JP2021041331A - 水中の物質の酸化方法、及び物質酸化用の光触媒体 - Google Patents

水中の物質の酸化方法、及び物質酸化用の光触媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】水中の物質の酸化方法であって、光触媒体を容易に固液分離することができる、水中の物質の酸化方法の提供。【解決手段】水中に含まれる物質の酸化方法であって、溶存酸素の存在下、物質を含む水中において、二次粒子径が40μm以上の光触媒体に対して、光を照射する光照射工程を備え、前記光触媒体は、光触媒物質の含有率が90質量%以上である、物質の酸化方法。【選択図】図1

Description

本発明は、水中の物質の酸化方法、及び物質酸化用の光触媒体に関する。
酸化チタンなどの光触媒を用いた水の浄化方法が知られている。例えば、非特許文献1には、ナノ粒子化した酸化チタンを水中に分散・懸濁させることで、高効率な水処理が達成できることが記載されている。
しかしながら、ナノ粒子化した酸化チタン光触媒を用いて水の浄化を行う際には、その分離回収が問題となる。具体的には、ナノ粒子化した酸化チタンを直接溶液中に懸濁させて水の浄化を行う場合は、光触媒活性が高く高効率な水処理が達成できるが、固液分離は容易ではない。また、ナノ粒子化した酸化チタンを基材表面に固定化する方法では、固液分離は非常に容易であるが、酸化チタンを溶液中に懸濁させる方法と比較して、光触媒活性が大きく低下するという問題がある。
勝又健一、セラミックス 53(2018)82−85
このような状況下、本発明は、水中の物質の酸化方法であって、光触媒体を容易に固液分離することができる、水中の物質の酸化方法を提供することを目的とする。また、本発明は、水中の物質を効率的に酸化することができ、光触媒体を容易に固液分離することができる、物質酸化用の光触媒体を提供することも目的とする。さらに、本発明は、水中の物質の酸化方法を利用した水の浄化方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、水中に含まれる物質の酸化方法であって、溶存酸素の存在下、物質を含む水中において、二次粒子径が40μm以上の光触媒体に対して、光を照射する光照射工程を備え、光触媒体は、光触媒物質の含有率が90質量%以上である、物質の酸化方法は、水中の物質の酸化後に、光触媒体を容易に固液分離することができることを見出した。また、水中に含まれる物質の酸化に用いるための光触媒体であって、光触媒体は、二次粒子径が40μm以上であり、酸化チタンに助触媒が担持された構造を有し、酸化チタンの含有率が90質量%以上である光触媒体は、水中の物質を効率的に酸化することができ、さらに、物質の酸化後に、光触媒体を容易に固液分離できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 水中に含まれる物質の酸化方法であって、
溶存酸素の存在下、物質を含む水中において、二次粒子径が40μm以上の光触媒体に対して、光を照射する光照射工程を備えており、
前記光触媒体は、光触媒物質の含有率が90質量%以上である、物質の酸化方法。
項2. 前記光照射工程において、前記光触媒体を、前記水中で撹拌しながら前記光触媒体に対して光照射を行う、項1に記載の物質の酸化方法。
項3. 前記光照射工程の後、前記光触媒体を前記水中から分離回収する、分離回収工程を備える、項1又は2に記載の物質の酸化方法。
項4. 前記分離回収工程は、前記水中の前記光触媒体を沈降させることを含む、項1〜3のいずれか1項に記載の物質の酸化方法。
項5. 前記光触媒体が、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属硫化物、及び金属セレン化物からなる群より選択された少なくとも1種の光触媒物質を含んでいる、項1〜4のいずれか1項に記載の物質の酸化方法。
項6. 前記光触媒体は、酸化チタンの含有率が90質量%以上である、項1〜5のいずれか1項に記載の物質の酸化方法。
項7. 前記光触媒体が、前記光触媒物質の表面に助触媒が担持された構成を備えている、項1〜6のいずれか1項に記載の物質の酸化方法。
項8. 項1〜7のいずれか1項に記載の物質の酸化方法を利用した、水の浄化方法。
項9. 水中に含まれる物質の酸化に用いるための光触媒体であって、
前記光触媒体は、二次粒子径が40μm以上であり、
酸化チタンに助触媒が担持された構造を有し、
前記光触媒体は、酸化チタンの含有率が90質量%以上である、物質酸化用の光触媒体。
項10. 前記光触媒体は、前記水中で撹拌しながら前記光触媒体に対して光照射して使用される、項9に記載の物質酸化用の光触媒体。
項11. 前記光触媒体は、水中で光照射された後、前記水中から分離回収される、項9又は10に記載の物質酸化用の光触媒体。
項12. 前記分離回収は、前記水中の前記光触媒体を沈降させることで行われる、項9〜11のいずれか1項に記載の物質酸化用の光触媒体。
本発明によれば、光触媒体を容易に固液分離することができる、水中の物質の酸化方法を提供することができる。また、本発明によれば、水中の物質を効率的に酸化することができ、容易に固液分離することができる、物質酸化用の光触媒体を提供することもできる。さらに、本発明によれば、水中の物質の酸化方法を利用した水の浄化方法を提供することもできる。
実施例1〜2、比較例1,2及び参考例1におけるCO2生成速度と光触媒体分散濃度との関係を示すグラフである。 実施例3、比較例3,4及び参考例2におけるCO2生成速度と光触媒体分散濃度との関係を示すグラフである。 実施例1と比較例1の光触媒体の濁度比と時間との関係を示すグラフである。 実施例1の光触媒体(Pt/TiO2−G1)の顕微鏡画像である。 比較例1の光触媒体(Pt/TiO2−P1)の顕微鏡画像である。
本発明の物質の酸化方法は、水中に含まれる物質の酸化方法であって、溶存酸素の存在下、物質を含む水中において、二次粒子径が40μm以上の光触媒体に対して、光を照射する光照射工程を備えており、前記光触媒体は、光触媒物質の含有率が90質量%以上であることを特徴としている。本発明の物質の酸化方法は、当該特徴を備えることにより、水中の物質の酸化後に、光触媒体を容易に固液分離することができる。
また、本発明の物質酸化用の光触媒体は、水中に含まれる物質の酸化に用いるための光触媒体であって、光触媒体は、二次粒子径が40μm以上であり、光触媒物質としての酸化チタンに、助触媒としての貴金属が担持された構造を有し、酸化チタンの含有率が90質量%以上であることを特徴としている。本発明の光触媒体は、このような特徴を備えることにより、水中の物質を効率的に酸化することができ、さらに、物質の酸化後に、光触媒体を容易に固液分離することができる。
以下、本発明の物質の酸化方法、及び物質酸化用の光触媒体について、詳述する。なお、本明細書において、「〜」で結ばれた数値は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「〜」で結ぶことができるものとする。
1.水中の物質の酸化方法
本発明の物質の酸化方法は、水中に含まれる物質の酸化方法である。本発明の物質の酸化方法において、物質を含む水中には、溶存酸素及び光触媒体が存在している。光照射工程において、溶存酸素の存在下、水中の光触媒体に光が照射されると、水中で物質と溶存酸素とが酸化反応し、二酸化炭素等の分解物を発生しながら物質が酸化される。
(光触媒体)
光触媒体は、水中において、溶存酸素の存在下に光触媒体に光が照射されると、物質と溶存酸素との酸化反応を起こして、二酸化炭素等の分解物を発生させる光触媒物質を含んでいる。また、光触媒体は、二次粒子が40μm以上である。
光触媒体に含まれる光触媒物質としては、特に制限されず、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属硫化物、及び金属セレン化物など、酸素の存在下で物質の酸化反応を促進する、公知のものを使用することができる。光触媒体に含まれる光触媒物質は、1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
光触媒物質の具体例としては、TiO2、ZrO2、CeO2、Ta25、ZnO、WO3、SnO2、Fe23等の単純酸化物;SrTiO3、NaTaO3等のペロブスカイト型複合酸化物;K2La2Ti310、K4Nb617等の層状酸化物、ZnS、CdS等の金属硫化物;CdSe等の金属セレン化物;Ta35等の窒化物;TaON等の酸窒化物などが挙げられる。また、可視光応答性を持たせるためにCr/TaやRhのドーピングを行ったSrTiO3:Cr/Ta、SrTiO3:Rh等が挙げられる。なお、酸化亜鉛、硫化カドミウム、セレン化カドミウムについては、酸化反応条件において、自らが光酸化されて溶解する光溶解が起きやすく、安定性に問題のあることが指摘されている。また、カドミウムを含む光触媒物質は、RoHS指令の観点などから使用を避けることが望ましいと考えられる。
また、例えば、光触媒物質として酸化チタンを用いる場合、単結晶であっても活性を有するが、反応速度を高めるためにはルチル、アナターゼ、ブルッカイトといった微結晶(一次粒子)の集合体(二次粒子)を用いることが好ましい。このような微結晶の集合体は、一般に、粉末光触媒として得られる場合が多いが、本発明では、粒状であることを特徴としている。具体的には、本発明において、光触媒体は、二次粒子径が40μm以上の粒子である。粉末光触媒として活性の高いものを原料として使うことによって活性の高い粒状光触媒を調製できる可能性が高まるが、その場合は、表面積の大きな二次粒子とする観点から、粒状体調製過程において熱処理温度を400℃以下にすることが好ましい。表面積の大きな光触媒体は、細孔構造を有していても良い。細孔径としては、メソ孔、マクロ孔の何れでも良いし、その両者を併せ持っていても良い。
光触媒体の一次粒子径については、40μm未満であれば制限はないが、水中の被処理物質と光触媒表面との接触を大きくし、反応速度を高める観点からは1μm未満であることが好ましい。光触媒体の一次粒子径範囲としては、例えば1〜1000nm程度、好ましくは2〜100nm程度である。光触媒体の一次粒子径は、透過型電子顕微鏡観察、または粉末X線回折のラインブロードニング法による結晶子径測定によって確認することができる。また、一次粒子径の測定が難しい場合は次式により窒素吸着法により測定したBET比表面積から相当一次粒子径を見積もることができる(大谷文章、光触媒標準研究法、東京図書(2005)、pp.408−410)。
S=6/(ρd)
S:BET比表面積[m2-1
ρ:一次粒子の真密度[gm-3
d:一次粒子径[m]
例えば酸化チタンの場合、ρはおよそ4×106gm-3であるので、dをnmの単位で見積もる場合には次式で計算できる。
d[nm]=1500/S[m2-1
光触媒体を容易に固液分離する観点から、本発明の光触媒体の二次粒子径は40μm以上である。二次粒子径の測定方法としては、一般に、顕微鏡法、ふるい分け法、水中沈降法、レーザ回折・散乱法、コールターカウンタ法などの方法がある。また、各種形状の粒子に対する径の定義として、長軸径、短軸径、円相当径、球相当径などがあるが、以下の説明では球相当径を採用する。また粒径分布について言及する場合は分布基準として個数基準、面積基準、体積基準、重量基準があり、以下の説明では重量基準を採用するが体積基準値や個数基準値から重量基準値に換算できる場合は、その換算値を用いても良い。以上の観点から、本発明における光触媒体の二次粒子径の測定法を検討すると、水中分散状態での粒子径分布を直接測定し、重量基準の球相当径が得られるレーザ回折・散乱法は最適な測定法と言える。
本発明の光触媒体は、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(例えば、マイクロトラックベル、MT3000II)を用いて水中分散状態での二次粒子径粒度分布を測定した場合に、粒径40μm未満の粒子の粒子全体に対する割合値を意味するアンダーサイズ値が、重量基準で、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満、更に好ましくは0.05%未満である。このように測定されることにより、40μm未満の粒子をほぼ含んでいないと評価することができる。具体的な測定方法は、実施例に記載の通りである。
さらに、光触媒体を容易に固液分離する観点から、本発明の光触媒体は、以下の方法で測定される水中沈降速度が、好ましくは1.5cm/分以上、より好ましくは3cm/分以上、さらに好ましくは8cm/分以上である。なお、当該水中沈降速度の上限は、例えば粒径1000μmの粒子について観測されている600cm/分以下となる(この上限値は後述する粒径と沈降速度の関係式の適用範囲外であるため実験による観測値に基づく例である)。
[水中沈降速度の測定]
液相重力沈降法(JIS Z8820−1)を水中で行う(以下これを水中沈降法とする)ことによって、水中沈降速度の測定ができる。水中沈降法では粒子を水中に懸濁させ、一定時間静置することにより、沈降距離を測定する。JISでは粒子径分布がある場合に、具体的方法であるピペット法(JIS Z8820−2)、比重計法(JIS A1204)、沈降質量法(JIS Z8822)等に従い測定することが記載されている。本発明の場合には、40μm未満の粒子をほぼ含まないよう除去されているために、粒子の沈降に伴い粒子を含む懸濁部分と上澄みの清澄部分との境界が、測定初期には目視でも明瞭に観察される。そのため、以下のように簡易的な測定を行っても良い。光触媒体に水100mLに加え、蓋をしたスクリュー管瓶中で振り混ぜる。直ちに漏斗を使い100mLメスシリンダーに懸濁液を全量移し、この時間をt=0分として静置中の粒子沈降を目視観察する。時間と共に光触媒体が沈降して上澄みが透明になるので、この境界を目視で読み取って10mL目盛り(1.6cm間隔)の沈降距離ごとに時間を記録する。時間に対して沈降距離が直線的に増加する部分から沈降速度を算出して、水中沈降速度を求める。より具体的な測定方法は、実施例に記載の通りである。
[粒径と沈降速度の関係]
原理的には粒子沈降速度を求めれば、以下に示すストークスの式からストークス径と呼ばれる粒径(球相当径)を求めることができる。
v=d2(ρs−ρw)g/(18η)
v:粒子沈降速度[ms-1
d:粒子径[m]
ρs:粒子の密度[kgm-3
ρw:水の密度[kgm-3
g:重力加速度[ms-2
η:水の粘性[Pa・s]
上記のストークス式は粒子が石英等の非多孔質粒子の場合であるが、粒子が多孔質体である場合には式は以下のように補正される(JIS Z8820−1:2002附属書D)
v=d2{[(1−ε)ρs+ρwεf]−ρw}g/(18η)
ε:粒子の空隙率
f:空隙が水で満たされている割合
本発明の光触媒体は、多くの場合100nm以下の一次粒子の集合体として構成されるため一次粒子の間隙が存在し、実質的に多孔質体である。実際の光触媒体では、物質と結晶型によって真密度が異なり、また多孔質であるほど空隙率が高く、空隙が水で満たされる割合は表面の濡れ性によって変化する。これらの値を測定または文献などにより推定できる場合は、沈降速度の測定結果から二次粒径を計算することができる。なお、ストークス式によって沈降速度から粒子径が計算できる範囲には上限と下限があり、JSZ Z8820−1に記された液相重力沈降法の適用範囲とされる0.5〜100μmがこれに相当する。
以上のように、粒子密度、空隙率、濡れ性など、多くの因子によって沈降速度が変化するが、沈降速度式中で粒径dは二乗で式に入るため、最も影響が大きい。二次粒径が40μm以上の光触媒体であれば、種々の密度、空隙率等の試料に対し、前記した範囲の粒子沈降速度となる。
本発明において、光触媒体は、光触媒物質のみにより構成されていてもよいし、光触媒反応活性を高めることなどを目的として、他の成分(例えば、助触媒)を含んでいてもよい。
このような助触媒としては、白金、金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銀、銅、イリジウムなどが知られている。これらの中でも、白金、パラジウム、金などの貴金属を助触媒として用いることが特に好ましい。助触媒は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
助触媒の担持量が少ない範囲では、担持量の増加に伴い光触媒活性が増加する。しかし、助触媒の担持量が多すぎると助触媒自身により光が吸収・散乱されて光触媒の光吸収を妨げる原因となったり、電子と正孔の再結合中心として働いたりしてかえって光触媒活性が低下することが知られている。適切な助触媒担持量は、助触媒金属種、光触媒物質の種類、一次・二次粒子径、反応の種類などに応じて決める必要がある。100nm以下の一次粒子径の酸化チタン微粒子に対して担持する場合の、助触媒担持量の範囲は、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.01〜3質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%とすれば良い。
光触媒物質の表面に助触媒を担持する手法について制限はなく、光析出法、含浸法の他、析出沈殿法、コロイド添着法などの公知の方法を採用することができる。また、金を担持する場合であれば、本発明者らが開発した、金ヒドロキソ錯体溶液を用いた担持法(特許第5740658号、特許第6441454号)などを用いてもよい。助触媒の担持操作において、その前駆体(硝酸塩、塩化物、水酸化物、酢酸塩など)を目的助触媒物質(金属、金属酸化物)に変換するために、熱処理を必要とする場合が多い。熱処理の温度に制限は無いが、特にナノ粒子として担持した場合は、その熱凝集を防ぐため400℃以下の温度とすることが好ましい。
本発明の物質の酸化方法において、光触媒体は、酸化対象となる物質と溶存酸素を含む水中に存在している。さらに、光触媒体は、二次粒子径が40μm以上に調整されている。すなわち、本発明の物質の酸化方法で使用される光触媒体は、二次粒子径が40μm以上であるものが支配的であり、反応液中に含まれる全ての光触媒体を100質量%として、二次粒子径が40μm未満の光触媒体の割合は、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満、さらに好ましくは0.05質量%未満である。光触媒体の二次粒子径が40μm以上に調整されていることにより、水中の物質の酸化後に、光触媒体を容易に固液分離することができる。二次粒子径が40μm未満の光触媒体の割合が大きくなると、光触媒体の分離が困難になる。
さらに、本発明の物質の酸化方法において、光触媒体としては、二次粒子径が40μm未満のものを実質的に含まないことが好ましい。光触媒体として、二次粒子径が40μm未満のものを実質的に含まないとは、例えば、「レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置による測定粒子径が40μm未満の光触媒体を含まない」との意味である。なお、「レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置による測定粒子径が40μm未満の光触媒体を含まない」とは、光触媒体が40μm未満の光触媒体(粒子)を全く含まないという意味ではなく、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置による測定粒子径として、実質的に40μm未満の光触媒体(粒子)を含まないと評価できることを意味する。実質的に40μm未満の光触媒体(粒子)を含まないと評価できる場合とは、例えば、実施例で分級することにより得られた40μm以上125μm以下の粒径範囲の光触媒体を例示することができる。
本発明において、二次粒子径が40μm以上の光触媒体は、前述した光触媒物質によって実質的に構成されており、光触媒体全体に占める光触媒物質の割合は、90質量%以上であり、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
二次粒子径が40μm未満の粉末のままで光触媒体とした場合、水の攪拌により、光触媒体が懸濁状態となり、攪拌停止後も懸濁状態を長く保持するため酸化反応後の固液分離が極めて困難となる。これを避けるためには、光触媒体が速やかに沈降するようにする必要がある。本発明においては、光触媒体は、二次粒子径が40μm以上に調整されていることから、光触媒体の水中での懸濁状態の保持が抑制されており、光触媒体を水中で撹拌しながら光照射して物質を酸化しつつ、分解後には水中に迅速に沈降して、容易に固液分離することができる。本発明の物質の酸化方法において、光触媒体の分離回収工程は、水中の光触媒体を沈降させることを含むことが好ましい。
本発明において、光触媒体の二次粒子径としては、40μm以上であれば特に制限はないが、液体中で攪拌して液体中に均一に分散できる程度の上限粒子径とする必要がある。このような上限粒子径として例えば、1000μm以下、好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下が挙がられる。その形状には制限はない。真球、扁球などの球状、立方体や直方体等の多面体、針状、不規則な破砕片の形状などのいずれでも良く、これらの混合物でも良い。非球状の場合の二次粒子径は球相当径で前記の粒径範囲となるようにする。本発明においては、このような光触媒体を粒状と呼ぶことにする。一般に顆粒状、細粒状と呼ばれるものはここに含まれる。
粒状の光触媒体の二次粒子径を本発明の範囲とするためには、原料とする光触媒物質の二次粒子径が適切である場合はそのまま使用し、必要に応じて助触媒である金属の担持を行えば良い。原料とする光触媒物質が微粉状など40μm未満である場合は、これを造粒等して適切な二次粒子径としてから金属を担持するか、微粒子粉末のまま金属を担持してから造粒等して適切な二次粒子径とする手順のいずれを採用しても良い。原料とする光触媒物質がビーズ状の成形体など、例えば1mm以上の大きさである場合、破砕分級などによって適切な二次粒子径とした後に、必要に応じて助触媒を担持すれば良い。
微粉状の光触媒物質からの造粒方法としては、撹拌(転動)造粒、流動層造粒、押出し造粒、スプレードライ(噴霧乾燥)造粒等のいずれの方法でも良く、微粒子の加熱脱水縮合や焼結により塊状とした後に破砕等により小さくし更に分級して適切な二次粒子径範囲とする方法を採用しても良い。破砕法も特に限定されず、乳鉢を用いて手動で破砕する他に、ローラーミル、ハンマーミル、回転ミル、遊星ミルなどの粉砕機を用いても良い。
本発明において、光触媒体の二次粒子径を揃える方法はいかなる方法でも良く、篩掛け等の方法により分級を行えばよい。例えば実施例では目開き125μmの篩を通過し、目開き40μmの篩を通過しなかった粒状体を集めている。ただしこのままだと、破砕などの操作で生じた40μm未満の微粉体が、集めた粒状体に付着して残っている場合が多い。篩掛けとともに水中沈降法によって、残存する微粒子を確認すると共に40μm未満の粒子を除去することができる。前述のように水中粒子沈降速度は粒子の密度によって異なるが、例えば酸化チタンの場合、結晶密度(アナターゼ3.90g/cm3、ルチル4.27g/cm3)に対し、空隙率や濡れ性の影響を考慮すると沈降速度は小さくなる。検討の結果、およそ石英結晶(密度2.65g/cm3)の沈降速度と同程度であることが分かった。すなわち、40μmの大きさの石英粒子は水中で1分間に8.5cmの距離を沈降することから、酸化チタン光触媒体の沈降速度も同程度である。未精製の光触媒体から40μm未満の粒子を除去するためには、容器中に水を10cm以上の高さまで入れ、試料を水中に加えて振り混ぜや攪拌により粒子を分散させ、1分間静置した後に水面から8.5cmの部分を捨て、再び水を加えて同様の操作を繰り返せばよい。
また、本発明の物質の酸化方法において、物質を含む水中には、溶存酸素が含まれている。水中の溶存酸素濃度としては、特に制限されないが、200mg/L以下が挙げられる。溶存酸素濃度が高いほど反応速度を高くすることができ、溶存酸素は酸化反応により消費されるため、溶存酸素濃度が低下しないよう補給する必要がある。このため、酸素を含んだガス(空気等)を、バブラー等を用いて常時吹き込むことが有効である。大気圧下において、空気を水中に吹き込んだ場合、水中の溶存酸素濃度の上限値は、0℃で14.2mg/L、20℃で8.8mg/Lである。溶存酸素濃度は気相の酸素分圧に比例して高くできるので、純酸素をバブリングすれば空気バブリングの5倍(20℃で44mg/L)が上限となり、更に装置内の気相を加圧することが可能ならば、その圧力に応じて溶存酸素濃度を高めることができる。また、オゾンを含んだ空気または酸素ガスを吹き込んでも良い。実際には装置構成と許されるコストの範囲で吹き込むガスと吹き込み条件を選択すれば良い。
また、水中には、光触媒反応を阻害しない限り、酸化対象とする物質以外の物質(以下、「その他の物質」とも言う)が含まれていてもよい。但し、水中に分散している成分の光吸収波長が光触媒物質の吸収波長域と重なると、光触媒反応の活性が低下する原因となる。例えば、酸化チタンや貴金属担持酸化チタンの場合には400nm以下の光を吸収して作動するため、その他の物質を含む水は、この波長域に対して透明性を有することが好ましい。
本発明の物質の酸化方法において、水の温度としては、特に制限されず、例えば0〜90℃程度の範囲であればよい。なお、水の浄化に利用する場合であれば、通常は、2〜60℃程度の範囲である。物質の酸化反応は、温度が高いほど速度が大きくなるため、照射する光が赤外成分などを含む場合は、水温上昇による酸化反応の促進が期待できる。
光触媒体の使用量および、これを分散させる水の量で割った光触媒体の分散濃度(g/L等)は、用いる光触媒体の二次粒子径等に応じて、適宜設定すればよい。なお、物質の酸化量は、光触媒体に対する光の照射量に応じて増加させることができる。照射した光の利用効率を高める観点からは、光触媒体の分散濃度は高い方がよく、好ましくは0.1g/L以上、より好ましくは1.5g/L以上、さらに好ましくは3g/L以上である。
本発明の物質の酸化方法においては、光照射工程において、光触媒体を、水中で撹拌しながら光触媒体に対して光照射を行うことが好ましい。攪拌は、水中において、光触媒体が液中に分散するよう、光触媒体の大きさと量に応じた強さで水を撹拌する。攪拌方法としては、かき混ぜ棒による手動の攪拌、振とう機を用いる攪拌、マグネチックスターラーと磁気回転子を用いた攪拌、攪拌モーターと攪拌翼を用いる攪拌、ポンプによりタンク内に水流を作り攪拌する方法等が挙げられる。マグネチックスターラーを用いる場合は、磁気回転子を容器の底で回転させると光触媒体の一部が摺りつぶされて崩れる恐れがあることから、フィッシュクリップやスピナーフラスコ等を用い、磁気回転子を液中に保持した形で攪拌を行うことが好ましい。反応液の攪拌方法が適切でなかったり、攪拌が強すぎる場合には、光触媒体の一部が崩れて光触媒物質が40μm未満の粉として脱離し、光触媒体の固液分離が困難になることに留意すべきである。
なお、水中の光触媒体の静止状態での沈降のしやすさと、光触媒体の一部が崩れて40μm未満の粉として脱離した程度を評価するためには濁度を目安とすることができる。濁度はJIS K0101に定義が記されており、精製水1Lに対し、標準物質(カオリン、ホルマジン、ポリスチレン等)1mgを含ませ、均一に分散させた懸濁液の濁りが濁度1度と定義されている。例えば、水5mLに対して標準物質50mgを加え攪拌により均一に分散させた場合の濁度は10,000と計算されるが、分散させる物質が標準物質でない場合、この数倍あるいは数分の1となることがある。
濁度には、標準液と比較して測定する方法によって、視覚濁度、透過光濁度、散乱光濁度及び積分球濁度の区分がある。これらの測定原理による市販の濁度計を用いて測定しても良いし、一般の分光光度計と石英セルを用いて透過光濁度を測定することもできる。分光光度計を用いる場合は、JIS K0101では660nmの波長における吸光度を測定するように規定されているが、市販の濁度計では他の波長での測定値を採用しているものも多く、600〜900nmの間で測定波長を選べばよい。
光触媒体を含まない反応液の濁度をtとし、光触媒体を40μm未満の粉に粉砕し完全分散させた時の濁度をT0とし、反応後の光触媒体が使用後の静止状態で測定した反応液上澄の濁度をTとすると、本発明において以下の式で定義する「濁度比」Rは、光触媒体を粉砕した場合の何%が上澄み液中に分散状態で存在しているかの目安となる。
R(%)=((T−t)/(T0−t))×100
本発明においては、反応終了後、静止時間1分におけるRが2%以下であることが好ましく、Rが1%以下であることがより好ましい。
光触媒体に光を照射するための光源としては、特に制限されず、例えば、蛍光灯、ブラックライト、殺菌ランプ、白熱電球、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀−キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED(白色、青、緑、赤)、レーザー光、太陽光等のうち、用いる光触媒物質が応答可能な波長を含む光を選択すればよい。これらの光を直接光触媒体に当てても良いし、ミラーを用い反射させて当てても良いし、光ファイバーを用いて導いても良い。太陽光であれば、凹面鏡などを用いて集光して当てても良い。
本発明の水中の物質の酸化方法は、水の浄化方法として好適に利用することができる。すなわち、水に含まれる物質を、本発明の物質の酸化方法を利用して分解することにより、水を浄化することができる。
本発明において、酸化対象となる物質を含む水(すなわち、浄化対象となる水)は、例えば化学工業、食品加工業、水産加工業、染色業、畜産業等からの各種産業排水などがある。これらの排水、廃水に含まれる毒性物質、臭い物質、着色物質などを分解、または水中の細菌や微量有害物の分解などにより、問題物質の濃度を低減し水の浄化を行うことが可能である。
本発明において、酸化対象となる物質は、本発明の光触媒体により酸化可能な物質であれば、物質の種類は特に問わない。物質は、有機物質、無機物質のいずれであってもよい。酸化対象となる物質の具体例としては、脂肪族化合物、芳香族化合物、これらのハロゲン化物、アルコール、アルデヒド、有機酸、エーテル、エステル、アミン、糖類、オリゴマー、ポリマー、界面活性剤、窒素酸化物、有機無機塩、重金属などが挙げられ、また、これらの物質の混合物などであってもよい。また、細菌などの微生物、植物、動物およびその排泄物など各種生物由来の有機性物質であっても良い。
水中に含まれる問題物質を酸化して、その濃度を低減することができれば、酸化反応により生成する物質の種類は何でもよい。例えば炭素、酸素、水素のみからなる有機物質の場合は完全酸化により二酸化炭素と水を生じるため、二酸化炭素量を測定することで分解量を知ることができる。アミン等の場合には水素分を水に酸化して窒素分は窒素分子に変換することが理想的であるが窒素酸化物や硝酸への酸化で許容される場合もある。
液中の物質濃度の測定が可能である場合は、問題物質の濃度の低減を直接確認できる。このためには対象となる水をサンプリングし、HPLC、GC、LC/MS、GC/MS、イオンクロマトグラフ、イオン電極等の手法で分析すればよい。また、色素物質や特定試薬との反応で発色する物質の場合には分光光度計を用いてUV−VISスペクトルを測定することで濃度測定が可能である。
実際の工場等からの排水では各種汚染物質の混合物となっており、上記のような分析を行うことが難しい場合が多い。このような場合に一般に用いられる指標として、COD(化学的酸素要求量)と、BOD(生物学的酸素要求量)、TOC(全有機体炭素)がある。本発明の光触媒処理を行った後に、これらの指標値の変化から物質の酸化反応を確認できる。
2.物質酸化用の光触媒体
本発明の光触媒体は、水中に含まれる物質の酸化に用いるための光触媒体である。本発明の光触媒体は、二次粒子径が40μm以上であり、酸化チタンに助触媒が担持された構造を有し、酸化チタンの含有率が90質量%以上であることを特徴とする。
本発明の光触媒体は、前記の「1.水中の物質の酸化方法」の項目の(光触媒体)の欄に示した光触媒体のうち、酸化チタンに助触媒が担持された構造を有するものである。よって、本発明の光触媒体についての説明は、「1.水中の物質の酸化方法」の項目の(光触媒体)の欄に記載の通りであり、記載を省略する。
本発明の光触媒体は、光触媒物質としての酸化チタンの表面に、助触媒が担持された構造を有しており、このような構造を有する光触媒体は、前記の「1.水中の物質の酸化方法」の項目の(光触媒体)の欄に示した光触媒体の中でも、水中の物質を特に効率的に酸化することができるものである。酸化チタンに担持される助触媒は、前述の通り、白金、パラジウム、金などの貴金属が好ましく、前述した助触媒の中でも、特に白金及び金の少なくとも一方であることが好ましい。
前述の通り、本発明において、二次粒子径が40μm以上の光触媒体は、前述した光触媒物質によって実質的に構成されており、光触媒体全体に占める酸化チタンの割合は、90質量%以上であり、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
<実施例1>
Pt/TiO2−G1(白金担持酸化チタン粒状体)の調製と反応
酸化チタン粉末に白金を担持した後に粒状体化してPt/TiO2−G1とした。光触媒活性を酢酸の酸化分解反応で評価した。用いた酸化チタン粉末は日本アエロジル製のAEROXIDE(登録商標) TiO2 P25(以下P25とする)である。製造元カタログによると嵩比重は130g/Lの非常に嵩高い微粉体で、一次粒子径が21nmのナノ粒子酸化チタン(アナターゼとルチルの7:3混合物)から構成され、BET比表面積は50±15m2/gである。以下に本実施例の詳細手順を示す。
(1)酸化チタン粉末への光析出法によるPt担持
公称容量500mLのスピナーフラスコ(Chemglass Life Science社製、CLS−1400)にメタノール50体積%の水溶液を400mL入れ、酸化チタン粉末(P25)を8g加えた。塩化白金酸水溶液(0.1mol/L)を1.23mL加え、マグネチックスターラーを用いて撹拌(約350rpm)しながら、サイドアームキャップに接続したPFAチューブを通じ窒素ガス(500mL/min)を30分間バブリングして、フラスコ中と液中の溶存酸素を除去した。
窒素ガス流通と撹拌を続けたまま100W高圧水銀ランプ(SEN特殊光源(株)製 HL100G)の光を側方から照射した。反対側のサイドアームキャップに接続した窒素ガス出口流路に取り付けたセプタムからガスタイトシリンジにてガスサンプリングしてTCDガスクロマトグラフ(モレキュラーシーブ5Aカラム)により分析して、水素の発生を確認した。1時間光照射して、酸化チタンへのPtの光析出反応の完了により定常的に水素が発生することを確認した。
反応終了後は、遠心分離により沈殿物を回収し、ドラフト中で水とメタノールを蒸発させて沈殿を乾燥した後、100℃で乾燥し白金担持酸化チタン(Pt/TiO2)からなる光触媒体を得た。光触媒体において、酸化チタンへの白金の担持量は0.3重量%であった。また、担持された白金を透過型電子顕微鏡で観察し、白金粒子の粒度分布を調べた。平均粒径と標準偏差は3.7±0.9nmであった。
(2)光触媒体の分級
調製した光触媒体は、乾燥後に塊状となり、粒径が揃わない状態となっている。これを、以下の粉砕・篩掛けと水中沈降の操作により分級した。光触媒体をメノウ乳鉢にて粉砕し、125μmの篩を通過し40μmの篩を通過しない粒を集めた。このままでは粉砕中に生じた微粉が付着しているため、40μm未満の粒を完全に除去することができていない。そこで、以下の水中沈降操作により付着した微粉を除去した。篩掛けした40〜125μmの二次粒子をスクリュー管瓶(アズワン製 No.8)に入れ、水を100mL加え、蓋をして振り混ぜた後、60秒間静置した。完全に沈んでいる粒を残し、微粉が残り若干懸濁した状態の上澄みを水面から8.5cm分だけ捨てた。全体で100mLとなるよう水を再び加え、振り混ぜて60秒静置後に上澄みを捨てる操作を3回繰り返した。繰り返すうちに、上澄み液からは懸濁状態が消え、完全に清澄な上澄み液が得られるようになった。最後に上澄み液を捨てた後、内容物を少量の水でテフロン蒸発皿に移し約40℃に加温した。水が蒸発し終わった後、乾燥機に入れ100℃で乾燥して、二次粒子径が40〜125μmの光触媒体(Pt/TiO2−G1)を得た。
デジタルマイクロスコープ(スリーアールソルーション株式会社製、3R−MSUSB601)を用いて撮影した光触媒体の顕微鏡画像を図4に示す。観察された二次粒子は不規則な角張った破砕形状であった。視野内の最も大きな粒子でも、その最小径は125μm以下とみられ篩分け条件通りとなっていることが確認できる。
レーザ回折・散乱式 粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル、MT3000II)を用いて水中分散状態での上記試料の二次粒子径粒度分布を測定した。結果を表1に示す。測定値は体積基準値として得られたが、各粒子の密度を同じとすれば重量基準値と同一分布となるため、重量基準値として示した。また、個数基準分布への換算も行い、参考のため、あわせて表に示した。下表ではアンダーサイズ値として示しており、例えば粒径100μmに対して、これよりも小さな粒子径の粒子の重量が試料全体の重量の36%であり、100μmよりも小さな粒子の個数が試料全体の粒子個数の72.4%であることを示している。粒径40μmに対しては、重量基準、個数基準のいずれでもアンダーサイズ値は0.0%(0.05%未満)であり、これより小さな粒子をほぼ完全に含んでいない。
Figure 2021041331
(3)酢酸の酸化分解反応
光触媒体の活性評価は酢酸の酸化分解反応により行った。酢酸水溶液に光触媒体(反応前に400℃で1時間熱処理)を分散攪拌し、空気を吹き込みつつ光照射して下記の完全酸化反応により生じるCO2の生成速度を測定することにより行った。
CH3COOH + 2O2 → 2CO2 + 2H2
反応の手順は以下のように行った。ホウケイ酸ガラス材質のねじ口瓶(日電理化硝子(株)製 VG−100)を反応容器として用いた。酢酸5容量%水溶液40mLを入れ、120mgの光触媒体(光触媒体分散濃度3.00g/Lの場合)を添加し、Xeランプ(朝日分光製LAX100)で側面から照射して行った。溶液の攪拌(800rpm)にはマグネチックスターラーを用い、シリコンゴム栓に取り付けたフィッシュクリップにより回転子を液中に保持し行った。密閉した容器内ヘッドスペースの空気をポンプ(日東工器製、BPF−465P)で外部に送り、CO2計(LI−COR社製LI−840)のガスセルを通して濃度分析した後に、反応容器内の液中にバブリングで戻し、空気(108mL)を循環させた。反応中の容器温度は25±1℃となるよう制御した。光触媒反応中CO2濃度は時間に対し直線的に増加した。10分間光照射を行う間に増加したCO2濃度から生成CO2量(μmol)を求め、時間当たりのCO2生成速度(μmol/h)を計算した。本反応条件においては光照射時間を延長した場合でも、少なくとも1時間まではCO2濃度増加の時間に対する直線性(回帰直線の相関係数 R>0.9999)を確認しており(それ以上の時間ではCO2計の測定レンジ外になってくる)、各活性評価においては10分間の測定でCO2生成速度を算出した。図1に実施例1データとして示した他の光触媒体分散濃度(0.500、1.50、5.00、8.65g/L)についても同様に実験を行った。
<実施例2>
別法によるPt/TiO2−G2の調製と反応
実施例2では、酸化チタン粉末を先に粒状化してから後で白金の担持を行い、白金担持酸化チタン粒状体(二次粒子径が40〜125μmの光触媒体(Pt/TiO2−G2))を調製した。酢酸の酸化分解反応で光触媒活性を評価した。
(1)酸化チタン粒状体の調製
メタノール50体積%の水溶液に塩酸(0.1mol/L)を4.6mL加え、ここに酸化チタン粉末(P25)5g加えて振り混ぜた後、PFAシャーレに移してドラフト中の室温下で溶媒を蒸発させた。固まった酸化チタンをるつぼに移し、400℃で1時間焼成した。これを実施例1(2)の分級方法と同様にして粒状体(40〜125μm)とし、最後に400℃で1時間焼成した。
(2)光析出法による白金の担持
丸底フラスコにメタノール50体積%の水溶液を160mL入れ、(1)の酸化チタン粒状体(40〜125μm)を0.96g加えた。塩化白金酸水溶液(0.01mol/L)を1.48mL加え、フラスコ上部に取り付けた小型攪拌モーターにて撹拌翼を回転させて攪拌(約350rpm)しながら、枝管に接続したPFAチューブを通じ窒素ガス(500mL/min)を30分間バブリングして、フラスコ中と液中の溶存酸素を除去した。
窒素ガス流通を止めてフラスコを密閉し、撹拌を続けたままフラスコの下方から石英ガラスァイバーを取り付けたXeランプ光源装置(ウシオ電機製 OpticalModuleX SX−UID501XAMQ)により光照射した。実施例1(1)と同様に光照射中の水素の生成を確認しつつ1時間光照射してPtを光析出させて、二次粒子径が40〜125μmの光触媒体(Pt/TiO2−G2)を得た。光触媒体において、酸化チタンへの白金の担持量は0.3重量%であった。
(3)酢酸の酸化分解反応
酢酸の酸化分解反応は実施例1(3)と同様に行った。
<比較例1>
Pt/TiO2−P1(白金担持酸化チタン微粉体)の調製と反応
白金担持酸化チタン微粉体を調製し、酢酸の酸化分解反応で光触媒活性を評価した。
(1)白金担持酸化チタン微粉体の調製
実施例1(1)と同条件で酸化チタン粉末(日本アエロジル製 P25)に白金を担持した後に、塊状の光触媒体をメノウ乳鉢にて粉砕し、40μmの篩通過分を集めた。これを更にメノウ乳鉢にて微粉になるまで十分にすりつぶして、二次粒子径が40μm未満のPt/TiO2−P1を得た。
デジタルマイクロスコープ(スリーアールソルーション株式会社製、3R−MSUSB601)を用いて撮影した光触媒体の顕微鏡画像を図5に示す。観察される二次粒子は実施例1の粒状体と比べて明らかに小さな粒子の集合体であることが写真から分かる。
レーザ回折・散乱式 粒子径分布測定装置(マイクロトラックベル、MT3000II)を用いて水中分散状態での上記試料の二次粒子径粒度分布を測定した。結果を表2に示す。粒径40μmに対するアンダーサイズ値は重量基準で29.8%、個数基準値で99.6%であった。即ち、ほぼ全ての個数の光触媒体粒子は40μmよりも小さいが、ごく少数の粗大粒子が存在して重量基準値が低くなっている。乳鉢で微粉になるまですりつぶした際に、一部の試料が乳鉢や乳棒の表面に貼り付くと共に緩く固まる現象が見られ、この分が粒度分布の測定中に再分散しきれなかったためと考えられる。このままでも半数以上の粒子が水中で5μm以下に分散することが分かるが、更に微粉体の水中での分散を完全なものとするため、以下の比較例で光触媒微粉体については反応前に超音波分散処理を行うことにした。
Figure 2021041331
(2)酢酸の酸化分解反応
反応前にすりつぶした微粉を反応液中に十分に分散させるため、120mgの光触媒体(光触媒体分散濃度3.00g/Lの場合)を酢酸5容量%水溶液40mLに加えた後で、超音波洗浄機(アズワン製、US−2R)により30分間超音波を照射しつつ、時々振り混ぜて良く分散させた。液温が40℃程度になったため、水冷および空冷にて常温まで戻した。以下は実施例1(3)と同様に酢酸の酸化分解反応を行った。図1に比較例1データとして示した他の光触媒体分散濃度(0.125、0.250、0.500、1.00、1.50、8.65g/L)についても同様に実験を行った。
<比較例2>
TiO2−P1(酸化チタン微粉体)による反応
二次粒子径が40μm未満の酸化チタン粉末(P25)をそのまま光触媒体として用い、比較例1(2)と同様の手順で超音波分散を行った後に、実施例1(3)と同様に酢酸の酸化分解反応を行った。
<参考例1>
TiO2−G1(酸化チタン粒状体)の調製と反応
酸化チタン粉末(P25)を実施例2(1)の手順で粒状体とし、白金を担持せずにそのまま光触媒体として用いて、実施例1(3)と同様に酢酸の酸化分解反応を行った。
(実施例1〜2、比較例1,2及び参考例1の反応結果)
水中の酢酸の酸化分解反応において反応液量(0.04L)に対する光触媒体添加量(g)を光触媒体分散濃度(g/L)で表し、各分散濃度に対するCO2生成速度(μmol/h)をプロットしたものを図1に示す。実施例1,2のPt/TiO2−G1とPt/TiO2−G2では3g/Lまで直線的にCO2生成速度が増加し、更に分散濃度を増やしても測定を行った範囲上限の8.75g/Lに至るまで緩やかにはなるがCO2生成速度が増加し、40μmol/hに達した。これに対し、比較例1,2及び参考例1の光触媒体では、分散濃度を増やしても30μmol/hにすることができなかった。
実施例1(Pt/TiO2−G1)に対し比較例1(Pt/TiO2−P1)は全く同じ光触媒体を微粉体にして用いている。分散濃度が低い時は微粉体の方がCO2生成速度が高いが1.5g/L以上で逆転しPt/TiO2−G1のCO2生成速度が高くなった。この理由は明らかではないが、P25の微粉体では照射光の散乱が非常に強く、吸収されて光触媒反応に使われる光量が少なくなっていることが考えられる。比較例2(TiO2−P1)と参考例1(TiO2−G1)を比べると、同様に分散濃度が高い時に粒状体の活性が高くなっていることが分かるが、Ptを担持した場合の方が粒状体と微粉体の活性の差が大きい。同じ粒状体、微粉体どうしでPtの有無について比較すると粒状体の方がPt担持による活性増大が大きいことが分かる。
熱触媒反応に使われる触媒の場合は、同じ温度条件で少ない触媒量で高い反応速度を出せる触媒が優れているとされるのに対し、光触媒反応では一般に、使用する光触媒体量が多くなっても、同じ照射光量で高い反応速度を達成できる(照射光の利用効率が高い)ことが重視される。実施例1,2のPt/TiO2−G1光触媒体とPt/TiO2−G2光触媒体は粒状体(粒径範囲40〜125μm)であることと、白金が担持されていることの両条件により高い光触媒活性を有することが示された。
<実施例3>
ビーズ状酸化チタンからのPt/TiO2−G3の調製と反応
以下の実施例と比較例では、ビーズに成形された酸化チタンから前記の実施例、比較例と同様の粒状体および微粉体を調製した。用いた酸化チタンビーズは堺化学製のCS−300S−12である。製造元のホームページによると、転動造粒により成型された球状成型体で直径は1〜2mm、結晶型はアナターゼ100%で、BET比表面積は70m2/gと記載されている。この表面積から前記式により相当一次粒子径を計算すると21nmとなる(実施例1のP25の実測一次粒子径と同程度、実測BET比表面積の違いは粒径分布の違いに基づくと考えられる)。この酸化チタンを原料とし具体的には以下の手順でPt/TiO2−G3の調製と反応を行った。
(1)酸化チタン粒状体の調製
ビーズ状のCS−300S−12をメノウ乳鉢で少しずつ破砕し、125μmの篩を通過し40μmの篩を通過しない粒を集めた。以下実施例1(2)の手順と同様にして微粒子を除去し粒状の光触媒体(二次粒子径40〜125μm)とした。
(2)光析出法による白金の担持
酸化チタン粒状体への白金の担持は実施例2(2)と同様にして行った。
(3)酢酸の酸化分解反応
標記反応による光触媒活性評価は実施例1(3)と同様にして行った。
<比較例3>
ビーズ状酸化チタンからのPt/TiO2−P2の調製と反応
(1)酸化チタン微粉体の調製
ビーズ状のCS−300S−12をメノウ乳鉢で破砕し、40μmの篩を通過する粉体を集めた。
(2)光析出法による白金の担持
丸底フラスコに水80mL入れ、前記の酸化チタン微粉体(<40μm)を0.96g加えた。超音波洗浄機を用い比較例1(2)と同様に、酸化チタン微粉体を水中に良く分散させた。ここにメタノール80mLと塩化白金酸水溶液(0.1mol/L)を0.15mL加え、以下実施例2(2)と同様に白金を担持し、二次粒子径が40μm未満の光触媒体(Pt/TiO2−P2)を得た。
(3)酢酸の酸化分解反応
標記反応による光触媒活性評価は比較例1(2)と同様にして行った。
<比較例4>
ビーズ状酸化チタンからTiO2−P2の調製と反応
酸化チタン微粉体の調製を比較例3(1)と同様に行い、白金の担持はせずに光触媒体(TiO2−P2)とし、そのまま酢酸の酸化分解反応による光触媒活性評価を比較例1(2)と同様にして行った。
<参考例2>
ビーズ状酸化チタンからTiO2−G2の調製と反応
酸化チタン粒状体の調製を実施例3(1)と同様に行い、白金の担持はせずに光触媒体(TiO2−G2)とし、そのまま酢酸の酸化分解反応による光触媒活性評価を比較例1(2)と同様にして行った。
(実施例3、比較例3,4及び参考例2の反応結果)
ビーズ状の酸化チタンであるCS−300S−12を原料として調製した光触媒体の酢酸酸化分解反応結果をまとめたものを図2に示す。図1と同様に粒状体であり白金が担持されている実施例3のPt/TiO2−G3が高い光触媒活性を示している。粒状体ではなく微粉体であったり、白金が担持されていない場合は活性が低い。微粉体のPt/TiO2−P2やTiO2−P2は分散濃度が高くなるとCO2生成速度が一定となるが、その一定となる分散濃度は酸化チタン粉末であるP25を原料として調製した光触媒体Pt/TiO2−P1やTiO2−P1(図1参照)よりも高くなっており、粒状体の活性が微粉体より高くなる分散濃度も図1より高い。その理由は図1に示した光触媒体の作製に使用したP25酸化チタンよりも図2に示した光触媒体の作製に使用したCS−300S酸化チタンの方が、相対的に散乱が起きにくいためと考えられる。
実施例3のPt/TiO2−G3は10g/Lの分散濃度条件で50μmol/hの非常に高いCO2生成速度を示した。これは図1の実施例の曲線を10g/Lまで外挿しても達することのない高い速度である。実施例1,2,3について10g/Lよりも更に高い分散濃度での活性評価を行った場合には、分散可能な濃度限界と頭打ちになるCO2生成速度が異なると予想され、どれが最も高いCO2生成速度を達成可能かはわからない。ただ、CS−300S−12は光触媒用でなく脱硝反応等の触媒として開発されたことを考慮すると、従来からの光触媒用酸化チタンを従来からの微粉形態で利用した図1の比較例1(Pt/TiO2−P1)よりも実施例3が高い光触媒活性を示したことは全く予想外の結果である。元々ビーズ状に成形されて機械強度を有する酸化チタンを所定の粒子径範囲に粉砕分級し、更に白金を担持することで高い光触媒活性を発現することは注目に値する。
実施例1〜3、比較例1〜4、及び参考例1,2における光触媒体の調製に関する情報を表3に纏めた。
Figure 2021041331
表3において、( )内の一次粒子径は、BET比表面積から計算した相当一次粒子径である。
[水中沈降速度の測定]
実施例1と比較例1の光触媒体について、以下の方法で粒子沈降速度の測定を行った。実施例1のPt/TiO2−G1(0.1g)を水100mLに加え、蓋をしたスクリュー管瓶中で振り混ぜた。直ちに漏斗を使い100mLメスシリンダーに懸濁液を全量移し、この時間をt=0分として静置中の粒子沈降を目視観察した。時間と共に光触媒体粒子が沈降して上澄みが透明になるので、この境界を目視で読み取って10mL目盛り(1.6cm間隔)の沈降距離ごとに時間を記録した。時間に対して沈降距離が直線的に増加する部分から沈降速度を算出し、8.3cm/分と求められた。メスシリンダーの下部になると粒子有無の境界が不明瞭になって正確な読み取りは難しくなったが、およそ2分後にはほぼすべての粒子が最下部まで沈降し、5分後には上澄みは完全に清澄になった。
比較例1のPt/TiO2−P1(0.1g)を水100mLに加え、超音波分散処理を30分間行なった後に実施例1試料と同様に粒子沈降速度の測定を行った。5分経過後では、メスシリンダーの上部に清澄部分は全く見られなかった。30分経過後では水面から約3mmのみが清澄になり、約0.01cm/分と非常に沈降が遅いことが分かった。
以上より、比較例1の粉末試料に比して実施例1の試料は非常に早く沈降し固液分離が容易であることが示された。この結果から、実施例1〜3及び参考例1,2の光触媒体は、固液分離が容易であることが分かる。
[濁度比の測定]
粒状の光触媒体の固液分離が容易である点は、前記の沈降速度測定によって示されたが、水中攪拌や反応により粒状体の微粉化が起きるか否かについては上澄みの僅かな濁りを評価する必要があり目視法では難しい。そこで実施例1と比較例1の光触媒体について、以下の条件の分散液について濁度比の測定を行った。
(a)実施例1のPt/TiO2−G1(0.12g)を酢酸分解反応に用いた後の分散液(分散濃度3.0g/L)で濁度比の測定を行った。
(b)実施例1のPt/TiO2−G1(0.3g)を水40mLに分散し、攪拌モーターに取り付けた攪拌翼で350rpmにて攪拌した。Pt/TiO2−G1は全量が均一に液中に分散された。18時間攪拌を続けた後の分散液(分散濃度7.5g/L)で濁度比を測定した。
(c)実施例1のPt/TiO2−G1(0.3g)を水40mLに分散し、この分散液(分散濃度7.5g/L)で濁度比を測定した。
(d)比較例1のPt/TiO2−P1(0.12g)を酢酸分解反応に用いた後の分散液(分散濃度3.0g/L)で濁度比の測定を行った。
濁度の測定装置には分光光度計(島津製作所製、UV−1800)を用い、波長870nmの吸光度測定により行った。市販の濁度計(共立理化学研究所、WA−PT−4DG)の測定波長が同じ870nmであることから、この測定値と比較して比例関係を確認した。両法のうち分光光度計を用いる方法が測定レンジが広く希釈操作を少なくできるため、以下の詳細手順により濁度比測定を行った。(a)〜(d)の各分散液を濁度比の測定直前に再度良く振り混ぜて、3.0mLを採取し((d)については10倍希釈後に)分光光度計用の蓋付き石英セル(光路長10mm)に入れた。蓋をして再度良く振り混ぜて分光光度計にセットし、870nmの吸光度を測定した。この時間をt=0分として、以下時間ごとに吸光度を測定した。分光光度計セルの内部で徐々に粒状体または微粉体が沈降するため吸光度が減少した。同じ分散濃度で微粉体を十分分散させた分散液についてt=0分の吸光度を別途測定し、これを基準に各試料の濁度比を時間に対して計算した。結果を図3に示す。
(a)〜(c)の実施例1試料ではいずれも濁度比が小さく、1分後には0.5%以下となっていることから、沈降性が良いことが分かる。反応中や水中攪拌中に粒状体が壊れて微粉体を生じた場合は濁度比が大きくなることが予想されるが、0.5分以降では(a)や(b)の濁度比は(c)と大きな差がなく、1時間後には(a)〜(c)がほぼ一致することから、粒状体の微粉化がほぼ起きていないことを示している。
これに対し、(d)の比較例1試料ではt=0分での濁度比100%からの減少は極めて遅く、1時間後でも濁度比80%以上であることから、微粒子の液中沈降速度が小さいため固液分離が困難であることが分かる。
以上より、二次粒子径が40μm以上の光触媒体は、液中の攪拌に対して安定であり、攪拌停止時の沈降が早く固液分離が非常に容易であることが示された。さらに、二次粒子径が40μm以上の光触媒体が、酸化チタンに助触媒が担持された構造を有する場合、従来最も活性が高いと認識されていた微粒子懸濁条件用の光触媒体よりも高い光触媒活性を発現するという予想外の結果となった。
本発明の光触媒体を用いた水中に含まれる物質の酸化方法は、従来の微粒子粉末光触媒よりも高い活性を発現でき、かつ固液分離が容易であるために水の浄化用途に有用に用いることができる。各種工場の排液処理施設、産業廃棄物処理施設、畜舎汚水処理施設などへの適用が例示される。

Claims (12)

  1. 水中に含まれる物質の酸化方法であって、
    溶存酸素の存在下、物質を含む水中において、二次粒子径が40μm以上の光触媒体に対して、光を照射する光照射工程を備えており、
    前記光触媒体は、光触媒物質の含有率が90質量%以上である、物質の酸化方法。
  2. 前記光照射工程において、前記光触媒体を、前記水中で撹拌しながら前記光触媒体に対して光照射を行う、請求項1に記載の物質の酸化方法。
  3. 前記光照射工程の後、前記光触媒体を前記水中から分離回収する、分離回収工程を備える、請求項1又は2に記載の物質の酸化方法。
  4. 前記分離回収工程は、前記水中の前記光触媒体を沈降させることを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の物質の酸化方法。
  5. 前記光触媒体が、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属硫化物、及び金属セレン化物からなる群より選択された少なくとも1種の光触媒物質を含んでいる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の物質の酸化方法。
  6. 前記光触媒体は、酸化チタンの含有率が90質量%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の物質の酸化方法。
  7. 前記光触媒体が、前記光触媒物質の表面に助触媒が担持された構成を備えている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の物質の酸化方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の物質の酸化方法を利用した、水の浄化方法。
  9. 水中に含まれる物質の酸化に用いるための光触媒体であって、
    前記光触媒体は、二次粒子径が40μm以上であり、
    酸化チタンに助触媒が担持された構造を有し、
    前記光触媒体は、酸化チタンの含有率が90質量%以上である、物質酸化用の光触媒体。
  10. 前記光触媒体は、前記水中で撹拌しながら前記光触媒体に対して光照射して使用される、請求項9に記載の物質酸化用の光触媒体。
  11. 前記光触媒体は、水中で光照射された後、前記水中から分離回収される、請求項9又は10に記載の物質酸化用の光触媒体。
  12. 前記分離回収は、前記水中の前記光触媒体を沈降させることで行われる、請求項9〜11のいずれか1項に記載の物質酸化用の光触媒体。
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