JP2021037822A - ハイブリッド車両のクランク角の検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】レゾルバによってクランク角を検出するにあたり、走行モードの切替があってもクランク角を正確に検出できる装置を提供する。【解決手段】レゾルバが出力する信号に基づいてエンジンのクランク角を算出するコントローラは、信号を積算するとともに積算して得られた積算値に基づいてクランク角を算出し、第1モードから第2モードに切り替えることの判断が成立した場合に、第1モードで算出したクランク角を保持し(ステップS61)、第2モードに切り替えた状態で信号を積算することにより算出されるクランク角を、保持されているクランク角に加算(ステップS64)してクランク角を算出する。【選択図】図9
Description
この発明は、内燃機関とモータもしくはモータ・ジェネレータとを駆動力源として備えたハイブリッド車両におけるクランク角を検出する装置に関するものである。
ガソリンエンジンなどの内燃機関(以下、エンジンと記す)とモータもしくはモータ・ジェネレータ(以下、単にモータと記す)を駆動力源として備えたハイブリッド車両では、モータが走行のための駆動力を出力するだけでなく、エネルギ回生を行うことにより駆動力を減じ、あるいは制動トルクを出力するように構成することができる。この種のハイブリッド車両でエンジンが走行のための駆動力を出力している状態では、エンジンでの混合気の爆発的燃焼によるトルクの変動が不可避的に生じる。一方、モータトルクは電気的に制御するからその制御応答性が高く、またいわゆる正負のトルクを出力できるので、エンジントルクの変動に対して位相をずらしてモータトルクを変動させれば、モータトルクの変動(脈動)をモータによって抑制もしくは低下させることができる。
特許文献1には、そのような制振制御を行うように構成された装置が記載されている。特許文献1に記載された装置は、エンジンと第1のモータとを、遊星歯車機構からなる動力分割機構に連結し、また第2のモータを動力分割機構の出力要素に連結し、エンジン回転数を第1のモータで制御することに伴って発電された電力で第2のモータを駆動するように構成されたハイブリッド車を対象とする制御装置である。そしてその制御装置は、エンジンがトルクを出力している状態で、エンジンのクランク角をクランク角センサによって検出し、モータによる制振のためのトルクをその検出されたクランク角に基づいて算出するように構成されている。
一方、特許文献2には、モードを切り替えることができるように構成されたハイブリッド車両が記載されている。ここでモードとは、動力分割機構から駆動輪に伝達されるトルクを所定の状態に設定する運転状態であり、特許文献2に記載されたハイブリッド車両は、トルクを増幅して出力するローモードと、ローモードよりはトルクを低下させて出力するハイモードとに切り替えられるように構成されている。すなわち、特許文献2に記載されたハイブリッド車両は、動力分割機構の出力側に変速用の遊星歯車機構を連結し、その遊星歯車機構の回転要素同士の連結状態およびエンジンとの連結状態を複数のクラッチ機構によって切り替えるように構成されている。なお、特許文献2に記載されたハイブリッド車両では、各クラッチ機構を係合させて前記遊星歯車機構の全体を一体化するとともにエンジンに連結することにより、エンジンのトルクを増減することなくその遊星歯車機構を介して出力部材に伝達することができる。
モータのトルク制御の応答性が優れているので、特許文献1に記載されているように、エンジントルクの振動もしくは脈動に応じてモータトルクを制御することにより、ハイブリッド車両の駆動トルクの振動を抑制できる。しかしながら、特許文献1に記載された装置は、エンジンに付設されているクランク角センサによってクランク角を検出し、その検出したデータをモータ用の制御装置(例えば、PーECU)に伝送してモータトルクを制御している。そのため、クランク角を検出するサイクルタイムや検出したデータの伝送に要する時間が、モータトルクの制御の遅れ要因となり、エンジン回転数がある程度低い回転数になっている場合には、モータトルクの制御の遅れによって駆動トルクの制振を適正に行い得ない場合がある。
一方、モータとして永久磁石式の同期電動機が採用されることがあり、この種のモータでは、回転角度(電気角)を検出するためのレゾルバを有しているから、そのレゾルバによってクランク角を検出するとともに、その検出したデータを利用して、駆動トルクの制振のためのモータトルクの制御を行うことが考えられる。このような制御を行えば、上述したデータの伝送に伴う遅れを解消もしくは低減できる。特許文献1に記載されているハイブリッド車両では、エンジンおよび第1のモータは、動力分割機構を介して駆動輪に連結され、その駆動輪に第2のモータが連結されているので、各モータのレゾルバで検出された回転角度とクランク角とは常時、一定の関係を維持する。
しかしながら、特許文献2に記載されているように、走行モード(もしくは駆動モード)を切り替えられるように構成されているハイブリッド車両では、エンジンのクランク角とモータのレゾルバで検出される回転角度との関係は、各モードごとに異なっているから、クランク角を検出して何らかの制御を実行している際にモードの切替が生じると、クランク角とレゾルバで検出される回転角度との関係が変化してしまい、レゾルバによってはクランク角を正確に検出できない事態が生じる。すなわち、レゾルバは、回転するロータと固定されたステータとのリアクタンス変化により発生する電気信号をカウント(累積)して回転角度を検出するように構成された装置であって、特定の原点からの角度である絶対角度を検出するものではないので、所定のモードが設定されている状態で検出信号を積算して求められた角度は、他のモードの下では前記所定のモードでの角度とは異なる角度になってしまう。従来では、このようにレゾルバによってエンジンのクランク角を検出する際の技術的課題やその課題の解決手段には着目されておらず、この点に新たな技術を開発する余地があった。
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであって、エンジン回転数とモータ回転数との関係が変更されるように構成されたハイブリッド車両におけるエンジンのクランク角を常時、正確に検出できる装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、クランク軸を有する内燃機関と、回転することにより信号を出力する回転角センサを有するモータと、駆動輪と、前記内燃機関と前記モータと前記駆動輪とが連結されて差動作用を行う動力分割機構とを備え、前記駆動輪の回転数と前記モータの回転数を一定とした場合の前記駆動輪の回転数に対する前記内燃機関の回転数の比率が異なる少なくとも二つの走行モードを設定可能なハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置において、前記回転角センサが出力する前記信号に基づいて前記クランク軸の回転角であるクランク角を算出するコントローラを備え、前記コントローラは、前記信号を積算するとともに積算して得られた積算値に基づいてクランク角を算出し、前記二つの走行モードのうちの第1モードから第2モードに切り替えることを判断し、前記第1モードから前記第2モードに切り替えることの判断が成立した場合に、前記第1モードで算出した前記クランク角を保持し、前記第2モードに切り替えた状態で前記信号を積算することにより算出されるクランク角を、保持されている前記クランク角に加算して前記クランク角を算出することを特徴としている。
この発明においては、前記コントローラは、前記第1モードから前記第2モードに切り替えられた際に前記積算値をゼロリセットするとともに前記第2モードが設定されている状態で前記信号の積算を新たに開始し、新たに積算して得られた積算値に基づいて得られるクランク角を、前記保持されているクランク角に加算してクランク角を算出するように構成されていてよい。
この発明においては、前記コントローラは、算出した前記クランク角がπラジアンの整数倍の角度に達する都度、算出した前記クランク角をゼロリセットするように構成されていてよい。
この発明においては、前記コントローラは、前記第1モードで前記クランク角を算出する演算式と、前記第2モードで前記クランク角を算出する演算式とを有し、前記第1モードから前記第2モードへの切り替えと前記クランク角のゼロリセットとが時間的に重なった場合に、前記第2モードでの前記演算式に基づいてクランク角の算出を開始するように構成されていてよい。
この発明においては、前記走行モードは、前記内燃機関の出力トルクを所定の増幅率で変化させる前記駆動輪に伝達する低速モードと、前記所定の増幅率より小さい増幅率で前記内燃機関の出力トルクを変化させて前記駆動輪に伝達する高速モードと、前記エンジンの出力トルクを増減させることなく前記駆動輪に出力する固定モードとを含み、前記コントローラは、前記低速モードと前記高速モードとの間で走行モードを切り替える場合に、その切り替えの途中で前記固定モードを設定し、前記固定モードが設定されている状態で、切り替える前の走行モードで算出した前記クランク角を保持し、かつ切り替え後の走行モードで前記信号を積算することにより算出されるクランク角を、保持されている前記クランク角に加算して前記クランク角を算出するように構成されていてよい。
この発明においては、前記モータは、前記エンジンが出力したトルクに対する反力トルクを出力する第1モータと、前記駆動輪に伝達されるトルクにトルクを加減する第2モータとを含み、前記第1モータおよび前記第2モータは、それぞれ回転角センサを有し、前記コントローラは、前記第1モータの前記回転角センサと前記第2モータの回転角センサとが出力する信号を積算するとともに、積算して得られる積算値に基づいて前記クランク角を算出するように構成されていてよい。
この発明においては、前記動力分割機構は、前記クランク軸が連結された第1入力要素と、前記第1モータが連結された第1反力要素と、第1出力要素とによって差動作用を行う第1差動機構と、前記第1出力要素が連結された第2入力要素と、前記駆動輪が連結された第2出力要素と、第2反力要素とによって差動作用を行う第2差動機構と、前記第2差動機構における少なくともいずれか二つの前記要素を選択的に連結する第1係合機構と、前記第2反力要素と前記クランク軸とを選択的に連結する第2係合機構とを備え、前記第2モータは、前記第2出力要素に連結されていてよい。
この発明によれば、エンジンのクランク角を、エンジンに対して動力分割機構を介して連結されているモータの回転角センサで得られた信号に基づいて算出する。したがって、エンジンが出力したトルクをモータトルクによって調整して駆動輪に伝達する場合、モータトルクの制御を、そのモータに付設されている回転数センサの検出信号に基づいて行うことができるので、モータトルクの制御の遅れを可及的に小さくすることができる。また、その回転角センサの検出信号を累積してクランク角を算出するのにあたって、モードが切り替わった場合、それに伴って算出の仕方が変化するとしても、モードの切替時点に算出されているクランク角を保持し、その保持されている角度に、新たなモードで累積される信号に基づく角度を加算するから、モードの切替の影響を受けずに、正確にクランク角を算出することができる。
この発明の実施形態におけるクランク角の検出装置は、クランク軸を有する内燃機関(以下、エンジンと記す)のほかにモータを駆動力源として備えたハイブリッド車を対象としている。特に、エンジンとモータとが所定の伝動機構を介して連結されていて、エンジンが出力したトルクを、モータのトルクによって調整もしくは制御して駆動トルクの振動もしくは脈動を抑制するように構成されたハイブリッド車であってよい。また、この発明の実施形態におけるハイブリッド車は、所定の走行状態でのエンジン回転数あるいは駆動輪の回転数に対するエンジン回転数の比率を高低に変更できるハイブリッド車である。すなわち、いわゆる走行モードを複数備えたハイブリッド車であってよい。
図1はこの種のハイブリッド車1におけるパワートレーンを模式的に示しており、ここに示す例は、左右の前輪2を駆動輪としたハイブリッド車1の例である。駆動力源として、エンジン3と二つのモータ4,5とを備えている。そのエンジン3は、いわゆるレシプロエンジンであってクランク軸6を有している。そのクランク軸6が動力分割機構7に連結されている。動力分割機構7は、エンジン3が出力したトルクの一部を駆動輪である前輪2に伝達する一方、エンジン3が出力したトルクの他の部分を電力に変換し、その際の反力トルクによってエンジン3の回転数を制御するように構成された差動機構である。
図1に示す例では、動力分割機構7は、主として、トルクを分割する分割部8と、変速部9とによって構成されている。分割部8は、三つの回転要素によって差動作用を行う構成であればよく、遊星歯車機構によって構成することができる。図1に示す例では、シングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されている。その遊星歯車機構は、サンギヤ10と、サンギヤ10に対して同心円上に配置された、内歯歯車であるリングギヤ11と、これらサンギヤ10とリングギヤ11との間に配置されてサンギヤ10とリングギヤ11とに噛み合っているピニオンギヤ12と、ピニオンギヤ12を自転および公転可能に保持するキャリヤ13とにより構成されている。そのサンギヤ10が主に反力要素として機能し、リングギヤ11が主に出力要素として機能し、キャリヤ13が主に入力要素として機能する。なお、この遊星歯車機構がこの発明の実施形態における第1差動機構に相当する。
エンジン3のクランク軸6に、動力分割機構7の入力軸14が連結され、その入力軸14がキャリヤ13に連結されている。なお、キャリヤ13と入力軸14とを直接連結する構成に替えて、歯車機構などの伝動機構(図示せず)を介してキャリヤ13と入力軸14とを連結してもよい。また、そのクランク軸6と入力軸14との間にダンパ機構やトルクコンバータなどの機構(それぞれ図示せず)を配置してもよい。
サンギヤ10に第1モータ4が連結されている。図1に示す例では、分割部8および第1モータ4は、エンジン3の回転中心軸線と同一の軸線上に配置され、第1モータ4は分割部8を挟んでエンジン3とは反対側に配置されている。この分割部8とエンジン3との間で、これら分割部8およびエンジン3と同一の軸線上に、その軸線の方向に並んで変速部9が配置されている。
変速部9は、上述した分割部8における遊星歯車機構と共に複合遊星歯車機構を構成する差動機構であり、図1に示す例ではシングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されている。したがって、その遊星歯車機構は、サンギヤ15と、サンギヤ15に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ16と、これらサンギヤ15とリングギヤ16との間に配置されてこれらサンギヤ15およびリングギヤ16に噛み合っているピニオンギヤ17と、ピニオンギヤ17を自転および公転可能に保持しているキャリヤ18とを有し、サンギヤ15、リングギヤ16、およびキャリヤ18の三つの回転要素によって差動作用を行う差動機構である。この変速部9におけるサンギヤ15に分割部8におけるリングギヤ11が連結されている。また、変速部9におけるリングギヤ16に、出力ギヤ19が連結されている。したがって、サンギヤ15が入力要素、リングギヤ16が出力要素、キャリヤ18が反力要素となっている。なお、この遊星歯車機構がこの発明の実施形態における第2差動機構に相当する。
上記の分割部8を構成している遊星歯車機構における所定の回転要素と変速部9を構成している遊星歯車機構における所定の回転要素とを選択的に連結する係合機構が設けられている。図1に示す例では、変速部9におけるキャリヤ18と分割部8におけるキャリヤ13とを選択的に連結する第1クラッチ機構CL1と、変速部9における少なくともいずれか二つの回転要素、具体的にはリングギヤ16とキャリヤ18とを選択的に連結する第2クラッチ機構CL2とが設けられている。これらのクラッチ機構CL1,CL2は、湿式多板クラッチなどの摩擦式のクラッチ機構であってよく、あるいはドグクラッチなどの噛み合い式のクラッチ機構であってもよい。
この第1クラッチ機構CL1を係合させることにより分割部8におけるキャリヤ13と変速部9におけるキャリヤ18とが連結されてこれらが入力要素となり、また分割部8におけるサンギヤ10が反力要素となり、さらに変速部9におけるリングギヤ16が出力要素となった複合遊星歯車機構が形成される。また、第2クラッチ機構CL2は、変速部9の全体を一体化させるための係合機構である。したがって、図1に示すパワートレーンでは、第1クラッチ機構CL1を係合させたLoモード、第2クラッチ機構CL2を係合させたHiモード、二つのクラッチ機構CL1,CL2を共に係合させた直結モード(固定モード)との少なくとも三つの走行モードを設定することができる。
上記のエンジン3や分割部8あるいは変速部9の回転中心軸線と平行にカウンタシャフト20が配置されている。前記出力ギヤ19に噛み合っているドリブンギヤ21がこのカウンタシャフト20に取り付けられている。また、カウンタシャフト20にはドライブギヤ22が取り付けられており、このドライブギヤ22が終減速機であるデファレンシャルギヤユニット23におけるリングギヤ24に噛み合っている。さらに、前記ドリブンギヤ21には、第2モータ5におけるロータシャフト25に取り付けられたドライブギヤ26が噛み合っている。したがって、前記出力ギヤ19から出力された動力もしくはトルクに、第2モータ5が出力した動力もしくはトルクを、上記のドリブンギヤ21の部分で加えるように構成されている。このようにして合成された動力もしくはトルクをデファレンシャルギヤユニット23から左右のドライブシャフト27を介して前輪2に伝達されるように構成されている。
前述したように、エンジントルクに対して第1モータ4により反力トルクを作用させることにより、エンジントルクが駆動トルクとして前輪2に伝達される。したがって、これとは反対に、第1モータ4に対してエンジン3側から反力トルクを作用させれば、第1モータ4の出力トルクを、ハイブリッド車1を走行させるための駆動トルクとして前輪2に伝達することができる。このようないわゆるモータ(EV)走行のための反力を生じさせるブレーキ機構Bが設けられている。ブレーキ機構Bは、前述したクランク軸6もしくはこれに連結されている入力軸14を選択的に固定するように構成されている。なお、ブレーキ機構Bは、第1モータ4がトルクを出力した場合に、そのトルクに対して反力トルクを作用させることができればよく、クランク軸6または入力軸14を完全に固定する構成に限らず、要求される反力トルクをクランク軸6または入力軸14に作用させることができればよい。または、クランク軸6や入力軸14が、エンジン3の駆動時に回転する方向とは逆方向に回転することを禁止するワンウェイクラッチをブレーキ機構Bとして設けてもよい。
上述した第1モータ4および第2モータ5は、一例として、永久磁石式の同期モータであり、その制御のための回転角度(電気角)を検出する回転角センサとしてレゾルバ28,29が付設されている。レゾルバ28,29は、回転するロータと固定されたステータとのリアクタンス変化により発生する電気信号をカウント(累積)して回転角度を検出するように構成された従来知られているセンサである。すなわち、レゾルバ28,29により検出される回転角度は、レゾルバ28,29から出力される信号の累積値(積算値)をゼロリセットした位置(角度)からの相対角度である。
第1モータ4のトルクや回転数を制御するためのモータコントローラ30と、第2モータ5のトルクや回転数を制御するためのモータコントローラ31とが設けられている。これらのモータコントローラ30,31はインバータやコンバータを備えていて、リチウムイオン電池やキャパシタなどから構成された蓄電装置32から出力される電圧や電流、周波数を適宜に変換して各モータ4,5に供給し、またいずれかのモータ4,5で発電した電力の電圧や電流、周波数を適宜に変換して蓄電装置32に充電するように構成されている。
上記の各モータコントローラ30,31やエンジン3、各クラッチ機構CL1,CL2、およびブレーキ機構Bを制御するための電子制御装置(ECU)33が設けられている。このECU33は、マイクロコンピュータを主体にして構成され、前述したレゾルバ28,29を含む各種のセンサから入力されたデータや予め記憶しているデータならびにプログラムを使用して演算を行い、その演算の結果を制御指令信号として出力するように構成されている。図2は、ECU33の構成の一例を説明するためのブロック図である。図2に示す例では、統合ECU34、MG−ECU35、エンジンECU36、およびクラッチECU37によりECU33が構成されている。
統合ECU34は、車両に搭載された種々のセンサからデータが入力され、その入力されたデータと、予め記憶されているマップや演算式などとに基づいて、MG−ECU35、エンジンECU36、およびクラッチECU37に指令信号を出力するように構成されている。統合ECU34に入力されるデータの一例を図2に示してあり、車速、アクセル開度、第1モータ(MG1)4の回転数に相当するレゾルバ28からの信号、第2モータ5(MG2)の回転数に相当するレゾルバ29からの信号、エンジン3のクランク軸6の回転数(エンジン回転数)、変速部9におけるリングギヤ16またはカウンタシャフト20の回転数である出力回転数、各クラッチ機構CL1,CL2やブレーキ機構Bに設けられたピストンのストローク量、蓄電装置32の温度、各モータコントローラ30,31の温度、第1モータ4の温度、第2モータ5の温度、分割部8や変速部9などを潤滑するオイル(ATF)の温度、蓄電装置32の充電残量(SOC)などのデータが、統合ECU34に入力される。
そして、統合ECU34に入力されたデータなどに基づいて第1モータ4の運転状態(出力トルクや回転数)、第2モータ5の運転状態(出力トルクや回転数)、エンジン3のクランク角などを求めて、それらの求められたデータを指令信号としてMG−ECU35に出力する。同様に、統合ECU34に入力されたデータなどに基づいてエンジン3の運転状態(出力トルクや回転数、クランク角)を求めて、その求められたデータを指令信号としてエンジンECU36に出力する。さらに、統合ECU34に入力されたデータなどに基づいて各クラッチ機構CL1,CL2、およびブレーキ機構Bの伝達トルク容量(「0」を含む)を求めて、それらの求められたデータを指令信号としてクラッチECU37に出力する。
MG−ECU35は、上記のように統合ECU34から入力されたデータに基づいて各モータ4,5に通電するべき電流値を求めて、各モータ4,5に指令信号を出力する。各モータ4,5は、交流式のモータであるから、上記の指令信号は、インバータで生成するべき電流の周波数や、コンバータで昇圧するべき電圧値などが含まれる。
エンジンECU36は、上記のように統合ECU34から入力されたデータに基づいて電子スロットルバルブの開度を定めるための電流、点火装置で燃料を着火するための電流、EGR(Exhaust Gas Recirculation)バルブの開度を定めるための電流、吸気バルブや排気バルブの開度を定めるための電流値などを求め、それぞれのバルブや装置に指令信号を出力する。すなわち、エンジン3の出力(パワー)や、エンジン3の出力トルク、もしくはエンジン回転数を制御するための指示信号を、エンジンECU36から出力する。
クラッチECU37は、上記のように統合ECU34から入力されたデータに基づいて各クラッチ機構CL1,CL2、およびブレーキ機構Bの係合圧を定めるアクチュエータに通電するべき電流値を求めて、それぞれのアクチュエータに指令信号を出力する。
上記のパワートレーンでは、エンジン3で発生させた動力またはエンジン3で消費される動力を利用して駆動走行や制動走行するハイブリッド(HV)走行モードを設定することが可能である。さらに、HV走行モードでは、第1モータ4を低回転数で回転させた場合(「0」回転を含む)に、変速部9におけるリングギヤ16の回転数よりもエンジン3(または入力軸14)の回転数が高回転数となるHV−Loモードと、変速部9におけるリングギヤ16の回転数よりもエンジン3(または入力軸14)の回転数が低回転数となるHV−Hiモードと、変速部9におけるリングギヤ16の回転数とエンジン3(または入力軸14)の回転数とが同一である直結(固定)モードとを設定することが可能である。
HV−LoモードおよびHV−Hiモードでは、走行中に第1モータ4の回転数を変化させることによりエンジン回転数が変化する。すなわち、エンジン回転数とリングギヤ16(もしくは駆動輪である前輪2)の回転数(出力回転数)との比率である変速比(もしくはトルクの増幅率)が変化する。また、言い換えれば、HV−LoモードとHV−Hiモードとは、出力ギヤ19もしくは駆動輪である前輪2の回転数と第1モータ4の回転数とをそれぞれ一定の回転数とした場合における、出力ギヤ19もしくは駆動輪である前輪2の回転数とエンジン3の回転数との比率が異なる走行モードである。HV−Loモードでは、エンジン3の回転数が、HV−Hiモードにおけるエンジン回転数より高回転数になり、出力ギヤ19のトルクが大きくなる。
上記のパワートレーンでは、さらに、エンジン3の動力を利用せずに、第1モータ4や第2モータ5からトルクを出力して走行するEV走行モードを設定することができる。このEV走行モードは、第1モータ4および第2モータ5から駆動トルクを出力するデュアルモードと、第1モータ4から駆動トルクを出力せずに第2モータ5のみから駆動トルクを出力するシングルモードとを設定することが可能であり、デュアルモードは、第1モータ4から出力されたトルクの増幅率が比較的大きいEV−Loモードと、第1モータ4から出力されたトルクの増幅率が比較的小さいEV−Hiモードとを設定することが可能である。なお、シングルモードでは、第1クラッチ機構CL1を係合した状態で第2モータ5のみから駆動トルクを出力して走行することや、第2クラッチ機構CL2を係合した状態で第2モータ5のみから駆動トルクを出力して走行すること、あるいは各クラッチ機構CL1,CL2を解放した状態で第2モータ5のみから駆動トルクを出力して走行することが可能である。
それらの各走行モードは、第1クラッチ機構CL1、第2クラッチ機構CL2、ブレーキ機構B、およびエンジン3、各モータ4,5を制御することにより設定される。図3に、これらの走行モードと、各走行モード毎における、第1クラッチ機構CL1、第2クラッチ機構CL2、ブレーキ機構Bの係合および解放の状態、第1モータ4および第2モータ5の運転状態、エンジン3からの駆動トルクの出力の有無の一例を図表として示してある。図中における「●」のシンボルは係合している状態を示し、「−」のシンボルは解放している状態を示し、「G」のシンボルは主にジェネレータとして運転することを意味し、「M」のシンボルは主にモータとして運転することを意味し、空欄はモータおよびジェネレータとして機能していない、または第1モータ4や第2モータ5が駆動のために関与していない状態を意味し、「ON」はエンジン3から駆動トルクを出力している状態を示し、「OFF」はエンジン3から駆動トルクを出力していない状態を示している。なお、シングルモードでの走行中に、エンジン3によって第1モータ4を回転させて発電し、その電力で走行することが可能であり、このようにエンジン3から出力された動力の全てを電気エネルギに変換する場合は、エンジン3は駆動トルクを直接的には発生していないため、図中では「OFF」と示している。
上述したHV−HiモードやHV−Loモードでの動作を図4および図5に示す共線図を用いて説明する。共線図は、動力分割機構7における各回転要素を示す直線をギヤ比の間隔をあけて互いに平行に引き、これらの直線に直交する基線からの距離をそれぞれの回転要素の回転数として示す図である。また、図4および図5には、エンジン3で空気と燃料との混合気を燃焼させて動力(すなわち駆動トルク)を発生させている駆動走行時におけるトルクの向きを実線で示し、エンジン3への燃料の供給を停止させるなどしてエンジン3を連れ回すことによりエンジン3で動力を消費させている、すなわちエンジンブレーキトルクを発生させている制動走行時におけるトルクの向きを破線で示している。
HV−HiモードやHV−Loモードを設定した駆動走行時には、図4および図5に実線で示すようにエンジン3から駆動トルク(正トルク)を出力し、第1クラッチ機構CL1と第2クラッチ機構CL2とのいずれか一方を係合するとともに、第1モータ4からエンジン回転数の増加を抑制するための反力トルクを出力することにより、エンジン3から出力された駆動トルクに応じたトルクが動力分割機構7から出力される。この動力分割機構7から出力されるトルクは、HV−HiモードとHV−Loモードとで異なる。言い換えると、エンジン3から出力されたトルクのうち動力分割機構7におけるリングギヤ16側に伝達されるトルクの割合が異なる。
エンジン3から駆動トルクを出力し、第1モータ4から反力トルクを出力する場合には、エンジン回転数が目標回転数となるように、第1モータ4の回転数が制御される。そのエンジン3の目標回転数は、例えば、駆動走行時であれば、エンジン3の燃費や第1モータ4の駆動効率などを考慮したパワートレーンの全体としての効率(消費エネルギ量を前輪2のエネルギ量で除算した値)が最も良好となるように定められる。なお、上記の第1モータ4の回転数は連続的に変化させることができ、その第1モータ4の回転数と車速とに基づいてエンジン回転数が定まる。したがって、動力分割機構7は、無段変速機として機能する。
上記の駆動走行時に第1モータ4から反力トルクを出力することにより、第1モータ4が発電機として機能する場合には、エンジン3の動力の一部が第1モータ4により電気エネルギに変換される。そして、エンジン3の動力から第1モータ4により電気エネルギに変換された動力分を除いた動力が変速部9におけるリングギヤ16に伝達される。また、第1モータ4により発電された電力が第2モータ5に供給される。その場合、必要に応じて蓄電装置32に充電されている電力も第2モータ5に供給される。
直結モードでは、各クラッチ機構CL1,CL2が係合し、したがって図6に共線図で示すように動力分割機構7における各回転要素が同一回転数で回転する。すなわち、エンジン3の動力の全てが動力分割機構7から出力される。言い換えると、エンジン3の動力の一部が、第1モータ4や第2モータ5により電気エネルギに変換されることがない。
上述した各走行モードは、車速と要求駆動力(例えば、アクセルペダルの踏み込み角度であるアクセル開度)とに応じて選択され、その制御は、各走行モードを設定する領域と車速と要求駆動力とをパラメータとして定めたマップに基づいて行われる。各走行モードの領域は、概略的には、低車速で要求駆動力が大きい高負荷ほど、Loモードが設定されやすく、また反対に高車速で低負荷ほど、Hiモードが設定されやすくなっている。したがって、車速が変化したり、アクセル開度が変化することにより、走行モードをLoモードとHiモードとの間で切り替えることになる。その場合、それらの走行モードで係合させるクラッチ機構CL1,CL2が異なるのに対して、直結モードでは両方のクラッチ機構CL1,CL2を係合させるので、LoモードとHiモードとの間で走行モードを切り替える場合には、一旦、直結モードを設定する。
上記のパワートレーンでは、エンジン3と各モータ4,5とが動力分割機構7を介して互いに連結されており、しかも各モータ4,5は高いトルク制御応答性を有しているので、エンジン3から出力ギヤ19もしくは前輪2に伝達されるトルクをモータ4,5のトルクによってタイムリーに増減することができる。そのような機能を利用して、エンジントルクの振動もしくは脈動(以下、単に振動と記す)をモータ4,5によって抑制する制振制御を行う。すなわち、エンジントルクの振動に対して位相をずらしたトルクをモータ4,5によって出力することにより駆動トルクの振動が小さくなる。モータ4,5のトルクをこのように制御するためには、エンジントルクの振動に応じたトルク制御を行う必要がある。エンジントルクの振動は、エンジン3での混合気の間欠的な燃焼によって生じ、その間欠的な燃焼のタイミングはクランク角によって知ることができる。
この発明の実施形態におけるクランク角の検出装置は、上記のモータトルクの制御のためのクランク角を、モータ4,5に付設されている回転角センサであるレゾルバ28,29の検出信号に基づいて検出するように構成されている。いずれかのクラッチ機構CL1,CL2を係合させ、かつブレーキ機構Bを解放して走行している状態では、エンジン3および各モータ4,5が回転しており、それらエンジン3と各モータ4,5との回転数の間には、それらを連結している伝動機構がある上記の動力分割機構7の構成によって決まる関係が成立している。その関係を、クランク角θeと各モータ4,5の回転角θmg1,θmg2とで表すと、以下の通りである。Hiモードでのクランク角θe(θH)は、
θe=θH={ρ1/(1+ρ1)}θmg1+{1/(1+ρ1)}θmg2
であり、Loモードでのクランク角θe(θL)は、
θe=θL={ρ1・ρ2/(1−ρ1・ρ2)}θmg1+{1/(1−ρ1・ρ2)}θmg2
である。ここで、ρ1は、前述した分割部8を構成している遊星歯車機構のギヤ比(サンギヤ10とリングギヤ1との歯数の比率)、ρ2は、前述した変速部9を構成している遊星歯車機構のギヤ比(サンギヤ15とリングギヤ16との歯数の比率)であり、またθmg1は、第1モータ4におけるレゾルバ28から出力された信号の累積値(カウント値)、θmg2は、第2モータ5におけるレゾルバ29から出力された信号の累積値(カウント値)である。
θe=θH={ρ1/(1+ρ1)}θmg1+{1/(1+ρ1)}θmg2
であり、Loモードでのクランク角θe(θL)は、
θe=θL={ρ1・ρ2/(1−ρ1・ρ2)}θmg1+{1/(1−ρ1・ρ2)}θmg2
である。ここで、ρ1は、前述した分割部8を構成している遊星歯車機構のギヤ比(サンギヤ10とリングギヤ1との歯数の比率)、ρ2は、前述した変速部9を構成している遊星歯車機構のギヤ比(サンギヤ15とリングギヤ16との歯数の比率)であり、またθmg1は、第1モータ4におけるレゾルバ28から出力された信号の累積値(カウント値)、θmg2は、第2モータ5におけるレゾルバ29から出力された信号の累積値(カウント値)である。
前述したECU33(特に、MG−ECU35)は、上記の演算式を予め記憶しており、レゾルバ28,29から入力される信号をカウントしてその累積値を上記の式に代入してエンジン3のクランク角θeを検出する。クランク角θeとエンジントルクの振動(振動の位相)とには相関関係があるから、検出したクランク角θeに応じてモータトルクを大小に変化させることにより、すなわちモータトルクをエンジントルクの振動に対して位相をずらせて振動させることにより、トルクの振動を低減させる。このようなモータトルクの制御は、モータトルクの指令信号を発するMG−ECU35において算出したクランク角θeに基づいて行うことになり、そのためクランク角θeを制御装置同士の間で伝送しないので、制御の遅れが回避もしくは抑制されて、振動抑制のための精度のよいトルク制御を行うことができる。
一方、図1に示すパワートレーンを搭載したハイブリッド車1では、車速や要求駆動力などで定まる走行状態が変化すると、走行モードが切り替わる。例えばHV−Hiモードで走行している状態で要求駆動力が増大すると、走行モードはHV−HiモードからHV−Loモードに切り替わる。それに伴ってクランク角θeを求める上記の式が変更される。その場合、式の変更のみを行ったのでは、検出されるクランク角θeが実際の角度からずれてしまう。その状況を図7を参照して説明する。
図7は、Hiモードで走行している状態からLoモードに切り替わった場合における、上記の式で算出されたクランク角演算値と、G信号と、レゾルバ28から出力される信号に基づいて求められた第1モータ4(MG1)のレゾルバ角積算値と、レゾルバ29から出力される信号に基づいて求められた第2モータ5(MG2)のレゾルバ角積算値との時間的な変化を示している。なお、G信号とは、各演算値および積算値をゼロリセットすることに利用される信号であり、エンジン3では所定回転数ごとに混合気を燃焼させるので、πラジアンの整数倍の予め定めた角度ごとに出力される信号である。エンジン3が4サイクルエンジンの場合、G信号は720度ごとに出力される。このG信号はエンジンECU36でクランク角を検出して出力され、MG−ECU35に伝送される。なお、信号の累積もしくは積算を行うことに伴う誤差の累積を解消もしくは抑制するためにゼロリセットを行うことが好ましく、そのゼロリセットのための信号は適宜、必要に応じて採用すればよく、上記のG信号以外の信号であってもよい。
図7において、ハイブリッド車1が走行していることにより各レゾルバ28,29は連続して信号を出力しており、その積算値は時間の経過と共に増大し、G信号が発せられる都度、ゼロリセットされる。クランク角θeも同様に、時間の経過と共に増大し、G信号が発せられる都度、ゼロリセットされる。その過程のG信号が出力された後、レゾルバ28,29の出力信号を積算してクランク角θeを演算している途中のt0時点で、HiモードからLoモードに切り替わり、それに応じてクランク角θeの演算式を変更すると、クランク角演算値が図7に示すように、ステップ的に変化する。前述したクランク角θeの演算式のうち、各モータ4,5の回転角である各レゾルバ28,29の積算値θmg1,θmg2についての係数は、Hiモードでの演算式のほうがLoモードでの演算式より大きい。したがって走行モードの切替に伴って演算式を変更すると、クランク軸6は従前のままの回転角度であるにも関わらず、算出されるクランク角θeが小さい値に変化してしまう。すなわち、クランク角θeの検出に誤りが生じる。
この発明の実施形態におけるクランク角の検出装置は、走行モードが切り替わった際のクランク角θeの検出の誤りを生じないように、以下に説明する制御を実行するように構成されている。図8および図9はその制御の一例を説明するためのフローチャートであり、ハイブリッド車1が前述したHVモードで走行している状態で、前述したECU33によって、所定の短時間ごとに繰り返し実行される。したがって、ECU33がこの発明の実施形態におけるコントローラに相当する。
図8において、先ず、走行モードの切替(Hi/Lo切替)要求があるか否かが判断される(ステップS1)。このステップS2で否定的に判断された場合には、従前の走行モードが維持されるのであるから、例えば現在の走行モードがLoモードか否かが判断される(ステップS2)。なお、このステップS2では、Hiモードか否かを判断することとしてもよい。
ステップS2において、Loモードであることが判断された場合には、Loモードでのクランク角の演算が実行され(ステップS3)、その後、リターンする。このステップS3の制御は、前述したLoモードでのクランク角θe(θL)を求める演算式を使用し、各レゾルバ28,29の信号の積算値θmg1,θmg2をその演算式に代入してクランク角θe(θL)を算出する制御である。これに対してステップS2において、Hiモードであることが判断された場合には、Hiモードでのクランク角の演算が実行され(ステップS4)、その後、リターンする。このステップS4の制御は、前述したHiモードでのクランク角θe(θH)を求める演算式を使用し、各レゾルバ28,29の信号の積算値θmg1,θmg2をその演算式に代入してクランク角θe(θH)を算出する制御である。
一方、ステップS1で肯定的に判断された場合、すなわち走行モードの切替要求があった場合には、固定(直結)モード中か否かが判断される(ステップS5)。前述したように、ここで説明している実施形態ではHiモードとLoモードとの間の切替は、二つのクラッチ機構CL1,CL2を共に係合させる固定モードを経由して行うので、ステップS5では、その切替の過程で固定モードが設定されていることの確認を行う。なお、ステップS5での固定モードの判断は、要は、走行モードを切り替える状態が成立しているか否かの判断であり、したがって走行モードを切り替える状態が成立していることを知り得るものであれば、固定モード中か否かの判断とは異なる判断を行うこととしてもよい。
このステップS5で否定的に判断された場合の状態は、走行モードの切替が開始されていないか、あるいは走行モードが既に切り替わっているかのいずれかであるから、上述したステップS2に進んで、その時点の走行モードを判断する。これに対して固定モードになっていることによりステップS5で肯定的に判断された場合には、クランク角の演算を切り替える制御を実行し(ステップS6)、その後、リターンする。
このステップS6で実行する切替制御の一例を図9にフローチャートで示してある。図9に示す制御例では、先ず、クランク角前回値を保持(記憶)する(ステップS61)。ここで、クランク角の前回値とは、切り替える直前の走行モードで使用していた演算式によって得られたクランク角θeである。ついで、クランク角を算出する演算式を切り替える(ステップS62)。すなわち、クランク角を求めるための演算式を、切替後の走行モードに対応する演算式に切り替える。演算式を切り替えても、クランク角の前回値が保持されているので、その前回値を採用することにより、クランク角の算出に誤りが生じることはない。その後、新たに算出される角度を上記の前回値に加算していくことにより、クランク角θeが検出される。
すなわち、図9に示す例では、G信号が無いか否かが判断される(ステップS63)。G信号が無いことによりステップS63で肯定的に判断された場合すなわち演算式の切替とG信号とが時間的に重なった場合には、切替後の演算式と新たなレゾルバ角積算値とで求まる角度を、レゾルバ角前回値に加算(累積)することによりクランク角θeを算出する(ステップS64)。その後、リターンする。ここで、新たなレゾルバ角積算値は、演算式を切り替えた後に、レゾルバ28,29が入力される信号をカウントして得られる角度値であり、実質的にゼロから始まる値である。したがって、図9に示す例では、レゾルバ角積算値をゼロリセットする。これに替えて、演算式の切替時点のレゾルバ角積算値を記憶しておき、演算式の切替の以前から継続して積算されている値からその記憶値を減じて、新たなレゾルバ角積算値(カウント値)を求めることとしてもよい。
このように、この発明の実施形態では、クランク角の演算式を切り替えた時点では、切り替えた演算式で求まる角度を採用せずに、直前の前回値をクランク角として保持するから、演算式を切り替えることに起因するクランク角の演算値と実際の角度との誤差は生じない。また、走行モードを切り替えた後は、その走行モードに応じた演算式で角度を新たに求め、その新たに求められた角度を上記の前回値に加算(累積)してクランク角を検出するので、クランク角の演算値と実際値との誤差が生じず、正確にクランク角θeを検出することができる。
なお、G信号があることによりステップS63で否定的に判断された場合には、走行モードの切替に合わせて切り替えられた演算式によってクランク角を算出する。例えばクランク角の検出に使用する演算式がLoモードの演算式か否かが判断される(ステップS65)。このステップS65で肯定的に判断された場合には、Loモードでのクランク角が演算される(ステップS66)。その後、リターンする。これとは反対にステップS65で否定的に判断された場合には、Hiモードでのクランク角が演算される(ステップS67)。その後、リターンする。
上記のステップS64での制御を実行した場合における、前述した式で算出されたクランク角演算値と、G信号と、レゾルバ28から出力される信号に基づいて求められた第1モータ4(MG1)のレゾルバ角積算値と、レゾルバ29から出力される信号に基づいて求められた第2モータ5(MG2)のレゾルバ角積算値との時間的な変化を図10に示してある。図10はHiモードで走行している状態からLoモードに切り替える場合の変化を示しており、Hiモードで走行している状態では,各レゾルバ28,29から出力される信号を積算することによりレゾルバ角積算値が逐次増大し、それに伴ってクランク角演算値が逐次増大する。そして、G信号が発せられることにより、各積算値および演算値がゼロリセットされる。
G信号に基づいてゼロリセットされた後の所定時点t1に走行モードの切替要求に伴う演算式の切替が生じると、その時点のクランク角演算値が保持される。同時に、各レゾルバ角積算値がゼロリセットされる。そして、新たにレゾルバ角がレゾルバ28,29の信号に基づいて逐次積算される。その新たな積算値と切り替えられた演算式とで算出されるクランク角演算値が、t1時点に保持されている演算値(前回値)に加算されていく。したがって、図10において右上がりに増大していた各レゾルバ角積算値がt1時点でゼロに戻り、その後に新たに右上がりに次第に増大するが、クランク角演算値はt1時点に保持された値に、新たに演算された値が順次加算されるので、クランク角演算値はt1時点より以前の状態と同様に、右上がりに増大し続ける。これは、クランク軸6が継続して回転しているのと合致しており、この点においても、クランク角を、演算式の切替に関わらず、正確に検出できることが明らかである。
なお、この発明は上述した具体例に限定されないのであって、図1に示すパワートレーン以外のパワートレーンを備えたハイブリッド車両のクランク角の検出装置に適用することができる。したがって切り替えて設定できる走行モードは、前述した走行モードに限られず、それら以上に多様な走行モードであってもよい。
1…ハイブリッド車、 2…前輪、 3…エンジン、 4,5…モータ、 6…クランク軸、 7…動力分割機構、 8…分割部、 9…変速部、 10…サンギヤ、 11…リングギヤ、 12…ピニオンギヤ、 13…キャリヤ、 14…入力軸、 15…サンギヤ、 16…リングギヤ、 17…ピニオンギヤ、 18…キャリヤ、 19…出力ギヤ、 20…カウンタシャフト、 21…ドリブンギヤ、 22…ドライブギヤ、 23…デファレンシャルギヤユニット、 24…リングギヤ、 25…ロータシャフト、 26…ドライブギヤ、 27…ドライブシャフト、 28…レゾルバ、 29…レゾルバ、 30…モータコントローラ、 31…モータコントローラ、 32…蓄電装置、 θe…クランク角、 θmg1,θmg2…積算値、 B…ブレーキ機構、 CL1,CL2…クラッチ機構。
Claims (7)
- クランク軸を有する内燃機関と、回転することにより信号を出力する回転角センサを有するモータと、駆動輪と、前記内燃機関と前記モータと前記駆動輪とが連結されて差動作用を行う動力分割機構とを備え、前記駆動輪の回転数と前記モータの回転数を一定とした場合の前記駆動輪の回転数に対する前記内燃機関の回転数の比率が異なる少なくとも二つの走行モードを設定可能なハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置において、
前記回転角センサが出力する前記信号に基づいて前記クランク軸の回転角であるクランク角を算出するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記信号を積算するとともに積算して得られた積算値に基づいてクランク角を算出し、
前記二つの走行モードのうちの第1モードから第2モードに切り替えることを判断し、
前記第1モードから前記第2モードに切り替えることの判断が成立した場合に、前記第1モードで算出した前記クランク角を保持し、
前記第2モードに切り替えた状態で前記信号を積算することにより算出されるクランク角を、保持されている前記クランク角に加算して前記クランク角を算出する
ことを特徴とするハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置。
- 請求項1に記載のハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置において、
前記コントローラは、前記第1モードから前記第2モードに切り替えられた際に前記積算値をゼロリセットするとともに前記第2モードが設定されている状態で前記信号の積算を新たに開始し、新たに積算して得られた積算値に基づいて得られるクランク角を、前記保持されているクランク角に加算してクランク角を算出することを特徴とするハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置。
- 請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置において、
前記コントローラは、算出した前記クランク角がπラジアンの整数倍の角度に達する都度、算出した前記クランク角をゼロリセットすることを特徴とするハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置。
- 請求項3に記載のハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置において、
前記コントローラは、前記第1モードで前記クランク角を算出する演算式と、前記第2モードで前記クランク角を算出する演算式とを有し、
前記第1モードから前記第2モードへの切り替えと前記クランク角のゼロリセットとが時間的に重なった場合に、前記第2モードでの前記演算式に基づいてクランク角の算出を開始する
ことを特徴とするハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置。
- 請求項1に記載のハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置において、
前記走行モードは、前記内燃機関の出力トルクを所定の増幅率で変化させる前記駆動輪に伝達する低速モードと、前記所定の増幅率より小さい増幅率で前記内燃機関の出力トルクを変化させて前記駆動輪に伝達する高速モードと、前記エンジンの出力トルクを増減させることなく前記駆動輪に出力する固定モードとを含み、
前記コントローラは、
前記低速モードと前記高速モードとの間で走行モードを切り替える場合に、その切り替えの途中で前記固定モードを設定し、
前記固定モードが設定されている状態で、切り替える前の走行モードで算出した前記クランク角を保持し、かつ切り替え後の走行モードで前記信号を積算することにより算出されるクランク角を、保持されている前記クランク角に加算して前記クランク角を算出する
ことを特徴とするハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置において、
前記モータは、前記エンジンが出力したトルクに対する反力トルクを出力する第1モータと、前記駆動輪に伝達されるトルクにトルクを加減する第2モータとを含み、
前記第1モータおよび前記第2モータは、それぞれ回転角センサを有し、
前記コントローラは、前記第1モータの前記回転角センサと前記第2モータの回転角センサとが出力する信号を積算するとともに、積算して得られる積算値に基づいて前記クランク角を算出すること
を特徴とするハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置。
- 請求項6に記載のハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置において、
前記動力分割機構は、前記クランク軸が連結された第1入力要素と、前記第1モータが連結された第1反力要素と、第1出力要素とによって差動作用を行う第1差動機構と、前記第1出力要素が連結された第2入力要素と、前記駆動輪が連結された第2出力要素と、第2反力要素とによって差動作用を行う第2差動機構と、前記第2差動機構における少なくともいずれか二つの前記要素を選択的に連結する第1係合機構と、前記第2反力要素と前記クランク軸とを選択的に連結する第2係合機構とを備え、
前記第2モータは、前記第2出力要素に連結されている
ことを特徴するハイブリッド車両のエンジンのクランク角検出装置。
Priority Applications (2)
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