以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、実施形態に係る表示制御システム及び表示システムの構成を表すブロック図である。
図1に表したように、実施形態に係る表示制御システム100は、表示制御装置110及び記憶装置120を備える。記憶装置120は、溶接検査に関するデータを記憶する。表示制御装置110は、溶接検査に関するデータをユーザインタフェースに表示させる。
実施形態に係る表示システム200は、表示制御システム100、表示装置210、及び入力装置220を備える。表示制御装置110は、表示装置210にユーザインタフェースを表示させる。ユーザは、表示装置210に表示されたユーザインタフェースを通して、溶接検査に関するデータを容易に確認できる。また、ユーザは、入力装置220により、ユーザインタフェースを介して表示制御装置110へデータを入力できる。
ここで、溶接検査について具体的に説明する。溶接検査では、溶接部の非破壊検査が行われる。
図2は、実施形態に係る検査システムの構成を表す模式図である。
図2に表したように、実施形態に係る検査システム300は、複数の検出素子を有する検出器を含む。
検出器は、例えば図2に表したように、人が把持できるスティック状のプローブ310である。検出器は、溶接部を検査するための複数の検出素子を含む。プローブ310を把持した人は、プローブ310の先端を溶接部13に接触させ、溶接部13を検査する。以降では、プローブ310を把持し、溶接検査を実行する人(例えば検査者)を、ユーザという。
図3は、実施形態に係る検査システムのプローブ先端の内部構造を表す模式図である。
プローブ310先端の内部には、図3に表したように、マトリクスセンサ311が設けられている。マトリクスセンサ311は、複数の検出素子を含む。検出素子は、例えば、超音波を送受信可能な超音波センサ312である。超音波センサ312は、例えば、トランスデューサである。複数の超音波センサ312は、互いに交差するX方向(第1配列方向)及びY方向(第2配列方向)に沿って並んでいる。この例では、X方向とY方向は、互いに直交している。X方向とY方向は、直交していなくても良い。
図2及び図3は、部材10を検査する様子を表している。部材10は、金属板11(第1部材)と金属板12(第2部材)が、溶接部13においてスポット溶接されて作製されている。図3に表したように、溶接部13では、金属板11の一部と金属板12の一部が溶融し、混ざり合って凝固した凝固部14が形成されている。
検査時には、検査対象とプローブ310との間で超音波が伝搬し易くなるように、検査対象の表面にカプラント15が塗布される。それぞれの超音波センサ312は、カプラント15が塗布された部材10に向けて超音波USを送信し、部材10からの反射波RWを受信する。
具体的な一例として、図3に表したように、1つの超音波センサ312が溶接部13に向けて超音波USを送信する。超音波USの一部は、部材10の上面又は下面などで反射される。複数の超音波センサ312のそれぞれは、この反射波RWを受信(検出)する。それぞれの超音波センサ312が順次超音波USを送信し、それぞれの反射波RWを複数の超音波センサ312で受信する。
検査装置320は、得られた反射波の検出結果を用いて、プローブ310の溶接部13に対する傾きの算出、及び溶接部13の検査を実行する。ここでは、溶接部13の表面の法線方向とプローブ310の方向との間の角度を傾きと言う。プローブ310の方向は、例えば、超音波センサ312の配列方向に垂直なZ方向に対応する。プローブ310が溶接部13に垂直に接しているとき、傾きはゼロである。
検査装置320は、傾きの算出結果及び溶接部13の検査結果を記憶装置120に記憶する。表示制御装置110は、記憶装置120に記憶された傾きの算出結果を参照する。又は、検査装置320は、傾きの算出結果及び溶接部13の検査結果を表示制御装置110に送信しても良い。以降では、傾きの算出結果及び検査結果が、検査装置320から表示制御装置110へ直接送信される例について説明する。
検査装置320は、有線通信、無線通信、又はネットワークを介してプローブ310及び表示制御装置110と接続される。1つの処理装置が、表示制御装置110及び検査装置320として機能しても良い。
図4は、実施形態に係る表示制御システムにより表示されるユーザインタフェースの一例である。
図5は、溶接検査の様子を表す模式図である。
図6〜図8は、実施形態に係る表示制御システムによる処理を説明するための図である。
図9は、実施形態に係る表示制御システムにより表示されるユーザインタフェースの一例である。
表示制御装置110は、記憶装置120に記憶されたデータ及び検査装置320から送信されたデータに応じた情報をユーザインタフェースに表示させる。例えば図4に表したように、ユーザインタフェース900は、領域910を含む。
領域910は、2次元状に広がる表示領域である。領域910には、印911及び許容範囲912が表示される。領域910における印911の位置は、プローブ310の傾きを示す。具体的には、領域910での或る一方向における位置は、プローブ310の溶接部13に対するX方向まわりの角度を示す。領域910での別の一方向における位置は、プローブ310の溶接部13に対するY方向まわりの角度を示す。
例えば、領域910は、互いに直交する第1方向D1及び第2方向D2に広がる。図4の例では、第1方向D1は、横方向であり、第2方向D2は、縦方向である。以降では、第1方向D1を横方向とし、第2方向D2を縦方向として説明する。例えば、印911の横方向の位置は、プローブ310の溶接部13に対するY方向まわりの角度を示す。印911の縦方向の位置は、プローブ310の溶接部13に対するX方向まわりの角度を示す。
表示制御装置110は、新たな傾きの算出結果の受信に応じて、領域910における印911の表示を更新する。例えば、表示制御装置110は、新たな傾きの算出結果を受信する度に、領域910における印911の表示を更新する。許容範囲912は、傾きの目標値に対して、許容される誤差の範囲を示している。許容範囲912の大きさは、印911が許容範囲912の内側にあるときに、適切な検査結果が得られるように決定される。
許容範囲は、図形で示される。図4の例では、許容範囲は、円で示されている。許容範囲を示す図形は、適宜変更である。例えば、許容範囲の形は、楕円形又は角形であっても良い。許容範囲は、複数の点の集合又は複数の線の集合によって示されても良い。プローブ310を把持したユーザは、領域910の表示を参考にしつつ、印911が許容範囲912の内側に入るようにプローブ310の傾きを調整する。
プローブ310の傾きとその許容範囲が示されたユーザインタフェース900が表示されることで、ユーザは、溶接検査に関する情報を容易に把握できる。すなわち、実施形態に係る表示制御システム100によれば、溶接検査に関する情報をより分かり易くユーザに表示できる。
図4の例では、さらに第1軸913及び第2軸914が表示されている。第1軸913は、第1方向D1(横方向)に平行である。第2軸914は、第2方向D2(縦方向)に平行である。第1軸913は、領域910の縦方向の中心に位置する。第2軸914は、領域910の横方向の中心に位置する。第1軸913と第2軸914の交点は、傾きの目標値を示している。すなわち、印911が第1軸913と第2軸914の交点に位置するとき、プローブ310の傾きは、ゼロである。許容範囲912の中心は、第1軸913と第2軸914の交点に位置している。
プローブ310の傾きを変化させた際、印911の移動方向を、プローブ310の傾きの変化方向と対応付けれることが好ましい。例えば、印911の移動方向が傾きの変化方向と対応付けられた状態では、プローブ310を横方向に向けて傾きを変化させると、印911は領域910上を横方向に移動する。プローブ310を前方又は後方に向けて傾きを変化させると、印911は領域910上を縦方向に移動する。なお、プローブ310を横方向に向けて傾きを変化させるとは、プローブ310の前後方向まわりの角度を変化させることを意味する。同様に、プローブ310を前方又は後方に向けて傾きを変化させるとは、プローブ310の横方向まわりの角度を変化させることを意味する。印911の移動方向が傾きの変化方向と対応付けられることで、ユーザは領域910の表示と実際のプローブ310の傾きとをより直感的に対応付けることができる。印911と許容範囲912との位置関係に基づき、プローブ310をどちらに傾ければ良いか、直感的に理解することができる。
例えば、プローブ310には、印911の移動方向と傾きの変化方向とを対応付けるための目印などが設けられる。ユーザUがその目印を特定の方向に向けることで、超音波センサ312の配列方向とユーザUから見た方向とが対応付けられる。例えば、超音波センサ312が配列されたX方向が、ユーザUから見た横方向と平行となる。これらの方向の対応付けが終わると、図5に表したように、ユーザUは、プローブ310を溶接部13に接触させる。このとき、ユーザUからみた前方、後方、左方、右方、上方、及び下方は、図5、図6(a)、及び図6(b)に表した通りである。この状態で、例えば図6(a)に表したように、ユーザUが、左方に向けてプローブ310の傾きを変化させる。検査装置320により、変化後のプローブ310の傾きが算出される。表示制御装置110は、新しく算出された傾きに基づいて、領域910における印911の表示を更新する。このとき、印911は、領域910上を左方に移動する。
同様に、ユーザUが右方に向けてプローブ310の傾きを変化させると、印911は右方に移動する。ユーザUが前方に向けてプローブ310の傾きを変化させると、印911は上方に移動する。ユーザUが後方に向けてプローブ310の傾きを変化させると、印911は下方に移動する。このように、プローブ310を傾ける方向と印911の移動方向とが対応付けられることで、ユーザUが領域910を参照したときに、プローブ310をどちらに傾ければ良いか判断し易くなる。
表示制御装置110は、プローブ310の傾きと目標値との第1差、又はプローブ310の傾きと許容範囲との第2差に応じて、印911の表示の態様を変化させても良い。例えば、表示制御装置110は、印911を点滅させて表示させる。表示制御装置110は、第1差又は第2差に応じて、印911の点滅の周期を変化させる。例えば、表示制御装置110は、第1差又は第2差が小さくなるほど、点滅の周期を短くする。表示制御装置110は、第1差又は第2差が小さくなるに連れて、印911の色を変化させても良い。
表示制御装置110が音響装置と接続される場合、表示制御装置110は、第1差又は第2差に応じた音を音響装置に出力させても良い。例えば、表示制御装置110は、印911を表示させる際に、断続的に音を出力させる。表示制御装置110は、第1差または第2差が小さくなるほど、出力させる音の周期を短くする。表示制御装置110は、第1差又は第2差が小さくなるに連れて、出力させる音色を変化させても良い。
表示制御装置110は、許容範囲912の大きさを調整する操作を受け付け可能であっても良い。ユーザは、溶接検査で求められる精度に応じて許容範囲912の大きさを任意に設定できる。例えば、ユーザは、入力装置220を用いて、表示制御装置110へ操作を入力する。図4に表したように、ユーザインタフェース900には、許容範囲912の大きさを調整するための調整部920が表示される。調整部920は、スライダで表されている。ユーザは、ポインタ901をスライダ内のバー921上に移動させ、入力装置220を用いたドラッグ&ドロップによりバー921を動かす。例えば図7に表したように、許容範囲912の大きさは、バー921の位置に応じて変化する。
調整部920として、許容範囲を示す値の入力欄が表示されても良い。例えば、ユーザは、入力欄に値を入力することで、許容範囲の大きさを調整できる。又は、ユーザが、領域910に表示された許容範囲912を、ポインタ901でドラッグ&ドロップし、許容範囲912の大きさを調整できても良い。
ユーザインタフェース900には、許容範囲を自動による調整に切り替えるための切替部925が表示されても良い。図4の例では、切替部925は、アイコンである。切替部925は、チェックボックスでも良い。ユーザがポインタ901を操作して切替部925をクリックすると、許容範囲の大きさが自動的に調整される。
許容範囲の大きさは、記憶装置120に記憶された過去の傾きの算出結果と過去の検査結果に基づいて設定される。プローブ310の傾きは、溶接部13の検査結果に影響する。例えば、プローブ310の傾きが大きすぎると、溶接部13の径が実際よりも小さく算出される。プローブ310の傾きが小さくなるに連れて、算出される溶接部13の径が大きくなる。プローブ310の傾きが十分に小さくなると、算出される溶接部13の径は、ほとんど変化しなくなる。記憶装置120には、このような過去に算出されたプローブ310の傾きと溶接部13の径との関係が記憶される。
表示制御装置110は、記憶装置120に記憶されたデータを基に、プローブ310の傾きの変化に対して、溶接部13の径の変化が小さくなる境界値を決定する。表示制御装置110は、この境界値に基づいて許容範囲の大きさを設定する。例えば、表示制御装置110は、境界値を許容範囲の大きさとして設定する。又は、検査の精度をより高めるために、表示制御装置110は、境界値に基づいて算出される、より小さな値を許容範囲として設定しても良い。
図4に表したように、ユーザインタフェース900には、設定部930及び操作部940がさらに表示されても良い。
設定部930では、ユーザが溶接検査に関するパラメータを設定できる。図4の例では、入力欄931a〜931c、932、933、934、及び935a〜935cが表示されている。
入力欄931a〜931cには、溶接された部材の厚みがそれぞれ入力される。入力欄932には、プローブ310の先端の径が入力される。入力欄933には、溶接部13の径の閾値が入力される。例えば、スポット溶接を検査する場合、反射波の検出結果に基づいて溶接部13の径を算出できる。算出された径が閾値以上のとき、溶接は良好と判定される。入力欄933の値は、入力欄931a〜931cに入力された値に基づいて自動的に入力されても良い。例えば、表示制御装置110は、入力欄931a〜931cに入力された厚みを有する部材の接合に必要な径を、溶接に関する規格に従って算出する。入力欄933には、算出された値が自動的に入力される。
入力欄934には、傾きの算出時及び溶接部13の検査時に設定されるボクセルの数が入力される。入力欄935a〜935cには、それぞれ、各ボクセルのX方向、Y方向、及びZ方向の長さが入力される。ボクセルの詳細については、後述する溶接部13の範囲の推定において説明する。
操作部940には、検査システム300を操作するためのメニューが表示される。図4の例では、アイコン941〜943が表示されている。アイコン941がクリックされると、プローブ310からの超音波の送信が開始され、傾きの算出が実行される。これに伴い、印911が領域910に表示される。アイコン942がクリックされると、溶接部13の検査が実行される。例えば、検査は、アイコン942がクリックされた直前の反射波の検出結果を用いて実行される。アイコン943がクリックされると、プローブ310からの超音波の送信が停止する。
例えば、アイコン939をクリックすることで、設定部930の表示の折り畳み及び展開を切り替えることができる。同様に、アイコン949をクリックすることで、操作部940の表示の折り畳み及び展開を切り替えることができる。また、設定部930及び操作部940は、領域910と同じウインドウで表示されても良いし、別のウインドウで表示されても良い。
ユーザは、印911が許容範囲912に入ったことを確認すると、アイコン942をクリックする。これにより、プローブ310の傾きが十分に小さい状態で、溶接部13の検査が実行され、より正確な検査結果が得られる。アイコン942以外に、検査を開始させるためのボタンがプローブ310又は検査装置320に設けられていても良い。
又は、ユーザがプローブ310の傾きを変化させ、印911が許容範囲912に入ったときに、自動的に溶接部13の検査が実行されても良い。例えば、表示制御装置110は、許容範囲912の設定データを予め検査装置320に送信する。検査装置320は、プローブ310の傾きを算出した際に、傾きが許容範囲内かどうか判定する。傾きが許容範囲内であるとき、溶接部13の検査を自動的に開始する。検査が自動的に実行されることで、ユーザは、アイコン942を操作する必要が無い。また、印911が許容範囲912に入った後、アイコン942を操作するまでの間に、次の反射波が検出されると、その反射波の検出結果に基づいて検査が実行される。その最新の検出結果が取得された際に印911が許容範囲912の外にあると、正しい検査結果が得られない可能性がある。検査が自動的に実行されることで、このような課題を解決できる。
検査装置320によって、プローブ310が物体と適切に接触しているか判定されても良い。プローブ310が接触していないと、溶接部13の状態を反映した検出結果が得られない。プローブ310が接触していないときの検出結果を用いて傾きの算出又は検査が実行されると、誤った結果が出力される可能性がある。例えば、検査装置320は、反射波の強度に基づいて、プローブ310が物体と適切に接触しているか判定する。プローブ310が物体と接触していないと、検出される反射波の強度は低くなる。検査装置320は、反射波の強度を所定の閾値と比較することで、プローブ310の接触を判定する。
なお、プローブ310が物体と接触しているか否かの判定は、換言すると、適切な反射波の検出結果が得られているか否かの判定である。例えば、プローブ310は、物体と直接接触しておらず、カプラントを介して接触していても良い。この場合、プローブ310と物体との間でカプラントを介して超音波が十分に伝搬する。このため、傾きの算出又は検査に適した検出結果が得られる。プローブ310が検査対象と直接接触していても、プローブ310と検査対象との間がカプラントで十分に充填されていないときは、適切な検出結果が得られない可能性がある。ここでは、反射波の検出結果に基づいて、その検出結果が傾きの算出又は検査に使用可能と判定されることを、プローブ310が物体と接触していると言う。
例えば、検査装置320は、プローブ310が物体と接触していると判定すると、プローブ310の傾きを算出する。検査装置320は、算出した傾きを表示制御装置110へ送信する。表示制御装置110は、傾きの受信に応じて、印911の表示を更新する。検査装置320は、プローブ310が物体と接触していないと判定すると、傾きを算出しない。検査装置320は、算出結果を表示制御装置110へ送信しない。又は、検査装置320は、傾きの算出が無効であることを示すデータを表示制御装置110へ送信しても良い。
例えば、表示制御装置110は、傾きが継続的に送信されているか判定する。直前の傾きの受信から所定時間が経過したとき、又は無効を示すデータを受信したとき、表示制御装置110は、検査システム300から傾きを取得できないと判定する。この場合、表示制御装置110は、プローブ310が物体と接触していないことを直接的又は間接的にユーザインタフェース900に表示させる。
例えば図8(a)に表したように、溶接部13に接触しているプローブ310を、部材10から離れる方向に移動させる。検査装置320は、プローブ310が物体と接触していないと判定する。表示制御装置110は、例えば図8(b)に表したように、表示させていた印911を領域910から消す。これにより、プローブ310の非接触が、ユーザインタフェース900を通して間接的にユーザに報知される。又は、表示制御装置110は、図8(c)に表したように、エラーメッセージ915を表示させても良い。これにより、プローブ310の非接触が、より直接的にユーザに報知される。これらの報知によって、ユーザは、プローブ310の非接触にすぐに気づくことができる。ユーザは、プローブ310を溶接部13に適切に接触させることで、検査をより早く再開できる。
プローブ310が物体に接触していないと判定された後に、プローブ310が物体に接触していると判定されると、検査装置320は、傾きの算出を再開する。検査装置320は、算出した傾きを表示制御装置110に送信する。表示制御装置110は、傾きを受信すると、印911の表示を再開させる。このとき、例えば、エラーメッセージ915は自動的に閉じられる。
検査装置320によって溶接部13の検査が実行されたときに、表示制御装置110に検査結果が送信されても良い。表示制御装置110は、検査結果をユーザインタフェース900に表示させる。例えば図9(a)に表したように、検査結果950がユーザインタフェースに表示される。この例では、項目951〜955が表示されている。
項目951は、検査の判定結果を示す。例えば、項目951には、「OK」、「NG」、又は「NA」が表示される。「OK」は、適切に溶接されていることを示す。「NG」は、溶接されていないことを示す。「NA」は、検査できなかったことを示す。項目952には、反射波の検出結果から推定される溶接部13の状態が表示される。例えば、状態としては、「溶接されている」、「溶接されていない」、「溶接部が薄すぎる」、又は「径が小さすぎる」などを示す情報が表示される。項目953には、反射波の検出結果から推定される溶接部13の径が表示される。項目954は、溶接部13の最も長い径が表示される。項目955は、溶接部13の最も短い径が表示される。
例えば図9(b)に表したように、検査システム300の動作のログがユーザインタフェースに表示されても良い。図9(b)に表したログ960は、例えば、過去の傾きの算出結果、検査結果などが表示される。
例えば、アイコン959をクリックすることで、検査結果950の表示の折り畳み及び展開を切り替えることができる。同様に、アイコン969をクリックすることで、ログ960の表示の折り畳み及び展開を切り替えることができる。検査結果950及びログ960は、領域910と同じウインドウで表示されても良いし、別のウインドウで表示されても良い。
以降では、傾きの算出方法及び検査方法について、具体的な一例を説明する。
図10は、実施形態に係る検査管理システムの構成を表す模式図である。
図11は、実施形態に係る検査管理システムを用いた溶接検査の流れを表すフローチャートである。
図10に表したように、実施形態に係る検査管理システム400は、表示システム200及び検査システム300を備える。ユーザは、検査管理システム400を用いて溶接検査を行う。ここでは、溶接検査を行うユーザがプローブ310を持って検査する例について説明する。
ユーザは、まず、溶接部13にカプラントを塗布する(ステップS1)。ユーザは、プローブ310を溶接部13に接触させる(ステップS2)。プローブ310が溶接部13に接触した状態で、複数の超音波センサ312が、溶接部13を含む部材10に向けて超音波を送信し、反射波を受信する。プローブ310は、反射波の検出結果を検査装置320へ送信する。検査装置320は、検出結果を受信すると、溶接部13のX方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれの範囲を推定する(ステップS3)。
検査装置320は、推定された範囲における反射波の検出結果から、プローブ310の溶接部13に対する傾きを算出する(ステップS4)。検査装置320は、算出された傾きを表示制御装置110に送信する。表示制御装置110は、傾きを受信すると、その傾きに対応する印911をユーザインタフェース900に表示させる(ステップS5)。ユーザは、印911が許容範囲912の内側にあるか判断する(ステップS6)。印911が許容範囲912の内側に無いときは、ユーザは、表示された印911が許容範囲912に近づくように、プローブ310の傾きを調整する(ステップS7)。傾きの調整後は、ステップS4が実行される。印911が許容範囲912の内側に有るとき、ユーザは、溶接部13の検査を実行する(ステップS8)。
図12は、実施形態に係る検査システムによる検査方法を説明するための模式図である。
図12(a)に表したように、超音波USの一部は、金属板11の上面10aまたは溶接部13の上面10bで反射される。超音波USの別の一部は、部材10に入射し、金属板11の下面10cまたは溶接部13の下面10dで反射する。
上面10a、上面10b、下面10c、及び下面10dのZ方向における位置は、互いに異なる。すなわち、これらの面と超音波センサ312との間のZ方向における距離が、互いに異なる。超音波センサ312が、これらの面からの反射波を受信すると、反射波の強度のピークが検出される。超音波USを送信した後、各ピークが検出されるまでの時間を算出することで、どの面で超音波USが反射されているか調べることができる。
反射波の強度は、任意の態様で表現されて良い。例えば、超音波センサ312から出力される反射波強度は、位相に応じて、正の値及び負の値を含む。正の値及び負の値を含む反射波強度に基づいて、各種処理が実行されても良い。正の値及び負の値を含む反射波強度を、絶対値に変換しても良い。各時刻における反射波強度から、反射波強度の平均値を減じても良い。又は、各時刻における反射波強度から、反射波強度の加重平均値、重み付き移動平均値などを減じても良い。反射波強度にこれらの処理を加えた結果を用いた場合でも、ここで説明する各種処理を実行可能である。
図12(b)及び図12(c)は、超音波USを送信した後の時間と、反射波RWの強度と、の関係を例示するグラフである。図12(b)及び図12(c)において、縦軸は、超音波USを送信した後の経過時間を表す。横軸は、検出された反射波RWの強度を表す。ここでは、反射波RWの強度を絶対値で表している。図12(b)のグラフは、金属板11の上面10a及び下面10cからの反射波RWの検出結果を例示している。図12(c)のグラフは、溶接部13の上面10b及び下面10dからの反射波RWの検出結果を例示している。
図12(b)のグラフにおいて、1回目のピークPe1は、上面10aからの反射波RWに基づく。2回目のピークPe2は、下面10cからの反射波RWに基づく。ピークPe1及びピークPe2が検出された時間は、それぞれ、金属板11の上面10a及び下面10cのZ方向における位置に対応する。ピークPe1が検出された時間とピークPe2が検出された時間との時間差TD1は、上面10aと下面10cとの間のZ方向における距離Di1に対応する。
同様に、図12(c)のグラフにおいて、1回目のピークPe3は、上面10bからの反射波RWに基づく。2回目のピークPe4は、下面10dからの反射波RWに基づく。ピークPe3及びピークPe4が検出された時間は、それぞれ、溶接部13の上面10b及び下面10dのZ方向における位置に対応する。ピークPe3が検出された時間とピークPe4が検出された時間との時間差TD2は、上面10bと下面10dとの間のZ方向における距離Di2に対応する。
溶接部13の上面10b及び下面10dは、金属板11の上面10aに対して傾斜していることがある。これは、溶接部13が凝固部14を含むことや、溶接の過程における形状の変形などに基づく。この場合、上面10b又は下面10dに対して平均的に垂直な方向に沿って超音波USが送信されることが望ましい。これにより、上面10b及び下面10dにおいてより強く超音波が反射され、検査の精度を向上させることができる。
図13〜図19を参照して、ステップS3について具体的に説明する。
図13(a)及び図13(b)は、反射波の検出結果に基づく画像の模式図である。
図13(a)は、X−Z断面における検査対象の状態を表している。図13(b)は、Y−Z断面における検査対象の状態を表している。
図13(a)及び図13(b)では、反射波の強度が高い点は、白色で表されている。ここでは、模式的に、反射波の強度を二値化して表している。Z方向における位置は、超音波を発してから、反射波が受信されるまでの時間に対応する。X方向又はY方向に沿って延びる白線は、部材の面を表している。
図13(a)及び図13(b)において、X方向又はY方向の中央に存在する複数の白線は、溶接部13の上面10b及び下面10dからの反射波に基づく。X方向又はY方向の端側に存在する複数の白線は、金属板11の上面10a及び下面10c、又は金属板12の上面及び下面からの反射波に基づく。また、図13(a)及び図13(b)では、Z方向において3本以上の白線が存在する。これは、部材10の各部の上面と下面との間を、超音波USが多重反射していることを表している。
図13(a)及び図13(b)に表したように、マトリクスセンサ311による反射波の検出結果には、溶接部13以外からの反射波も含まれている。検査装置320は、その反射波の検出結果から、溶接部13の範囲を推定する。
ここでは、図13(a)及び図13(b)に例示したように、反射波の検出結果を2次元的に表している。反射波の検出結果は、3次元的に表されても良い。例えば、部材10は、複数のボクセルで表される。各ボクセルには、X方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれの座標が設定される。反射波の検出結果に基づき、各ボクセルには、反射波強度が紐付けられる。検査装置320は、複数のボクセルにおいて、溶接部13に対応する範囲(ボクセルのグループ)を推定する。
設定されるボクセルの数及び各ボクセルの大きさは、自動で決定されても良いし、ユーザインタフェース900を通してユーザにより設定されても良い。例えば、ユーザは、図4に表した設定部930の入力欄934及び935a〜935cに値を入力することで、ボクセルの数及び各ボクセルの大きさを設定できる。
図14(a)及び図14(b)は、一断面でのZ方向における反射波の強度分布を例示するグラフである。
図15は、Z方向における反射波の強度分布を例示するグラフである。
検査装置320は、反射波の検出結果に基づいて、Z方向における反射波の強度分布を計算する。図14(a)及び図14(b)は、その一例である。図14(a)及び図14(b)において、横軸はZ方向における位置を表し、縦軸は反射波の強度を表す。図14(a)は、1つのX−Z断面でのZ方向における反射波の強度分布を例示している。図14(b)は、1つのY−Z断面でのZ方向における反射波の強度分布を例示している。図14(a)及び図14(b)では、反射波強度を絶対値に変換した結果を表している。
又は、検査装置320は、Z方向の各点で、X−Y面における反射波強度を合算し、Z方向における反射波の強度分布を生成しても良い。図15は、その一例である。図15において、横軸はZ方向における位置を表し、縦軸は反射波の強度を表す。図15では、反射波強度を絶対値に変換し、且つZ方向の各点における反射波強度から、反射波強度の平均値を減じた結果を表している。
Z方向における反射波の強度分布は、溶接部の上面及び下面で反射した成分と、その他の部分の上面及び下面で反射した成分と、を含む。換言すると、強度分布は、図12(b)に表した時間差TD1に対応する周期成分と、図12(c)に表した時間差TD2に対応する周期成分と、を含む。
検査装置320は、フィルタリングにより、反射波の強度分布から、溶接部の上面及び下面で反射した成分のみを抽出する。例えば、溶接部のZ方向における厚さ(上面と下面との間の距離)の半分の整数倍に対応する値が、予め設定される。検査装置320は、その値を参照し、その値の周期成分だけを抽出する。
フィルタリングとしては、バンドパスフィルタ、ゼロ位相フィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、又はフィルタ後の強度に対する閾値判定などを用いることができる。
図16は、反射波の強度分布をフィルタリングした結果を例示するグラフである。
図16において、横軸はZ方向における位置を表し、縦軸は反射波の強度を表す。図16に表したように、フィルタリングの結果、溶接部の上面及び下面で反射した成分のみが抽出される。
検査装置320は、抽出結果に基づいて、溶接部のZ方向における範囲を推定する。例えば、検査装置320は、抽出結果に含まれるピークを検出する。検査装置320は、1つ目のピークのZ方向における位置及び2つ目のピークのZ方向における位置を検出する。検査装置320は、これらの位置を基準に、例えば図16に表した範囲Ra1を、溶接部のZ方向における範囲と推定する。
溶接部の構造、マトリクスセンサ311の構成などにより、溶接部の上面からの反射波強度の符号(正又は負)と、溶接部の下面からの反射波強度の符号と、が互いに反転することがある。この場合、検査装置320は、正と負の一方のピークと、正と負の他方の別のピークと、を検出しても良い。検査装置320は、これらのピークの位置を基準に、溶接部のZ方向における範囲を推定する。また、反射波強度への処理によっては、反射波強度が正の値と負の値の一方のみで表される場合がある。この場合、溶接部のZ方向における範囲は、複数のピークの位置に基づいて推定されても良いし、ピークとボトムの位置に基づいて推定されても良いし、複数のボトムの位置に基づいて推定されても良い。すなわち、検査装置320は、フィルタリングした後の反射波強度について、複数の極値の位置に基づいて溶接部のZ方向における範囲を推定する。
X−Z断面及びY−Z断面のそれぞれにおける反射波の強度分布を生成したときは、X−Z断面における強度分布に基づくZ方向の範囲と、Y−Z断面における強度分布に基づくZ方向の範囲と、が推定される。例えば、検査装置320は、これらの複数の推定結果について、平均、加重平均、重み付き移動平均などを計算し、その計算結果を溶接部全体のZ方向における範囲と推定する。
又は、検査装置320は、X−Z断面及びY−Z断面の一方における反射波の強度分布に基づいて、溶接部のZ方向における範囲を推定し、その推定結果を、溶接部全体のZ方向における範囲とみなしても良い。検査装置320は、X方向の一部且つY方向の一部における反射波の強度分布に基づいて、溶接部のZ方向における範囲を推定し、その推定結果を、溶接部全体のZ方向における範囲とみなしても良い。これらの処理によれば、反射波の強度分布の生成に必要な計算量を低減できる。
図16の例では、範囲Ra1の下限のZ方向における位置は、1つ目のピークのZ方向における位置から、所定の値を減じた値に設定されている。範囲Ra1の上限のZ方向における位置は、2つ目のピークのZ方向における位置から、所定の値を加えた値に設定されている。こうすることで、溶接部の上面及び下面が、超音波センサ312の配列方向に対して傾いているときに、溶接部のX−Y面におけるいずれかの点で、2つ目のピークがZ方向の範囲から外れることを抑制できる。
溶接部のZ方向の範囲を推定した後、検査装置320は、溶接部のX方向の範囲及びY方向の範囲を推定する。
図17及び図19は、反射波の検出結果を例示する模式図である。
図17及び図19において、領域Rは、マトリクスセンサ311によって反射波の検出結果が得られた全体の領域を表す。領域Rの一断面では、溶接部の上面及び下面における反射波の成分と、その他の部分の上面及び下面における反射波の成分と、が含まれている。
検査装置320は、Z方向の各点で、X−Y面における反射波の強度分布を生成する。検査装置320は、予め設定されたZ方向の範囲内において、強度分布を生成しても良い。これにより、計算量を低減できる。又は、検査装置320は、推定したZ方向の範囲内において、強度分布を生成しても良い。これにより、計算量を低減しつつ、X−Y面における反射波の強度分布を生成する際に、溶接部の下面からの反射波成分が外れることを抑制できる。
図18(a)〜図18(c)は、X−Y面における反射波の強度分布の一例である。図18(a)は、Z=1の座標でのX−Y面における反射波の強度分布を表している。図18(b)は、Z=2の座標でのX−Y面における反射波の強度分布を表している。図18(c)は、Z=350の座標でのX−Y面における反射波の強度分布を表している。図17、図18(a)〜図18(c)、及び図19では、模式的に、反射波の強度を二値化して表している。
検査装置320は、Z方向の各点で、X−Y面における反射波の強度分布の重心位置を計算する。ここでは、強度分布を示す画像の重心位置を計算することで、強度分布の重心位置を得ている。例えば図18(a)〜図18(c)に表したように、検査装置320は、各画像における重心位置C1〜C350を計算する。図19において、線分Lは、Z=0〜Z=350までの全ての重心位置を繋いだ結果を表している。
検査装置320は、Z=0〜Z=350までの重心位置を平均化する。これにより、X方向における重心の平均位置及びY方向における重心の平均位置が得られる。図19において、平均位置APは、X方向における重心の平均位置及びY方向における重心の平均位置を表す。検査装置320は、平均位置APを中心として、X方向及びY方向のそれぞれにおいて所定の範囲を、溶接部のX方向の範囲Ra2、及び溶接部のY方向の範囲Ra3とする。
例えば、範囲Ra2及び範囲Ra3を推定するために、プローブ310(マトリクスセンサ311)の径を示す値Vが予め設定される。検査装置320は、X方向及びY方向において、AP−V/2からAP+V/2までを、それぞれ範囲Ra2及び範囲Ra3とする。この場合、X−Y面における推定範囲は、四角形状となる。この例に限らず、X−Y面における推定範囲は、5角以上の多角形状又は円状などであっても良い。X−Y面における推定範囲の形状は、溶接部の形状に応じて適宜変更可能である。
値Vに基づく別の値を用いて範囲Ra2及び範囲Ra3が決定されても良い。プローブ310の径を示す値に代えて、溶接部の径を示す値が予め設定されても良い。溶接部の径は、プローブ310の径と対応するためである。溶接部の径を示す値は、実質的に、プローブ310の径を示す値とみなすことができる。
以上の処理によって、溶接部のZ方向の範囲Ra1、X方向の範囲Ra2、及びY方向の範囲Ra3が推定される。範囲が推定された後は、推定した範囲における反射波の検出結果に基づいて、図11に表したステップS4が実行される。
図20は、実施形態に係る検査システムの動作を表すフローチャートである。
検査装置320は、プローブ310から反射波の検出結果を受信する(ステップS301)。検査装置320は、検出結果に基づき、Z方向における反射波の強度分布を生成する(ステップS302)。検査装置320は、溶接部の厚さの値に基づいて強度分布をフィルタリングする(ステップS303)。これにより、溶接部における反射波成分だけが、強度分布から抽出される。検査装置320は、抽出結果に基づき、溶接部のZ方向における範囲を推定する(ステップS304)。検査装置320は、Z方向の各点で、X−Y面における反射波強度の重心位置を計算する(ステップS305)。検査装置320は、計算した複数の重心位置を平均化することで、平均位置を計算する(ステップS306)。検査装置320は、平均位置と、プローブ310の径と、に基づいて、X方向及びY方向におけるそれぞれの範囲を推定する(ステップS307)。
なお、Z方向における範囲の推定は、X方向及びY方向における範囲の推定の後に実行されても良い。例えば、図20に表したフローチャートにおいて、ステップS302〜S304は、ステップS305〜S307の後に実行されても良い。この場合、検査装置320は、推定されたX方向及びY方向の範囲内に基づいて、Z方向における反射波の強度分布を計算しても良い。これにより、計算量を低減できる。
図21は、反射波の検出結果を例示する画像である。
図21において、色が白いほど、その点における反射波の強度が大きいことを示している。検査装置320は、図21に表した検出結果について、図20に表した動作を実行する。この結果、範囲Raが推定される。
以下では、範囲Raにおける傾きの算出方法について具体的な一例を説明する。
図22は、実施形態に係る検査システムによる処理を説明するための図である。
図23及び図24は、実施形態に係る検査システムにより得られた画像の一例である。
図23は、反射波の検出結果に基づいて描写される3次元のボリュームデータである。図24(a)は、図23に表したボリュームデータにおける溶接部13の表面を表す。図24(b)は、図23に表したボリュームデータにおける溶接部13近傍のY−Z断面を表す。図24(c)は、図23に表したボリュームデータにおける溶接部13近傍のX−Z断面を表す。図24(b)及び図24(c)では、上側が溶接部の表面で、下向きに深さ方向のデータが示されている。輝度が高い部分は、超音波の反射強度が大きい部分である。超音波は、溶接部13の底面、未接合の部材同士の間の面などで強く反射される。
プローブ310の傾きは、図22に表した、溶接部13に垂直な方向13aと、プローブ310の方向310aと、の間の角度に対応する。この角度は、X方向まわりの角度θxと、Y方向まわりの角度θyと、によって表される。プローブ310の方向310aは、超音波センサ312の配列方向に対して垂直である。
角度θxは、図24(b)に表したように、Y−Z断面での検出結果に基づいて算出される。角度θyは、図24(c)に表したように、X−Z断面での検出結果に基づいて算出される。検査装置320は、各断面ついて,3次元の輝度勾配の平均を角度θx及びθyとして算出する。検査装置320は、算出した角度θx及びθyを、プローブ310の傾きとして、表示制御装置110に送信し、且つ記憶装置120に記憶する。
(変形例)
以上で説明した溶接部の検査は、ロボットにより自動的に実行されても良い。
図25は、実施形態の変形例に係る検査システムの構成を表す模式図である。
図26は、実施形態の変形例に係る検査システムの一部を表す斜視図である。
図25に表した検査システム300aは、検査装置320及びロボット330を有する。ロボット330は、プローブ310、撮像部331、塗布部332、アーム333、及び制御装置334を含む。
撮像部331は、溶接された部材を撮影し、画像を取得する。撮像部331は、画像から溶接痕を抽出し、溶接部13の大凡の位置を検出する。塗布部332は、カプラントを溶接部13の上面に塗布する。
プローブ310、撮像部331、及び塗布部332は、図26に表したように、アーム333の先端に設けられている。アーム333は、例えば、複数のリンク及び複数の回転軸を含む、6自由度の垂直多関節ロボットである。アーム333は、複数のアクチュエータ(例えばモータ)を含む。複数のアクチュエータは、それぞれ複数の回転軸を動作させる。アーム333の駆動により、プローブ310、撮像部331、及び塗布部332を変位させることができる。制御装置334は、ロボット330の各構成要素の動作を制御する。
図27は、実施形態の変形例に係る検査システムの動作を表すフローチャートである。
まず、撮像部331が部材10を撮影し、取得した画像から溶接部13の位置を検出する(ステップS11)。アーム333は、塗布部332を、溶接部13と対向する位置へ移動させる。塗布部332は、カプラントを溶接部13に塗布する(ステップS12)。アーム333は、プローブ310を移動させ、溶接部13に接触させる(ステップS13)。
プローブ310は、溶接部13に接触した状態で、超音波を送信し、反射波を受信する。プローブ310は、反射波の検出結果を検査装置320へ送信する。検査装置320は、検出結果に基づいて、溶接部13のX方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれの範囲を推定する(ステップS14)。検査装置320は、推定された範囲における反射波の検出結果に基づいて、プローブ310の傾きを算出する(ステップS15)。検査装置320は、算出された傾きを表示制御装置110へ送信し、且つ記憶装置120に記憶する。
検査装置320は、算出された傾きが許容範囲内か判定する(ステップS16)。傾きが許容範囲内では無いとき、制御装置334は、アーム333を駆動させ、プローブ310の傾きを調整する(ステップS17)。傾きを調整した後の反射波の検出結果に基づいて、再度プローブ310の傾きが算出される。傾きが許容範囲内にあるとき、検査装置320は、その傾きが得られた反射波の検出結果を用いて溶接部13を検査する(ステップS18)。検査装置320は、未検査の溶接部13があるか判定する(ステップS19)。未検査の溶接部13が無いとき、検査を終了する。未検査の溶接部13があるとき、検査装置320は、アーム333を駆動させ、プローブ310、撮像部331、及び塗布部332を別の溶接部13に向けて移動させる(ステップS20)。その後、再度ステップS11〜S19が実行される。
表示制御装置110は、ステップS15で算出されたプローブ310の傾きの受信に応じて、ユーザインタフェース900の領域910に印911の表示を更新する。ユーザは、プローブ310の傾きの推移や、許容範囲内で検査が実行されているかなどを、ユーザインタフェース900から容易に確認できる。なお、この場合、ユーザは、例えば溶接検査の管理者である。
以上では、検査システム300によってスポット溶接された溶接部13を検査する例について説明した。この例に限らず、検査システム300によって、他の方法で溶接された部材が検査されても良い。例えば、検査システム300は、アーク溶接、レーザ溶接、又はシーム溶接された部材を検査しても良い。これらの方法によって溶接された部材についても、プローブ310を用いた非破壊検査が可能である。また、適切な検査結果を得るために、プローブ310の溶接部に対する傾きが小さいことが望ましい。
設定部930、検査結果950などに表示される内容は、検査する部材の溶接方法に応じて適宜変更される。例えば、アーク溶接、レーザ溶接、又はシーム溶接によって線状に溶接される場合、入力欄933には、溶接部の幅の閾値が入力される。検査では、反射波の検出結果に基づいて算出される溶接部の幅が閾値以上のとき、溶接は良好と判定される。例えば、項目953には、溶接部の各点の幅を平均した値が表示される。項目954には、溶接部の最も長い幅が表示される。項目955は、溶接部の最も短い幅が表示される。
変形例に係る検査システム300aにおいて、アーム333に代えて、アクチュエータを含む2自由度以上の別の可動機構が設けられても良い。プローブ310は、可動機構に取り付けられる。例えば、可動機構は、6自由度のパラレルリンク機構、6自由度の水平多関節機構、及び2自由度のゴニオヘッドから選択される少なくとも1つを含む。制御装置334は、可動機構を制御し、駆動させる。可動機構が動作することで、プローブ310の傾きが変化する。可動機構の自由度が6自由度未満のとき、部材10は、不図示の搬送機構によって、プローブ310に接触するように搬送されることが好ましい。
図28は、システムのハードウェア構成を表すブロック図である。
例えば、実施形態に係る表示制御システム100の表示制御装置110は、コンピュータであり、ROM(Read Only Memory)111、RAM(Random Access Memory)112、CPU(Central Processing Unit)113、およびHDD(Hard Disk Drive)114を有する。
ROM111は、コンピュータの動作を制御するプログラムを記憶している。ROM111には、コンピュータに上述した各処理を実現させるために必要なプログラムが記憶されている。
RAM112は、ROM111に記憶されたプログラムが展開される記憶領域として機能する。CPU113は、処理回路を含む。CPU113は、ROM111に記憶された制御プログラムを読み込み、当該制御プログラムに従ってコンピュータの動作を制御する。また、CPU113は、コンピュータの動作によって得られた様々なデータをRAM112に展開する。HDD114は、読み取りに必要なデータや、読み取りの過程で得られたデータを記憶する。HDD114は、例えば、図1に表した記憶装置120として機能する。
表示制御装置110は、HDD114に代えて、eMMC(embedded Multi Media Card)、SSD(Solid State Drive)、SSHD(Solid State Hybrid Drive)などを有していても良い。
また、検査システム300における検査装置320についても、図28と同様のハードウェア構成を適用できる。検査管理システム400において、1つのコンピュータが表示制御装置110及び検査装置320として機能しても良い。又は、表示制御装置110及び検査装置320のそれぞれの処理及び機能は、より多くのコンピュータの協働により実現されても良い。
表示装置210は、例えば、モニタ及びディスプレイの少なくともいずれかを含む。入力装置220は、例えば、マウス、キーボード、タッチパッド、マイク(音声入力)の少なくともいずれかを含む。
以上で説明した実施形態に係る表示制御システム、検査管理システム、及び表示制御方法を用いることで、溶接検査に関する情報をより分かり易くユーザに表示できる。また、コンピュータを、表示制御システム又は検査管理システムとして動作させるためのプログラムを用いることで、同様の効果を得ることができる。
上記の種々のデータの処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク及びハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、または、他の記録媒体に記録されても良い。
例えば、記録媒体に記録されたデータは、コンピュータ(または組み込みシステム)により読み出されることが可能である。記録媒体において、記録形式(記憶形式)は任意である。例えば、コンピュータは、記録媒体からプログラムを読み出し、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させる。コンピュータにおいて、プログラムの取得(または読み出し)は、ネットワークを通じて行われても良い。
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。