本実施の形態に係る頭外定位処理装置を示すブロック図である。
空間音響伝達特性を測定する測定装置の構成を示す図である。
外耳道伝達特性を測定する測定装置の構成を示す図である。
本実施の形態にかかる頭外定位フィルタ決定システムの全体構成を示す図である。
ヘッドホンのドライバの配置を示す模式図である。
頭外定位フィルタ決定システムのサーバ装置の構成を示す図である。
サーバ装置に格納されたプリセットデータのデータ構成を示す表である。
変形例1でのプリセットデータのデータ構成を示す表である。
実施の形態2におけるヘッドホンを示す模式図である。
実施の形態2のプリセットデータのデータ構成を示す表である。
プリセットデータのデータ構成を示す表である。
センサ例1のヘッドホンを示す正面図である。
顔幅の異なる被測定者1の装着状態を示す正面図である。
センサ例2のヘッドホンを示す正面図である。
顔長さの異なる被測定者1の装着状態を示す正面図である。
センサ例3のヘッドホンを示す上面図である。
スイーベル角度の異なる装着状態を示す上面図である。
センサ例4のヘッドホンを示す上面図である。
ハンガー角度の異なる装着状態を示す上面図である。
形状データを用いた場合のプリセットデータを示す表である。
実施の形態4のヘッドホンを模式的示す上面図である。
実施の形態4のヘッドホンにおいて、ドライバ位置を変えた状態を示す図である。
変形例2のヘッドホンを模式的示す上面図である。
変形例2のヘッドホンの装着状態を説明するための図である。
スピーカとドライバの配置を説明するための図である。
(概要)
まず、音像定位処理の概要について説明する。ここでは、音像定位処理装置の一例である頭外定位処理について説明する。本実施形態にかかる頭外定位処理は、空間音響伝達特性と外耳道伝達特性を用いて頭外定位処理を行うものである。空間音響伝達特性は、スピーカなどの音源から外耳道までの伝達特性である。外耳道伝達特性は、外耳道入口から鼓膜までの伝達特性である。本実施形態では、ヘッドホンを装着した状態での外耳道伝達特性を測定し、その測定データを用いて頭外定位処理を実現している。
本実施の形態にかかる頭外定位処理は、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートホン、タブレット端末などのユーザ端末で実行される。ユーザ端末は、プロセッサ等の処理手段、メモリやハードディスクなどの記憶手段、液晶モニタ等の表示手段、タッチパネル、ボタン、キーボード、マウスなどの入力手段を有する情報処理装置である。ユーザ端末は、データを送受信する通信機能を有している。さらに、ユーザ端末には、ヘッドホン又はイヤホンを有する出力手段(出力ユニット)が接続される。
高い定位効果を得るには、ユーザ本人の特性を測定して頭外定位フィルタを生成することが好ましい。ユーザ個人の空間音響伝達特性は、スピーカ等の音響機材や室内の音響特性が整えられたリスニングルームで行われることが一般的である。すなわち、ユーザがリスニングルームに行くか、ユーザの自宅などにリスニングルームを準備する必要がある。このため、ユーザ個人の空間音響伝達特性を適切に測定することができない場合がある。
また、ユーザの自宅などにスピーカを設置してリスニングルームを準備した場合でも、左右非対称にスピーカが設置されている場合や、部屋の音響環境が音楽聴取に最適でない場合がある。このような場合、自宅で適切な空間音響伝達特性を測定することは大変困難である。
一方、ユーザ個人の外耳道伝達特性の測定は、マイクユニット、及びヘッドホンを装着した状態で行われる。すなわち、ユーザがマイクユニット、及びヘッドホンを装着していれば、外耳道伝達特性を測定することができる。ユーザがリスニングルームに行く必要や、ユーザの家に大がかりなリスニングルームを準備する必要がない。また、外耳道伝達特性を測定するための測定信号の発生や、収音信号の記録などはスマートホンやPCなどのユーザ端末を用いて、行うことができる。
このように、ユーザ個人に対して、空間音響伝達特性の測定を実施することが困難である場合がある。そこで、本実施の形態にかかる頭外定位処理システムは、外耳道伝達特性の測定結果に基づいて、空間音響伝達特性に応じたフィルタを決定している。すなわち、ユーザ個人の外耳道伝達特性の測定結果に基づいて、ユーザに適した頭外定位処理フィルタを決定している。
具体的には、頭外定位処理システムは、ユーザ端末と、サーバ装置とを備えている。ユーザ以外の複数の被測定者に対して事前に測定された空間音響伝達特性及び外耳道伝達特性をサーバ装置が格納しておく。すなわち、ユーザ端末とは異なる測定装置を用いて、音源としてスピーカを用いた空間音響伝達特性の測定(以下、第1の事前測定とも称する)と、音源としてヘッドホンを用いた外耳道伝達特性の測定(第2の事前測定とも称する)を、行う。第1の事前測定及び第2の事前測定は、ユーザ以外の被測定者に対して実施される。
サーバ装置は、第1の事前測定の結果に応じた第1のプリセットデータと、第2の事前測定の結果に応じた第2のプリセットデータとを格納している。複数の被測定者に対して第1及び第2の事前測定を行うことで、複数の第1のプリセットデータと、複数の第2のプリセットデータとが取得される。空間音響伝達特性に関する第1のプリセットデータと、外耳道伝達特性に関する第2のプリセットデータとを、サーバ装置が、被測定者毎に対応付けて記憶する。サーバ装置は、データベースに、複数の第1のプリセットデータと、複数の第2のプリセットデータとを格納している。
さらに、頭外定位処理を実行するユーザ個人に対しては、ユーザ端末を用いて、外耳道伝達特性のみを測定する(以下、ユーザ測定とする)。ユーザ測定は、第2の事前測定と同様に、音源としてヘッドホンを用いた測定である。ユーザ端末は、外耳道伝達特性に関する測定データを取得する。そして、ユーザ端末は、測定データに基づくユーザデータをサーバ装置に送信する。サーバ装置は、ユーザデータを複数の第2のプリセットデータとそれぞれ比較する。サーバ装置は、比較結果に基づいて、複数の第2のプリセットデータの中からユーザデータとの相関が高い第2のプリセットデータを決定する。
そして、サーバ装置は、相関の高い第2のプリセットデータに対応付けられた第1のプリセットデータを読み出す。すなわち、サーバ装置は、比較結果に基づいて、複数の第1のプリセットデータの中から、ユーザ個人に適した第1のプリセットデータを抽出する。サーバ装置は、抽出した第1のプリセットデータをユーザ端末に送信する。そして、ユーザ端末は、第1のプリセットデータに基づくフィルタと、ユーザ測定に基づく逆フィルタとを用いて、頭外定位処理を行う。
実施の形態1.
(頭外定位処理装置)
まず、本実施の形態にかかる音場再生装置の一例である頭外定位処理装置100を図1に示す。図1は、頭外定位処理装置100のブロック図である。頭外定位処理装置100は、ヘッドホン43を装着するユーザUに対して音場を再生する。そのため、頭外定位処理装置100は、LchとRchのステレオ入力信号XL、XRについて、音像定位処理を行う。LchとRchのステレオ入力信号XL、XRは、CD(Compact Disc)プレイヤーなどから出力されるアナログのオーディオ再生信号、又は、mp3(MPEG Audio Layer-3)等のデジタルオーディオデータである。なお、頭外定位処理装置100は、物理的に単一な装置に限られるものではなく、一部の処理が異なる装置で行われてもよい。例えば、一部の処理がPCなどにより行われ、残りの処理がヘッドホン43に内蔵されたDSP(Digital Signal Processor)などにより行われてもよい。
頭外定位処理装置100は、頭外定位処理部10、フィルタ部41、フィルタ部42、及びヘッドホン43を備えている。頭外定位処理部10、フィルタ部41、及びフィルタ部42は後述する演算処理部120を構成し、具体的にはプロセッサにより実現可能である。
頭外定位処理部10は、畳み込み演算部11〜12、21〜22、及び加算器24、25を備えている。畳み込み演算部11〜12、21〜22は、空間音響伝達特性を用いた畳み込み処理を行う。頭外定位処理部10には、CDプレイヤーなどからのステレオ入力信号XL、XRが入力される。頭外定位処理部10には、空間音響伝達特性が設定されている。頭外定位処理部10は、各chのステレオ入力信号XL、XRに対し、空間音響伝達特性のフィルタ(以下、空間音響フィルタとも称する)を畳み込む。空間音響伝達特性は被測定者の頭部や耳介で測定した頭部伝達関数HRTFでもよいし、ダミーヘッドまたは第三者の頭部伝達関数であってもよい。
4つの空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを1セットとしたものを空間音響伝達関数とする。畳み込み演算部11、12、21、22で畳み込みに用いられるデータが空間音響フィルタとなる。空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsのそれぞれは、後述する測定装置を用いて測定されている。
そして、畳み込み演算部11は、Lchのステレオ入力信号XLに対して空間音響伝達特性Hlsに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部11は、畳み込み演算データを加算器24に出力する。畳み込み演算部21は、Rchのステレオ入力信号XRに対して空間音響伝達特性Hroに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部21は、畳み込み演算データを加算器24に出力する。加算器24は2つの畳み込み演算データを加算して、フィルタ部41に出力する。
畳み込み演算部12は、Lchのステレオ入力信号XLに対して空間音響伝達特性Hloに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部12は、畳み込み演算データを、加算器25に出力する。畳み込み演算部22は、Rchのステレオ入力信号XRに対して空間音響伝達特性Hrsに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部22は、畳み込み演算データを、加算器25に出力する。加算器25は2つの畳み込み演算データを加算して、フィルタ部42に出力する。
フィルタ部41、42にはヘッドホン特性(ヘッドホンの再生ユニットとマイク間の特性)をキャンセルする逆フィルタが設定されている。そして、頭外定位処理部10での処理が施された再生信号(畳み込み演算信号)に逆フィルタを畳み込む。フィルタ部41で加算器24からのLch信号に対して、逆フィルタを畳み込む。同様に、フィルタ部42は加算器25からのRch信号に対して逆フィルタを畳み込む。逆フィルタは、ヘッドホン43を装着した場合に、ヘッドホンユニットからマイクまでの特性をキャンセルする。マイクは、外耳道入口から鼓膜までの間ならばどこに配置してもよい。逆フィルタは、ユーザU本人の特性の測定結果から算出されている。
フィルタ部41は、補正されたLch信号をヘッドホン43の左ユニット43Lに出力する。フィルタ部42は、補正されたRch信号をヘッドホン43の右ユニット43Rに出力する。ユーザUは、ヘッドホン43を装着している。ヘッドホン43は、Lch信号とRch信号をユーザUに向けて出力する。これにより、ユーザUの頭外に定位された音像を再生することができる。
このように、頭外定位処理装置100は、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに応じた空間音響フィルタと、ヘッドホン特性の逆フィルタを用いて、頭外定位処理を行っている。以下の説明において、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに応じた空間音響フィルタと、ヘッドホン特性の逆フィルタとをまとめて頭外定位処理フィルタとする。2chのステレオ再生信号の場合、頭外定位フィルタは、4つの空間音響フィルタと、2つの逆フィルタとから構成されている。そして、頭外定位処理装置100は、ステレオ再生信号に対して合計6個の頭外定位フィルタを用いて畳み込み演算処理を行うことで、頭外定位処理を実行する。
(空間音響伝達特性の測定装置)
図2を用いて、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを測定する測定装置200について説明する。図2は、被測定者1に対して第1の事前測定を行うための測定構成を模式的に示す図である。
図2に示すように、測定装置200は、ステレオスピーカ5とマイクユニット2を有している。ステレオスピーカ5が測定環境に設置されている。測定環境は、ユーザUの自宅の部屋やオーディオシステムの販売店舗やショールーム等でもよい。測定環境は、スピーカや音響の整ったリスニングルームであることが好ましい。
本実施の形態では、測定装置200の測定処理装置201が、空間音響フィルタを適切に生成するための演算処理を行っている。測定処理装置201は、例えば、CDプレイヤー等の音楽プレイヤーなどを有している。測定処理装置201は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット端末、スマートホン等であってもよい。また、測定処理装置201は、サーバ装置自体であってもよい。
ステレオスピーカ5は、左スピーカ5Lと右スピーカ5Rを備えている。例えば、被測定者1の前方に左スピーカ5Lと右スピーカ5Rが設置されている。左スピーカ5Lと右スピーカ5Rは、インパルス応答測定を行うためのインパルス音等を出力する。以下、本実施の形態では、音源となるスピーカの数を2(ステレオスピーカ)として説明するが、測定に用いる音源の数は2に限らず、1以上であればよい。すなわち、1chのモノラル、または、5.1ch、7.1ch等の、いわゆるマルチチャンネル環境においても同様に、本実施の形態を適用することができる。
マイクユニット2は、左のマイク2Lと右のマイク2Rを有するステレオマイクである。左のマイク2Lは、被測定者1の左耳9Lに設置され、右のマイク2Rは、被測定者1の右耳9Rに設置されている。具体的には、左耳9L、右耳9Rの外耳道入口から鼓膜までの位置にマイク2L、2Rを設置することが好ましい。マイク2L、2Rは、ステレオスピーカ5から出力された測定信号を収音して、収音信号を取得する。マイク2L、2Rは収音信号を測定処理装置201に出力する。被測定者1は、人でもよく、ダミーヘッドでもよい。すなわち、本実施形態において、被測定者1は人だけでなく、ダミーヘッドを含む概念である。
上記のように、左スピーカ5L、右スピーカ5Rで出力されたインパルス音をマイク2L、2Rで測定することでインパルス応答が測定される。測定処理装置201は、インパルス応答測定により取得した収音信号をメモリなどに記憶する。これにより、左スピーカ5Lと左マイク2Lとの間の空間音響伝達特性Hls、左スピーカ5Lと右マイク2Rとの間の空間音響伝達特性Hlo、右スピーカ5Rと左マイク2Lとの間の空間音響伝達特性Hro、右スピーカ5Rと右マイク2Rとの間の空間音響伝達特性Hrsが測定される。すなわち、左スピーカ5Lから出力された測定信号を左マイク2Lが収音することで、空間音響伝達特性Hlsが取得される。左スピーカ5Lから出力された測定信号を右マイク2Rが収音することで、空間音響伝達特性Hloが取得される。右スピーカ5Rから出力された測定信号を左マイク2Lが収音することで、空間音響伝達特性Hroが取得される。右スピーカ5Rから出力された測定信号を右マイク2Rが収音することで、空間音響伝達特性Hrsが取得される。
また、測定装置200は、収音信号に基づいて、左右のスピーカ5L、5Rから左右のマイク2L、2Rまでの空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに応じた空間音響フィルタを生成してもよい。例えば、測定処理装置201は、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを所定のフィルタ長で切り出す。測定処理装置201は、測定した空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを補正してもよい。
このようにすることで、測定処理装置201は、頭外定位処理装置100の畳み込み演算に用いられる空間音響フィルタを生成する。図1で示したように、頭外定位処理装置100が、左右のスピーカ5L、5Rと左右のマイク2L、2Rとの間の空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに応じた空間音響フィルタを用いて頭外定位処理を行う。すなわち、空間音響フィルタをオーディオ再生信号に畳み込むことにより、頭外定位処理を行う。
測定処理装置201は、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsのそれぞれに対応する収音信号に対して同様の処理を実施している。すなわち、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに対応する4つの収音信号に対して、それぞれ同様の処理が実施される。これにより、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに対応する空間音響フィルタをそれぞれ生成することができる。
(外耳道伝達特性の測定)
次に、外耳道伝達特性を測定するための測定装置200について、図3を用いて説明する。図3は、被測定者1に対して第2の事前測定を行うための構成を示している。
測定処理装置201には、マイクユニット2と、ヘッドホン43と、が接続されている。マイクユニット2は、左マイク2Lと、右マイク2Rとを備えている。左マイク2Lは、被測定者1の左耳9Lに装着される。右マイク2Rは、被測定者1の右耳9Rに装着される。測定処理装置201、及びマイクユニット2は、図2の測定処理装置201、及びマイクユニット2と同じものでもよく、異なるものでもよい。
ヘッドホン43は、ヘッドホンバンド43Bと、左ユニット43Lと、右ユニット43Rとを、有している。ヘッドホンバンド43Bは、左ユニット43Lと右ユニット43Rとを連結する。左ユニット43Lは被測定者1の左耳9Lに向かって音を出力する。右ユニット43Rは被測定者1の右耳9Rに向かって音を出力する。ヘッドホン43は密閉型、開放型、半開放型、または半密閉型等、ヘッドホンの種類を問わない。ヘッドホン43は、ヘッドホン43が装着された状態で、マイクユニット2が被測定者1に装着される。すなわち、左マイク2L、右マイク2Rが装着された左耳9L、右耳9Rにヘッドホン43の左ユニット43L、右ユニット43Rがそれぞれ装着される。ヘッドホンバンド43Bは、左ユニット43Lと右ユニット43Rとをそれぞれ左耳9L、右耳9Rに押し付ける付勢力を発生する。
左マイク2Lは、ヘッドホン43の左ユニット43Lから出力された音を収音する。右マイク2Rは、ヘッドホン43の右ユニット43Rから出力された音を収音する。左マイク2L、及び右マイク2Rのマイク部は、外耳孔近傍の収音位置に配置される。左マイク2L、及び右マイク2Rは、ヘッドホン43に干渉しないように構成されている。すなわち、左マイク2L、及び右マイク2Rは左耳9L、右耳9Rの適切な位置に配置された状態で、被測定者1がヘッドホン43を装着することができる。なお、左マイク2L、及び右マイク2Rは、それぞれヘッドホン43の左ユニット43L、及び右ユニット43Rに内蔵されていてもよく、ヘッドホン43と別個に設けられていても良い。
測定処理装置201は、左マイク2L、及び右マイク2Rに対して測定信号を出力する。これにより、左マイク2L、及び右マイク2Rはインパルス音などを発生する。具体的には、左ユニット43Lから出力されたインパルス音を左マイク2Lで測定する。右ユニット43Rから出力されたインパルス音を右マイク2Rで測定する。このようにすることで、インパルス応答測定が実施される。
測定処理装置201は、インパルス応答測定に基づく収音信号をメモリなどに記憶する。これにより、左ユニット43Lと左マイク2Lとの間の伝達特性(すなわち、左耳の外耳道伝達特性)と、右ユニット43Rと右マイク2Rとの間の伝達特性(すなわち、右耳の外耳道伝達特性)が取得される。ここで、左マイク2Lが取得した左耳の外耳道伝達特性の測定データを測定データECTFLとし、右マイク2Rが取得した右耳の外耳道伝達特性の測定データを測定データECTFRとする。
測定処理装置201は、測定データECTFL、ECTFRをそれぞれ記憶するメモリなどを有している。なお、測定処理装置201は、外耳道伝達特性又は空間音響伝達特性を測定するための測定信号として、インパルス信号やTSP(Time Stretched Pulse)信号等を発生する。測定信号はインパルス音等の測定音を含んでいる。
図2、図3で示した測定装置200によって、複数の被測定者1の外耳道伝達特性、及び空間音響伝達特性を測定する。本実施の形態では、図2の測定構成による第1の事前測定を複数の被測定者1に対して実施する。同様に、図3の測定構成による第2の事前測定を複数の被測定者1に対して実施する。これにより、被測定者1毎に、外耳道伝達特性、及び空間音響伝達特性が測定される。
(頭外定位フィルタ決定システム)
次に、本実施の形態にかかる頭外定位フィルタ決定システム500について、図4を用いて説明する。図4は、頭外定位フィルタ決定システム500の全体構成を示す図である。頭外定位フィルタ決定システム500は、マイクユニット2と、ヘッドホン43と、頭外定位処理装置100と、サーバ装置300と、を備えている。
頭外定位処理装置100とサーバ装置300とは、ネットワーク400を介して接続されている。ネットワーク400は、例えば、インターネットや携帯電話通信網などの公衆ネットワークなどである。頭外定位処理装置100とサーバ装置300とは無線又は有線により通信可能になっている。なお、頭外定位処理装置100とサーバ装置300とは一体の装置であってもよい。
頭外定位処理装置100は、図1で示したように、頭外定位処理された再生信号をユーザUに出力するユーザ端末となる。さらに、頭外定位処理装置100は、ユーザUの外耳道伝達特性の測定を行う。そのため、頭外定位処理装置100には、マイクユニット2とヘッドホン43とが接続されている。頭外定位処理装置100は、図3の測定装置200と同様に、マイクユニット2と、ヘッドホン43とを用いたインパルス応答測定を行う。なお、マイクユニット2、及びヘッドホン43とBlueTooth(登録商標)などにより無線接続されていてもよい。
頭外定位処理装置100は、インパルス応答測定部111と、ECTF特性取得部112と、送信部113と、受信部114と、演算処理部120と、逆フィルタ算出部121と、フィルタ記憶部122と、スイッチ124と、を備えている。なお、頭外定位処理装置100とサーバ装置300とが一体の装置である場合、該装置は受信部114に代えてユーザデータを取得する取得部を備えていてもよい。
スイッチ124はユーザ測定と、頭外定位再生とを切り替える。すなわち、ユーザ測定の場合、スイッチ124は、ヘッドホン43とインパルス応答測定部111とを接続する。頭外定位再生の場合、スイッチ124は、ヘッドホン43を演算処理部120に接続する。
インパルス応答測定部111は、ユーザ測定を行うため、インパルス音となる測定信号をヘッドホン43に出力する。ヘッドホン43が出力したインパルス音をマイクユニット2が収音する。マイクユニット2は収音信号をインパルス応答測定部111に出力する。なお、インパルス応答測定については、図3の説明と同様であるため、適宜説明を省略する。すなわち、頭外定位処理装置100が、図3の測定処理装置201と同様の機能を有している。頭外定位処理装置100と、マイクユニット2と、ヘッドホン43とがユーザ測定を行う測定装置を構成するインパルス応答測定部111は、収音信号に対して、A/D変換や同期加算処理などを行ってもよい。
インパルス応答測定により、インパルス応答測定部111は、外耳道伝達特性に関する測定データECTFを取得する。測定データECTFは、ユーザUの左耳9Lの外耳道伝達特性に関する測定データECTFLと、右耳9Rの外耳道伝達特性に関する測定データECTFRとを含んでいる。
ECTF特性取得部112は、測定データECTFL、ECTFRに対して所定の処理を行うことで、測定データECTFL、ECTFRの特性を取得する。例えば、ECTF特性取得部112は、離散フーリエ変換を行うことで、周波数振幅特性及び周波数位相特性を算出する。また、ECTF特性取得部112は、離散フーリエ変換に限らず、離散コサイン変換などの離散信号を周波数領域に変換する手段により、周波数振幅特性及び周波数位相特性を算出してもよい。周波数振幅特性の代わりに、周波数パワー特性が用いられていてもよい。
図5を用いて、ユーザ測定で測定される外耳道伝達特性について説明する。図5は、ユーザ測定に用いられるヘッドホン43のドライバの配置を示す模式図である。ヘッドホン43は左ユニット43L、及び右ユニット43Rは、それぞれハウジング46を有している。ハウジング46に2つのドライバ45f、45mが設けられている。ハウジング46は、2つのドライバ45f、45mを保持する筐体である。左ユニット43Lと右ユニット43Rとは、左右対称な配置となっている。
ドライバ45f、45mは、アクチュエータと振動板などを有しており、音を出力することができる。アクチュエータは、例えば、ボイスコイルモータ、又は圧電素子などで有り、電気信号を振動に変換する。ドライバ45f、45mは独立して音を出力することができる。
ドライバ45mとドライバ45fとは異なる位置に配置されている。例えば、ドライバ45mは左耳9L、右耳9Rの外耳孔の真横に配置されている。ドライバ45fは、ドライバ45mよりも前方に配置されている。ドライバ45fが配置されている位置を第1の位置とし、ドライバ45mが配置されている位置を第2の位置とする。第1の位置は、第2の位置よりも前にある。
ドライバ45mとドライバ45fは、別のタイミングで測定信号を出力することができる。左耳9Lについては、左ユニット43Lのドライバ45mから左マイク2Lまでの外耳道伝達特性M_ECTFLと、左ユニット43Lのドライバ45fから左マイク2Lまでの外耳道伝達特性F_ECTFLとが測定される。右耳9Rについては、右ユニット43Rのドライバ45mから右マイク2Rまでの外耳道伝達特性M_ECTFRと、右ユニット43Rのドライバ45fから右マイク2Rまでの外耳道伝達特性F_ECTFLとが測定される。
外耳道伝達特性F_ECTFLは左ユニット43Lの第1の位置からマイク2Lまでの伝達特性である。外耳道伝達特性F_ECTFRは右ユニット43Rの第1の位置からマイク2Rまでの伝達特性である。外耳道伝達特性M_ECTFLは左ユニット43Lの第2の位置からマイク2Lまでの伝達特性である。外耳道伝達特性M_ECTFRは右ユニット43Rの第2の位置からマイク2Rまでの伝達特性である。外耳道伝達特性F_ECTFL、F_ECTFRを第1の外耳道伝達特性又はその測定データと称する。外耳道伝達特性M_ECTFL、M_ECTFRを第2の外耳道伝達特性又はその測定データと称する。第1の外耳道伝達特性、及び第2の外耳道伝達特性はマイクユニット2とヘッドホン43を用いたインパルス応答測定で測定される。
ドライバ45fは図2のステレオスピーカ5の配置に応じた位置に配置することが好ましい。例えば、図5に示すように、被測定者1の正面前方を0°として、左スピーカ5Lが開き角θの方向に設置されているとする。この場合、マイク2Lからドライバ45fに向かう方向を開き角θの方向と平行にすることが好ましい。つまり、上面視において、被測定者1の頭部中心Oからスピーカ5Lに向かう方向とマイク2Lからドライバ45fに向かう方向を平行にすることが好ましい。なお、ステレオスピーカ5が被測定者1の前方に配置される場合、開き角θは、0〜90°の範囲であり、30°とすることが好ましい。右スピーカ5Rと右ユニット43Rのドライバ45fについても同様に配置する。
ドライバ45mは、外耳道の側方に配置されている。ドライバ45mは、頭外定位再生を行うヘッドホン43のドライバと同じ位置及び同じタイプであることが好ましい。
送信部113は、外耳道伝達特性に関するユーザデータをサーバ装置300に送信する。ユーザデータは、第1の外耳道伝達特性F_ECTFL,F_ECTFRに基づくデータである。なお、ユーザデータは時間領域のデータでもよく、周波数領域のデータでもよい。ユーザデータは、周波数振幅特性の全体や一部であってもよい。あるいは、ユーザデータは、周波数振幅特性から抽出された特徴量であってもよい。
逆フィルタ算出部121は、第2の外耳道伝達特性M_ECTFL、M_ECTFRに基づいて、逆フィルタを算出する。例えば、逆フィルタ算出部121は、第2の外耳道伝達特性M_ECTFL、M_ECTFRの周波数振幅特性や周波数位相特性を補正する。逆フィルタ算出部121は、逆離散フーリエ変換により、周波数特性と位相特性とを用いて時間信号を算出する。逆フィルタ算出部121は、時間信号を所定のフィルタ長で切り出すことで、逆フィルタを算出する。
上記のように、逆フィルタはヘッドホン特性(ヘッドホンの再生ユニットとマイク間の特性)をキャンセルするフィルタである。フィルタ記憶部122は、逆フィルタ算出部121が算出した左右の逆フィルタを記憶する。なお、逆フィルタの算出方法については、公知の手法を用いることができるため、詳細な説明を省略する。
次に、サーバ装置300の構成について、図6を用いて説明する。図6は、サーバ装置300の制御構成を示すブロック図である。サーバ装置300は、受信部301と、比較部302と、データ格納部303と、抽出部304と、送信部305と、を備えている。サーバ装置300は、外耳道伝達特性に基づいて、空間音響フィルタを決定するフィルタ決定装置となる。なお、頭外定位処理装置100とサーバ装置300とが一体の装置である場合、該装置は、送信部305を備えていなくてもよい。
なお、サーバ装置300は、プロセッサやメモリなどを備えたコンピュータであり、プログラムにしたがって以下の処理を行う。また、サーバ装置300は単一な装置に限らず、2つ以上の装置の組み合わせにより実現してもよく、クラウドサーバ等の仮想サーバでもよい。データを格納するデータ格納部と、データ処理を行う比較部302,抽出部304は物理的に異なる装置であってもよい。
受信部301は、頭外定位処理装置100から送信されたユーザデータを受信する。受信部301は、受信したユーザデータに対して、通信規格に応じた処理(例えば、復調処理)を行う。比較部302は、ユーザデータをデータ格納部303に格納されたプリセットデータと比較する。ここでは、受信部301が、ユーザ測定で測定された第1の外耳道伝達特性F_ECTFL,F_ECTFRをユーザデータとして受信している。第1の外耳道伝達特性F_ECTFL,F_ECTFRのユーザデータをユーザデータF_ECTFL_U,F_ECTFR_Uとする。
データ格納部303は、事前測定で測定された複数の被測定者に関するデータをプリセットデータとして格納するデータベースである。図7を参照して、データ格納部303に格納されているデータについて、説明する。図7は、データ格納部303に格納されているデータを示す表である。
データ格納部303は、被測定者の左右の耳毎にプリセットデータを格納している。具体的には、データ格納部303は、被測定者ID、耳の左右、第1の外耳道伝達特性、空間音響伝達特性1、及び空間音響伝達特性2が1行に並んだテーブル形式となっている。なお、図7に示すデータ形式は一例であり、テーブル形式ではなく、各パラメータのオブジェクトをタグ等で関連付けて保持するデータ形式等を採用してもよい。
データ格納部303には、1人の被測定者Aに対して、2つのデータセットが格納されている。すなわち、データ格納部303は、被測定者Aの左耳に関するデータセットと、被測定者Aの右耳に関するデータセットが格納されている。
1つのデータセットには、被測定者ID、耳の左右、第1の外耳道伝達特性、空間音響伝達特性1、及び空間音響伝達特性2が含まれている。第1の外耳道伝達特性は、図3に示す測定装置200による第2の事前測定に基づくデータである。外耳孔よりも前にある第1の位置からマイク2L、2Rまでの第1の外耳道伝達特性の周波数振幅特性となっている。
被測定者Aの左耳の第1の外耳道伝達特性は、第1の外耳道伝達特性F_ECTFL_Aと示し、被測定者Aの右耳の第1の外耳道伝達特性は、第1の外耳道伝達特性F_ECTFR_Aと示している。被測定者Bの左耳の第1の外耳道伝達特性は、第1の外耳道伝達特性F_ECTFL_Bと示し、被測定者Bの右耳の第1の外耳道伝達特性は、第1の外耳道伝達特性F_ECTFR_Bと示している。第1の外耳道伝達特性は、図5に示したように、外耳孔よりも前方に配置されたドライバ45fを用いて測定されたデータである。ユーザ測定と第2の事前測定に用いられるヘッドホン43、及びドライバ45fは同じタイプのものであることが好ましいが、異なるタイプのものであってもよい。
空間音響伝達特性1、及び空間音響伝達特性2は、図2に示す測定装置200による第1の事前測定に基づくデータである。被測定者Aの左耳の場合、空間音響伝達特性1はHls_Aとなり、空間音響伝達特性2は、Hro_Aとなる。被測定者Aの右耳の場合、空間音響伝達特性1はHrs_Aとなり、空間音響伝達特性2は、Hlo_Aとなる。このように、1つの耳に関する2つの空間音響伝達特性がペアとなっている。被測定者Bの左耳については、Hls_BとHro_Bがペアとなり、被測定者Bの右耳については、Hrs_BとHlo_Bがペアとなっている。空間音響伝達特性1、及び空間音響伝達特性2は、フィルタ長で切り出された後のデータでもよく、フィルタ長で切り出される前のデータでもよい。
被測定者Aの左耳については、第1の外耳道伝達特性F_ECTFL_Aと、空間音響伝達特性Hls_Aと、空間音響伝達特性Hro_Aとが対応付けられて、1つのデータセットとなっている。同様に、被測定者Aの右耳については、第1の外耳道伝達特性F_ECTFR_Aと、空間音響伝達特性Hrs_Aと、空間音響伝達特性Hlo_Aとが対応付けられて、1つのデータセットとなっている。同様に、被測定者Bの左耳については、第1の外耳道伝達特性F_ECTFL_Bと、空間音響伝達特性Hls_Bと、空間音響伝達特性Hro_Bとが対応付けられて、1つのデータセットとなっている。同様に、被測定者Bの右耳については、第1の外耳道伝達特性F_ECTFL_Bと、空間音響伝達特性Hrs_Bと、空間音響伝達特性Hlo_Bとが対応付けられて、1つのデータセットとなっている。
なお、空間音響伝達特性1、2のペアを第1のプリセットデータとする。すなわち、1つのデータセットを構成する空間音響伝達特性1、及び空間音響伝達特性2を第1のプリセットデータとする。1つのデータセットを構成する第1の外耳道伝達特性を第2のプリセットデータとする。1つのデータセットは、第1のプリセットデータ、及び第2のプリセットデータを含んでいる。そして、データ格納部303は、第1のプリセットデータと第2のプリセットデータとを被測定者の左右の耳毎に対応付けて記憶している。
ここで、n(nは2以上の整数)人の被測定者1に対して、第1及び第2の事前測定が予め行われているとする。この場合、データ格納部303には、両耳分である2n個のデータセットが格納されている。データ格納部303に格納されている第1の外耳道伝達特性を第1の外耳道伝達特性F_ECTFL_A〜第1の外耳道伝達特性F_ECTFL_N、第1の外耳道伝達特性F_ECTFR_A〜第1の外耳道伝達特性F_ECTFR_Nとして示す。
比較部302は、ユーザデータF_ECTFL_Uを、第1の外耳道伝達特性F_ECTFL_A〜F_ECTFL_N、F_ECTFR_A〜F_ECTFR_Nのそれぞれと比較する。そして、比較部302は、2n個の第1の外耳道伝達特性F_ECTFL_A〜F_ECTFL_N、F_ECTFR_A〜F_ECTFR_Nの中から、ユーザデータF_ECTFL_Uに最も類似する1つを選択する。ここでは、2つの周波数振幅特性の相関を類似度スコアとして算出している。比較部302は、ユーザデータに最も類似度スコアが高い第1の外耳道伝達特性のデータセットを選択する。ここで、被測定者lの左耳が選択されているとして、選択された第1の外耳道伝達特性を左選択特性F_ECTFL_lとする。
同様に、比較部302は、ユーザデータF_ECTFR_Uを、第1の外耳道伝達特性F_ECTFL_A〜F_ECTFL_N、F_ECTFR_A〜F_ECTFR_Nのそれぞれと比較する。そして、比較部302は、2n個の第1の外耳道伝達特性F_ECTFL_A〜F_ECTFL_N、F_ECTFR_A〜F_ECTFR_Nの中から、ユーザデータF_ECTFR_Uに最も類似する1つを選択する。ここで、被測定者mの右耳が選択されているとし、選択された第1の外耳道伝達特性を右選択特性F_ECTFR_mとする。
比較部302は、比較結果を抽出部304に出力する。具体的には、最も類似度スコアの高い第2のプリセットデータの被測定者IDと、耳の左右を抽出部304に出力する。抽出部304は、比較結果に基づいて、第1のプリセットデータを抽出する。
抽出部304は、データ格納部303から、左選択特性F_ECTFL_lに対応する空間音響伝達特性をデータ格納部303から読み出す。抽出部304は、データ格納部303を参照して、被測定者lの左耳の空間音響伝達特性Hls_l、空間音響伝達特性Hro_lを抽出する。
同様に、抽出部304は、データ格納部303から、右選択特性F_ECTFR_mに対応する空間音響伝達特性をデータ格納部303から読み出す。抽出部304は、データ格納部303を参照して、被測定者mの左耳の空間音響伝達特性Hrs_m、空間音響伝達特性Hlo_mを抽出する。
このように、比較部302は、ユーザデータを複数の第2のプリセットデータと比較する。そして、抽出部304は、第2のプリセットデータとユーザデータとの比較結果に基づいて、ユーザに適した第1のプリセットデータを抽出する。
そして、送信部305は、抽出部304が抽出した第1のプリセットデータを頭外定位処理装置100に送信する。送信部305は、第1のプリセットデータに対して、通信規格に応じた処理(例えば、変調処理)を行って、送信する。ここでは、左耳に関しては、空間音響伝達特性Hls_l、空間音響伝達特性Hro_lが第1のプリセットデータとして抽出されており、右耳に関しては、空間音響伝達特性Hrs_m、空間音響伝達特性Hlo_mが第1のプリセットデータとして抽出されている。よって、送信部305は、空間音響伝達特性Hls_l、空間音響伝達特性Hro_l、空間音響伝達特性Hrs_m、空間音響伝達特性Hlo_mを頭外定位処理装置100に送信する。
図4の説明に戻る。受信部114は、送信部305から送信された第1のプリセットデータを受信する。受信部114は、受信した第1のプリセットデータに対して、通信規格に応じた処理(例えば、復調処理)を行う。受信部114は、左耳に関する第1のプリセットデータとして、空間音響伝達特性Hls_l、空間音響伝達特性Hro_lを受信し、右耳に関する第1のプリセットデータとして、空間音響伝達特性Hrs_m、空間音響伝達特性Hlo_mを受信する。
そして、フィルタ記憶部122は、第1のプリセットデータに基づいて、空間音響フィルタを記憶する。すなわち、空間音響伝達特性Hls_lがユーザUの空間音響伝達特性Hlsとなり、空間音響伝達特性Hro_lがユーザUの空間音響伝達特性Hroとなる。同様に、空間音響伝達特性Hrs_mがユーザUの空間音響伝達特性Hrsとなり、空間音響伝達特性Hlo_mがユーザUの空間音響伝達特性Hloとなる。
なお、第1のプリセットデータがフィルタ長で切り出した後のデータである場合、頭外定位処理装置100が第1のプリセットデータをそのまま、空間音響フィルタとして記憶する。例えば、空間音響伝達特性Hls_lがユーザUの空間音響伝達特性Hlsとなる。第1のプリセットデータがフィルタ長で切り出される前のデータである場合、頭外定位処理装置100が空間音響伝達特性をフィルタ長に切り出す処理を行う。
演算処理部120は、4つの空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに応じた空間音響フィルタと、逆フィルタとを用いて、演算処理を行う。演算処理部120は、図1で示した頭外定位処理部10と、フィルタ部41、フィルタ部42で構成されている。よって、演算処理部120は、4つの空間音響フィルタと、2つの逆フィルタとを用いて、ステレオ入力信号に上記の畳み込み演算処理等を行う。
このように、データ格納部303が、被測定者1毎に第1のプリセットデータと、第2のプリセットデータを対応付けて格納している。第1のプリセットデータは被測定者1の空間音響伝達特性に関するデータである。第2のプリセットデータは、被測定者1の第1の外耳道伝達特性に関するデータである。
比較部302はユーザデータを、第2のプリセットデータと比較する。ユーザデータは、ユーザ測定で得られた第1の外耳道伝達特性に関するデータである。そして、比較部302は、ユーザの第1の外耳道伝達特性と類似する被測定者1と、耳の左右とを決定する。
抽出部304は、決定された被測定者と耳の左右とに対応する第1のプリセットデータを読み出す。そして、送信部305は、抽出された第1のプリセットデータを頭外定位処理装置100に送信している。ユーザ端末である頭外定位処理装置100は、第1のプリセットデータに基づく空間音響フィルタと、測定データに基づく逆フィルタとを用いて、頭外定位処理を行う。
このようにすることで、ユーザUが空間音響伝達特性を測定しなくても、適切なフィルタを決定することができる。よって、ユーザがリスニングルームなどに行く必要や、ユーザの家にスピーカなどを設置する必要がなくなる。ユーザ測定はヘッドホン装着状態で実施される。すなわち、ユーザUがヘッドホンとマイクとを装着していれば、ユーザ個人の外耳道伝達特性を測定することができる。よって、簡便な方法で、定位効果の高い頭外定位を実現できる。なお、ユーザ測定と、頭外定位受聴に用いられるヘッドホン43は同じタイプのものであることが好ましい。
また、本実施の形態では、2つのドライバ45m、45fが用いられている。逆フィルタの生成には、ドライバ45mにより測定された第2の外耳道伝達特性が用いられている。また、空間音響フィルタの決定には、ドライバ45fにより測定された第1の外耳道伝達特性が用いられている。つまり、第1の外耳道伝達特性に関するユーザデータと第2のプリセットデータとのマッチングにより、空間音響フィルタが決定されている。このようにすることで、より適切な頭外定位フィルタを用いることができる。
空間音響フィルタの生成、つまり、空間音響伝達特性の測定には、被測定者1の前方に配置されたステレオスピーカ5が用いられている。斜め前方から到達する測定信号をマイクユニット2が収音することで、空間音響伝達特性が測定される。第1の外耳道伝達特性の測定には、外耳孔よりも前方に配置されたドライバ45fが用いられている。本実施の形態によれば、第1の外耳道伝達特性を測定するための測定信号と、空間音響伝達特性を測定するための測定信号を同様の入射角とすることができる。
マイクから第1の位置までの方向が、被測定者からスピーカまでの方向に沿った方向となる。このようにすることで、空間音響伝達特性と外耳道伝達特性との関係性を類推しやすくなるため、マッチング精度を向上することができる。より適切な空間音響フィルタを用いて、頭外定位処理を行うことが可能となる。
一方、逆フィルタの生成には、ドライバ45mにより測定された第2の外耳道伝達特性が用いられている。頭外定位処理を行う際にヘッドホン43では、通常、ドライバが外耳孔の真横近傍にある。よって、より適切な逆フィルタを用いて、頭外定位処理を行うことが可能となる。
なお、ユーザ測定のヘッドホン43と、第2の事前測定のヘッドホン43は、同じタイプのものとすることが好ましいが、異なるタイプのものであってもよい。つまり、ユーザ測定のドライバ45fと、第2の事前測定のドライバ45fは、異なるタイプのものとすることが可能であり、異なる位置に配置することも可能である。第1の事前測定、第2の事前測定、及びユーザ測定における測定信号の入射角は同じとなっていることが好ましいが、異なっていてもよい。
また、第1の外耳道伝達特性と第2の外耳道伝達特性の測定では、異なるヘッドホン43が用いられていてもよい。例えば、第1の外耳道伝達特性の測定には、ドライバ45fのみを有するヘッドホン43が用いられ、第2の外耳道伝達特性の測定には、ドライバ45mのみを有するヘッドホン43が用いられていてもよい。2タイプのヘッドホン43を用意することで、左右に1つずつのドライバを有するヘッドホン43を用いて,ユーザ測定を行うことが可能である。
また、本実施形態にかかる方法では、多数のプリセット特性を聴く聴感テストを行う必要や、身体的特徴を細かく測定する必要がない。よって、ユーザ負担を軽減することができ、利便性を向上することができる。そして、被測定者とユーザのデータを比較することで、特性が似ている被測定者を選ぶことができる。そして選ばれた被測定者の耳の第1のプリセットデータを抽出部304が抽出するため、高い頭外定位効果が期待できる。
このようにすることで、空間音響伝達特性のユーザ測定を行わなくても、適切なフィルタを決定することができる。よって、利便性を向上することができる。また、抽出部304は、2以上の第1のプリセットデータを抽出してもよい。聴感テストの結果に基づいて、ユーザが最適な頭外定位フィルタを決定してもよい。この場合も聴感テストの回数を削減することができるため、ユーザの負担を軽減することができる。
変形例1.
変形例1では、ユーザデータと第2のプリセットデータとの間における外耳道伝達特性のマッチングに第1及び第2の外耳道伝達特性を用いている。したがって、送信部113は、第1の外耳道伝達特性F_ECTFL、F_ECTFRのみではなく、第2の外耳道伝達特性M_ECTFL、M_ECTFRをユーザデータとして送信している。頭外定位処理装置100は、第1及び第2の外耳道伝達特性に関するユーザデータをサーバ装置300に送信している。サーバ装置300に格納されているプリセットデータについて図8を用いて説明する。
図8は、変形例1でのプリセットデータを示すテーブルである。第2のプリセットデータとして、第1及び第2の外耳道伝達特性が含まれている。第2のプリセットデータは、第1及び第2の外耳道伝達特性を含んでいる。被測定者Aの左耳については、第1の外耳道伝達特性F_ECTFL_Aと、第2の外耳道伝達特性M_ECTFL_Aと、空間音響伝達特性Hls_Aと、空間音響伝達特性Hro_Aとが対応付けられて、1つのデータセットとなっている。同様に、被測定者Aの右耳については、第1の外耳道伝達特性F_ECTFR_Aと、第2の外耳道伝達特性M_ECTFR_Aと、空間音響伝達特性Hrs_Aと、空間音響伝達特性Hlo_Aとが対応付けられて、1つのデータセットとなっている。
本実施の形態では、第1及び第2の外耳道伝達特性が第2のプリセットデータとなっている。サーバ装置300の比較部302は、第1及び第2の外耳道伝達特性のそれぞれについて、ユーザデータとプリセットデータとの相関を求めている。つまり、比較部302は、第1の外耳道伝達特性について、ユーザデータとプリセットデータの第1の相関を求める。同様に、比較部302は、第2の外耳道伝達特性のそれぞれについて、ユーザデータとプリセットデータの第2の相関を求める。
比較部302は、2つの相関に基づいて類似度スコアを求める。類似度スコアは、例えば、第1及び第2の相関の単純平均や重み付け平均とすることができる。抽出部304は、類似度スコアが最も高いデータセットの第1のプリセットデータを抽出する。2つ以上の外耳道伝達特性を用いてマッチングを行うことで、ユーザに適したプリセットデータを抽出することができる。より高い精度で頭外定位フィルタを決定することができる。
実施の形態2.
本実施の形態に用いられるヘッドホン43について図9を用いて説明する。実施の形態では、ヘッドホン43においてドライバ45の位置が可変となっている。なお、頭外定位フィルタ決定システム500の全体の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
左マイク2L、右マイク2Rに対するドライバ45の相対位置を変えることができる。例えば、ハウジング46内において、ドライバ45の位置に調整することができる。測定信号がマイクに入射する入射角を任意の角度に設定することができる。そして、ドライバ45が第1の位置、第2の位置、第3の位置にある状態で測定を行っている。なお、図9では、第1の位置にあるドライバ45を実線で示し、第2の位置、及び第3の位置にあるドライバ45をドライバ45m、45bとして破線で示している。
第1の位置、第2の位置は、実施の形態1と同様の位置である。実施の形態1と同様に、第1の位置での測定により得られた外耳道伝達特性を第1の外耳道伝達特性F_ECTFL、F_ECTFRとし、第2の位置での測定により得られた外耳道伝達特性を第2の外耳道伝達特性M_ECTFL、M_ECTFRとする。第3の位置は、第2の位置よりも後方にある。第3の位置は外耳孔よりも後方の位置である。第3の位置での測定により得られた外耳道伝達特性を第3の外耳道伝達特性B_ECTFL、B_ECTFRとする。
本実施の形態では、第1の外耳道伝達特性F_ECTFL、F_ECTFR、第2の外耳道伝達特性M_ECTFL、M_ECTFR、第3の外耳道伝達特性B_ECTFL、B_ECTFRの全ての測定データが、ユーザデータとして、サーバ装置300に送信される。
本実施の形態では、5.1chの再生信号を用いて、頭外定位処理を行っている。5.1chの場合、6個のスピーカがある。つまり、測定装置200の測定環境には、センタースピーカ(正面スピーカ)、右前方スピーカ、左前方スピーカ、右後方スピーカ、左後方スピーカ、低音サブウーファースピーカが配置されている。従って、図2に示した測定装置200に、センタースピーカ、左後方スピーカ、右後方スピーカ、サブウーファースピーカが追加されている。センタースピーカは、被測定者1の正面前方に配置される。センタースピーカは、例えば、左前方スピーカと右前方スピーカとの間に配置される。
左前方スピーカから左耳、及び右耳までの空間音響伝達特性を、実施の形態1と同様にHls、Hloとする。右前方スピーカから左耳、及び右耳までの空間音響伝達特性を、実施の形態1と同様にHro、Hrsとする。センタースピーカから左耳及び右耳までの空間音響伝達特性をCHl、CHrとする。左後方スピーカから左耳及び右耳までの空間音響伝達特性をSHls、SHloとする。右後方スピーカから左耳、及び右耳までの空間音響伝達特性を、SHro、SHrsとする。低音出力用のサブウーファースピーカから左耳及び右耳までの空間音響伝達特性をSWHl、SWHrとする。
サーバ装置300は、マッチングを行うことで、それぞれスピーカについて空間音響伝達特性を求めている。スピーカに応じて、マッチングに使用する外耳道伝達特性を変えている。例えば、実施の形態1と同様に、左前方スピーカ及び右前方スピーカでは、第1の外耳道伝達特性がマッチングに用いられる。この場合、プリセットデータは、図7と同様になる。あるいは、図8に示したように、第1及び第2の外耳道伝達特性をマッチングに用いても良い。
左後方スピーカ及び右後方スピーカでは、第3の位置からマイクまでの第3の外耳道伝達特がマッチングに用いられる。第3の位置は、図9のドライバ45bに示される位置であり、外耳孔よりも後方の位置である。ドライバ45bからの測定信号の入射角を、左後方スピーカ、及び右後方スピーカの設置方向に揃えることが好ましい。以下、空間音響伝達特性SHls、SHro又は空間音響伝達特性SHlo、SHrsを求める処理について説明する。
図10は、空間音響伝達特性SHls、SHro又は空間音響伝達特性SHlo、SHrsを求めるためのプリセットデータを示す表である。被測定者Aの左耳については、第2の外耳道伝達特性M_ECTFL_A、第3の外耳道伝達特性B_ECTFL_Aと、空間音響伝達特性SHls_Aと、空間音響伝達特性SHro_Aとが対応付けられて、1つのデータセットとなっている。同様に、被測定者Aの右耳については、第2の外耳道伝達特性M_ECTFR_A、第3の外耳道伝達特性B_ECTFR_Aと、空間音響伝達特性SHrs_Aと、空間音響伝達特性SHlo_Aとが対応付けられて、1つのデータセットとなっている。
そして、比較部302は、第2及び第3の外耳道伝達特性について、第2のプリセットデータとユーザデータとの相関を求める。抽出部304は、相関に応じた類似度スコアにより、空間音響伝達特性SHls、SHlo又は空間音響伝達特性SHro、SHrsに関する第1のプリセットデータを抽出する。第2の外耳道伝達特性に関するユーザデータとプリセットデータの相関を第2の相関とし、第3の外耳道伝達特性に関するユーザデータとプリセットデータの相関を第3の相関とする。
比較部302は、2つの相関に基づいて類似度スコアを求める。類似度スコアは、例えば、第2及び第3の相関の単純平均や重み付け平均とすることができる。抽出部304は、類似度スコアが最も高いデータセットの第1のプリセットデータを抽出する。2つ以上の外耳道伝達特性を用いてマッチングを行うことで、ユーザに適したプリセットデータを抽出することができる。より高い精度で頭外定位フィルタを決定することができる。
このように、被測定者1に対するスピーカの相対位置に応じて、第1のプリセットデータと対応付ける第2のプリセットデータを変更している。つまり、ユーザより前方にある左前方スピーカ及び右前方スピーカについては、外耳孔よりも前方に配置されたドライバ45を用いて測定された第1の外耳道伝達特性をマッチングに用いる。ユーザより後方にある左後方スピーカ及び右後方スピーカについては、外耳孔よりも後方に配置されたドライバ45bを用いて測定された第3の外耳道伝達特性をマッチングに用いる。
センタースピーカから左耳及び右耳までの空間音響伝達特性CHl、CHrについても同様に1つ又は2以上の外耳道伝達特性を用いてマッチングを行う。低音出力用のサブウーファースピーカから左耳及び右耳までの空間音響伝達特性SWHl、SWHrについても同様に、1つ又は2つ以上の外耳道伝達特性を用いてマッチングを行う。サブウーファースピーカ及びセンタースピーカは、被測定者1の前方に配置あるため、ドライバ45を外耳孔よりも前方に配置した状態で測定することが好ましい。なお、サブウーファースピーカの周波数帯域は指向性が低いため、被測定者1とサブウーファースピーカとの位置関係に関わらず、任意のドライバ位置で測定した外耳道伝達特性を用いてマッチングを行ってもよい。
被測定者1よりも前方のスピーカについては、第1の位置からマイクまでの外耳道伝達特性を用いてマッチングを行う。被測定者1よりも後方のスピーカについては、第3の位置からマイクまでの外耳道伝達特性を用いてマッチングを行う。これにより、測定信号の入射角を揃えることができるため、より適切な頭外定位フィルタを設定することができる。ドライバからの測定信号の入射角度と、スピーカからの測定信号の入射角は完全に一致していなくてもよい。
もちろん、5.1chに限らず、7.1chや9.1chのスピーカを用いることも可能である。この場合も、外耳道伝達特性のマッチングによりそれぞれのスピーカから左右の耳までの空間音響フィルタを求めることができる。そして、スピーカの配置により重み付け加算の重みを調整すればよい。
また、3つ以上の外耳道伝達特性を測定している場合、マッチングに3つ以上の外耳道伝達特性を用いてもよい。この場合、スピーカの位置に応じた重みで相関を重み付け加算すればよい。3つの外耳道伝達特性をマッチングに用いて、のプリセットデータを図11に示す。
図11では、第2のプリセットデータが、第1〜第3の外耳道伝達特性を含んでいる。被測定者Aの左耳については、第1の外耳道伝達特性F_ECTFL_Aと、第2の外耳道伝達特性M_ECTFL_Aと、第3の外耳道伝達特性B_ECTFL_Aと、空間音響伝達特性Hls_Aと、空間音響伝達特性Hro_Aとが対応付けられて、1つのデータセットとなっている。同様に、被測定者Aの右耳については、第1の外耳道伝達特性F_ECTFR_Aと、第2の外耳道伝達特性M_ECTFR_Aと、第3の外耳道伝達特性B_ECTFR_Aと、空間音響伝達特性Hrs_Aと、空間音響伝達特性Hlo_Aとが対応付けられて、1つのデータセットとなっている。
第1〜第3の外耳道伝達特性が第2のプリセットデータとなっている。サーバ装置300の比較部302は、第1〜第3の外耳道伝達特性のそれぞれについて、ユーザデータとプリセットデータとの相関を求めている。つまり、比較部302は、第1の外耳道伝達特性について、ユーザデータとプリセットデータの相関を求める。同様に、比較部302は、第2及び第3の外耳道伝達特性のそれぞれについて、ユーザデータとプリセットデータの相関を求める。
比較部302は、3つの相関に基づいて類似度スコアを求める。類似度スコアは、例えば、第1〜第3の相関の単純平均や重み付け平均とすることができる。抽出部304は、類似度スコアが最も高いデータセットの第1のプリセットデータを抽出する。3つ以上の外耳道伝達特性を用いてマッチングを行うことで、ユーザに適したプリセットデータを抽出することができる。より高い精度で頭外定位フィルタを決定することができる。また、マッチングに使用しない外耳道伝達特性については、重み付け加算の重みを0としてもよい。
なお、上記の説明では、ハウジング46内において、ドライバ45の位置を可変としているが、3つのドライバ45を有するハウジングを用いてもよい。あるいは、ハウジング46の位置や角度を調整できる機構を設けてもよい。つまり、ヘッドホンバンド43Bに対するハウジング46の角度を調整することで、マイク2L、2Rに対するドライバ45の相対位置を変えてもよい。
実施の形態3.
本実施の形態では、ユーザ及び被測定者の頭部の形状に応じた形状データを用いている。具体的には、頭部の形状に応じた形状データを取得するためのセンサがヘッドホン43に設けられている。以下に、ヘッドホン43に設けたセンサの具体例について説明する。
(センサ例1)
図12は、開度センサ141を有するヘッドホン43を模式的に示す正面図である。ヘッドホンバンド43Bには開度センサ141が設けられている。開度センサ141は、ヘッドホンバンド43Bの変形量、つまり、ヘッドホン43の開度を検出する。開度センサ141としては、ヘッドホンバンド43Bの開き角度を検出する角度センサを用いることができる。あるいは、開度センサ141としてジャイロセンサや圧電センサを用いてもよい。開度センサ141により頭部の幅Wを検出する。
図13には、頭部の幅が異なる被測定者1を模式的に示す正面図である。狭い幅W1の被測定者1では、開度が小さくなり、広い幅W2の被測定者1では、開度が大きくなる。よって、開度センサ141が検出した開度は、頭部の幅Wに対応することになる。つまり、開度センサ141は、ヘッドホン43の開き角度を検出することで、頭部の幅を形状データとして取得する。
(センサ例2)
図14は、スライド位置センサ142を有するヘッドホン43を模式的に示す正面図である。ヘッドホンバンド43Bと左ユニット43Lとの間には、スライド機構146が設けられている。ヘッドホンバンド43Bと右ユニット43Rとの間には、スライド機構146が設けられている。スライド機構146は、図14の実線矢印に示すように、ヘッドホンバンド43Bに対して左ユニット43L及び右ユニット43Rを上下にスライドさせる。これにより、被測定者1の頭頂から左ユニット43L、右ユニット43Rまでの高さHを変えることができる。スライド位置センサ142はスライド機構146のスライド位置(スライド長さ)を検出する。スライド位置センサ142は、例えば、回転センサであり、回転角度によりスライド位置を検出する。
頭部の長さに応じて、スライド機構146のスライド位置が変化する。頭部の長さが異なる被測定者1を図15に示す。ここでは、頭頂から外耳孔までの高さをH1,H2として示している。頭頂から外耳孔までの高さH1,H2に応じて、スライド位置が変化する。よって、スライド位置センサ142がスライド機構146のスライド位置を検出することで、頭部の長さを形状データとして検出することができる。
(センサ例3)
図16は、スイーベル角度センサ143を有するヘッドホン43を模式的に示す上面図である。ヘッドホンバンド43Bと左ユニット43Lとの間にスイーベル角度センサ143が設けられている。ヘッドホンバンド43Bと右ユニット43Rとの間にスイーベル角度センサ143が設けられている。スイーベル角度センサ143は、ヘッドホン43の左ユニット43L、及び右ユニット43Rのスイーベル角度をそれぞれ検出する。スイーベル角度は、ヘッドホンバンド43Bに対する左ユニット43L又は右ユニット43Rの鉛直軸周りの角度である(図16の矢印の方向)。
図17は、スイーベル角度が異なる状態を模式的に示す上面図である。例えば、耳が頭部中心よりも後方にある被測定者1の場合、左ユニット43L又は右ユニット43Rが前方に開いた状態となる(図17の上段)。あるいは、前頭部が広く後頭部が狭い被測定者1の場合、左ユニット43L又は右ユニット43Rが前方に開いた状態となる。耳が頭部中心よりも前方にある被測定者1の場合、左ユニット43L又は右ユニット43Rが後方に開いた状態となる(図17の下段)。前頭部が狭く後頭部が広い被測定者1の場合、左ユニット43L又は右ユニット43Rが前方に開いた状態となる。
(センサ例4)
図18は、ハンガー角度センサ144を有するヘッドホン43を模式的に示す正面図である。ヘッドホンバンド43Bと左ユニット43Lとの間にハンガー角度センサ144が設けられている。ヘッドホンバンド43Bと右ユニット43Rとの間にハンガー角度センサ144が設けられている。ハンガー角度センサ144は、ヘッドホン43の左ユニット43L、及び右ユニット43Rのハンガー角度をそれぞれ検出する。ハンガー角度は、ヘッドホンバンド43Bに対する左ユニット43L又は右ユニット43Rの前後軸周りの角度である(図18の矢印の方向)。
図19は、ハンガー角度が異なる状態を模式的に示す上面図である。例えば、耳が上方にある被測定者1の場合、左ユニット43L又は右ユニット43Rが下方に開いた状態となる(図19の上段)。また、顔幅が狭い被測定者1の場合、左ユニット43L又は右ユニット43Rが上方に開いた状態となる。耳が下方にある場合、左ユニット43L又は右ユニット43Rが上方に開いた状態となる(図19の下段)。また、顔幅が広い被測定者1の場合、左ユニット43L又は右ユニット43Rが下方に開いた状態となる。
開度センサ141、スライド位置センサ142、スイーベル角度センサ143、ハンガー角度センサ144の少なくとも一つを用いることで、被測定者1の頭部形状に応じた形状データを検出することができる。形状データは、左ユニット43Lと右ユニット43Rとの間の相対位置又は相対角度として示されていてもよい。形状データは、実際の頭部形状の寸法を示すデータであってもよい。
もちろん、上記のセンサは一例であり、他のセンサをヘッドホン43に設けることで、形状データを検出してもよい。1つの耳に対して検出される形状データは1種類以上であればよいが、2種類以上を組み合わせてもよい。1つの耳に対して形状データが2種類以上検出される場合、形状データは多次元のベクトルデータとしてもよい。
各種センサが被測定者1の耳毎に形状データを検出する。また、各種センサがユーザについても形状データを検出する。サーバ装置300のデータ格納部303は形状データを格納している。図20に示すように、形状データは、第1及び第2のプリセットに対応付けられている。
比較部302は、形状データを用いてマッチングを行う。例えば、ユーザと被測定者との間で形状データの差が閾値よりも大きい場合、そのデータセットについては、マッチングから除外してもよい。あるいば、形状データの比較結果に基づいて、類似度スコアを算出してもよい。本実施の形態では、形状データに基づいて、サーバ装置300が第1のプリセットデータを抽出する。これにより、より適切な頭外定位フィルタを決定することができる。
実施の形態4.
実施の形態1で示したように、第1の事前測定、第2の事前測定、ユーザ測定において、測定信号の入射角を揃えることが好ましい。一方、被測定者1の頭部形状などに応じて、ヘッドホン43の装着状態が異なる。例えば、ハウジング46の装着角度は、被測定者1の頭部形状に応じて変化してしまう。そこで、実施の形態4、及びその変形例2では、測定信号の入射角を調整することができるヘッドホン43について説明する。実施の形態4、及びその変形例2は、第2の事前測定、及びユーザ測定の少なくとも一方に用いられていればよい。
図21はヘッドホン43の構成を模式的に示す上面図である。図22は、ドライバ45が第1〜第3の位置にある構成を示す図である。図22では、第1の位置にあるドライバ45をドライバ45f、第2の位置にあるドライバ45をドライバ45m、第3の位置にあるドライバ45をドライバ45bとして示している。
ヘッドホン43は、スイーベル角度センサ143を有している。スイーベル角度センサ143は、上記のようにハウジング46のスイーベル角度を検出する。左ユニット43Lは、ドライバ45、ハウジング46、ガイド機構47、及び駆動モータ48を有している。右ユニット43Rは、ドライバ45、ハウジング46、ガイド機構47、及び駆動モータ48を有している。左ユニット43L、及び右ユニット43Rは、左右対称な構成となっているため、右ユニット43Rの説明については適宜省略する。
ハウジング46内には、ドライバ45、ガイド機構47、及び駆動モータ48が設けられている。駆動モータ48は、ステッピングモータやサーボモータ等のアクチュエータであり、ドライバ45を移動させる。ハウジング46には、ガイド機構47が固定されている。ガイド機構47は、上面視において円弧状に形成されたガイドレールである。なお、ガイド機構47は、円弧状に限られるものはない。例えば、ガイド機構47は、楕円形状や双曲線形状であってもよい。
ガイド機構47を介して、ドライバ45がハウジング46に取り付けられている。駆動モータ48は、ガイド機構47に沿ってドライバ45を移動させる。円弧状のガイド機構47を用いることで、いずれの位置においても、ドライバ45が外耳孔を向いた状態で測定を行うことができる。
また、駆動モータ48は、ドライバ45の移動量を検出するセンサを有している。センサとしては、例えば、モータ回転角を検出するモータエンコーダを用いることができる。これにより、ハウジング46内におけるドライバ45の位置を検出することができる。つまり、ガイド機構47におけるドライバ45の位置が検出される。さらに、ハウジング46とヘッドホンバンド43Bとの間には、スイーベル角度センサ143が設けられている。これにより、ヘッドホンバンド43Bに対するハウジング46のスイーベル角度を検出することができる。
ドライバ45の移動量と、スイーベル角度に基づいて、マイク2L又は外耳孔に対するドライバ45の方向を求めることができる。つまり、ドライバ45から出力された測定信号の入射角を求めることができる。ユーザの頭部形状などに応じてヘッドホン43の装着角度が変化した場合でも、第2の事前測定と、ユーザ測定における測定信号の入射角を揃えることができる。さらに、第2の事前測定と第1の事前測定における測定信号の入射角を揃えることができる。つまり、スイーベル角度に基づいて、駆動モータ48が適切な位置までドライバ45を移動させる。これにより、より適切なマッチングが可能となる。
変形例2.
実施の形態4の変形例2について、図23、及び図24を用いて説明する。図23は、変形例2のヘッドホン43を模式的に示す上面図である。図24は、ヘッドホン43を装着した状態を示す図である。変形例2おいても、左ユニット43L、及び右ユニット43Rは、左右対称な構成となっているため、右ユニット43Rの説明については適宜省略する。
左ユニット43Lは、ドライバ45f、ドライバ45m、ドライバ45b、ハウジング46と、アウターハウジング49を有している。変形例2では、3つのドライバ45f、ドライバ45m、ドライバ45bがハウジング46内に収容されている。もちろん、ドライバの数は3に限定されるものではなく、2以上であればよい。さらに、ハウジング46の外側には、アウターハウジング49が設けられている。つまり、ハウジング46は、アウターハウジング49の内側に収容されたインナーハウジングとなる。
ドライバ45f、ドライバ45m、及びドライバ45bがハウジング46に固定されている。変形例2では、ハウジング46に対するドライバ45f、ドライバ45m、及びドライバ45bの位置が可変となっていない。また、ハウジング46はヘッドホンバンド43Bに固定されている。つまり、ヘッドホンバンド43Bに対するハウジング46のスイーベル角度が変化しない。
ハウジング46に対するアウターハウジング49の角度が可変となっている。例えば、ハウジング46とアウターハウジング49とは、蛇腹状のブーツ(不図示)で連結されている。また、ハウジング46とアウターハウジング49を蛇腹状のブーツで密閉してもよい。
図24に示すように、被測定者1の頭部形状に応じて、アウターハウジング49の角度が変化する。図24では、左耳9L、右耳9Rの前後位置が異なっている。左耳9L、右耳9Rに位置が標準的な被測定者1では、左右のアウターハウジング49が正対している(図24の上段)。
左耳9L、右耳9Rに位置が後ろ側にある被測定者1では、左右のアウターハウジング49が後方に開いた状態となる(図24の中段)。つまり、左右のアウターハウジング49の前端が近づき、後端が離れた状態となる。
左耳9L、右耳9Rに位置が前側にある被測定者1では、左右のアウターハウジング49が前方に開いた状態となる(図24の下段)。つまり、左右のアウターハウジング49の後端が近づき、前端が離れた状態となる。
このようにアウターハウジング49の角度が変わることで、装着状態を良好にすることができる。例えば、左ユニット43L、右ユニット43Rを被測定者1に密着させた状態とすることができる。被測定者1と左ユニット43Lとの間に隙間が無い状態で測定を行うことができる。よって、測定時において、ヘッドホン43がずれることを抑制することができる。また、アウターハウジング49により、第2の事前測定又はユーザ測定を行う測定空間、つまり、外耳孔の周りの空間を密閉することができるため、より精度の高い測定を行うことができる。
ハウジング46におけるドライバ位置が固定となっており、かつ、ハウジング46のスイーベル角度が固定となっている。したがって、被測定者1の頭部形状によらず、左右のハウジング46は、正対する。これにより、測定信号の入射角の変化を抑制することができる。よって、所定の入射角で測定を行うことができ、より精度の高い測定を行うことができる。
実施の形態4、又はその変形例2のヘッドホン43を用いることで、第1及び第2の外耳道伝達特性を測定することができる。第1の外耳道伝達特性に基づいて、音源から耳までの空間音響伝達特性に応じた空間音響フィルタが生成される。第2の外耳道伝達特性に基づいて、前記ヘッドホンの特性をキャンセルする逆フィルタが生成される。よって、より精度の高い頭外定位処理を行うことができる。
(ドライバ45fの配置例)
ドライバ45fの配置例について、図5,及び図25を用いて説明する。ドライバ45fとステレオスピーカ5の配置は左右対称であるため、以下、左スピーカ5Lと左ユニット43Lのドライバ45fの配置について説明する。
図5では、頭部中心Oから左スピーカ5Lまでの方向が、マイク2Lからドライバ45fの方向が平行になるようにしている。ステレオスピーカ5は、一般的に、頭部中心O、左スピーカ5L、右スピーカ5Rが正三角形の関係になる配置がよい。このため、そして、頭部中心Oから左スピーカ5L又は右スピーカ5Rまでの開き角θが30°になるようにしている。
音波の波面の伝わり方を考えたとき、平面音波として近似すると、左スピーカ5Lと頭部中心Oとを結ぶ直線に垂直な波面が伝わっていく。平面波なので、左スピーカ5Lから頭部中心Oと、左スピーカ5Lから左耳9Lと、は平行であり、同様にしてドライバ45fから左耳9Lとも平行になる。したがって、ドライバ45fを図5のように配置することが好ましい。
一方、球面音波であると仮定すると、ステレオスピーカ5とドライバ45fを図25のように配置することが好ましい。図25では、マイク2Lからスピーカ5Lとの向かう直線上に、ドライバ45fが配置されている。もちろん、スピーカ5Lを左耳9Lへ向けて配置してもよい。マイク2Lからスピーカ5Lの配置は、図5、及び図25に示す配置に限られるものではない。左マイク2Lからドライバ45fまでの方向は、被測定者1から音源となるスピーカ5Lまでの方向に沿った方向であればよい。ここで被測定者1の位置は、頭部中心Oでもよく、左マイク2Lの位置としてよい。
上記の実施の形態1〜4及びその変形例については、適宜組み合わせることが可能である。また、第1〜第3の外耳道伝達特性の測定順は特に限定されるものではない。例えば、第2の外耳道伝達特性を最初に測定してもよい。
上記処理のうちの一部又は全部は、コンピュータプログラムによって実行されてもよい。上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。