JP2021004581A - 内燃機関のバルブタイミング制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】遅角油圧室と進角油圧室との間のシール性の低下を抑制する。【解決手段】第2シュー8bの周方向内周側のシュー径方向端面20には、該端面20に対し矩形状に凹むシュー側シール溝21が形成されている。シュー側シール溝21の内縁部には、円弧形状をなす第1円弧状部40が形成されている。このシュー側シール溝21内には、シール部材18と、ロータ部14の外周面14bに対しシール部材18を付勢する板ばね19とが配置されている。シール部材18の周方向一側面18fのうち第1円弧状部40から周方向に離間した部分の面積である第2面積A2は、シール部材18のロータ部14と径方向で対向する接触面18dの半分の面積である第1面積A1よりも大きく設定されている。【選択図】図7
Description
本発明は、内燃機関のバルブタイミング制御装置に関する。
以下の特許文献1に記載の従来のバルブタイミング制御装置では、筒状のハウジングに形成された複数のシューと、ハウジング内に収容されたベーンロータの複数のベーンとにより、遅角油圧室と進角油圧室が区切られている。
各シューの径方向先端面には、シール溝が軸方向に沿って形成されている。このシール溝には、遅角油圧室と進角油圧室との間をシールするシール部材が収容されている。
遅角油圧室が低圧であり、かつ進角油圧室が高圧である場合には、進角油圧室の高圧の油圧がシューの径方向先端面とベーンロータのロータ部の外周面との間の所定の隙間を介してシール部材を押し付けることにより、シール部材の周方向一側面がシール溝の対向一側面に当接した状態となる。
このとき、シール部材の周方向他側面とシール溝の対向他側面との間に形成された所定の隙間を介して、進角油圧室の高圧の油圧がシール部材の背面に導かれている。そして、この背面に導かれた油圧がロータ部の外周面に対しシール部材を押し付けることにより、遅角油圧室と進角油圧室との間をシールするようになっている。
特許文献1に記載の従来のバルブタイミング制御装置では、ベーンロータが相対回転可能な作動時において、カムシャフトに交番トルクが発生すると、遅角油圧室および進角油圧室の油圧の高低が切り替わる。つまり、遅角油圧室の油圧が高圧となり、進角油圧室の油圧が低圧となる。これにより、シューのシール溝内にあるシール部材が、遅角油圧室から高圧の油圧を周方向一側面で受けて、シール溝の対向他側面側へ移動する。
しかし、ロータ部の外周面と該外周面と対向するシール部材の接触面との間の隙間にも遅角油圧室から高圧の油圧が作用するため、シール部材が、シール部材の対向他側面側へ移動するよりも早く、シール溝の底部側へ移動してしまう虞がある。これにより、遅角油圧室と進角油圧室との間のシール性が低下するという問題があった。
本発明は、従来の実情に鑑みて案出されたもので、遅角油圧室と進角油圧室との間のシール性の低下を抑制することができる内燃機関のバルブタイミング制御装置を提供することを一つの目的としている。
本発明の好ましい態様の一つとしては、シール部材を収容するシール溝がハウジングとベーンロータのいずれか一方の第1部材に設けられている。そして、シール部材は、ハウジングとベーンロータのいずれか他方の第2部材に径方向から当接する。シール溝はシール部材の周方向一側面に対向する対向一側面を有すると共に、対向一側面の径方向の先端部に円弧形状をなす第1円弧状部が形成されている。また、シール部材の周方向の一側面がシール溝の対向一側面に当接した状態において、シール部材の第2部材と径方向で対向する部分の面積の半分の大きさを有する第1面積よりも、周方向の一側面のうち対向一側面に当接している部分よりも第2部材側であって、対向一側面から離間する部分の面積である第2面積の方が大きい。
本発明によれば、遅角油圧室と進角油圧室との間のシール性の低下を抑制することができる。
以下、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置の実施形態を図面に基づいて詳述する。本実施形態では、排気弁側の動弁装置に適用したものを示している。
[第1の実施形態]
図1は本発明に係るバルブタイミング制御装置の一部を断面で示す全体構成図である。図2はバルブタイミング制御装置の分解斜視図である。図3はフロントプレート11を外して最進角状態のベーンロータ7等を示した正面図、図4はフロントプレート11を外して最遅角状態のベーンロータ7等を示した正面図である。
図1は本発明に係るバルブタイミング制御装置の一部を断面で示す全体構成図である。図2はバルブタイミング制御装置の分解斜視図である。図3はフロントプレート11を外して最進角状態のベーンロータ7等を示した正面図、図4はフロントプレート11を外して最遅角状態のベーンロータ7等を示した正面図である。
バルブタイミング制御装置(VTC)は、図1および図2に示すように、図外のクランクシャフトによりタイミングチェーンを介して回転駆動される駆動回転体であるタイミングスプロケット1と、該タイミングスプロケット1に対して相対回転可能に設けられた排気側のカムシャフト2と、タイミングスプロケット1とカムシャフト2との間に配置されて、該両者1,2の相対回転位相を変更する位相変更機構3と、該位相変更機構3を作動させる油圧回路4と、を備えている。なお、駆動回転体としては、タイミングベルトによって回転力が伝達されるタイミングプーリであっても良い。
タイミングスプロケット1は、炭素鋼により円盤状に形成されて、外周にタイミングチェーンが巻回される歯車部1aと、中央に貫通形成され、カムシャフト2の先端部2aの外周に回転可能に支持される軸受孔1bとを有している。また、タイミングスプロケット1は、外周の周方向の複数位置(本実施形態では4箇所)に、雌ねじ孔1cが周方向の等間隔位置に形成されている。
また、このタイミングスプロケット1は、後述するハウジング6の後端開口を、液密的に閉塞するリアカバーとして構成されている。
カムシャフト2は、図示せぬシリンダヘッド上に複数のカム軸受を介して回転可能に支持されている。カムシャフト2の外周面には、排気弁を開閉作動させる卵形の複数の駆動カムが軸方向の所定位置に固定されている。カムシャフト2の先端部2a側の内部軸心方向には、後述するベーンロータ7を軸方向から固定するカムボルト5の軸部5aが挿入されるボルト挿入孔2bが形成されている。なお、このボルト挿入孔2bの先端部には、カムボルト5の先端に形成された雄ねじがねじ留めされる雌ねじ孔2cが形成されている。また、カムシャフト2は、所定の部材によって回転軸方向の移動が規制されている。
位相変更機構3は、図1〜図4に示すように、内部に作動室を有するハウジング6と、カムシャフト2の先端部2aにカムボルト5によって固定されて、ハウジング6内に相対回転可能に収容された従動回転体であるベーンロータ7と、ハウジング6の後述のハウジング本体6aの内周面に一体に形成された4つの第1〜第4シュー8a〜8dとベーンロータ7によって作動室が仕切られたそれぞれ4つの遅角作動室である遅角油圧室9および進角作動室である進角油圧室10と、を備えている。
ハウジング6は、焼結金属によって円筒状に形成されたハウジング本体6aと、このハウジング本体6aの前端開口を閉塞するフロントプレート11と、後端開口を閉塞するタイミングスプロケット1と、から構成されている。ハウジング本体6aとフロントプレート11およびタイミングスプロケット1とは、各シュー8a〜8dの各ボルト挿入孔13等を貫通する4本の固定部材であるボルト12によって共締め固定されている。
フロントプレート11は、炭素鋼によって、タイミングスプロケット1よりも小さい肉厚を有する円盤状に形成されている。フロントプレート11の中央には、カムボルト5が挿入される比較的大径な貫通孔11aが貫通形成されている。フロントプレート11は、外周部の周方向等間隔位置にボルト12が挿入される4つのボルト挿入孔11bが貫通形成されている。
ここで、以下の説明の便宜上、ベーンロータ7の回転軸線に沿った方向を「軸方向」と定義し、該軸方向の一対の端部のうちフロントプレート11側の端部を「軸方向一端」と定義し、タイミングスプロケット1側の端部を「軸方向他端」と定義する。また、ベーンロータ7の回転軸線と直交する方向を「径方向」と定義し、ベーンロータ7の回転軸線周りの方向を「周方向」と定義する。
なお、ベーンロータ7の回転軸線は、円筒状のハウジング本体6aの軸心と一致している。このため、本実施形態では、上記「軸方向」、「軸方向一端」、「軸方向他端」、「径方向」および「周方向」は、ハウジング本体6aにも適用する。
ベーンロータ7は、例えば焼結金属によって一体に形成され、図1〜図4に示すように、軸方向中央に形成されたボルト挿入孔7aに挿入されるカムボルト5によってカムシャフト2に固定されたロータ部14と、該ロータ部14の外周面に周方向のほぼ90°等間隔位置に放射状に突出形成された複数(本実施形態では4枚)の第1〜第4ベーン15a〜15dとから構成されている。
ロータ部14は、比較的大径な円筒状に形成され、中央の内部軸方向にカムシャフト2の雌ねじ孔2cと連続するボルト挿入孔7aが貫通形成されている。ロータ部14の軸方向他端側の端面に形成された円形状の嵌合溝14aには、カムシャフト2の先端部2aが軸方向から嵌合している。
第1〜第4ベーン15a〜15dは、その径方向の突出長さが比較的短く形成されて、それぞれ各シュー8a〜8dの間に配置されている。第1〜第4ベーン15a〜15dは、第1ベーン15aの周方向に沿った幅が扇状の最大幅に設定されて、第1ベーン15a以外の3枚の第2〜第4ベーン15b〜15dの周方向に沿った幅が第1ベーン15aよりも小さいほぼ同一の幅になるように設定されている。
第1〜第4ベーン15a〜15dの径方向外側の端面であるベーン径方向端面16には、該ベーン径方向端面16に対し概ね矩形状に凹むベーン側シール溝17が形成されている。このベーン側シール溝17には、ハウジング本体6aの内周面との間をシールするシール部材18と、該シール部材18とベーン側シール溝17の底面との間に所定のセット荷重をもって配置され、ハウジング本体6aの内周面に対しシール部材18を付勢する付勢部材、例えば板ばね19とが設けられている。
同様に、各シュー8a〜8dの径方向内側の端面であるシュー径方向先端面20には、ベーン側シール溝17と概ね同様の形状に形成され、各シュー8a〜8dのシュー径方向先端面20に対し概ね矩形に凹むシュー側シール溝21が形成されている。このシュー側シール溝21には、ベーン側シール溝17内に設けられたものと同様のシール部材18および板ばね19が収容されている。より詳細には、シュー側シール溝21には、ロータ部14の外周面との間をシールするシール部材18と、該シール部材18とシュー側シール溝21の底面との間に所定のセット荷重をもって配置され、ロータ部14の外周面に対しシール部材18を付勢する板ばね19とが設けられている。
また、ベーンロータ7は、最遅角側へ相対回転すると、図4に示すように、第1ベーン15aの一側面が周方向から対向する第1シュー8aの対向側面に当接して最大遅角側の回転位置が規制されるようになっている。また、ベーンロータ7は、図3に示すように、最進角側へ相対回転すると、第1ベーン15aの他側面が周方向から対向する第2シュー8bの対向側面に当接して最大進角側の回転位置が規制されるようになっている。これら第1ベーン15aと第1、第2シュー8a,8bがベーンロータ7の最遅角位置と最進角位置を規制するストッパとして機能するようになっている。
このとき、他の第2〜第4ベーン15b〜15dは、両側面が周方向から対向する各シュー8b〜8dの対向側面に当接せずに離間状態にある。従って、第1ベーン15aと第1、第2シュー8a,8bとの当接精度が向上すると共に、各遅角油圧室9および各進角油圧室10への油圧の供給速度が速くなってベーンロータ7の正逆方向の回転応答性が高くなる。
各遅角油圧室9と各進角油圧室10は、ロータ部14の内部に径方向に沿って形成された第1連通孔9aと第2連通孔10aを介して油圧回路4にそれぞれ連通している。
油圧回路4は、各遅角油圧室9および各進角油圧室10に対して作動油(油圧)を選択的に供給あるいは排出するもので、図1に示すように、各遅角油圧室9に対して第1連通孔9aを介して油圧を給排する遅角油通路22と、各進角油圧室10に対して第2連通孔10aを介して油圧を給排する進角油通路23と、該各通路22,23に作動油を供給するオイルポンプ24と、機関の作動状態に応じて遅角油通路22と進角油通路23の流路を切り換える電磁切換弁25とを備えている。オイルポンプ24は、機関のクランクシャフトによって回転駆動するトロコイドポンプ等の一般的なものである。
遅角油通路22と進角油通路23とは、それぞれの一端部が電磁切換弁25の通路ポートに接続されている一方、各他端部側が図外のシリンダヘッドやシリンダブロック、カムシャフト2、第1、第2連通孔9a,10aを介して各遅角油圧室9および各進角油圧室10に連通している。
電磁切換弁25は、図1に示すように、2位置3ポート弁であって、図外の電子コントローラによって、バルブボディ内に軸方向へ摺動可能に設けられた図外のスプール弁体を前後方向に移動させる。これによって、オイルポンプ24の吐出通路24aといずれかの油通路22,23と連通させると同時に、該他方の油通路22,23とドレン通路26とを連通させるようになっている。
オイルポンプ24の吸入通路24bとドレン通路26とは、オイルパン27内に連通している。また、オイルポンプ24の吐出通路24aの下流側には、濾過フィルタ28が設けられていると共に、この下流側で内燃機関の摺動部等に潤滑油を供給するメインオイルギャラリーM/Gに連通している。さらに、オイルポンプ24は、吐出通路24aから吐出された過剰な作動油をオイルパン27に排出して適正な流量に制御する流量制御弁29が設けられている。
電子コントローラは、内部のコンピュータが図外のクランク角センサやエアフローメータ、機関水温センサ、スロットルバルブ開度センサおよびカムシャフト2の現在の回転位相を検出するカム角センサ等の各種センサ類からの情報信号を入力して現在の機関運転状態を検出している。また、電子コントローラは、電磁切換弁25のコイルに制御パルス電流を出力してそれぞれのスプール弁体の移動位置を制御し、これによって、各通路を切り換え制御するようになっている。
また、第1ベーン15aとタイミングスプロケット1との間には、ハウジング6に対してベーンロータ7を最進角位置に拘束するロック機構が設けられている。
このロック機構は、図1〜図4に示すように、第1ベーン15aの内部軸方向に貫通形成された摺動用孔30と、該摺動用孔30に摺動可能に収容されて、タイミングスプロケット1側に対して進退可能に設けられたロックピン31と、タイミングスプロケット1の径方向のほぼ中央所定位置に形成され、ロックピン31の先端部31aが挿入されてベーンロータ7をロックするロック穴32と、機関の始動状態に応じてロックピン31の先端部31aをロック穴32に挿入あるいは挿通を解除する挿脱機構と、から構成されている。
摺動用孔30は、図1に示すように、内径が大小の段差径状に形成されて、ロック穴32側に、外径が小さい小径部30aが形成され、フロントプレート11側に、外径が小径部30aよりも大きい大径部30bが形成されている。
ロックピン31は、先端部31aを含めた全体がほぼ円柱状に形成されていると共に、先端部31aが摺動用孔30の小径部30aの内周面に摺動可能に保持されている。ロックピン31は、後端側から内部軸方向に形成された凹溝底面とフロントプレート11の内端面との間に弾装されたコイルスプリング33によって、ロックピン31を進出方向(挿入する方向)へ付勢されている。
また、ロックピン31の後端部に、大径部30bの内周面に摺動する大径フランジ31bが設けられており、この大径フランジ31bと摺動用孔30の段差部との間に、円筒状の受圧室34が形成されている。
ロック穴32は、ロックピン31の先端部31aの外径よりも大きく形成され、周方向の進角油圧室10側に偏倚した位置に形成されている。ロック穴32の内周面には、耐摩耗性金属材からなる円環状のスリーブ35が圧入固定されており、このスリーブ35内のスリーブ孔35aにロックピン31の先端部31aが軸方向から係合するようになっている。そして、この先端部31aの係合によって、ハウジング6に対するベーンロータ7の相対変換角度が最進角側の位置となるように設定されている。
上記挿脱機構は、ロックピン31を進出方向へ付勢するコイルスプリング33と、第1ベーン15aに形成された所定の油孔を介して受圧室34に油圧を供給してロックピン31を後退させる図外の解除用油圧回路とから構成されている。この解除用油圧回路は、遅角油圧室9と進角油圧室10にそれぞれ選択的に供給された油圧が所定の油孔を介して受圧室34に供給されてロックピン31に後退方向へ作用するようになっている。
図5は、図3の線A−Aに沿って切断したシュー側シール溝21内のシール部材18等を示す断面図である。
シール部材18は、金属材料、例えば焼結金属材料により、軸方向に沿って細長く連続する概ね角柱状に形成されている。シール部材18のうちシュー側シール溝21の底面21aと対向する背面には、シール部材18の軸方向両端に設けられ、径方向外周側へ突出する一対の突出部18a,18aと、該突出部18a,18aの軸方向内側に設けられた一対の平坦部18b,18bと、該平坦部18b,18b同士を接続する円弧状部18cとが形成されている。
平坦部18b,18bは、図5に示すように、突出部18a,18aおよび円弧状部18cの径方向外周側の端部よりも径方向内周側にずれた位置に設けられており、シュー側シール溝21の底面21aと平行な面として形成されている。平坦部18b,18bには、板ばね19の後述する接続点19d,19dが弾性的に当接する。
円弧状部18cは、図5に示すように、シール部材18の軸方向中央部の比較的広い範囲にわたって設けられ、底面21aに向かって凸となる円弧形状をなしている。
板ばね19は、概ね長方形のステンレス鋼板を円弧状に折り曲げることにより弾性変形可能に形成されている。板ばね19は、その長手方向が軸方向に沿う姿勢で、シュー側シール溝21の底面21aとシール部材18の背面との間に所定のセット荷重をもって配置されている。板ばね19は、その長手方向中央位置に底面21aと弾性的に当接する頂点19aを有する湾曲部19bと、湾曲部19bの軸方向両端に接続された一対の端部19c,19cとから構成されている。湾曲部19bと端部19c,19cとの間には、シール部材18の平坦部18b,18bに弾性的に当接する一対の接続点19d,19dが設けられている。板ばね19は、その弾性力をもって、ロータ部14の外周面14bに対して、シール部材18の外周面14bと対向する接触面18dを押し付けている。
図6は、図3の線B−Bに沿って切断したベーン側シール溝17内のシール部材18等を示す断面図である。
ベーン側シール溝17には、シュー側シール溝21内に配置されたものと同様の形状および材質を有するシール部材18および板ばね19が設けられている。シール部材18および板ばね19がベーン側シール溝17内に配置された状態では、板ばね19の頂点19aがベーン側シール溝17の底面17aに弾性的に当接しており、さらに、板ばね19の接続点19d,19dがシール部材18の平坦部18b,18bに弾性的に当接している。このようにして、板ばね19は、その弾性力をもって、ハウジング本体6aの内周面36に対して、シール部材18の接触面18dを押し付けている。
図7(a)はカムシャフト2の交番トルクの発生前における第1の実施形態のシュー側シール溝21内のシール部材18を示す部分的な正面図、図7(b)はカムシャフト2の交番トルクの発生後における第1の実施形態のシュー側シール溝21内のシール部材18を示す部分的な正面図である。なお、図7(a)および図7(b)では、シール部材18の背面18e側の空間46を示すため、板ばね19を実際の形状とは異なる簡略化した形状で示している。
第2シュー8bのシュー径方向先端面20の周方向中央部には、該シュー径方向先端面20に対し矩形に凹むシュー側シール溝21が軸方向に沿って形成されている。シュー側シール溝21の周方向に沿った幅は、シール部材18の周方向に沿った幅よりも大きくなるように設定されている。また、シュー側シール溝21の深さは、シール部材18の径方向に沿った長さよりも大きくなるように設定されている。
シュー側シール溝21は、底部37と、該底部37の周方向一端から径方向内周側へ立ち上がる一側部38と、底部37の周方向他端から径方向内周側へ立ち上がる他側部39とから構成されている。
底部37は、平坦な底面21aを有し、この底面21aの周方向両端部には、底面21aに対し円弧状に凹む凹部37aが形成されている。この底面21aとシール部材18の背面18eとの間には、ロータ部14の外周面14bに対しシール部材18の接触面18dを押し付ける板ばね19が設けられている。
一側部38は、周方向一方側、つまり図7(a)および図7(b)に示すように周方向において遅角油圧室9側に設けられている。一側部38は、シール部材18の周方向一側面18fと周方向で対向する対向一側面38aを有している。
一側部38の内縁部、即ちシュー側シール溝21の対向一側面38aの径方向先端部は、対向一側面38aと一側部38の径方向端面38bとを接続する円弧形状をなす第1円弧状部40を有している。つまり、一側部38の内縁部は、円弧形状をなす面取り部として形成された第1円弧状部40を有している。第1円弧状部40の曲率半径は、一側部38の外縁部つまり第2シュー8bの遅角油圧室9側の外縁部に円弧形状の面取り部として形成された第2円弧状部41の曲率半径よりも大きく設定されている。
また、他側部39は、周方向他方側、つまり図7(a)および図7(b)に示すように周方向において進角油圧室10側に設けられている。他側部39は、シール部材18の周方向他側面18gと対向する対向他側面39aを有している。
他側部39の内縁部、即ちシュー側シール溝21の対向他側面39aの径方向先端部は、対向一側面38aの径方向先端部の第1円弧状部40と同様の形状を有し、対向他側面39aと他側部39の径方向端面39bとを接続する円弧形状をなす第1円弧状部40を有している。
また、他側部39の外縁部、即ち第2シュー8bの進角油圧室10側の外縁部は、一側部38の外縁部に設けられたものと同様の円弧形状をなす第2円弧状部41を有している。
シール部材18は、上述の周方向一側面18fおよび周方向他側面18gと、シュー側シール溝21の底面21aと対向する背面18eと、該背面18eとは径方向反対側に設けられ、ロータ部14の外周面14bと対向する接触面18dとを有している。
接触面18dは、ロータ部14へ向かって凸となるように周方向で円弧形状をなしている。従って、接触面18dは、周方向中央部の比較的小さい領域においてロータ部14の外周面14bに当接し、上記周方向中央部以外の領域において外周面14bから径方向に離間している。
図7(a)に示すように、ベーンロータ7が相対回転可能な作動時に、交番トルクの発生前に、遅角油圧室9の油圧が進角油圧室10の油圧よりも低圧である場合には、周方向一側面18fが対向一側面38aに押し付けられている。より詳細には、進角油圧室10の高い油圧がロータ部14の外周面14bと他側部39の径方向端面39bとの間の隙間44を介してシール部材18の周方向他側面18gに作用することにより(図7(a)の矢印C参照)、周方向一側面18fが対向一側面38aに押し付けられている。このとき、周方向一側面18fは、径方向において底面21a側の領域で対向一側面38aに当接しているが、径方向においてロータ部14側の領域で第1円弧状部40から周方向に離間している。
さらに、周方向一側面18fが対向一側面38aに当接した状態では、周方向他側面18gと対向他側面39aとの間に、所定のクリアランス45が形成されている。このクリアランス45は、ロータ部14の外周面14bと他側部39の径方向端面39bとの間の隙間44と、シール部材18の背面18eと底面21aとの間の空間46とを連通する。クリアランス45の大きさ(周方向幅)は、進角油圧室10から隙間44を介して導入された油圧を空間46に迅速に導くことが可能な程度に設定されている。クリアランス45を介して空間46に導かれた油圧は、図7(a)に矢印Dで示すように背面18eに作用し、板ばね19の付勢力と共に、ロータ部14の外周面14bに対しシール部材18の接触面18dを押し付けるようになっている。
ここで、図7(a)において、接触面18dのロータ部14と径方向で対向する部分の半分の大きさを有する面積を「第1面積A1」と定義する。さらに、周方向一側面18fのうち対向一側面38aに当接している部分よりもロータ部14側に設けられ、第1円弧状部40から径方向に離間する部分の面積を「第2面積A2」と定義する。
第1面積A1および第2面積A2は、遅角油圧室9から一側部38の径方向端面38bとロータ部14の外周面14bとの間の隙間47を介して導かれた油圧が作用する受圧面となる。第2面積A2は、第1面積A1よりも大きく設定されており、油圧が作用したときに、第1面積A1よりも大きな圧力を受けるようになっている。より詳細には、第2面積A2は、カムシャフト2に交番トルクが発生し、遅角油圧室9の油圧が高圧になった場合に、油圧が第1面積A1に作用してシール部材18がロータ部14の外周面14bから径方向へ離間するよりも前に、シール部材18を対向他側面39aまで移動させることが可能な大きさに設定されている。
そして、カムシャフト2に交番トルクが発生すると、図7(b)に示すように、遅角油圧室9および進角油圧室10の油圧の高低が切り替わり、遅角油圧室9の油圧が進角油圧室10の油圧よりも高圧になる。そして、遅角油圧室9の高圧の油圧が隙間47を介して周方向一側面18fの第2面積A2に作用し(図7(b)の矢印E参照)、シール部材18が、ロータ部14の外周面14bと当接した状態を保ちながら対向他側面39aへ移動する。そして、周方向他側面18gが対向他側面39aに当接し、周方向一側面18fと対向一側面38aとの間にクリアランス48が形成される。このクリアランス48には、隙間47と、第1円弧状部40と周方向一側面18fとの間の比較的広い空間49とを介して、遅角油圧室9の高圧の油圧が導入される。クリアランス48に導入された油圧は、背面18eと底面21aとの間の空間46に導かれ、図7(b)に矢印Fで示すように背面18eに作用し、板ばね19の付勢力と共に、ロータ部14の外周面14bに対しシール部材18の接触面18dを押し付けるようになっている。
図8(a)はカムシャフト2の交番トルクの発生前における第1の実施形態のベーン側シール溝17内のシール部材18を示す部分的な正面図、図8(b)はカムシャフト2の交番トルクの発生後における第1の実施形態のベーン側シール溝17内のシール部材18を示す部分的な正面図である。なお、図8(a)および図8(b)では、シール部材18の背面18e側の空間46を示すため、板ばね19を実際の形状とは異なる簡略化した形状で示している。
第2ベーン15bのベーン径方向端面16の周方向中央部には、シュー側シール溝21と概ね同様の形状を有するベーン側シール溝17が軸方向に沿って形成されている。
図8(a)に示すように、ベーンロータ7が相対回転可能な作動時に、交番トルクの発生前に、遅角油圧室9の油圧が進角油圧室10の油圧よりも低圧である場合には、周方向一側面18fが対向一側面38aに押し付けられている。より詳細には、進角油圧室10の高圧の油圧がハウジング本体6aの内周面36と他側部39の径方向端面39bとの間の隙間44を介してシール部材18の周方向他側面18gに作用することにより(図8(a)の矢印G参照)、周方向一側面18fが対向一側面38aに押し付けられている。このとき、周方向一側面18fは、径方向において底面17a側の領域で対向一側面38aに当接しているが、径方向においてハウジング本体6a側の領域で第1円弧状部40から周方向に離間している。
さらに、周方向一側面18fが対向一側面38aに当接した状態では、周方向他側面18gと対向他側面39aとの間に、所定のクリアランス45が形成されている。このクリアランス45は、隙間44と、シール部材18の背面18eとベーン側シール溝17の底面17aとの間の空間46とを連通する。クリアランス45を介して空間46に導かれた油圧は、図8(a)に矢印Hで示すように背面18eに作用し、板ばね19の付勢力と共に、ハウジング本体6aの内周面36に対しシール部材18の接触面18dを押し付けるようになっている。
そして、カムシャフト2に交番トルクが発生すると、図8(b)に示すように、遅角油圧室9および進角油圧室10の油圧の高低が切り替わり、遅角油圧室9の油圧が進角油圧室10の油圧よりも高圧になる。そして、遅角油圧室9の高圧の油圧が隙間47を介して周方向一側面18fの第2面積A2に作用し(図8(b)の矢印I参照)、シール部材18が、ハウジング本体6aの内周面36と当接した状態を保ちながら対向他側面39aへ移動する。そして、周方向他側面18gが対向他側面39aに当接し、周方向一側面18fと対向一側面38aとの間にクリアランス48が形成される。このクリアランス48には、隙間47と、第1円弧状部40と周方向一側面18fとの間の比較的広い空間49とを介して、遅角油圧室9の高圧の油圧が導入される。そして、クリアランス48に導入された油圧は、背面18eと底面17aとの間の空間46に導かれ、図8(b)に矢印Jで示すように背面18eに作用し、板ばね19の付勢力と共に、ハウジング本体6aの内周面36に対しシール部材18の接触面18dを押し付けるようになっている。
上記のように、第1の実施形態では、シュー側シール溝21の内縁部が、周方向一側面18fから周方向に離間し、かつ円弧形状をなす第1円弧状部40を有している。第1円弧状部40は、その円弧形状によりシール部材18の第2面積A2を広く確保するとともに、交番トルクの発生時に遅角油圧室9の高圧の油圧を円弧形状に沿って迅速に第2面積A2へ導く。
さらに、本実施形態では、第2面積A2が、接触面18dの第1面積A1よりも大きく形成されており、第1、第2面積A1,A2に油圧が作用したときに、より高い圧力が第2面積A2に掛かるようになっている。従って、交番トルクの発生時に、第1面積A1に掛かる油圧によって、シール部材18がロータ部14の外周面14bから径方向へ離間する前に、第2面積A2に掛かる油圧によって、シール部材18が対向他側面39aへ移動する。これにより、遅角油圧室9と進角油圧室10との間のシール性の低下を抑制することができる。
また、シール部材18の移動後に周方向他側面18gが対向他側面39aに当接した状態では、周方向一側面18fと対向一側面38aとの間に、所定のクリアランス48が形成されている。このクリアランス48には、円弧形状をなす第1円弧状部40に沿って、高圧の油圧が遅角油圧室9から迅速に導かれる。そして、クリアランス48に導かれた油圧は、シール部材18の背面18e側へ導入される。これにより、シール部材18の移動後にも、高圧の油圧が、板ばね19の付勢力と共に、ロータ部14の外周面14bに対し接触面18dを押し付け、遅角油圧室9と進角油圧室10との間のシール性を確保することができる。
仮に、従来技術のようにシュー側シール溝の内縁部がエッジ状に形成されている場合には、遅角油圧室9からの作動油がエッジ状の内縁部に干渉してしまい、周方向一側面と対向一側面との間のクリアランスに流入し難くなる。従って、クリアランスからシール部材の背面側の空間に作動油が到達するのも遅くなり、シール部材の移動後における遅角油圧室と進角油圧室との間のシール性の確保を迅速に行うことができなくなってしまう。
また、本実施形態では、シュー側シール溝21の内縁部に設けられた第1円弧状部40の曲率半径は、第2シュー8bの外縁部に形成された第2円弧状部41の曲率半径よりも大きく設定されている。このため、第1円弧状部40と周方向一側面18fとの間の空間49が、比較的広くなる。従って、遅角油圧室9からの油圧が隙間47を通して比較的広い空間49に取り込み易くなり、油圧をシール部材18の第2面積A2に迅速に作用させることができる。
なお、上記のようにシュー側シール溝21内に配置されたシール部材18について本実施形態の作用効果を説明したが、この作用効果は、当然のことながら、ベーン側シール溝17内のシール部材18についても生じるものである。
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態のシュー側シール溝21内のシール部材18を示す部分的な正面図である。なお、図9では、シール部材18の背面18e側の空間46を示すため、板ばね19を実際の形状とは異なる簡略化した形状で示している。
図9は、第2の実施形態のシュー側シール溝21内のシール部材18を示す部分的な正面図である。なお、図9では、シール部材18の背面18e側の空間46を示すため、板ばね19を実際の形状とは異なる簡略化した形状で示している。
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、対向一側面38aおよび対向他側面39aの第2面積A2と周方向にオーバーラップする部位が段差状に形成されている。
対向一側面38aは、周方向一側面18fと当接可能な当接面部50と、該当接面部50と段差部51を介して接続され、周方向一側面18fと当接しない非当接面部52とを備えている。
当接面部50は、一側部38側の凹部37aの側縁から径方向へ連続する平坦な面として構成されている。
非当接面部52は、当接面部50よりも周方向外側へずれた位置に設けられており、当接面部50と平行となる平坦な面として構成されている。非当接面部52の径方向に沿った長さは、第1面積A1の周方向に沿った部分の長さよりも大きくなるように設定されている。一側部38の非当接面部52の径方向先端部には、非当接面部52と一側部38の径方向端面38bとを接続する円弧形状をなす第3円弧状部53を有している。第3円弧状部53の曲率半径は、一側部38の外縁部、即ち第2シュー8bの遅角油圧室9側の外縁部に形成された円弧形状の第4円弧状部54の曲率半径よりも小さく設定されている。
対向他側面39aは、対向一側面38aに形成されたものと同様の形状を有する当接面部50および非当接面部52を有している。つまり、対向他側面39aは、周方向他側面18gと当接可能な当接面部50と、該当接面部50と段差部51を介して接続され、周方向他側面18gと当接しない非当接面部52とを備えている。
図9に示すように、周方向一側面18fが当接面部50に当接した状態では、周方向一側面18fは、間隙55を挟んで一側部38の非当接面部52および第3円弧状部53から周方向に離間している。この周方向一側面18fの周方向に離間した部分は、第2の実施形態の「第2面積A2」となり、接触面18dに設けられた第1面積A1よりも大きくなっている。
上記のように、第2の実施形態では、対向一側面38aに形成された非当接面部52と、該非当接面部52と隣接する第3円弧状部53とを周方向一側面18fから離間させることで、第1面積A1よりも広い第2面積A2が周方向一側面18f上に確保されている。そして、本実施形態においても、交番トルクの発生時に、遅角油圧室9の油圧が高圧になったときに、油圧が第3円弧状部53に沿って間隙55内に比較的迅速に導入され、第2面積A2に作用する。これにより、第1面積A1に作用する油圧によって、シール部材18がロータ部14の外周面14bから径方向へ離間する前に、第2面積A2に作用する油圧によって、シール部材18が対向他側面39aへ移動する。従って、遅角油圧室9と進角油圧室10との間のシール性の低下を抑制することができる。
[第3の実施形態]
図10は、第3の実施形態のシュー側シール溝21内のシール部材18を示す部分的な正面図である。なお、図10では、シール部材18の背面18e側の空間46を示すため、板ばね19を実際の形状とは異なる簡略化した形状で示している。
図10は、第3の実施形態のシュー側シール溝21内のシール部材18を示す部分的な正面図である。なお、図10では、シール部材18の背面18e側の空間46を示すため、板ばね19を実際の形状とは異なる簡略化した形状で示している。
第3の実施形態では、第2の実施形態と異なり、対向一側面38aおよび対向他側面39aが平坦な面として構成されている。
さらに、第3の実施形態では、第1、第2の実施形態と異なり、シール部材18の周方向一側面18fおよび周方向他側面18gが段差状に形成されている。換言すれば、シール部材18は、対向一側面38aから離間した部分の周方向幅が、一側面38aと当接する部分の周方向幅よりも小さくなるように形成されている。
周方向一側面18fは、対向一側面38aと当接可能な当接平面部56と、この当接平面部56と段差部57を介して接続され、対向一側面38aと当接しない非当接平面部58とを備えている。
当接平面部56は、径方向において底面21a側に設けられた平坦な面として構成されている。
非当接平面部58は、径方向においてロータ部14側に設けられた平坦な面として構成されている。非当接平面部58は、当接平面部56よりも周方向内側へずれた位置に設けられており、当接平面部56と平行となっている。非当接平面部58の径方向に沿った長さは、第1面積A1の周方向に沿った部分の長さよりも大きくなるように設定されている。
周方向他側面18gは、周方向一側面18fに設けられたものと同様の形状を有する当接平面部56および非当接平面部58を有している。つまり、周方向他側面18gは、対向他側面39aと当接可能な当接平面部56と、該当接平面部56と段差部57を介して接続され、対向他側面39aと当接しない非当接平面部58とを備えている。
図10に示すように、当接平面部56が対向一側面38aに当接した状態では、非当接平面部58は、間隙59を挟んで対向一側面38aおよび第3円弧状部53から周方向に離間している。非当接平面部58の面積は、第3の実施形態の「第2面積A2」となり、接触面18dに設けられた第1面積A1よりも大きくなっている。
上記のように、第3の実施形態では、当接平面部56よりも周方向内側に位置する非当接平面部58によって、周方向一側面18fに第1面積A1よりも広い第2面積A2が確保されている。そして、本実施形態においても、交番トルクの発生時に、遅角油圧室9の油圧が高圧になったときに、油圧が第3円弧状部53に沿って間隙59内に比較的迅速に導入され、第2面積A2に作用する。これにより、第1面積A1に作用する油圧によって、シール部材18がロータ部14の外周面14bから径方向へ離間しようとする前に、第2面積A2に作用する油圧によって、シール部材18が対向他側面39aへ移動する。従って、遅角油圧室9と進角油圧室10との間のシール性の低下を抑制することができる。
[第4の実施形態]
図11は、第4の実施形態の第2シュー8bの斜視図である。第4の実施形態では、第1の実施形態と異なり、シュー径方向先端面20のシュー側シール溝21を挟んだ両側には、シュー側シール溝21内におけるシール部材18の姿勢を維持する一対の突起42,43が径方向に突出形成されている。
図11は、第4の実施形態の第2シュー8bの斜視図である。第4の実施形態では、第1の実施形態と異なり、シュー径方向先端面20のシュー側シール溝21を挟んだ両側には、シュー側シール溝21内におけるシール部材18の姿勢を維持する一対の突起42,43が径方向に突出形成されている。
より詳細には、側部38,39の径方向端面38b,39bには、第2シュー8bの軸方向中央位置(厚さ方向中央位置)に、シール部材18の姿勢を維持する突起42,43が径方向内周側へ突出形成されている。突起42,43は、側面38a,39aと同一平面上にある面42a,43aを有している。シール部材18が油圧により遅角油圧室9側に押し付けられているときには、側面38aおよび面42aに周方向一側面18fを当接させることで、シュー側シール溝21内におけるシール部材18の姿勢が安定するようになっている。同様に、シール部材18が油圧により進角油圧室10側に押し付けられているときには、側面39aおよび面43aに周方向他側面18gを当接させることで、シュー側シール溝21内におけるシール部材18の姿勢が安定するようになっている。
本実施形態によれば、突起42,43は、側面38a,39aを径方向へ拡張する面42a,43aを有しており、該面42a,43aにより、側面18f,18gが側面38a,39aに当接した際の当接面積が広くなる。従って、側面18fが側面38aおよび面42aに当接したときや、側面18gが側面39aおよび面43aに当接したときに、シュー側シール溝21内におけるシール部材18の適切な姿勢を維持し、遅角油圧室9と進角油圧室10との間の良好なシール性を確保することができる。また、突起42,43の存在により径方向端面38b,39bを径方向外側に寄せることができる。これによりシール部材18の第2面積A2を広く確保するとともに、交番トルクの発生時に遅角油圧室9の高圧の油圧を迅速に第2面積A2へ導く。
本実施形態では突起42,43は第2シュー8bの軸方向中央位置に形成されているが、それに限られず、例えば軸方向の端部の一方に設けたり軸方向の両端部に設けたり、軸方向中央位置と軸方向の端部の間に設けても良い。
なお、上記各実施形態では、バルブタイミング制御装置を排気弁側の動弁装置に適用した例を開示したが、バルブタイミング制御装置を吸気弁側の動弁装置に適用するようにしても良い。
以上説明した実施形態に基づく内燃機関のバルブタイミング制御装置としては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
内燃機関のバルブタイミング制御装置は、その一態様として、筒状のハウジング本体と、該ハウジング本体の内周面から径方向内周側へ突出する複数のシューとを有し、クランクシャフトからの回転力が伝達されるハウジングと、カムシャフトに固定されるロータ部と、前記ロータ部の外周面から径方向外周側へ突出し、前記複数のシューの間の作動室をそれぞれ区切る複数のベーンとを有し、前記ハウジング本体内に配置されたベーンロータと、前記ハウジングと前記ベーンロータのいずれか一方の第1部材に設けられ、径方向へ凹むシール溝と、前記シール溝に配置され、前記ハウジングと前記ベーンロータのいずれか他方の第2部材に径方向から当接するシール部材と、を備え、前記シール溝は前記シール部材の周方向一側面に対向する対向一側面を有すると共に、前記対向一側面の径方向の先端部に円弧形状をなす第1円弧状部が形成され、前記シール部材の周方向一側面が前記対向一側面に当接した状態において、前記シール部材の前記第2部材と径方向で対向する部分の面積の半分の大きさである第1面積よりも、前記周方向一側面のうち前記対向一側面に当接している部分よりも前記第2部材側であって、かつ前記対向一側面から離間する部分の面積である第2面積の方が大きい。
前記内燃機関のバルブタイミング制御装置の好ましい態様において、前記第1部材はハウジングであり、前記シール溝は、各シューの径方向先端面に形成されている。
別の好ましい態様では、前記内燃機関のバルブタイミング制御装置の態様のいずれかにおいて、前記各シューの外縁部が、円弧形状をなす第2円弧状部を有し、前記第1円弧状部の曲率半径は、前記第2円弧状部の曲率半径よりも大きい。
別の好ましい態様では、前記対向一側面は、前記シール部材の前記第2面積と周方向で対向する部位が段差状になっている。
別の好ましい態様では、前記内燃機関のバルブタイミング制御装置の態様のいずれかにおいて、前記シール部材は、前記対向一側面から離間した部分の周方向幅が前記周方向一側面と当接する部分の周方向幅よりも小さくなっている。
別の好ましい態様では、前記内燃機関のバルブタイミング制御装置の態様のいずれかにおいて、前記シール部材の接触面は、前記第2部材に向かって凸となるように周方向で円弧形状である。
別の好ましい態様では、前記内燃機関のバルブタイミング制御装置の態様のいずれかにおいて、前記各シューの径方向先端面における前記シール溝の両側で、突起が径方向へ突出している。
別の好ましい態様では、前記内燃機関のバルブタイミング制御装置の態様のいずれかにおいて、前記第1部材はベーンロータであり、前記シール溝は、各ベーンの径方向先端面に形成されている。
別の好ましい態様では、前記内燃機関のバルブタイミング制御装置の態様のいずれかにおいて、前記各ベーンの外縁部が、円弧形状をなす第2円弧状部を有し、前記第1円弧状部の曲率半径は、前記第2円弧状部の曲率半径よりも大きい。
また、以上説明した実施例に基づく内燃機関の他のバルブタイミング制御装置としては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
内燃機関のバルブタイミング制御装置は、その一態様として、筒状のハウジング本体と、前記ハウジング本体の内周面から径方向内周側へ突出する複数のシューとを有し、クランクシャフトからの回転力が伝達されるハウジングと、カムシャフトに固定されるロータ部と、前記ロータ部の外周面から径方向外周側へ突出し、前記複数のシューの間の作動室をそれぞれ区切る複数のベーンとを有し、前記ハウジング本体内に配置されたベーンロータと、前記ハウジングと前記ベーンロータのいずれか一方の第1部材に設けられ、径方向へ凹むシール溝と、前記シール溝に配置され、前記ハウジングと前記ベーンロータのいずれか他方の第2部材に径方向から当接するシール部材と、を備え、前記シール部材に設けられた周方向一側面が前記シール溝の対向一側面に当接した状態において前記対向一側面側の作動室内の油圧が上昇し、この油圧の上昇に応じて、前記シール部材が前記第2部材から径方向へ離間するよりも前に、前記シール部材が、前記シール溝の対向他側面へと移動するように、前記周方向一側面の受圧面積が設定され、前記対向一側面の径方向先端部が、円弧形状をなす円弧状部を有する。
さらに、以上説明した実施例に基づく内燃機関の別のバルブタイミング制御装置としては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
内燃機関のバルブタイミング制御装置は、その一態様として、筒状のハウジング本体と、前記ハウジング本体の内周面から径方向内側へ突出する複数のシューとを有し、クランクシャフトからの回転力が伝達されるハウジングと、カムシャフトに固定されるロータ部と、前記ロータ部の外周面から径方向外側へ突出し、前記複数のシューの間の作動室をそれぞれ区切る複数のベーンとを有し、前記ハウジング本体内に配置されたベーンロータと、前記シューの径方向内側の端部に設けられ、径方向の外側へ凹むシール溝と、前記シール溝に配置され、前記ロータ部に径方向から当接するシール部材と、を備え、前記シール溝は、底部と、該底部の周方向一端から径方向内側へ延びる一側部と、前記底部の周方向他端から径方向内側へ延びる他側部を有し、前記一側部及び前記他側部はそれぞれ軸方向幅のうちの一部から径方向内側に突出する突出部を有し、前記シール部材の周方向一側面が前記シール溝の対向一側面に当接した状態において、前記シール部材の前記ロータ部と径方向で対向する部分の面積の半分の大きさである第1面積よりも、前記周方向一側面のうち前記突出部と当接している部分以外の面積である第2面積の方が大きい。
6・・・ハウジング、7・・・ベーンロータ、8a〜8d・・・第1〜第4シュー、9・・・遅角油圧室、10・・・進角油圧室、14・・・ロータ部、15a〜15d・・・第1〜第4ベーン、16・・・ベーン径方向端面、17・・・ベーン側シール溝、18・・・シール部材、18f・・・周方向一側面、19・・・板ばね、20・・・シュー径方向先端面、21・・・シュー側シール溝、38・・・一側部、38a・・・対向一側面、39・・・他側部、40・・・第1円弧状部、41・・・第2円弧状部、42・・・突起、43・・・突起、44・・・クリアランス、48・・・クリアランス、A1・・・第1面積、A2・・・第2面積、50・・・当接面部、52・・・非当接面部、56・・・当接平面部、58・・・非当接平面部
Claims (11)
- 筒状のハウジング本体と、該ハウジング本体の内周面から径方向内周側へ突出する複数のシューとを有し、クランクシャフトからの回転力が伝達されるハウジングと、
カムシャフトに固定されるロータ部と、前記ロータ部の外周面から径方向外周側へ突出し、前記複数のシューの間の作動室をそれぞれ区切る複数のベーンとを有し、前記ハウジング本体内に配置されたベーンロータと、
前記ハウジングと前記ベーンロータのいずれか一方の第1部材に設けられ、径方向へ凹むシール溝と、
前記シール溝に配置され、前記ハウジングと前記ベーンロータのいずれか他方の第2部材に径方向から当接するシール部材と、
を備え、
前記シール溝は前記シール部材の周方向一側面に対向する対向一側面を有すると共に、前記対向一側面の径方向の先端部に円弧形状をなす第1円弧状部が形成され、
前記シール部材の周方向一側面が前記対向一側面に当接した状態において、前記シール部材の前記第2部材と径方向で対向する部分の面積の半分の大きさである第1面積よりも、前記周方向一側面のうち前記対向一側面に当接している部分よりも前記第2部材側であって、かつ前記対向一側面から離間する部分の面積である第2面積の方が大きいことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記第1部材はハウジングであり、
前記シール溝は、各シューの径方向先端面に形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 請求項2に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記各シューの外縁部が、円弧形状をなす第2円弧状部を有し、
前記第1円弧状部の曲率半径は、前記第2円弧状部の曲率半径よりも大きいことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記対向一側面は、前記シール部材の前記第2面積と周方向で対向する部位が段差状になっていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記シール部材は、前記対向一側面から離間した部分の周方向幅が前記周方向一側面と当接する部分の周方向幅よりも小さくなっていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記シール部材の接触面は、前記第2部材に向かって凸となるように周方向で円弧形状であることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 請求項2に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記各シューの径方向先端面における前記シール溝の両側で、突起が径方向へ突出していることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記第1部材はベーンロータであり、
前記シール溝は、各ベーンの径方向先端面に形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 請求項8に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記各ベーンの外縁部が、円弧形状をなす第2円弧状部を有し、
前記第1円弧状部の曲率半径は、前記第2円弧状部の曲率半径よりも大きいことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 筒状のハウジング本体と、前記ハウジング本体の内周面から径方向内周側へ突出する複数のシューとを有し、クランクシャフトからの回転力が伝達されるハウジングと、
カムシャフトに固定されるロータ部と、前記ロータ部の外周面から径方向外周側へ突出し、前記複数のシューの間の作動室をそれぞれ区切る複数のベーンとを有し、前記ハウジング本体内に配置されたベーンロータと、
前記ハウジングと前記ベーンロータのいずれか一方の第1部材に設けられ、径方向へ凹むシール溝と、
前記シール溝に配置され、前記ハウジングと前記ベーンロータのいずれか他方の第2部材に径方向から当接するシール部材と、
を備え、
前記シール部材に設けられた周方向一側面が前記シール溝の対向一側面に当接した状態において前記対向一側面側の作動室内の油圧が上昇し、この油圧の上昇に応じて、前記シール部材が前記第2部材から径方向へ離間するよりも前に、前記シール部材が、前記シール溝の対向他側面へと移動するように、前記周方向一側面の受圧面積が設定され、
前記対向一側面の径方向先端部が、円弧形状をなす円弧状部を有することを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 筒状のハウジング本体と、前記ハウジング本体の内周面から径方向内側へ突出する複数のシューとを有し、クランクシャフトからの回転力が伝達されるハウジングと、
カムシャフトに固定されるロータ部と、前記ロータ部の外周面から径方向外側へ突出し、前記複数のシューの間の作動室をそれぞれ区切る複数のベーンとを有し、前記ハウジング本体内に配置されたベーンロータと、
前記シューの径方向内側の端部に設けられ、径方向の外側へ凹むシール溝と、
前記シール溝に配置され、前記ロータ部に径方向から当接するシール部材と、
を備え、
前記シール溝は、底部と、該底部の周方向一端から径方向内側へ延びる一側部と、前記底部の周方向他端から径方向内側へ延びる他側部を有し、前記一側部及び前記他側部はそれぞれ軸方向幅のうちの一部から径方向内側に突出する突出部を有し、
前記シール部材の周方向一側面が前記シール溝の対向一側面に当接した状態において、前記シール部材の前記ロータ部と径方向で対向する部分の面積の半分の大きさである第1面積よりも、前記周方向一側面のうち前記突出部と当接している部分以外の面積である第2面積の方が大きいことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019119208A JP2021004581A (ja) | 2019-06-27 | 2019-06-27 | 内燃機関のバルブタイミング制御装置 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2019119208A JP2021004581A (ja) | 2019-06-27 | 2019-06-27 | 内燃機関のバルブタイミング制御装置 |
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Family
ID=74099275
Family Applications (1)
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JP2019119208A Pending JP2021004581A (ja) | 2019-06-27 | 2019-06-27 | 内燃機関のバルブタイミング制御装置 |
Country Status (1)
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-
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- 2019-06-27 JP JP2019119208A patent/JP2021004581A/ja active Pending
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