JP2021016372A - ウイルス感染能評価用基板及びウイルス感染能評価方法 - Google Patents

ウイルス感染能評価用基板及びウイルス感染能評価方法 Download PDF

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Azusa Oshima
梓 大嶋
奈保子 河西
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奈保子 河西
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寛 中島
幹太 湊元
Kanta Minatomoto
幹太 湊元
弘二 住友
Koji Sumitomo
弘二 住友
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Abstract

【課題】ウイルス感染能を高精度に評価する技術の提供。【解決手段】基板10と、前記基板10の一方面上に積層された脂質二重膜30と、を備えるウイルス感染能評価用基板1Aにおいて、脂質二重膜に、蛍光物質で標識されたウイルス2を接触させて、その結果、ウイルスがその感染能に対応した程度に脂質二重膜に融合する工程と、基板の一部に励起光を照射して蛍光物質の蛍光を退色させた後に、一部の蛍光物質の蛍光強度を測定する工程と、蛍光物質の蛍光を退色させる前の一部の蛍光物質の蛍光強度に対する、蛍光物質の蛍光の退色後に蛍光を回復させた一部の蛍光物質の蛍光の蛍光強度の割合に基づいてウイルスの感染能を評価する工程と、を含む、ウイルス感染能評価方法。【選択図】図1

Description

本発明は、ウイルス感染能評価用基板及びウイルス感染能評価方法に関する。
様々な疾病の原因となるエンベロープウイルスの感染能を評価する技術は、エンベロープウイルス機能の理解や疾病対策を講じる上で重要である。
エンベロープウイルスの感染は次のように進行する。まず、ウイルスは、宿主となる細胞へ付着する。次に、エンベロープが細胞膜表面に融合すること、および/または、エンドサイトーシスで細胞内に取りこまれた後エンドソーム膜内膜に融合することにより、カプシドが細胞内へ侵入していく(例えば、非特許文献1を参照)。本明細書において、この過程を評価することをウイルス感染能評価という。従来、ウイルス感染能評価においては、ウイルスの感染対象として、宿主となる生体細胞が用いられていた。
「生命科学のためのウイルス学 感染と宿主応答のしくみ、医療への応用」下遠野邦忠、瀬谷司 監訳(2015年、南江堂), p.47-50.
しかしながら、ウイルス感染能評価において、宿主として生体細胞を使用する場合、その生体細胞の生育状態によって実験で得られる結果が変動し、ウイルス感染能評価の精度が低下する場合があった。
上記事情に鑑み、本発明は、ウイルス感染能を高精度に評価する技術を提供することを目的としている。
本発明の一態様は、基板と、前記基板の一方面上に積層された脂質二重膜と、を備えるウイルス感染能評価用基板である。
また、本発明の一態様は、ウイルス感染能評価用基板であって、前記基板が前記一方面上に開口する井戸構造を更に有し、前記井戸構造の開口部は前記脂質二重膜により封止されている。
また、本発明の一態様は、ウイルス感染能評価用基板の前記脂質二重膜に、蛍光物質で標識されたウイルスを接触させて、その結果、前記ウイルスがその感染能に対応した程度に前記脂質二重膜に融合する工程と、前記基板の一部に励起光を照射して前記蛍光物質の蛍光を退色させた後に、前記一部の前記蛍光物質の蛍光強度を測定する工程と、前記蛍光物質の前記蛍光を退色させる前の前記一部の前記蛍光物質の蛍光強度に対する、前記蛍光物質の前記蛍光の退色後に前記蛍光を回復させた前記一部の前記蛍光物質の前記蛍光の蛍光強度の割合に基づいて前記ウイルスの感染能を評価する工程と、を含む、ウイルス感染能評価方法である。
また、本発明の一態様は、ウイルス感染能評価用基板の脂質二重膜にウイルスを接触させて、その結果、前記ウイルスがその感染能に対応した程度に前記脂質二重膜に融合する工程と、前記ウイルスのカプシドを前記ウイルス感染能評価用基板の井戸構造の内部に収容する工程と、前記カプシドの内容物を検出し、検出結果を得る工程と、前記検出結果に基づいて前記ウイルスの感染能を評価する工程を含む、ウイルス感染能評価方法である。
また、本発明の一態様は、ウイルス感染能評価方法であって、前記内容物が核酸である。
また、本発明の一態様は、ウイルス感染能評価方法であって、前記内容物がタンパク質である。
本発明によれば、ウイルス感染能を高精度に評価する技術を提供することができる。
ウイルス感染能評価用基板1Aの模式図である。 ウイルス感染能評価用基板1Bの模式図である。 蛍光物質で標識したウイルスを接触させたウイルス感染能評価用基板の、蛍光強度の変化を示す図である。 光退色後蛍光回復法を用いて、ウイルスを接触させたウイルス感染能評価用基板の、蛍光強度の回復を測定した結果を示す図である。
[ウイルス感染能診断用基板]
本発明の1実施形態にかかるウイルス感染能評価用基板1Aについて、図面を参照して説明する。ウイルス感染能評価用基板1Aは、基板本体10の一方面上に脂質二重膜30が積層されている。
図1において、上側を上、下側を下として説明する。
基板本体10の材質は、蛍光顕微鏡による観察を妨げず、生理的実験に通常用いる緩衝溶液のpH範囲内(3〜10)で基板表面が負に荷電するものが好ましい。基板の材質として、例えば、シリコン、シリコン酸化物、シリコン窒化物、石英、マイカ、ガラスなどを挙げることができる。
脂質二重膜30の脂質分子の種類としては、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)などの中性脂質分子とホスファチジルセリン(PS)、ホスフォグリセロール(PG)などの負電荷性脂質分子との混合物を用いてもよい。スフィンゴ糖脂質などの糖脂質をもいてもよい。また、コレステロール等を混合してもよい。
ウイルス2を含む溶液をウイルス感染能評価用基板1Aの脂質二重膜30に接触させると、ウイルス2は、基板本体10には直接付着することなく、基板本体10上に形成した脂質二重膜30に選択的に付着、融合する。蛍光物質で標識したウイルス2を、脂質二重膜30に付着、融合させることにより、ウイルスの付着率と融合状態を評価することができる。評価方法としては、例えば、後述する、蛍光強度変化測定や光退色後蛍光回復法(FRAP)により評価することができる。
脂質二重膜30の形成方法としては、例えば、直径が10μm以上の中性脂質/負電荷脂質/コレステロールの三成分系から構成される巨大脂質膜ベシクルを、基板上で開裂することにより脂質二重膜を得てもよい。巨大ベシクルを開裂して形成した基板上の脂質二重膜は円形(あるいはそれに近い形状)である。
退色後蛍光回復法においては、蛍光物質で標識したウイルス2由来の脂質分子の側方拡散を評価するため、脂質二重膜30のサイズは、直径が20μm以上の連続した膜であることが望ましい。また、検出効率を高めるために、直径が100μm以下とし、その密度(基板表面の被覆率)を制御することが望ましい。
巨大脂質膜ベシクルを作製する代表的な手法としては、例えば、静置水和法や電界形成法がある。ベシクルの作製手法としては、特に限定されないが、巨大ベシクルが作製しやすく、また反応時間や反応プロセスの簡易性から、電界形成法を採用することが好ましい。
電界形成法は、酸化インジウムスズ(ITO)などの電極上に、脂質分子を薄膜化した後、交流電場をかけて水溶液中に巨大脂質膜ベシクルを形成する手法である。
サイズのそろったベシクルを得るためには、ITO基板上に厚さ数十nm〜数μmの均一な脂質分子の薄膜を形成することが好ましく、また、交流電場は数百mV〜2V程度の印加条件が好ましい。該電場範囲よりも低い電場強度では、ベシクルの収量が低く、該電場範囲よりも高い電場強度では、ベシクルの構造破壊や水の電気分解が生じ、ベシクルが製造できない可能性があるからである。
(第2実施形態)
図2は、本発明に係るウイルス感染能評価用基板1Bの模式図である。ウイルス感染能評価用基板1Bは、ウイルス感染能評価用基板1Aの変形例である。
ウイルス感染能評価用基板1Bは、上面に凹部である井戸構造20を有し、井戸構造20の開口部21は脂質二重膜30により封止されている。
本実施形態のウイルス感染能評価用基板の基板本体10の材質は、第1実施形態のものと同様のものであってもよい。
井戸構造20の数は特に限定されない。井戸構造20の形状は、底面を有する凹状の孔である。井戸構造20の開口部21の形状は、脂質二重膜30を安定に形成する観点から、円形状または四角形状であることが好ましい。
基板本体10への井戸構造20の形成方法としては、例えば、フォトリソグラフィ法、電子ビームリソグラフィ法、ドライエッチング法等の微細加工技術を挙げることができる。
基板本体10の表面には、井戸構造20の開口部21にオーバーハング部11aを形成するための薄膜層11が設けられていてもよい。オーバーハング部11aは、基板本体10の上面を延長するように、井戸構造20の開口部21の開口を狭める方向に延ばして形成されている。
薄膜層11の材質は、脂質二重膜30が付着すれば、基板本体10の材質と同じでも、違う材質でも構わない。オーバーハング部11aの作製過程において、選択的エッチング法を適用できることから、異なる材質を用いることが望ましい。薄膜層11の厚さは、50nm〜500nmであることが好ましい。
本実施形態のウイルス感染能評価用基板1Bの脂質二重膜30にウイルス2を接触させ、ウイルス2が脂質二重膜30に融合すると、ウイルス2は井戸構造20にカプシド3を放出する。例えば、次に述べるような、蛍光測定、分光測定等の光学的手法により、カプシド3の内容物を検出することにより、ウイルス感染能を評価することができる。
井戸構造20の内部には、カプシド3を分解するための酵素が封入されていてもよい。この酵素が機能することにより、カプシド3の内容物は井戸構造20の内部に収容される。井戸構造20の内部に収容される内容物としては、核酸、タンパク質等が挙げられる。
井戸構造20の内部には、収容された核酸を検出するためのプローブが、予め封入又は設置されていてもよい。プローブとしては、特に限定されず、例えば、核酸と結合するエチジウムブロマイド、収容された核酸の配列にハイブリダイズするプローブ等、当業者に公知のものが挙げられる。
井戸構造20の内部に放出された核酸の量が、これら蛍光色素の結合により検出されるための下限を下回っている場合には、井戸構造20の内部の核酸を増幅させた後に、増幅した核酸を検出してもよい。
核酸を増幅させる方法としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、一定温度下で核酸を増幅させる手法が挙げられる。
PCRを行うために、ウイルス感染能評価用基板1Bは、温度調節器に設置可能な構造を有していてもよい。また、PCRを行うための反応液を、予め井戸構造20内に封入しておいてもよい。
また、一定温度下で核酸を増幅させるために、一定温度で核酸増幅が行われる核酸合成酵素(例えばphi29 DNA PolymeraseやBst 2.0 DNA Polymerase)と、増幅のための反応液を、井戸構造20内に封入しておいてもよい。
また、井戸構造20の内部には、収容されたタンパク質を検出、定量するための試薬が予め封入又は設置されていてもよい。タンパク質を検出、定量するための試薬は、当業者に公知のものを使用することができる。
脂質二重膜30の形成方法としては、例えば、その直径が10μm以上の中性脂質/負電荷脂質の二成分系から構成される巨大脂質ベシクルを、基板上で展開することにより脂質二重膜30を得てもよい。コレステロールを含む三成分系から構成される巨大ベシクルを用いてもよい。この形成方法を採用すると、基板本体10に複数の井戸構造20を設けた場合に、それら複数の井戸構造20を、一度に隙間なく、また安定に脂質二重膜30で覆うことが可能となる。
井戸構造20の開口部21の形状は、脂質二分子膜を安定に形成する観点から、円形状または四角形状であることが望ましい。円形状の開口部21の直径あるいは四角形状の開口部21の一辺は、100nm〜10μmの範囲であることが好ましい。
巨大脂質膜ベシクルを作製する代表的な手法としては、静置水和法や電界形成法がある。ベシクルの作製手法は特に限定されないが、巨大ベシクルが作製しやすく、また反応時間や反応プロセスの簡易性から、電界形成法を採用することが好ましい。電界形成法は、酸化インジウムスズ(ITO)などの電極上に、脂質分子を薄膜化した後、交流電場をかけて水溶液中に巨大脂質膜ベシクルを形成する手法である。サイズのそろったベシクルを得るためには、ITO基板上に厚さ数十nm〜数μmの均一な脂質分子の薄膜を形成することが好ましく、また、交流電場は数百mV〜2V程度の印加条件が好ましい。該電場範囲よりも低い電場強度では、ベシクルの収量が低く、該電場範囲よりも高い電場強度では、ベシクルの構造破壊や水の電気分解が生じ、ベシクルが製造できない可能性があるからである。
[ウイルス感染能評価方法]
(第1実施形態)
上述したウイルス感染能評価用基板1A又はウイルス感染能評価用基板1Bを用いて、次に示すようなウイルス感染能評価方法により、ウイルスの感染能を評価することができる。
ウイルスの種類としては、脂質膜(エンベロープ)を外側に有するウイルスであれば特に限定されず、DNAウイルス、RNAウイルス、レトロウイルス等であってもよい。
まず、対照のウイルス2の脂質膜を蛍光物質により標識する。蛍光物質としては、特に限定されず、ウイルス2の脂質膜が、均一に、安定的に標識されるものであればどのようなものであってもよく、当業者に公知の蛍光物質を用いることができる。
蛍光標識したウイルス2を含む溶液を、上述したウイルス感染能評価用基板の脂質二重膜30に接触させる。その結果、ウイルスは、その感染能に対応した程度に前記脂質二重膜に融合する。脂質二重膜30に接触したウイルスは、次に示す3段階(付着、半融合、全融合)の状態となる。
「付着」の段階とは、ウイルス2が脂質二重膜30に係留されているが、ウイルス2の脂質膜がほぼ全てが脂質二重膜30と連続していない段階である。ウイルス2がこの段階にある場合、ウイルス2の脂質膜に含まれる蛍光物質は、脂質二重膜30へ拡散することができない。
「半融合」の段階とは、ウイルス2の脂質膜の一部が脂質二重膜30と連続しているが、残りのウイルス2の脂質膜の一部が脂質二重膜30と連続していない段階である。ウイルス2がこの段階にある場合、脂質二重膜30と連続しているウイルス2の脂質膜に含まれる蛍光物質は脂質二重膜30へと拡散するが、脂質二重膜30と連続していないウイルス2の脂質膜に含まれる蛍光物質は脂質二重膜30へと拡散することができない。すなわち、ウイルス2の脂質膜の一部に含まれる蛍光物質が脂質二重膜30へ拡散する。
「全融合」の段階とは、ウイルス2の脂質膜の全体が脂質二重膜30に連続している段階である。この場合、ウイルス2の脂質膜の全体に含まれていた蛍光物質が脂質二重膜30に拡散する。
ウイルス2をウイルス感染能評価用基板の脂質二重膜30に接触させた後、光退色後蛍光回復法(Fluorescence Recovery after Photobleaching、FRAP)を用いることにより、ウイルス2の感染能を評価することができる。光退色後蛍光回復法の原理は次のようなものである。
ウイルス2由来の蛍光物質を含む脂質二重膜30のある位置に強い励起光を照射すると、その位置における脂質二重膜30に含まれる蛍光物質は退色し、その位置における蛍光物質の蛍光強度は著しく低下する(フォトブリーチング)。
一般に、脂質二重膜に含まれる分子は流動する。フォトブリーチングされた位置の周囲に含まれる蛍光物質は、フォトブリーチングされた位置へ流動、拡散し、フォトブリーチングされた位置の蛍光強度は徐々に回復する。
ここで,フォトブリーチング後一定の時間を経過した後の蛍光強度(フォトブリーチング前の強度との比)は、ウイルス2の状態(付着、半融合、全融合)によって異なる。
ウイルス2が付着している段階の場合、蛍光物質により標識されたウイルス2は脂質二重膜30に付着されている状態で脂質二重膜30の平面上を移動することができるが、脂質二重膜30に取り込まれた蛍光物質が流動する速度よりもずっと遅い。すなわち、付着しているウイルス2に含まれる蛍光強度成分はほとんど回復しない。
ウイルス2が半融合している段階の場合、ウイルス2の脂質膜の一部に含まれていた蛍光物質は脂質二重膜30内で流動することができる。すなわち、ウイルス2に含まれる蛍光強度成分の内、およそ半分だけが回復する。
ウイルス2が全融合している段階の場合、ウイルス2の脂質膜の全体に含まれていた蛍光物質が脂質二重膜30内で流動することができる。すなわち、蛍光強度はほぼ完全に回復する。
したがって、フォトブリーチング後の蛍光強度の回復を測定すれば、全融合したウイルス2の割合を評価する事ができる。
(第2実施形態)
上述したウイルス感染能評価用基板1Bを用いて、次に示すようなウイルス感染能評価方法により、ウイルスの感染能を評価することができる。
ウイルスの種類は特に限定されず、[ウイルス感染能評価方法]の第1実施形態において上述したウイルスを用いることができる。
まず、ウイルス感染能評価用基板1Bの脂質二重膜30に、ウイルス2を接触させる。その結果、ウイルスは、その感染能に対応した程度に前記脂質二重膜に融合する。ウイルス2が脂質二重膜30に融合すると、ウイルス2のカプシドは、井戸構造20の内部に収容される。
続いて、井戸構造20の内部に収容されたカプシドを除去して、カプシド3の内容物を検出する。カプシド3を除去する方法としては、特に限定されないが、例えば、カプシド3に酵素を作用させて分解する方法であってもよい。
検出に用いるカプシド3の内容物としては、例えば、核酸、タンパク質等が挙げられる。核酸としては、例えば、ウイルスゲノムDNA、ウイルスRNAが挙げられる。
続いて、井戸構造20の内部に収容されたカプシド3の内容物を検出する。
井戸構造20内部の核酸を検出する手法としては、特に限定されないが、例えば、核酸をEtBrと結合させて蛍光を検出することにより、核酸を検出することができる。または、各ウイルスに固有の核酸(ウイルスゲノム、ウイルスRNA)に、特異的に結合するプローブを用いることにより、核酸を検出してもよい。プローブの種類、検出方法は当業者に公知のものを採用することができる。
井戸構造20の内部に放出された核酸の量が、これら蛍光色素の結合により検出されるための下限を下回っている場合には、井戸構造20の内部の核酸を増幅させた後に、増幅した核酸を検出してもよい。
核酸を増幅させる方法としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、一定温度下で核酸を増幅させる手法が挙げられる。
井戸構造20内に放出されたタンパク質を検出する方法としては、例えば、タンパク質を分光法等により直接検出する方法であってもよいし、比色法であってもよい。
カプシド3由来のタンパク質または核酸の検出方法としては、例えば、赤外線を照射して検出する方法、近赤外光を照射して表面プラズモン共鳴を検出する方法あってもよいし、基板本体10に電極を配置し電界効果トランジスタ法により電気を計測する方法であってもよい。
上述した方法によって、井戸構造20の内部に収容されたカプシド3の内容物が検出された場合、ウイルス2の少なくとも一部は脂質二重膜30に全融合していたと評価することができる。逆に、井戸構造20の内部に収容されたカプシド3の内容物が検出されなかった場合、ウイルス2は脂質二重膜30に全融合していなかったと評価することができる。
また、井戸構造20の内部におけるカプシド3由来のタンパク質または核酸の量を定量することによって、全融合したウイルス2の割合を評価することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
(基板の作製)
まず、基板本体として、シリコン基板を用意した。基板本体の上面に、120nmの厚さのシリコン酸化膜層(薄膜層)を、熱酸化法により形成した。
[実験例2]
(ウイルス感染能評価用基板の作製)
実験例1において得られた基板上で、脂質膜を開裂し、支持型脂質二重膜を形成した。
まず、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)(80モル%)とジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)(20モル%)の混合クロロホルム溶液(濃度2.5mM)を脂質二重膜用蛍光ラベル剤としてNBD(NBD‐DOPE)を0.5モル%含有させた。
続いて、ITO基板(ガラス上に膜厚100nmのITOが薄膜化された基板、サイズ40×40mm、50〜100Ω)上に、前記クロロホルム溶液200μLを均一に塗布した。この基板を、室温で2時間、減圧乾燥して、クロロホルム溶媒を完全に除去することで、均一な脂質分子薄膜をITO基板上に形成した。
続いて、ITO基板上に、窓部を有するシリコンゴム(外寸30×30mm、厚さ1mmのシリコンゴムを20×20mmのサイズでくり貫いた窓部を有する)を密着して配置し、窓部に30mMのスクロース水溶液500μLを滴下した。続いて、その上部にITO基板を気泡が入らないように配置し、シリコンゴム窓部にある溶液をITO基板で挟み込んだ。
続いて、ITO基板にクリップ電極を接合し、室温で交流電場(正弦波、1V、10Hz)を2時間印加することで、電界形成法により巨大脂質膜ベシクルをスクロース溶液中に分散して形成させた。
井戸構造20を有する基板本体10の上に、溶液(20mM酢酸緩衝液 pH4.0,pH4.5, pH5.0,pH5.5,または20mMリン酸緩衝液 pH6.0,pH6.5,pH7.0)100μLを滴下した。さらに、前記巨大脂質膜ベシクル分散液2μLを溶液中に滴下し、2分間静置することで巨大脂質膜ベシクルを基板上に展開した。球状構造を有するベシクルは、基板に衝突し、その球状構造が破壊されることにより、井戸構造を覆うように脂質二重膜が形成され、ウイルス感染能評価用基板が作製された。
[実験例3]
(バキュロウイルスの感染能測定)
実験例2において作製した支持型脂質二重膜を用いて、バキュロウイルスが付着または融合している状態を評価した。
バキュロウイルスのエンベロープを、Alexa Fluor 546 NHS Ester (Succinimidyl Ester)で標識した。
標識したバキュロウイルスを、20mM酢酸緩衝液(pH4.0〜7.0)に分散させた後、実験例2において作製したウイルス感染能評価用基板の脂質二重膜に接触させた。
バキュロウイルス添加後、室温で静置し、共焦点顕微鏡で観察した結果が図3である。横軸は使用した溶液のpHであり、縦軸は蛍光色素Alexa Fluor 546由来の蛍光強度の変化を示している。溶液が20mM酢酸緩衝液 pH4.0、pH4.5、 pH5.0、pH5.5の時、Alexa Fluor 546の蛍光強度の変化が特に大きく、これらは脂質二重膜にバキュロウイルスが付着または融合していることを示している。
[実験例4]
(バキュロウイルスの感染能測定)
実験例2において作製した支持型脂質二重膜を用いて、光退色後蛍光回復法によりバキュロウイルスが付着または融合している状態を評価した。
バキュロウイルスのエンベロープを、Alexa Fluor 546 NHS Ester (Succinimidyl Ester)で標識した。
標識したバキュロウイルスを、20mM酢酸緩衝液 pH4.0、pH4.5、pH5.0、pH5.5中に分散させた後、ウイルス感染能評価用基板の脂質二重膜に接触させた。
図4(a)は、井戸構造の脂質二重膜におけるウイルスの状態の模式図である。図4(a)に示すように、ウイルスは、付着、半融合、全融合の状態にあると考えられる。
標識したバキュロウイルス添加後の脂質二重膜について光退色後蛍光回復法により拡散測定を行った。
結果を図4に示す。図4のグラフ中、横軸は時間、縦軸はAlexa Fluor 546由来の蛍光強度であり、各溶液における蛍光回復曲線である。
バキュロウイルスの出芽ウイルスは、低pH環境において、膜に融合することが知られている。フォトブリーチング後の蛍光強度の回復割合は、ウイルスを含む緩衝液のpHが4.0又は4.5である場合に最大となった。この回復割合と比較して、緩衝液のpHが5.0である場合の回復割合は低く、緩衝液のpHが5.5である場合の回復割合はさらに低いことが明らかとなった。
すなわち、緩衝液のpHが高くなると、全融合しているウイルスの割合が低くなることが、光退色後蛍光回復法によって評価できることが明らかになった。
本発明により、ウイルス感染能を高精度に評価する技術を提供することができる。
1A…ウイルス感染能評価用基板、1B…ウイルス感染能評価用基板、2…ウイルス、3…カプシド、10…基板本体、11…薄膜層、11a…オーバーハング部、20…井戸構造、21…開口部、30…脂質二重膜

Claims (6)

  1. 基板と、前記基板の一方面上に積層された脂質二重膜と、を備えるウイルス感染能評価用基板。
  2. 前記基板が前記一方面上に開口する井戸構造を更に有し、前記井戸構造の開口部は前記脂質二重膜により封止されている、請求項1に記載のウイルス感染能評価用基板。
  3. 請求項1又は2に記載のウイルス感染能評価用基板の前記脂質二重膜に、蛍光物質で標識されたウイルスを接触させて、その結果、前記ウイルスがその感染能に対応した程度に前記脂質二重膜に融合する工程と、
    前記基板の一部に励起光を照射して前記蛍光物質の蛍光を退色させた後に、前記一部の前記蛍光物質の蛍光強度を測定する工程と、
    前記蛍光物質の前記蛍光を退色させる前の前記一部の前記蛍光物質の蛍光強度に対する、前記蛍光物質の前記蛍光の退色後に前記蛍光を回復させた前記一部の前記蛍光物質の前記蛍光の蛍光強度の割合に基づいて前記ウイルスの感染能を評価する工程と、を含む、ウイルス感染能評価方法。
  4. 請求項2に記載のウイルス感染能評価用基板の脂質二重膜にウイルスを接触させて、その結果、前記ウイルスがその感染能に対応した程度に前記脂質二重膜に融合する工程と、
    前記ウイルスのカプシドを前記ウイルス感染能評価用基板の井戸構造の内部に収容する工程と、
    前記カプシドの内容物を検出し、検出結果を得る工程と、
    前記検出結果に基づいて前記ウイルスの感染能を評価する工程を含む、ウイルス感染能評価方法。
  5. 前記内容物が核酸である、請求項4に記載のウイルス感染能評価方法。
  6. 前記内容物がタンパク質である、請求項4に記載のウイルス感染能評価方法。
JP2019135654A 2019-07-23 2019-07-23 ウイルス感染能評価用基板及びウイルス感染能評価方法 Pending JP2021016372A (ja)

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