JP2021031506A - 熱可塑性樹脂組成物、成形体 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物、成形体 Download PDF

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裕太 松岡
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Abstract

【課題】制振性能と低温下での耐衝撃性とを両立できる熱可塑性樹脂組成物を提供する。【解決手段】(A)成分:少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水添物と、(B)成分:少なくとも一種の熱可塑性樹脂(ただし、(A)成分を除く)と、を含む、熱可塑性樹脂組成物であって、(A)成分の含有量が、(B)成分100質量部に対して、1〜80質量部であり、(A)成分100質量部の1質量部以上が、極性基を有し、前記熱可塑性樹脂組成物が、(A)成分を含む島相と(B)成分を含む海相との海島構造を有し、前記(A)成分を含む島相の平均粒子径が、50nm〜2μmの範囲である、熱可塑性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物、成形体に関する。
自動車の軽量化への要求により、ポリアミド樹脂に代表されるエンジニアプラスチック等を車両の部品に用いることが進んでいる。しかしながら、それらエンジニアプラスチックの強度は高いが靭性や耐衝撃性に劣り、特に低温下において靭性や耐衝撃性は大きく低下する。
エンジニアプラスチックに耐衝撃性を付与する方法の一つとして、エンジニアプラスチックを含む樹脂組成物にエラストマーを添加することが行われる。その場合、高い耐衝撃性の発現には、上記エラストマーの粘弾性測定によるtanδピークが使用温度よりも低温であることが好ましい。特に低温下での耐衝撃性が必要な場合、tanδピークは一般的に−50℃〜−30℃以下に存在することが好ましい。上記エラストマーとして、従来スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水添物やエチレン−ブテンブロック共重合体の水添物等の変性エラストマーが用いられている。
例えば、特許文献1には、ポリアミド樹脂の低温耐衝撃性を高めるため、エラストマーとして、ビニル芳香族化合物重合体ブロックAと、カルボン酸基又はその誘導体基を含有する分子単位が結合されているオレフィン化合物重合体ブロックBとからなり、ブロックBの不飽和度が20%を超えず、ブロックAの量がブロックA及びブロックBの合計量に対して10〜23重量%である変性ブロック共重合体を用いることが開示されている。
また、特許文献2には、ポリアミド樹脂の低温耐衝撃性を高めるため、MFR(2.16kg/230℃)が1〜2.5g/10minである耐衝撃性改良材、例えば、(エチレン及び/又はプロピレン)・α−オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)・(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、アイオノマー重合体、芳香族ビニル化合物・共役ジエン化合物系ブロック共重合体、ポリアミドエラストマー等を用いることが開示されている。
特開平3−128964号公報 特開2008−69190号公報
近年、自動車産業における課題の一つに、振動等に起因する騒音を抑制又は解消する制振性能を向上することが挙げられる。特許文献1及び2に記載の熱可塑性樹脂組成物は、十分な制振性能を示さない。制振性能の向上にはエラストマーのtanδピークが使用温度付近に存在することが好ましいが、本発明者の検討によると、これらの熱可塑性樹脂組成物に含まれるエラストマーはtanδピークが低温にあるために使用温度での制振性能が不十分である。低温下でも優れた耐衝撃性を有しながら、且つ、常温付近又はそれ以上の温度でも制振性能に優れる熱可塑性樹脂組成物が望まれている。
本発明の課題は、制振性能と低温下での耐衝撃性とを両立できる熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定の熱可塑性樹脂組成物が、制振性能と低温下での耐衝撃性とを両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
(A)成分:少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水添物と、
(B)成分:少なくとも一種の熱可塑性樹脂(ただし、(A)成分を除く)と、
を含む、熱可塑性樹脂組成物であって、
(A)成分の含有量が、(B)成分100質量部に対して、1〜80質量部であり、
(A)成分100質量部の1質量部以上が、極性基を有し、
(A)成分が、条件(i)〜(iii)を満たす、少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水添物((A−1)成分):
(i)粘弾性スペクトルにおけるtanδの主分散ピークが、−10〜60℃の範囲に存在する;
(ii)少なくとも一つの共役ジエン化合物単位と少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位とのランダム重合体ブロック(a)を含む;
(iii)前記ランダム重合体ブロック(a)中のビニル芳香族化合物単位の量が、(A−1)成分100質量%に対して15質量%以上である;
を、(A)成分100質量部に対して10質量部以上含み、
前記熱可塑性樹脂組成物が、(A)成分を含む島相と(B)成分を含む海相との海島構造を有し、
前記(A)成分を含む島相の平均粒子径が、50nm〜2μmの範囲である、
熱可塑性樹脂組成物。
[2]
(A)成分が、前記ランダム重合体ブロック(a)、及び必要に応じて、(b)ビニル芳香族化合物単位の重合体ブロック及び/又は(c)共役ジエン単位の重合体ブロックを有する、
[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]
(B)成分が、極性基を有する熱可塑性樹脂を含む、
[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]
(C)成分:ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、酸化防止剤及び滑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、
[1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]
[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の成形体。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、優れた制振性能と低温領域でも優れた耐衝撃性を両立する。したがって、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、制振性能が求められる自動車部材に加え、モーター等が用いられている家電製品等の部品の成形品に有用である。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、
(A)成分:少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水添物と、
(B)成分:少なくとも一種の熱可塑性樹脂(ただし、(A)成分を除く)と、
を含む。
また、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物における(A)成分の含有量は、(B)成分100質量部に対して、1〜80質量部である。
また、本実施形態の熱可塑性組成物における(A)成分100質量部のうち1質量部以上が、極性基を有する。すなわち、(A)成分が、極性基を有する、少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水添物を、(A)成分100質量部に対して1質量部以上含む。
また、本実施形態の熱可塑性組成物における(A)成分が、条件(i)〜(iii)を満たす、少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水添物((A−1)成分):
(i)粘弾性スペクトルにおけるtanδの主分散ピークが、−10〜60℃の範囲に存在する;
(ii)少なくとも一つの共役ジエン化合物単位と少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位のランダム重合体ブロック(a)を含む;
(iii)前記ランダム重合体ブロック(a)中のビニル芳香族化合物単位の量が、(A−1)成分100質量%に対して15質量%以上である;
を、(A)成分100質量部に対して10質量部以上含む。
さらに、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、(A)成分を含む島相と(B)成分を含む海相との海島構造を有し、前記(A)成分を含む島相の平均粒子径が、50nm〜2μmの範囲である。
本明細書における熱可塑性樹脂組成物とは、熱可塑性樹脂を含む組成物を指す。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、海部分と島部分との海島構造を有する。なお、本明細書における上記「海島構造」とは、少なくとも2つの成分のうち一方の成分を含む相(島部分)が、もう一方の成分からなる相(海部分)中に分散した相分離構造を意味する。本明細書における平均粒子径とは、島相が粒子状となって相分離した状態における当該島相の粒子径の平均値である。
島相が平均粒子径50nm〜2μmの範囲内である海島構造を取ることにより、熱可塑性樹脂組成物は低温下でも優れた耐衝撃性と優れた制振性能を両立することができる。島相の平均粒子径は、50nm〜2μmであり、好ましくは100nm〜1.5μmである。島相の平均粒子径が50nm以上であることにより低温下での耐衝撃性が高くなる。島相の平均粒子径が2μm以下であることにより低温下での耐衝撃性及び制振性能が高くなる。島相の平均粒子径は、実施例に記載の方法によって算出することができる。
なお、島相((A)成分)の平均粒子径の標準偏差は、通常0〜15.0以下の範囲であればよく、好ましくは0.5〜10.0の範囲であり、より好ましくは1.0〜7.0の範囲である。
上記の海島構造を形成する熱可塑性樹脂組成物を得る方法の一つとしては、(B)成分100質量部に対して(A)成分の含有量を1質量部以上80質量部以下とすることである。(A)成分の含有量を1質量部以上とすることにより低温下での耐衝撃性が高くなる。(A)成分の含有量を80質量部以下とすることにより海島構造が十分に形成され、剛性が高くなる。熱可塑性樹脂組成物の低温下での耐衝撃性をより高め、海島構造の形成をよりしやすくするために、(A)成分の含有量は、3質量部以上70質量部以下とすることが好ましく、5質量部以上65質量部とすることがより好ましい。
上記の海島構造を形成する熱可塑性樹脂組成物を得る方法の一つとしては、(A)成分が、極性基を有する、少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水添物を用いる方法が挙げられる。
上記の海島構造を形成する熱可塑性樹脂組成物を得る方法の一つとしては、公知の各熱可塑性樹脂成分を均一に混合し得る溶融混錬装置を用いて熱可塑性樹脂組成物を製造する方法が挙げられる。上記溶融混錬装置としては特に制限なく使用することができる。上記溶融混錬装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を挙げることができる。これらの中でも、混錬中の剪断力が大きく連続運転が可能なため効率的に製造できることから、二軸押出機が好ましい。
ここで「溶融混錬」とは、熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分の融点以上の温度下で、当該成分が溶融した状態で混合することを意味する。溶融混練の温度としては、好ましくは100〜400℃であり、より好ましくは150〜350℃である。また、二軸押出機を用いて溶融混錬する場合、スクリュー回転数は、好ましくは100rpm以上であり、より好ましくは150rpm以上である。スクリュー回転数を100rpm以上とすることにより、島相を形成する成分(A)の分散性が高まり、平均分散粒径を50nm〜2μmの範囲に調整しやすくなる。また、樹脂温度の異常な上昇により(A)成分のtanδの主分散ピークが溶融混錬により変化するのを抑制するために、スクリュー回転数の上限は700rpm以下であることが好ましい。
<(A)成分>
本実施形態における(A)成分は、少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水添物である。本明細書において、少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体又はその水添物を、「共役ジエンとビニル芳香族化合物との共重合体又はその水添物」ともいう。
本実施形態における共役ジエン化合物は、1対の共役二重結合を有するジオレフィンである。共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレンである。これらは一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本明細書における共役ジエン化合物単位とは、共役ジエン化合物が重合して生成する重合体中の当該共役ジエン化合物に由来する構成単位を指す。
ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられる。これらは一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本明細書におけるビニル芳香族化合物単位とは、ビニル芳香族化合物が重合して生成する重合体中の当該ビニル芳香族化合物に由来する構成単位を指す。
本実施形態における(A)成分は、少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水添物である。(A)成分は、ビニル芳香族化合物単位と共役ジエン化合物単位とが主構成単位であることが好ましい。ここで、主要構成単位であるとは、ビニル芳香族化合物単位と共役ジエン化合物単位との合計が、(A)成分の質量に対し通常80質量%以上であることを指す。(A)成分におけるビニル芳香族化合物単位及び共役ジエン化合物単位の含有量は、(A)成分の質量に対し、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
本実施形態における(A)成分は、(A)成分100質量部に対して10質量部以上の(A−1)成分を含む。(A−1)成分は、条件(i)〜(iii):
(i)粘弾性スペクトルにおけるtanδの主分散ピークが、−10〜60℃の範囲に存在する;
(ii)少なくとも一つの共役ジエン化合物単位と少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位のランダム重合体ブロック(a)を含む;
(iii)前記ランダム重合体ブロック(a)中のビニル芳香族化合物単位の量が、(A−1)成分100質量%に対して15質量%以上である;
を満たす、少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水添物である。
(A−1)成分の粘弾性スペクトルにおける「tanδの主分散ピーク」は、−10℃以上60℃以下の範囲に存在し、好ましくは−5℃以上55℃以下の範囲に存在し、より好ましくは5℃以上50℃以下の範囲に存在する。「tanδピークの主分散ピーク」とは分子構造における主鎖の運動で、溶融前のtanδ曲線の最大値を指す。最大値での温度が−10℃以上であることにより制振性に優れる。最大値での温度が60℃以下であることにより耐衝撃性に優れる。tanδの主分散ピークは、実施例に記載の方法によって測定できる。
(A−1)成分は、少なくとも一つの共役ジエン化合物単位と少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位のランダム重合体ブロック(a)を含む。
ランダム共重合ブロック(a)の含有量は、(A−1)成分100質量部に対し、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上であり、さらに好ましくは40質量部以上である。10質量部以上であることにより、制振性能に優れる傾向にある。ランダム共重合ブロック(a)の含有量の上限量は特に制限されず、100質量部以下であればよい。
ランダム共重合ブロック(a)中のビニル芳香族化合物単位の含有量は、成分(A)における共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位の合計を100質量%としたとき、15質量%以上であり、好ましくは18質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。上記ビニル芳香族化合物単位の含有量が15%以上であることにより、tanδの主分散ピークが−10℃以上60℃以下に制御できる傾向にある。
上記ビニル芳香族化合物単位の含有量の上限は特に制限されないが、通常100質量%以下であり、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下である。上記ビニル芳香族化合物単位の含有量が95%以下であることにより、耐衝撃性に優れる傾向にある。
上記ビニル芳香族化合物単位の含有量は、好ましくは15質量%以上95質量%以下、より好ましくは18質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上85質量%以下である。
なお、ランダム共重合ブロック(a)においてビニル芳香族化合物はテーパー状に分布していてもよい。また、ランダム共重合ブロック(a)にはビニル芳香族化合物が均一に分布している部分又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。
ランダム共重合ブロック(a)中のビニル芳香族化合物単位の含有量は、実施例に記載の方法によって測定できる。
(A)成分は、ランダム共重合ブロック(a)に加え、必要に応じて、ビニル芳香族化合物単位の重合体ブロック(b)及び/又は共役ジエン化合物単位の重合体ブロック(c)を含んでいてもよい。
ビニル芳香族化合物単位の重合体ブロック(b)とは、ビニル芳香族化合物単位を主成分とする重合体ブロックであって、ビニル芳香族化合物単位の含有量は、ビニル芳香族化合物単位の重合体ブロック(b)全体を100質量%としたとき、通常80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
共役ジエン化合物単位の重合体ブロック(c)とは、共役ジエン化合物単位を主成分とする重合体ブロックであって、共役ジエン化合物単位の含有量は、共役ジエン化合物単位の重合体ブロック(c)全体を100質量%としたとき、通常80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
(A)成分が(a)及び(b)のブロックを含む場合、(a)/(b)の割合は質量比で好ましくは99/1〜10/90、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは90/10〜30/80である。
(A)成分が(a)及び(c)のブロックを含む場合、(a)/(c)の割合は質量比で、好ましくは99/1〜10/90、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜30/80である。
(A)成分が(a)、(b)及び(c)のブロックを含む場合、(a)の割合は、(a)、(b)及び(c)のブロックの合計質量に対して、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。(a)ブロックの割合が10質量%以上であることにより、tanδの主分散ピークを−10℃以上60℃以下に制御できる傾向にある。なお、このとき(b)及び(c)のブロックの割合は特に制限されるものではないが、1/99〜99/1の割合で任意に定めることができる。
(b)のブロックの含有量は、例えば四酸化オスミウムを触媒として水素添加前の共重合体をターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族炭化水素のブロック成分の質量(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族炭化水素重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求めることができる。
(b)ブロック含有量(質量%)=(水素添加前の共重合体中のビニル芳香族炭化水素のブロック質量/水素添加前の共重合体の質量)×100
(A)成分としては、(a)、(b)及び(c)のブロックを基本骨格とし、これら基本骨格が繰り返し構造を有する共重合体であってもよい。さらに、(A)成分としては、(a)、(b)及び(c)のブロックの基本骨格をカップリングして得られる共重合体であってもよい。
(A)成分である共重合体の水素添加物(水添物)は、(A)成分である共重合体を水素添加することにより得ることができる。
水素添加(水添)の方法としては、特に制限されず、従来から公知である、
(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、
(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニュウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、
(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒、
が用いられる。水添触媒としては、具体的には、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としては、チタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物が挙げられる。
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できる。チタノセン化合物の具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格、又はフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物が挙げられる。チタノセン化合物は、上記の骨格を1種単独又は2種組み合わせて含んでいてもよい。
還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、及び有機亜鉛化合物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態における共重合体の水添物における水素添加率は、熱可塑性樹脂組成物製造時の副反応を抑制する観点から、共役ジエン部分の二重結合を好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上水素添加することが好ましい。水素添加率の上限は、通常100%以下であり、99%以下であってもよい。
本実施形態における(A)成分の重量平均分子量は、通常5×104〜100×104であり、好ましくは10×104〜80×104、より好ましくは13×104〜50×104である。重量平均分子量が5×104以上であることにより、低温下での耐衝撃性に優れる傾向にある。重量平均分子量が100×104以下であることにより、成形加工性に優れる傾向にある。
ランダム重合体ブロック(a)中のビニル芳香族化合物単位の量が10〜40質量%の共重合体又はその水添物を使用する場合、重量平均分子量は、好ましくは10×104を越え50×104未満、より好ましくは13×104〜40×104、さらに好ましくは15×104〜30×104であることが推奨される。
本実施形態における(A)成分の分子量分布は、成形加工性を高め、制振性能と低温化での耐衝撃性を優れたものとする観点から、好ましくは1.5〜5.0、より好ましくは1.6〜4.5、さらに好ましくは1.8〜4である。
本実施形態における(A)成分の共重合体は、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の重合開始剤を用いてアニオンリビング重合により得られる。
炭化水素溶媒としては、例えば、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;等が挙げられる。
重合開始剤としては、一般的に共役ジエン化合物及びビニル芳香族化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等の有機アルカリ金属化合物が挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
有機アルカリ金属化合物としては、炭素数1から20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物が挙げられ、1分子中に1個のリチウムを含む化合物、1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が含まれる。有機アルカリ金属化合物としては、具体的には、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンの反応生成物等が挙げられる。さらに、米国特許5,708,092号明細書に開示されている1−(t−ブトキシ)プロピルリチウム及びその溶解性改善のために1〜数分子のイソプレンモノマーを挿入したリチウム化合物、英国特許2,241,239号明細書に開示されている1−(t−ブチルジメチルシロキシ)ヘキシルリチウム等のシロキシ基含有アルキルリチウム、米国特許5,527,753号明細書に開示されているアミノ基含有アルキルリチウム、ジイソプロピルアミドリチウムおよびヘキサメチルジシラジドリチウム等のアミノリチウム類も使用することができる。
有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物を共重合する際に、重合体に組み込まれる共役ジエン化合物に起因するビニル結合(1,2または3,4結合)の含有量の調整や共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合性を調整するために、調整剤として第3級アミン化合物又はエーテル化合物を添加してもよい。調整剤として第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
第3級アミン化合物としては一般式R123N(ただしR1、R2、R3は炭素数1から20の炭化水素基または第3級アミノ基を有する炭化水素基である)の化合物である。第3級アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’−ジオクチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
重合開始剤として有機アルカリ金属化合物を用いて、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン重合体を重合する方法としては、従来公知の方法を適用できる。重合の方法としては、例えば、バッチ重合、連続重合、あるいはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。特に、耐熱性に優れた共重合体を得るためにはバッチ重合が好適である。重合温度は、0℃〜180℃が好ましく、30℃〜150℃がより好ましい。重合時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは0.1〜10時間である。また、重合系の雰囲気としては、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気が好ましい。重合圧力は、上記温度範囲においてモノマー及び溶媒を液相に維持することができる圧力範囲に設定すればよく、特に限定されるものではない。さらに、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば、水、酸素、炭酸ガス等が混入しないように留意する必要がある。
また、上記重合工程の終了時に、2官能以上のカップリング剤を必要量添加してカップリング反応を行ってもよい。2官能カップリング剤としては、従来公知のものを適用でき、特に限定されるものではない。2官能カップリング剤としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリクロロエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
また、3官能以上の多官能カップリング剤としては、従来公知のものを適用でき、特に限定されるものではない。3官能以上の多官能カップリング剤としては、例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA、1,3−ビス(N−N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の多価エポキシ化合物、一般式R4−nSiXn(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3〜4の整数を示す)で表されるハロゲン化珪素化合物、例えば、メチルシリルトリクロリド、t−ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素及びこれらの臭素化物等、一般式R4−nSnXn(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3〜4の整数を示す)で表されるハロゲン化錫化合物、例えば、メチル錫トリクロリド、t−ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等を使用してもよい。
本実施形態において、水素添加反応は、0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は、0.1〜15MPa、好ましくは0.2〜10MPa、より好ましくは0.3〜5MPaである。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
上記のようにして得られた水添共重合体の溶液は、必要に応じて触媒残査を除去し、水添共重合体を溶液から分離することができる。溶媒の分離の方法としては、例えば水添後の反応液にアセトン又はアルコール等の水添共重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、反応液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、または直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。尚、共重合体の水添物には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
本実施形態における(A)成分は、当該(A)成分100質量部の1質量部以上が極性基を有する。すなわち、(A)成分が、極性基を有する、少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水添物を、(A)成分100質量部に対して1質量部以上含む。(A)成分中極性基を有するものの含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは15質量部以上であり、さらに好ましくは20質量部以上である。(A)成分中極性基を有するものの含有量の上限は、通常100質量部以下であればよく、90質量部以下であってもよく、80質量部以下であってもよい。
また、(A)成分の質量に対して0.001質量%以上「極性基」が結合していることが好ましい。極性基の結合量は、極性基の付加量ともいう。極性基を有する(A)成分を0.001質量%以上含むことにより、(B)成分との親和性又は反応性が高くなり、(A)成分の分散性が向上して海島構造が形成されやすくなる傾向にある。親和性は、極性基同士による水素結合等の分子間力により、反応性は化学結合により、分散性が向上する。「極性基」としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基等から選ばれる官能基が挙げられ、これらの官能基を少なくとも1種有する。極性基の付加量は、(A)成分の質量に対して、好ましくは0.001質量%〜10質量%、より好ましくは0.01質量%〜8質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜6質量%である。(A)成分への「極性基」の付加量が0.001質量%以上10質量%以下とすることにより、分散性が高まり、海島構造における(A)成分の平均粒子径を50nm〜2μmの範囲に調整できる傾向にある。
(A)成分が極性基を有するようにする方法としては、公知の方法が適用でき、特に限定されるものではない。例えば、後述する溶融混練方法や、各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法等が挙げられる。
(A)成分が極性基を有するようにする方法としては、アニオンリビング重合により、官能基を有する重合開始剤や官能基を有する不飽和単量体を用いて重合する方法、リビング末端に官能基を形成もしくは含有する変性剤を付加反応させたりすることによって変性を行う方法も適用することができる。これらの場合、前記「極性基」としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、ボロン酸基、ホウ素含有基、ボロン酸塩基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等から選ばれる官能基を少なくとも1種含有する原子団が挙げられる。特に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が好ましい。前記「官能基を有する原子団」は変性剤により結合させる。変性剤としては、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、4−メトキシベンゾフェノン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、ビス(γ−グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
その他の方法としては、ブロック共重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、有機アルカリ金属が付加したブロック重合体に官能基を有する変性剤を付加反応させることにより得られる。
<(B)成分>
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物に含まれる(B)成分である熱可塑性樹脂は特に制限はないが、例えば、
共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合樹脂及びその水素添加物(ただし、(A)成分を除く);
前記ビニル芳香族化合物の重合体;
前記ビニル芳香族化合物と他のビニルモノマー、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸及びアクリルメチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等との共重合樹脂;
ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS);
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS);
メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(MBS);
ポリエチレン:
エチレンを50重量%以上含有するエチレンとこれと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びその加水分解物;
エチレン−アクリル酸アイオノマーや塩素化ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;
ポリプロピレン;
プロピレンを50重量%以上含有するプロピレンとこれと共重合可能な他のモノマーとの共重合体、例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−アクリル酸エチル共重合体や塩素化ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂;
エチレン−ノルボルネン樹脂等の環状オレフィン系樹脂;
ポリブテン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;
ポリ酢酸ビニル系樹脂及びその加水分解物;
アクリル酸及びそのエステルやアミドの重合体;
ポリアクリレート系樹脂;
アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルの重合体、これらのアクリロニトリル系モノマーを50重量%以上含有する他の共重合可能なモノマーとの共重合体であるニトリル樹脂;
等が挙げられる。
(B)成分である熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂もまた挙げられる。
ポリアミド樹脂としては、具体的には、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)(/は共重合体を示す。以下、同様)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリウンデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/11)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシリレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリデカメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン5T/10T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンドデカンアミドコポリマー(ナイロン10T/612)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン10T/66)ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)等のポリアミド系樹脂(これらの共重合体も含む)が挙げられる。
さらに、成分(B)としては、例えば、
ポリエステル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリ−4,4’−ジオキシジフェニル−2,2’−プロパンカーボネート等のポリカーボネート系重合体;
ポリエーテルスルホンやポリアリルスルホン等の熱可塑性ポリスルホン;
ポリオキシメチレン系樹脂;
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル等のポリフェニレンエーテル系樹脂;
ポリフェニレンスルフィド、ポリ4,4’−ジフェニレンスルフィド等のポリフェニレンスルフィド系樹脂;
ポリアリレート系樹脂;
ポリエーテルケトン重合体又は共重合体;
ポリケトン系樹脂;
フッ素系樹脂;
ポリエチレンテレフタレート樹脂;
ポリオキシベンゾイル系重合体、ポリイミド系樹脂;
1,2−ポリブタジエン、トランスポリブタジエン等のポリブタジエン系樹脂;
等が挙げられる。
(B)成分は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の数平均分子量は、通常1000以上であり、好ましくは5000〜500×104、よりに好ましくは1×104〜100×104である。
(B)成分は、極性基を有することが好ましい。ここで「極性基」としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、ボロン酸基、ホウ素含有基、ボロン酸塩基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等から選ばれる官能基を少なくとも1種含有する原子団が挙げられる。特に、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が好ましい。
<成分(C)>
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、さらに成分(C):充填剤、難燃剤、添加剤を含んでいてもよい。成分(C)は、熱可塑性樹脂の配合に一般的に用いられる物であれば特に制限はない。
成分(C)の充填剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、グラファイト、酸化チタン、チタン酸カリウムウイスカー、炭素繊維、アルミナ、カオリンクレー、ケイ酸、ケイ酸カルシウム、石英、マイカ、タルク、クレー、ジルコニア、チタン酸カリウム、アルミナ、金属粒子等の無機充填剤;木製チップ、木製パウダー、パルプ等の有機充填剤を挙げることができる。これらは単独または複数を組み合わせて使用することが可能である。
これら充填剤の形状としては、鱗片状、球状、粒状、粉体、不定形状等であればよく、特に制限は無い。
難燃剤としては、例えば、臭素化合物等のハロゲン系難燃剤、芳香族化合物等のリン系難燃剤、金属水酸化物が主な無機系難燃剤等が挙げられる。環境負荷軽減の観点から、無機難燃剤が好ましい。
無機難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;硼酸亜鉛、硼酸バリウム等の金属酸化物;炭酸カルシウム;クレー;塩基性炭酸マグネシウム;ハイドロタルサイト等の含水金属化合物;等が挙げられる。本実施形態においては、上記難燃剤のうち、難燃性向上の点から水酸化マグネシウム等の金属水酸化物が好ましい。上記難燃剤の中には、それ自身の難燃性発現効果は低いが、他の難燃剤と併用することで相乗的により優れた効果を発揮する、いわゆる難燃助剤も含まれる。
充填剤、難燃剤は、シランカップリング剤等の表面処理剤であらかじめ表面処理を行ったタイプを使用することもできる。
添加剤としては、熱可塑性樹脂の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。添加剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料及び/又は着色剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤;有機ポリシロキサン、フタル酸エステル系やアジピン酸エステル化合物、アゼライン酸エステル化合物等の脂肪酸エステル系、ミネラルオイル等の可塑剤;ヒンダードフェノール系、リン系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤;その他添加剤或いはこれらの混合物等が挙げられる。
(C)成分としては、ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、酸化防止剤、滑剤から成る群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本発明の組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、各種ミキサーでのドライブレンドを行うことも可能であり、バンバリーミキサー,単軸スクリュー押出機,2軸スクリュー押出機,ニーダ,多軸スクリュー押出機、ロール等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が用いられる。本発明においては押出機による溶融混合法が生産性、良混練性の点から好ましい。得られる制振、防音材料または制振、防音材料を構成する組成物の形状に特に制限はないが、ペレット状、シート状、ストランド状、チップ状等を挙げることができる。また、溶融混練後、直接成形品とすることもできる。
<成形体>
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物からは、当該熱可塑性樹脂組成物を加工及び/又は成形することによって、シート、フィルム、各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成型品、真空成形品、押出成形品等、多種多様の成形体を得ることができる。すなわち、本実施形態の一つは、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の成形体である。さらに制振、防音材料として発泡成形体を得る場合、熱可塑性樹脂組成物から発泡成形体を製造する方法としては、化学的方法、物理的方法等がある。化学的方法、物理的方法のいずれにおいても、無機系発泡剤、有機系発泡剤等の化学的発泡剤、物理発泡剤等の発泡剤の添加等により材料内部に気泡を分布させる方法が挙げられる。発泡材料とすることにより、軽量化、柔軟性向上、意匠性向上等を図ることができる。無機系発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウム、金属粉等を挙げることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、床材、壁材、天井材等のように、フィルム、シート、タイル、ボード等の平面構造を有する場合、単層構造、多層構造いずれも可能である。他の形状についても必要に応じ多層構造とすることができる。多層構造の場合には、組成、組成分布、分子量、分子量分布等の異なる(A)成分:共重合体及び/又はその水添物、充填剤、難燃剤の種類、含有量の異なる熱可塑性樹脂組成物、他の樹脂成分、材料等を各層に使用することができる。互いに異なる複数の共重合体を積層することにより、広い温度範囲での制振性能を発揮することができる。
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例に用いられた重合体(A成分)の構造の同定及び物性の測定は、次のようにして行った。
<重合体の構造の同定及び物性の測定方法>
(1)ブロック共重合体のスチレン含有量
水添前のブロック共重合体を用い、紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて測定した。
(2)ブロック共重合体のポリスチレンブロック含有量
水添前のブロック共重合体を用い、I.M.Kolthoff,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の四酸化オスミウム酸法で測定した。ブロック共重合体の分解にはオスミウム酸0.1g/125mL第三級ブタノール溶液を用いた。
(3)ブロック共重合体のビニル結合量
水添前のブロック共重合体を用い、赤外分光光度計(日本分光社製、FT/IR−230)を用いて測定した。共重合体のビニル結合量はハンプトン法により算出した。
(4)ブロック共重合体の分子量及び分子量分布
GPC〔装置:LC−10(島津製作所製)、カラム:TSKgelGMHXL(4.6mm×30cm)〕により測定した。
溶媒はテトラヒドロフランを用いた。測定条件は、温度35℃で行った。分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。
なお、クロマトグラム中にピークが複数有る場合の分子量は、各ピークの分子量と各ピークの組成比(クロマトグラムのそれぞれのピークの面積比より求める)から求めた平均分子量とした。また、分子量分布は、得られた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)である。
(5)ブロック共重合体の共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率
水添後の変性共重合体を用い、核磁気共鳴装置(BRUKER社製、DPX−400)を用いて測定した。
(6)tanδピーク温度
まず、試料を、幅10mm、長さ40mmのサイズにカットして測定用サンプルとした。次に、この測定用サンプルを、装置ARES(ティーエイインスツルメントー株式会社製、商品名)の捻りタイプのジオメトリーにセットし、実効測定長さ25mm、ひずみ0.3%、周波数1Hz、昇温速度3℃/分の条件下で求めた。tanδピーク温度は、RSI Orchestrator(ティーエイインスツルメントー株式会社製、商品名)の自動測定より検出されるピークから求めた値とした。
<水添触媒の調製>
後述する実施例及び比較例において、水添ブロック共重合体を作製する際に用いる水添触媒を、下記の方法により調製した。攪拌装置を具備する反応容器を窒素置換しておき、これに、乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込んだ。
次に、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加した。これを十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。これにより水添触媒を得た。
<(A)成分:共重合体>
熱可塑性樹脂組成物を構成するビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体((A)成分)A1−1、A2−1、A3−1を、下記のようにして調製した。
(水添ブロック共重合体A1−1)
攪拌装置とジャケットとを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
まず、スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.078質量部と、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)をn−ブチルリチウム1モルに対して1.8モル、さらにナトリウム−t−ペントキシドをn−ブチルリチウム1モルに対して0.08モル添加し、70℃で20分間重合した。
次に、スチレン47質量部を含むシクロヘキサン溶液とブタジエン33質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で45分間重合した。
次に、安息香酸エチルをn−ブチルリチウム1モルに対して0.5モル添加し、70℃で10分間反応させた。その後メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量67質量%、ポリスチレンブロック含有量20質量%、重量平均分子量16.3×104、分子量分布1.20であった。また、GPC曲線のピーク面積比より求めたカップリング率は50%であった。
さらに得られたブロック共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、ブロック共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水素添加反応を約2時間行った。
次に、安定剤として、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体A1−1を得た。得られた水添ブロック共重合体A1−1の水素添加率は98%であった。
(水添ブロック共重合体A2−1)
攪拌装置とジャケットとを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
まず、スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.078質量部と、TMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して1.8モル、さらにナトリウム−t−ペントキシドをn−ブチルリチウム1モルに対して0.08モル添加し、70℃で20分間重合した。
次に、スチレン67質量部を含むシクロヘキサン溶液とブタジエン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で45分間重合した。
次に、ブタジエン45質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入して、60℃で1時間重合した。
次に、安息香酸エチルをn−ブチルリチウム1モルに対して0.1モル添加し、70℃で10分間反応させた。その後メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量67質量%、ポリスチレンブロック含有量20質量%、重量平均分子量16.3×104、分子量分布1.20であった。また、GPC曲線のピーク面積比より求めたカップリング率は30%であった。
さらに得られたブロック共重合体に、上記(水添ブロック共重合体A1−1)と同様の方法で水添反応を行い、反応時間を約30分とした。また、上記(水添ブロック共重合体A1−1)と同様の方法で安定剤を添加し、水添ブロック共重合体A2−1を得た。得られた水添ブロック共重合体A2−1の水素添加率は30%であった。
(水添ブロック共重合体A3−1)
攪拌装置とジャケットとを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用してバッチ重合を行った。
まず、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.089質量部と、TMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して1.8モル、さらにナトリウム−t−ペントキシドをn−ブチルリチウム1モルに対して0.08モル添加し、70℃で20分間重合した。
次に、ブタジエン40質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて60℃で1時間重合した。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液とブタジエン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)とを加えて70℃で45分間重合した。
次に、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入して、70℃で20分間重合した。
次に、安息香酸エチルをn−ブチルリチウム1モルに対して0.5モル添加し、70℃で10分間反応させた。その後メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られたブロック共重合体は、スチレン含有量23質量%、ポリスチレンブロック含有量12質量%、ビニル結合量70質量%、重量平均分子量13.7×104、分子量分布1.03であった。
さらに、得られたブロック共重合体に、上記(水添ブロック共重合体A1−1)と同様の方法で水添反応を行い、上記(水添ブロック共重合体A1−1)と同様の方法で安定剤を添加し、水添ブロック共重合体A3−1を得た。得られた水添ブロック共重合体A3−1の水素添加率は98%であった。
(変性共重合体)
上記の水添ブロック共重合体A1−1、A2−1、A3−1の変性共重合体A1−2〜A1−5、A2−2〜A2−5、A3−2を以下のようにして調製した。
押出機の長さ全域の温度設定を150〜180℃として二軸押し出し機でコンパウンドした。スクリュー回転速度は約270rpmであり、押出量は毎時5kgであった。水添ブロック共重合体A1−1、A2−1、A3−1のそれぞれと無水マレイン酸とを、概して押出機のスロートから供給し、有機過酸化物は押出機下流の供給口から供給した。押出機から吐出したストランドをペレット化し、約80℃で3時間乾燥させた。配合、極性基の付加量、粘弾性スペクトルより得られたtanδピーク温度及びランダム重合体ブロック(a)中のビニル芳香族化合物量を表1に示した。
また、A4−1として、無水マレイン酸変性ビニル芳香族化合物と共役ジエンブロックとの共重合体としてM1913(旭化成 株式会社製)を用いた。M1913のtanδピーク温度は−40℃であった。
無水マレイン酸の付加量は、前記無水マレイン酸変性水添ブロック共重合体をトルエンに溶解し、ファクターが1±0.05であるナトリウムメトキシドのメタノール溶液で滴定し、算出した。
<(B)成分:熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂は、以下の市販品を使用した。
熱可塑性樹脂B−1:ポリアミド樹脂、レオナ1300S(旭化成 株式会社製)
熱可塑性樹脂B−2:GF強化ポリアミド樹脂、レオナ1300G(旭化成 株式会社製)
[実施例1〜10、比較例1〜9]
熱可塑性樹脂組成物は前記の成分を用いて、以下の調製方法にしたがって調製した。成分比及び物性を表2,3に示した。
<熱可塑性樹脂組成物の調製方法>
押出機の長さ全域の温度設定を180〜270℃として二軸押し出し機で(A)成分、(B)成分をコンパウンドした。スクリュー回転速度は約270rpmであり、押出量は毎時5kgであった。(A)成分及び(B)成分は概して押出機のスロートから供給した。押出機から吐出したストランドをペレット化し、約100℃で3時間乾燥させた。乾燥させたペレットを物性測定用の標準ISO試験片へと射出成形した。
<熱可塑性樹脂組成物の物性測定方法>
(1)(A)成分の平均粒子径
前記熱可塑性樹脂組成物をクライオミクロトームにて切削した断面を走査型電子顕微鏡で観察した。得られた反射電子像を、画像解析ソフト(imageJ)を使用して、海島構造を2値化した。2値化した画像における500個以上の島相の円相当径を算出し、平均値を平均粒子径とした。また、ばらつきの指標として標準偏差を算出した。
(2)引張強度(Tb)、破断伸び(Eb)
ISO 527に準拠して測定した。引張り速度は50mm/分で測定した。
(3)ノッチ付きシャルピー衝撃強さ
JIS K 7111−1に準拠して測定した。単位はkJ/m2である。
(4)損失係数の算出(制振性能)
JIS K 7391に準拠し、片持ち梁法及び半値幅法で算出を行った。加振方法は非接触電磁加振器を用いて定常加振した。損失係数の値が大きいほど、制振性能に優れることを表す。
なお、実施例及び比較例における(A)成分の平均粒子径の標準偏差は1.0〜7.0の範囲であった。
これらの結果から、実施例1〜10は比較例1と比較し、ポリアミド樹脂に対して優れた耐衝撃性と制振性能を付与した。
比較例2はビニル芳香族化合物と共役ジエンのブロック共重合体であり、制振性に劣っていた。
また、比較例3及び4は分散形態が海島構造を有していなかったものであり、耐衝撃性に劣っていた。
また、比較例5はビニル芳香族化合物と共役ジエンとの重合体のランダム共重合ブロック中のビニル芳香族化合物含有量が本発明の範囲外であり、耐衝撃性及び制振性能に劣っていた。
また、比較例6〜9はビニル芳香族化合物と共役ジエン共重合体の分散粒径が50nm〜2μmの範囲外であったところ、耐衝撃性と制振性能の両立がされなかった。

Claims (5)

  1. (A)成分:少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水添物と、
    (B)成分:少なくとも一種の熱可塑性樹脂(ただし、(A)成分を除く)と、
    を含む、熱可塑性樹脂組成物であって、
    (A)成分の含有量が、(B)成分100質量部に対して、1〜80質量部であり、
    (A)成分100質量部の1質量部以上が、極性基を有し、
    (A)成分が、条件(i)〜(iii)を満たす、少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位と少なくとも一つの共役ジエン化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水添物((A−1)成分):
    (i)粘弾性スペクトルにおけるtanδの主分散ピークが、−10〜60℃の範囲に存在する;
    (ii)少なくとも一つの共役ジエン化合物単位と少なくとも一つのビニル芳香族化合物単位とのランダム重合体ブロック(a)を含む;
    (iii)前記ランダム重合体ブロック(a)中のビニル芳香族化合物単位の量が、(A−1)成分100質量%に対して15質量%以上である;
    を、(A)成分100質量部に対して10質量部以上含み、
    前記熱可塑性樹脂組成物が、(A)成分を含む島相と(B)成分を含む海相との海島構造を有し、
    前記(A)成分を含む島相の平均粒子径が、50nm〜2μmの範囲である、
    熱可塑性樹脂組成物。
  2. (A)成分が、前記ランダム重合体ブロック(a)、及び必要に応じて、(b)ビニル芳香族化合物単位の重合体ブロック及び/又は(c)共役ジエン単位の重合体ブロックを有する、
    請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. (B)成分が、極性基を有する熱可塑性樹脂を含む、
    請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. (C)成分:ガラス繊維、炭素繊維、難燃剤、酸化防止剤及び滑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の成形体。
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