JP2021047957A - 磁気記録媒体および磁気記録再生装置 - Google Patents
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Abstract
Description
非磁性支持体の一方の表面側に強磁性粉末を含む磁性層を有し、他方の表面側に非磁性粉末を含むバックコート層を有する磁気記録媒体であって、
上記バックコート層の表面においてn−ヘキサン洗浄後に光学干渉法により0.5atmの押圧下で測定されるスペーシングS0.5と、上記バックコート層の表面においてn−ヘキサン洗浄後に光学干渉法により13.5atmの押圧下で測定されるスペーシングS13.5との差分(S0.5−S13.5)が3nm以下である磁気記録媒体、
に関する。以下において、上記差分(S0.5−S13.5)を、単に「差分」とも記載する。また、1atm=101325Pa(パスカル)である。
本発明の一態様は、非磁性支持体の一方の表面側に強磁性粉末を含む磁性層を有し、他方の表面側に非磁性粉末を含むバックコート層を有する磁気記録媒体であって、上記バックコート層の表面においてn−ヘキサン洗浄後に光学干渉法により0.5atmの押圧下で測定されるスペーシングS0.5と、上記バックコート層の表面においてn−ヘキサン洗浄後に光学干渉法により13.5atmの押圧下で測定されるスペーシングS13.5との差分(S0.5−S13.5)が3nm以下である磁気記録媒体に関する。
磁気記録媒体(詳しくは上記の試料片。以下同様。)と透明な板状部材(例えばガラス板等)を、磁気記録媒体のバックコート層表面が透明な板状部材と対向するように重ね合わせた状態で、磁気記録媒体のバックコート層側とは反対側から、0.5atmまたは13.5atmの圧力で押圧部材を押しつける。この状態で、透明な板状部材を介して磁気記録媒体のバックコート層表面に光を照射し(照射領域:150000〜200000μm2)、磁気記録媒体のバックコート層表面からの反射光と透明な板状部材の磁気記録媒体側表面からの反射光との光路差によって発生する干渉光の強度(例えば干渉縞画像のコントラスト)に基づき、磁気記録媒体のバックコート層表面と透明な板状部材の磁気記録媒体側表面との間のスペーシング(距離)を求める。ここで照射される光は特に限定されるものではない。照射される光が、複数波長の光を含む白色光のように、比較的広範な波長範囲にわたり発光波長を有する光の場合には、透明な板状部材と反射光を受光する受光部との間に、干渉フィルタ等の特定波長の光または特定波長域以外の光を選択的にカットする機能を有する部材を配置し、反射光の中の一部の波長の光または一部の波長域の光を選択的に受光部に入射させる。照射させる光が単一の発光ピークを有する光(いわゆる単色光)の場合には、上記の部材は用いなくてもよい。受光部に入射させる光の波長は、一例として、例えば500〜700nmの範囲にあることができる。ただし、受光部に入射させる光の波長は、上記範囲に限定されるものではない。また、透明な板状部材は、この部材を介して磁気記録媒体に光を照射し干渉光が得られる程度に、照射される光が透過する透明性を有する部材であればよい。
上記スペーシングの測定により得られる干渉縞画像を300000ポイントに分割して各ポイントのスペーシング(磁気記録媒体のバックコート層表面と透明な板状部材の磁気記録媒体側表面との間の距離)を求め、これをヒストグラムとし、このヒストグラムにおける最頻値を、スペーシングとする。
同じ磁気記録媒体から試料片を5つ切り出し、各試料片について、n−ヘキサン洗浄後に0.5atmの圧力で押圧部材を押し付けてスペーシングを求め、更に13.5atmの圧力で押圧部材を押し付けてスペーシングを求める。そして5つの試料片についてn−ヘキサン洗浄後に0.5atmの圧力下で求められたスペーシングの算術平均をスペーシングS0.5とし、5つの試料片についてn−ヘキサン洗浄後に13.5atmの圧力下で求められたスペーシングの算術平均をスペーシングS13.5とする。こうして求められたS0.5とS13.5との差分(S0.5−S13.5)を、その磁気記録媒体についての差分(S0.5−S13.5)とする。
以上の測定は、例えばMicro Physics社製Tape Spacing Analyzer等の市販のテープスペーシングアナライザー(TSA;Tape Spacing Analyzer)を用いて行うことができる。実施例におけるスペーシング測定は、Micro Physics社製Tape Spacing Analyzerを用いて実施した。
以上の点に関して、本発明者は検討を重ねる中で、高い圧力を受けた際のバックコート層表面の変形を抑制することが、高温環境下での保管中に磁性層表面からバックコート層表面への上記成分が多量に転写されることを抑制することに寄与するのではないかと考えた。詳しくは、以下の通りである。
バックコート層表面には、通常、バックコート層に含まれる非磁性粉末により形成された突起が、バックコート層の素地部分に埋め込まれた状態で存在し得る。この突起が、高い圧力を受けた際にバックコート層内部に深く沈み込むと、突起とバックコート層の素地部分との間に微細な隙間が生じると推察される。この微細な隙間に毛管現象によって上記成分が入り込むことが、上記成分がバックコート層表面へ転写される量を多くしてしまうと考えられる。したがって、高い圧力を受けた際のバックコート層表面の変形を抑制することは、高温環境下での保管中に磁性層の走行安定性に寄与し得る成分がバックコート層側に転写されることを抑制することにつながると、本発明者は考えた。このような知見について、特開2012−43495号公報(特許文献1)には何ら記載されていない。そして、本発明者らは、かかる知見に基づき更に検討を重ねた結果、バックコート層表面において測定される差分(S0.5−S13.5)を3nm以下とすることによって、高温環境下での保管後の低温高湿環境下での繰り返し再生における再生出力の低下を抑制することが可能になることを、新たに見出した。差分(S0.5−S13.5)が3nm以下と小さいことは、上記のように高い圧力が加わった際にバックコート層表面の突起がバックコート層内部へ沈み込み難いことを示していると考えられる。
ただし、以上の推察に本発明は限定されない。また、本明細書に記載されている本発明者のその他の推察にも、本発明は限定されるものではない。上記差分を求めるためのスペーシングの測定における押圧時の圧力13.5atmおよび0.5atmについて、本発明では、上記のようにバックコート層表面に高い圧力が加わった状態に対応し得る例示的な値として13.5atmを採用し、他の状態で磁性層表面と接触する際にバックコート層表面に加わり得る圧力の例示的な値として0.5atmを採用したものであって、保管時、再生時等に上記磁気記録媒体に加わり得る圧力は、これら圧力に限定されるものではない。
上記磁気記録媒体のバックコート層表面について測定される差分(S0.5−S13.5)は、3nm以下であり、高温環境下での保管後の低温高湿環境下での繰り返し再生における再生出力の低下をより一層抑制する観点から、2nm以下であることが好ましい。また、上記差分は、0nm以上であることができ、0nm超であることもでき、1nm以上であることもできる。
(強磁性粉末)
磁性層に含まれる強磁性粉末としては、各種磁気記録媒体の磁性層において用いられる強磁性粉末として公知の強磁性粉末を一種または二種以上組み合わせて使用することができる。強磁性粉末として平均粒子サイズの小さいものを使用することは記録密度向上の観点から好ましい。この点から、強磁性粉末の平均粒子サイズは50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることが更に好ましく、35nm以下であることが一層好ましく、30nm以下であることがより一層好ましく、25nm以下であることが更に一層好ましく、20nm以下であることがなお一層好ましい。一方、磁化の安定性の観点からは、強磁性粉末の平均粒子サイズは5nm以上であることが好ましく、8nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、15nm以上であることが一層好ましく、20nm以上であることがより一層好ましい。
強磁性粉末の好ましい具体例としては、六方晶フェライト粉末を挙げることができる。六方晶フェライト粉末の詳細については、例えば、特開2011−225417号公報の段落0012〜0030、特開2011−216149号公報の段落0134〜0136、特開2012−204726号公報の段落0013〜0030および特開2015−127985号公報の段落0029〜0084を参照できる。
Hc=2Ku/Ms{1−[(kT/KuV)ln(At/0.693)]1/2}
[上記式中、Ku:異方性定数(単位:J/m3)、Ms:飽和磁化(単位:kA/m)、k:ボルツマン定数、T:絶対温度(単位:K)、V:活性化体積(単位:cm3)、A:スピン歳差周波数(単位:s−1)、t:磁界反転時間(単位:s)]
希土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0
の比率を満たすことを意味する。後述の六方晶ストロンチウムフェライト粉末の希土類原子含有率とは、希土類原子バルク含有率と同義である。これに対し、酸を用いる部分溶解は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部を溶解するため、部分溶解により得られる溶解液中の希土類原子含有率とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部における希土類原子含有率である。希土類原子表層部含有率が、「希土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0」の比率を満たすことは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子において、希土類原子が表層部に偏在(即ち内部より多く存在)していることを意味する。本発明および本明細書における表層部とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面から内部に向かう一部領域を意味する。
また、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末を磁性層の強磁性粉末として用いることは、磁気ヘッドとの摺動によって磁性層表面が削れることを抑制することにも寄与すると推察される。即ち、磁気記録媒体の走行耐久性の向上にも、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末が寄与し得ると推察される。これは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面に希土類原子が偏在することが、粒子表面と磁性層に含まれる有機物質(例えば、結合剤および/または添加剤)との相互作用の向上に寄与し、その結果、磁性層の強度が向上するためではないかと推察される。
異方性定数Kuの更なる向上および/または走行耐久性の更なる向上の観点からは、希土類原子含有率(バルク含有率)は、0.5〜4.5原子%の範囲であることがより好ましく、1.0〜4.5原子%の範囲であることが更に好ましく、1.5〜4.5原子%の範囲であることが一層好ましい。
上記部分溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認できる程度に溶解することをいう。例えば、部分溶解により、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子について、粒子全体を100質量%として10〜20質量%の領域を溶解することができる。一方、上記全溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認されない状態まで溶解することをいう。
上記部分溶解および表層部含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。ただし、下記の試料粉末量等の溶解条件は例示であって、部分溶解および全溶解が可能な溶解条件を任意に採用できる。
試料粉末12mgおよび1mol/L塩酸10mLを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度70℃のホットプレート上で1時間保持する。得られた溶解液を0.1μmのメンブレンフィルタでろ過する。こうして得られたろ液の元素分析を誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)分析装置によって行う。こうして、鉄原子100原子%に対する希土類原子の表層部含有率を求めることができる。元素分析により複数種の希土類原子が検出された場合には、全希土類原子の合計含有率を、表層部含有率とする。この点は、バルク含有率の測定においても、同様である。
一方、上記全溶解およびバルク含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。
試料粉末12mgおよび4mol/L塩酸10mLを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度80℃のホットプレート上で3時間保持する。その後は上記の部分溶解および表層部含有率の測定と同様に行い、鉄原子100原子%に対するバルク含有率を求めることができる。
強磁性粉末の好ましい具体例としては、強磁性金属粉末を挙げることもできる。強磁性金属粉末の詳細については、例えば特開2011−216149号公報の段落0137〜0141および特開2005−251351号公報の段落0009〜0023を参照できる。
強磁性粉末の好ましい具体例としては、ε−酸化鉄粉末を挙げることもできる。本発明および本明細書において、「ε−酸化鉄粉末」とは、X線回折分析によって、主相としてε−酸化鉄型の結晶構造が検出される強磁性粉末をいうものとする。例えば、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークがε−酸化鉄型の結晶構造に帰属される場合、ε−酸化鉄型の結晶構造が主相として検出されたと判断するものとする。ε−酸化鉄粉末の製造方法としては、ゲーサイトから作製する方法、逆ミセル法等が知られている。上記製造方法は、いずれも公知である。また、Feの一部がGa、Co、Ti、Al、Rh等の置換原子によって置換されたε−酸化鉄粉末を製造する方法については、例えば、J. Jpn. Soc. Powder Metallurgy Vol. 61 Supplement, No. S1, pp. S280−S284、J. Mater. Chem. C, 2013, 1, pp.5200−5206等を参照できる。ただし、上記磁気記録媒体の磁性層において強磁性粉末として使用可能なε−酸化鉄粉末の製造方法は、ここで挙げた方法に限定されない。
粉末を、透過型電子顕微鏡を用いて撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粉末を構成する粒子の写真を得る。得られた粒子の写真から目的の粒子を選びデジタイザーで粒子の輪郭をトレースし粒子(一次粒子)のサイズを測定する。一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
以上の測定を、無作為に抽出した500個の粒子について行う。こうして得られた500個の粒子の粒子サイズの算術平均を、粉末の平均粒子サイズとする。上記透過型電子顕微鏡としては、例えば日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いることができる。また、粒子サイズの測定は、公知の画像解析ソフト、例えばカールツァイス製画像解析ソフトKS−400を用いて行うことができる。後述の実施例に示す平均粒子サイズは、特記しない限り、透過型電子顕微鏡として日立製透過型電子顕微鏡H−9000型、画像解析ソフトとしてカールツァイス製画像解析ソフトKS−400を用いて測定された値である。本発明および本明細書において、粉末とは、複数の粒子の集合を意味する。例えば、強磁性粉末とは、複数の強磁性粒子の集合を意味する。また、複数の粒子の集合とは、集合を構成する粒子が直接接触している形態に限定されず、後述する結合剤、添加剤等が、粒子同士の間に介在している形態も包含される。粒子との語が、粉末を表すために用いられることもある。
(1)針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粒子を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、
(2)板状または柱状(ただし、厚みまたは高さが板面または底面の最大長径より小さい)の場合は、その板面または底面の最大長径で表され、
(3)球形、多面体状、不定形等であって、かつ形状から粒子を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
そして、特記しない限り、粒子の形状が特定の場合、例えば、上記粒子サイズの定義(1)の場合、平均粒子サイズは平均長軸長であり、同定義(2)の場合、平均粒子サイズは平均板径である。同定義(3)の場合、平均粒子サイズは、平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)である。
上記磁気記録媒体は塗布型磁気記録媒体であることができ、磁性層に結合剤を含むことができる。結合剤とは、一種以上の樹脂である。結合剤としては、塗布型磁気記録媒体の結合剤として通常使用される各種樹脂を用いることができる。例えば、結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等を共重合したアクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルキラール樹脂等から選ばれる樹脂を単独で用いるか、または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、および塩化ビニル樹脂である。これらの樹脂は、ホモポリマーでもよく、コポリマー(共重合体)でもよい。これらの樹脂は、バックコート層および/または後述する非磁性層においても結合剤として使用することができる。
以上の結合剤については、特開2010−24113号公報の段落0028〜0031を参照できる。結合剤として使用される樹脂の平均分子量は、重量平均分子量として、例えば10,000以上200,000以下であることができる。本発明および本明細書における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、下記測定条件により測定された値をポリスチレン換算して求められる値である。後述の実施例に示す結合剤の重量平均分子量は、下記測定条件によって測定された値をポリスチレン換算して求めた値である。結合剤は、強磁性粉末100.0質量部に対して、例えば1.0〜30.0質量部の量で使用することができる。
GPC装置:HLC−8120(東ソー社製)
カラム:TSK gel Multipore HXL−M(東ソー社製、7.8mmID(Inner Diameter)×30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
磁性層には、必要に応じて一種以上の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、一例として、上記の硬化剤が挙げられる。また、磁性層に含まれる添加剤としては、非磁性粉末、潤滑剤、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を挙げることができる。非磁性粉末としては、研磨剤として機能することができる非磁性粉末、磁性層表面に適度に突出する突起を形成する突起形成剤として機能することができる非磁性粉末(例えば非磁性コロイド粒子等)等が挙げられる。なお後述の実施例に示すコロイダルシリカ(シリカコロイド粒子)の平均粒子サイズは、特開2011−048878号公報の段落0015に平均粒径の測定方法として記載されている方法により求められた値である。研磨剤を含む磁性層に使用され得る添加剤の一例としては、特開2013−131285号公報の段落0012〜0022に記載の分散剤を、研磨剤の分散性を向上するための分散剤として挙げることができる。分散剤については、特開2012−133837号公報の段落0061および0071を参照できる。また、分散剤については、特開2012−133837号公報の段落0061および0071、ならびに特開2017−016721号公報の段落0035も参照できる。磁性層の添加剤については、特開2016−51493号公報の段落0035〜0077も参照できる。
分散剤は、非磁性層に含まれていてもよい。非磁性層に含まれ得る分散剤については、特開2012−133837号公報の段落0061を参照できる。
各種添加剤は、所望の性質に応じて市販品を適宜選択して、または公知の方法で製造して、任意の量で使用することができる。
脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、エルカ酸、エライジン酸等を挙げることができ、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。脂肪酸は、金属塩等の塩の形態で磁性層に含まれていてもよい。
脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、エルカ酸、エライジン酸等のエステルを挙げることができる。具体例としては、例えば、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸ブチル、ステアリン酸ブチル(ブチルステアレート)、ネオペンチルグリコールジオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、オレイン酸オレイル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸イソトリデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸ブトキシエチル等を挙げることができる。
脂肪酸アミドとしては、上記の各種脂肪酸のアミド、例えば、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド等を挙げることができる。
脂肪酸と脂肪酸の誘導体(アミドおよびエステル等)については、脂肪酸誘導体の脂肪酸由来部位は、併用される脂肪酸と同様または類似の構造を有することが好ましい。例えば、一例として、脂肪酸としてステアリン酸を用いる場合にステアリン酸エステルおよび/またはステアリン酸アミドを使用することは好ましい。
磁性層(または磁性層形成用組成物;以下同様)の脂肪酸含有量は、強磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0〜10.0質量部であり、好ましくは0.1〜10.0質量部であり、より好ましくは1.0〜7.0質量部である。磁性層の脂肪酸エステル含有量は、強磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0〜10.0質量部であり、好ましくは0.1〜10.0質量部であり、より好ましくは1.0〜7.0質量部である。磁性層の脂肪酸アミド含有量は、強磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0〜3.0質量部であり、好ましくは0〜2.0質量部であり、より好ましくは0〜1.0質量部である。
また、上記磁気記録媒体が非磁性支持体と磁性層との間に非磁性層を有する場合、非磁性層(または非磁性層形成用組成物;以下同様)の脂肪酸含有量は、非磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0〜10.0質量部であり、好ましくは1.0〜10.0質量部であり、より好ましくは1.0〜7.0質量部である。非磁性層の脂肪酸エステル含有量は、非磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0〜15.0質量部であり、好ましくは0.1〜10.0質量部である。非磁性層の脂肪酸アミド含有量は、非磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0〜3.0質量部であり、好ましくは0〜1.0質量部である。非磁性層に含まれる潤滑剤は、磁性層に移行することができ、移行して走行安定性に寄与することができる。
次に非磁性層について説明する。上記磁気記録媒体は、非磁性支持体上に直接磁性層を有していてもよく、非磁性支持体と磁性層との間に非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有していてもよい。非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機粉末でも有機粉末でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機粉末としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の粉末が挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2011−216149号公報の段落0146〜0150を参照できる。非磁性層に使用可能なカーボンブラックについては、特開2010−24113号公報の段落0040〜0041も参照できる。非磁性層における非磁性粉末の含有量(充填率)は、好ましくは50〜90質量%の範囲であり、より好ましくは60〜90質量%の範囲である。
次に、非磁性支持体について説明する。非磁性支持体(以下、単に「支持体」とも記載する。)としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。これらの支持体には、あらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、加熱処理等を行ってもよい。
上記磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を有する。バックコート層に含まれる非磁性粉末は、好ましくは、突起形成剤と、他の非磁性粉末の一種以上と、であることができる。
突起形成剤としては、無機物質の粒子を用いることができ、有機物質の粒子を用いることもでき、無機物質と有機物質との複合粒子を用いることもできる。無機物質としては、金属酸化物等の無機酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等を挙げることができ、無機酸化物が好ましい。一形態では、突起形成剤は、無機酸化物系粒子であることができる。ここで「系」とは、「含む」との意味で用いられる。無機酸化物系粒子の一形態は、無機酸化物からなる粒子である。また、無機酸化物系粒子の他の一形態は、無機酸化物と有機物質との複合粒子であり、具体例としては、無機酸化物とポリマーとの複合粒子を挙げることができる。そのような粒子としては、例えば、無機酸化物の粒子の表面にポリマーが結合した粒子を挙げることができる。
バックコート層に含まれる他の非磁性粉末については、非磁性層の非磁性粉末に関する上記記載を参照できる。他の非磁性粉末としては、好ましくは、カーボンブラックと、カーボンブラック以外の非磁性粉末と、のいずれか一方または両方を使用することができる。カーボンブラック以外の非磁性粉末としては、非磁性無機粉末を挙げることができる。非磁性無機粉末の具体例としては、α−酸化鉄等の酸化鉄、二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr2O3、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、ゲーサイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタン等の非磁性無機粉末を挙げることができる。好ましい非磁性無機粉末は、非磁性無機酸化物粉末であり、より好ましくはα−酸化鉄、酸化チタンであり、更に好ましくはα−酸化鉄である。
上記磁気記録媒体における非磁性支持体および各層の厚みについて、非磁性支持体の厚みは、例えば3.0〜80.0μmであり、好ましくは3.0〜50.0μmの範囲であり、より好ましくは3.0〜10.0μmの範囲である。
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための組成物は、先に説明した各種成分とともに、通常、溶媒を含む。溶媒としては、塗布型磁気記録媒体を製造するために一般に使用される各種有機溶媒を用いることができる。中でも、塗布型磁気記録媒体に通常使用される結合剤の溶解性の観点からは、各層形成用組成物には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン等のケトン溶媒の一種以上が含まれることが好ましい。各層形成用組成物における溶媒量は特に限定されるものではなく、通常の塗布型磁気記録媒体の各層形成用組成物と同様にすることができる。また、各層形成用組成物を調製する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程を含むことができる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。各層形成用組成物の調製に用いられる成分は、どの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の成分を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、結合剤を混練工程、分散工程、および分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。磁気記録媒体の製造工程では、従来の公知の製造技術を一部または全部の工程において用いることができる。混練工程では、オープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダ等の強い混練力をもつニーダを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報および特開平1−79274号公報に記載されている。また、各層形成用組成物を分散させるために、ガラスビーズおよび/またはその他のビーズを用いることができる。このような分散ビーズとしては、高比重の分散ビーズであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、およびスチールビーズが好適である。これら分散ビーズは、粒径(ビーズ径)と充填率を最適化して用いることが好ましい。分散機は公知のものを使用することができる。各層形成用組成物を、塗布工程に付す前に公知の方法によってろ過してもよい。ろ過は、例えばフィルタろ過によって行うことができる。ろ過に用いるフィルタとしては、例えば孔径0.01〜3μmのフィルタ(例えばガラス繊維製フィルタ、ポリプロピレン製フィルタ等)を用いることができる。
バックコート層は、バックコート層形成用組成物を、非磁性支持体の磁性層を有する(または磁性層が追って設けられる)側とは反対側に塗布することにより形成することができる。各層形成のための塗布の詳細については、特開2010−231843号公報の段落0066を参照できる。
磁気記録媒体製造のためのその他の各種工程については、特開2010−231843号公報の段落0067〜0070を参照できる。
また、サーボバンドに情報を埋め込む方法としては、上記以外の方法を採用することも可能である。例えば、一対のサーボストライプの群の中から、所定の対を間引くことによって、所定のコードを記録するようにしてもよい。
本発明の一態様は、上記磁気記録媒体と、磁気ヘッドと、を含む磁気記録再生装置に関する。
また、記録再生ヘッドは、他のデータバンドに対する記録および/または再生を行うことも可能である。その際には、先に記載したUDIM情報を利用してサーボ信号読み取り素子を所定のサーボバンドに移動させ、そのサーボバンドに対するトラッキングを開始すればよい。
各層形成用組成物の処方を、下記に示す。
(磁性液)
強磁性粉末(表1参照):100.0部
オレイン酸:2.0部
塩化ビニル共重合体(カネカ社製MR−104):10.0部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:4.0部
(重量平均分子量70000、SO3Na基:0.07meq/g)
ポリアルキレンイミン系ポリマー(特開2016−51493号公報の段落0115〜0123に記載の方法により得られた合成品):6.0部
メチルエチルケトン:150.0部
シクロヘキサノン:150.0部
(研磨剤液)
α−アルミナ(BET(Brunauer−Emmett−Teller)比表面積19m2/g):6.0部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:0.6部
(重量平均分子量70000、SO3Na基:0.1meq/g)
2,3−ジヒドロキシナフタレン:0.6部
シクロヘキサノン:23.0部
(シリカゾル)
コロイダルシリカ(平均粒子サイズ120nm):2.0部
メチルエチルケトン:8.0部
(その他の成分)
ステアリン酸:3.0部
ステアリン酸アミド:0.3部
ステアリン酸ブチル:6.0部
メチルエチルケトン:110.0部
シクロヘキサノン:110.0部
ポリイソシアネート(東ソー社製コロネート(登録商標)L):3.0部
非磁性無機粉末 α−酸化鉄(平均粒子サイズ10nm、BET比表面積75m2/g):100.0部
カーボンブラック(平均粒子サイズ:20nm):25.0部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂(重量平均分子量70000、SO3Na基:0.2meq/g):18.0部
ステアリン酸:1.0部
シクロヘキサノン:300.0部
メチルエチルケトン:300.0部
(突起形成剤液)
突起形成剤(表1参照):1.3部
メチルエチルケトン:9.0部
シクロヘキサノン:6.0部
(その他の成分)
α−酸化鉄:表1参照
平均粒子サイズ(平均長軸長):150nm
平均針状比:7
BET比表面積:52m2/g
カーボンブラック:表1参照
平均粒子サイズ20nm
塩化ビニル共重合体(カネカ社製MR−104):12.0部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:6.0部
フェニルホスホン酸:3.0部
シクロヘキサノン:155.0部
メチルエチルケトン:155.0部
ステアリン酸:3.0部
ステアリン酸ブチル:3.0部
ポリイソシアネート:5.0部
シクロヘキサノン:200.0部
磁性層形成用組成物を、以下の方法によって調製した。
上記磁性液の各種成分をバッチ式縦型サンドミルを用いて24時間分散(ビーズ分散)することにより、磁性液を調製した。分散ビーズとしては、ビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを使用した。
研磨剤液は、上記の研磨剤液の各種成分を混合してビーズ径0.3mmのジルコニアビーズとともに横型ビーズミル分散機に入れ、ビーズ体積/(研磨剤液体積+ビーズ体積)が80%になるように調整し、120分間ビーズミル分散処理を行い、処理後の液を取り出し、フロー式の超音波分散ろ過装置を用いて、超音波分散ろ過処理を施した。こうして研磨剤液を調製した。
調製した磁性液および研磨剤液、ならびに上記のシリカゾルおよびその他の成分をディゾルバー撹拌機に導入し、周速10m/秒で30分間撹拌した後、フロー式超音波分散機により流量7.5kg/分で3パス処理した後に、孔径1μmのフィルタでろ過して磁性層形成用組成物を調製した。
上記の非磁性層形成用組成物の各種成分をバッチ式縦型サンドミルによりビーズ径0.1mmのジルコニアビーズを使用して24時間分散し、その後、孔径0.5μmのフィルタを用いてろ過することにより、非磁性層形成用組成物を調製した。
突起形成剤液は、上記突起形成剤液の成分を混合した後に、ホーン式超音波分散機により200ccあたり500ワットの超音波出力で60分間超音波処理(分散処理)して得られた分散液を孔径0.5μmのフィルタでろ過して調製した。
上記の突起形成剤液と、上記のバックコート層形成用組成物のその他成分のうち、潤滑剤(ステアリン酸およびステアリン酸ブチル)、ポリイソシアネートおよび200.0部のシクロヘキサノンを除いた成分とを、オープンニーダにより混練および希釈した後、横型ビーズミル分散機によりビーズ径1mmのジルコニアビーズを用い、ビーズ充填率80体積%、ローター先端周速10m/秒で1パス滞留時間を2分間とし、12パスの分散処理に供した。得られた分散液に、潤滑剤(ステアリン酸およびステアリン酸ブチル)、ポリイソシアネートおよび200.0部のシクロヘキサノンを添加してディゾルバーで撹拌した。こうして得られた分散液を孔径1μmのフィルタを用いてろ過することにより、バックコート層形成用組成物を調製した。
厚み5.0μmの二軸延伸ポリエチレンナフタレート製支持体の表面上に、乾燥後の厚みが400nmになるように上記で調製した非磁性層形成用組成物を塗布および乾燥させて非磁性層を形成した後、非磁性層の表面上に乾燥後の厚みが70nmになるように上記で調製した磁性層形成用組成物を塗布して塗布層を形成した。この磁性層形成用組成物の塗布層が湿潤(未乾燥)状態にあるうちに、磁場強度0.3Tの磁場を塗布層の表面に対し垂直方向に印加する垂直配向処理を施し、乾燥させた。その後、この支持体の反対面に乾燥後の厚みが0.2μmになるように上記で調製したバックコート層形成用組成物を塗布し、乾燥させた。こうして磁気テープ原反を作製した。
作製された磁気テープ原反に対し、金属ロールのみから構成される7段のカレンダロールを用いて、カレンダ速度100m/min、線圧294kN/m、カレンダロールの表面温度100℃でカレンダ処理(表面平滑化処理)し、その後、雰囲気温度70℃の環境で36時間、加熱処理を施した。加熱処理後、磁気テープ原反を裁断機により1/2インチ幅にスリットし、スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレードが磁性層表面に押し当たるように取り付けたテープクリーニング装置で磁性層の表面のクリーニングを行い、磁気テープを得た。
強磁性粉末の種類、バックコート層形成用組成物に含まれる突起形成剤の種類、α−酸化鉄の量および/またはカーボンブラックの量を表1に示すように変更した点以外、実施例1と同様の方法により磁気テープを得た。比較例1では、突起形成剤液なしでバックコート層形成用組成物を調製した。
実施例または比較例の磁気テープの作製のためにバックコート層形成用組成物の調製に使用した突起形成剤は、以下の通りである。突起形成剤Aおよび突起形成剤Cは、粒子表面の表面平滑性が低い粒子である。突起形成剤Bの粒子形状は繭状の形状である。突起形成剤Dの粒子形状はいわゆる不定形である。突起形成剤Eの粒子形状は真球に近い形状である。
突起形成剤A:キャボット社製ATLAS(シリカとポリマーとの複合粒子)、平均粒子サイズ100nm
突起形成剤B:キャボット社製TGC6020N(シリカ粒子)、平均粒子サイズ140nm
突起形成剤C:日揮触媒化成社製Cataloid(シリカ粒子の水分散ゾル;バックコート層形成用組成物調製のための突起形成剤として、上記水分散ゾルを加熱して溶媒を除去して得られた乾固物を使用)、平均粒子サイズ120nm
突起形成剤D:旭カーボン社製旭#52(カーボンブラック)、平均粒子サイズ60nm
突起形成剤E:扶桑化学工業社製クォートロンPL−10L(シリカ粒子の水分散ゾル;バックコート層形成用組成物調製のための突起形成剤として、上記水分散ゾルを加熱して溶媒を除去して得られた乾固物を使用)、平均粒子サイズ130nm
表1中、「BaFe」は平均粒子サイズ(平均板径)21nmの六方晶バリウムフェライト粉末を示す。「SrFe1」および「SrFe2」は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を示し、「ε−酸化鉄」はε−酸化鉄粉末を示す。
以下に記載の各種強磁性粉末の活性化体積および異方性定数Kuは、各強磁性粉末について、振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて、先に記載の方法により求められた値である。
また、質量磁化σsは、振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて磁場強度15kOeで測定された値である。
表1に示す「SrFe1」は、以下の方法により作製された六方晶ストロンチウムフェライト粉末である。
SrCO3を1707g、H3BO3を687g、Fe2O3を1120g、Al(OH)3を45g、BaCO3を24g、CaCO3を13g、およびNd2O3を235g秤量し、ミキサーにて混合し原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、白金ルツボで溶融温度1390℃で溶融し、融液を撹拌しつつ白金ルツボの底に設けた出湯口を加熱し、融液を約6g/秒で棒状に出湯させた。出湯液を水冷双ローラーで圧延急冷して非晶質体を作製した。
作製した非晶質体280gを電気炉に仕込み、昇温速度3.5℃/分にて635℃(結晶化温度)まで昇温し、同温度で5時間保持して六方晶ストロンチウムフェライト粒子を析出(結晶化)させた。
次いで六方晶ストロンチウムフェライト粒子を含む上記で得られた結晶化物を乳鉢で粗粉砕し、ガラス瓶に粒径1mmのジルコニアビーズ1000gと濃度1%の酢酸水溶液を800mL加えてペイントシェーカーにて3時間分散処理を行った。その後、得られた分散液をビーズと分離させステンレスビーカーに入れた。分散液を液温100℃で3時間静置させてガラス成分の溶解処理を行った後、遠心分離器で沈澱させてデカンテーションを繰り返して洗浄し、炉内温度110℃の加熱炉内で6時間乾燥させて六方晶ストロンチウムフェライト粉末を得た。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末(表1中、「SrFe1」)の平均粒子サイズは18nm、活性化体積は902nm3、異方性定数Kuは2.2×105J/m3、質量磁化σsは49A・m2/kgであった。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末から試料粉末を12mg採取し、この試料粉末を先に例示した溶解条件によって部分溶解して得られたろ液の元素分析をICP分析装置によって行い、ネオジム原子の表層部含有率を求めた。
別途、上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末から試料粉末を12mg採取し、この試料粉末を先に例示した溶解条件によって全溶解して得られたろ液の元素分析をICP分析装置によって行い、ネオジム原子のバルク含有率を求めた。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末の鉄原子100原子%に対するネオジム原子の含有率(バルク含有率)は、2.9原子%であった。また、ネオジム原子の表層部含有率は8.0原子%であった。表層部含有率とバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は2.8であり、ネオジム原子が粒子の表層に偏在していることが確認された。
PANalytical X’Pert Pro回折計、PIXcel検出器
入射ビームおよび回折ビームのSollerスリット:0.017ラジアン
分散スリットの固定角:1/4度
マスク:10mm
散乱防止スリット:1/4度
測定モード:連続
1段階あたりの測定時間:3秒
測定速度:毎秒0.017度
測定ステップ:0.05度
表1に示す「SrFe2」は、以下の方法により作製された六方晶ストロンチウムフェライト粉末である。
SrCO3を1725g、H3BO3を666g、Fe2O3を1332g、Al(OH)3を52g、CaCO3を34g、BaCO3を141g秤量し、ミキサーにて混合し原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、白金ルツボで溶融温度1380℃で溶解し、融液を撹拌しつつ白金ルツボの底に設けた出湯口を加熱し、融液を約6g/秒で棒状に出湯させた。出湯液を水冷双ロールで急冷圧延して非晶質体を作製した。
得られた非晶質体280gを電気炉に仕込み、645℃(結晶化温度)まで昇温し、同温度で5時間保持し六方晶ストロンチウムフェライト粒子を析出(結晶化)させた。
次いで六方晶ストロンチウムフェライト粒子を含む上記で得られた結晶化物を乳鉢で粗粉砕し、ガラス瓶に粒径1mmのジルコニアビーズ1000gと濃度1%の酢酸水溶液を800mL加えてペイントシェーカーにて3時間分散処理を行った。その後、得られた分散液をビーズと分離させステンレスビーカーに入れた。分散液を液温100℃で3時間静置させてガラス成分の溶解処理を行った後、遠心分離器で沈澱させてデカンテーションを繰り返して洗浄し、炉内温度110℃の加熱炉内で6時間乾燥させて六方晶ストロンチウムフェライト粉末を得た。
得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末(表1中、「SrFe2」)の平均粒子サイズは19nm、活性化体積は1102nm3、異方性定数Kuは2.0×105J/m3、質量磁化σsは50A・m2/kgであった。
表1に示す「ε−酸化鉄」は、以下の方法により作製されたε−酸化鉄粉末である。
純水90gに、硝酸鉄(III)9水和物8.3g、硝酸ガリウム(III)8水和物1.3g、硝酸コバルト(II)6水和物190mg、硫酸チタン(IV)150mg、およびポリビニルピロリドン(PVP)1.5gを溶解させたものを、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、大気雰囲気中、雰囲気温度25℃の条件下で、濃度25%のアンモニア水溶液4.0gを添加し、雰囲気温度25℃の温度条件のまま2時間撹拌した。得られた溶液に、クエン酸1gを純水9gに溶解させて得たクエン酸水溶液を加え、1時間撹拌した。撹拌後に沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で乾燥させた。
乾燥させた粉末に純水800gを加えて再度粉末を水に分散させて分散液を得た。得られた分散液を液温50℃に昇温し、撹拌しながら濃度25%アンモニア水溶液を40g滴下した。50℃の温度を保ったまま1時間撹拌した後、テトラエトキシシラン(TEOS)14mLを滴下し、24時間撹拌した。得られた反応溶液に、硫酸アンモニウム50gを加え、沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で24時間乾燥させ、強磁性粉末の前駆体を得た。
得られた強磁性粉末の前駆体を、大気雰囲気下、炉内温度1000℃の加熱炉内に装填し、4時間の加熱処理を施した。
加熱処理した強磁性粉末の前駆体を、4mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に投入し、液温を70℃に維持して24時間撹拌することにより、加熱処理した強磁性粉末の前駆体から不純物であるケイ酸化合物を除去した。
その後、遠心分離処理により、ケイ酸化合物を除去した強磁性粉末を採集し、純水で洗浄を行い、強磁性粉末を得た。
得られた強磁性粉末の組成を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−OES;Inductively Coupled Plasma−Optical Emission Spectrometry)により確認したところ、Ga、CoおよびTi置換型ε−酸化鉄(ε−Ga0.28Co0.05Ti0.05Fe1.62O3)であった。また、先に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の作製方法1について記載した条件と同様の条件でX線回折分析を行い、X線回折パターンのピークから、得られた強磁性粉末が、α相およびγ相の結晶構造を含まない、ε相の単相の結晶構造(ε−酸化鉄型の結晶構造)を有することを確認した。
得られたε−酸化鉄粉末(表1中、「ε−酸化鉄」)の平均粒子サイズは12nm、活性化体積は746nm3、異方性定数Kuは1.2×105J/m3、質量磁化σsは16A・m2/kgであった。
(1)差分(S0.5−S13.5)
TSA(Tape Spacing Analyzer(Micro Physics社製))を用いて、以下の方法により、n−ヘキサン洗浄後のスペーシングS0.5およびS13.5を測定し、測定された値から差分(S0.5−S13.5)を算出した。
実施例および比較例の各磁気テープから長さ5cmの試料片を5つ切り出し、各試料片を先に記載した方法によりn−ヘキサン洗浄を行った後、以下の方法によりS0.5およびS13.5を求めた。
磁気テープ(即ち上記試料片)のバックコート層表面上に、TSAに備えられたガラス板(Thorlabs,Inc.社製ガラス板(型番:WG10530))を配置した状態で、押圧部材としてTSAに備えられているウレタン製の半球を用いて、この半球を磁気テープの磁性層表面に0.5atmの圧力で押しつけた。この状態で、TSAに備えられているストロボスコープから白色光を、ガラス板を通して磁気テープのバックコート層表面の一定領域(150000〜200000μm2)に照射し、得られる反射光を、干渉フィルタ(波長633nmの光が選択的に透過するフィルタ)を通してCCD(Charge−Coupled Device)で受光することで、この領域の凹凸で生じた干渉縞画像を得た。
この画像を300000ポイントに分割して各ポイントのガラス板の磁気テープ側の表面から磁気テープのバックコート層表面までの距離(スペーシング)を求めこれをヒストグラムとし、ヒストグラムの最頻値をスペーシングとして求めた。
同じ試料片を更に押圧し、13.5atmの押圧下で上記と同じ方法によりスペーシングを求めた。
5つの試料片についてn−ヘキサン洗浄後に0.5atmの圧力下で求められたスペーシングの算術平均をスペーシングS0.5とし、5つの試料片についてn−ヘキサン洗浄後に13.5atmの圧力下で求められたスペーシングの算術平均をスペーシングS13.5とした。
実施例および比較例の各磁気テープを、単リール型の磁気テープカートリッジに収容した状態で、内部が温度50℃相対湿度80%に保たれたサーモボックスに24時間保管した。その後、磁気テープカートリッジをサーモボックスから取出し(外気は温度23℃相対湿度50%)、1分以内に内部が温度10℃相対湿度85%に保たれたサーモルームに入れた。その後、30分以内にサーモルームにおいて、磁気ヘッドを固定した1/2インチリールテスターを用いて以下の方法により記録および再生を行った。
磁気ヘッドと磁気テープとの相対速度を5.5m/secとし、記録にはMIG(Metal−In−Gap)ヘッド(ギャップ長0.15μm、トラック幅1.0μm)を使用し、記録電流は各磁気テープの最適記録電流に設定した。再生には素子厚み15nm、シールド間隔0.1μm、リード幅0.5μmのGMR(Giant−Magnetoresistive)ヘッドを使用した。線記録密度300kfciの信号を記録し、再生信号をシバソク社製のスペクトラムアナライザーで測定した。信号は、磁気テープの走行開始後に信号が十分に安定した部分を使用した。単位kfciとは、線記録密度の単位(SI単位系に換算不可)である。
以上の条件で、1パスあたり1000mで再生を3000パス繰り返した。1パス目のキャリア信号の出力値と3000パス目のキャリア信号の出力値をそれぞれ求め、差分「(3000パス目の出力値)−(1パス目の出力値)」を、再生出力低下分として表1に示した。
Claims (10)
- 非磁性支持体の一方の表面側に強磁性粉末を含む磁性層を有し、他方の表面側に非磁性粉末を含むバックコート層を有する磁気記録媒体であって、
前記バックコート層の表面においてn−ヘキサン洗浄後に光学干渉法により0.5atmの押圧下で測定されるスペーシングS0.5と、前記バックコート層の表面においてn−ヘキサン洗浄後に光学干渉法により13.5atmの押圧下で測定されるスペーシングS13.5との差分、S0.5−S13.5、が3nm以下である磁気記録媒体。 - 前記差分は、1nm以上3nm以下である、請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 前記S0.5は、20nm以上90nm以下である、請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
- 前記S13.5は、20nm以上90nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記バックコート層は、無機酸化物系粒子を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記無機酸化物系粒子は、無機酸化物とポリマーとの複合粒子である、請求項5に記載の磁気記録媒体。
- 前記バックコート層の厚みは、0.5μm以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末を含む非磁性層を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 磁気テープである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の磁気記録媒体と、
磁気ヘッドと、
を含む磁気記録再生装置。
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