JP2021015244A - 光吸収性組成物、光吸収膜、及び光学フィルタ - Google Patents

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【課題】所望の光学特性を有する光吸収膜又は光学フィルタを提供するのに有利な技術を提供する。【解決手段】ホスホン酸と、銅成分とによって形成された光吸収剤を含有している吸収性組成物を硬化させて得られる光吸収膜の、波長400nmにおける透過率T400、波長550nmにおける透過率T550、及び波長800nmにおける透過率T800は、4≦T550/T400及び8≦T550/T800の条件を満たす、光吸収性組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、光吸収性組成物、光吸収膜、及び光学フィルタに関する。
CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を用いた撮像装置において、良好な色再現性を有する画像を得るために様々な光学フィルタが固体撮像素子の前面に配置されている。一般的に、固体撮像素子は紫外線領域から赤外線領域に至る広い波長範囲で分光感度を有する。一方、人間の視感度は可視光の領域にのみに存在する。このため、撮像装置における固体撮像素子の分光感度を人間の視感度に近づけるために、固体撮像素子の前面に赤外線又は紫外線の一部の光を遮蔽する光学フィルタを配置する技術が知られている。
従来、そのような光学フィルタとしては、誘電体多層膜による光反射を利用して赤外線又は紫外線を遮蔽するものが一般的であった。一方、近年、光吸収剤を含有する膜を備えた光学フィルタが注目されている。光吸収剤を含有する膜を備えた光学フィルタの透過率特性は入射角の影響を受けにくいので、撮像装置において光学フィルタに斜めに光が入射する場合でも色味の変化が少ない良好な画像を得ることができる。また、光反射膜を用いない光吸収型光学フィルタは光反射膜による多重反射を原因とするゴーストやフレアの発生を抑制することができるため、逆光状態や夜景の撮影において良好な画像を得やすい。加えて、光吸収剤を含有する膜を備えた光学フィルタは、撮像装置の小型化及び薄型化の点でも有利である。
そのような光吸収剤として、ホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤が知られている。例えば、特許文献1には、フェニル基又はハロゲン化フェニル基を有するホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤を含有する光吸収層を備えた、光学フィルタが記載されている。
また、特許文献2には、赤外線及び紫外線を吸収可能なUV‐IR吸収層を備えた光学フィルタが記載されている。UV‐IR吸収層は、ホスホン酸と銅イオンとによって形成されたUV‐IR吸収剤を含んでいる。光学フィルタが所定の光学特性を満たすように、UV‐IR吸収性組成物は、例えば、フェニル系ホスホン酸と、アルキル系ホスホン酸とを含有している。
国際公開第2018/088561号 特許第6232161号公報
特許文献1及び2に記載の光学フィルタは、波長400nm付近の光を効果的に遮蔽する観点から改良の余地を有する。そこで、本発明は、特許文献1及び2に記載の技術では実現困難な所望の光学特性を有する光吸収膜又は光学フィルタを提供するのに有利な技術を提供する。
本発明は、
光吸収性組成物であって、
ホスホン酸と、銅成分とによって形成された光吸収剤を含有し、
当該光吸収性組成物を硬化させて得られる光吸収膜の、0度の入射角度での透過率スペクトルにおいて、波長400nmにおける透過率T400、波長550nmにおける透過率T550、及び波長800nmにおける透過率T800は、4≦T550/T400及び8≦T550/T800の条件を満たす、
光吸収性組成物を提供する。
本発明は、
ホスホン酸と、銅成分とによって形成された光吸収剤を含有し、
0度の入射角度での透過率スペクトルにおいて、波長400nmにおける透過率T400、波長550nmにおける透過率T550、及び波長800nmにおける透過率T800は、4≦T550/T400及び8≦T550/T800の条件を満たす、
光吸収膜を提供する。
また、本発明は、上記の光吸収膜を備えた、光学フィルタを提供する。
上記の光吸収性組成物は、所望の光学特性を有する光吸収膜を提供するのに有利である。上記の光吸収膜及び上記の光学フィルタは、所望の光学特性を有しやすい。
図1は、本発明に係る光吸収膜の一例を示す断面図である。 図2は、本発明に係る光学フィルタの一例を示す断面図である。 図3は、実施例1に係る光学フィルタの透過率スペクトルである。 図4は、焼成処理後の実施例1に係る光学フィルタの透過率スペクトルである。 図5は、実施例2に係る光学フィルタの透過率スペクトルである。 図6は、焼成処理後の実施例2に係る光学フィルタの透過率スペクトルである。 図7は、実施例3に係る光学フィルタの透過率スペクトルである。 図8は、実施例4に係る光学フィルタの透過率スペクトルである。 図9は、実施例5に係る光学フィルタの透過率スペクトルである。 図10は、比較例1に係る光学フィルタの透過率スペクトルである。 図11は、比較例2に係る光学フィルタの透過率スペクトルである。 図12は、透明ガラス基板の透過率スペクトルである。
近年、一部の紫外線を含む所定の波長領域に属する光を効果的に遮蔽できる光学フィルタが望まれている。例えば、可視光域において分光透過率が高く、赤外線域及び紫外線域で光の遮蔽性が高いことに加えて、波長400nm付近の光を効果的に遮蔽できる光学フィルタが待望されている。
特許文献1に記載の光学フィルタでは、UVカットオフ波長が400nm未満であり、その紫外線吸収能は十分とは言い難い。本明細書において、UVカットオフ波長は、波長300nm〜480nmにおいて透過率が50%となる波長である。
特許文献2に記載の光学フィルタでは、フェニル系ホスホン酸とアルキル系ホスホン酸との含有により、光学フィルタに求められる仕様が充足されやすいと考えられる。なぜなら、フェニル系ホスホン酸銅は、近赤外線のなかでも比較的短波長に属する範囲の光を吸収しやすく、アルキル系ホスホン酸銅は近赤外線のなかでも比較的長波長域に属する範囲の光を吸収しやすいからである。しかし、特許文献2に記載の光学フィルタの透過率スペクトルにおいて、波長400nmにおける透過率は20%以上であり、波長400nm付近の光を効果的に遮蔽できるとは言い難い。
そこで、本発明者らは、光吸収膜及び光学フィルタにおいて、特許文献1及び2に記載の技術では実現困難な所望の光学特性を実現すべく鋭意検討を重ね、本発明を完成させた。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明の例示に関するものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明に係る光吸収性組成物は、ホスホン酸と、銅成分とによって形成された光吸収剤を含有している。この光吸収性組成物を硬化させて得られる光吸収膜の、0度の入射角度での透過率スペクトルにおいて、波長400nmにおける透過率T400、波長550nmにおける透過率T550、及び波長800nmにおける透過率T800は、4≦T550/T400及び8≦T550/T800の条件を満たす。
透過率T400、透過率T550、及び透過率T800は、望ましくは8≦T550/T400及び28≦T550/T800の条件を満たし、より望ましくは16≦T550/T400及び60≦T550/T800の条件を満たし、さらに望ましくは20≦T550/T400及び80≦T550/T800の条件を満たす。
光吸収剤は、例えば、第一光吸収剤を含む。第一光吸収剤は、下記式(A)で表される第一ホスホン酸と、銅成分とによって形成されている。光吸収性組成物が第一光吸収剤を含有することは、光吸収性組成物を硬化させて得られる光吸収膜が4≦T550/T400及び8≦T550/T800の条件を満たす観点から有利である。
Figure 2021015244
[式(A)中、R1は、電子供与性を示す置換基であり、式(A)において複数のR1が存在していてもよい。R2は、1〜3個の炭素原子を有するアルキレン基であり、式(A)においてR2は存在しなくてもよい。]
光吸収剤は、例えば、第二光吸収剤をさらに含む。第二光吸収剤は、下記式(B)で表されるホスホン酸である第二ホスホン酸と、銅成分とによって形成されている。光吸収性組成物が第二光吸収剤を含有することは、光吸収性組成物における光吸収剤の良好な分散を実現する観点から有利である。
Figure 2021015244
[R21は、アルキル基、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化アルキル基、アリール基、又は少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化アリール基である。]
有機化合物に含まれるベンゼン環のπ‐π*遷移に基づく光吸収において、ベンゼン環に電子供与性の置換基が結合しているときには、その置換基から供与された電子によりπ電子帯が影響を受ける。例えば、電子供与性を示す置換基がベンゼン環に結合していると、そのような置換基がベンゼン環に結合していない場合と比べて、吸収スペクトルを長波長側に移動させるレッドシフトを伴う深色効果が発揮されやすい。第一光吸収剤は、置換基R1を有しているので、第一光吸収剤において吸収が最大となる波長(λmax)が長くなりやすい。これにより、紫外線の一部を含み、かつ、波長400nmを含む波長域の光が適切に吸収されやすい。しかし、本発明者らの検討によれば、第一光吸収剤は単独では光吸収性組成物において凝集しやすい。一方、本発明者らは、光吸収性組成物が第一光吸収剤に加え第二光吸収剤を含有していることにより、光吸収性組成物において第一光吸収剤が凝集しにくいことを新たに見出した。このため、光吸収性組成物を用いて、所望の光学特性を有する光吸収膜又は光学フィルタを実現しやすい。
従来、銅錯体等を光吸収剤として用いた場合、光学フィルタの透過率スペクトルにおいては紫外線の一部を含み、かつ、波長400nmを含む波長域の光の遮蔽が十分ではなかった。このため、このような光吸収剤を含有する光学フィルタを撮像装置に用いる場合、光学フィルタの特性と人の視感度とのかい離が問題となる可能性があった。一方、光吸収性組成物は、置換基R1を有するホスホン酸によって形成された第一光吸収剤を含有しているので、光吸収性組成物の使用によりこのような問題が解消されうる。
置換基R1は電子供与性を示す限り、特定の基に限定されない。置換基R1は、例えば、パラ位におけるHammettの置換基定数(σp)が負である置換基、又は、ハロゲン基である。この場合、光吸収性組成物を用いて、より確実に、所望の光学特性を有する光吸収膜又は光学フィルタを実現しやすい。
パラ位におけるHammettの置換基定数(σp)が負である置換基は、特定の基に限定されない。このような条件を満たす置換基は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキル基、及びアミノ基等の基である。パラ位におけるHammettの置換基定数(σp)が負である置換基の例を、その置換基定数(σp)の値とともに挙げると、ヒドロキシ基(−OH;σp=−0.37)、メトキシ基(−O−CH3;σp=−0.27)、エトキシ基(−O−CH2CH3;σp=−0.24)、メチル基(−CH3;σp=−0.17)、エチル基(−CH2CH3;σp=−0.15)、n−プロピル基(−CH2CH2CH3;σp=−0.13)、イソプロピル基(−CH(CH32;σp=−0.15)、n−ブチル基(−CH2CH2CH2CH3;σp=−0.16)、イソブチル基(−CH2CH(CH32;σp=−0.12)、s−ブチル基(−CH(CH3)CH2CH3;σp=−0.12)、t−ブチル基(−C(CH33;σp=−0.20)、及びアミノ基(−NH2;σp=−0.66)である。
置換基の置換基定数(σp)が負である場合、典型的には、その絶対値が大きいほどその置換基の電子供与性が高い。式(A)において、R1の置換基定数(σp)は−0.1以下であってもよい。これにより、より確実に、所望の光学特性を有する光吸収膜又は光学フィルタが得られやすい。
式(A)において、R1の置換基定数(σp)は−0.2以下であってもよい。式(A)において、R1の置換基定数(σp)は、例えば−0.8以上であり、−0.7以上であってもよい。
所定の置換基の置換基定数(σp)については、例えば、下記の文献を参照できる。
国際公開第2010/024441号
都野雄甫,「Hammett則」,有機合成化学協会誌,有機合成化学協会,1965年8月,第23巻,第8号,p.631−642
赤松美紀,「QSARパラメータとその応用」,日本農薬学会誌,日本農薬学会,2013年8月,第38巻2号,p.195−203
John A. Dean, “LANGE'S HANDBOOK OF CHEMISTRY fifteenth edition”, McGRAW-HILL,INC.,1998年
式(A)において、置換基R1は、ハロゲン基であってもよい。ハロゲン基の、パラ位におけるHammettの置換基定数(σp)は正である。例えば、−Fの置換基定数(σp)は0.06であり、−Clの置換基定数(σp)は0.23であり、−Brの置換基定数(σp)は、0.23であり、−Iの置換基定数(σp)は0.18である。置換基定数(σp)が正である置換基は、典型的には、電子吸引性を示す。しかし、ハロゲン基は、非共有電子対を有するので、式(A)に示すホスホン酸においてベンゼン環に対応する部位で電子供与性を示しうる。その結果、置換基R1がこのようなハロゲン原子であっても、所望の光学特性を有する光吸収膜又は光学フィルタを実現しうる。
式(A)において、置換基R1は、例えば、パラ位又はオルト位にある。この場合、光吸収性組成物を用いて、より確実に、所望の光学特性を有する光吸収膜又は光学フィルタを実現しやすい。換言すると、置換基R1は、p(パラ)−配向性基又はo(オルト)−配向性基であってもよい。式(A)に示すホスホン酸における置換基R1の配向は、ベンゼン環に結合している、リン原子を含む基を基準に決定される。
式(A)において、リン原子がベンゼン環に直接結合していてもよい。換言すると、式(A)で表されるホスホン酸は、下記式(A−1)で表されるホスホン酸であってもよい。この場合、光吸収性組成物を用いて、より確実に、所望の光学特性を有する光吸収膜又は光学フィルタを実現しやすい。
Figure 2021015244
式(A)で表されるホスホン酸は、特定のホスホン酸に限定されない。式(A)で表されるホスホン酸として、下記のホスホン酸を例示できる。
4−ヒドロキシフェニルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、4−エトキシフェニルホスホン酸、4−メチルフェニルホスホン酸、4−エチルフェニルホスホン酸、4−ノルマルプロピルフェニルホスホン酸、4−イソプロピルフェニルホスホン酸、4−ノルマルブチルフェニルホスホン酸、4−イソブチルフェニルホスホン酸、4−secブチルフェニルホスホン酸、4−tertブチルフェニルホスホン酸、4−アミノフェニルホスホン酸、4−フルオロフェニルホスホン酸、4−クロロフェニルホスホン酸、4−ブロモフェニルホスホン酸、4−ヨードフェニルホスホン酸、2−ヒドロキシフェニルホスホン酸、2−メトキシフェニルホスホン酸、2−エトキシフェニルホスホン酸、2−メチルフェニルホスホン酸、2−エチルフェニルホスホン酸、2−ノルマルプロピルフェニルホスホン酸、2−イソプロピルフェニルホスホン酸、2−ノルマルブチルフェニルホスホン酸、2−イソブチルフェニルホスホン酸、2−secブチルフェニルホスホン酸、2−tertブチルフェニルホスホン酸、2−アミノフェニルホスホン酸、2−フルオロフェニルホスホン酸、2−クロロフェニルホスホン酸、2−ブロモフェニルホスホン酸、2−ヨードフェニルホスホン酸、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸、4−メトキシベンジルホスホン酸、4−エトキシベンジルホスホン酸、4−メチルベンジルホスホン酸、4−エチルベンジルホスホン酸、4−ノルマルプロピルベンジルホスホン酸、4−イソプロピルベンジルホスホン酸、4−ノルマルブチルベンジルホスホン酸、4−イソブチルベンジルホスホン酸、4−secブチルベンジルホスホン酸、4−tertブチルベンジルホスホン酸、4−アミノベンジルホスホン酸、4−フルオロベンジルホスホン酸、4−クロロベンジルホスホン酸、4−ブロモベンジルホスホン酸、4−ヨードベンジルホスホン酸、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸、2−メトキシベンジルホスホン酸、2−エトキシベンジルホスホン酸、2−メチルベンジルホスホン酸、2−エチルベンジルホスホン酸、2−ノルマルプロピルベンジルホスホン酸、2−イソプロピルベンジルホスホン酸、2−ノルマルブチルベンジルホスホン酸、2−イソブチルベンジルホスホン酸、2−secブチルベンジルホスホン酸、2−tertブチルベンジルホスホン酸、2−アミノベンジルホスホン酸、2−フルオロベンジルホスホン酸、2−クロロベンジルホスホン酸、2−ブロモベンジルホスホン酸、2−ヨードベンジルホスホン酸、4−ヒドロキシフェネチルホスホン酸、4−メトキシフェネチルホスホン酸、4−エトキシフェネチルホスホン酸、4−メチルフェネチルホスホン酸、4−エチルフェネチルホスホン酸、4−ノルマルプロピルフェネチルホスホン酸、4−イソプロピルフェネチルホスホン酸、4−ノルマルブチルフェネチルホスホン酸、4−イソブチルフェネチルホスホン酸、4−secブチルフェネチルホスホン酸、4−tertブチルフェネチルホスホン酸、4−アミノフェネチルホスホン酸、4−フルオロフェネチルホスホン酸、4−クロロフェネチルホスホン酸、4−ブロモフェネチルホスホン酸、4−ヨードフェネチルホスホン酸、2−ヒドロキシフェネチルホスホン酸、2−メトキシフェネチルホスホン酸、2−エトキシフェネチルホスホン酸、2−メチルフェネチルホスホン酸、2−エチルフェネチルホスホン酸、2−ノルマルプロピルフェネチルホスホン酸、2−イソプロピルフェネチルホスホン酸、2−ノルマルブチルフェネチルホスホン酸、2−イソブチルフェネチルホスホン酸、2−secブチルフェネチルホスホン酸、2−tertブチルフェネチルホスホン酸、2−アミノフェネチルホスホン酸、2−フルオロフェネチルホスホン酸、2−クロロフェネチルホスホン酸、2−ブロモフェネチルホスホン酸、及び2−ヨードフェネチルホスホン酸。
式(B)で表されるホスホン酸は、特定のホスホン酸に限定されない。式(B)で表されるホスホン酸はとしては、これらに限られないが、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、ノルマルプロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ノルマルブチルホスホン酸、イソブチルホスホン酸、secブチルホスホン酸、tertブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のホスホン酸、さらに、ブロモメチルホスホン酸、フルオロエチルホスホン酸、ブロモフェニルホスホン酸、及びヨードフェニルホスホン酸等の、上記ホスホン酸において少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子に置換されたもの等が挙げられる。
光吸収性組成物において、式(B)で表されるホスホン酸は、典型的には、式(A)で表されるホスホン酸とは異なる種類のホスホン酸である。式(A)で表されるホスホン酸とともに式(B)で表されるホスホン酸が用いられることにより、光吸収剤、光吸収性組成物、又は光吸収膜、及びそれらの製造工程において、光吸収性能に影響を与えない範囲内で、光吸収剤の凝集を抑制できる。
光吸収性組成物において、銅成分は二価の銅イオンを含む。銅成分は、光吸収性組成物の作製時において、銅塩の状態で添加される。銅成分を供給する銅塩としては、酢酸銅、安息香酸銅、ギ酸銅、ステアリン酸銅、ピロリン酸銅、酸化銅、塩化銅、水酸化銅、及びこれらの水和物が挙げられる。
光吸収性組成物において、銅成分の含有量に対する式(A)で表されるホスホン酸及び式(B)で表されるホスホン酸の合計の含有量の比は、物質量基準で、例えば0.4〜2.0であり、望ましくは0.5〜1.5であり、より望ましくは0.6〜1.2である。これにより、光吸収性組成物を用いて、より確実に、所望の光学特性を有する光吸収膜又は光学フィルタを実現しやすい。
光吸収性組成物において、式(B)で表されるホスホン酸の含有量に対する式(A)で表されるホスホン酸の含有量の比は、物質量基準で、例えば0.1〜10.0であり、望ましくは0.2〜5.0であり、より望ましくは0.3〜3.0である。これにより、光吸収性組成物を用いて、より確実に、所望の光学特性を有する光吸収膜又は光学フィルタを実現しやすい。加えて、光吸収性組成物において第一光吸収剤及び第二光吸収剤が凝集しにくい。
第一光吸収剤及び第二光吸収剤は、典型的には、光吸収性組成物において分散している。例えば、光吸収性組成物において第一光吸収剤及び第二光吸収剤の少なくとも1つを含む微粒子が形成されている。この微粒子の平均粒子径は、例えば5nm〜200nmである。微粒子の平均粒子径が5nm以上であれば、微粒子の微細化のために特別な工程を要さず、光吸収剤を少なくとも含む微粒子の構造が壊れる可能性が小さい。また、光吸収性組成物において微粒子が良好に分散する。また、微粒子の平均粒子径が200nm以下であると、ミー散乱による影響を低減でき、光吸収膜において可視光の透過率を向上させることができ、撮像装置で撮影された画像のコントラスト及びヘイズなどの特性の低下を抑制できる。微粒子の平均粒子径は、望ましくは100nm以下である。この場合、レイリー散乱による影響が低減されるので、光吸収性組成物を用いて形成された光吸収膜において可視光に対する透明性が高まる。また、微粒子の平均粒子径は、より望ましくは75nm以下である。この場合、光吸収性組成物を用いて作製された光吸収膜の可視光に対する透明性がとりわけ高い。なお、微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法によって測定できる。
光吸収性組成物は、樹脂をさらに含有していてもよい。樹脂は、好ましくは、少なくとも可視光域で高い透過率を示す透明樹脂である。例えば、これらに限られるものではないが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、環状オレフィン樹脂、及びシリコーン樹脂等が樹脂として用いられる。
樹脂は、望ましくはフェニル基等のアリール基を含んでいるシリコーン樹脂である。光吸収膜に含まれる樹脂が硬い(リジッドである)と、その樹脂を含む層の厚みが増すにつれて、光吸収膜の作製中に硬化収縮によりクラックが生じやすい。樹脂がアリール基を含むシリコーン樹脂であると、光吸収性組成物によって形成される光吸収膜が良好な耐クラック性を有しやすい。また、アリール基を含むシリコーン樹脂は、式(A)又は式(B)で表されるホスホン酸と高い相溶性を有し、光吸収剤を凝集させにくい。シリコーン樹脂の具体例としては、KR−255、KR−300、KR−2621−1、KR−211、KR−311、KR−216、KR−212、KR−251、及びKR−5230を挙げることができる。これらはいずれも信越化学工業社製のシリコーン樹脂である。
光吸収性組成物は、例えば、リン酸エステルをさらに含有していてもよい。リン酸エステルの働きにより、光吸収性組成物、又は、それを硬化させた光吸収膜において光吸収剤が適切に分散しやすい。また、リン酸エステルは、分散剤としての機能のほか、その一部が銅成分と反応して化合物を形成してもよい。また、リン酸エステルは、銅成分とホスホン酸によって形成された化合物にさらに配位又は反応して化合物を形成してもよい。光吸収剤にはこれらの化合物又はこれらの銅塩の成分が含まれていてもよい。
リン酸エステルは、例えば、ポリオキシアルキル基を有するリン酸エステルである。ポリオキシアルキル基を有するリン酸エステルは、特定のリン酸エステルに限定されない。ポリオキシアルキル基を有するリン酸エステルは、例えば、プライサーフA208N:ポリオキシエチレンアルキル(C12、C13)エーテルリン酸エステル、プライサーフA208F:ポリオキシエチレンアルキル(C8)エーテルリン酸エステル、プライサーフA208B:ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、プライサーフA219B:ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、プライサーフAL:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、プライサーフA212C:ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、又はプライサーフA215C:ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステルである。これらはいずれも第一工業製薬社製の製品である。また、リン酸エステルは、例えば、NIKKOL DDP−2:ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、NIKKOL DDP−4:ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、又はNIKKOL DDP−6:ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルであってもよい。これらは、いずれも日光ケミカルズ社製の製品である。光吸収性組成物の作製時において、リン酸エステルの含有量に対するホスホン酸の含有量の質量比は、0.2〜10.0であり、望ましくは0.3〜8.0である。
光吸収性組成物は、必要に応じて、アルコキシシランをさらに含有していてもよい。この場合、アルコキシシランの加水分解縮重合によりシロキサン結合(−Si−O−Si−)が形成され、光吸収膜が緻密な構造を有しやすい。アルコキシシランは、モノマーであってもよく、ある程度加水分解と縮重合が進展したオリゴマーやポリマーの形態でもよく、それらの混合物であってもよい。
モノマーのアルコキシシランとしては、入手が容易な点、反応の制御が容易な点、膜の密着性、膜の耐候性等の観点から、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。本発明の作用効果に影響を及ぼさない範囲内で、一種類又は複数種類のアルコキシシランを用いることができる。
光吸収性組成物がこれらのアルコキシシランを含有することにより、ホスホン酸と銅成分とからなる光吸収剤の凝集を抑制する作用が生じ、分散剤のリン酸エステル化合物の添加量を低減することが可能となる。光吸収性組成物において、銅成分の含有量に対するモノマー換算によるアルコキシシランの含有量の比は、例えば、物質量基準で2.0以上であり、望ましくは2.5以上である。また、光吸収性組成物がトリアルコキシシラン及びジアルコキシシランの少なくとも1つを含有する場合、光吸収性組成物において、銅成分の含有量に対するモノマー換算によるトリアルコキシシラン及びジアルコキシシランの含有量の比は、例えば、物質量基準で1.5以上である。これらの特徴に関し、国際公開第2019/093076号に記載の事項を参酌でき、本明細書にその記載事項が適宜組み込まれる。
光吸収性組成物の調製方法の一例を説明する。酢酸銅一水和物などの銅塩をテトラヒドロフラン(THF)などの所定の溶媒に添加して撹拌し、銅塩の溶液であるA液を調製する。A液の調製において、リン酸エステルが添加されてもよい。次に、式(A)及び式(B)で表されるホスホン酸をTHFなどの所定の溶媒に加えて撹拌し、B液を調製する。各ホスホン酸をTHFなどの所定の溶媒に加えたうえで撹拌して各ホスホン酸の種類ごとに調製した複数の予備液を混合してB液を調製してもよい。A液を撹拌しながら、A液にB液を加えて所定時間撹拌する。次に、この溶液にトルエンなどの所定の溶媒を加えて撹拌し、C液を得る。次に、C液を加温しながら所定時間脱溶媒処理を行って、D液を得る。これにより、THFなどの溶媒及び酢酸(沸点:約118℃)などの銅塩の解離により発生する成分が除去され、式(A)で表されるホスホン酸と銅成分とによって第一光吸収剤が生成され、式(B)で表されるホスホン酸と銅成分とによって第二光吸収剤が生成される。C液を加温する温度は、銅塩から解離した除去されるべき成分の沸点に基づいて定められている。なお、脱溶媒処理においては、C液を得るために用いたトルエン(沸点:約110℃)などの溶媒も揮発する。この溶媒は、光吸収性組成物においてある程度残留していることが望ましいので、この観点から溶媒の添加量及び脱溶媒処理の時間が定められうる。なお、C液を得るためにトルエンに代えてo‐キシレン(沸点:約144℃)を用いることもできる。この場合、o‐キシレンの沸点はトルエンの沸点よりも高いので、添加量をトルエンの添加量の4分の1程度に低減できる。
必要に応じ、D液と、シリコーン樹脂等の樹脂とを混合して所定時間撹拌することにより、光吸収性組成物を調製できる。
光吸収性組成物を用いて、例えば、図1に示す光吸収膜10を提供できる。光吸収膜10は、例えば、光吸収性組成物の塗膜を硬化させることによって得られる。光吸収膜10は、ホスホン酸と、銅成分とによって形成された光吸収剤を含有している。光吸収膜10の、0度の入射角度での透過率スペクトルにおいて、波長400nmにおける透過率T400、波長550nmにおける透過率T550、及び波長800nmにおける透過率T800は、4≦T550/T400及び8≦T550/T800の条件を満たす。このため、光吸収膜10によって、紫外線の一部を含み、かつ、400nmを含む波長域の光が吸収されやすい。このため、例えば、波長350nm〜430nm付近の透過率に関する光吸収膜10の分光特性が人間の視感度に近しくなりやすい。
光吸収膜10において、透過率T400、透過率T550、及び透過率T800は、望ましくは8≦T550/T400及び28≦T550/T800の条件を満たし、より望ましくは16≦T550/T400及び60≦T550/T800の条件を満たし、さらに望ましくは20≦T550/T400及び80≦T550/T800の条件を満たす。
光吸収膜10における光吸収剤は、例えば、上記の式(A)で表されるホスホン酸と銅成分とによって形成された第一光吸収剤を含有している。このことは、光吸収膜10が4≦T550/T400及び8≦T550/T800の条件を満たす観点から有利である。
光吸収膜10における光吸収剤は、例えば、上記の式(B)で表されるホスホン酸と銅成分とによって形成された第二光吸収剤をさらに含有している。このことは、光吸収膜における光吸収剤の良好な分散を実現する観点から有利である。
図1に示す通り、光吸収膜10を備えた光学フィルタ1aを提供できる。光学フィルタ1aによって、紫外線の一部を含み、かつ、400nmを含む波長域の光が吸収されやすい。このため、例えば、波長350nm〜430nm付近の透過率に関する光学フィルタ1aの分光特性が人間の視感度に近しくなりやすい。
光学フィルタ1aの0度の入射角度での透過率スペクトルにおいて、波長400nmにおける透過率T400、波長550nmにおける透過率T550、及び波長800nmにおける透過率T800は、4≦T550/T400及び8≦T550/T800の条件を満たす。
光学フィルタ1aにおいて、透過率T400、透過率T550、及び透過率T800は、望ましくは8≦T550/T400及び28≦T550/T800の条件を満たし、より望ましくは16≦T550/T400及び60≦T550/T800の条件を満たし、さらに望ましくは20≦T550/T400及び80≦T550/T800の条件を満たす。
光学フィルタ1aは、例えば、下記(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び(VI)の条件をさらに満たす。
(I)波長300nm〜380nmにおける最大の透過率TM 300-380が1%以下である。
(II)波長400nmにおける透過率T400が20%以下である。
(III)波長300nm〜480nmにおいて透過率が50%となる波長であるUVカットオフ波長λUVは、405nm≦λUV≦480nmの条件を満たす。
(IV)波長480nm〜580nmにおける透過率の平均TA 480-580が78%以上である。
(V)波長580nm〜750nmにおいて透過率が50%となる波長であるIRカットオフ波長λIRは、600nm≦λIR≦700nmの条件を満たす。
(VI)波長800nm〜1100nmにおける最大の透過率TM 800-1100が10%以下である。
上記(I)の条件に関し、光学フィルタ1aは、望ましくは下記の(Ia)の条件を満たし、より望ましくは(Ib)の条件を満たす。
(Ia)波長300nm〜385nmにおける最大の透過率TM 300-385が1%以下である。
(Ib)波長300nm〜390nmにおける最大の透過率TM 300-390が1%以下である。
上記(II)の条件に関し、光学フィルタ1aにおいて、透過率T400は、望ましくは10%以下であり、より望ましくは5%以下である。
上記(III)の条件に関し、光学フィルタ1aは、望ましくは405nm≦λUV≦470nmの条件を満たし、より望ましくは405nm≦λUV≦460nmの条件の条件を満たす。
上記(IV)の条件に関し、光学フィルタ1aにおいて、透過率の平均TA 480-580は、望ましくは80%以上であり、より望ましくは82%以上である。
上記(V)の条件に関し、光学フィルタ1aは、望ましくは620nm≦λIR≦680nmの条件を満たす。
上記(VI)の条件に関し、光学フィルタ1aにおいて、波長800nm〜1000nmにおける最大の透過率TM 800-1000は、望ましくは3%以下であり、より望ましくは1%以下である。
光学フィルタ1aは、例えば、下記の(α)、(β)、及び(γ)の条件を満たしていてもよい。レンジは、最大値から最小値を差し引いた値を意味する。
(α)波長300nm〜450nmにおいて透過率が連続して1%以下である波長のレンジΔλ1% UVが85nm以上である。
(β)波長700nm〜1200nmにおいて透過率が連続して1%以下である波長のレンジΔλ1% IRが200nm以上である。
(γ)UVカットオフ波長λUVとIRカットオフ波長λIRとの差の絶対値|λUV−λIR|が180nm以上である。
(α)の条件に関し、光学フィルタ1aのレンジΔλ1% UVは、望ましくは90nm以上である。
(β)の条件に関し、光学フィルタ1aのレンジΔλ1% IRは、望ましくは220nm以上である。
(γ)の条件に関し、光学フィルタ1aの絶対値|λUV−λIR|は、望ましくは190nm以上である。
光学フィルタ1aは、例えば、光吸収膜10単体で構成されている。この場合、光学フィルタ1aは、例えば、撮像素子又は光学部品とは別体で使用されうる。光学フィルタ1aは、撮像素子及び光学部品に対して接合されていてもよい。一方、上記の光吸収性組成物を撮像素子又は光学部品に塗布して、光吸収性組成物を硬化させることによって、光学フィルタ1aが構成されていてもよい。
光吸収膜10の厚みは、特定の値に限定されない。光吸収膜10の厚みは、例えば、10μm〜600μmであり、20μm〜400μmであってもよく、30μm〜300μmであってもよい。
光学フィルタ1aは、例えば、基板上に形成された光吸収膜10を基板から剥離することによって作製できる。この場合、基板の材料は、ガラスであってもよく、樹脂であってもよく、金属であってもよい。基板の表面には、フッ素含有化合物を用いたコーティング等の表面処理が施されていてもよい。
光学フィルタ1aは、例えば、図2に示す光学フィルタ1bのように変更されてもよい。光学フィルタ1bは、特に説明する場合を除き、光学フィルタ1aと同様に構成されている。光学フィルタ1aの構成要素と同一又は対応する光学フィルタ1bの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。光学フィルタ1aに関する説明は技術的に矛盾しない限り光学フィルタ1bにも当てはまる。
図2に示す通り、光学フィルタ1bは、光吸収膜10と、透明誘電体基板20とを備えている。光吸収膜10は、透明誘電体基板20の一方の主面と平行に形成されている。光吸収膜10は、例えば、透明誘電体基板20の一方の主面に接触していてもよい。この場合、例えば、透明誘電体基板20の一方の主面に上記の光吸収性組成物を塗布して光吸収性組成物を硬化させることによって光吸収膜10が形成されうる。
透明誘電体基板20の種類は、特定の種類に限定されない。透明誘電体基板20は、赤外線領域に吸収能を有していてもよい。透明誘電体基板20は、例えば波長350nm〜900nmにおいて90%以上の平均分光透過率を有していてもよい。透明誘電体基板20の材料は、特定の材料に制限されないが、例えば、所定のガラス又は樹脂である。透明誘電体基板20の材料がガラスである場合、透明誘電体基板20は、例えば、ソーダ石灰ガラス及びホウケイ酸ガラスなどのケイ酸塩ガラスでできた透明なガラス又はCu及びCo等の着色性の成分を含有するリン酸塩ガラス及び弗リン酸塩ガラスでありうる。着色性の成分を含有するリン酸塩ガラス及び弗リン酸塩ガラスは、例えば赤外線吸収性ガラスであり、それ自体が光吸収性を有する。光吸収膜10を、赤外線吸収性ガラスの透明誘電体基板20とともに用いる場合には、双方の光吸収性及び透過率スペクトルを調整して、所望の光学特性を有する光学フィルタを作製でき、光学フィルタの設計の自由度が高い。
透明誘電体基板20の材料が樹脂である場合、その樹脂は、例えば、ノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、アクリル樹脂、変性アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はシリコーン樹脂である。
光学フィルタ1a及び1bのそれぞれは、赤外線反射膜及び反射防止膜等の他の機能膜をさらに備えるように変更されてもよい。このような機能膜は、光吸収膜10又は透明誘電体基板20の上に形成されうる。例えば、光学フィルタが反射防止膜を備えることにより、所定の波長の範囲(例えば可視光域)の透過率を高めることができる。反射防止膜は、MgF2及びSiO2等の低屈折率材料の層として構成されていてもよく、このような低屈折率材料の層とTiO2等の高屈折率材料の層との積層体として構成されていてもよく、誘電体多層膜として構成されていてもよい。このような反射防止膜は、真空蒸着及びスパッタ法等の物理的な反応を伴う方法、又は、CVD法及びゾルゲル法等の化学的な反応を伴う方法によって形成されうる。
光学フィルタは、例えば、二枚の板状のガラスの間に光吸収膜10が配置された状態で構成されていてもよい。これにより、光学フィルタの剛性及び機械的強度が向上する。加えて、光学フィルタの主面が硬質となり、キズ防止等の観点から有利である。特に、光吸収膜10におけるバインダー又はマトリクスとして比較的柔軟性の高い樹脂を用いた場合に、このような利点が重要である。
実施例により、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
<実施例1>
酢酸銅一水和物4.500gとテトラヒドロフラン(THF)240gとを混合して、3時間撹拌し酢酸銅溶液を得た。次に、得られた酢酸銅溶液に、リン酸エステル化合物であるプライサーフA208N(第一工業製薬社製)4.333gを加えて30分間撹拌し、A1液を得た。4−ヒドロキシフェニルホスホン酸(東京化成工業社製)1.590gにTHF40gを加えて30分間撹拌してB1(a)液を得た。フェニルホスホン酸(日産化学工業社製)1.444gにTHF40gを加えて30分間撹拌してB1(b)液を得た。A1液を撹拌しながらA1液にB1(a)液とB1(b)液を加え、室温で1分間撹拌した。次に、この溶液にトルエン120gを加えた後、室温で1分間撹拌し、C1液を得た。このC1液をフラスコに入れてオイルバス(東京理化器械社製、型式:OSB−2100)で加温しながら、ロータリーエバポレータ(東京理化器械社製、型式:N−1110SF)によって、脱溶媒処理を行った。オイルバスの設定温度は、105℃に調整した。その後、フラスコの中から脱溶媒処理後の液体を取り出し、4−ヒドロキシフェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤及びフェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤の分散液であるD1液を得た。D1液の外観は透明であり、光吸収剤の微粒子の分散状態は良好であると推定された。
D1液にシリコーン樹脂(信越化学工業社製、製品名:KR−300)8.80gを添加し30分間撹拌して、光吸収剤を含有する実施例1に係る光吸収性組成物を得た。実施例1に係る光吸収性組成物の調製に使用した材料の添加量を表1に示す。光吸収性組成物における、リン酸エステルの含有量に対するホスホン酸の含有量の質量基準の比と、銅イオンの含有量に対するホスホン酸の含有量の物質量基準の比とを表1に示す。
76mm×76mm×0.21mmの寸法を有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263 T eco)の一方の主面の中心部の40mm×40mmの範囲にディスペンサを用いて実施例1に係る光吸収性組成物を塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を室温で十分に乾燥させた後、オーブンに入れて45℃で2時間、85℃で30分間の熱処理を行い、溶媒を揮発させて硬化させた。このようにして、実施例1に係る光吸収膜を形成し、実施例1に係る光学フィルタを得た。
実施例1に係る光学フィルタに対し、さらに125℃で3時間及び150℃で1時間の焼成処理を実施した。
<実施例2>
酢酸銅一水和物4.500gとテトラヒドロフラン(THF)240gとを混合して、3時間撹拌し酢酸銅溶液を得た。次に、得られた酢酸銅溶液に、リン酸エステル化合物であるプライサーフA208N(第一工業製薬社製)4.333gを加えて30分間撹拌し、A2液を得た。4−ヒドロキシフェニルホスホン酸(東京化成工業社製)1.590gにTHF40gを加えて30分間撹拌してB2(a)液を得た。フェニルホスホン酸(日産化学工業社製)1.444gにTHF40gを加えて30分間撹拌してB2(b)液を得た。A2液を撹拌しながらA2液にB2(a)液とB2(b)液を加え、室温で1分間撹拌した。次に、この溶液にトルエン120gを加えた後、室温で1分間撹拌し、C2液を得た。このC2液をフラスコに入れてオイルバス(東京理化器械社製、型式:OSB−2100)で加温しながら、ロータリーエバポレータ(東京理化器械社製、型式:N−1110SF)によって、脱溶媒処理を行った。オイルバスの設定温度は、105℃に調整した。その後、フラスコの中から脱溶媒処理後の液体を取り出し、4−ヒドロキシフェニルホスホン酸と銅イオンによって形成された光吸収剤及びフェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤の分散液であるD2液を得た。D2液の外観は透明であり、各光吸収剤の微粒子の分散状態は良好であると推定された。
酢酸銅一水和物4.500gと、テトラヒドロフラン(THF)240gとを混合して3時間撹拌し酢酸銅溶液を得た。次に、得られた酢酸銅溶液に、リン酸エステル化合物であるプライサーフA208N(第一工業製薬社製)2.572gを加えて30分間撹拌してA3液を得た。また、n‐ブチルホスホン酸2.886gにTHF40gを加えて30分間撹拌してB3液を得た。A3液を撹拌しながらA3液にB3液を加え、室温で1分間撹拌した。次に、この溶液にトルエン100gを加えた後、室温で1分間撹拌し、C3液を得た。このC3液をフラスコに入れてオイルバス(東京理化器械社製、型式:OSB−2100)で加温しながら、ロータリーエバポレータ(東京理化器械社製、型式:N−1110SF)によって、脱溶媒処理を行った。オイルバスの設定温度は、105℃に調整した。その後、フラスコの中から脱溶媒処理後の液体を取り出し、n−ブチルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤の分散液であるD3液を得た。D3液の外観は透明であり、光吸収剤の微粒子の分散状態は良好であると推定された。
D3液の全量の40質量%に相当する量のD3液と、シリコーン樹脂(信越化学工業社製、製品名:KR−300)8.80gとを、D2液に添加して30分間撹拌し、4−ヒドロキシフェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤、フェニルホスホン酸と銅イオンによって形成された光吸収剤、及びn−ブチルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤を含有する、実施例2に係る光吸収性組成物を得た。実施例2に係る光吸収性組成物の調製に使用した材料の添加量を表1に示す。加えて、実施例2に係る光吸収性組成物における、リン酸エステルの含有量に対するホスホン酸の含有量の質量基準の比と、銅イオンの含有量に対するホスホン酸の含有量の物質量基準の比とを表1に示す。
実施例1に係る光吸収性組成物の代わりに、実施例2に係る光吸収性組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る光吸収膜を形成し、実施例2に係る光学フィルタを得た。
実施例2に係る光学フィルタに対し、さらに125℃で3時間及び150℃で1時間の焼成処理を実施した。
<実施例3>
実施例2と同様にして実施例3に係る光吸収性組成物を調製した。実施例3に係る光吸収性組成物の調製に使用した材料の添加量を表1に示す。加えて、実施例3に係る光吸収性組成物における、リン酸エステルの含有量に対するホスホン酸の含有量の質量基準の比と、銅イオンの含有量に対するホスホン酸の含有量の物質量基準の比とを表1に示す。
表面防汚コーティング剤(ダイキン工業社製、製品名:オプツールDSX、有効成分の濃度:20質量%)0.1gと、ハイドロフルオロエーテル含有液(3M社製、製品名:ノベック7100)19.9gとを混合し、5分間撹拌して、フッ素処理剤(有効成分の濃度:0.1質量%)を調製した。このフッ素処理剤を、76mm×76mm×0.21mmの寸法を有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263 T eco)にかけ流して塗布した。その後、そのガラス基板を室温で24時間放置してフッ素処理剤の塗膜を乾燥させ、その後、ノベック7100を含んだ無塵布で軽くガラス表面を拭きあげて余分なフッ素処理剤を取り除いた。このようにしてフッ素処理基板を作製した。
実施例3に係る光吸収性組成物を、フッ素処理基板上のフッ素処理面の中心部の40mm×40mmの範囲にディスペンサを用いて塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を室温で十分に乾燥させた後、オーブンに入れて45℃で2時間、85℃で30分間の熱処理行い、溶媒を揮発させて硬化させた。その後さらに125℃で3時間、150℃で1時間焼成処理を行った。このようにして得られた光吸収膜について、その端部を持ち上げて基板から引き剥がし、実施例3に係る光学フィルタを得た。
<実施例4>
酢酸銅一水和物4.500gとテトラヒドロフラン(THF)240gとを混合して、3時間撹拌し酢酸銅溶液を得た。次に、得られた酢酸銅溶液に、リン酸エステル化合物であるプライサーフA208N(第一工業製薬社製)2.166gを加えて30分間撹拌し、A4液を得た。4−メトキシフェニルホスホン酸(東京化成工業社製)2.025gにTHF40gを加えて30分間撹拌してB4(a)液を得た。フェニルホスホン酸(日産化学工業社製)1.702gにTHF40gを加えて30分間撹拌してB4(b)液を得た。A4液を撹拌しながらA4液にB4(a)液とB4(b)液を加え、室温で1分間撹拌した。次に、この溶液にトルエン120gを加えた後、室温で1分間撹拌し、C4液を得た。このC4液をフラスコに入れてオイルバス(東京理化器械社製、型式:OSB−2100)で加温しながら、ロータリーエバポレータ(東京理化器械社製、型式:N−1110SF)によって、脱溶媒処理を行った。オイルバスの設定温度は、105℃に調整した。その後、フラスコの中から脱溶媒処理後の液体を取り出し、4−メトキシフェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤及びフェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤の分散液であるD4液を得た。D4液の外観は透明であり、各光吸収剤の微粒子の分散状態は良好であると推定された。
D4液にシリコーン樹脂(信越化学工業社製、製品名:KR−300)8.80gを添加し30分間撹拌して、4−メトキシフェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤及びフェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤を含有する実施例4に係る光吸収性組成物を得た。実施例4に係る光吸収性組成物の調製に使用した材料の添加量を表1に示す。加えて、実施例4に係る光吸収性組成物における、リン酸エステルの含有量に対するホスホン酸の含有量の質量基準の比と、銅イオンの含有量に対するホスホン酸の含有量の物質量基準の比とを表1に示す。
実施例1に係る光吸収性組成物の代わりに、実施例4に係る光吸収性組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る光吸収膜を形成し、実施例4に係る光学フィルタを得た。
<実施例5>
酢酸銅一水和物4.500gとテトラヒドロフラン(THF)240gとを混合して、3時間撹拌し酢酸銅溶液を得た。次に、得られた酢酸銅溶液に、リン酸エステル化合物であるプライサーフA208N(第一工業製薬社製)2.166gを加えて30分間撹拌し、A5液を得た。4−エトキシフェニルホスホン酸(シグマアルドリッチ社製)2.176gにTHF40gを加えて30分間撹拌してB5(a)液を得た。フェニルホスホン酸(日産化学工業社製)1.702gにTHF40gを加えて30分間撹拌してB5(b)液を得た。A5液を撹拌しながらA5液にB5(a)液とB5(b)液を加え、室温で1分間撹拌した。次に、この溶液にトルエン120gを加えた後、室温で1分間撹拌し、C5液を得た。このC5液をフラスコに入れてオイルバス(東京理化器械社製、型式:OSB−2100)で加温しながら、ロータリーエバポレータ(東京理化器械社製、型式:N−1110SF)によって、脱溶媒処理を行った。オイルバスの設定温度は、105℃に調整した。その後、フラスコの中から脱溶媒処理後の液体を取り出し、4−エトキシフェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤及びフェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤の分散液であるD5液を得た。D5液の外観は透明であり、各光吸収剤の微粒子の分散状態は良好であると推定された。
D5液にシリコーン樹脂(信越化学工業社製、製品名:KR−300)8.80gを添加し30分間撹拌して、4−エトキシフェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤及びフェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤を含有する実施例5に係る光吸収性組成物を得た。実施例5に係る光吸収性組成物の調製に使用した材料の添加量を表1に示す。加えて、実施例5に係る光吸収性組成物における、リン酸エステルの含有量に対するホスホン酸の含有量の質量基準の比と、銅イオンの含有量に対するホスホン酸の含有量の物質量基準の比とを表1に示す。
実施例1に係る光吸収性組成物の代わりに、実施例5に係る光吸収性組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係る光吸収膜を形成し、実施例5に係る光学フィルタを得た。
<比較例1>
酢酸銅一水和物4.500gとテトラヒドロフラン(THF)240gとを混合して、3時間撹拌し酢酸銅溶液を得た。次に、得られた酢酸銅溶液に、リン酸エステル化合物であるプライサーフA208F(第一工業製薬社製)7.172gを加えて30分間撹拌し、A6液を得た。フェニルホスホン酸(日産化学工業社製)2.508gにTHF40gを加えて30分間撹拌してB6液を得た。A6液を撹拌しながらA6液にB6液を加え、室温で1分間撹拌した。次に、この溶液にトルエン180gを加えた後、室温で1分間撹拌し、C6液を得た。このC6液をフラスコに入れてオイルバス(東京理化器械社製、型式:OSB−2100)で加温しながら、ロータリーエバポレータ(東京理化器械社製、型式:N−1110SF)によって、脱溶媒処理を行った。オイルバスの設定温度は、120℃に調整した。その後、フラスコの中から脱溶媒処理後の液体を取り出し、フェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤の分散液であるD6液を得た。
D6液にシリコーン樹脂(信越化学工業社製、製品名:KR−300)17.60gを添加し30分間撹拌して、フェニルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤を含有する比較例1に係る光吸収性組成物を得た。比較例1に係る光吸収性組成物の調製に使用した材料の添加量を表1に示す。加えて、比較例1に係る光吸収性組成物における、リン酸エステルの含有量に対するホスホン酸の含有量の質量基準の比と、銅イオンの含有量に対するホスホン酸の含有量の物質量基準の比とを表1に示す。
76mm×76mm×0.21mmの寸法を有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263 T eco)の一方の主面の中心部の40mm×40mmの範囲にディスペンサを用いて比較例1に係る光吸収性組成物を塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を室温で十分に乾燥させた後、オーブンに入れて85℃で3時間の熱処理行い溶媒を揮発させた。さらに125℃で3時間、150℃で1時間、170℃で8時間の焼成処理を塗膜に対して行って十分に塗膜を硬化させた。このようにして、比較例1に係る光吸収膜を形成し、比較例1に係る光学フィルタを得た。
<比較例2>
酢酸銅一水和物4.500gとテトラヒドロフラン(THF)240gとを混合して、3時間撹拌し酢酸銅溶液を得た。次に、得られた酢酸銅溶液に、リン酸エステル化合物であるプライサーフA208F(第一工業製薬社製)4.333gを加えて30分間撹拌し、A7液を得た。n−ブチルホスホン酸(城北化学工業社製)2.523gにTHF40gを加えて30分間撹拌してB7液を得た。A7液を撹拌しながらA7液にB7液を加え、室温で1分間撹拌した。次に、この溶液にトルエン120gを加えた後、室温で1分間撹拌し、C7液を得た。このC7液をフラスコに入れてオイルバス(東京理化器械社製、型式:OSB−2100)で加温しながら、ロータリーエバポレータ(東京理化器械社製、型式:N−1110SF)によって、脱溶媒処理を行った。オイルバスの設定温度は、105℃に調整した。その後、フラスコの中から脱溶媒処理後の液体を取り出し、n−ブチルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤の分散液であるD7液を得た。
D7液にシリコーン樹脂(信越化学工業社製、製品名:KR−300)8.80gを添加し30分間撹拌して、n−ブチルホスホン酸と銅イオンとによって形成された光吸収剤を含有する比較例2に係る光吸収性組成物を得た。比較例2に係る光吸収性組成物の調製に使用した材料の添加量を表1に示す。加えて、比較例2に係る光吸収性組成物における、リン酸エステルの含有量に対するホスホン酸の含有量の質量基準の比と、銅イオンの含有量に対するホスホン酸の含有量の物質量基準の比とを表1に示す。
76mm×76mm×0.21mmの寸法を有するホウケイ酸ガラスでできた透明ガラス基板(SCHOTT社製、製品名:D263 T eco)の一方の主面の中心部の40mm×40mmの範囲にディスペンサを用いて比較例2に係る光吸収性組成物を塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を室温で十分に乾燥させた後、オーブンに入れて45℃で2時間、85℃30分間の熱処理行い溶媒を揮発させた。さらに125℃で3時間、150℃で1時間、170℃で3時間の焼成処理を行って十分に塗膜を硬化させた。このようにして、比較例2に係る光吸収膜を形成し、比較例2に係る光学フィルタを得た。
<透過率スペクトルの測定>
紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、製品名:V−670)を用いて、焼成処理前後における実施例1及び2に係る光学フィルタの0°の入射角における透過率スペクトルを測定した。焼成処理前の実施例1に係る透過率スペクトル、焼成処理後の実施例1に係る透過率スペクトル、焼成処理前の実施例2に係る透過率スペクトル、及び焼成処理後の実施例2に係る透過率スペクトルをそれぞれ図3、図4、図5、及び図6を示す。また、実施例3〜5に係る光学フィルタ及び比較例1及び2に係る光学フィルタの0°の入射角における透過率スペクトルを同様に測定した。実施例3〜5に係る光学フィルタ並びに比較例1及び2に係る光学フィルタの0°の入射角における透過率スペクトルをそれぞれ、図7〜9並びに図10及び図11に示す。図3〜図11から読み取った各光学フィルタの透過率に関する特性を表2及び3に示す。なお、実施例1等で用いた透明ガラス基板の透過率スペクトルを図12に示す。透明ガラス基板は、波長360nm〜1200nmの範囲において、高い透過率を示すことが理解される。
<厚みの測定>
レーザー変位計(キーエンス社製、製品名:LK−H008)を用いて、各光学フィルタの表面との距離を測定し、必要に応じて、透明ガラス基板の厚みを差し引くことによって、光吸収膜の厚みを測定した。その結果を表2に示す。
図3〜6並びに表2及び3によれば、焼成処理前の実施例1及び2に係る光学フィルタは、適切な光吸収性能を有し、良好な光学特性を有することが確認された。加えて、焼成処理後の実施例1及び2に係る光学フィルタも良好な光学特性を有し、実施例1及び2に係る光学フィルタにおいて焼成処理前後で光学特性の変化が小さいことが確認された。このような焼成処理前後で光学特性の変化が小さいことは、実施例1及び2に係る光学フィルタが150℃において良好な耐熱性を有していることを示す。加えて、85℃という比較的低い温度で1時間以内という短時間での光吸収性組成物の塗膜の硬化処理により、良好な光学特性及び耐熱性を有する光学フィルタが作製可能であることを示している。なお、「光学特性の変化が小さい」とは、例えば、焼成処理の前後において、透過率の変化量が3ポイント以内であることと、UVカットオフ波長及びIRカットオフ波長の変化量が10nm以内であることを意味する。
低温での硬化処理で作製可能でありながら150℃において耐熱性を有することは、実施例1及び2に係る光学フィルタの利点である。特に、100℃以下の温度で硬化処理できることは有利であり、85℃で処理できる点は、作製プロセスを構築する上で非常に有利である。また、実施例1及び2において、85℃での硬化処理時間が1時間以内であること、詳細には85℃での硬化処理時間が30分間であることは、光学フィルタ作製のタクトタイムを短縮するという生産性の観点において非常に有利である。加えて、実施例1及び2において、加湿処理等の追加処理が不要であることも有利である。これらの利点は、ベンゼン環に電子供与性を有する置換基(ヒドロキシ基)を有するホスホン酸を使用することによって、得られるものと理解される。
図7〜9並びに表2及び3によれば、実施例3〜5に係る光学フィルタは、十分な紫外線吸収能を示し、良好な光学特性を有することが確認された。
図10及び11並びに表2及び3によれば、比較例1及び2に係る光学フィルタは紫外線吸収能が十分ではなく、光学フィルタに求められる十分な光学特性を有していないことが確認された。
Figure 2021015244
Figure 2021015244
Figure 2021015244
1a、1b 光学フィルタ
10 光吸収膜
20 透明誘電体基板

Claims (18)

  1. 光吸収性組成物であって、
    ホスホン酸と、銅成分とによって形成された光吸収剤を含有し、
    当該光吸収性組成物を硬化させて得られる光吸収膜の、0度の入射角度での透過率スペクトルにおいて、波長400nmにおける透過率T400、波長550nmにおける透過率T550、及び波長800nmにおける透過率T800は、4≦T550/T400及び8≦T550/T800の条件を満たす、
    光吸収性組成物。
  2. 前記光吸収剤は、下記式(A)で表される第一ホスホン酸と、銅成分とによって形成された第一光吸収剤を含む、請求項1に記載の光吸収性組成物。
    Figure 2021015244
    [式(A)中、R1は、電子供与性を示す置換基であり、式(A)において複数のR1が存在していてもよい。R2は、1〜3個の炭素原子を有するアルキレン基であり、式(A)においてR2は存在しなくてもよい。]
  3. 前記光吸収剤は、下記式(B)で表される第二ホスホン酸と、銅成分とによって形成された第二光吸収剤をさらに含む、請求項2に記載の光吸収性組成物。
    Figure 2021015244
    [R21は、アルキル基、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化アルキル基、アリール基、又は少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化アリール基である。]
  4. 前記式(A)において、R1は、パラ位におけるHammettの置換基定数が負である置換基、又は、ハロゲン基である、請求項2又は3に記載の光吸収性組成物。
  5. 前記式(A)において、R1の前記置換基定数は−0.1以下である、請求項4に記載の光吸収性組成物。
  6. 前記式(A)において、R1はパラ位又はオルト位にある、請求項2〜5のいずれか1項に記載の光吸収性組成物。
  7. 前記式(A)において、リン原子がベンゼン環に直接結合している、請求項2〜6のいずれか1項に記載の光吸収性組成物。
  8. ホスホン酸と、銅成分とによって形成された光吸収剤を含有し、
    0度の入射角度での透過率スペクトルにおいて、波長400nmにおける透過率T400、波長550nmにおける透過率T550、及び波長800nmにおける透過率T800は、4≦T550/T400及び8≦T550/T800の条件を満たす、
    光吸収膜。
  9. 前記光吸収剤は、下記式(A)で表される第一ホスホン酸と、銅成分とによって形成された第一光吸収剤を含む、請求項8に記載の光吸収膜。
    Figure 2021015244
    [式(A)中、R1は、電子供与性を示す置換基であり、式(A)において複数のR1が存在していてもよい。R2は、1〜3個の炭素原子を有するアルキレン基であり、式(A)においてR2は存在しなくてもよい。]
  10. 前記光吸収剤は、下記式(B)で表される第二ホスホン酸と、銅成分とによって形成された第二光吸収剤を含む、請求項9に記載の光吸収膜。
    Figure 2021015244
    [R21は、アルキル基、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化アルキル基、アリール基、又は少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化アリール基である。]
  11. 前記式(A)において、R1は、パラ位におけるHammettの置換基定数が負である、又は、ハロゲン基である、請求項9又は10に記載の光吸収膜。
  12. 前記式(A)において、R1の前記置換基定数は−0.1以下である、請求項11に記載の光吸収膜。
  13. 前記式(A)において、R1はパラ位又はオルト位にある、請求項9〜12のいずれか1項に記載の光吸収膜。
  14. 前記式(A)において、リン原子がベンゼン環に直接結合している、請求項9〜13のいずれか1項に記載の光吸収膜。
  15. 請求項8〜14のいずれか1項に記載の光吸収膜を備えた、光学フィルタ。
  16. 0度の入射角度での透過率スペクトルにおいて、波長400nmにおける透過率T400、波長550nmにおける透過率T550、及び波長800nmにおける透過率T800は、4≦T550/T400及び8≦T550/T800の条件を満たす、請求項15に記載の光学フィルタ。
  17. 前記透過率スペクトルにおいて、下記(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び(VI)の条件をさらに満たす、請求項16に記載の光学フィルタ。
    (I)波長300nm〜380nmにおける最大の透過率が1%以下である。
    (II)波長400nmにおける透過率T400が20%以下である。
    (III)波長480nm以下において透過率が50%となる波長であるUVカットオフ波長λUVは、405nm≦λUV≦480nmの条件を満たす。
    (IV)波長480nm〜580nmにおける透過率の平均が78%以上である。
    (V)波長580nm〜750nmにおいて透過率が50%となる波長であるIRカットオフ波長λIRは、600nm≦λIR≦700nmの条件を満たす。
    (VI)波長800nm〜1100nmにおける最大の透過率が10%以下である。
  18. 前記透過率スペクトルにおいて、下記(α)、(β)、及び(γ)の条件をさらに満たす、請求項17に記載の光学フィルタ。
    (α)波長300nm〜450nmにおいて透過率が連続して1%以下である波長のレンジが85nm以上である。
    (β)波長700nm〜1200nmにおいて透過率が連続して1%以下である波長のレンジが200nm以上である。
    (γ)前記UVカットオフ波長λUVと前記IRカットオフ波長λIRとの差の絶対値が180nm以上である。
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