以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
(A1)システム構成
図1は、ログデータ分析装置50の分析対象である無線通信システムの構成の例を示すブロック図である。
無線通信システムとモバイル通信をするユーザ端末10a、10b、10c、10d、10eが存在する。以下、複数のユーザ端末を特定しない場合には、アルファベットの小文字を省略した符号「10」とし、また他の構成要素の符号についても同じように表す。ここでユーザ端末10は、スマートフォンやタブレット型PC(Personal Computer)等がある。ユーザ端末10は、モバイル網の運用者が設置した無線基地局20a、20b、20cと無線で接続し、音声や映像等のデータを送受信する。無線基地局20は、パケット中継装置30a、30bと有線で接続し、ユーザ端末10から受信したデータや無線基地局20で作成したログデータをパケットに分割し中継する。パケット中継装置30a、30bは、パケット中継装置30cと有線で接続し、パケットを中継する。パケット中継装置30cは、パケット中継装置30a、30bから受信したパケットをインターネット40へ送信したり、インターネット40から受信したパケットをパケット中継装置30a、30bへ送信する。
通信品質変化の原因を分類する原因分類システムであるログデータ分析装置50は、パケット中継装置30と有線で接続し、無線基地局20及び通信品質を測定する設備の一方又は両方が出力するログデータをパケット中継装置30経由又は記録媒体から読み込んで収集する。ログデータ分析装置50は、ログデータを参照し、無線基地局20の品質変化を検知すると、その原因を分類する。通信品質変化の原因を分類する手順は後述する。
なお、ユーザ端末10、無線基地局20、パケット中継装置30とログデータ分析装置50については、その構成や、種類、数は、図1に示す例に限らず、適宜、他の態様としてもよい。
(A2)ログデータ分析装置の構成
図2は、ログデータ分析装置50の構成の例を示すブロック図である。
ログデータ分析装置50は、パケット送受信ポート51、ストレージ52、メモリ53、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)54を有する。ストレージ52には、ソフトウェア処理部55のプログラムの一部又は全部が記憶されている。ここで、ストレージ52とは、ハードディスクや半導体ディスクやフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリによって構成される記憶装置である。メモリ53には、ログデータ分析装置50が動作するときに、少なくともその動作に必要なプログラムが読み込まれる。CPU54は、メモリ53へ読み込まれたプログラムに従って、ログデータ分析装置50の処理を実行する。メモリ53は、ソフトウェア処理部55以外に図示を省略するOS(Operating System)等のプログラム実行環境を含んでもよいし、CPU54が一時的に読み書きするデータを含んでもよい。CPU54は複数のCPUで構成されてもよい。
ソフトウェア処理部55は、ログデータ収集プログラム56、ログデータ分析プログラム57、変化原因分類プログラム58、モデル表示プログラム59、及び分類結果表示プログラム61を含む。各プログラムはCPU54によって実行されて処理部の機能を発揮する。例えば、ログデータ収集プログラム56は、ログデータ収集部の機能を発揮する。このため、以下で、プログラムを主語とする説明は、プログラムを実行するCPU54を主語とする説明に置き換えてもよい。また、ソフトウェア処理部55は、ログデータ蓄積領域63、分析結果蓄積領域64、モデル蓄積領域65、及び変化原因蓄積領域66を含む。
ユーザインタフェースプログラム62は、モデル蓄積領域65及び変化原因蓄積領域66に蓄積されたデータを取得し、モデル及び通信品質の変化原因を表示装置67に出力する機能を発揮する。また、モバイル網の運用者がキーボード68やマウス69を操作した内容を、入力として受け付ける機能も発揮する。
(A3)ログデータ分析装置の動作シーケンス
図3は、ログデータ分析装置50の動作シーケンスの例を示す図である。
ログデータ分析装置50の分類結果表示プログラム61は、モバイル網の運用者70からの各無線基地局の通信品質の変化原因の入力を受け付けると(1001)、それを変化原因蓄積領域66に書き込む。ログデータ分析装置50のログデータ分析プログラム57は、変化原因蓄積領域66が更新されると、ログデータ蓄積領域63に蓄積されたログデータを読み込み(1002)、ログデータを分析する(1003)。そして、ログデータ分析プログラム57は、分析した結果を分析結果蓄積領域64に書き込む。変化原因蓄積領域66に蓄積されたデータの形式と、ログデータ蓄積領域63に蓄積されたログデータの形式と、分析手順と、分析結果蓄積領域64に蓄積される分析結果の形式は後述する。
次に、ログデータ分析装置50のログデータ分析プログラム57は、分析結果蓄積領域64と変化原因蓄積領域66に蓄積されたデータを読み込み(1004)、無線基地局の通信品質の変化原因を分類するためのモデルを作成する(1005)。そして、ログデータ分析プログラム57は、作成したモデルをモデル蓄積領域65に書き込む。モデル作成の手順と、モデル蓄積領域65に蓄積されるモデルの形式は図9、図10を参照して後述する。
次に、ログデータ分析装置50のログデータ分析プログラム57が、無線基地局20からログデータを受信すると(1006)、又は、記録媒体からログデータを読み込むと、ログデータ分析プログラム57は、ログデータ蓄積領域63の形式にログデータを整形して、ログデータを書き込む。そして、ログデータ分析プログラム57は、ログデータ蓄積領域63に蓄積されたログデータを読み込み(1007)、ログデータを分析する(1008)。更に、ログデータ分析プログラム57は、分析した結果を分析結果蓄積領域64に書き込む。
次に、ログデータ分析装置50の変化原因分類プログラム58は、モデル蓄積領域65に蓄積されたモデル、及び分析結果蓄積領域64に蓄積された分析結果を読み込み(1009)、それらを用いて無線基地局20の通信品質の変化原因を分類する(1010)。そして、変化原因分類プログラム58は、分類結果を分類結果表示プログラム61に提供する。変化原因の分類の手順は後述する。
最後に、ログデータ分析装置50の分類結果表示プログラム61は、変化原因分類プログラム58から提供された分類結果をモバイル網の運用者70に表示して(1011)、分類結果の確認を促す。モバイル網の運用者70に分類結果を表示する手順は、後述する。モバイル網の運用者70が、各無線基地局の通信品質の変化原因を確認又は修正すると、分類結果表示プログラム61は、その結果を入力として(1001)変化原因蓄積領域66に書き込む。変化原因蓄積領域66が更新されると、ログデータ分析装置50は、新しいモデルを作成し直して、前のモデルを更新する。
(A4)ログデータを分析しモデルを作成する手順
図4は、ログデータ分析プログラム57の構成の例を示すブロック図である。
ログデータ分析プログラム57は、ログデータ読込プログラム571、相関係数算出プログラム572、平均値算出プログラム573、相関係数モデル作成プログラム574、平均値モデル作成プログラム575、及び重み算出プログラム576等を含む。
なお、ログデータ分析プログラム57は、相関係数算出プログラム572や平均値算出プログラムの他に、分散や確率など他の統計値を算出するプログラムを含んでもよい。また、相関係数モデル作成プログラム574や平均値モデル作成プログラム575の他に、分散や確率など他の統計値で原因を分類するモデルを作成するプログラムを含んでもよい。
図5は、ログデータ分析プログラム57のログデータ読込プログラム571が、ログデータ蓄積領域63から読み込むログデータの例を示す図である。
ログデータ蓄積領域63に格納されるログデータは、無線基地局20毎に、タイムスタンプ6301、通信品質指標6302、及びモバイル網の運用者が収集している各分析対象データ6303等を含む。分析対象データ6303は、例えば、当該基地局への接続ユーザ数やトラフィック量などの無線基地局20の動作状態を示す指標である。例えば、エントリ6304aは、「2019年5月4日10時」に、通信品質指標は「100」%であり、この時、分析対象データAは「3000」、分析対象データBは「99」であったことを示す。このログデータをログデータ読込プログラム571が読み込むと、ログデータ分析プログラム57の相関係数算出プログラム572は、通信品質指標6302と、各分析対象データとの相関係数を算出する。また、ログデータ分析プログラム57の平均値算出プログラム573は、各分析対象データの平均値を算出する。
図6は、相関係数算出プログラム572が計算した相関係数の算出結果6401の例を示す図である。
相関係数の算出結果6401は、無線基地局名6402、モバイル網の運用者が収集している各分析対象データ6403等を含む。例えば、エントリ6404aは、無線基地局「20a」の通信品質指標と分析対象データAの一定期間の相関係数は「0.2」であり、無線基地局「20a」の通信品質指標と分析対象データBの一定期間の相関係数は「0.7」であることを示す。相関係数算出プログラム572は、相関係数の算出結果6401を作成すると、分析結果蓄積領域64に書き込む。
図7は、平均値算出プログラム573が計算した平均値の算出結果6411の例を示す図である。
平均値の算出結果6411は、無線基地局名6412、モバイル網の運用者が収集している各分析対象データ6413等を含む。例えば、エントリ6414aは、無線基地局「20a」の分析対象データAの一定期間の平均値は「3000」であり、無線基地局「20a」の分析対象データBの一定期間の平均値は「95」であることを示す。平均値算出プログラム573は、平均値の算出結果6411を作成すると、分析結果蓄積領域64に書き込む。
図8は、変化原因蓄積領域66の例を示す図である。
変化原因蓄積領域66は、無線基地局名6601a、及び変化原因6602aを含む。例えば、エントリ6603aは、無線基地局「20a」は「変化原因1」によって通信品質に変化が生じたことを示す。変化原因蓄積領域66は、モバイル網の運用者が、実際に変化原因を分類した内容をユーザインタフェースプログラム62を介して入力することによって作成される。
相関係数モデル作成プログラム574は、相関係数の算出結果6401及び変化原因蓄積領域66が存在すると、それらを読み込み、決定木等の分類手法を用いて無線基地局の通信品質の変化原因及びそのときの相関係数との関係から特徴的なパターンを見出し、無線基地局の分析対象データの相関係数の値に基づいて変化原因を分類するモデルを作成する。最後に、作成した相関係数モデルをモデル蓄積領域65に書き込む。一方、平均値モデル作成プログラム575は、平均値の算出結果6411及び変化原因蓄積領域66が存在すると、それらを読み込み、決定木等の分類手法を用いて無線基地局の通信品質の変化原因とそのときの平均値との関係から特徴的なパターンを見出し、無線基地局の分析対象データの平均値に基づいて変化原因を分類するモデルを作成する。最後に、作成した平均値モデルをモデル蓄積領域65に書き込む。
図9は、モデル蓄積領域65内に蓄積された、無線基地局の通信品質の変化原因を分析対象データの相関係数で分類する相関係数モデルの例を示す図である。
相関係数モデルは、ノード641及びリーフ642を含む。このモデルで無線基地局の通信品質の変化原因を分類する場合、最初にノード641aの判定式を参照する。例えば、分析対象データAの相関係数が「0.5」未満の場合、ノード641bの判定式へ進む。一方、分析対象データAの相関係数が「0.5」以上の場合、ノード641cの判定式へ進む。ノード641bへ進むと、分析対象データBの相関係数が「0.6」以上の場合、リーフ642aへ進み、通信品質が変化した原因は変化原因1であると分類する。一方、分析対象データBの相関係数が「0.6」未満の場合、リーフ642bへ進み、通信品質が変化した原因は変化原因2であると分類する。ノード641cへ進むと、分析対象データCの相関係数が「0.3」以上の場合、リーフ642cへ進み、通信品質が変化した原因は変化原因3であると分類する。一方、分析対象データCの相関係数を参照し「0.3」未満の場合、リーフ642dへ進み、通信品質が変化した原因は変化原因4であると分類する。
このとき、それぞれのリーフ642による分類確率が算出可能である。分類確率とは、作成したモデルに相関係数の算出結果を実際に入力するときに、各リーフにそれぞれの変化原因の無線基地局がどのぐらいの確率で分類されるかを示す指標である。例えば、リーフ642aに10個の無線基地局が分類されるとして、そのうち変化原因1の無線基地局は9個だけであり、残りの1個の無線基地局は変化原因2である場合、変化原因1の分類確率は90%となり、変化原因2の分類確率は10%となる。
相関係数は、通信品質指標と分析対象データがお互い大きな変化をするときに、特徴的な値が表れる傾向がある。従って、各分析対象データの相関係数で無線基地局の通信品質の変化原因を分類することによって、通信品質指標が大きく劣化した場合や向上した場合の原因分類に有効である。
図10は、モデル蓄積領域65内に蓄積された、無線基地局の通信品質の変化原因を分析対象データの平均値で分類する平均値モデルの例を示す図である。
平均値モデルは、ノード641及びリーフ642を含む。このモデルで無線基地局の通信品質の変化原因を分類する場合、最初にノード641dの判定式を参照する。例えば、分析対象データAの平均値が「2500」以上の場合、ノード641eの判定式へ進む。一方、分析対象データAの平均値が「2500」未満の場合、ノード641fの判定式へ進む。ノード641eへ進むと、分析対象データBの平均値が「50」以上の場合、リーフ642eへ進み、通信品質が変化した原因は変化原因1であると分類する。一方、分析対象データBの平均値が「50」未満の場合、リーフ642fへ進み、通信品質が変化した原因は変化原因2であると分類する。ノード641fへ進むと、分析対象データCの平均値が「80」以上の場合、リーフ642gへ進み、通信品質が変化した原因は変化原因3であると分類する。一方、分析対象データCの平均値が「80」未満の場合、リーフ642hへ進み、通信品質が変化した原因は変化原因4であると分類する。
平均値モデルにおいても、相関係数モデルと同様に、それぞれのリーフ642による分類確率が算出可能である。
平均値は、通信品質指標の変化が大きくない場合でも、変化原因に応じて、分析対象データに特徴的な値が表れる傾向がある。従って、各分析対象データの平均値で無線基地局の通信品質の変化原因を分類することによって、通信品質指標の劣化が継続する場合や向上が継続する場合の原因分類に有効である。
図11は、無線基地局の通信品質変化原因を、図9に示す相関係数モデルで分類した分類結果と、各リーフ642の分類確率の例を示す図である。
相関係数モデルでの分類確率6421は、無線基地局名6422、このモデルでの分類結果6423、及び分類されたリーフにおける分類確率6424を含む。例えば、エントリ6425aは、無線基地局「20a」は「変化原因1」のリーフに分類され、変化原因1である確率が90%、変化原因2である確率が10%あることを示す。エントリ6425bは、無線基地局「20b」が「変化原因1」のリーフに分類され、変化原因1である確率が90%、変化原因2である確率が10%あることを示す。エントリ6425cは、無線基地局「20c」が「変化原因2」のリーフに分類され、変化原因1である確率が35%、変化原因2である確率が40%、変化原因3である確率が25%あることを示す。エントリ6325dは、無線基地局「20d」が「変化原因4」のリーフに分類され、変化原因4である確率が100%であることを示す。
ここで図8に示す変化原因6602aを参照すると、無線基地局20a、20b、20c、20dの変化原因は、それぞれ「変化原因1」、「変化原因1」、「変化原因3」、「変化原因4」であることが分かる。図11に示す分類結果6423を参照すると、このモデルによる無線基地局20a、20b、20c、20dの変化原因の分類結果は、それぞれ「変化原因1」、「変化原因1」、「変化原因2」、「変化原因4」であり、4分の3のエントリで正答している。
図12は、無線基地局の通信品質変化原因を、図10に示す平均値モデルで分類した分類結果と、各リーフ642の分類確率の例を示す図である。
平均値モデルでの分類確率6431は、無線基地局名6432、このモデルでの分類結果6433、及び分類されたリーフにおける分類確率6434を含む。例えば、エントリ6335aは、無線基地局「20a」が「変化原因3」のリーフに分類され、変化原因2である確率が40%、変化原因3である確率が60%あることを示す。エントリ6435bは、無線基地局「20b」が「変化原因1」のリーフに分類され、変化原因1である確率が90%、変化原因2である確率が10%あることを示す。エントリ6435cは、無線基地局「20c」が「変化原因3」のリーフに分類され、変化原因2である確率が40%、変化原因3である確率が60%あることを示す。エントリ6435dは、無線基地局「20d」が「変化原因4」のリーフに分類され、変化原因4である確率が100%であることを示す。
ここで図8に示す変化原因6602aを参照すると、無線基地局20a、20b、20c、20dの変化原因は、それぞれ「変化原因1」、「変化原因1」、「変化原因3」、「変化原因4」であることが分かる。図12に示す分類結果6433を参照すると、このモデルによる無線基地局20a、20b、20c、20dの変化原因の分類結果は、それぞれ「変化原因3」、「変化原因1」、「変化原因3」、「変化原因4」であり、4分の3のエントリで正答している。
相関係数モデルによる各劣化原因の分類確率と平均値モデルによる各劣化原因の分類確率が算出された後、重み算出プログラム576は、それぞれのモデルの分類確率に乗算する重みを算出する。それぞれのモデルの分類確率にそれぞれのモデルの重みを乗算し、算出した値を足し合わせたときに、分類確率が最も大きい値となった変化原因を、通信品質の変化原因として分類する。そして、各モデルに乗算する重みの組み合わせを複数のパターンで実施し、運用管理者が特定した品質変化原因との一致度が高い重み、すなわち正答率が最も高くなる重みの組み合わせを選択する。重みの組み合わせの選択は、後述するように、運用者の選択に従ってログデータ分析プログラム57が選択してもよいし、ログデータ分析プログラム57が自動的に選択してもよい。
図13は、重み算出プログラム576が重みを算出する処理のフローチャートである。
重み算出プログラム576は、相関係数モデルと平均値モデルとを組み合わせた複合モデルにおいて、相関係数モデル及び平均値モデルの各々の最適な重みを決定する。なお、本実施例では二つのモデルを組み合わせて複合モデルを作成しているが、三つ以上のモデルを組み合わせて複合モデルを作成してもよい。
まず、相関係数モデルの重み[k]を0.0に設定する。平均値モデルの重み[k]を、1−(相関係数モデルの重み[k])で算出する(5761)。すなわち、相関係数モデルの重み[k]が0.0の場合、平均値モデルの重み[k]を1.0に設定する。次に、相関係数モデルでの分類確率に相関係数モデルの重み[k]を乗算する。また、平均値モデルでの分類確率に平均値モデルの重み[k]を乗算する(5762)。そして、それらの結果を合算する(5763)。
一方、相関係数モデルの重み[k]が0.0、平均値モデルの重み[k]が1.0の場合、相関係数モデルでの分類確率、平均値モデルでの分類確率のそれぞれに0.0、1.0を乗算し合算すると、その結果は図12に示す分類確率6334と同じになる。
次に、エントリ毎に、分類確率が最も大きい値の「変化原因」を、複合モデルでの分類結果とする(5764)。相関係数モデルの重み[k]が0.0、平均値モデルの重み[k]が1.0の場合、複合モデルでの分類結果は図12に示す分類結果6433と同じになる。
次に、図8に示す変化原因6602aと比較して正しく分類できた無線基地局の数を算出し、正しく分類できた無線基地局の数を全エントリ数で除算して、正答率[k]を算出する(5765)。4分の3のエントリで正答していれば、正答率[k]は75%となる。次に、相関係数モデルの重み[k+1]を0.1増加させ、同様の処理を繰り返す(5766)。
図14は、無線基地局の通信品質の変化原因を分類するために、複合モデルが算出した分類確率と分類結果の例を示す図である。
複合モデル5771aは、無線基地局名5772a、複合モデルでの分類結果5773a、及び分類確率5774を含む。分類確率5774a〜5774dは、相関係数モデルの重みが0.5、かつ平均値モデルの重みが0.5のときに算出された値を記している。例えば、エントリ5775aは、無線基地局「20a」は「変化原因1」に分類され、変化原因1である確率が45%、変化原因2である確率が25%、変化原因3である確率が30%あることを示す。エントリ5775bは、無線基地局「20b」は「変化原因1」に分類され、変化原因1である確率が90%、変化原因2である確率が10%あることを示す。エントリ5775cは、無線基地局「20c」は「変化原因3」に分類され、変化原因1である確率が17.5%、変化原因2である確率が40%、変化原因3である確率が42.5%あることを示す。エントリ5775dは、無線基地局「20d」は「変化原因4」に分類され、変化原因4である確率が100%であることを示す。ここで図8を参照すると、無線基地局20a、20b、20c、20dの変化原因は、それぞれ「変化原因1」、「変化原因1」、「変化原因3」、「変化原因4」であったことが分かる。図13に示す分類結果5773aを参照すると、複合モデルが無線基地局20a、20b、20c、20dの変化原因として分類した結果は、それぞれ「変化原因1」、「変化原因1」、「変化原因3」、「変化原因4」であり、四つのエントリの全てで正答している。
図15は、相関係数モデルの重み、平均値モデルの重みの組み合わせのパターンを変化させたときの正答率5781の例を示す図である。
それぞれの重みの組み合わせパターン毎の正答率5781は、相関係数モデルの重み5782、平均値モデルの重み5783、正答率5784を含む。例えば、エントリ5785aは、相関係数モデルの重みが0.0、平均値モデルの重みが1.0のとき、正答率は75%であることを示す。エントリ5785bは、相関係数モデルの重みが0.5、平均値モデルの重みが0.5のとき、正答率は100%であることを示す。
重み算出プログラム576は、それぞれの重みの組み合わせパターン毎の正答率5781を作成すると、その中で最も正答率が高いエントリの重みの組み合わせを、モデル蓄積領域65に書き込む(5767)。図14に示す場合、相関係数モデルの重みが0.5、平均値モデルの重みが0.5のときに最も正答率が高く、重み算出プログラム576は、相関係数モデルの重みと平均値モデルの重みを0.5としてモデル蓄積領域65に書き込む。そして、モデル表示プログラム59は、複合モデルを構成しているモデルと、算出された重みの組み合わせをモバイル網の運用者に表示する。
図16は、モデル表示画面の例を示す図である。
モデル表示画面5901は、重み選択欄5902、重み表示欄5903a、5903b、複合モデル正答率表示欄5904、モデル選択欄5905、モデルID表示欄5906、モデル名称表示欄5907、及びOKボタン5909等を含む。例えば、エントリ5908aは、相関係数モデルの重みが「0.0」、平均値モデルの重みが「1.0」のとき、複合モデルの正答率が「75%」であることを示す。エントリ5908bは、相関係数モデルの重みが「0.5」、平均値モデルの重みが「0.5」のとき、複合モデルの正答率が「100%」であることを示す。エントリ5908cは、相関係数モデルの重みが「1.0」、平均値モデルの重みが「0.0」のとき、複合モデルの正答率が「75%」であることを示す。
モバイル網の運用者は、モデル表示画面5901の画面を確認し、モデル選択欄5905でモデルを選択でき、重み選択欄5902で重みの組み合わせを選択できる。モデル、及び重みを選択した後に、OKボタン5909を押下操作する。OKボタン5909が操作されると、モデル表示プログラム59は、モデル蓄積領域65に書き込まれた、複合モデルを構成しているモデルと重みを更新、又は修正する。
(A5)ログデータを分析し変化原因を分類する手順
図17は、変化原因分類プログラム58の構成の例を示すブロック図である。
変化原因分類プログラム58は、ログデータ分析結果読込プログラム581、モデルと重み読込プログラム582、及び変化原因算出プログラム583を含む。
図3に示すログデータ分析装置50のログデータ収集プログラム56は、定期的に無線基地局からログデータを受信する(1006)。なお、ログデータは記録媒体から読み込んでもよい。ログデータ収集プログラム56は、取得したログデータを図5に示す形式に加工して、ログデータ蓄積領域63に書き込む。このログデータをログデータ分析プログラム57のログデータ読込プログラム571が読み込むと、ログデータ分析プログラム57の相関係数算出プログラム572は、通信品質指標6202と、各分析対象データとの相関係数を算出する。相関係数算出プログラム572は、相関係数の算出結果6401を図6に示す形式にて分析結果蓄積領域64に書き込む。また、ログデータ分析プログラム57の平均値算出プログラム573は、各分析対象データの平均値を算出する。平均値算出プログラム573は、平均値の算出結果6411を図7に示した形式にして分析結果蓄積領域64に書き込む。
変化原因分類プログラム58のログデータ分析結果読込プログラム581が、分析結果蓄積領域64から分析結果を読み込むと、続いて変化原因分類プログラム58のモデルと重み読込プログラム582が、モデル蓄積領域65から図9及び図10に示すモデルと図15に示す重みとを読み込む(1008)。
変化原因分類プログラム58の変化原因算出プログラム583は、図6に示す形式の分析結果を、モデル蓄積領域65から読み込んだ相関係数モデルに入力し、図11に示す形式の分類確率を出力する。また、図7に示す形式の分析結果を、モデル蓄積領域65から読み込んだ平均値モデルに入力し、図12に示す形式の分類確率を出力する。続いて変化原因算出プログラム583は、これらの分類確率に、モデル蓄積領域65から読み込んだ重みを乗算する。
図18は、無線基地局の通信品質の変化原因を分類するために、複合モデルが算出した分類確率と分類結果の例を示す図である。
複合モデルが算出した結果5771bは、無線基地局名5772b、複合モデルでの分類結果5773b、及び分類確率5774e〜5774hを含む。分類確率5774は、相関係数モデルの重みが0.5、平均値モデルの重みが0.5のときに算出された値を記している。例えば、エントリ5775eは、無線基地局「20p」は「変化原因4」に分類され、変化原因4である確率が100%であることを示す。エントリ5775fは、無線基地局「20q」は「変化原因2」に分類され、変化原因1である確率が17.5%、変化原因2である確率が50%、変化原因3である確率が12.5%あることを示す。エントリ5775gは、無線基地局「20r」は「変化原因1」に分類され、変化原因1である確率が45%、変化原因2である確率が25%、変化原因3である確率が30%あることを示す。エントリ5775hは、無線基地局「20s」は「変化原因3」に分類され、変化原因1である確率が17.5%、変化原因2である確率が40%、変化原因3である確率が42.5%あることを示す。変化原因算出プログラム583は、算出された分類確率と分類結果(図18)を分類結果表示プログラム61に提供する。
(A6)分類した変化原因を表示する手順
図3に示すログデータ分析装置50の分類結果表示プログラム61は、変化原因算出プログラム583が算出した変化原因の分類結果を受け取ると、ユーザインタフェースプログラム62を介して、モバイル網の運用者70に表示する(1010)。
図19は、変化原因表示画面の例を示す。
変化原因表示画面5911は、モバイル網の運用者に通信品質変化原因の確認を促すために表示される。変化原因表示画面5911は、確認優先度欄5912、無線基地局名欄5913、分類確率1位と分類確率2位の差の表示欄5914、分類結果欄5915、及びOKボタン5917を含む。分類結果表示プログラム61は、分類確率1位と分類確率2位の差5914が小さい順に、変化原因の分類結果を表示する。例えば、エントリ5916aは、無線基地局「20s」では、分類確率1位(変化原因3の42.5%)と分類確率2位(変化原因2の40%)の差が2.5%であり、「変化原因3」に分類されることを示す。エントリ5916bは、無線基地局「20r」では、分類確率1位(変化原因1の45%)と分類確率2位(変化原因3の30%)の差が15%であり、「変化原因1」に分類されることを示す。エントリ5916cは、無線基地局「20q」では、分類確率1位(変化原因2の50%)と分類確率2位(変化原因1の17.5%)の差が32.5%であり、「変化原因2」に分類されることを示す。エントリ5916dは、無線基地局「20p」では、分類確率1位(変化原因4の100%)と分類確率2位(その他の変化原因の0%)の差は100%であり、「変化原因4」に分類されることを示す。
モバイル網の運用者は、変化原因表示画面5911の分類結果5915を確認し、その内容に応じた対策を無線基地局に施す。通信品質の劣化が解消すれば、分類結果5915が正しいと推定される。品質変化が解消しなければ、分類結果5915が誤っていると推定される。モバイル網の運用者は、分類結果5916が正しくないときは分類結果5916を修正し、最後にOKボタン5917を押下操作する。OKボタン5917が操作されると、分類結果表示プログラム61は、分類結果5915を変化原因蓄積領域66に書き込む(1010)。
このとき、変化原因表示画面5911の上位にあるエントリは、正答確率がそれほど高くないと推定されるエントリである。モバイル網の運用者が、変化原因表示画面5911の上位にあるエントリを優先的に確認することによって、正答確率がそれほど高くないと推定される無線基地局の分類結果が修正されて優先的に蓄積され、原因分類の精度が向上する。一方、変化原因表示画面5911の下位にあるエントリは、正答確率が高いと推定されるエントリである。モバイル網の運用者は、時間がなければ、変化原因表示画面5911の下位にあるエントリについては、無線基地局の対策を施して分類結果を検証せずに、OKボタンを操作してもよい。この結果、変化原因蓄積領域66内に短時間で多くのデータを蓄積できる。変化原因蓄積領域66内のデータが増加すると(例えば、変化原因蓄積領域66内のデータの更新毎、所定の時間間隔など)、相関係数モデル、及び平均値モデルが更新され、原因分類の精度が向上する。また、無線基地局の対策を施す前にOKボタンが操作された変化原因表示画面5911の下位にあるエントリについては、対策を施し次第、改めて確認するとよい。
以上に説明した処理では、複数のモデルに各モデルの重みを乗算して組み合わせた複合モデルを用いて、無線基地局の通信品質の変化原因を分類する。これによって、無線基地局の通信品質の変化原因を高精度で分類できる。また、正答確率がそれほど高くないと推定される無線基地局の分類結果を、モバイル網の運用者に優先的に確認するよう促すことによって、正答確率がそれほど高くないと推定される無線基地局の分類結果が修正されて優先的に蓄積され、モデルが更新され、原因分類の精度を短時間で向上できる。
なお、本発明及び/又は本実施例は、ログデータ分析装置50による構成のほか、ログデータ分析方法や、ログデータ分析装置50で実行されるコンピュータプログラムとしても構成できる。コンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されるとよい。記録媒体としては、例えば、フロッピーディスク、CD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用できる。
以上に説明したように、本発明の実施例の通信品質分析システムは、通信設備及び通信品質を測定する設備の少なくとも一つが出力し、分析対象データを含むログデータを取得するログデータ収集部(ログデータ収集プログラム56)と、分析対象データの統計値を算出し、算出された統計値から通信設備の品質変化原因を分類するための複数のモデル(例えば、相関係数モデル、平均値モデル)を作成し、作成された各モデルによって算出される分類確率に、各モデルの重みを乗算した値から通信設備の品質変化原因を分類するための複合モデルを作成するログデータ分析部(ログデータ分析プログラム57)とを備え、ログデータ分析部は、作成された複合モデルによって導出される品質変化原因と、運用管理者が特定した品質変化原因との一致度が高い重みの組み合わせを選択し、前記複合モデルを作成するので、高精度で品質変化原因を特定可能なモデルを作成できる。
また、ログデータ分析部は、分析対象データと通信品質指標との相関係数を算出する相関係数算出部(相関係数算出プログラム572)と、算出された相関係数から通信設備の品質変化原因を分類するモデルを作成する相関係数モデル作成部(相関係数モデル作成プログラム574)と、通信品質指標の平均値を算出する平均値算出部(平均値算出プログラム573)と、算出された平均値から通信設備の品質変化原因を分類するモデルを作成する平均値モデル作成部(平均値モデル作成プログラム575)とを有するので、品質変化原因と相関が高い通信品質指標によって品質変化原因を高精度に特定できると共に、平均値の併用によって相関関係だけでは捉えられない品質変化原因の変化を捉えることができる。
また、ログデータ分析部は、各モデルの重みの組み合わせを複数のパターンで試行し、品質変化原因を最も高い確率で分類可能な重みの組み合わせを選択する重み算出部(重み算出プログラム576)を有するので、全ての重みのパターンで最適の組み合わせを選択できる。また、計算が単純で処理を迅速に実行できる。
また、収集したログデータに作成された複合モデルを適用して通信品質変化原因を分類する変化原因分類部(変化原因分類プログラム58)を備えるので、通信品質が変化(劣化又は向上)した原因を高精度に特定できる。
また、複合モデルによって算出される分類確率の値が小さい順に、分類した変化原因を出力する分類結果表示部(分類結果表示プログラム61)を備えるので、分類確率が低い通信品質変化原因から教師データが準備され,モデルの分類精度を早期に向上できる。すなわち、教師データを作成する工数を抑制できる。
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。