JP2021042328A - 生分解性ポリマー複合材料およびその製造方法 - Google Patents

生分解性ポリマー複合材料およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高いヤング率および高い破断伸び率の両立が図れる生分解性ポリマー複合材料を提供する。【解決手段】ポリ乳酸系重合体と、表面アルキル化ナノダイヤモンドと、を含み、前記表面アルキル化ナノダイヤモンドの含有量が、前記ポリ乳酸系重合体および前記表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計量に対して、0.01重量%以上1.0重量%以下であり、結晶化度が49%以上である、生分解性ポリマー複合材料。【選択図】なし

Description

本発明は、生分解性ポリマー複合材料およびその製造方法に関する。
ステントは、血管等の管腔が狭窄もしくは閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するために、狭窄部位または閉塞部位を拡張し、内腔を確保するために使用される医療用具である。
非生分解性の金属等により構成されるステントは、生体内に留置した後に自然に分解することがないため、除去作業を行わない限り生体内に留置され続ける。このため、ステントを使用した治療に際して、長期的な留置に対する安全性や生体に与える負担などが懸念される。これに対して、生分解性材料で構成されるステント(以下、生分解性ステントとも称する)は、所定の留置期間が経過した後に生体内で自然に分解して吸収されるように構成されているため、長期的な留置における安全性や生体への負荷などの点において、非生分解性のステントよりも有益である。
近年、かような生分解性ステントの製造に用いられる材料として、ポリ乳酸等の生分解性ポリマーが検討されている。例えば、特許文献1には、第1のポリマーを備えるストランドを、所定の性質を有する所定量の第2のポリマーで被覆した植え込み型医療デバイスにかかる発明が記載されている。
なお、本願と関連する他の先行技術文献としては特許文献2、非特許文献1がある。
特表2012−527321号公報 米国特許第9186190号明細書
Biomaterials,Volume33,Issue20,Pages5067−5075,Research article Abstract only Mechanical properties and biomineralization of multifunctional nanodiamond−PLLA composites for bone tissue engineering
ステントを構成する材料としてニッケルチタンなどの超弾性合金を用いた金属ステントと比較して、生分解性ステントは、ラジアルフォース(径方向への拡張保持力)の点で劣っている。ラジアルフォースは、治療の期間にわたって血管壁を所定の径に維持する点で非常に重要な物性であり、この点において生分解性ポリマーを用いた生分解性ステントには改良の余地があった。十分なラジアルフォースを確保するためには、生分解性ステントを構成する材料が高いヤング率を有していることが求められる。
また、ステントは拡張状態からクリンプ状態に縮径するときに、ステントストラットの折り返し部(ジグザグの頂点)付近で引張方向と圧縮方向にそれぞれ10%程度の局所的な応力がかかり、ひずみが発生する。したがって、発生したひずみに対する耐性も必要となる。ひずみ耐性を確保するためには、生分解性ステントを構成する材料が一定以上の破断伸び率を確保されていることが求められる。
したがって、本発明は、高いヤング率を有する生分解性ポリマー複合材料を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、一定以上の破断伸び率が確保されている生分解性ポリマー複合材料を提供することを目的とする。
本発明は、ポリ乳酸系重合体と、表面アルキル化ナノダイヤモンドと、を含み、表面アルキル化ナノダイヤモンドの含有量が、ポリ乳酸系重合体および前記表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計量に対して、0.01重量%以上1.0重量%以下であり、結晶化度が49%以上である、生分解性ポリマー複合材料である。
本発明によれば、ステントに適用した際に、高いラジアルフォースを有し、また、十分なひずみ耐性を有することができる生分解性ポリマー複合材料を提供することが可能となる。
一実施形態に係るステントを示す図であって、(A)は、ステントの展開図、(B)は、(A)の部分拡大図である。 補外結晶化開始温度および補外融解開始温度を説明するためのポリ−L乳酸のDSC曲線である。 実施例および比較例の試料の断面を偏光顕微鏡を用いて観察した図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
本発明の第一実施形態は、ポリ乳酸系重合体と、表面アルキル化ナノダイヤモンドと、を含み、表面アルキル化ナノダイヤモンドの含有量が、ポリ乳酸系重合体および表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計量に対して、0.01重量%以上1.0重量%以下であり、結晶化度が49%以上である、生分解性ポリマー複合材料である。
生分解性ポリマー複合材料としては、特許文献2および非特許文献1の技術が知られている。特許文献2では、ポリ乳酸にオクタデシルアミン修飾ナノダイヤモンドを添加することで、圧縮変形に伴う硬度や初期弾性率が向上可能であるとしている。特許文献2では、骨ネジへの応用が想定されている。しかしながら、特許文献2の発明者らによるその後の研究である非特許文献1によれば、PLLAへのオクタデシルアミン修飾ナノダイヤモンドの添加は圧縮変形と引張変形では異なる挙動を示し、引張変形では逆にヤング率が低下してしまうことが報告されている。
一方、本発明者が検討した結果、表面アルキル化ナノダイヤモンドを少量(0.01〜1.0wt%)添加し、結晶化温度を超える温度(160℃)でアニール処理することで引張変形に伴う初期弾性率(ヤング率)が向上し、さらに破断伸び率も確保できることを見出した。
このような初期弾性率(ヤング率)の向上は、ステントに適用した場合にラジアルフォースが向上することを意味し、また、破断伸び率の確保はひずみ耐性が十分であることを意味する。ゆえに、本実施形態の生分解性ポリマー複合材料によれば、ステントに適用した際に、十分なラジアルフォースを有し、また、十分なひずみ耐性を有することができる。
本願構成により、初期弾性率(ヤング率)が向上し、また、破断伸び率が確保される詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように考えられる。なお、以下の記載は本願の技術的範囲を何ら制限するものではない。
本実施形態の生分解性ポリマー複合材料は結晶化度が49%以上である。これはポリ乳酸系重合体の結晶化度が高いことを意味する。このような高い結晶化度を有する生分解性ポリマー複合材料によって高いヤング率が実現されるものと考えられる。
ポリ乳酸系重合体に表面アルキル化ナノダイヤモンドを0.01重量%以上添加することで、ナノダイヤモンドが造核剤として作用し、ポリ乳酸系重合体の結晶化が進行するものと考えられる。このような結晶化の進行により、ヤング率が向上するものと考えられる。一方、表面アルキル化ナノダイヤモンドの添加量が1.0重量%を超えると、ナノダイヤモンドがポリマー鎖間で立体障害として働くため結晶化度は低下するものと考えられる。
また、表面アルキル化ナノダイヤモンドを所定量添加するだけでは、所望の結晶化度を得ることはできず(後述の比較例)、後述の製造方法の欄に記載するように、例えば、ポリ乳酸系重合体の結晶化温度を超える温度でアニール処理を行うことでこのような結晶化度を有する複合材料を得ることができる。
一方、結晶化が進行すると、一般的には靭性は低下する。しかしながら、表面アルキル化ナノダイヤモンドを0.01重量%以上添加することにより、ポリ乳酸系重合体の結晶サイズが微細化し、靭性(破断伸び率)が確保されるものと考えられる。ただし、表面アルキル化ナノダイヤモンドの添加量が1.0重量%を超えると、ポリ乳酸系重合体の結晶サイズが微細化せずに、表面アルキル化ナノダイヤモンドがクラック発生の起点として作用するため、靭性(破断伸び率)が低下すると考えられる。
このような微細な結晶の実現は、ナノダイヤモンドの表面に疎水性のアルキル鎖が修飾されていることに起因すると考えられる。ナノダイヤモンドはその優れた比表面積と機械的物性から次世代のナノフィラー材料として注目されている。しかしながら、ナノダイヤモンドは表面に電位を持っている(親水性)ため、溶媒やポリマー中への均一分散が難しく、しばしば凝集体を形成してしまう。一方、表面アルキル化ナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンド表面に疎水性のアルキル鎖が修飾されているために溶媒やポリマー中へ均一に分散することが可能となり、ゆえに、ポリ乳酸系重合体の微細な結晶を形成することができると考えられる。
本実施形態の生分解性ポリマー複合材料は、結晶化度が49%以上である。結晶化度が49%以上であることで、高いヤング率と、高い破断伸び率との両立が図れる。生分解性ポリマー複合材料の結晶化度は50%以上であることが好ましく、51%以上であることがより好ましく、53%以上であることが最も好ましい。結晶化度は高いほど、好ましいが、靭性や製造限界などを考慮すると通常60%以下であり、好ましくは55%以下である。
結晶化度は、後述の実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
本明細書において、「生分解性ポリマー複合材料」とは、主要な材料である生分解性ポリマーとその他の材料の複合材料であって、「生分解性ポリマー」とは生体環境下で徐々に分解し、最終的には水と二酸化炭素まで分解されるポリマーを意味する。
生分解性ポリマー複合材料のヤング率は、2,300MPa以上であることが好ましい。ヤング率がこのような範囲であることで、ステントに適用した際にラジアルフォースが高いものとなり、機械的強度が確保される。生分解性ポリマー複合材料のヤング率は、2,400MPa以上であることが好ましく、2,500MPa以上であることがより好ましい。生分解性ポリマー複合材料のヤング率は高ければ高いほど好ましいため、その上限は限定されないが、通常4,000MPa以下となる。生分解性ポリマー複合材料の高いヤング率は、例えば、後述の製造方法のようにアニール処理を行うことによって達成される。
生分解性ポリマー複合材料の破断伸び率は、10%以上であることが好ましい。生分解性ポリマー複合材料の破断伸び率が10%以上であることで、ステントに適用した際にひずみ耐性に優れたものとなる。生分解性ポリマー複合材料の破断伸び率は高ければ高いほど好ましいため、その上限は限定されないが、通常20%以下となる。生分解性ポリマー複合材料の破断伸び率は、表面アルキル化ナノダイヤモンドの添加量、種類などによって制御することができる。生分解性ポリマー複合材料の破断伸び率は、後述の実施例に記載の方法により測定された値を用いる。
以下、本実施形態の生分解性ポリマー複合材料の構成について説明する。
(表面アルキル化ナノダイヤモンド)
表面アルキル化ナノダイヤモンドとは、ナノダイヤモンドの表面にアルキル基が導入されているものを指す。
本明細書で用いられるナノダイヤモンドは、通常ナノダイヤモンド粒子(粉末)である。ナノダイヤモンド粒子は、例えば、爆轟法や、高温高圧法で得ることができる。なかでも、より分散性に優れる点で、爆轟法で得られたナノダイヤモンド粒子を用いることが好ましい。爆轟法は、空冷式爆轟法と水冷式爆轟法とが知られているが、いずれの方法で得られたものであってもよい。爆轟法により得られたナノダイヤモンド粒子は、金属酸化物やグラファイト等を含む場合が多い。ナノダイヤモンド粒子は、酸処理や酸化処理により、金属酸化物やグラファイトが除去されたものを用いることもできる。酸処理は、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸及び王水等の強酸を用いて水溶媒中で処理する方法等により行うことができる。酸化処理は、クロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸等の酸化剤を用いる方法により行うことができる。
ナノダイヤモンド粒子は、通常1μm未満のメディアン径(粒径D50)を有するダイヤモンド粒子のことをいう。ナノダイヤモンド粒子のメディアン径(粒径D50)は、10nm〜500nmであることがより好ましく、20nm〜250nmであることが特に好ましい。メディアン径(粒径D50)は、動的光散乱法により測定することができる。
表面アルキル化ナノダイヤモンドを構成するアルキル基の炭素数は8〜24であることが好ましい。アルキル基の炭素数が8以上であることで、ナノダイヤモンド表面を疎水化する効果が高まり、ポリ乳酸系重合体および溶媒への分散性が向上する。一方、アルキル基の炭素数が24以下であることで、粒径が適度な大きさとなり、同一重量添加した際に含まれる粒子数が適度となり、ナノダイヤモンドの結晶性向上および微細結晶の形成という効果が得られやすい。炭素数は8〜24のアルキル基としては、特に限定されないが、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、2−ヘキシルデシル基、2−デシルテトラデシル基などが挙げられる。
表面アルキル化ナノダイヤモンドは市販品を用いてもよい。市販品としては、Adamas Nanotechnologies社のDodecane Functionalized Nanodiamond、Octadecane Functionalized Nanodiamondなどが挙げられる。
表面アルキル化ナノダイヤモンドの複合材料中の含有量は、ポリ乳酸系重合体および表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計量に対して、0.01重量%以上1.0重量%以下である。表面アルキル化ナノダイヤモンドの含有量が0.01重量%未満であると、複合材料のヤング率が低下し、また破断伸び率も低下する。表面アルキル化ナノダイヤモンドの含有量が1.0重量%を超えると、破断伸び率が著しく低下する。本発明の効果が一層奏されることから、表面アルキル化ナノダイヤモンドの含有量は、0.05〜0.5重量%であることが好ましい。
(ポリ乳酸系重合体)
本明細書において「ポリ乳酸系重合体」とは、そのポリマー主鎖に乳酸単位を50モル%以上含む重合体または共重合体である。
ポリ乳酸系重合体としては、例えば、ポリ乳酸、乳酸−カプロラクトン共重合体、乳酸−バレロラクトン共重合体、乳酸−グリコール酸共重合体、乳酸−ジオキサノン共重合体、乳酸−グリコール酸−リンゴ酸共重合体、および乳酸−トリメチレンカーボネート共重合体等が例示できる。拡張保持力などの観点から、ポリ乳酸系重合体はポリ乳酸であることが好ましく、ポリL−乳酸(PLLA)であることがより好ましい。
ポリ乳酸系重合体の重量平均分子量は、機械的強度の向上の観点から、100,000以上であることが好ましく、150,000以上であることがより好ましく、200,000以上であることがさらにより好ましい。また、生分解性の観点から、1,000,000以下であることが好ましく、800,000以下であることがより好ましい。なお、本明細書において重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質とするゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)により下記測定条件にて測定した値である。
(分子量の測定条件)
装置:セミミクロGPCシステムLC−20AD(株式会社島津製作所製)
検出器:Shodex(登録商標) RI−104(昭和電工株式会社製)
カラム:Shodex(登録商標) GPC LF−404(昭和電工株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相溶媒:CHCl
流速:0.15mL/min
注入量:20μL
試料の調製:測定するサンプル6mgに、移動相溶媒を2mL加えて、溶解させた後、0.45μmのPTFEメンブレンフィルターでろ過する。
ポリ乳酸系重合体は、合成によって製造されてもまたは市販品を使用してもいずれでもよい。合成法は特に制限されず、公知の方法と同様にしてまたは適宜修飾して適用できる。例えば、ポリ乳酸、乳酸−バレロラクトン共重合体および乳酸−カプロラクトン共重合体は、乳酸の環状二量体であるラクチド、ならびにδ−バレロラクトンおよびε−カプロラクトンから必要とする構造のものを選んで、必要に応じて用いられる触媒の存在下で、開環重合することにより得ることができる。ラクチドにはL−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸とが環状二量化したメソ−ラクチド及びD−ラクチドとL−ラクチドとのラセミ混合物であるDL−ラクチドがある。本発明ではいずれのラクチドも用いることができる。また、上記の単量体を複数組み合わせて合成することもできる。本明細書において「乳酸単位」とは、単量体である乳酸またはラクチドに由来する構成単位をいう。また、他の構成単位も同様であり、例えば、「カプロラクトン単位」は単量体であるε−カプロラクトンに由来する構成単位をいう。
ポリ乳酸系重合体の生分解性ポリマー複合材料中の含有量は、90重量%以上であることが好ましく、95重量%以上であることが好ましい。
生分解性ポリマー複合材料は、表面アルキル化ナノダイヤモンドおよびポリ乳酸系重合体以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の添加剤を含んでいてもよい。
[生体内留置物]
本発明の第二実施形態は、第一実施形態の生分解性ポリマー複合材料で形成されてなる部分を含む、生体内留置物である。
生体内留置物としては、生体内に留置するものをいい特に制限されることはなく、例えば、生体内に挿入される中空体(バルーンなど)、中空体の構造を有するステント、人工血管、止血デバイス、外科用縫合糸、骨ピン、美容整形用のリフトアップスレッドなどが挙げられる。
以下に、本発明に係る生体内留置物の一例として、ステントを例示し詳細に説明するが、当然のことながら本発明に係る生体内留置物はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明に係る生体内留置物の一例のステントの一態様を示す側面図である。なお、図面の寸法の比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。なお、明細書の説明においては、ステントの長手方向(図1(A)中の左右方向)を軸方向と称する。
図1に示すように、ステント(ステント基体)100は、ステント100の軸方向D1まわりで折り返すように曲がりつつ線状に形成されたストラット110、およびストラット110同士を接続するリンク部120を含む。また、ストラット110は軸方向D1に沿って複数設けられている。
ストラット110は、軸方向D1まわりで無端の環状形状を形成しており、軸方向D1に並んだ環状の各ストラット110が、リンク部120によって接続されることによって、ストラット110とリンク部120により囲まれた空間が形成され、ステント100の隙間の空いた円筒形状の外周を形作っている。ストラット110は、そのような無端の環状形状に限定されず、軸方向D1まわりに螺旋状に形成されていてもよい。ストラット110は、線状に延びた線状部111と、線状部111に接続し折り返すように曲がった折り返し部112と、を含み、波状形状をなしている。
リンク部120は、折り返し部112に設けられており、軸方向D1に隣り合うストラット110同士を接続する。一部の折り返し部112にリンク部120が設けられている形態であっても全ての折り返し部112にリンク部120が設けられている形態であってもよい。また、本実施形態において、リンク部120は、軸方向D1と略平行に延びてストラット110同士を接続するが、これに限定されず、軸方向D1に対し斜めであってもよい。
なお、縮径状態において、ストラット110の折り返し部112の外湾側が引き延ばされ、引張方向のひずみが発生し、ストラット110の折り返し部112の内湾側は圧縮され、圧縮方向のひずみが発生する。
ストラット110およびリンク部120は、生分解性ポリマー複合材料によって一体に形成されている。生分解性ポリマー複合材料は、例えば、加水分解により生体内で分解される。
ステントには、ステントおよびステントグラフトが含まれる。
ステントの厚さは、従来の一般的なものが採用できる。例えば、ステントの厚さは、50〜500μm程度であり、支持性と分解時間との関係から、60〜300μm程度が好ましく、70〜200μm程度がより好ましい。本実施形態に係るステント基体は、優れた力学特性(例えば、拡張保持力)を有するため、ステントを肉薄にできる。
ステントの大きさも、その目的や機能に合わせて適宜調節される。例えば、拡張後におけるステントの外径(直径)は、1〜40mm程度が好ましく、1.5〜10mm程度がより好ましく、2〜5mm程度が特に好ましい。
また、ステントの長さも特に制限されず、処置すべき疾患によって適宜選択が可能であり、例えば5〜300mm程度が好ましく、10〜50mm程度がより好ましい。
ステントには、生分解性ポリマー複合材料以外にも、本発明の目的効果が損なわれない範囲においてその他の成分が含まれてもよい。その他の成分としては、例えば、ステントを病変部に留置した際に起こりうる脈管系の狭窄、閉塞を抑制する薬剤等が例示できる。具体的には、抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症薬、インテグリン阻害薬、抗アレルギー剤、抗酸化剤、GPIIbIIIa拮抗薬、レチノイド、脂質改善薬、抗血小板薬、および抗炎症薬などが挙げられる。これらの薬剤は、病変部組織の細胞の挙動を制御して、病変部を治療することができるという利点がある。上記のようなその他の成分は、生分解性ポリマー複合材料とともにステント基体を構成してもよいし、生分解性ポリマー複合材料を構成するステント基体上にコート層として存在していてもよい。
抗癌剤としては、特に制限されないが、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンデシン、イリノテカン、ピラルビシン等が好ましい。
免疫抑制剤としては、特に制限されないが、例えば、シロリムス、エベロリムス、ピメクロリムス、ゾタロリムス等のシロリムス誘導体、バイオリムス(例えば、バイオリムスA9(登録商標))、タクロリムス、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロフォスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、グスペリムス等が好ましい。
抗生物質としては、特に制限されないが、例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン、ドキソルビシン、アクチノマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、アクラルビシン、エピルビシン、ジノスタチンスチマラマー等が好ましい。
抗血栓薬としては、特に制限されないが、例えば、アスピリン、チクロピジン、アルガトロバン等が好ましい。
HMG−CoA還元酵素阻害剤としては、特に制限されないが、例えば、セリバスタチン、セリバスタチンナトリウム、アトルバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチン、フルバスタチンナトリウム、シンバスタチン、ロバスタチン等が好ましい。
ACE阻害剤としては、特に制限されないが、例えば、キナプリル、トランドラプリル、テモカプリル、デラプリル、マレイン酸エナラプリル、カプトプリル等が好ましい。
カルシウム拮抗剤としては、特に制限されないが、例えば、ヒフェジピン、ニルバジピン、ベニジピン、ニソルジピン等が好ましい。
抗高脂血症剤としては、特に制限されないが、例えば、プロブコールが好ましい。
インテグリン阻害薬としては、特に制限されないが、例えば、AJM300が好ましい。
抗アレルギー剤としては、特に制限されないが、例えば、トラニラストが好ましい。
抗酸化剤としては、特に制限されないが、例えば、α−トコフェロール、カテキン、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールが好ましい。
GPIIbIIIa拮抗薬としては、特に制限されないが、例えば、アブシキシマブが好ましい。
レチノイドとしては、特に制限されないが、例えば、オールトランスレチノイン酸が好ましい。
脂質改善薬としては、特に制限されないが、例えば、エイコサペンタエン酸が好ましい。
抗血小板薬としては、特に制限されないが、例えば、チクロピジン、シロスタゾール、クロピドグレルが好ましい。
抗炎症剤としては、特に制限されないが、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン等のステロイドが好ましい。
ステントが生分解性ポリマー複合材料以外に、その他の成分を含む場合、ステント全体に対し、生分解性ポリマー複合材料は、合計で、例えば80重量%以上、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上(上限100重量%)含み、残りがその他の成分となる。
ステントは、上記のステント基体のほか、本発明の目的効果を損なわない範囲において、ステント基体上にコート層を設けてもよい。コート層の構成材料は生分解性材料が好ましく、その生分解性材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ポリペプチド、多糖、タンパク質、セルロースからなる群から選択される重合体が例示でき、より具体的には、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、乳酸−カプロラクトン共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリリンゴ酸、ポリ−α−アミノ酸、コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コンドロイチン硫酸、およびヒアルロン酸、からなる群から選ばれた少なくとも1種またはブレンドであり、生体内で分解することを考慮すると医学的に安全なものが好ましい。ステント外表面(ステント基体外表面)をコーティングする生分解材料の分子量、精製度、結晶化度を調節して分解期間を長くすることができる。例えば、上記の生分解性材料の精製度を高めて未反応のモノマーや低分子量各分を排除したり、結晶化度を高めてステント骨格内部に侵入する水分量を抑制したりすることで、加水分解時間を長くすることができる。また、上記のコート層形成生分解性材料と、上述した薬剤の1種または2種以上とを、任意の割合で、例えば1:99〜99:1(w/w)、好ましくは80:20〜95:5(w/w)の割合で含有させ、コート層を薬剤コーティング層とすることもできる。コート層の形成方法は、特に制限されず、通常のコーティング方法が同様にしてまたは適宜修飾して適用できる。具体的には、生分解性材料、ならびに必要に応じて上記薬剤および適当な溶剤を混合して混合物を調製し、当該混合物をステント基体に塗布する方法が適用できる。
[製造方法]
本発明の第三実施形態は、ポリ乳酸系重合体と、ポリ乳酸系重合体および表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計に対して0.01重量%以上1.0重量%以下である表面アルキル化ナノダイヤモンドと、溶媒と、を含む混合物を準備し、混合物を乾燥して乾燥物を得、乾燥物をポリ乳酸系重合体の補外結晶化開始温度以上かつ補外融解開始温度未満の加熱温度で加熱して、結晶化度が49%以上である生分解性ポリマー複合材料を得る、生分解性ポリマー複合材料の製造方法である。
以下、各工程について述べる。
1.ポリ乳酸系重合体と、ポリ乳酸系重合体および表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計に対して0.01重量%以上1.0重量%以下である表面アルキル化ナノダイヤモンドと、溶媒と、を含む混合物を準備する工程
3者を混合する順序は特に限定されるものではなく、3者を一括混合する;ポリ乳酸系重合体を溶媒に溶解(分散)させた溶液(分散液)と、表面アルキル化ナノダイヤモンドを溶媒に分散させた分散液と、を混合する;などの方法があるが、ポリ乳酸系重合体を溶媒に溶解(分散)させた溶液(分散液)と、表面アルキル化ナノダイヤモンドを溶媒に分散させた分散液と、を混合することが好ましい。
用いられる溶媒としては、例えば、クロロホルム、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールなどが挙げられる。
ポリ乳酸系重合体を溶媒に溶解(分散)させた溶液(分散液)と、表面アルキル化ナノダイヤモンドを溶媒に分散させた分散液と、の混合時間は、表面アルキル化ナノダイヤモンドの分散性を考慮して適宜設定されるが、6〜72時間であることが好ましい。
2.混合物を乾燥して乾燥物を得、乾燥物をポリ乳酸系重合体の補外結晶化開始温度以上かつ補外融解開始温度未満の加熱温度で加熱して、結晶化度が49%以上である生分解性ポリマー複合材料を得る工程
このような加熱処理(アニール処理)を行うことで、ポリ乳酸系重合体の結晶化が進行し、ヤング率が向上する。
補外結晶化開始温度よりも高い温度とは、具体的には、補外結晶化開始温度よりも10℃以上高いことが好ましく、より好ましく20℃以上高い温度である。
補外融解開始温度未満とは、具体的には、補外融解開始温度よりも5℃以上低いことが好ましく、より好ましくは8℃以上低い温度である。
なお、ポリ乳酸系重合体の補外結晶化開始温度および補外融解開始温度は以下のようにして測定した値を算出する。
補外結晶化開始温度の測定にあたり、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製Diamond DSC)により、試料約10mgを、−20℃から200℃まで、昇温速度10℃/分、窒素ガス流量20ml/分の条件にて昇温(1回目)し、200℃で10分間保持した後、降温速度−50℃/分で−20℃まで降温し、−20℃で10分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温(2回目)し、200℃で10分間保持し、2回目に200℃まで昇温する際のDSC曲線を用いる。補外結晶化開始温度は、結晶化ピーク温度の開始点を意味し、低温(80〜90℃)側のベースラインを高温側に延長した直線と、熱エネルギーの入力の差が最大となる結晶化ピークの低温側の曲線に、勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度とする。また、補外融解開始温度は、融解ピーク温度の開始点を意味し、低温(150〜160℃)側のベースラインを高温側に延長した直線と、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークの低温側の曲線に、勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度とする。図2に参考として補外結晶化開始温度および補外融解開始温度を説明するためのポリ−L乳酸のDSC曲線を載せる。
加熱処理の時間は、結晶化が進行するように適宜設定されるが、1〜720分であることが好ましく、60〜180分であることがより好ましい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「重量部」あるいは「重量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
(実施例1)
ポリL−乳酸(株式会社ビーエムジー製、BioDegmer(登録商標)PLLA、重量平均分子量510,000、補外結晶化開始温度(104℃)、補外融解開始温度(169℃)、以下PLLAとする)1gを20mlのクロロホルムに混合し、ポリL−乳酸/クロロホルム溶液を得た。
また、別の容器に所定量の表面アルキル化ナノダイヤモンド(Adamas Nanotechnologies社Dodecane Functionalized Nanodiamond、アルキル基の炭素数12、粒径60−80nm)を10mlのクロロホルムに混合し、30分間超音波処理を施すことでアルキル化ナノダイヤモンド/クロロホルム分散液を得た。
このようにして得られたPLLA/クロロホルム溶液と表面アルキル化ナノダイヤモンド/クロロホルム分散液を、表面アルキル化ナノダイヤモンドの含有量がPLLAおよび表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計量に対して0.01重量%となるように混合し、2日間連続撹拌することで得られたポリマー溶液をφ100mmのPFAシャーレに気泡が混じらないように流し込み、室温で風乾させた後、真空オーブンにて40℃で4日間減圧乾燥させた。
その後、形成されたフィルム(厚さ約0.1mm)をPFAシャーレからはがし、160℃で2時間のアニール処理を行い、その後室温まで自然冷却して、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(実施例2)
表面アルキル化ナノダイヤモンドの含有量を、PLLAおよび表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計量に対して0.1重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(実施例3)
表面アルキル化ナノダイヤモンドの含有量を、PLLAおよび表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計量に対して1.0重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(実施例4)
実施例2で用いた表面アルキル化ナノダイヤモンド(Adamas Nanotechnologies社Dodecane Functionalized Nanodiamond、アルキル基の炭素数18、粒径60−80nm)の代わりに、表面アルキル化ナノダイヤモンド(Adamas Nanotechnologies社Octadecane Functionalized Nanodiamond、粒径60−80nm)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例1)
表面アルキル化ナノダイヤモンドを添加せず、160℃で2時間のアニール処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例2)
表面アルキル化ナノダイヤモンドを添加せず、160℃で2時間のアニール処理の代わりに120℃で2時間のアニール処理を行ったこと以外は、比較例1と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例3)
表面アルキル化ナノダイヤモンドを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例4)
160℃で2時間のアニール処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例5)
160℃で2時間のアニール処理の代わりに120℃で2時間のアニール処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例6)
160℃で2時間のアニール処理を行わなかったこと以外は、実施例2と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例7)
160℃で2時間のアニール処理の代わりに120℃で2時間のアニール処理を行ったこと以外は、実施例2と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例8)
160℃で2時間のアニール処理を行わなかったこと以外は、実施例3と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例9)
160℃で2時間のアニール処理の代わりに120℃で2時間のアニール処理を行ったこと以外は、実施例3と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例10)
表面アルキル化ナノダイヤモンドの含有量をPLLAおよび表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計量に対して10.0重量%とし、160℃で2時間のアニール処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例11)
表面アルキル化ナノダイヤモンドの含有量をPLLAおよび表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計量に対して10.0重量%とし、160℃で2時間のアニール処理の代わりに120℃で2時間のアニール処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例12)
表面アルキル化ナノダイヤモンドの含有量をPLLAおよび表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計量に対して10.0重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例13)
160℃で2時間のアニール処理を行わなかったこと以外は、実施例4と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
(比較例14)
160℃で2時間のアニール処理の代わりに120℃で2時間のアニール処理を行ったこと以外は、実施例4と同様にして、生分解性ポリマー複合材料を得た。
[評価]
<結晶化度>
JIS−K7122に準じて、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製Diamond DSC)により、試料約10mgを、20℃から200℃まで、昇温速度10℃/分、窒素ガス流量20ml/分の条件にて昇温した。これにより描かれたDSC曲線における昇温時の結晶化発熱ピーク面積から結晶化熱量(ΔHc)[J/g]を求め、結晶融解吸熱ピーク面積から結晶融解熱量(ΔHm)[J/g]を求め、結晶化度を、下記の式より算出した。ここで、100%結晶化したポリ乳酸の結晶融解熱量(ΔHf)を93.7J/gとして算出した。
結晶化度=(ΔHm−ΔHc)×100/ΔHf[%]
結果を下記表1に示す。
<ヤング率>
ISO 527−2に示す5B型ダンベル試験片を抜き型により作製した後、恒温槽付き引っ張り試験機(株式会社島津製作所製 オートグラフAG−1kNIS)を使用して37℃雰囲気下においてチャック間距離20mm、試験速度1mm/minにて引張試験を実施し、応力−ひずみ曲線の弾性変形領域内における初期の傾きからヤング率を求めた。
結果を下記表1に示す。結果において、2300MPa未満を×、2300MPa以上2500MPa以下を〇、2500MPa超えを◎とした。
Figure 2021042328
Figure 2021042328
<破断伸び率>
ISO 527−2に示す5B型ダンベル試験片を抜き型により作製した後、恒温槽付き引っ張り試験機(株式会社島津製作所製 オートグラフAG−1kNIS)を使用して37℃雰囲気下においてチャック間距離20mm、試験速度10mm/minで引張試験を実施し、サンプルが破断した時点におけるひずみ量から破断伸び率を求めた。
なお、サンプルをステント形状に加工して縮径させた場合は、折り返し部の頂点付近では外湾側が引き延ばされる、すなわち、引張方向のひずみとなり、内湾側は圧縮される、すなわち、圧縮方向のひずみとなる。ここでは、引張方向ひずみを与えた時の破断の有無からステントとしての耐ひずみ特性を評価した。なお、自己拡張型ステントとしてデザインしたものでは、縮径時に外湾側での引張ひずみや、内湾側での圧縮ひずみは概ね10%になるため、耐ひずみ特性として、10%で破断が発生するものは、縮径操作においてステントが破断する可能性がある。
結果を表2に示す。ここで、破断伸び率が10%以下を×、破断伸び率が10%を超えるものを〇とした。
Figure 2021042328
<断面結晶観察>
ミクロトーム(Leica製 RM2255)を用いて、ポリマーフィルム試料を厚さ5μmの切片に切り出し、得られた切片をピンセットでスライドガラス上に取り出し、オイル浸漬後カバーガラスを載せ加圧して平滑にしたものを断面観察試料とした。この断面観察試料を偏光顕微鏡(Olympus社製 BX53)を用いて観察した。なお、観察はハロゲンランプ光を光源とし、偏光子と検光子の光軸を直交させたいわゆるクロスニコルの状態に光学系を調整し、偏光顕微鏡に接続したカラーCCDカメラ(Olympus社製 DP74)にて撮像した。
結果を図3に示す。図3に示すように、実施例1〜3の生分解性ポリマー複合材料においては、結晶構造が微細化していることがわかる。一方、比較例12では、結晶化度の低下に起因して輝度が低下していた。
以上の結果より、実施例の生分解性ポリマー複合材料は、比較例の生分解性ポリマー複合材料と比較して、ヤング率が高く、また、十分な破断伸び率も確保されていた。
100 ステント、
110 ストラット、
111 線状部、
112 折り返し部、
120 リンク部。

Claims (5)

  1. ポリ乳酸系重合体と、表面アルキル化ナノダイヤモンドと、を含み、
    前記表面アルキル化ナノダイヤモンドの含有量が、前記ポリ乳酸系重合体および前記表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計量に対して、0.01重量%以上1.0重量%以下であり、
    結晶化度が49%以上である、生分解性ポリマー複合材料。
  2. ヤング率が2,300MPa以上である、請求項1に記載の生分解性ポリマー複合材料。
  3. 前記表面アルキル化ナノダイヤモンドを構成するアルキル基の炭素数が8〜24である、請求項1または2に記載の生分解性ポリマー複合材料。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の生分解性ポリマー複合材料で形成されてなる部分を含む、生体内留置物。
  5. ポリ乳酸系重合体と、ポリ乳酸系重合体および表面アルキル化ナノダイヤモンドの合計に対して0.01重量%以上1.0重量%以下である表面アルキル化ナノダイヤモンドと、溶媒と、を含む混合物を準備し、
    前記混合物を乾燥して乾燥物を得、
    前記乾燥物を前記ポリ乳酸系重合体の補外結晶化開始温度以上かつ補外融解開始温度未満の加熱温度で加熱して、結晶化度が49%以上である生分解性ポリマー複合材料を得る、
    生分解性ポリマー複合材料の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN115304823A (zh) * 2022-01-17 2022-11-08 浙江师范大学 端位烯烃基改性纳米填料的应用、聚乳酸复合材料的制备方法
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