JP2021025995A - カンチレバーおよび走査プローブ顕微鏡ならびに走査プローブ顕微鏡による測定方法 - Google Patents

カンチレバーおよび走査プローブ顕微鏡ならびに走査プローブ顕微鏡による測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】走査プローブ顕微鏡による測定感度を向上する。【解決手段】断面視において、カンチレバー40は、試料に近づける部位であり、かつ、金属膜7で被覆された頂点部位2と、頂点部位2と接続され、かつ、金属膜7で被覆された稜線4と、稜線4と接続された上角部位5とを有する。ここで、稜線4の一部と上角部位5とは、走査プローブ顕微鏡の光源より出射される励起光8が照射される部位である。【選択図】図5

Description

本発明は、カンチレバーおよび走査プローブ顕微鏡ならびに走査プローブ顕微鏡による測定技術に関し、例えば、近接場光プローブ顕微鏡、探針増強ラマン分光(TERS:Tip-enhanced Raman scattering)顕微鏡に代表される分光プローブ顕微鏡に使用されるカンチレバーに適用して有効な技術に関する。
被対象物(試料)表面の光学的性質や物性情報を高分解能で測定する手段として、近接場走査顕微鏡(SNOM:Scanning Near-field Optical Microscope)が知られている。近年では、SNOM技術の1つの応用として、近接場光の局所増強効果を利用したナノ分解能ラマン分光測定を可能とする走査プローブ顕微鏡が開発されている。
例えば、特開2019−7756号公報(特許文献1)には、測定の空間分解能と再現性とを向上できる走査プローブ顕微鏡において、カンチレバー(プローブ、探針)の先端部にFIB加工技術で薄膜導波路を形成し、この薄膜導波路にプラズモン共鳴角による光の入射によってカンチレバーの先端部に近接場光を発生させる技術が記載されている。
この技術は、探針増強ラマン分光測定が実現できるように、カンチレバーに貴金属膜を成膜しており、先端部において間接的な光の入射による測定を行なう技術である。
特開2019−7756号公報
上述した特許文献1に記載された技術は、表面プラズモンを発生させてカンチレバーの先端部に伝搬させることにより、先端部における近接場光の強度を向上することを目的としている。しかしながら、表面プラズモンの伝搬距離が長い結果、表面プラズモンによって近接場光の強度を充分に向上することができない課題が明らかとなった。すなわち、上述した特許文献1に記載された技術には、例えば、走査プローブ顕微鏡を使用した探針増強ラマン分光の測定感度を向上する観点から改善の余地が存在する。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
一実施の形態におけるカンチレバーは、走査プローブ顕微鏡に用いる。そして、断面視において、カンチレバーは、試料に近づける部位であり、かつ、金属膜で被覆された頂点部位と、頂点部位と接続され、かつ、金属膜で被覆された稜線と、稜線と接続された上角部位とを有する。ここで、稜線の一部と上角部位とは、走査プローブ顕微鏡システムに搭載されている励起用光源より出射される励起光が照射される部位である。
一実施の形態における走査プローブ顕微鏡は、試料を保持する試料ホルダと、励起光を出射する光源と、励起光が照射されるカンチレバーとを備える。ここで、走査プローブ顕微鏡に含まれるカンチレバーは、上述した構造を有する。
一実施の形態におけるカンチレバーは、探針部と、下面より前記探針部に接続し、かつ、探針部を保持するための梁部とを備える。そして、断面視において、探針部は、金属膜で被覆された頂点部位と、頂点部位と梁部とを接続する第1線と、頂点部位と接続され、かつ、金属膜で被覆された稜線と、稜線と接続された上角部位と、上角部位と梁部とを接続する第2線とを有する。このとき、第2線は、第1構成と第2構成のいずれかの構成を有する。ここで、第1構成は、第1線および第2線のそれぞれが、梁部と直接接続される直線部を含み、第1線の直線部と第2線の直線部との間隔が、頂点部位に近づくに連れて、同じか、または、狭くなる構成である。一方、第2構成は、第2線が稜線の延長上に位置する延長線部と、上角部位と延長線部とに接続し、かつ、第1線側に凹む凹部とを含む構成である。
一実施の形態における走査プローブ顕微鏡による測定方法は、(a)光源から出射された励起光をカンチレバーに照射する工程と、(b)カンチレバーに対して対向配置された試料からの散乱光を検出する工程とを備える。ここで、カンチレバーは、試料に近づける部位であり、かつ、金属膜で被覆された頂点部位と、頂点部位と接続され、かつ、金属膜で被覆された稜線と、稜線と接続された上角部位とを有する。このとき、稜線の一部と上角部位とは、走査プローブ顕微鏡の光源より出射される励起光が照射される部位である。
一実施の形態によれば、走査プローブ顕微鏡による測定感度を向上できる。
実施の形態における走査プローブ顕微鏡の模式的な構成を示す図である。 変形例1における走査プローブ顕微鏡の模式的な構成を示す図である。 変形例2における走査プローブ顕微鏡の模式的な構成を示す図である。 実施の形態におけるカンチレバーの模式的な構成を示す斜視図である。 図4のA−A線で切断した断面図である。 変形例1におけるカンチレバーの模式的な構成を示す斜視図である。 図6のA−A線で切断した断面図である。 変形例2におけるカンチレバーの模式的な構成を示す斜視図である。 図8のA−A線で切断した断面図である。 変形例3におけるカンチレバーの模式的な構成を示す斜視図である。 図10のA−A線で切断した断面図である。 変形例4におけるカンチレバーの模式的な構成を示す斜視図である。 図12のA−A線で切断した断面図である。 実施の形態における効果を検証するためのシミュレーション計算モデルを模式的に示す図である。 探針部全体のシミュレーション結果である。 探針部の先端近傍を拡大したシミュレーション結果である。 探針部の先端近傍の電界強度をわかりやすく把握できるように画像加工したシミュレーション結果である。 探針部における稜線の長さの相違によって、稜線上に形成される表面プラズモンに起因する電場分布が相違することを示す図であり、(a)は、稜線の長さLがL=1028nmの場合における電場分布を示す図であり、(b)は、稜線の長さL=4820nmの場合における電場分布を示す図である。 (a)は、探針部の先端構造を示す図であり、(b)は、第1シミュレーションを行うための前提構成を示す図である。 第1シミュレーションの結果を示すグラフである。 第2シミュレーションを行うための前提構成を示す図である。 第2シミュレーションの結果を示すグラフである。 第1シミュレーションにおいて、入射角度を60°に固定した場合における電界強度と稜線の長さとの関係を示すグラフである。 第2シミュレーションにおいて、入射角度を60°に固定した場合における電界強度と稜線の長さとの関係を示すグラフである。 入射角度を変更可能な走査プローブ顕微鏡に含まれる入射光学系を模式的に示す図である。 (a)〜(c)は、光路構成を変更することによりカンチレバーへの励起光の入射角度を変更できることを説明する図である。 レンズを使用して光てこ検出部の光路も構成する例を示す図である。 入射角度を変更可能な走査プローブ顕微鏡に含まれるカンチレバーを示す図である。 (a)は、反射型対物レンズを示す図であり、(b)は、放物面鏡を示す図であり、(c)は、積分鏡を示す図である。 集光光学部品を使用して光てこ検出部の光路も構成する例を示す図である。
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
<走査プローブ顕微鏡の概要>
走査プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)は、走査トンネル顕微鏡や原子間力顕微鏡に代表される顕微鏡の総称である。この走査プローブ顕微鏡は、微小な探針(プローブ)で試料を走査して、試料の形状や性質を観察する顕微鏡である。特に、走査プローブ顕微鏡では、探針の先端を試料の表面に近づけ、試料と探針との間の力学的・電磁気的相互作用を検出しながら走査することにより、試料表面の拡大像や物性情報を得ることができる。例えば、走査プローブ顕微鏡は、試料に対して原子レベルや分子レベルの分解能を有している。ここで、近年では、原子レベルの分解能を有する走査プローブ顕微鏡を使用して試料の光学的性質などの物性情報を調べることが行なわれている。具体的には、光源から探針の先端部に励起光を照射することにより、探針の先端部に近接場光(局所電界集中)を形成して、この近接場光に起因する試料からの散乱光を検出する。そして、この散乱光を解析することにより、試料の物性情報を得ることが行なわれている。
例えば、散乱光として、レイリー散乱光を検出する場合には、試料の表面の反射率や表面粗さなどの物性情報を取得することができる。一方、ラマン散乱光を検出する場合には、化学結合の種類や試料を構成する物質を同定することができる。
本実施の形態における走査プローブ顕微鏡は、レイリー散乱光やラマン散乱光を検出する技術に幅広く適用することができるが、特に、本実施の形態では、走査プローブ顕微鏡を使用してラマン散乱光を検出する分光測定技術に着目している。すなわち、本実施の形態における走査プローブ顕微鏡は、探針の先端部に形成される近接場光を利用する探針増強ラマン分光測定を実現する顕微鏡であり、この走査プローブ顕微鏡において、ラマン散乱光の検出感度を向上させる工夫を施している。具体的に、本実施の形態では、ラマン散乱光の検出感度を向上させるために、探針の先端部における近接場光の強度を向上させることに着目する。なぜなら、ラマン散乱光の強度は、レイリー散乱光の強度に比べて極めて微弱である一方、近接場光の強度に応じて強くなるため、探針の先端部に形成される近接場光の強度を強くできれば、ラマン散乱光の検出感度を向上できるからである。
この点に関し、本実施の形態では、走査プローブ顕微鏡の構成要素であるカンチレバーの探針部の形状に関する工夫とカンチレバーの探針部への励起光の照射方法に関する工夫とを施すことにより、探針部の先端に形成される近接場の強度を強くしている。以下では、カンチレバーの探針部の形状に関する工夫点を説明する前に、まず、このカンチレバーを備える走査プローブ顕微鏡の構成および動作について簡単に説明する。
<走査プローブ顕微鏡の構成>
図1は、本実施の形態における走査プローブ顕微鏡の模式的な構成を示す図である。
図1に示す走査プローブ顕微鏡100は、例えば、近接場光走査プローブ顕微鏡、または、探針増強ラマン分光用走査プローブ顕微鏡と呼ばれる顕微鏡である。
図1において、本実施の形態における走査プローブ顕微鏡100は、試料10を搭載する試料ホルダ20と、試料ホルダ20を配置する圧電素子ステージ30と、探針部40aと梁部40bと被保持部40cを含むカンチレバー40を有する。ここで、梁部40bは、板バネの役割を担う構造であってもよい。圧電素子ステージ30は、カンチレバー40の探針部40aに対して試料10を相対的にxy方向に走査することができるように構成されている。そして、カンチレバー40は、例えば、シリコン、酸化シリコン、または、窒化シリコンのいずれかの材料から構成されている。
次に、本実施の形態における走査プローブ顕微鏡100は、試料10に対してカンチレバー40を相対的に走査する圧電素子ステージ50と、圧電素子アクチュエータ51と、圧電素子ステージ50および圧電素子アクチュエータ51を介してカンチレバー40を保持するヘッド52を有する。言い換えれば、カンチレバー40は、圧電素子ステージ50および圧電素子アクチュエータ51を介してヘッド52で保持される被保持部40cを有することになる。ただし、カンチレバー40は圧電素子アクチュエータ51による加振がいらない場合(例えば、自己検知性能をもつカンチレバーを母材とする場合)は、圧電素子アクチュエータ51が必ずしも必要ではない。
続いて、本実施の形態における走査プローブ顕微鏡100は、光てこ検出部60を有している。この光てこ検出部60は、カンチレバー40の梁部40bの変形を検出するように構成されている。具体的に、光てこ検出部60は、光源61と光検出器63とを有する。そして、光てこ検出部60では、光源61からカンチレバー40の梁部40bに向って光62を射出するように構成され、かつ、カンチレバー40の梁部40bで反射した光62(反射光)を光検出器63で受光するように構成されている。このとき、光てこ検出部60は、カンチレバー40の変形によって生じる光62(反射光)の位置変化を光検出器63で検出するように構成されている。
次に、本実施の形態における走査プローブ顕微鏡100は、入射・検出光学系70を有している。入射・検出光学系70は、例えば、レーザ光(励起光)を出射する光源71と、レーザ光を集光するレンズ72と、試料10からのラマン散乱光を受光する受光光学系73を有している。分光器を使用することによって分光測定をすることが可能となる。光源71から出射される励起光は、例えば、単波長レーザ光を使用することができるが、これに限らず、励起光を多波長からなるレーザ光から構成することもできる。
さらに、本実施の形態における走査プローブ顕微鏡100は、光ファイバ75を介して、受光光学系73と光学的に接続された分光器80と、分光器80と電気的に接続された制御部90とを有している。ここで、分光器80は、受光光学系73から光ファイバ75を介してラマン散乱光を入力して、ラマン散乱光の各ラマンスペクトル成分を分離するように構成されている。一方、制御部90は、圧電素子ステージ30および圧電素子ステージ50を制御するように構成されている。さらに、制御部90は、光てこ検出部60と接続されており、光てこ検出部60で検出されたカンチレバー40の変形量に基づいて、カンチレバー40の探針部40aと試料10との間に働く力と距離を検出するように構成されている。そして、制御部90は、カンチレバー40の変形量が一定となるように圧電素子ステージ30および圧電素子ステージ50を制御することにより、カンチレバー40の探針部40aを試料10の表面全体にわたって走査するように構成されている。また、制御部90は、圧電素子ステージ30および圧電素子ステージ50を制御するためのxyz変位信号と分光器80からの出力信号とに基づいて、近接場光画像であるラマンスペクトル画像と表面凹凸画像とを生成して出力するように構成されている。
このように構成されている本実施の形態における走査プローブ顕微鏡100では、入射・検出光学系70において、レンズ72を共用していることから、走査プローブ顕微鏡100の構成を簡素化することができる。
続いて、本実施の形態における走査プローブ顕微鏡100の動作について簡単に説明する。まず、図1において、制御部90によって、圧電素子ステージ30と圧電素子ステージ50とを制御することにより、カンチレバー40の探針部40aを試料10に近づけて所定位置に配置する。その後、光源71から出射された励起光をカンチレバー40の探針部40aに照射する。すると、探針部40aの先端に近接場光が生成される結果、カンチレバー40に対して対向配置された試料10からラマン散乱光を含む散乱光が射出される。この散乱光は、レンズ72と受光光学系73を通った後、光ファイバ75を介して分光器80で検出される。そして、分光器80に入射したラマン散乱光は、分光器80によって各ラマンスペクトル成分に分離される。その後、分光器80から各ラマンスペクトル成分に対応した信号が制御部90に出力される。このような動作をカンチレバー40の探針部40aを試料10の表面にわたって走査しながら繰り返す。具体的に、制御部90は、カンチレバー40の変形量が一定となるように圧電素子ステージ30および圧電素子ステージ50を制御することにより、カンチレバー40の探針部40aを試料10の表面全体にわたって走査する。これにより、制御部90において、ラマン分光スペクトル画像と表面凹凸画像とが生成される。
<走査プローブ顕微鏡の変形例1>
図2は、本変形例1における走査プローブ顕微鏡の模式的な構成を示す図である。
図2に示す本変形例1における走査プローブ顕微鏡200では、試料10から射出されるラマン散乱光のうち、試料10を透過したラマン散乱光を検出する。
具体的に、本変形例1における走査プローブ顕微鏡200では、入射光学系74の光源71からカンチレバー40の探針部40aに励起光を照射することにより、探針部40aの先端に近接場光を生成する。すると、カンチレバー40に対して対向配置された試料10から射出されたラマン散乱光のうち、試料10を透過したラマン散乱光は、受光光学系73と光ファイバ75を通って分光器80に集光されて、ラマン分光スペクトルが検出される。ここで、図2に示すように、本変形例1においては、試料ホルダ20上に配置された試料10をxy方向に走査する圧電素子ステージ30は、試料10を透過したラマン散乱光を通過させる必要がある。したがって、図2に示すように、圧電素子ステージ30には、開口部31が設けられており、試料10を透過したラマン散乱光は、この開口部31を通って、受光光学系73に入射するように構成されている。なお、その他の構成は、図1に示す走査プローブ顕微鏡100と同様であるため、説明を省略する。
本変形例1における走査プローブ顕微鏡200によれば、カンチレバー40や圧電素子ステージ30によってラマン散乱光が遮られにくいことから、検出立体角を大きくとることができる。この結果、高感度のラマン分光測定および高いコントラストを有する近接場光画像またはラマン分光スペクトル画像を得ることができる。すなわち、本変形例1における走査プローブ顕微鏡200によれば、近接場光画像またはラマン分光スペクトル画像のS/N比および測定再現性を向上することができる。
<走査プローブ顕微鏡の変形例2>
図3は、本変形例2における走査プローブ顕微鏡の模式的な構成を示す図である。
図3に示す本変形例2における走査プローブ顕微鏡300では、試料10から射出されるラマン散乱光のうち、カンチレバー40の側面方向に散乱されるラマン散乱光を検出する。具体的に、本変形例2における走査プローブ顕微鏡300では、入射光学系74の光源71からカンチレバー40の探針部40aに励起光を照射することにより、探針部40aの先端に近接場光を生成する。すると、カンチレバー40に対して対向配置された試料10から射出されたラマン散乱光のうち、カンチレバー40の側面方向に散乱されたラマン散乱光は、受光光学系73と光ファイバ75を通って分光器80に集光されて、ラマン分光スペクトルが検出される。なお、その他の構成は、図1に示す走査プローブ顕微鏡100と同様であるため、説明を省略する。
本変形例2における走査プローブ顕微鏡300によれば、多方向から散乱光を収集することができるため、試料10の形状に影響を受けにくい測定を行なうことができる。
<実施の形態におけるカンチレバーの構成>
ラマン散乱光の強度は、レイリー散乱光の強度に比べて極めて微弱である一方、近接場光の強度に応じて強くなるため、ラマン散乱光の検出感度を向上する観点からは、カンチレバーの探針部の先端に形成される近接場光の強度を強くすることが重要である。
この点に関し、本実施の形態では、走査プローブ顕微鏡の構成要素であるカンチレバーの探針部の形状に関する工夫とカンチレバーの探針部への励起光の照射方法に関する工夫を施すことにより、探針部の先端に形成される近接場の強度を強くしている。以下では、この工夫を施した本実施の形態におけるカンチレバーの構成について説明する。
図4は、本実施の形態におけるカンチレバーの模式的な構成を示す斜視図である。
図4において、本実施の形態におけるカンチレバー40は、例えば、図1〜図3に示す走査プローブ顕微鏡に使用される。このカンチレバー40は、走査プローブ顕微鏡のヘッドに保持される被保持部40cと、被保持部40cと一体的に形成された梁部40bと、梁部40bに支持される探針部40aとを備えている。梁部40bは、x方向に延在しており、変形可能に構成されている。一方、探針部40aは、例えば、z方向に突出する略三角錐形状をしている。ただし、探針部40aの形状は、略三角錐形状に限定されるものではなく、例えば、略四角錐形状から構成することもできる。
このように構成されているカンチレバー40の探針部40aには、励起光8が照射されると、探針部40aの先端に近接場光8aが生成される。
ここで、図4において、x軸は、梁部40bの延在方向と平行する軸として定義される。一方、y軸は、x軸を含む仮想面で、かつ、カンチレバー40が面対称となる仮想面の法線と平行な軸として定義される。さらに、z軸は、上述するように定義されたx軸とy軸の両方に直交する軸として定義される。
続いて、図5は、図4のA−A線で切断した断面図である。すなわち、図5は、カンチレバー40の探針部40aの一部を構成する稜線を含み、かつ、カンチレバー40の梁部40bの上面と直交する仮想面で切断した断面図ということもできる。
図5において、本実施の形態におけるカンチレバー40の探針部40aは、試料に近づける部位であり、かつ、金属膜7で被覆された頂点部位2と、頂点部位2と接続され、かつ、金属膜7で被覆された稜線4と、稜線4と接続された上角部位5とを有している。特に、探針部40aの先端は、稜線4が少なくとも1本存在している。さらに、本実施の形態におけるカンチレバー40は、下面1より探針部40aに接続し、かつ、探針部40aを保持するための梁部40bを備えている。ここで、図5において、探針部40aは、頂点部位2と梁部40bとを接続する第一線3と、上角部位5と梁部40bの上面とを接続する第二線6とを有している。このとき、図5に示すように、第一線3は、梁部40bと直接接続される直線部から構成されている。一方、第二線6は、上角部位5と直接接続される傾斜部6aと、この傾斜部6aと梁部40bの上面とを結ぶ直線部6bから構成されている。このように構成されている本実施の形態におけるカンチレバー40では、図5に示すように、レンズ72で集光された励起光8が稜線4に対して斜め方向から照射される。そして、探針部40aの稜線4の一部と上角部位5には、走査プローブ顕微鏡システムに搭載される励起用光源より出射される励起光8が照射される。すなわち、本実施の形態におけるカンチレバー40では、探針部40aの一部を構成する稜線4と上角部位5は、励起光8が照射される部位となる。言い換えれば、本実施の形態におけるカンチレバー40では、レンズ72で集光される励起光8の照射スポットに少なくとも稜線4の一部と上角部位5とが内包される。
ここで、カンチレバー40の探針部40aの材料は、一般的に、シリコン(Si)になるが、探針部40aは、酸化シリコン(SiO)や窒化シリコン(Si)、カーボン(C)などから形成することもできる。
また、探針部40aの頂点部位2および稜線4を被覆する金属膜7は、金膜、銀膜、白金膜、または、アルミニウム膜などの金属膜または合金膜または複種金属の多層膜から形成することができる。この金属膜7の膜厚は、基本的に限定しないが、例えば、励起光8の波長の0.1倍以上であることが望ましい。ただし、先端に励起される近接場光8aの強度を確保するため、探針部40aの先端の径を小さく維持することが望ましいことから、金属膜7の膜厚は、厚すぎても望ましくはない。したがって、金属膜7の膜厚は、測定の目的に応じて設定すればよい。
次に、図5において、探針部40aは、FIB(Focused Ion Beam)加工によって、上角部位5と第二線6が形成されている。このとき、上角部位5は、探針部40aの構成材料であるシリコンが露出している。そして、本実施の形態におけるカンチレバー40では、稜線4の長さが非常に短くなっている。例えば、稜線4の長さは、カンチレバー40の探針部40aに入射される励起光8の波長の10倍以下の長さである。具体例を示すと、励起光8の波長を660nmのとき、稜線4の長さは、6.6μm以下である。別の表現をすると、探針部40aに照射される励起光8のビームスポット径は稜線4の長さより大きい。言い換えると、稜線4の長さは、探針部40aに照射される励起光8のビームスポット径よりも小さい。
本実施の形態におけるカンチレバー40を走査プローブ顕微鏡に使用する際には、図5に示すように、カンチレバー40の前面(稜線4に対向する方向)からレンズ72で集光された励起光8が照射される。このとき、稜線4に対する励起光8の入射角度をθとすると、θは、0度よりも大きく90度よりも小さい。具体例を挙げると、θは45度である。
<実施の形態における特徴>
次に、本実施の形態における特徴点について説明する。
本実施の形態における第1特徴点は、例えば、図5に示すように、カンチレバー40の探針部40aが、頂点部位2と稜線4と上角部位5とを含むように構成されている点にある。つまり、本実施の形態における第1特徴点は、カンチレバー40の探針部40aの形状に関する工夫点であり、稜線4の長さが短くなるように上角部位5を頂点部位2に近接して配置されるように探針部40aを形状加工する点にある。
これにより、図5に示すように、探針部40aの稜線4と上角部位5とに励起光8を照射することにより、稜線4を被覆する金属膜7の表面では、表面プラズモン8b(金属膜7を構成する自由電子の集団的振動)が励起される。そして、励起された表面プラズモン8bは、探針部40aの頂点部位2に向って伝搬するが、本実施の形態では、稜線4の長さが短いため、表面プラズモン8bが減少することなく効率良く頂点部位2に表面プラズモン8bを伝搬させることができる。この結果、探針部40aの頂点部位2では、局所電界集中が発生して、非常に強い近接場光8aが生成される。すなわち、本実施の形態では、カンチレバーが設置された測定装置の光源によってカンチレバーの探針部に励起光が照射される結果、上角部位5から稜線4に沿って頂点部位2まで自由電子が移動し、頂点部位2に電界集中が発生する。このとき、励起光8と表面プラズモン8bとの結合を強めて、表面プラズモン8bを頂点部位2に集中させるために、励起光8の偏光方向は、稜線4と平行する成分(p偏光成分)が多いことが望ましい。
続いて、本実施の形態における第2特徴点は、例えば、図5に示すように、探針部40aの稜線4に対して斜め方向から励起光8をカンチレバー40に照射する点にある。この場合、稜線4を被覆する金属膜7の表面に非常に強い表面プラズモン8bを励起することができる。つまり、稜線4に対して斜め方向から励起光8を照射すると、稜線4を被覆する金属膜7の表面に非常に強い表面プラズモン8bが励起される。この結果、表面プラズモン8bによって頂点部位2に運ばれるエネルギーが大きくなり、これによって、頂点部位2に近傍領域に非常に強い近接場光8aを生成することができる。以上のことから、上述した第1特徴点と第2特徴点とを組み合わせることにより、稜線4を被覆する金属膜7の表面に非常に強いエネルギーを有する表面プラズモン8bを励起することができる。この結果、第1特徴点と第2特徴点との相乗効果によって、探針部40aの頂点部位2の近傍に非常に強い近接場光8aを生成することができる。このことは、試料からのラマン散乱光の強度を強くできることを意味することから、本実施の形態におけるカンチレバー40を使用した走査プローブ顕微鏡によれば、ラマン散乱光の測定感度を大幅に向上できるという顕著な効果が得られる。
例えば、探針部40aの先端にだけ励起光8を照射する測定技術では、励起光8の一部しか近接場光8aに変換することができない。このことから、最大限に励起光8のエネルギーを近接場光8aの生成に利用することが困難である。また、稜線4の長さが長すぎると、稜線4を被覆する金属膜7の表面に励起される表面プラズモン8bの伝搬距離が長くなる結果、長い伝搬距離によって表面プラズモン8bが減少するため、測定感度の向上には繋がらない。これに対し、本実施の形態では、図5に示すように、レンズ72で集光した励起光8を探針部40aの稜線4と上角部位5にわたって照射し、かつ、稜線4に照射された励起光8から表面プラズモン8bを励起している。そして、この表面プラズモン8bによるエネルギーの伝搬によって頂点部位2の近傍に生成される近接場光8aの強度を強めている。このとき、本実施の形態では、稜線4の長さが短いため、表面プラズモン8bの減少が生じにくく、効率良く近接場光8aの強度を向上することができる。つまり、本実施の形態では、表面プラズモン8bによるエネルギーの伝搬を通じて励起光8のエネルギーを最大限に利用することができるため、探針部40aの頂点部位2に非常に強い近接場光8aを生成することができる。したがって、本実施の形態によれば、探針部40aの頂点部位2の近傍に生成される近接場光8aの強度を向上できることから、測定感度を向上することができる。
さらに、走査プローブ顕微鏡に使用される一般的なカンチレバーは、例えば、探針先端部を被覆する金属膜の表面の汚れや酸化に起因して、測定感度が急激に低下することが知られている。例えば、一般的なカンチレバーの寿命は、最大でも数週間程度である。これに対し、本発明の構成では表面プラズモンを励起できる金属膜の面積が大きく、励起面積のすべてが汚れることが極めて少ないので、本実施の形態におけるカンチレバー40によれば、長寿命を実現できることも確認されている。したがって、本実施の形態におけるカンチレバー40は、測定感度を大幅に向上できる点から有用であるだけでなく、信頼性の高い長寿命なカンチレバーを提供できる点においても非常に優れているということができる。
<変形例>
<<変形例1>>
図6は、本変形例1におけるカンチレバーの模式的な構成を示す斜視図である。
図6において、本変形例1におけるカンチレバー40−1も、例えば、図1〜図3に示す走査プローブ顕微鏡に使用される。このカンチレバー40−1は、走査プローブ顕微鏡のヘッドに保持される被保持部40cと、被保持部40cと一体的に形成された梁部40bと、梁部40に支持される探針部40aとを備えている。梁部40bは、x方向に延在しており、変形可能に構成されている。一方、探針部40aは、例えば、z方向に突出する略三角錐形状をしている。ただし、探針部40aの形状は、略三角錐形状に限定されるものではなく、例えば、略四角錐形状から構成することもできる。
このように構成されているカンチレバー40−1の探針部40aには、励起光8が照射されると、探針部40aの先端に近接場光8aが生成される。
図7は、図6のA−A線で切断した断面図である。
図7において、探針部40aは、頂点部位2と梁部40bとを接続する第一線3と、上角部位5と梁部40bの上面とを接続する第二線6とを有している。このとき、図7に示すように、第一線3は、梁部40bと直接接続される直線部から構成されている。一方、第二線6は、上角部位5と直接接続される水平直線部6cと、この水平直線部6cと梁部40bの上面とを結ぶ直線部6bから構成されている。
このように構成されている本変形例1におけるカンチレバー40−1でも、図7に示すように、レンズ72で集光された励起光8が稜線4に対して斜め方向から照射される。そして、探針部40aの稜線4の一部と上角部位5には、走査プローブ顕微鏡の光源より出射される励起光8が照射される。これにより、本変形例1におけるカンチレバー40−1も実施の形態におけるカンチレバー40と同様に探針部40aの頂点部位2に近傍に生成される近接場光8aの強度を向上することができる。
<<変形例2>>
図8は、本変形例2におけるカンチレバーの模式的な構成を示す斜視図である。
図8において、本変形例2におけるカンチレバー40−2も、例えば、図1〜図3に示す走査プローブ顕微鏡に使用される。このカンチレバー40−2は、走査プローブ顕微鏡のヘッドに保持される被保持部40cと、被保持部40cと一体的に形成された梁部40bと、梁部40に支持される探針部40aとを備えている。梁部40bは、x方向に延在しており、変形可能に構成されている。一方、探針部40aは、例えば、z方向に突出する略三角錐形状をしている。ただし、探針部40aの形状は、略三角錐形状に限定されるものではなく、例えば、略四角錐形状から構成することもできる。
このように構成されているカンチレバー40−2の探針部40aには、励起光8が照射されると、探針部40aの先端に近接場光8aが生成される。
図9は、図8のA−A線で切断した断面図である。
図9において、探針部40aは、頂点部位2と梁部40bとを接続する第一線3と、上角部位5と梁部40bの上面とを接続する第二線6とを有している。このとき、図9に示すように、第一線3は、梁部40bと直接接続される直線部から構成されている。一方、第二線6は、上角部位5と梁部40bの上面の両方に直接接続される傾斜直線部6dから構成されている。
このように構成されている本変形例2におけるカンチレバー40−2でも、図9に示すように、レンズ72で集光された励起光8が稜線4に対して斜め方向から照射される。そして、探針部40aの稜線4の一部と上角部位5には、走査プローブ顕微鏡の光源より出射される励起光8が照射される。これにより、本変形例2におけるカンチレバー40−2も実施の形態におけるカンチレバー40と同様に探針部40aの頂点部位2に近傍に生成される近接場光8aの強度を向上することができる。
特に、本変形例2におけるカンチレバー40−2は、第二線6が一定の傾きを有する傾斜直線部6dだけから構成されているため、FIB加工しやすい利点がある。
<<変形例3>>
図10は、本変形例3におけるカンチレバーの模式的な構成を示す斜視図である。
図10において、本変形例3におけるカンチレバー40−3も、例えば、図1〜図3に示す走査プローブ顕微鏡に使用される。このカンチレバー40−3は、走査プローブ顕微鏡のヘッドに保持される被保持部40cと、被保持部40cと一体的に形成された梁部40bと、梁部40に支持される探針部40aとを備えている。梁部40bは、x方向に延在しており、変形可能に構成されている。一方、探針部40aは、例えば、z方向に突出する略三角錐形状をしている。ただし、探針部40aの形状は、略三角錐形状に限定されるものではなく、例えば、略四角錐形状から構成することもできる。
このように構成されているカンチレバー40−3の探針部40aには、励起光8が照射されると、探針部40aの先端に近接場光8aが生成される。
図11は、図10のA−A線で切断した断面図である。
図11において、探針部40aは、頂点部位2と梁部40bとを接続する第一線3と、上角部位5と梁部40bの上面とを接続する第二線6とを有している。このとき、図11に示すように、第一線3は、梁部40bと直接接続される直線部から構成されている。一方、第二線6は、稜線4の延長上に位置する延長線部9と、上角部位5と延長線部9とに接続し、かつ、前記第一線3側に凹む第一凹部6eから構成される。
このように構成されている本変形例3におけるカンチレバー40−3でも、図11に示すように、レンズ72で集光された励起光8が稜線4に対して斜め方向から照射される。そして、探針部40aの稜線4の一部と上角部位5には、走査プローブ顕微鏡の光源より出射される励起光8が照射される。これにより、本変形例3におけるカンチレバー40−3も実施の形態におけるカンチレバー40と同様に探針部40aの頂点部位2に近傍に生成される近接場光8aの強度を向上することができる。
特に、本変形例3におけるカンチレバー40−3では、FIB加工によって形成される第一凹部6eの体積が小さいことから、FIB加工に要する時間を短くできる。
<<変形例4>>
図12は、本変形例4におけるカンチレバーの模式的な構成を示す斜視図である。
図12において、本変形例4におけるカンチレバー40−4も、例えば、図1〜図3に示す走査プローブ顕微鏡に使用される。このカンチレバー40−4は、走査プローブ顕微鏡のヘッドに保持される被保持部40cと、被保持部40cと一体的に形成された梁部40bと、梁部40に支持される探針部40aとを備えている。梁部40bは、x方向に延在しており、変形可能に構成されている。一方、探針部40aは、例えば、z方向に突出する略三角錐形状をしている。ただし、探針部40aの形状は、略三角錐形状に限定されるものではなく、例えば、略四角錐形状から構成することもできる。
このように構成されているカンチレバー40−4の探針部40aには、励起光8が照射されると、探針部40aの先端に近接場光8aが生成される。
図13は、図12のA−A線で切断した断面図である。
図13において、探針部40aは、頂点部位2と梁部40bとを接続する第一線3と、上角部位5と梁部40bの上面とを接続する第二線6とを有している。このとき、図13に示すように、第一線3は、梁部40bと直接接続される直線部から構成されている。一方、第二線6は、稜線4の延長上に位置する延長線部9と、上角部位5と延長線部9とに接続し、かつ、前記第一線3側に湾曲する第二凹部6fから構成される。
このように構成されている本変形例4におけるカンチレバー40−4でも、図13に示すように、レンズ72で集光された励起光8が稜線4に対して斜め方向から照射される。そして、探針部40aの稜線4の一部と上角部位5には、走査プローブ顕微鏡の光源より出射される励起光8が照射される。これにより、本変形例4におけるカンチレバー40−4も実施の形態におけるカンチレバー40と同様に探針部40aの頂点部位2に近傍に生成される近接場光8aの強度を向上することができる。
特に、本変形例4におけるカンチレバー40−4では、FIB加工によって形成される第二凹部6fの体積が小さいことから、FIB加工に要する時間を短くできる。
<カンチレバーの上位概念化>
上述したように、本実施の形態における技術的思想が具現化されるカンチレバーの構成は、例えば、図5に示す構成と、図7に示す構成と、図9に示す構成と、図11に示す構成と、図13に示す構成とを包含している。ここで、例えば、図5に示す構成と図7に示す構成と図9に示す構成とを包含する構成を第1構成と呼ぶことにすると、この第1構成は、以下に示す構成として把握することができる。すなわち、第1構成は、図5と図7と図9において、探針部40aが頂点部位2と第一線3と稜線4と上角部位5と第二線6とを含み、かつ、第二線6が梁部40bの上面と直接接続される直線部(直線部6b、傾斜直線部6d)を含むことを前提として、第一線3と第二線6の直線部(直線部6b、傾斜直線部6d)との間隔が頂点部位2に近づくに連れて、同じか、または、狭くなる構成であるということができる。これにより、第1構成は、図5に示す構成と図7に示す構成と図9に示す構成とを包含する上位概念化された構成ということができる。このような第1構成によれば、カンチレバーのy軸回りの剛性を高くすることができる。このことから、第1構成は、カンチレバーの形状に起因する振動を抑制することができる。
続いて、例えば、図11に示す構成と図13に示す構成とを包含する構成を第2構成と呼ぶことにすると、この第2構成は、以下に示す構成として把握することができる。すなわち、第2構成は、図11と図13において、探針部40aが頂点部位2と第一線3と稜線4と上角部位5と第二線6とを含むことを前提として、第二線6が稜線4の延長上に位置する延長線部9と、上角部位5と延長線部9の両方に接続し、かつ、第一線3側に凹む凹部(第一凹部6e、第二凹部6f)を含む構成であるということができる。これにより、第2構成は、図11に示す構成と図13に示す構成とを包含する上位概念化された構成ということができる。このような第2構成によれば、より簡単に本実施の形態における技術的思想を実現することができる。さらに、第2構成によれば、走査プローブ顕微鏡の励起光のレンズによる集光特性に合わせて凹部(第一凹部6e、第二凹部6f)を作る位置を容易に調整することができることから、より幅広い種類の走査プローブ顕微鏡用カンチレバーに適用できるという汎用性が得られる。また、加工部分が極めて小さいため、カンチレバーの振動特性への影響が小さく、従来の使い方のままで利用できる。
<効果の検証>
本実施の形態によれば、探針部の先端に生成される近接場光の強度を向上できる効果を得ることができるが、以下では、この効果の検証結果について説明する。
図14は、本実施の形態における効果を検証するためのシミュレーション計算モデルを模式的に示す図である。図14には、シミュレーション計算モデルに使用する模式的な探針部1000が示されている。この探針部1000には、頂点部位1001と稜線1002と上角部位1003と第一線1004が含まれている。そして、図14において、「(1)」は、頂点部位1001に下方から励起光を照射する場合を示しており(下方照射)、「(2)」は、頂点部位1001に側方から励起光を照射する場合を示している(側方照射)。また、図14において、「(3)」は、第一線1004の裏面側から励起光を照射する場合を示しており(裏面照射)、「(4)」は、稜線1002に対して斜め方向から励起光を照射する場合を示している(斜方照射)。ここで、「(4)」の場合が本実施の形態における提案方式に相当している。なお、シミュレーションの計算において、探針部1000に照射される励起光は、径が3μmのガウシアンビームであり、偏光はP偏光とし、かつ、入射パワーは、1Wに設定している。また、探針部1000の母材は、シリコンとするとともに、金属膜1005の膜厚は、稜線1002側が100nm程度であり、第一線1004側が45nm程度であると設定している。
以下では、上述したシミュレーション計算モデルで計算した近接場光の発生状況について説明する。図15は、探針部全体のシミュレーション結果である。一方、図16は、探針部の先端近傍を拡大したシミュレーション結果であり、図17は、探針部の先端近傍の電界強度をわかりやすく把握できるように画像加工したシミュレーション結果である。図15および図16においては、黒い領域ほど電界強度が高いことを示している。図17においては、探針部の先端に着目すると、「白」→「黒」→「灰色」の順で電界強度が高くなっていることを示している。そして、図15〜図17のそれぞれにおいて、「(1)」は、下方照射を示しており、「(2)」は、側方照射を示している。また、図15〜図17のそれぞれにおいて、「(3)」は、裏面照射を示しており、「(4)」は、斜方照射を示している。例えば、図17に示すように、本実施の形態における提案方式に相当する斜方照射では、探針部の先端近傍領域における近接場光の最大電場強度が、15.8(V/m)となっており、(1)に示す下方照射や(2)に示す側方照射や(3)に示す裏面照射に比べて、いずれも2倍以上の最大電場強度を実現していることがわかる。したがって、例えば、ラマン分光の信号強度は、近接場光の強度の4乗に比例するため、斜方照射(4)により発生する近接場光で探針増強ラマン分光を行なう場合、その他の照射方法による測定感度よりも4乗倍の増幅を得られると見積もることができる。このように、上述したシミュレーション計算モデルによる検証結果を考慮すると、本実施の形態によれば、探針部の先端に生成される近接場光の強度を向上できる結果、例えば、探針増強ラマン分光の測定感度を向上できることが裏付けられることになる。
<稜線の長さに対する考察>
次に、稜線の長さに対する考察について説明する。
図18には、探針部における稜線の長さの相違によって、稜線上に形成される表面プラズモンに起因する電場分布が相違することを示す図である。例えば、図18(a)には、稜線の長さLがL=1028nmの場合における電場分布が示されている。一方、図18(b)には、稜線の長さL=4820nmの場合における電場分布が示されている。
このシミュレーション結果より、稜線の長さを規定する必要性を理解することができる。すなわち、図18(a)においては、稜線を被覆する金属膜の表面で表面プラズモンが励起されて閉じ込められる結果、表面プラズモンによる定在波が生じる。これにより、探針部の頂点部位では、局所電界集中が発生して非常に強い近接場光が生成される。例えば、図18(a)において、探針部の頂点部位に発生する近接場光の電場強度は、21.5(V/m)となる。一方、図18(b)に示すように稜線の長さが長くなりすぎると、表面プラズモンの閉じ込め効果が弱まる。この結果、探針部の頂点部位では、発生する近接場光の電場強度が比較的弱くなる。例えば、図18(b)において、探針部の頂点部位に発生する近接場光の電場強度は、13.9(V/m)となる。なお、シミュレーション計算時の入射電場強度は、1(V/m)である。
以上のことから、探針部の頂点部位における近接場光の電場強度を高くするためには、探針部における稜線の長さを所定の第1規定値以下に限定することが望ましいことがわかる。つまり、表面プラズモンによる局所電界集中を有効利用するためには、稜線の長さには上限値が存在する。一方、稜線の長さが短すぎると、表面プラズモンによる定在波が生成できなくなると考えられることから、表面プラズモンによる局所電界集中を有効利用するためには、稜線の長さは所定の第2規定値以上に限定することが望ましいことがわかる。つまり、表面プラズモンによる局所電界集中を有効利用するためには、稜線の長さには下限値が存在する。このように、探針部の頂点部位における近接場光の電場強度は、定性的に稜線の長さに依存し、近接場光の電場強度を高くする観点から、稜線の長さを所定範囲(第2規定値以上第1規定値以下)に限定することが望ましいことがわかる。
そこで、以下では、稜線の長さを変化させたときの近接場光の電場強度の変化を算出したシミュレーション結果について説明する。例えば、図19は、稜線の長さを変化させたときの近接場光の電場強度の変化を算出する第1シミュレーションにおける前提条件を説明する図である。図19(a)には、探針部40aの先端構造が示されている。図19(a)において、頂点部位8aと上角部位5とを結ぶ線が稜線4であり、この稜線4の長さが「L」で示されている。第1シミュレーションでは、この「L」を変化させる。
そして、図19(b)は、第1シミュレーションを行うための前提構成を示す図である。図19(b)に示すように、探針部40aの頂点部位8aに励起光8を照射する。このとき、励起光8の波長は660nmである。この励起光8はスポット形状に集光されて探針部40aの頂点部位8aに照射される。詳細には、スポット形状の中心が頂点部位8aに照射され、かつ、スポット形状の範囲は稜線4と上角部位5とを含む。そして、図19(b)において、第1シミュレーションでは、頂点部位8aを通る水平線HL1と励起光8の入射方向とのなす角が入射角度θとして定義される。また、第1シミュレーションで算出する近接場光の電場強度は、図19(b)の「P」で示す位置における電場強度である。すなわち、第1シミュレーションでは、探針部40aの下方に金基板10Aを配置しており、探針部40aの頂点部位8aと金基板10Aの表面との間には、2nmのギャップが存在する。ここで、頂点部位8aと金基板10Aの表面との中間点が「P」であり、「P」と金基板10との間の距離は1nmである。
なお、第1シミュレーションでは、頂点部位8aに励起光8を照射する構成であることから、入射角度θが90°以上にすることはできないことを考慮すると、入射角度θの範囲は、0°以上90°以下である。しかしながら、実際の走査プローブ顕微鏡では、励起光8をスポット形状に集光する入射光学系と金基板10Aとの物理的干渉を回避するため、入射角度θは、15°以上90°以下に限定されることになる。
図20は、第1シミュレーションの結果を示すグラフである。図20において、縦軸は電場強度(V/m)を示している一方、横軸は入射角度θ(°)を示している。図20には、励起光の波長をλ(=660nm)とした場合、稜線4の長さLがλ/2(=330nm)以上5λ(=3300nm)以下である場合の入射角度θと電場強度との関係が示されている。図20に示すように、稜線4の長さLがλ/2以上5λ以下のいずれの場合においても、電場強度が、例えば16(V/m)以上の最大値を取る入射角度θが存在することがわかる。したがって、稜線4の長さLがλ/2以上5λ以下の範囲にある場合、図20を参照して電場強度を最大値とする入射角度を決定することにより、近接場光の電場強度を高くすることができる。つまり、第1シミュレーションの結果に基づくと、近接場光の電場強度は、稜線4の長さLと入射角度θの両方に依存し、稜線4の長さLがλ/2以上5λ以下の場合、図20に示すグラフに基づいて適切な入射角度θを選択することにより、近接場光の電場強度を高くすることができる。すなわち、例えば、稜線4の長さLの違いによって、入射角度θを調整することにより、近接場光の電場強度を高くすることができる。言い換えれば、第1シミュレーションの結果に基づくと、近接場光の電場強度は、稜線4の長さLと入射角度θの両方に依存し、例えば、入射角度θを決定した場合、図20に示すグラフに基づいて適切な稜線4の長さLをλ/2以上5λ以下の範囲で選択することにより、近接場光の電場強度を高くすることができる。このように、稜線4の長さLによって入射角度θを調整したり、入射角度θによって適切な稜線4の長さLを選択することにより、例えば、探針増強ラマン分光の測定感度を向上することができる。
続いて、第2シミュレーションの結果について説明する。
図21は、第2シミュレーションを行うための前提構成を示す図である。図21に示すように、探針部40aの上角部位5に励起光8を照射する。このとき、励起光8の波長は660nmである。この励起光8はスポット形状に集光されて探針部40aの上角部位5に照射される。詳細には、スポット形状の中心が上角部位5に照射され、かつ、スポット形状の範囲は稜線4と頂点部位8aとを含む。そして、図21において、第2シミュレーションでは、上角部位5を通る水平線HL2と励起光8の入射方向とのなす角が入射角度θとして定義される。また、第2シミュレーションで算出する近接場光の電場強度は、図21の「P」で示す位置における電場強度である。すなわち、第2シミュレーションでは、探針部40aの下方に金基板10Aを配置しており、探針部40aの上角部位5と金基板10Aの表面との間には、2nmのギャップが存在する。ここで、上角部位5と金基板10Aの表面との中間点が「P」であり、「P」と金基板10との間の距離は1nmである。
なお、第2シミュレーションでは、上角部位5に励起光8を照射する構成であることから、入射角度θは90°以上でもよいことを考慮すると、入射角度θの範囲は、例えば、0°以上130°以下にすることができる。しかしながら、実際の走査プローブ顕微鏡では、励起光8をスポット形状に集光する入射光学系と金基板10Aとの物理的干渉を回避するため、入射角度θは、例えば、15°以上130°以下に限定されることになる。
図22は、第2シミュレーションの結果を示すグラフである。図22において、縦軸は電場強度(V/m)を示している一方、横軸は入射角度θ(°)を示している。図22には、励起光の波長をλ(=660nm)とした場合、稜線4の長さLがλ/2(=330nm)以上3λ(=1980nm)以下である場合の入射角度θと電場強度との関係が示されている。図22に示すように、稜線4の長さLがλ/2以上3λ以下のいずれの場合においても、電場強度が、例えば16(V/m)以上の最大値を取る入射角度θが存在することがわかる。したがって、稜線4の長さLがλ/2以上3λ以下の範囲にある場合、図22を参照して電場強度を最大値とする入射角度を決定することにより、近接場光の電場強度を高くすることができる。つまり、第2シミュレーションの結果に基づくと、近接場光の電場強度は、稜線4の長さLと入射角度θの両方に依存し、稜線4の長さLがλ/2以上3λ以下の場合、図22に示すグラフに基づいて適切な入射角度θを選択することにより、近接場光の電場強度を高くすることができる。すなわち、例えば、稜線4の長さLの違いによって、入射角度θを調整することにより、近接場光の電場強度を高くすることができる。言い換えれば、第2シミュレーションの結果に基づくと、近接場光の電場強度は、稜線4の長さLと入射角度θの両方に依存し、例えば、入射角度θを決定した場合、図22に示すグラフに基づいて適切な稜線4の長さLをλ/2以上3λ以下の範囲で選択することにより、近接場光の電場強度を高くすることができる。このように、稜線4の長さLによって入射角度θを調整したり、入射角度θによって適切な稜線4の長さLを選択することにより、例えば、探針増強ラマン分光の測定感度を向上することができる。
上述した第1シミュレーションおよび第2シミュレーションでは、励起光8の波長λとして、λ=660nmを例に挙げて説明したが、第1シミュレーションの結果および第2シミュレーションの結果は、例えば、λは可視光領域の波長に適用することができる。ただし、励起光8の波長λは、可視光領域の波長に限定されるものではなく、探針部40aを被覆する金属膜7の材質を金膜(Au膜)から銀膜(Ag膜)やアルミニウム膜(Al膜)に替えることにより近紫外領域の波長から赤外領域の波長まで幅広く適用できる。
例えば、励起光8に赤外領域の波長を使用する場合、SNOMやTERSの測定以外に、励起光8の照射または励起光8を照射することにより発生する近接場光の照射による試料表面の膨張や反射率の変化や光誘起力のいずれかをナノ分解能レベルで測定することで、赤外(IR)分光測定の測定感度も高感度にすることができる。
次に、第1シミュレーションの結果と第2シミュレーションの結果に基づいて、探針部40aの頂点部位8aに励起光8のスポット中心を照射する構成の利点と、探針部40aの上角部位5に励起光8のスポット中心を照射する構成の利点について説明する。
第1シミュレーションの結果は、探針部40aの頂点部位8aに励起光8のスポット中心を照射する構成に対する結果である。例えば、図20と図22とを対比するとわかるように、全体的に第1シミュレーションにおける近接場光の電場強度は、第2シミュレーションにおける近接場光の電場強度よりも高くなる。特に、第1シミュレーションでは、稜線4の長さLがL=1028nmで、かつ、入射角度θがθ=65°のとき、近接場光の電場強度が21(V/m)となり最大値となる。したがって、第1シミュレーションに対応する頂点部位8aに励起光8のスポット中心を照射する構成では、電場強度の大きさを大きくすることができる利点が得られる。また、第1シミュレーションの結果に基づくと、頂点部位8aに励起光8のスポット中心を照射する構成では、稜線4の長さLがλ/2以上5λ以下の範囲に対応できる点で稜線の長さLの設計自由度を大きくできる。
一方、第2シミュレーションの結果は、探針部40aの上角部位8aに励起光8のスポット中心を照射する構成に対する結果である。例えば、図19(b)と図21とを対比するとわかるように、第2シミュレーションに対応する構成では、金基板10Aに近い頂点部位8aでなく、金基板10Aから遠い上角部位5に励起光8のスポット中心を照射している。このことは、上角部位5に励起光8のスポット中心を照射する構成では、頂点部位8aに励起光8のスポット中心を照射する構成よりも、試料の測定対象領域以外に励起光8が照射されることを低減できることを意味する。すなわち、上角部位5に励起光8のスポット中心を照射する構成では、頂点部位8aに励起光8のスポット中心を照射する構成よりも、試料の測定対象領域以外に励起光8が照射されることに起因するバックグラウンドノイズを低減できる利点が得られる。さらに、上角部位5に励起光8のスポット中心を照射する構成では、90°以上の入射角度θでもよい点で、頂点部位8aに励起光8のスポット中心を照射する構成よりも入射角度θの自由度を大きくすることができる。
近接場光の電場強度は、探針部40aの稜線4の長さLと入射角度θに依存する。そこで、近接場光の電場強度を高めるために、パラメータである稜線4の長さLと入射角度θを決定する方法として2通りの方法が考えられる。すなわち、入射角度θを決定した後に近接場光の電場強度を最大にする稜線4の長さLを決定する第1手法と、稜線4の長さLを決定した後に近接場光の電場強度を最大にする入射角度θを決定する第2手法である。
<第1手法>
第1手法は、例えば、走査プローブ顕微鏡において、入射角度θが固定されている場合に有効な手法である。例えば、図23は、頂点部位に励起光のスポット中心を照射する構成を前提として、入射角度θがθ=60°に固定された場合の稜線4の長さLと近接場光の電場強度との関係を示すグラフである。この図23は、例えば、図20に示されるグラフに基づいて算出することができる。図23において、入射角度θをθ=60°に固定した場合、電場強度が最も大きくなる稜線4の長さは、L=1λである。したがって、入射角度θはθ=60°に固定された走査プローブ顕微鏡においては、探針部40aの稜線4の長さLがL=λのカンチレバーを採用すればよいことになる。
同様に、例えば、図24は、上角部位に励起光のスポット中心を照射する構成を前提として、入射角度θがθ=60°に固定された場合の稜線4の長さLと近接場光の電場強度との関係を示すグラフである。この図24は、例えば、図22に示されるグラフに基づいて算出することができる。図24において、入射角度θをθ=60°に固定した場合、電場強度が最も大きくなる稜線4の長さは、L=1λである。したがって、入射角度θはθ=60°に固定された走査プローブ顕微鏡においては、探針部40aの稜線4の長さLがL=λのカンチレバーを採用すればよいことになる。
<第2手法>
第2手法は、例えば、予め稜線4の長さLが決定されているカンチレバーが製造されている場合に有効な手法である。この第2手法を実現するにあたっては、走査プローブ顕微鏡が入射角度θを変更可能なように構成されている必要がある。
以下では、入射角度θを変更可能な走査プローブ顕微鏡の構成例について説明する。
図25は、入射角度を変更可能な走査プローブ顕微鏡に含まれる入射光学系を模式的に示す図である。図25において、入射光学系74は、励起光をスポット形状に集光してカンチレバー40に照射する光学系であり、入射光学系74は、カンチレバー40への入射角度を、例えば、15°以上135°以下の範囲で変更可能に構成されている。詳細には、例えば、入射光学系74は、スポット形状の中心を頂点部位に照射する場合に、頂点部位を通る水平線と入射光学系74の中心線とのなす入射角度を15度以上90度以下に設定可能な角度調整機構を含む。また、入射光学系74は、スポット形状の中心を上角部位に照射する場合に、上角部位を通る水平線と入射光学系74の中心線とのなす入射角度を15度以上135度以下に設定可能な角度調整機構を含む。これにより、入射角度を変更可能な走査プローブ顕微鏡を実現することができる。
図26は、入射角度を変更可能な走査プローブ顕微鏡に含まれる集光レンズであるレンズ72を示す図である。図26において、レンズ72の開口度(NA)を大きくすることにより、例えば、図26(a)〜図26(c)に示すように、例えば、入射光学系は、励起光8の中心がレンズ72の中心線CLからずれた位置を通る光路構成(図26(a)および図26(c)参照)と励起光8の中心がレンズ72の中心線CLに一致する光路構成(図26(b)参照)との間で光路構成を変更可能とする光路調整機構を含むように構成されている。これにより、図26(a)〜図26(c)に示すように、カンチレバー40への励起光8の入射角度を変更することができる。
なお、図27に示すように、レンズ72は、カンチレバー40の上方に配置することもできる。この場合、レンズ72を使用してカンチレバー40への励起光8の入射角度を変更することができるとともに、レンズ72を使用して光てこ検出部60の光路も構成することができる。具体的に、光源61から射出された光62は、レンズ72を介してカンチレバー40の梁部40bに照射された後、カンチレバー40の梁部40bで反射した光62(反射光)は、レンズ72を介して光検出器63で受光される。このようにして、カンチレバー40の上方に配置されたレンズ72によって、光てこ検出部60の光路も構成することができる。この結果、図27に示す構成によれば、光てこ検出部60における空間的な配置困難性を解決できる。
図28は、入射角度を変更可能な走査プローブ顕微鏡に含まれるカンチレバーを示す図である。図28において、走査プローブ顕微鏡は、カンチレバー40に照射される励起光8の入射角度を変更するようにカンチレバー40の位置を調整する調整部を有する。これにより、例えば、図28に示すように、カンチレバー40の位置が調整される結果、カンチレバー40への励起光8の入射角度を変更することができる。したがって、図28に示す構成によっても、入射角度を変更可能な走査プローブ顕微鏡を実現することができる。
<変形例>
本実施の形態における走査プローブ顕微鏡では、例えば、図1に示すように、励起光8をスポット形状に集光してカンチレバー40に照射する集光光学部品として、透過型対物レンズであるレンズ72を使用している。ただし、集光光学部品としては、レンズ72に限らず、例えば、図29(a)に示す反射型対物レンズ72Aや図29(b)に示す放物面鏡72Bや図29(c)に示す積分鏡72Cのいずれかの光学部品を使用してもよい。
なお、図30に示すように、励起光をスポット形状に集光してカンチレバー40に照射する集光光学部品として、放物面鏡72Dを使用する場合、この放物面鏡72Dを使用して光てこ検出部60の光路を構成することもできる。例えば、図30に示すように、光源61から射出された光62は、放物面鏡72Dで反射した後、カンチレバー40に照射される。その後、カンチレバー40に照射された光62は、カンチレバー40で反射された後、さらに放物面鏡72Dで反射されて光検出器63で受光される。このようにして、放物面鏡72Dによって、光てこ検出部60の光路も構成することができる。この結果、図30に示す構成によれば、光てこ検出部60における空間的な配置困難性を解決できる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、探針部40aと梁部40bは、明確な外形的特徴で区切られていなくてもよい。そのため、探針部40aと梁部40bと被保持部40cは、それぞれ、カンチレバー40の第1部位(40a)、第2部位(40b)、第3部位(40c)のような言い方をしてもよい。
1 下面
2 頂点部位
3 第一線
4 稜線
5 上角部位
6 第二線
6a 傾斜部
6b 直線部
6c 水平直線部
6d 傾斜直線部
6e 第一凹部
6f 第二凹部
7 金属膜
8 励起光
8a 近接場光
8b 表面プラズモン
10 試料
10A 金基板
20 試料ホルダ
30 圧電素子ステージ
40 カンチレバー
40−1 カンチレバー
40−2 カンチレバー
40−3 カンチレバー
40−4 カンチレバー
40a 探針部
40b 梁部
40c 被保持部
50 圧電素子ステージ
51 圧電素子アクチュエータ
52 ヘッド
60 光てこ検出部
61 光源
62 光
63 光検出器
70 入射・検出光学系
71 光源
72 レンズ
72A 反射型対物レンズ
72B 放物面鏡
72C 積分鏡
72D 放物面鏡
73 受光光学系
74 入射光学系
80 分光器
90 制御部
100 走査プローブ顕微鏡
200 走査プローブ顕微鏡
300 走査プローブ顕微鏡
1000 探針部
1001 頂点部位
1002 稜線
1003 上角部位
1004 第一線
1005 金属膜
CL 中心線
HL1 水平線
HL2 水平線

Claims (20)

  1. 走査プローブ顕微鏡に用いるカンチレバーであって、
    断面視において、
    前記カンチレバーは、
    試料に近づける部位であり、かつ、金属膜で被覆された頂点部位と、
    前記頂点部位と接続され、かつ、前記金属膜で被覆された稜線と、
    前記稜線と接続された上角部位と、
    を有し、
    前記稜線の一部と前記上角部位とは、前記走査プローブ顕微鏡の光源より出射される励起光が照射される部位である、カンチレバー。
  2. 請求項1に記載のカンチレバーにおいて、
    前記カンチレバーは、
    探針部と、
    下面より前記探針部に接続し、かつ、前記探針部を保持するための梁部と、
    を有し、
    断面視において、前記探針部は、
    前記頂点部位と、
    前記頂点部位と前記梁部とを接続する第1線と、
    前記稜線と、
    前記上角部位と、
    前記上角部位と前記梁部とを接続する第2線と、
    を有し、
    前記第1線および前記第2線のそれぞれは、前記梁部と直接接続される直線部を含み、
    前記第1線の前記直線部と前記第2線の前記直線部との間隔は、前記頂点部位に近づくに連れて、同じか、または、狭くなる、カンチレバー。
  3. 請求項1に記載のカンチレバーにおいて、
    前記カンチレバーは、
    探針部と、
    下面より前記探針部に接続し、かつ、前記探針部を保持するための梁部と、
    を有し、
    断面視において、前記探針部は、
    前記頂点部位と、
    前記頂点部位と前記梁部とを接続する第1線と、
    前記稜線と、
    前記上角部位と、
    前記上角部位と前記梁部とを接続する第2線と、
    を有し、
    前記第2線は、
    前記稜線の延長上に位置する延長線部と、
    前記上角部位と前記延長線部とに接続し、かつ、前記第1線側に凹む凹部と、
    を含む、カンチレバー。
  4. 請求項1に記載のカンチレバーにおいて、
    前記金属膜は、金膜、銀膜、白金膜、または、アルミニウム膜のいずれかの金属膜または合金膜または複種金属の多層膜であり、
    前記カンチレバーの材質は、シリコン、酸化シリコン、または、窒化シリコンのいずれかである、カンチレバー。
  5. 請求項1に記載のカンチレバーにおいて、
    前記励起光の波長は、近紫外領域の波長から赤外領域の波長の範囲に含まれる、カンチレバー。
  6. 請求項1に記載のカンチレバーにおいて、
    前記励起光の波長をλとする場合、
    前記稜線の長さは、λ/2以上5λ以下である、カンチレバー。
  7. 試料を保持する試料ホルダと、
    励起光を出射する光源と、
    前記励起光が照射されるカンチレバーと、
    を備える、走査プローブ顕微鏡であって、
    断面視において、
    前記カンチレバーは、
    前記試料に近づける部位であり、かつ、金属膜で被覆された頂点部位と、
    前記頂点部位と接続され、かつ、前記金属膜で被覆された稜線と、
    前記稜線と接続された上角部位と、
    を有し、
    前記稜線の一部と前記上角部位とは、前記走査プローブ顕微鏡の光源より出射される励起光が照射される部位である、走査プローブ顕微鏡。
  8. 請求項7に記載の走査プローブ顕微鏡において、
    前記励起光は、前記稜線に対して斜め方向から照射される、走査プローブ顕微鏡。
  9. 請求項7に記載の走査プローブ顕微鏡において、
    使用される前記カンチレバーの前記稜線の長さに応じて、前記励起光を前記カンチレバーに照射する方向を調整可能に構成されている、走査プローブ顕微鏡。
  10. 請求項7に記載の走査プローブ顕微鏡において、
    前記励起光の波長をλとする場合、前記稜線の長さは、λ/2以上5λ以下であり、
    前記走査プローブ顕微鏡は、前記励起光をスポット形状に集光して前記カンチレバーに照射する入射光学系を有し、
    前記入射光学系は、前記スポット形状の中心を前記頂点部位に照射する場合に、前記頂点部位を通る水平線と前記入射光学系の中心線とのなす入射角度を15度以上90度以下に設定可能な角度調整機構を含む、走査プローブ顕微鏡。
  11. 請求項7に記載の走査プローブ顕微鏡において、
    前記励起光の波長をλとする場合、前記稜線の長さは、λ/2以上3λ以下であり、
    前記走査プローブ顕微鏡は、前記励起光をスポット形状に集光して前記カンチレバーに照射する入射光学系を有し、
    前記入射光学系は、前記スポット形状の中心を前記上角部位に照射する場合に、前記上角部位を通る水平線と前記入射光学系の中心線とのなす入射角度を15度以上135度以下に設定可能な角度調整機構を含む、走査プローブ顕微鏡。
  12. 請求項7に記載の走査プローブ顕微鏡において、
    前記励起光の波長をλとする場合、前記稜線の長さは、λ/2以上5λ以下であり、
    前記走査プローブ顕微鏡は、前記励起光をスポット形状に集光して前記カンチレバーに照射する集光レンズを含む入射光学系を有し、
    前記入射光学系は、前記励起光の中心が前記集光レンズの中心に一致する第1光路構成と前記励起光の中心が前記集光レンズの中心からずれた位置を通る第2光路構成との間で変更可能な光路調整機構を含む、走査プローブ顕微鏡。
  13. 請求項12に記載の走査プローブ顕微鏡において、
    前記集光レンズを介して前記カンチレバーの梁部に照射された光の前記カンチレバーの前記梁部からの反射光を、前記集光レンズを介して光検出器で検出することにより、前記カンチレバーの変形を検出する光てこ検出部を有する、走査プローブ顕微鏡。
  14. 請求項7に記載の走査プローブ顕微鏡において、
    前記励起光の波長をλとする場合、前記稜線の長さは、λ/2以上5λ以下であり、
    前記走査プローブ顕微鏡は、前記カンチレバーに照射される前記励起光の入射角度を変更するように前記カンチレバーの位置を調整する調整部を有する、走査プローブ顕微鏡。
  15. 請求項7に記載の走査プローブ顕微鏡において、
    前記走査プローブ顕微鏡は、前記励起光をスポット形状に集光して前記カンチレバーに照射する集光光学部品を有し、
    前記集光光学部品は、透過型対物レンズ、反射型対物レンズ、放物面鏡、または、積分鏡のいずれかの部品から構成されている、走査プローブ顕微鏡。
  16. 請求項15に記載の走査プローブ顕微鏡において、
    前記集光光学部品を介して前記カンチレバーの梁部に照射された光の前記カンチレバーの前記梁部からの反射光を、前記集光光学部品を介して光検出器で検出することにより、前記カンチレバーの変形を検出する光てこ検出部を有する、走査プローブ顕微鏡。
  17. 請求項7に記載の走査プローブ顕微鏡において、
    前記励起光は、赤外領域の波長を有し、
    前記走査プローブ顕微鏡は、前記励起光の照射または前記励起光を照射することにより発生する近接場光の照射による試料表面の膨張や反射率の変化や光誘起力のいずれかをナノ分解能レベルで測定する、走査プローブ顕微鏡。
  18. (a)光源から出射された励起光をカンチレバーに照射する工程、
    (b)前記カンチレバーに対して対向配置された試料からの散乱光を検出する工程、
    を備える、走査プローブ顕微鏡による測定方法であって、
    前記カンチレバーは、
    前記試料に近づける部位であり、かつ、金属膜で被覆された頂点部位と、
    前記頂点部位と接続され、かつ、前記金属膜で被覆された稜線と、
    前記稜線と接続された上角部位と、
    を有し、
    前記稜線の一部と前記上角部位とは、前記走査プローブ顕微鏡の前記光源より出射される前記励起光が照射される部位である、走査プローブ顕微鏡による測定方法。
  19. 請求項18に記載の走査プローブ顕微鏡による測定方法において、
    前記励起光は、前記稜線に対して斜め方向から照射される、走査プローブ顕微鏡による測定方法。
  20. 探針部と、
    下面より前記探針部に接続し、かつ、前記探針部を保持するための梁部と、
    を備える、カンチレバーであって、
    断面視において、前記探針部は、
    金属膜で被覆された頂点部位と、
    前記頂点部位と前記梁部とを接続する第1線と、
    前記頂点部位と接続され、かつ、前記金属膜で被覆された稜線と、
    前記稜線と接続された上角部位と、
    前記上角部位と前記梁部とを接続する第2線と、
    を有し、
    前記第2線は、第1構成と第2構成のいずれかの構成を有し、
    前記第1構成は、
    前記第1線および前記第2線のそれぞれが、前記梁部と直接接続される直線部を含み、
    前記第1線の前記直線部と前記第2線の前記直線部との間隔が、前記頂点部位に近づくに連れて、同じか、または、狭くなる構成であり、
    前記第2構成は、
    前記第2線が、
    前記稜線の延長上に位置する延長線部と、
    前記上角部位と前記延長線部とに接続し、かつ、前記第1線側に凹む凹部と、
    を含む構成である、カンチレバー。
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