JP2021011626A - 摺動部材及びそれに用いる分割片 - Google Patents

摺動部材及びそれに用いる分割片 Download PDF

Info

Publication number
JP2021011626A
JP2021011626A JP2019127606A JP2019127606A JP2021011626A JP 2021011626 A JP2021011626 A JP 2021011626A JP 2019127606 A JP2019127606 A JP 2019127606A JP 2019127606 A JP2019127606 A JP 2019127606A JP 2021011626 A JP2021011626 A JP 2021011626A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
metal phase
specific
sliding member
divided
matrix
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019127606A
Other languages
English (en)
Inventor
幸弘 伊藤
Yukihiro Ito
幸弘 伊藤
学 泉田
Manabu Izumida
学 泉田
茂 稲見
Shigeru Inami
茂 稲見
一紀 坂井
Kazunori Sakai
一紀 坂井
健治 二村
Kenji Nimura
健治 二村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daido Metal Co Ltd
Original Assignee
Daido Metal Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daido Metal Co Ltd filed Critical Daido Metal Co Ltd
Priority to JP2019127606A priority Critical patent/JP2021011626A/ja
Publication of JP2021011626A publication Critical patent/JP2021011626A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Sliding-Contact Bearings (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Abstract

【課題】周方向へ複数の分割片に分割する場合でも、合わせ目における耐焼付性を高める摺動部材を提供する。【解決手段】周方向で2つ以上の分割片20に分割されている摺動部材10は、軸受合金層11及びオーバレイ層12を備える。オーバレイ層12は、合金のマトリクス31、及びマトリクス31より融点が低くマトリクス31に析出している金属相32を有する。分割片20は、合わせ目21から周方向へ特定の範囲に設けられている特定部22、及び特定部22を除く本体部23を有する。金属相32は、特定部22における分割片20の軸に垂直な断面において、長軸の傾斜角度Xが設定範囲にある第一金属相321と、設定範囲にない第二金属相322とに分類される。そして、特定部22における第一金属相321の含有数の割合A(%)、及び第二金属相322の含有数の割合B(%)は、A:B=60〜80:40〜20である。【選択図】図1

Description

本発明は、摺動部材及びそれに用いる分割片に関する。
軸部材の軸受に用いられる摺動部材は、円筒状の裏金層の内周側に軸受合金層、及びこの軸受合金層を覆うオーバレイ層を備えている。特許文献1の場合、オーバレイ層に相当するすべり層は、カソードスパッタリングによって形成されている。このような摺動部材は、加工及び組み付けの工程を省略するために例えば半円筒形状など、一般に周方向に2つ以上の分割片に分割されている。そのため、2つの分割片が接する部分には、合わせ目が形成される。
この合わせ目は、例えば軸受装置などに精度よく組み付けても、公差によって微小なずれが生じる。つまり、分割片からなる摺動部材は、合わせ目において径方向へ微小な段差が形成される。このような微小な段差は、摺動部材の内周側に形成される潤滑油の油膜切れを招く原因となる。段差によって油膜切れが生じると、局所的な温度の上昇を招き、潤滑油の粘度が低下する。その結果、さらなる油膜切れが生じやすくなり、最終的には耐焼付性の低下を招くおそれがある。
特開昭63−172017号公報
そこで、周方向へ複数の分割片に分割する場合でも、合わせ目の近傍における耐焼付性を高める摺動部材及び分割片を提供することを目的とする。
一実施形態による摺動部材は、軸受合金層と、前記軸受合金層の内周側に設けられ合金のマトリクス、及び前記マトリクスより融点が低く前記マトリクスに固溶することなく析出している金属相を有するオーバレイ層と、を備える。この摺動部材は、周方向で2つ以上の分割片に分割された筒状である。前記分割片は、隣り合う前記分割片の合わせ目から周方向へ特定の範囲に設けられている特定部と、前記特定部を除く本体部と、を有する。前記分割片の軸に垂直な断面において、前記マトリクスに析出する前記金属相のうち任意の金属相を特定金属相とし、前記断面において前記特定金属相の前記本体部側の端部に接するとともに板厚方向に伸びる仮想線を設定し、前記仮想線における前記分割片の内周側を0°とし、前記仮想線に垂直であって前記特定金属相から近い前記合わせ目側を90°としたとき、前記特定金属相の長軸の傾斜角度Xが設定範囲である60°≦X≦90°となる第一金属相と、前記傾斜角度Xが前記設定範囲でない第二金属相と、を含む。前記特定部における前記第一金属相の含有数の割合A(%)、及び前記第二金属相の含有数の割合B(%)は、A:B=60〜80:40〜20である。
これにより、相手部材と摺動する摺動面にはマトリクスに析出する金属相が露出する。この摺動面に露出する金属相は、摺動面における相手部材との摩擦によって溶融し、融解によって周辺から熱を奪う。そのため、金属相の周辺の温度の上昇が抑えられ、潤滑油の温度の上昇も抑えられる。その結果、潤滑油の粘度の低下が低減される。特に、金属相のうちその長軸の傾斜角度Xが設定範囲である60°≦X≦90°となる第一金属相は、摺動面に露出する面積が適度に確保される。そのため、摺動面には、溶融した金属相が十分に供給される。一方、傾斜角度Xが設定範囲外となる第二金属相は、摺動面に露出する面積が小さく金属相の溶融にともなう融解熱が小さくなったり、摺動面に露出する面積が過大となり短期間で消失したりする。このように、一実施形態の場合、金属相の傾斜角度を制御することにより、第一金属相の溶融によって複数の分割片の合わせ目における温度の上昇が抑えられ、油膜の粘度の低下にともなう油膜切れが低減される。したがって、合わせ目における耐焼付性を高めることができる。
一実施形態による摺動部材の要部を拡大した模式図 一実施形態による摺動部材の分割片の構造を示す模式図 一実施形態による摺動部材の外観を示す模式的な斜視図 一実施形態による摺動部材の分割片における特定部及び本体部を示す概略図 図2のV部分における断面を拡大した模式図 一実施形態による摺動部材において、観察の対象となる部位を説明するための模式図であり、(A)は摺動部材をその中心から見た図、(B)は(A)の矢印Bから見た図 図6の断面S1から断面S6に相当する断面における組織を示す模式図 一実施形態による摺動部材において、金属相を説明するための模式図 食違い試験の試験条件を示す概略図 回転荷重試験の試験条件を示す概略図 摩耗試験の試験条件を示す概略図 金属相の平均長さが20μmの試料を用いた試験結果を示す概略図 金属相の平均長さが20μmの試料を用いた試験結果を示す概略図 金属相の平均長さが14μmの試料を用いた試験結果を示す概略図 金属相の平均長さが2μmの試料を用いた試験結果を示す概略図
以下、摺動部材の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図2及び図3に示すように摺動部材10は、筒状に形成されている。図2に示すように摺動部材10は、軸受合金層11及びオーバレイ層12を備えている。オーバレイ層12は、軸受合金層11の内周側、つまり軸部材などの相手部材と摺動する面側に設けられている。摺動部材10は、軸受合金層11の外周側つまりオーバレイ層12と反対側に裏金層13を備えていてもよい。また、摺動部材10は、軸受合金層11とオーバレイ層12との間に中間層14を備えていてもよい。軸受合金層11の内周側は、相手部材と摺動する摺動面15を形成する。
軸受合金層11は、Al合金又はCu合金で形成されている。軸受合金層11は、例えば焼結又は鋳造によって形成される。オーバレイ層12は、スパッタリングによって、Al、Al合金、Cu又はCu合金で形成されている。オーバレイ層12を形成するAl合金は、例えばAl−Sn、Al−Sn−Cu、Al−Sn−Si−Cu、Al−Bi−Cu、Al−Bi−Si−Cuなどが用いられる。また、オーバレイ層12を形成するCu合金は、例えばCu−Sn、Cu−Zn、Cu−Pb、Cu−Pb−Sn、Cu−Bi、Cu−Sn−Biなどが用いられる。裏金層13は、例えば鋼などで形成されている。中間層14は、例えばスパッタリングによってNi、Ni合金、Cr、Ti、Al、Cu又はCu合金などで形成されている。中間層14を形成するNi合金は、例えばNi−Cr合金などが用いられる。中間層14を形成するCu合金は、例えばCu−Sn、Cu−Zn、Cu−Pb、Cu−Pb−Sn、Cu−Bi、Cu−Sn−Biなどが用いられる。
摺動部材10は、オーバレイ層12の内周側に図示しない樹脂オーバレイ層を備えていてもよい。樹脂オーバレイ層は、耐摩耗性の向上及び摩擦の軽減を図るために設けられる。樹脂オーバレイ層は、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリアミド(PA)、フェノール(PF)、エポキシ(EP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアセタール(POM)、フッ素樹脂のうち一種以上で形成されている。樹脂オーバレイ層は、ポリマーアロイであってもよい。樹脂オーバレイ層は、固体潤滑剤又は充填剤を含んでいてもよい。固体潤滑剤は、黒鉛、MoS、WS、h−BN、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、メラミンシアヌレート、フッ化黒鉛、フタロシアニン、グラフェンナノプレートレット、フラーレン、グラファイト、超高分子量ポリエチレンなどから一種以上が選択される。充填剤は、CaF、CaCO、タルク、マイカ、ムライト、リン酸カルシウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化シリコン、酸化マグネシウムなどの酸化物、Mo2C、SiCなどの炭化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、C−BNなどの窒化物、ダイアモンドなどから一種以上が選択される。
摺動部材10は、図2及び図3に示すように周方向へ2つ以上の分割片20に分割されている。摺動部材10は、例えば180°ごとに2つの分割片20に分割、120°ごとに3つの分割片20に分割、90°ごとに4つの分割片20に分割など、任意の数の分割片20に分割されている。本実施形態では、摺動部材10を2つの分割片20に分割した例について説明する。このような分割片20で構成される摺動部材は、合わせ目21が形成される。図3に示すような2つの分割片20に分割した摺動部材10の場合、2か所の合わせ目21が形成される。
分割片20は、図4に示すように特定部22及び本体部23を有している。特定部22は、隣り合う分割片20の間に形成される合わせ目21から周方向へ特定の範囲に設けられている。本実施形態の場合、特定部22は、合わせ目21から周方向へ10°の範囲に設定している。この特定部は、分割片20のうち合わせ目21に近い領域に相当する。一方、本体部23は、分割片20から特定部22を除いた領域である。図4に示す例の場合、分割片20は、周方向の端部にそれぞれ10°の範囲で特定部22を有している。そして、分割片20は、特定部22を除く10°〜170°の範囲に本体部23を有している。
オーバレイ層12は、図5に示すように合金本体となるマトリクス31、及び金属相32を有している。金属相32は、マトリクス31より融点が低い金属で形成され、マトリクス31に固溶することなく析出している相である。このように、オーバレイ層12は、合金を組成する金属によってマトリクス31、及びこのマトリクス31に析出する金属相32を有している。例えばオーバレイ層12をAl−Sn合金で形成する場合、Alを主成分とするマトリクス31に、Snを主成分とする金属相32が析出する。金属相32は、オーバレイ層12のマトリクス31に3次元の網目状の立体構造として析出している。
このような3次元の網目状の立体構造を有する金属相32は、以下のような形状を示す。すなわち、分割片20を、図6(A)に示すように摺動部材10の軸に垂直な断面S1、断面S2、断面S3で観察する。このとき、金属相32は、特定部22における断面S1及び断面S3において、それぞれ図7(S1)及び図7(S3)に示すように合わせ目21に近い側が内周である摺動面15に向けて傾斜した状態である。つまり、図7(S1)及び図7(S3)に示すように特定部22では、金属相32は、合わせ目21に近い側が内周の摺動面15に向けて傾斜した状態である。一方、金属相32は、本体部23における断面S2において、図7(S2)で示すように不規則な傾斜の状態である。また、分割片20を、図6(B)に示すように摺動部材10の軸に沿った周方向の断面S4、断面S5、断面S6で観察する。このとき、金属相32は、特定部22における断面S4及び断面S6、並びに本体部23における断面S5において、それぞれ図7(S4)、図7(S5)及び図7(S6)に示すように位置にかかわらず平行に近い状態である。
本実施形態の場合、このオーバレイ層12のマトリクス31に析出する金属相32は、図1に示すように第一金属相321と第二金属相322に分類される。分割片20の軸受合金層11は、特定部22において図6(A)に示すように摺動部材10の軸に垂直な断面が観察される。このとき、マトリクス31には、図5に示すように複数の金属相32が析出する。このうち、析出している任意の金属相32を特定金属相とする。ここでは、特定金属相は、マトリクス31に析出する複数の金属相32のうち、長軸の長さが1μm以上のものとする。つまり、長軸の長さが1μm未満の微細な金属相32は、特定金属相と設定しない。例えば観察対象となるオーバレイ層12のマトリクス31に複数の金属相32が含まれているとき、長軸の長さが1μm以上の金属相32は、すべて特定金属相に設定する。この場合、長軸は、観察対象において析出している金属相32の径が最大となる部分である。
マトリクス31に含まれる金属相32から特定金属相を設定した後、図1に示すようにこの特定金属相の本体部23側の端部に接する仮想線Laを設定する。仮想線Laは、分割片20の板厚方向、つまり内周側の摺動面15から外周側へ向けて伸びている。特定金属相は、2つの端部、つまり合わせ目21に近い側の端部及び本体部23に近い側の端部を有している。仮想線Laは、特定金属相のうち本体部23の近い側の端部に接するように設定する。そして、この仮想線Laにおいて、内周である摺動面15側は0°とする。また、この仮想線Laに垂直であって、合わせ目21に近い側を90°とする。上述のように分割片20は、周方向の両端部に合わせ目21を有している。そして、仮想線Laに垂直な方向は、図1に示すa及びbの2つが設定される。そこで、a及びbのうち、特定金属相から近い合わせ目21側を90°と設定する。つまり、図1に示す例の場合、図1の左方に、より近い合わせ目21があることから、図1のa側を90°と設定する。
このように、0°及び90°を設定したとき、特定金属相は、0°〜180°の範囲で傾斜している。そして、この特定金属相の傾斜角度Xが設定範囲にあるものは第一金属相321であり、傾斜角度Xが設定範囲にないものは第二金属相322である。つまり、設定範囲を60°〜90°とする本実施形態の場合、傾斜角度Xが60°≦X≦90°であれば第一金属相321であり、傾斜角度Xが0°≦X<60°又は90°<X≦180°であれば第二金属相322である。
そして、本実施形態では、分割片20の特定部22において、任意の観察領域で観察される第一金属相321の含有数の割合を割合A(%)とし、第二金属相322の含有数の割合を割合B(%)とすると、割合A及び割合Bは、A:B=60〜80:40〜20である。つまり、任意の観察領域において観察される第一金属相321及び第二金属相322の総数を100としたとき、第一金属相321の含有数の割合は割合Aであり、第二金属相322の含有数の割合は割合Bである。このように、本実施形態の場合、分割片20の特定部22に含まれる特定金属相の数は、第一金属相321が優位となっている。
第一金属相321は、上述のように傾斜角度Xが設定範囲である60°≦X≦90°となっている。簡単のために傾斜角度Xを0°〜90°で考えた場合、このような第一金属相321は、図8に示すように同等の大きさの第二金属相322と比較して摺動面15に露出する面積が大きくなる。摺動部材10と相手部材とが摺動すると、オーバレイ層12は摩耗する。この摩耗によって、図8に示すようにマトリクスに含まれている金属相32は、摺動面15に露出する。このとき、傾斜角度Xが設定範囲にある第一金属相321は、図8に示すように第二金属相322に比較して露出面積が大きくなる。そのため、例えばオーバレイ層12をAl−Sn合金で形成する場合、相手部材と摺動する摺動面15には、露出した金属相32の成分であるSnが第二金属相322に比較して供給されやすくなる。また、オーバレイ層12は、図8に示すように傾斜角度Xが設定範囲である60°≦X≦90°に含まれない第二金属相322’も含んでいる。この第二金属相322’の場合、摺動面15に露出する面積が拡大するものの、板厚方向の厚みが小さい。そのため、オーバレイ層12が摩耗したとき、第一金属相321と比較して、金属相32の成分であるSnの供給能力は低下する。したがって、第一金属相321は、傾斜角度Xが上述の設定範囲にあることが好ましい。
例えば、摺動部材10と相手部材との間への異物の混入、あるいは摺動部材10と相手部材とが直接接触したりすると、摺動部材10と相手部材との間には熱が発生する。この熱の発生は、摺動部材10と相手部材とを潤滑する潤滑油の粘度の低下を招く。そのため、潤滑油の油膜が相手部材を支持する力は低下する。したがって、摺動部材10と相手部材との摺動部分で発生した熱は、迅速に逃がす必要がある。オーバレイ層12にマトリクス31よりも融点の低い物質からなる金属相32を含む場合、摺動面15に露出した金属相32は溶融時の融解によって摺動部分で発生した熱を吸収する。つまり、摺動部材10と相手部材との摺動部分から発生した熱は、摺動面15に露出する金属相32の融解によって迅速に逃がされる。このように、摺動部材10と相手部材との間の焼付を低減するためには、オーバレイ層12に含まれる金属相32を構成する低融点の成分が速やかに摺動面15に供給される構成が必要となる。
本実施形態のように傾斜角度Xが設定範囲となる第一金属相321は、特に合わせ目21に近い特定部22において、上述のように摺動面15に露出する露出面積が適度に大きくなる。そのため、オーバレイ層12に摩耗が生じるたびに、摺動面15には十分な量の金属相32を構成する低融点の成分が供給される。また、傾斜角度Xが設定範囲となる第一金属相321は、3次元的な網の目構造によって、より深い側へ直線的に連続している。そのため、金属相32が摺動面15に近い位置において融解にともない消失しても、金属相32を構成する低融点の成分はより深い側から迅速に補充される。その結果、摺動面15へ供給される低融点の成分の応答性が向上する。これにより、傾斜角度Xが設定範囲となる第一金属相321は、熱が発生しやすい合わせ目21に近い特定部22において、耐焼付性の向上に寄与する。
一方、融点の低い金属相32は、摺動部材10と相手部材との接触による凝着に起因する摩耗の低減にも寄与する。この場合、オーバレイ層12から必要以上の金属相32を構成する低融点の成分が供給されると、凝着による摩耗の低減が妨げられる。つまり、金属相32を構成する低融点の成分の供給が過剰になると、オーバレイ層12における摩耗の進行に対して、当該成分が早期に消費されてしまう。そこで、第一金属相321及び第二金属相322は、必要以上に大きくならないことが好ましい。具体的には、第一金属相321及び第二金属相322は、観察領域における観察において長軸の平均長さL1が15μm以下に設定することが好ましい。そして、この平均長さL1は、2μm以上、10μmに設定することがより好ましい。この長軸の平均長さL1とは、観察領域で観察される第一金属相321及び第二金属相322の長軸の長さの平均値である。
分割片20の特定部22における割合A(%)及び割合B(%)は、A:B=60〜80:40〜20であるのに対し、分割片20の本体部23における割合A(%)及び割合B(%)は、A:B=40〜60:60〜40である。つまり、分割片20の本体部23の場合、第一金属相321と第二金属相322との存在比は拮抗している。これにより、分割片20は、本体部23において金属相32による特異的な性質を発現しない。
次に、上記の構成による摺動部材10の製造方法について説明する。
最初に、鋼の裏金層13の内周側に軸受合金層11を形成する。このとき、軸受合金層11は、例えば焼結や鋳造によって裏金層13に形成される。これにより、軸受合金層11と裏金層13とのバイメタルが形成される。形成されたバイメタルは、所定の大きさに分割され、裏金層13が外周側になるように曲げられ、分割片20として形成される。形成された分割片20は、軸受合金層11の内周面にボーリング又はブローチ加工によって表面加工が施される。表面加工が施された分割片20は、炭化水素を含んだ溶液を用いて洗浄した後、スパッタリングによってオーバレイ層12が形成される。この場合、オーバレイ層12の形成に先立って、スパッタリングによって中間層14を形成してもよい。オーバレイ層12にスパッタリングを施す場合、ターゲットは、分割片20の中心軸ではなく、100mm〜200mmほど離れた位置に設置する。このとき、ターゲットは、分割片20の内周面に向かい合って配置される。このとき、ターゲットは、分割片20の周方向の両端部を結んだ仮想的な線よりも分割片20の外側にあることが好ましい。特に、ターゲットは、分割片20の周方向における中央部と前記した仮想的な線の中央とを結んだ線の延長線上にあることが好ましい。
以上の手順によって、摺動部材10は製造される。
次に、摺動部材10の観察手順について説明する。
本実施形態の場合、オーバレイ層12は、SEMの拡大倍率を2000倍とし、15μm×50μmの範囲を観察領域として観察している。この観察領域における金属相32の観察は、観察領域の金属相32を2値化し、画像解析によって行なっている。この場合、観察領域は、オーバレイ層12のみを含むものとする。観察領域に含まれる長軸の長さが1μm以上の金属相32を特定金属相として抽出し、傾斜角度Xに基づいて、第一金属相321及び第二金属相322を分類する。分類した第一金属相321の数及び第二金属相322の数に基づいて、第一金属相321の割合A及び第二金属相322の割合Bを算出する。
次に、摺動部材10の実施例について説明する。
実施例では、上述の手順で製造及び観察した摺動部材10を、食違い試験、回転荷重試験及び摩耗試験によって評価した。また、これらの試験では、摺動部材10は、2つの分割片20に分割されており、合わせ目21において径方向に30μm程度の意図的なずれを形成している。実施例に用いた摺動部材10は、外径が56mm、軸方向の全長を14mm、厚さを1.5mmに設定した。また、実施例は、オーバレイ層12において、Alを主成分とするマトリクス31に、金属相32となるSnが析出している。具体的には、オーバレイ層12は、20質量%のSnと、1質量%のCuと、残部がAlとからなるAl基合金である。
食違い試験は、2つに分割された分割片20の合わせ目21における耐焼付性を評価するための試験である。食違い試験は、摺動部材10にステップアップ荷重を加えながら相手部材を摺動部材10で支持しつつ回転駆動することによって行なった。試験条件は、図9に示す通りである。食違い試験は、分割片20の合わせ目21において焼付が生じた荷重を計測している。
回転荷重試験は、摺動部材10の全周にわたる耐疲労性を評価するための試験である。回転荷重試験は、不均衡となる錘が取り付けられている相手部材を摺動部材10で支持しつつ回転数を増加させながら回転駆動することによって行なった。試験条件は、図10に示す通りである。回転荷重試験は、分割片20の摺動面に疲労クラックが生じる回転数を計測している。
摩耗試験は、摺動部材10の摩耗を評価するための試験である。試験条件は、図11に示す通りである。摩耗試験は、分割片20の合わせ目21における摩耗量を計測している。
試験結果を図12から図14に示す。図12及び図13は、第一金属相321及び第二金属相322の長軸の平均長さL1が20μmの例である。また、図14は、第一金属相321及び第二金属相322の長軸の平均長さL1が14μmの例である。
図12に示す比較例1及び比較例2は、第一金属相321の含有数の割合A及び第二金属相322の含有数の割合Bが本実施形態に含まれない比較例である。実施例である試料1〜試料3は、比較例1と比較して、いずれも食違い試験の評価が向上している。これにより、割合A及び割合Bを規定した本実施形態の実施例である試料1〜試料3は、合わせ目21における耐焼付性が向上することがわかる。
また、図12の試料1〜試料3によると、特定部22における割合Aが大きくなるほど食違い試験の結果である耐焼付性が向上している。一方、比較例2に示すように、特定部22における割合Aが過大になると、逆に耐焼付性が低下する。これは、割合Aが大きくなるほど、マトリクス31に含まれる金属相32の傾きが揃いやすくなる。このように金属相32の傾きが揃うと、金属相32を構成するSnはオーバレイ層12の厚さ方向への移動が容易になる。この金属相32を構成するSnの移動は、軸部材との接触によって発生する熱を逃がす作用がある。一方、金属相32を構成するSnの傾きが揃い過ぎると、Snの移動が過剰に生じやすくなり、溶融したSnが摺動面15へ過剰に供給される原因となる。その結果、マトリクス31に含まれる金属相32が枯渇しやすくなり、割合Aが過大な比較例2は耐焼付性が低下すると考えられる。このことから、耐焼付性を考慮すると、割合Aは80程度が適していると考えられる。
図13における試料1〜試料3と、図14における試料4〜試料6と、図15における試料7〜試料9とを比較すると、特定部22における割合A及び割合Bが近似するとき、第一金属相321及び第二金属相322の長軸の平均長さL1が短くなるほど、耐摩耗性は向上する傾向にあることがわかる。これは、第一金属相321及び第二金属相322の長軸の平均長さL1が長くなると、溶融した金属相32が必要以上に摺動部分に供給され、凝着による摩耗の低減を妨げるためと考えられる。
以上説明したように、一実施形態の摺動部材10では、相手部材と摺動する摺動面15にはマトリクス31に析出する金属相32が露出する。この摺動面15に露出する金属相32は、摺動面15における相手部材との摩擦によって溶融し、融解によって周辺から熱を奪う。そのため、金属相32の周辺の温度の上昇が抑えられ、潤滑油の温度も上昇が抑えられる。その結果、潤滑油の粘度の低下が低減される。特に、金属相32のうちその長軸の傾斜角度Xが設定範囲である60°≦X≦90°となる第一金属相321は、摺動面15に露出する面積が適度に確保される。そのため、摺動面15には、溶融した金属相32が十分に供給される。一方、傾斜角度Xが設定範囲外となる第二金属相322は、摺動面15に露出する面積が小さい又は過大となり、金属相32の溶融にともなう潤滑油の粘度の低下への寄与が小さい。一実施形態の場合、特定部22における第一金属相321の傾斜角度を制御することにより、第一金属相321の溶融による分割片20の合わせ目21における温度の上昇が抑えられる。そのため、合わせ目21に近い特定部22における油膜の粘度の低下、及びこれにともなう油膜切れが低減される。したがって、合わせ目21における耐焼付性を高めることができる。
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
図面中、10は摺動部材、11は軸受合金層、12はオーバレイ層、15は摺動面、20は分割片、21は合わせ目、22は特定部、23は本体部、31はマトリクス、32は金属相、321は第一金属相、322は第二金属相を示す。

Claims (4)

  1. 軸受合金層と、
    前記軸受合金層の内周側に設けられ合金のマトリクス、及び前記マトリクスより融点が低く前記マトリクスに固溶することなく析出している金属相を有するオーバレイ層と、
    を備え、周方向で2つ以上の分割片に分割された筒状の摺動部材であって、
    前記分割片は、隣り合う前記分割片の合わせ目から周方向へ特定の範囲に設けられている特定部と、前記特定部を除く本体部と、を有し、
    前記分割片の軸に垂直な断面において、前記マトリクスに析出する前記金属相のうち任意の金属相を特定金属相とし、
    前記断面において前記特定金属相の前記本体部側の端部に接するとともに板厚方向に伸びる仮想線を設定し、前記仮想線における前記分割片の内周側を0°とし、前記仮想線に垂直であって前記特定金属相から近い前記合わせ目側を90°としたとき、
    前記特定金属相の長軸の傾斜角度Xが設定範囲である60°≦X≦90°となる第一金属相と、
    前記傾斜角度Xが前記設定範囲でない第二金属相と、を含み、
    前記特定部における前記第一金属相の含有数の割合A(%)、及び前記第二金属相の含有数の割合B(%)は、
    A:B=60〜80:40〜20
    である摺動部材。
  2. 前記第一金属相及び前記第二金属相の長軸の平均長さは、15μm以下である請求項1記載の摺動部材。
  3. 前記本体部において、2つの前記特定部の中間における前記第一金属相の含有数の割合A(%)、及び前記第二金属相の含有数の割合B(%)は、
    A:B=40〜60:60〜40
    である請求項1又は2記載の摺動部材。
  4. 請求項1から3のいずれか一項記載の摺動部材に用いられ、
    周方向に2つ以上に分割されている分割片。
JP2019127606A 2019-07-09 2019-07-09 摺動部材及びそれに用いる分割片 Pending JP2021011626A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019127606A JP2021011626A (ja) 2019-07-09 2019-07-09 摺動部材及びそれに用いる分割片

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019127606A JP2021011626A (ja) 2019-07-09 2019-07-09 摺動部材及びそれに用いる分割片

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2021011626A true JP2021011626A (ja) 2021-02-04

Family

ID=74226895

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019127606A Pending JP2021011626A (ja) 2019-07-09 2019-07-09 摺動部材及びそれに用いる分割片

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2021011626A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3635096B2 (ja) プレーンベアリング材料
Babu et al. Review of journal bearing materials and current trends
Neale Bearings: a tribology handbook
US20070297704A1 (en) Bearings
JP2006308099A (ja) 軸受部材
JP2016503863A (ja) 滑り軸受複合材料
US10890211B2 (en) Dynamic bearing
WO1999043963A1 (fr) Coussinet pour moteur thermique
JP5222650B2 (ja) ピストンリング
JP5858846B2 (ja) すべり軸受
JP6535582B2 (ja) 半割軸受
JP2013145052A (ja) 滑り軸受
US20040115465A1 (en) Composite material comprising a metallic support layer for use in slide bearings
JPH11325077A (ja) 複層摺動材
JP5858845B2 (ja) すべり軸受
JP2021011626A (ja) 摺動部材及びそれに用いる分割片
CN111316009B (zh) 半分割推力轴承、推力轴承、轴承装置以及内燃机
EP3434919B1 (en) Holder for rolling bearing, and rolling bearing
JP6911996B2 (ja) 軸受部材
US11761478B2 (en) Contact layer on the surface of a metal element in relative movement against another metal element and an articulation joint provided with such a contact layer
KR20070032248A (ko) 베어링 부재
JP6200343B2 (ja) 摺動部材
JP6882194B2 (ja) 滑り軸受および方法
JP2005164040A (ja) ジャーナル軸受システムおよび動圧軸受用ライニングの製造方法
JP7372585B1 (ja) 摺動部材および摺動部材を製造する方法