JP2021012102A - がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定するための方法 - Google Patents

がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定するための方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本開示の目的の1つは、がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定するための方法を提供することである。本開示の目的の1つは、新たながんの処置方法を提供することである。【解決手段】がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定するための方法であって、がん患者から採取された試料中の少なくとも1つの短鎖脂肪酸のレベルに基づいて、当該患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定することを含む方法が提供される。また、上記の判定方法により免疫チェックポイント阻害剤に対して応答性であると判定されたがん患者に免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む、がんの処置方法が提供される。【選択図】図17

Description

本願は、がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定するための方法に関する。
近年、がんの治療法として、免疫チェックポイント阻害剤が注目されている。日本国内では、例えば、抗PD−1抗体のニボルマブおよびペムブロリズマブ、抗PD−L1抗体のアベルマブ、アテゾリズマブおよびデュルバルマブが、各種のがんの治療に承認されている。多くのがん患者において免疫チェックポイント阻害剤により高い治療効果が得られる一方で、免疫チェックポイント阻害剤が奏効しない患者も存在する。現在、がん患者における免疫チェックポイント阻害剤の奏効を予測する方法は確立されていない。
免疫チェックポイント阻害剤の奏効割合に腸内細菌叢の構成が関係することが複数報告されたが、同定された腸内細菌種は多様で、統一された見解はない。例えば、マウスモデルにおいてビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)およびビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium logum)が抗PD−L1抗体の奏効と関連すること(非特許文献1)、肺癌、腎癌、膀胱癌患者において、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)が抗PD−1抗体の奏効と関連し、バクテロイデス門(Bacteroidetes)が非奏効と関連すること(非特許文献2)、メラノーマ患者において、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)およびフィーカリバクテリウム属(Faecalibacterium)が抗PD−1抗体の奏効と関連し、バクテロイデス目(Bacteroidales)が非奏効と関連すること(非特許文献3)、メラノーマ患者において、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)およびバクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)が抗CTLA4抗体イピリムマブの奏効と関連すること(非特許文献4)、メラノーマ患者において、フィーカリバクテリウム属およびファーミキューテス属(Firmicutes)がイピリムマブの有効性に関連すること(非特許文献5)が報告されている。
Sivan A, et al. Science 2015;350:1084-1089. Routy B, et al. Science 2018;359:91-97. Gapalakrishnan V, et al. Science 2018;359:97-103. Vetizou M, et al. Science 2015;350:1079-1084. Chaput N, et al. Ann Oncol 2017;28:1368-1379.
本開示の目的の1つは、がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定するための方法を提供することである。本開示の目的の1つは、新たながんの処置方法を提供することである。
本発明者らは、がん患者から採取された試料における短鎖脂肪酸のレベルが、免疫チェックポイント阻害剤による治療に対する応答性と相関することを見出した。
従って、ある態様では、がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定するための方法であって、がん患者から採取された試料中の少なくとも1つの短鎖脂肪酸のレベルに基づいて、当該患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定することを含む方法が提供される。
ある態様では、上記の判定方法により免疫チェックポイント阻害剤に対して応答性であると判定されたがん患者に免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む、がんの処置方法が提供される。
本願の開示に従い、がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定できる。また、それにより免疫チェックポイント阻害剤に応答性であると判定された患者に免疫チェックポイント阻害剤を投与することにより、がんを処置し得る。
便試料の分析方法の概要を示す。 ニボルマブ治療に対する非応答群および応答群の患者の便における、酢酸のレベルを示す。 ニボルマブ治療に対する非応答群および応答群の患者の便における、プロピオン酸のレベルを示す。 ニボルマブ治療に対する非応答群および応答群の患者の便における、酪酸のレベルを示す。 ニボルマブ治療に対する非応答群および応答群の患者の便における、イソ酪酸のレベルを示す。 ニボルマブ治療に対する非応答群および応答群の患者の便における、吉草酸のレベルを示す。 ニボルマブ治療に対する非応答群および応答群の患者の便における、イソ吉草酸のレベルを示す。 ニボルマブ治療に対する非応答群および応答群の患者の便における、ヒドロアンゲリカ酸のレベルを示す。 ニボルマブ治療に対する非応答群および応答群の患者の便における、カプロン酸のレベルを示す。 ニボルマブ治療に対する非応答群および応答群の患者の便における、メチル吉草酸のレベルを示す。 ニボルマブ治療に対する非応答群および応答群の患者の便における、コハク酸のレベルを示す。 ニボルマブ治療に対する非応答群および応答群の患者の便における、全短鎖脂肪酸のレベルを示す。 酢酸高値群および低値群の無増悪生存期間(PFS)を示す、カプランマイヤー(Kaplan-Meier)曲線である。中央値をカットオフ値とした。 プロピオン酸高値群および低値群のPFSを示すカプランマイヤー曲線である。中央値をカットオフ値とした。 酪酸高値群および低値群のPFSを示すカプランマイヤー曲線である。中央値をカットオフ値とした。 吉草酸高値群および低値群のPFSを示すカプランマイヤー曲線である。中央値をカットオフ値とした。 全短鎖脂肪酸高値群および低値群のPFSを示すカプランマイヤー曲線である。中央値をカットオフ値とした。 酪酸高値群および低値群のPFSを示すカプランマイヤー曲線である。第三四分位をカットオフ値とした。 酢酸高値群および低値群のPFSを示すカプランマイヤー曲線である。決定木分析を用いて算出された値をカットオフ値とした。 プロピオン酸高値群および低値群のPFSを示すカプランマイヤー曲線である。決定木分析を用いて算出された値をカットオフ値とした。 酪酸高値群および低値群のPFSを示すカプランマイヤー曲線である。決定木分析を用いて算出された値をカットオフ値とした。 吉草酸高値群および低値群のPFSを示すカプランマイヤー曲線である。決定木分析を用いて算出された値をカットオフ値とした。 全短鎖脂肪酸高値群および低値群のPFSを示すカプランマイヤー曲線である。決定木分析を用いて算出された値をカットオフ値とした。 血漿試料の分析方法の概要を示す。 ニボルマブ治療に対する非応答群および応答群の患者の血漿における、プロピオン酸のレベルを示す。 ニボルマブ治療に対する非応答群および応答群の患者の血漿における、イソ吉草酸のレベルを示す。
特に具体的な定めのない限り、本明細書で使用される用語は、有機化学、医学、薬学、分子生物学、微生物学等の分野における当業者に一般に理解されるとおりの意味を有する。以下にいくつかの本明細書で使用される用語についての定義を記載するが、これらの定義は、本明細書において、一般的な理解に優先する。
本開示では、数値が「約」の用語を伴う場合、その値の±10%の範囲を含むことを意図する。例えば、「約20」は、「18〜22」を含むものとする。数値の範囲は、両端点の間の全ての数値および両端点の数値を含む。範囲に関する「約」は、その範囲の両端点に適用される。従って、例えば、「約20〜30」は、「18〜33」を含むものとする。
本開示に関して、「免疫チェックポイント阻害剤」は、免疫チェックポイント分子の機能を阻害する物質を意味する。「免疫チェックポイント分子」は、自己に対する免疫応答および/または過剰な免疫反応を抑制する分子であり、例えば、CTLA−4、PD−1、PD−L1、PD−L2、LAG−3、TIM3、BTLA、B7H3、B7H4、2B4、CD160、A2aR、KIR、VISTA、TIGIT等が挙げられるが、これらに限定されない。免疫チェックポイント阻害剤として、例えば、抗CTLA−4抗体(例えば、イピリムマブ、トレメリムマブ、AGEN−1884)、抗PD−1抗体(例えば、ニボルマブ、REGN−2810、ペムブロリズマブ、PDR−001、BGB−A317、AMP−514(MEDI0680)、BCD−100、IBI−308、JS−001、PF−06801591、TSR−042)、抗PD−L1抗体(例えば、アテゾリズマブ(RG7446、MPDL3280A)、アベルマブ(PF−06834635、MSB0010718C)、デュルバルマブ(MEDI4736)、BMS−936559、CA−170、LY−3300054)、抗PD−L2抗体(例えば、rHIgM12B7)、PD−L1融合タンパク質、PD−L2融合タンパク質(例えば、AMP−224)、抗Tim−3抗体(例えば、MBG453)、抗LAG−3抗体(例えば、BMS−986016、LAG525)、抗KIR抗体(例えば、リリルマブ)等、並びに、これらの抗体の重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)を有する抗体、および、これらの抗体の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む抗体が挙げられる。ある実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤はPD−1阻害剤またはPD−L1阻害剤である。ある実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体である。ある実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤はニボルマブまたはペムブロリズマブである。
本開示において、「抗体」の用語には、抗体の一部分を構成要素として含み、抗原への結合性を保持する分子、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、または一本鎖Fv(scFv)、Fab3、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、Bis−scFv、(scFv)−Fc、インタクトIgG等が含まれる。抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体であってもよい。ヒト化抗体とは、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVHおよびVLの適切な位置に移植した抗体を意味する。
本開示において、「がん患者」は、がんに罹患しているヒトを意味する。がんは、例えば、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病)、悪性リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、成人T細胞白血病、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫))、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、頭頸部癌、消化管癌(例えば、食道癌、食道腺癌、胃癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌)、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、胆嚢・胆管癌、胆道癌、膵臓癌、甲状腺癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(例えば、扁平上皮非小細胞肺癌、非扁平上皮非小細胞肺癌)、小細胞肺癌)、乳癌、泌尿生殖器癌(例えば、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌)、子宮頚癌、子宮体癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰部癌、腎癌(例えば、腎細胞癌)、尿路上皮癌(例えば、膀胱癌、上部尿路癌)、前立腺癌、精巣腫瘍(例えば、胚細胞腫瘍))、骨・軟部肉腫、皮膚癌(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫、メラノーマ、メルケル細胞癌)、神経膠腫、脳腫瘍(例えば、膠芽腫)、胸膜中皮腫および原発不明癌)であるが、これらに限定されない。ある実施態様では、がんは、メラノーマ、頭頸部癌、消化管癌、肺癌、泌尿生殖器癌または肉腫である。ある実施態様では、がんは、メラノーマ、頭頸部癌、消化管癌または泌尿生殖器癌である。ある実施態様では、がんは、メラノーマ、頭頸部癌、肺癌、泌尿生殖器癌または肉腫である。
本開示において、「がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性」とは、患者のがんが免疫チェックポイント阻害剤により改善される可能性を意味する。改善される可能性が高いことを「応答性である」と言い、「奏効可能性が高い」、「処置適格者である」などと表現することもできる。改善される可能性が低いことを、「応答性ではない」と言い、「奏効可能性が低い」、「処置適格者ではない」などと表現することもできる。がんの改善は、例えば、生存期間または無増悪生存期間の延長、例えば、プラセボ群または未処置群の生存期間または無増悪生存期間の中央値と比較した生存期間または無増悪生存期間の延長であり得る。
本開示において、「試料」は、がん患者から採取された便、血液、血漿、血清または病変部位の組織であり得る。便試料は、排泄便または直腸便から採取し得る。血液試料は、通常の方法で、例えば静脈または動脈から、採取され得る。血漿試料または血清試料は、当業者に周知の方法により血液を適宜処理することにより調製し得る。この処理は、特に限定されず、臨床学的に許容されるいかなる処理でもあってもよい。例えば、抗凝固剤の添加、遠心分離などが行われる。組織試料は、例えば、生検したがん組織、または、切除したがん組織である。必要に応じて、採取された試料を、ホモジナイズ、遠心分離、濃縮、希釈、凍結乾燥などの処理に付してもよい。採取された試料を、使用に先立ち、その調製中または調製後に低温下で保存してもよく、例えば、冷凍保存し得る。
本開示において、「短鎖脂肪酸」は、炭素数6以下の脂肪酸を意味し、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヒドロアンゲリカ酸、カプロン酸、メチル吉草酸およびコハク酸が含まれる。少なくとも1つの短鎖脂肪酸のレベルに基づいて、がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定する。2つ以上の短鎖脂肪酸のレベルを用いてもよい。ある実施態様では、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヒドロアンゲリカ酸、カプロン酸、メチル吉草酸およびコハク酸から1つまたはそれ以上の短鎖脂肪酸が選択される。ある実施態様では、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸およびイソ吉草酸から1つまたはそれ以上の短鎖脂肪酸が選択される。ある実施態様では、酢酸、プロピオン酸、酪酸および吉草酸から1つまたはそれ以上の短鎖脂肪酸が選択される。ある実施態様では、プロピオン酸およびイソ吉草酸から1つまたはそれ以上の短鎖脂肪酸が選択される。
本開示において、「短鎖脂肪酸のレベル」とは、試料に含まれる短鎖脂肪酸の量を意味し、例えば、質量比、質量濃度、モル濃度または重量モル濃度などの単位で表され得る。短鎖脂肪酸のレベルは、当業者に周知のクロマトグラフィーおよび/または質量分析法により測定し得る。測定のために、短鎖脂肪酸を標識および/または誘導体化してもよい。例えば、トリフェニルホスフィン(TPP)、2−ピコリルアミン、3−ニトロフェニルヒドラジンなどの試薬を用いて、短鎖脂肪酸を誘導体化し得る。
患者の短鎖脂肪酸のレベルが高い場合に、当該患者が免疫チェックポイント阻害剤に応答性であると判定し得る。ある実施態様では、患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定するために、患者の短鎖脂肪酸のレベルと、予め設定された短鎖脂肪酸のレベルのカットオフ値とを比較する。例えば、患者の短鎖脂肪酸のレベルがカットオフ値よりも高い場合に、当該患者が免疫チェックポイント阻害剤に応答性であると判定し得る。例えば、患者の短鎖脂肪酸のレベルが短鎖脂肪酸のレベルのカットオフ値以上である場合に、当該患者が免疫チェックポイント阻害剤に応答性であると判定し得る。複数の短鎖脂肪酸のカットオフ値を用いて決定木を作成し、判定に使用してもよい。
カットオフ値の設定は、種々の統計解析手法を用いて、公知の方法により実施できる。例えば、がん患者群における、各短鎖脂肪酸のレベルの中央値または第三四分位をカットオフ値とし得る。あるいは、免疫チェックポイント阻害剤を投与した患者群(実薬群)について、治療効果が示された群(奏効群)の短鎖脂肪酸のレベルと、治療効果が確認されなかった群(不奏効群)の短鎖脂肪酸のレベルを、統計解析的に処理することにより、カットオフ値を設定できる。ある実施態様では、短鎖脂肪酸のレベルのカットオフ値は、実薬群を、奏効群と不奏効群とに統計的に有意差をもって分けることができる値である。統計的有意差は、カイ二乗検定、一般化Wilcoxon検定、Wilcoxonの符号順位検定、Mann-Whitney検定、ログランク検定、Cox比例ハザードなどの公知の検定方法により解析され得る。1つの短鎖脂肪酸に複数のカットオフ値を設定することもできる。特徴に応じてサブグループ化された患者群についてカットオフ値を設定することもできる。例えば、がんの種類、性別、年齢層または人種に応じてそれぞれカットオフ値が設定されてよい。カットオフ値の設定、または統計解析には、例えば、STATA、R、SAS、SPSS、JMP等の統計解析用ソフトウェアを使用し得る。
カットオフ値は、感度および/または特異度に基づいて設定し得る。好ましくは、カットオフ値は、高い感度および高い特異度の両方を示す。ここで、感度とは、真の陽性率を意味する。また、特異度とは真の陰性率を意味する。例えば、奏効群で高い陽性率を示し、かつ、不奏効群で高い陰性率を示す短鎖脂肪酸のレベルを、カットオフ値として設定し得る。
例えば、診断検査の有用性を検討する手法として一般的に用いられているROC解析(receiver operating characteristic analysis)により、カットオフ値の設定を行うことができる。ROC解析では、各カットオフ値における感度を縦軸に、偽陽性率(1−特異度)を横軸にプロットしたROC曲線が作成される。ROC曲線は、診断能のない検査では対角線上の直線となるが、診断能が向上するほど、左上方に弧を描く曲線となる。左上隅との距離が最小となるROC曲線上の点を与えるカットオフ値は、感度と特異度に優れると言える。また、ヨーデン指標(Youden index)に基づいてカットオフ値を設定することもできる。具体的には、奏効群および不奏効群の短鎖脂肪酸のレベルから感度および特異度を求め、これらの値に基づき、市販の解析ソフトを使用してROC曲線を作成する。そして、感度と特異度が可能な限り100%に近いときの値を求めて、その値をカットオフ値とし得る。
また、例えば、診断効率(即ち、処置が有効であった患者を「有効」と正しく診断した症例と、処置が無効であった患者を「無効」と正しく診断した症例との合計数の全症例数に対する割合)を求め、最も高い診断効率が算出される短鎖脂肪酸のレベルをカットオフ値とし得る。
便試料中の酢酸のレベルのカットオフ値は、例えば、約231.8〜283.3μmol/gの範囲、または約112.8〜137.8μmol/gにあり、例えば、約257.5μmol/g(中央値)、または125.3μmol/g(決定木)である。便試料中のプロピオン酸のレベルのカットオフ値は、例えば、約127.4〜155.7μmol/g、または約80.9〜98.9μmol/gの範囲にあり、例えば、約141.5μmol/g(中央値)、または約89.9μmol/g(決定木)である。便試料中の酪酸のレベルのカットオフ値は、例えば、約50.6〜61.8μmol/g、または約84.2〜103.0μmol/gまたは約39.7〜48.5μmol/gの範囲にあり、例えば、約56.2μmol/g(中央値)、または約93.6μmol/g(第三四分位)、または約44.1μmol/g(決定木)である。便試料中の吉草酸のレベルのカットオフ値は、例えば、約10.4〜12.7μmol/g、または約14.0〜17.2μmol/gの範囲にあり、例えば、約11.5μmol/g(中央値)、または約15.6μmol/g(決定木)である。便試料中の全短鎖脂肪酸のレベルのカットオフ値は、例えば、約257.6〜314.8μmol/g、または約226.2〜276.4μmol/gの範囲にあり、例えば、約286.2μmol/g(中央値)、または約251.3μmol/g(決定木)である。カットオフ値はこれらの値に限定されず、例えば、診断の目的、患者の特徴、がんの種類、ステージ、試料の種類、免疫チェックポイント阻害剤の種類などの要因に応じて、適宜設定し得る。
ある態様では、がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定するための方法であって、
(1)がん患者から採取された試料中の少なくとも1つの短鎖脂肪酸のレベルを測定すること、
(2)測定された短鎖脂肪酸のレベルを短鎖脂肪酸のレベルのカットオフ値と比較すること、および、
(3)患者の短鎖脂肪酸のレベルがカットオフ値よりも高い場合に、当該患者が免疫チェックポイント阻害剤に対して応答性であると判定すること、
を含む方法が提供される。
ある態様では、がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定する方法であって、
(1)がん患者から試料を採取すること、
(2)当該試料中の少なくとも1つの短鎖脂肪酸のレベルを測定すること、および、
(3)測定された短鎖脂肪酸のレベルに基づいて、当該患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定すること、
を含む方法が提供される。
ある態様では、がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性の判定において使用するための、短鎖脂肪酸のレベルの測定試薬が提供される。
ある態様では、がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性の判定における、短鎖脂肪酸のレベルの測定試薬の使用が提供される。
ある態様では、がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定するための診断薬を製造するための、短鎖脂肪酸のレベルの測定試薬の使用が提供される。
ある態様では、短鎖脂肪酸のレベルの測定試薬を含む、がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定するためのキットが提供される。ある実施態様では、キットは、クロマトグラフィーおよび/または質量分析による測定のためのキットである。測定試薬は、短鎖脂肪酸を標識する試薬または短鎖脂肪酸を測定可能な誘導体にする試薬、例えば、トリフェニルホスフィン(TPP)、2−ピコリルアミン、3−ニトロフェニルヒドラジンなどであり得る。キットは、常法により適宜製造し得る。キットは、必要に応じて他の成分を含んでもよい。他の成分は、例えば、試料を採取するための道具(例えば、注射器等)、短鎖脂肪酸の標準物質などが挙げられるが、これらに限定されない。キットの使用方法などを記載した書面等を含んでもよい。
本開示の方法により患者が免疫チェックポイント阻害剤に応答性であると判定された場合、当該患者は免疫チェックポイント阻害剤による処置を受けることが推奨される。従って、ある態様では、本開示の判定方法により免疫チェックポイント阻害剤に応答性であると判定された患者に有効量の免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む、がんの処置方法が提供される。
本開示において、「処置」は、がん患者において、がんの原因を軽減または除去すること、がんの進行、再発または転移を遅延または停止させること、および/または、がんの症状を軽減、緩和、改善または除去することを意味する。
免疫チェックポイント阻害剤の投与方法は特に限定されず、経口または非経腸(例えば、静脈内、皮下、皮内、胸腔内、腹腔内、筋肉内、組織内)の一般的な投与経路を経ることができる。ある実施態様では、免疫チェックポイント阻害剤は静脈内投与される。
経口投与の剤形としては、顆粒剤、細粒剤、粉剤、被覆錠剤、錠剤、坐剤、散剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、チュアブル剤、液剤、懸濁剤、乳濁液などが挙げられる。非経腸投与の剤形としては、注射または点滴用の液剤、懸濁剤または乳濁剤などが挙げられる。
これらの剤形は、有効成分を常法により製剤化することによって製造される。さらに製剤上の必要に応じて、医薬的に許容し得る各種の製剤用物質を配合することができる。製剤用物質は製剤の剤形により適宜選択でき、例えば、緩衝化剤、界面活性剤、安定化剤、防腐剤、賦形剤、希釈剤、添加剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、可溶化剤等が挙げられる。
免疫チェックポイント阻害剤の投与量および投与回数は、有効量が患者に投与されるように、患者の健康状態、年齢、体重、投与経路、投与形態等に応じて当業者が適宜設定できる。例えば、抗PD−1抗体を使用する場合、投与量は約0.1〜20mg/kg体重であり得る。例えば、ニボルマブの投与量は、約0.3〜10mg/kg体重、好ましくは、約2mg/kgまたは約3mg/kg、あるいは約240mg/bodyまたは約480mg/bodyである。例えば、ペムブロリズマブの投与量は、約0.2〜10mg/kg体重、好ましくは、約200mg/bodyである。例えば、抗PD−1抗体を2週毎、3週毎または4週毎に投与し得る。
免疫チェックポイント阻害剤は、1種またはそれ以上のさらなる有効成分、特に、がんの処置のための有効成分と併用してもよい。併用に適する有効成分には、例えば、公知の抗がん剤および抗がん剤の副作用の抑制剤が含まれる。
本開示において、「併用」は、免疫チェックポイント阻害剤とさらなる有効成分を含有する投与剤形、または、各成分を別個に含有する投与剤形の組合せを患者に投与することを意味する。即ち、各成分は、これらを両方とも含む組成物の形態で投与されてもよく、それぞれ別々に含む組成物の組合せとして投与されてもよい。各成分は同時に投与されてもよく、連続的に投与されてもよく、あるいは、各成分ががんの処置のために使用される限り、いずれか一方を遅延して投与してもよい。
免疫チェックポイント阻害剤による処置と共に、他のがんの治療法を実施することもできる。適する治療法には、例えば、放射線療法、免疫療法、造血幹細胞移植、内視鏡的切除術、外科手術等が含まれる。
ある態様において、本開示は、がんに罹患した患者の処置方法であって、本開示の判定方法によりがん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定する工程;および前記判定に基づいて有効量の免疫チェックポイント阻害剤を患者に投与する工程を含む、処置方法を提供する。
ある態様では、がんの処置方法であって、
(1)患者から試料を採取すること、
(2)当該試料中の少なくとも1つの短鎖脂肪酸のレベルを測定すること、
(3)測定された短鎖脂肪酸のレベルに基づいて、当該患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定すること、および、
(4)(3)において免疫チェックポイント阻害剤に応答性であると判定された患者に、有効量の免疫チェックポイント阻害剤を投与すること、
を含む方法が提供される。
ある態様では、本開示の判定方法により免疫チェックポイント阻害剤に応答性であると判定された患者のがんを処置するための、免疫チェックポイント阻害剤を含む組成物が提供される。
ある態様では、本開示の判定方法により免疫チェックポイント阻害剤に応答性であると判定された患者のがんの処置において使用するための、免疫チェックポイント阻害剤が提供される。
ある態様では、本開示の判定方法により免疫チェックポイント阻害剤に応答性であると判定された患者のがんの処置における、免疫チェックポイント阻害剤の使用が提供される。
ある態様では、本開示の判定方法により免疫チェックポイント阻害剤に応答性であると判定された患者のがんを処置するための組成物を製造するための、免疫チェックポイント阻害剤の使用が提供される。
例えば、下記の実施態様が提供される。
[1]がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定するための方法であって、がん患者から採取された試料中の少なくとも1つの短鎖脂肪酸のレベルに基づいて、当該患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定することを含む、方法。
[2]がん患者から採取された試料中の少なくとも1つの短鎖脂肪酸のレベルを測定することを含む、第1項に記載の方法。
[3]患者の短鎖脂肪酸のレベルを短鎖脂肪酸のレベルのカットオフ値と比較することにより、当該患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定する、第1項または第2項に記載の方法。
[4]患者の短鎖脂肪酸のレベルがカットオフ値よりも高い場合に、当該患者が免疫チェックポイント阻害剤に対して応答性であると判定する、第3項に記載の方法。
[5](1)がん患者から採取された試料中の少なくとも1つの短鎖脂肪酸のレベルを測定すること、
(2)測定された短鎖脂肪酸のレベルを短鎖脂肪酸のレベルのカットオフ値と比較すること、および、
(3)患者の短鎖脂肪酸のレベルがカットオフ値よりも高い場合に、当該患者が免疫チェックポイント阻害剤に対して応答性であると判定すること、
を含む、第1項〜第4項のいずれかに記載の方法。
[6]カットオフ値が、免疫チェックポイント阻害剤に対して応答性であったがんの患者から採取された試料中の短鎖脂肪酸のレベルに基づくものである、第3項〜第5項のいずれかに記載の方法。
[7]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヒドロアンゲリカ酸、カプロン酸、メチル吉草酸、コハク酸またはこれらの組合せである、第1項〜第6項のいずれかに記載の方法。
[8]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸またはこれらの組合せである、第1項〜第7項のいずれかに記載の方法。
[9]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸またはこれらの組合せである、第1項〜第8項のいずれかに記載の方法。
[10]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が、プロピオン酸、イソ吉草酸またはこれらの組合せである、第1項〜第8項のいずれかに記載の方法。
[11]試料中の全短鎖脂肪酸のレベルに基づいて応答性を判定する、第1項〜第10項のいずれかに記載の方法。
[12]試料が、便、血液、血漿、血清または病変部位の組織である、第1項〜第11項のいずれかに記載の方法。
[13]試料が便である、第1項〜第12項のいずれかに記載の方法。
[14]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が酢酸であり、カットオフ値が約231.8〜283.3μmol/gである、第13項に記載の方法。
[15]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が酢酸であり、カットオフ値が約112.8〜137.8μmol/gである、第13項に記載の方法。
[16]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が酢酸であり、カットオフ値が約257.5μmol/gである、第13項に記載の方法。
[17]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が酢酸であり、カットオフ値が約125.3μmol/gである、第13項に記載の方法。
[18]少なくとも1つの短鎖脂肪酸がプロピオン酸であり、カットオフ値が約127.4〜155.7μmol/gである、第13項に記載の方法。
[19]少なくとも1つの短鎖脂肪酸がプロピオン酸であり、カットオフ値が約80.9〜98.9μmol/gである、第13項に記載の方法。
[20]少なくとも1つの短鎖脂肪酸がプロピオン酸であり、カットオフ値が約141.5μmol/gである、第13項に記載の方法。
[21]少なくとも1つの短鎖脂肪酸がプロピオン酸であり、カットオフ値が約89.9μmol/gである、第13項に記載の方法。
[22]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が酪酸であり、カットオフ値が約50.6〜61.8μmol/gである、第13項に記載の方法。
[23]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が酪酸であり、カットオフ値が約84.2〜103.0μmol/gである、第13項に記載の方法。
[24]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が酪酸であり、カットオフ値が約39.7〜48.5μmol/gである、第13項に記載の方法。
[25]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が酪酸であり、カットオフ値が約56.2μmol/gである、第13項に記載の方法。
[26]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が酪酸であり、カットオフ値が約93.6μmol/gである、第13項に記載の方法。
[27]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が酪酸であり、カットオフ値が約44.1μmol/gである、第13項に記載の方法。
[28]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が吉草酸であり、カットオフ値が約10.4〜12.7μmol/gである、第13項に記載の方法。
[29]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が吉草酸であり、カットオフ値が約14.0〜17.2μmol/gである、第13項に記載の方法。
[30]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が吉草酸であり、カットオフ値が約11.5μmol/gである、第13項に記載の方法。
[31]少なくとも1つの短鎖脂肪酸が吉草酸であり、カットオフ値が約15.6μmol/gである、第13項に記載の方法。
[32]試料中の全短鎖脂肪酸のレベルに基づいて応答性を判定し、カットオフ値が約257.6〜314.8μmol/gである、第13項に記載の方法。
[33]試料中の全短鎖脂肪酸のレベルに基づいて応答性を判定し、カットオフ値が約226.2〜276.4μmol/gである、第13項に記載の方法。
[34]試料中の全短鎖脂肪酸のレベルに基づいて応答性を判定し、カットオフ値が約286.2μmol/gである、第13項に記載の方法。
[35]試料中の全短鎖脂肪酸のレベルに基づいて応答性を判定し、カットオフ値が約251.3μmol/gである、第13項に記載の方法。
[36]試料が血液、血漿または血清である、第1項〜第12項のいずれかに記載の方法。
[37]免疫チェックポイント阻害剤がPD−1阻害剤またはPD−L1阻害剤である、第1項〜第36項のいずれかに記載の方法。
[38]免疫チェックポイント阻害剤が抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体である、第1項〜第37項のいずれかに記載の方法。
[39]免疫チェックポイント阻害剤がニボルマブまたはペムブロリズマブである、第1項〜第38項のいずれかに記載の方法。
[40]がんが、メラノーマ、頭頸部癌、消化管癌、肺癌、泌尿生殖器癌および肉腫からなる群から選択される、第1項〜第39項のいずれかに記載の方法。
[41]がんが、メラノーマ、頭頸部癌、消化管癌および泌尿生殖器癌からなる群から選択される、第1項〜第40項のいずれかに記載の方法。
[42]がんが、メラノーマ、頭頸部癌、肺癌、泌尿生殖器癌および肉腫からなる群から選択される、第1項〜第40項のいずれかに記載の方法。
[43]第1項〜第42項のいずれかに記載の方法により免疫チェックポイント阻害剤に応答性であると判定された患者のがんを処置するための、免疫チェックポイント阻害剤を含む組成物。
本明細書で引用するすべての文献は、出典明示により本明細書の一部とする。
上記の説明は、すべて非限定的なものであり、本発明は添付の特許請求の範囲において定義され、その技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以下、実施例にて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
患者と方法
京都大学病院で2016年7月から2019年2月までにニボルマブまたはペムブロリズマブで治療されたがん患者の前向き試験を行った。全部で52人の患者が以下の選択基準に適合した:(1)組織学的に確認されたがん;(2)20歳以上;(3)根治治療の適用がない転移または進行がん;(4)免疫チェックポイント阻害剤、特にニボルマブまたはペムブロリズマブによる治療を計画している;および(5)書面でのインフォームド・コンセント。試験プロトコールは、京都大学病院の倫理委員会および治験審査委員会の承認を受けた。
患者は、ニボルマブ(2mg/kg、3週毎;3mg/kg、2週毎;または、240mg/body、2週毎)またはペムブロリズマブ(200mg/body、3週毎)を投与された。診療記録および放射線画像から以下の情報を得た:治療開始日および治療終了日、年齢、性別、米国東海岸がん臨床試験グループ・パフォーマンス・ステータス、原発部位、転移部位、治療開始時の臨床検査成績、固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECIST v1.1)による有効性、および、有害事象共通用語規準(CTCAE v4.0)により評価した毒性。
試薬と材料
酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヒドロアンゲリカ酸、カプロン酸、メチル吉草酸、コハク酸およびメタノールの標準物質は、和光純薬株式会社(日本、大阪)から購入した。2,2’−ジピリジルジスルフィド(DPDS)、トリフェニルホスフィン(TPP)および2−ピコリルアミンは、東京化成工業株式会社(日本、東京)から購入した。
便試料中の短鎖脂肪酸(SCFA)の分析
分析方法の概要を図1に示す。PD−1阻害剤投与の前に便試料を採取し、すぐに−80℃で保存した。解凍後の便試料(約20mg)にメタノール(1000μL)を添加し、激しく攪拌し、3000rpmで5分間ホモジナイズし、15000rpm、4℃で10分間遠心分離した。上清(100μL)に内標準液(10μL)を添加し、メタノール900μLと混合し、500rpmで10分間ホモジナイズし、10000rpm、4℃で10分間遠心分離した上清(100μL)を、2,2’−ジピリジルジスルフィド中の2−ピコリルアミンおよびアセトニトリル中のトリフェニルホスフィンと、60℃で10分間加熱処理した。反応混合物を取り出し、メタノール/水(10:90、v/v)100μLに再溶解した。これらの誘導体溶液(5μL)を、超高速液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析システム(UHPLC−MS/MS)の Waters Acquity H Class (Waters Co.、マサチューセッツ州、ミルフォード)により分析した。
患者背景は下表の通りであった。
Figure 2021012102
RECIST v1.1による完全奏効と部分奏効を治療応答群とし、安定と進行を非応答群に分類した。各群における短鎖脂肪酸の測定値の分布を図2〜図12に示す。便中のプロピオン酸、酪酸、吉草酸、全短鎖脂肪酸は、治療応答群でMann-Whitney検定により有意に高値であった。
各短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヒドロアンゲリカ酸、カプロン酸、メチル吉草酸、コハク酸)のカットオフ値を中央値に設定し、無増悪生存期間(PFS:死亡または病勢増悪をイベントとする生存期間)についてCox比例ハザードで解析した結果を表2に示す。酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、全短鎖脂肪酸の高値群で有意に無増悪生存期間が長かった。図13に酢酸、図14にプロピオン酸、図15に酪酸、図16に吉草酸、図17に全短鎖脂肪酸の高値群と低値群のカプランマイヤー曲線を示す。
Figure 2021012102
各短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヒドロアンゲリカ酸、カプロン酸、メチル吉草酸、コハク酸)のカットオフ値を第三四分位に設定し、無増悪生存期間についてCox比例ハザードで解析した結果を表3に示す。酪酸の高値群で有意に無増悪生存期間が長かった。図18に酪酸の高値群と低値群のカプランマイヤー曲線を示す。
Figure 2021012102
各短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヒドロアンゲリカ酸、カプロン酸、メチル吉草酸、コハク酸)のカットオフ値を決定木分析を用いて算出された値に設定し、無増悪生存期間についてCox比例ハザードで解析した結果を表4に示す。酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、全短鎖脂肪酸の高値群で有意に無増悪生存期間が長かった。図19に酢酸、図20にプロピオン酸、図21に酪酸、図22に吉草酸、図23に全短鎖脂肪酸の高値群と低値群のカプランマイヤー曲線を示す。
Figure 2021012102
血液試料中の短鎖脂肪酸(SCFA)の分析
分析方法の概要を図24に示す。PD−1阻害剤投与の前に血液試料を採取し、3000rpm、4℃で10分間遠心分離し、血漿を採取後すぐに−80℃で保存した。解凍後の血漿(約25μL)にメタノール(1000μL)と内標準液(10μL)を添加し、1000rpmで10分間ホモジナイズし、10000rpm、4℃で10分間遠心分離した上清(100μL)を、メタノール(100μL)で再溶解し、1−エチル−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩と2−ピコリルアミンを加え、60℃で20分間加熱処理した。反応混合物を取り出し、メタノール/水(100:900、v/v)1000μLに再溶解した。これらの誘導体溶液(5μL)を、超高速液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析システム(UHPLC−MS/MS)の Waters Acquity H Class (Waters Co.、マサチューセッツ州、ミルフォード)により分析した。
患者背景は下表の通りであった。
Figure 2021012102
RECIST v1.1による完全奏効と部分奏効を治療応答群とし、安定と進行を非応答群に分類した。各群におけるプロピオン酸およびイソ吉草酸の測定値の分布を図25および図26に示す。血漿中のプロピオン酸、イソ吉草酸は、治療応答群でMann-Whitney検定により有意に高値であった。
本開示に従って、がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定できる。その結果、例えば、応答性と見込まれる患者に対しては、当該免疫チェックポイント阻害剤による処置を開始または継続し、非応答性と見込まれる患者に対しては処置を行わないなど、治療方針の選択が可能となる。

Claims (14)

  1. がん患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定するための方法であって、がん患者から採取された試料中の少なくとも1つの短鎖脂肪酸のレベルに基づいて、当該患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定することを含む、方法。
  2. がん患者から採取された試料中の少なくとも1つの短鎖脂肪酸のレベルを測定することを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 患者の短鎖脂肪酸のレベルを短鎖脂肪酸のレベルのカットオフ値と比較することにより、当該患者の免疫チェックポイント阻害剤に対する応答性を判定する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 患者の短鎖脂肪酸のレベルがカットオフ値よりも高い場合に、当該患者が免疫チェックポイント阻害剤に対して応答性であると判定する、請求項3に記載の方法。
  5. (1)がん患者から採取された試料中の少なくとも1つの短鎖脂肪酸のレベルを測定すること、
    (2)測定された短鎖脂肪酸のレベルを短鎖脂肪酸のレベルのカットオフ値と比較すること、および、
    (3)患者の短鎖脂肪酸のレベルがカットオフ値よりも高い場合に、当該患者が免疫チェックポイント阻害剤に対して応答性であると判定すること、
    を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. カットオフ値が、免疫チェックポイント阻害剤に対して応答性であったがんの患者から採取された試料中の短鎖脂肪酸のレベルに基づくものである、請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 少なくとも1つの短鎖脂肪酸が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヒドロアンゲリカ酸、カプロン酸、メチル吉草酸、コハク酸またはこれらの組合せである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 少なくとも1つの短鎖脂肪酸が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸またはこれらの組合せである、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 試料が、便、血液、血漿、血清または病変部位の組織である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 免疫チェックポイント阻害剤がPD−1阻害剤またはPD−L1阻害剤である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 免疫チェックポイント阻害剤が抗PD−1抗体または抗PD−L1抗体である、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 免疫チェックポイント阻害剤がニボルマブまたはペムブロリズマブである、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. がんが、メラノーマ、頭頸部癌、消化管癌、肺癌、泌尿生殖器癌および肉腫からなる群から選択される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載の方法により免疫チェックポイント阻害剤に応答性であると判定された患者のがんを処置するための、免疫チェックポイント阻害剤を含む組成物。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023195447A1 (ja) * 2022-04-08 2023-10-12 味の素株式会社 免疫チェックポイント阻害剤単剤の薬理作用と比較した、免疫チェックポイント阻害剤と併用薬としての抗がん剤との組み合わせの相対的な薬理作用の評価方法、算出方法、評価装置、算出装置、評価プログラム、算出プログラム、記録媒体、評価システム、および端末装置
WO2023210752A1 (ja) * 2022-04-28 2023-11-02 国立大学法人大阪大学 免疫チェックポイント阻害剤に対する感受性の検査方法

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