以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
[第1実施形態]
以下、図1〜図4を参照して、第1実施形態に係る締結工具101について説明する。本実施形態の締結工具101は、ファスナを使用して作業材を締結するように構成されている。更に、締結工具101は、複数種類のファスナを選択的に使用可能である。まず、図1を参照して、締結工具101で使用可能なファスナの一例であるファスナ8について説明する。
図1に示すファスナ8は、複数部材加締め式のファスナ(multi-piece swage type fastener)と称される公知のファスナの一例である。ファスナ8は、ピン81と、カラー85とで構成されている。ピン81は、軸部811と、軸部811の一端部に一体的に形成されたヘッド815とを含む。カラー85は、軸部811を挿通可能な円筒状の部材である。ピン81とカラー85とは、元々は互いに別体として形成されている。締結工具101(図2参照)によってピン81の軸部811がカラー85に対して軸方向に引っ張られることでカラー85が変形し、ピン81のヘッド815と、ピン81の軸部811に加締められたカラー85とで作業材Wが締結される。
なお、複数部材加締め式のファスナには、ピンの軸部の一部(ピンテールまたはマンドレルともいう)が引きちぎられるタイプ、および、ピンの軸部が引きちぎられずにそのまま維持されるタイプがある。ファスナ8は、軸部811が引きちぎられるタイプ(引きちぎり式、破断式ともいう)である。何れのタイプでも、ピンおよびカラーの軸方向の長さ、径、材質、ならびに軸部に形成される溝の位置、数、形状等が異なる複数種類のファスナが存在する。なお、締結工具101は、後述するノーズアセンブリ61(図2参照)を交換することで、複数種類のファスナを選択的に使用可能である。
以下、締結工具101の概略構成について説明する。
図2に示すように、締結工具101の外郭は、主に、本体ハウジング11と、ノーズ13と、ハンドル15と、バッテリハウジング17とによって形成されている。本体ハウジング11は、全体としては矩形箱状に形成され、所定の駆動軸A1に沿って延在する。本体ハウジング11は、モータ2および駆動機構3を収容する。ノーズ13は、本体ハウジング11の長軸方向における一端部から、駆動軸A1に沿って突出している。ハンドル15は、本体ハウジング11の長軸方向における中央部から、駆動軸A1に交差する方向(詳細には、概ね直交する方向)に突出している。ハンドル15には、使用者によって引き操作(押圧操作)されるトリガ151が設けられている。バッテリハウジング17は、全体としては矩形箱状に形成され、ハンドル15の突出端に接続している。バッテリハウジング17には、充電式のバッテリ182を着脱可能である。使用者が、例えばファスナ8(図1参照)をノーズ13の先端部に係合させ、トリガ151を引き操作すると、モータ2が駆動され、ピン81がカラー85に対して軸方向に引っ張られ、ファスナ8によって作業材が締結される。
以下では、締結工具101の方向に関して、説明の便宜上、駆動軸A1(または本体ハウジング11の長軸)の延在方向を締結工具101の前後方向と規定する。前後方向において、ノーズ13が配置されている側を前側、反対側を後側と定義する。また、駆動軸A1に直交し、ハンドル15の長軸の延在方向に対応する方向を上下方向と規定する。上下方向において、ハンドル15の突出端側(バッテリハウジング17側)を下側、ハンドル15の基端部側(本体ハウジング11側)を上側と定義する。また、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と定義する。
以下、締結工具101の詳細構成について説明する。
まず、本体ハウジング11の内部構造について説明する。図2に示すように、本体ハウジング11には、主に、モータ2と、モータ2によって駆動される駆動機構3が収容されている。
モータ2は、本体ハウジング11の後端部の下部に収容されている。本実施形態では、モータ2として、ブラシレス直流(DC)モータが採用されている。モータ2は、ステータおよびロータを含むモータ本体部21と、ロータと一体的に回転するモータシャフト23とを含む。モータ2は、モータシャフト23の回転軸A2が駆動軸A1の下方で駆動軸A1と平行に(つまり、前後方向に)延在するように配置されている。モータシャフト23の前端部は、遊星減速機4のギヤケース40内に突出している。モータシャフト23の後端部には、モータ2を冷却するためのファン27が固定されている。
駆動機構3は、モータ2の動力によって、後述するピン把持部615を、駆動軸A1に沿ってアンビル611に対して前後方向に移動させるように構成された機構である。本実施形態では、駆動機構3は、遊星減速機4と、第1中間シャフト31に設けられたナット駆動ギヤ311と、第2中間シャフト33に設けられたアイドルギヤ331と、ボールネジ機構5とを含む。以下、これらの構成について、順に説明する。
遊星減速機4は、本体ハウジング11内で、モータ2の前側に、モータ2と同軸状に配置されている。遊星減速機4は、遊星歯車機構を用いた減速機であって、モータシャフト23から入力されるトルクを減速比に応じて増大させ、第1中間シャフト31に出力するように構成されている。本実施形態では、遊星減速機4は、多段式の遊星減速機である。より詳細には、遊星減速機4は、図3に示すように、ギヤケース40と、ギヤケース40に収容された3組の遊星歯車機構41、42、43とを含む。ギヤケース40は、本体ハウジング11によって回転不能に保持されている。遊星歯車機構41、42、43の各々は、太陽ギヤと、インターナルギヤ(リングギヤともいう)と、キャリヤと、キャリヤに支持され、太陽ギヤおよびインターナルギヤに噛合する複数の遊星ギヤとを含む。
遊星減速機4の入力シャフトであるモータシャフト23の前端部には、1段目(動力伝達経路の最上流側)の遊星歯車機構41の太陽ギヤ411が固定されている。遊星減速機4の出力シャフトは、3段目(動力伝達経路の最下流側)の遊星歯車機構43のキャリヤ433である。
本実施形態では、遊星減速機4は、その減速比を変更可能に構成されている。より詳細には、遊星減速機4の減速比は、本体ハウジング11に設けられた速度切替レバー471の移動に連動して、第1の減速比と、第1の減速比よりも大きい第2の減速比の間で切り替えられる。減速比の切替えは、遊星減速機4におけるギヤ列の噛合いの変更によって実現される。以下、減速比の切替えのための構成の詳細について説明する。
3つの遊星歯車機構41、42、43のうち、1段目と3段目の遊星歯車機構41、43のインターナルギヤ415、435は、ギヤケース40に固定されている。一方、2段目の遊星歯車機構42のインターナルギヤ425は、回転可能、且つ、前後移動可能にギヤケース40に保持されている。インターナルギヤ425の前半部分の外周には、径方向外側に突出する複数の外歯426が、周方向に所定間隔で設けられている。インターナルギヤ425の後半部分の外周には、全周を取り巻く環状溝427が形成されている。一方、ギヤケース40の前部の内部(詳細には、3段目のインターナルギヤ435の後側)には、円筒状の結合リング401が固定されている。結合リング401の内周には、径方向内側に突出する複数の歯402が設けられている。なお、結合リング401の歯402の数は、インターナルギヤ425の外歯426の数と同じである。
インターナルギヤ425の後半部分の外周には、切替リング45が装着されている。切替リング45は、ギヤケース40によって、回転不能、且つ、前後方向に移動可能に保持されている。切替リング45は、円筒状の外装部451と、外装部451の上端部から後方に延びる長尺板状の延設片454とを含む。外装部451には、複数のピン452が、周方向に所定間隔で取り付けられている。各ピン452の先端部は、外装部451の内周面から径方向内側に突出し、インターナルギヤ425の環状溝427内に配置されている。延設片454の中央部には、上方に突出する突起455が設けられている。
速度切替レバー471は、前後方向にスライド可能な状態で、本体ハウジング11(詳細には、左壁部)に保持されている。速度切替レバー471の一部は、本体ハウジング11に設けられた開口を介して本体ハウジング11の外部に露出しており、使用者によるスライド操作が可能とされている。速度切替レバー471は、突起455を介して切替リング45に連結されている。
以上のような構成により、使用者が速度切替レバー471を前後方向にスライドさせると、速度切替レバー471に連結された切替リング45、および、切替リング45に連結されたインターナルギヤ425も、前後方向に移動する。なお、速度切替レバー471およびインターナルギヤ425は、夫々、より後方の第1位置(図3に示す位置)と、より前方の第2位置(図4に示す位置)との間で移動可能である。
図3に示すように、速度切替レバー471およびインターナルギヤ425が第1位置に配置されると、インターナルギヤ425は、2段目の遊星歯車機構42の遊星ギヤ424との噛合を維持したまま、1段目の遊星歯車機構41のキャリヤ413とも噛合する。これにより、2段目の遊星歯車機構42の減速機能が無効となるため、遊星減速機4の有効段数(有効に機能する遊星歯車機構の数)は2である。一方、図4に示すように、速度切替レバー471およびインターナルギヤ425が第2位置に配置されると、インターナルギヤ425は、遊星ギヤ424との噛合を維持しつつキャリヤ413からは離間する。また、インターナルギヤ425の前半部分の外歯426が、結合リング401の歯402に噛合する。これにより、2段目の遊星歯車機構42の減速機能が有効となるため、遊星減速機4の有効段数は3である。
このように、本実施形態では、遊星減速機4の減速比の切替えは、遊星減速機4の有効段数の切替えによって実現されており、インターナルギヤ425が第1位置に配置された場合の第1減速比よりも、第2位置に配置された場合の第2減速比の方が大きくなる。よって、インターナルギヤ425が第1位置に配置された場合よりも、第2位置に配置された場合の方が、遊星減速機4から出力されるトルクが大きくなる。また、ギヤ425が第2位置に配置された場合よりも、第1位置に配置された場合の方が、ナット51の回転速度、ひいてはネジシャフト56の移動速度は高速となる。
図2に示すように、第1中間シャフト31は、本体ハウジング11内で、モータシャフト23および遊星減速機4と同軸状に、遊星減速機4から前方に延びる。第1中間シャフト31は、遊星減速機4の3段目の遊星歯車機構43のキャリヤ433(図3参照)に連結されている。第1中間シャフト31は、2つのベアリングによって、回転軸A2周りに回転可能に支持され、キャリヤ433と一体的に回転する。ナット駆動ギヤ311は、第1中間シャフト31の外周部に一体的に設けられている。
第2中間シャフト33は、第1中間シャフト31の上側で、第1中間シャフト31に平行に延在する。アイドルギヤ331は、ベアリングを介して第2中間シャフト33に支持されており、第2中間シャフト33の軸周りに回転可能である。アイドルギヤ331は、ナット駆動ギヤ311および後述するナット51の被動ギヤ511に噛合しているが、両者の回転数の比には影響を与えない。
ボールネジ機構5は、ナット51と、ネジシャフト56とを主体として構成されている。本実施形態では、ボールネジ機構5は、ナット51の回転運動をネジシャフト56の直線運動に変換して、後述のピン把持部615を直線状に移動するように構成されている。
ナット51は、前後方向の移動が規制され、且つ、駆動軸A1周りに回転可能な状態で、本体ハウジング11に支持されている。ナット51は、円筒状に形成されており、外周部に一体的に設けられた被動ギヤ511を有する。ナット51は、被動ギヤ511の前側および後側で、一対のラジアルベアリングによって支持されている。なお、ナット駆動ギヤ311と被動ギヤ511は、減速ギヤ機構として構成されている。
ネジシャフト56は、駆動軸A1周りの回転が規制され、且つ、駆動軸A1に沿って前後方向に移動可能な状態でナット51に係合している。より詳細には、ネジシャフト56は、長尺体として構成され、駆動軸A1に沿って延在するように、ナット51に挿通されている。詳細な図示は省略するが、ナット51の内周面に形成された螺旋溝とネジシャフト56の外周面に形成された螺旋溝によって規定される軌道内には、多数のボールが転動可能に配置されている。ネジシャフト56は、これらのボールを介してナット51に係合している。また、詳細な図示は省略するが、ネジシャフト56の後端部には、ネジシャフト56から左方および右方に延びる一対のアームが設けられている。各アームは、ローラを回転可能に支持している。ローラは、本体ハウジング11に固定されたローラガイドのガイド溝に係合している。ローラは、上下方向の移動が規制された状態で、ガイド溝に沿って前後方向に転動可能とされている。
このような構成により、ナット51が駆動軸A1周りに回転されると、ネジシャフト56は、駆動軸A1周りの回転が規制された状態で、ナット51および本体ハウジング11に対して前後方向に直線状に移動する。
ネジシャフト56の後端部には、延設シャフト561が同軸状に連結固定され、ネジシャフト56に一体化されている。以下、一体化されたネジシャフト56と延設シャフト561を総称して、駆動シャフト560ともいう。駆動シャフト560は、駆動軸A1に沿って駆動シャフト560を貫通する貫通孔を有する。本体ハウジング11の後端部における駆動軸A1上には、断面円形の開口部113が形成されている。開口部113は、回収容器115を着脱可能に構成されている。回収容器115は、締結工程において分離されたピンテールを収容するための容器である。ファスナから分離されたピンテールは、駆動シャフト560の貫通孔を通って回収容器115に到達し、回収容器115に収容される。
以下、ノーズ13について説明する。ノーズ13は、ノーズアセンブリ61と、ノーズアセンブリ61を保持するノーズアダプタ65とを含む。なお、ここでいう「アセンブリ」は、複数の部品が組み立てられることで形成された単一の組立体ではなく、特定の用途に使用されるために組(セット)として定義されている複数の別個の部品を指すものである。以下、ノーズアセンブリ61およびノーズアダプタ65について順に説明する。
図2に示すように、ノーズアセンブリ61は、ファスナ8(図1参照)のカラー85に当接(係合)可能に構成され、本体ハウジング11に保持されたアンビル611と、ファスナ8のピン81を把持可能に構成され、アンビル611に対して駆動軸A1に沿って前後方向に相対移動可能に保持されたピン把持部615とを主体として構成されている。なお、ノーズアセンブリ61の構成は公知であるため、以下に簡単に説明する。
アンビル611は、全体としては円筒体であって、駆動軸A1に沿って延在するボアを有する。ピン把持部615は、アンビル611と同軸状にボア内に保持されており、ボア内を摺動可能である。ボアの先端部は、他の部分よりも小径に構成されており、カラー85に当接(係合)可能である。詳細な図示は省略するが、ピン把持部615は、ピン81の軸部811(図1参照)を把持可能な複数の爪(ジョーとも称される)を有する。ピン把持部615は、アンビル611に対して初期位置から後方へ移動するのに伴って、爪による把持力が増大するように構成されている。
本実施形態では、ノーズアセンブリ61は、ノーズアダプタ65を介して本体ハウジング11の前端部に着脱可能である。上述のように、本実施形態の締結工具101は、複数種類のファスナを選択的に使用可能である。使用者は、実際に使用されるファスナに応じて、適切な種類のノーズアセンブリ61を本体ハウジング11に装着する。本実施形態では、引きちぎり式のファスナ8用のノーズアセンブリ61が例示されているが、軸維持式のファスナに対応するノーズアセンブリ61も、ファスナのカラーに当接可能なアンビルと、ピンを把持可能な複数の爪を有し、アンビルに対して駆動軸A1に沿って相対移動可能に保持されたピン把持部とを備えるという点で、基本的には、ファスナ8用のノーズアセンブリ61と同じ構成を有するということができる。
ノーズアダプタ65は、アンビル611を本体ハウジング11に連結し、且つ、ピン把持部615をネジシャフト56に連結するように構成されている。より詳細には、ノーズアダプタ65は、連結部材651と、スリーブ653と、固定リング655とを含む。
連結部材651は、ネジシャフト56とピン把持部615とを連結する円筒状の部材である。連結部材651は、ネジシャフト56の前端部およびピン把持部615の後端部の夫々に螺合されている。なお、連結部材651は、駆動軸A1に沿って連結部材651を貫通し、駆動シャフト560の貫通孔に連通する貫通孔を有する。連結部材651は、スリーブ653内を駆動軸A1に沿って摺動可能である。スリーブ653および固定リング655は、アンビル611を本体ハウジング11に連結するように構成されている。スリーブ653は、円筒状の部材であって、駆動軸A1に沿って前方へ突出するように、本体ハウジング11の前端部に固定されている。アンビル611は、スリーブ653の前半部分の内部に嵌合され、保持されている。固定リング655は、アンビル611の外周に嵌め込まれ、スリーブ653に螺合されている。
以下、ハンドル15について説明する。図2に示すように、ハンドル15は、本体ハウジング11の前後方向の下中央部から連続して下方に延びる長尺の筒状部分である。ハンドル15は、使用者によって把持される部分であって、その上端部には、使用者による引き操作が可能なトリガ151が設けられている。ハンドル15の内部には、スイッチ152が収容されている。スイッチ152は、常時にはオフ状態で維持され、トリガ151の引き操作に応じてオン状態とされる。スイッチ152は、図示しない配線によって、コントローラ170の制御回路171に電気的に接続されており、オン状態とされると、オン信号を制御回路171に出力する。
なお、ハンドル15の前方には、ハンドガード155が設けられている。ハンドガード155は、ハンドル15から離間して概ね上下方向に延在し、本体ハウジング11の下前端部と、バッテリハウジング17の上端部とを接続している。なお、本実施形態では、ハンドガード155は、本体ハウジング11、バッテリハウジング17およびハンドル15と一体的に樹脂で成形されており、成形体の剛性を高めるために設けられている。これに加え、ハンドガード155は、ハンドル15を把持する使用者の手を保護することができる。
以下、バッテリハウジング17について説明する。図2に示すように、バッテリハウジング17は、前後方向に長い逆U字状の中空体として構成されている。バッテリハウジング17は、ハンドル15の下端部に比べ、前後方向および左右方向の幅が広い。バッテリハウジング17には、コントローラ170が収容されている。コントローラ170は、締結工具101の制御を司る制御回路171を含む。本実施形態では、制御回路171は、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータで構成されている。詳細な図示は省略するが、制御回路171は、モータ2の駆動回路等とともに、ケースに収容された基板に搭載されている。
バッテリハウジング17の下端部には、2つのバッテリ装着部181が設けられている。各バッテリ装着部181は、バッテリ182を着脱可能に構成されている。つまり、本実施形態では、締結工具101には、2つのバッテリ182を装着することができる。バッテリ182は、締結工具101の各部およびモータ2へ電力を供給するための、繰り返し充電が可能な電源であって、バッテリパックとも称される。なお、バッテリ装着部181およびバッテリ182の構成は周知であるため、これらの説明は省略する。本実施形態では、2つのバッテリ装着部181は、前後方向に並設されている。
また、バッテリハウジング17は、バッテリガード185を含む。バッテリガード185は、バッテリ182がバッテリ装着部181に装着された場合に、バッテリ182の露出部分を外力から保護するように構成されている。本実施形態では、2つのバッテリガード185が、夫々、2つのバッテリ装着部181の前側および後側に設けられている。2つのバッテリガード185は、バッテリハウジング17のうち、2つのバッテリ装着部181を挟んでバッテリ装着部181よりも下方に突出する部分として構成されている。
更に、バッテリハウジング17の後端部の上面には、操作部187が設けられている。操作部187は、使用者による外部操作が可能な入力機器である。詳細な図示は省略するが、本実施形態では、操作部187は、押圧操作が可能な複数の押しボタン式のスイッチを備えている。また、操作部187には、情報を表示する表示部も設けられている。使用者は、操作部187のスイッチを押圧することで、各種情報を入力することができる。
なお、上述のように、本実施形態では、締結工具101は、引きちぎり式ファスナ(例えば、図1に示すファスナ8)と、軸維持式ファスナの両方に対応可能に構成されており、制御回路171は、使用されるファスナのタイプに対応する動作モードに従ってモータ2の駆動を制御する。そこで、使用者は、操作部187を介して、動作モードを指定する情報を入力することができる。操作部187(スイッチ)は、図示しない配線によって、制御回路171に電気的に接続されており、各スイッチのオン・オフ状態を示す信号を制御回路171に出力する。
以下、締結工具101を用いた作業材の締結作業について説明する。
まず、使用者は、使用されるファスナ(図1に示すファスナ8あるいは他のファスナ)に応じたノーズアセンブリ61を締結工具101に取り付ける。更に、使用されるファスナおよび/または作業材に応じて、速度切替レバー471をスライド操作して、適切な減速比を選択する。例えば、ファスナや作業材の材質、ピンの軸部の太さ等によって、ピン把持部615によるピンの適切な引張力は異なりうる。そこで、比較的大きな引張り力が必要な場合には、使用者は、速度切替レバー471およびインターナルギヤ425を第2位置(図4に示す位置)に配置させる。一方、引張り力が比較的小さくてもよい場合には、使用者は、速度切替レバー471およびインターナルギヤ425を第1位置(図3に示す位置)に配置させる。このようにして、遊星減速機4から出力されるトルク、ひいてはネジシャフト56に連結されたピン把持部615の引張り力が調整される。また、ナット51の回転速度、ひいてはネジシャフト56の移動速度も調整されることになる。
図2に示すように、トリガ151が引き操作されない初期状態では、ネジシャフト56(つまり、駆動シャフト560)およびピン把持部615は、初期位置(最前方位置)に配置されている。使用者は、アンビル611の先端部をカラーに係合させ、ピンの軸部をピン把持部615の先端部(爪)に緩く把持させる。使用者がトリガ151を引き操作し、スイッチ152がオン状態となると、コントローラ170の制御回路171は、モータ2の正転駆動を開始する。遊星減速機4、ナット駆動ギヤ311、被動ギヤ511を経て増大されたトルクがナット51に伝達される。ナット51の回転に伴い、ネジシャフト56が後方へ移動される。これに伴い、ネジシャフト56に連結されたピン把持部615が後方へ引き込まれ、ピンの軸部は、ピン把持部615によって強固に把持されて、駆動軸A1に沿って後方へ引っ張られる。
カラーが変形して軸部に加締められ、作業材がピンのヘッドとカラーに挟持された状態で、作業材の締結が終了する。なお、上述のように、締結工具101では、使用者は、操作部187を介して、使用されるファスナのタイプに応じた動作モードを指定する。制御回路171は、操作部187からの信号に基づいて動作モードを特定し、動作モードに応じたタイミングでモータ2の正転駆動を停止し、ネジシャフト56の後方への移動を停止させる。なお、動作モードに応じたネジシャフト56の後方への移動の停止制御の方法として、例えば、特開2018−103257号公報に開示されている方法を採用することができる。その後、制御回路171は、モータ2を逆転駆動させ、ネジシャフト56を初期位置に戻す。
以上に説明したように、本実施形態の締結工具101は、本体ハウジング11と、アンビル611と、ピン把持部615と、モータ2と、駆動機構3とを備えている。本体ハウジング11は、駆動軸A1に沿って、前後方向に延在する。アンビル611は、ファスナのカラーに当接可能に本体ハウジング11に保持されている。ピン把持部615は、ファスナのピンの一部を把持可能に構成され、且つ、アンビル611に対し、駆動軸A1に沿って移動可能に保持されている。駆動機構3は、連結部材651を介してピン把持部615に連結されたネジシャフト56を含む。駆動機構3は、モータ2の回転運動をネジシャフト56の直線運動に変換し、ピン把持部615を駆動軸A1に沿ってアンビル611に対して移動させるように構成されている。
更に、駆動機構3は、モータ2からネジシャフト56に至る伝達経路上に設けられた遊星減速機4を含む。遊星減速機4は、スパーギヤ等を組み合わせた減速機に比べ、小型で大きな減速比を得ることができる。また、遊星減速機4は、使用者によって外部操作される速度切替レバー471の前後方向のスライド移動に連動して、減速比、ひいては遊星減速機4から出力されるトルクを変更可能である。より詳細には、速度切替レバー471は、スライド移動に伴って、速度切替レバー471に連結された切替リング45を介して2段目のインターナルギヤ425を軸方向に移動させ、遊星減速機4の有効段数を切り替える。
よって、使用者は、例えば、使用されるファスナや作業材の材質や仕様に応じて、速度切替レバー471をスライド移動させる操作を行うだけで、ピン把持部615によるピンの引張り力を容易に変更することができる。このように、遊星減速機4の減速比を切り替えることでピンの引張り力を変更する場合、制御回路171は、減速比の切替えのためにモータ2の回転速度を制御する必要がない。よって、モータ2を常に高効率で駆動することが可能となる。
また、締結工具101が発揮可能な最大の引張り力(つまり、第2減速比が設定されたときの引張り力)は、モータ2の仕様で決まっている。しかしながら、使用されるファスナや作業材によっては、最大の引張り力ほど大きな引張り力は必要ない場合がある。このような場合、減速比が第2減速比よりも小さい第1減速比に設定されれば、モータ2の回転速度は一律でありながら、遊星減速機4は、トルクを抑えつつ、ナット51をより高速で回転することができ、ひいてはネジシャフト56をより高速で移動させることができる。このように、締結工具101は、必要最低限のトルクを発揮しつつ、1つのファスナを締結するのに要する作業時間を短縮することを可能とする。特に、多数のファスナを締結する場合には、全体としての作業時間を大幅に短縮することができるため、作業効率が向上する。
[第2実施形態]
以下、図5および図6を参照して、第2実施形態に係る締結工具102について説明する。なお、本実施形態の締結工具102は、遊星減速機4の有効段数の切替えのための構成が第1実施形態の締結工具101とは異なるが、その他の構成は締結工具101と実質的に同一である。よって、以下では、第1実施形態と実質的に同一の構成については、同じ符号を付して説明を省略または簡略化し、主に異なる構成について説明する。この点については、後述の第3実施形態についても同様である。
第1実施形態では、遊星減速機4の有効段数は、使用者による外部操作が可能な速度切替レバー471の移動に連動して切り替えられている。これに対し、本実施形態では、遊星減速機4の有効段数は、操作部187(図1参照)を介して入力される情報に応じて、ソレノイド48によって切り替えられる。
図5に示すように、本実施形態では、遊星減速機4のインターナルギヤ425にピン452を介して連結された切替リング45は、連動部材472に連結されている。連動部材472は、第1実施形態の速度切替レバー471(図3参照)と概ね同一の構成を有し、本体ハウジング11内で、前後方向に移動可能に保持されている。但し、速度切替レバー471とは異なり、連動部材472は、全体が本体ハウジング11内に配置されており、使用者による外部操作は想定されていない。連動部材472の前端部には、左方に突出する突起473が設けられている。連動部材472は、速度切替レバー471と同様、インターナルギヤ425と共に、より後方の第1位置(図5に示す位置)と、より前方の第2位置(図6に示す位置)との間で移動可能である。
ソレノイド48は、連動部材472の前側で本体ハウジング11に支持されている。詳細な図示は省略するが、ソレノイド48は、コイルに電流を流すことで発生する磁界を利用して、電気的エネルギを、直線運動の機械的エネルギに転換するように構成された周知の電気部品である。ソレノイド48は、ケース481と、ケース481に収容されたコイル(図示略)と、起動(コイルの通電)に応じて動作するプランジャ483とを含む。ソレノイド48は、プランジャ483がケース481から後方に突出するように配置されている。プランジャ483の後端は、連動部材472の突起473に連結されている。
ソレノイド48は、図示しない配線によって、コントローラ170の制御回路171(図2参照)に電気的に接続されている。本実施形態では、使用者は、減速比の選択時には、操作部187の複数の押しボタン式スイッチのうち、使用されるファスナおよび/または作業材の種類に対応するスイッチを押圧する。
制御回路171(図1参照)は、操作部187からの信号に基づいて、ソレノイド48の起動を制御する。ソレノイド48の非起動時(コイルに通電されていない時)には、プランジャ483は、連動部材472およびインターナルギヤ425を、図5に示す第1位置に配置させる。このときの遊星減速機4の有効段数は2であり、より小さい第1減速比が設定される。一方、ソレノイド48の起動時には、プランジャ483が前方に移動し、連動部材472およびインターナルギヤ425を、図6に示す第2位置に配置させる。このときの遊星減速機4の有効段数は3であり、より大きい第2減速比が設定される。これにより、第1実施形態と同様にして、遊星減速機4から出力されるトルク、ひいてはネジシャフト56に連結されたピン把持部615の引張り力が調整される。
以上に説明したように、本実施形態の締結工具102は、使用者による外部操作に応じて情報が入力される操作部187(スイッチ)を備えている。そして、遊星減速機4は、操作部187を介して入力された情報(ファスナおよび/または作業材の種類に関する情報)に基づいて、減速比を変更可能である。より詳細には、コントローラ170の制御回路171は、入力された情報に基づいてソレノイド48を適宜起動させ、プランジャ483を介して2段目のインターナルギヤ425を軸方向に移動させ、遊星減速機4の有効段数を切り替える。よって、使用者は、例えば、使用されるファスナや作業材の材質や仕様に応じて、操作部187を操作するだけで、ピン把持部615によるピンの引張り力を容易に変更することができる。
[第3実施形態]
以下、図7を参照して、第3実施形態に係る締結工具103について説明する。本実施形態の締結工具103は、温度センサ49を更に備える点と、制御回路171が温度センサ49の検出結果に基づいてソレノイド48(図5参照)を制御する点が、第2実施形態の締結工具102と異なっている。
図7に示すように、温度センサ49は、バッテリハウジング17内でコントローラ170の近傍に配置されている。温度センサ49は、図示しない配線によって、制御回路171に電気的に接続されており、測定された温度を示す信号を制御回路171に出力する。
制御回路171は、温度センサ49からの信号に基づいて、ソレノイド48を制御する。具体的には、測定された温度が閾値を超える場合、制御回路171は、ソレノイド48を起動させ(または通電を停止し)、連動部材472およびインターナルギヤ425を、より大きな第2減速比に対応する第2位置(図6に示す位置)に配置させる。一方、測定された温度が閾値を超えない場合、制御回路171は、ソレノイド48を起動せず、連動部材472およびインターナルギヤ425を、より小さな第1減速比に対応する第1位置(図5に示す位置)に配置させる。これにより、第1実施形態と同様にして、遊星減速機4から出力されるトルク、ひいてはネジシャフト56に連結されたピン把持部615の引張り力が調整される。また、ナット51の回転速度、ひいてはネジシャフト56の移動速度も調整されることになる。
以上に説明したように、本実施形態の締結工具103は、コントローラ170の近傍で温度を測定する温度センサ49を備えている。遊星減速機4は、温度センサ49によって測定された温度に基づいて、減速比を変更可能である。より詳細には、制御回路171は、測定された温度が閾値を超えるとソレノイド48を起動させ、遊星減速機4の減速比を、より大きい第2減速比に切り替える。温度が閾値を超える場合、コントローラ170(制御回路171、モータ2の駆動回路等)の発熱量がある程度高く、コントローラ170に比較的大きな負荷がかかっている。よって、このような場合には、遊星減速機4から出力されるトルクを増大させることで、コントローラ170への負荷を抑えることができる。また、制御回路171は、測定された温度が再び閾値以下となると、ソレノイド48への通電を停止し、遊星減速機4の減速比を、より小さい第1減速比に切り替える。これにより、ナット51の回転速度、ひいてはネジシャフト56の移動速度を上げて、作業効率を良好に維持することができる。
[第4実施形態]
以下、図8を参照して、第4実施形態に係る締結工具104について説明する。本実施形態の締結工具104は、電流検出回路173を更に備える点と、制御回路171が電流検出回路173の検出結果に基づいてソレノイド48を制御する点が、第2実施形態の締結工具102と異なっている。
ファスナによる作業材の締結工程では、初期段階の負荷は小さく、それほど大きなトルクは必要とされないのに対し、ピンに対するカラーの加締めが進行するにつれ、負荷が増大し、より大きなトルクが必要となる。そこで、本実施形態では、負荷に応じた減速比の切替が行われる。具体的には、モータ2に流れる電流の大きさが、負荷の大きさとして利用される。
このために、図8に示すように、本実施形態のコントローラ170は、モータ2に流れる電流の大きさを検出する電流検出回路173を含む。本実施形態では、電流検出回路173は、モータ2への通電経路に設けられた抵抗を介してモータ2に流れる電流を検出するように構成されているが、モータ2に流れる電流の検出には、いかなる公知の方式が採用されてもよい。電流検出回路173は、制御回路171等とともに基板に搭載されており、制御回路171に電気的に接続されている。電流検出回路173は、検出された電流の大きさを示す信号を制御回路171に出力する。
制御回路171は、電流検出回路173からの信号に基づいて、ソレノイド48を制御する。具体的には、検出された電流の大きさ(電流値)が閾値を超えない場合、制御回路171は、ソレノイド48を起動せず(または通電を停止し)、連動部材472およびインターナルギヤ425を、より小さな第1減速比に対応する第1位置(図5に示す位置)に配置させる。一方、検出された電流値が閾値を超える場合、制御回路171は、ソレノイド48を起動させ、連動部材472およびインターナルギヤ425を、より大きな第2減速比に対応する第2位置(図6に示す位置)に配置させる。これにより、第1実施形態と同様にして、遊星減速機4から出力されるトルク、ひいてはネジシャフト56に連結されたピン把持部615の引張り力が調整される。また、ナット51の回転速度、ひいてはネジシャフト56の移動速度も調整されることになる。
以上に説明したように、本実施形態の締結工具104では、遊星減速機4は、電流検出回路173によって検出されたモータ2に流れる電流の大きさに基づいて、減速比を変更可能である。より詳細には、締結工程初期において、負荷が比較的低く、電流値が閾値を超えない間は、制御回路171はソレノイド48を起動せず、第1減速比を採用することで、トルクは抑えつつ、ネジシャフト56をより高速で移動させる。また、制御回路171は、加締めが進行して負荷がある程度上昇し、電流値が閾値を超えた時点でソレノイド48を起動し、減速比をより大きい第2減速比に切り替えることで、ネジシャフト56の移動速度は低下させつつ、トルクをより大きくする。更に、カラーがピンに加締められ、作業材の締結が終了するのに伴って負荷が減少し、電流値が再び閾値以下となると、制御回路171は、ソレノイド48への通電を停止して、減速比を第1減速比に切り替え、トルクは抑えつつ、ネジシャフト56をより高速で初期位置に戻す。このように、本実施形態では、締結工程初期の負荷が比較的低い間と、作業材の締結終了後に、ネジシャフト56の移動速度をより高速とすることで、作業時間を短縮し、作業効率を高めることができる。
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本発明の各構成要素を限定するものではない。締結工具101、102、103および104の各々は、「締結工具」の一例である。ファスナ8、ピン81、カラー85は、夫々、「ファスナ」、「ピン」、「筒状部」の一例である。本体ハウジング11は、「ハウジング」の一例である。アンビル611およびピン把持部615は、夫々、「アンビル」および「ピン把持部」の一例である。モータ2は、「モータ」の一例である。駆動機構3は、「駆動機構」の一例である。ネジシャフト56は、「最終出力シャフト」の一例である。遊星減速機4は、「ギヤ減速機」の一例である。遊星歯車機構41、42および43は、「ギヤ列」および「多段式の遊星歯車機構」の一例である。速度切替レバー471は、「操作部材」の一例である。操作部187(押しボタン式スイッチ)は、「入力機器」の一例である。温度センサ49は、「温度センサ」の一例である。電流検出回路173は、「電流検出器」の一例である。
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る締結工具は、例示された締結工具101、102、103、104の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示す締結工具101、102、103、104あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
例えば、締結工具101、102、103、104は、夫々、ノーズアセンブリ61の交換によって、複数種類の複数部材加締め式ファスナを選択的に使用可能である。更に、締結工具101、102、103、104は、ノーズアセンブリ61の交換によって、ブラインドリベット(またはリベット)と称されるタイプの公知のファスナを使用可能であってもよい。なお、ブラインドリベットは、一体的に形成されたピンと筒状部(スリーブまたはリベット本体とも称される)とで構成される。ブラインドリベットも、引きちぎり式の複数部材加締め式ファスナと同様、締結工程において、ピンテールが引きちぎられる。
また、締結工具101、102、103、104は、引きちぎり式の複数部材加締め式ファスナ、軸維持式の複数部材加締め式ファスナ、およびブラインドリベットのうち、何れか1つのタイプにのみ対応する専用機であってもよい。何れのタイプのファスナも、ピン、カラーまたはスリーブの長さ、径、材質等が異なる複数種類が存在する。よって、専用機の場合にも、上記実施形態と同様、減速比を変更可能なギヤ減速機(例えば、遊星減速機4)を採用することができる。なお、専用機では、夫々のファスナのタイプに応じて、本体ハウジング11や駆動機構3の構成、制御回路171による制御態様が適宜変更されうる。例えば、軸維持式の複数部材加締め式ファスナの専用機では、ピンテールは発生しないため、ネジシャフト56等に形成されるピンテールの通路や回収容器115は不要である。
ノーズアセンブリ61やノーズアダプタ65の構成は、適宜、変更されてよい。例えば、アンビル611の形状や、ノーズアダプタ65を介した本体ハウジング11への連結態様は変更されてもよい。ピン把持部615は、アンビル611に対する前後方向の相対移動に連動して、複数の爪が径方向に移動することで、ピンに対する把持力が変化するように構成されていればよく、例えば、爪の形状および数、ネジシャフト56との連結態様等は、適宜、変更されてよい。
モータ2、駆動機構3、およびコントローラ170の構成や配置は、適宜、変更されてよい。かかる変更に応じて、あるいはかかる変更にかかわらず、本体ハウジング11、ハンドル15、バッテリハウジング17の形状も、適宜変更されうる。例えば、バッテリ装着部181の数(つまり、装着可能なバッテリ182の数)は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、バッテリ装着部181の位置も、バッテリハウジング17の下部に限られるものではない。バッテリガード185は省略されてもよい。
例えば、モータ2として、ブラシレスモータに代えて、ブラシ付のモータが採用されてもよいし、外部の交流電源から供給される電力で駆動される交流モータが採用されてもよい。モータ2は、モータシャフト23の回転軸A2が駆動軸A1に交差するように配置されていてもよい。
駆動機構3において、ボールネジ機構5に代えて、内周部に雌ネジが形成されたナットと、外周部に雄ネジが形成され、ナットに直接螺合されたネジシャフトとを備えた送りネジ機構が採用されてもよい。また、ボールネジ機構5において、ネジシャフト56が、前後方向の移動が規制され、且つ、駆動軸A1周りに回転可能に支持される一方、ナット51が、ネジシャフト56の回転に伴って前後方向に移動するように構成されていてもよい。この場合、ピン把持部615は、最終出力シャフトとしてのナット51に、直接的または間接的に連結されればよい。
第1中間シャフト31のナット駆動ギヤ311と、ナット51の被動ギヤ511の間に配置されたアイドルギヤ331は省略され、ナット駆動ギヤ311と被動ギヤ511とが噛合していてもよいし、別のギヤが介在していてもよい。
遊星減速機4の段数(つまり、遊星減速機4に含まれる遊星歯車機構の数)、遊星歯車機構41、42、43の夫々の構成は、適宜変更されてよい。例えば、遊星減速機4は、2つの、あるいは4つ以上の遊星歯車機構を備えてもよい。有効段数の変更は、どの段のインターナルギヤの軸方向の移動によって実現されてもよい。また、遊星減速機4に代えて、遊星歯車機構以外のギヤ列(スパーギヤ、ヘリカルギヤ、ベベルギヤ等のギヤ列)を含むギヤ減速機が採用されてもよい。この場合、減速比の変更は、例えば、スライド可能に配置された特定のギヤを、歯数の異なる2つのギヤの一方に選択的に噛合させることで実現されうる。
遊星減速機4(または別のギヤ減速機)に連動する減速比変更用の操作部材として、前後方向に移動する速度切替レバー471に代えて、例えば、回動式のダイヤルが採用されてもよいし、左右方向に移動可能なボタンが採用されてもよい。
上記実施形態では、制御回路171が、CPU等を含むマイクロコンピュータによって構成される例が挙げられている。しかしながら、制御回路171は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブル・ロジック・デバイスで構成されていてもよい。また、複数の制御回路が、モータ2の駆動と、ソレノイド48の起動とを別個に制御してもよい。
減速比変更用の情報を入力するための入力機器は、操作部187の押しボタン式スイッチに限られず、例えば、スライド式のスイッチ、回動式のダイヤル、あるいはタッチパネルであってもよい。また、入力される情報は、ファスナおよび/または作業材の種類に関する情報に限られず、例えば、所望の引張り力、ネジシャフト56の移動速度(引張り速度)、環境温度等に関する情報であってもよい。操作部187は、例えば、本体ハウジング11に設けられてもよい。
遊星減速機4(または別のギヤ減速機)に機械的に作用し、減速比を切り替えるための構成は、ソレノイド48に限られない。制御回路171によって起動されて動作する作動部(例えば、回動可能な作動部)を備えたソレノイド48以外のアクチュエータが採用されてもよい。
温度センサ49は、コントローラ170の近傍ではなく、別の場所(例えば、本体ハウジング11内のモータ2の近傍)に配置されていてもよい。この場合、制御回路171は、環境温度の変化によるモータの特性変化に応じて減速比を変更することが可能となる。
更に、本発明および上記実施形態の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様のうち少なくとも1つが、上述の実施形態とその変形例、および各請求項に記載された発明の1つまたは複数と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記駆動機構は、ボールネジ機構または送りネジ機構を含み、
前記ギヤ減速機は、前記伝達経路において、前記モータと、前記ボールネジ機構または前記送りネジ機構との間に配置されている。
ボールネジ機構5は、本態様における「ボールネジ機構」の一例である。
[態様2]
前記ボールネジ機構または前記送りネジ機構は、前記駆動軸周りに回転可能に前記ハウジングに支持されたナットと、前記ナットの回転に伴って前記駆動軸に沿って直線状に移動するように構成された前記最終出力シャフトとを含む。
ナット51およびネジシャフト56は、夫々、本態様における「ナット」および「最終出力シャフト」の一例である。
[態様3]
前記多段式の遊星歯車機構の各段は、太陽ギヤと、インターナルギヤと、キャリヤと、前記キャリヤに支持され、太陽ギヤおよびインターナルギヤに噛合する複数の遊星ギヤとを含み、
前記ギヤ減速機は、前記インターナルギヤが軸方向に移動することで、前記有効段数を変更するように構成されている。
[態様4]
前記操作部材は、前記ギヤ変速機に直接的または間接的に機械的に接続されており、前記移動によって、前記ギヤ列の噛合いまたは前記遊星歯車機構の前記有効段数を変更させるように構成されている。
[態様5]
締結工具は、
起動に応じて動作する作動部を備え、前記作動部を介して前記ギヤ減速機に機械的に作用するように構成されたアクチュエータと、
前記入力機器を介して入力された前記情報に基づいて、前記アクチュエータを起動するように構成された制御部とを更に備えている。
ソレノイド48および制御回路171は、夫々、本態様における「アクチュエータ」および「制御部」の一例である。
[態様6]
締結工具は、
起動に応じて動作する作動部を備え、前記作動部を介して前記ギヤ減速機に機械的に作用するように構成されたアクチュエータと、
前記温度センサによって測定された前記温度に基づいて、前記アクチュエータを起動するように構成された制御部とを更に備えている。
ソレノイド48および制御回路171は、夫々、本態様における「アクチュエータ」および「制御部」の一例である。
[態様7]
締結工具は、
起動に応じて動作する作動部を備え、前記作動部を介して前記ギヤ減速機に機械的に作用するように構成されたアクチュエータと、
前記電流検出器によって検出された前記電流の大きさに基づいて、前記アクチュエータを起動するように構成された制御部とを更に備えている。
ソレノイド48および制御回路171は、夫々、本態様における「アクチュエータ」および「制御部」の一例である。
[態様8]
態様5〜7の何れか1つにおいて、
前記作動部は、前記ギヤ減速機に機械的に作用することで、前記ギヤ列の噛合いまたは前記遊星歯車機構の前記有効段数を変更させるように構成されている。
[態様9]
態様6または8において、
前記制御部は、前記温度が閾値を超えた場合、前記アクチュエータを制御して、前記減速比を、前記温度が前記閾値を超えない場合の第1減速比から、前記第1減速比よりも大きい第2減速比に変更するように構成されている。
[態様10]
態様9において、
前記制御部は、前記温度が再び前記閾値以下となった場合、前記アクチュエータを制御して、前記減速比を、前記第2減速比から前記第1減速比に変更するように構成されている。
[態様11]
態様7または8において、
前記制御部は、前記電流の大きさが閾値を超えた場合、前記アクチュエータを制御して、前記減速比を、前記電流の大きさが前記閾値を超えない場合の第1減速比から、前記第1減速比よりも大きい第2減速比に変更するように構成されている。
[態様12]
態様11において、
前記制御部は、前記電流の大きさが再び前記閾値以下となった場合、前記アクチュエータを制御して、前記減速比を、前記第2減速比から前記第1減速比に変更するように構成されている。