[1.医療トレーニング支援用センサシステムの概要]
(1)本実施の形態に含まれる医療トレーニング支援用センサシステムは、トレーナーによるトレーニーに対する医療トレーニングの支援用のセンサシステムであって、医療トレーニングを行うトレーニーが用いる器具に組み込み可能な、トレーニーの手技に伴う物理量を計測する、1以上のセンサと、センサから入力された計測値を用いた演算処理を行う演算装置と、トレーナー用のトレーナー装置、及び、トレーニー用のトレーニー装置と通信可能な通信装置と、備え、演算処理は、センサの計測値の分析処理と、分析処理の結果をトレーナー装置とトレーニー装置とに表示させるために送信する通信装置の制御処理と、を含む。
トレーニーの手技に伴う物理量は、例えば器具に与える押圧力や、内部の気圧、などである。センサは、例えば、圧力センサやひずみセンサなどである。センサが器具に組み込み可能であることから、医療トレーニング支援用センサシステムの構築のために専用のシミュレータを新たに用意する必要がなく、手持ちの器具を利用して医療トレーニング支援用センサシステムを構築できる。そのため、手持ちの器具を用いた医療トレーニングでの効果を高めることができる。
ここでのトレーナー装置とトレーニー装置とにデータを送信することは、トレーナー装置とトレーニー装置とがアクセス可能な、サーバなどの他の装置にデータを送信して記憶(アップロード)させることであってもよいし、トレーナー装置とトレーニー装置とにデータを直接送信することであってもよい。これにより、分析処理の結果がトレーナー装置とトレーニー装置とに表示される。そのため、トレーナーもトレーニーも、トレーニーによる医療トレーニングの状況を把握することができる。その結果、トレーニーはセルフフィードバックが可能になるとともに、トレーナーは、遠隔で適切な指示や指導をトレーニーに与えることができる。
(2)好ましくは、トレーナー装置及びトレーニー装置は、トレーナー装置からトレーニー装置への医療トレーニングにおける指示データの送信が可能な医療トレーニングシステムに含まれる。これにより、医療トレーニング支援用センサシステムを既存の医療トレーニングシステムを利用して構築することができる。
(3)好ましくは、器具は、胸骨圧迫のトレーニングに用いることが可能な、センサが予め組み込まれていない人型器具であって、物理量は、器具に与えられる圧力値である。これにより、医療トレーニング支援用センサシステムを用いて、胸骨圧迫のトレーニングを支援することができる。
(4)好ましくは、シミュレータは、人工呼吸のトレーニング用のバッグバルブマスクであり、物理量は、バッグバルブマスクのバッグからマスク本体までの流路内の気圧の値である。これにより、医療トレーニング支援用センサシステムを用いて、人工呼吸のトレーニングを支援することができる。また、マスク部とバッグとを接続するコネクタに圧力センサを配置することで、バッグバルブマスクが、自己膨張式蘇生バッグ、流量膨張式蘇生バッグ、Tピース蘇生装置に装着する蘇生バッグのいずれであってもシミュレータが利用可能となる。
(5)好ましくは、分析処理は、物理量の適否を分析する処理を含み、物理量の適否の分析は、物理量と理想値とを比較することを含む。理想値は、例えば、適正範囲や、物理量の理想的な経時変化を表す波形、などである。これにより、物理量の適否が分析結果として得られる。
(6)好ましくは、演算装置は、ユーザ操作を受け付けて理想値を設定可能である。これにより、シミュレータの種類や想定される患者に応じて、柔軟に理想値を設定できる。
(7)好ましくは、分析処理は、物理量の経時変化に基づいて手技の周期を分析する処理を含む。医療トレーニングにおいて手技の周期が重要な場合に、その分析結果が得られることは医療トレーニングにとって有意義なためである。
(8)好ましくは、制御処理は、通信装置に、トレーニー装置に対して手技の周期のガイドを出力させるデータを送信させる。これにより、トレーニーの手技の周期が適切にガイドされる。
(9)好ましくは、分析処理は、2以上のセンサによって同じ期間に計測された複数の物理量を用いる。2以上のセンサは、例えば、胸骨圧迫のトレーニング用のシミュレータに組み込まれたセンサと、バッグバルブマスクのバッグからマスク本体までの流路内に配置されたセンサと、を含む。これにより、例えば人口呼吸と胸骨圧迫など、同じ時期に複数の処置を行うための医療トレーニングにおいて、これら複数の手技の全体での適否を知ることができる。
[2.医療トレーニング支援用センサシステムの例]
[2.1 第1の実施の形態]
<医療トレーニング支援システムの構成>
図1に示されたように、医療トレーニング支援システム500は、トレーニーの用いるトレーニー装置1と、トレーナーの用いるトレーナー装置5と、を含む。さらに、医療トレーニング支援システム500は、トレーニー装置1とトレーナー装置5とのいずれもがアクセス可能なサーバ7を含む。トレーニー装置1及びトレーナー装置5とサーバ7との通信は、一例として、インターネット等の通信ネットワーク9を介するものである。
トレーニー装置1は、一例として、タブレット端末、スマートフォンなどである。トレーニー装置1は、無線通信2を行って通信ネットワーク9に接続してもよい。トレーナー装置5は、一例として、タブレット端末、一般的なパーソナルコンピュータ、などである。
サーバ7は、データベース71を有する。データベース71は、図1に示されたように、トレーニング用の設定値を記憶する設定用データベース711と、後述する分析結果を示すデータを記憶する計測値データベース712と、を含む。
<トレーナー装置の構成>
図1に示されたように、トレーナー装置5は、プロセッサ51を含む。プロセッサ51は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。トレーナー装置5のメモリには、トレーニング用プログラム53が記憶されている。プロセッサ51はトレーニング用プログラム53を読み出して実行することで、医療トレーニングの支援のための処理を実行する。
医療トレーニングの支援のための処理は、トレーニーによる医療トレーニングに必要な値を設定する処理を含む。プロセッサ51は、後述するタッチパネル52に対するユーザ操作によって医療トレーニングに必要な値を設定し、設定値を設定用データベース711に記憶(アップロード)させる。
トレーナー装置5は、一例としてタッチパネル52で示された、表示装置と入力装置とを有する。タッチパネル52は、トレーナーによる指示入力を受け付ける。トレーナーによる指示入力は、例えば、上記の設定値を入力する指示である。
プロセッサ51の実行する処理は、タッチパネル52に入力された指示に基づく処理を含む。タッチパネル52に入力された指示に基づく処理は、例えば、上記の医療トレーニングに必要な設定値を設定し、設定値をサーバ7にアップロードする処理である。また、プロセッサ51の実行する処理は、タッチパネル52に画面を表示する処理を含む。
<トレーニー装置の構成>
図1及び図2に示されたように、トレーニー装置1は、センサ3と通信可能な第1通信装置30を有する。センサ3と第1通信装置30との通信は、例えば、通信ケーブル4を介した通信である。第1通信装置30は、通信ケーブル4を介してセンサ3から、計測値を示すセンサ信号を受信する。
トレーニー装置1は、演算装置10を含む。演算装置10は、図2に示されたように、例えば、プロセッサ10Aによって実現される。すなわち、プロセッサ10Aは、センサ3から入力された計測値を用いた演算を行うことで、演算装置10として機能する。プロセッサ10Aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。
トレーニー装置1は、通信ネットワーク9を介してサーバ7と通信可能な第2通信装置50を含む。サーバ7と第2通信装置50との通信は、通信ネットワーク9への無線通信2を含んでもよい。
トレーニー装置1は、メモリ11を含む。メモリ11は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM、RAM(Random Access Memory)などを含む。メモリ11は、プロセッサ10Aの実行するプログラムを格納したり、医療トレーニングに必要なデータを格納したり、センサ3から受信されたセンサ信号に表されるデータを一時的に格納したりするために用いられる。プロセッサ10Aの実行するプログラムは、図2に示されたように、トレーニング用プログラム111を含む。
トレーニー装置1は、出力装置の一例として、モニタ12を有する。また、他の例として、スピーカ18を有してもよい。出力装置は、例えば、プロセッサ10Aでの上記演算の結果を出力する。プロセッサ10Aはメモリ11に格納されているプログラムを読み出して実行することで、出力装置での出力を制御する。プロセッサ10Aの行う計測値を用いた演算には、出力装置での出力の制御のための演算の少なくとも一部が含まれてもよい。
トレーニー装置1は、ユーザ操作を受付可能な操作部13を含む。操作部13は、例えば、ボタンである。また、モニタ12と一体となってタッチパネルを構成してもよい。操作部13は、ユーザ操作を示す操作信号をプロセッサ10Aに入力する。プロセッサ10Aは、計測値を用いた演算に操作信号を用いてもよいし、出力装置での出力の制御に用いてもよい。
<医療トレーニング支援用センサシステムの構成>
図1及び図2に示されたように、医療トレーニング支援用センサシステム100は、センサ3と、トレーニー装置1の一部と、を含む。言い換えると、トレーニー装置1は、医療トレーニング支援用センサシステム100の一部を含む。これにより、トレーニーの有するスマートフォンなどの端末装置にアプリケーションをダウンロードさせることで、トレーニー装置1を医療トレーニング支援用センサシステム100の一部とすることができ、医療トレーニング支援用センサシステム100の構築を容易にする。医療トレーニング支援用センサシステム100は、センサ3と、プロセッサ10Aによって実現される演算装置10と、第1通信装置30と、第2通信装置50と、を含む。
センサ3は、医療トレーニングに用いる器具に組み込み可能である。センサ3は、トレーニーの器具を用いた手技に伴う物理量を計測する。器具は、医療トレーニングを行うトレーニーが用いる器具であって、センサが予め組み込まれていない器具である。器具を用いた手技に伴う物理量は、トレーニーの手が手技として器具に触れることによって器具に生じる物理量であって、例えば圧力値である。
第1の実施の形態に係る医療トレーニング支援用センサシステム100は、新生児蘇生法の一つである新生児の胸骨圧迫のトレーニング用のセンサシステムである。図3に示されたように、センサ3は、胸骨圧迫のトレーニングに用いられる器具300に組み込まれる。器具300は、広く医療機関で用いられている新生児の体型や重量を再現した、新生児型(人型)器具である。その人型器具は、例えば、沐浴の練習や、おしめの取り換えの練習や、抱っこの練習、などに用いられる人型器具であってよい。
器具300を用いた新生児の胸骨圧迫のトレーニングでは、トレーニーは、人型の器具300の胸部を押す手技をトレーニングする。胸骨圧迫のトレーニングは、胸部を押す力のトレーニングを含む。さらに、押す位置のトレーニングを含んでもよい。胸骨圧迫は、心臓に適度な刺激を与えることが重要なためである。そのため、センサ3は、器具300の胸部に与えられる圧迫力を示す指標値を計測する。
センサ3は、器具300に組み込み可能である。器具300への組み込みは、一例として、器具300内部への組み込みである。すなわち、器具300の外郭は、シリコーン樹脂などの塑性変形する素材のパネル302で構成されている。パネル302の外周側はシリコーンゴムなどの皮膚を模した素材で構成された疑似皮膚301で覆われている。図3の部分300Aの拡大図に示されたように、疑似皮膚301とパネル302との間には間隙303が構成され、センサ3は、間隙303に組み込み可能である。器具300への組み込みは、他の例として、器具300の外郭を構成するシリコーン樹脂などのパネル302表面への着脱であってもよい・
センサ3が器具300に組み込み可能であることから、器具300は、専用の器具でなくても、手持ちの器具を採用し得る。すなわち、医療トレーニング支援用センサシステム100を用いると、専用のシミュレータを用意しなくても、手持ちの器具300にセンサ3を組み込むだけで、医療トレーニング支援用センサシステム100を利用した医療トレーニングを行うことができる。そのため、広く用いることができる。
センサ3は、図3の部分300Aに示された胸骨に与えられる圧力を示す指標値を計測可能なセンサである。圧力を示す指標値は一例として圧力そのものであり、その場合、センサ3は圧力センサ3Aである。なお、圧力を示す指標値は他の例としてひずみであってもよい。その場合、センサ3はひずみセンサなどであってもよい。また、センサ3は複数のセンサの組み合わせであってもよい。
圧力センサ3Aは、一例として、感圧素子が配置された圧力を計測する計測面31を疑似皮膚301とパネル302とのいずれかに向くように間隙303に組み込まれる。図3の例では、疑似皮膚301に向くように間隙303に組み込まれている。
計測面31が圧迫範囲に対して小さい場合には、図3に示されたように、計測面31を拡大するためのパネル状の拡大部材40をセンサ3の計測面31に取り付けてもよい。拡大部材40は、計測面31から離れるほど面積が大きくなる部材であって、より広い面積で圧力を受けて計測面31に伝える。図3の例では、センサ3の計測面31とその逆側面との両方に拡大部材40が取り付けられている。これにより、より正確に与えられた圧迫力を計測することができる。また、疑似皮膚301やパネル302の材質によって、外周側に与えられた圧力が間隙303に伝導されにくい場合には、拡大部材40を取り付けることでより正確に与えられた圧迫力を計測することができる。つまり、器具300の種類が代わっても正確に圧迫力を計測することができるため、センサ3を、様々な器具300に組み込んで使用することを可能にする。
<医療トレーニング支援方法>
本実施の形態に係る医療トレーニング支援システム500は、トレーニーによる新生児の胸骨圧迫のトレーニングを支援する。図4に示されたように、医療トレーニング支援システム500では、トレーナー装置5は、トレーナーから、トレーニング用の値を設定する指示入力を受け付ける(ステップS10)。
ステップS10の指示入力を受け付けたプロセッサ51は、トレーニング用プログラム53に従って、入力された値を設定値とする処理(設定処理)を実行する(ステップS11)。設定処理は、入力された値を設定値としてサーバ7に送信する処理(ステップS13A)を含む。設定値は、後述するトレーニー装置1での表示に用いられるものであるため、表示の指示とも言える。そのため、サーバ7に送信される設定値を示すデータは指示データとも言える。
サーバ7に送信された設定値は、設定用データベース711に格納される。設定用データベース711に格納された設定値は、トレーニング用プログラム111を実行しているトレーニー装置1に渡され(ステップS13B)、トレーニングに用いられる。具体的には、トレーニー装置1のプロセッサ10Aはトレーニング用プログラム111を実行することによって、設定値に基づいた、図5に示されたような医療トレーニング支援用画面121を生成してモニタ12に表示する(ステップS15)。医療トレーニング支援用画面121は、医療トレーニングのあるシーンにおける生体状態を示す情報を表示する画面であって、一例として、動脈血酸素飽和度(SpO2)と心拍数とを表示する画面である。
トレーニー装置1のプロセッサ10Aは、トレーニング用プログラム111の実行に従ったタイミングでS15の処理を実行する。すなわち、トレーニー装置1のプロセッサ10Aは、トレーニング用プログラム111の実行に従ったタイミングでサーバ7から設定値を取得して画面表示を行う。
これにより、医療トレーニング中、トレーニー装置1のモニタ12に表示される医療トレーニング支援用画面121はサーバ7から設定値を受け取るたびに変化する。すなわち、医療トレーニング中、トレーニー装置1のモニタ12に表示される動脈血酸素飽和度の値と心拍数の値とは、医療トレーニングの進行に従って変化する。
トレーニーは、器具300を用いて医療トレーニングを行いつつ、医療トレーニング支援用画面121を見ることで、あたかも被験者のパルスオキシメータでの計測値を見ながら手技を行っているような感覚で医療トレーニングを行うことができる。
医療トレーニング支援システム500において上記の処理が行われているとき、医療トレーニング支援用センサシステム100は処理を実行している(ステップS30)。ステップS30の処理の具体的な流れについては後述する。
ステップS30の処理によってサーバ7にデータが送信されると、トレーナー装置5は、サーバ7からそのデータを読み出して画面表示を行う(ステップS17)。トレーナーは、その画面を見てトレーニーに与える指示をトレーナー装置5に入力することができる(ステップS18)。
ステップS18では、トレーナー装置5のタッチパネル52には、例えば図6の指示入力画面521が表示される。指示入力画面521は、動脈血酸素飽和度の値と心拍数の値との、トレーナーによる設定を受け付ける画面である。指示入力画面521では、さらに、鳴き声の有無や大きさ、タイマーによる計時の開始、終了、リセットの指示、後述する医療トレーニング支援用センサシステム100での処理によって送られたデータに基づく画面表示の有無、などの設定を受け付けてもよい。
トレーナー装置5のプロセッサ51は、指示入力画面521で受け付けた値を設定値とする処理(設定処理)を実行する(ステップS19)。ステップS19の設定処理はステップS11の設定処理と同様であって、入力された値を設定値としてサーバ7に送信する処理(ステップS20A)を含む。
サーバ7に送信された設定値は、設定用データベース711に格納される。設定用データベース711に格納された設定値は、トレーニング用プログラム111を実行しているトレーニー装置1に渡され(ステップS13B)、トレーニー装置1のプロセッサ10Aは、設定値に基づいた医療トレーニング支援用画面をモニタ12に表示する(ステップS21)。ステップS21の表示は、モニタ12に表示されている医療トレーニング支援用画面121における動脈血酸素飽和度の値や心拍数の値が変更されることであってもよい。また、併せて、スピーカ18から新生児の泣き声が音声出力されてもよい。
<医療トレーニング支援用センサシステムの処理>
図4のステップS30では、図7の処理が行われる。なお、医療トレーニング中、本実施の形態に係る医療トレーニング支援用センサシステム100の圧力センサ3Aは、器具300に組み込まれて用いられる。
圧力センサ3Aは圧力を計測し(ステップS31)、計測値を示すセンサ信号を出力する(ステップS33)。トレーニー装置1のプロセッサ10A、すなわち、医療トレーニング支援用センサシステム100の演算装置10は、連続的に、又は、短い間隔で、センサ信号の入力を受け付け、メモリ11に記憶させる。
演算装置10は、メモリ11からセンサ信号を読み出して演算処理を実行する(ステップS35)。ステップS35の演算処理は、分析処理(ステップS351)を含む。ステップS351の分析処理は、圧力センサ3Aでの計測値を分析する処理であって、測定値の適否を分析する処理である。測定値の適否の分析は、測定値と、理想的な測定値である理想値と、を比較することを含む。理想値は、例えば、理想的な測定値の範囲である、適正範囲である。一例として、分析処理は、図8に表された処理である。
すなわち、図8を参照して、演算装置10は、メモリ11からセンサ信号を読み出す(ステップS101)。演算装置10は、センサ信号の示す値(センサ値と表されている)から圧力値を算出する(ステップS103)。
胸骨圧迫のトレーニング中のセンサ3から入力されるセンサ信号は、連続した、又は、短い間隔での時系列の圧力値、つまり、圧力変化を示している。演算装置10は、各センサ信号の値に基づいて圧力値を算出するとともに、センサ信号に含まれる計測時を示すデータに基づいて算出された圧力値を時系列にメモリ11に記憶させる。時系列にメモリ11に記憶させることは、算出された圧力値ごとに計測時を示すデータと対応付けてメモリ11に記憶させることや、計測順にメモリ11に記憶させること、などである。
演算装置10は、算出された時系列の圧力値の中から、トレーニーが胸骨圧迫のトレーニングにおいて、器具300に一拍ごとに与える圧力の最大値であるピーク圧力値Pを特定する。ピーク圧力値Pは、トレーニーによる胸骨圧迫の手技の程度を表す値である。演算装置10は、一例として、センサ信号の示す各圧力値の変化に基づいて、その極大値をピーク圧力値Pとする。ピーク圧力値Pはメモリ11に記憶される。
演算装置10は、メモリ11からピーク圧力値Pを読み出すとともに、適正範囲Rも読み出す(ステップS105)。適正範囲Rは、新生児の胸骨圧迫に適正とされる圧力値の範囲であって、最低値R1及び最高値R2で規定される。新生児蘇生における胸骨圧迫は、胸郭の厚み(前後径)の1/3程度が望ましいとされている。そのため、最低値R1及び最高値R2は、一般的な新生児の胸郭の厚みの1/3を基準として得られる値である。
適正範囲Rは、サーバ7に予め記憶されている固定の値であってもよく、その場合、ステップS105で演算装置10は、サーバ7から適正範囲Rを示す最低値R1及び最高値R2を読み出す。又は、適正範囲Rは、操作部13に対するユーザ操作によって指定されてもよい。蘇生対象に想定される新生児の年齢(サイズ)、器具300の種類、などによって適正な圧力が異なる場合があるためである。その場合、ステップS105で演算装置10は、操作部13から受け付けた操作信号に示された最低値R1及び最高値R2を設定する。ユーザ操作に基づいて適正範囲Rを設定可能とすることで、蘇生対象に想定される新生児の年齢や器具300の種類などに応じて適切な適正範囲Rを設定することができる。
演算装置10は、ピーク圧力値Pと適正範囲R(最低値R1及び最高値R2)とを比較することで、ピーク圧力値Pが適正であるか否かを分析する(ステップS107)。すなわち、ピーク圧力値Pが最低値R1から最高値R2の間にあるとき(ステップS109でYES)、演算装置10は、ピーク圧力値Pの分析結果を「適正」とする(ステップS111)。この場合、演算装置10は、ピーク圧力値Pに分析結果「適正」を示すデータを関連付けてメモリ11に記憶させる。
ピーク圧力値Pが最低値R1から最高値R2の間にないとき(ステップS109でNO)、演算装置10は、ピーク圧力値Pの分析結果を「不適正」とする(ステップS113)。この場合、演算装置10は、ピーク圧力値Pに分析結果「不適正」を示すデータを関連付けてメモリ11に記憶させる。
演算装置10は、胸骨圧迫のトレーニング中、図8の分析処理(ステップS351)を繰り返す。これにより、トレーニーが胸骨圧迫のトレーニング中に器具300に与えた圧迫力が適正であるか否かが、圧迫動作ごとに分析される。
図7のステップS35の演算処理は、制御処理(ステップS352)を含む。制御処理は、図8に示された分析処理(ステップS351)の結果をトレーナー装置5とトレーニー装置1とに表示させるようにサーバ7に送信するよう、第2通信装置50を制御する処理を含む。
好ましくは、ステップS352の制御処理は、図9に示された、分析処理の結果を出力させるデータを生成する処理を含む。すなわち、図9を参照して、演算装置10は、所定期間Tの圧力値及びピーク圧力値Pに関連付けて記憶されている分析結果をメモリ11から読み出す(ステップS201)。所定期間Tは、一度に分析処理の結果を出力する期間であって、例えば、一秒などである。好ましくは、ステップS201で演算装置10は、極大値であるピーク圧力値Pのみならず、センサ信号から時系列に得られたすべての圧力値をメモリ11から読み出す。
分析処理の結果の出力は、一例として、グラフ表示である。その場合、演算装置10は、予め記憶しているグラフのフォーマット上における各圧力値の表示位置を決定する(ステップS203)。
さらに、演算装置10は、関連付けて記憶されている分析結果に応じて、ピーク圧力値Pごとの表示態様を決定する。すなわち、ピーク圧力値Pに分析結果「適正」が関連付けられていた場合(ステップS205でYES)、演算装置10は、分析結果「適正」に対応付けて予め記憶している表示態様をピーク圧力値Pの表示態様と決定し、その表示態様で表示させるように表示データを生成する。
ピーク圧力値Pに分析結果「不適正」が関連付けられていた場合(ステップS205でNO)、演算装置10は、分析結果「不適正」に対応付けて予め記憶している表示態様をピーク圧力値Pの表示態様と決定し、その表示態様で表示させるように表示データを生成する。表示態様は、例えば、色、サイズ、太さ、マークの形状、字体、それらの組み合わせ、などである。
分析処理の結果の出力は、グラフ表示に加えて、音声出力であってもよい。すなわち、ピーク圧力値Pに分析結果「適正」が関連付けられていた場合(ステップS205でYES)、演算装置10は、分析結果「適正」に対応付けて予め記憶している音声をピーク圧力値Pを表す出力音声と決定し、その音声で圧ピーク力値Pを表すように音声データを生成する。ピーク圧力値Pに分析結果「不適正」が関連付けられていた場合(ステップS205でNO)、演算装置10は、分析結果「不適正」に対応付けて予め記憶している音声を圧力値Pを表す出力音声と決定し、その音声でピーク圧力値Pを表すように音声データを生成する。
演算装置10は、所定期間Tに含まれるすべての圧力値について生成された表示データ(及び音声データ)に基づいて所定期間Tの出力データを生成し(ステップS215)、第2通信装置50にサーバ7に送信させる(ステップS217)。
図7に示されたように、出力データはサーバ7に送信されて(ステップS37)、測定値データベース712に格納(アップロード)される。演算装置10は、医療トレーニング中、図9の分析処理の結果を出力させるデータを生成する処理を含む制御処理を繰り返す。これにより、医療トレーニング中、サーバ7の測定値データベース712に出力データがアップロードされる。
出力データはトレーナー装置5とトレーニー装置1とに渡される(ステップS38A,S38B)。これにより、医療トレーニング中、トレーナー装置5とトレーニー装置1とには、図10に示されたような、演算装置10での分析結果を示すモニタ画面200が表示される(ステップS39、S41)。
図10を参照して、モニタ画面200は、一例として、時間を横軸、圧力を縦軸とし、圧力値の時間経過を表したグラフ200Aを含む。グラフ200Aには、所定期間Tでの圧力値の時間変化を示す曲線201が描かれる。曲線201中に、算出されたピーク圧力値Pを表す点202が示されている。図10の例では、時刻t1,t2,t3、t4にそれぞれピーク圧力値P1,P2,P3,P4を表す点202が示されている。
グラフ200Aには、適正範囲Rを規定する最低値R1を示す直線203、及び、最高値R2を示す直線204が表示されている。これにより、直線203と直線204とに挟まれた範囲が適正範囲Rであることがグラフ200Aに示される。その結果、ピーク圧力値P1,P2,P3,P4を表す点202が適正範囲Rにあるか否かがわかる。
好ましくは、分析結果「不適切」が関連付けられたピーク圧力値Pは、「適切」が関連付けられたピーク圧力値Pとは異なる表示態様で表示される。グラフ200Aでは、ピーク圧力値P1,P2が適正範囲R外にあり、分析結果「不適切」が関連付けられたものである。グラフ200Aでは、ピーク圧力値P1,P2を示す点202は、他のピーク圧力値P3,P4それぞれを示す点202よりも大きい。これにより、各ピーク圧力値Pが適正範囲Rにあるか否かが一目でわかる。
好ましくは、グラフ200Aの表示は、計測タイミングに応じて動的に表示される。すなわち、図10の例では、曲線201は、センサ3で計測されたスピードに応じて計測時の早い点から遅い点に順に表示される。このとき、好ましくは、点202が表示されるタイミングに、各点202に示されるピーク圧力値Pに関連付けられた分析結果に応じた音声も出力される。
図10に示された音声出力205は、表示された位置の近傍のピーク圧力値Pの点202が表示されるタイミングに応じて出力される音声であることを示している。図10の例では、ピーク圧力値P3,P4には分析結果「適切」が関連付けられているため、ピーク圧力値P3,P4それぞれを示す点202がグラフ200Aに表示されるタイミングに、分析結果「適切」に対応した音声「Pi」が出力される。ピーク圧力値P1,P2には分析結果「不適切」が関連付けられているため、ピーク圧力値P1,P2を示す点202がグラフ200Aに表示されるタイミングには、分析結果「適切」に対応した音声「Pi」が出力されない。これにより、グラフ200Aではピーク圧力値を示す点202が表示されているにも関わらず音声「Pi」が出力されない。そのため、ピーク圧力値P1,P2には分析結果「不適切」に対応していることがわかる。
なお、ピーク圧力値P1,P2を示す点202がグラフ200Aに表示されるタイミングに、分析結果「適切」に対応した音声「Pi」とは異なる、分析結果「不適切」に対応した音声が出力されてもよい。又は、適正範囲Rを下回っているピーク圧力値P1と上回っているピーク圧力値P2とで、異なる音声が出力されてもよいし、一方のみ分析結果「不適切」に対応した音声が出力されてもよい。これにより、モニタ画面200を見ていなくても器具300に与えた圧迫力が適切であったか否かが、一拍ごとにわかる。
図10に示された出力を行わせる出力データは、演算装置10の制御処理によってトレーニー装置1とトレーナー装置5との両方に送信される。これにより、図10に示された出力は、トレーニー装置1とトレーナー装置5との両方で行うことができる。
トレーニー装置1のモニタ12に図10のモニタ画面200が表示されることで、トレーニーは、モニタ12を見ることで、自分の胸骨圧迫のトレーニングの状態を概ねリアルタイムに把握することができるとともに、適切であるか否かの分析結果も得ることができる。そのため、トレーニーは医療トレーニングにセルフフィードバックすることができる。
さらに、ピーク圧力値Pの表示されるタイミングでスピーカ18から音声出力205がなされることで、トレーニーは、胸骨圧迫のトレーニング中にモニタ12を見ず、手技に集中していても、音声にて、自分の胸骨圧迫のトレーニングが適切であるか否かの分析結果が得られる。そのため、トレーニーはトレーニングしながらセルフフィードバックすることができる。
トレーナー装置5のタッチパネル52に図10のモニタ画面200が表示されることで、トレーナーは、トレーニーから遠隔であっても、トレーナー装置5を用いてトレーニーによる胸骨圧迫のトレーニングの状態を概ねリアルタイムに把握することができるとともに、適切であるか否かの分析結果も得ることができる。そのため、トレーナーは、トレーニーから遠隔であっても、トレーニング状況を正確に把握でき、適切な指示や指導を行うことができる。
[2.2 第2の実施の形態]
医療トレーニング支援用センサシステム100は、胸骨圧迫のトレーニング用のセンサシステムに限定されず、他の医療トレーニング支援用のセンサシステムであってもよい。他の医療トレーニングは、例えば、人口呼吸のトレーニングである。その場合、センサ3は、図11に示されたように、バッグバルブマスクと呼ばれる、口腔よりマスクにて他動的に換気を行うための医療機器に組み込まれる。バッグバルブマスクは、例えば、自己膨張式蘇生バッグ、流量膨張式蘇生バッグ、及び、Tピース蘇生装置に装着する蘇生バッグ、などである。
詳しくは、図11を参照して、バッグバルブマスク400は、図示しない空気のリザーバに接続可能なバッグ401と、バッグ401への空気の流入を防ぐバルブ405と、患者の顔面に装着するマスク402と、を含む。マスク402は、患者の顔面に当てるマスク本体402Aと、その上部を覆うカバー402Bと、を備える。
バルブ405とマスク402とはコネクタ403によって接続される。バルブ405の接続されたバッグ401とマスク402とは、それぞれ、独立して販売される場合がある。そのため、バルブ405の備えるジョイント405Aのサイズと、マスク402の備えるジョイント402Cのサイズとは、それぞれ規定サイズとなっている。
コネクタ403は、バルブ側の開口403Aと、マスク側の開口403Bと、を有し、それぞれのサイズが上記規定サイズに対応したサイズである。開口403Aにはバルブ405のジョイント405Aが接続され、開口403Bにはマスク402のジョイント402Cが接続される。コネクタ403は、さらに、マノメータ404が取り付け可能であってもよい。
バッグバルブマスク400を用いた人工呼吸のトレーニングでは、トレーニーは、バッグ401を押す手技をトレーニングする。人工呼吸のトレーニングは、バッグを押す力のトレーニングと、押すタイミング(周期)のトレーニングと、の少なくとも一方を含む。人口呼吸は、患者への送気圧力と、送気タイミング(周期)と、が重要なためである。そのため、センサ3は、マスク402に送気される空気の圧力(気圧)を示す指標値を計測する。
第2の実施の形態に係る医療トレーニング支援用センサシステム100において、センサ3は、バッグ401からマスク本体402Aまでの流路内に組み込まれる。センサ3が流路内に組み込み可能であることから、予めセンサが組み込まれた専用のバッグバルブマスクを用意しなくても、手持ちのバッグバルブマスク400の内部に組み込んで用いることができる。
好ましくは、図11に示されたように、コネクタ403内に組み込まれる。センサ3がコネクタ403内に組み込み可能であることから、バッグバルブマスク全体を専用のものを用意することなく、コネクタのみセンサ3が装着されたコネクタ403を用意すればよい。また、バッグバルブマスクが、自己膨張式蘇生バッグ、流量膨張式蘇生バッグ、Tピース蘇生装置に装着する蘇生バッグのいずれであっても利用可能となる。そのため、手持ちのバッグ401及びマスク402を用いて医療トレーニング支援用センサシステム100を利用した医療トレーニングを行うことができる。これにより、広く用いることができる。
センサ3は、流路内の送気圧力を示す指標値を計測可能なセンサである。送気圧力を示す指標値は一例として圧力そのものであり、その場合、センサ3は圧力センサ3Bである。なお、送気圧力を示す指標値は他の例としてひずみであってもよい。その場合、センサ3はひずみセンサなどであってもよい。また、センサ3は複数のセンサの組み合わせであってもよい。
第2の実施の形態に係る医療トレーニング支援用センサシステム100でも、図4、図7、図8、及び、図9に示された処理と同様の処理が行われ、トレーニーの手技による送気圧力及び送気圧力が適切であるか否かの分析結果が、トレーニー装置1とトレーナー装置5との両方に、モニタ画面200のような画面で表示可能となる。また、好ましくは、音声出力も可能となる。これにより、人工呼吸のトレーニングでも、医療トレーニング支援用センサシステム100を利用することで、トレーニーはトレーニングしながらセルフフィードバックすることができる。また、トレーナーは、トレーニーから遠隔であっても、トレーニング状況を正確に把握でき、適切な指示や指導を行うことができる。
さらに、医療トレーニング支援用センサシステム100は、胸骨圧迫のトレーニング及び人口呼吸のトレーニング以外のあらゆる医療トレーニングに用いられてもよい。例えば、聴診器を用いた心音聴診トレーニングの場合、トレーニーが心音を聴音したタイミングで、圧力センサやひずみセンサなどであるセンサ3を取り付けた物体(例えばスマートフォンの画面)をタップすればよい。すなわち、医療トレーニング支援用センサシステム100は、トレーニーの手技によって直接変化する物理量のみならず、手技によって得られた情報を示す物理量(上記のトレーニーによるタップ)を計測するようにしてもよい。このような技術思想を採用することで、医療トレーニング支援用センサシステム100は、あらゆる医療トレーニングに用いることができる。
[2.3 第3の実施の形態]
トレーニーによる手技に伴う物理量として計測される値は圧力(気圧)を示す指標値に限定されず、周期であってもよい。上記したように、周期も医療トレーニングの対象となるためである。そのため、演算装置10の実行する分析処理は、さらに、トレーニーによる手技の周期を分析する処理を含んでもよい。この場合、演算装置10は、分析処理において、図8の処理に加えて、図12の処理を実行する。
すなわち、図12を参照して、演算装置10は、メモリ11から、所定期間についての、センサ信号より得られた圧力値を読み出す(ステップS301)。圧力値は、メモリ11に時系列に記憶されている。
演算装置10は、メモリ11から読み出した時系列の圧力値の変化に基づいて、その極大値を、トレーニーが医療トレーニングにおける手技で、一拍ごとに与える圧力の最大値として特定する(ステップS303)。医療トレーニングは、器具300を用いた胸部圧迫のトレーニングであっても、バッグバルブマスク400を用いた人工呼吸のトレーニングであってもよい。前者の場合、一拍ごとに与える圧力は器具300に与える圧迫力を示す。後者の場合、一拍ごとに与える圧力はバッグ401に与える押圧力を示す。
演算装置10は、ステップS303で複数の極大値を特定し、隣接する極大値間の時間を周期tとして算出する(ステップS305)。算出した周期tは、メモリ11に記憶される。
演算装置10は、算出された周期tについて、ピーク圧力値Pと同様に、理想値と比較することによって適否を分析してもよい。その場合、図8のステップS105以下の処理と同様の処理を周期tに対して行えばよい。すなわち、演算装置10は、理想値として予め記憶されている周期の適正範囲と周期tとを比較して、適正範囲内であれば分析結果を「適正」、そうでなければ「不適正」としてメモリ11に記憶する。これにより、周期tについても図10のモニタ画面200と同様にして、トレーニー装置1にもトレーナー装置5にも表示させることができる。
なお、この場合、演算装置10の実行する制御処理は、さらに、トレーニー装置1に周期のガイドを出力させる処理を含んでもよい。周期のガイドは、モニタ12でのマーク等の表示であってもよいし、スピーカ18からの音声出力であってもよい。そのため、ガイドを出力させる処理では、演算装置10は、トレーニー装置1のモニタ12やスピーカ18に対して、出力のためのデータを渡すとともに出力を指示する制御信号を出力する。これにより、トレーニーの手技の周期(例えば、胸骨圧迫の周期や人工呼吸の周期)が適切な周期になるようトレーニングされる。
ガイドを出力させる処理では、分析処理での分析結果を利用してもよい。例えば、演算装置10は、分析結果「不適切」が所定数、連続したときにガイドを出力させる処理を実行してもよい。これにより、効果的にガイドを出力させることができるとともに、不要なときにガイドの出力を抑えることができる。
さらに、トレーニーによる手技に伴う物理量として計測される値は、圧力を示す指標値、及び、周期の他、手技に伴う物理的な変化量であってもよい。物理的な変化量とは、例えば、所定時間当たりの圧力の変化量である。手技が胸骨圧迫のトレーニングや人工呼吸のトレーニングでは、一周期での圧力変化が計測されてもよい。必要な血液量や空気量が患者に送られることが重要であるためである。
この場合、分析処理では、周期tにおける圧力値の変化量を短い時間間隔での微分値の変化や、周期tにおける圧力値の積分値などによって求めて、理想値値と比較することで「適切」又は「不適切」の分析結果を得るようにしてもよい。
具体的には、圧力の変化は、圧力値の時間変化を示す波形で表すことができる。分析処理では、一拍分の圧力の測定値を示す信号が入力されると、一拍分の圧力値を時間的に正規化し、理想値である圧力値の理想的な波形との差を表す面積の大小で評価することができる。
[2.4 第4の実施の形態]
演算装置10の分析処理は、1以上のセンサによって同じ期間に計測された、異なる複数の計測値が用いられてもよい。そのため、第4の実施の形態に係る医療トレーニング支援用センサシステム100は、複数のセンサ3を含む。複数のセンサ3は、例えば、第1の実施の形態で説明された圧力センサ3A、及び、第2の実施の形態で説明された圧力センサ3Bである。新生児蘇生のアルゴリズムの中には、人口呼吸と胸骨圧迫との両方を同じ期間に行う場合があるためである。
分析処理は、各センサ信号から得られた指標値それぞれについて、適否を分析する処理を含む。この処理は、第1〜第3の実施の形態に係る医療トレーニング支援用センサシステム100での分析処理と同じである。
第4の実施の形態に係る医療トレーニング支援用センサシステム100における分析処理は、さらに、同じ期間の異なるセンサによって得られた指標値の分析結果がすべて「適正」であるか否かを分析する処理を含んでもよい。これにより、一つの処置に複数の手技が必要となる場合に、その医療トレーニングにおいてその処置自体が適切に行われるようなトレーニングを支援することができる。
[2.5 第5の実施の形態]
他の例として、医療トレーニング支援用センサシステム100が、トレーニーによる自主的な医療トレーニングの支援システムに用いられてもよい。この場合、支援システムは少なくともトレーニー装置1とサーバ7とを含む。この支援システムでは、設定値が予め設定用データベース711に格納されており、トレーニー装置1が設定用データベース711から設定値を取得することで医療トレーニング時の表示を行うことができる。
医療トレーニング支援用センサシステム100は、上記と同様にして、センサ3で計測された、トレーニーの医療トレーニングにおける手技による物理量を分析し、分析結果をサーバ7の測定値データベース712に格納する。好ましくは、医療トレーニング支援用センサシステム100は、分析結果をユーザ又はトレーニー装置1と関連付けて測定値データベース712に格納する。この場合の関連付けは、例えば、ユーザ認証などによって行われる。
この場合、トレーニー装置1のプロセッサ10Aはサーバ7にアクセスして、ユーザ認証等によって関連付けが確認された分析結果をサーバ7から取得しモニタ12に表示することができる。また、分析結果だけでなく、医療トレーニングの内容(例えば、用いた設定値)なども表示させてもよい。これにより、ユーザは、自身の過去の医療トレーニングの分析結果(習熟度の記録)や過去の医療トレーニングの内容を見ることができる。
[2.6 第6の実施の形態]
時間を決めて催される医療トレーニングのように、特定のタイミングだけでなく、業務の空き時間でなどを用いて自発的に、また、継続して定期的に医療トレーニングを行える環境を備えたいという要望もある。この場合、医療トレーニング支援用の機材として、病棟などに、胸骨圧迫センサ付き人型、センサ付きエアバッグ、計測装置などを配置することが考えられる。また、自主的な医療トレーニングであるため、トレーナーの替わりに学習指示を出力する出力装置、記録装置などがさらに配置されることが望ましい。
そこで、医療トレーニング支援システム500を、トレーナーの直接的な指導を受けずトレーニーのみで自主的に医療トレーニングを行う際にも用いてもよい。この場合、医療トレーニング支援システム500に含まれるトレーナー装置5は、トレーナーの用いる装置に替えて、トレーニー装置1に学習指示を出力する出力装置として機能する。トレーナー装置5では、トレーニー装置1からの信号の入力を受け付けてプロセッサ51がトレーニング用プログラム53を実行する。
医療トレーニング支援用センサシステム100の演算装置10は、メモリ11からセンサ信号を読み出して演算処理を実行し、分析結果を表示する。その際、例えば数値化するなど、分析結果に演算処理を加えて表示してもよい。好ましくは、演算装置10は、分析結果とともに、理想の測定値とするためのアドバイスを表示する。そのために、演算装置10は、理想の測定値からの差分に応じたアドバイスを予め記憶しておいてもよい。これにより、トレーニーは、トレーナーがない場合でも、自発的な医療トレーニングを効果的に行うことができる。
好ましくは、演算装置10は、トレーニング結果として、分析結果をサーバ7に記憶させる。演算装置10又はトレーナー装置5は、トレーニング時に、サーバ7から読み出した設定値に対して、サーバ7に記憶されたトレーニーの分析結果を考慮した設定値を用いる。例えば、分析結果「不適切」が閾値以上の回数、連続している手技については、サーバ7から読み出した設定値を変化させることが挙げられる。これにより、トレーニングしやすくしたり、効果的なトレーニングとしたりすることができる。
また、サーバ7に記憶されたトレーニーの分析結果に基づいて、トレーニーのトレーニング目標が設定されてもよい。例えば、演算装置10又はトレーナー装置5は、直近の測定値よりも規定量、適切な側に変化させた測定値を目標値として設定し、トレーニー装置5に表示させてもよい。
好ましくは、第6の実施の形態に係る医療トレーニング支援用センサシステム100では、サーバ7に記憶された分析結果は、複数のトレーニー装置1やトレーナー装置5で読出し可能とする。これにより、例えば、病院スタッフなど、医療トレーニング支援用センサシステム100が設置されたところのユーザ間で、トレーニングの継続的な手技向上の評価や成果を共有することができる。
[2.7 第7の実施の形態]
以上の説明では、医療トレーニング支援用センサシステム100の一部がトレーニー装置1に含まれるものとしているが、医療トレーニング支援用センサシステム100の一部が、トレーナー装置5に含まれてもよい。また、トレーニー装置1とトレーナー装置5とにそれぞれ含まれてもよい。
逆に、医療トレーニング支援用センサシステム100は、トレーニー装置1にもトレーナー装置5にも含まれないものであってもよい。この場合、医療トレーニング支援用センサシステム100は、すべて、トレーニー装置1及びトレーナー装置5とは異なる装置となる。これにより、複数のトレーニー装置1や複数のトレーナー装置5とも接続可能とすることができる。その結果、トレーナーとトレーニーとの組み合せの自由度を高めることができる。
なお、医療トレーニング支援用センサシステム100の演算装置10がトレーニー装置1に含まれない場合、以上の説明でトレーニー装置1のモニタ12に表示させたり、スピーカ18から音声出力させたりする制御処理は、第2通信装置50にトレーニー装置1に送信させる処理となる。
また、以上の説明では、トレーニー装置1及びトレーナー装置5はそれぞれ、サーバ7とデータのやり取りを行うものとしているが、トレーニー装置1とトレーナー装置5とが直接無線通信等を行ってデータのやり取りを行ってもよい。トレーニー装置1とトレーナー装置5との通信は、トレーニー装置1とトレーナー装置5との直接のデータのやり取りも、サーバ7を介してのデータのやり取りも、どちらも含む。
[3.付記]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。