JP2021004928A - ワイヤグリッド型偏光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高偏光度で必要な光線透過率を維持して、表面側と裏面側のうち特に裏面側反射率を抑制できるワイヤグリッド型偏光素子を提供する。【解決手段】 金属反射体の平均幅(a)が200nm以下で、シート表面側から裏面方向先端までの該金属反射体の平均厚み(b)と前記平均幅(a)の比(b/a)が4〜25の範囲内にあり、かつ金属反射体(B)の厚み方向先端部近傍における、一次元格子状配列方向と平行及び垂直の少なくともいずれか1つの断面形状が先端にいくほど直線状ないし滑らかな曲線状で徐々に細くなっていて、この先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c)と前記平均幅(a)の比(c/a)が1.2以上である、ワイヤグリッド型偏光素子。【選択図】図2

Description

本発明は、各種ディスプレイ、カメラ、光学計測機器などの光学製品のみならず、偏光サングラス、スマートウィンドウ等に応用が期待できる、偏光度に優れ、必要な光線透過率が維持でき、反射率が低いワイヤグリッド型偏光素子に関する。
光学分野における主な偏光素子として、複屈折結晶型、二色性色素型、ワイヤグリッド型が知られている。複屈折結晶型偏光素子は、複屈折結晶の光学軸に角度を持って入射することにより出射方向の異なるデバイスであり光通信に用いられているが、結晶を偏光素子として使用するため用途が限定される。二色性色素型偏光素子は、吸収型の偏光素子で一軸に延伸されたポリビニルアルコールフィルムに二色性色素を吸着配向させたものが広く使用されている。二色性色素としてはヨウ素又は二色性有機染料の使用が一般的であり、ヨウ素系は偏光性能に優れているが加熱・加湿に弱いために耐久性の点で相対的に劣る。一方、染料系は、ヨウ素系偏光フィルムと比較して偏光性能には劣るものの耐久性に優れるので、耐久性能が要求される分野に使用されている。尚、吸収型の偏光板は、偏光性能に優れているが、原理的に自然光に対する光線透過率は50%を超えることができない。
ワイヤグリッド偏光素子は、反射型の偏光板で、金属などで構成された線状物が特定の周期でストライプ状に配列されているものであり、その周期が入射する電磁波(光)の波長(例えば、可視光域は400nmから800nm)に比べて十分小さければ、線状物に対して平行な電場成分の光は反射し、線状物に対して垂直な電場成分の光は透過することを利用している。そのため、二色性色素型、複屈折結晶型の偏光素子に比べて薄くできるため利用用途が多く、また、二色性色素型と比較して一般に透過軸の透過率が高くできるので高い消光比が得られ、更には高い耐熱性、耐久性が得られることから、投射光学系の偏光素子として広く使用されてきた。
可視光域におけるワイヤグリッド偏光素子は、金属線のピッチを400nmよりも十分小さくする必要があるが、透明基板上に蒸着やスパッタなどで成膜した金属膜に対して、電子線リソグラフィ、集束イオンビームエッチングなどの微細加工を利用することで微細な金属ストライプパターンを形成できることが知られている。より簡便な方法として、インプリント法などで基板表面に形成した凹凸構造上に蒸着やスパッタなどで金属膜を成膜することで金属細線のストライプ構造を形成する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2等参照)。
ワイヤグリッド偏光素子は二色性色素型や複屈折結晶型と比較して反射率が高い。そのため、高反射率が好ましくない用途に向けて、ワイヤグリッド偏光素子の反射率を低減する方法が提案されている(非特許文献1、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7等参照)。例えば、非特許文献1では、基板上のアルミニウムワイヤグリッドパターンに対して誘電体層とFeSi2の光吸収体層を成膜する方法が提案されている。これにより、吸収層の厚さを制御することで反射率を低減できることが記載されている。また特許文献5には、ニッケルクロム合金など比較的反射率の低い金属で成膜する光吸収型ワイヤグリッド偏光素子が開示され、この吸収型偏光素子と従来の反射型ワイヤグリッド偏光素子を積層した偏光素子も開示されている。これらの偏光素子は、蒸着法やスパッタ法による金属の真空成膜技術を利用して作られている。
特許文献8には、このような真空成膜法を用いないワイヤグリッド偏光素子の製造方法として、金属微粒子を含むインクを利用する方法が開示されている。この場合、支持フィルム上の硬化性樹脂表面に形成された特定のピッチを有する格子の凹部に金属インクを充填することで、導電性ナノ材料又はその凝集体によるワイヤグリッドパターンが得られている。
特許第5459210号 特開2009−204894号公報 特許第5291424号 特許第5291425号 特許第5368011号 特許第5277455号 特開2012−98703号公報 特許第5096735号
Low-reflective wire-grid polarizers with an absorptive layer formed by glancing angle deposition 映像情報メディア誌 Vol.65, No. 10, pp. 1440−1445 (2011)
しかしながら、上記特許文献等に開示された方法により形成された導電性ナノ材料又はその凝集体によるワイヤグリッド偏光素子では、波長400nmから800nmの範囲の可視光域において、ある波長における偏光度が最高値でも90%以下であり、特に波長450nmから570nmの範囲において60%を超える程度であるので可視光域の偏光素子として改良の余地があり、また、光線透過率及び反射率に関してはあまり開示されていない。
真空成膜技術による低反射ワイヤグリッド偏光素子においては、例えば非特許文献1に記載の偏光素子では、Glancing angle deposition 技術が用いられており、高精度な膜厚制御が必要であることから大面積化が容易ではなく、また製造工程が複雑になるため、このような低反射ワイヤグリッド偏光素子を安定的に製造することは容易ではない。特許文献4に記載の低反射率の金属によるワイヤグリッド偏光素子では、高反射率の金属によるワイヤグリッド偏光素子と比較して反射率は低減できるものの二色性色素型偏光素子の反射率よりも高い10%以上の反射率であり、また偏光度は90%に達しない程度である。また、特許文献5に記載の比較的反射率の低い金属を使用したワイヤグリッド偏光素子と高反射率の金属を使用したワイヤグリッド偏光素子を組み合わせた偏光素子では、偏光度は、従来の高反射率の金属によるワイヤグリッド偏光素子と遜色なく、反射率も17%程度まで低減できているものの、裏面側から入射した際の反射率は40%以上と高い。
上記のように、ワイヤグリッド偏光素子の特長である偏光度に優れ、必要な光線透過率を維持して、二色性色素型偏光素子のような裏面側反射率5%以下を実現することは依然として難しい。
近年、偏光度に優れ、必要な光線透過率を維持できて、裏面側の反射率が低い薄型偏光素子がスマートフォンやノートパソコンの液晶ディスプレイをはじめ、プロジェクター、計測用光学機器、偏光サングラス等で求められており、実現による波及効果が大きい。本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、高偏光度で必要な光線透過率を維持して、表面側と裏面側のうち特に裏面側の反射率を抑制することができるワイヤグリッド型偏光素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、透明なシート表面に一次元格子状に設けられた溝部内に金属反射体が埋め込まれたワイヤグリッド型偏光素子において、シート表面側から裏面方向の金属反射体の厚み、及び該厚みと幅の比(厚み/幅)を制御し、かつ厚み方向先端部近傍の形状を先端にいくほど徐々に細くなっていく特定形状とすることにより、優れた偏光度と必要な光線透過率を維持して、反射率のうち特に裏面側の反射率を低減化できるワイヤグリッド型偏光素子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の(1)〜(10)に記載する発明を要旨とする。
(1)透明なシート(A)の表面に同じ向きかつ同じ周期で一次元格子状に設けられた多数の溝部(C)に、金属反射体(B)が埋め込まれたワイヤグリッド型偏光素子であって、
金属反射体(B)の平均幅(a)が200nm以下で、
シート(A)表面側から裏面方向先端までの金属反射体(B)の平均厚み(b)と前記平均幅(a)の比(b/a)が4〜25の範囲内にあり、
かつ金属反射体(B)の厚み方向先端部近傍における、一次元格子状配列方向と平行及び垂直の少なくともいずれか1つの断面形状が先端にいくほど直線状ないし滑らかな曲線状で徐々に細くなっていて、この先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c)と前記平均幅(a)の比(c/a)が1.2以上である、ワイヤグリッド型偏光素子。
(2)前記金属反射体(B)の厚み方向先端部近傍における、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c)と前記平均幅(a)の比(c/a)が1.2〜8の範囲である、前記(1)に記載のワイヤグリッド型偏光素子。
(3)前前記金属反射体(B)の厚み方向先端部近傍における、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の形状が
一次元格子状配列方向と垂直の断面形状で、頂点が先端方向に位置する略逆二等辺三角形の形状(ワイヤグリッド型偏光素子(R1))、
一次元格子状配列方向かつシート(A)と垂直の断面形状において、連続したのこぎり歯状で、該歯の頂点が先端方向に位置する略逆二等辺三角形の形状(ワイヤグリッド型偏光素子(R2))、
又は、長辺が交差する頂点が先端方向に位置する略四角錐、もしくは該略四角錐の底面より頂点方向に向かって徐々に略円錐状に変化していく形状体が一次元格子状配列方向に連続している形状(ワイヤグリッド型偏光素子(R3))である、
前記(1)又は(2)に記載のワイヤグリッド型偏光素子。
(4)前記金属反射体(B)の一次元格子状配列の周期(d)と平均幅(a)の比(d/a)が1〜10である、前記(1)から(3)のいずれかに記載のワイヤグリッド型偏光素子。
(5)前記シート(A)が、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、及びポリサルフォン系樹脂から選択されるシートである、前記(1)から(4)のいずれかに記載のワイヤグリッド型偏光素子。
(6)前記金属反射体(B)がアルミニウム、ニッケル、クロム、白金、パラジウム、チタン、金、銀、銅、及びこれらの合金の内のいずれか1又は2以上の混合体である、前記(1)から(5)のいずれかに記載のワイヤグリッド型偏光素子。
(7)前記金属反射体(B)のそれぞれは、
単一の連続構造体として溝部(C)内に埋め込まれているか、
又は複数のブロック状構造物が高い密度に積層された状態で溝部(C)内に埋め込まれていて、各ブロック状構造物は互いに独立した状態で積層されているかもしくは各ブロック状構造物の外表面の一部が接合された状態で積層されている、
前記(1)から(6)のいずれかに記載のワイヤグリッド型偏光素子。
(8)前記金属反射体(B)の厚み方向先端部近傍における、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の構造は、
前記ワイヤグリッド型偏光素子(R1)の場合には一次元格子状配列方向でかつシート(A)表面と垂直の断面形状において先端部が規則的もしくは不規則的に連続した凹凸形状を形成する構造、
前記ワイヤグリッド型偏光素子(R2)の場合には一次元格子状配列方向かつシート(A)と垂直の断面形状においてのこぎり歯の長さとピッチが不規則的に連続した形状を形成する構造、又は、前記ワイヤグリッド型偏光素子(R3)の場合には先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端部までの長さが各略四角誰又は該略四角錐の底面より頂点方向に向かって徐々に略円錐状に変化していく形状体間で規則的もしくは不規則的に長短の差のある構造で、
かつ上記いずれの場合にも先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への長さが、前記平均長さ(b)の0.3倍以下の構造である、
前記(1)から(7)のいずれかに記載のワイヤグリッド型偏光素子。
(9)前記金属反射体(B)が金属微粒子の焼成体からなる金属反射体である、前記(1)から(8)のいずれかに記載のワイヤグリッド型偏光素子。
(10)透明なシート(A)の表面にナノインプリント法により同じ向きかつ同じ周期で一次元格子状に多数の溝部(C)を形成し、次いで該多数の溝部(C)に金属反射体(B)を埋め込むワイヤグリッド型偏光素子の製造方法であって、
前記ナノインプリント法により、シート(A)に溝部(C)を形成する際に使用する金型における、溝部(C)を形成する各凸部の構造が
平均幅(a’)が200nm以下で、
平均長さ(b’)が、平均幅(a’)との比(b’/a’)で4〜25の範囲内であり、
凸部の先端部近傍における、先端にいくほど直線状ないし滑らかな曲線状で徐々に細くなっていて、この先端にいくほど徐々に細くなっていく部分の先端方向への平均長さ(c’)と前記幅(a’)との比(c’/a’)が1.2以上である、
ことを特徴とするワイヤグリッド型偏光素子の製造方法。
本発明のワイヤグリッド型偏光素子は、偏光度に優れていて必要な光線透過率を維持でき、裏面側から入射する光線の反射率を顕著に低減化することが可能である。本発明のワイヤグリッド型偏光素子は、金属反射体(B)がシート(A)の溝部(C)内に埋め込まれているため、引っ掻き耐性があり、擦ったり拭いたりしても偏光機能に影響は出にくく、表面耐久性に優れる。また、金属反射体(B)がシート(A)の溝構造で覆われているために表面からの露出部分を少なくでき、その結果、金属反射体(B)の酸化が進行しにくく、耐熱性、耐湿性を有していて、屋外や高温高湿環境下でも性能を長く維持できる。
本発明のワイヤグリッド型偏光素子はフィルムインサート成形やキャスト成形などの成形工程にも適応できるため、低反射偏光機能を有する成形品も実現可能である。シート(A)に使用する熱可塑性樹脂の選択により、伸縮に強く、剛性もあり、曲げ性にも優れるワイヤグリッド型偏光素子を容易に得ることができる。
更に、本発明のワイヤグリッド型偏光素子の製造には金属微粒子を含有するインクを利用した印刷技術と焼成技術、めっき手段等を用いて製造することが可能であり、複雑で高価な装置を必要としないため、比較的低コストで生産することができる。
本発明のワイヤグリッド型偏光素子の1例を示す、説明用の正面概念図 図1に示す偏光素子を斜め上から見た説明用の概念図 本発明の偏光素子の他の例を、斜め上から見た説明用の断面を示す概念図 本発明の偏光素子の他の例を、斜め上から見た説明用の断面を示す概念図 (a)〜(e)は、ワイヤグリッド型偏光素子の製造工程例を模式的に示す断面図 実施例1で使用した金型のほぼ正面の斜め上から観察した走査型電子顕微鏡(SEM)写真 実施例1で使用した金型の斜め上から観察したSEM写真 実施例1で作製した偏光素子試験片の斜め上から観察したSEM写真 実施例4で使用した金型のほぼ正面の斜め上から観察したSEM写真 実施例6で使用した金型のほぼ正面の右側から観察したSEM写真 実施例8で使用した金型のほぼ正面の斜め上から観察したSEM写真 比較例2で使用した金型のほぼ正面の斜め上から観察したSEM写真
〔1〕ワイヤグリッド型偏光素子
本発明のワイヤグリッド型偏光素子を構成する各要素と構造について説明する。
尚、本発明のワイヤグリッド型偏光素子において、金属反射体(B)の形状は、いわゆる「ワイヤ状」ではないが、当該技術分野で金属反射体がワイヤ状ではない場合にも「ワイヤグリッド偏光素子」という用語が使用されているので、ワイヤグリッド型偏光素子という用語を使用する。
図1は、本発明のワイヤグリッド型偏光素子(R1)1を説明するために模式的に示した断面図であり、シート(A)11は表面側12と裏面側13を有していて、その表面側12に金属反射体(D)14が埋め込まれている。金属反射体(B)14には先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)15がある。図1における、平均幅(a)、平均厚み(b)、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)15の平均長さ(c)、及び周期(d)の表示は他の実施形態においても共通に使用する。
図2は、ワイヤグリッド型偏光素子(R1)2を模式的に示す、説明用の概念図であり、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)15の形状が一次元格子状配列方向と垂直の断面形状で、頂点が先端方向に位置する略逆二等辺三角形の形状である。図3は、ワイヤグリッド型偏光素子(R2)3を模式的に示す、説明用の断面図の例であり、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)17の形状は、一次元格子状配列方向かつシート(A)と垂直の断面形状において、連続したのこぎり歯状で、該歯の頂点が先端方向に位置する略逆二等辺三角形の形状である。
図4は、ワイヤグリッド型偏光素子(R3)を模式的に示す、説明用の断面図の例であり、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の形状は、長辺が交差する頂点が先端方向に位置する略四角錐が一次元格子状配列方向に連続している形状である。
図5は、ワイヤグリッド型偏光素子の製造工程の例を示す断面の模式面で、図5(a)はシート(A)11に溝部(C)を形成する際に使用する、凸部22を有する金型21を示し、図5(b)はナノインプリント法により、シート(A)11に金型21を転写した状態を示し、図5(c)は溝部(C)23が形成されたシート(A)11を示し、図5(d)はシート(A)の溝部(C)23内に金属微粒子を含むインク24が充填された状態を示し、図5(e)はシート(A)の溝部(C)23内の金属微粒子が焼成されて焼成体25になった状態を示す。
図6〜12は、本明細書の実施例で使用した金型等の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であるので、これらの写真については各実施例において説明する。
(1)シート(A)について
(1−1)シート(A)の表面形状
一般に厚みが250μm以下ではフィルム、それ以上の厚みではシートとして区別される場合があるが、本発明のシート(A)はシートとフィルムを区別することなく、双方使用可能であるので、以下本明細書においては、シートとフィルムを併せてシートと称する。
シート(A)の表面形状は、実用的な見地から平坦であることが好ましく、緩やかな曲率をもって湾曲している形状でも良い。このようなシート(A)は、ナノインプリント法等によりシート(A)表面に溝部(C)を形成し易くなり、コーティングなど後処理工程も行い易い。また金属反射体(B)の外表面がシート(A)の表面とほぼ面一の状態で、溝部(C)に埋め込まれていると、引っ掻き耐性があり、擦ったり拭いたりしても偏光機能に影響は出にくく、表面耐久性に優れ、更に、溝部(C)内の金属反射体(B)は酸化が進行しにくく、また耐熱性、耐湿性も向上するため屋外や高温高湿環境でも性能を長く維持できる。
(1−2)シート(A)の材料
本発明のワイヤグリッド型偏光素子の基材となるシート(A)は、可視光域や赤外域など対象とする波長の電磁波において透明性を有し、かつシート(A)の表面に後述するストライプ状の溝部を形成することが可能であれば、有機材料と無機材料のいずれも使用可能である。
本発明において、「透明なシート(A)」とは、使用目的において必要な透過率を維持できる程度の透明性を有するシートを意味し、透明又は半透明で、更に無色又は有色のシートであってもよい。尚、半透明シート、有色シートは公知の方法により容易に製造することが可能である。
使用可能な有機材料としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、及びポリサルフォン系樹脂の使用が好ましいが、これらに限定されない。
尚、シート(A)としてポリカーボネート等を使用すると、耐熱性、耐衝撃性等を向上することができるが、太陽光が入射する側に着色干渉縞の発生や透過側から見た場合の偏光度低下の問題があった。この問題を解消する手段として、押出成形などによってポリカーボネートシート等を得る際に、一方向に延伸してリタデーション値(シートの複屈折率と厚みとの積)をコントロールすることが好ましい。このリタデーション値は、特に限定はされないが、非常に低い値かもしくは、高い値が好ましく、高い値の場合には、基材となるシート(A)の延伸軸がワイヤグリッド型偏光の吸収軸に対して垂直にすることが好ましい。
使用可能な無機材料としては、ガラス、シリコン、石英、セラミック材料等が挙げられるが、これらに限定されない。上記材料の中でも、溝部(C)の形成などの加工性を考慮すると、有機材料の使用がより好ましい。また、シート(A)は、曲げ加工等の伸縮工程を考慮すると単層が好ましいが、複層であっても良い。
(1−3)シート(A)における溝部(C)の形状
シート(A)に形成される溝部(C)は、金属反射体(B)を埋め込むために形成される。
このような金属反射体(B)の形状は、溝部(C)の形状がほぼそのまま型となって形成されることになるので、溝部(C)の形状については、金属反射体(B)の形状の項で、溝部(C)形状の作製方法については、ワイヤグリッド型偏光素子の製造方法の項で説明する。
(2)金属反射体(B)について
(2−1)金属反射体(B)の構成材料
本発明で用いる金属反射体(B)の構成材料は、利用する光の波長域において光を反射する機能を有する金属材料であれば特に制限なく使用可能であり、その具体例としては、高反射金属材料であるアルミニウム、ニッケル、クロム、白金、パラジウム、チタン、金、銀、銅、及びこれらの合金の内のいずれか1又は2以上の混合体、また低反射金属材料であるモリブデン、タングステン、タンタル、ジルコニウム、鉄、ニオブ、ハフニウム、コバルト等、またこれらの合金等が挙げられる。これらの中でも、偏光性を考慮すると高反射金属材料の使用が好ましい。また、金属反射体(B)が金属微粒子の焼成手段、又はめっき手段を用いて形成される場合には、これらの加工手段を考慮して選択することが望ましい。
(2−2)金属反射体(B)の形状と構造
本発明のワイヤグリッド型偏光素子における金属反射体(B)の形状は、透明なシート(A)の表面に同じ向きかつ同じ周期で一次元格子状に設けられていて、平均幅(a)が200nm以下で、シート(A)表面側から裏面方向先端までの金属反射体(B)の平均厚み(b)と前記平均幅(a)の比(b/a)が4〜25の範囲内にあり、かつ金属反射体(B)の厚み方向先端部近傍における、一次元格子状配列方向と平行及び垂直の少なくともいずれか1つの断面形状が先端にいくほど直線状ないし滑らかな曲線状で徐々に細くなっていて、この先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c)と前記平均幅(a)の比(c/a)が1.2以上である。
利用する波長の光に対して偏光性能を発揮させるために、シート(A)の溝部(C)内の各金属反射体(B)は、透明なシート(A)の表面に同じ向きかつ同じ周期で一次元格子状(ストライプ状)に配置される必要がある。金属反射体(B)は以下に記載する形状と構造で、シート(A)の溝部(C)内に埋め込まれているため、引っ掻き耐性があり、擦ったり拭いたりしても偏光機能に影響は出にくく、表面耐久性に優れる。また、金属反射体(B)はシート(A)の溝構造で覆われているため、表面からの露出部分を少なくでき、その結果、金属反射体(B)の酸化が進行しにくく、屋外や高温高湿環境下でも偏光性能を長く維持できる。
(i)金属反射体(B)の平均幅(a)
本発明の各金属反射体(B)の平均幅(a)は、偏光度と光線透過率を考慮すると200nm以下であり、25〜100nmが好ましい。紫外域、近赤外域、赤外域、テラヘルツ域、マイクロ波域など可視光域ではない波長域の電磁波においても、溝幅を対象とする電磁波の波長の1/16〜1/4程度が好ましいことが知られている。
(ii)金属反射体(B)の一次元格子状配列の周期(c)
一次元格子状配列の周期(c)は、ワイヤグリッド型偏光素子によって偏光を意図する光の波長によって決めることができ、例えば、周期(c)を意図する光の波長の1/5以下ないし1/2以下程度にすることができる。一方、表面側からワイヤグリッド型偏光素子に入射してくる光の透過率を考慮すると、周期(d)は、平均幅(a)に対して大きいほど光線透過率が高くなるので、金属反射体(B)の一次元格子状配列の周期(d)と平均幅(a)の比(d/a)は1〜10であることが好ましく、更に、偏光度とのバランスを考慮すると、2〜5がより好ましい。
(iii)金属反射体(B)の平均厚み(b)
シート(A)表面側から裏面方向先端までの金属反射体(B)の平均厚み(b)と平均幅(a)の比(b/a)は4〜25である。該比(b/a)は4以上で偏光度が向上し、金型の加工と光線透過率等を考慮すると25以下であり、実用的な見地からは7〜20が好ましい。
本発明のワイヤグリッド型偏光素子において、表面側から入射する光の偏光度を向上するために、金属反射体(B)の平均厚み(b)を上記のように大きくすることが1つの特徴である。
(iv)先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c)
本発明のワイヤグリッド型偏光素子においては、金属反射体(B)の平均厚み(b)と平均幅(a)の比(b/a)を4〜25の範囲とすることにより、偏光度を向上させると共に、裏面側の反射率を低くするために、金属反射体(B)の厚み方向先端部近傍における、一次元格子状配列方向と平行及び垂直の少なくともいずれか1つの断面形状が先端にいくほど直線状ないし滑らかな曲線状で徐々に細くなっていて、この先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c)と前記平均幅(a)の比(c/a)を1.2以上とすることを更なる特徴とする。
先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c)と前記平均幅(a)の比(c/a)を1.2以上とすることにより、裏面側からの反射率を低減することが可能になる。尚、金型の加工性等を考慮すると前記比(c/a)は1.2〜8が好ましく、2〜5がより好ましい。
(v)先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の立体形状
金属反射体(B)の厚み方向先端部近傍における、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の形状(以下、「細くなっていく先端部形状」ということがある)は、一次元格子状配列方向と平行及び垂直の少なくともいずれか1つの断面形状が先端にいくほど直線状ないし滑らかな曲線状で徐々に細くなっていく形状である。
このような形状は、多角柱、多角錐又はこれらの組み合わせの立体形状から選択して形成できれば特に限定されものではないが、好ましい具体例を以下の(v-1)〜(v-3)に示す。
(v-1)ワイヤグリッド型偏光素子(R1)
図2の模式的に示す、説明用の概念図のように、ワイヤグリッド型偏光素子(R1)2における金属反射体(B)14の細くなっていく先端部形状15は、一次元格子状配列方向と垂直の断面形状の先端部近傍で、頂点が先端方向に位置する略逆二等辺三角形の形状である。
(v-2)ワイヤグリッド型偏光素子(R2)
図3の模式的に示す、説明用の断面図のように、ワイヤグリッド型偏光素子(R2)3における金属反射体(B)16の細くなっていく先端部形状17は、一次元格子状配列方向かつシート(A)と垂直の断面形状において、連続したのこぎり歯状で、該歯の頂点が先端方向に位置する略逆二等辺三角形の形状である。図3において、図4に示す形状と区別するために、A部分の拡大図として、A’として抜き出して、のこぎり歯状を立体的に示した。尚、のこぎり歯の部分は切妻屋根形状となるが、該切妻屋根形状を寄棟屋根形状に変形することもできる。
(v-3)ワイヤグリッド型偏光素子(R3)
図4の模式的に示す、説明用の断面図のように、ワイヤグリッド型偏光素子(R3)4における金属反射体(B)18の細くなっていく先端部形状19は、長辺が交差する頂点が先端方向に位置する略四角錐、もしくは該略四角錐の底面より頂点方向に向かって徐々に略円錐状に変化していく形状体が一次元格子状配列方向に連続している形状である。図4において、図3に示す形状と区別するために、B部分の拡大図として、B’として抜き出して、略四角錐を立体的に示した。
前記(v-1)〜(v-3)に示すいずれの形状においても、金属反射体(B)の上記細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c)と平均厚みとの比(c/a)は、1.2以上、好ましくは1.2〜8であるので、最先端部の見掛け角度は共通する範囲内になることから、裏面側からの入射光の反射率は共に低下することになる。
(vi)先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端部形状
前記金属反射体(B)の厚み方向先端部近傍における、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の構造は、
前記ワイヤグリッド型偏光素子(R1)の場合には一次元格子状配列方向でかつシート(A)表面と垂直の断面形状において先端部が規則的もしくは不規則的に連続した凹凸形状を形成する構造、
前記ワイヤグリッド型偏光素子(R2)の場合には一次元格子状配列方向かつシート(A)と垂直の断面形状においてのこぎり歯の長さとピッチが不規則的に連続した形状を形成する構造、
又は、前記ワイヤグリッド型偏光素子(R3)の場合には先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端部までの長さが各略四角誰又は該略四角錐の底面より頂点方向に向かって徐々に略円錐状に変化していく形状体間で規則的もしくは不規則的に長短の差のある構造で、
かつ上記いずれの場合にも先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への長さが、前記平均長さ(b)の0.3倍以下の構造とすることが好ましい。このように先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端部の長さに変化を持たせることにより、裏面側の反射率を更に低減することが可能になる。
(vii)金属反射体(B)の溝部(C)内での構造
吸収型のワイヤグリッド型偏光素子を製膜する方法として蒸着法やスパッタ法が知られているが、反射型のワイヤグリッド型偏光素子の製造方法として、透明シート(A)に設けられた格子状の溝部(C)内にメッキ手段や、金属微粒子を含むインクを焼成する手段を用いて金属反射体を形成することが可能であり、特に後述するように金属微粒子を含むインクを焼成する手段を用いて、金属反射体(B)を金属微粒子の焼成体からなる金属反射体とするのが好ましい。
前記金属反射体(B)は、溝部(C)内に、上記の平均幅(a)、平均厚み(b)、及び先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c)の形状で埋め込まれているが、更にそれぞれの溝部(C)内で、単一の連続構造体として溝部(C)内に埋め込まれていてもよく、また複数のブロック状構造物が高い密度に積層された状態で溝部(C)内に埋め込まれていて、更に各ブロック状構造物は互いに独立した状態で積層されているかもしくは各ブロック状構造物の外表面の一部が接合された状態で積層されていてもよい。
金属反射体(B)の形成がメッキ手段による場合には、上記単一の連続構造体を形成することができ、金属微粒子の焼成手段よる場合には、焼成条件の制御により上記複数のブロック状構造物が溝部(C)内で、各ブロック状構造物は互いに独立した状態で積層されているか又は各ブロック状構造物の外表面の一部が接合された状態で積層された状態を形成することができる。
〔2〕ワイヤグリッド型偏光素子の製造方法
本発明のワイヤグリッド型偏光素子の製造方法は、透明なシート(A)の表面にナノインプリント法により同じ向きかつ同じ周期で一次元格子状に多数の溝部(C)を形成し、次いで該多数の溝部(C)に金属反射体(B)を埋め込むワイヤグリッド型偏光素子の製造方法であって、
前記ナノインプリント法により、シート(A)に溝部(C)を形成する際に使用する金型における、溝部(C)を形成する各凸部の構造が、平均幅(a’)が200nm以下で、
平均長さ(b’)が、平均幅(a’)との比(b’/a’)で4〜25の範囲内であり、
凸部の先端部近傍における、先端にいくほど直線状ないし滑らかな曲線状で徐々に細くなっていて、この先端にいくほど徐々に細くなっていく部分の先端方向への平均長さ(c’)と平均幅(a’)との比(c’/a’)が1.2以上である、ことを特徴とする。
ワイヤグリッド型偏光素子は、透明なシート(A)表面に同じ向きかつ同じ周期で一次元格子状に設けられた多数の溝部(C)を形成した後に、該溝部(C)内に金属反射体(B)を埋め込むことにより製造することができる。
上記溝部(C)の形成には、一般にナノインプリント法、射出成形、電子線リソグラフィ、集束イオンビーム、干渉露光などの露光技術、ナノ粒子等を用いた自己組織化技術等を利用することが知られている。
本発明のワイヤグリッド型偏光素子の製造方法は、ナノインプリント法を用いて、シート(A)表面に微細な溝部(C)を形成した後に、該溝部(C)に金属反射体(B)を埋め込む方法であり、簡便で実用的な方法である。以下、本発明のワイヤグリッド型偏光素子の製造方法について、溝部(C)の形成工程(第1工程)と、該溝部(C)への金属反射体(B)の埋め込みの工程(第2工程)に分けて説明する。
(1)第1工程(シート(A)表面に溝部(C)の形成工程)
第1工程は、透明なシート(A)の表面にナノインプリント法により同じ向きかつ同じ周期で一次元格子状に多数の溝部(C)を形成する工程である。シート(A)に溝部(C)を形成する際に使用する金型における、溝部(C)を形成する各凸部の構造は、平均幅(a’)が200nm以下で、平均長さ(b’)が、平均幅(a’)との比(b’/a’)で4〜25の範囲内であり、凸部の先端部近傍における、先端にいくほど直線状ないし滑らかな曲線状で徐々に細くなっていて、この先端にいくほど徐々に細くなっていく部分の先端方向への平均長さ(c’)と前記幅(a’)との比(c’/a’)が1.2以上である。
図5(a)は金型の断面模式図であり、該金型を用いて図5(b)に示す通り転写が行われてシート(A)に溝部(C)が形成される。次に、図5(d)に示す通り、溝部(C)に金属微粒子を含むインクが充填され、その後焼成工程により溝部(C)内の金属微粒子は焼成されて、図5(e)に示す通り溝部(C)内に金属反射体(B)が形成される。
従って、上記金型の凸部の構造は、ワイヤグリッド型偏光素子の金属反射体(B)と同様の形状になるので、金型構造における、平均幅(a’)、平均長さ(b’)、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分の先端方向への平均長さ(c’)は、それぞれワイヤグリッド型偏光素子の金属反射体(B)における、平均幅(a)、平均厚み(b)、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分の先端方向への平均長さ(c)に対応することになる。金型の凸部構造の説明は、金属反射体(B)の構造の説明と同じなので、ここでの説明は省略する。
第1の工程においてシート(A)の表面に溝部(C)を形成する、ナノインプリント法は、プレス装置を用いて上記形状の金型に形成された数10nm程度の微小な凹凸構造でも加工対象となるシート(A)に写し取る(インプリントする)技術で、従来プロセスにおけるエンボス加工や転写技術をスケールダウンしたものである。前記の通り、図5(a)はシート(A)11に溝部(C)を形成する際に使用する、凸部22を有する金型21を示し、図5(b)はナノインプリント法により、シート(A)11に金型21を転写した状態し、図5(c)は溝部(C)23が形成されたシート(A)11を示す。
転写する際には、通常数MPa程度の圧力がかけられるので、金型の材料としてはシリコンが好ましいが、石英等のガラスや、アルミナや炭化ケイ素等のセラミックス、ニッケル等のある程度の強度を有するものが用いることが可能で、これらの材料の上に更に金属、半導体、誘電体が堆積された複層材料を使用することもできる。金型は、上記材料を使用して、半導体やフォトマスク製造技術を利用して加工することができる。
ナノインプリント法には、シート(A)が熱可塑性樹脂やガラスである熱式ナノインプリントと、加工対象材料が光硬化性樹脂である光硬化式ナノインプリントを利用して、金型の微細構造をそのまま凹凸反転して転写対象に写し取ることができる。熱式ナノインプリントにおいては、形状転写する際に、加工対象材料である熱可塑性樹脂が非晶性樹脂の場合には剛性と粘度が低下し始めるガラス転移温度(Tg)より20℃程度高い温度、結晶性樹脂の場合には融点以上に加熱した状態で転写するのが望ましい。
硬化式ナノインプリントにおいては、紫外線硬化樹脂を使用するときには、紫外線が透過する石英等が金型として使用され、硬化前の樹脂粘度が熱式ナノインプリントの場合と比較して低いために微細な形状、高アスペクト比の形状を良好に転写できる特徴がある。
ナノインプリント法において、金型に塗布して使用される離型剤としてはフッ素系離型剤の使用が好ましく、一方、モールド(金型)材料、又は成形する樹脂材料によってはシリコン系の離型剤を使用することもできる。また、シート(A)に溝部(C)を形成する工程では、ロール・ツ・ロール(ROLL to ROLL)方式やバッチ方式により大量生産することが可能である。
(2)第2工程(溝部(C)への金属反射体(B)の埋め込み工程)
溝部(C)に金属反射体(B)を埋め込む手段には、特に制限はなく、金属微粒子の焼成手段、めっき手段、物理蒸着法、化学蒸着法等の公知技術を用いることができる。これらの中でも、金属微粒子の焼成手段は、実用性が高く、操作が比較的容易であるので、第2工程として、金属微粒子の焼成手段を用いた具体例について以下、説明する。
金属微粒子の焼成手段を用いる場合、金属反射体(B)の埋め込み工程は、シート(A)の溝部(C)に金属微粒子を含むインク又はペースト(以下、インクとペーストを併せてインクという)を充填する工程(インクの充填工程)と、充填したインクを加熱して金属微粒子を焼成(firing)する工程よりなる。
前記の通り、図5(d)はシート(A)の溝部(C)23内に金属微粒子を含むインク24を充填した状態を示し、図5(e)はシート(A)の溝部(C)23内の金属微粒子が焼成されて焼成体25になった状態を示す。
(i)インクの充填工程
インクは、少なくとも金属微粒子の表面を被覆するアミン化合物、ゼラチン等の分散剤と、高沸点の有機溶剤を含む溶媒中に、平均粒子径が金属反射体(B)の平均幅(a)以下、好ましくは平均幅(a)の1/2以下の金属微粒子が均一に分散しているインクで、該インク中の金属微粒子含有量が60〜90質量%程度であるインクを使用するのが望ましい。前記アミン化合物等の分散剤は、窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する化合物を一種以上含む分散剤であり、高沸点の有機溶剤とは、高沸点を有する、無極性溶媒あるいは低極性溶媒、例えば、炭素数10以上のアルカン類(例えば、テトラデカンなど)、炭素数10以上の第一級アルコール類(例えば、1−デカノールなど)が好適に用いられる。本発明に使用可能なインクは実施例に示すように市販されているので、容易に入手可能である。
金属微粒子は上記金属反射体(B)の構成材料と同様で、アルミニウム、ニッケル、クロム、白金、パラジウム、チタン、金、銀、銅、及びこれらの合金の内のいずれか1又は2以上の混合体であることが好ましく、これらの中でも入手し易さも考慮すると銀が好ましい。上記成分を含有するインクは、微細なパターンを描画することができ、かつ金属微粒子を加熱焼成する際に、アミン化合物等の分散剤が金属微粒子表面から離脱して焼成が促進される。
上記溝部(C)の幅がナノサイズであることから、インクをシート(A)の溝部(C)に充填する際に、毛細管現象を利用して充填することが可能であるので、インクとシート(A)との接触角が好ましくは0度以上90度未満、より好ましくは0度以上60度以下となるインクを選択することが望ましい。
更に、溝部(C)内部の表面とのインクの濡れ性(インクとの接触角)がシート(A)表面部とインクとの濡れ性よりも大きい方がインクを充填し易いことを考慮すると、シート(A)の表面に、インクとの接触角が、上記溝部(C)内部の表面とのインクの接触角よりも大きくなる撥液膜を形成しておくのが望ましい。該撥液膜は、シート(A)に溝部(C)を形成する以前に設けておくことが望ましく、その具体的な方法として、4フッ化メタン(CF)をガス状でプラズマ処理してシートの表面に直接形成する方法、有機シランをフッ素系溶剤に希釈溶解した溶液(有機シラン濃度:0.1質量%程度)をシート上に塗布後、該フッ素系溶剤を蒸発させて形成する方法、自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer)の形成法等が挙げられる。該撥液膜は、インクの溝部(C)への充填を促進するだけでなく、シート(A)上の不要箇所に焼成された金属微粒子が付着するのを防止する保護膜としての機能も発揮する。
インクの溝部(C)内への充填方法としては、スキージやドクターブレード等を用いた方法が好ましいが、インクジェット法、ディスペンサなどによる液滴塗布、スピンコート、ディップコートなど、インクと溝部(C)構造を接触させる方法を利用することもできる。
尚、シート(A)の表面に撥液膜が形成されているときには、スキージやドクターブレードにより圧力を加えて充填を行うのが好ましい。
上記溝部(C)へのインク充填後、シート(A)表面に残存した余剰のインクを選択的に除去するため、シート(A)表面を直接ワイピングする方法が好ましいが、研磨、超音波洗浄、高圧ジェット洗浄などの洗浄や、インク吸収性のある材料をシート(A)表面に押し付けて余剰のインク取り除くこともできる。
(ii)金属微粒子の焼成工程
溝部(C)にインクが充填されたシート(A)を加熱して、インクに含有されていた分散剤と有機溶媒等を蒸発させると共に金属微粒子を焼成して、溝部(C)内に金属反射体(B)を形成する工程である。液相での焼成では多くの場合、液相の毛管作用により固相粒子間に十分な内部圧力(毛管力の大きさは非常に高い外部圧力に相当する。)が生じるため、外部圧力は必要としない。金属微粒子の焼成度を制御するためには、加熱オーブンを用いるのが好ましいが、ホットプレート、プラズマ焼成装置、マイクロ波焼成装置、ファラッシュランプ光焼成装置、レーザー焼成装置などの焼成装置を用いることも可能である。
焼成温度と焼成に要する時間は、金属微粒子の成分、粒子径、インクに使用した分散剤、有機溶媒にもよるが、一般に焼成温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜160℃である。焼成時間は焼成温度を考慮して任意に決定することができる。
シート(A)表面に撥液膜が形成されているときには、焼成終了後に撥液膜を剥離して、本発明のワイヤグリッド型偏光素子を得ることができる。
次に本発明を明確にするために行った実施例、比較例について説明する。尚、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
作製した試験片の偏光度、光線透過率、及び光線反射率の測定は、下記装置を用いて行った。
(i)偏光度、光線透過率の測定
(株)島津製作所製、分光光度計(型式:SolidSpec-3700)を使用した。作製したワイヤグリッド型偏光素子の金属反射体に対して、平行方向、垂直方向に振動する電場成分の入射光を用い、反射率測定では、ランダム偏光の入射光を用いた。偏光特性については、偏光度による評価を行った。金属反射体に対して平行方向の偏光光線のときの視感透過率をTp、垂直方向の偏光光線のときの視感透過率をTvとすると、偏光度VはV=√((Tv−Tp)/(Tv+Tp))となる。それぞれの偏光における視感透過率は、波長380〜780nm(1nm刻み)のときのそれぞれの透過率(透過スペクトル)と視感度曲線から得ることができる。
(ii)光線反射率の測定
オリンパス(株)製、顕微分光器(型式:USPM-RUIII)を使用した。
視感透過率Tは、T=(Tv+Tp)/2から求めることができる。反射率の場合の視感反射率Rは、ランダム偏光であるため、反射スペクトルと視感度曲線から得られる値を用いた。
(実施例1)
熱可塑性樹脂シート表面に、金型を使用して熱ナノインプリント法により微細溝構造を形成し、次いで該溝部内に銀微粒子を含むインクを充填し、その後加熱されたオーブン中でインクに含まれる銀微粒子の焼成を行い、前記ワイヤグリッド型偏光素子(R1)タイプで、一次元格子状配列方向でかつシート表面と垂直の最先端部断面が、不規則的に連続した凹凸形状を有する、偏光素子試験片を作製した。
(1)シート表面に微細溝構造の形成
シートとして、ポリカーボネートシート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:FE−2000、厚さ:400μm)を用いた。使用した金型は、4インチのシリコンウエハに微細加工を行ったものである。
使用した金型の微細構造は、表1に示す通り、溝部を形成する凸部形状が、ワイヤグリッド型偏光素子(R1)タイプの形状を有していて、平均幅(a’)が42.1nm、平均長さ(b’)が499.8nm、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c’)が100nm、一次元格子状配列方向でかつシート表面と垂直の先端部断面が、不規則的に連続した凹凸形状を有していて、その凹凸形状の高低差が100nmであり、いずれの先端に行くほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向の長さが前記平均長さ(b’)の0.3倍以内、配列の周期(d’)が140nmであった。この金型を用いて、熱ナノインプリント法によりシート表面に微細溝構造を転写した。図6は、実施例1で使用した金型のほぼ正面の斜め上から観察した、図7は、実施例1で使用した金型の斜め上から観察した走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
(2)シートの微細溝内にインクの充填
スキージング法により、ハリマ化成(株)製の銀ナノインク(商品名:NPS、銀微粒子含有率:85質量%、平均粒子径:12nm、シートとの接触角:60度以下)を溝部へ充填した。次いで、ワイピングにより、溝部内以外に付着した余分なインクを除去した。
(3)焼成による偏光素子の作製
溝部内に上記インクが充填されたシートを、130℃に加熱されたオーブン中で12時間、インクに含まれる銀微粒子の焼成を行い、偏光素子試験片を作製した。
(4)評価結果
得られたワイヤグリッド型の偏光素子試験片の上面側からの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図8に示す。溝の上部には、数十nmサイズに成長した銀ナノ粒子が溝に沿って並んでいることが確認できた。また、溝の内部には100nm程度まで成長した銀ナノ粒子が重なっていることも確認しており、溝内部でサイズに分布がある銀粒子で構成されたパターンが形成されていた。得られたワイヤグリッド型の偏光素子試験片について、偏光度、光線透過率、及び光線反射率を測定した。これらの結果をまとめて表1に示す。偏光度、裏面側の反射率共に良好な結果が得られた。
(実施例2、3)
実施例2、3において、実施例1と同様に、金型を用いて、シート表面に微細溝構造を形成し、該溝部内にインクを充填した後に、焼成して、実施例1と同様に、前記ワイヤグリッド型偏光素子(R1)タイプで、一次元格子状配列方向でかつシート表面と垂直の最先端部断面が、不規則的に連続した凹凸形状を有している、偏光素子試験片を作製した。
(1)偏光素子試験片の作製
実施例1で使用したと同様のシートを用いた。使用した金型の微細構造は、表1に示す通り、溝部を形成する凸部形状が、上記ワイヤグリッド型偏光素子(R1)タイプの形状を有していて、平均幅(a’)が実施例2で42.1nm、実施例3で30.7nm、平均長さ(b’)が実施例2で499.8nm、実施例3で388.5nm、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c’)が実施例2で100nm、実施例3で80nm、一次元格子状配列方向でかつシート表面と垂直の先端部断面が、不規則的に連続した凹凸形状を有していて、その凹凸形状の高低差が実施例2で100nm、実施例3で80nmであり、いずれの場合も先端に行くほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向の長さが前記平均長さ(b’)の0.3倍以内、配列の周期(d’)が共に140nmであった。これらの金型それぞれを用いて、熱ナノインプリント法によりシート表面に微細溝構造を転写した。
その後、スキージング法により、実施例1で使用したと同様の銀ナノインクを溝部内へ充填し、充填後にワイピングにより、溝部内以外に付着した余分なインクを除去した。
次いで、溝部内に上記インクが充填されたシートを、130℃に加熱されたオーブン中で実施例2では81時間、実施理3では12時間、インクに含まれる銀微粒子の焼成を行い、偏光素子試験片を作製した。
(2)評価結果
得られた偏光素子試験片について、偏光度、光線透過率、及び光線反射率を測定した。これらの結果をまとめて表1に示す。偏光度、裏面側の反射率共に良好な結果が得られた。
(実施例4,5、6)
熱可塑性樹脂シート表面に、金型を使用して熱ナノインプリント法により微細溝構造を形成し、次いで該溝部内に銀微粒子を含むインクを充填し、その後加熱されたオーブン中でインクに含まれる銀微粒子の焼成を行い、前記ワイヤグリッド型偏光素子(R1)タイプで、一次元格子状配列方向でかつシート表面と垂直の最先端部断面がほぼ直線状を有している、偏光素子試験片を作製した。
(1)偏光素子試験片の作製
実施例1で使用したと同様のシートを用いた。使用した金型の微細構造は、表1に示す通り、溝部を形成する凸部形状が、前記ワイヤグリッド型偏光素子(R1)タイプに形成される溝形状の反転形状を有していて、平均幅(a’)、平均長さ(b’)、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c’)、及び配列の周期(d’)は表1に示す通りである。これらの金型をそれぞれ用いて、熱ナノインプリント法によりシートに微細溝構造を転写した。図9は、実施例4で使用した金型のほぼ正面の斜め上から観察した、図10は、実施例6で使用した金型のほぼ正面の右側から観察した走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
その後、スキージング法により、実施例1で使用したと同様の銀ナノインクを溝部内へ充填し、充填後にワイピングにより、溝部内以外に付着した余分なインクを除去した。
次いで、溝部内に上記インクが充填されたシートを、130℃に加熱されたオーブン中で共に12時間、インクに含まれる銀微粒子の焼成を行い、偏光素子試験片を作製した。
(2)評価結果
得られた偏光素子試験片について、偏光度、光線透過率、及び光線反射率を測定した。これらの結果をまとめて表1に示す。実施例4,5において、偏光度、裏面側の反射率共に良好な結果が得られた。また、実施例6で、金属反射体の平均厚み(b)と平均幅(a)の比(b/a)が4.4で偏光度が向上していることが認められた。
(実施例7、8、9)
熱可塑性樹脂シート表面に、金型を使用して熱ナノインプリント法により微細溝構造を形成し、次いで該溝部内に銀微粒子を含むインクを充填し、その後加熱されたオーブン中でインクに含まれる銀微粒子の焼成を行い、前記ワイヤグリッド型偏光素子(R3)タイプの、偏光素子試験片を作製した。
(1)偏光素子試験片の作製
実施例1で使用したと同様のシートを用いた。使用した金型の微細構造は、溝部を形成する凸部形状が、上記ワイヤグリッド型偏光素子(R3)タイプに形成される溝形状の反転形状を有していて、平均幅(a’)、平均長さ(b’)、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c’)、及び配列の周期(d’)は表1に示す通りである。尚、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端部までの長さは、各凸部形状(略四角誰又は該略四角錐の底面より頂点方向に向かって徐々に略円錐状に変化していく形状)間で長短が存在していて、いずれの場合も先端に行くほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向の長さが前記平均長さ(b’)の0.3倍以内であった。
これらの金型をそれぞれ用いて、熱ナノインプリント法によりシート表面に微細溝構造を転写した。図11は、実施例8で使用した金型のほぼ正面の斜め上から観察した走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
その後、スキージング法により、実施例1で使用したと同様の銀ナノインクを溝部内へ充填し、充填後にワイピングにより、溝部内以外に付着した余分なインクを除去した。
次いで、溝部内に上記インクが充填されたシートを、130℃に加熱されたオーブン中で実施例7において128時間、実施例8、9において81時間、インクに含まれる銀微粒子の焼成を行い、偏光素子試験片を作製した。
(2)評価結果
得られた偏光素子試験片について、偏光度、光線透過率、及び光線反射率を測定した。これらの結果をまとめて表1に示す。偏光度、裏面側の反射率共に良好な結果が得られた。
(比較例1,2)
熱可塑性樹脂シート表面に、金型を使用して熱ナノインプリント法により微細溝構造を形成し、次いで該溝部内に銀微粒子を含むインクを充填し、その後加熱されたオーブン中でインクに含まれる銀微粒子の焼成を行い、前記ワイヤグリッド型偏光素子(R1)タイプで、一次元格子状配列方向でかつシート表面と垂直の最先端部断面がほぼ直線形状を有している、偏光素子試験片を作製した。
(1)偏光素子試験片の作製
実施例1で使用したと同様のシートを用いた。使用した金型の微細構造は、表1に示す通り、溝部を形成する凸部形状が、前記ワイヤグリッド型偏光素子(R1)タイプに形成される溝形状の反転形状を有していて、平均幅(a’)、平均長さ(b’)、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c’)、及び配列の周期(d’)は表1に示す通りである。これらの金型をそれぞれ用いて、熱ナノインプリント法によりシート表面に微細溝構造を転写した。また、図12は、比較例2で使用した金型のほぼ正面の斜め上から観察した走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
その後、スキージング法により、実施例1で使用したと同様の銀ナノインクを溝部内へ充填し、充填後にワイピングにより、溝部内以外に付着した余分なインクを除去した。
次いで、溝部内に上記インクが充填されたシートを、130℃に加熱されたオーブン中で、比較例1で12時間、比較例2で81時間、インクに含まれる銀微粒子の焼成を行い、偏光素子試験片を作製した。
(2)評価結果
得られた偏光素子試験片について、偏光度、光線透過率、及び反射率を測定した。これらの結果をまとめて表1に示す。比較例1から、金属反射体の平均厚み(b)と前記平均幅(a)の比(b/a)が3.5では偏光度が低下すること、比較例1、2から、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c)と平均幅(a)の比(c/a)が1.0で裏面側の反射率がやや高くなり、0.89になると裏面側の反射率が高くなることが認められた。

*1:先端部平均長さ(c')と平均幅(a')との比(c'/a')を示す。
*2:周期(d')と平均幅(a')との比(d'/a')を示す。
*金属反射体の一次元格子状配列の周期(d'):140nm
*実施例1〜3:ワイヤグリッド型偏光素子(R1)タイプで、最先端部断面が凹凸形状
*実施例4〜6,比較例1,2:ワイヤグリッド型偏光素子(R1)タイプで、最先端部断面が略直線
*実施例7〜9:ワイヤグリッド型偏光素子(R3)タイプ
本発明のワイヤグリッド型偏光素子により、従来の反射型の偏光素子では困難であった裏面側から入射する光線の反射率を顕著に低減化することが可能になった。本発明のワイヤグリッド型偏光素子は、金属反射体(B)がシート(A)の溝部(C)内に埋め込まれているため、引っ掻き耐性があり、擦ったり拭いたりしても偏光機能に影響は出にくく、表面耐久性に優れる。また、金属反射体(B)がシート(A)の溝構造で覆われているために表面からの露出部分を少なくでき、その結果、金属反射体(B)の酸化が進行しにくく、耐熱性、耐湿性を有するため、屋外や高温高湿環境下でも性能を長く維持できる。更に、本発明のワイヤグリッド型偏光素子は、フィルムインサート成形やキャスト成形などの成形工程にも適応できるので、低反射で偏光機能を有する成形品の実現が可能になる。シート(A)の種類と厚さの選択により、伸縮に強く、剛性があり、曲げ性にも優れるワイヤグリッド型偏光素子を得ることができる。
これにより、発明のワイヤグリッド型偏光素子は、各種ディスプレイやカメラなどの光学製品の光学系や光学計測用の光学系のみならず、偏光サングラスやスマートウィンドウ等としても応用が期待される。
1、2 ワイヤグリッド型偏光素子(R1)
3 ワイヤグリッド型偏光素子(R2)
4 ワイヤグリッド型偏光素子(R3)
11 シート(A)
12 シート(A)の表面側
13 シート(A)の裏面側
14、16、18 金属反射体(B)
15、17、19 金属反射体(B)の先端部近傍
21 金型
22 金型の凸部
23 溝部(C)
24 金属微粒子を含むインク
25 金属微粒子の焼成体

Claims (10)

  1. 透明なシート(A)の表面に同じ向きかつ同じ周期で一次元格子状に設けられた多数の溝部(C)に、金属反射体(B)が埋め込まれたワイヤグリッド型偏光素子であって、
    金属反射体(B)の平均幅(a)が200nm以下で、
    シート(A)表面側から裏面方向先端までの金属反射体(B)の平均厚み(b)と前記平均幅(a)の比(b/a)が4〜25の範囲内にあり、
    かつ金属反射体(B)の厚み方向先端部近傍における、一次元格子状配列方向と平行及び垂直の少なくともいずれか1つの断面形状が先端にいくほど直線状ないし滑らかな曲線状で徐々に細くなっていて、この先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c)と前記平均幅(a)の比(c/a)が1.2以上である、ワイヤグリッド型偏光素子。
  2. 前記金属反射体(B)の厚み方向先端部近傍における、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への平均長さ(c)と前記平均幅(a)の比(c/a)が1.2〜8の範囲である、請求項1に記載のワイヤグリッド型偏光素子。
  3. 前記金属反射体(B)の厚み方向先端部近傍における、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の形状が
    一次元格子状配列方向と垂直の断面形状で、頂点が先端方向に位置する略逆二等辺三角形の形状(ワイヤグリッド型偏光素子(R1))、
    一次元格子状配列方向かつシート(A)と垂直の断面形状において、連続したのこぎり歯状で、該歯の頂点が先端方向に位置する略逆二等辺三角形の形状(ワイヤグリッド型偏光素子(R2))、
    又は、長辺が交差する頂点が先端方向に位置する略四角錐、もしくは該略四角錐の底面より頂点方向に向かって徐々に略円錐状に変化していく形状体が一次元格子状配列方向に連続している形状(ワイヤグリッド型偏光素子(R3))である、
    請求項1又は2に記載のワイヤグリッド型偏光素子。
  4. 前記金属反射体(B)の一次元格子状配列の周期(d)と平均幅(a)の比(d/a)が1〜10である、請求項1から3のいずれか1項に記載のワイヤグリッド型偏光素子。
  5. 前記シート(A)が、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、及びポリサルフォン系樹脂から選択されるシートである、請求項1から4のいずれか1項に記載のワイヤグリッド型偏光素子。
  6. 前記金属反射体(B)がアルミニウム、ニッケル、クロム、白金、パラジウム、チタン、金、銀、銅、及びこれらの合金の内のいずれか1又は2以上の混合体である、請求項1から5のいずれか1項に記載のワイヤグリッド型偏光素子。
  7. 前記金属反射体(B)のそれぞれは、
    単一の連続構造体として溝部(C)内に埋め込まれているか、
    又は複数のブロック状構造物が高い密度に積層された状態で溝部(C)内に埋め込まれていて、各ブロック状構造物は互いに独立した状態で積層されているかもしくは各ブロック状構造物の外表面の一部が接合された状態で積層されている、
    請求項1から6のいずれか1項に記載のワイヤグリッド型偏光素子。
  8. 前記金属反射体(B)の厚み方向先端部近傍における、先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の構造は、
    前記ワイヤグリッド型偏光素子(R1)の場合には一次元格子状配列方向でかつシート(A)表面と垂直の断面形状において先端部が規則的もしくは不規則的に連続した凹凸形状を形成する構造、
    前記ワイヤグリッド型偏光素子(R2)の場合には一次元格子状配列方向かつシート(A)と垂直の断面形状においてのこぎり歯の長さとピッチが不規則的に連続した形状を形成する構造、又は、前記ワイヤグリッド型偏光素子(R3)の場合には先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端部までの長さが各略四角誰又は該略四角錐の底面より頂点方向に向かって徐々に略円錐状に変化していく形状体間で規則的もしくは不規則的に長短の差のある構造で、
    かつ上記いずれの場合にも先端にいくほど徐々に細くなっていく部分(D)の先端方向への長さが、前記平均長さ(b)の0.3倍以下の構造である、
    請求項1から7のいずれか1項に記載のワイヤグリッド型偏光素子。
  9. 前記金属反射体(B)が金属微粒子の焼成体からなる金属反射体である、請求項1から8のいずれか1項に記載のワイヤグリッド型偏光素子。
  10. 透明なシート(A)の表面にナノインプリント法により同じ向きかつ同じ周期で一次元格子状に多数の溝部(C)を形成し、次いで該多数の溝部(C)に金属反射体(B)を埋め込むワイヤグリッド型偏光素子の製造方法であって、
    前記ナノインプリント法により、シート(A)に溝部(C)を形成する際に使用する金型における、溝部(C)を形成する各凸部の構造が
    平均幅(a’)が200nm以下で、
    平均長さ(b’)が、平均幅(a’)との比(b’/a’)で4〜25の範囲内であり、
    凸部の先端部近傍における、先端にいくほど直線状ないし滑らかな曲線状で徐々に細くなっていて、この先端にいくほど徐々に細くなっていく部分の先端方向への平均長さ(c’)と前記幅(a’)との比(c’/a’)が1.2以上である、
    ことを特徴とするワイヤグリッド型偏光素子の製造方法。

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