以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態の空調システムの不具合検知方法(以下、単に「検知方法」ということがある。)では、建物内の複数の空間を空調するための空調システムの不具合が検知される。図1は、空調システムの不具合が検知される建物の一例を示す断面図である。なお、図面は、発明の内容の理解を高めるためのものであり、誇張された表示が含まれる他、図面間において、縮尺等は厳密に一致していない点が予め指摘される。
建物2としては、住宅である場合が例示されているが、例えば、ビル等であってもよい。本実施形態の建物2は、床下空間3と、床上空間4とを含んで構成されている。本実施形態において、空調される空間5は、床上空間4に設けられているが、床下空間3に設けられてもよい。
床下空間3は、基礎と地面と1階の床とで囲まれた空間である。基礎には、外気A1を取り入れるための開口部6が設けられている。開口部6から取り入れられた外気A1は、地面を介して、1年を通じて温度変化の少ない地中の熱と熱交換される。
床上空間4は、床下空間3の上方に床を介して設けられた空間である。本実施形態の床上空間4は、複数の空間(居室)5を含んでいる。複数の空間5は、1階の空間5a及び5bと、2階の空間5c及び5dとを含んでいる。
本実施形態の空間5は、複数のグループ7に区分されている。本実施形態のグループ7は、第1グループ7A及び第2グループ7Bを含んで構成されているが、1つのグループで構成されてもよいし、3つ以上のグループで構成されてもよい。
第1グループ7Aは、複数の空間5のうちの一部の空間5で構成されている。本実施形態の第1グループ7Aは、1階の空間5a及び5bで構成されているが、これらのいずれか一方の空間のみで構成されてもよいし、他の空間が含まれてもよい。一方、第2グループ7Bは、複数の空間5のうち第1グループ7Aの空間5(本例では、1階の空間5a及び5b)とは異なる空間5で構成されている。本実施形態の第2グループ7Bは、2階の空間5c及び5dで構成されているが、これらのいずれか一方の空間で構成されてもよいし、他の空間が含まれてもよい。
本実施形態の空調システム8は、セントラル空調タイプである。空調システム8は、少なくとも1台の空気調和機9を含む1つの熱源で、建物2内の複数の空間5(本例では、1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)を空調している。本実施形態の熱源は、1台の空気調和機(エアコン)9で構成されているが、複数台の空気調和機9で構成されていてもよい。
空調システム8は、空気調和機(熱源)9と、温度センサー11とを含んで構成されている。さらに、本実施形態の空調システム8は、ファン12と、ダンパー13と、ダクト14と、制御手段15とを含んでいるが、このような構成に限定されるわけではなく、一部の構成が省略されていてもよい。
空気調和機9及びファン12は、例えば、チャンバーボックス16の内部に収容されている。チャンバーボックス16は、その内部にスペース(空間)を有する箱状に形成されている。本実施形態のチャンバーボックス16には、複数の空間5を循環した空気A3を内部に供給するための給気口(図示省略)、及び、外気(床下空気)A1を内部に供給するための外気取込口(図示省略)が設けられている。本実施形態の外気A1は、ダクト17と外気供給ファン18とを介して、床下空間3から取り込まれている。なお、外気A1は、屋外から直接取り込まれてもよい。
空気調和機9は、例えば、一般的な家庭用のセパレート型エアコンである。空気調和機9は、室内機と、建物2の外部に設置された室外機(図示省略)とをセットとして含んでいる。室内機は、吸込口(図示省略)と吹出口(図示省略)とを有している。吸込口は、室内機の内部の熱交換器(図示省略)に空気を取り込むためのものである。一方、吹出口は、熱交換器で空調された空気A2を吐出するためのものである。空気調和機9の設定温度や風量は、例えば、制御手段15によって制御される。本実施形態では、空調された空気A2が、チャンバーボックス16に設けられたフィルター19によって浄化されているが、このような態様に限定されない。
ファン12は、空調された空気A2を、複数の空間5(本例では、1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)に送るためのものである。本実施形態のファン12は、第1ファン12aと、第2ファン12bとを含んで構成されている。
第1ファン12aは、空調された空気A2を、第1グループ7A(本例では、1階の空間5a及び5b)に送る(供給する)ためのものである。一方、第2ファン12bは、空調された空気A2を、第2グループ7B(本例では、2階の空間5c及び5d)に送る(供給する)ためのものである。なお、ファン12は、いずれか一方のファンで構成されてもよいし、3つ以上のファンで構成されてもよい。ファン12の風量は、例えば、建物2に必要な換気回数に基づいて、制御手段15によって制御される。本実施形態のファン12は、一定の風量となるように、回転数が制御される定風量ファンとして構成されている。なお、ファン12は、このような定風量ファンに限定されるわけではない。
ダンパー13は、複数の空間5(本例では、1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)のそれぞれにおいて、空調された空気A2の風量を調節するためのものである。本実施形態のダンパー13は、その開度(開口面積)の大きさに応じて、空調された空気A2の風量を大きくすることができる。ダンパー13の開度は、例えば、制御手段15によって制御される。本実施形態のダンパー13は、各空間5にそれぞれ設けられている。
ダクト14は、ファン12とダンパー13との間を接続している。本実施形態のダクト14は、第1ダクト14aと、第2ダクト14bとを含んで構成されている。第1ダクト14aは、第1ファン12aと、1階の空間5a及び5bに設けられたダンパー13、13との間を、それぞれ接続している。本実施形態の第1ダクト14aは、第1ファン12aと、1階の一方の空間5aのダンパー13、及び、1階の他方の空間5bのダンパー13との間に、分岐部25が設けられている。一方、第2ダクト14bは、第2ファン12bと、2階の空間5c及び5dに設けられたダンパー13、13との間を、それぞれ接続している。本実施形態の第2ダクト14bは、第2ファン12bと、2階の一方の空間5cのダンパー13、及び、2階の他方の空間5dのダンパー13との間に、分岐部25が設けられている。
温度センサー11は、各空間5(本例では、1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)の実温度を計測するためのものである。本実施形態の温度センサー11は、各空間5にそれぞれ設けられており、制御手段15に接続されている。温度センサー11で計測された実温度は、制御手段15に伝達される。
制御手段15は、予め定められた処理手順(制御手順)に基づいて、空調システム8を構成する各構成部材(本例では、空気調和機9、ファン12、ダンパー13及び温度センサー11)を制御するためのものである。本実施形態の制御手段15は、コンピュータによって構成され、例えば、空間5の間仕切り壁等に設置されている。図2は、制御手段15の構成の一例を示す概念図である。
制御手段15は、例えば、CPU(中央演算装置)からなる演算部20と、処理手順が予め記憶されている記憶部21と、記憶部21から処理手順を読み込む作業用メモリ22とを含んで構成されている。演算部20には、入力手段23及び出力手段24が接続されている。
入力手段23は、例えば、制御手段15の筐体(図1に示す)に設けられた操作ボタンやタッチパネル等によって構成されている。この入力手段23により、例えば、ユーザー(居住者等)によって入力された情報を、演算部20に伝達することができる。入力される情報としては、例えば、図1に示した各空間5(本例では、1階の空間5a及び5b、並びに2階の空間5c及び5d)の目標温度や、空調運転の開始及び停止の指示情報等が含まれる。本実施形態の目標温度は、複数の空間5それぞれに設定されているが、図1に示したグループ7(本例では、第1グループ7A及び第2グループ7B)毎に設定されてもよい。
出力手段24は、制御手段15の筐体(図1に示す)に設けられたディスプレイとして構成されている。演算部20は、出力手段24に信号を伝達することにより、例えば、空調システム8の運転状況等を表示させることができる。
演算部20には、空気調和機9、ファン12(本例では、第1ファン12a及び第2ファン12b)及びダンパー13が接続されている。これにより、演算部20は、例えば、空気調和機9及びファン12に信号を伝達することにより、これらの運転の開始及び停止や、空気調和機9の設定温度、及び、ファン12の風量を調節することができる。さらに、演算部20は、ダンパー13に信号を伝達することにより、各空間5(本例では、1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)に設けられたダンパー13の開度をそれぞれ調節することができる。
演算部20には、温度センサー11が接続されている。これにより、演算部20は、温度センサー11に信号を伝達することにより、図1に示した各空間5(本例では、1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)の実温度を温度センサー11に計測させ、かつ、それらの実温度の計測結果を演算部20に伝達させることができる。
本実施形態の空調システム8では、例えば、予め定められた処理手順(制御手順)に基づいて、図1に示した複数の空間5(本例では、1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)それぞれについて、温度センサー11によって各空間5の実温度が計測される。そして、これらの実温度が、ユーザーによって設定された目標温度に近づくように、空調システム8の構成部材(装置)が制御(例えば、空気調和機9の設定温度、ファン12の風量及びダンパー13の開度などが制御)される。
ところで、本実施形態のようなセントラル空調タイプの空調システム8では、複数の構成部材(本例では、空気調和機(熱源)9、ファン12、ダンパー13及び温度センサー11)によって構成されており、それらが複雑に制御されている。このため、空調システム8に不具合が発生した場合には、どの箇所に原因があるかを突き止めるのに多く時間を要するという問題がある。
本実施形態の検知方法では、上記のような空調システム8の不具合が検知される。本実施形態の検知方法では、空調システムの不具合検知装置(以下、単に「検知装置」ということがある。)が用いられる。図3は、空調システム8の不具合検知装置26の構成の一例を示すブロック図である。
本実施形態の検知装置26は、コンピュータ27によって構成されている。コンピュータ27としては、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(タブレット型等)、及び、インターネットを介して接続されたクラウドサーバ等を採用することができる。なお、コンピュータ27は、図1及び図2に示した制御手段15で構成されてもよい。
本実施形態の検知装置26(コンピュータ27)は、入力デバイスとしての入力部28、出力デバイスとしての出力部29、及び、演算処理装置30を有している。
入力部28には、例えば、キーボード、マウス、又は、タッチパネル等が用いられる。出力部29には、例えば、ディスプレイ装置又はプリンタ等が用いられる。演算処理装置30には、各種の演算を行う演算部(CPU)31、データやプログラム等が記憶される記憶部32、及び、作業用メモリ33が含まれている。
記憶部32は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、SSD又はフラッシュメモリ等で構成される不揮発性の情報記憶装置である。記憶部32には、データ部34及びプログラム部35を含んで構成されている。
データ部34は、空調システム8(図1に示す)の不具合を検知するために必要な情報を記憶するためのものである。本実施形態のデータ部34は、履歴データ記憶部34a、関係性記憶部34b、空調不良空間記憶部34c、不具合箇所記憶部34d及びプラン情報記憶部34eを含んで構成されている。
プログラム部35は、演算部31に、本実施形態の検知方法を実行させるためのプログラムである。本実施形態のプログラム部35は、履歴データ取得部36及び判断部37を含んで構成されている。図4は、判断部37の構成の一例を示すブロック図である。
判断部37は、空間特定部38、不具合特定部39及び経年劣化判断部40を含んで構成されている。不具合特定部39は、第1特定部39a、第2特定部39b、第3特定部39c及び第4特定部39dを含んで構成されている。なお、プログラム部35は、このような態様に限定されるわけではなく、一部が省略されてもよい。図5は、本実施形態の検知方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の検知方法では、先ず、空調履歴データが取り込まれる(工程S1)。工程S1では、図3及び図4に示されるように、プログラム部35の履歴データ取得部36が、作業用メモリ33に入力される。そして、履歴データ取得部36が、演算部31によって実行される。
工程S1では、過去の空調履歴データが、予め定められた時間間隔で取り込まれる。本実施形態の空調履歴データは、本実施形態の検知方法が実施される前の過去において、図1に示した空調システム8が、複数の空間5(本例では、1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)それぞれを空調したときの履歴情報である。
空調履歴データは、工程S1の実施に先立って取得されている。空調履歴データは、例えば、図2に示した制御手段15の記憶部21に記憶させていてもよいし、図3に示した検知装置26の履歴データ記憶部34aに直接記憶させていてもよい。なお、検知装置26がクラウドサーバ等で構成される場合には、インターネット等を介して、履歴データ記憶部34aに空調履歴データが記憶される。
空調履歴データには、各空間5(本例では、1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)について、ユーザーによって設定された目標温度と、温度センサー11によって計測された実温度とが少なくとも含まれている。本実施形態の空調履歴データには、目標温度及び実温度の他に、空気調和機9の吸込口(図示省略)の温度と、吹出口(図示省略)の温度とが含まれている。さらに、空調履歴データには、第1ファン12a及び第2ファン12bのそれぞれの回転数が含まれている。なお、これらの空調履歴データにおいて、検知方法の処理手順で必要がない履歴については、省略されてもよい。
空調履歴データが取得される時間間隔については、適宜設定することができる。本実施形態では、例えば、5〜30分(本例では、10分)の時間間隔で、空調履歴データが取得されている。また、空調履歴データが取得される期間についても、適宜設定することができる。空調システム8の不具合を確実に検知するためには、例えば、30〜90日の間、空調履歴データが継続して取得されるのが望ましい。工程S1では、上記の期間において、上記の時間間隔で取得された過去の空調履歴データが、履歴データ記憶部34a(即ち、コンピュータ27)に取り込まれる。
図6(a)は、第1グループ7Aに含まれる1つの空間5の空調履歴データの一例を示すグラフである。図6(b)は、第2グループ7Bに含まれる1つの空間5の空調履歴データの一例を示すグラフである。図6(a)及び(b)では、目標温度及び実温度と、時間との関係が示されており、空気調和機9の吸込口(図示省略)の温度、吹出口(図示省略)の温度、第1ファン12a及び第2ファン12bの回転数が省略されている。
次に、本実施形態の検知方法では、空調システム8の不具合の有無が判断される(判断工程S2)。本実施形態の判断工程S2では、空調履歴データの目標温度と実温度との関係性に基づいて、空調システム8の不具合の有無が判断される。目標温度と実温度との関係性については、適宜取得することができる。本実施形態の関係性は、目標温度と実温度との温度差D(図6(a)及び(b)に示す)の時間変化である。このような関係性は、各空間5(本例では、図1に示した1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)において取得される。
図6(a)において、第1グループの空間の温度差Dは、時間の経過とともに大きくなっている。一方、図6(b)において、第2グループの空間の温度差Dは、時間の経過とともに小さくなっている。このように、温度差Dは、時間の経過とともに変化している。図7は、判断工程S2の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の判断工程S2では、先ず、空調不良空間が特定される(工程S21)。工程S21では、時間の経過とともに温度差Dが大きくなる空間5(例えば、図6(a)に示した第1グループの空間)を、空調不良空間として特定している。工程S21では、先ず、図3及び図4に示されるように、履歴データ記憶部34aに記憶されている空調履歴データ、及び、プログラム部35の空間特定部38が、作業用メモリ33に入力される。そして、判断部37の空間特定部38が、演算部31(即ち、コンピュータ27)によって実行される。
工程S21では、先ず、各空間5(本例では、1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)の空調履歴データに基づいて、目標温度と実温度との関係性(即ち、温度差Dの時間変化)が取得される。目標温度と実温度との関係性は、関係性記憶部34b(図3に示す)に記憶される。
図6(a)に示されるように、時間の経過とともに温度差Dが大きくなる空間5では、ユーザーによって設定された目標温度に対して、その実温度が乖離している。上述したように、本実施形態の空調システムは、各空間5の実温度が目標温度に近づくように制御されるものであるため、図6(a)のような空調履歴データが取得された空間5では、空調に不具合があると推測することができる。このような観点に基づいて、工程S21では、時間の経過とともに温度差Dが大きくなる空間5を、空調不良空間として特定している。なお、図6(b)に示されるように、時間の経過とともに温度差Dが小さくなる空間5については、上記の制御どおりに空調されているため、空調に不具合はないと推測することができる。
空調不良空間を特定するための判断基準については、時間の経過とともに温度差Dが大きくなる空間5を特定することができれば、適宜設定することができる。本実施形態の工程S21では、例えば、ユーザーの扉の開閉等による実温度への影響を考慮して、温度差Dの絶対値の平均値が、予め定められた閾値(例えば、2.0〜3.0℃)よりも大きい空間5を、空調不良空間として特定している。なお、平均値は、適宜計算することができ、例えば、予め定められた時間(例えば、2〜4時間)分の温度差Dが用いられるのが望ましい。工程S21では、空調不良空間記憶部34c(図3に示す)に、空調不良空間を識別するための情報(例えば、フラグ)が記憶される。
次に、本実施形態の判断工程S2では、空調不良空間の組み合わせに基づいて、不具合の箇所が特定される(不具合特定工程S22)。不具合特定工程S22では、先ず、空調不良空間記憶部34c(図3に示す)に記憶されている空調不良空間を識別する情報、及び、図4に示した不具合特定部39(本例では、第1特定部39a、第2特定部39b、第3特定部39c及び第4特定部39d)が、作業用メモリ33(図3に示す)に入力される。そして、判断部37の不具合特定部39が、演算部31によって実行される。図8は、不具合特定工程S22の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の不具合特定工程S22では、先ず、空調不良空間の組み合わせが判断される(工程S31)。空調不良空間の組み合わせが、図1に示した建物2内の全ての空間5(本例では、1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)である場合、これらの全ての空間5が適切に(即ち、本来の制御手順に基づいて)空調されていない。このため、全ての空間5の空調に影響する空気調和機9(図1に示す)に、不具合がある可能性が高い。したがって、工程S31において、空調不良空間の組み合わせが、建物2内の全ての空間5である場合、空気調和機9の不具合を特定する第1特定工程S32が実施される。
本実施形態の第1特定工程S32は、図4に示した判断部37の第1特定部39aが演算部31(図3に示す)によって実行されることにより、空気調和機9の不具合の有無が特定される。図9は、第1特定工程S32の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の第1特定工程S32では、先ず、空気調和機9(図1に示す)の空調能力が計算される(工程S51)。空調能力は、例えば、空調履歴データに含まれる空気調和機9の吸込口(図示省略)の温度と、吹出口(図示省略)の温度とを用いて、従来と同様の手順(例えば、特開2017−083139号公報に記載の手順)に基づいて計算することができる。本実施形態の工程S51では、上述の期間分の空調能力が、上記の時間間隔毎に計算される。
次に、第1特定工程S32では、空気調和機9(図1に示す)の空調能力が、予め定められた閾値以下であるか否かが判断される(工程S52)。本実施形態の工程S52では、空気調和機9の空調能力の変動を考慮して、上述の期間分の空調能力の平均値が、閾値以下であるか否かが判断される。閾値については、空気調和機9に求められる空調能力に基づいて、適宜設定することができる。本実施形態の閾値は、例えば、8〜11kWに設定されている。
工程S52において、空気調和機9(図1に示す)の空調能力が閾値以下である場合(工程S52で、「Y」)、空気調和機9の空調能力が低下している。この場合、空気調和機9に不具合があると特定される(工程S53)。工程S53では、空調システム8の不具合の箇所を記憶するための不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に、不具合の箇所として、空気調和機9が記憶される。なお、空調能力の低下の原因としては、例えば、空気調和機9の冷媒漏れや、室外機(図示省略)の設置スペースが空気調和機9の仕様に基づいて確保されていないことが考えられる。
一方、工程S52において、空気調和機9(図1に示す)の空調能力が閾値よりも大きい場合(工程S52で、「N」)、空気調和機9に不具合はないと判断される。この場合、次の工程S54が実施される。
上記のような空気調和機9(図1に示す)の不具合を除いて、全ての空間5(本例では、図1に示した1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)が適切に空調されない原因としては、例えば、図1に示したフィルター19の目詰まりによる圧損によって、空調された空気A2が十分に供給されてないことが考えられる。このような圧損が生じている場合、本実施形態の空調システム8では、ファン12が定風量ファンとして構成されている場合、建物2に必要な換気回数を維持するために、図1に示したファン12(本例では、第1ファン12a及び第2ファン12bの双方)の回転数が大きくなる。このため、工程S54では、空調履歴データのファン12の回転数が、予め定められた閾値よりも大きいか否かが判断される。
閾値については、図1に示したフィルター19に目詰まりがない状態のファン12(本例では、第1ファン12a及び第2ファン12b)の回転数に基づいて、適宜設定することができる。また、工程S54では、ファン12の回転数の変動を考慮して、ファン12の回転数の平均値を求めて、その平均値と閾値とが比較されるのが望ましい。
工程S54において、図1に示したファン12(本例では、第1ファン12a及び第2ファン12b)の回転数が閾値よりも大きい場合(工程S54で、「Y」)、フィルター19の目詰まりによる圧損が生じている。この場合、フィルター19に不具合があると特定される(工程S55)。工程S55では、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に、不具合の箇所として、フィルター19が記憶される。
一方、工程S54において、ファン12の回転数が閾値以下である場合(工程S54で、「N」)、上記のような圧損が生じておらず、空調システム8の不具合を特定できない。この場合、第1特定工程S32の一連の処理が終了する。このように、工程S54において、空調システム8の不具合を特定できない場合には、これまでの判断履歴(本例では、空調能力と閾値との比較結果や、ファン12の回転数と閾値との比較結果など)が、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に入力されてもよい。このような判断履歴は、例えば、その後に空調システム8の不具合が判明した場合に、その判明した不具合を判断するための新たな手順を作成するのに役立つ。この新たな手順が、図9に示した第1特定工程S32に追加されることにより、不具合の検知精度を向上させることができる。
次に、図8に示されるように、本実施形態の不具合特定工程S22では、工程S31において、空調不良空間の組み合わせが、図1に示した第1グループ7Aの全ての空間5a及び5b、又は、第2グループ7Bの全ての空間5c及び5dであると判断された場合、第2特定工程S33が実施される。
第1グループ7Aの全ての空間5a及び5b、又は、第2グループ7Bの全ての空間5c及び5dが適切に空調されない原因としては、例えば、第1グループ7Aに第2ファン12bが接続され、かつ、第2グループ7Bに第1ファン12aが接続されたことにより、本来の制御に基づいて、第1グループ7A及び第2グループ7Bに空調された空気A2を送ることができないことが考えられる。
このような観点より、第2特定工程S33は、第1ファン12a又は第2ファン12bの不具合が特定される。本実施形態の第2特定工程S33では、図4に示した判断部37の第2特定部39bが演算部31(図3に示す)によって実行されることにより、第1ファン12a又は第2ファン12bの不具合の有無が特定される。図10は、第2特定工程S33の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の第2特定工程S33では、先ず、空調履歴データの第1ファン12aの回転数と、第2グループの温度差Dとの関係性(以下、単に、「第1関係性」ということがある。)が求められる(工程S61)。図11(a)及び(b)は、第1ファン12aの回転数、及び、第2グループ7Bの温度差と、時間との関係の一例を示すグラフである。図11(a)及び(b)において、第2グループ7Bの温度差Dは、第2グループ7Bの2階の空間5c及び5dの各温度差の絶対値の平均が求められる。
第1関係性(第1ファン12aの回転数と、第2グループの温度差Dとの関係性)については、適宜取得することができる。本実施形態の第1関係性は、第1ファン12aの回転数の増加率と、第2グループの温度差Dの増加率との関係が求められる。なお、これらの増加率は、適宜計算することができる。本実施形態では、予め定められた期間(例えば、2〜4時間)において、その期間の開始時及び終了時のそれぞれの回転数及び温度差Dを用いて計算される。第1関係性は、関係性記憶部34bに記憶される。
次に、本実施形態の第2特定工程S33では、空調履歴データの第2ファン12bの回転数と、第1グループの温度差Dとの関係性(以下、単に「第2関係性」ということがある。)が求められる(工程S62)。第2関係性(第2ファン12bの回転数と、第1グループの温度差Dとの関係性)については、適宜取得することができる。本実施形態の第2関係性は、第2ファン12bの回転数の増加率と、第1グループの温度差Dの増加率との関係が求められる。なお、これらの増加率は、工程S61と同様に計算することができる。第2関係性は、関係性記憶部34bに記憶される。
次に、本実施形態の第2特定工程S33では、第1関係性(第1ファン12aの回転数と、第2グループの温度差Dとの関係性)、又は、第2関係性(第2ファン12bの回転数と、第1グループ7Aの温度差Dとの関係性)に基づいて、第1ファン12a又は第2ファン12bの不具合の有無が判断される(工程S63)。
例えば、第1ファン12aが第2グループ7Bに誤って接続された場合において、図11(a)に示されるように、第1ファン12aの回転数の増加率が上昇すると、第2グループ7Bに送られる空調された空気A2の量が多くなる。これにより、例えば、第2グループ7Bの空間の実温度が目標温度に未達の場合(本例では、暖房時)には、第2グループの温度差Dが小さくなり、その温度差Dの増加率が低下する。
一方、図11(b)に示されるように、第1ファン12aの回転数の増加率が低下すると、第2グループ7Bに送られる空調された空気A2の量が少なくなる。これにより、第2グループ7Bの空間の実温度が目標温度に未達の場合(本例では、暖房時)には、その温度差Dが大きくなり、その温度差Dの増加率が上昇する。
このように、第1ファン12aが第2グループ7Bに誤って接続された場合において、第2グループ7Bの空間5の実温度が目標温度に未達の場合(本例では、暖房時)には、第1ファン12aの回転数と、第2グループの温度差Dとの間に、二律背反の関係がある。なお、冷房時においても、第2グループ7Bの空間の実温度が目標温度に未達の場合には、暖房時と同様に、二律背反の関係がある。このような二律背反の関係は、空調システム8が目的とする空調制御に反するため、第1関係性に問題がある。
なお、第2グループ7Bの空間5の実温度が目標温度に達成した後については、上記のような二律背反の関係とは異なり、例えば、第1ファン12aの回転数の増加率が上昇すると、第2グループ7Bの温度差Dの増加率も上昇する関係となる。このような関係も、空調システム8が目的とする空調制御に反するため、第1関係性に問題がある。
同様に、第2ファン12bが第1グループ7Aに誤って接続された場合において、第1グループ7Aの空間5の実温度が目標温度に未達の場合(本例では、暖房時)には、第2ファン12bの回転数と、第1グループ7Aの温度差Dとの間に、二律背反の関係がある。このような二律背反の関係は、空調システム8が目的とする空調制御に反するため、第2関係性に問題がある。
なお、第1グループ7Aの空間5の実温度が目標温度に達成した後については、上記のような二律背反の関係とは異なり、例えば、第2ファン12bの回転数の増加率が上昇すると、第1グループ7Aの温度差Dの増加率も上昇する関係となる。このような関係も、空調システム8が目的とする空調制御に反するため、第2関係性に問題がある。
工程S63では、第1ファン12aの回転数と第2グループの温度差Dとの間の関係性(第1関係性)、又は、第2ファン12bの回転数と第1グループ7Aの温度差Dとの間の関係性(第2関係性)に、問題があるか否かが判断される。
工程S63において、第1関係性又は第2関係性に問題があると判断された場合(工程S63で、「Y」)、図1に示した第1ファン12a又は第2ファン12bが誤って接続されている可能性が高い。この場合、第1ファン12a又は第2ファン12bに不具合があると特定される(工程S64)。
工程S64では、第1関係性に問題があると判断された場合、第1ファン12a(図1に示す)に不具合があると特定される。一方、第2関係性に問題があると判断された場合、第2ファン12b(図1に示す)に不具合があると特定される。本実施形態の工程S64では、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に、不具合の箇所として、第1ファン12a又は(及び)第2ファン12bが記憶される。
一方、工程S63において、第1関係性及び第2関係性に問題がないと判断された場合(工程S63で、「N」)、図1に示した第1ファン12a及び第2ファン12bに不具合がないと判断される。この場合、次の工程S65が実施される。
上記のような第1ファン12a及び第2ファン12b(図1に示す)の接続の不具合を除いて、第1グループ7A又は第2グループ7B(図1に示す)が適切に空調されない原因としては、例えば、図1に示した各ダクト14a又は14bについて、第1ファン12a又は第2ファン12bから各分岐部25、25までの領域で潰れ等が生じ、空調された空気A2が圧損によって、第1グループ7A又は第2グループ7Bに十分に供給されていないことが考えられる。このような圧損が生じている場合には、本実施形態のようにファン12が定風量ファンとして構成されている場合、建物2に必要な換気回数を維持するために、ファン12(本例では、第1ファン12a及び第2ファン12bの双方)の回転数が大きくなる。このため、工程S65では、ファン12の回転数が、予め定められた閾値よりも大きいか否かが判断される。閾値については、工程S54と同様に設定することができる。
工程S65において、ファン12(本例では、図1に示した第1ファン12a又は第2ファン12b)の回転数が閾値よりも大きい場合(工程S65で、「Y」)、図1に示したダクト14a又は14bに潰れ等が生じている可能性が高い。この場合、ダクト14a又は14bに不具合があると特定される(工程S66)。工程S66では、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に、不具合の箇所として、ダクト14a又は14bが記憶される。
一方、工程S65において、ファン12(本例では、図1に示した第1ファン12a及び第2ファン12b)の回転数が閾値以下である場合(工程S65で、「N」)、上記のような圧損が生じておらず、空調システム8の不具合を特定できない。この場合、第2特定工程S33の一連の処理が終了する。このように、空調システム8の不具合を特定できない場合には、これまでの判断履歴が、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に入力されてもよい。
次に、図8に示されるように、本実施形態の不具合特定工程S22では、工程S31において、空調不良空間の組み合わせが、図1に示した第1グループ7Aの全ての空間5、及び、第2グループ7Bの全ての空間5ではなく、空調不良空間の組み合わせが、2つ以上の空間5であると判断された場合、第3特定工程S34が実施される。
2つ以上の空間5が適切に空調されない原因としては、例えば、図1及び図2に示したダンパー13や温度センサー11の制御手段15への接続が適切でないことが考えられる。接続が適切とは、制御手段15に接続されているダンパー13及び温度センサー11が設けられている空間5(例えば、1階の一方の空間5a)と、制御手段15で認識されているダンパー13及び温度センサー11が設けられている空間5(例えば、1階の一方の空間5a)とが一致していることを意味している。一方、接続が適切でない場合としては、例えば、ダンパー13及び温度センサー11が1階の一方の空間5aに設けられるべきところ、1階の他方の空間5bに設けられている場合である。
図1及び図2に示したダンパー13の接続が適切でない場合、制御手段15は、ダンパー13の開度を制御できないため、そのダンパー13が設けられた空間5を適切に空調することができない。一方、図1及び図2に示した温度センサー11の接続が適切でない場合、制御手段15は、その温度センサー11が設けられた空間5の温度を正しく計測することができないため、その空間5を適切に空調することができない。
このような観点より、本実施形態の第3特定工程S34では、図1及び図2に示したダンパー13又は温度センサー11の不具合が特定される。本実施形態の第3特定工程S34では、図4に示した判断部37の第3特定部39cが演算部31(図3に示す)によって実行されることにより、図1及び図2に示したダンパー13又は温度センサー11の不具合が特定される。図12は、第3特定工程S34の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の第3特定工程S34では、先ず、図1及び図2に示したダンパー13又は温度センサー11の接続に誤りがあるか否かが判断される(工程S71)。工程S71では、プラン情報記憶部34e(図3に示す)に記憶されているプラン情報が用いられる。本実施形態のプラン情報は、建物2の設計情報である。このプラン情報には、各空間5(本例では、図1に示した1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)のダンパー13の接続に関する情報、及び、各空間5の温度センサー11の接続に関する情報が含まれている。
本実施形態のダンパー13の接続に関する情報には、例えば、各空間5(本例では、図1に示した1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)のダンパー13と制御手段15とを接続する配線コード(図示省略)等について、それらのコードが接続される制御手段15の端子の位置が示されている。このような情報により、制御手段15に実際に接続されているダンパー13と、制御手段15で認識されているダンパー13との関係を特定することができる。
温度センサー11の接続に関する情報は、例えば、各空間5(本例では、図1に示した1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)の温度センサー11と制御手段15とを接続する配線コード(図示省略)等について、それらのコードが接続される制御手段15の端子の位置を示している。このような情報により、制御手段15に実際に接続されている温度センサー11と、制御手段15で認識されている温度センサー11との関係を特定することができる。さらに、温度センサー11の接続に関する情報には、各空間5において、温度センサー11が設置されている位置が含まれてもよい。
工程S71では、上記のプラン情報に基づいて、制御手段15に実際に接続されているダンパー13及び温度センサー11と、制御手段15で認識されているダンパー13及び温度センサー11とが一致しているか否かが判断される。ダンパー13及び温度センサー11が一致してない場合には、ダンパー13又は温度センサー11が誤って接続されている。
工程S71において、図1に示したダンパー13又は温度センサー11の接続に誤りがあると判断された場合(工程S71で、「Y」)、ダンパー13又は温度センサー11の不具合が特定される(工程S72)。工程S72では、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に、不具合の箇所として、ダンパー13又は温度センサー11が記憶される。
一方、工程S71において、ダンパー13及び温度センサー11の接続に誤りがないと判断された場合(工程S71で、「N」)、次の工程S73が実施される。
上記のようなダンパー13又は温度センサー11の不具合を除いて、2つ以上の空間5が適切に空調されない原因としては、例えば、図1に示した各ダクト14a又は14bについて、各分岐部25、25から各ダンパー13までの領域で潰れ等が生じ、空調された空気A2が圧損によって十分に供給されていないことが考えられる。このような圧損が生じている場合には、ファン12(本例では、第1ファン12a又は第2ファン12b)の回転数が大きくなる。このため、工程S73では、ファン12の回転数が、予め定められた閾値よりも大きいか否かが判断される。閾値については、工程S65と同様に設定することができる。
工程S73において、ファン12(本例では、第1ファン12a又は第2ファン12b)の回転数が閾値よりも大きい場合(工程S73で、「Y」)、ダクト14に潰れ等が生じている可能性が高い。この場合、ダクト14に不具合があると特定される(工程S74)。工程S74では、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に、不具合の箇所として、ファン12が記憶される。
一方、工程S73において、ファン12の回転数が閾値以下である場合(工程S73で、「N」)、上記のような圧損が生じておらず、空調システム8の不具合を特定できない。この場合、第3特定工程S34の一連の処理が終了する。このように、空調システム8の不具合を特定できない場合には、これまでの判断履歴が、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に入力されてもよい。
次に、図8に示されるように、本実施形態の不具合特定工程S22では、工程S31において、空調不良空間の組み合わせが、1つの空間5(図3に示す)であると判断された場合、第4特定工程S35が実施される。
1つの空間5が適切に空調されない原因としては、例えば、温度センサー11の不具合が考えられる。この不具合の一例としては、家具などの障害物によって温度センサー11が遮られることにより、空間5の温度を正確に測定できず、制御手段15が、空調された空気A2の供給を適切に制御できないことが考えられる。
なお、1つの空間5が適切に空調されない場合には、上述のような2つ以上の空間5が適切に空調されない場合とは異なり、ダンパー13及び温度センサー11の接続に誤りがある可能性は低いと考えられる。これは、一方の空間5のダンパー13又は温度センサー11の接続に誤りがあると、他方の空間5のダンパー13又は温度センサー11の接続も必然的に誤るため、2つ以上の空間5が適切に空調されなくなるためである。
このような観点より、本実施形態の第4特定工程S35では、温度センサー11の不具合を特定する第4特定工程S35が実施される。本実施形態の第4特定工程S35では、図4に示した判断部37の第4特定部39dが演算部31(図3に示す)によって実行されることにより、温度センサー11の不具合が特定される。図13は、第4特定工程S35の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の第4特定工程S35では、先ず、温度センサー11の設置位置に誤りがあるか否かが判断される(工程S81)。工程S81では、プラン情報記憶部34e(図3に示す)に記憶されているプラン情報が用いられる。本実施形態のプラン情報には、各空間5(本例では、図1に示した1階の空間5a及び5b、並びに、2階の空間5c及び5d)の温度センサー11の設置に関する情報が含まれている。この情報には、例えば、各空間5において、温度センサー11が設置されている位置情報が含まれる。
工程S81では、上記のプラン情報に基づいて、例えば、家具などの障害物と、温度センサー11との間の距離や位置関係を求めて、温度センサー11の設置位置に誤りがあるか否かが判断される。工程S81において、温度センサー11の設置位置に誤りがあると判断された場合(工程S81で、「Y」)、温度センサー11の不具合が特定される(工程S82)。工程S82では、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に、不具合の箇所として、温度センサー11が記憶される。
一方、工程S81において、温度センサー11(図1に示す)の設置位置に誤りがないと判断された場合(工程S81で、「N」)、次の工程S83が実施される。
上記のような温度センサー11(図1に示す)の不具合を除いて、1つの空間5が適切に空調されない原因としては、例えば、図1に示した各ダクト14a又は14bについて、各分岐部25、25から各ダンパー13までの領域で潰れ等が生じ、空調された空気A2が圧損によって十分に供給されていないことが考えられる。このような圧損が生じている場合には、ファン12(本例では、第1ファン12a又は第2ファン12b)の回転数が大きくなる。このため、工程S83では、ファン12の回転数が、予め定められた閾値よりも大きいか否かが判断される。閾値については、工程S65と同様に設定することができる。
工程S83において、ファン12(本例では、第1ファン12a又は第2ファン12b)の回転数が閾値よりも大きい場合(工程S83で、「Y」)、ダクト14に潰れ等が生じている可能性が高い。この場合、ダクト14に不具合があると特定される(工程S84)。工程S84では、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に、不具合の箇所として、ファン12が記憶される。
一方、工程S83において、ファン12の回転数が閾値以下である場合(工程S83で、「N」)、上記のような圧損が生じておらず、空調システム8の不具合を特定できない。この場合、第4特定工程S35の一連の処理が終了する。このように、空調システム8の不具合を特定できない場合には、これまでの判断履歴が、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に入力されてもよい。
次に、図8に示されるように、本実施形態の不具合特定工程S22では、工程S31において、空調不良空間が一つも存在しないと判断された場合、経年劣化判断工程S36が実施される。本実施形態の経年劣化判断工程S36では、例えば、図1に示した空調システム8を構成する空気調和機9、ファン12又はダクト14(本例では、これらの全て)の経年劣化の有無が判断される。
経年劣化判断工程S36では、図4に示した判断部37の経年劣化判断部40が演算部31(図1に示す)によって実行されることにより、経年劣化の有無が判断される。図14は、経年劣化判断工程S36の処理手順の一例を示すフローチャートである。
空気調和機9の経年劣化は、空調能力に基づいて判断される。本実施形態の経年劣化判断工程S36では、先ず、空気調和機9(図1に示す)の空調能力が計算され(工程S91)、その空調能力が予め定められた閾値以下であるか否かが判断される(工程S92)。空調能力の計算方法については、上述のとおりである。また、閾値については、適宜設定することができ、例えば、工程S52と同一の閾値に設定することができる。
工程S92において、空調能力が閾値以下である場合(工程S92で、「Y」)、空気調和機9が経年劣化していると判断される(工程S93)。工程S93では、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に、経年劣化の箇所として、空気調和機9が記憶される。一方、工程S92において、空調能力が閾値よりも大きい場合(工程S92で、「N」)、空気調和機9が経年劣化していないと判断される。この場合、次の工程S94が実施される。
図1に示したファン12(本例では、第1ファン12a又は第2ファン12b)及びダクト14(本例では、ダクト14a又は14b)の経年劣化は、空調履歴データのファン12の回転数に基づいて判断される。ファン12の経年劣化の一例としては、ファン12の軸ブレが含まれる。ファン12の軸ブレが生じると、ファン12の回転数が不安定になる。このようなファン12の軸ブレの有無を判断するために、工程S94では、ファン12の回転数の上限値と下限値との範囲が、予め定められた閾値よりも大きいか否かが判断される。閾値については、ファン12の仕様に基づいて、適宜設定することができる。
工程S94において、ファン12(本例では、第1ファン12a又は第2ファン12b)の回転数の範囲が閾値よりも大きい場合(工程S94で、「Y」)、ファン12が経年劣化していると判断される(工程S95)。工程S95では、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に、経年劣化の箇所として、ファン12が記憶される。一方、工程S94において、ファン12の回転数の範囲が閾値以下である場合(工程S94で、「N」)、ファン12が経年劣化していないと判断される。この場合、次の工程S96が実施される。
図1に示したダクト14(本例では、ダクト14a又は14b)の経年劣化の一例としては、ダクト14の潰れや、ダクト14の破れ等が含まれる。例えば、本実施形態のようにファン12が定風量ファンとして構成されている場合において、第1ダクト14aに潰れが生じると、圧損が生じて、第1ファン12aの回転数が大きくなる。同様に、第2ダクト14bに潰れが生じると、第2ファン12bの回転数が大きくなる。一方、第1ダクト14aに破れが生じると、空調された空気A2がダクト14から漏れるため、第1ファン12aの風量が必要以上に大きくなっていると判断されて、第1ファン12aの回転数が小さくなる。同様に、第2ダクト14bに破れが生じると、第2ファン12bの回転数が小さくなる。
なお、ファン12が定風量ファンとして構成されていない場合には、ダクト14に潰れが生じると、定風量ファンとは逆に、ファン12の回転数が小さくなる。一方、ダクト14に破れが生じると、ファン12の回転数が大きくなる。
このため、工程S96では、ファン12(本例では、第1ファン12a及び第2ファン12b)の回転数が、予め定められた閾値の範囲外か否かが判断される。閾値については、適宜設定することができ、例えば、工程S54と同様の手順で設定することができる。
工程S96において、ファン12の回転数が、予め定められた閾値の範囲外である場合(工程S96で、「Y」)、ダクト14が経年劣化(潰れ又は破れが発生)していると判断される(工程S97)。工程S97では、不具合箇所記憶部34d(図3に示す)に、経年劣化の箇所として、ダクト14が記憶される。一方、工程S96において、ファン12の回転数が、予め定められた閾値の範囲内である場合(工程S96で、「N」)、ダクト14が経年劣化していない。この場合、経年劣化判断工程S36、及び、不具合特定工程S22の一連の処理が終了する。
次に、本実施形態の検知方法では、図5に示されるように、空調システム8に不具合があるか否かが判断される(工程S3)。工程S3では、図3に示した不具合箇所記憶部34dに記憶されている不具合の箇所(経年劣化の箇所を含む)、及び、プログラム部35の判断部37が、作業用メモリ33に入力される。そして、判断部37が、演算部31によって実行される。
工程S3において、空調システム8に不具合があると判断された場合(工程S3で、「Y」)、不具合の箇所(経年劣化の箇所を含む)の修理等が実施される(工程S4)。不具合の箇所の修理は、例えば、不具合の箇所に対応する施工業者を建物2に派遣して実施される。
判断工程S2において、空調システム8の不具合を特定することができずに、不具合箇所記憶部34dに判断履歴が記憶されている場合には、例えば、オペレータ等が判断履歴を解析し、不具合の箇所が特定されるのが望ましい。
一方、工程S3において、空調システム8に不具合がないと判断された場合(工程S3で、「N」)、検知方法の一連の処理が終了する。なお、本実施形態の検知方法は、例えば、ユーザーやオペレータ等によって手動で開始されてもよいし、任意の期間毎に自動的に実行されてもよい。
このように、本実施形態の検知方法(検知装置26)は、空調システム8の空調履歴データを取り込んで、目標温度と実温度との関係性に基づいて、空調システム8の不具合の有無を判断することができる。したがって、本実施形態の検知方法(検知装置26)は、空調システム8の不具合を早期に検知することが可能となる。
さらに、本実施形態の検知方法では、空調システム8の不具合が特定されなくても、空気調和機9等の経年劣化を判断することができるため、空調システム8の不具合を予防することができる。
図14に示されるように、これまでの実施形態の経年劣化判断工程S36では、図1に示した空気調和機9、ファン12及びダクト14の経年劣化の有無が判断されたが、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、フィルター19の経年劣化(目詰まり等)が判断されてもよい。上述のとおり、フィルター19に目詰まりが生じている場合には、建物2に必要な換気回数を維持するために、ファン12(本例では、第1ファン12a及び第2ファン12bの双方)の回転数が大きくなる。このため、経年劣化判断工程S36では、空調履歴データのファン12の回転数が、予め定められた閾値よりも大きいか否かが判断されることにより、フィルター19の経年劣化の有無を判断することができる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。