JP2021007325A - 水圏生物間通信装置および水圏生物群行動解析システム - Google Patents

水圏生物間通信装置および水圏生物群行動解析システム Download PDF

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Abstract

【課題】水圏生物の群れ行動の把握に適した水圏生物間通信装置および水圏生物群行動解析システムを提供する。【解決手段】水圏生物に装着される水圏生物間通信装置10は、送信周期Tで自装置の識別情報を含む基準パルスを送信する送信部21と、他の水圏生物間通信装置から送信され、他の水圏生物間通信装置の識別情報を含む基準パルスを受信する受信部22と、送信周期Tでタイムアウトするタイマーを有し、タイマーがタイムアウトすると送信部21を制御して基準パルスを送信させる制御部23と、送信部21により基準パルスが送信されるたびにその送信時刻情報を記憶し、受信部22により基準パルスが受信されるたびにその受信時刻情報を記憶する記憶部24と、外部からトリガーを受けるとタイマーをスタートさせるトリガー信号を制御部23に出力する同期部25とを備える。【選択図】図3

Description

本発明は、水圏生物間通信装置および水圏生物群行動解析システムに関し、より詳しくは、魚類等の水圏生物に装着され、水圏生物間で通信を行う水圏生物間通信装置、および当該水圏生物間通信装置を用いて水圏生物群の行動を解析する水圏生物群行動解析システムに関する。
超音波バイオテレメトリーという研究手法が知られている。この研究手法は、小型の超音波発信器(ピンガーなどと呼ばれる。)を魚類等の水圏生物に取り付け、位置等を測定し、水圏生物の行動や生態を調査するというものである。水圏生物の位置測定方式として、従来トランスポンダー方式のほか、同期ピンガー方式が知られている(非特許文献1)。
特許文献1には、複数の超音波発信装置から送信される音響波を、短時間の間に、確実にかつ個別に識別できるようにした水中測位システムが記載されている。この水中測位システムでは、複数の超音波発信装置から送信される音響波は中央測定装置により受信される。
特開2011−252747号公報
論文「SSBL方式とピンガー同期方式を組み合わせたバイオテレメトリー方式の開発」、朴柱三、古澤昌彦著、Nippon Suisan Gakkaishi、72(6)、1082−1092(2006)
本発明は、水圏生物の群れ行動の把握に適した水圏生物間通信装置および水圏生物群行動解析システムを提供する。
本発明に係る水圏生物間通信装置は、
水圏生物に装着される水圏生物間通信装置であって、
所定の送信周期で自装置の識別情報を含む基準パルスを送信する送信部と、
他の水圏生物間通信装置から送信され、前記他の水圏生物間通信装置の識別情報を含む基準パルスを受信する受信部と、
前記所定の送信周期でタイムアウトするタイマーを有し、前記タイマーがタイムアウトすると、前記送信部を制御して基準パルスを送信させる制御部と、
前記送信部により基準パルスが送信されるたびに当該基準パルスの送信時刻情報を記憶し、前記受信部により基準パルスが受信されるたびに当該基準パルスの受信時刻情報を記憶する記憶部と、
外部からトリガーを受けると、前記タイマーをスタートさせるトリガー信号を前記制御部に出力する同期部と、
を備えることを特徴とする。
また、前記水圏生物間通信装置において、
前記同期部は、機械スイッチを含み、前記機械スイッチが押下されると、前記トリガー信号を出力するようにしてもよい。
また、前記水圏生物間通信装置において、
前記同期部は、同期信号源から延出する電気ケーブルに電気的に接続可能なコネクタを含み、前記コネクタが前記同期信号源から出力された電気信号を受信すると、前記トリガー信号を出力するようにしてもよい。
また、前記水圏生物間通信装置において、
前記同期部は、同期光源から放射された電磁波信号を検出する検出器を含み、前記検出器が電磁波信号を検出すると、前記トリガー信号を出力するようにしてもよい。
また、前記水圏生物間通信装置において、
前記検出器は、前記検出器を収容する筒状体を透過した電磁波信号を検出するようにしてもよい。
また、前記水圏生物間通信装置において、
前記制御部は、超音波パルス列の送受信動作を行う動作期間と、前記送受信動作を停止するスリープ期間とが交互に繰り返されるように前記送信部および前記受信部を制御するようにしてもよい。
また、前記水圏生物間通信装置において、
温度センサおよび/または圧力センサを有するセンサ部をさらに備え、
前記記憶部は、前記センサ部で取得されたセンサ情報を記憶するようにしてもよい。
本発明に係る水圏生物群行動解析システムは、
複数の水圏生物を含む水圏生物群の行動を解析するための水圏生物群行動解析システムであって、
前記複数の水圏生物に装着された複数の水圏生物間通信装置と、
前記複数の水圏生物間通信装置のうち少なくとも1つに記憶されたデータに基づいて前記水圏生物群の行動を解析する解析装置と、
を備え、
前記複数の水圏生物間通信装置は、それぞれ、
所定の送信周期で自装置の識別情報を含む基準パルスを送信する送信部と、
他の水圏生物間通信装置から送信され、前記他の水圏生物間通信装置の識別情報を含む基準パルスを受信する受信部と、
前記所定の送信周期でタイムアウトするタイマーを有し、前記タイマーがタイムアウトすると、前記送信部を制御して基準パルスを送信させる制御部と、
前記送信部により基準パルスが送信されるたびに当該基準パルスの送信時刻情報を記憶し、前記受信部により基準パルスが受信されるたびに当該基準パルスの受信時刻情報を記憶する記憶部と、
外部からトリガーを受けると、前記タイマーをスタートさせるトリガー信号を前記制御部に出力する同期部と、
を有する、ことを特徴とする。
また、前記水圏生物群行動解析システムにおいて、
前記解析装置は、前記複数の水圏生物間通信装置のうち少なくとも1つの前記記憶部に記憶された前記送信時刻情報および前記受信時刻情報に基づいて水圏生物間の距離を算出するようにしてもよい。
また、前記水圏生物群行動解析システムにおいて、
前記複数の水圏生物間通信装置は、それぞれ、温度センサおよび/または圧力センサを有するセンサ部をさらに備え、
前記複数の水圏生物間通信装置の前記記憶部は、前記センサ部で取得されたセンサ情報を記憶し、
前記解析装置は、前記水圏生物間の距離の時間変化および前記センサ情報の時間変化を解析するようにしてもよい。
本発明によれば、水圏生物の群れ行動の把握に適した水圏生物間通信装置および水圏生物群行動解析システムを提供することができる。
本発明の実施形態に係る水圏生物群行動解析システムの概略的構成を示す図である。 本発明の実施形態に係る水圏生物間通信装置の概略的構成を示す一部断面図である。 本発明の実施形態に係る水圏生物間通信装置の機能ブロック図である。 実施形態に係る水圏生物間通信装置から送信される超音波パルス列を示す図である。 実施形態に係る水圏生物間通信装置から送信される2つの連続する超音波パルス列を示す図である。 実施形態に係る水圏生物間距離の測定方法について説明するための図である。 実施形態における動作期間とスリープ期間について説明するための図である。 実施形態の変形例1に係る水圏生物間通信装置間の同期方法について説明するための図である。 実施形態の変形例2に係る水圏生物間通信装置間の同期方法について説明するための図である。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
<<水圏生物群行動解析システム>>
まず、図1を参照して、実施形態に係る水圏生物群行動解析システム1について説明する。
水圏生物群行動解析システム1は、複数の水圏生物を含む水圏生物群の行動を解析するためのシステムである。なお、水圏生物は魚類に限られない。
水圏生物群行動解析システム1は、図1に示すように、複数の水圏生物(魚F1,F2,F3)に装着された複数の水圏生物間通信装置10と、複数の水圏生物の行動を解析する解析装置50とを備えている。詳しくは後述するが、複数の水圏生物間通信装置10は超音波パルス列を互いに送受信することによりセンサ情報等をやりとりするとともに、超音波パルスの送受信時刻を記録するように構成されている。
解析装置50は、複数の水圏生物間通信装置10のうち少なくとも1つに記憶されたデータに基づいて水圏生物群の行動を解析するように構成されている。より詳しくは、解析装置50は、パソコン等の情報処理装置により構成されており、回収された水圏生物間通信装置10の記憶部24に記録された情報を読み出し、当該情報に基づいて水圏生物群の行動を解析する。
例えば、解析装置50は、複数の水圏生物間通信装置10のうちの少なくともいずれか1つの記憶部24に記憶された基準パルスの送信時刻情報および受信時刻情報に基づいて水圏生物間の距離(魚間距離)を算出する。この距離の算出方法については後ほど詳しく説明する。
また、解析装置50は、水圏生物間の距離の時間変化およびセンサ情報(深度情報、水温情報)の時間変化を解析する。これにより、遊泳深度や遊泳間隔がどの程度の範囲に及んでいるか等、水圏生物群の行動や生態をより詳しく解析することができる。
上記のように、実施形態に係る水圏生物群行動解析システム1によれば、水圏生物の群れとしての行動を詳細に複数の観点から解析することができる。
また、各水圏生物間通信装置10は、超音波パルスの到達範囲等の制限があるものの、周りの水圏生物の情報(センサ情報、遭遇ID数など)を可能な限り共有するため、水圏生物群行動解析システム1によれば、全ての水圏生物間通信装置10を回収しなくとも(理想的には1つの水圏生物間通信装置10を回収できれば)、水圏生物群の行動を解析することができる。
<<水圏生物間通信装置>>
次に、図2および図3を参照して、実施形態に係る水圏生物間通信装置10について詳しく説明する。
本実施形態に係る水圏生物間通信装置10は、前述のように、魚類等の水圏生物に装着されるものである。水圏生物間通信装置10の水圏生物への装着方法は、特に限定されず、例えば埋め込み、巻き付けなどである。
水圏生物間通信装置10は、超音波パルスの送受信機能を有し、水圏生物間で通信を行うように構成されている。さらに、水圏生物間通信装置10は、超音波パルスの送受信時刻情報や、各種センサ(後述の温度センサ271、圧力センサ272)で取得されたセンサ情報(水温情報、深度情報等)などを記録する。また、複数の水圏生物間通信装置10間で超音波パルスの送信タイミングの同期をとるための手段(後述の同期部25)を備えている。
次に、図2を参照して、水圏生物間通信装置10の概略的な構成について説明する。水圏生物間通信装置10は、図2に示すように、筒状体11と、蓋体12と、基板13と、この基板13上に実装された電子部品14と、この電子部品14等に電力を供給する電池15と、電極コンタクト部16,17と、パッキン18と、電極支持部材19と、を備えている。以下、各構成要素について説明する。
筒状体11は、筒状の容器であり、基板13、電子部品14、電池15、電極コンタクト部16,17および電極支持部材19などを収容する。この筒状体11は、例えば樹脂(アクリル樹脂など)からなる。なお、筒状体11は、本実施形態では円筒状であるが、これに限られず角筒状などであってもよい。
蓋体12は、筒状体11に結合して防水性を確保するように構成されている。この蓋体12は、受波器221、送波器211およびセンサ部27が前面に設けられた円柱状の本体部12Aと、この本体部12Aの後面に突設され、筒状体11と螺合する螺合部12Bと、この螺合部12Bに立設され、基板13を支持する基板支持部12Cとを有している。防水性を向上させるために、螺合部12Bにはパッキン18が取り付けられている。
基板13は、各種の電子部品14が実装されたプリント配線板である。本実施形態では、2枚の基板13が基板支持部12Cの表面および裏面にそれぞれ固定され支持されている。より詳しくは、基板支持部12Cおよび2枚の基板13には互いに連通する貫通孔が設けられており、この貫通孔にボルト(図示せず)が挿通され、ボルトと螺合するナット(図示せず)により2枚の基板13が基板支持部12Cに圧着されている。
電子部品14は、後述のCPU231、相関器232、送信アンプ212、受信アンプ222、同期部25、水晶発振子26、記憶部24、および記憶部24のアダプタなどである。なお、送信アンプ212および受信アンプ222はそれぞれ送波器211および受波器221に一体に設けられていてもよい。
電池15は、図2に示すように、正極が電極コンタクト部16に接触し、負極が電極コンタクト部17に接触するように筒状体11内に配置されている。電池15の種類は特に限定されないが、本実施形態では、リチウム電池(CR2)を用いている。電池15は、電子部品14のほか、送波器211、受波器221、温度センサ271および圧力センサ272等にも電力を供給する。
電極コンタクト部16は、導電性の材料からなる平板状の部材であり、図2に示すように、絶縁性の材料からなる電極支持部材19に固定されている。この電極コンタクト部16は、図示しない配線を介して基板13に電気的に接続されている。
電極コンタクト部17は、導電性の細長い部材を折り曲げたものとして構成されており、電池15の負極に接触する端子部17aと、端子部17aから筒状体11の開口方向に延在する延在部17bと、延在部17bの先端に設けられたパッド部17cとを有している。延在部17bは、電極支持部材19にネジ止め等により固定されている。パッド部17cは、螺合部12Bにネジ止め等により固定されている。また、パッド部17cは、図示しない配線を介して基板13に電気的に接続されている。
電極支持部材19は、樹脂等の絶縁性材料から構成されており、本実施形態では筒状体11の横断面形状に合わせて円盤状の形状を有している。図2に示すように、電極支持部材19の一方の主面には電極コンタクト部16が設けられる。また、電極支持部材19はその側面で電極コンタクト部17の延在部17bを支持している。
次に、図3の機能ブロック図を参照して、水圏生物間通信装置10の機能について詳しく説明する。
水圏生物間通信装置10は、送信部21と、受信部22と、制御部23と、記憶部24と、同期部25と、水晶発振子26と、センサ部27とを備えている。以下、各構成について説明する。
送信部21は、水中に超音波パルスを送波する送波器211と、超音波パルスを増幅する送信アンプ212とを有する。この送信部21は、制御部23により制御され、所定の送信周期(送信周期T)で、基準となる超音波パルス(基準パルス)を送信する。より詳しくは、送信部21は、図4に示すように、基準パルスRP(超音波パルスP1)に続いて、超音波パルスP2、超音波パルスP3および超音波パルスP4を送信する。このように送信部21は、超音波パルスP1,P2,P3,P4から構成される超音波パルス列PTを送信する。
超音波パルス列PTでは、各超音波パルス間の時間長さに情報が含まれる。本実施形態では、図4に示すように、超音波パルスP1と超音波パルスP2間の時間長さに深度情報が含まれ、超音波パルスP2と超音波パルスP3間の時間長さに水温情報が含まれ、超音波パルスP3と超音波パルスP4間の時間長さに遭遇ID数が含まれる。
送信部21から送信される超音波パルスはゴールドコードと呼ばれる疑似雑音系列信号を用いて符号化されており、他の水圏生物間通信装置10から送信される超音波パルスとの識別が可能である。すなわち、送信部21から送信される超音波パルスは自装置の識別情報(符号番号)を含む。
なお、ゴールドコードは、疑似雑音系列信号の中でも特に系列間の干渉が少ないため、他装置から送信される超音波パルスとの相互干渉が極めて少ない。ゴールドコード以外の疑似雑音系列信号が用いられてもよい。
図5に示すように、超音波パルス列は、所定の送信周期Tで送信される。すなわち、1つ目の超音波パルス列PT_1の基準パルスが送信されてから送信周期Tが経過した時点で2つ目の超音波パルス列PT_2の基準パルスが送信される。送信周期Tは後述のタイマーにより高精度に制御される。送信周期Tの値は、調査対象の水圏生物の特性、環境、調査期間等に応じて適宜設定される。
なお、図4の例では超音波パルス列は4つの超音波パルスを含むが、超音波パルス列に含まれる超音波パルスの数はこれに限られるものでない。また、超音波パルス列に含まれる情報は上記の例に限られず、適宜設定可能である。例えば、超音波パルス列が2つの超音波パルスP1とP2から構成され、これら超音波パルス間の時間長さが水温を示すようにしてもよい。
受信部22は、水中を伝播した超音波パルスを受波する受波器221と、受波した超音波パルスを増幅して相関器232に出力する受信アンプ222とを有する。この受信部22は、他の水圏生物間通信装置から送信された超音波パルス(基準パルス等)を受信する。受信した超音波パルスは、ゴールドコードで符号化されているため、他装置の超音波パルスと識別可能である。すなわち、受信した超音波パルスは、当該他の水圏生物間通信装置の識別情報を含む。
制御部23は、CPU231と、相関器232とを有し、送信部21および受信部22を制御する。また、制御部23は、送信周期Tでタイムアウトするタイマーを有し、このタイマーがタイムアウトすると、送信部21を制御して基準パルスRPを送信させる。なお、本実施形態では、タイマーはCPU231に設けられている。
制御部23は、送信部21を制御して基準パルスRPを送信させると、当該基準パルスRPの送信時刻情報を記憶部24に記憶させる。また、制御部23は、受信部22が他の水圏生物間通信装置から送信された基準パルスRPを受信すると、当該基準パルスRPの受信時刻情報を記憶部24に記憶させる。
CPU231は、図3に示すように、相関器232、送信部21、同期部25、水晶発振子26、センサ部27と電気的に接続されている。このCPU231は、水晶発振子26により高精度で動作し、送信周期Tを計測するタイマーを内蔵している。なお、タイマーはCPU231に内蔵される場合に限られず、CPU231の外部に設けられてもよい。また、CPU231が記憶部24に直接アクセスするようにしてもよい。
CPU231は、同期部25からトリガー信号を受信すると、タイマーをスタートさせる。そして、タイマーがタイムアウトすると(すなわち、送信周期Tが経過すると)、CPU231は、送信部21を制御して基準パルスを送信させる。基準パルスが送信された後、CPU231は、圧力センサ272で取得された深度情報に応じた時間差を空けて超音波パルスP2を送信部21に送信させる。同様に、超音波パルスP2が送信された後、CPU231は、温度センサ271で取得された水温情報に応じた時間差を空けて超音波パルスP3を送信部21に送信させる。超音波パルスP3が送信された後、CPU231は、遭遇ID数に応じた時間差を空けて超音波パルスP4を送信部21に送信させる。
なお、タイマーは、タイムアウトした後、ふたたび送信周期Tの計測を開始する。すなわち、タイマーは一旦スタートすると、後述のスリープ期間に入らない限り、送信周期Tの計測動作を繰り返し行う。
相関器232は、受信部22で受信された信号と基準論理符号配列との間で相互相関演算を順次行うことにより、符号番号(識別情報)を抽出する。相関器232は、複数の超音波パルスを同時に受信した場合でも各パルスの識別情報を抽出することが可能である。なお、相関器232は、ASIC(特定用途向け集積回路)で構成されてもよい。
記憶部24は、送信部21により送信される超音波パルス列に含まれる情報(深度、水温、遭遇ID数など)、および受信部22により受信された超音波パルス列に含まれる情報を記憶する。情報は、その情報が含まれていた超音波パルス列の識別情報(符号番号)に対応付けて記憶部24に記憶される。
記憶部24は、送信部21から基準パルスが送信されるたびに、その基準パルスの送信時刻情報を記憶する。また、記憶部24は、受信部22により基準パルスが受信されるたびに、その基準パルスの受信時刻情報を記憶する。ここで、送信時刻情報は、送信される基準パルスの識別情報(符号番号)に対応付けて記憶部24に記憶される。同様に、受信時刻情報は、受信される基準パルスの識別情報(符号番号)に対応付けて記憶部24に記憶される。なお、送信時刻情報、受信時刻情報は、絶対時刻であってもよいし、相対時刻(例えば後述のトリガー信号を受けてからの経過時間)であってもよい。
本実施形態では、記憶部24はマイクロSDカードであり、基板13に実装されたアダプタに挿入されている。水圏生物間通信装置10が水圏生物とともに回収されると、マイクロSDカードはアダプタから取り出され、解析装置50のアダプタに挿入されてデータが読み出される。
同期部25は、外部からトリガーを受けると、前述のタイマーをスタートさせるトリガー信号を制御部23に出力する。本実施形態では、同期部25は、機械スイッチを含み、この機械スイッチが手動で押下されるとトリガー信号を出力する。
水晶発振子26は、一定の周波数を高い精度で生成し、CPU231に供給する。これにより、タイマーのタイムアウト周期(超音波パルスの送信周期T)を高精度に制御することができる。
センサ部27は、温度センサ271および圧力センサ272を有する。温度センサ271により検出された温度(水温)および圧力センサ272により検出された圧力(深度)の情報はCPU231に送られる。記憶部24は、センサ部27で取得されたセンサ情報を記憶する。CPU231は、センサ情報を超音波パルス列の生成に用いる。
なお、センサ部27は、温度センサ271および圧力センサ272の一方のみを有してもよい。あるいは、センサ部27は、温度センサ271および圧力センサ272以外のセンサを有してもよい。
<<水圏生物間距離(魚間距離)の測定方法>>
次に、上述した水圏生物間通信装置10による水圏生物間距離の測定方法について説明する。
測定者は、まず、複数の水圏生物間通信装置10について各々、筒状体11から蓋体12を取り外し、筒状体11内の同期部25の機械スイッチをそれぞれ押下する。この際、機械スイッチを押下するタイミングのずれが送信周期Tよりも大きくならないように素早く押下する。
機械スイッチを押下した後、測定者は、蓋体12を筒状体11に取り付け、水圏生物間通信装置10を水圏生物(ここでは魚F1,F2)にそれぞれ装着する。次に、測定者は、水圏生物間通信装置10が装着された魚F1と魚F2を狭い網に入れ、水中に沈める。その後、しばらくしてから網を開放し、魚F1と魚F2を放流する。
図6を参照して、超音波パルス(基準パルス)の送受信タイミングに基づく魚間距離の算出方法について説明する。
図6において、装置Aは、ある水圏生物(例えば魚F1)に装着された水圏生物間通信装置10を示す。装置Bは、別の水圏生物(例えば魚F2)に装着された水圏生物間通信装置10を示す。なお、図6では見易くするため、基準パルス以外の超音波パルス、および装置Bが受信する超音波パルスは図示していない。
図6において、基準パルスRP_A_1tは、装置Aが送信した基準パルスを示し、基準パルスRP_A_2tはその次に送信された基準パルスを示している。同様に、基準パルスRP_B_1tは、装置Bが送信した基準パルスを示し、基準パルスRP_B_2tはその次に送信された基準パルスを示している。
ここで、基準パルスRP_A_1tおよび基準パルスRP_B_1tは、魚F1,F2が網から放流される前に送信されたものであり、基準パルスRP_A_2tおよび基準パルスRP_B_2tは、魚F1,F2が網から放流された後に送信されたものである。
基準パルスRP_B_1rは、装置Bから送信された基準パルスRP_B_1tが水中を伝播して装置Aに受信されたものである。同様に、基準パルスRP_B_2rは、装置Bから送信された基準パルスRP_B_2tが水中を伝播して装置Aに受信されたものである。
基準パルスRP_A_1tと基準パルスRP_B_1tの間には、図6に示すように、時間差(オフセット)taが存在する。これは、測定者が装置Aおよび装置Bの機械スイッチを手動で押下するために生じるタイムラグに起因する。前述のように、魚F1と魚F2は狭い網の中に入れた状態で水中に沈められることから、放流前にはほぼ同じ位置にいる。したがって、基準パルスRP_B_1tの伝播時間は無視でき、基準パルスRP_A_1tと基準パルスRP_B_1rとの時間差をオフセットtaとみなせる。
また、装置Aと装置Bの送信周期Tは等しい。よって、基準パルスRP_A_2tの送信時刻と、基準パルスRP_B_2tの送信時刻との間の時間差は、オフセットtaに等しい。なお、送信周期Tは高精度の水晶発振子26により生成されるため、ここでの誤差は十分に小さい。
図6に示すように、基準パルスRP_B_2rの受信時刻と基準パルスRP_A_2tの送信時刻との間の時間差tbからオフセットtaを引くと、時間差tcが得られる。この時間差tcは、装置Bから送信された基準パルスが装置Aに到達するまでの時間を示しており、魚間距離に対応している。すなわち、時間差tcに水中での音速(約1500m/s)を乗じることにより、魚間距離を算出することができる。超音波パルス列ごとに上記のようにして魚間距離を算出することで、魚間距離の時間変化を求めることができる。
以上説明したように、本実施形態では、送信部21が所定の送信周期Tで基準パルスを送信し、受信部22が他装置から送信された基準パルスを受信する。そして、記憶部24は、基準パルスが送信されるたびに送信時刻を記憶し、また、基準パルスが受信されるたびに受信時刻を記憶する。
さらに、水圏生物間通信装置10は、外部からトリガーを受けるとトリガー信号を制御部23に出力する同期部25を備えており、制御部23はトリガー信号を受信するとタイマーをスタートさせ、当該タイマーがタイムアウトすると基準パルスを送信部21に送信させる。これにより、本実施形態によれば、複数の水圏生物間通信装置10間で超音波パルスの同期をとることが可能となる。そして、記憶部24に記憶された超音波パルス列の送信時刻および受信時刻に基づいて魚間距離を算出することができる。なお、ここでいう「同期」は複数の水圏生物間通信装置10が送信する超音波パルス列のタイミングを一致させるという意味(狭義の同期)ではなく、複数の水圏生物間通信装置10から送信された複数の超音波パルス列間の時間差(オフセット)を把握可能にするという意味(広義の同期)である。狭義の同期は、後述の変形例1,2において達成される。
さらに、本実施形態によれば、従来用いられていた、超音波パルスを受信する固定の受信器は不要となる。
また、周りの水圏生物との距離などのデータが記憶部24に保存されるため、各水圏生物に装着された水圏生物間通信装置10を全て回収しなくても、水圏生物群(魚群)の行動等を解析することができる。
なお、図7に示すように、水圏生物間通信装置10(装置A,B)は、超音波パルス列の送信動作および受信動作(まとめて送受信動作という。)を交互に行うようにしてもよい。この場合、制御部23は、超音波パルス列の送受信動作を行う動作期間Saと、送受信動作を停止するスリープ期間Sbとが交互に繰り返されるように送信部21および受信部22を制御する。これにより、スリープ期間中は送信部21や受信部22だけでなく相関器232等の動作も停止されるため、電池15の消耗が抑えられる。よって、電池15を大型化することなく、水圏生物間通信装置10を長期間(例えば数ヶ月間)動作させることができるようになる。
次に、本実施形態の2つの変形例について説明する。いずれの変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
<変形例1>
図8を参照して変形例1について説明する。
本変形例では、電気信号を用いて複数の水圏生物間通信装置10間の同期をとる。各水圏生物間通信装置10は水圏生物に装着される前に電気信号により同期される。
同期部25は、同期信号源60から延出する電気ケーブル65に電気的に接続可能なコネクタ(図示せず)を含む。このコネクタが同期信号源60から出力された電気信号を受信すると、同期部25はトリガー信号を制御部23に出力する。
本変形例の場合、測定者は、まず、各水圏生物間通信装置10の蓋体12を取り外し、同期信号源60から延出する電気ケーブル65を同期部25のコネクタにそれぞれ接続する。次に、測定者は、同期信号源60のスイッチを押下して、電気信号(パルス信号等)を各電気ケーブル65に同時に出力させる。出力された電気信号は各水圏生物間通信装置10の同期部25に同時に受信され、トリガー信号として制御部23に入力される。次に、測定者は電気ケーブル65を同期部25から取り外し、蓋体12を筒状体11に取り付ける。そして、各水圏生物間通信装置10を魚類等の水圏生物に装着する。
本変形例によれば、複数の水圏生物間通信装置10は同時にトリガーである電気信号を受けるため、前述のオフセットtaが生じない。このため、魚間距離の算出などの解析処理が簡易になり、水圏生物の行動解析を容易にすることができるとともに、解析精度を向上させることができる。
また、機械スイッチの場合、水圏生物間通信装置10の数が増すにつれて、小さいタイムラグで全ての機械スイッチを押下することは困難となるが、本変形例の場合、水圏生物間通信装置10の数が多い場合でも対応可能である。
<変形例2>
次に、図9を参照して変形例2について説明する。
本変形例では、電磁波信号を用いて複数の水圏生物間通信装置10間の同期をとる。
図9に示すように、各水圏生物間通信装置10は、同期光源70から出力される電磁波信号(赤外線信号等)により同期される。本変形例の同期部25は同期光源70から放射される電磁波信号を検出する検出器(図示せず)を含んでいる。この検出器が電磁波信号を検出すると、同期部25はトリガー信号を制御部23に出力する。
なお、検出器を収容する筒状体11を電磁波が透過可能な材料(透明な樹脂材料など)で構成しておき、検出器が、筒状体11を透過した電磁波信号を検出するようにしてもよい。これにより、同期させる際に、蓋体12を取り外す作業が不要になる。
本変形例の場合、測定者は、図9に示すように、複数の各水圏生物間通信装置10を同期光源70の前に並べて配置する。次に、測定者は、同期光源70のスイッチを押下して、電磁波信号(赤外線信号等)を水圏生物間通信装置10に向けて出力させる。出力された電磁波信号は各水圏生物間通信装置10の同期部25に同時に受信され、同期部25はトリガー信号を制御部23に出力する。次に、測定者は、各水圏生物間通信装置10を魚類等の水圏生物に装着する。なお、電磁波信号の照射は、水圏生物間通信装置10が水圏生物に装着された後に行ってもよい。
本変形例によれば、複数の水圏生物間通信装置10は同時にトリガーである電磁波信号を受けるため、前述のオフセットtaが生じない。このため、魚間距離の算出などの解析処理が簡易になり、水圏生物の行動解析を容易にすることができるとともに、解析精度を向上させることができる。
また、本変形例によれば、変形例1の場合と同様に、水圏生物間通信装置10の数が多い場合でも対応可能である。
さらに、本変形例によれば、電磁波信号は筒状体11を透過して同期部25の検出器に受信されるため、測定者は同期のために蓋体12を取り外す必要がなく、作業が容易となる。
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
1 水圏生物群行動解析システム
10 水圏生物間通信装置
11 筒状体
12 蓋体
12A 本体部
12B 螺合部
12C 基板支持部
13 基板
14 電子部品
15 電池
16,17 電極コンタクト部
17a 端子部
17b 延在部
17c パッド部
18 パッキン
19 電極支持部材
21 送信部
211 送波器
212 送信アンプ
22 受信部
221 受波器
222 受信アンプ
23 制御部
231 CPU
232 相関器
24 記憶部
25 同期部
26 水晶発振子
27 センサ部
271 温度センサ
272 圧力センサ
50 解析装置
60 同期信号源
70 同期光源
F1,F2,F3 魚
P1,P2,P3,P4 超音波パルス
PT,PT_1,PT_2 超音波パルス列
RP 基準パルス
Sa 動作期間
Sb スリープ期間
T 送信周期
ta,tb,tc 時間差

Claims (10)

  1. 水圏生物に装着される水圏生物間通信装置であって、
    所定の送信周期で自装置の識別情報を含む基準パルスを送信する送信部と、
    他の水圏生物間通信装置から送信され、前記他の水圏生物間通信装置の識別情報を含む基準パルスを受信する受信部と、
    前記所定の送信周期でタイムアウトするタイマーを有し、前記タイマーがタイムアウトすると、前記送信部を制御して基準パルスを送信させる制御部と、
    前記送信部により基準パルスが送信されるたびに当該基準パルスの送信時刻情報を記憶し、前記受信部により基準パルスが受信されるたびに当該基準パルスの受信時刻情報を記憶する記憶部と、
    外部からトリガーを受けると、前記タイマーをスタートさせるトリガー信号を前記制御部に出力する同期部と、
    を備えることを特徴とする水圏生物間通信装置。
  2. 前記同期部は、機械スイッチを含み、前記機械スイッチが押下されると、前記トリガー信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の水圏生物間通信装置。
  3. 前記同期部は、同期信号源から延出する電気ケーブルに電気的に接続可能なコネクタを含み、前記コネクタが前記同期信号源から出力された電気信号を受信すると、前記トリガー信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の水圏生物間通信装置。
  4. 前記同期部は、同期光源から放射された電磁波信号を検出する検出器を含み、前記検出器が電磁波信号を検出すると、前記トリガー信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の水圏生物間通信装置。
  5. 前記検出器は、前記検出器を収容する筒状体を透過した電磁波信号を検出することを特徴とする請求項4に記載の水圏生物間通信装置。
  6. 前記制御部は、超音波パルス列の送受信動作を行う動作期間と、前記送受信動作を停止するスリープ期間とが交互に繰り返されるように前記送信部および前記受信部を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水圏生物間通信装置。
  7. 温度センサおよび/または圧力センサを有するセンサ部をさらに備え、
    前記記憶部は、前記センサ部で取得されたセンサ情報を記憶することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水圏生物間通信装置。
  8. 複数の水圏生物を含む水圏生物群の行動を解析するための水圏生物群行動解析システムであって、
    前記複数の水圏生物に装着された複数の水圏生物間通信装置と、
    前記複数の水圏生物間通信装置のうち少なくとも1つに記憶されたデータに基づいて前記水圏生物群の行動を解析する解析装置と、
    を備え、
    前記複数の水圏生物間通信装置は、それぞれ、
    所定の送信周期で自装置の識別情報を含む基準パルスを送信する送信部と、
    他の水圏生物間通信装置から送信され、前記他の水圏生物間通信装置の識別情報を含む基準パルスを受信する受信部と、
    前記所定の送信周期でタイムアウトするタイマーを有し、前記タイマーがタイムアウトすると、前記送信部を制御して基準パルスを送信させる制御部と、
    前記送信部により基準パルスが送信されるたびに当該基準パルスの送信時刻情報を記憶し、前記受信部により基準パルスが受信されるたびに当該基準パルスの受信時刻情報を記憶する記憶部と、
    外部からトリガーを受けると、前記タイマーをスタートさせるトリガー信号を前記制御部に出力する同期部と、
    を有する、
    ことを特徴とする水圏生物群行動解析システム。
  9. 前記解析装置は、前記複数の水圏生物間通信装置のうち少なくとも1つの前記記憶部に記憶された前記送信時刻情報および前記受信時刻情報に基づいて水圏生物間の距離を算出することを特徴とする請求項8に記載の水圏生物群行動解析システム。
  10. 前記複数の水圏生物間通信装置は、それぞれ、温度センサおよび/または圧力センサを有するセンサ部をさらに備え、
    前記複数の水圏生物間通信装置の前記記憶部は、前記センサ部で取得されたセンサ情報を記憶し、
    前記解析装置は、前記水圏生物間の距離の時間変化および前記センサ情報の時間変化を解析することを特徴とする請求項9に記載の水圏生物群行動解析システム。
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