JP2021038439A - フェライト系ステンレス棒鋼、自動車燃料系部品および自動車燃料系部材 - Google Patents

フェライト系ステンレス棒鋼、自動車燃料系部品および自動車燃料系部材 Download PDF

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Abstract

【課題】粗悪燃料に対する耐食性、および溶接部においても良好な耐食性を有し、鍛造性が良好である、フェライト系ステンレス棒鋼ならびに自動車燃料系部品および自動車燃料系部材を提供する。
【解決手段】C:0.03%以下、Si:0.010-1.0%、Mn:0.01-2.0%、P:0.040%以下、S:0.005%以下、N:0.03%以下、Ni:0.05-1.0%、Cr:11.0-22.0%、Mo:1.5%以下、Cu:0.05-1.0%、Nb:0.10-1.0%、任意元素、残部:Feおよび不可避的不純物であり、[10.0≦(Nb+Ti)/(C+N)]、[0.3≦(Mo+2Ni+2Cu)≦2.0]、および[28.0≦Cr+15Mo+30Cu+Nb/(C+N)]までの領域において、円相当径で17μm以上のNb炭窒化物の個数密度が3個/mm2以下であり、直径が18mm以上である、フェライト系ステンレス棒鋼。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フェライト系ステンレス棒鋼ならびにそれを用いた自動車燃料系部品および自動車燃料系部材に関する。
近年、環境規制の強化および燃費性向上のニーズが高まりにより、自動車エンジンにおいては、燃料直噴化(シリンダー内直接噴射)が進み、直噴エンジンが普及しつつある。直噴エンジンに用いられる素材には、使用環境における耐食性が要求される。具体的には、劣化ガソリン等の粗悪燃料に対する耐食性、ならびに塩分および水分を含む外部環境における耐食性である。
例えば、特許文献1には、劣化ガソリン等の粗悪燃料に対し、Cu、Moを添加させることで耐食性を向上させた、耐ギ酸性に優れたフェライト系およびマルテンサイト系ステンレス棒鋼が開示されている。
特開2016−50320号公報 特開2002−309325号公報 特開平3−126843号公報 国際公開2014/157231号
エンジン周辺の排気部品においては、フェライト系ステンレス鋼が用いられることが多く、プレス加工または曲げ加工により成形される。フェライト系ステンレス鋼は、CおよびN含有量を低減することで、軟質となり、加工性が向上するが、板厚によっては、Cr欠乏による鋭敏化が生じやすくなる。このため、Nbおよび/またはTiが添加されることがある。
例えば、特許文献2および3には、CおよびN含有量を低減し、さらに、Nb、Ti等を添加したフェライト系ステンレス鋼が開示されている。上記鋼では、Nb、Ti等により炭窒化物を形成させることで、CおよびNを固定化させ、クロム炭窒化物の形成を抑制し、耐食性を向上させるとともに、鍛造性も高めている。
特許文献4には、同様に、CおよびN含有量を低減し、さらにNbおよびTiを添加し、介在物を微細分散させることで、冷間鍛造性、切削性および耐食性を向上させたフェライト系ステンレス鋼線等が開示されている。
直噴エンジンは、大小、様々な部品から構成され、大型部品としては、高圧ポンプ、フューエルレール等がある。上述した大型部品の多くは、従来、棒鋼を切削加工することで製造されてきた。その一方、現在では、噴射圧を高圧化し、部品製造コストを低減するため、大型部品においても、鍛造成形、またはレーザー等による自動溶接化が要求される。このため、さらなる鍛造性の向上、すなわち、加工率の高い強鍛造を行っても、脆性破壊を生じない鍛造性が要求される。また、粗悪燃料に対する耐食性に加え、鍛造溶接を行っても、Cr欠乏による鋭敏化が生じにくいことが要求される。
しかしながら、特許文献1に開示された鋼は、鍛造性について、十分な検討を行っていない。また、高い圧力が負荷される高圧環境にも適応しうる鍛造成形を行うことができるか、十分に検討されていない。特許文献2および3に開示された鋼は、耐食性、特に、溶接部における耐食性の検討が十分でない。さらに、特許文献4に開示された鋼は、大型部品に適応するために必要な、径が16mm超である場合の鍛造性についての検討が不十分である。
以上を踏まえ、本発明は、粗悪燃料に対する耐食性、および溶接部においても良好な耐食性を有し、鍛造性が良好である、フェライト系ステンレス棒鋼、自動車燃料系部品および自動車燃料系部材を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記のフェライト系ステンレス棒鋼、自動車燃料系部品および自動車燃料系部材を要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.03%以下、
Si:0.010〜1.0%、
Mn:0.010〜2.0%、
P:0.040%以下、
S:0.005%以下、
N:0.03%以下、
Ni:0.05〜1.0%、
Cr:11.0〜22.0%、
Mo:1.5%以下、
Cu:0.05〜1.0%、
Nb:0.10〜1.0%、
Ti:0〜0.5%、
V:0〜1.0%、
Zr:0〜0.5%、
W:0〜0.5%、
B:0〜0.010%、
Al:0〜0.10%、
Ca:0〜0.01%、
Mg:0〜0.05%、
Co:0〜0.50%、
Ga:0〜0.0050%、
Sn:0〜0.500%、
Sb:0〜0.500%、
Ta:0〜0.50%、
REM:0〜0.100%、
残部:Feおよび不可避的不純物であり、
下記の(i)〜(iii)式を満足し、
表層から1mmまでの領域において、円相当径で17μm以上のNb炭窒化物の個数密度が3個/mm以下であり、
直径が18mm以上である、フェライト系ステンレス棒鋼。
10.0≦(Nb+Ti)/(C+N) ・・・(i)
0.3≦(Mo+2Ni+2Cu)≦2.0 ・・・(ii)
28.0≦Cr+15Mo+30Cu+Nb/(C+N) ・・・(iii)
但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Ti:0.05〜0.5%、
V:0.01〜1.0%、
Zr:0.010〜0.5%、および
W:0.05〜0.5%、
から選択される一種以上を含有する、上記(1)に記載のフェライト系ステンレス棒鋼。
(3)前記化学組成が、質量%で、
B:0.0003〜0.010%、
を含有する、上記(1)または(2)に記載のフェライト系ステンレス棒鋼。
(4)前記化学組成が、質量%で、
Al:0.001〜0.10%、
Ca:0.0005〜0.01%、
Mg:0.0005〜0.05%、
Co:0.01〜0.50%、
Ga:0.0005〜0.0050%、
Sn:0.0010〜0.500%、
Sb:0.0010〜0.500%、
Ta:0.01〜0.50%、および
REM:0.001〜0.100%、
から選択される一種以上を含有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のフェライト系ステンレス棒鋼。
(5)高速引張試験において歪み速度が10/s以上50/s未満の場合に、脆性破面を示さない上記(1)〜(4)のいずれかに記載のフェライト系ステンレス棒鋼。
(6)結晶粒度が5以上である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のフェライト系ステンレス棒鋼。
(7)電解抽出によって得られる抽出残渣中のFe量が0.20%以下である(1)〜(6)のいずれかに記載のフェライト系ステンレス棒鋼。
(8)自動車燃料系部品または部材に用いられる、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のフェライト系ステンレス棒鋼。
(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載のフェライト系ステンレス棒鋼を用いた自動車燃料系部品または部材。
本発明によれば、粗悪燃料に対する耐食性、および溶接部においても良好な耐食性を有し、鍛造性が良好である、フェライト系ステンレス棒鋼を得ることができる。
本発明者らは、劣化ガソリン等の粗悪燃料に対する耐食性を有し、さらに溶接部においても良好な耐食性を示し、鍛造性が良好である、フェライト系ステンレス棒鋼を得るために、種々の検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
CおよびN含有量を低減した直径18mm以上のフェライト系ステンレス棒鋼においては、Ni、Cu、およびMo含有量を適切に制御することが、鍛造性の向上に有効である。また、Cr、Mo、Cu、Nb、およびC、およびN含有量ならびに粗大なNb炭窒化物の生成を抑制することが有効である。これにより、フェライト系ステンレス棒鋼の鍛造性を確保することができる。すなわち、加工率の高い強鍛造を行った場合であっても、脆性破壊を生じない鍛造性を有するフェライト系ステンレス棒鋼を得ることができる。粗悪燃料等の環境下、つまり有機酸環境中での耐食性を向上させることができる。また、溶接部の耐食性も向上する。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.03%以下
Cは鋼の強度を向上させる効果を有するが、不可避的に混入する不純物であり、機械的特性を低下させる場合がある。特に、溶接部においてクロム炭化物が析出することで耐食性が低下する、いわゆる鋭敏化を抑制する必要がある。C含有量を低減し、さらにNbを添加することでクロム炭化物の析出を抑制するのが有効である。この際、Cを、0.03%を超えて含有させると、鋭敏化の抑制に必要なNb含有量が増加し、製造コストが増加する。さらに、Nb析出物が形成することで、鍛造性が低下する。このため、C含有量は0.03%以下とする。一方、0.005%未満に低減しようとすると製造コストが増加するため、C含有量は0.005%以上とするのが好ましい。
Si:0.010〜1.0%
Siは、脱酸効果を有する元素である。そして、鋼を十分に脱酸するために、Si含有量は、0.010%以上とする。しかしながら、Siを、1.0%を超えて含有させると鍛造成形性が低下するとともに、部品成形後の靭性も著しく低下する。このため、Si含有量を1.0%以下とする。
Mn:0.010〜2.0%
Mnは、脱酸を十分行うために含有量は、0.010%以上とする。しかしながら、Mnを、2.0%を超えて含有させると変形抵抗が増大し、鍛造性が低下する。このため、Mn含有量は、2.0%以下とする。
P:0.040%以下
Pは、鋼中に不可避的に混入する不純物であり、靱性等の機械的性質を低下させ、鍛造性を低下させる元素である。特に、P含有量が0.040%を超えると、上述した悪影響が顕著になる。このため、P含有量は0.040%以下とする。P含有量は0.025%以下であるのが好ましい。Pは、極力低減することが好ましいが、過度の低減により、製造コストが増加する。このため、P含有量は、0.015%以上とするのが好ましい。
S:0.005%以下
Sは、鋼中に不可避的に混入する不純物であり、靭性および耐食性を低下させる元素である。特に、S含有量が0.005%を超えると、上述した悪影響が顕著になる。このため、S含有量は0.005%以下とする。S含有量は0.003%以下とするのが好ましい。Sは、極力低減することが好ましいが、過度の低減により、製造コストが増加する。このため、S含有量は、0.0001%以上とするのが好ましい。
N:0.03%以下
Nは、鋼中に不可避的に混入する不純物である。Nは、溶接部において、クロム窒化物を析出させ、鋭敏化により耐食性を低下させる。鋭敏化を抑制するために、N含有量を低減し、Nbを含有させることで、クロム窒化物の析出を抑制することが有効である。この際、N含有量が0.03%を超えると、鋭敏化を抑制するために必要なNb含有量が増加する。この結果、製造コストが増加し、Nb析出物が形成することで、鍛造性が低下する。このため、N含有量は0.03%以下とする。Nは、極力低減することが好ましいが、過度の低減により、製造コストが増加する。このため、N含有量は、0.005%以上とするのが好ましい。
Ni:0.05〜1.0%
Niは、フェライト相、つまりマトリックスの脆性割れを抑制する効果を有する。このため、Ni含有量は、0.05%以上とする。しかしながら、Niを、1.0%を超えて含有させると、オーステナイト相が高温で現れ、焼入れ硬化するようになり、鍛造性が著しく低下する。このため、Ni含有量を1.0%以下とする。
Cr:11.0〜22.0%
Crは耐食性を向上させる効果を有する。また、Crを含有させることで、劣化ガソリンを含む燃料および塩分を含む使用環境において、耐食性を確保することができる。このため、Cr含有量は、11.0%以上とする。Cr含有量は、12.0%以上とするのが好ましく、15.0%以上とするのがより好ましい。しかしながら、Cr含有量が22.0%を超えると鍛造成形性を著しく低下する。このため、Cr含有量は22.0%以下とする。Cr含有量は20.0%以下とするのが好ましく、19.0%以下とするのがより好ましい。
Mo:1.5%以下
Moは耐食性を向上させ、また、粒界を強化して脆性割れを抑制するために必須の元素である。しかしながら、Mo含有量が1.5%を超えると、逆に鍛造性を劣化させ、脆性割れを生じさせる場合がある。このため、Mo含有量は、1.5%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Mo含有量は0.01%以上とするのが好ましい。Mo含有量は0.05%以上とするのが好ましく、0.20%以上とするのがより好ましい。
Cu:0.05〜1.0%
Cuはフェライト相、つまりマトリックスの脆性割れを抑制する効果を有する。また、Cuは、耐食性を向上させる効果を有する。特に、劣化ガソリン中での耐食性向上に効果がある。このため、Cu含有量は、0.05%以上とする。しかしながら、Cuを、1.0%を超えて含有させると、却って鍛造性が低下する。さらに、靭性割れも生じ易くなる。このため、Cu含有量は、1.0%以下する。Cu含有量は0.8%以下とするのが好ましい。
Nb:0.10〜1.0%
Nbは炭化物または窒化物を形成することで、溶接部の鋭敏化を抑制し、耐食性を向上させる効果を有する。このため、Nb含有量は0.10%以上とする。ここで、Nb含有量の適正量は、C含有量およびN含有量に影響されるが、鋭敏化を抑制するため、Nb含有量は、0.10%以上とする。しかしながら、Nbを、1.0%を超えて含有させると、粗大炭窒化物またはラーフェス相が形成することで、耐食性と鍛造性とが著しく低下する。このため、Nb含有量は、1.0%以下とする。Nb含有量は0.8%以下とするのが好ましい。
Ti:0〜0.5%
V:0〜1.0%
Zr:0〜0.5%
W:0〜0.5%
Ti、V、Zr、Wは、いずれもNbと同様に炭窒化物を形成することで、溶接部の鋭敏化を抑制する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ti、V、Zr、およびWを過剰に含有させると、鍛造性が低下する。このため、Ti含有量は0.5%以下とする。V含有量は1.0%以下とする。Zr含有量は0.5%以下とする。W含有量は0.5%以下とする。しかしながら、上記効果を得るためには、Ti含有量は、0.05%以上とするのが好ましい。また、V含有量は0.01%以上とするのが好ましい。また、Zr含有量は0.010%以上とするのが好ましい。W含有量は0.05%以上とするのが好ましい。
B:0〜0.010%
Bは粒界のP偏析を抑制し、靭性をさらに向上させる。また、靭性が向上することに付随して、Bは、鍛造性も向上させる場合がある。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Bを、0.010%を超えて含有させると、粗大なホウ化物を形成し、靭性が劣化する。このため、B含有量は0.010%以下とする。一方、上記効果を得るためには、B含有量は、0.0003%以上とするのが好ましい。
Al:0〜0.10%
Ca:0〜0.01%
Mg:0〜0.05%
Al、Ca、およびMgは、いずれも脱酸効果を有するため、溶製時に脱酸剤として添加される。このため、必要に応じて、含有させてもよい。しかしながら、上記、Al、Ca、Mgを過剰に含有させると、鍛造性を低下させる。このため、Al含有量は0.10%以下とする。Ca含有量は0.01%以下とする。Mg含有量は0.05%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Al含有量は0.001%以上とするのが好ましい。Ca含有量は0.0005%以上とするのが好ましい。Mg含有量は0.0005%以上とするのが好ましい。
Co:0〜0.50%
Coは焼入れ性向上、また耐摩耗性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有してもよい。しかしながら、Coを、0.50%を超えて含有させると、靭性が劣化する。このため、Co含有量は0.50%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Co含有量は0.01%以上とするのが好ましい。
Ga:0〜0.0050%
Gaは冷間加工性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ga含有量が0.0050%を超えると鍛造性が劣化する。このため、Ga含有量は0.0050%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Ga含有量は0.0005%以上とするのが好ましい。
Sn:0〜0.500%
Snは耐食性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Sn含有量が0.500%を超えると、耐食性向上効果が飽和するばかりか、熱間加工性および鍛造性が劣化する。このため、Sn含有量は0.500%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Sn含有量は0.0010%以上とするのが好ましい。
Sb:0〜0.500%
Sbは耐食性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Sb含有量が0.500%を超えると、Sbの偏析によって耐食性が劣化する。このため、Sb含有量は0.500%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Sb含有量は0.0010%以上とするのが好ましい。
Ta:0〜0.50%
Taは耐摩耗性および耐食性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Taを、0.50%を超えると靭性が劣化する。このため、Ta含有量は0.50%以下とする。一方、上記効果を得るためには、Ta含有量は0.01%以上とするのが好ましい。
REM:0〜0.100%
REMは、脱酸効果を有する。また熱間加工性を改善する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、REMを、0.100%を超えると、却って熱間加工性が低下する。このため、REM含有量は0.100%以下とする。一方、上記効果を得るためには、REM含有量は0.001%以上とするのが好ましい。
なお、REMとは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、上記REM含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。ここで、「REMの含有量」とは、これらの全REM元素の含有量の合計含有量を意味する。全含有量が上記範囲内であれば、REM元素の種類が1種類であっても2種類以上であっても、同様な効果が得られる。
鋼の化学組成において、残部はFeおよび不可避的不純物である。ここで「不可避的不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
ここで、本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼は、Nb炭窒化物を形成させ、鋭敏化による耐食性の低下を抑制するため、下記の(i)式を満足する。
10.0≦(Nb+Ti)/(C+N) ・・・(i)
但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(i)式右辺値が10.0未満であると、Nb炭窒化物が十分に形成せず、Cr欠乏が生じ、耐食性が低下する。このため、(i)式右辺値は、10.0以上とし、15.0以上であるのが好ましく、20.0以上であるのがより好ましい。なお、(i)式右辺値の上限は特に定めないが、通常、150.0程度になることが多い。
また、本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼は、太径であっても十分な鍛造性を確保するために、下記の(ii)式を満足する。
0.3≦(Mo+2Ni+2Cu)≦2.0 ・・・(ii)
但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(ii)式中辺値が0.3未満であると、成形前後または鍛造時に脆性割れが発生しやすくなり、鍛造性が低下する。このため、(ii)式中辺値は0.3以上とし、1.0以上であるのが好ましい。一方、(ii)式中辺値が2.0を超えると、マトリクスが硬質化して却って鍛造時の脆性割れを助長し、鍛造性が低下する。このため、(ii)式中辺値は2.0以下とし、1.8以下であるのが好ましい。
また、本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼は、溶接部の耐食性を確保するために、下記の(iii)式を満足する。
28.0≦Cr+15Mo+30Cu+Nb/(C+N) ・・・(iii)
但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(iii)式右辺値が28.0未満であると、劣化ガソリンの使用環境において溶接部および溶接部を除く母材の耐食性を確保できず、粒界腐食および全面腐食が生じやすくなる。このため、(iii)式右辺値は28.0以上とし、35.0以上とするのが好ましく、40.0以上とするのが好ましい。なお、(iii)式右辺値の上限は、特に規定しないが、通常、125.0以下になると考えられる。
2.Nb炭窒化物
本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼は、粗大Nb炭窒化物は、成形前後および鍛造時の脆性割れの起点として作用し、脆性割れを引き起こしやすくなる。この結果、鍛造性を低下させる。また、粗大Nb炭窒化物は腐食の起点となりやすく、耐食性低下を引き起こしやすくなる。また、腐食部が起点となり、マイクロクラックを引き起こす場合もある。
このため、本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼は、表層から1mmまでの領域において、円相当径で17μm以上のNb炭窒化物の個数密度が、3個/mm以下とする。なお、Nb炭窒化物は、マトリックス、粒界いずれの位置かは特に問わない。より良好な鍛造性を得るためには、表層から1mmまでの領域において、円相当径で17μm以上のNb炭窒化物が0個かつ、円相当径で12μm以上、17μm未満のNb炭窒化物が3個/mm以下であるのが好ましい。
Nb炭窒化物の個数密度の測定は、以下の方法で行う。表層部のNb炭窒化物サイズの測定はJIS G 0555:2003に準拠し、画像解析によって測定する。顕微鏡の倍率を400倍、測定視野を400視野抽出し、表層から1mmまでの領域のNb炭窒化物のサイズを測定する。
3.直径
本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼は、直噴エンジンの大型部品を鍛造成形するのに十分な直径とし、具体的には直径を18mm以上とする。フェライト系ステンレス棒鋼の直径の上限は、特に定めないが、通常100mm以下となる。
4.結晶粒度
本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼は、さらに良好な鍛造性を得るために、フェライト相の結晶粒度を5以上とするのが好ましい。これにより精密な形状に冷間鍛造を施しても割れを抑制しうる良好な鍛造性が得られる。ここで、フェライト相の結晶粒度は、JIS G 0551:2013に記載された切断法に準拠し、測定を行えばよい。なお、フェライト相の結晶粒度を向上させるには、後述するが、熱間圧延後に900〜1100℃の温度域で焼鈍するのが好ましい。
5.抽出残渣分析
本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼では、Nbを含有させる。そして、Nbを含有させることで、Feを含むラーフェス相が析出する。このラーフェス相の析出量が過剰であると、適正量のラーフェス相が析出した場合と比較して鍛造性が低下する傾向にある。このため、ラーフェス相を適切量に制御することで、鍛造性をさらに向上できる。
ここで、ラーフェス相の析出量は、抽出残渣分析によりFe量を測定することで、評価できる。上述したように鍛造性をさらに向上させるには、電解抽出によって得られる抽出残渣中のFe量が0.20%以下とするのが好ましい。
なお、抽出残渣分析は以下の方法で行えばよい。具体的には、棒鋼を粒度#500の研磨材を用いて研磨仕上げし、その試料を陽極として、10%AA系電解液(10%アセチルアセトン−1%テトラメチル−メタノール)を用いて溶解する。その後、電解液をろ紙等により濾過することによって得られる抽出残渣を0.5%臭素−メタノールを用いて溶解した後、原子吸光法等の化学分析によって、抽出残渣中のFe量を測定する。
このように、本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼は、溶接部自体を減らした場合であっても、軟質で、十分な延性を有する。このため、加工率の高い強鍛造による成形時、成形前後の脆性割れを抑制することができる。この結果、鍛造性を向上させることができる。
本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼は、特別な表面処理等を要さず、劣化ガソリン等の粗悪燃料に対する耐食性を有する。さらに、溶接部での鋭敏化を抑制し、耐食性を向上させることができるので、耐久性が向上し、腐食部を起点とするマイクロクラックの発生も抑制することができる。
6.自動車燃料系部品および部材
本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼を鍛造成形、溶接等を行うことで、自動車燃料系部品および部材を得ることができる。
7.製造方法
7−1.フェライト系ステンレス棒鋼
以下において、本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼の好ましい製造方法を説明する。本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼は、製造方法によらず、上述の構成を有していれば、その効果を得られるが、例えば、以下のような製造方法により、安定して製造することができる。
本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼は、例えば、鋳造工程、熱間圧延工程、焼鈍工程および酸洗工程を行うことで製造できる。具体的には、鋳造工程では、連続鋳造法等により所定の化学組成を有する鋳片を製造する。続いて、得られた鋳片を熱間圧延するために、加熱を行う。
本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼においては、加熱炉で、二段階の加熱を行うのが好ましい。最初の加熱においては、鋼の表面温度が900〜1050℃になるよう加熱し、加熱炉から一度取り出し、続いて、二段階目の加熱として誘導加熱炉等で表面温度が1000〜1250℃となるよう加熱するのが好ましい。二段階目の加熱は、1200℃以上とするのが好ましい。その後、熱間圧延により所定の直径の棒鋼とする。
上記のように、熱間圧延において、二段階の加熱を行うことで、表層で粗大なNb炭窒化物が形成するのを抑制することができる。すなわち、表層から1mmの領域において、円相当径が17μm以上のNb炭窒化物の個数密度を3個/mm以下とすることができる。また、熱間圧延の圧延率は65〜99%程度であるのが好ましい。
ここで、さらに、鍛造性を向上させるには、熱間圧延後、焼鈍するのが好ましい。焼鈍条件は、900〜1100℃の範囲で、0.5〜1h程度、行うのが好ましい。焼鈍は、バッチ焼鈍、連続焼鈍、いずれであっても構わない。これにより、フェライト系ステンレス棒鋼の結晶粒度を5以上にすることができる。また、ラーフェス相の析出量を適切な量に調整し、鍛造性を向上させるためには、焼鈍における冷却速度を制御するのが好ましい。
具体的には、焼鈍により均熱保持した後の冷却速度を50℃/hとするのが好ましく、60℃/hとするのがより好ましく、100℃/hとするのがさらに好ましい。このように冷却速度を調整することで、電解抽出によって得られる抽出残渣中をFe量が0.20%以下にすることができるからである。その一方、冷却速度が50℃/h未満であるときは、ラーフェス相が過剰に析出し、却って、鍛造性を低下させる。
7−2.自動車燃料系部品および部材の製造方法
上記工程により得られたフェライト系ステンレス棒鋼に、鍛造および溶接を施すことにより、自動車燃料系部品および部材を製造するのが好ましい。鍛造方法は、特に問わず、冷間鍛造、温間鍛造、熱間鍛造のいずれでもよい。溶接方法も特に限定されないが、例えば、レーザー溶接、抵抗溶接、アーク溶接、プラズマ溶接等が考えられる。溶接条件は、適宜、常法に従い、調整すればよい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1〜3および4に示す化学組成を有する鋼を100kgの真空溶解炉において溶解し、直径180mmの鋳片に鋳造した。その鋳片を熱処理炉で900〜1050℃で加熱し、取り出した後、誘導加熱炉を用いて表層温度を1000℃以上〜1200℃未満とする二段加熱を行い、直径27mmまで熱間圧延を行った。その後、酸洗(ピーリング)を行い、棒鋼とした。
Figure 2021038439
Figure 2021038439
Figure 2021038439
Figure 2021038439
(Nb炭窒化物の個数密度)
得られた棒鋼について、Nb炭窒化物の個数密度を測定した。Nb炭窒化物の個数密度の測定は、以下の方法で行った。棒鋼の圧延方向に平行な断面の最表面から中心方向に20mm×1mmの形状の試験片を切り出した。表層部のNb炭窒化物サイズの測定はJIS G 0555:2003に準拠し、画像解析によって測定した。顕微鏡の倍率を400倍、測定視野を400視野抽出し、表層から1mmまでの領域のNb炭窒化物のサイズを測定し、円相当径で17μm以上のNb炭窒化物の1mm当たりの個数を計測した。3個以下であれば○、3個を超える場合であれば×とした。
(鍛造性評価)
鍛造性の評価では、加工率の高い強鍛造を想定して試験を行った。具体的には、サンプルの拘束度合が高く、ひずみも高くなる閉塞鍛造を想定し、高速引張試験を実施した。高速試験片はJIS K 7160に準拠した試験片を作製して供試材とした。高速引張試験は歪み速度10〜300/sの範囲で実施し、試験後の破面を観察した。歪み速度50/s未満で脆性破面を示したものを×、歪み速度50〜100/sで脆性破面を示したものを○、歪み速度100/s超で脆性破面を示したものを◎とした。
(耐食性評価)
劣化ガソリン中での耐食性は腐食減量によって評価した。25℃、3%蟻酸溶液中に試料を10時間浸漬した後の、試料の質量を測定して減少量(腐食減量)を算出した。腐食減量が0.89×10−2g/mh以下のものを◎、0.89×10−2g/mhを超え、1.78×10−2g/mh以下のものを○、1.78×10−2g/mhを超えるものを×と評価した。
また、溶接部の耐食性を評価するため、棒鋼とマルテンサイト鋼材を1mm厚の板の加工し、それぞれを突き合わせて溶接する突き合わせレーザー溶接を行った。その後、溶液組成を変更した改良型の硫酸・硫酸銅腐食試験を行い、溶接部の鋭敏化の有無を判定した。レーザー溶接はファイバーレーザー(スポット径φ0.6mm)を用い、出力2.0kw、Arシールドガス、速度1、2、3、4m/minの条件で行った。硫酸・硫酸銅腐食試験は0.5%硫酸+5.5%硫酸銅溶液を用いて行った。各条件で鋭敏化が認められなかったものを○、鋭敏化が認められたものを×とした。なお、上記マルテンサイト鋼材の化学組成は0.5%C−13%Cr系とした。以下、結果をまとめて表5〜8に示す。
Figure 2021038439
Figure 2021038439
Figure 2021038439
Figure 2021038439
本発明の規定を満足する試験No.1〜65は、鍛造性も良好であり、粗悪燃料に対する耐食性も良好であった。また、溶接部での耐食性も良好であった。その一方、本発明の規定を満足しない試験No.66〜85は、鍛造性、粗悪燃料に対する耐食性、および溶接部での耐食性のいずれか一つ以上が劣る結果となった。
試験No.66は、C含有量が本発明の規定より高く、(i)式を満足しなかった。このため、鍛造性が低下し、粗悪燃料に対する耐食性、および溶接部の耐食性も低下した。試験No.75は、N含有量が本発明の規定より高く、(i)式を満足しなかった。このため、鍛造性が低下し、粗悪燃料に対する耐食性、および溶接部の耐食性も低下した。試験No.80は、Nb含有量が本発明の規定より高かったため、Nb炭窒化物の個数密度が過剰になり、鍛造性が低下した。また、粗悪燃料に対する耐食性も低下した。
試験No.67は、Ni含有量が本発明の規定より高ったため、鍛造性が低下した。試験No.68は、Si含有量が本発明の規定より高かったため、鍛造性が低下した。No.70は、P含有量が本発明の規定より高かったため、鍛造性が低下した。No.72は、Mo含有量が本発明の規定より高かったため、鍛造性が低下した。
試験No.73は、Mn含有量が本発明の規定より高かったため、鍛造性が低下した。試験No.74は、Cr含有量が本発明の規定より高かったため、鍛造性が低下した。試験No.76は、Si含有量が本発明の規定より低かったため、鍛造性が低下した。試験No.77は、Ni含有量が本発明の規定より低かったため、鍛造性が低下した。
試験No.78は、Cu含有量が本発明の規定より高かったため、鍛造性が低下した。試験No.79は、Mn含有量が本発明の規定より低かったため、鍛造性が低下した。試験No.83は、(ii)式を満足しなかったため、鍛造性が低下した。試験No.72は、(ii)式を満足しなかったため、鍛造性が低下した。
試験No.71は、S含有量が本発明の規定より高かったため、粗悪燃料に対する耐食性が低下した。試験No.81は、Cr含有量が本発明の規定より低かったため、粗悪燃料に対する耐食性が低下した。試験No.82は、Cu含有量が本発明の規定より低かったため、劣化ガソリン中の耐食性が低下した。試験No.80は、Nb含有量が本発明の規定より低かったため、溶接部において、鋭敏化が生じ耐食性が低下した。試験No.84は、(i)および(iii)式を満足しなかったため、劣化ガソリン中での耐食性が低下し、さらに溶接部に鋭敏化が生じた。
表1〜2に記載の鋼種No.2〜4、6〜8、11、16、18、26〜28を用いて、表層温度が900〜1050℃となるよう、最初の加熱を行い、続いて、1200℃以上となるように二段階目の加熱を実施し、熱間圧延を行った。実施例1と同様の手順で、Nb炭窒化物の個数密度を測定した。円相当径で12μm以上17μm未満のNb炭窒化物の1mm当たりの個数を計測した。円相当径で17μm以上のNb炭窒化物が0個かつ、円相当径で12μm以上、17μm未満のNb炭窒化物が3個/mm以下であれば◎とした。そして、実施例1と同様に、鍛造性および耐食性の評価を行った。以下、結果をまとめて、表9に示す。
Figure 2021038439
1200℃以上で二段階目の加熱を行い、熱間圧延を施した試験No.86〜97は、Nb炭窒化物の個数密度が低かった。また、鍛造性、劣化ガソリン中の耐食性がさらに良好になった。
表1〜2に記載の鋼種No.1、5、10、19、24、25、29について、実施例1と同様の上限で熱間圧延を行った後に、900〜1100℃で1h加熱するバッチ焼鈍を施した。この棒鋼について、バッチ焼鈍前後でのフェライト相の結晶粒度を測定した。結晶粒度は、JIS G 0551:2013に記載された切断法に準拠し、測定を行った。鍛造性、耐食性について、実施例1と同様に評価を行った。以下、結果をまとめて表10に示す。
Figure 2021038439
結晶粒度を5以上に調整したNo.98〜104は鍛造性がさらに良好になった。
表2の鋼種No.28について、実施例1と同様の条件で、熱間圧延を行い、焼鈍温度を800℃または900℃のいずれかとし、1h保持した後、冷却速度を100℃/h、60℃/h、20℃/h、10℃/hのいずれかとして冷却した。なお、水冷以外の条件での冷却を行った試料は、600℃で脱炉した。
その後、各試料について、粒度#500の研磨材を用いて研磨仕上げし、その試料を陽極として、10%AA系電解液(10%アセチルアセトン−1%テトラメチル−メタノール)を用い、−100mV vs SCEで約1200クーロン/cmの電流を流して、約0.5g溶解した。そして、電解液をメッシュサイズが0.2μmサイズのポリカーボネイトのろ紙を用いて濾過して、抽出残渣を得た。得られた抽出残渣を0.5%臭素−メタノールを用いて溶解した後、原子吸光法による化学分析によって、抽出残渣中のFe量を測定した。
ラーフェス相の析出量を示すFe量の分析を行った。Fe抽出残渣量が0.20%以下の条件を○、0.20%を超える条件は×とした。また、鍛造性、鍛造性、耐食性について、実施例1と同様に評価を行った。以下、結果をまとめて表11に示す。
Figure 2021038439
試験No.105、106、109、110はFe抽出残渣量が0.20%以下であり、ラーフェス相の析出が抑制出来たので、鍛造性がさらに向上した。試験No.107、108、111、112はFe抽出残渣量が0.20%以上であり、ラーフェス相の析出が抑制出来ず、鍛造性のさらなる向上は認められなかった。
本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼は良好な鍛造性を有する。また、本発明に係るフェライト系ステンレス棒鋼を用いて、鍛造成形した、エンジン用部品は、レーザー溶接、抵抗溶接等の溶接を用いて、組み立てられ製造されても、溶接部での鋭敏化は生じず、劣化ガソリンに対しても良好な耐食性を有する。このため、上記フェライト系ステンレス棒鋼は、ガソリン燃料系部品、例えば高圧ポンプ、インジェクター、フューエルレール、それらの締結あるいは附属部品に好適である。

Claims (9)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.03%以下、
    Si:0.010〜1.0%、
    Mn:0.010〜2.0%、
    P:0.040%以下、
    S:0.005%以下、
    N:0.03%以下、
    Ni:0.05〜1.0%、
    Cr:11.0〜22.0%、
    Mo:1.5%以下、
    Cu:0.05〜1.0%、
    Nb:0.10〜1.0%、
    Ti:0〜0.5%、
    V:0〜1.0%、
    Zr:0〜0.5%、
    W:0〜0.5%、
    B:0〜0.010%、
    Al:0〜0.10%、
    Ca:0〜0.01%、
    Mg:0〜0.05%、
    Co:0〜0.50%、
    Ga:0〜0.0050%、
    Sn:0〜0.500%、
    Sb:0〜0.500%、
    Ta:0〜0.50%、
    REM:0〜0.100%、
    残部:Feおよび不可避的不純物であり、
    下記の(i)〜(iii)式を満足し、
    表層から1mmまでの領域において、円相当径で17μm以上のNb炭窒化物の個数密度が3個/mm以下であり、
    直径が18mm以上である、フェライト系ステンレス棒鋼。
    10.0≦(Nb+Ti)/(C+N) ・・・(i)
    0.3≦(Mo+2Ni+2Cu)≦2.0 ・・・(ii)
    28.0≦Cr+15Mo+30Cu+Nb/(C+N) ・・・(iii)
    但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Ti:0.05〜0.5%、
    V:0.01〜1.0%、
    Zr:0.010〜0.5%、および
    W:0.05〜0.5%、
    から選択される一種以上を含有する、請求項1に記載のフェライト系ステンレス棒鋼。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    B:0.0003〜0.010%、
    を含有する、請求項1または2に記載のフェライト系ステンレス棒鋼。
  4. 前記化学組成が、質量%で、
    Al:0.001〜0.10%、
    Ca:0.0005〜0.01%、
    Mg:0.0005〜0.05%、
    Co:0.01〜0.50%、
    Ga:0.0005〜0.0050%、
    Sn:0.0010〜0.500%、
    Sb:0.0010〜0.500%、
    Ta:0.01〜0.50%、および
    REM:0.001〜0.100%、
    から選択される一種以上を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のフェライト系ステンレス棒鋼。
  5. 高速引張試験において歪み速度が10/s以上50/s未満の場合に、脆性破面を示さない請求項1〜4のいずれかに記載のフェライト系ステンレス棒鋼。
  6. 結晶粒度が5以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のフェライト系ステンレス棒鋼。
  7. 電解抽出によって得られる抽出残渣中のFe量が0.20%以下である請求項1〜6のいずれかに記載のフェライト系ステンレス棒鋼。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の自動車燃料系部品用フェライト系ステンレス棒鋼。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載のフェライト系ステンレス棒鋼を用いた自動車燃料系部品または部材。
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