JP2021021399A - 自動車用差動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】自動車用差動装置においては、デフケースに対するファイナルギアの位置決め精度の低下を防止し、かつピニオンシャフトの固定ピンの脱落を効率的に防止する。【解決手段】本発明は自動車用差動装置に関する。差動装置は、デフケースと、ファイナルギアと、ピニオンシャフトと、固定ピンとを有し、デフケースが、ピニオンシャフトに対応するピニオンシャフト穴と、フランジ部とを有し、ファイナルギアが、その外周に位置するギア部と、デブケースのフランジ部に向かって突出するフランジ部とを有し、デフケース及びピニオンシャフトを通り、かつ固定ピンに対応するように延びるピン穴が形成され、固定ピンが車軸方向にてデフケースのフランジ部の両端面間に位置する湾曲部を有し、ピニオンシャフトがデフケースのピニオンシャフト穴に挿入され、かつ固定ピンがピン穴に挿入された状態で、ピニオンシャフトがデフケースに固定される。【選択図】図3

Description

本発明は、デフケースと、このデフケースに固定されるピニオンシャフトとを有する自動車用差動装置に関する。
自動車の差動装置は、車軸の軸線上に配置されるデフケースと、車軸の軸線を囲むようにデフケースの外周側に配置されるファイナルギアとを有していて、ファイナルギアの外周部がギア部となっており、かつファイナルギアが、その内周部をデフケースの外周部に当接させた状態でデフケースに固定されている。さらに、差動装置は、車軸の軸線に対して直交するピニオン軸線に沿って延び、かつピニオンギアをこのピニオン軸線周りに回転可能に支持するピニオンシャフトと、このピニオンシャフトを固定するために用いられる固定ピンとを有する。
このような差動装置の一例としては、ファイナルギアの内周部がテーパ状に形成され、ファイナルギアの内周部に当接するデフケースの外周部もまたテーパ状に形成され、デフケース及びファイナルギアの内周部のそれぞれが、ピニオンシャフトを挿入可能とするように形成されたピニオンピニオンシャフト穴を有し、ファイナルギアの内周部及びピニオンシャフトのそれぞれが、これを貫通すると共にピニオン軸線に直交するように直線状に延びるシャフト固定ピン穴を有しており、デフケースの外周部がファイナルギアの内周部に圧入された状態で、前記ファイナルギアが前記デフケースに固定され、さらに、ピニオンシャフトがピニオンピニオンシャフト穴に挿入され、かつシャフト固定ピンがシャフト固定ピン穴に挿入された状態で、ピニオンシャフトがファイナルギアに固定されている、差動装置が挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
特開2018−146047号公報
しかしながら、上記差動装置の一例においては、テーパ状のデフケースの外周部がテーパ状のファイナルギアの内周部に圧入されるので、デフケースに対するファイナルギアの位置精度が低下するおそれがあり、その結果、ファイナルギアにおいて、歯当たり、ギアノイズ、振動悪化等が生じるおそれがある。また、上記差動装置の一例のように、固定ピンをピン穴に挿入する構造においては、固定ピンがピン穴から脱落し易い。
このような実情を鑑みると、自動車用差動装置において、デフケースに対するファイナルギアの位置決め精度の低下を防止可能とし、かつピニオンシャフトの固定ピンの脱落を効率的に防止可能とすることが望まれる。
上記課題を解決するために、一態様に係る自動車用差動装置は、自動車の車軸の軸線上に配置されるデフケースと、前記車軸の軸線を囲むように前記デフケースの外周側に位置するファイナルギアと、前記車軸の軸線に対して直交するピニオン軸線に沿って延び、かつ前記デフケースに固定されるピニオンシャフトと、前記ピニオンシャフトを固定するために用いられる固定ピンとを含み、前記デフケースが、前記ピニオンシャフトに対応するように形成されるピニオンシャフト穴と、前記車軸の軸線から離れるように突出するフランジ部とを有し、前記ファイナルギアが、その外周に位置するギア部と、前記ギア部の内周から前記デブケースのフランジ部に向かって突出するフランジ部とを有し、前記デフケース及び前記ピニオンシャフトを通り、かつ前記固定ピンに対応するように延びるピン穴が形成され、前記ピン穴は、前記デフケースのフランジ部よりも前記車軸の軸線寄りに位置し、前記固定ピンの長手方向の一部に湾曲部が形成され、前記湾曲部が、前記車軸の軸線に沿った車軸方向にて前記デフケースのフランジ部の両端面間に配置されており、前記デフケース及び前記ファイナルギアのフランジ部を接合する接合部が形成され、前記ピニオンシャフトが前記デフケースのピニオンシャフト穴に挿入され、かつ前記固定ピンが前記デフケース及び前記ピニオンシャフトのピン穴に挿入された状態で、前記ピニオンシャフトが前記デフケースに固定されている。
一態様に係る自動車用差動装置においては、デフケースに対するファイナルギアの位置決め精度の低下を防止することができ、かつピニオンシャフトの固定ピンの脱落を効率的に防止することができる。
図1は、第1実施形態に係る自動車用差動装置を、自動車の車軸に設置した状態を模式的に示す平面図である。 図2は、第1実施形態に係る自動車用差動装置を、そのデフケース、ファイナルギア、ピニオンシャフト及び固定ピンを組み立てた状態で概略的に示す斜視図である。 図3は、図2の自動車用差動装置を図1のA−A線に沿って切断した状態で概略的に示す断面斜視図である。 図4は、図2の自動車用差動装置を図1のA−A線に沿って切断した状態で概略的に示す断面図である。 図5は、図4のC部拡大図である。 図6は、ファイナルギアをデフケースに接合する前に図2の自動車用差動装置を図2のA−A線に沿って切断した状態で概略的に示す断面図である。 図7は、第2実施形態に係る自動車用差動装置を、そのデフケース、ファイナルギア、ピニオンシャフト及び固定ピンを組み立てると共に図2のA−A線に相当する線に沿って切断した状態で概略的に示す断面図である。
第1及び第2実施形態に係る自動車用差動装置について以下に説明する。以下の説明において、自動車の前後方向、幅方向及び上下方向を、それぞれ、車両前後方向、車両幅方向及び車両上下方向と呼ぶ。また、図1〜図6においては、各実施形態にて説明する構成要素が示されており、その他の構成要素は省略されている。図1においては、車両幅方向を両側矢印Wによって示す。
「第1実施形態」
第1実施形態に係る差動装置について説明する。
「差動装置の概略」
図1〜図4を参照すると、本実施形態に係る差動装置10は概略的には次のように構成される。図1に示すように、差動装置10は自動車の車軸1に取り付けられる。具体的には、車軸1は、差動装置10に対して車両幅方向の一方側及び他方側にそれぞれ位置する一方側車軸1a及び他方側車軸1bを有しており、さらに、一方側及び他方側車軸1a,1bの車両幅方向の内側端部が、一方側車軸1a及び他方側車軸1bを差動装置10に対して回転可能とするように差動装置10に取り付けられている。特に明確に図示はしないが、一方側及び他方側車軸1a,1bの内側端部には一方側及び他方側サイドギアが取り付けられ、かかる一方側及び他方側サイドギアが、差動装置10内で回転可能になっている。
また、一方側及び他方側車軸1a,1bの車両幅方向の外側端部には、一方側走行輪2a及び他方側走行輪2bがそれぞれ取り付けられている。一方側及び他方側走行輪2a,2bは、車軸1の軸線1c周りに回転可能になっている。差動装置10は、エンジン、モータ等の駆動源(図示せず)からの動力を一方側及び他方側走行輪2a,2bに伝えることができるように構成されている。差動装置10はまた、一方側及び他方側走行輪2a,2bの回転速度に差を付けることができるように構成されている。
図1〜図4に示すように、差動装置10は、車軸1の軸線1c上に配置されるデフケース20を有する。差動装置10は、車軸1の軸線1cを囲むようにデフケース20の外周側に位置するファイナルギア30を有する。差動装置10は、車軸1の軸線1cに対して略直交する軸線(以下、必要に応じて「ピニオン軸線」という)40aに沿って延びるピニオンシャフト40を有する。ピニオンシャフト40はデフケース20に固定される。特に図示はしないが、ピニオンシャフト40は、ピニオンギアをピニオンシャフト40周りに回転可能とした状態でピニオンギアを支持し、ピニオンギアは、上述した一方側及び他方側サイドギアと噛み合っている。さらに、差動装置10は、ピニオンシャフト40を固定するために用いられる固定ピン50を有している。
デフケース20は、ピニオンシャフト40に対応するように形成される2つのピニオンシャフト穴21,22、すなわち、第1ピニオンシャフト穴21及び第2ピニオンシャフト穴22を有する。デフケース20は、車軸1の軸線1cから離れるように突出するフランジ部23を有する。ファイナルギア30は、その外周に位置するギア部31を有する。ファイナルギア30は、ギア部31の内周からデブケース11のフランジ部23に向かって突出するフランジ部32を有する。
図3及び図4に示すように、差動装置10においては、ピニオン軸線40aに交差し、デフケース20及びピニオンシャフト40を通り、かつ固定ピン50に対応するように延びるピン穴60が形成されている。ピン穴60は、デフケース20のフランジ部23よりも車軸1の軸線1c寄りに位置する。さらに、固定ピン50の長手方向の一部に湾曲部50aが形成されている。湾曲部50aは、車軸1の軸線1cに沿った車軸方向にてデフケース20のフランジ部23の両端面23a,23b、すなわち、一方側端面23a及び他方側端面23b間に配置されている。
なお、デフケース20のフランジ部23の一方側端面23aは車両幅方向の一方側に位置し、かつデフケース20のフランジ部23の他方側端面23bは車両幅方向の他方側に位置する。また、車両幅方向は車軸方向と略一致する。そのため、車両幅方向の一方側は車軸方向の一方側に略一致し、かつ車両幅方向の他方側は車軸方向の他方側に略一致する。
このような差動装置10において、デフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,32を接合する接合部70が形成される。また、差動装置10においては、ピニオンシャフト40がデフケース20の2つのピニオンシャフト穴21,22に挿入され、かつ固定ピン50がデフケース20及びピニオンシャフト40のピン穴60に挿入された状態で、ピニオンシャフト40がデフケース20に固定される。
さらに、差動装置10は概略的には次のように構成することができる。図3及び図4に示すように、湾曲部50aは、車軸1の軸線1aに向かって突出するように湾曲する。固定ピン50の長さがピン穴60の長さよりも短い。接合部70が、車軸方向にてファイナルギア30のフランジ部32の両端面32a,32b、すなわち、一方側端面32a及び他方側端面32b間における中央32cに配置される。なお、ファイナルギア30のフランジ部32の一方側端面32aは車両幅方向の一方側に位置し、かつファイナルギア30のフランジ部32の他方側端面32bは車両幅方向の他方側に位置する。接合部70が、車軸方向にてデフケース20のフランジ部23の両端面23a,23b間における中央23cに配置される。
デフケース20のフランジ部23の両端面23a,23bが、ファイナルギア30のフランジ部32の両端面32a,32bとそれぞれ実質的に同一平面を成すように配置される。具体的には、デフケース20のフランジ部23の一方側端面23aが、ファイナルギア30のフランジ部32の一方側端面32aと実質的に同一平面を成すように配置され、かつデフケース20のフランジ部23の他方側端面23bが、ファイナルギア30のフランジ部32の他方側端面32bと実質的に同一平面を成すように配置される。さらに、接合部70は、デフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,32を固相接合した固相接合部70となっている。
「デフケースの詳細」
図1〜図4を参照すると、デフケース20は詳細には次のように構成することができる。図2〜図4に示すように、差動装置10のデフケース20は、その内部に空洞20aを有する。特に明確に図示はしないが、デフケース20の空洞20aは、一方側及び他方側サイドギアとピニオンギアとを配置可能とする大きさに形成される。
図3及び図4に示すように、デフケース20の各ピニオンシャフト穴21,22は、デフケース20の空洞20a及び外部を連通させるように、ピニオン軸線40aに沿ってデフケース20を貫通する。2つのピニオンシャフト穴21,22は、ピニオン軸線40aに沿ったピニオン軸線方向にて互いに対向する。各ピニオンシャフト穴21,22は、ピニオン軸線方向で見て略円形形状に形成されている。
デフケース20のフランジ部23は、2つのピニオンシャフト穴21,22に対して車両幅方向の一方側に位置する。フランジ部23の突出方向の先端区域23dから車軸1の軸線1cに向かって凹み、かつ車両幅方向の一方側に開口する凹区域23eが形成されている。先端区域23dと凹区域23eとの連結部分にはテーパが付されている。凹区域23eは、デフケース20のフランジ部23の中央23cに対して車両幅方向の一方側に位置する。しかしながら、凹区域は、車両幅方向の他方側に開口することもできる。この場合、凹区域は、デフケースのフランジ部の中央に対して車両幅方向の他方側に位置することよい。
デフケース20は、一方側車軸1a(図1に示す)を挿入可能とするようにデフケース20の車両幅方向の一方側端部を貫通する一方側車軸穴24を有する。デフケース20はまた、他方側車軸1b(図1に示す)を挿入可能とするようにデフケース20の車両幅方向の他方側端部を貫通する他方側車軸穴25を有する。一方側及び他方側車軸穴24,25は、デフケース20の空洞20a及び外部を連通させるように、車軸1の軸線1aに沿ってデフケース20を貫通する。一方側及び他方側車軸穴24,25は、車軸方向にて互いに対向する。
「ファイナルギアの詳細」
図2〜図4を参照すると、ファイナルギア30は詳細には次のように構成することができる。図2〜図4に示すように、ファイナルギア30において、ギア部31の車軸方向の長さ、すなわち、厚さは、フランジ部32の車軸方向の長さ、すなわち、厚さよりも大きくなっている。特に明確に図示はしないが、ギア部31は、ファイナルギア30の周方向に並ぶ複数の歯を有する。
図3及び図4に示すように、ファイナルギア30におけるフランジ部32の車両幅方向の中央32cは、同ギア部31の車両幅方向の中央31cと略一致している。フランジ部32の突出方向の先端区域32dから車軸1の軸線1cに向かって凹み、かつ車両幅方向の他方側に開口する凹区域32eが形成されている。凹区域32eは、ファイナルギア30のフランジ部32の中央32cに対して車両幅方向の他方側に位置する。しかしながら、上述のようにデフケースのフランジ部の凹区域が車両幅方向の他方側に開口する場合には、ファイナルギアの凹区域は車両幅方向の一方側に開口するとよい。この場合、ファイナルギアの凹区域は、ファイナルギアのフランジ部の中央に対して車両幅方向の一方側に位置するとよい。
「ピニオンシャフトの詳細」
図2〜図4を参照すると、ピニオンシャフト40は詳細には次のように構成することができる。ピニオンシャフト40は略円柱形状に形成される。ピニオンシャフト40は、その長手方向の第1及び第2端部40b,40cをデフケースの第1及び第2ピニオンシャフト穴21,22にそれぞれ挿入した状態でデフケース20に固定される。ピニオンシャフト40の長手方向にて第1及び第2端部40b,40c間に位置する中間部40dは、デフケース20の空洞20aに配置される。
「固定ピン及びピン穴の詳細」
図3〜図5を参照すると、固定ピン50及びピン穴60は詳細には次のように構成することができる。図3及び図4に示すように、固定ピン50の湾曲部50aは、デフケース20のフランジ部23を、接合部70から車軸1の軸線1cに向かう方向に押し出すように変形させた形状に倣って形成される。固定ピン50は、その湾曲部50aに対して車両幅方向の他方側に位置する直線部50bを有する。直線部50bは、車両幅方向又は車軸方向に沿って直線状に延びる。しかしながら、直線部は、車両幅方向又は車軸方向に対して傾いた方向に沿って直線状に延びることもできる。
かかる固定ピン50を挿入するピン穴60は、デフケース20における2つのピニオンシャフト穴21,22の一方、すなわち、第1ピニオンシャフト穴21に対して車両幅方向の一方側に位置する一方側デフケース領域61を有する。ピン穴60は、ピニオンシャフト40の第1端部40bに位置するピニオンシャフト領域62を有する。ピン穴60は、第1ピニオンシャフト穴21に対して他方側に位置する他方側デフケース領域63を有する。
ピン穴60は、固定ピン50の湾曲部50aに対応した湾曲部60aを有する。ピン穴60の湾曲部60aは一方側デフケース領域61に位置する。固定ピン50の車両幅方向の一方側端部50cは、一方側デフケース領域61において、デフケース20のフランジ部23の一方側端面23a及び他方側端面23b間に位置する。図5に示すように、ピン穴60における車両幅方向の他方側端部、より具体的には、ピン穴60における他方側デフケース領域63の車両幅方向の他方側端部には、固定ピン50に対応するピン穴60の内周面60bに対して、ピン穴60の横断面中心に向かって突出するストッパ60cが形成されている。固定ピン50の車両幅方向の他方側端部50dは、車両幅方向にてストッパ44に当接する。このような固定ピン50及びピン穴60の湾曲部50a,60aと、ピン穴60のストッパ60cとによって、固定ピン50がピン穴60から抜けることを防止できる。
「差動装置の製造方法」
図4及び図6を参照して、本実施形態に係る差動装置10の製造方法の一例について説明する。図4に示すように、ピニオンシャフト40をデフケース20の第1及び第2ピニオンシャフト穴21,22に挿入する。ここで、初期状態においては固定ピン50及びピン穴60の全体が直線状に延びている。かかる初期状態において、固定ピン50を、ピン穴60に車両幅方向の一方側から同他方側に向かう方向(矢印Pにより示す)にて挿入する。固定ピン50の他方側端部50dを、車両幅方向にてピン穴60のストッパ60cに当接させる。
デフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,32の凹区域23e,32eが車両幅方向の一方側及び他方側にそれぞれ開口する場合において、ファイナルギア30のフランジ部32の先端区域32dを、デフケース20のフランジ部23の先端区域223dに車両幅方向の一方側から同他方側に向かう方向(矢印Qにより示す)に押し付ける。そして、デフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,32に対して加圧通電を施し、これによって塑性流動したデフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,32の界面を固相接合する。例えば、固相接合は、リングマッシュ接合とすることができる。
かかる固相接合によって、デフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,32を接合する接合部70、すなわち、固相接合部70が形成される。なお、デフケース及びファイナルギアのフランジ部の凹区域が車両幅方向の他方側及び一方側にそれぞれ開口する場合においては、ファイナルギアのフランジ部の先端区域を、デフケースのフランジ部の先端区域に車両幅方向の他方側から同一方側に向かって押し付けるとよい。
図4に示すように、このような固相接合時において、デフケース20のフランジ部23が、接合部70から車軸1の軸線1cに向かう方向に押し出されように変形する。固定ピン50及びピン穴60の湾曲部50a,60aが、デフケース20のフランジ部23の変形に倣うように車軸1の軸線1aに向かって突出するように湾曲する。その結果、デフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,32が接合され、さらに、ピニオンシャフト40がデフケース20の2つのピニオンシャフト穴21,22に挿入され、かつ固定ピン50がデフケース20及びピニオンシャフト40のピン穴60に挿入された状態で、ピニオンシャフト40がデフケース20に固定されることとなる。
以上、本実施形態に係る差動装置10は、自動車の車軸1の軸線1c上に配置されるデフケース20と、車軸1の軸線1cを囲むようにデフケース20の外周側に位置するファイナルギア30と、車軸1の軸線1cに対して略直交するピニオン軸線40aに沿って延び、かつデフケース20に固定されるピニオンシャフト40と、ピニオンシャフト40を固定するために用いられる固定ピン50とを含み、デフケース20が、ピニオンシャフト40に対応するように形成されるピニオンシャフト穴21,22と、車軸1の軸線1cから離れるように突出するフランジ部23とを有し、ファイナルギア30が、その外周に位置するギア部31と、ギア部31の内周からデブケース11のフランジ部23に向かって突出するフランジ部32とを有し、デフケース20及びピニオンシャフト40を通り、かつ固定ピン50に対応するように延びるピン穴60が形成され、ピン穴60は、デフケース20のフランジ部23よりも車軸1の軸線1c寄りに位置し、固定ピン50の長手方向の一部に湾曲部50aが形成され、湾曲部50aが、車軸1の軸線1cに沿った車軸方向にてデフケース20のフランジ部23の両端面23a,23間に配置されており、デフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,32を接合する接合部70が形成され、ピニオンシャフト40がデフケース20のピニオンシャフト穴21,22に挿入され、かつ固定ピン50がデフケース20及びピニオンシャフト40のピン穴60に挿入された状態で、ピニオンシャフト40がデフケース20に固定されている。
かかる差動装置10においては、デフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,32を、車軸1の軸線1cに対して直交する方向に突き合わせた状態で互いに接合することができる。デフケース20に対するファイナルギア30の位置決め精度の低下を防止できる。また、固定ピン50がその湾曲部50aによってピン穴60内で確実に固定される。そのため、ピニオンシャフト40の固定ピン50の脱落を効率的に防止できる。
本実施形態に係る差動装置10においては、固定ピン50の湾曲部50aが、車軸1の軸線1cに向かって突出するように湾曲している。そのため、デフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,32を接合するときに、デフケース20及びそのピン穴60が車軸1の軸線1cに向かって変形するので、かかるデフケース20の変形に伴って固定ピン50の湾曲部50aを効率的に形成することができる。かかる固定ピン50の湾曲部50aよって、ピニオンシャフト40の固定ピン50の脱落を効率的に防止できる。
本実施形態に係る差動装置10においては、固定ピン50の長さがピン穴60の長さよりも短くなっている。そのため、固定ピン50の材料を削減することができて、固定ピン50を効率的に作製することができる。よって、このような固定ピン50の脱落防止を効率的に行うことができる。
本実施形態に係る差動装置10においては、接合部70が、車軸方向にてファイナルギア30のフランジ部32の両端面32a,32b間における中央32cに配置されている。このような差動装置10において、デフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,32を接合するときに、ファイナルギア30における車軸方向の中央から同一方側に位置する部分の変形と、ファイナルギア30における車軸方向の中央から同他方側に位置する部分の変形とを均等にすることができる。そのため、これらの変形が異なる場合に生じ得るファイナルギア30の歯の倒れを防止することができ、その結果、デフケース20に対するファイナルギア30の位置決め精度の低下を防止できる。ひいては、ファイナルギア30の歯の倒れに起因する歯当たり、ギアノイズ、振動悪化を防止することができる。
本実施形態に係る差動装置10においては、接合部70が、車軸方向にてデフケース20のフランジ部23の両端面23a,23b間における中央23cに配置されている。このような差動装置10において、デフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,32を接合するときに、デフケース20のフランジ部23における車軸方向の中央から同一方側に位置する部分の変形と、デフケース20のフランジ部23における車軸方向の中央から同他方側に位置する部分の変形とを均等にすることができる。そのため、これらの変形が異なる場合に生じ得るファイナルギア30の歯の倒れを防止することができ、その結果、デフケース20に対するファイナルギア30の位置決め精度の低下を防止できる。ひいては、ファイナルギア30の歯の倒れに起因する歯当たり、ギアノイズ、振動悪化を防止することができる。
本実施形態に係る差動装置10においては、デフケース20のフランジ部23の両端面23a,23bが、ファイナルギア30のフランジ部32の両端面32a,32bとそれぞれ実質的に同一平面を成すように配置されている。そのため、デフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,33を容易に位置合わせすることができ、その結果、デフケース20に対するファイナルギア30の位置決め精度の低下を防止できる。
本実施形態に係る差動装置10においては、接合部70が、デフケース20及びファイナルギア30のフランジ部23,32を固相接合した固相接合部70となっている。そのため、固相接合部70においては局所的に圧力を加えることができるので、かかる局所的な圧力によって、差動装置10全体に生じる歪みを抑制しながら固定ピン50の湾曲部50aを形成することができる。よって、ピニオンシャフト40の固定ピン50の脱落を効率的に防止できる。
「第2実施形態」
第2実施形態に係る差動装置について説明する。本実施形態に係る差動装置は、デフケースと、デフケース及びファイナルギアの接合とを除いて、第1実施形態に係る差動装置と同様に構成される。そのため、以下の説明及び図7においては、特に説明をしない限り、第1実施形態の構成要素と同様に構成される本実施形態の構成要素には、第1実施形態の構成要素の符号と同様の符号を用いる。そして、本実施形態に係る差動装置のデフケースと、デフケース及びファイナルギアの接合とについて、以下に説明する。
図7を参照すると、本実施形態に係る差動装置80は、次のようなデフケース90を有する。デフケース90の内部には、第1実施形態のデフケース20の空洞20aと同様である空洞51aが形成される。デフケース90は、第1実施形態の第1及び第2ピニオンシャフト穴21,22とそれぞれ同様である第1及び第2ピニオンシャフト穴91,92を有する。デフケース90は、車軸1の軸線1cから離れるように突出するフランジ部93を有する。
デフケース90のフランジ部93の一方側端面93aは車両幅方向の一方側に位置し、かつデフケース90のフランジ部93の他方側端面93bは車両幅方向の他方側に位置する。差動装置80において、デフケース90及びファイナルギア30のフランジ部93,32を接合する接合部100が形成される。接合部100は、デフケース90のフランジ部93の一方側及び他方側端面93a,93b間における中央93cに対して車両幅方向の一方側に位置する。しかしながら、接合部は、デフケースの中央に対して車両幅方向の他方側に位置することもできる。
さらに、差動装置80は、次のように構成することができる。デフケース90のフランジ部93の一方側端面93aは、ファイナルギア30のフランジ部32の一方側端面32aと車軸方向にズレて配置されている。デフケース90のフランジ部93の他方側端面93bは、ファイナルギア30のフランジ部32の他方側端面32bと車軸方向にズレて配置されている。
デフケース90のフランジ部93は、2つのピニオンシャフト穴91,92に対して車両幅方向の一方側に位置する。また、フランジ部93の突出方向の先端区域93dにおける車両幅方向の一方側端を面取りした面取り区域93eが形成されている。なお、接合部が、デフケースの中央に対して車両幅方向の他方側に位置する場合、面取り区域は、フランジ部の先端区域における車両幅方向の他方側端を面取りするように形成されるとよい。かかるデフケース90は、第1実施形態の一方側及び他方側車軸穴24,25とそれぞれ同様である一方側及び他方側車軸穴94,95をさらに有する。
本実施形態に係る差動装置80は、接合部70を車軸方向にてデフケース20のフランジ部23の両端面23a,23b間における中央23cに配置した構成と、デフケース20のフランジ部23の両端面23a,23bをファイナルギア30のフランジ部32の両端面32a,32bとそれぞれ実質的に同一平面を成すように配置した構成とを除いて、第1実施形態に係る差動装置10の製造方法と同様の製造方法によって製造することができる。また、本実施形態に係る差動装置80は、接合部70を車軸方向にてデフケース20のフランジ部23の両端面23a,23b間における中央23cに配置した構成に基づく効果と、デフケース20のフランジ部23の両端面23a,23bをファイナルギア30のフランジ部32の両端面32a,32bとそれぞれ実質的に同一平面を成すように配置した構成に基づく効果とを除いて、第1実施形態に係る差動装置10と同様の効果を得ることができる。
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
1…車軸、1c…軸線
10,80…差動装置
20,90…デフケース、21,91…第1ピニオンシャフト穴(ピニオンシャフト穴)、22,92…第2ピニオンシャフト穴(ピニオンシャフト穴)、23,93…フランジ部、23a…一方側端面、23b…他方側端面、23c…中央
30…ファイナルギア、31…ギア部、32…フランジ部、32a…一方側端面、32b…他方側端面、32c…中央
40…ピニオンシャフト、40a…ピニオン軸線
50…固定ピン、50a…湾曲部
60…ピン穴
70,100…接合部(固相接合部)

Claims (7)

  1. 自動車の車軸の軸線上に配置されるデフケースと、
    前記車軸の軸線を囲むように前記デフケースの外周側に位置するファイナルギアと、
    前記車軸の軸線に対して直交するピニオン軸線に沿って延び、かつ前記デフケースに固定されるピニオンシャフトと、
    前記ピニオンシャフトを固定するために用いられる固定ピンと、
    を備え、
    前記デフケースが、前記ピニオンシャフトに対応するように形成されるピニオンシャフト穴と、前記車軸の軸線から離れるように突出するフランジ部とを有し、
    前記ファイナルギアが、その外周に位置するギア部と、前記ギア部の内周から前記デブケースのフランジ部に向かって突出するフランジ部とを有し、
    前記デフケース及び前記ピニオンシャフトを通り、かつ前記固定ピンに対応するように延びるピン穴が形成され、
    前記ピン穴は、前記デフケースのフランジ部よりも前記車軸の軸線寄りに位置し、
    前記固定ピンの長手方向の一部に湾曲部が形成され、
    前記湾曲部が、前記車軸の軸線に沿った車軸方向にて前記デフケースのフランジ部の両端面間に配置されており、
    前記デフケース及び前記ファイナルギアのフランジ部を接合する接合部が形成され、
    前記ピニオンシャフトが前記デフケースのピニオンシャフト穴に挿入され、かつ前記固定ピンが前記デフケース及び前記ピニオンシャフトのピン穴に挿入された状態で、前記ピニオンシャフトが前記デフケースに固定されている、自動車用差動装置。
  2. 前記湾曲部が、前記車軸の軸線に向かって突出するように湾曲している、請求項1に記載の自動車用差動装置。
  3. 前記固定ピンの長さが前記ピン穴の長さよりも短くなっている、請求項1又は2に記載の自動車用差動装置。
  4. 前記接合部が、前記車軸方向にて前記ファイナルギアのフランジ部の両端面間における中央に配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車用差動装置。
  5. 前記接合部が、前記車軸方向にて前記デフケースのフランジ部の両端面間における中央に配置されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動車用差動装置。
  6. 前記デフケースのフランジ部の両端面が、前記ファイナルギアのフランジ部の両端面とそれぞれ同一平面を成すように配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動車用差動装置。
  7. 前記接合部が、前記デフケース及び前記ファイナルギアのフランジ部を固相接合した固相接合部となっている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動車用差動装置。
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