JP2021002437A - 金属二次電池用カーボンナノチューブ正極およびその製造方法 - Google Patents

金属二次電池用カーボンナノチューブ正極およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】取り扱い性、加工性に優れ、電池性能の再現性、安定性を確保し、セルの積層設計を可能にする金属二次電池用カーボンナノチューブ正極およびその製造方法を提供する。【解決手段】本発明の一実施形態に係る金属二次電池用カーボンナノチューブ正極は、多孔質基材と、カーボンナノチューブ層とを備え、前記多孔質基材と前記カーボンナノチューブ層が構造的および電気的に一体化されてなる。本発明の一実施形態に係る金属二次電池用カーボンナノチューブ正極の製造方法は、カーボンナノチューブを溶媒中に分散させ、カーボンナノチューブの分散液を得るステップと、前記カーボンナノチューブの分散液を導電性多孔質基材上にろ過または塗布し、前記導電性多孔質基材の一方の面に構造的および電気的に一体化したカーボンナノチューブ層を形成するステップとを包含する。【選択図】図1

Description

本発明は、金属二次電池用カーボンナノチューブ正極およびその製造方法に関する。
近年、再生可能エネルギーの普及や自動車の電動化への要請により、軽量かつ大容量、すなわち、より高いエネルギー密度をもつ蓄電池(二次電池)の開発が要求されている。実現が想定されうる二次電池の中でも、リチウム空気電池は、最も高い理論エネルギー密度を有しており、現在普及しているリチウムイオン電池を大幅に超えるエネルギー密度を達成しうる。
リチウム空気電池は、負極活物質にリチウム金属、正極活物質に酸素を用いるものである。放電時はリチウム金属が溶出し、正極にて大気から吸収された酸素と反応しリチウム酸化物が析出する。充電時はこれと逆の反応が起こり、これらを繰り返して充放電を行う。ここで正極は、充放電にあわせて大気から酸素を吸収・排出するはたらきを有する電極であることから、空気極とも呼ばれる。
正極には、溶出したリチウムと、酸素を供給する拡散経路と、析出・分解するリチウム酸化物が保管される微小な空間が必要であり、従来、高表面積と高空孔率を有する多孔性カーボン電極が正極に用いられる。しかしながら、多孔性カーボン正極は、析出するリチウム酸化物による目詰まりや不動態化が起こりやすく、十分なセル容量を確保して充放電させることが困難である。また、リチウム空気電池の高いエネルギー密度を達成するには、正極に含浸される電解液量および正極自体の重量を低く抑え、同時に電極面積あたりのセル容量を高く維持する必要がある。
その中で最近、シート状に加工したカーボンナノチューブをリチウム空気電池正極に用いることで、セル容量を大幅に改善できることが報告された(非特許文献1)。非特許文献1に記載のカーボンナノチューブ正極は、カーボンナノチューブがナノないしマイクロスケールで分散したバンドル(束)からなる、柔軟かつ軽量な不織布状の電極である。このカーボンナノチューブ正極では、リチウム酸化物の析出・分解に合わせてカーボンナノチューブが膨張・収縮することで、内部に大量のリチウム酸化物を蓄積させることができ、電極面積あたり従来よりも飛躍的に大きなセル容量を達成することが可能である。
Akihiro Nomura et al., Scientific Reports, 7, 45596, 2017.
しかしながら、非特許文献1に記載のカーボンナノチューブ正極を高エネルギー密度に設計したリチウム空気電池セルへ応用する場合、以下2点の課題があった。
第一に、カーボンナノチューブシートが柔軟であり、かつ比較的薄く軽量であることから、その取り扱い、およびセルサイズに合わせた電極切り出しなどの加工が困難な点である。また、セル作製の際に電極内の空孔構造が押し潰されてしまい、カーボンナノチューブが本来有する電極特性が十分に発揮されない可能性がある。このため、作製されたセルから得られる容量やレートの再現性が不安定となりうることも懸念される。
第二に、カーボンナノチューブシートのみではセルの積層設計ができない点である。大容量蓄電池を開発するには、単セル、すなわち負極/セパレータ/正極の基本セル構造、を複数積層させることが必須となる。ところが、単純にシート状カーボンナノチューブのみで構成される正極では、積層された正極へ酸素を供給する経路が失われてしまう。よって、カーボンナノチューブ正極には、積層された状態で酸素の吸排気が可能なガス拡散機構を導入する必要がある。
本願発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、正極を、導電性多孔質基材の一方の面に、カーボンナノチューブ層を構造的および電気的に一体化されてなる構成とすることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
(1)導電性多孔質基材と、カーボンナノチューブ層とを備え、前記導電性多孔質基材と前記カーボンナノチューブ層が構造的および電気的に一体化されてなる、金属二次電池用カーボンナノチューブ正極。
(2)前記カーボンナノチューブ層は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、またはそれらの混合物を含む、(1)に記載のカーボンナノチューブ正極。
(3)前記導電性多孔質基材は、カーボンペーパー、カーボンクロス、またはカーボンフェルトからなる、(1)または(2)に記載のカーボンナノチューブ正極。
(4)前記カーボンナノチューブ層のカーボンナノチューブが、前記導電性多孔質基材の表面から5μm以上浸透している、(1)〜(3)のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ正極。
(5)前記導電性多孔質基材と前記カーボンナノチューブ層との間に、カーボンナノチューブを含む中間層を備える、(1)〜(3)のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ正極。
(6)前記中間層は、カーボンナノチューブと界面活性剤との混合物、カーボンナノチューブとバインダーとの混合物、または、カーボンナノチューブと界面活性剤とバインダーとの混合物からなる、(5)に記載のカーボンナノチューブ正極。
(7)前記中間層のカーボンナノチューブが、前記導電性多孔質基材および前記カーボンナノチューブ層の少なくとも一方の表面から5μm以上浸透している、(5)または(6)に記載のカーボンナノチューブ正極。
(8)前記金属二次電池は、リチウム空気電池、亜鉛−空気電池、ナトリウム−空気電池、アルミニウム−空気電池、マグネシウム−空気電池、カルシウム−空気電池、鉄−空気電池、カリウム−空気電池、またはリチウム−二酸化炭素電池である、(1)〜(7)のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ正極。
(9)(1)〜(8)のいずれか一項に記載の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極の製造方法であって、カーボンナノチューブを溶媒中に分散させ、カーボンナノチューブの分散液を得るステップと、前記カーボンナノチューブの分散液を導電性多孔質基材上にろ過または塗布し、前記導電性多孔質基材の一方の面に構造的および電気的に一体化したカーボンナノチューブ層を形成するステップとを包含する、方法。
(10)前記ろ過は、吸引ろ過または加圧ろ過である、(9)に記載の方法。
(11)前記カーボンナノチューブ層を形成するステップの前に、界面活性剤、バインダー、またはそれらの混合物を含む溶媒中にカーボンナノチューブを分散させた分散液を、前記導電性多孔質基材上にろ過または塗布し、カーボンナノチューブを含む中間層を形成するステップを包含する、(9)または(10)に記載の方法。
(12)正極、金属を含有する負極、および、前記正極と前記負極との間に位置する電解液とを備える金属二次電池であって、前記正極は、(1)〜(8)のいずれか一項に記載の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極である、金属二次電池。
(13)負極活物質が、リチウム、亜鉛、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、またはカリウムであり、正極活物質が、酸素または二酸化炭素である、(12)に記載の金属二次電池。
本発明の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極は、導電性多孔質基材と、カーボンナノチューブ層とを備え、導電性多孔質基材とカーボンナノチューブ層が構造的および電気的に一体化されてなる。そのため、上記従来のカーボンナノチューブ正極の問題点、具体的には、カーボンナノチューブ正極の薄く軽量な特徴にともなう、取り扱いや加工の困難さ、および作製されたセルの電池性能の再現不安定性を解消し、容易な電極加工と安定したセル特性を発揮するセル作製を可能にせしめるものである。さらには、セル積層時のガス拡散経路の確保により、セルの積層設計を可能にせしめるものである。
本発明の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極は、負極活物質に金属、正極活物質に酸素や二酸化炭素などの外部ガスを用いる金属二次電池正極として使用することができる。より具体的には、負極活物質にリチウム、亜鉛、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、またはカリウムを用い、正極活物質に酸素を用いる金属空気電池正極として好適であり、中でも、リチウム空気電池正極として特に適している。
実施の形態1の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極を示す模式図 実施の形態1のカーボンナノチューブ正極の製造方法を示すフローチャート 実施の形態2の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極を示す模式図 実施の形態2のカーボンナノチューブ正極の製造方法を示すフローチャート 実施の形態3の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極を示す模式図 実施の形態3のカーボンナノチューブ正極の製造方法を示すフローチャート 実施の形態1のカーボンナノチューブ正極を用いたリチウム空気電池を示す模式図 実施の形態2のカーボンナノチューブ正極を用いたリチウム空気電池を示す模式図 実施の形態3のカーボンナノチューブ正極を用いたリチウム空気電池を示す模式図 (a)実施例1の積層体の断面のSEM像、(b)実施例1の積層体のカーボンナノチューブ層を拡大したSEM像 (a)、(b)実施例1の積層体におけるカーボンペーパーとカーボンナノチューブ層の密着強度の試験方法を示す模式図 実施例4のリチウム空気電池コインセルの放電挙動を示す図 実施例4のリチウム空気電池コインセルの充放電挙動を示す図 (a)実施例4および実施例5の構成を有するコインセルのインピーダンススペクトル、(b)比較例6の構成を有するコインセルのインピーダンススペクトル
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
本明細書において、金属二次電池とは、負極活物質に金属、正極活物質に酸素や二酸化炭素などの外部ガスを用いるものをいう。負極活物質の金属としては、例えば、リチウム、亜鉛、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、カリウムなどが挙げられるがこれらに限定されない。金属二次電池の具体例としては、例えば、リチウム空気電池、亜鉛−空気電池、ナトリウム−空気電池、アルミニウム−空気電池、マグネシウム−空気電池、カルシウム−空気電池、鉄−空気電池、カリウム−空気電池、リチウム−二酸化炭素電池などが挙げられるがこれらに限定されない。正極活物質の酸素としては、純酸素、大気酸素、あるいは任意の酸素分圧のガスを含むものを用いることができる。なお、金属二次電池の放電時の出力特性の観点から、通常は、酸素濃度は高い方が好ましい。
なお、以下では、本発明の理解を助ける目的で、金属二次電池がリチウム空気電池である場合を例にして説明することがあるが、本発明のカーボンナノチューブ正極の用途はリチウム空気電池正極に限定されず、外部ガスの吸収・排出を伴う機構を有する正極を備えた電池(いわゆる、開放型の電池)用の正極としても適用可能であることに留意されたい。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明の一実施形態に係る金属二次電池用カーボンナノチューブ正極およびその製造方法について説明する。
図1は、本実施形態の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極(以下、単にカーボンナノチューブ正極とも称する。)を示す模式図である。
本実施形態のカーボンナノチューブ正極100は、導電性多孔質基材110と、カーボンナノチューブ層120を備え、導電性多孔質基材110の一方の面に、カーボンナノチューブ層120が積層され、構造的および電気的に一体化されてなる。
本明細書において、導電性多孔質基材110とカーボンナノチューブ層120が構造的に一体化した状態とは、導電性多孔質基材110とカーボンナノチューブ層120が組み合わさって1つの構造体(すなわち、カーボンナノチューブ正極100)を構成している状態をいう。
このような構造的に一体化した状態は、簡易的には、例えば、カーボンナノチューブ正極100の、導電性多孔質基材110およびカーボンナノチューブ層120のいずれか一方のみをマイクロピンセット等でつまんだ状態で、上方へ引き上げたとき、および/または、上下もしくは左右に振動させたときに、導電性多孔質基材110とカーボンナノチューブ層120が部分的にもしくは全体的に分離するかどうかによって、確認することができる。例えば、導電性多孔質基材の一方の面にカーボンナノチューブ層を載置してなる構造体、あるいは、導電性多孔質基材の一方の面にカーボンナノチューブ層を載置し、一定の圧力を負荷してなる構造体では、上記の操作によって、導電性多孔質基材とカーボンナノチューブ層が部分的にもしくは全体的に分離した様子が確認されると考えられる。そのような構造体は、本発明においては、構造的に一体化した状態ではないものとする。
より詳細には、カーボンナノチューブ正極100の断面を、走査型電子顕微鏡装置(SEM)を用いて観察し、導電性多孔質基材110とカーボンナノチューブ層120が接触する界面の状態を確認することが好ましい。本実施形態のカーボンナノチューブ正極100では、図1中の部分拡大図に示すように、カーボンナノチューブ層120のカーボンナノチューブ122が、導電性多孔質基材110の表面112から5μm以上浸透している(入り込んでいる)。これにより、カーボンナノチューブ正極100は、導電性多孔質基材110とカーボンナノチューブ層120が構造的に一体化した状態となっている。
なお、本願発明者らによる知見では、導電性多孔質基材110およびカーボンナノチューブ層120の各々の厚みとは無関係に、導電性多孔質基材110に対してカーボンナノチューブ層120のカーボンナノチューブ122が概ね5μm以上浸透していれば、構造的な一体化が確保されうる。一方、電極の設計によっては、構造的に一体化した状態の指標として、導電性多孔質基材110の厚みに対するカーボンナノチューブ層120のカーボンナノチューブ122の浸透度を用いることもできる。具体的には、例えば、カーボンナノチューブ層120のカーボンナノチューブ122が、導電性多孔質基材110の表面から、導電性多孔質基材110の厚みに対して1%以上浸透していることが好ましい。
なお、図1では、簡略化のために、導電性多孔質基材110およびカーボンナノチューブ層120の表面が平坦であるものとして示しているが、実際には各層の表面には微視的な凹凸が存在しうる。そのため、当業者であれば、SEM像から確認される界面の状態に応じて、導電性多孔質基材110の表面112の位置が特定され、当該位置から導電性多孔質基材110の厚み方向への距離(カーボンナノチューブ122の浸透深さ)が測定されうることは、容易に理解される。
また、導電性多孔質基材110とカーボンナノチューブ層120が構造的に一体化した状態は、カーボンナノチューブ正極100の強度(より具体的には、導電性多孔質基材110とカーボンナノチューブ層120の密着強度)を評価することによって確認することもできる。後述する実施例では、具体的な試験方法の一例を示す。
本実施形態のカーボンナノチューブ正極100は、導電性多孔質基材110とカーボンナノチューブ層120が構造的に一体化した状態であるので、その取り扱い性、加工性に優れる。具体的には、本実施形態のカーボンナノチューブ正極100は、市販のハサミ、カッターナイフ、あるいは打ち抜き器等を用い、剥がれや切り毀れなく、積層構造を保ったまま任意の形状に切断することができる。そのため、本実施形態のカーボンナノチューブ正極100は、所望のセルサイズに合わせた電極の切り出しが可能である。また、カーボンナノチューブ層のみからなる従来の正極に比べて、セル作製の際に電極内の空孔構造が押し潰されにくくなる。
なお、図1に示すように、本実施形態のカーボンナノチューブ正極100では、導電性多孔質基材110の下面とカーボンナノチューブ層120の上面が接触しているが、導電性多孔質基材110とカーボンナノチューブ層120が物理的に接触していることは、本発明のカーボンナノチューブ正極に必須の要件ではないことに留意されたい。例えば、後述する実施の形態3のように、導電性多孔質基材とカーボンナノチューブ層の間に中間層を備える場合でも、導電性多孔質基材とカーボンナノチューブ層を含む積層体全体が1つの構造体を構成している状態であれば、本明細書でいう「構造的に一体化された状態」であり、当該構造体は、本発明のカーボンナノチューブ正極に包含されうる。また、導電性多孔質基材とカーボンナノチューブ層の物理的な接触は、面接触に限られず、例えば、後述する実施の形態2のように、導電性多孔質基材の内部に、カーボンナノチューブ層全体が浸透した状態(入り込んだ状態)も、本明細書でいう「構造的に一体化された状態」であり、当該構造体は、本発明のカーボンナノチューブ正極に包含されうる。
本明細書において、導電性多孔質基材110とカーボンナノチューブ層120とが電気的に一体化した状態とは、これらを備えるカーボンナノチューブ正極100が、金属二次電池用の正極として機能しうる程度の導電性を有している状態をいう。
このような電気的に一体化した状態は、例えば、後述する実施例に記載のコインセル等の電池試験用セルを用いて確認することができる。なお、実施例に記載のコインセルの構成は一例であり、当業者であれば、電池試験用セルの構成を都度設計することができる点に留意されたい。
導電性多孔質基材110としては、典型的には、リチウム空気電池等の空気電池や燃料電池においてガス拡散層(GDL)として用いられる材料を使用することができる。具体的には、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルトなどの、炭素繊維を主成分とする材料が挙げられるが、これらに限定されない。
導電性多孔質基材110は、空孔率が60〜80%であることが好ましく、80%超であることがより好ましい。導電性多孔質基材110の空孔率が60%以上であると、カーボンナノチューブ正極100が複数積層された状態でも、酸素の吸排気が可能なガス拡散機構が確保され、空孔率が80%超であると、当該ガス拡散機構がより確実に確保される。
導電性多孔質基材110の厚みは特に限定されないが、典型的には、50〜500μmの範囲である。導電性多孔質基材110の厚みは、セルや正極の設計、また、カーボンナノチューブ層120の厚み等を考慮して適宜調整される。例えば、積層体全体の厚み(カーボンナノチューブ正極100の厚み)が1mm以下の値となるように、導電性多孔質基材110の厚みを調整することが好ましく考慮される。
カーボンナノチューブ層120は、カーボンナノチューブを主成分として構成される。好ましくは、カーボンナノチューブ層120は、カーボンナノチューブからなり、その作製過程で不可避的に混入しうる不純物以外の添加成分を含まない。カーボンナノチューブ層120は、典型的には、非特許文献1に記載のカーボンナノチューブ正極と同様の不織布状であり、カーボンナノチューブがナノないしマイクロスケールで分散したバンドル(束)から構成される。カーボンナノチューブ層120を構成するカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)であってもよく、二層カーボンナノチューブ(DWNT)であってもよく、多層カーボンナノチューブ(MWNT)であってもよく、または、それらの混合物であってもよい。
カーボンナノチューブ層120の厚みは特に限定されないが、典型的には、10〜500μmの範囲である。カーボンナノチューブ層120の厚みは、セルや正極の設計、また、導電性多孔質基材110の厚みを考慮して適宜調整される。例えば、積層体全体の厚み(カーボンナノチューブ正極100の厚み)が1mm以下の値となるように、カーボンナノチューブ層120の厚みを調整することが好ましく考慮される。
本実施形態のカーボンナノチューブ正極100は、導電性多孔質基材110とカーボンナノチューブ層120が構造的および電気的に一体化した状態であるので、少なくとも導電性多孔質基材110に浸透したカーボンナノチューブ層120のカーボンナノチューブ122は、セル内圧が小さい環境で充放電反応に寄与することができ、電池特性を安定化させることが可能となる。また、カーボンナノチューブ層120が導電性多孔質基材110と構造的に一体化していることにより、カーボンナノチューブ正極100の容易な取り扱いや加工が可能となる。さらに、導電性多孔質基材110の、カーボンナノチューブ層120が積層されていない面(ガス供給面)にガス拡散機能が保持されるため、このような構成を有する正極を複数積層させても充放電反応に必要な酸素の給排気が可能となり、セルの積層設計およびそれによる大容量化が可能となる。
非特許文献1では、カーボンナノチューブによるリチウム空気電池セルの容量増大挙動とその現象考察について言及しているが、実用リチウム空気電池セル開発に当たって実際に適用可能かつ具体的な電極作製方法、さらには積層設計を見越したガス拡散層との一体化とその必要性については何ら開示していない。非特許文献1に記載のシート状カーボンナノチューブのみで構成された正極では、得られるセル容量にバラつきが大きく、安定したセルの作製が期待できない。また、非特許文献1には、2枚以上のガス拡散層でカーボンナノチューブ層をサンドイッチさせた構造の正極が記載されているが、このような構造を有する正極では、正極自体の重量と必要な電解液量が増大するため、エネルギー密度を高く設計することができない。また、積層も困難なため実用に資さない。これに対して、本発明では、ガス拡散機能を有する導電性多孔質基材と、カーボンナノチューブ層とを備え、導電性多孔質基材の一方の面に、カーボンナノチューブ層が積層され、構造的および電気的に一体化されてなる構造を有するカーボンナノチューブ正極であるので、安定して高容量なリチウム空気電池セル(金属二次電池セル)の作製が可能であり、また積層による大容量化も可能となる。
次に、本実施形態のカーボンナノチューブ正極100の製造方法を説明する。
図2は、本実施形態の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極の製造方法を示すフローチャートである。
ステップS210:カーボンナノチューブを溶媒中に分散させ、カーボンナノチューブの分散液を得る。
具体的には、カーボンナノチューブを、溶媒に対して重量比0.005〜0.5%程度の濃度で懸濁させ、超音波分散処理またはミキサー撹拌処理して分散させて、カーボンナノチューブの分散液を得る。
溶媒としては、水および一般に入手可能な有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドの他、各種アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、エーテル類、エステル類、カーボネート類、芳香族炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられるが、これらに限定されない。溶媒は、使用するカーボンナノチューブの特性(平均長さ、平均外径、分散性等)を考慮して選択することができる。溶媒は、単一溶媒であってもよく、混合溶媒であってもよい。また、カーボンナノチューブの濃度は、使用する溶媒に応じて、上記の範囲内で適宜調整される。
上記分散処理は、室温で行ってもよく、冷却条件下(例えば、氷浴中)で行ってもよく、加熱条件下で行ってもよい。また、分散処理の時間は、使用するカーボンナノチューブおよび溶媒に応じて、適宜調整される。
ステップS220:カーボンナノチューブの分散液を導電性多孔質基材上にろ過または塗布し、導電性多孔質基材の一方の面に構造的および電気的に一体化したカーボンナノチューブ層を形成する。
ステップS220において、ろ過する方法は特に制限されないが、導電性多孔質基材がフィルターとしての役割を果たす場合には、カーボンナノチューブの分散液を、導電性多孔質基材上にろ過することができる。また、カーボンナノチューブの分散液を、導電性多孔質基材を設置したメンブレンフィルター上にろ過してもよい。この場合、メンブレンフィルターとしては、例えば、表面が親水化処理されたポリテトラフルオロメチレン(Polytetrafluoroethylene(PTFE))メンブレン、表面が親水化処理されたポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene Fluoride(PVDF))メンブレン、グラスファイバーメンブレン等が挙げられるが、これらに限定されない。
ステップS220において、ろ過は、吸引ろ過または加圧ろ過であることが好ましい。これにより、自然ろ過の場合と比べて、カーボンナノチューブが導電性多孔質基材の内部により深く浸透しやすくなり、導電性多孔質基材とカーボンナノチューブ層が構造的に一体化した積層体を得られやすい。
一方、ステップS210で得られたカーボンナノチューブの分散液に関し、当該分散液中のカーボンナノチューブの分散性が良好であり、かつ、カーボンナノチューブの濃度が比較的高く、分散液が一定の粘性を有する場合には、カーボンナノチューブの分散液を導電性多孔質基材上に塗布してもよい。この場合、塗布する方法は特に制限されないが、例えば、滴下塗布が挙げられる。導電性多孔質基材上に塗布したカーボンナノチューブの分散液は、そのまま一定時間静置することによって、カーボンナノチューブが導電性多孔質基材の内部に浸透し、導電性多孔質基材とカーボンナノチューブ層が構造的に一体化する。あるいは、導電性多孔質基材の、カーボンナノチューブの分散液が塗布された面に加圧してもよく、カーボンナノチューブの分散液が塗布された面とは反対側の面に負圧をかけてもよい。これにより、カーボンナノチューブが導電性多孔質基材の内部により深く浸透しやすくなり、導電性多孔質基材とカーボンナノチューブ層が構造的に一体化した積層体を得られやすい。
このようにして得られた積層体を乾燥させ、本実施形態のカーボンナノチューブ正極100とする。上述したメンブレンフィルター上でステップS220を行った場合には、乾燥処理の後、積層体をメンブレンフィルターから剥離させることで、本実施形態のカーボンナノチューブ正極100を得る。
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明の別の実施形態に係る金属二次電池用カーボンナノチューブ正極およびその製造方法について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成および方法については、その説明を省略する。
図3は、本実施形態の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極(以下、カーボンナノチューブ正極と称する。)を示す模式図である。
本実施形態のカーボンナノチューブ正極300は、導電性多孔質基材310と、カーボンナノチューブ層320を備え、導電性多孔質基材310の内部に、カーボンナノチューブ層320全体が浸透しており(入り込んでおり)、構造的および電気的に一体化されてなる。より詳細には、カーボンナノチューブ層320は、導電性多孔質基材310の一方の面から、導電性多孔質基材310の全厚に満たない範囲で、導電性多孔質基材310の内部に形成されてなる。すなわち、図3に示すように、カーボンナノチューブ正極300の一方の表面(図3における紙面下側の面)302は、導電性多孔質基材310の表面312であり、かつ、カーボンナノチューブ層320の表面322でもある。
このような構造を有する本実施形態のカーボンナノチューブ正極300では、図3中の部分拡大図に示すように、カーボンナノチューブ層320のカーボンナノチューブ324が、導電性多孔質基材310の表面312から5μm以上浸透している(入り込んでいる)。これにより、導電性多孔質基材310とカーボンナノチューブ層320とが構造的に一体化された状態がより確実にされている。
本実施形態では、カーボンナノチューブ層320の厚みは、5μm以上であり、典型的には、10〜500μmの範囲であり、導電性多孔質基材310の全厚に満たない範囲で調整される。また、導電性多孔質基材310の厚みは、少なくとも5μmを超え、典型的には、50〜500μmの範囲である。カーボンナノチューブ層320の厚みを考慮して調整される。例えば、導電性多孔質基材310の厚みに対するカーボンナノチューブ層320の厚みの割合としては、1〜10%の範囲、5%〜25%の範囲、10〜30%の範囲、20〜50%の範囲、25〜75%の範囲、50〜80%の範囲、70〜90%の範囲、75〜95%の範囲が挙げられるが、これらに限定されない。
次に、本実施形態のカーボンナノチューブ正極300の製造方法を説明する。
図4は、本実施形態の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極の製造方法を示すフローチャートである。
ステップS410:カーボンナノチューブを溶媒中に分散させ、カーボンナノチューブの分散液を得る。
ステップS410は、実施の形態1で説明したステップS210と同様であるので、説明を省略する。
ステップS420:カーボンナノチューブの分散液を導電性多孔質基材上にろ過または塗布し、導電性多孔質基材の一方の面に構造的および電気的に一体化したカーボンナノチューブ層を形成する。
ステップS420において、カーボンナノチューブの分散液を導電性多孔質基材上にろ過する場合には、吸引ろ過または加圧ろ過であることが特に好ましい。これにより、カーボンナノチューブが導電性多孔質基材の内部に完全に浸透し、導電性多孔質基材の内部にカーボンナノチューブ層全体が浸透した、導電性多孔質基材とカーボンナノチューブ層が構造的に一体化した構造体を確実に得ることができる。
一方、ステップS410で得られたカーボンナノチューブの分散液に関し、当該分散液中のカーボンナノチューブの分散性が良好であり、かつ、カーボンナノチューブの濃度が比較的高く、分散液が一定の粘性を有する場合には、カーボンナノチューブの分散液を導電性多孔質基材上に塗布してもよい。この場合、導電性多孔質基材の、カーボンナノチューブの分散液が塗布された面に加圧するか、または、カーボンナノチューブの分散液が塗布された面とは反対側の面に負圧をかけることが特に好ましい。これにより、カーボンナノチューブが導電性多孔質基材の内部に完全に浸透し、導電性多孔質基材の内部にカーボンナノチューブ層全体が浸透した、導電性多孔質基材とカーボンナノチューブ層が構造的に一体化した構造体を確実に得ることができる。
上記の事項以外は、ステップS420は、実施の形態1で説明したステップS220と同様であるので、説明を省略する。
(実施の形態3)
実施の形態3では、本発明のさらに別の実施形態に係る金属二次電池用カーボンナノチューブ正極およびその製造方法について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成および方法については、その説明を省略する。
図5は、本実施形態の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極(以下、カーボンナノチューブ正極と称する。)を示す模式図である。
本実施形態のカーボンナノチューブ正極500は、導電性多孔質基材510と、カーボンナノチューブ層520を備え、導電性多孔質基材510とカーボンナノチューブ層520との間に、カーボンナノチューブを含む中間層530を備える。すなわち、カーボンナノチューブ正極500は、導電性多孔質基材510の一方の面に、中間層530およびカーボンナノチューブ層520が積層され、構造的および電気的に一体化されてなる。
中間層530に含まれるカーボンナノチューブは、中間層530に導電性を付与し、これにより、構造体(すなわち、カーボンナノチューブ正極500)が電気的に一体化された状態が確保される。
中間層530に含まれるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)であってもよく、二層カーボンナノチューブ(DWNT)であってもよく、多層カーボンナノチューブ(MWNT)であってもよく、または、それらの混合物であってもよい。また、中間層530に含まれるカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ層520を構成するカーボンナノチューブと同じであってもよく、異なっていてもよい。
また、本実施形態では、導電性多孔質基材510とカーボンナノチューブ層520との間に中間層530を備えることにより、導電性多孔質基材510とカーボンナノチューブ層520とが構造的に一体化された状態がより確実にされている。好ましくは、中間層530は、カーボンナノチューブ、およびその作製過程で不可避的に混入しうる不純物以外の添加成分を含む。具体的には、中間層530は、例えば、カーボンナノチューブと界面活性剤との混合物、カーボンナノチューブとバインダーとの混合物、または、カーボンナノチューブと界面活性剤とバインダーとの混合物からなる。
界面活性剤としては特に限定されず、一般に入手可能な界面活性剤を用いることができる。例えば、イオン性界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルトリメチルアンモニウム塩など)、非イオン性界面活性剤(Pluronic、Tween、Triton Xなど)を用いることができる。
バインダーとしては特に限定されず、一般に入手可能なバインダー材料を用いることができる。例えば、電池用バインダーとして市販されている樹脂材料(ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン、スチレン−ブタジエン樹脂など)を用いることができる。
中間層530の厚みは特に限定されないが、カーボンナノチューブ層520の厚みよりも薄いことが好ましい。例えば、中間層530の厚みは、0.5μm〜10μmの範囲である。中間層530の厚みが上記範囲内であれば、カーボンナノチューブ正極500の性能を損なうことなく、導電性多孔質基材510とカーボンナノチューブ層520とが構造的および電気的に一体化された状態をより確実にすることができる。
また、中間層530のカーボンナノチューブは、導電性多孔質基材510およびカーボンナノチューブ層520の少なくとも一方の表面から5μm以上浸透していることが好ましい。これにより、導電性多孔質基材510とカーボンナノチューブ層520とが構造的および電気的に一体化された状態をより確実にすることができる。
なお、本実施形態では、中間層530を構成するカーボンナノチューブ、および/または、界面活性剤、バインダー等の添加成分の効果により、導電性多孔質基材510とカーボンナノチューブ層520とが、中間層530を介して、構造的および電気的に一体化された状態である。そのため、上述したような、中間層530のカーボンナノチューブが、導電性多孔質基材510およびカーボンナノチューブ層520の少なくとも一方の表面から浸透していることは、本実施形態のカーボンナノチューブ正極500に必須の条件ではない。また、カーボンナノチューブの浸透の程度が5μm未満であっても、構造的に一体化した状態が確保されうる。一方、電極の設計によっては、構造的に一体化した状態をより確実にする観点から、導電性多孔質基材510の厚み、および/または、カーボンナノチューブ層520の厚みに対する、中間層530のカーボンナノチューブの浸透度を目安として、カーボンナノチューブ正極500における、構造的および電気的に一体化された状態を評価することもできる。具体的には、例えば、中間層530のカーボンナノチューブが、導電性多孔質基材510およびカーボンナノチューブ層520の少なくとも一方の表面から、導電性多孔質基材510またはカーボンナノチューブ層520の厚みに対して1%以上浸透していることが好ましい。
次に、本実施形態のカーボンナノチューブ正極500の製造方法を説明する。
図6は、本実施形態の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極の製造方法を示すフローチャートである。
ステップS610:カーボンナノチューブを溶媒中に分散させ、カーボンナノチューブの分散液を得る。
ステップS610は、実施の形態1で説明したステップS210と同様であるので、説明を省略する。
ステップS620:界面活性剤、バインダー、またはそれらの混合物を含む溶媒中にカーボンナノチューブを分散させた分散液を、導電性多孔質基材上にろ過または塗布し、カーボンナノチューブを含む中間層を形成する。
界面活性剤、バインダー、またはそれらの混合物は、溶媒に対して重量比0.1〜10%程度の濃度で添加する。
カーボンナノチューブは、溶媒に対して重量比0.005〜0.5%程度の濃度で懸濁させ、超音波分散処理またはミキサー撹拌処理して分散させて、界面活性剤、バインダー、またはそれらの混合物を含む、カーボンナノチューブの分散液を得る。
なお、界面活性剤、バインダー、またはそれらの混合物と、カーボンナノチューブを溶媒に添加する順序は特に制限されない。
ステップS620において、導電性多孔質基材上に分散液をろ過する方法は特に制限されないが、導電性多孔質基材がフィルターとしての役割を果たす場合には、カーボンナノチューブの分散液を、導電性多孔質基材上にろ過することができる。また、カーボンナノチューブの分散液を、導電性多孔質基材を設置したメンブレンフィルター上にろ過してもよい。ろ過は、自然ろ過であってもよく、吸引ろ過または加圧ろ過であってもよい。
また、導電性多孔質基材上に分散液を塗布する方法は特に制限されないが、例えば、滴下塗布が挙げられる。導電性多孔質基材上に塗布したカーボンナノチューブの分散液は、そのまま一定時間静置してもよく、あるいは、導電性多孔質基材の、カーボンナノチューブの分散液が塗布された面に加圧してもよく、カーボンナノチューブの分散液が塗布された面とは反対側の面に負圧をかけてもよい。
ステップS630:カーボンナノチューブの分散液を導電性多孔質基材上にろ過または塗布し、導電性多孔質基材の一方の面に構造的および電気的に一体化したカーボンナノチューブ層を形成する。
ステップS630は、実施の形態1で説明したステップS220と同様であるので、説明を省略する。
なお、上述したステップS610とS620は、その順序が反対であってもよい。すなわち、ステップS630によりカーボンナノチューブ層520を形成する前に、ステップS620により導電性多孔質基材510の一方の面に中間層530が形成されていればよく、ステップS610の前にステップS620を行ってもよい。
(実施の形態4)
実施の形態4では、実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3で説明した本発明の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極を用いた金属二次電池について説明する。なお、以下では、例示的な実施形態として、金属二次電池がリチウム空気電池である場合について説明する。
図7は、実施の形態1のカーボンナノチューブ正極を用いたリチウム空気電池を示す模式図である。
本実施形態のリチウム空気電池700は、カーボンナノチューブ正極100と、リチウム金属を含有する負極710と、正極100と負極710との間に位置する電解液720とを備える。
カーボンナノチューブ正極100は、導電性多孔質基材110とカーボンナノチューブ層120を備える。導電性多孔質基材110は、外部に接続する端子(図示せず)を有してもよい。その他、カーボンナノチューブ正極100の具体的な構成は、実施の形態1で説明した通りであるので、説明を省略する。
負極710は、リチウム金属を含有する負極活物質層712と、負極活物質層712に接する負極集電体714とを備える。負極活物質層712に含有されるリチウム金属は、リチウム金属単体であってもよいし、リチウム合金であってもよい。リチウムとともにリチウム合金を形成する元素としては、マグネシウム、チタン、スズ、鉛、アルミニウム、インジウム、ケイ素、亜鉛、アンチモン、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。負極集電体714は、導電性を有する金属材料やカーボン等であり、外部に接続する端子(図示せず)を有してもよい。負極710において、負極活物質層712と負極集電体714とが一体であってもよく、各々別個に構成されていてもよい。
電解液720の種類は特に制限されず、従来のリチウム空気電池で用いられる電解液を用いることができる。なお、電解液720内にセパレータ(図示せず)を設けてもよい。
本実施形態のリチウム空気電池700の動作原理は既存のリチウム空気電池と同様であるが、本実施形態のリチウム空気電池700は、実施の形態1で説明したカーボンナノチューブ正極100を備えるため、少なくとも導電性多孔質基材110に浸透したカーボンナノチューブ層120のカーボンナノチューブ(図1中の122)が、セル内圧が小さい環境で充放電反応に寄与することができ、これにより、電池特性が安定化する。また、導電性多孔質基材110の、カーボンナノチューブ層120が積層されていない面(上面)にガス拡散機能が保持され、カーボンナノチューブ正極100を複数積層させても充放電反応に必要な酸素の給排気が可能であるため、セル(すなわち、リチウム空気電池700)の積層設計およびそれによる大容量化が可能である。
図8は、実施の形態2のカーボンナノチューブ正極を用いたリチウム空気電池を示す模式図である。
本実施形態のリチウム空気電池800は、カーボンナノチューブ正極300と、リチウム金属を含有する負極810と、正極300と負極810との間に位置する電解液820とを備える。ここで、負極810と電解液820は、図7を参照して説明した負極710と電解液720とそれぞれ同様であるため、説明を省略する。
カーボンナノチューブ正極300は、導電性多孔質基材310とカーボンナノチューブ層320を備え、導電性多孔質基材310の内部に、カーボンナノチューブ層320全体が浸透している(入り込んでいる)。導電性多孔質基材310は、外部に接続する端子(図示せず)を有してもよい。その他、カーボンナノチューブ正極300の具体的な構成は、実施の形態2で説明した通りであるので、説明を省略する。
本実施形態のリチウム空気電池800は、実施の形態2で説明したカーボンナノチューブ正極300を備えるため、少なくとも導電性多孔質基材310に浸透したカーボンナノチューブ層320のカーボンナノチューブ(図3中の324)が、セル内圧が小さい環境で充放電反応に寄与することができ、これにより、電池特性が安定化する。
少なくとも導電性多孔質基材310に浸透した中間層330のカーボンナノチューブ(図示せず)が、セル内圧が小さい環境で充放電反応することができ、これにより、電池特性が安定化する。また、導電性多孔質基材310の、カーボンナノチューブ層320が形成されていない面(上面)にガス拡散機能が保持され、カーボンナノチューブ正極300を複数積層させても充放電反応に必要な酸素の給排気が可能であるため、セル(すなわち、リチウム空気電池800)の積層設計およびそれによる大容量化が可能である。
図9は、実施の形態3のカーボンナノチューブ正極を用いたリチウム空気電池を示す模式図である。
本実施形態のリチウム空気電池900は、カーボンナノチューブ正極500と、リチウム金属を含有する負極910と、正極500と負極910との間に位置する電解液920とを備える。ここで、負極910と電解液920は、図7を参照して説明した負極710と電解液720とそれぞれ同様であるため、説明を省略する。
カーボンナノチューブ正極500は、導電性多孔質基材510とカーボンナノチューブ層520を備え、導電性多孔質基材510とカーボンナノチューブ層520の間に中間層530を備える。導電性多孔質基材510は、外部に接続する端子(図示せず)を有してもよい。その他、カーボンナノチューブ正極500の具体的な構成は、実施の形態3で説明した通りであるので、説明を省略する。
本実施形態のリチウム空気電池900は、実施の形態3で説明したカーボンナノチューブ正極500を備えるため、少なくとも導電性多孔質基材510に浸透した中間層530のカーボンナノチューブ(図示せず)が、セル内圧が小さい環境で充放電反応に寄与することができ、これにより、電池特性が安定化する。また、導電性多孔質基材510の、中間層530とカーボンナノチューブ層520が積層されていない面(上面)にガス拡散機能が保持され、カーボンナノチューブ正極500を複数積層させても充放電反応に必要な酸素の給排気が可能であるため、セル(すなわち、リチウム空気電池900)の積層設計およびそれによる大容量化が可能である。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[実施例1]
70mgのカーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ、品名:EC 2.0、名城ナノカーボンから購入)を、140gのイソプロパノール中、氷浴下で3時間超音波処理(超音波ホモジナイザ、Branson、450D)することで、カーボンナノチューブ0.05wt%の分散液を得た。得られた分散液を、カーボンペーパー(品名:TGP−H−030、東レから購入)上にて1cmあたり8mL吸引ろ過し、カーボンペーパーの一方の面にシート状のカーボンナノチューブ層を形成した。得られた積層体を真空乾燥することで実施例1の構造体を得た。
図10(a)は、実施例1の積層体の断面のSEM像である。図10(b)は、実施例1の積層体のカーボンナノチューブ層を拡大したSEM像である。
図10(a)に示すように、実施例1の積層体は、厚み約61.3μmのカーボンペーパー(図中、「GDL」と表記。)に、厚み約68.7μmのカーボンナノチューブ層(図中、「CNT」と表記。)が積層された構造を有しており、全体の厚みは約130μmであった。また、カーボンペーパーとカーボンナノチューブ層が接触する界面においては、カーボンナノチューブが、カーボンペーパーの表面から5μm以上浸透し、構造的に一体化している様子が確認された。
また、図10(b)のSEM像より、実施例1の積層体のカーボンナノチューブ層は、直径10nm〜10μm程度のカーボンナノチューブのバンドル(束)の集合体として構成されていることが確認された。
実施例1の積層体は、市販のハサミ、カッターナイフ、あるいは打ち抜き器を用い、剥がれや切り毀れなく、カーボンペーパーとカーボンナノチューブ層の積層構造を保ったまま任意の形状に切断することができた。
なお、本願発明者らは、実施例1で用いたカーボンペーパーに代えて、種々の厚みを有する市販のカーボンペーパー、カーボンクロスまたはカーボンフェルトを用いて、実施例1と同様の手順により、導電性多孔質基材の一方の面にカーボンナノチューブ層を形成した積層体が得られること、および、積層体全体の厚みは、1mm程度以下の値で様々に調整することができることを確認している。
実施例1の積層体におけるカーボンペーパーとカーボンナノチューブ層の密着強度を、以下の方法により評価した。
図11(a)、(b)は、密着強度の試験方法を示す模式図である。
実施例1の積層体から、幅5mm×長さ約15mmの長方形の試験片を切り出し、試験片のカーボンペーパー側を、両面テープを介してガラス板の一方の端部に貼り付けて固定した(図11(a))。
ガラス板のもう一方の端部を、両面テープを介して固定用の支持台に貼り付けて固定した(図11(b))。
次に、試験片の表面(カーボンナノチューブ層側の表面)に、粘着テープを介して鉛直方向(図11(b)の紙面下方向)に重り(0.5g=約0.5gf=約5mN)を固定した。なお、重りは、試験片の端部に均等に荷重がかかるようにする。
以降、試験片からカーボンナノチューブ層が剥がれ落ちるまで重りを追加した。
その結果、実施例1の積層体の複数個所から切り出した試験片では、いずれも10mN/5mm以上の密着強度を有することが確認された。
これに対して、比較用の構造体として、実施例1で用いたカーボンペーパーに、実施例1の積層体のカーボンナノチューブ層と同程度の厚みを有するカーボンナノチューブシートを載置し、一定の圧力を負荷して作製した構造体(全体の厚みは200μm未満)から、幅5mm×長さ約15mmの長方形の試験片を切り出し、上記と同様の試験を行ったところ、1つ目の重りを固定した段階でカーボンナノチューブシートが剥がれ落ちた(密着強度は5mN/5mmに満たなかった)。なお、この比較用の構造体では、試験片の切り出しの際に、部分的に剥がれや切り毀れが生じ、このことからも、カーボンペーパーとカーボンナノチューブシートとの密着強度が低いことが分かった。
[実施例2]
実施例1で用いたカーボンナノチューブの分散液とは別個に、70mgのカーボンナノチューブを0.5wt%ラウリル硫酸ナトリウム(界面活性剤)水溶液140g中、氷浴下、3時間超音波分散処理をすることで、界面活性剤を含むカーボンナノチューブ0.05wt%の分散液を得た。得られた分散液をカーボンペーパー上に1cmあたり0.5mL滴下して自然ろ過し、自然乾燥させることで中間層を形成した後、界面活性剤を含まないカーボンナノチューブ分散液(実施例1と同様にして調製したもの)を1cmあたり8mL吸引ろ過し、中間層の上にカーボンナノチューブ層を形成した。得られた積層体を真空乾燥することで実施例2の構造体を得た。
得られた積層体をSEM観察した結果、界面活性剤を含むカーボンナノチューブの分散液を用いて形成した中間層のカーボンナノチューブが、カーボンペーパーの表面から5μm以上浸透している様子が確認された。また、カーボンナノチューブ層のカーボンナノチューブは、中間層の表面から5μm以上浸透し、カーボンペーパー、中間層およびカーボンナノチューブ層が、構造的に一体化している様子が確認された。
なお、界面活性剤を含むカーボンナノチューブの分散液を、カーボンペーパーを設置したメンブレンフィルター上にろ過する際の滴下量を調整することによって、中間層の厚みを種々調整することができ、中間層の厚みが比較的薄い場合には、カーボンナノチューブ層のカーボンナノチューブが、中間層だけでなく、その下に位置するカーボンペーパーにも浸透している様子が確認された。
[実施例3]
実施例2で用いた界面活性剤に代えて、バインダー(ポリフッ化ビニリデン)を用いたこと以外は実施例2と同様の手順により、実施例3の構造体を得た。
得られた積層体をSEM観察した結果、バインダーを含むカーボンナノチューブの分散液を用いて形成した中間層のカーボンナノチューブが、カーボンペーパーの表面から5μm以上浸透している様子が確認された。また、カーボンナノチューブ層のカーボンナノチューブは、中間層の表面から5μm以上浸透し、カーボンペーパー、中間層およびカーボンナノチューブ層が、構造的に一体化している様子が確認された。
なお、バインダーを含むカーボンナノチューブの分散液を、カーボンペーパーを設置したメンブレンフィルター上にろ過する際の滴下量を調整することによって、中間層の厚みを種々調整することができ、中間層の厚みが比較的薄い場合には、カーボンナノチューブ層のカーボンナノチューブが、中間層だけでなく、その下に位置するカーボンペーパーにも浸透している様子が確認された。
[実施例4]
実施例1の積層体を直径16mm(表面積2cm)の円形に切断し、これを正極としてリチウム空気電池セルを試作した。具体的には、CR2032型コインセルケース内に、直径16mmのリチウム金属箔負極(厚さ0.2mm)、ポリプロピレン多孔質膜のセパレータ、および、正極のカーボンナノチューブ層をセパレータ側に向けて順に重ね、コインセルとした。コインセルのガス拡散層(正極のカーボンペーパー)側には、酸素の吸排気用に直径1mm程度の小孔を多数設けた。電解液としてLiTFSI、LiNO、LiBrを含むリチウム塩のテトラグライム溶液を調製し、80μL程度をセルに注入した。以上のコインセルの試作は全て露点−50℃以下のドライルーム内で行った。
試作したコインセルの放電特性およびサイクル特性を純酸素雰囲気下にて評価した。結果を図8および図9に示す。
図12は、実施例4のリチウム空気電池コインセルの放電挙動を示す図である。
図13は、実施例4のリチウム空気電池コインセルの充放電挙動を示す図である。
上記コインセルを電流値0.4mAにて放電させたところ、図12に示すように、電極面積あたり15〜20mAh/cm程度の放電容量を発揮し、カーボンナノチューブ重量あたりでは約8,100mAh/g程度の容量となることがわかった。
また、電流値0.4mA/cmで10時間(セル容量4mAh/cm)の充放電を繰り返したところ、図13に示すように、約15回程度の充放電サイクルが可能であった。
これらの結果より、実施例1の積層体が、リチウム空気電池用の正極としての機能を有し、電気的に一体化した状態であることが確認された。
[実施例5]
実施例4のリチウム空気電池コインセルと同様の構成を有するコインセルを多数作製し、その放電容量を測定した。その結果、いずれのコインセルも、電極面積あたり15〜20mAh/cm程度の放電容量が得られた。
[比較例6]
実施例4で用いた正極(実施例1の積層体を直径16mm(表面積2cm)の円形に切断したもの)の、カーボンナノチューブ層と同じ重量および厚みを有するカーボンナノチューブシートを作製した。このカーボンナノチューブシートを正極として、実施例4と同様の構成を有するリチウム空気電池セルを試作した。具体的には、CR2032型コインセルケース内に、直径16mmのリチウム金属箔負極(厚さ0.2mm)、ポリプロピレン多孔質膜のセパレータ、および、正極のカーボンナノチューブシートを順に重ね、さらに、ガス拡散層として実施例1で用いたカーボンペーパーを直径16mmの円形に切断したものを重ね(載置したのみ)、コインセルとした。その他の条件は、実施例4と同様とした。
比較例6のコインセルを、実施例4と同様の条件で放電させたところ、放電量は電極面積あたりで0〜15mAh/cm程度にバラつき、その平均値も実施例4の場合と比べて半減した。
実施例4、実施例5および比較例6の結果から、実施例1の積層体を正極に用いることで、リチウム空気電池の放電容量の増加、および容量の安定化の効果が得られることが確認された。
[実施例7]
実施例4および実施例5の構成を有するコインセル、および、比較例6の構成を有するコインセルの各々において、1mAhずつ放電させてインピーダンス測定を行った。結果を図14(a)および図14(b)に示す。
図14(a)は、実施例4および実施例5の構成を有するコインセルのインピーダンススペクトルであり、図14(b)は、比較例6の構成を有するコインセルのインピーダンススペクトルである。
図14(a)および図14(b)に示すように、いずれの構成のコインセルにおいても、インピーダンススペクトルに関して大きな差異は確認されなかった。
この結果から、本発明のカーボンナノチューブ正極において、カーボンナノチューブ層のカーボンナノチューブが導電性多孔質基材に浸透している場合でも、当該カーボンナノチューブは、セルの抵抗成分にほとんど影響しない(負の効果を有さないかもしくは無視できるほどの影響である)ことが示唆された。また、このことは、導電性多孔質基材とカーボンナノチューブ層の間に中間層を備える形態において、中間層に含まれるカーボンナノチューブが導電性多孔質基材に浸透している場合にも当てはまると考えられる。
[実施例8]
実施例1の積層体を40x50mmの長方形に切断し、これを正極としてリチウム空気電池スタックセルを試作した。具体的には、40x50mmの長方形に切断したリチウム金属箔(厚さ0.2mm)、ポリプロピレン多孔質膜のセパレータ、および、正極のカーボンナノチューブ層をセパレータ側に向けて順に重ねたものを単セルとし、2枚の単セルのガス拡散層(正極のカーボンペーパー)側を重ねて1セット(バイセル)とした。このバイセルを5セット積層し(単セル10枚、電極面積200cm)、これを断面に通気孔を設けたアルミラミネートフィルムでパックすることで10層スタックセルとした。
実施例8のリチウム空気電池スタックセルに、実施例4と同様に調製した電解液を適量注入させ、放電させたところ、実施例4のコインセルと同程度の電極面積あたりの放電容量を発揮し、セル全体では、電極面積に比例して100倍程度大きな放電容量が得られた。また、実施例4と同様の条件で充放電サイクル特性を調べたところ、実施例4のコインセルと同様に、15回程度の充放電サイクルが可能であった。
本発明のカーボンナノチューブ正極は、金属二次電池正極に用いることができ、より具体的には、金属空気電池正極として好適である。中でも、リチウム空気電池での用途に特に適しており、リチウム空気電池セルの開発において、カーボンナノチューブが本来有する機能・特性が有効に発揮されるような電極設計が可能である。
100、300、500 カーボンナノチューブ正極
110、310、510 導電性多孔質基材
112、312 導電性多孔質基材の表面
120、320、520 カーボンナノチューブ層
122、324 カーボンナノチューブ
530 中間層

Claims (13)

  1. 導電性多孔質基材と、
    カーボンナノチューブ層とを備え、
    前記導電性多孔質基材と前記カーボンナノチューブ層が構造的および電気的に一体化されてなる、金属二次電池用カーボンナノチューブ正極。
  2. 前記カーボンナノチューブ層は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載のカーボンナノチューブ正極。
  3. 前記導電性多孔質基材は、カーボンペーパー、カーボンクロス、またはカーボンフェルトからなる、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ正極。
  4. 前記カーボンナノチューブ層のカーボンナノチューブが、前記導電性多孔質基材の表面から5μm以上浸透している、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ正極。
  5. 前記導電性多孔質基材と前記カーボンナノチューブ層との間に、カーボンナノチューブを含む中間層を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ正極。
  6. 前記中間層は、カーボンナノチューブと界面活性剤との混合物、カーボンナノチューブとバインダーとの混合物、または、カーボンナノチューブと界面活性剤とバインダーとの混合物からなる、請求項5に記載のカーボンナノチューブ正極。
  7. 前記中間層のカーボンナノチューブが、前記導電性多孔質基材および前記カーボンナノチューブ層の少なくとも一方の表面から5μm以上浸透している、請求項5または6に記載のカーボンナノチューブ正極。
  8. 前記金属二次電池は、リチウム空気電池、亜鉛−空気電池、ナトリウム−空気電池、アルミニウム−空気電池、マグネシウム−空気電池、カルシウム−空気電池、鉄−空気電池、カリウム−空気電池、またはリチウム−二酸化炭素電池である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ正極。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極の製造方法であって、
    カーボンナノチューブを溶媒中に分散させ、カーボンナノチューブの分散液を得るステップと、
    前記カーボンナノチューブの分散液を導電性多孔質基材上にろ過または塗布し、前記導電性多孔質基材の一方の面に構造的および電気的に一体化したカーボンナノチューブ層を形成するステップと
    を包含する、方法。
  10. 前記ろ過は、吸引ろ過または加圧ろ過である、請求項9に記載の方法。
  11. 前記カーボンナノチューブ層を形成するステップの前に、
    界面活性剤、バインダー、またはそれらの混合物を含む溶媒中にカーボンナノチューブを分散させた分散液を、前記導電性多孔質基材上にろ過または塗布し、カーボンナノチューブを含む中間層を形成するステップ
    を包含する、請求項9または10に記載の方法。
  12. 正極、金属を含有する負極、および、前記正極と前記負極との間に位置する電解液とを備える金属二次電池であって、
    前記正極は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属二次電池用カーボンナノチューブ正極である、金属二次電池。
  13. 負極活物質が、リチウム、亜鉛、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、またはカリウムであり、正極活物質が、酸素または二酸化炭素である、請求項12に記載の金属二次電池。
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