本発明に係る自動走行システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
この自動走行システムは、図1に示すように、作業車両としてトラクタ1を適用しているが、トラクタ以外の、乗用田植機、コンバイン、乗用草刈機、ホイールローダ、除雪車等の乗用作業車両、及び、無人草刈機等の無人作業車両に適用することができる。
〔第1実施形態〕
この自動走行システムは、図1及び図2に示すように、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット2、及び、自動走行ユニット2と通信可能に通信設定された携帯通信端末3を備えている。携帯通信端末3には、タッチ操作可能なタッチパネル式の表示部51(例えば、液晶パネル)等を有するタブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォン等を採用することができる。
トラクタ1は、駆動可能な操舵輪として機能する左右の前輪5、及び、駆動可能な左右の後輪6を有する走行機体7が備えられている。走行機体7の前方側には、ボンネット8が配置され、ボンネット8内には、コモンレールシステムを備えた電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)9が備えられている。走行機体7のボンネット8よりも後方側には、搭乗式の運転部を形成するキャビン10が備えられている。
走行機体7の後部には、3点リンク機構11を介して、作業装置の一例であるオフセットモア12が昇降可能かつローリング可能に連結されている。これにより、このトラクタ1は草刈り仕様に構成されている。トラクタ1の後部には、オフセットモア12に代えて、ロータリ耕耘装置、プラウ、ディスクハロー、カルチベータ、サブソイラ、播種装置、散布装置等の各種の作業機を連結することができる。
トラクタ1には、図2に示すように、エンジン9からの動力を変速する電子制御式の変速装置13、左右の前輪5を操舵する全油圧式のパワーステアリング機構14、左右の後輪6を制動する左右のサイドブレーキ(図示せず)、左右のサイドブレーキの油圧操作を可能にする電子制御式のブレーキ操作機構15、オフセットモア12への伝動を断続する作業クラッチ(図示せず)、作業クラッチの油圧操作を可能にする電子制御式のクラッチ操作機構16、オフセットモア12を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動機構17、トラクタ1の自動走行等に関する各種の制御プログラム等を有する車載電子制御ユニット18、トラクタ1の車速を検出する車速センサ19、前輪5の操舵角を検出する舵角センサ20、及び、トラクタ1の現在位置及び現在方位を測定する測位ユニット21等が備えられている。
なお、エンジン9には、電子ガバナを備えた電子制御式のガソリンエンジンを採用してもよい。変速装置13には、油圧機械式無段変速装置(HMT)、静油圧式無段変速装置(HST)、又は、ベルト式無段変速装置等を採用することができる。パワーステアリング機構14には、電動モータを備えた電動式のパワーステアリング機構14等を採用してもよい。
キャビン10の内部には、図1に示すように、パワーステアリング機構14(図2参照)を介した左右の前輪5の手動操舵を可能にするステアリングホイール38、搭乗者用の運転席39、タッチパネル式の表示部、及び、各種の操作具等が備えられている。
図2に示すように、車載電子制御ユニット18は、変速装置13の作動を制御する変速制御部181、左右のサイドブレーキの作動を制御する制動制御部182、オフセットモア12の作動を制御する作業装置制御部183、自動走行時に左右の前輪5の目標操舵角を設定してパワーステアリング機構14に出力する操舵角設定部184、及び、予め生成された自動走行用の目標走行経路P(例えば、図5参照)等を記憶する不揮発性の車載記憶部185等を有している。
図2に示すように、測位ユニット21には、衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)を利用してトラクタ1の現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置22、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサ等を有してトラクタ1の姿勢や方位等を測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)23等が備えられている。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)やRTK−GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)等がある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK−GPSが採用されている。そのため、圃場周辺の既知位置には、図1及び図2に示すように、RTK−GPSによる測位を可能にする基準局4が設置されている。
トラクタ1と基準局4との夫々には、図2に示すように、測位衛星71(図1参照)から送信された電波を受信する測位アンテナ24,61、及び、トラクタ1と基準局4との間における測位情報(補正情報)を含む各種情報の無線通信を可能にする通信モジュール25,62等が備えられている。これにより、衛星航法装置22は、トラクタ側の測位アンテナ24が測位衛星71からの電波を受信して得た測位情報と、基地局側の測位アンテナ61が測位衛星71からの電波を受信して得た測位情報(トラクタ1の現在位置を測定するための補正情報)とに基づいて、トラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。また、測位ユニット21は、衛星航法装置22と慣性計測装置23とを備えることにより、トラクタ1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
トラクタ1に備えられる測位アンテナ24、通信モジュール25、及び、慣性計測装置23は、図1に示すように、アンテナユニット80に収納されている。アンテナユニット80は、キャビン10の前面側の上部位置に配置されている。
図2に示すように、携帯通信端末3には、表示部51等の作動を制御する各種の制御プログラム等を有する端末電子制御ユニット52、及び、トラクタ側の通信モジュール25との間における測位情報を含む各種情報の無線通信を可能にする通信モジュール53等が備えられている。端末電子制御ユニット52は、トラクタ1を自動走行させるための目標走行経路P(例えば、図5参照)を生成する走行経路生成部54、及び、ユーザが入力した各種の入力情報や走行経路生成部54が生成した目標走行経路P等を記憶する不揮発性の端末記憶部55等を有している。
走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成するに当たり、携帯通信端末3の表示部51に表示された目標走行経路設定用の入力案内に従って、運転者や管理者等のユーザ等が作業車両の機種及びオフセットモア12等の作業装置の種類や作業幅等の車体情報を入力しており、入力された車体情報が端末記憶部55に記憶されている。目標走行経路Pの生成対象となる作業領域S(図5参照)を圃場としており、携帯通信端末3の端末電子制御ユニット52は、圃場の形状や位置を含む圃場情報を取得して端末記憶部55に記憶している。
圃場情報の取得について説明すると、ユーザ等が運転してトラクタ1を実際に走行させることで、端末電子制御ユニット52は、測位ユニット21にて取得するトラクタ1の現在位置等から圃場の形状や位置等を特定するための位置情報を取得することができる。端末電子制御ユニット52は、外部の管理装置等に記憶されている地図情報等から圃場の形状や位置を読み取ることで、圃場の位置情報を取得することもできる。端末電子制御ユニット52は、取得した位置情報から圃場の形状及び位置を特定し、その特定した圃場の形状及び位置から特定した作業領域Sを含む圃場情報を取得している。図5では、矩形状の作業領域Sが特定された例を示している。
特定された圃場の形状や位置等を含む圃場情報が端末記憶部55に記憶されると、走行経路生成部54は、端末記憶部55に記憶されている圃場情報や車体情報を用いて、目標走行経路Pを生成する。
図5に示すように、走行経路生成部54は、作業領域S内を中央領域R1と外周領域R2とに区分け設定している。中央領域R1は、作業領域Sの中央部に設定されており、トラクタ1を往復方向に自動走行させて所定の作業(例えば、耕耘等の作業)を行う往復作業領域となっている。外周領域R2は、中央領域R1の周囲に設定されている。走行経路生成部54は、例えば、車体情報に含まれる旋回半径やトラクタ1の前後幅及び左右幅等から、トラクタ1を圃場の畔際で旋回走行させるために必要となる旋回走行用のスペース等を求めている。走行経路生成部54は、中央領域R1の外周に求めたスペース等を確保するように、作業領域S内を中央領域R1と外周領域R2とに区分けしている。
走行経路生成部54は、図5に示すように、車体情報や圃場情報等を用いて、目標走行経路Pを生成している。例えば、目標走行経路Pは、中央領域R1において同じ直進距離を有して作業幅に対応する一定距離をあけて平行に配置設定された直線状の複数の作業経路P1と複数の連結経路P2とを有している。複数の作業経路P1は、トラクタ1を直進走行させながら、所定の作業を行うための経路である。連結経路P2は、所定の作業を行わずに、トラクタ1の走行方向を180度転換させるためのUターン経路であり、作業経路P1の終端と隣接する次の作業経路P1の始端とを連結している。
ちなみに、図5に示す目標走行経路Pは、あくまで一例であり、どのような目標走行経路を設定するかは適宜変更が可能である。例えば、走行経路生成部54は、連結経路P2を生成せずに、作業経路P1のみを生成することもできる。この場合には、ユーザ等が運転してトラクタ1を実際に走行させたときに、図5に示すように、作業の始端地点及び終端地点となる地点Aと地点Bとを登録する。走行経路生成部54は、地点Aと地点Bとを結ぶ直線状の初期直線経路を生成し、その初期直線経路に平行な複数の平行経路を生成することで、初期直線経路及び複数の平行経路を作業経路P1とすることができる。
走行経路生成部54にて生成された目標走行経路Pは、表示部51に表示可能であり、車体情報及び圃場情報等と関連付けた経路情報として端末記憶部55に記憶されている。経路情報には、目標走行経路Pの方位角、及び、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された設定エンジン回転速度や目標走行速度等が含まれている。
このようにして、走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成すると、端末電子制御ユニット52が、携帯通信端末3からトラクタ1に経路情報を転送することで、トラクタ1の車載電子制御ユニット18が、経路情報を取得することができる。車載電子制御ユニット18は、取得した経路情報に基づいて、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。測位ユニット21にて取得するトラクタ1の現在位置については、リアルタイム(例えば、数ミリ秒周期)でトラクタ1から携帯通信端末3に送信されており、携帯通信端末3にてトラクタ1の現在位置を把握している。
経路情報の転送に関しては、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階において、経路情報の全体を端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に一挙に転送することができる。また、例えば、目標走行経路Pを含む経路情報を、情報量の少ない所定距離ごとの複数の経路部分に分割することもできる。この場合には、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階においては、経路情報の初期経路部分のみが端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に転送される。自動走行の開始後は、トラクタ1が情報量等に応じて設定された経路取得地点に達するごとに、その地点に対応する以後の経路部分のみの経路情報が端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に転送するようにしてもよい。
トラクタ1の自動走行を開始する場合には、例えば、ユーザ等がスタート地点にトラクタ1を移動させて、各種の自動走行開始条件が満たされると、携帯通信端末3にて、ユーザが表示部51を操作して自動走行の開始を指示することで、携帯通信端末3は、自動走行の開始指示をトラクタ1に送信する。これにより、トラクタ1では、車載電子制御ユニット18が、自動走行の開始指示を受けることで、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。車載電子制御ユニット18が、衛星測位システムを用いて測位ユニット21により取得されるトラクタ1の測位情報に基づいて、作業領域S内の目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を行う自動走行制御部として構成されている。
自動走行制御には、変速装置13の作動を自動制御する自動変速制御、ブレーキ操作機構15の作動を自動制御する自動制動制御、左右の前輪5を自動操舵する自動操舵制御、及び、オフセットモア12の作動を自動制御する作業用自動制御等が含まれている。
自動変速制御においては、変速制御部181が、目標走行速度を含む目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力と車速センサ19の出力とに基づいて、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された目標走行速度がトラクタ1の車速として得られるように変速装置13の作動を自動制御する。
自動制動制御においては、制動制御部182が、目標走行経路Pと測位ユニット21の出力とに基づいて、目標走行経路Pの経路情報に含まれている制動領域において左右のサイドブレーキが左右の後輪6を適正に制動するようにブレーキ操作機構15の作動を自動制御する。
自動操舵制御においては、トラクタ1が目標走行経路Pを自動走行するように、操舵角設定部184が、目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力とに基づいて左右の前輪5の目標操舵角を求めて設定し、設定した目標操舵角をパワーステアリング機構14に出力する。パワーステアリング機構14が、目標操舵角と舵角センサ20の出力とに基づいて、目標操舵角が左右の前輪5の操舵角として得られるように左右の前輪5を自動操舵する。
作業用自動制御においては、作業装置制御部183が、目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力とに基づいて、トラクタ1が作業経路P1の始端(例えば、図5参照)等の作業開始地点に達するのに伴ってオフセットモア12による所定の作業(例えば草刈作業)が開始され、かつ、トラクタ1が作業経路P1の終端(例えば、図5参照)等の作業終了地点に達するのに伴ってオフセットモア12による所定の作業が停止されるように、クラッチ操作機構16及び昇降駆動機構17の作動を自動制御する。
このようにして、トラクタ1においては、変速装置13、パワーステアリング機構14、ブレーキ操作機構15、クラッチ操作機構16、昇降駆動機構17、車載電子制御ユニット18、車速センサ19、舵角センサ20、測位ユニット21、及び、通信モジュール25等によって自動走行ユニット2が構成されている。
この実施形態では、キャビン10にユーザ等が搭乗せずにトラクタ1を自動走行させるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗した状態でトラクタ1を自動走行させることも可能となっている。よって、キャビン10にユーザ等が搭乗せずに、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗している場合でも、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができる。
キャビン10にユーザ等が搭乗している場合には、車載電子制御ユニット18にてトラクタ1を自動走行させる自動走行状態と、ユーザ等の運転に基づいてトラクタ1を走行させる手動走行状態とに切り替えることができる。よって、自動走行状態にて目標走行経路Pを自動走行している途中に、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができ、逆に、手動走行状態にて走行している途中に、手動走行状態から自動走行状態に切り替えることができる。手動走行状態と自動走行状態との切り替えについては、例えば、運転席39の近傍に、自動走行状態と手動走行状態とに切り替えるための切替操作部を備えることができるとともに、その切替操作部を携帯通信端末3の表示部51に表示させることもできる。また、車載電子制御ユニット18による自動走行制御中に、ユーザがステアリングホイール38を操作すると、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができる。
トラクタ1には、図1及び図2に示すように、トラクタ1(走行機体7)の周囲における障害物を検出して、障害物との衝突を回避するための障害物検出システム100が備えられている。障害物検出システム100は、レーザを用いて測定対象物までの距離を3次元で測定可能な複数のライダーセンサ101,102と、超音波を用いて測定対象物までの距離を測定可能な複数のソナーを有するソナーユニット103,104と、トラクタ1(走行機体7)の周囲を撮像するカメラ105,106.107,108と、障害物検出部110と、衝突回避制御部111とが備えられている。
図2に示すように、障害物検出システム100は、ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106等の複数の障害物センサDを備えている、複数の障害物センサDの夫々にて検出する障害物は、物体や人等としている。ライダーセンサ101,102は、トラクタ1の前方側を測定対象とする前ライダーセンサ101と、トラクタ1の後方側を測定対象とする後ライダーセンサ102とが備えられている。ソナーユニット103,104は、トラクタ1の右側を測定対象とする右側のソナーユニット103と、トラクタ1の左側を測定対象とする左側のソナーユニット104とが備えられている。カメラ105,106,107,108は、トラクタ1の前方側を測定対象とする前カメラ105と、トラクタ1の後方側を測定対象とする後カメラ106と、トラクタ1の右側を測定対象とする右カメラ107と、トラクタ1の左側を測定対象とする左カメラ108とが備えられている。
障害物検出部110は、ライダーセンサ101,102,ソナーユニット103,104及びカメラ105,106,107,108の測定情報に基づく障害物検出処理をリアルタイムで繰り返し行い、検出範囲C(図7参照)内での物体や人等の障害物を適切に検出している。衝突回避制御部111は、リアルタイムで検出される障害物との衝突を回避するための衝突回避制御を行うようにしている。
障害物検出部110及び衝突回避制御部111は、車載電子制御ユニット18に備えられている。車載電子制御ユニット18は、コモンレールシステムに含まれたエンジン用の電子制御ユニット、ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106,107,108等にCAN(Controller Area Network)を介して通信可能に接続されている。
ライダーセンサ101,102は、レーザ光(例えば、パルス状の近赤外レーザ光)が測定対象物に当たって跳ね返ってくるまでの往復時間から測定対象物までの距離を測定している(Time Of Flight)。ライダーセンサ101,102は、レーザ光を上下方向及び左右方向に高速で走査し、各走査角における測定対象物までの距離を順次測定していくことで、測定対象物までの距離を3次元で測定している。ライダーセンサ101,102は、測定範囲内における測定対象物までの距離をリアルタイムで繰り返し測定している。ライダーセンサ101,102は、測定情報から3次元画像を生成して外部に出力可能に構成されている。ライダーセンサ101,102の測定情報から生成された3次元画像は、トラクタ1の表示部や携帯通信端末3の表示部51等の表示装置に表示させて、ユーザ等に障害物の有無を視認させることができる。ちなみに、3次元画像では、例えば、色等を用いて遠近方向での距離を示すことができる。
前ライダーセンサ101は、図1及び図3に示すように、キャビン10の前面側の上部位置に配置されたアンテナユニット80の底部に取り付けられている。アンテナユニット80は、図3に示すように、走行機体7の左右方向においてキャビン10の全長に亘るパイプ状のアンテナユニット支持ステー81に取り付けられている。アンテナユニット80は、走行機体7の左右方向においてキャビン10の中央部に相当する位置に配置されている。前ライダーセンサ101は、前方側部位ほど下方側に位置する前下がり姿勢にてアンテナユニット80に取り付けられ、アンテナユニット80に一体的に備えられている。前ライダーセンサ101は、アンテナユニット80と同様に、走行機体7の左右方向においてキャビン10の中央部に相当する位置に配置されている。
前カメラ105は、前ライダーセンサ101の上方側に配置されている。前カメラ105は、前ライダーセンサ101と同様に、前方側部位ほど下方側に位置する前下がり姿勢にて取り付けられている。前カメラ105は、走行機体7の前方側を斜め上方側から見下ろす状態で撮像するように備えられている。前カメラ105にて撮像した撮像画像を外部に出力可能に構成されている。前カメラ105の撮像画像は、トラクタ1の表示部や携帯通信端末3の表示部51等の表示装置に表示させて、ユーザ等にトラクタ1の周囲の状況を視認させることができる。前ライダーセンサ101及び前カメラ105は、上下方向でルーフ35に相当する位置に配置されている。
後ライダーセンサ102は、図4に示すように、走行機体7の左右方向においてキャビン10の全長に亘るパイプ状のセンサ支持ステー82に取り付けられている。後ライダーセンサ102は、走行機体7の左右方向においてキャビン10の中央部に相当する位置に配置されている。後ライダーセンサ102は、後方側部位ほど下方側に位置する後下がり姿勢にてセンサ支持ステー82に取り付けられている。
後カメラ106は、後ライダーセンサ102の上方側に配置されている。後カメラ106は、後ライダーセンサ102と同様に、後方側部位ほど下方側に位置する後下がり姿勢にて取り付けられている。後カメラ106は、走行機体7の後方側を斜め上方側から見下ろす状態で撮像するように備えられている。後カメラ106にて撮像した撮像画像を外部に出力可能に構成されている。後カメラ106の撮像画像は、トラクタ1の表示部や携帯通信端末3の表示部51等の表示装置に表示させて、ユーザ等にトラクタ1の周囲の状況を視認させることができる。後ライダーセンサ102及び後カメラ106は、上下方向でルーフ35に相当する位置に配置されている。
右カメラ107及び左カメラ108について、図示は省略するが、前カメラ105及び後カメラ106と同様に、支持ステー等を介して、斜め上方側から見下ろす状態で撮像するように備えられている。右カメラ107及び左カメラ108も、上下方向でルーフ35に相当する位置に配置させることができる。右カメラ107及び左カメラ108にて撮像した撮像画像も、外部に出力可能に構成されている。右カメラ107及び左カメラ108の撮像画像は、トラクタ1の表示部や携帯通信端末3の表示部51等の表示装置に表示させて、ユーザ等にトラクタ1の周囲の状況を視認させることができる。
ソナーユニット103,104は、投射した超音波が測定対象物に当たって跳ね返ってくるまでの往復時間から測定対象物までの距離を測定するように構成されている。ソナーユニット103,104として、トラクタ1(走行機体7)の右側を測定範囲とする右ソナーユニット103と、トラクタ1(走行機体7)の左側を測定範囲とする左ソナーユニット104(図1参照)とが備えられている。
障害物検出システム100は、トラクタ1の周囲における所定の検出範囲C(図7参照)内で障害物を検出するために、ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106,107,108等の複数の障害物センサDが備えられている。複数の障害物センサDの測定範囲について、図6に基づいて説明する。図6は、複数の障害物センサDの測定範囲を示す平面図である。
図6に示すように、トラクタ1の前方側には、前ライダーセンサ101の測定範囲C1と前カメラ105の測定範囲C2の一部とが重複する状態で備えられている。測定範囲C1及び測定範囲C2は、いずれも左右対称な範囲に設定されている。測定範囲C2は、トラクタ1から前方側への距離が測定範囲C1よりも大きな範囲であり、且つ、左右方向で測定範囲C1よりも所定角度だけ大きな範囲に設定されている。
トラクタ1の後方側には、トラクタ1の前方側と同様に、後ライダーセンサ102の測定範囲C3と後カメラ106の測定範囲C4の一部とが重複する状態で備えられている。測定範囲C3及び測定範囲C4は、いずれも左右対称な範囲に設定されている。測定範囲C4は、トラクタ1から後方側への距離が測定範囲C3よりも大きな範囲であり、且つ、左右方向で測定範囲C3よりも所定角度だけ大きな範囲に設定されている。
トラクタ1の右側には、右側のソナーユニット103の測定範囲C5と右カメラ107の測定範囲C6の一部とが重複する状態で備えられている。測定範囲C5及び測定範囲C6は、いずれも前後方向に対称な範囲に設定されている。測定範囲C6が、トラクタ1から右側への距離が測定範囲C5よりも大きな範囲であり、且つ、前後方向で測定範囲C5よりも所定角度だけ大きな範囲に設定されている。
トラクタ1の左側には、トラクタ1の右側と同様に、左側のソナーユニット104の測定範囲C7と左カメラ108の測定範囲C8の一部とが重複する状態で備えられている。測定範囲C7及び測定範囲C8は、いずれも前後方向に対称な範囲に設定されている。測定範囲C8が、トラクタ1から左側への距離が測定範囲C7よりも大きな範囲であり、且つ、前後方向で測定範囲C7よりも所定角度だけ大きな範囲に設定されている。
このように、図6に示すものでは、トラクタ1の前方側、後方側、右側、左側のどの方向でも、2つの障害物センサDの測定範囲を重複させる状態で備えられているが、障害物センサDの測定範囲が重複しない状態で複数の障害物センサDを備えることもできる。ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106,107,108等の複数の障害物センサDの測定範囲をどのように設定するかは適宜変更が可能である。
障害物検出部110による障害物検出処理について説明する。
障害物検出部110は、ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106,107,108の測定情報に基づいて、トラクタ1の周囲における所定の検出範囲内において、障害物の存否及び障害物の位置を検出する障害物検出処理を行うように構成されている。
トラクタ1の前方側について、障害物検出部110が、障害物検出処理として、例えば、前カメラ105の測定情報に基づいて障害物の存否を検出し、障害物の存在を検出すると、前ライダーセンサ101の測定情報に基づいて、その障害物の位置を検出している。ちなみに、前カメラ105の測定範囲C2だけの範囲に障害物が存在する場合には、障害物検出部110が、前カメラ105の測定情報に基づいて、障害物の存否、及び、障害物の位置を検出している。このように、障害物検出部110は、トラクタ1の前方側における障害物検出処理として、前ライダーセンサ101の測定情報及び前カメラ105の測定情報に基づいて、障害物の存在を検出するとともに、その障害物の位置を検出している。トラクタ1の後方側についても、障害物検出部110は、トラクタ1の後方側における障害物検出処理として、後ライダーセンサ102の測定情報及び後カメラ106の測定情報に基づいて、障害物の存在を検出するとともに、その障害物の位置を検出している。
また、トラクタ1の右側については、障害物検出部110が、障害物検出処理として、例えば、右カメラ107の測定情報に基づいて障害物の存否を検出し、障害物の存在を検出すると、右ソナーユニット103の測定情報に基づいて、その障害物の位置を検出している。ちなみに、右カメラ107の測定範囲C6だけの範囲に障害物が存在する場合には、障害物検出部110が、右カメラ107の測定情報に基づいて、障害物の存否、及び、障害物の位置を検出している。このように、障害物検出部110は、トラクタ1の右側における障害物検出処理として、右ソナーユニット103の測定情報及び右カメラ107の測定情報に基づいて、障害物の存在を検出するとともに、その障害物の位置を検出している。トラクタ1の左側についても、障害物検出部110は、トラクタ1の左側における障害物検出処理として、左ソナーユニット104の測定情報及び左カメラ108の測定情報に基づいて、障害物の存在を検出するとともに、その障害物の位置を検出している。
障害物検出部110にて障害物を検出するに当たり、障害物検出部110は、ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106,107,1089等の複数の障害物センサDの夫々について、作動状態と非作動状態とに切替自在に構成されている。障害物検出部110は、複数の障害物センサDの全てを作動状態に切り替えるのではなく、図7に示すように、トラクタ1の走行状態及びオフセットモア12等の作業装置の状況等に応じて、複数の障害物センサDの一部を作動状態に切り替え、残りの一部を非作動状態に切り替えている。図7では、作動状態の障害物センサDの測定範囲を示している。
障害物検出部110は、複数の障害物センサDの夫々を作動状態と非作動状態とに切り替えることで、トラクタ1の走行状態及びオフセットモア12等の作業装置の状況等に応じて、システム全体として障害物を検出する検出範囲Cを変更自在としている。障害物検出部110は、複数の障害物センサDの一部を非作動状態に切り替えることで、障害物検出部110の処理負担を軽減して、処理スピードの向上を図り、精度良く且つ迅速に障害物を検出するようにしている。
トラクタ1が前進走行する場合には、図7に示すように、障害物検出部110が、前ライダーセンサ101及び前カメラ105を作動状態に切り替え、且つ、後ライダーセンサ102及び後カメラ106を非作動状態に切り替えている。図示は省略するが、逆に、トラクタ1が後進走行する場合には、障害物検出部110が、後ライダーセンサ102及び後カメラ106を作動状態に切り替え、且つ、前ライダーセンサ101及び前カメラ105を非作動状態に切り替えている。
作業装置であるオフセットモア12がトラクタ1よりも左側にオフセットしている場合には、図7に示すように、障害物検出部110が、左ソナーユニット104、右ソナーユニット103及び左カメラ108を作動状態に切り替え、且つ、右カメラ107を非作動状態に切り替えている。この場合に、障害物検出部110は、右ソナーユニット103を作動状態に切り替えることで、トラクタ1の右側でトラクタ1の近い範囲だけは障害物を検出しているが、右ソナーユニット103を非作動状態に切り替えることもできる。
逆に、作業装置であるオフセットモア12がトラクタ1よりも右側にオフセットしている場合には、図示は省略するが、障害物検出部110が、右ソナーユニット103、左ソナーユニット104及び右カメラ107を作動状態に切り替え、且つ、左カメラ108を非作動状態に切り替えている。この場合に、障害物検出部110は、左ソナーユニット104を作動状態に切り替えることで、トラクタ1の左側でトラクタ1の近い範囲だけは障害物を検出しているが、左ソナーユニット104を非作動状態に切り替えることもできる。
障害物検出部110は、トラクタ1の操縦部に備えられる前後進切替レバーの操作状態に基づいて、トラクタ1が前進走行であるか又は後進走行であるかを判定している。トラクタ1を自動走行させるための目標走行経路Pを生成する際に、作業装置の種類や作業幅等の作業装置に関する情報を含む車体情報が入力されているので、障害物検出部110は、入力された車体情報に基づいて、オフセットモア12等の作業装置が左右方向でトラクタ1に対してどちらに位置するかを判定している。よって、障害物検出部110は、前後進切替レバーの操作状態に基づいてトラクタ1の走行状態を取得し、車体情報に基づいて作業装置の状況を取得しており、取得したトラクタ1の走行状態及び作業装置の状況に応じて、複数の障害物センサDの夫々を作動状態と非作動状態とに切り替えている。
このように、障害物検出部110が複数の障害物センサDの夫々を作動状態と非作動状態とに切り替えることで、トラクタ1の走行状態及びオフセットモア12等の作業装置の状況等に応じて、システム全体として障害物を検出する検出範囲Cを変更設定している。図7に示すものは、トラクタ1が前進走行する状態で、且つ、オフセットモア12がトラクタ1よりも左側にオフセットしている状態におけるシステム全体の検出範囲Cを示している。
図7に示すものでは、障害物検出部110が複数の障害物センサDの夫々を作動状態と非作動状態とに切り替えることで、障害物を検出する検出範囲Cを変更しているが、障害物センサD自体の測定範囲を変更することで、システム全体として障害物を検出する検出範囲Cを変更することもできる。例えば、図6において、前ライダーセンサ101の測定範囲C1について、トラクタ1から測定範囲C1の前端部までの距離や左右方向における左右両端部までの角度を変更することで、前ライダーセンサ101の測定範囲C1を変更することができる。
トラクタ1が前進走行する場合には、例えば、障害物検出部110が、トラクタ1からの距離や左右方向での角度について、前ライダーセンサ101の測定範囲C1及び前カメラ105の測定範囲C2の方が、後ライダーセンサ102の測定範囲C3及び後カメラ106の測定範囲C4よりも大きくなるように設定することができる。逆に、トラクタ1が後進走行する場合には、例えば、障害物検出部110が、トラクタ1からの距離や左右方向での角度について、後ライダーセンサ102の測定範囲C3及び後カメラ106の測定範囲C4の方が、前ライダーセンサ101の測定範囲C1及び前カメラ105の測定範囲C2よりも大きくなるように設定することができる。
また、作業装置であるオフセットモア12がトラクタ1よりも左側にオフセットしている場合には、例えば、障害物検出部110が、トラクタ1からの距離や前後方向での角度について、左カメラ108の測定範囲C8の方が、右カメラ107の測定範囲C6よりも大きくなるように設定することができる。逆に、作業装置であるオフセットモア12がトラクタ1よりも右側にオフセットしている場合には、例えば、障害物検出部110が、トラクタ1からの距離や前後方向での角度について、右カメラ107の測定範囲C6の方が、左カメラ108の測定範囲C8よりも大きくなるように設定することができる。
このように、障害物検出部110は、トラクタ1の走行状態及びオフセットモア12等の作業装置の状況等に応じて、障害物センサDの測定範囲自体を変更することで、システム全体として障害物を検出する検出範囲Cを変更設定することもできる。
障害物センサDの測定範囲自体を変更するに当たり、例えば、トラクタ1に対して近い位置に存在する作業装置であれば、その作業装置と障害物との衝突を回避するためには、トラクタ1から近い位置までを検出範囲とすればよい。それに対して、トラクタ1に対して離れた位置に存在する作業装置であれば、その作業装置と障害物との衝突を回避するためには、トラクタ1から離れた位置までを検出範囲とすることが必要となる。そこで、障害物検出部110は、トラクタ1から作業装置までの距離に応じて、障害物センサDの測定範囲について、トラクタ1からの距離を変更することで、システム全体として障害物を検出する検出範囲Cを変更設定することができる。
衝突回避制御部111による衝突回避制御について説明する。
衝突回避制御部111は、障害物検出部110にて障害物を検出すると、トラクタ1を減速させる又はトラクタ1を走行停止させる衝突回避制御を行うように構成されている。例えば、検出範囲C(図7参照)内において、障害物の存在位置までのトラクタ1からの距離が所定距離以上であると、衝突回避制御部111は、衝突回避制御として、トラクタ1を減速させる。また、検出範囲C内において、障害物の存在位置までのトラクタ1からの距離が所定距離未満であると、衝突回避制御部111は、衝突回避制御として、トラクタ1を走行停止させる。この場合に、所定距離について、トラクタ1の前方側用の所定距離とトラクタ1の後方側用の所定距離とを異なる距離としたり、トラクタ1の走行速度に応じて所定距離を変更設定することもできる。所定距離については、各種の条件に応じて、どのような距離を設定するかは適宜変更可能である。
衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、トラクタ1を減速させる又はトラクタ1を走行停止させるだけでなく、報知ブザーや報知ランプ等の報知装置26を作動させて、障害物が存在することを報知している。衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、通信モジュール25,53を用いて、トラクタ1から携帯通信端末3に通信して表示部51に障害物の存在を表示させることで、障害物が存在することを報知可能としている。
障害物検出システム100の動作について、図8のフローチャートに基づいて説明する。
障害物検出部110は、前後進切替レバーの操作状態等から、トラクタ1が前進走行であるか又は後進走行であるかを判定して、トラクタ1の走行状態を取得している(ステップ#1)。障害物検出部110は、作業装置の種類や作業幅等の作業装置に関する情報を含む車体情報から、オフセットモア12等の作業装置が左右方向でトラクタ1に対してどちらに位置するかや、トラクタ1に対してどのような距離に作業装置が位置しているかの作業装置の位置情報等の作業装置の状況を取得している(ステップ#2)。
障害物検出部110は、トラクタ1の走行状態及びオフセットモア12等の作業装置の状況に応じて、システム全体として障害物を検出する検出範囲Cを設定している(ステップ#3)。例えば、図7に示すように、トラクタ1が前進走行であり、且つ、オフセットモア12がトラクタ1の左側に位置する場合には、障害物検出部110が、前ライダーセンサ101、前カメラ105、左ソナーユニット104、右ソナーユニット103及び左カメラ108を作動状態に切り替え、且つ、後ライダーセンサ102、後カメラ106及び右カメラ107を非作動状態に切り替えて、検出範囲Cを設定している。
障害物検出部110は、設定した検出範囲C内において、障害物の存否、及び、障害物の位置を検出する障害物検出処理を行う(ステップ#4)。障害物検出部110が障害物検出処理により障害物を検出した場合には、衝突回避制御部111が衝突回避制御を行う(ステップ#5のYesの場合、ステップ#6)。
このようにして、障害物検出システム100は、トラクタ1の自動走行中に、ステップ#1〜ステップ#6の動作を繰り返し行い、トラクタ1及びオフセットモア12等の作業装置と障害物との衝突を回避しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させている。
携帯通信端末3では、トラクタ1を自動走行させる際等に、図9〜図11に示すように、作業領域Sにおけるトラクタ1の位置情報、及び、障害物検出システム100において障害物を検出する検出範囲Cを表示部51に表示させている。これにより、トラクタ1の自動走行中に、ユーザ等が、トラクタ1の走行状況や障害物の検出範囲Cを把握することができる。
トラクタ1の位置情報等の表示については、携帯通信端末3の表示部51だけでなく、トラクタ1の表示部や外部の管理装置の表示部にも表示させることができる。トラクタ1の位置情報等の表示を行うための構成については、同様であるので、以下、携帯通信端末3の表示部51に表示させる場合について説明する。
携帯通信端末3には、図2に示すように、トラクタ1の位置情報を取得する作業車両位置情報取得部56と、障害物検出システム100における障害物を検出する検出範囲Cの位置情報を取得する検出範囲位置情報取得部57と、障害物検出システム100にて障害物を検出した場合にその障害物の位置情報を取得する障害物位置情報取得部58と、表示部51における表示態様を制御する表示制御部59とが備えられている。
トラクタ1の測位ユニット21は、衛星測位システムを用いてトラクタ1の位置情報を取得しているので、作業車両位置情報取得部56は、トラクタ1側の通信モジュール25と携帯通信端末3側の通信モジュール53との間での無線通信を介して、トラクタ1の位置情報を取得している。
トラクタ1の障害物検出システム100における障害物検出部110は、トラクタ1の走行状態及びオフセットモア12等の作業装置の状況等に応じて、システム全体として障害物を検出する検出範囲Cを設定しているので、トラクタ1に対する検出範囲Cの位置情報を把握している。検出範囲位置情報取得部57は、トラクタ1側の通信モジュール25と携帯通信端末3側の通信モジュール53との間での無線通信を介して、トラクタ1に対する検出範囲Cの位置情報を取得している。
トラクタ1の障害物検出システム100における障害物検出部110は、障害物検出処理を実行することで、障害物を検出した場合に、トラクタ1に対する障害物の位置情報を把握している。障害物位置情報取得部58は、トラクタ1側の通信モジュール25と携帯通信端末3側の通信モジュール53との間での無線通信を介して、トラクタ1に対する障害物の位置情報を取得している。
表示制御部59は、作業車両位置情報取得部56にて取得するトラクタ1の位置情報に基づいてトラクタ1の走行位置(トラクタ1の現在位置)を特定しており、検出範囲位置情報取得部57にて取得するトラクタ1に対する検出範囲Cの位置情報に基づいて、トラクタ1の走行位置に対する検出範囲Cの位置を特定している。表示制御部59は、図9に示すように、地図上において、特定したトラクタ1の走行位置と検出範囲Cとを表示部51に表示させている。
表示制御部59は、複数の障害物センサDについて、作動状態の障害物センサDにおける測定範囲C1,C2,C5,C7,C8(図9中、グレーにて示す測定範囲)と非作動状態の障害物センサDにおける測定範囲C3,C4,C6(図9中、白にて示す測定範囲)とを異なる表示態様にて表示させている。異なる表示態様としては、例えば、表示させる色を変える等、各種の表示形態を異ならせることができる。これにより、表示部51には、複数の障害物センサDにおける測定範囲C1〜C8の全てを表示させながら、作動状態の障害物センサDの測定範囲である検出範囲Cと、非作動状態の障害物センサDの測定範囲とを識別可能としている。よって、ユーザ等は、障害物を検出する検出範囲Cがどのような範囲となっているのかだけでなく、非作動状態となっている障害物センサDの測定範囲がどのような範囲となっているかも容易に認識することができる。
図9に示すものでは、表示制御部59が、作業領域S内における地図上にて、トラクタ1の走行位置及び検出範囲Cとを表示させているので、トラクタ1の走行位置に対して、作業領域S内に生成されている作業経路P1を重畳表示させている。
図10に示すように、障害物検出部110にて検出範囲C内に障害物を検出した場合には、表示制御部59が、作業車両位置情報取得部56にて取得するトラクタ1の位置情報に基づいてトラクタ1の走行位置(トラクタ1の現在位置)を特定しており、障害物位置情報取得部58にて取得するトラクタ1に対する障害物の位置情報に基づいて、検出した障害物の位置(図10中、「×」にて示す位置)を表示部51に表示させている。表示制御部59は、障害物の位置情報を表示させるのに加えて、作動状態の障害物センサDのうち、障害物を検出した検出状態の障害物センサDにおける測定範囲C1,C2(図10中、濃いグレーにて示す範囲)と障害物を検出していない非検出状態の障害物センサDにおける測定範囲C5,C7,C8(図10中、薄いグレーにて示す範囲)とを異なる表示態様にて表示させている。これにより、ユーザ等は、どの範囲が検出範囲Cであり、どの範囲が非作動状態の障害物センサDの測定範囲かを認識できるとともに、検出範囲Cにおいて、どの範囲にて障害物を検出したのかをも容易に認識することができる。
トラクタ1の自動走行中には、図9に示すように、表示制御部59が、トラクタ1の走行位置と検出範囲C(作動状態の障害物センサDの測定範囲)の位置とを表示させるだけではない。図11に示すように、作動状態の障害物センサDの測定範囲C1を表示部51に表示させる際に、作業領域S内の領域内範囲C1aと作業領域外Tの領域外範囲C1bとを異なる表示態様にて表示させている。異なる表示態様としては、例えば、表示させる色を変える等、各種の表示形態を異ならせることができる。ちなみに、図11では、領域内範囲C1aと領域外範囲C1bとを分かり易くするために、カメラ105,106,107,108の測定範囲C2,C4,C6,C8を省略して図示している。
領域内範囲C1aと領域外範囲C1bとを表示させるために、図2に示すように、携帯通信端末3には、作業領域Sの位置情報を取得する作業領域位置情報取得部60が備えられている。トラクタ1を自動走行させるための目標走行経路Pを生成する際に、作業領域S(圃場)の形状や位置等を圃場情報として取得しているので、作業領域位置情報取得部60は、その圃場情報から、作業領域Sの位置情報を取得している。表示制御部59は、作業領域位置情報取得部60にて取得する作業領域Sの位置情報から、作業領域Sの外端部の位置を特定し、図11に示すように、その作業領域Sの外端部の位置を基準にして測定範囲C1を領域内範囲C1aと領域外範囲C1bとを区分けして表示させている。
図11では、トラクタ1が前進走行しているので、前ライダーセンサ101が作動状態となっており、表示制御部59は、前ライダーセンサ101の測定範囲C1において、域領域内範囲C1a(グレーにて示す範囲)と領域外範囲C1b(白にて示す範囲)とに異なる表示態様にて表示させている。
作業領域位置情報取得部60は、作業領域Sの位置情報を取得するので、トラクタ1側の通信モジュール25と携帯通信端末3側の通信モジュール53との間での無線通信を介して、障害物検出システム100が、作業領域Sの位置情報を取得することができる。よって、障害物検出部110は、作動状態の障害物センサDの測定範囲C1において、領域外範囲C1bを検出範囲Cから外す等して、領域外範囲C1bにて障害物を検出しても、衝突回避制御部111が衝突回避制御を実行しない非実行状態としている。
表示制御部59が表示部51にトラクタ1の走行位置等を表示させる場合の動作について、図12のフローチャートに基づいて説明する。
作業車両位置情報取得部56がトラクタ1の位置情報を取得し、検出範囲位置情報取得部57が検出範囲Cの位置情報を取得して、トラクタ1及び検出範囲Cの位置情報を取得する(ステップ#11)。
表示制御部59は、作業車両位置情報取得部56にて取得したトラクタ1の位置情報、及び、検出範囲位置情報取得部57にて取得した検出範囲Cの位置情報に基づいて、図9に示すように、作動状態の障害物センサDの測定範囲である検出範囲Cと非作動状態の障害物センサDの測定範囲とを異なる表示態様にて表示させながら、トラクタ1の走行位置及び複数の障害物センサDの測定範囲C1〜C8を表示させる表示処理を行っている(ステップ#12)。
障害物位置情報取得部58が障害物位置情報を取得した場合には、表示制御部59が、図10に示すように、障害物位置情報取得部58にて取得した障害物位置情報に基づいて、障害物の位置(図10中、「×」にて示す位置)を表示させるとともに、検出状態の障害物センサDにおける測定範囲C1,C2(図10中、濃いグレーにて示す範囲)と非検出状態の障害物センサDにおける測定範囲C5,C7,C8(図10中、薄いグレーにて示す範囲)とを異なる表示態様にて表示させる障害物の位置表示を行っている(ステップ#13のYesの場合、ステップ#14)。
表示制御部59は、作業領域位置情報取得部60にて取得する作業領域Sの位置情報から、作動状態の障害物センサDの測定範囲に作業領域外Tが含まれるか否かを判定している(ステップ#15)。作動状態の障害物センサDの測定範囲に作業領域外Tが含まれている場合には、表示制御部59が、図11に示すように、作業領域位置情報取得部60にて取得した作業領域Sの位置情報に基づいて、作動状態の障害物センサDの測定範囲C1において、域領域内範囲C1a(グレーにて示す範囲)と領域外範囲C1b(白にて示す範囲)とに異なる表示態様にて表示させている(ステップ#16)。
このようにして、ステップ#11〜ステップ#16の動作を繰り返し行い、トラクタ1の自動走行中に、トラクタ1の走行位置だけでなく、複数の障害物センサDの測定範囲C1〜C8、及び、障害物の位置を表示部51に表示させて、それらをユーザ等が容易に認識できるようにしている。
〔第2実施形態〕
この第2実施形態は、第1実施形態における障害物検出システム100についての別実施形態であり、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の点については説明を省略する。
第1実施形態では、障害物検出部110が、トラクタ1に連結されるオフセットモア12等の作業装置に応じて、障害物を検出する検出範囲Cを変更自在に構成されている。これに代えて、第2実施形態では、衝突回避制御部111は、障害物検出部110にて障害物を検出しても、トラクタ1に連結されるオフセットモア12等の作業装置に応じて、衝突回避制御を実行する実行状態と衝突回避制御を実行しない非実行状態とに切替自在に構成されている。
第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、障害物検出部110が、複数の障害物センサDの全てを作動状態としており、図6に示すように、複数の障害物センサDの全ての測定範囲C1〜C8において、障害物を検出している。これにより、トラクタ1の前方側、後方側、右側、左側のどの方向に障害物が存在しても、障害物検出部110が、その障害物を検出している。
しかしながら、例えば、トラクタ1が前進走行している場合には、トラクタ1の後方側にて障害物を検出しても、その障害物に対してトラクタ1やオフセットモア12等の作業装置が衝突することがない。また、トラクタ1の左側にオフセットモア12等の作業装置が位置している場合には、トラクタ1の右側に障害物を検出しても、その障害物と作業装置が衝突することがない。
そこで、衝突回避制御部111は、障害物検出部110にて障害物を検出しても、トラクタ1の走行状態及びオフセットモア12等の作業装置の状況等に応じて、障害物との衝突の可能性があるか否かを判定し、その判定結果に基づいて、衝突回避制御を実行する実行状態と衝突回避制御を実行しない非実行状態とに切り替えている。
例えば、トラクタ1が前進走行している場合には、図6に示すように、複数の障害物センサDの測定範囲C1〜C8において、トラクタ1の前方側の測定範囲C1,C2にて障害物を検出すると、衝突回避制御部111が、衝突回避制御を実行する実行状態に切り替えて、衝突回避制御を行い、トラクタ1を減速又は走行停止させる等の処理を行う。それに対して、トラクタ1の後方側の測定範囲C3,C4にて障害物を検出しても、衝突回避制御部111が、衝突回避制御を実行しない非実行状態に切り替えて、衝突回避制御を行わない。
また、トラクタ1の左側にオフセットモア12等の作業装置が位置している場合(図7参照)には、図6に示すように、複数の障害物センサDの測定範囲C1〜C8において、トラクタ1の左側の測定範囲C7,C8にて障害物を検出すると、衝突回避制御部111が、衝突回避制御を実行する実行状態に切り替えて、衝突回避制御を行い、トラクタ1を減速又は走行停止させる等の処理を行う。それに対して、トラクタ1の右側の測定範囲C6にて障害物を検出しても、衝突回避制御部111が、衝突回避制御を実行しない非実行状態に切り替えて、衝突回避制御を行わない。
よって、例えば、図7に示すように、トラクタ1の左側にオフセットモア12等の作業装置が位置している状態において、トラクタ1が前進走行している場合には、複数の障害物センサDの測定範囲C1〜C8において、トラクタ1の前方側の測定範囲C1,C2、トラクタ1の右側の測定範囲C5、及び、トラクタ1の左側の測定範囲C7,C8にて障害物を検出すると、衝突回避制御部111が、衝突回避制御を実行する実行状態に切り替えている。それに対して、トラクタ1の後方側の測定範囲C3,C4、及び、トラクタ1の右側の測定範囲C6にて障害物を検出しても、衝突回避制御部111が、衝突回避制御を実行しない非実行状態に切り替えている。このとき、トラクタ1の右側において、トラクタ1に近い範囲である測定範囲C5だけ、衝突回避制御部111が衝突回避制御を実行する実行状態に切り替えているが、測定範囲C5にて障害物を検出しても、衝突回避制御部111が衝突回避制御を実行しない非実行状態に切り替えることもできる。
このようにして、障害物検出部110が複数の障害物センサDの全ての測定範囲C1〜C8にて障害物を検出している状態において、衝突回避制御部111は、障害物を検出しても、一律に衝突回避制御を実行するのではなく、トラクタ1の走行状態及びオフセットモア12等の作業装置の状況、並びに、障害物をどの範囲で検出したかによって、衝突回避制御を実行する状態と衝突回避制御を実行しない非実行状態とに切り替えている。
衝突回避制御を実行する実行状態と衝突回避制御を実行しない非実行状態とに切り替えるに当たり、上述の如く、衝突回避制御部111は、障害物検出部110にて障害物を検出すると、トラクタ1の走行状態及びオフセットモア12等の作業装置の状況等に応じて、障害物との衝突の可能性があるか否かを判定し、その判定結果に基づいて実行状態と非実行状態とに切り替えている。
これに代えて、障害物検出部110にて障害物を検出する前のタイミングにおいて、衝突回避制御部111は、トラクタ1の走行状態及びオフセットモア12等の作業装置の状況等に応じて、複数の障害物センサDの測定範囲を実行状態用の測定範囲と非実行状態用の測定範囲とに予め区分け設定しておく。障害物検出部110にて障害物を検出すると、衝突回避制御部111は、検出した障害物の位置が実行状態用の測定範囲内であれば、実行状態に切り替え、検出した障害物の位置が非実行状態用の測定範囲内であれば、非実行状態に切り替えることができる。
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)作業車両の構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両は、エンジン9と走行用の電動モータとを備えるハイブリット仕様に構成されていてもよく、また、エンジン9に代えて走行用の電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、走行部として、左右の後輪6に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、左右の後輪6が操舵輪として機能する後輪ステアリング仕様に構成されていてもよい。
(2)上記実施形態では、走行経路生成部54、作業車両位置情報取得部56、検出範囲位置情報取得部57、障害物位置情報取得部58、表示制御部59、作業領域位置情報取得部60等を携帯通信端末3に備えているが、トラクタ1(作業車両)や外部の管理装置に備えることもできる。
例えば、外部の監視センターに備えられた管理装置に表示制御部59を備え、監視センターに備えられたモニター等の表示装置の表示状態を表示制御部59が制御することができる。これにより、監視センターのモニターには、作業車両の位置情報、及び、複数の障害物センサのうち、作動状態である障害物センサの測定範囲等を表示させることができるので、監視センターにて作業車両の走行状況や障害物センサの測定範囲を監視することができる。
(3)上記実施形態では、障害物センサDとして、ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106,107,108が備えられているが、例えば、右カメラ107及び左カメラ108に代えて、トラクタ1から遠方の障害物を測定可能なミリ波レーダー等の遠距離測定装置を備えることもでき、障害物センサDとして、どのようなセンサを備えるかは適宜変更が可能である。