとって説明したが、本発明の情報入力装置は、利用者21が入力する所定の情報の信頼性を信頼性向上部4eとチャットボット31とが協働することで向上させるものであり、企業と企業に関する情報のみならず、例えば婚活に関する情報、就職やアルバイトに関する情報等、人と人、あるいは人と企業とのマッチングにおいて有効に活用できることは明らかである。