本開示の一態様による車両駆動装置は、永久磁石モータを駆動するインバータを備える車両駆動装置であって、前記インバータは、複数のスイッチ素子を有する3相ブリッジ回路と、前記3相ブリッジ回路を介して前記永久磁石モータの3相を短絡させる3相短絡回路と、制御回路とを備え、前記制御回路は、前記3相ブリッジ回路を駆動するマイクロプロセッサと、前記マイクロプロセッサに不具合が生じているときに不具合通知信号を出力する不具合通知回路と、前記不具合通知回路から出力された前記不具合通知信号を保持するラッチ回路とを備え、前記ラッチ回路に保持された前記不具合通知信号に基づいて前記3相短絡回路を駆動する3相短絡駆動信号を出力する。
このように、マイクロプロセッサの不具合を通知する不具合通知信号を保持することで、マイクロプロセッサに不具合が生じている場合であっても、必要に応じて永久磁石モータの3相短絡制御を実行することができる。これにより、車両駆動装置の信頼性を高めることができる。
また、前記制御回路は、前記ラッチ回路が前記不具合通知信号を保持し、かつ、前記永久磁石モータの回転数が所定回転数以上である場合に、前記3相短絡駆動信号を出力してもよい。
このように、永久磁石モータの回転数が所定回転数以上である場合に、前記3相短絡駆動信号を出力することで、永久磁石モータが高速回転して誘起電圧が発生しやすいときに3相短絡制御を実行することができる。また、永久磁石モータの回転数が所定回転数より小さいときは3相短絡制御が実行されないので、永久磁石モータが低速回転しているときに制動トルクが発生することを抑制できる。これにより、車両駆動装置の信頼性を高めることができる。
また、前記制御回路は、前記永久磁石モータに設けられた回転位置センサの電圧出力の積分値が閾値よりも小さくならない場合に、前記永久磁石モータの回転数が所定回転数以上であると判断してもよい。
これによれば、永久磁石モータの回転数が所定回転数以上であるか否かを、的確及び簡易に判断することができる。これにより、車両駆動装置の信頼性を高めることができる。
また、前記不具合通知回路は、前記マイクロプロセッサの不具合の有無を通知するウオッチドックタイマ回路であり、前記不具合通知信号は、前記ウオッチドックタイマ回路のリセット信号であってもよい。
これによれば、不具合通知信号をラッチ回路に的確に保持させることができる。これにより、マイクロプロセッサに不具合が生じている場合であっても、的確に永久磁石モータの3相短絡制御を実行することができる。これにより、車両駆動装置の信頼性を高めることができる。
また、前記不具合通知回路は、前記リセット信号を前記マイクロプロセッサに出力し、前記マイクロプロセッサは、前記リセット信号に基づいて正常に再起動できた場合に、前記ラッチ回路に保持されている前記不具合通知信号を解除するラッチ解除信号を出力してもよい。
これによれば、正常に戻ったときは3相短絡制御が実行されないことになり、必要以上に3相短絡制御が実行されることを抑制できる。これにより、本当に必要とされるときに永久磁石モータの3相短絡制御を実行することができ、車両駆動装置の信頼性を高めることができる。
また、前記マイクロプロセッサは、前記リセット信号を受け付けていない場合に、前記マイクロプロセッサに不具合が発生した状態を模擬的に示す不具合模擬信号を前記ラッチ回路に出力し、前記制御回路は、前記不具合模擬信号に基づいて前記3相短絡駆動信号を出力してもよい。
このように、不具合模擬信号に基づいて3相短絡駆動信号を出力し、3相短絡制御を模擬的に実行することで、ラッチ回路及び3相短絡回路の潜在故障を早期に発見することができる。これにより、車両駆動装置の信頼性を高めることができる。
また、前記マイクロプロセッサは、前記永久磁石モータが所定条件で駆動しているときに、前記不具合模擬信号を出力してもよい。
これによれば、例えば、3相短絡制御を実行した場合の永久磁石モータのトルクが車両駆動装置の駆動に影響を与えないトルク以下であるときに、3相短絡制御を模擬的に実行することができる。これにより、車両駆動装置の信頼性を高めることができる。
また、前記3相短絡回路は、前記3相短絡駆動信号を受け付けることで前記永久磁石モータの3相を短絡させ、前記制御回路は、前記永久磁石モータの3相に流れる電流の変化、電流位相の変化、及び、前記3相ブリッジ回路における直流電圧の変化の少なくとも1つの変化に関する情報を取得し、前記情報に基づいて前記3相短絡回路及び前記ラッチ回路の故障有無を判断してもよい。
このように、上記情報に基づいて3相短絡回路及びラッチ回路の故障有無を判断することで、ラッチ回路及び3相短絡回路の潜在故障を的確に発見することができる。これにより、車両駆動装置の信頼性を高めることができる。
また、前記インバータは、前記3相ブリッジ回路における直流電圧の所定の過電圧を検出する過電圧検出回路を、さらに備え、前記過電圧検出回路は、前記所定の過電圧を検出すると、前記3相短絡回路に3相短絡信号を出力し、前記制御回路は、前記過電圧検出回路が前記3相短絡信号を強制的に出力するように制御し、前記過電圧検出回路が前記3相短絡信号を強制的に出力することによる、前記3相に流れる電流の変化、前記3相における電流位相の変化、又は、前記直流電圧の変化に基いて、3相短絡に係る異常を検出してもよい。
上記構成の車両駆動装置によると、制御回路は、適宜、過電圧検出回路が3相短絡信号を強制的に出力するように制御することで、適宜、3相短絡に係る異常を検出することができる。仮に3相短絡に係る異常が検出された場合に、制御回路は、例えば車両の上位制御部にこの異常を伝え、上位制御部がメータ表示などでドライバーに対する警告を発して修理を促す事で、より安全が確保できるように誘導するといった対応を取ることができる。このように、上記構成の車両駆動装置によると、インバータにおいて3相短絡制御の潜在故障を早期発見して、車両駆動装置の信頼性を高めることができる。
また、前記過電圧検出回路は、前記直流電圧を抵抗分割することにより第1分圧電圧に分圧する第1分圧回路と、所定の電圧を抵抗分割することにより、前記所定の過電圧として検出される第2分圧電圧に分圧する第2分圧回路と、前記第1分圧電圧と前記第2分圧電圧とのいずれか一方を選択して出力する選択回路と、前記選択回路から出力された、前記第1分圧電圧又は前記第2分圧電圧と、基準電圧とを比較し、比較結果に基づいて前記3相短絡信号を出力する比較回路と、を備え、前記制御回路は、前記永久磁石モータが所定条件で駆動しているときに、前記第2分圧電圧が出力されるように前記選択回路を制御することで、前記過電圧検出回路が前記3相短絡信号を強制的に出力するように制御してもよい。
上記構成の車両駆動装置によると、制御回路は、選択回路が第2分圧を選択して出力するように制御することで、過電圧検出回路から3相短絡信号を強制的に出力させることができる。これにより、上記構成の車両駆動装置によると、インバータにおいて3相短絡制御の潜在故障を早期発見して、車両駆動装置の信頼性を高めることができる。
また、前記選択回路から出力された、前記第1分圧電圧又は前記第2分圧電圧と、前記比較回路から出力された、前記3相短絡信号は、前記制御回路に入力され、 前記制御回路は、前記第2分圧電圧が所定の電圧である場合には、前記第2分圧回路及び前記選択回路が正常であると判定し、前記3相短絡信号が所定の信号である場合には、前記過電圧検出回路が正常であると判定してもよい。
上記構成の車両駆動装置によると、第2分圧回路及び選択回路が正常であると判定すること、並びに、過電圧検出回路が正常であると判断することができる。これにより、上記構成の車両駆動装置によると、仮に3相短絡に係る異常が検出された場合に、異常の原因となる回路の特定をより精度よく行うことができる。このように、上記構成の車両駆動装置によると、インバータにおいて3相短絡制御の潜在故障を早期発見して、車両駆動装置の信頼性を高めることができる。
また、前記制御回路は、前記3相短絡に係る異常を検出した場合には、以後、前記3相短絡回路を用いた前記3相短絡の実行を抑止して、前記3相短絡回路を用いずに、前記マイクロプロセッサが前記3相ブリッジ回路を制御して前記3相短絡を行ってもよい。
上記構成の車両駆動装置によると、3相短絡に係る異常を検出した場合に、以降、その原因の可能性がある3相短絡回路を用いて行う3相短絡の実行が抑止され、3相短絡回路を用いずに3相短絡が行われる。これにより、上記構成の車両駆動装置によると、インバータにおいて3相短絡制御の潜在故障を早期発見して、車両駆動装置の信頼性を高めることができる。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の一形態に係る実現形態を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。本開示の実現形態は、現行の独立請求項に限定されるものではなく、他の独立請求項によっても表現され得る。
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
なお、車両駆動装置の永久磁石モータの状態を大まかに分けると、力行している状態、回生している状態、停止している状態、ならびに、力行、回生及び停止のいずれでもない状態(車両が惰行状態、及び、エンジンや他の永久磁石モータなどの他の駆動源がある場合は、他の駆動源のみで走行している状態)に分けられる。以下の実施の形態では、永久磁石モータが力行、回生及び停止のいずれでもない状態、及び、所定トルク以下の小さなトルクで回生している状態にて3相短絡制御を行う場合を代表例に挙げて説明するが、本実施の形態はそれに限られず、永久磁石モータが所定の条件にて力行、回生又は停止している状態にも適用される。
(実施の形態1)
[1−1.車両駆動装置の構成]
まず、本実施の形態による車両駆動装置の構成について、図1〜図3を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態1による車両駆動装置5を備える電気車両1を例示する図である。電気車両1は、駆動輪2と、動力伝達機構3と、永久磁石モータM1と、インバータ10と、電池P1とを備えている。これらの構成のうち、車両駆動装置5は、永久磁石モータM1、インバータ10及び電池P1によって構成されている。以下、永久磁石モータM1をモータM1と呼ぶ場合がある。
モータM1は、電気車両1の駆動輪2を駆動する3相交流式のモータであり、例えば、埋込磁石同期モータ又は表面磁石同期モータなどのモータが用いられる。
動力伝達機構3は、例えば、ディファレンシャルギア及びドライブシャフトによって構成され、モータM1と駆動輪2との間にて動力を伝達する。モータM1の回転力は、動力伝達機構3を経由して駆動輪2に伝達される。これと同様に、駆動輪2の回転力は、動力伝達機構3を経由してモータM1に伝達される。なお、電気車両1は、動力伝達機構3を備えていなくてもよく、モータM1と駆動輪2とが直結された構造であってもよい。
電池P1は、例えば、リチウムイオン電池などの直流電源である。電池P1は、モータM1を駆動させるための電力を供給し、及び、この電力を蓄積する。
インバータ10は、電池P1から供給された直流電力を例えば3相の交流電力に変換して、その交流電力をモータM1に供給する。このように車両駆動装置5は、電池P1の電力を用いて3相交流式のモータM1を駆動するように構成されている。
図2は、車両駆動装置5のインバータ10、永久磁石モータM1及び電池P1を例示する回路図である。
図2に示すように、車両駆動装置5は、モータM1と、インバータ10と、電池P1とを備えている。インバータ10は、3相ブリッジ回路40とドライブ回路30と制御回路20とを備えている。なお図2には、3相ブリッジ回路40に印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサC1も図示されている。
3相ブリッジ回路40は、電池P1から供給された直流電力をスイッチング動作により3相の交流電力に変換して、その交流電力をモータM1に供給し、モータM1を駆動する回路である。3相ブリッジ回路40の、スイッチング動作制御用の入力側はドライブ回路30に、電力の入力側は電池P1に、それぞれ接続され、出力側はモータM1に接続されている。なお、モータM1の回生時には、3相ブリッジ回路40の出力側から回生電流が導入され、電力の入力側に向かって流れるが、ここでは、電池P1が接続される側を入力側、モータM1が接続される側を出力側と定義する。
図3は、車両駆動装置5のインバータ10が備える3相ブリッジ回路40を例示する回路図である。なお、図3に示す電圧Vpは電源電圧であり、電圧Vgは接地電圧である。
3相ブリッジ回路40は、図3の上側に位置する上側アーム群に設けられたスイッチ素子S1、S2、S3と、図3の下側に位置する下側アーム群に設けられたスイッチ素子S4、S5、S6とを備えている。例えば、スイッチ素子S1〜S6は、電界効果トランジスタ(FET)又は絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などによって構成される。また、スイッチ素子S1〜S6は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成されてもよい。
各スイッチ素子S1、S2、S3は、モータM1の3つの端子から引き出された3つの出力線と、電池P1の正極に接続された電源線Lpとの間のそれぞれの間に接続されている。各スイッチ素子S4、S5、S6は、上記3つの出力線と電池P1の負極に接続された接地線Lgとの間のそれぞれの間に接続されている。また、各スイッチ素子S1〜S6には、還流ダイオードが並列接続されている。還流ダイオードは、スイッチ素子S1〜S6に寄生する寄生ダイオードであってもよい。
各スイッチ素子S1〜S6は、ドライブ回路30に接続され、ドライブ回路30から出力された信号によって駆動する。モータM1は、各スイッチ素子S1〜S6の駆動に基づいて、力行、回生、惰行又は停止などの状態で駆動される。
[1−2.制御回路及びドライブ回路の構成]
次に、制御回路20及びドライブ回路30の構成について、図2〜図5を参照しながら説明する。
図2に示すように、制御回路20は、各種の演算等を行うマイクロプロセッサ50と、メモリ24と、電圧の異常を検出する異常検出部29と、プロセッサ異常検出回路60とを備える。なお、制御回路20は、モータ制御信号取得部21を備えているが、これについては後述する。
異常検出部29は、インバータ10に発生する過電圧などの異常を検出する回路であり、電池P1のプラス側であって、3相ブリッジ回路40の電源線Lpに接続されている。
メモリ24は、マイクロプロセッサ50を動作させるためのプログラムソフト又は情報などを記憶する記憶素子である。
マイクロプロセッサ50は、ドライブ回路30を介して3相ブリッジ回路40を3相PWM制御又は3相短絡制御する回路である。
3相短絡制御とは、図3に示すモータM1の3相を短絡状態として、モータM1の巻線コイル間から誘起される電圧を0(ゼロ)にする制御である。具体的に3相短絡制御は、3相ブリッジ回路40の上側アーム群のスイッチ素子S1〜S3及び下側アーム群のスイッチ素子S4〜S6のうち、一方のアーム群の各スイッチ素子が短絡され、他方のアーム群の各スイッチ素子が開放されることで実現される。
本実施の形態の車両駆動装置5では、異常検出部29で過電圧などの異常を検出した場合に、マイクロプロセッサ50のプログラムソフトによって3相短絡制御を実行し、インバータ10に発生する過電圧を抑制する。
また、本実施の形態の車両駆動装置5は、マイクロプロセッサ50に不具合が生じている場合であっても、3相短絡制御を実行できるように、プロセッサ異常検出回路60及び3相短絡回路33を備えている。プロセッサ異常検出回路60は、例えば制御回路20内に設けられ、3相短絡回路33は、例えばドライブ回路30内に設けられる(図2及び図3参照)。
3相短絡回路33は、モータM1の3相のそれぞれを短絡するためのハード回路である。具体的には、3相短絡回路33は、3相ブリッジ回路40の一方のアーム群の各スイッチ素子を短絡し、他方のアーム群の各スイッチ素子を開放することで3相短絡制御を行う。3相短絡回路33による3相短絡制御を行うことで、モータM1の巻線コイル間から誘起される電圧を0にすることができる。車両駆動装置5が3相短絡回路33を備えることで、例えばマイクロプロセッサ50に不具合が生じ、プログラムソフトによる3相短絡制御が実行できない場合であっても、3相短絡回路33を働かせて3相短絡制御を行い、3相ブリッジ回路40にかかる過電圧を抑制することが可能となる。なお、マイクロプロセッサ50に不具合が生じている場合とは、例えば、マイクロプロセッサ50のプログラムソフトにバグが発生している場合、又は、プログラムソフトの一部が暴走している場合等である。
図4は、制御回路20が備えるプロセッサ異常検出回路60を例示する回路図である。
プロセッサ異常検出回路60は、マイクロプロセッサ50の異常を検出して、3相短絡回路33を駆動するための3相短絡駆動信号s2を出力する回路である。プロセッサ異常検出回路60は、不具合通知回路61と、ラッチ回路63と、回転数判断回路64と、複数の論理回路62及び65とを備える。
図4において、マイクロプロセッサ50は、クリアパルス信号s11を不具合通知回路61に定期的に出力する。
不具合通知回路61は、マイクロプロセッサ50の不具合の有無を監視する回路であり、例えば、ウオッチドックタイマ回路である。不具合通知回路61は、クリアパルス信号s11を所定期間受け付けていない場合に、マイクロプロセッサ50に不具合が生じているとして、不具合通知信号s12をラッチ回路63及びマイクロプロセッサ50に出力する。
この不具合通知信号s12は、リセット信号であり、ローレベルのパルス信号として出力される。ローレベルのパルス信号は、NOT回路である論理回路62によって反転され、ハイレベルのパルス信号としてラッチ回路63に出力される。
ラッチ回路63は、不具合通知回路61から出力された不具合通知信号s12を保持し、AND回路である論理回路65に出力する。例えば、マイクロプロセッサ50に不具合が生じている場合であって、さらにインバータ10に過電圧が発生したとき、プログラムソフトによる3相短絡制御を実行することができなくなる。それに対し本実施の形態では、マイクロプロセッサ50に不具合が生じている場合であっても、ラッチ回路63に保持された不具合通知信号s12に基づいて適切なタイミングに3相短絡制御を実行することが可能となる。
なお、マイクロプロセッサ50は、不具合通知信号s12であるリセット信号を受け付けることで再起動する。マイクロプロセッサ50は、リセット信号によって正常に再起動できた場合に、ラッチ回路63に保持されている信号を解除するラッチ解除信号s13をラッチ回路63に出力する。マイクロプロセッサ50が正常に再起動されると、車両駆動装置5は平常運転に戻るが、正常に再起動できなかった場合は、不具合通知信号s12が継続して論理回路65に出力された状態となる。
回転数判断回路64は、モータM1の回転数が所定回転数以上であるか否かを判断する回路である。回転数判断回路64は、モータM1の回転数が所定回転数以上である場合に、ハイレベルの信号を論理回路65に出力する。回転数判断回路64が、モータM1の回転数の高低を判断するのは、モータM1が低速回転しているときは誘起電圧が発生しにくいので3相短絡制御を実行する必要性が低いからである。また、3相短絡制御を実行すると制動トルクが発生するので、モータM1が低速回転しているときは3相短絡制御を実行することを避けたいからである。
図5は、車両駆動装置5の永久磁石モータM1に設けられた回転位置センサRSの電圧出力を示す図である。回転位置センサRSは、例えばホール素子である。図5の(a)には、ホール素子から出力された電圧出力の時間変化が示され、図5の(b)には、電圧出力の積分値が示されている。なお、電圧出力の積分値は、電圧出力をCRフィルタに通すことで求められる。
図5の(a)に示すように、モータM1が高速回転している場合は、低速回転している場合に比べて、電圧出力の信号の周期が短く、パルス幅が狭くなる。また、図5の(b)に示すように、モータM1が高速回転している場合は、低速回転している場合に比べて、電圧出力の信号の周期が短く、振幅が小さくなる。
本実施の形態では、図5の(b)に示すように、電圧出力の積分値に閾値TH1が設けられている。回転数判断回路64は、回転位置センサRSの電圧出力の積分値が閾値TH1よりも小さくならない場合に、モータM1の回転数が所定回転数以上であると判断し、論理回路65にハイレベルの信号を出力する。
論理回路65は、ラッチ回路63及び回転数判断回路64の両方から信号出力を受け付けている場合に、3相短絡駆動信号s2を出力する。
3相短絡駆動信号s2は、OR回路34を介して3相短絡回路33に出力される。これにより、3相短絡回路33によって3相短絡制御が実行されるので、例えば、マイクロプロセッサ50に不具合が生じた場合であっても、モータM1の高速回転時に3相短絡制御を実行することができる。これにより、インバータ10に過電圧がかかることを抑制することができる。
引き続き、ドライブ回路30の構成について説明する。なお以下では、3相短絡回路33の故障診断についても説明する。
ドライブ回路30は、前述した3相PWM制御及び3相短絡制御を実行するため、3相ブリッジ回路40のスイッチ素子S1〜S6を駆動する回路である。ドライブ回路30の入力側は制御回路20に接続され、出力側は3相ブリッジ回路40に接続されている。
図2に示すように、ドライブ回路30は、切替回路31と、バッファ回路32と、3相短絡回路33と、OR回路34とを備える。また、ドライブ回路30は、駆動信号受付端子39と、チェック用端子36とを備える。
駆動信号受付端子39は、前述した3相短絡駆動信号s2を受け付ける端子である。この3相短絡駆動信号s2は、プロセッサ異常検出回路60からドライブ回路30に出力される。
チェック用端子36は、3相短絡回路33による3相短絡制御を実行するための短絡回路チェック信号s1を受け付ける端子である。この短絡回路チェック信号s1は、制御回路20からドライブ回路30に出力される。以下において、3相短絡回路33による3相短絡制御を試行し、3相短絡回路33が3相短絡制御を実行できるか否かを確認することを第1のアクティブチェックと呼ぶ。第1のアクティブチェックを行うことで、3相短絡回路33の故障有無を診断することができる。
駆動信号受付端子39及びチェック用端子36に入力されたそれぞれの信号は、OR回路34に入力される。OR回路34は、駆動信号受付端子39及びチェック用端子36の少なくとも一方の端子が信号を受け付けている場合に、3相短絡回路33に信号を出力する。3相短絡回路33は、OR回路34から出力された信号に基づいて駆動する。
切替回路31は、3相ブリッジ回路40を、後述する駆動信号演算部23から出力された駆動信号に基づいて駆動するか、あるいは、3相短絡回路33から出力された信号を用いて駆動するかを切り替える回路である。なお、駆動信号演算部23から出力される駆動信号は、3相ブリッジ回路40を3相PWM制御又は3相短絡制御する各種信号が含まれる。切替回路31による切り替えは、例えばハードロジック回路によって実現されている。本実施の形態の切替回路31は、ドライブ回路30が短絡回路チェック信号s1又は3相短絡駆動信号s2を受け付けた場合に、モータM1にて実行されているスイッチング制御等を3相短絡回路33による3相短絡制御に切り替える。
バッファ回路32は、各スイッチ素子S1〜S6を駆動することができるように、3相ブリッジ回路40に出力する出力信号を増幅する回路である。バッファ回路32によって出力信号が増幅されることで、3相ブリッジ回路40の駆動が可能となる。
次に、制御回路20の構成、及び、マイクロプロセッサ50の構成について説明する。なお以下では、3相短絡回路33を故障診断するための故障判断部25及びアクティブチェック指示部26についても説明する。
制御回路20は、前述したマイクロプロセッサ50、メモリ24、異常検出部29及びプロセッサ異常検出回路60の他に、モータ制御信号取得部21を備えている。また、マイクロプロセッサ50は、モータ制御信号演算部22と、駆動信号演算部23と、故障判断部25と、アクティブチェック指示部26とを備えている。
モータ制御信号取得部21は、モータM1に流れる電流を検知する電流センサCSu、CSv、CSw、及び、モータM1の磁極位置を検出して回転位置を検知する回転位置センサRSなどの各種センサによって検知された情報を取得する。なお、電流センサCSu、CSv、CSwは、モータM1のu相、v相、w相における電流値を検知するセンサである。また、モータ制御信号取得部21は、電源線Lpにおける電圧Vpに関する情報を取得する。また、モータ制御信号取得部21は、制御回路20の外部、例えば電気車両1のECU(Electronic Control Unit)から出力されたトルク指令などの制御指令情報を取得する。
モータ制御信号演算部22は、モータ制御信号取得部21にて取得した上記情報に基づいて、演算によりトルク指令値を電流に換算し、モータM1を電流制御するための制御信号を出力する。例えば、モータ制御信号演算部22は、車両駆動装置5の駆動時におけるモータM1のトルクが、トルク指令情報に示された目標トルク(例えば電気車両1のアクセルペダル又はブレーキペダルの操作量に応じたトルク)となるように、モータM1の電流制御のための制御信号を出力する。
また、モータ制御信号演算部22は、モータ制御信号取得部21にて取得した上記情報を演算により変換して、3相短絡回路33等の故障判断を行うための制御信号を出力する。例えば、モータ制御信号演算部22は、トルク指令などの制御指令情報を上記の制御信号に変換して駆動信号演算部23、故障判断部25及びアクティブチェック指示部26に出力する。また、モータ制御信号演算部22は、モータM1に流れる電流、モータM1の磁極の回転位置、電源線Lpにおける電圧Vpなどの情報を制御信号に変換して駆動信号演算部23及び故障判断部25に出力する。
駆動信号演算部23は、モータ制御信号演算部22から出力された制御信号に基づいて、モータM1を駆動するために必要な駆動信号を演算し、この駆動信号をドライブ回路30に出力する。駆動信号演算部23は、車両駆動装置5が通常運行している際は、3相PWM制御を行うための駆動信号を出力する。
また、駆動信号演算部23は、インバータ10の異常が検出された場合に、メモリ24に格納されたプログラムソフトによって3相短絡制御を行うための駆動信号を出力する。具体的には、駆動信号演算部23は、3相PWM制御の駆動信号を3相短絡制御の駆動信号に変更してドライブ回路30に出力する。
このように、駆動信号演算部23は、3相PWM制御及び3相短絡制御を実行するための駆動信号をドライブ回路30に出力する。ドライブ回路30では、駆動信号演算部23から出力された駆動信号、及び、3相短絡回路33から出力された信号のうち3相短絡回路33から出力された信号を優先して3相ブリッジ回路40に出力する。3相ブリッジ回路40は、ドライブ回路30から出力された信号に基づいて、モータM1を駆動する。
アクティブチェック指示部26は、前述した短絡回路チェック信号s1をチェック用端子36に出力する回路である。アクティブチェック指示部26は、モータ制御信号演算部22から出力された上記制御信号に基づいて、今のタイミングで第1のアクティブチェックを行っても車両駆動装置5の駆動に影響を与えないか否かを判断する。
例えば、アクティブチェック指示部26は、3相短絡制御を実行した場合のモータM1のトルクが車両駆動装置5の駆動に影響を与えないトルク以下であるときに第1のアクティブチェックを行うと判断し、チェック用端子36に短絡回路チェック信号s1を出力する。第1のアクティブチェックの実行可否の判断は、定期的な時間間隔で実行される。なお、第1のアクティブチェックをするか否かの判断は、アクティブチェック指示部26に限られず、制御回路20に含まれる回路であればアクティブチェック指示部26と異なる回路によって行われてもよい。
また、アクティブチェック指示部26は、短絡回路チェック信号s1を出力すると同時に、3相短絡回路33をチェック中であることを示すビジー信号を故障判断部25に出力する。
故障判断部25は、3相短絡回路33の故障有無を判断する回路である。故障判断部25は、3相短絡制御が実行された際の、モータM1の3相に流れる電流の変化、電流位相の変化、及び、3相ブリッジ回路40における直流電圧の変化の少なくとも1つの変化に関する情報を取得する。電流の変化は、電流センサCSu、CSv、CSwによって検出した電流値に基づいて求めることができる。電流位相の変化は、例えば、モータM1のd軸電流とq軸電流に基づいて求めることができる。d軸電流、q軸電流は、電流センサCSu、CSv、CSwによって検出した電流値、及び、回転位置センサRSによって検出した磁極の回転位置に基づいて求めることができる。直流電圧の変化は、電源線Lpにおける電圧Vpを検出することで求めることができる。
故障判断部25は、取得した上記情報に基づいて3相短絡回路33の故障有無を判断する。例えば、故障判断部25は、電流が規定の範囲から外れた場合、電流位相が規定の範囲から外れた場合、及び、直流電圧が規定の範囲から外れた場合のうち少なくとも1つの場合に、3相短絡回路33が故障していると判断する。また、故障判断部25は、3相短絡回路33が故障していると判断した場合に、その故障情報を外部に報知する報知信号を出力する。
上記のように、制御回路20が、アクティブチェック指示部26及び故障判断部25を備えることで、3相短絡回路33の故障有無を判断することができる。これにより3相短絡回路33の潜在故障を早期に発見することができ、車両駆動装置5の信頼性を高めることができる。
[1−3.車両駆動装置の動作]
次に、実施の形態1の車両駆動装置5の動作について、図6を参照しながら説明する。
図6は、実施の形態1の車両駆動装置5の動作を例示するフローチャートである。
マイクロプロセッサ50は、クリアパルス信号s11を不具合通知回路61に定期的に出力する(ステップS101)。不具合通知回路61は、例えば、マイクロプロセッサ50の不具合の有無を通知するウオッチドックタイマ回路である。
一方、不具合通知回路61は、クリアパルス信号s11を定期的に受け付けているか否かを判断する(ステップS102)。不具合通知回路61がクリアパルス信号s11を定期的に受け付けている場合(S102の有)、マイクロプロセッサ50に不具合が生じていないことになるので、ステップS101に戻る。不具合通知回路61がクリアパルス信号s11を定期的に受け付けていない場合(S102の無)、マイクロプロセッサ50に不具合が生じているとして、不具合通知信号s12をラッチ回路63及びマイクロプロセッサ50に出力する(ステップS103)。この不具合通知信号s12は、ウオッチドックタイマ回路のリセット信号でもある。
ラッチ回路63は、不具合通知信号s12を受け付けることで、不具合通知信号s12を保持する(ステップS104)。
マイクロプロセッサ50は、不具合通知信号s12を受け付けることで再起動し、正常に再起動できたか否かを判断する(ステップS105)。マイクロプロセッサ50が正常に再起動できた場合(S105のYes)、マイクロプロセッサ50は、ラッチ回路63にラッチ解除信号s13を出力し(ステップS106)、ラッチ回路63が保持している不具合通知信号s12の保持を解除する。マイクロプロセッサ50が正常に再起動できなかった場合(S105のNo)、ステップS104の状態が維持され、次のステップに進む。
次のステップでは、回転数判断回路64が、モータM1の回転数が所定回転数以上であるか否かを判断する(ステップS107)。モータM1の回転数が所定回転数以上でない場合(S107のNo)、モータM1に発生する誘起電圧はインバータ10のスイッチ素子S1〜S6が破壊されるほど高くはなく、3相短絡制御を実行する必要が無いので、図6のフローチャートを終了する。モータM1の回転数が所定回転数以上である場合(S107のYes)、モータM1にスイッチ素子S1〜S6が破壊されるほどの高い誘起電圧が発生する可能性があるので、制御回路20は3相短絡回路33を用いた3相短絡制御を実行する(ステップS108)。具体的には、制御回路20は、ドライブ回路30に3相短絡駆動信号s2を出力し、3相短絡回路33を駆動させる。
これらのステップを繰り返すことにより、マイクロプロセッサ50に不具合が生じていた場合であっても、モータM1の高速回転している時に3相短絡制御を実行することができる。これにより、インバータ10に過電圧がかかることを抑制することができ、車両駆動装置5の信頼性を高めることができる。
(実施の形態2)
[2−1.車両駆動装置のプロセッサ異常検出回路の構成]
次に、実施の形態2の車両駆動装置5のプロセッサ異常検出回路60Aについて説明する。実施の形態2では、マイクロプロセッサ50を用いて、ラッチ回路63及び3相短絡回路33の不具合模擬診断を行う例について説明する。この不具合模擬診断は、ラッチ回路63及び3相短絡回路33の潜在故障を早期に発見するために行われる第2のアクティブチェックである。
図7は、実施の形態2によるプロセッサ異常検出回路60Aを例示する回路図である。
プロセッサ異常検出回路60Aは、マイクロプロセッサ50の異常を検出して、3相短絡回路33に3相短絡駆動信号s2を出力する回路であり、また、ラッチ回路63及び3相短絡回路33等の不具合模擬診断を行う回路でもある。本実施の形態では、上記の不具合模擬診断を行う場合について説明する。
不具合模擬診断を行うために、プロセッサ異常検出回路60Aは、ラッチ回路63と、複数の論理回路62a、65、66及び67とを備える。
図7に示すプロセッサ異常検出回路60Aは、図4に示す論理回路62がNAND回路である論理回路62aに代わっている点で、実施の形態1と異なっている。また、プロセッサ異常検出回路60Aは、新たな論理回路67が回転数判断回路64と論理回路65との間に設けられ、かつ、新たな論理回路66がマイクロプロセッサ50と論理回路67との間に設けられている点で、実施の形態1と異なっている。
図7において、マイクロプロセッサ50は、不具合模擬診断を行うためのトリガである不具合模擬信号s14を出力する。この不具合模擬信号s14は、ローレベルのパルス信号としてNAND回路である論理回路62aに出力される。論理回路62aは、不具合通知信号s12及び不具合模擬信号s14のいずれか一方がローレベルであるときにハイレベルの信号をラッチ回路63に出力する。したがって、マイクロプロセッサ50から不具合模擬信号s14が出力されると、ラッチ回路63は不具合模擬信号s14を保持し、論理回路65に出力する。
一方、不具合模擬信号s14は、NOT回路である論理回路66にも出力される。不具合模擬信号s14は、論理回路66にて反転され、ハイレベルの信号となってOR回路である論理回路67に出力される。OR回路である論理回路67に出力された信号は、論理回路65に入力される。不具合模擬信号s14を論理回路67にも出力するのは、モータM1の回転数の高低にかかわらず不具合模擬診断を行えるようにして、診断機会を増やすためである。
論理回路65は、ラッチ回路63及び論理回路27の両方から信号出力を受け付けることで3相短絡駆動信号s2を出力する。
3相短絡駆動信号s2は、OR回路34を介して3相短絡回路33に出力される。これにより、3相短絡回路33によって3相短絡制御が実行される。制御回路20は、モータM1の3相に流れる電流の変化、電流位相の変化、及び、3相ブリッジ回路40における直流電圧の変化の少なくとも1つの変化に関する情報を取得し、上記情報に基づいて3相短絡回路33及びラッチ回路63の故障有無を判断する。この不具合模擬診断により、ラッチ回路63及び3相短絡回路33の潜在故障を早期に発見することができ、車両駆動装置5の信頼性を高めることができる。
[2−2.車両駆動装置の動作]
次に、実施の形態2による車両駆動装置5の動作について説明する。
図8は、実施の形態2による車両駆動装置5の動作を例示するフローチャートである。
制御回路20は、第2のアクティブチェックによる不具合模擬診断を行うため、インバータ10のフィードバック制御を停止し(ステップS111)、不具合模擬信号s14を出力する(ステップS112)。
不具合模擬信号s14は、ラッチ回路63によって保持され(ステップS113)、AND回路である論理回路65に出力される。
不具合模擬信号s14は、モータM1が高速回転している状態を疑似的に作りだすため、論理回路66、67を介して論理回路65にも出力される。これにより、論理回路65から3相短絡駆動信号s2が出力される(ステップS114)。3相短絡駆動信号s2は、ドライブ回路30の駆動信号受付端子39に出力され、後述するステップS118又はS121にて停止されるまで継続して出力される。
次に、インバータ10は、3相短絡回路33を用いた3相短絡制御を実行する(ステップS115)。3相短絡駆動信号s2を受け取った駆動信号受付端子39は、その信号をOR回路34に出力し、OR回路34は受け取った信号を3相短絡回路33に出力する。これによって3相短絡回路33が試行駆動される。ここで切替回路31によって、切替回路31の出力信号が、駆動信号演算部23から出力される駆動信号でなく、3相短絡回路33から出力される信号に切り替えられる。そして、3相短絡回路33から出力される信号が、バッファ回路32を介して3相ブリッジ回路40に出力される。これにより、3相短絡回路33を用いた3相短絡制御が、3相ブリッジ回路40にて試行される。
次に、制御回路20は、車両駆動装置5における電流の変化、電流位相の変化、及び、電圧の変化を取得する(ステップS116)。具体的には、モータ制御信号取得部21が、電流センサCSu、CSv、CSw、回転位置センサRS、電源線Lpにおける電圧Vpなどの情報を取得する。これらの情報は、モータ制御信号演算部22にて変換され、制御信号として故障判断部25に出力される。
次に、制御回路20は、これら電流、電流位相及び電圧の変化が規定の範囲内であるか否かによって、ラッチ回路63及び3相短絡回路33の故障有無を判断する(ステップS117)。具体的に制御回路20は、故障判断部25が、電流が規定の範囲から外れたか否か、電流位相が規定の範囲から外れたか否か、及び、直流電圧が規定の範囲から外れたか否かを判断する。
故障判断部25は、電流、電流位相及び電圧の変化のうち全てが規定の範囲内であると判断した場合に(S117のYes)、ラッチ回路63及び3相短絡回路33が故障しておらず、正常であると判断する。このとき制御回路20は、不具合模擬信号s14の出力を停止し、また、ラッチ回路63に保持されている信号を解除するラッチ解除信号s13を出力することで、3相短絡駆動信号s2の出力を停止する(ステップS118)。そして制御回路20は、インバータ10のフィードバック制御を再開し(ステップS119)、ステップS111に戻って第2のアクティブチェックを繰り返す。この第2のアクティブチェックは、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
一方、制御回路20は、電流、電流位相及び電圧の変化のうち少なくとも1つが規定の範囲から外れている場合に(S117のNo)、ラッチ回路63又は3相短絡回路33が故障している判断する。このとき制御回路20は、ラッチ回路63又は3相短絡回路33が故障している場合の動作を実行する。なお、3相短絡回路33が故障しているか否かは前述した第1のアクティブチェックによって診断できるので、第1のアクティブチェック及び第2のアクティブチェックを併用することで、ラッチ回路63が故障しているか否かを診断することも可能である。
制御回路20は、不具合模擬信号s14の出力を停止し(ステップS121)、インバータ10のフィードバック制御を再開する(ステップS122)。
次に、制御回路20は、ラッチ回路63又は3相短絡回路33が故障していることを示す故障警告を外部、例えば電気車両1のECU(上位制御部)に出力する(ステップS123)。また、故障判断部25が、モニターを用いて故障情報を表示したり、スピーカを用いて故障情報を知らせる音を出力したりすることで、ユーザに故障情報を報知してもよい。
(実施の形態3)
[3−1.車両駆動装置の構成]
まず、実施の形態3に係る車両駆動装置の構成について、図11〜図16を参照しながら説明する。
図11は、実施の形態3に係る車両駆動装置105を備える電気車両101を例示する概略図である。電気車両101は、駆動輪102と、動力伝達機構103と、永久磁石モータM1と、インバータ110と、電池P1とを備えている。これらの構成のうち、車両駆動装置105は、永久磁石モータM1、インバータ110及び電池P1によって構成されている。以下、永久磁石モータM1をモータM1と呼ぶ場合がある。
モータM1は、電気車両101の駆動輪102を駆動する3相交流式のモータであり、例えば、埋込磁石同期モータ又は表面磁石同期モータなどのモータが用いられる。
動力伝達機構103は、例えば、ディファレンシャルギア及びドライブシャフトによって構成され、モータM1と駆動輪102との間にて動力を伝達する。モータM1の回転力は、動力伝達機構103を経由して駆動輪102に伝達される。これと同様に、駆動輪102の回転力は、動力伝達機構103を経由してモータM1に伝達される。なお、電気車両101は、動力伝達機構103を備えていなくてもよく、モータM1と駆動輪102とが直結された構造であってもよい。
電池P1は、例えば、リチウムイオン電池などの直流電源である。電池P1は、モータM1を駆動させるための電力を供給し、及び、この電力を蓄積する。
インバータ110は、電池P1から供給された直流電力を例えば3相の交流電力に変換して、その交流電力をモータM1に供給する。このように車両駆動装置105は、電池P1の電力を用いて3相交流式のモータM1を駆動するように構成されている。
図12は、車両駆動装置105を例示する回路図である。
図12に示すように、車両駆動装置105は、モータM1と、インバータ110と、電池P1とを備えている。インバータ110は、3相ブリッジ回路140とドライブ回路130と制御回路120と過電圧検出回路160とを備えている。なお図12には、3相ブリッジ回路140に印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサC1も図示されている。
3相ブリッジ回路140は、電池P1から供給された直流電力をスイッチング動作により3相の交流電力に変換して、その交流電力をモータM1に供給し、モータM1を駆動する回路である。3相ブリッジ回路140の入力側はドライブ回路130に接続され、出力側はモータM1に接続されている。
図13は、車両駆動装置105のインバータ110が備える3相ブリッジ回路140を例示する回路図である。なお、図13に示す電圧Vpは電源電圧であり、電圧Vgは接地電圧である。
3相ブリッジ回路140は、図13の上側に位置する上側アーム群に設けられたスイッチ素子S1、S2、S3と、図13の下側に位置する下側アーム群に設けられたスイッチ素子S4、S5、S6とを備えている。例えば、スイッチ素子S1〜S6は、電界効果トランジスタ(FET)又は絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などによって構成される。また、スイッチ素子S1〜S6は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成されてもよい。
各スイッチ素子S1、S2、S3は、モータM1の3つの端子から引き出された3つの出力線と、電池P1の正極に接続された電源線Lpとの間のそれぞれの間に接続されている。各スイッチ素子S4、S5、S6は、上記3つの出力線と電池P1の負極に接続された接地線Lgとの間のそれぞれの間に接続されている。また、各スイッチ素子S1〜S6には、還流ダイオードが並列接続されている。還流ダイオードは、スイッチ素子S1〜S6に寄生する寄生ダイオードであってもよい。
各スイッチ素子S1〜S6は、ドライブ回路130に接続され、ドライブ回路130から出力された信号によって駆動する。モータM1は、各スイッチ素子S1〜S6の駆動に基づいて、力行、回生又は惰行などの状態で駆動される。
次に、ドライブ回路130について、図12を参照しながら説明する。
ドライブ回路130は、3相PWM制御及び3相短絡制御を実行するため、3相ブリッジ回路140のスイッチ素子S1〜S6を駆動する回路である。ドライブ回路130の入力側は制御回路120に接続され、出力側は3相ブリッジ回路140に接続されている。
ドライブ回路130は、切替回路131と、バッファ回路132と、3相短絡回路133とを備える。
3相短絡回路133は、モータM1の3相のそれぞれを短絡するために用いられる回路である。具体的には、3相短絡回路133は、後述する過電圧検出回路160から、3相短絡を行うための3相短絡信号s102が出力されると、3相ブリッジ回路140の上側アーム群のスイッチ素子S1〜S3及び下側アーム群のスイッチ素子S4〜S6のうち、一方のアーム群の各スイッチ素子を短絡し、他方のアーム群の各スイッチ素子を開放する回路である。このようにしてモータM1の3相のそれぞれを短絡することで、モータM1の巻線コイル間から誘起される電圧を0にすることができる。これにより、例えば3相ブリッジ回路140に過電圧が検出された場合に、3相短絡回路133を働かせて3相短絡制御を行い、3相ブリッジ回路140にかかる過電圧を低減することができる。
切替回路131は、3相ブリッジ回路140を、後述する駆動信号演算部123から出力された駆動信号に基づいて駆動するか、あるいは、3相短絡回路133から出力された信号を用いて駆動するかを切り替える回路である。但し、後述する故障判断部125から、3相ブリッジ回路140を、3相短絡回路133から出力された信号を用いて駆動させないための3相短絡回路利用抑止信号s103が出力された場合には、以降、3相ブリッジ回路140を、3相短絡回路133から出力された信号を用いて駆動することを抑止する。なお、駆動信号演算部123から出力される駆動信号は、3相ブリッジ回路140を3相PWM制御する信号などの各種信号が含まれる。切替回路131による切り替えは、例えばハードロジック回路によって実現されている。
バッファ回路132は、各スイッチ素子S1〜S6を駆動することができるように、3相ブリッジ回路140に出力する出力信号を増幅する回路である。バッファ回路132によって出力信号が増幅されることで、3相ブリッジ回路140の駆動が可能となる。
次に、制御回路120及び過電圧検出回路160について、図12、14〜図16を参照しながら説明する。
制御回路120は、各種の演算等を行うマイクロプロセッサ150と、マイクロプロセッサ150を動作させるためのプログラム又は情報などを記憶するメモリ124とを含んで構成される。
図12に示すように制御回路120は、モータ制御信号取得部121と、モータ制御信号演算部122と、駆動信号演算部123と、アクティブチェック指示部126と、故障判断部125と、3相短絡制御信号割込部127とを備える。
モータ制御信号取得部121は、モータM1に流れる電流を検知する電流センサCSu、CSv、CSw、及び、モータM1の磁極位置を検出して回転位置を検知する回転位置センサRSなどの各種センサによって検知された情報を取得する。なお、電流センサCSu、CSv、CSwは、モータM1のu相、v相、w相における電流値を検知するセンサである。また、モータ制御信号取得部121は、電源線Lpにおける電圧Vpに関する情報を取得する。また、モータ制御信号取得部121は、制御回路120の外部、例えば電気車両101のECU(Engine Control Unit)から出力されたトルク指令などの制御指令情報を取得する。
モータ制御信号演算部122は、モータ制御信号取得部121にて取得した上記情報を演算により変換し、モータM1を制御するための制御信号を出力する。例えば、モータ制御信号演算部122は、車両駆動装置105の運行時におけるモータM1のトルクが、トルク指令に示された目標トルク(例えば電気車両101のアクセルペダルの操作量に応じたトルク)となるように制御信号を出力する。
また、モータ制御信号演算部122は、モータ制御信号取得部121にて取得した上記情報を演算により変換して、3相短絡を試行するための制御信号を出力する。例えば、モータ制御信号演算部122は、トルク指令などの制御指令情報を制御信号に変換してアクティブチェック指示部126に出力する。また、モータ制御信号演算部122は、モータM1に流れる電流、モータM1の磁極の回転位置、電源線Lpにおける電圧Vpなどの情報を制御信号に変換して故障判断部125に出力する。
アクティブチェック指示部126は、過電圧検出回路160に3相短絡信号s102を強制的に出力させるためのアクティブチェック信号s101を出力する回路である。以下において、過電圧検出回路160に3相短絡信号s102を強制的に出力させることで、過電圧検出回路160及び3相短絡回路133による3相短絡制御を試行し、過電圧検出回路160及び3相短絡回路133が3相短絡制御を実行できるか否かを確認することを第3のアクティブチェックと呼ぶ。第3のアクティブチェックを行うことで、過電圧検出回路160及び3相短絡回路133による3相短絡に係る異常の有無を検出することができる。
アクティブチェック指示部126は、モータ制御信号演算部122から出力された上記制御信号に基づいて、モータM1が所定条件で駆動しているか否かを判定し、モータM1が所定条件で駆動していると判定したときに、アクティブチェック信号s101を出力する。具体的には、アクティブチェック指示部126は、車両が走行中であって、モータM1が力行及び回生のいずれの状態でもない場合に、アクティブチェック信号s101を出力してもよい。また、アクティブチェック指示部126は、車両が停車中であるときに、車両を発進させるまでに至らない電流がモータM1に流れるように3相ブリッジ回路140を用いて電流制御を行った後に、アクティブチェック信号s101を出力してもよい。また、図14に示すように、車両の駆動輪102にトルクを付与するトルク付与装置T50を備えている場合において、アクティブチェック指示部126は、モータM1が回生中に、3相短絡制御を実行するとモータM1に発生するトルクである3相短絡トルクに基づいて、アクティブチェック信号s101を出力してもよい。また、図15に示すように、モータM1が一方の駆動源D1であり、車両が一方の駆動源D1と異なる他方の駆動源D2を備えている場合において、アクティブチェック指示部126は、一方の駆動源D1を使わず他方の駆動源D2にて車両を駆動可能な場合に、不具合模擬信号s14を出力してもよい。これらのモータM1が所定条件で駆動しているか否かの判定は、定期的な時間間隔で実行される。また、アクティブチェック指示部126は、アクティブチェック信号s101を出力すると同時に、第3のアクティブチェック中であることを示すビジー信号を故障判断部125に出力する。
過電圧検出回路160は、電源線Lpにおける所定の過電圧を検出する回路である。より具体的には、過電圧検出回路160は、電源線Lpにおける所定の過電圧を検出した場合に、3相短絡信号s102を出力する。過電圧検出回路160は、さらに、アクティブチェック指示部126からのアクティブチェック信号s101により強制的に3相短絡信号s102を出力する。なお、所定の過電圧とは、電源線Lpの電圧が、3相ブリッジ回路140のスイッチ素子S1〜S6、又は、平滑コンデンサC1の耐圧を超えないような電圧として予め決定される。
図16は、過電圧検出回路160を例示する回路図である。
図16に示すように、過電圧検出回路160は、第1抵抗素子161と、第2抵抗素子162と、第3抵抗素子163と、第4抵抗素子164と、第5抵抗素子165と、第6抵抗素子166と、選択回路167と、比較回路168とを備える。
第1抵抗素子161は、一方の端子が電源線Lpに接続され、他方の端子が選択回路167に接続される。
第2抵抗素子162は、一方の端子が定電圧源(ここでは5Vの定電圧源)に接続され、他方の端子が選択回路167に接続される。
第3抵抗素子163は、一方の端子が選択回路167に接続され、他方の端子が接地線Lgに接続される。
選択回路167は、アクティブチェック信号s101に応じて、第1抵抗素子161の他方の端子と第3抵抗素子163の一方の端子との接続、及び、第2抵抗素子162の他方の端子と第3抵抗素子163の一方の端子との接続を選択的に切り替える。具体的には、選択回路167は、アクティブチェック信号s101が出力されていない場合には、第1抵抗素子161の他方の端子と第3抵抗素子163の一方の端子とを接続して、選択回路167に第3抵抗素子163の一方の端子の電圧を出力し、アクティブチェック信号s101が出力されている場合には、第2抵抗素子162の他方の端子と第3抵抗素子163の一方の端子とを接続して、選択回路167に第3抵抗素子163の一方の端子の電圧を出力する。
第1抵抗素子161と第3抵抗素子163とは、電源線Lpにおける電圧Vpを抵抗分割することにより第1分圧電圧に分圧する第1分圧回路を形成する。したがって、第1分圧電圧は、電圧Vpに比例する。この第1分圧電圧は、第3抵抗素子163の一方の端子の電圧として選択回路167により選択的に比較回路168に出力される。
第2抵抗素子162と第3抵抗素子163とは、定電圧源における電圧(ここでは5V)を抵抗分割することにより第2分圧電圧に分圧する第2分圧回路を形成する。第2抵抗素子162の値は、第2分圧電圧が、比較回路168の3相短絡信号s102を出力する電圧、すなわち、基準電圧Vrefを超えるような電圧になるように決定される。この第2分圧電圧は、第3抵抗素子163の一方の端子の電圧として選択回路167により選択的に比較回路168に出力される。以下、選択回路167より選択的に出力される第1分圧電圧又は第2分圧電圧のことを、「選択電圧Vsel」とも称する。
第4抵抗素子164は、一方の端子が定電圧源(ここでは5Vの定電圧源)に接続され、他方の端子が第5抵抗素子165に接続される。
第5抵抗素子165は、一方の端子が第4抵抗素子164に接続され、他方の端子が接地線Lgに接続される。
第4抵抗素子164と第5抵抗素子165とは、定電圧源における電圧(ここでは5V)を抵抗分割することにより基準電圧Vrefを生成する。ここで、第1抵抗素子161の抵抗値と、第3抵抗素子163の抵抗値とは、電源線Lpにおける電圧Vpが所定の過電圧である場合に、第1分圧電圧が基準電圧Vrefよりも大きくなるように設定されている。また、第2抵抗素子162の抵抗値と、第3抵抗素子163の抵抗値とは、第2分圧電圧が基準電圧Vrefよりも大きくなるように設定されている。
第6抵抗素子166は、一方の端子が、比較回路168の出力端子(後述)に接続され、他方の端子が比較回路168の−入力端子(後述)に接続される。第6抵抗素子166は、比較回路168の出力を、比較回路168の−入力端子側にフィードバックする。
比較回路168は、+入力端子と、−入力端子と、+入力端子の電圧と−入力端子の電圧との比較結果を出力する出力端子とを備える。+入力端子には、選択回路167の出力が接続され、選択回路167から出力される選択電圧Vselが入力される。−入力端子には、第4抵抗素子164と第5抵抗素子165との接続点が接続され、基準電圧Vrefが入力される。比較回路168は、+入力端子に入力される選択電圧Vselが−入力端子に入力される基準電圧Vrefよりも高い場合に、出力端子から3相短絡信号s102を出力する。
上記構成の過電圧検出回路160では、アクティブチェック指示部126からアクティブチェック信号s101が出力されていない場合において、電源線Lpにおける電圧Vpが所定の過電圧になると、選択回路167から選択電圧Vselとして出力される第1分圧電圧が基準電圧Vrefよりも大きくなる。このため、過電圧検出回路160は、3相短絡信号s102を出力する。また、上記構成の過電圧検出回路160では、アクティブチェック指示部126からアクティブチェック信号s101が出力されている場合には、選択回路167から選択電圧Vselとして、基準電圧Vrefよりも大きな第2分圧電圧が出力される。このため、過電圧検出回路160は、3相短絡信号s102を出力する。
故障判断部125は、過電圧検出回路160及び3相短絡回路133による3相短絡に係る異常の有無を判断する回路である。故障判断部125は、3相短絡制御が実行された際の、モータM1の3相に流れる電流の変化、電流位相の変化、及び、3相ブリッジ回路140における直流電圧の変化の少なくとも1つの変化に関する情報を取得する。電流の変化は、電流センサCSu、CSv、CSwによって検出した電流値に基づいて求めることができる。電流位相の変化は、例えば、モータM1のd軸電流の変化から求めることができる。d軸電流は、電流センサCSu、CSv、CSwによって検出した電流値、及び、回転位置センサRSによって検出した磁極の回転位置に基づいて求めることができる。直流電圧の変化は、電源線Lpにおける電圧Vpを検出することで求めることができる。
故障判断部125は、取得した上記情報に基づいて過電圧検出回路160及び3相短絡回路133による3相短絡に係る異常の有無を判断する。例えば、故障判断部125は、電流が規定の範囲から外れた場合、電流位相が規定の範囲から外れた場合、及び、直流電圧が規定の範囲から外れた場合のうち少なくとも1つの場合に、過電圧検出回路160及び3相短絡回路133による3相短絡に係る異常があると判断する。故障判断部125は、過電圧検出回路160及び3相短絡回路133による3相短絡に係る異常があると判断した場合に、切替回路131に、3相ブリッジ回路140を、3相短絡回路133から出力された信号を用いて駆動させないための3相短絡回路利用抑止信号s103を出力する。また、故障判断部125は、過電圧検出回路160及び3相短絡回路133による3相短絡に係る異常があると判断した場合に、その故障情報を外部に報知する報知信号を出力する。
故障判断部125には、さらに、過電圧検出回路160から出力される、3相短絡信号s102と選択電圧Vselとが入力される。
故障判断部125は、アクティブチェック指示部126からアクティブチェック信号s101が出力されている場合において、選択電圧Vselが所定の電圧であるときに、第2分圧回路692及び選択回路167が正常であると判定する。ここでの所定の電圧は、第2分圧回路692及び選択回路167が正常である場合において選択回路167から出力される第2分圧電圧のことをいう。故障判断部125は、第2分圧回路692及び選択回路167が正常であると判定しなかった場合に、その判定結果を外部に報知する報知信号を出力する。
故障判断部125は、3相短絡信号s102が所定の信号であるときに、過電圧検出回路160が正常であると判定する。ここでの所定の信号は、過電圧検出回路160が正常である場合において過電圧検出回路160から出力される3相短絡信号s102のことをいう。故障判断部125は、過電圧検出回路160が正常であると判定しなかった場合に、その判定結果を外部に報知する報知信号を出力する。
3相短絡制御信号割込部127は、故障判断部125から過電圧検出回路160及び3相短絡回路133による3相短絡に係る異常があるという故障情報を受け取ると、インバータ110の異常が検出された場合に、駆動信号演算部123に対し、3相短絡を実行するための割り込み信号を出力する。
駆動信号演算部123は、モータ制御信号演算部122から出力された制御信号に基づいて、モータM1を駆動するために必要な駆動信号を演算し、この駆動信号をドライブ回路130に出力する。駆動信号演算部123は、車両駆動装置105が通常運行している際は、3相PWM制御を行うための駆動信号を出力する。それに対し、駆動信号演算部123は、3相短絡制御信号割込部127から割り込み信号が出力された場合には、メモリ124に格納されたプログラムによって3相短絡制御を行うための駆動信号を出力する。駆動信号演算部123は、割り込み信号を受けることで、3相PWM制御の駆動信号を3相短絡制御の駆動信号に変更してドライブ回路130に出力する。
このように、制御回路120は、3相PWM制御及び3相短絡制御を実行するための駆動信号を択一的にドライブ回路130に出力する。ドライブ回路130では、制御回路120から出力された駆動信号、及び、3相短絡回路133から出力された信号のうちのいずれかの信号を選択し、3相ブリッジ回路140に出力する。3相ブリッジ回路140は、ドライブ回路130から出力された信号に基づいて、モータM1を駆動する。
上記構成の実施の形態3に係る車両駆動装置5によると、制御回路120が、適宜、アクティブチェック信号s101を出力することで、適宜、過電圧検出回路160及び3相短絡回路133による3相短絡に係る異常の有無を確認することができる。これにより、上記構成の実施の形態3に係る車両駆動装置105によると、インバータ110において3相短絡制御の潜在的故障を早期発見して、車両駆動装置105の信頼性を高めることができる。
[3−2.車両駆動装置の動作]
次に、車両駆動装置105のアクティブチェックに関する動作について、図17を参照しながら説明する。
図17は、車両駆動装置105のアクティブチェックに関する動作を例示するフローチャートである。
制御回路120は、第3のアクティブチェックを行うため、インバータ110のフィードバック制御を停止し(ステップS311)、アクティブチェック信号s101を出力する(ステップS312)。
アクティブチェック信号s101が出力されると、過電圧検出回路160において、選択回路167から基準電圧Vrefよりも高い第2分圧電圧を出力され、比較回路168から3相短絡信号s102が出力される。これにより、過電圧検出回路160は、3相短絡信号s102を、後述するステップS318又はS321にて停止されるまで継続して出力する(ステップS314)。
次に、インバータ110は、3相短絡回路133を用いた3相短絡制御を実行する(ステップS315)。ここで切替回路131によって、切替回路131の出力信号が、駆動信号演算部123から出力される駆動信号でなく、3相短絡回路133から出力される信号に切り替えられる。そして、3相短絡回路133から出力される信号が、バッファ回路132を介して3相ブリッジ回路140に出力される。これにより、3相短絡回路133を用いた3相短絡制御が、3相ブリッジ回路140にて試行される。
次に、制御回路120は、車両駆動装置105における電流の変化、電流位相の変化、及び、電圧の変化を取得する(ステップS316)。具体的には、モータ制御信号取得部121が、電流センサCSu、CSv、CSw、回転位置センサRS、電源線Lpにおける電圧Vpなどの情報を取得する。これらの情報は、モータ制御信号演算部122にて変換され、制御信号として故障判断部125に出力される。
次に、制御回路120は、これら電流、電流位相及び電圧の変化が規定の範囲内であるか否かによって、過電圧検出回路160及び3相短絡回路133による3相短絡に係る異常の有無を判断する(ステップS317)。具体的に制御回路120は、故障判断部125が、電流が規定の範囲から外れたか否か、電流位相が規定の範囲から外れたか否か、及び、直流電圧が規定の範囲から外れたか否かを判断する。
故障判断部125は、電流、電流位相及び電圧の変化のうち全てが規定の範囲内であると判断した場合に(S317のYes)、過電圧検出回路160及び3相短絡回路133による3相短絡に係る異常が無く、正常であると判断する。このとき制御回路120は、アクティブチェック信号s101の出力を停止することで、3相短絡信号s102の出力を停止する(ステップS318)。そして制御回路120は、インバータ110のフィードバック制御を再開し(ステップS319)、以後、アクティブチェックを実施する際に、ステップS311の処理に戻る。
一方、制御回路120は、電流、電流位相及び電圧の変化のうち少なくとも1つが規定の範囲から外れている場合に(S317のNo)、過電圧検出回路160及び3相短絡回路133による3相短絡に係る異常があると判断する。このとき制御回路120は、アクティブチェック信号s101の出力を停止し(ステップS321)、インバータ110のフィードバック制御を再開する(ステップS322)。
一方で、制御回路120は、ドライブ回路130に、3相短絡回路利用抑止信号s103を送信する。3相短絡回路利用抑止信号s103が送信されると、ドライブ回路130において、切替回路131は、以後、3相ブリッジ回路140を、3相短絡回路133から出力された信号を用いて駆動することを抑止することで、3相短絡回路133を用いた3相短絡の実行を抑止する(ステップS323)。
次に、制御回路120は、過電圧検出回路160及び3相短絡回路133による3相短絡に係る異常があることを示す故障警告を外部、例えば電気車両101のECU(上位制御部)に出力する(ステップS324)。また、故障判断部125が、モニターを用いて故障情報を表示したり、スピーカを用いて故障情報を知らせる音を出力したりすることで、ユーザに故障情報を報知してもよい。なお、この場合は、3相短絡に係る異常があるため、以後のアクティブチェックは実施せず、図17のフローチャートを終了する。
(実施の形態4)
以下、実施の形態3に係る車両駆動装置105から、その構成の一部が変更されて構成される実施の形態4に係る車両駆動装置について説明する。
図18は、実施の形態4に係る車両駆動装置105Aを例示する回路図である。以下では、車両駆動装置105Aについて、実施の形態3に係る車両駆動装置105と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、車両駆動装置5との相違点を中心に説明する。
図18に示すように、車両駆動装置105Aは、実施の形態3に係る車両駆動装置105から、駆動信号演算部123が駆動信号演算部123Aに変更され、故障判断部125が故障判断部125Aに変更され、アクティブチェック指示部126がアクティブチェック指示部126Aに変更され、3相短絡制御信号割込部127が削除されて構成される。そして、これらの変更及び削除に伴って、マイクロプロセッサ150がマイクロプロセッサ150Aに変更され、制御回路120が制御回路120Aに変更されている。さらに、車両駆動装置105Aは、実施の形態3に係る車両駆動装置105から、切替回路131と3相短絡回路133とが削除されて構成される。そしてこれらの削除に伴って、ドライブ回路130がドライブ回路130Aに変更されている。また、車両駆動装置105Aは、実施の形態3に係る車両駆動装置105から、制御回路120から制御回路120Aへの変更、及び、ドライブ回路130からドライブ回路130Aへの変更に伴って、インバータ110がインバータ110Aに変更されている。
駆動信号演算部123Aは、モータ制御信号演算部122から出力された制御信号に基づいて、モータM1を駆動するために必要な駆動信号を演算し、この駆動信号をドライブ回路130Aに出力する。駆動信号演算部123Aは、車両駆動装置105Aが通常運行している際は、3相PWM制御を行うための駆動信号を出力する。それに対し、駆動信号演算部123は、過電圧検出回路160から3相短絡信号s102が出力された場合には、メモリ124に格納されたプログラムによって3相短絡制御を行うための駆動信号を出力する。駆動信号演算部123Aは、3相短絡信号s102を受けることで、3相PWM制御の駆動信号を3相短絡制御の駆動信号に変更してドライブ回路130Aに出力する。
このように、制御回路120Aは、3相PWM制御及び3相短絡制御を実行するための駆動信号を択一的にドライブ回路130Aに出力する。ドライブ回路130Aでは、制御回路120から出力された駆動信号を増幅して3相ブリッジ回路140に出力する。3相ブリッジ回路140は、ドライブ回路130Aから出力された信号に基づいて、モータM1を駆動する。
アクティブチェック指示部126Aは、過電圧検出回路160に3相短絡信号s102を強制的に出力させるためのアクティブチェック信号s101を出力する回路である。以下において、過電圧検出回路160に3相短絡信号s102を強制的に出力させることで、過電圧検出回路160による3相短絡制御を試行し、過電圧検出回路160が3相短絡制御を実行できるか否かを確認することを第4のアクティブチェックと呼ぶ。第4のアクティブチェックを行うことで、過電圧検出回路160による3相短絡に係る異常の有無を検出することができる。
アクティブチェック指示部126Aは、実施の形態3に係るアクティブチェック指示部126と同様に、モータ制御信号演算部122から出力された制御信号に基づいて、モータM1が所定条件で駆動しているか否かを判定し、モータM1が所定条件で駆動していると判定したときに、アクティブチェック信号s101を出力する。
故障判断部125Aは、過電圧検出回路160による3相短絡に係る異常の有無を判断する回路である。
故障判断部125Aには、過電圧検出回路160から出力される、3相短絡信号s102と選択電圧Vselとが入力される。
故障判断部125Aは、3相短絡信号s102が所定の信号であるときに、過電圧検出回路160による3相短絡に係る異常が無いと判断し、3相短絡信号s102が所定の信号でないときに、過電圧検出回路160による3相短絡に係る異常が有ると判断する。ここでの所定の信号は、過電圧検出回路160が正常である場合において過電圧検出回路160から出力される3相短絡信号s102のことをいう。故障判断部125は、過電圧検出回路160による3相短絡に係る異常があると判断した場合に、その故障情報を外部に報知する報知信号を出力する。
故障判断部125Aは、アクティブチェック指示部126Aからアクティブチェック信号s101が出力されている場合において、選択電圧Vselが所定の電圧であるときに、第2分圧回路692及び選択回路167が正常であると判定する。ここでの所定の電圧は、第2分圧回路692及び選択回路167が正常である場合において選択回路167から出力される第2分圧電圧のことをいう。故障判断部125Aは、第2分圧回路692及び選択回路167が正常であると判定しなかった場合に、その判定結果を外部に報知する報知信号を出力する。
上記構成の実施の形態4に係る車両駆動装置105Aによると、制御回路120Aが、適宜、アクティブチェック信号s101を出力することで、適宜、過電圧検出回路160による3相短絡に係る異常の有無を確認することができる。これにより、上記構成の実施の形態4に係る車両駆動装置105Aによると、インバータ110Aにおいて3相短絡制御の潜在的故障を早期発見して、車両駆動装置105Aの信頼性を高めることができる。
(実施の形態5)
以下、実施の形態4に係る車両駆動装置105Aから、その構成の一部が変更されて構成される実施の形態5に係る車両駆動装置について説明する。
図19は、実施の形態5に係る車両駆動装置105Bを例示する回路図である。以下では、車両駆動装置105Bについて、実施の形態4に係る車両駆動装置105Aと同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、車両駆動装置5との相違点を中心に説明する。
図19に示すように、車両駆動装置105Bは、実施の形態4に係る車両駆動装置105Aから、駆動信号演算部123Aが駆動信号演算部123Bに変更され、故障判断部125Aが故障判断部125Bに変更され、アクティブチェック指示部126Aがアクティブチェック指示部126Bに変更されて構成される。そして、これらの変更に伴って、マイクロプロセッサ150Aがマイクロプロセッサ150Bに変更され、制御回路120Aが制御回路120Bに変更されている。さらに、車両駆動装置105Bは、実施の形態4に係る車両駆動装置105Aから、過電圧検出回路160が過電圧検出回路160Bに変更されて構成される。また、車両駆動装置105Bは、実施の形態4に係る車両駆動装置105Aから、制御回路120Aから制御回路120Bへの変更、及び、過電圧検出回路160から過電圧検出回路160Bへの変更に伴って、インバータ110Aがインバータ110Bに変更されている。
図20は、過電圧検出回路160Bを例示する回路図である。
図20に示すように、過電圧検出回路160Bは、実施の形態4に係る過電圧検出回路160から、第4抵抗素子164と、第5抵抗素子165と、第6抵抗素子166と、比較回路168とが削除されて構成される。
上記構成により、過電圧検出回路160Bは、アクティブチェック指示部126からアクティブチェック信号s101が出力されていない場合には、第1分圧電圧を選択電圧Vselとして出力し、アクティブチェック指示部126からアクティブチェック信号s101が出力されている場合には、第2分圧電圧を選択電圧Vselとして出力する。
駆動信号演算部123Bは、モータ制御信号演算部122から出力された制御信号に基づいて、モータM1を駆動するために必要な駆動信号を演算し、この駆動信号をドライブ回路130Aに出力する。駆動信号演算部123Bは、車両駆動装置105Bが通常運行している際は、3相PWM制御を行うための駆動信号を出力する。それに対し、駆動信号演算部123は、過電圧検出回路160Bから出力される選択電圧Vselが、電源線Lpにおける電圧Vpが所定の過電圧である場合に取り得る範囲の電圧(以下、この電圧のことを、「異常電圧」とも称する。)である場合には、メモリ124に格納されたプログラムによって3相短絡制御を行うための駆動信号を出力する。ここで、第2分圧電圧は、異常電圧に含まれる電圧となっている。
駆動信号演算部123Bは、例えば、マイクロプロセッサ150Bが備えるADコンバータを用いて選択電圧Vselをデジタル値に変換し、変換したデジタル値が異常電圧を示す値であるか否かを判定することで、選択電圧Vselが異常電圧であるか否かを判定してもよい。また、駆動信号演算部123Bは、例えば、マイクロプロセッサ150Bが備えるコンパレータを用いて、選択電圧Vselと基準電圧との比較を行い、その比較結果から選択電圧Vselが異常電圧であるか否かを判定してもよい。
このように、制御回路120Bは、3相PWM制御及び3相短絡制御を実行するための駆動信号を択一的にドライブ回路130Aに出力する。ドライブ回路130Aでは、制御回路120Bから出力された駆動信号を増幅して3相ブリッジ回路140に出力する。3相ブリッジ回路140は、ドライブ回路130Aから出力された信号に基づいて、モータM1を駆動する。
アクティブチェック指示部126Bは、過電圧検出回路160Bに第2分圧電圧を強制的に出力させるためのアクティブチェック信号s101を出力する回路である。以下において、過電圧検出回路160Bに第2分圧電圧を強制的に出力させることで、過電圧検出回路160Bによる3相短絡制御を試行し、過電圧検出回路160Bが3相短絡制御を実行できるか否かを確認することを第5のアクティブチェックと呼ぶ。第5のアクティブチェックを行うことで、過電圧検出回路160Bによる3相短絡に係る異常の有無を検出することができる。
アクティブチェック指示部126Bは、実施の形態4に係るアクティブチェック指示部126Aと同様に、モータ制御信号演算部122から出力された制御信号に基づいて、モータM1が所定条件で駆動しているか否かを判定し、モータM1が所定条件で駆動していると判定したときに、アクティブチェック信号s101を出力する。
故障判断部125Bは、過電圧検出回路160Bによる3相短絡に係る異常の有無を判断する回路である。
故障判断部125Bには、過電圧検出回路160Bから出力される選択電圧Vselが入力される。
故障判断部125Bは、アクティブチェック信号s101が出力され、選択電圧Vselが所定の電圧であるときに、過電圧検出回路160Bによる3相短絡に係る異常が無いと判断し、選択電圧Vselが所定の電圧でないときに、過電圧検出回路160Bによる3相短絡に係る異常が有ると判断する。ここでの所定の電圧は、アクティブチェック信号s101が出力されたとき、過電圧検出回路160Bが正常である場合において過電圧検出回路160Bから出力される選択電圧Vselのことをいう。故障判断部125Bは、過電圧検出回路160Bによる3相短絡に係る異常があると判断した場合に、その故障情報を外部に報知する報知信号を出力する。
故障判断部125Bは、例えば、マイクロプロセッサ150Bが備えるADコンバータを用いて選択電圧Vselをデジタル値に変換し、変換したデジタル値が所定の電圧を示す値であるか否かを判定することで、選択電圧Vselが所定の電圧であるか否かを判定してもよい。また、駆動信号演算部123Bは、例えば、マイクロプロセッサ150Bが備えるコンパレータを用いて、選択電圧Vselと基準電圧との比較を行い、その比較結果から選択電圧Vselが所定の電圧であるか否かを判定してもよい。
上記構成の実施の形態5に係る車両駆動装置105Bによると、制御回路120Bが、適宜、アクティブチェック信号s101を出力することで、適宜、過電圧検出回路160Bによる3相短絡に係る異常の有無を確認することができる。これにより、上記構成の実施の形態5に係る車両駆動装置105Bによると、インバータ110Bにおいて3相短絡制御の潜在的故障を早期発見して、車両駆動装置105Bの信頼性を高めることができる。
(実施の形態6)
次に、実施の形態6に係る車両駆動装置について、図21〜図23を参照しながら説明する。実施の形態6の車両駆動装置5Cは、実施の形態1に示すプロセッサ異常検出回路60、及び、実施の形態3に示す過電圧検出回路160の両方を備えている。
図21は、実施の形態6による車両駆動装置5Cのインバータ40、永久磁石モータM1及び電池P1を例示する回路図である。図22は、車両駆動装置5Cのインバータ10が備える3相ブリッジ回路40を例示する回路図である。図23は、車両駆動装置5Cのプロセッサ異常検出回路60及び過電圧検出回路160を例示する回路図である。
図21〜図23に示すプロセッサ異常検出回路60及び過電圧検出回路160は、前述した実施の形態1及び3と同様であり、詳しい説明を省略する。
図23に示すように、マイクロプロセッサ50から出力されたクリアパルス信号s11は、プロセッサ異常検出回路60に入力される。また、プロセッサ異常検出回路60から出力された不具合通知信号出力s12は、マイクロプロセッサ50に入力される。なお、マイクロプロセッサ50から出力されるラッチ解除信号出力s13は、プロセッサ異常検出回路60に入力される。
また、マイクロプロセッサ50から出力された短絡回路チェック信号s1、及び、プロセッサ異常検出回路60から出力された3相短絡駆動信号s2のそれぞれが、OR回路34に入力される。OR回路34から出力された信号は、OR回路35に入力される。
一方、マイクロプロセッサ50から出力されたアクティブチェック信号出力s101は、過電圧検出回路160に入力される。また、過電圧検出回路160からマイクロプロセッサ50には、電圧信号が入力される。また、過電圧検出回路160から出力された3相短絡信号s102は、OR回路35に入力されるとともに、マイクロプロセッサ50に入力される。
そして、OR回路35から出力された信号が3相短絡回路33に出力され、3相短絡回路33は、OR回路35から出力された信号に基づいて駆動する。
本実施の形態の車両駆動装置5Cでは、インバータ10は、3相ブリッジ回路40における直流電圧の所定の過電圧を検出する過電圧検出回路160を、さらに備える。過電圧検出回路160は、所定の過電圧を検出すると、3相短絡回路33に3相短絡信号s102を出力する。制御回路20は、過電圧検出回路160が3相短絡信号s102を強制的に出力するように制御し、過電圧検出回路160が3相短絡信号s102を強制的に出力することによる、3相に流れる電流の変化、3相における電流位相の変化、又は、直流電圧の変化に基いて、3相短絡に係る異常を検出する。
また、過電圧検出回路160は、直流電圧を抵抗分割することにより第1分圧電圧に分圧する第1分圧回路691と、所定の電圧を抵抗分割することにより、所定の過電圧として検出される第2分圧電圧に分圧する第2分圧回路692と、第1分圧電圧と第2分圧電圧とのいずれか一方を選択して出力する選択回路167と、選択回路167から出力された、第1分圧電圧又は第2分圧電圧と、基準電圧Vrefとを比較し、比較結果に基づいて3相短絡信号s102を出力する比較回路168と、を備える(図16参照)。制御回路20は、永久磁石モータM1が所定条件で駆動しているときに、第2分圧電圧が出力されるように選択回路167を制御することで、過電圧検出回路160が3相短絡信号s102を強制的に出力するように制御する。
また、選択回路167から出力された、第1分圧電圧又は第2分圧電圧と、比較回路168から出力された、3相短絡信号s102は、制御回路20に入力される。制御回路20は、第2分圧電圧が所定の電圧である場合には、第2分圧回路692及び選択回路167が正常であると判定し、3相短絡信号s102が所定の信号である場合には、過電圧検出回路160が正常であると判定する。
また、制御回路20は、3相短絡に係る異常を検出した場合には、以後、3相短絡回路33を用いた3相短絡の実行を抑止して、3相短絡回路33を用いずに、マイクロプロセッサ50が3相ブリッジ回路40を制御して3相短絡を行う。
実施の形態6の車両駆動装置5Cによると、制御回路20は、適宜、過電圧検出回路160が3相短絡信号s102を強制的に出力するように制御することで、3相短絡に係る異常を検出することができる。仮に3相短絡に係る異常が検出された場合に、制御回路20は、例えば車両1の上位制御部にこの異常を伝え、上位制御部がメータ表示などでドライバーに対する警告を発して修理を促す事で、より安全が確保できるように誘導するといった対応を取ることができる。このように、上記構成の車両駆動装置5Cによると、インバータにおいて3相短絡制御の潜在故障を早期発見して、車両駆動装置5Cの信頼性を高めることができる。
なお、実施の形態6の車両駆動装置5Cでは、プロセッサ異常検出回路として、実施の形態1のプロセッサ異常検出回路60を例に挙げて説明したが、それに限られない。図24に示すように車両駆動装置5Cは、プロセッサ異常検出回路60の代わりに実施の形態2のプロセッサ異常検出回路60Aを備えていてもよい。
(その他の実施の形態)
以上の実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、この開示、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
例えば実施の形態2において、マイクロプロセッサ50は、モータM1が所定条件で駆動しているときに、不具合模擬信号s14を出力してもよい。具体的には、マイクロプロセッサ50は、車両が走行中であって、モータM1が力行及び回生のいずれの状態でもない場合に、不具合模擬信号s14を出力してもよい。また、マイクロプロセッサ50は、車両が停車中であるときに、車両を発進させるまでに至らない電流がモータM1に流れるように3相ブリッジ回路40を用いて電流制御を行った後に、不具合模擬信号s14を出力してもよい。また、図9に示すように、車両の駆動輪2にトルクを付与するトルク付与装置T50を備えている場合において、マイクロプロセッサ50は、モータM1が回生中に、3相短絡制御を実行するとモータM1に発生するトルクである3相短絡トルクに基づいて、不具合模擬信号s14を出力してもよい。また、図10に示すように、モータM1が一方の駆動源D1であり、車両が一方の駆動源D1と異なる他方の駆動源D2を備えている場合において、マイクロプロセッサ50は、一方の駆動源D1を使わず他方の駆動源D2にて車両を駆動可能な場合に、不具合模擬信号s14を出力してもよい。
また、実施の形態1、2において、不具合通知回路61は、ウオッチドックタイマ回路であるとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、マイクロプロセッサ50をデュアルコアプロセッサとし、自己診断機能により異常を判断するようにしてもよい。具体的には、自己診断機能として、デュアルロックステップ方式により異常の有無を判断する。なお、デュアルロックステップ方式では、デュアルコアプロセッサは、2つのプロセッサコアに同じ処理を実行させ、その処理結果が合致しなければ異常であると判断する。この場合、実施の形態1で説明した不具合通知信号s12は、デュアルコアプロセッサの異常出力信号とすればよい。また、上記以外にも、自己診断機能としてクロック周波数の異常なども検出するようにしてもよい。
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。