[第1実施形態]
以下では、本発明が適用される第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。第1実施形態について説明するに先立ち、本発明で想定しているユースケースについて、図1を参照して簡潔に説明する。また、図2、図3では、従来の移動体通信での中継転送の動作と、本発明の中継転送の動作との違いを説明する。
図1に示す状況においては、自己の移動体(車両)である自移動体C0の周囲に、他人の移動体(車両、バイク等)である他移動体C1、C2、C3、C4が存在している。これら他移動体C1〜C4は、全て自移動体C0の通信可能範囲AC0内に存在しているため、直接かつ相互に通信が可能である。なお、通信可能範囲AC0の半径は条件により異なるが、400m程度である。
ここで、自移動体C0を基準としたとき、他移動体C1は前方に位置する対向車であると仮定する。また、他移動体C2〜C4は、自移動体C0の後方に位置する追従走行車であると仮定する。
また、他移動体C1を基準としたとき、自移動体C0は他移動体C1の通信可能範囲AC1内に存在するが、他移動体C2〜C4は通信可能範囲AC1外に存在する。このため、他移動体C1と他移動体C2〜C4とは、直接通信が不可能である。
このような場合には、他移動体C1と他移動体C2〜C4との間に位置する自移動体C0が通信を中継(中継転送)することで、空間的に離れた他移動体C1と他移動体C2〜C4との間で通信が可能となる。
例えば、交差点において、他移動体C1と自移動体C0がともに右折しようとしているとき、自移動体C0の後方から接近する他移動体C2〜C4は、他移動体C1からは直接視認できず、右折時に衝突事故を起こす可能性がある。
このとき、他移動体C2〜C4の存在を、その中間に位置する自移動体C0が他移動体C1に通知する。これにより、他移動体C1のドライバーは、接近する移動体C2〜C4の存在を一早く知ることができ、衝突事故を未然に防止できる可能性が高まる。
次に、図2を参照して、従来の移動体通信での中継転送の動作と、本発明で提案する中継転送(他移動体情報集約通知)の動作との違いを対比して説明する。
図示するように、従来、自移動体C0は、自移動体C0の後方に位置する複数の他移動体C2〜CN(Nは自然数)の移動情報(位置、方位、速度等)を中継転送して、自移動体C0の前方から接近する他移動体C1に通知していた。
この方式では、自移動体C0が他移動体C2〜CNからの移動情報2〜Nを含む通信フレームを受信すると、その都度、受信した通信フレームを他移動体C1に中継転送する処理を行う。この場合、他移動体の数が多くなると、中継を行う移動体が、他移動体から受信した移動情報を中継転送する回数が多くなり、通信装置間で通信される総データ量が増大する。具体的には、1台分の移動情報のデータ量が約20byteであるため、図示する例では、これを(N−1)台分送信することになる。さらに、無線通信チャネルの占有時間が増える点も問題となる。
一方、本発明の中継転送方式である他移動体情報集約通知では、自移動体C0が他移動体C2〜CNから移動情報2〜Nを含む通信フレームを受信すると、その移動情報を記憶し、管理する。そして、管理している全ての他移動体の移動情報を集約した他移動体集約情報を生成し、他移動体C1に中継転送する処理を行う。このような処理は、自移動体C0で定期的に行われる。
他移動体集約情報には、その情報が生成されたタイミングにおける全ての他移動体の移動情報が集約されている。詳細は後述するが、他移動体集約情報を生成するため、周辺(通信圏内)に存在する各移動体をカテゴリー(自移動体C0に対して、/前方/対向、/後方/追従等)とレベル(自移動体C0からの距離。接近時間でもよい。)で分類し、情報を集約する。情報の数は、周辺に存在する移動体の数によらず、カテゴリー数とレベル数の積算で与えられる。例えば、カテゴリー数が「6」、レベル数が「4」の場合、各レベルに移動体が存在するか否かの情報(1bit)は、3byte(6×4×1bit=24bit)でまとめられる。
自移動体C0は、自己の移動情報(約20byte)に、他移動体集約情報(3byte)を合わせて、他移動体C1に中継転送する。具体的には、ビーコンフレーム(BLEで25byteまで可)に、他移動体集約情報を付加してブロードキャスト通信することで、コネクションレスで迅速な通知が実現可能となり、接続シーケンス、通信経路設定のオーバーヘッドを無くすことができる。
従って、他移動体の数が多くなっても(100台でも、1000台でも可)、移動情報を1回の中継転送で通知することができので、中継転送する回数と、通信装置間で通信される総データ量とを削減することができる。
次に、図3A、図3Bを参照して、移動体間の通信接続について説明する。
図3Aは、従来の中継転送方式において、通信経路を設定する処理のシーケンス図である。他移動体C1と他移動体C2との間の通信は、以下のステップで実現される。ステップS01として、相互にビーコンを送受信して、接続相手を認識する。図示する例では、他移動体C2は自移動体C0を接続相手として認識し、自移動体C0は他移動体C1を接続相手として認識する。なお、この認識のための時間がΔT1である。
その後、ステップS02として、制御フレームを交換して相互に接続し(時間ΔT2)、ステップS03として、制御フレームを交換して中継転送経路を設定する(時間ΔT3)。その後、ステップS04として、中継転送経路に沿って移動情報(約20byte)を転送する(時間ΔT4)。
なお、ステップS02〜S04の処理には、Wi-FiやBLEでは通常2〜3秒の時間を必要とする。従って、高速で移動する移動体間の通信においては、2〜3秒のオーバーヘッドがあった場合、通知情報を転送する機会を失う可能性があった。
これに対して、図3Bに示す本発明の中継転送方式は、通知情報を含むビーコンフレームを周辺の移動体に一斉同報するブロードキャスト通信(時間ΔT1’)を行う(ステップS01’)。すなわち、従来のステップS02〜S04の処理が不要となるため、高速で通知情報を転送することができる。
一方で、物理レイヤの標準仕様で規定されているビーコンフォーマットで、ユーザが自由に利用できるデータ領域のサイズには制限がある。例えば、BLEのビーコンフォーマットであるAdvertising PDUは、データ領域のサイズが37byteに限定され、ヘッダを除くとユーザのデータ領域は25byteに制限される。しかしながら、上述の他移動体集約情報であれば、最小で3byteに集約可能であり、ビーコンフレームに付加してブロードキャスト通信が可能である。これにより、通信経路設定のため遅延を少なくして、移動情報の転送を可能とした。
次に、図4A、図4Bを参照して、本実施形態に係る通信装置10のハードウェア構成と機能構成について説明する。
まず、図4Aを参照して、通信装置10の機能を実現するハードウェア構成について説明する。図4Aは、通信装置10のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図示するように、通信装置10の機能は、GPS受信機H12、中央演算処理装置(CPU)H14、メモリH16、通信制御部H18、アンテナH20等のハードウェア資源により実現される。また、中央演算処理装置H14、メモリH16、GPS受信機H12及び通信制御部H18は、バスH22により接続されている。
GPS受信機H12は、時刻毎に自車両の位置、移動方向、速度を検出する手段である。GPS受信機H12は、中央演算処理装置H14に接続されている。中央演算処理装置H14は、演算処理チップである。メモリH16としては、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体メモリや磁気記録媒体、光記録媒体、光磁気記録媒体等が用いられる。
メモリH16には、例えば、後述するデータ管理手段102で管理される移動情報、他移動体情報集約手段130が実行する各種処理プログラム、プログラムで参照されるデータ、プログラムが処理した結果データ、又は送受信データ等が格納されている。通信制御部H18は、通信制御を行う制御チップである。また、アンテナH20は、通信制御部H18から出力される信号の送受信アンテナである。以上、通信装置10の機能を実現することが可能なハードウェア構成の一例について説明した。
次に、図4Bを参照して、本実施形態に係る通信装置10の機能構成について説明する。図4Bは、通信装置10の機能構成を示すブロック図である。
図示するように、通信装置10は、主にデータ管理手段102、移動情報取得手段104、通信手段106、他移動体集約情報変換合成手段108、サービス制御手段110及び他移動体情報集約手段130により構成される。以下、各手段の詳細を説明する。
移動情報取得手段104は、自移動体の移動情報を検出する手段である。自移動体の移動情報は、例えば、緯度や経度で表現された絶対位置、北を基準とする方位情報、速度情報が含まれる。この移動情報の検出は、GPS受信機H12等を用いることで実現される。また、この位置情報は、後述するデータ管理手段102に入力される。
通信手段106は、アクセス制御に必要な情報を送信情報に付加して送信用の通信フレームを生成する手段である。例えば、通信手段106には、データ管理手段102から通知情報が入力される。この場合、通信手段106は、データ管理手段102から入力された通知情報に対し、アクセス制御に必要な情報を付加して通信フレームを生成する。通信手段106により生成されたフレームは、所定の変調方式で変調され、初期設定された送信周波数で送信される。このとき、他移動体に対して通信フレームが周期的に送信される。
一方、通信手段106は、他移動体から変調信号を受信して通信フレームを復調し、通信フレームから受信情報を抽出する手段でもある。通信手段106は、初期設定された受信周波数で変調信号を受信する。続いて、通信手段106は、受信した変調信号から通信フレームを復調し、さらに、その通信フレームからアクセス制御に必要な情報を除去して他移動体の通知情報を抽出する。通信手段106により抽出された通知情報は、データ管理手段102に入力される。なお、通信手段106の機能は、通信制御部H18、アンテナH20等により実現される。
他移動体集約情報変換合成手段108は、受信した他移動体集約情報を受信側から見たカテゴリータイプに変換する処理で用いられるが、詳細は後述する。また、サービス制御手段110は、要求するコンテンツ名(又はコンテンツID)を含むインタレストを送信した移動体が他の移動体からコンテンツを転送してもらう処理に用いるが、同じく詳細は後述する。
次に、他移動体情報集約手段130について説明する。他移動体情報集約手段130は、相対変換処理を実行し、その情報を取得する相対情報取得手段132と、相対情報レベル変換処理を実行する相対情報レベル変換手段134と、カテゴリー分類処理を実行するカテゴリー分類手段136と、カテゴリーレベル集約処理を実行するカテゴリーレベル集約手段138とで構成されている。なお、各処理の詳細は後述する。
次に、図5を参照して、通信フレームの構成について説明する。
図5は、通信フレームの構成例を示す図である。図示するように、通信フレームには、主にMACヘッダと、Herder及び通知情報からなるPDUと、CRCとで構成されている。MACヘッダは送信元のMACアドレスを示し、CRC(Cyclic Redundancy Check)は巡回冗長検査符号である。
通知情報には、移動情報の他に、他移動体集約情報とインタレストが含まれる。まず、通知情報には、移動体の移動情報である緯度、経度(位置)、速度、移動方向(北を基準とした方位角度)等が含まれる(20byte)。
他移動体集約情報は、カテゴリー、レベル及び移動体存在情報からなり、カテゴリーは6種類、レベルは4種類で構成される。そして、カテゴリー及びレベルが一致した移動体が存在すれば「1」、存在しなければ「0」が入力される(3byte)。また、インタレストは、カテゴリー、レベル及びコンテンツIDからなる(2byte)。カテゴリー(6種類)及びレベル(4種類)は、それぞれ4bitで入力される。また、コンテンツIDは、他移動体集約情報であれば「0」、Front Camera(前方カメラ映像)であれば「1」、Rear Camera(後方カメラ映像)であれば「2」が入力される。
上記の通信フレームは、各移動体により所定周期で送信される。通信フレームには、各移動体の位置、移動方向、速度等の移動情報が含まれ、送信した移動体の通信可能範囲(図1参照)に進入した移動体により受信される。
通信手段106(図4B参照)は、通知情報を含む通信フレームを、特定の移動体に送信するユニキャスト通信処理と、通知情報を含むビーコンフレームを周辺の移動体に一斉同報するブロードキャスト通信処理とを実行する。ビーコンフレームの仕様については、Wi-Fi、Wi-Fi Direct、BLE(Bluetooth Low Energy)、Bluetooth(登録商標)等、利用する物理レイヤの標準仕様に従い、ユーザが自由に使えるデータ領域に通知情報を記憶する。
なお、図5は、BLEのブロードキャスト通信で利用されているビーコンフレームであるAdvertising PDUに通知情報を付加する場合を例示している。この例は、飽くまで一例にすぎず、ビーコンフレームはこれに限定されるものではない。
次に、図6を参照して、移動情報テーブルについて説明する。
図6は、データ管理手段102に記憶された移動情報テーブルTのデータ構造の例を示している。データ管理手段102は、移動情報取得手段104から自移動体C0の移動情報(自移動体情報)を取得し、移動情報テーブルTに記憶する。また、データ管理手段102は、通信手段106から上述の通信フレームを受信し、通信フレームに含まれる他移動体C1〜CNの移動情報(他移動体情報)を移動情報テーブルTに記憶する。
このようにして生成される移動情報テーブルTは、自移動体C0及び他移動体C1〜CNについての識別子と移動情報とを記憶したリストである。各移動体の移動情報は、位置情報(緯度、経度)、移動方向(北基準の方位角度)、移動速度、その他(移動体種別等)の情報から構成されている。なお、他移動体集約情報の生成のため、「相対情報レベル変換表」、「方位角度分類表」、「移動方向分類表」及び「カテゴリータイプ分類表」を利用するが、これらの詳細は後述する。
また、データ管理手段102は、自移動体C0の移動情報に他移動体情報集約手段130によって生成された他移動体集約情報Iを付加した通知情報を、通信手段106を介して他移動体C1〜CNに送信する処理を行う。
次に、図7〜図14を参照して、他移動体情報集約手段130の動作について説明する。
まず、図7に、通信装置10の他移動体情報集約手段130が実行する他移動体情報集約通知処理のフローチャートを示す。本処理は、自移動体C0の通信装置10のシステム開始時に実行され、その後、定期的に実行される。実行開始の周期は、予め設定された値(100ms、200ms等)を参照し、設定期間が経過する毎に1度実行される。
まず、他移動体情報集約手段130は、自移動体情報を取得する(ステップS110)。これは、他移動体情報集約手段130が移動情報取得手段104からデータ管理手段102に自移動体C0の移動情報(位置、移動方向、速度等の情報)を入力させ、移動情報を取得する処理である。その後、ステップS120に進む。
次に、他移動体情報集約手段130は、他移動体情報を取得する(ステップS120)。これは、データ管理手段102の移動情報テーブルTから、周辺の他移動体C1〜CNの移動情報を取得する処理である。なお、「周辺」とは、自移動体C0から直接通信可能な範囲を意味する。その後、ステップS130に進む。
次に、他移動体情報集約手段130は、相対変換処理を行う(ステップS130)。これは、他移動体C1〜CNの移動情報を、自移動体C0の位置と移動方向を基準とした相対情報に変換する処理である。本処理により、自移動体C0と他移動体C1〜CNとの相対距離情報、自移動体C0の位置に対する他移動体C1〜CNの位置の相対方位角度情報、自移動体C0の移動方向に対する他移動体C1〜CNの移動方向の移動方向情報が出力される。相対変換処理については、詳細を後述する(図8参照)。その後、ステップS140に進む。
次に、他移動体情報集約手段130は、相対情報レベル変換処理を行う(ステップS140)。これは、相対変換処理(ステップS130)で得られた相対距離情報を、予め設定された数値範囲とレベルの関連を示す変換表(相対情報レベル変換表F1)を参照して、数値範囲に応じて段階的に変化するレベル情報に変換し、出力する処理である。相対情報レベル変換処理の詳細は、後述する(図10参照)。その後、ステップS150に進む。
次に、他移動体情報集約手段130は、カテゴリー分類処理を行う(ステップS150)。これは、相対変換処理(ステップS130)で得られた方位角度情報及び移動方向情報を入力して、自移動体C0から見た他移動体C1〜CNの相対的な方位角度と相対的な移動方向との組み合わせによって特定されるカテゴリータイプに分類する処理である。カテゴリー分類処理の詳細は、後述する(図12参照)。
なお、相対情報レベル変換処理(ステップS140)とカテゴリー分類処理(ステップS150)とは、順番が逆であってもよいし、同時並行で処理してもよい。相対情報レベル変換処理(ステップS140)と、カテゴリー分類処理(ステップS150)の結果として、他移動体C1〜CNについて、レベル情報とカテゴリータイプが得られる。その後、ステップS160に進む。
次に、他移動体情報集約手段130は、カテゴリーレベル集約処理を行う(ステップS160)。これは、相対情報レベル変換処理(ステップS140)で得られたレベル情報と、カテゴリー分類処理(ステップS150)で得られたカテゴリータイプとを入力して、レベル情報別及びカテゴリータイプ別に、そのレベル情報とカテゴリータイプが一致する他移動体の数を集計して、他移動体集約情報Iとして記憶する処理である。カテゴリーレベル集約処理の詳細は、後述する(図13参照)。その後、ステップS170に進む。
次に、他移動体情報集約手段130は、全ての他移動体C1〜CNについて、他移動体情報を取得したか否かを判定する(ステップS170)。すなわち、1つの他移動体情報についてカテゴリーレベル集約処理(ステップS160)が完了したとき、移動情報テーブルTに未処理の他移動体情報がないかを確認する。移動情報テーブルTに未処理の他移動体情報が残っている場合、ステップS120に戻り、未処理の他移動体情報を1つ取得して、本ステップ以降の処理を実行する。
一方、移動情報テーブルTに未処理の他移動体情報が残っていない場合、一連の処理を終了する。以上で他移動体情報集約通知処理を終了し、次回、同じ処理が開始されるまで待機する。他移動体情報集約手段130は、以上のような処理を実行することで、全ての他移動体C1〜CNの移動情報をカテゴリータイプ別及びレベル情報別に分類集計し、他移動体集約情報Iとして記憶する。
通信装置10のデータ管理手段102は、このようにして生成した他移動体集約情報Iを、自移動体C0の移動情報に付加した通知情報として、通信手段106を介して他移動体C1〜CNに送信する。以上、他移動体情報集約通知処理について説明した。
以下では、他移動体情報集約通知処理から呼び出されて実行される各処理について詳細を説明する。まず、図8を参照して、上述の相対変換処理の詳細を説明する。また、図9A、図9Bを参照して、相対変換処理の具体例を併せて説明する。
図8に示す相対変換処理は、他移動体情報集約通知処理(図7参照)のステップS130から呼び出され、相対情報取得手段132(図4B参照)により実行される。相対変換処理では、データ管理手段102から自移動体C0の位置と移動方向、及び他移動体C1〜CNの位置と移動方向が入力される。
まず、相対情報取得手段132は、相対距離を算出する(ステップS131)。具体的には、自移動体C0と他移動体C1〜CNとの位置関係から、その相対距離を算出する。
図9Aでは、自移動体C0及び他移動体C1が示され、自移動体C0及び他移動体C1の位置が緯度、経度で表現され、移動方向が北を基準とした方位角度の絶対座標系で表現されている。この例の場合、本ステップは、自移動体C0の位置P0(原点)と他移動体C1の位置P1との間の距離L01を求める処理となる。その後、ステップS132に進む。
次に、相対情報取得手段132は、相対方位角度を算出する(ステップS132)。具体的には、自移動体C0と他移動体C1〜CNとの位置関係から、その相対方位角度を算出する処理である。
ここで、図9Bは、他移動体C1の位置と移動方向について、自移動体C0を基準とした相対座標系で表現されている。この場合、本ステップは、自移動体C0の移動方向V0_θを方位角度0度としたとき、自移動体C0から見える他移動体C1の方位角度P01_θを求める処理となる。その後、ステップS133に進む。
次に、相対情報取得手段132は、相対移動方向を算出する(ステップS132)。図9Bの例では、自移動体C0の移動方向V0_θを基準として、他移動体C1の移動方向V01_θを求める処理となる。
以上のステップS131〜S133を実行することにより、自移動体C0から見た他移動体C1の距離R01(=距離L01)、方位角度P01_θ、移動方向V01_θの相対情報が得られる。その後、相対変換処理を終了する。なお、これらの相対情報は、相対情報レベル変換処理(図7:ステップS140)と、カテゴリー分類処理(図7:ステップS150)に入力される。
このように、相対変換処理は、通信装置10の通信手段106を介して受信し、データ管理手段102に記憶された他移動体C1〜CNの移動情報を、通信装置10の移動情報取得手段104により取得した自移動体C0の移動情報を基準とした相対情報に変換する。
この相対変換処理により、自移動体C0の位置を原点、自移動体C0の移動方向の方位角度を0度としたときの他移動体C1〜CNとの距離と、自移動体C0から見た他移動体C1〜CNの方位角度と、他移動体C0の移動方向の方位角度とが計算される。従って、他移動体C1〜CNの移動情報は、自移動体C0の位置を原点、自移動体C0の移動方向の方位角度を0度としたときの相対座標系で扱うことができる。
なお、これらの相対情報変換の具体的な計算式については、線形代数の理論として一般的に周知の技術内容であるので、詳細な説明は省略する。
次に、図10を参照して、上述の相対情報レベル変換処理の詳細を説明する。
相対情報レベル変換処理は、他移動体情報集約通知処理(図7参照)のステップS140から呼び出され、相対情報レベル変換手段134(図4B参照)により実行される。相対情報レベル変換処理では、相対変換処理(図8参照)から入力される相対情報(自移動体C0から見た他移動体C1〜CNの情報)を、予め設定された数値範囲とレベルの関連を示す相対情報レベル変換表を参照して、数値範囲に応じて段階的に変化するレベル情報に変換する。
まず、相対情報レベル変換手段134は、相対情報レベル変換表を取得する(ステップS141)。具体的には、相対情報レベル変換手段134がデータ管理手段102に記憶されている相対情報レベル変換表F1を取得する。相対情報レベル変換表F1は、相対情報の数値範囲とレベル値の関連を示す表である。その後、ステップS142に進む。
次に、相対情報レベル変換手段134は、相対情報レベル変換処理を行う(ステップS142)。具体的には、相対情報レベル変換表F1を基づいて、入力された相対情報が相対情報レベル変換表F1のどの数値範囲に属するのかを判定する。これにより、相対情報は連続する値から段階的に変化する整数値(離散値)に変換される。その後、相対情報レベル変換処理を終了する。なお、ステップS141、S142の処理によって得られたレベル情報は、カテゴリーレベル集約処理(図7:ステップS160)に入力される。
ここで、図11を参照して、相対情報レベル変換表からレベル情報を求める処理の一例について説明する。
図11は、相対距離をレベル情報(レベル値)に変換するための変換基準を示している。相対情報レベル変換表F1によれば、例えば、相対距離が80mに位置する他移動体の場合、レベル値「3」に対応する。
位置情報を例にレベル変換の情報集約効果について説明すると、自移動体の位置情報と他移動体の位置情報とから、自移動体を基準とした相対的な距離情報である「相対距離」が生成される。さらに、「相対距離」の情報は、相対情報レベル変換表F1を参照して、距離情報に対応した「レベル値(1,2,・・・)」に変換される。このようにレベル変換することにより、他移動体の移動情報は、連続的な相対情報から、段階的に変化する整数値(離散値)に集約される。
次に、図12を参照して、カテゴリー分類処理の詳細を説明する。また、図13A〜図13Cを参照して、カテゴリー分類処理の具体例を併せて説明する。
カテゴリー分類処理は、他移動体情報集約通知処理(図7参照)のステップS150から呼び出され、カテゴリー分類手段136(図4B参照)により実行される。カテゴリー分類処理では、他移動体を、自移動体から見た他移動体の相対的な方位角度と相対的な移動方向との組み合わせによって特定されるカテゴリータイプに分類する。
まず、カテゴリー分類手段136は、方位角度分類表を取得する(ステップS151)。具体的には、カテゴリー分類手段136がデータ管理手段102に記憶されている方位角度分類表F2を取得する。方位角度分類表F2は、自移動体から見た他移動体の方位角度の分類基準を定義している。その後、ステップS152に進む。
次に、カテゴリー分類手段136は、方位角度分類処理を行う(ステップS151)。ここでは、相対変換処理(図8参照)から得られた情報のうち、自移動体の位置に対する他移動体の位置の方位角度情報が入力される。
そして、方位角度分類表F2を基づいて、入力された他移動体の方位角度が方位角度分類表F2のどの方位角度タイプに属するのかを判定する。これにより、他移動体の方位角度の値は連続する方位角の値から方位角度タイプに変換される。得られた方位角度タイプは後述するカテゴリータイプ分類処理に入力される。その後、ステップS153に進む。
ここで、図13Aを参照して、方位角度分類表F2から方位角度タイプを求める処理の一例について説明する。まず、全周360度をn等分した角度区分(1〜n)を設定し、自移動体C0から見た他移動体C1の方位角度がどの範囲内に属しているかを判定する。
図13Aの例では、自移動体C0の移動方向に対する他移動体C1の方位角度(P01_θ)は、角度区分1の範囲内にあると判定される。次に、方位角度分類表F2を参照して角度区分の条件範囲を調べると、角度区分1は条件(n<=2,10<n)を満たすので、方位角度タイプは「1」と判定される。
なお、図13Aの例では、全周360度を12等分した角度区分(1〜12)を設定し、「前方」、「後方」、「右方向」、「左方向」の4つの「方位」を定義しているが、飽くまで一例に過ぎない。
次に、カテゴリー分類手段136は、移動方向分類表を取得する(ステップS153)。具体的には、カテゴリー分類手段136がデータ管理手段102から移動方向分類表F3を取得する。移動方向分類表F3は、自移動体から見た他移動体の移動方向の分類基準を定義している。その後、ステップS154に進む。
次に、カテゴリー分類手段136は、移動方向分類処理を行う(ステップS154)。ここでは、相対変換処理(図8参照)から得られた情報のうち、自移動体の移動方向に対する他移動体の移動方向情報が入力される。
そして、移動方向分類表F3を基づいて、入力された他移動体の移動方向が移動方向分類表F3のどの移動方向タイプに属するのかを判定する。これにより、他移動体の移動方向の値は連続する方位角の値から移動方向タイプに変換される。得られた移動方向タイプは、後述するカテゴリータイプ分類処理に入力される。その後、ステップS155に進む。
ここで、図13Bを参照して、移動方向分類表F3から移動方向タイプを求める処理の一例について説明する。まず、全周360度をn等分した角度区分(1〜n)を設定し、自移動体C0から見た他移動体C1の移動方向がどの範囲内に属しているかを判定する。
図13Bの例では、他移動体C1の移動方向に対する自移動体C0の移動方向(V01_θ)は、角度区分1の範囲内にあると判定される。次に、移動方向分類表F3を参照して角度区分の条件範囲を調べると、角度区分6は条件(n<=8,4<n)を満たすので、移動方向タイプは「2」と判定される。
なお、図13Bの例では、全周360度を12等分した角度区分(1〜12)を設定し、「対向」、「追従」、「左←右」、「左→右」の4つの「移動方向」の条件を定義しているが、飽くまで一例に過ぎない。また、方位角度分類処理(ステップS151,S152)と移動方向分類処理(ステップS153,S154)とは、順番が逆であってもよいし、同時並行で処理してもよい。
次に、カテゴリー分類手段136は、カテゴリータイプ分類表を取得する(ステップS155)。具体的には、データ管理手段102からカテゴリータイプ分類表F4を取得する。カテゴリータイプ分類表F4は、方位角度タイプと移動方向タイプとの組み合わせによって特定されるカテゴリータイプを定義している。その後、ステップS155に進む。
次に、カテゴリー分類手段136は、カテゴリータイプ分類処理を行う(ステップS156)。ここでは、他移動体の情報として、方位角度分類処理(ステップS152)から方位角度タイプ、移動方向分類処理(ステップS154)から移動方向タイプが入力される。
そして、カテゴリータイプ分類表F4を基づいて、入力された方位角度タイプと移動方向タイプとの組み合わせから、他移動体がカテゴリータイプ分類表F4のどのカテゴリータイプに属するのかを判定する。その後、カテゴリー分類処理を終了する。なお、判定されたカテゴリータイプは、カテゴリーレベル集約処理(図7:ステップS160)に入力される。
ここで、図13Cを参照して、カテゴリータイプ分類表F4について説明する。図示するように、カテゴリータイプ分類表F4は、前述した方位角度タイプを列とし、移動方向タイプを行とした表である。これまでの方位角度分類処理(ステップS152)、移動方向分類処理(ステップS154)を通して、他移動体の方位角度タイプと移動方向タイプが得られた場合、カテゴリータイプ分類処理(ステップS156)にてそれらの組み合わせがどの方位方向カテゴリーに該当するかが判定される。以下では、図示するそれぞれのカテゴリータイプについて説明する。
カテゴリー1は、図13Cのカテゴリータイプ分類表では、「Cat.1」と表記されたセルを指す。自移動体から見た他移動体の方位角度が「前方」の方位角度タイプに分類され、かつ自移動体の移動方向に対する他移動体の移動方向が「対向」の移動方向タイプに分類されたものがカテゴリー1に分類される。
以下、同様にして方位角度タイプと移動方向タイプと方位方向カテゴリー分類表の組み合わせから、カテゴリー2〜6が特定される。なお、以上6つのカテゴリーに当てはまらない方位角度タイプと移動タイプの組み合わせも考えられるが、この場合、「カテゴリーなし」に分類する。以上の処理によって得られた他移動体のカテゴリータイプ情報は、次ステップのカテゴリーレベル集約処理S160(図7参照)に入力される。
次に、図14を参照して、カテゴリーレベル集約処理の詳細を説明する。
カテゴリーレベル集約処理は、他移動体情報集約通知処理(図7参照)のステップS160から呼び出され、カテゴリーレベル集約手段138(図4B参照)により実行される。カテゴリーレベル集約処理には、相対情報レベル変換処理(ステップS140)から他移動体のレベル情報が入力され、カテゴリー分類処理(ステップS150)からカテゴリータイプが入力される。
まず、カテゴリーレベル集約手段138は、他移動体集約情報を取得する(ステップS161)。具体的には、カテゴリーレベル集約手段138がデータ管理手段102から他移動体集約情報Iを取得する。他移動体集約情報Iは、データ管理手段102によって管理され、カテゴリーレベル集約処理によって情報が更新される。その後、ステップS162に進む。
次に、カテゴリーレベル集約手段138は、他移動体集約情報更新処理を行う(ステップS162)。これは、入力されたレベル情報とカテゴリータイプとに基づいて、そのレベル情報とカテゴリータイプとが一致する他移動体をカウントアップし、最終的にその有無を確認する処理である。その後、カテゴリーレベル集約処理を終了する。
次に、図15、図16を参照して、これまで説明してきた本発明の移動体通信(他移動体集約情報通知)の具体例について説明する。
図15に示すように、自移動体C0の周囲には他移動体C1〜C4の4台が存在し、これらは全て自移動体C0の通信可能範囲AC0内に存在している。ここで、自移動体C0を基準としたとき、他移動体C1は前方に位置する対向車であり、相対位置は「レベル3(L3)」(60〜89m)である。
同様に、他移動体C2〜C4は自移動体C0の後方に位置する追従走行車であり、他移動体C2の相対位置は「レベル1(L1)」(0〜29m)、他移動体C3,C4の相対位置は「レベル3(L3)」である。以下では、自移動体C0が他移動体集約情報Iを生成して、前方に位置する他移動体C1に他移動体集約情報Iを通知する処理について説明する。
自移動体C0の移動情報は、通信装置10の移動情報取得手段104によって取得可能である(図4B参照)。また、自移動体C0は、通信装置10の通信手段106を介して他移動体C2〜C4の移動情報を受信し、データ管理手段102で管理可能である。
ここで、図16の他移動体集約情報Iについて説明すると、データ管理手段102の移動情報テーブルTには、自移動体C0の移動情報と他移動体C1〜C4の移動情報とが記憶されている。また、他移動体集約情報Iには、カテゴリータイプ(Cat.1〜Cat.6)毎に、レベル情報の値(レベル1〜4)を持つ他移動体の数が記憶されている。
この他移動体C1〜C4の移動情報に対して、これまで説明してきた他移動体情報集約手段130による各処理を実行する。
まず、他移動体C1に対して、相対情報レベル変換処理(図7:ステップS140)までを実行することで、他移動体C1のレベル情報が「レベル3(L3)」と判定される。その後、他移動体C1に対して、カテゴリー分類処理(図7:ステップS150)までを実行することで、他移動体C1のカテゴリータイプが「カテゴリー1(Cat.1)」と判定される。
次に、他移動体C1に対して、カテゴリーレベル集約処理(図7:ステップS160)を実行する。すなわち、「カテゴリー1(Cat.1)」に属し、「レベル3(L3)」のレベル情報を持つ移動体の有無を確認する。他移動体集約情報Iでは、移動体が存在していない場合には「0」を入力し、移動体が存在していた場合には、数を問わず「1」を入力する。
同様に、他移動体C2〜C4に対してカテゴリーレベル集約処理までの各処理を実行すると、他移動体C2は「レベル1(L1)」、カテゴリータイプは「カテゴリー3(Cat.3)」と判定される。また、他移動体C3,C4は「レベル3(L3)」、カテゴリータイプは「カテゴリー3(Cat.3)」と判定され、カテゴリータイプとレベルに該当する移動体の有無を確認する。
なお、図15中の他移動体集約情報Iは、後方追従する移動体であるカテゴリー3(Cat.3)について、レベル情報が一致する移動体の有無の結果を示している(受信側のカテゴリー1は省略)。このように、自移動体C0の周囲に存在する他移動体C1〜C4の集約情報が生成される。
データ管理手段102は、生成された他移動体集約情報Iを自移動体C0の移動情報に付加した通知情報として、通信手段106により他移動体C1に送信する。通信フレームを送信する相手の移動体は、転送要求のあった移動体に対して応答してもよいし、ブロードキャストで周辺の移動体に一斉同報で通知してもよい。
次に、図17、図18を参照して、他移動体集約情報変換合成手段について説明する。
図17は、移動体C1の位置と移動方向を基準として、移動体C0を見た図である。以下、移動体C1が移動体C0から他移動体集約情報Iを受信したときの処理について説明する。
また、図18は、移動体C1が、移動体C0の移動情報に他移動体集約情報Iを付加した通知情報を移動体C0から受信し、データ管理手段102の移動情報テーブルTに記憶したときのデータを示している。
移動体C0の移動情報は、移動体C1の他移動体情報集約処理から呼び出される相対変換処理(図7:ステップS130)により、移動体C1の位置P1を原点として、移動体C1の移動方向の方位角度を0度とした座標系で扱う相対情報に変換される。
この相対変換処理より、位置P1を原点、移動体C1の移動方向の方位角度を0度としたときの移動体C0との相対距離、移動体C1から見た移動体C0の相対方位角度、及び移動体C0の移動方向の相対移動方向が算出される。
ところで、移動体C0の移動方向タイプが対向走行である場合、移動体C0の他移動体集約情報Iのカテゴリータイプを移動体C1から見たカテゴリータイプに変換する処理が必要となる。移動体C0から見て追従走行する他移動体は、移動体C1から見たとき対向走行となる。同様に、移動体C0から見て対向走行する移動体は、移動体C1から見たとき追従走行となる。
次に、他移動体集約情報変換合成手段108(図4B参照)で行われるカテゴリータイプ変換処理の具体例について説明する。移動体C1から見て対向走行する移動体C0の、他移動体集約情報Iの対向走行カテゴリータイプであるカテゴリー1とカテゴリー2は、追従走行カテゴリータイプのカテゴリー3とカテゴリー4に変換される。
同様に、追従走行カテゴリータイプであるカテゴリー3とカテゴリー4は、対向走行カテゴリータイプのカテゴリー1とカテゴリー2に変換される。また、左右から接近するカテゴリータイプであるカテゴリー5とカテゴリー6は、左右が反転して、それぞれカテゴリー6とカテゴリー5に変換される。
相対変換処理により、移動体C0の位置P0は、移動体C1の位置P1を原点としたとき、移動体C1と移動体C0の距離R10、移動体C1から移動体C0を見た方位角度V10_θを用いて、極座標で表される。そして、位置P0を基準に、位置P0の他移動体集約情報Iのレベル情報をオフセットすることで、各カテゴリーの各レベル別に他移動体の存在を認識することが可能となる。
以上の処理により、移動体C1は、移動体C0の位置P0を基準にして、さらに後方のレベル1(L1)の位置に移動体が1台、レベル3(L3)の位置に移動体が2台存在することを認識することができる。
[第2実施形態]
以上では、他移動体集約情報Iを、直接通信可能な範囲に存在する移動体間の通信装置で説明してきたが、以下では、他移動体集約情報Iを直接通信が不可能な位置に存在する移動体間で、中継転送する移動体を経由して通知するサービス制御手段について説明する。
ここで、図19を参照して、本発明の第2実施形態に係るサービス制御手段110が実行するコンテンツ転送処理のフローチャートを説明する。また、図20を参照して、本処理の具体例を併せて説明する。
図19において、インタレスト要求を行う移動体は、インタレスト登録処理を行う(ステップS201)。これは、例えば、車両のAIシステムが、車両や走路の状態、周囲の状況等から必要な情報であるインタレスト(図5参照)をサービス制御手段110に登録(自動登録)する処理である。なお、インタレストの例としては、右折時における前方死角エリアからの車両接近情報、左折時における後方からのバイク接近情報等が挙げられる。その後、ステップS202に進む。
次に、インタレスト要求を行う移動体のサービス制御手段110は、インタレスト転送処理を行う(ステップS202)。図20の例では、移動体C1(本発明の「第1の移動体」)のサービス制御手段110は、インタレストに基づいて、データ管理手段102が管理する移動体の中からインタレストの条件を満たす移動体である移動体C0(本発明の「第2の移動体」)を選択する。そして、移動体C0にインタレストを転送する(インタレスト転送処理1)。その後、ステップS203に進む。
次に、インタレストを受信した移動体(中継移動体)のサービス制御手段110は、インタレストカテゴリー変換処理を行う(ステップS203)。図20の例では、インタレストを送信した移動体C1の走行タイプが移動体C0に対して対向走行であるため、インタレストの要求カテゴリータイプを移動体C0を基準としたカテゴリータイプに変換する。具体的には、インタレスト「Cat1/レベル末尾(最遠)/他移動体集約情報」は、移動体C0を基準としたインタレスト「Cat3/レベル末尾(最遠)/他移動体集約情報」に変換される。その後、ステップS204に進む。
次に、インタレストを受信した移動体のサービス制御手段110は、コンテンツストア確認処理を行う(ステップS204)。これは、インタレストの条件を満たす移動体の存在を確認する処理である。図20の例では、インタレスト「Cat3/レベル末尾(最遠)/他移動体集約情報」の条件を満たす移動体として、移動体C4が存在する。その後、ステップS205に進む。
次に、インタレストを受信した移動体のサービス制御手段110は、インタレストの条件を満たすコンテンツが存在するか否かを判定する(ステップS205)。具体的には、データ管理手段102のコンテンツ保存領域CS(図18参照)にアクセスし、移動体C4が生成した他移動体集約情報Iが存在するかを確認する。インタレストの条件を満たす移動体が存在する場合ステップS206に進み、存在しない場合ステップS207に進む。
インタレストの条件を満たすコンテンツが存在する場合(ステップS205で「YES」)、インタレストを受信した移動体のサービス制御手段110は、要求コンテンツ転送処理を行う(ステップS206)。図20の例では、移動体C0が、インタレストを要求した移動体C1にコンテンツを転送する(要求コンテンツ転送処理1)。そして、移動体C1の通信手段106が要求したインタストを受信して、コンテンツ転送処理が終了する。
一方、インタレストの条件を満たすコンテンツが存在しない場合(ステップS205で「NO」)、インタレスト転送処理を行う(ステップS207)。図20の例では、移動体C4にインタレストを転送し(インタレスト転送処理2)、コンテンツの要求を行う。その後、ステップS208に進む。
次に、インタレストを受信した移動体は、インタレストカテゴリー変換処理を行う(ステップS208)。図20の例では、インタレストの要求カテゴリータイプを、インタレストを受信した移動体C4を基準としたカテゴリータイプに変換する。その後、移動体C4が上述したコンテンツストア確認処理(ステップS209)、要求コンテンツ転送処理(ステップS210)を行う。これで、移動体C4のコンテンツ転送処理(要求コンテンツ転送処理2)は終了となる。
ステップS207の後、インタレスト転送処理を行った移動体は、要求コンテンツが転送されたか否かを定期的に確認する(ステップS211)。図20の例では、移動体C0は、移動体C4から要求コンテンツが転送されてくるまで受信待ち状態となり(ペンディングインタレスト処理)、要求コンテンツを受信する(ステップS211で「YES」)とステップS212に進む。
最後に、インタレスト転送処理を行った移動体は、要求コンテンツ転送処理を行う(ステップS212)。図20の例では、移動体C0が移動体C1に要求コンテンツを転送する(要求コンテンツ転送処理1)。なお、移動体C4の他移動体集約情報Iには、移動体C4のさらに後方に位置する移動体C5の情報が含まれる。
移動体C0のサービス制御手段110は、通信フレームにおいて、インタレストにカテゴリーとレベルとコンテンツIDをセットし(図5参照)、通信手段106が通信フレームを通信可能な移動体に向けて送信することにより、インタレストを転送する。
このように、移動体C0が他移動体集約情報Iを含む通知情報を中継転送することにより、移動体C1は、さらに広範囲にわたり、直接通信が不可能な移動体も含めてその存在を認識することができる。
これまで説明してきたサービス制御手段110の基本的な動作は、「どの移動体から」、「どのコンテンツ(情報)が欲しいか」という移動体とコンテンツを特定する条件(インタレスト)を移動体ネットワークに転送するものである。そして、要求されたコンテンツを保有する移動体ノードが、要求をした移動体ノードにコンテンツを転送するコンテンツオリエンテッドのネットワーク通信モデルである。このようなコンテンツオリエンテッドネットワークの例としては、CCN(Content Centric Network)やICN(Information Centric Network)が知られている。
データ管理手段102で管理されている移動体は、カテゴリー情報とレベル情報で分類されている。情報を要求する移動体を「カテゴリー/レベル」で指定することにより、コンテンツを保有する移動体ノードに対して、効率よくインタレストをルーティング可能である。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態をとりうる。移動体が車両であれば、通信装置は車両に搭載された装置となるが、移動体が人であれば、通信装置はその人が携帯する携帯電話やスマートフォン等の携帯端末となる。
また、通信装置は、交差点や路肩に停止した車両に搭載された装置であってもよい。さらに、信号機や標識の付近に通信装置を設置して、固定局として機能させてもよい。
上記課題を解決するため、本発明は、自己の移動体である自移動体及び他人の移動体である他移動体のそれぞれに搭載され、前記自移動体と前記他移動体との間で相互に情報通信が可能な通信装置であって、前記自移動体について、少なくとも位置、移動方向及び速度を含む移動情報を取得する移動情報取得手段と、前記移動情報取得手段により取得した前記移動情報を含む通信フレームを、前記通信装置間で相互に送受信する通信手段と、前記通信手段により受信した前記他移動体の前記移動情報を記憶し、管理するデータ管理手段と、前記データ管理手段で管理する前記他移動体の前記移動情報を集約して他移動体集約情報を生成する他移動体情報集約手段と、を備え、前記他移動体情報集約手段は、前記通信手段により受信した前記他移動体の前記移動情報を、前記自移動体の位置を原点、前記自移動体の移動方向の方位角度を0度とした座標系において、前記自移動体と前記他移動体の相対距離と、前記自移動体から見た前記他移動体の相対方位角度と、前記自移動体から見た前記他移動体の相対移動方向とに基づいた相対情報に変換する相対変換処理と、前記相対情報を予め設定された数値範囲とレベルとの関連を示す変換表を参照して、前記数値範囲に応じて段階的に変化するレベル情報に変換する相対情報レベル変換処理と、前記座標系において、前記自移動体から見た前記他移動体の相対方位角度と、前記自移動体から見た前記他移動体の相対移動方向との組み合わせにより特定されるカテゴリータイプに前記他移動体を分類するカテゴリー分類処理と、前記カテゴリータイプ、前記レベル情報、及び前記カテゴリータイプと前記レベル情報とが一致する前記他移動体の数を集計した前記他移動体の存在情報に基づいて、前記他移動体集約情報を作成するカテゴリーレベル集約処理と、を実行し、前記通信手段は、前記自移動体の前記移動情報に前記他移動体集約情報を付加した通知情報を、前記他移動体に向けて送信する処理を実行することを特徴とする。