JP2021010853A - 好気性生物処理装置及びその運転方法 - Google Patents

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大地 澤村
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Abstract

【課題】担体相互の固着や集塊化を防止し、長期にわたって安定して生物処理することができる好気性生物処理装置及びその運転方法を提供する。【解決手段】好気性生物処理装置1は、反応槽(槽体)2と、該反応槽2の下部に水平に設置された透水板3と、該透水板3の上側に形成された大径粒子層4と、該大径粒子層4の上側に形成された小径粒子層5と、該小径粒子層5の上側に配置された酸素溶解膜モジュール6と、前記透水板3の下側に形成された受入室7と、該受入室7内に原水を供給する原水散布管8と、受入室7内において散気を行うように設置された洗浄配管9等を有する。反応槽2内好気性微生物における貧栄養細菌の存在比率が7%以上となるようにする。【選択図】図1

Description

本発明は、有機性排水の好気性生物処理装置及びその運転方法に関する。詳しくは、本発明は、流動床内に酸素溶解膜が配置された好気性生物処理装置と、その運転方法に関する。
流動床及び酸素溶解膜を有した好気性生物処理装置による好気性生物処理方法が特許文献1,2に記載されている。
特許文献1,2の好気性生物処理装置にあっては、反応槽内に活性炭等の担体の流動床が形成され、この流動床内に中空糸膜を有した酸素溶解膜モジュールが配置されている。原水は原水配管を介して反応槽の下部に供給され、流動床を形成する。空気等の酸素含有ガスが酸素溶解膜モジュールの中空糸膜内に供給され、酸素が酸素溶解膜に分子状に溶解し、分子状の酸素が中空糸膜内外の酸素濃度差による拡散現象に基づいて中空糸膜外周面に向って拡散移動し、中空糸膜外周面から外周囲の原水に分子状のまま直接に溶解する。
特開2018−89564号公報 特開2018−153733号公報
特許文献1,2の好気性生物処理装置において、運転を継続すると、担体相互の固着や集塊化が生じたり、酸素溶解膜の表面に微生物スライムが過剰に付着し、生物処理効率が低下するおそれがある。
通常は低濃度TOCの原水ではこのような問題は起きづらいが、特許文献1,2の好気性生物処理装置では高負荷処理が可能なため比較的低濃度域、例えばTOC濃度50〜1000mg/L(特に100〜500mg/L)程度であっても余剰汚泥の発生が比較的多い。さらに特許文献1,2に例示されるような上向流型の場合、流動床内の余剰汚泥の排出が必要であり、排出に時間がかかると処理効率が低下する。
本発明は、担体相互の固着や集塊化を防止し、長期にわたって安定して生物処理することができる好気性生物処理装置及びその運転方法を提供することを目的とする。
本発明の好気性生物処理装置は、反応槽と、該反応槽内に充填された流動床担体と、該反応槽内に原水を供給する原水供給手段と、該反応槽内に設置された酸素溶解膜モジュールと、該酸素溶解膜モジュールに酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段とを備えてなる好気性生物処理装置において、前記反応槽内の好気性微生物における貧栄養細菌の存在比率が7%以上であることを特徴とする。
本発明の一態様では、前記貧栄養細菌は、プランクトミケス科(Planctomycetaceae)に属する細菌、ロドバクター科(Rhodobacterales)に属する細菌及びカウロバクター科(Caulobacterales)に属する細菌の少なくとも1種である。
本発明の一態様では、前記原水供給手段は、原水を前記酸素溶解膜モジュールの下側と、前記酸素溶解膜モジュールの上下方向の途中との双方に供給可能である。
本発明の一態様では、前記反応槽の処理水の一部を前記反応槽の下部又は前記原水供給手段に循環させる循環手段が設けられている。
本発明の好気性生物処理装置の運転方法は、反応槽と、該反応槽内に充填された流動床担体と、該反応槽内に原水を供給する原水供給手段と、該反応槽内に設置された酸素溶解膜モジュールと、該酸素溶解膜モジュールに酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段とを備えてなる好気性生物処理装置の運転方法であって、該反応槽内の好気性微生物における貧栄養細菌の存在比率が7%以上であることを特徴とする。
本発明の一態様では、前記好気性生物処理装置の運転開始時に種汚泥として前記貧栄養細菌を5〜1000mg/L用いる。
本発明の一態様では、前記反応槽内のTOC濃度の最大値を200mg/L以下とする。
本発明の一態様では、前記反応槽の処理水の一部を前記反応槽又は前記原水供給手段に循環させることにより、前記反応槽内のTOC濃度の最大値を200mg/L以下とする。
本発明の一態様では、原水を前記反応槽内の下部と、それよりも上方とに供給することにより、前記反応槽内のTOC濃度の最大値を200mg/L以下とする。
本発明の一態様では、前記反応槽内の流動床の下部と上下方向中間部とのTOC濃度差が所定値以上となったときに、前記反応槽内の下部から散気する。
本発明の好気性生物処理装置及びその運転方法によると、反応槽の好気性微生物における貧栄養細菌の存在比率が7%以上となるようにすることにより、余剰汚泥の肥大化を抑制して安定に高効率の処理を可能にする運転方法を提供することが可能となる。
反応槽の好気性微生物における貧栄養細菌の存在比率を高めることにより、余剰汚泥の肥大化を抑制することができ、またこれにより、洗浄頻度を下げることができる理由としては、貧栄養細菌は増殖が遅く、余剰汚泥発生が少ないことから、酸素溶解膜や担体への付着が少なく剥離もしやすいこと等が考えられる。
なお、貧栄養細菌の存在比率を高めると共に、反応槽内の有機物濃度を低濃度に保つことにより、良質な処理水水質が得られるようになる。
実施例の結果を示すグラフである。 比較例の結果を示すグラフである。 実施の形態に係る生物処理装置の縦断面図である。 (a)は酸素溶解膜ユニットの側面図、(b)は酸素溶解膜ユニットの斜視図である。 別の実施の形態に係る生物処理装置の縦断面図である。
以下、図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。
図3は実施の形態に係る好気性生物処理装置1の縦断面図である。この好気性生物処理装置1は、反応槽(槽体)2と、該反応槽2の下部に水平に設置されたパンチングプレート等の多孔板や平板に複数の分散ノズルを均等に設けたものなどの透水板3と、該透水板3の上側に形成された大径粒子層4と、該大径粒子層4の上側に形成された小径粒子層5と、小径粒子層5の上側に粉粒状活性炭等の生物付着流動床担体により形成された流動床Fと、流動床F内に少なくとも一部が配置された酸素溶解膜モジュール6と、前記透水板3の下側に形成された受入室7と、該受入室7内に原水を供給する原水散布管8と、充填層の洗浄時に逆洗のためのガス等が供給される洗浄配管9等を有する。反応槽2の上部には、処理水を流出させるためのトラフ10及び流出口11が設けられている。トラフ10は槽内壁に沿って環状流路を形成している。流動床担体としては、平均粒径0.2〜1.2mm特に0.3〜0.6mmの活性炭が好適である。担体の粒径はJISメッシュを用いて測定された値である。
図3は、反応槽に流動床担体を充填して、酸素溶解膜の表面への生物膜の付着を担体の流動による剪断力によって抑制して生物膜の大部分が流動床担体に付着するようにしたものであり、このとき、酸素溶解膜は酸素供給の目的のみに用いられる。担体の平均粒径が0.2mm以上であるため、流動する担体によって酸素溶解膜表面に与えられる剪断力が大きくなり、生物の付着繁殖が防止される。また、担体の平均粒径を1.2mm以下としたことにより、担体の比表面積が大きくなり、付着する生物膜量が多くなり、十分な生物処理が行われる。
図3では、酸素溶解膜として非多孔質(ノンポーラス)の酸素溶解膜を用い、酸素含有気体を槽外から配管を通じて酸素溶解膜の一次側に通気して、排気は配管を通じて槽外に排出するように構成している。そのため、酸素含有気体を、低圧で酸素溶解膜に通気し、酸素を酸素分子として酸素溶解膜の構成原子の間を通過し(膜に浸透し)、酸素分子として被処理水と接触させる(水に直接溶解させるので気泡を生じない)という、いわば濃度勾配による分子拡散のメカニズムを用いた処理を行っているため、従来のように散気管などによる散気が不要となる。
また酸素溶解膜として疎水性の素材を用いると膜中に浸水しづらいので好ましいが、疎水性であっても微量の水蒸気の侵入は免れない。
図4は、酸素溶解膜モジュール6の一例を示している。この酸素溶解膜モジュール6は酸素溶解膜として非多孔質の中空糸膜22を用いたものである。この実施の形態では、中空糸膜22は上下方向に配列されており、各中空糸膜22の上端は上部ヘッダー20に連なり、下端は下部ヘッダー21に連なっている。中空糸膜22の内部は、それぞれ上部ヘッダー20及び下部ヘッダー21内に連通している。各ヘッダー20,21は中空管状である。なお、平膜やスパイラル膜を用いる場合にも、通気方向が上下方向となるように配列されることが望ましい。
図4(b)の通り、1対のヘッダー20,21と中空糸膜22とからなるユニットが複数個平行に配列されている。図4(a)の通り、各上部ヘッダー20の上部は配管を介して上部マニホルド23が連結され、各下部ヘッダー21の下部は配管を介して下部マニホルド24に連結されていることが好ましい。酸素溶解膜モジュール6の上部に酸素含有ガスを供給し、酸素溶解膜モジュール6の下部から排出する。空気等の酸素含有ガスは上部ヘッダー20から中空糸膜22を通って下部ヘッダー21へ流れ、この間に酸素が中空糸膜22を透過して反応槽2内の水に溶解する。
各ヘッダー20,21及び各マニホルド23,24は流水勾配を有するように設けられてもよい。酸素溶解膜モジュール6は上下に多段に設置されてもよい。
この酸素溶解膜モジュール6に空気を供給するために、ブロワ26と空気供給用の給気配管27とが設けられており(酸素含有ガス供給手段を構成)、該給気配管27が上部マニホルド23に接続されている。下部マニホルド24には排ガス用の中継配管28が接続されている。中継配管28は排出配管29が接続している。排出配管29は、下り勾配(鉛直下向きを含む)を有するように設けられ、反応槽2外にまで延設されている。図3では排出配管29は反応槽2の側方に引き出されているが、反応槽2の底部から下方に引き出されてもよい。
図3の通り、酸素溶解膜に溶解しなかった酸素含有気体の残部が排出配管29を通じて槽外に排気され、その末端が酸素溶解膜モジュールの下端(モジュールが複数のときは各モジュール下端の中で最も下位のもの)より低い位置となるよう配置しているため、排気に凝縮水が含まれる場合は排出配管29の下方に設置のタンク32に凝縮水が流出する。タンク32内の水は、ポンプ33及び配管34によって反応槽2に送水することもできる。
なお、上記構成では、排出配管29が排気の槽外排出と凝縮水の槽外排出とを併せて行うことになるが、排出配管29を槽内または槽外で分岐して排気を槽外に排出する排ガス配管30を別途設けてもよい。この場合、凝縮水は排出配管29を通じて排出されるため、分岐して別途設けた排ガス配管30はその末端の排気部が酸素溶解膜モジュールの下端より高い位置に配置することができるが、凝縮水の溜まりができないよう配管は下り勾配を有さず上り勾配または鉛直上向きのみで構成することが好ましい。またこのとき排出配管29の排ガス配管30との分岐点より下流側にバルブを設け、バルブを開くことにより凝縮水がタンク32に流出するように構成してもよい。
バルブは自動弁、手動弁のいずれでもよい。凝縮水を排出するためのバルブの開放は、連続式でも間欠式でもよい。間欠式の場合は、温度変化、湿度変化によって変化するが、通常の運転では、1日に1回〜30日に1回(多くても日に1回数秒、少なければ月に1回数十秒)、好ましくは1日に1回〜15日に1回、バルブを開くことにより排水する。
流動床担体の充填量は反応槽の容積の30〜70%程度、特に40〜60%程度が好ましい。この充填量は、多いほうが生物量が多く活性は高いが、多すぎると担体が流出するおそれがある。従って、流動床が20〜50%程度展開するLV例えば7〜30m/hr、特に8〜15m/hr程度で通水するのが良い。展開率が20%よりも低いと、目詰まり、短絡のおそれがある。展開率が50%よりも高いと、担体の流出のおそれがあると共に、ポンプ動力コストが高くなる。
通常の生物活性炭では、活性炭流動床の展開率は10〜20%程度であるがこの場合、活性炭の流動状態が不均一で上下左右に流動する。結果として同時に設置した膜が活性炭によってこすられ、すり減って消耗することになる。これを防止するため、本発明では、活性炭等の流動床担体は十分に流動させることが必要で、展開率は20%以上例えば20〜50%程度とするのが望ましい。
なお、平均粒径0.6mmの活性炭をLV15m/hrで流動させると、展開率20〜30%の流動状態となる。平均粒径0.3mmの活性炭をLV8〜10m/hrで流動させると、展開率は20〜30%となる。
本発明では、流動床担体として活性炭以外のゲル状物質、多孔質材、非多孔質材等も同様の条件で使用できる。例えば、ポリビニルアルコールゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリウレタンフォーム、アルギン酸カルシウムゲル、ゼオライト、プラスチック等も用いることができる。ただし、担体として活性炭を用いると、活性炭の吸着作用と生物分解作用による相互作用により、広範囲な汚濁物質の除去を行うことが可能である。なお、活性炭は、やしがら炭、石炭、木炭等特に限定されない。形状は球状炭が好ましいが、通常の粒状炭や破砕炭でも良い。
活性炭等の担体の平均粒径は0.2〜1.2mm特に0.3〜0.6mm程度が好ましい。平均粒径が大きいと高LVとすることが可能であり、処理水の一部を反応槽に循環する場合は循環量を増やせるため高負荷が可能となる。しかし、比表面積が小さくなるため、生物量が少なくなる。平均粒径が小さいと、低LVで流動できるため、ポンプ動力が安価となる。かつ、比表面積が大きいため、付着生物量が増える。
最適粒径は廃水の濃度によって決定され、TOC:50mg/Lであれば0.2〜0.4mm程度が好ましい。
このように構成された好気性生物処理装置1において、原水は原水散布管8を通じて受入室7に導入され、透水板3及び大径・小径の粒子層4,5を上向流通水されてSSが濾過され、次いで生物膜付着の粉粒状活性炭の流動床Fにおいて、一過式で上向流通水され生物反応を行って上部清澄領域からトラフ10と流出口11を通じて処理水として取り出される。
給気配管27から供給された空気等の酸素含有気体は、酸素溶解膜モジュール6を下向流通気した後、酸素溶解膜モジュール6の下端位置より下部ヘッダー21、下部マニホルド24を通じて流出し、排空気は排出配管29から(または排ガス配管30を設けたときは排ガス配管30から)大気中へ排出される。凝縮水は排出配管29を通じてタンク32へ流出する。ただし、空気等の酸素含有気体は、酸素溶解膜モジュール6に上向流で通気されてもよい。
なお、酸素溶解膜として中空糸膜を用いるときは通気部の断面積が小さいため通気の阻害となりやすく影響が大きいので、酸素溶解膜が中空糸膜である好気性生物処理装置に上記の凝縮水の除去機構をより好適に用いることができる。
本発明では、活性炭等の生物担体の流動床の領域内に非多孔質の酸素溶解膜のモジュールを配置することで、供給酸素量が多くなる。
また、平均粒径0.2〜1.2mmの生物担体をLV7〜30m/hrの上向流により流動させて形成した流動床で運転するため、激しい撹乱にさらされることがない。したがって、多量の生物を安定して維持できる。
また、本発明では酸素溶解膜を使用するため、プリエアレーション、直接曝気と比較すると、酸素の溶解動力が小さい。本発明では、流動床担体の平均粒径を0.2〜1.2mmとしているので、酸素溶解膜の表面が担体で擦られて生物の付着繁殖が防止されるので、酸素溶解膜から被処理水中に酸素が効率よく溶解する。これにより、酸素溶解膜からの酸素供給量と、流動床担体付着生物膜による有機物分解速度のバランスがとれ、安定した生物処理が行われる。
これらのことから、本発明によると、有機性排水を安定して処理することが可能となる。
<酸素含有ガス>
酸素含有ガスは空気、酸素富化空気、純酸素等、酸素を含む気体であればよい。通気する気体はフィルターを通過させて微細粒子を予め除去することが望ましい。
通気量は生物反応に必要な酸素量の当量から2倍程度が望ましい。これよりも少ないと酸素不足で処理水中にBODやアンモニアが残存し、多いと通気量が不必要に多くなることに加えて圧力損失が高くなるため、経済性が損なわれる。
通気圧力は所定の通気量で生ずる中空糸の圧力損失よりもわずかに高い程度が望ましい。
<ブロワ>
ブロワは、吐出風圧が水深からくる水圧以下のもので十分である。但し、配管等の圧損以上であることは必要である。通常、配管抵抗は1〜2kPa程度である。
5mの水深の場合、通常は0.55MPa程度までの出力の汎用ブロワが用いられ、それ以上の水深では高圧ブロワが用いられてきている。
本発明では、5m以上の水深であっても0.5MPa以下の圧力の汎用ブロワを用いることができ、0.1MPa以下の低圧ブロワを用いることが好ましい。
酸素含有ガスの供給圧は、中空糸膜の圧力損失より高く、さらに膜が水圧でつぶれないこと、が条件となる。平膜、スパイラル膜は膜の圧損が水圧と比較すると無視できるため、極めて低い圧力、5kPa程度以上、水深圧力以下、望ましくは20kPa以下である。
中空糸膜の場合、内径と長さによって圧力損失は変化する。通気する空気量は膜1mあたり50〜200mL/dayであるから、膜長さが2倍になると空気量は2倍になり、膜径が2倍になっても空気量は2倍にしかならない。したがって、膜の圧力損失は膜長さに正比例し、直径に反比例する。
圧力損失の値は、内径50μm、長さ2mの中空糸で3〜20kPa程度である。
<原水の前処理及び生物処理水の後処理>
本発明では、原水としては、半導体、液晶製造工程排水、食品工場排水、自動車製造排水、機械化工排水、化学石油プラント排水などが例示されるが、これらに限定されない。
本発明では、特にTOC濃度が比較的低い場合であっても余剰汚泥の発生が問題となりうることが大きな課題であるから、原水のTOC濃度が50〜1000mg/L(特に100〜500mg/L)程度の場合に特に好適に使用することができる。
原水中のSS濃度が高い場合には、前処理してSSを除去した後、生物処理装置に供給するのが好ましい。
本発明では、生物処理装置からの生物処理水をさらに処理してもよい。このような処理としては、処理水中のSSや生物汚泥を除去するための凝集沈殿処理などが例示される。
<反応槽内の好気性微生物>
本発明では、反応槽2内の好気性微生物を、貧栄養細菌の存在比率が増加したものとし、好適には菌叢の中の貧栄養細菌の存在比率を7%以上(特に好適には9%以上)とする。なお本発明における細菌の存在比率は重量比で表している。
貧栄養細菌は以下のいずれか1以上が好適である。
・プランクトミケス科(Planctomycetaceae)に属する細菌(例えばGemmata obscuriglobusやPlanctomyces limnophilusなど)、
・ロドバクター科(Rhodobacterales)に属する細菌(例えばRhodobacter spp.、Rhodobacter sphaeroides、Paracoccus denitrificansなど)、
・カウロバクター科(Caulobacterales)に属する細菌(例えばAsticcacaulis spp.、Caulobacter spp.など)
本発明における細菌の存在比率は既知の菌叢解析技術を適宜使用して算出することができる。好適にはショットガンシーケンスまたはアンプリコンシーケンスによるメタゲノム解析を用いることができるが、他にもDGGEやリアルタイムPCRを用いてもよい。
<運転操作手順>
運転操作は次の手順によって行われることが好ましい。
(1) 立上げ開始時:反応槽2の運転開始に際して、反応槽2内に種菌体として貧栄養細菌を供給する。好ましくは種汚泥として貧栄養細菌を7%以上含む汚泥を用いることで貧栄養細菌を5〜100mg/L(望ましくは50〜200mg/L)投入する。
(2) 立上中:立上時(運転開始当初)の原水のTOC濃度を1〜100mg/Lとし、その後、5〜10日程度かけて原水のTOC濃度を低濃度から緩やかに定常運転時濃度まで増大させる。
(3) 通常運転時:反応槽2内(流動床F内)の有機物濃度を低濃度に維持する。好ましくは、反応槽2内のTOC濃度を200mg/L以下(特に50mg/L以下、特に10mg/L以下)例えば1〜200mg/Lの低濃度に維持する。
<有機物濃度の低濃度維持>
反応槽2内の有機物濃度を低濃度に維持するために、例えば以下の(i)〜(iv)のいずれか1以上を実施することが好ましい。
(i) 原水の流入量を絞る。この際、原水の有機物濃度を測定して反応槽への流入水流量を制御して、槽内流入部近傍の槽内水のTOC濃度を200mg/L以下(特に50mg/L以下、特に10mg/L以下)の低濃度に維持する。
(ii) 希釈水で原水を希釈する。この際、原水の有機物濃度を測定して原水の希釈倍率を制御し、反応槽への流入水のTOC濃度を200mg/L以下(特に50mg/L以下、特に10mg/L以下)の低濃度に維持する。
(iii) 後述の図5のように、処理水の一部を循環して原水及び/又は槽内水を希釈する。この際、原水、処理水の有機物濃度を測定して処理水循環の流量を制御して、反応槽への流入水または槽内流入部近傍の槽内水のTOC濃度を200mg/L以下(特に50mg/L以下、特に10mg/L以下)の低濃度に維持する。
(iv) 原水を異なる深さに分注して(好ましくは、反応槽2の下部と流動床の上下方向の中間付近)、槽内の深さ方向の有機物濃度を所定範囲となるようにし、槽下部への流入量を絞ることで槽内流入部近傍の槽内水のTOC濃度を200mg/L以下(特に50mg/L以下、特に10mg/L以下)の低濃度に維持する。
<空気逆洗>
本発明では、好ましくは反応槽内の異なる深さ位置(好ましくは、反応槽2の下部と流動床の上下方向の中間付近)にそれぞれ有機物濃度計(TOC計)を配置する。そして、流動床の下部と流動床の中間付近でのTOC測定値の差が一定以上(たとえば20mg/L以上)になったときは、反応槽内の深さ方向の負荷が不均一になって槽下部が過負荷により余剰汚泥の過剰発生が懸念されると判断し、一時的に反応槽下部に配置した洗浄配管9から散気して空気逆洗を行って担体間の余剰汚泥を剥離し、その後、曝気停止し循環水量を増やして槽内の上向流通水を高LVとして剥離汚泥を槽外排出して原状復帰する。
図5は処理水の一部を循環させるようにした実施の形態に係る好気性生物処理装置1Aの縦断面図である。この好気性生物処理装置1Aは、反応槽(槽体)2と、該反応槽2の下部に水平に設置されたストレーナ3Sと、該ストレーナ3Sの上側に粉粒状活性炭等の生物付着担体の充填により形成された流動床Fと、流動床F内に少なくとも一部(この実施の形態では、全体)が配置された酸素溶解膜モジュール6と、前記ストレーナ3Sの下側に形成された受入室7と、反応槽2内に原水を供給するための原水管41〜43と、酸素溶解膜モジュール6に空気等の酸素含有ガスを供給するためのブロワ26等を有する。反応槽2の上部には、処理水を流出させるためのトラフ10及び流出口11が設けられている。トラフ10は槽内壁に沿って環状流路を形成している。
反応槽2の平面視形状は、方形、円形、多角形等のいずれでもよいが、この実施の形態では方形となっている。
原水は、原水元管40から分岐した複数本(この実施の形態では3本)の原水管41,42,43を介して反応槽2内の下部に供給される。
この実施の形態では、原水管41,42,43の末端の原水出口41N,42N,43Nは酸素溶解膜モジュール6の下側において鉛直上方を指向して開口している。
原水出口41N,42N,43Nは配置位置が異なっている。この実施の形態では、反応槽2を平面視した状態において、原水出口42Nが反応槽2の中央部に位置し、原水出口41N,43Nは原水出口42Nを挟んで互いに反対側に位置している。
原水出口41N〜43Nは、いずれも酸素溶解膜モジュール6の下方に位置しており、各原水出口41N〜43Nから上方に向って流出した原水が酸素溶解膜モジュール6に直射状に当るようになっている。
なお、各原水出口41N〜43Nから酸素溶解膜モジュール6の下端までの距離は50〜500mm程度が好適である。これは、出口41N〜43Nからの噴出流を直接的に酸素溶解膜に当てるためである。
各原水管41,42,43に、開閉又は流量増減を行うためのバルブ41v,42v,43vが設けられている。原水管の本数は3本に限定されるものではなく、原水管1本に割り当てられる水平断面積が0.5〜25m/本、特に1〜5m/本となるように2本以上の原水管を設けるようにすればよい。ただし、水平断面積が1.0mを下回る小型の反応槽においては原水管の割当面積にかかわらず2〜3本程度の本数とすればよい。いずれの場合も、末端の原水出口は、酸素溶解膜モジュール6の下側であって、且つ反応槽2の平面視においてなるべく均等に配置されることが好ましい。
前記流出口11からの処理水は、配管15を介して処理水槽16に導入される。処理水槽16内の処理水の一部は、処理水として系外に取り出される。残部は循環ポンプ17及び循環配管18を介して受入室7内の散水管19に供給され、ストレーナ3Sの開口3aを通って流動床F内に流入する。これにより、原水が処理水によって希釈され、流動床F内の液のTOC濃度が原水出口41N〜43N付近でも200mg/L以下となる。この実施の形態では循環水を受入室に供給しているが、少なくとも一部を原水供給手段に供給して原水を予め希釈して反応槽2に供給してもよい。
なお原水TOC濃度が高く、希釈後も200mg/Lを超える場合は前記(iv)の原水分注を行うとよい。
[実施例1、比較例1]
<実験条件>
図3の好気性生物処理装置を用いた。菌叢解析技術としてショットガンシーケンスによるメタゲノム解析を用いて細菌の存在比率を算出した。
実施例1では種菌体として貧栄養細菌のうちプランクトミケス科・ロドバクター科・カウロバクターの合計の存在比率が9.3%の種汚泥を用いて低負荷から1週間かけて徐々に立ち上げた。
比較例1では種菌体として一般的な活性汚泥(貧栄養細菌の存在比率は概ね3%程度)を用いて立ち上げた。
原水としては、有機物を基質とする原水としてIPA(イソプロピルアルコール)濃度300mg−TOC/Lの調製水を用いた。この原水には、さらに窒素源として炭酸水素アンモニウムを30mg−N/Lとなるように添加した。
実施例1及び比較例1ともに、容積負荷が約5kg−BOD/mとなるように連続的に反応槽に原水を流入させて上向流通水した。
なお実施例1では、処理水の一部を循環して原水を10倍希釈して有機物濃度30mg−TOC/Lの被処理水として反応槽に流入させた。
実施例1は担体洗浄(空気逆洗+高LV通水)を1回/週の頻度で定期的に実施し、比較例1は担体洗浄を1回/日の頻度で定期的に実施した。なお比較例1は短期間で酸素溶解膜に生物膜が生えて空気逆洗による膜洗浄が必要になったが、実施例1と比較例1との違いを明確とするために、敢えて酸素溶解膜の洗浄は行わなかった。
実施例1、比較例1の約1ヶ月間の連続試験の結果をそれぞれ図1(実施例1)、図2(比較例1)に示す。
その結果、実施例1では、図1の通り、洗浄が1回/日の低頻度でも安定して良質な処理水を得られた。なお1ヶ月後の菌叢も貧栄養細菌としての3科の合計の存在比率は約9%を維持していた。
一方、比較例1は試験開始1週間程度で処理水の水質は悪化し、1回/週の頻度の洗浄では回復させることができなかった。なお、比較例1では貧栄養細菌の存在比率は3%以下であった。
[比較例2]
実施例1の試験終了時から、処理水を循環して原水を希釈する操作を行わなかったこと(流入水の有機物濃度が300mg−TOC/Lであること)を除いて実施例1と同じ条件で運転継続した。その結果、1週間程度で処理水の水質は悪化し、酸素溶解膜や担体の表面に余剰汚泥が発生した。
菌叢としても貧栄養細菌としての3科の合計の存在比率は約3%まで低下しており、他の科の貧栄養細菌の存在の可能性はあるものの、他の菌により駆逐され、貧栄養細菌の高い存在比率が維持されなかったものと推定された。
1,1A 好気性生物処理装置
2 反応槽
6 酸素溶解膜モジュール
16 処理水槽
20,21 ヘッダー
22 中空糸膜
27 給気配管
29 排出配管
30 排ガス配管

Claims (10)

  1. 反応槽と、
    該反応槽内に充填された流動床担体と、
    該反応槽内に原水を供給する原水供給手段と、
    該反応槽内に設置された酸素溶解膜モジュールと、
    該酸素溶解膜モジュールに酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と
    を備えてなる好気性生物処理装置において、
    前記反応槽内の好気性微生物における貧栄養細菌の存在比率が7%以上であることを特徴とする好気性生物処理装置。
  2. 前記貧栄養細菌は、プランクトミケス科(Planctomycetaceae)に属する細菌、ロドバクター科(Rhodobacterales)に属する細菌及びカウロバクター科(Caulobacterales)に属する細菌の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1の好気性生物処理装置。
  3. 前記原水供給手段は、原水を前記酸素溶解膜モジュールの下側と、前記酸素溶解膜モジュールの上下方向の途中との双方に供給可能であることを特徴とする請求項1又は2の好気性生物処理装置。
  4. 前記反応槽の処理水の一部を前記反応槽の下部又は前記原水供給手段に循環させる循環手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの好気性生物処理装置。
  5. 反応槽と、
    該反応槽内に充填された流動床担体と、
    該反応槽内に原水を供給する原水供給手段と、
    該反応槽内に設置された酸素溶解膜モジュールと、
    該酸素溶解膜モジュールに酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と
    を備えてなる好気性生物処理装置の運転方法であって、
    該反応槽内の好気性微生物における貧栄養細菌の存在比率が7%以上であることを特徴とする好気性生物処理装置の運転方法。
  6. 前記好気性生物処理装置の運転開始時に種汚泥として前記貧栄養細菌を5〜1000mg/L用いることを特徴とする請求項5の好気性生物処理装置の運転方法。
  7. 前記反応槽内のTOC濃度の最大値を200mg/L以下とすることを特徴とする請求項5又は6の好気性生物処理装置の運転方法。
  8. 前記反応槽の処理水の一部を前記反応槽又は前記原水供給手段に循環させることにより、前記反応槽内のTOC濃度の最大値を200mg/L以下とすることを特徴とする請求項7の好気性生物処理装置の運転方法。
  9. 原水を前記反応槽内の下部と、それよりも上方とに供給することにより、前記反応槽内のTOC濃度の最大値を200mg/L以下とすることを特徴とする請求項7の好気性生物処理装置の運転方法。
  10. 前記反応槽内の流動床の下部と上下方向中間部とのTOC濃度差が所定値以上となったときに、前記反応槽内の下部から散気することを特徴とする請求項5〜9のいずれかの好気性生物処理装置の運転方法。
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JP7564739B2 (ja) 2021-03-11 2024-10-09 株式会社神鋼環境ソリューション 排水処理装置及び酸素透過膜ユニット

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