高次脳領域に結びつき、神経変性および神経炎症を減少させ、認知機能を改善する視覚刺激を介して、認知症を予防、緩和および/または治療するためのシステムならびに方法に関連した様々な主旨、およびそれらの実施形態に関する詳細な説明を記載する。上記に紹介され、下記にさらに詳細に議論された様々な概念が、多数の方法で実装されうることが理解されるべきである。特定の実装および適用の例は、当業者にとって明らかである実施および代替を可能とするよう、主に例示的な説明のために提供される。
下記に説明される図および実施例は、本願の実施の範囲を単一の実施形態に限定することを意味していない。記述または図示された要素の一部または全てを交換することによって、他の実施が可能である。さらに、開示された例示的な実施のある特定の要素が公知の構成要素を使用して部分的または完全に実施されうる場合、場合によっては、本実施の理解に必要なそのような公知の構成要素の一部のみが記載され、そのような公知の構成要素の他の部分の詳細な説明は、本実施を不明瞭にしないように省略される。
本開示において、本発明者らは、本明細書において「Gamma ENtrainment Using Sensory visual stimuli」(感覚視覚刺激を使用したガンマ同調)(GENUS)と呼称される慢性非侵襲的視覚刺激を用いた対象の治療を含む本発明技術が、アルツハイマー病(AD)を含む認知症に関連した症状に対処し、視覚皮質を超えた脳領域においてAD病変に影響を及ぼすことを示すものである。実施例において、本発明者らは、Tau P301S、CK−p25、および老齢の5XFADマウスを含む複数の神経変性マウスモデルにおいて慢性視覚GENUSの効果を実証した。本発明者らは、慢性視覚GENUSが、複数の脳領域(高次脳領域を含む)においてガンマ振動を同調させること、およびこれら脳領域全体にわたり低いガンマ周波数で機能的結合を誘導することを観察した。検証したいくつかの神経変性疾患マウスモデル全体で、本発明者らは、慢性視覚GENUSが、アミロイドプラーク、タウ過剰リン酸化および脳の萎縮を含む複数のAD関連病変を改善し、複数の高次脳領域においてニューロンおよびシナプスの密度低下を予防することを見出した。トランスクリプトームおよびプロテオミクスのプロファイリングにより、P301SマウスおよびCK−p25マウスの変性ニューロンにおいて異常改変されている膜輸送、細胞内輸送、およびシナプス機能に関与する遺伝子およびタンパク質が、慢性GENUSで改善または修復され、ミクログリアの免疫反応が減少したことが示された。これら広範な神経保護的作用を鑑み、本発明者らはさらに認知機能に対する毎日の慢性GENUSの効果を調査したところ、ADの複数のマウスモデルにおいて行動タスクの能力改善が示された。これらをまとめると、本発明の結果から、ADを含む認知症の対象の治療における視覚GENUSの神経保護的効果が浮かび上がってくる。
以下で詳述されるように、いくつかの実験を行い、複数の脳領域に対する慢性視覚刺激の効果を評価した。視覚刺激は概して、約30〜50Hzの周波数を有しており、特に視覚刺激に対しては約40Hzの周波数に関心が向けられた。一部の例では、発光ダイオード(LED)をベースとしたデバイスを採用して視覚刺激を送達した。LED系デバイスは、50%の負荷サイクルを有する矩形波電流パターンで駆動された。しかし(LED系デバイス以外の)様々なタイプのデバイスを採用して、本明細書に記載される範囲内の様々な周波数の視覚刺激を効率的に送達し得ることを認識されたい。さらに矩形型以外の波形、ならびに50%以外の負荷サイクルを採用して、本明細書に記載される範囲内の様々な周波数の視覚刺激を効率的に生成してもよい。
それに加えて、1日当たり1時間の視覚刺激に対する対象曝露時間、ならびに7日、22日(約3週間)および42日(約6週間)の対象曝露期間をはじめとする、本明細書に記載のいくつかの試験において様々な治療プロトコールが採用された。しかし他の対象曝露時間および対象曝露期間を採用しても、本明細書に記載の範囲内の様々な周波数の視覚刺激を送達し、アルツハイマー病を含む認知症を効率的に治療し得ることを認識されたい。例えば1日当たり1時間を超える曝露時間(例えば複数の1時間の増分、それより短い増分または長い増分で送達される)、および/または3週間よりも短い曝露期間、3週間〜6週間、および6週間よりも長い曝露期間を、様々な組み合わせと順序で採用し、アルツハイマー病を含む認知症を効率的に治療してもよい。
以下に実験および各実験結果の要約を最初に提示し、次いで実験プロトコールの詳細を提示して、アルツハイマー病を含む認知症の対象の治療に対する視覚GENUSの有効性を解説する。
視覚GENUSは高次脳領域に影響を及ぼす
40Hzの視覚刺激が、視覚皮質を超える脳領域においてニューロン活動を制御し得るか、または視覚皮質に限定されるかを、ニューロン活動のマーカーとしてc−Fos免疫組織化学染色を野生型C57Bl/6Jマウスにおいて実施することで決定することを最初の目的とした(図1A)。50%負荷サイクルで特定の周波数の視覚刺激を送達するために、カスタムメイドのLEDデバイスを採用した(例えば40Hz刺激に対し、12.5ミリ秒の間点灯し、12.5ミリ秒の間消灯する)(Iaccarino et al.,2016;Singer et al.,in press)。マウスは3日間環境に慣れさせ、その後に1時間の40Hzの視覚刺激に曝露された。次いでホームケージに戻し、その1時間後に殺処分して、脳組織を採取し、切片を作製して、c−Fos抗体で標識した。40Hzの視覚刺激により、視覚皮質(V1)(図1A〜1B)でc−Fos陽性ニューロンの有意な増加が生じた。さらに体性感覚皮質(SS1)、海馬領域CA1、および前頭前野皮質の帯状皮質(CC)領域においても有意な増加が記録された(図1A〜1B)。
40Hzの視覚刺激がどのようにこれら脳領域で進行中のニューロン活動を変化させ得るのかを理解するために、本発明者らはC57Bl/6Jマウスにカスタムメイドのマイクロドライブ(タングステン線の電極。詳細については方法を参照のこと)を移植して、自由行動中のマウスのV1、SS1、CA1および前頭前野皮質(PFC)の帯状領域からの局所電場電位(LFP)を並行して記録した。マウスは探索行動を減少させるために小さなGENUSボックス(8x8インチ(約20x20センチ))に閉じ込められ、V1、SS1、CA1および前頭前野皮質(PFC)からの局所電場電位(LFP)を同時にに記録されながら、40Hzの視覚刺激に曝露された。当該視覚刺激は最初は遮光され、その後に各10分の間、開放された(図1A、図7A)。急性40Hzの視覚刺激は、約35〜45Hzの低ガンマ振動の出力を有意に増加させ、V1では40Hzでピーク周波数となり(図1C〜1D)、CA1では小さいが有意に増加していた(図1C〜1D)。この結果は、ヘッドレストされたマウスにおける過去の研究結果と一致している(Iaccarino et al.,2016)。小さいが有意なガンマ出力の増加は、SS1およびPFCでも観察された(図1C〜1D)。この結果は、これら領域全体で観察されたc−Fos陽性細胞の増加と一致した(図1B)。
これら視覚刺激誘導性の振動が、視覚皮質の下流の脳領域においてもニューロン発火を同調させることができるかを評価するために、本発明者らは、海馬領域CA1を標的として四極管をC57Bl/6Jマウスコホートに移植し、単一ユニット活動を記録した。遮光された基準状態では、CA1錐体細胞は、ピークでの選択的放電を伴う低ガンマ(約35〜45Hz)への強い位相同期を示し、これは過去の報告と一致している(Bragin et al.,1995;Middleton and McHugh,2016)(図1E)。40Hzの視覚刺激は、選択位相を変化させずに、個々のニューロンのさらに安定的な位相同期を誘導した。これは群全体の平均合成ベクトル長(MRL(mean resultant length):遮光と40Hz視覚刺激の間、P=0.01)の増加として定量された(図1F)。このことから、ガンマ周波数視覚刺激は、海馬ニューロン群をより時間的に構造化された様式で駆動するように作用することが示される。
障害を受けた神経系へのGENUSの適用可能性を検証するために、数種の神経変性マウスモデルを使用して、C57Bl/6J動物で観察されたように、視覚刺激でガンマ振動を誘導し得るかを実証した。本発明者らは、CK−p25マウスを利用した。このマウスでは、Cdk5活性化因子p25の発現は、興奮性ニューロン特異的なCaMKIIαプロモーターにより誘導性様式で駆動される(CaMKIIαプロモーター−tTA x TetO−p25+GFP)(Cruz et al.,2003)。食餌からドキシサイクリンを除去した後、CK−p25は認知機能障害を伴う進行性のニューロンおよびシナプスの減少を呈し、6週間のp25誘導で重度となる(Cruz et al.,2003)。これらの研究結果と一致して、誘導後6週でCK−p25マウスのインビボLFP記録は、対照マウスと比較してV1、CA1およびPFCにおいて、35〜45Hzのガンマスペクトル出力の大幅な低下を示した(図7B〜7C)。これらの変化にもかかわらず、40Hzの視覚刺激は、V1、CA1およびPFCにおいて有意にガンマ振動を強化することができた(図7C)。さらに、ヒト化変異型の微小管関連タンパク質タウを高レベルで発現し、前頭側頭型認知症と関連するタウ凝集を5カ月齢の早さで有するTau P301Sマウス(Yoshiyama et al.,2007)を検証した。8カ月齢のP301Sマウスは、その月齢ではシナプスとニューロンが減少し、認知障害を有しているが、40Hzの視覚刺激でV1およびPFCにおいてガンマ出力の強化を呈した(図7D〜7E)。これらの結果から、GENUSは、ADマウスにおいてガンマ振動を充分に同調させること、そしてこれは、これらマウス特有のニューロン障害の様式とは無関係であることが示される。
複数回の視覚刺激への曝露が、長期間後であってもガンマ振動を同調させ得ることを確認するために、本発明者らは慢性GENUSプロトコールを採用し、これに従いC57Bl/6Jマウスとp25誘導型CK−p25マウスを、42日間(1時間/日)の40Hzの視覚刺激に曝露した(図7F、7H)。43日目、V1、SS1、CA1およびPFCから記録されたLFPは、C57Bl/6Jマウスの全領域にまたがる、40Hzのガンマ出力の有意な強化を示した。これは急性GENUSの単回トライアル適用と一致していた(図7F)。同様に、43日目のCK−p25マウス(この時点でp25誘導から85日)も、V1、CA1およびPFCにおいて低ガンマ出力の増加を生じさせた(図7H)。これらの結果とc−Fos免疫染色データをまとめると、急性および慢性の両方の40Hz視覚刺激が、視覚皮質だけでなくCA1、SS1およびPFCを含む他の高次皮質も回復させることが示唆される。
40Hz視覚刺激(急性および慢性の両方)は、C1、SS1、CA1およびPFCにまたがり同時に40Hz出力を強化する。そこで本発明者らはさらに、GENUSが作用して、視覚皮質とこれらの他の高次脳構造の間のニューロン活動が連動することを実証した。本発明者らは、遮光された、または遮光されていない40Hzの視覚刺激中のこれら脳領域全体のコヒーレンスを、重み付け位相同期指標(WPLI:weighted phase lag index)法を使用して算出した。この方法は、体積伝導を通じた電位汚染を最小化する(Vinck et al.,2011)。本発明者らは、C57Bl/6Jマウスにおいて、V1−CA1、V1−SS1、V1−PFC、CA1−SS1およびCA1−PFCに配置した電極ペアに伝わるLFPを分析した。遮光の有無で、40Hzの視覚刺激中の期間に平均速度の有意な差はなく、自発運動における何らかの電位差は否定された。急性40Hz視覚刺激は、視覚皮質と検証された他の脳領域との間、特にV1−CA1、V1−SS1、およびV1−PFCで(遮光期間と比較して)、30〜50Hzの低ガンマコヒーレンスを有意に増加させた(図1G、1H)。
より広範な脳構造にわたる連動ニューロン振動に対する慢性GENUSの長期的な影響を評価するために、本発明者らはWPLI分析を、1時間/日で42日間、視覚刺激に曝露されたC57Bl/6Jマウスおよびp25誘導CK−p25マウスのV1、SS1、CA1およびPFCから収集されたLFPに適用した。遮光条件と比較して、40Hzの視覚刺激中のV1−CA1(図7G)、ならびにV1−SS1、V1−PFC、およびCA1−PFCの間の30〜50Hzの低ガンマWPLIにおいて有意な増加が観察された(図7G)。同様に、慢性GENUSの後、CK−p25マウスも、遮光条件と比較して、V1−CA1、CA1−PFCおよびV1−PFCの間で30〜50Hzの低ガンマWPLIにおいて有意な増加を呈した(図7I)。全体としてこれらのデータは、40Hzの視覚刺激はマウスにおいて、局所(40Hzの同調(entrainment))、ならびに複数の高次皮質における連動領域間ニューロン振動活動(30〜50Hzの低ガンマWPLI)を強化することを示唆する。しかし観察された変化が、低ガンマ周波数刺激に特異的であるか否かを立証させることが重要である。これを検証するために、C57Bl/6Jマウスを、50%の負荷サイクルで送達される80Hzの視覚刺激に曝露し、40Hzの刺激実験と類似した光強度と曝露期間をマウスに確実に受けさせた(図1I)。刺激前期間と比較して、80Hzの視覚刺激中、視覚皮質(40HzのGENUSでは最も大きな出力増加が観察された部位)において80Hzスペクトル出力には有意な変化は観察されなかった(図1I、1J)。
慢性GENUSは、視覚皮質を超えてアミロイドプラークを改善する
Iaccarinoら(2016)は、急性視覚GENUSは、若く、症状を示す前の5XFADマウスのV1においてアミロイドレベルを減少させ、一方で、より病態が進行した6カ月齢の5XFADマウスでは、7日間の視覚GENUSがアミロイドレベルを減少させるだけでなく、アミロイドプラークも改善したことを示している。そこで本発明者らは、7日間の40Hzの視覚刺激が、11カ月齢の5XFADマウスにおいて、V1のみならずCA1、SS1およびPFCにおいてもアミロイドプラーク病変に影響を与え得るかを調べることとした。この目的のために、本発明者らは、マウスをGENUS刺激ケージ内に入れ(図8A)、1時間/日で7日間、40Hzまたは80Hz(40Hzと類似した光量を送達するが、V1(図1I、1J)においてガンマ振動を同調しない)のいずれか視覚刺激を与え、アミロイドプラーク負荷量を検証した(図2A)。7日間の40Hz視覚刺激の後、視覚皮質においてアミロイドプラークの減少が認められた(図2A、2B)が、非刺激マウスと比較してSS1にもCA1にも差異は観察されなかった(図2A、2B)。LFP分析と一致して、80Hzの視覚刺激を受けた5XFADマウスは、V1もCA1もアミロイドプラーク負荷量に変化は示さず、そしてSS1では中程度の増加を示した(図2A、2B)。これらの結果は、7日間の視覚GENUS後のアミロイドプラークの減少は、V1に限定的であり、40Hzの視覚刺激に特異的であるということを示している。
次に、GENUSプロトコールを22日に拡張させ、9カ月齢の5XFADマウスで開始して、マウスがおよそ10カ月齢になったときにアミロイドプラークの定量を行った(図2C)。22日間のGENUSは、V1においてアミロイドプラークの強度および数を有意に減少させた(図2C、2Dおよび図8B〜8D)。これは6カ月齢の5XFADマウス(Iaccarino et al.,2016)および11カ月齢の5XFADマウス(図2A、2B)において7日間のGENUS後のアミロイドプラークの減少と一致していた。重要なことは、22日間のGENUSは、SS1、CA1、および前頭前野皮質のCC領域においてもプラークの強度と数を充分に減少させたということである(図2D、図8B〜8D)。この効果もやはり40Hzの視覚刺激荷特異的であり、22日間の80Hzの刺激では、非刺激5XFADマウスと比較して、5XFADマウスのV1、SS1そしてCA1でもアミロイドプラークは変化しなかった(図2E、2F)。
過去の研究により、進行性のニューロンおよびシナプスマーカーの減少は、5XFADモデルではおよそ9カ月齢で始まることが示されている(Oakley et al.,2006)ことから、本発明者らは、9カ月齢の5XFADマウスで長期的GENUSを適用開始することを選択した。これらの研究と一致して、10カ月齢の5XFADマウスにおいて、同月齢の野生型同腹仔と比較し、CA1およびCCの両方においてニューロン数の有意な減少を観察した(図8C、8E)。対照的に、22日間のGENUSを受けた5XFADマウスは、アミロイド負荷量の減少(図2C、2Dおよび図8B〜8D)に加えて、非刺激マウスと比較して有意なニューロン減少の低下を示した(図8E)。同様に、非刺激5XFADマウスではCA1およびCCにおいてbassoon(シナプスマーカータンパク質)集積の有意な減少が観察された一方で、22日間の慢性GENUSは、シナプス減少を低下させた(図8Fおよび8G)。慢性GENUS後の神経変性およびアミロイド病変の低下は、改変APP導入遺伝子の発現の結果ではなく、GENUSを受けたマウスと非刺激対照マウスにおいて、全長APPタンパク質の発現に差異は検出されなかった(図8H、8I)。これらの結果から、慢性視覚GENUSは、5XFADマウスの複数の脳領域において、アミロイドプラーク負荷量の低下を導き、そしてニューロンおよびシナプスの減少を低下させたことが示される。
慢性GENUSは神経変性を低下させる
5XFADマウス(図8C、8E)において認められた疾患病変への影響とニューロン減少の低下における、慢性GENUSの可能性をさらに探索するために、次に、神経変性のTau P301SマウスモデルおよびCK−p25マウスモデルを検証した。8カ月齢では、Tau P301Sマウスは著しい神経病変を呈する(Yoshiyama et al.,2007)。ゆえに、Tau P301Sマウスのコホートを採用し、それらに対して非刺激、または1時間/日で22日間のGENUSを7カ月齢で開始し、8カ月齢でのタウリン酸化レベルとタウ関連病変を検証した(図3A〜3E、および図9Aおよび9B)。野生型のナイーブ同腹仔(WTナイーブ)と比較して、Tau P301SマウスのV1、SS1、CA1およびCCにおいて、S202/T205残基でタウのリン酸化が高いことが観察された(図3A、3B)。しかし慢性GENUSを受けたTau P301Sマウスは、非刺激P301Sマウスと比較して、S202/T205のタウリン酸化が有意に低下していた(図3A、3B)。ADおよびP301Sマウスの両方において、タウタンパク質は複数の残基で過剰にリン酸化される(Hanger yet al.,2007;Wang et al.,2013;Foidl and Humpel,2018;Kimura et al.,2018)。そこで非バイアスSer/Thr(S/T)ホスホプロテオミクス法を利用して、GENUS刺激がタウリン酸化に影響を与え得る程度を検証した。WTナイーブ同腹仔と比較して、Tau P301Sマウスにおいて、46個のS/T残基が過剰リン酸化され、および単一残基(S451)が脱リン酸化されたことが特定された(図3C)。分析からも、慢性GENUSは、6個のS/T部位でタウタンパク質のリン酸化を低下させ、S451のリン酸化を増加させたことが明らかとなった。このことから、GENUSは複数の部位でタウリン酸化に影響を与えることが示唆される(図3C)。
次に、Tau P301マウスにおけるニューロン減少を特徴解析した。過去に報告されているように、NeuN陽性細胞の数による定量を行った場合、V1、CA1、SS1、およびCCにおいてTau P301Sマウスはニューロン数に有意な低下を呈した(図3D、3E)。7カ月齢(ニューロン減少が始まるとき)から22日間のGENUSを受けたTau P301Sマウスは、非刺激対照と比較して、検証されたすべての脳領域でニューロン減少の有意な低下を示した(図3D、3E)。次に脳の重量と、側脳室の大きさを検証したところ、WT非刺激マウスと、GENUS刺激P301Sマウスの間に差異は観察されなかった(図9B)。
次に、6週間のp25誘導後に脳委縮、皮質縮小および異常な脳室拡張などのAD様の病理学的特徴を示すCK−p25モデルに対象を移した(Cruz et al.,2003)。慢性GENUSがこれらの異常性を改善し得る程度を検証するために、本発明者らは、6週間、毎日1時間のGENUSに曝露させつつ、CK−p25マウスにp25を同時に誘導した(図3F)。非刺激CK−p25マウスは、CKナイーブ同腹仔(CaMKIIαプロモーター− tTA;Cruz et al.,2003)と比較して脳重量と皮質の厚さの有意な低下を示した(図3G)。p25誘導中の慢性GENUSは、非刺激CK−p25マウスと比較して皮質の菲薄化を有意に低下させたが、脳重量は有意には変化させなかった(図3Gおよび図9D)。ヒトADおよびCK−p25トランスジェニックモデルの両方において、皮質縮小は脳室拡張と密接に相関しており(Cruz et al.,2003)、慢性GENUSを受けたCK−p25マウスにおいても、脳室拡張の大幅な低下が観察された(図3Hおよび図9E)。さらにp25誘導中に慢性GENUSを受けたCK−p25マウスも、非刺激対照と比較して、V1、SS1、CA1、およびPFCのCC領域において、ニューロン減少の有意な低下があった(図3I、3J)。二本鎖切断(DSB)の形態のDNA損傷は、CK−p25マウスの神経変性に対する早期マーカーとなることが過去に報告されている(Kim et al.,2008)。この研究結果と、本発明者らのGENUS介在性のニューロン死の低下の両方と合致して、V1、SS1およびCA1において、DSBの確立されたマーカーであるγH2AX−陽性細胞の数により分析すると、DSBの有意な低下も観察された(図9G)。慢性GENUSのこれら神経保護的な効果は、変異体の導入遺伝子発現を変化させることで誘導されたのではなく、(P301SマウスおよびCK−p25マウスのそれぞれにおいて)総タウとp25の発現は、GENUS刺激群と非刺激群の間で差異はなかった(図9A、9C、9F)。まとめると、これらの研究結果から、慢性GENUSは、重度の神経変性を有するP301SマウスモデルおよびCK−p25マウスモデルにおいて、神経保護的であることが立証される。
慢性GENUSは炎症反応を低下させる
さらに、慢性GENUS後にTau P301SマウスおよびCK−p25マウスにおいて観察された神経変性の低下は、部分的には、有益なミクログリア反応に介在された可能性も示された。それぞれ22日間および42日間のGENUS刺激を受けたP301S tauマウスおよびCK−p25マウス、ならびに非刺激P301SマウスおよびCK−p25マウス、ならびに各WT対照の視覚皮質に対し、非バイアスRNA配列解析を実施した(図4A)。過去に報告されている(Mathys et al.,2017)ように、視覚皮質を解剖し、次いで酵素的に消化して、CD11bおよびCD45の免疫染色によりミクログリアを特定して、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を使用して単離した(図10Aおよび10B)。各マウスから35,000個のミクログリアを単離し、各マウスから別個に総RNAを抽出して、RNA−seqの前にRNAの品質をチェックした。1サンプル当たり平均で2869万個のリードが得られ、その89.42%がアライメントされた。
RNA配列解析により、非刺激CK−p25マウス由来のミクログリアは、CKナイーブマウスと比較し、2333個の上方制御された遺伝子を有していたことが明らかとなった(図4A)。次に本発明者らは、遺伝子オントロジー(GO)分析を実施して、それら上方制御された遺伝子が、タンパク質合成、リボソーム制御、および免疫反応(ウイルス免疫反応、抗原提示および免疫反応制御を含む)に関与していることを明らかにした。この結果は過去の報告と一致している(Mathys et al.,2017)(図4B)。比較により特定された2019個の下方制御された遺伝子は主に細胞移動、細胞形態形成および脈管系の発生に関連していた(図4B)。慢性GENUS後、355個の遺伝子がCK−p25マウスにおいて(非刺激CK−p25マウスと比較して)上方制御されていた。これらの遺伝子は、タンパク質合成、有糸分裂の細胞サイクル制御、膜輸送および小胞介在輸送と関連していることが判明し、一方で515個の下方制御された遺伝子は大部分が、GTPase活性、タンパク質溶解および免疫反応(MHC−1介在性抗原処理提示、および免疫−適応性を含む)に関連していた(図4C)。これらの結果から、慢性GENUSは、CK−p25マウスにおいてミクログリア機能に大きな影響を与え、それらの炎症性を低下させ、そしておそらくは貪食、移動およびタンパク質分解の能力を高めることが示唆される。
非刺激のTau P301Sマウスでは、WTナイーブ同腹仔と比較して、総数で331個の上方制御された遺伝子と、292個の下方制御された遺伝子が見いだされた(図10C)。遺伝子オントロジー(GO)分析は、上方制御された遺伝子と、タンパク質合成および炎症性反応/免疫反応を関連づけ、一方で下方制御された遺伝子は、細胞骨格統合、細胞移動および脳の発生と高く関連付けられた(図10D)。慢性GENUS(22日)後のTau P301Sマウスから取得されたミクログリアは、非刺激Tau P301Sマウスと比較して238個の上方制御された遺伝子と、244個の下方制御された遺伝子を示した。この上方制御された遺伝子は、細胞代謝的タンパク質溶解、細胞移動、細胞形態形成および膜輸送と関連し、下方制御された遺伝子は、遺伝子発現、翻訳開始およびインターフェロン反応に関与していた(図10Cおよび図10D)。ゆえに慢性GENUSを受けたCK−p25マウスは、慢性GENUSを受けたTau P301Sマウスと非常に似たトランスクリプトームの変化を示した。まとめると、ミクログリア特異的トランスクリプトーム解析から、慢性GENUSは、疾患状態を生じさせる特定のトランスジェニックモデル(P301SまたはCK−p25)に依存せず、ミクログリアが形態変換し、タンパク質分解が強化され、そしてミクログリア介在性免疫反応が減少するように作用する。
これらの研究結果をさらに実証するために、慢性GENUS(CK−p25:p25誘導中、1時間/日で42日間;Tau P301S:22日間)後のCK−p25マウスおよびTau P301Sマウスの脳切片、ならびにそれら各々の非刺激対照群およびナイーブ対照群の脳切片を使用して免疫組織化学染色を実施した。CK−p25のミクログリア反応は、増殖の増大を特徴とする早期反応と、MHCクラスIIおよびインターフェロン経路の上昇を特徴とする後期反応が過去に報告されている(Mathys et al.,2017)。ミクログリア特異的マーカーのIba1を最初に使用して、免疫組織化学法および3次元レンダリングを実施した。これにより6週間誘導されたCK−p25マウスのV1における、ミクログリア数の大幅な増加と、形態の著しい変化が明らかとなった(図4D〜4Iおよび図10E)。CK−p25マウスのミクログリアは、対照と比較し、全体的には細胞体の体積に有意差を示さなかった(図4F)。しかし多くが、軸索および末端シナプスの変性と関連する(Jensen et al.,1994;Jorgensen et al.,1993)、複雑な「ボサボサした」分枝パターンを呈した(矢頭)(図4D;下側真ん中のパネル)。さらに大多数のミクログリアが、突起の分極を伴わない伸長された棒状体を呈したことが記録された(矢印)(図4D、4I)。これはラットでびまん性脳損傷後に、ヒト対象で外傷性脳損傷後に現れることが知られている表現型である(Bachstetter et al.,2017;Taylor et al.,2014)。さらに突起体積が減少したにもかかわらず(図4G)、ミクログリア間の最小距離を計測して分析したところ、CK−p25のミクログリアは、CKナイーブ対照と比較し互いに物理的に近くにあった(図4D、4H)。このことから、ミクログリアが自身のテリトリーを失っており、静止状態では通常、各ミクログリア細胞は自身の占有領域を有し、隣接テリトリー間に重複がほとんどないこととは対照的であることが示唆される(Del Rio−Hortega,1932;Nimmerjahn et al.,2005)。
慢性GENUSは、非刺激マウスと比較してCK−p25マウスで有意にミクログリア数を減少させたが、それでもナイーブCKマウスよりは高いままであった(図4D、4E)。慢性GENUS後のミクログリア突起の総体積は、退縮が少ないことが明らかとなり、CK−p25群およびCKナイーブ群のいずれと比較しても有意差はなかった(図4G)。重要なことは、慢性GENUS後のミクログリア間の最小距離は、CKナイーブ動物と同等であり(図4D、4H)、このことからは、慢性GENUSではミクログリアのテリトリーは維持されていることが示唆される。最後に、慢性GENUSを受けたCK−p25動物における棒状ミクログリアの全体的な体積の増加は有意に少ないが、CKナイーブ群よりは有意に高いままであった(図4I)。次にTau P301Sミクログリアを特徴解析し、P301Sではミクログリア増加の傾向があったが、Iba1免疫染色では統計的な有意差には達しなかったことが判明した(図4K、4L)。ミクログリア細胞体の総体積にも、WTナイーブマウスと比較してP301Sに差はなかった(図4K、4M)。しかしながら、慢性GENUSの後のTau P301Sマウスのミクログリア突起の総体積は、非刺激P301Sマウスと有意に差があり、WTナイーブ同腹仔と同等であった(図4K、4N)。これらの結果から、基準および疾患状態における様々なミクログリアの状態が浮上し、全体として、P301SマウスおよびCK−p25マウスにおける、疾患関連性のミクログリアの形態機能障害を軽減する慢性GENUSの効果が示唆される。
次に、慢性GENUSにより影響を受けることが示されている免疫反応に対するGO用語(GO term)を検証した。インターフェロン反応性遺伝子のCD40に特異的な抗体を使用した免疫組織化学法により、CKナイーブマウスと比較して、CK−p25マウスに有意な上昇があったことが明らかとなり(図4D、4J)、過去の報告と一致していた(Mathys et al.,2017)。慢性GENUSは、CK−p25マウスにおいてCD40シグナル強度の有意な低下を生じさせたが、CKナイーブ対照よりは有意に高いままであった(図4D、4J)。次に別の免疫反応性遺伝子であるC1q(古典的補体成分)を検証したところ、ミクログリア特異的なRNA−seq実験において有意に上方制御されていた。C1qは過去にADマウスモデルでシナプス減少に関与していた(Hong et al.,2016)。C1qの免疫組織化学法からは、非刺激のCK−p25マウスおよびTau P301SマウスのV1において、各ナイーブ対照同腹仔と比較してシグナル上昇が示された(図4O、4P、4Q)。慢性GENUSは、CK−p25マウスにおいてC1qの増加を有意に低下させたが、C1qの強度はCKナイーブの値よりも高いままであった(図4O、4P)。P301Sマウスにおいて、慢性GENUSは、C1qの増加を減弱させ、WTナイーブマウスと非刺激のP301Sマウスの間に有意差はなかった(図4O、4Q)。全体として、免疫組織化学法の結果は一貫して、慢性GENUSがミクログリアの免疫反応の低下を支援していることを示唆している。
慢性GENUSは、シナプス伝達、およびニューロンの細胞内輸送を改変する
次に、NeuN陽性(NeUn+)ニューロン核を単離して非バイアスRNA−seq分析を実施し、CK−p25マウスおよびTau P301SのV1中のニューロンの遺伝子発現に対する慢性GENUSの効果を研究した(図5A、5Bおよび図10F〜10G)。慢性GENUS(CK−p25:p25誘導の42日間;Tau P301S:22日間)の後、視覚皮質をマウスから採取した。続いて100,000個のニューロン核をFACSにより溶解緩衝液中へとソーティングし、その後、RNAを抽出して配列解析を実施した(図5A、5B)。脳重量に対する研究結果、および免疫組織化学法を使用したNeuN定量および皮質菲薄化の研究結果と一致して(図3G、3Iおよび図9D)、ナイーブCK同腹仔(100±3.87)と比較し、非刺激CK−p25マウスのNeuN+核の割合(81.56±3.29)は有意に低下していたことが判明した。これは、慢性GENUSを受けたCK−p25マウスでは明白ではなかった(88.56±4.49)(図10F、10H)。同様に、非刺激のTau P301SマウスにおけるNeuN+核の割合は、ナイーブWT同腹仔(100 ± 3.87)よりも有意に低く(86.11 ± 2.26)、慢性GENUSを受けたTau P301Sマウスは、WTマウス(96.05 ± 3.99)とは変わらなかった(図10G、10H)。この結果は免疫組織化学法の結果と一致していた(図3E、3J)。これらの結果は、CK−p25マウスとTau P301Sマウスの神経変性マウスモデルの両方において、慢性GENUSを受けたニューロン核の減少の低下を示しており、GENUSの全体的な神経保護効果を示すものである。
次にこれらFACSソーティングされたニューロンRNAからRNA−seqを実施した。CK−p25マウスとP301Sマウスのそれぞれにおいて1サンプルあたり平均で1809万個および2279万個のリードが得られ、それらのうち85.23%および84.45%がアライメントされた。NeuN+核の非バイアストランスクリプトーム解析により、それぞれの対照マウスと比較して、上方制御された遺伝子(CK−p25:565個の遺伝子;Tau P301S:229個の遺伝子)よりもCK−p25(618個の遺伝子)およびTau P301S(351個の遺伝子)において相対的に多くの遺伝子が下方制御されていたことが明らかとなった(図5A、5B)。慢性GENUSでは、それぞれの非刺激対照と比較して、CK−p25(409個が上方制御;422個が下方制御)およびTau P301S(220個が上方制御;221個が下方制御)において、上方制御された遺伝子と下方制御された遺伝子の数は同等であった(図5A、5B)。
続いてGO解析を実施して、差次的に発現された遺伝子と関連した生物機能を検証した。慢性GENUS後にCK−p25マウスにおいてニューロン特異的に下方制御された遺伝子(618個の遺伝子)は、化学的シナプス伝達、細胞内輸送、オートファジー、ATP代謝プロセス、トランス−シナプスシグナル伝達、および細胞−細胞シグナル伝達に関与していた(図5A)。興味深いことには、GENUSは、CK−p25マウスのニューロン中でこれらプロセスに関与する遺伝子を有意に上方制御することで、これら生物プロセスを回復させた(図5A;右パネル)。Tau P301において下方制御された遺伝子(351個の遺伝子)は、化学的シナプス伝達、トランス−シナプスシグナル伝達、小胞介在輸送を含む細胞内輸送、中脳の発生、およびアポトーシスプロセスの制御に関与していた(図5B)。小胞介在輸送、細胞内輸送、シナプス伝達、中脳発生およびアポトーシスプロセスの制御をはじめとするこれら同じプロセスが、Tau P301Sマウスにおいて慢性GENUS後にすべて上方制御されていたことが、上方制御遺伝子と関連した上位の生物機能から明らかとなった(図5Bおよび図10I)。他方で、DNA二本鎖切断およびDSB修復に関与するプロセスを含む一部の生物プロセスは、(ナイーブ対照と比較して)CK−p25マウスおよびTau P301Sマウスの両方において上方制御されており、γH2AXの免疫組織化学法のデータと一致していた(図9G)。重要なことは、慢性GENUS後にCK−p25マウスおよびTau P301Sマウスにおいて下方制御されていた遺伝子には、DNA損傷に反応するアポトーシス経路に必須であることが知られている遺伝子が含まれていたことであり、ニューロンが、低変性状態へとシフトしたことと一致していた。まとめると、これらのデータからは、2種の機構的に別個の神経変性マウスモデル(CK−p25およびTau P301S)においてさえも、遺伝子調節のパターン変化が、最終的にはニューロンの死を促進するシナプス機能、細胞内輸送およびアポトーシス制御の下方制御をはじめとする同様の細胞機能および生物機能に集結するということが示唆される。重要なことは、慢性GENUS後、シナプス伝達、シナプス統合および小胞介在輸送を含む細胞内輸送における欠陥の回復に関与する多くの遺伝子が、上方制御されていたことである(図5A、5Bおよび図10H)。
慢性GENUSによって改変されたこれらの生物プロセスをさらに特徴解析し、実証するために、本発明者らは非バイアス液体クロマトグラフィー−タンデム型質量分析(LC−MS/MS)を実施して、CK−p25マウスおよびTau P301SマウスのV1中のタンパク質の差次的発現およびS/Tリン酸化を探索した(図5C、5D)。最初に、混合CK−p25群(CKナイーブ対照、およびGENUSを受けた、または受けていないCK−p25)、および混合Tau P301S群(WTナイーブ対照、およびGENUSを受けた、または受けていないP301S)において質量分析により特定されたすべてのタンパク質を検証し、それぞれのニューロン特異的RNA−seqデータから検出された全RNAと比較した。混合CK−p25群および混合Tau P301S群において特定された総タンパク質のそれぞれ92.75%および91.95%が、ニューロン特異的RNA−seqデータ中の発現遺伝子にマッピングされた(図5C、5D)。このことから、特定されたタンパク質の大部分が、ニューロン機能に関与していたことが示された。次に、CK−p25マウスおよびTau P301Sマウスにおいて差次的にS/Tリン酸化されたタンパク質を、それぞれのナイーブ対照同腹仔と比較したところ、CK−p25マウスおよびTau P301Sマウスの両方でS/Tリン酸化タンパク質に全体的な増加があったことが判明した(図5C、5D、左下のパネル)。このことから、両方の神経変性マウスモデルにおける、機能性タンパク質の異常な改変が示唆される。慢性GENUSは、CK−p25マウスおよびTau P301Sマウスの両方において、それぞれの非刺激対照と比較して、タンパク質のS/Tリン酸化の低下を生じさせた(図5C、5D、右下のパネル)。ニューロン特異的遺伝子発現解析の結果(図5A、5B)と一致して、慢性GENUSは、化学的シナプス伝達、樹状突起発達、長期増強電位、小胞介在輸送の制御、シナプス中の小胞介在輸送、および細胞内輸送の制御に関与するタンパク質を改変した(図5E、および図10J〜10M)。このことから、これらプロセスが変性ニューロン中で変化し、慢性GENUSで改善されたことが示唆される。
小胞輸送、エンドサイトーシスおよびシナプス伝達に関与するホスホプロテオミクス解析からのタンパク質の一つの例は、ダイナミン1(DNM−1:dynamin1)(Armbruster et al.,2013)であり、ダイナミン1はCK−p25およびTau P301Sの両方で、慢性GENUS後の差次的S/Tリン酸化タンパク質のアノテーションにおいて、複数のGO用語と関連していた(図5E)。Ser774のリン酸制御はシナプス小胞のエンドサイトーシスに必須であり(Clayton et al.,2009)、CK−p25マウスおよびTau P301Sマウスにおいて過剰リン酸化されていることが判明している多くの残基の内の一つであり、慢性GENUSで低下する。本発明者らは免疫組織化学法およびウェスタンブロッティングを実施し、DMN−1 Ser774リン酸化がCK−p25マウスおよびTau P301Sマウスにおいて有意に増加していること、および慢性GENUSで低下することを見出した(図5Fおよび図10M、10N)。さらに小胞輸送および神経伝達輸送、シナプス伝達、ならびに学習および記憶に関与するもう一つのタンパク質である小胞グルタミン酸トランスポーター1(vGlut1:vesicular glutamate transporter 1)(Balschun et al.,2009)の免疫組織化学を実施した。vGlut1集積は、CKナイーブマウスと比較して、CK−p25マウスにおいて有意に低下しており(図5G、5H)、慢性GENUS後(非刺激対照と比較して)、CK−p25マウスにおいて、V1だけでなく、SS1、CA1、およびPFCのACC領域においてもvGlut1発現は有意に高くなった(図5G、5H)。同様にTau P301Sマウスにおける、これら脳領域全体にわたるシナプスマーカーvGlut1集積の発現減少は、Tau P301Sマウスにおいて慢性GENUS後に軽減されていた(図5I)。これらのデータは、両方の神経変性モデルにおいて、慢性GENUSを受けたこれら脳領域全体にわたるニューロン(図3Dおよび3I)およびシナプスの減少(図4O、4P、4Q)の低下と一致している。
慢性GENUSは、行動力を改変する
これまでのところ、これらの結果からは、GENUSが、V1をはるかに超えてCA1、SS1およびPFCを含み、ニューロン振動を同調させ得ること、そしてCK−p25マウスとTau P301Sマウスのこれら脳領域のすべてにおいてアミロイドプラーク、タウ過剰リン酸化、シナプス減少およびニューロン減少をはじめとするAD関連病変を低下させることが示される。RNA−seqデータおよびホスホプロテオミクスデータは、慢性GENUSの、シナプス伝達および細胞内輸送における一部の疾患関連性の障害を軽減する能力をサポートするものであり、シナプス機能の保存と一致している。ゆえに、慢性GENUSは認知機能も改善するかを検討した。最初に、GENUSが、任意の認知変化の解釈を困難にさせ得る、何らかの規則的な行動変化を誘発し得るかの決定を試みた。C57Bl/6Jマウスにおいて、急性GENUS中の自発運動または急性GENUS後に移動した距離に明白な差異はなかった(図11A〜11C)。さらにピクロトキシンによる発作感受性、および新規物体識別の両方とも変化しなかった(図11B〜11C)。GENUSで慢性的に刺激された全群の動物(C57Bl6:7日;CK−p25:p25誘導中の42日間、1時間/日;Tau P301S:22日)が、非刺激対照と同等の体重を有していた(図11D〜11F)。最後に、7日間のGENUSは、C57Bl/6Jマウスにおいてストレス反応マーカーである血漿コルチコステロンに影響を与えなかった(図11I)。
GENUSの認知的な利益を評価するために、CK−p25マウスにGENUSの慢性的刺激を与えながら6週間、p25発現を誘導した後のADのCK−p25マウスモデルにおける学習と記憶に焦点を合わせた。最後の週に、マウスをオープンフィールド(OF)に曝し、次いで新規物体認識(NOR)検査を実施した(図6A)。その結果から、GENUSは、CK−p25マウスにおいて、オープンフィールドアリーナの中心で過ごした時間で測定される、不安感に影響を与えなかった(図6A、6B)。そして血漿コルチコステロン値にも変化せず(図11I)、これらのことから慢性GENUSは、CK−p25マウスにおいて不安感またはストレスには影響を与えなかったことが示される。興味深いことに、GENUS刺激CK−p25マウスは自発運動に差異は何も示さなかったが、慣れた物体と比較して、新規物体の探索に有意に長い時間を費やした(図6A、6C、および図11G)。このことから、慢性GENUSは、非刺激CK−p25マウスと比較して、CK−p25マウスにおいて新規物体認識を改善したことが示唆される。次にモリス水迷路(MWM)検査を、6週目のGENUSを行いながら、6週間誘導されたCK−p25マウスにおいて実施した。MWM検査において、CKナイーブマウスと比較して非刺激CK−p25マウスは空間学習の低下を呈し、トレーニング中にプラットフォームを発見するまで、より長い潜時を要した(図6D)。非刺激CK−p25マウスは、CKナイーブ群と比較して空間記憶の低下も呈し、探索試験(最後のトレーニング日の24時間後)においてプラットフォーム位置の訪問回数の減少と、標的四分円で過ごした時間の減少が示された(Fischer et al.,2005)(図6D)。これらの低下は、慢性GENUSにより有意に改善され、そしてこの改善は遊泳速度の変化の結果ではなく、遊泳速度は群全体で、そして全トレーニング日で同等であった(図6D、および図11J)。
このGENUS介在性の行動力の改善が、認知機能の基盤にある一つのメカニズムに限定されず、より広くAD関連の認知低下に適用可能であることを立証するために、複数のADモデルマウスを検証した。8ヵ月齢のTau P301Sマウスに22日間(1時間/日)のGENUSを実施し、刺激を与えて3週目にマウスをOFおよびNORタスクにおいて検査し、同月齢の非刺激群と比較した(図6E)。CK−p25マウスと同様に、GENUSは、Tau P301SマウスにおいてOFアリーナの中心で過ごした時間を変化させず(図6E、6F)、そして血漿コルチコステロン値も変化させなかった(図11I)。このことから、慢性GENUSは、Tau P301Sマウスにおいて不安感様行動を変化させなかったことが示唆される。次に、新規物体認識検査を実施し、WTナイーブマウス、およびGENUS刺激Tau P301Sマウスが、慣れた物体と比較して新規物体に対し高い選好を示したことが観察された(図6G)。同様に、非刺激タウP301Sマウスにおいても新規物体選好は高かった(図6G)。
次にTau P301Sマウスにおいて、GENUSの3週目の間にMWM検査を実施した。WTナイーブ、およびGENUS刺激Tau P301Sマウスは、非刺激Tau P301Sマウスと比較して、MWMトレーニングにおいて有意に高い学習曲線を呈した(図6H、および図11J)。最後に、ADのアミロイドモデルにおける行動改善に対するGENUSの有効性を検証した。GENUS刺激5XFADマウス(22日間−1時間/日)に、トレーニングの3週目の間にMWM検査を実施した(図6I)。GENUS刺激5XFADマウスは、MWMトレーニングの最初の4日間はわずかに低い学習曲線を示したが、WT同腹仔と比較して複数回のトレーニングトライアルで改善した。対照的に、非刺激5XFADマウスは有意に低下した(図6Iおよび図11J)。最後に80Hzの視覚刺激を採用し、他の周波数の慢性刺激が行動に影響を与え得るかを調査した。V1のインビボ記録と同様に、22日間の80Hzの視覚刺激を受けた5XFADマウスは、非刺激5XFADマウスと比較してMWMにおいて差異を示さなかった(プラットフォームを発見するまでの潜時、および探索試験における標的交差として定量された)(図12A〜12C)。まとめるとこれらの結果は、特に40Hzの慢性刺激が、神経変性の複数のマウスモデルにおいて行動力を改善することが示している。
ニューロンネットワークの振動の操作は、神経障害と関連する病変変化と行動力の障害を緩和する有望な戦略であり得るという見解をサポートする証拠が増加している(Cho et al.,2015;Iaccarino et al.,2016;Kastanenka et al.,2017;Martinez−Losa et al.,2018;Verret et al.,2012)。本明細書において、本発明者らは、40Hzの視覚刺激を介した低ガンマ振動の慢性的な毎日の同調(entrainment)が、ガンマ振動の同調に有効であり、たとえ進行性の神経変性の状態であっても、複数の脳領域において神経病変を低下させることを実証する。慢性GENUSの神経保護作用には、ミクログリア介在性炎症反応の低下、シナプス伝達およびニューロン中の細胞内輸送を促進する遺伝子ならびにタンパク質の発現のブースト、ならびに行動力の改善が含まれる。
慢性的な視覚GENUSが、低ガンマ振動を同調させ、脳領域全体にわたるガンマコヒーレンスを増加させる
本発明者らは過去に、急性の1時間の40Hzの視覚刺激が、ニューロン活動を同調させてガンマ周波数の範囲で振動させ、若い症状を示す前の3カ月齢の5XFADマウスにおいてAD関連表現型を低下させることを示している(Iaccarino et al.,2016)。本開示において本発明者らは、GENUSが、神経変性を有するCK−p25マウスモデルおよびTau P301Sマウスモデルにおいて、重度のAD様病変があり、ニューロンが減少しているにもかかわらず、視覚皮質(V1)、海馬CA1、体性感覚皮質(SS1)および前頭前野皮質(PFC)を含む脳の複数の部分にわたり、低ガンマ(約35〜45Hz)振動の出力を増加させたことを示す。自発運動は、ガンマ振動検出の交絡因子であり得るが、記録セッション中の速度および総距離において、遮光および可視状態の40Hzの視覚刺激の間に差異は検出されず、GENUS中に観察された低ガンマ同調が、活動レベルにおける差異に関連した可能性は低いと思われた。さらにCA1における単一ユニット記録の解析から、GENUSは、V1から下流の複数の脳領域においてニューロン活動を回復させ得ること(Martorell and Paulson et al.、添付の提出書類も参照のこと)が示され、および重み付け位相同期指標(WPLI:weighted phase lag index)の測定値は、非相関ノイズ源からの体積伝導の影響を受けにくく、V1、CA1、SS1およびPFCが低ガンマコヒーレンスを増強し、GENUSとより機能的に結び付くことを示している。これは、「コヒーレンスを介したコミュニケーション(CTC:communication through coherence)」が認知機能に必須であると提唱されており(Fries,2015)、そして驚くべきことではないが、ヒトAD対象が皮質領域間のコヒーレンスに欠落を示していることからも重要である(Stam et al.,2009)。
視覚GENUSは、複数の神経変性マウスモデルで広範な神経保護に寄与する
GENUSの慢性的な適用が広範な脳領域に影響を与え得るかを決定するために、本発明者らは、視覚皮質と、デフォルトモードネットワークの他の重要構造であり、ADに強く影響を受ける、例えば海馬および前頭前野皮質(PFC)の帯状部分などに焦点を当てた。最初に高齢の5XFADマウスに7日間のGENUSを適用したところ、Iaccarino et al.(2016)に報告されるように、V1においてアミロイドプラークは有意に低下したが、海馬のアミロイドレベルは変化しなかったことが判明した(図2A、2B)。
そこで本発明者らは、重度病変を有する比較的高齢の5XFADマウス(10カ月齢)を使用してGENUSレジームを3週間延長し、アミロイドプラーク負荷量がV1だけでなく、SS1、海馬およびPFCを含む脳の他の分布部分でも有意に改善されたことを示した。本発明者らはこの延長GENUSレジームを、CK−p25マウスモデルにおいてp25誘導の全6週間、およびTau P301Sマウスおよび5XFADマウスにおいて、ニューロン減少が各モデルで始まる齢で3週間適用した。過剰リン酸化タウ、シナプス減少およびニューロン減少、ならびにDNA損傷を含む、各病変において有意な低下が見いだされ、これはCK−p25マウスモデル、Tau P301Sマウスモデルおよび5XFADマウスモデルにわたり、V1に限定されず、CA1、SS1、およびCC(前頭前野皮質の帯状部分)でも明白であった。ニューロン減少を予防するGENUSの神経保護作用は、CK−p25マウスモデルにおいて特に明白であり、このマウスモデルは通常、劇的な脳委縮、皮質体積の縮小および対応する脳室の拡張を呈する。これらはニューロンおよびその伸長突起が変性した場合のヒトのADと関連する。したがって、本発明者らは、GENUSが様々な病理学的特徴を有する複数のマウスモデルに広範な神経保護作用を付与することを実証した。
視覚GENUSはシナプス機能、細胞内輸送、および行動を改変する
分子レベルでのGENUSの影響を調べるために、次に非バイアス型のトランスクリプトーム解析およびプロテオミクス解析を実施した。単離/精製されたTau P301SおよびCK−p25のニューロンのデータは、シナプス機能を制御する複数の遺伝子、タンパク質および翻訳後修飾タンパク質の著しい制御異常が実証されており、これは、これら神経変性モデルにおいて過去に報告されたニューロンの興奮性および興奮性/抑制性のバランスの変化(Fischer et al.,2005;Yoshiyama et al.,2007)と一致している。ADも樹状突起棘密度の低下を生じさせることが知られており、遺伝子操作、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の薬理学的阻害、またはオプトジェネティクスのいずれかによりADマウスで突起棘密度を増加させることで、認知機能障害が軽減することが示されている(Fischer et al.,2007;Graff et al.,2012;Roy et al.,2016)。さらに本発明者らは、慢性視覚GENUSが、CK−p25モデルおよびTau P301Sモデルにおいて、これら遺伝子の発現およびタンパク質リン酸化の瑕疵を軽減することを見出しており、シナプスタンパク質に特異的なマーカー(vGlut1、bassoon)を用いた免疫組織化学解析により、シナプス密度が各対照マウスと同等であることが確認されている。これらの遺伝子発現の変化およびシナプス密度の回復は、慢性視覚GENUSで認められた低ガンマコヒーレンスの強化と共に、慢性GENUSが、視覚皮質およびその下流脳領域の可塑性を改変することを示唆する。
死後のヒトADサンプル、ADマウス、iPSCモデル、および初代培養細胞の研究からも、ADにおける細胞内輸送、小胞輸送およびエンドソーム機能の混乱が示唆されている(Millecamps and Julien,2013;Small et al.,2017;Israel et al.,2012;Cataldo et al.,2000)。エンドサイトーシスとAβ産生の間の繋がりは、多くの研究により詳細に報告されている(Marks and McMahon,1998;Cirrito et al.,2008;Schobel et a.,2008;Wu and Yao,2009)。非バイアス型のトランスクリプトームデータおよびプロテオミクスデータから、慢性GENUSは、これら細胞内輸送、小胞輸送およびエンドサイトーシスプロセスに、遺伝子発現レベルおよびタンパク質の翻訳後修飾レベルで変化を誘発することが示される。本発明の結果は、急性オプトジェネティクス誘導性ガンマ振動後の若い5XFADマウスのCA1における、拡張早期エンドソームの低下と一致している(Iaccarino et al.,2016)。さらに本発明データは、神経変性のP301SマウスモデルおよびCK−p25マウスモデルの両方において、エンドサイトーシスにおけるダイナミンの作用に影響を及ぼすS774のダイナミン1の過剰リン酸化(Raimondi et al.,2011;Armbruster et al.,2013)を、慢性GENUSが低下させることを示している。
これらをまとめると、慢性GENUSによるニューロン生存の強化は、DNA損傷反応、オートファジー、シナプス伝達、細胞内輸送、小胞輸送および神経炎症の低下の制御に関与する広範な遺伝子ならびにタンパク質の回復(または修復)により支援されている可能性が最も高い。ニューロン生存を促進し、ニューロン機能を維持する、慢性視覚GENUSの広範な神経保護作用を支持するように、CK−p25マウスにおける新規物体認識の改善および空間モリス水迷路の改善、およびTau P301Sマウスおよび5XFADマウスにおける空間水迷路の学習と記憶の強化を含む、慢性GENUS後の複数のマウスモデルにおける行動力の改善が判明した。行動力の改善が観察されたが、慢性GENUSは体重を変化させず(図11D〜11F)、C57Bl/6Jマウス、CK−p25マウスおよびP301Sマウスにおいて、オープンフィールド探索による不安感、そしてマーカーのコルチコステロンにより分析されたストレス反応も変化させなかった(図11A、11C、11G〜11I)。興味深いことに、Zhangら(2015)は、慢性2Hz視覚刺激(1日6時間で4週間)が認知能力を改善したが、3xTgマウスの帯状皮質のAβ1−42は変化させなかったことを示している。
視覚GENUSは神経炎症を低下させる
炎症プロセスはADおよび神経変性において重要な役割を果たすことが指摘されており、急性GENUSはミクログリアの顕著な形態活性化を誘導することが過去に示されている(Iaccarino et al.,2016)。神経変性におけるミクログリア固有の役割は複雑であり(有益にも有害にもなり得るため)、完全には解明されていない。近年の研究により、ミクログリアの表現型は、疾患が進行するに伴い変化し得ることが明らかとなった(Mathys et al.,2017;Lee et al.,2018;Ulland et al.,2017;Deczkowska et al.,2018)。本開示において、免疫組織化学を用いた詳細な形態解析およびミクログリア特異的なトランスクリプトーム解析を実施し、慢性GENUSに影響を受ける基盤プロセスをさらに詳細に検証した。慢性GENUSはCK−p25マウスモデルおよびTau P301Sマウスモデルにおいてミクログリアの形態、免疫反応および代謝プロセスを改変するが、幅広い形態表現型が存在することが判明した。
第一に、Iba1免疫染色により、CK−p25マウスにおいて、ミクログリアは非常に増殖性で(より多くのミクログリア;Mathys et al.(2017)と一致する)、凝集する傾向があり、そしてこの傾向は慢性GENUS後に低下していたことが明らかとなった。ミクログリア突起の総体積は、棒状ミクログリアのサブセット以外は減少した。棒状ミクログリアサブセットの総細胞体体積および主要突起体積は、非刺激CK−p25マウスで高く、慢性GENUSではこれらの異常なミクログリア表現型は低下した。興味深いことに、棒型のミクログリアは近年、びまん性脳損傷を受けたラットの脳、および外傷性脳損傷を受けたヒト対象に存在していることが報告されている(Bachstetter et al.,2017;Taylor et al.,2014)。次に、5XFADマウスにおいてミクログリアは貪食状態になり、Aβを取り込む。これはGENUSのいくつかのモダリティ(視覚、聴覚または視覚と聴覚の組み合わせ)で発生しており、ミクログリアの形態変化は、アミロイドプラーク数の減少と相関している(Iaccarino et al.,2016;Martorell and Paulson et al.、付随の提出書面)。さらにミクログリアの貪食状態は、タンパク質分解(GOにより特定されるタンパク質代謝プロセス)の増加が付随している。神経変性およびADを背景としたミクログリアの炎症反応が近年研究されている。本発明のデータは、慢性GENUSが、CK−p25マウスにおいてミクログリアの炎症反応を低下させ、例えば神経変性で上方制御されることが知られている(Mathys et al.,2017)適合免疫系およびMHCクラスIIに関与する遺伝子を下方制御することを示すものである。おそらくこの炎症反応の低下の結果として、シナプス刈り込みのマーカー、C1q(Hong et al.,2016)において減少がみられ、それと同時にシナプスマーカーのvGlut1およびbassoonの増加が発生する。これらにより、慢性GENUSによるシナプス密度の保全が解説される。付随の論文、MartorellおよびPaulsonらが、慢性聴覚GENUS、および聴覚GENUSと視覚GENUSの組み合わせの後の星状細胞反応と脈管系の変化を実証しているという点に留意されたい。
要約すると、本発明のデータは、視覚GENUSは前脳の複数の領域(SS1、CA1、PFC)に伝播することができ、そして複数の細胞型(ニューロン、ミクログリア、星状細胞)からの反応を惹起させ得ることを実証するものである。視覚刺激を使用したガンマ同調は、神経障害に対して保護的作用をもたらし、認知機能を改善する非侵襲的戦略である。慢性視覚GENUSは、ニューロンおよびシナプスの減少を低下させ、シナプス機能と関連する遺伝子およびタンパク質を改変し、それらが共に、観察された行動的改善をサポートすることが判明した。本開示は、ADマウスモデルにおける、複数の脳領域のAD病変および行動に影響を与える慢性視覚GENUSの神経保護作用を実証するものであり、神経保護に寄与するGENUSの全体的な有効性を示すものである。
発明の詳細
図1A〜1Jは、開示される本発明の主旨に従い、視覚刺激が、視覚皮質を超えて対象の複数の脳領域においてガンマ振動を同調させることを示す。
図1Aにおいて、50%の負荷サイクルの40Hzの視覚刺激(12.5ミリ秒の点灯と12.5ミリ秒の消灯)は、Arduinoシステムを使用して送達された。C57Bl/6Jマウスに、非刺激または40Hzの視覚刺激のいずれかを1時間与え、その後、マウスを殺処分し、脳をc−Fos発現に対して染色した。マイクロドライブを、インビボでの電気生理学実験のために別個のコホートに移植した。
図1Bにおいて、40μmの厚さの冠状脳切片中でc−Fos発現が定量され、ニューロン活動が評価された。代表的なc−Fos免疫染色画像。スケールバーは、50μmを示す。右:40Hzの視覚刺激は、視覚皮質(V1;N=4匹のマウス/群。独立標本t検定、T=−7.110、P=0.002)、体性感覚皮質(SS1;T=−5.239、P=0.006)、海馬(CA1;T=−4.989、P=0.008)、および前頭前野皮質(CC;T=−2.938、P=0.01)において、非刺激マウスと比較してニューロン活動マーカーのc−Fosを有意に増加させた。
図1Cにおいて、V1、SS1、CA1およびPFCから、C57BL/6JマウスのLFPからの出力スペクトルが記録された。赤い線は、可視の40Hz視覚刺激提示中の記録を示し、一方で青い線は、遮光された40Hz光明滅を示す(LEDアレイは光を遮るように覆われた。方法を参照のこと。N=7匹のマウス)。
図1Dにおいて、群のガンマ帯域出力(40±5Hz)が図1Cから計算された。40Hzの視覚刺激は、V1(ウィルコクソン順位和検定、Z=5.9、P=3.1×10−9)、SS1(Z=2.4、P=0.018)、CA1(Z=3.4、P=6.9×10−4)、およびPFC(Z=3.3、P=9.2×10−4)にわたり、対照条件(LED明滅が遮られている)と比較して、ガンマ出力を有意に増加させた。
図1Eにおいて、カスタムメイドの四極管マイクロドライブをC57BL/6Jマウスに移植し、四極管をCA1に合致させて、単一ユニットを単離させた。チャートは、遮光された、および40Hz刺激期間中の40Hzの位相のスパイク確率を示す。
図1Fにおいて、平均合成ベクトル長(MRL:mean resultant length)により分析したところ、遮光条件(Oc.LED)と比較して、40Hzの視覚刺激は、局所LFPに対する錐体ニューロンのスパイクの位相同期強度を有意に増加させたことを示している(4匹のマウスからのN=24個の細胞、ウィルコクソン順位和検定、Z=2.5、P=0.011)。
図1Gにおいて、構造間のLFPコヒーレンスは、重み付け位相同期指標法(WPLI:N=7匹のマウス)を使用して定量され、記録部位が示されている。
図1Hにおいて、図1Gに関連した、低ガンマ帯(30〜50Hz)WPLIの群変化が図示されている。40Hz視覚刺激は、V1−CA1(ウィルコクソン順位和検定、Z=2.2、P=0.03)、V1−SS1(P=0.021)およびV1−PFC(Z=2.5、P=0.014)の間のコヒーレンスの有意な増加を誘導した。
図1Iは、50%の負荷サイクルでの80HzのLED光送達(6.25ミリ秒の点灯および6.25ミリ秒の消灯)の概略図である。
図1Jの左側は、遮光された(Oc.LED)または80Hzの視覚刺激を受けたC57Bl/6JマウスのV1 LFPの出力スペクトルを示す。右側の80Hz(±5Hz)を中心とする帯域出力は、80Hzの視覚刺激では有意に異ならなかったことを示す(N=5匹のマウス、ウィルコクソン順位和検定、Z=1.2、P=0.22)。
図2A〜2Fは、開示される本発明の主旨に従い、慢性40Hz(80Hzではない)視覚明滅刺激が、対象の視覚皮質を超えてアミロイドプラークを減少させることを示す。
図2Aは、非刺激、40Hz、または80Hzの視覚刺激を1日当たり1時間で7日間受けた5XFADマウス中のアミロイドプラーク負荷量を示す。D54D2抗体の免疫組織化学染色により可視化された。各条件における、V1、SS1およびCA1の代表的な画像。スケールバーは、50μmを表す。
図2Bは、1日当たり1時間で7日間のGENUSが、V1においてアミロイドプラークを減少させたが、SS1または海馬領域のCA1においてはアミロイドプラークを有意には変化させなかったことを示す群定量を示す。80Hzの視覚刺激曝露は、V1またはCA1においてはアミロイドプラークのレベルを変化させなかったが、SS1においてはアミロイドプラークを有意に増加させた。非刺激群はN=8、ならびに40Hz群および80Hz群からはそれぞれN=6匹のマウス。群効果間の二元配置ANOVA F(2、51)=5.378、P=0.0076。ボンフェローニ事後多重比較検定、***P<0.001、*P<0.05。
図2Cは、非刺激、または22日間(1日当たり1時間)の延長GENUSプロトコールを受けた5XFADマウスにおけるアミロイドプラーク負荷量の代表的な画像を示す。スケールバーは、50μmを示す。
図2Dは、22日間のGENUSが、V1、SS1、CA1およびCCにおいてアミロイドプラークを有意に減少させたことを示す。1条件あたり、N=6匹のマウス。群効果間の二元配置ANOVA F(1,40)=51.00、P<0.0001。ボンフェローニ多重比較検定、***P<0.001、**P≦0.01.
図2Eは、無刺激、または1日当たり1時間で22日間の80Hz光明滅刺激を受けたマウスの可視化されたV1、SS1およびCA1中のアミロイドプラークの代表的な画像を示す。スケールバーは、50μmを示す。
図2Fは、図2Eに関連して、V1、SS1およびCA1中のアミロイドプラークを定量した群データを示す。1群当たりN=6匹のマウス。二元配置ANOVA測定F(1、30)=0.0033、P=0.9565において、群間の有意差は見出されなかった。
図3A〜3Jは、開示される本発明主旨に従い、慢性視覚刺激が、対象においてアルツハイマー病関連病変を改善し、神経変性を有意に減少または予防することを示す。
図3Aは、P301Sマウスが、無刺激、または22日間のGENUS(1日当たり1時間)を受けた後、免疫組織化学解析およびホスホプロテオミクス解析を受けたことを示す実験のアウトラインを提示する。刺激レジメンを受けなかったWTケージの同腹仔は、WTナイーブマウスとみなされた。
図3Bは、視覚皮質のS202/T205リン酸化タウ免疫染色を示す代表的な画像を提示する。スケールバーは、50μm。右:P301S tauマウスは、V1、SS1、CA1およびCCにおいて高いS202/T205レベルを示したが、22日間のGENUSは検証したすべての領域でS202/T205を有意に減少させた。N=7匹のWTナイーブマウス、N=8匹の非刺激P301Sマウス、およびN=7匹のGENUS刺激P301Sマウス。群効果間の二元配置ANOVA F(2,76)=45.35、P<0.0001。ボンフェローニ補正を用いた事後多重比較、****P<0.0001、***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。
図3Cは、視覚皮質のセリン/スレオニンリン酸化タウタンパク質のホスホプロテオミクス解析を示す。ヒートマップは、P301Sにおいて、WTマウスと比較して差次的にリン酸化を受けたタウタンパク質のS/T残基を示す。群効果間の二元配置ANOVA F(2,322)=2146、P<0.0001。すべてのホスホペプチドは、方法に記載されるようにマッピングされた。ヒートマップ中に示されるタウの全てのS/T残基が、WTナイーブと非刺激P301Sの間で統計的に有意であった。特定の残基に対する、非刺激とGENUS刺激を受けたP301Sマウスの間の統計的比較(P値)をチャートに示す。GENUSは6個のS/T部位でタウタンパク質のリン酸化を減少させ、S451でリン酸化を増加させた。普遍的に知られているヒトのタウS/T部位を上部に示す。
図3Dは、非刺激またはGENUSを受けたWTナイーブマウスおよびP301Sマウスの視覚皮質中のニューロンマーカーNeuNの代表的な画像を示す。スケールバーは、50μmを示す。
図3Eは、WTナイーブマウスと比較して、P301Sマウスは、V1、SS1、CA1およびCC中のニューロンの有意な減少を示したことを示唆する群データを示す。GENUS刺激を受けたP301S群は、神経変性の有意な減少を示した。Nは、図3Bと同じである。群効果間の二元配置ANOVA F(2,76)=19.73、P<0.0001。ボンフェローニ補正を用いた事後多重比較、***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。
図3Fは、CK−p25マウスにおける、42日間のp25誘導の実験の概略を提示する。この誘導実験には、一つの実験群において1日当たり1時間のGENUS、室内灯で照らされた非刺激対照群が付随した。刺激レジメンを受けなかったCK(CaMK2α−プロモーター x tTA)ケージの同腹仔は、CKナイーブマウスとみなされた。
図3Gは、誘導後42日のCK−ナイーブ、非刺激およびGENUS刺激CK−p25マウスの脳における定量的差異を示す顕微鏡写真である。右:CK−p25マウスは、CKナイーブマウスと比較して脳重量の減少を呈し(すなわち脳萎縮)、一方で慢性GENUSは、CK−p25マウスにおいて脳萎縮を部分的に緩和した。CKナイーブマウスはN=13匹のマウス、非刺激群およびGENUS CK−p25群はそれぞれN=10匹のマウス。ANOVA F(2、30)=15.46、P<0.001。ボンフェローニ補正を用いた事後多重比較、****P<0.0001、*P<0.05。
図3Hは、側脳室(輪郭強調)の代表的な画像およびサイズ定量を提示している。スケールバーは1000μmを表す。右:CKナイーブマウスと比較して、CK−p25マウスは異常な脳室拡張を呈したが、慢性GENUS後に有意に減少した。CKナイーブマウスはN=9匹のマウス、非刺激群およびGENUS CK−p25群はそれぞれN=6匹のマウス。ANOVA F(2、18)=12.36、P<0.001。ボンフェローニ補正を用いた事後多重比較、****P<0.0001、*P<0.05。図9Eも参照のこと。
図3Iは、非刺激またはGENUSを受けたCKナイーブマウスおよびCK−p25マウスの視覚皮質中のニューロンマーカーNeuNの代表的な画像を示す。スケールバーは、50μmを示す。
図3Jは、CK−p25マウスが、V1、SS1、CA1およびCCにおいて重度のニューロン減少を呈したが、慢性GENUSが、CK−p25マウスにおいてニューロン減少を低下させたことを示す。Nは、図3Gと同じである。二元配置ANOVA F(2、72)=31.38、P<0.0001。ボンフェローニ補正を用いた事後多重比較、****P<0.001、***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。
図4A〜4Qは、開示される本発明主旨に従い、慢性視覚刺激が、対象のミクログリアにおける炎症反応を減少させることを示す。
図4Aは、無刺激、または1日当たり1時間で42日間のGENUSを受けたCK−p25マウスに関する。次いで蛍光活性化細胞ソーティング(FACS、CD11bおよびCD45のダブルポジティブ基準を使用)視覚皮質からミクログリアを単離し、その後、RNAを抽出し、配列解析した。差次的に発現された遺伝子(DEG:defferentially expressed genes)をボルケーノプロットに示す。群比較は、下部に示される。左:CKナイーブマウスと非刺激CK−p25マウスの間のDEG、1群当たりN=4匹のマウス。右:非刺激CK−p25マウスとGENUS CK−p25マウスの間のDEG、1群当たりN=4匹のマウス。
図4Bは、特定されたDEGに関連する生物プロセスに対して選択された遺伝子オントロジー(GO)用語を示す。上:非刺激CK−p25マウスにおいて、CKナイーブマウスと比較して上方制御された(UP)遺伝子と関連するGO用語。下:非刺激CK−p25マウスにおいて、CKナイーブマウスと比較して下方制御された(DOWN)遺伝子と関連するGO用語。
図4Cは、DEGと関連した、選択されたGO用語を示す。上:GENUS CK−p25マウスにおいて、非刺激CK−p25マウスと比較して上方制御された(UP)遺伝子と関連するGO用語。下:GENUS CK−p25マウスにおいて、非刺激CK−p25マウスと比較して下方制御された(DOWN)遺伝子と関連するGO用語。
図4Dは、視覚皮質のミクログリアマーカーのIba1(緑)とCD40(赤)の免疫染色を示す代表的な画像を提示する。スケールバーは、50μm。CKナイーブマウスはN=7匹のマウス、非刺激群およびGENUS群はそれぞれN=6匹のマウス。矢印と矢頭はそれぞれ、棒状の分枝突起と、ミクログリア突起の分枝の豊富さを示す。
図4Eは、非刺激のCK−p25マウスは、CKナイーブマウスと比較して多くのIba1陽性細胞を呈したこと、慢性GENUSがCK−p25マウスにおいてIba1細胞の密度を有意に低下させたことを示す。ANOVA F(2、16)=17.79、P<0.0001。
図4Fにおいて、Imarisを使用してミクログリアの3次元レンダリングを行い、ミクログリアの細胞体体積と突起体積を定量した。図4Dと同数のマウスから、1群当たりN=73個のミクログリア。ミクログリア細胞体の体積(大きさ)の頻度分布は、群間で統計的有意差は何も示さなかった(クラスカル−ウォリス検定、H=0.3529、P=0.8382)。
図4Gは、ミクログリア突起の全体積(棒状ミクログリアは除く)は、CKナイーブマウスと比較して、非刺激CK−p25マウスにおいて有意に低かったことを示す。GENUS刺激されたCK−p25マウスは、CKナイーブマウスと比較して差異は示さなかった(H=9.224、P=0.009)。
図4Hは、ミクログリア間の最小距離の定量を図示する。9匹のCKナイーブマウスからN=68個のミクログリア、6匹の非刺激マウスから131個のミクログリア、6匹のGENUS CK−p25マウスから95個のミクログリア。非刺激CK−p25マウスのミクログリアは、CKナイーブマウスと比較し、凝集していた。一方でGENUSはミクログリア凝集を有意に低下させた(H=100.1、P<0.0001)。
図4Iは、棒状ミクログリアの放射状主要突起の定量を図示する。9匹のCKナイーブマウス群からN=16個のミクログリア、非刺激マウス群およびGENUS CK−p25マウス群からの各々6匹から1群あたり19個のミクログリア。棒状ミクログリアの突起の全体積は、非刺激CK−p25マウスと比較して、GENUS後のCK−p25マウスにおいて有意に低下した。ANOVA F(2、51)=16.27、P<0.0001。
図4Jは、非刺激CK−p25マウスが、CKナイーブマウスと比較して高いシグナル強度のインターフェロン応答性タンパク質CD40を呈し、一方で慢性GENUSはCK−p25マウスにおいてCD40シグナルを有意に低下させたことを示す。ANOVA F(2、16)=36.84、P<0.0001。
図4Kは、緑色のIba1、および青色の核Hoechst染色を示す、視覚皮質の代表的画像を提示する。スケールバーは、50μm。矢頭は、ミクログリア突起の複雑さを示す。
図4Lは、P301S tauマウスは、Iba1陽性細胞総数の増加傾向を示しているが、WTマウスと比較して統計的に有意ではなかったことを図示する。N=7匹のWTナイーブマウス、N=8匹の非刺激P301Sマウス、およびN=7匹のGENUSマウス。ANOVA F(2,19)=2.401、P=0.1190。
図4Mは、ミクログリア細胞体の大きさを示す頻度分布である。N=7匹のWTナイーブマウス、N=8匹の非刺激P301Sマウス、およびN=7匹のGENUSマウス。総数で1群あたり58個のミクログリアを解析した。ミクログリア細胞体の全体積は、群間で差異がなかった。クラスカルウォリス検定H=0.04269、P=0.9789。
図4Nは、ミクログリア突起の体積が、WTマウスと比較してP301S tauマウスにおいて小さいこと、一方でGENUS刺激されたP301Sマウスは、WTマウスと同等の突起長を示したことを示す。クラスカルウォリス検定H=7.895、P=0.0193。
図4Oは、視覚皮質からのC1q(古典的補体経路再現タンパク質)の免疫染色を示す代表的画像を提示する。スケールバーは、50μm。上:CKナイーブマウスはN=7匹のマウス、非刺激群およびGENUS刺激群はそれぞれN=6匹のマウス。下:N=7匹のWTナイーブマウス、N=8匹の非刺激P301Sマウス、およびN=7匹のGENUSマウス。
図4Pは、非刺激CK−p25マウスが、CKナイーブマウスと比較して高いC1qシグナル強度を呈し、一方で慢性GENUS刺激CK−p25マウスは、C1q強度の有意な低下を示したことを示す。ANOVA F(2、16)=13.39、P=0.0004。
図4Qは、非刺激P301Sマウスが、WTナイーブマウスと比較して高いC1qシグナル強度を呈し、一方でGENUSはいずれの群間でも差異はなかったことを示す。ANOVA F(2、19)=6.887、P=0.005。E、I、J、L、P、Qにおける、ボンフェローニ補正を用いた事後多重比較、****P<0.0001、**P<0.01、*P<0.05、n.s−有意ではない。
図5A〜5Iは、開示される本発明主旨に従い、慢性視覚刺激が、シナプス機能を改変し、ニューロン中の細胞内輸送を改変することを示す。
図5Aにおいて、CK−p25マウスは、無刺激、または1日当たり1時間で42日間のGENUSを受けた。視覚皮質のニューロンのNeuN陽性(100,000個)の核が、FACSにより単離され、次いでRNA抽出が行われ、配列解析された。DEGのヒートマップ。ヒートマップ中に1群当たりのマウス数が示されている。左上:CKナイーブマウスと非刺激CK−p25マウスの間のDEG。左下:非刺激とGENUS刺激のCK−p25マウスの間のDEG、遺伝子数が右側に示されている。右:CKナイーブマウスと比較し、非刺激CK−p25マウスにおいて下方制御された遺伝子と関連する生物学的プロセス、およびCK−p25マウスにおいてGENUS後に上方制御された遺伝子と関連する同じ生物学的プロセスの重複を示すチャート。
図5Bにおいて、P301Sマウスは、無刺激、または1日当たり1時間で22日間のGENUS刺激を受けた。視覚皮質のニューロンのNeuN陽性(100,000個)の核が、FACSにより単離され、次いでRNA抽出が行われ、配列解析された。差次的発現された遺伝子のヒートマップ。ヒートマップ中に1群当たりのマウス数が示されている。左上:WTナイーブマウスと非刺激P301S tauマウスの間のDEG。左下:非刺激とGENUS刺激のP301S tauマウスの間のDEG、遺伝子数が右側に示されている。右:CKナイーブマウスと比較し、非刺激P301Sマウスにおいて下方制御された遺伝子と関連する生物学的プロセス、およびP301SマウスにおいてGENUS刺激後に上方制御された遺伝子と関連する同じ生物学的プロセスの重複を示すチャート。
図5Cにおいて、CK−p25マウスは、無刺激、または42日間のGENUSを受けた。TMT 10−plexキットおよび質量分析法を使用して、視覚皮質組織に対し、総タンパク質発現解析およびS/Tリン酸化タンパク質解析を実施した。N=3匹のCKナイーブマウス、N=3匹の非刺激CK−p25マウス、およびN=4匹のGENUS刺激CK−p25マウス。上:ニューロン特異的RNA−seqから特定された総RNA(図5B、上述)とLC−MS/MSから特定された総タンパク質の重複を示すベン図。特定されたタンパク質の92.73%がニューロンで発現されることが判明した。下:対照同腹仔(左)およびGENUS(右)と比較した、CK−p25マウスにおける差次的S/Tリン酸化タンパク質のボルケーノプロット。
図5Dにおいて、P301S tauマウスは、無刺激、または22日間のGENUS刺激を受けた。TMT 10−plexキット(方法を参照)および質量分析法(LC−MS/MS)を使用して、視覚皮質組織に対し、総タンパク質発現解析およびS/Tリン酸化タンパク質解析を実施した。N=3匹のWTナイーブマウス、N=3匹の非刺激P301Sマウス、およびN=4匹のGENUS刺激P301Sマウス。上:ニューロン特異的RNA−seqから特定された総RNA(図5A、上述)とLC−MS/MSから特定された総タンパク質の重複を示すベン図。特定されたタンパク質の91.95%がニューロンで発現されることが判明した。下:対照同腹仔(左)およびGENUS(右)と比較した、P301S tauマウスにおける差次的S/Tリン酸化タンパク質のボルケーノプロット。±0.2の倍数変化と0.05未満の調整P値を有するリン酸化タンパク質は、統計的に有意であるとみなされた。
図5Eは、慢性GENUS後のCK−p25マウスおよびP301S tauマウスにおける、差次的S/Tリン酸化タンパク質に対するGO用語を示す。
図5Fは、視覚皮質のニューロフィラメント重鎖(NFH、主に軸索で発現されるニューロンマーカー)とSer774リン酸化ダイナミン1の免疫染色を示す代表的画像を示す。NFHを使用して、ニューロン突起を標識した。スケールバーは、10μm。CKナイーブマウスはN=7匹のマウス、非刺激群およびGENUS刺激群はそれぞれN=6匹のマウス。真ん中:CK−p25マウスは、CKナイーブマウスと比較して有意に高いレベルのpS774−DNM1シグナル強度を呈した。一方でGENUSは、CK−p25マウスにおいてこの異常リン酸化を有意に低下させた。F(2、16)=38.551、P<0.0001。ボンフェローニ多重比較検定、***P<0.001、**P<0.01。右:非刺激P301S tauマウスは、WTナイーブマウスと比較して有意に高いレベルのpS774−DNM1シグナル強度を呈した。一方でGENUSは、P301Sマウスにおいてこの異常リン酸化を有意に低下させた。N=7匹のWTナイーブマウス、N=8匹の非刺激P301Sマウス、およびN=7匹のGENUSマウス。ANOVA F(2,19)=18.69、P<0.0001。ボンフェローニ補正を用いた事後多重比較、**P<0.01、n.s−有意ではない。
図5Gは、CKナイーブマウス、非刺激およびGENUS刺激されたCK−p25マウスの視覚皮質の小胞グルタミン酸トランスポーター1(vGlut1)を免疫染色した代表的な脳切片を示す。スケールバーは、10μmを示す。
図5Hは、非刺激CK−p25マウスにおいてvGlut1集積の発現が有意に低かった一方で、GENUS刺激を受けたCK−p25マウスは、V1、SS1、CA1およびCCにおいて非刺激CK−p25マウスと比較し高いレベルのvGlut1集積を呈したことを示す。CKナイーブマウスはN=9匹のマウス、非刺激群およびGENUS CK−p25群からはそれぞれN=6匹のマウス。群効果間の二元配置ANOVA F(2,72)=42.06、P<0.0001。ボンフェローニ補正を用いた事後多重比較、***P<0.0001、**P<0.01、*P<0.05。
図5Iは、WTナイーブマウスと比較して、P301SマウスはvGlut1シナプス集積の発現が有意に低かったこと、GENUSがP301SマウスにおいてV1、CA1およびCCのvGlut1発現を回復させたことを示す。N=7匹のWTナイーブマウス、およびN=8匹の非刺激P301Sマウス、およびN=7匹のGENUSマウス。群効果間の二元配置ANOVA F(2,76)=23.67、P<0.0001。ボンフェローニ補正を用いた事後多重比較、****P<0.0001、***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。
図6A〜6Iは、開示される本発明主旨に従い、慢性視覚刺激が、アルツハイマー病の複数の対象モデルにおいて行動を改変することを示す。
図6Aでは、p25発現は、42日間、2群のCK−p25マウスにおいて誘導され、そのうちの1群のみが毎日1時間のGENUSを受けた(刺激は9amから12pmの間に実施された)。マウスは、オープンフィールド(OF)検査および新規物体認識(OR)検査を、40日目(OF)および41日目(OR)の午後(3pm〜7pm)に受けた。FおよびNはそれぞれ慣れた物体と新規の物体を示す。OFセッションおよびORセッションからの代表的な占有ヒートマップを示す。色レベルは、アリーナまたは物体中の位置頻度範囲に対してマッピングされた。暖色は特定位置における長い時間および高い頻度を表し、寒色は短い時間を表す。
図6Bは、慢性視覚GENUSが、CK−p25マウスの不安感レベルに影響を及ぼさなかったことを示す。OFアリーナの中心で過ごした時間は寒色であったが、CKナイーブマウス、非刺激およびGENUS刺激CK−p25マウスの間で差異はなかった。群効果間のANOVA F(2,49)=1.198、P=0.3104。
図6Cは、CKナイーブマウスおよびGENUS刺激CK−p25マウスにおける新規物体に対する選好を示しており、慣れた物体よりも有意に高かった。しかし非刺激CK−p25マウスは選好を示さなかった。二元配置ANOVA慣れた物体と新規物体の間の影響F(1,70)=7.742、P=0.0069。T−検定;CKナイーブ、T=4.421、P=0.0001;CK−p25+非刺激、T=1.108、P=0.0946;CK−p25+GENUS、T=3.306、P=0.0017。
図6Dは、42日間のGENUSを受けた、または受けていないp25誘導CK−p25マウスのモリス水迷路の成績を示す(MWM;p25誘導の36日目と41日目の間)。上:慢性GENUSは、非刺激CK−p25マウスと比較して、CK−p25マウスにおいてトレーニング中にプラットフォームを発見するまでの潜時を減少させた。群効果間の二元配置ANOVA F(2,252)=18.64、P<0.0001。下:最後のトレーニングセッションの24時間後に実施された探索試験中にプラットフォームを交差した回数は、非刺激CK−p25マウスと比較して、GENUS刺激群で有意に高かった(左:群効果間F(2,42)=5.277、P=0.0090)。標的四分円で過ごした時間(右:群効果間F(2,42)=6.35、P=0.0039)は、CKナイーブマウスと比較して、非刺激CK−p25マウスにおいて有意に短かった。
図6Eは、非刺激、または1日当たり1時間(9am〜12pm)で22日間のGENUSを受け、そのときにOF(20日目;3pm〜7pm)検査およびOR(21日目)検査で評価されたP301S tauマウスに関する。OFセッションおよびORセッションからの代表的な占有ヒートマップを示す。
図6Fは、GENUSが、P301Sマウスの不安感レベルに影響を及ぼさなかったことを示す。OF中心で過ごした時間は、非刺激群、GENUS刺激P301S群およびWTナイーブ群の間で差異はなかった(ANOVA F(2,36)=1.189、P=0.3163)。
図6Gは、WT、非刺激およびGENUS刺激P301Sマウスがすべて、新規物体に対して高い選好を呈したことを示す。二元配置ANOVA慣れた物体と新規物体の間の影響 F(1,80)=88.61、P<0.0001。T−検定;WTナイーブ、T=6.525、P<0.00001;P301S+非刺激、T=2.602、P=0.0054;P301S+GENUS、T=10.65、P<0.00001。
図6Hは、WTナイーブ、非刺激またはGENUS刺激P301S tauマウスのMWMの成績を示す。上:慢性GENUSは、非刺激P301Sマウスと比較して、P301Sマウスにおいてトレーニング中にプラットフォームを発見するまでの潜時を減少させた。群効果間の二元配置ANOVA F(2,225)=3.782,P=0.0242。下:探索試験中にプラットフォームを交差した回数(左:F(2,45)=2.872,P=0.067)およびプローブ検査中に標的四分円にいた時間(右:F(2,45)=3.115、P=0.054。
図6Iにおいて、GENUS(1日当たり1時間で22日間)を受けた、または受けていない5XFADマウスに、MWM能力について検査を行った。左:トレーニング中にプラットフォームを発見するまでの潜時。群効果間の二元配置ANOVA F(2,273)=16.97、P<0.0001。探索試験中にプラットフォームを交差した回数(真ん中:群効果間 F(2,39)=4.702、P=0.0148)、および標的四分円で過ごした時間(右:群効果間 F(2,39)=7.289、P=0.0020)は、非刺激CK−p25マウスにおいて有意に低かった。
図7A〜7Jは、開示される本発明の主旨に従い、慢性視覚刺激が、神経変性マウスモデルにおいて視覚皮質を超えてガンマ振動を同調させることを示す。
図7Aは、主に図面の1C、1Dに使用されたマウスにおける、記録部位を記録後に検証するための電解病変を示す。代表的な画像により、V1、SS1、CA1およびPFCからの記録部位を示す。
図7Bにおいて、CDK5活性化因子p25は、CK−p25マウスにおいて6週間誘導され、その後、マイクロドライブ移植とLFP記録が実施された。
図7Cにおいて、帯域出力(35〜45Hz)は、V1、CA1およびPFCにおいて、同月齢WTマウスと比較し、CK−p25マウスにおいて有意に低かった(すべての領域でP<0.01)。6週間誘導されたCK−p25マウスにおいて、40Hzの視覚刺激は、40Hzの光明滅曝露中、V1(ウィルコクソン順位和検定;P=0.0022)、CA1(P=0.001)およびPFC(P=0.002)で、40Hz出力を増加させた。
図7Dにおいて、マイクロドライブは、8カ月齢のP301S tauマウスに移植された。
図7Eは、V1(P=6.01E−05)およびPFC(P=4.11E−05)において、40Hzの光刺激中、出力(35〜45Hz)に有意な増加が観察されたことを示す。
図7Fは、非刺激、または1日当たり1時間で42日間のGENUSを受けたC57Bl/6Jマウスに関する。右:40Hzの視覚刺激中、V1(ウィルコクソン順位和検定;P=1.54E−06)、SS1(P=2.88E−04)、CA1(P=0.04)およびPFC(P=3.39E−06)において35〜45Hzの帯域出力に有意な増加が観察された。
図7Gにおいて、C57Bl/6Jマウスは、非刺激、または1日当たり1時間で42日間のGENUSを受けた。マウスは43日目に40Hzの視覚刺激を受け、LFPが収集された。GENUS中、V1−CA1(P=0.002)、V1−SS1(P=0.008)、CA1−PFC(P=0.04)、V1−PFC(P=0.002)の間に、30〜50Hzの低ガンマコヒーレンス(重み付け位相同期指標として測定される)において、領域間の有意な増加が観察された。CA1とSS1の間の低ガンマWPLIには差異はなかった(P=0.18)。
図7Hで、CK−p25マウスにおいて、p25は6週間誘導された。6週間誘導されたCK−p25マウスは、(43日目から)非刺激、または1日当たり1時間で42日間のGENUSを受けた。右:CK−p25マウスにおいて、試験されたすべての脳領域に、低ガンマ帯域出力(35〜45Hz)の有意な増加が観察された[V1,P=0.0017)、CA1(P=0.0379)、PFC(P=0.0030)](85日目に測定)。
図7Iは、V1−CA1(P<0.01)、CA1−PFC(P<0.01)、V1−PFC(P<0.01)の間の低ガンマコヒーレンスでも、有意な増加が明白であったことを示す。
図8A〜8Iは、開示される本発明主旨に従い、慢性視覚刺激が、視覚皮質を超えて5XFADマウスにおいてAD関連病変を減少させることを示す。
図8Aは、視覚明滅刺激の設定を示す概略である。発光ダイオード(LED)のアレイをケージの開いた側に設置し、Arduinoシステムを使用して、矩形波電流パターンを伴う40Hzの周波数で明滅するよう駆動させた。マウスはケージ中で自由に移動し(合計床面積は83in2(約535cm2)、マウスが受けた光量は約1500〜300luxの範囲である。
図8Bにおいて、10カ月齢の5XFADマウスは、非刺激、または1日当たり1時間で22日間のGENUSを受けた。代表的な画像は、海馬と体性感覚皮質を含む切片からの赤色のアミロイドプラーク、そして青色の核Hoechst染色を示している。スケールバーは、1000μm。主に図面2C〜2Dに関する。
図8Cにおいて、10カ月齢の5XFADマウスは、非刺激、または1日当たり1時間で22日間のGENUSを受けた。代表的な画像は、帯状皮質からの赤色のアミロイドプラーク、緑色のニューロンマーカーNeuN、そして青色の核Hoechst染色を示す。スケールバーは、50μm。主に図面2C〜2Dに関する。
図8Dは、V1、SS1、CA1およびCCにおいて、GENUS刺激を受けた5XFADマウスのプラーク数は、非刺激5XFADマウスよりも有意に少なかったことを示す。主に図面2C〜2Dに関する。1条件あたり、N=6匹のマウス。群効果間の二元配置ANOVA F(1,40)=30.01、P<0.0001。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。
図8Eにおいて、9カ月齢の非刺激5XFADマウスは、同月齢のWT同腹仔と比較して、CA1およびCCにおいてニューロン密度が有意に減少していたことを示す。GENUSは、CCにおいて、5XFADマウスのニューロン減少を有意に低下させた。N=9匹のWTナイーブマウス、6匹の5XFAD+非刺激マウス、および6匹の5XFAD+GENUSマウス。群効果間の二元配置ANOVA F(2,72)=14.93、P<0.0001。ボンフェローニ多重比較検定、***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。
図8Fにおいて、10カ月齢の5XFADマウスは、非刺激、または1日当たり1時間で22日間のGENUSを受けた。代表的な画像は、シナプスマーカーのbassoonを示す。スケールバーは、10μm。
図8Gにおいて、CA1およびCCにおいて5XFADマウスはシナプスマーカーのbassoon染色の有意な低下を呈したが、これは40HzのGENUSにより有意に低下した。N=9匹のWTナイーブマウス、6匹の5XFAD+非刺激マウス、および6匹の5XFAD+GENUSマウス。群効果間の二元配置ANOVA F(2,72)=16.18、P<0.0001。ボンフェローニ多重比較検定、***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。
図8Hは、全長APPタンパク質および内因性GAPDH対照の発現レベルを示す全長イムノブロットを提示する。N=5匹のWTナイーブマウス、N=3匹の非刺激5XFADマウス、およびN=4匹のGENUS刺激5XFADマウス。
図8Iは、APPタンパク質発現が、WTナイーブ対照と比較し、5XFADマウスにおいて有意に高かったことを示す。非刺激とGENUS刺激を受けた5XFADマウスの間では異なっていなかった。APPタンパク質のC/N断片は測定されなかったことに注意されたい。C末端特異的APP抗体、一元配置ANOVA F(2、9)=4.436、P=0.046。N末端特異的APP抗体、一元配置ANOVA F(2、9)=13.194、P=0.002。ボンフェローニ多重比較検定、**P<0.01。
図9A〜9Gは、開示される本発明主旨に従い、慢性視覚刺激が、P301SマウスおよびCK−p25マウスにおいてAD関連病変を改善することを示す。
図9Aは、非刺激、GENUS刺激を受けたP301S tauマウス、および同月齢のWTナイーブ同腹仔の視覚皮質の総タウタンパク質およびGAPDHの発現レベルを示す全長イムノブロットを提示する。右:P301S tauマウスの総タウ発現は、WTナイーブマウスと比較して増加していたが、タウのレベルは、非刺激とGENUS刺激を受けたP301Sマウスの間で差異はなかった。N=3匹のWTナイーブマウス、N=3匹の非刺激マウス、およびN=4匹のGENUS刺激P301Sマウス。ANOVA F(2,7)=173.275、P<0.0001。ボンフェローニ多重比較検定、***P<0.001。
図9Bは、WTナイーブ、非刺激P301SマウスおよびGENUS刺激P301Sマウスの間で、脳重量に差異はなかったことを示す。WTナイーブマウスと比較して、P301S tauマウスの側脳室に異常拡張の傾向があった。ANOVA F(2,19)=2.761、P=0.079。
図9Cは、CKナイーブ、非刺激、およびGENUS刺激を受けたCK−p25マウスの視覚皮質のp25+GFP(融合タンパク質)、p25、p35およびGAPDHの発現レベルを示す全長イムノブロットを提示する。右:同月齢のCKナイーブマウスと比較して、CK−p25マウスのp25+GFPタンパク質は有意に増加した(一元配置ANOVA、F(2,12)=13.065、P=0.002)が、非刺激およびGENUS刺激を受けたCK−p25マウスは、p25+GFP発現において差異はなかった。同様に、CKナイーブマウスと比較して、CK−p25マウスのp25発現は有意に高かったが、非刺激とGENUS刺激を受けたCK−p25マウスの間には差異はなかった(一元配置ANOVA、F(2,12)=3.581、P=0.025)。ボンフェローニ多重比較検定、***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。
図9Dは、CKナイーブマウス、非刺激CK−p25マウス、およびGENUS刺激を受けたCK−p25マウスの視覚皮質の厚さを示す代表的な画像を提示する。核Hoechst染色を青色で、ニューロンマーカーNeuNを赤色で示す。右:棒グラフは、群間の視覚皮質の厚さの差異を示す。群効果間の二元配置ANOVA F(2,36)=12.93、P<0.0001。ボンフェローニ多重比較検定、***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。
図9Eは、CKナイーブマウス、非刺激およびGENUS刺激を受けたCK−p25マウスの間の定性的な差異を示す代表的な画像を提示する。海馬体積、皮質の厚さおよび脳室の大きさの変化を詳述している。主に図3F〜3Hに関連する。
図9Fは、検証された全脳領域にわたり、非刺激CK−p25マウスと比較して、GENUSは、p25+GFP融合タンパク質の発現レベル(p25:GFP発現ニューロンの数)を変化させなかったことを示す。群間の独立標本t検定、P>0.05。
図9Gは、CKナイーブマウス、非刺激およびGENUS刺激を受けたCK−p25マウス中のCA1のDNA二本鎖切断マーカーのγH2Axの発現を示す代表的な画像を提示する。CKナイーブマウスではγH2Ax陽性核が存在しないことが明白であったため、比較は、非刺激とGENUS刺激を受けたCK−p25マウスの間で行われた。1条件あたり、N=6匹のマウス。スケールバーは、100μm。右:GENUSは、V1(独立標本t検定;T=4.418、P=0.0006)、SS1(T=2.944、P=0.013)、CA1(T=2.664、P=0.0143)およびCC(T=1.883、P=0.055)においてγH2Ax陽性核を有意に低下させた。
図10A〜10Nは、開示される本発明主旨に従い、慢性視覚刺激が、ミクログリアを改変し、ニューロン中の細胞内輸送とシナプス伝達を改善することを示す。
図10Aは、代表的なCKナイーブマウス、非刺激およびGENUS刺激を受けたCK−p25マウスからのFACSにおけるミクログリア分離プロファイルを示す。主に図4A 4Cに関連する。
図10Bは、代表的なWTナイーブマウス、非刺激およびGENUS刺激を受けたP301S tauマウスからのFACSにおけるミクログリア分離プロファイルを示す。
図10Cにおいて、差次的に発現された遺伝子(DEG)をボルケーノプロットに示す。群比較は、右側に示される。上:WTナイーブマウスと非刺激P301Sマウスの間のDEG。1群あたりN=5匹のマウス。真ん中上部:非刺激とGENUS刺激を受けたP301Sマウスの間のDEG、1群当たりN=5匹のマウス。
図10Dは、特定されたDEGに関連する生物プロセスに対する、上位7個の処理済み遺伝子オントロジー(GO)用語を示す。群比較は、上部に示される。
図10Eは、Iba1を緑色で、CD40を赤色で示す代表的な画像を提示する。主に4Dにおいて提示された統合画像を、明白性を目的として分離させた。
図10Fは、代表的なCKナイーブマウス、非刺激およびGENUS刺激を受けたCK−p25マウスからのFACSにおけるニューロン核分離プロファイルを示す。NeuN%の群平均とSEMを、総核と比較する:CKナイーブ、50±1.48;非刺激CK−p25、40.98±0.719;GENUS刺激CK−p25マウス、45.08±1.691。ANOVA F(2,12)=11.55、P=0.0016.ボンフェローニの事後検定、CKナイーブと非刺激CK−p25マウスを比較、P=0.001’CKナイーブとGENUS刺激CK−p25マウスを比較P=0.0609。GENUSは、CK−p25マウスにおいてニューロン核の減少を低下させた。
図10Gは、代表的なWTナイーブマウス、非刺激P301SマウスおよびGENUS刺激を受けたP301SマウスからのFACSにおけるニューロン核分離プロファイルを示す。判明したNeuN陽性核の百分率の群平均および平均標準誤差(SEM)を総Hoechst陽性核と比較する:WTナイーブ、52.45±2.03;非刺激P301S、45.17±1.18;GENUS刺激P301S、50.38±2.09。ANOVA F(2,18)=4.97、P=0.0191。ボンフェローニの事後検定、WTナイーブと非刺激P301Sマウスを比較、P=0.028;WTナイーブとGENUS刺激P301Sマウスを比較、P=0.99。GENUSは、P301S tauマウスにおいてニューロン核の減少を低下させた。
図10Hは、図10Fおよび10Gと同様に、総核と比較した総ニューロン(NeuN)陽性核の百分率を示す棒グラフを提示する。上:WTナイーブ、非刺激およびGENUS刺激を受けたP301Sマウスを比較する棒グラフ。1群当たりN=7匹のマウス。ANOVA F(2,18)=4.971、P=0.0191。下:CKナイーブ、非刺激およびGENUS刺激を受けたCK−p25マウスを比較する棒グラフ。各群に対しN=5匹のマウス。ANOVA F(2,12)=7.72、P=0.0070。
図10Iにおいて、慢性GENUS後のP301S tauマウスおよびCK−p25マウスで上方制御された遺伝子は、神経伝達物質輸送および小胞介在輸送の60個の遺伝子を伴うクラスターに基づき選択された。これら遺伝子は、非刺激マウスと比較し、CK−p25マウス、P301Sマウス、またはGENUS後の両マウスにおいてのみ上方制御されていたことに留意されたい(metascapeにより解析)。タンパク質−タンパク質の相互作用ネットワークマップ(Cytoscape V3.6.1、続いてStringsで解析;エンリッチメントP値、6.66E−15)を、緊密に関連する、さらなる機能性エンリッチメントGO用語とともに示す。
図10Jにおいて、非刺激P301S tau−tgマウス、および1時間/日で22日間のGENUS刺激を受けたマウスの視覚皮質に、S/Tホスホプロテオミクス解析を実施した。ヒートマップは、非刺激とGENUS刺激を受けたP301Sマウスの間で差次的にリン酸化されたタンパク質を示しており、それらはシナプス伝達と細胞内輸送に関与していた。
図10Kにおいて、ヒートマップは、非刺激とGENUS刺激を受けたCK−p25マウスの間で差次的にリン酸化されたタンパク質が、シナプス伝達(化学的シナプス伝達、トランス−シナプスシグナル伝達)に関与していたことを示す。遺伝子(対応するタンパク質)の名称および個別のホスホ部位を示す。
図10Lにおいて、P301S tauマウスは、非刺激、または22日間のGENUS刺激を受けた。TMT 10−plexキット(方法を参照)および質量分析法(LC−MS/MS)を使用して、視覚皮質組織に対し、総タンパク質発現解析およびS/Tリン酸化タンパク質解析を実施した。N=3匹のWTナイーブマウス、N=3匹の非刺激P301Sマウス、およびN=4匹のGENUS刺激P301Sマウス。±0.2の倍数変化と0.05未満の調整P値を有するリン酸化タンパク質は、統計的に有意であるとみなされた。CK−p25マウスおよびP301S tauマウスにおいて、各対照マウスと比較して差次的にS/Tリン酸化されたタンパク質と関連する生物学的プロセスのGO用語。
図10M−上:ウェスタンブロットは、CKナイーブ、非刺激および40HzのGENUS刺激を受けたCK−p25マウスからのpS774 DNM−1、DNM−1、DNM−3およびGAPDHを示す。pS774DNM−1のレベルは、CKナイーブマウスと比較し、CK−p25マウスにおいて有意に高かった。一方で40HzのGENUSは、CK−p25マウスにおいてpS774DNM−1を有意に低下させた。CKナイーブマウスはN=4匹のマウス、非刺激CK−p25マウスはN=5匹のマウス、および40HzのGENUS刺激を受けたCK−p25マウスはN=4匹のマウス(ANOVA F(2,12)=5.836、P=0.021)。下:棒グラフは、群の差異を示す。これは独立した検証であることに留意されたい。主に図5Fに関連する。
図10N−上:ウェスタンブロットは、WTナイーブ、非刺激および40HzのGENUS刺激を受けたP301SマウスからのpS774 DNM−1、総DNM−1、DNM−3およびGAPDHを示す。これは独立した検証であることに留意されたい。*P<0.05。主に図5Fに関連する。
図11A〜11Jは、開示される本発明主旨に従い、急性および慢性の視覚刺激の対象に対する効果の行動学的特徴を示す。
図11A−上:GENUSを伴う、または伴わない、10分のビンにおけるC57Bl/6Jマウスの占有に関するヒートマップを示す。最初の10分の刺激前基準期間中の探索行動において、差異は明白ではなかった。1群当たりN=6匹のマウス。T検定、T=0.3173、P=0.7576。同様に、40Hz刺激期間中の速度において、非刺激群と比較して規則的な変化は検出できなかった。下:プロットは、30分間の1分毎の速度を示す。二元配置反復測定ANOVA:30分間にわたる探索、F(29、290)=6.747、P<0.0001;非刺激およびGENUS刺激を受けたWTマウス間の相互作用、F(29、290)=0.9354、P=0.5652。
図11Bにおいて、C57Bl/6Jマウス(4カ月齢)に、非刺激または40Hzの光明滅刺激を1時間行い、その直後にピクロトキシンを注射し、OFに置いた。左:ピクロトキシン注射後に移動した距離において、GENUS刺激群と非刺激群の間で明白な差異はなかった。1群当たりN=4匹のマウス。反復測定ANOVA F=0.527、P=0.717。右:ラシーヌスコア。スコア0、正常な動作;スコア1、不動および硬直;スコア2、頭部上下運動;スコア3、前肢のクローヌスおよび棒立ち;スコア4、継続的な棒立ちおよび転倒;スコア5、慢性的な強直発作;スコア6、死亡。非刺激群およびGENUS刺激群の間で、発作感受性における差異は明白ではなかった。反復測定ANOVA F=0.429、P=0.994。
図11Cにおいて、新規物体に対する3日間の馴化の後、WTマウスをNORに対して検査した。左:30分間で1分毎の、慣れた物体および新規物体を探索して費やされた時間。新規物体識別の百分率を重ね合わせている。真ん中:ヒストグラムは、慣れた物体および新規物体の累積(全30分)探索時間を示す。非刺激マウスおよびGENUS刺激マウスの両方ともが、慣れた物体と比較し、新規物体の探索に有意に長い時間を費やした。群間に差異はなく、このことから、急性40Hzの光明滅曝露は、新規物体を識別するマウスの能力に影響を与えなかったことが示される。1群当たりN=6匹のマウス。慣れた物体と比較した、累積新規物体選好:非刺激、T(6)=−13.055、P=0.00004、GENUS T(5)=−20.818、P=0.000004。群間の新規物体選好、t検定 T=−0.314、P=0.760。右:移動した総距離のヒストグラム。GENUSがWTマウスの運動行動を変化させないことを示す。移動した総距離、t−検定 T=0.5096、P=0.6214。
図11Dにおいて、C57Bl/6Jマウスは、非刺激、または1日当たり1時間で7日間のGENUS刺激を受けた。7日の間は毎日、刺激パラダイムの1時間前に、そして刺激レジメンの1日後にマウスの体重を測定した。N=14匹の非刺激マウス、およびN=12匹のGENUS刺激マウス。棒グラフは、7日間にわたる体重を示す。両群において、日々の体重に全体的な増加があった(F(6,144)=2.889、P=0.011)。ただし非刺激群とGENUS刺激群の間に、体重に差異はなかった(F(6、144)=1.327、P=0.249)。
図11Eは、WTナイーブおよびP301S tauマウスの間で、体重に有意差が存在した(二元配置ANOVA 群間効果 F(2、72)=8.947、P=0.0003)が、慢性GENUS(1時間/日で22日間)は、非刺激P301S tauマウスと比較して、P301Sマウスの体重に影響を与えなかったことを示す。N=13匹のWTナイーブマウス、N=14匹の非刺激マウス、およびN=12匹のGENUS刺激P301Sマウス。
図11Fは、慢性GENUSが、非刺激CK−p25マウスと比較して、CK−p25マウスの体重に影響を与えなかったことを示す(二元配置ANOVA 群間効果F(2、122)=2.487、P=0.0874)。N=25匹のCKナイーブマウス、N=21匹の非刺激CK−p25マウス、およびN=18匹のGENUS刺激CK−p25マウス。
図11Gは、主に図6Fに関する。Nは、図6Fと同じである。オープンフィールド検査で移動した総距離は群間で有意であった。ANOVA F(2,36)=10.27、P=0.0003。しかしGENUS刺激P301Sマウスは、非刺激P301Sと比較して差異はなかった(P>0.99)。
図11Hは、主に図6Bに関する。Nは、図6Bと同じである。オープンフィールド検査で移動した総距離を示す。非刺激、およびGENUS刺激を受けたCK−p25マウスにおいて、オープンフィールド検査中に移動した総距離に差異はなかった。ANOVA F(2,49)=0.01552、P=0.9846。
図11I−左:血漿コルチコステロンレベルは、非刺激と、7日間のGENUS刺激を受けたWTマウスの間で差異はなかった。1群当たりN=12匹のマウス。T=1.17、P=0.255。真ん中:CK−p25マウスにおいてp25が誘導されつつ、マウスは刺激を受けないか、または1日当たり1時間で42日間のGENUSを受けた。チャート中に1群当たりのマウス数が示されている。血漿コルチコステロンレベルは、CKナイーブ、非刺激、およびGENUS刺激を受けたCK−p25マウスの間に差異はなかった(F(2,35)=0.4871、P=0.6185)。右:P301S tauマウス(22日刺激)の血漿コルチコステロンも、WTナイーブ、非刺激P301Sマウス、および22日のGENUS刺激P301Sマウスの間で同等であった(F(2,35)=0.6874、P=0.5096)。各群のマウス数は、図面中に適宜提示されている。
図11Jは、主に図7に関連する。モリス水迷路検査においてマウスが泳いだ全実験からの平均スピード。左:CK−p25マウスにおいて、全6日間のトレーニング期間にわたり、いずれの群間にも差異は明白ではなかった(図7D)。群効果間の二元配置ANOVA F(2,252)=0.3832、P=0.6821。真ん中:P301S tauマウスにおいて、全5日間のトレーニング期間にわたり、群間に差異はなかった(図7H)。群効果間の二元配置ANOVA F(2,225)=0.5726、P=0.5651。右:遊泳速度において、5XFADマウスコホートに有意差があった(図7I)。群効果間の二元配置ANOVA F(2,273)=24.24、P<0.0001。ボンフェローニ補正を伴う多重比較。1日目〜4日目に差異はなかった。5日目:WTナイーブと5XFAD+非刺激の比較、P>0.9999。WTナイーブと5XFAD+40HzのGENUSの比較、P=0.0022。5XFAD+非刺激と5XFAD+40HzのGENUSの比較、P=0.0483。6日目:WTナイーブと5XFAD+非刺激の比較、P=0.0005。WTナイーブと5XFAD+40HzのGENUSの比較、P=0.0037。5XFAD+非刺激と5XFAD+40HzのGENUSの比較、P>0.9999。7日目:WTナイーブと5XFAD+非刺激の比較、P<0.0001。WTナイーブと5XFAD+40HzのGENUSの比較、P=0.0043。5XFAD+非刺激と5XFAD+40HzのGENUSの比較、P=0.5716。
図12A〜12Cは、開示される本発明主旨に従い、80Hzの慢性視覚刺激では、5XFADマウスにおいてモリス水迷路に影響を与えなかったことを示す。
図12Aは、1日当たり1時間で22日間の80Hzの刺激に曝露された5XFADマウスのMWMにおける成績を示す。折れ線グラフの説明中に1群当たりのマウス数が示されている。トレーニング中にプラットフォームを見出すまでの潜時は、非刺激群と80Hzの刺激を受けた5XFAD群の間で差異はなかった(二元配置ANOVA F(2,180)=13.33、P<0.0001)。しかしこれら両群ともに、WTナイーブマウスと比較してプラットフォームを発見するまでより長い時間を必要とした。
図12Bは、探索試験中にプラットフォームを交差した回数を示す。F(2,30)=3.622、P=0.0390。ボンフェローニ補正を伴う多重比較。*P<0.05。
図12Cは、探索試験中に標的四分円で過ごした時間が、WTナイーブマウスと比較して、非刺激および80Hzで刺激された5XFADマウスにおいて有意に短かったことを示す。F(2,30)=5.643、P=0.0083。ボンフェローニ補正を伴う多重比較、WTナイーブマウスとの比較。非刺激−P=0.014、80 Hz−P=0.0371。*P<0.05。
動物モデル
すべての実験は、マサチューセッツ工科大学比較医学部門の実験動物委員会の承認を受けた。C57BL6、Tg(Camk2a−tTA)、Tg(APPSwFlLon、PSEN1*M146L*L286V)、Tg(Prnp−MAPT*P301S)PS19、およびFos−tm1.1(cre/ERT2)は、Jackson laboratory社から入手された。Tg(tetO−CDK5R1/GFP)は本発明者らの実験室で作製された。すべてのトランスジェニックマウスは、本発明者らの動物施設で飼育され、維持された。
使用されたC57Bl/6Jマウスは、3カ月齢、10カ月齢または17カ月齢であった。CK対照マウス、およびCK−p25(tetO−CDK5R1/GFPと交配されたCamk2a−tTA)マウスは、ドキシサイクリン含有の食物で飼育された。通常のげっ歯類の餌は、p25−GFP導入遺伝子の発現を誘導するために与えられた。典型的には、p25発現は、6週間誘導された。実験の開始時、P301S tauマウスは7カ月齢であり、5XFADマウスは9カ月齢または11カ月齢であった。すべてのマウスは、マイクロドライブを移植されたマウスを除き、集団飼育された(1ケージあたり2〜5匹)。すべての実験は、齢を合致させた同腹仔を使用して実施された。免疫染色実験および電気生理学的実験は、図の解説に規定される総数までマウスを使用して2回行われた。本明細書に記載されるすべての行動実験(若い、および加齢したWTマウスおよびTau P301Sマウスを除く)は、図の解説に記載される総数の動物を使用して、1回行われた。サンプルサイズを前もって決定するための統計的手法は使用していない。その代わりに本発明者らは、本発明者らの研究室で過去に発表された研究(Iaccarino et al.,2016;Nott et al.,2016)と同等のサイズの群を使用することを選択して、群間の分散を最小に維持した。図1の箱ひげ図はメジアン、ならびに上位(75%)および下位(25%)の四分位範囲を示す。記載されない限り、図2〜図6のエラーバーを伴うすべてのプロットは、平均±SEMとして報告されており、すべてのサンプルは、マウス数(N)として報告されている。
40Hzの光明滅刺激
光明滅刺激は、過去に報告されたように送達された(Iaccarino et al.,2016)。待機室から、同じビルの隣接フロアにある明滅処置室へとマウスを運んだ。実験開始の1時間前に薄暗い光で馴化させ、その後にマウスを検査ケージ(ホームケージと似ているが、寝床が無く、3面が黒いシートで覆われている)に入れた。マウスは自由にケージ内を移動することができたが、1時間の光明滅中、食物または水は与えられなかった。発光ダイオード(LED)のアレイをケージの開いた側に設置し、Arduinoシステムを使用して、矩形波電流パターンを伴う40Hzの周波数で明滅するよう駆動させた。40Hzの光明滅曝露の1時間後、マウスをホームケージに戻し、さらに30分間休息させて、その後に待機室へと戻した。通常の部屋の光制御を受けるマウスは、同じように食物と水を制限した同じようなケージに曝された。この場合、マウスは通常の部屋の光のみを経験している。
組織調製
免疫組織化学法:40mlの氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でマウスを経心臓かん流し、次いで40mlの4%パラホルムアルデヒドのPBS溶液でかん流した。脳を採取し、4%PFA中、4℃でポストフィックスして、PBSに移し、切片作製を行った。
ウェスタンブロッティング:視覚皮質を切り出し、液体窒素で瞬間凍結して、処理を行うまで−80℃の冷凍庫で保存した。サンプルは、RIPA(50mM Tris Hcl pH 8.0、150mMのNaCl、1% NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS)緩衝液を用いて、ガラスホモジナイザーを使用してホモジナイズした。サンプル中のタンパク質濃度は、Bio−Radタンパク質アッセイを使用して定量された。等濃度のタンパク質を調製し、SDSサンプル緩衝液を添加した。
免疫組織化学法
脳は、強力瞬間接着剤を使用してビブラトームステージ(Leica VT1000S)上に封入され、40μmの切片を調製した。続いて切片をPBSで洗浄し、0.3% Triton−X100含有のPBS(PBST)中で調製された5%正常ロバ血清を使用して2時間、室温でブロッキングした。ブロッキング緩衝液を吸引し、切片を適切な一次抗体(新鮮なブロッキング緩衝液中で調製)とともに一晩、4℃、振とう機上でインキュベートした。次いで切片をブロッキング緩衝液を用いて3回洗浄し(各10分)、その後、Alexa Fluor 488、555、594または647が結合した二次抗体と室温で2時間インキュベートした。ブロッキング緩衝液を用いて3回洗浄し(各15分)、PBSを用いて最終洗浄を1回(10分間)行い、切片をfluromount−G(Electron microscopic Sciences社)を用いて封入した。
以下の二次抗体の組み合わせを使用した:(1)Alexa Fluor 488、594および647、(2)Alexa Fluor 555および 647、ならびに(3)Alexa Fluor 594および647。
画像化および定量
画像は、LSM 710またはLSM 880のいずれか共焦点顕微鏡(Zeiss社)を使用し、全条件に対し同一設定で、5x、10x、20x、40x、または63xの対物レンズで取得した。画像は、ImageJ 1.42qまたはImarisx64 8.1.2(Bitplane社、スイス、チューリッヒ)のいずれかを使用して定量された。各実験条件に対し、指定される動物数からの二つの冠状切片を使用した。マウス1匹当たり2枚の画像からの平均値をさらに定量に使用した。定量は、可能な限り遺伝子型と治療条件に対して盲検化された実験者により実施された。
NeuN、c−FosおよびGFP陽性細胞の計数:すべての画像は、1画像あたり、Z−スタック−10で取得され、定量された。各二つの平均値、全計数の合計は、ImageJを使用して計算された。P301S tauマウスおよび5XFADマウスのNeuN計数は、処置条件に対して盲検化された実験者により行われた。
γH2Ax陽性細胞の計数:ImageJのマルチ−ポイントツールを使用して細胞を計数した。
vGlut1、bassoon集積:63xの対物レンズと、3倍ズームをさらに備えたLSM880を使用して、画像を取得した。視覚皮質および体性感覚皮質の深層(主に4および5)、CA1放射状層、および前帯状皮質の第5層をすべて標的とした。一平面画像が取得された。ImageJの粒子カウントプラグインを使用して、vGlut1集積の数を定量した。
pS202/T205タウ強度:40xの対物レンズを備えたLSM710を使用して、全切片の厚さが40μmのz−スタック(各フィールドから40枚の画像)が取得された。すべての画像を圧縮/折り畳み、シグナル強度をImageJで計測した。
pS774−DNM1強度:63xの対物レンズおよびさらに3xのズームを備えたLSM880を使用して、全切片の厚さが40μmのz−スタック(各フィールドから40枚の画像)が取得された。すべての画像を圧縮/折り畳み、集積のシグナル強度をImageJで計測した。
プラーク:D54D2抗体で染色された全体的なプラーク強度およびプラーク数は、遺伝子型および処置条件に対して盲検化された実験者により定量された。全40μm切片は、0.5μm間隔でz−スタック画像化された。次いでこれらを重ね合わせ、シグナル強度をImageJを使用して測定した。プラークはImageJの粒子解析ツールを使用し、5μm2の閾値で計数された。すべてのプラーク強度およびプラーク数の計数は、処置条件に対して盲検化された実験者により行われた。
C1q強度:40xの対物レンズを備えたLSM710を使用して、全切片の厚さが40μmのz−スタック(各フィールドから40枚の画像)が取得された。すべての画像を圧縮/折り畳み、シグナル強度をImageJで計測した。
CD40:63xの対物レンズを備えたLSM880を使用して、全切片の厚さが40μmのz−スタック(各フィールドから40枚の画像)が取得された。すべての画像を圧縮/折り畳み、シグナル強度をImageJで計測した。
側脳室:5x対物レンズを備えたLSM710顕微鏡を使用して、−2.0ブレグマ(吻側〜尾側)で完全冠状切片を画像化した。側脳室の領域全体をカバーする輪郭線は、ImageJのフリーハンド選択ツールを使用して引かれ、LVの面積が測定された。
ミクログリア:Iba1免疫反応性細胞は、ミクログリアとみなされた。40xの対物レンズを備えたLSM710を使用して、全切片の厚さが40μmのz−スタック(各フィールドから40枚の画像)が取得された。画像の3DレンダリングにImarisを使用して、ミクログリアの細胞体および突起の総体積を定量した。Iba1凝集解析は、ImageJの3Dレンダリングプラグインで実施された。Iba1間の最小距離は、画像からミクログリアごとに算出された。すべての画像が圧縮/折り畳まれ、ImageJを使用して、Iba1陽性細胞の総数が定量された。
皮質の厚さ:5x対物レンズを備えたLSM710顕微鏡を使用して、完全皮質柱を画像化した。外側皮質境界と、脳梁の皮質側の間の距離は、ImageJを使用して測定された。
脳重量の測定:PBS、次いで4%PFAを用いてマウスを経心臓かん流し、脳を一晩、4%PFA中でポストフィックスした。脳をPBS中で洗浄し、余剰分をすべて除去し、その後にwet lab high precision scale(Mettler Toledo社、1mgの精度)で計量した。別のコホートのマウスを殺処分し、脳を液体窒素中で瞬間凍結して、脳重量を測定した。脳重量は、これら二つの独立測定の各々で、CKナイーブ脳に対して正規化された。
ウェスタンブロット
6〜8μgのタンパク質を、6、8、10、または15%のポリアクリルアミドゲルのいずれかにロードして、電気泳動した。タンパク質を、アクリルアミドゲルから、ニトロセルロース膜(Bio−Rad)へと、100Vで120分間トランスファーした。0.1%Tween−20含有PBS(PBSTw)中で希釈したミルク(5%w/v)を使用して膜をブロッキングした。その後、一次抗体中で一晩、4℃でインキュベートした。翌日、PBSTwを用いて3回洗浄し、西洋わさびペルオキシダーゼ結合二次抗体(GE Healthcare社)とともに室温で60分間インキュベートした。PBSTwでさらに3回洗浄した後、膜を、化学発光基質で処置し、フィルムを発色させた。シグナル強度は、ImageJ 1.46qを使用して定量し、例えばβ−アクチン、GAPDHなどの対照タンパク質の値、または対応するリン酸化タンパク質解析の総タンパク質の値に対して正規化された。
マイクロドライブ移植およびインビボ電気生理学
タングステンワイヤー電極ドライブ:マイクロドライブは、ペルフルオロアルコキシ被覆されたタングステンワイヤー電極(50μmのベア(bare)直径、101.6μmのコート直径、A−M Systems社)およびNeuralynx電極インターフェースボード(EIB−36)を備えた、3Dプリントされたドライブベースを使用してカスタム構築された。ポリイミドチューブを使用して電極を保護し、電気ノイズを減少させた。電極は、視覚皮質の第3層または第4層(ブレグマに対する座標、前−後(AP)、−3.0、内側−外側(ML)、+2.0)、SS1(AP、−2.0;ML、+2.3)、海馬のCA1領域(AP、−1.8;ML、+1.5)および前頭前野皮質の帯状領域(AP、+1.0;ML、+0.2)を標的とするように配置された。基準電極は、小脳内に配置した。
四極管ドライブ:カスタムマイクロドライブは、200〜250kUのインピーダンスに金めっき(Neuralynx社)され、1列に配置される(背側海馬のCA3〜CA1軸に沿って連続する)四つのニクロム四極管(14mm;California Fine Wire Company社)を含み、背側CA1(AP、−1.8)に移植された。基準電極は、海馬の上の線維束中に配置した。
外科手術:マウスはアバチンで麻酔され、定位固定器具に固定され、開頭術が行われて、視覚皮質、体性感覚皮質および前頭前野皮質が露出された。マイクロドライブを移植し、標的深度までゆっくりと下げた。マウスを4日間、回復させた。
インビボ電気生理学 2〜3日のチャンバー馴化期間の後、小さなオープンフィールド中で自由に動く動物を用いて記録が開始された。記録セッションは、10〜15分間で構成され、その期間、LEDは40Hzで明滅したが、黒いアクリルポリプロピレンシートで完全に塞がれた。その直後、シートを取り除いてさらに10分続けて、動物は明滅するLEDに曝露された。データは、Neuralynx SX system(Neuralynx社、米国モンタナ州、ボーズマン)を使用して取得され、シグナルは、32,556Hzで収集された。動物の位置は、マイクロドライブに固定された赤色発光ダイオードを使用して追跡された。実験終了時、マウスに神経終末麻酔を行い、電極の位置は、個々の各電極まで脳組織の電解損傷を50−μAの電流を用いて10秒間与えることによりマークして、その解剖学的位置を確認した。
スパイク:単一ユニットは、SpikeSort3D software(Neuralynx社)中に提示される、記録されたスパイクの3D投影周囲にクラスター境界を描画することにより手動で単離した。平均スパイク幅が200μ秒を超え、5以上の複合スパイクインデックス(CSI:complex spike index)を有する場合に、細胞は錐体ニューロンとみなされた。
データ解析:LFPは最初に標的サンプリングレートのNyquist周波数に対してフィルタリングされ、次いで20倍にダウンサンプルされた(1628Hzまで)。出力スペクトル分析は、50%重複を伴う500ミリ秒の時間ウィンドウを使用して、Matlabのpwelch関数を使用して実施された。動物の速度が>4cm/秒に維持されたLFPデータのセグメントのみを分析に含めた。重み付け位相同期指標(WPLI)は、小さなげっ歯類の脳に適したコヒーレンスの測定尺度であり、これを過去に報告された(Vinck et al.,2011)ように使用して、体積伝導シグナルによるコヒーレンスの電位汚染を無効化した。WPLIは、動物のスピードが>4cm/秒であった期間に対してのみ、解剖学的に別個の領域の電極のペアに対して計算された。すべての分析は、Matlabを使用して実施された。
錐体細胞の40Hz変調:スパイク発火時間と、40HzのLFP位相の間の関係性は、Circular Statistics Toolboxを使用して、過去に報告された(Middleton and McHugh,2016)ように計算された。簡潔に述べると、スパイクをソーティングし、LFPトレースを、40Hzを中心とするcmor1.5−1のウェーブレットを用いた連続ウェーブレット変換を使用してフィルタリングし、瞬間的なシグナルの位相および振幅を返した。スパイク時間を直線的に補間して、ガンマのピークおよび谷をそれぞれ0度および180度と規定した位相を決定した。得られた位相値をビニングして、20度の間隔ごとに発火確率を生成した。細胞は、均一とは有意に異なる分布を有した場合にのみ(P<0.05、環状レイリー検定)、位相同期されたとみなされた。位相同期の強度は、平均合成ベクトル長として算出された。
RNA配列解析
ミクログリアの単離:視覚皮質を素早く解剖し、氷冷ハンクス平衡塩溶液(HBSS)(Gibco by Life Technologies社、カタログ番号 14175−095)中に置いた。組織は、メーカーのプロトコールに軽微な改変を行い、Neural Tissue Dissociation Kit(P)(Miltenyi Biotec社、カタログ番号130−092−628)を使用して酵素的に消化した。具体的には、組織は37℃で、35分間の代わりに15分間、酵素的に消化され、得られた細胞懸濁液は、MACS SmartStrainer、70μmの代わりに40μmのセルストレーナー(Falcon Cell Strainers、滅菌、Corning社、製品352340)を通した。次いで、得られた細胞懸濁液を、メーカー(Miltenyi Biotec社)の推奨に従い、アロフィコシアニン(APC)結合CD11bマウスクローンM1/70.15.11.5(Miltenyi Biotec社、130−098−088)およびフィコエリスリン(PE)結合CD45抗体(BD Pharmingen社、553081)を使用して染色した。次いでFACSを使用して、CD11bおよびCD45陽性ミクログリア細胞を精製した。標準的な完全側方散乱の幅と面積、および前方散乱の幅と面積の比較基準を使用して、ダブレットを識別し、シングレットのみをゲーティングした。生きた細胞は、ヨウ化プロピジウム(PI)を用いた染色で特定され、PI−陰性細胞のみをゲーティングした。CD11bおよびCD45の二重陽性細胞を、1%β−メルカプトエタノール(Sigma−Aldrich社、カタログ番号M6250)とともに500μlのRNA溶解緩衝液(QIAGEN社、カタログ番号74134)を含む1.5mlの遠心管内にソーティングした。RNAは、メーカーのプロトコールに従い、RNeasy Plus Mini Kit(QIAGEN社、カタログ番号74134)を使用して抽出された。RNAを溶出し、その後、全トランスクリプトーム増幅、ライブラリー調製および配列解析を実施するまで−80℃で保存した。
ニューロンの単離:視覚皮質を、プロテアーゼ阻害剤を含む0.5mLの氷冷PBS中でホモジナイズし、懸濁液を1600gで10分間、遠心分離した。沈殿物を5mLのNF−1低張緩衝液中に再懸濁し、5分間インキュベートして、次いで30ストロークでDounce−ホモジナイズを行った(乳棒A)。5mLのNF−1緩衝液を懸濁液に加えて、乳棒を10mlのNF−1緩衝液で洗浄し、合わせて20mLとした。すべてを50本のコニカルチューブに集め、40μmのメッシュフィルターを用いてホモジネートをろ過した。3,000rpm(1,600xg)で15分間、核を沈殿させた。30mLのNF−1緩衝液中に再懸濁させ、よく混合した。4℃で1時間、ホモジネートを揺らした。20mLのNF−1緩衝液で1回、沈殿物を洗浄し、3,000rpmで15分間遠心分離し、そして2〜5mLのPBS+1%BSA+プロテアーゼ阻害剤中に、沈殿物を乱すことなく氷上で20分間再懸濁させた。Alexa flour 488またはAlexa flour 647が結合したNeuN抗体(1:500)をチューブに加え、4℃で20分間インキュベートした。非結合抗体を、PBS+1%BSA +プロテアーゼ阻害剤を用いた懸濁および遠心分離で洗い流した。3,000rpmで15分間、核をスピンダウンさせ、0.5mL(PBS+プロテアーゼ阻害剤)中に再懸濁し、FACSソーティング用に40μmのメッシュフィルターを用いてろ過した。2滴のnucblue live ready probes試薬(Thermo Fischer Scientific社;カタログ番号R37605)を加えて核ゲーティングを行った。NeuN陽性細胞を、1%β−メルカプトエタノール(Sigma−Aldrich社、カタログ番号M6250)を含む500μlのRNA溶解緩衝液(QIAGEN社、カタログ番号74134)が入った1.5mlの遠心管内にソーティングした。RNAは、メーカーのプロトコールに従い、RNeasy Plus Mini Kit(QIAGEN社、カタログ番号74134)を使用して抽出された。RNAを溶出し、その後、全トランスクリプトーム増幅、ライブラリー調製および配列解析を実施するまで−80℃で保存した。
RNAライブラリー調製:抽出された総RNAに、 Advanced Analytical−fragment Analyzerを使用してQCを行い、その後にライブラリー調製を行った。SMARTer Stranded Total RNA−Seq Kit − Pico Inputを使用して、P301Sニューロン、CK−p25ニューロン、およびP301SミクログリアのRNA−seqを行った。SMART−Seq v4 Ultra Low Input RNA Kitは、CK−p25ミクログリア特異的RNA−seqに使用した。ライブラリーはメーカーの説明書に従い調製され、MIT BioMicro CenterでIllumina Nextseq 500 platform上で配列解析された。
40bpのペア−エンドシーケンスリードの生fastqデータを、STAR2.4を使用してマウスmm9基準ゲノムにアライメントした。リードの総数およびアライメントされたリードの割合は以下であった:CK−p25ニューロン−総リード18094674.857±827050.464;アライメントされた割合85.323±0.414。P301Sニューロン−総リード22792713.18±6308817.636;アライメントされた割合84.45±0.548。CK−p25ミクログリア−総リード28694964.5±435841.6674;アライメントされた割合89.43±0.25。[P301Sミクログリア−総リード18990369.2±1667316.196;アライメントされた割合27.243±4.04。マッピング率が非常に低かったため、この実験にはさらなる検討が必要である]。マッピングされたリードは、mm9基準遺伝子アノテーションを使用してCufflinks2.2(Trapnell et al.,2012)により処理され、fr−secondstrandとしてライブラリー型を用いて転写物量を推定した(ストランド化ニューロンデータ)。群間の遺伝子差次的発現の検証は、<0.05のp値でCuffdiffモジュールを使用して実施された(ニューロンデータ)。Cuffdiffに対するライブラリー正規化法として、幾何学的方法が選択された。ミクログリアデータについては、featureCountsツールを使用して、非ストランド化RNA−seqデータからの遺伝子エクソン数を定量し、DESeq2を採用して、統計的有意性を算出した。色分けされたスキャッタープロットを使用して、差次的に発現された遺伝子、および他の遺伝子について、群FPKM値を可視化した。
差次的に発現した遺伝子に対する反復発現FPKM値のZ−スコアは、様々なサンプル群に対し、ヒートマップ中に可視化された。ミクログリア特異的DEGに対する遺伝子オントロジーは、Metascapeツールを使用して実施された。一方でニューロン特異的DEGについては、TOPPGENEを使用して実施された。
プロテオミクスおよびホスホプロテオミクス
サンプル調製、還元、アルキル化およびトリプシン消化:視覚皮質を切り出し、液体窒素で瞬間凍結して、次に使用するまで−80℃の冷凍庫で保存した。続いてサンプルは、プラスチックの携帯モーター駆動ホモジナイザーを使用し、新たに調製された8M尿素溶液とともにホモジナイズされた。サンプル中のタンパク質濃度は、Bio−Radタンパク質アッセイを使用して定量された。1mlあたり1mgのタンパク質を含むサンプルを調製し、分注して次に使用するまで−80℃で保存した。10mMのジチオスレイトール(DTT)でタンパク質を1時間、56℃で還元し、50mMのヨードアセトアミドで1時間、室温(RT)でアルキル化して、100mMの酢酸アンモニウム、pH8.9を用いて1M尿素未満に希釈した。シーケンシンググレードのトリプシン(Promega社、50μgタンパク質あたり、1μgのトリプシン)を使用して一晩、RTでタンパク質を消化した。酵素活性は、酢酸でサンプルを酸性化することによりクエンチした。ペプチド混合物を脱塩し、C18 Sep−Pak Plusカートリッジ(Waters社)上で濃縮して、50%のアセトニトリル、0.1%のギ酸および0.1%の酢酸で溶出した。溶媒をSpeedVac真空遠心分離機中で蒸発させ、各サンプルの400μg分注物を分注し、5分間液体窒素中で凍結させ、凍結乾燥し、そして−80℃で保存した。
TMT標識:TMT標識およびホスホペプチド濃縮:凍結乾燥ペプチドは、TMT−10−plex Mass Tag Labeling Kits(Thermo社)で標識された。各TMTマルチプレックスに対し、WT、神経変性の非刺激および40Hz同調されたマウスモデルからの等量のペプチドの組み合わせからなる、プールされたサンプルが含まれ、正規化チャンネルに対する相対的定量を行った。TMT標識については、9個のマウスペプチド分注物からの9個のサンプル、および一つの正規化チャンネル(各チャンネルに対し、400μgのペプチド)が、100μLの70%(vol/vol)エタノール、30%(vol/vol)0.5Mトリエチル−アンモニウム重炭酸塩、pH8.5中に再懸濁され、40μLの無水アセトニトリル中に再懸濁されたTMT試薬とともにRTで1時間、インキュベートされた。サンプルを濃縮し、一つにまとめて、SpeedVac真空遠心分離機を使用して乾燥するまで濃縮した。
ペプチド分別:TMT標識ペプチド沈殿物を、高pH逆相HPLCを介して分別した。100uLの緩衝液A(10mM TEAB、pH8)中にペプチドを再懸濁し、4.6mm x 250mm 300Extend−C18、5umカラム(Agilent社)上で、緩衝液B(90% MeCN、10mM TEAB、pH8)を用いた90分間の勾配を使用して、1ml/分の低速でペプチドを分離した。勾配は以下のとおりであった:1〜5% B(0〜10分)、5〜35% B(10〜70分)、35〜70% B(70〜80分)、70% B(80〜90分)。画分を10分〜85分の間に1分間隔で、75分にわたり収集した。分画は、非連続的に15の分画に連結された(1+16+31+46+61、2+17+32+47+62など)。次いで分画にspeed−vac(Thermo Scientific Savant社)を行い、ほぼ乾燥させた。
ホスホペプチドの濃縮:ホスホペプチドは、メーカーの説明書に従い、High−Select Fe−NTA ホスホペプチド濃縮キット(Thermo社)を使用して15の分画のそれぞれから濃縮された。
液体クロマトグラフィータンデム型質量分析法(LC−MS/MS): ペプチドは、逆相HPLC(Thermo Easy nLC1000)により、140分の勾配にわたり、プレカラム(自作、6cmの10μm C18)およびセルフパックの5μmチップ分析カラム(12cmの5μm C18、New Objective社)を使用して分離された。その後、QExactive Plus質量分析計(Thermo社)を使用してナノエレクトロスプレーを実施した。溶媒Aは0.1%ギ酸であり、溶媒Bは80% MeCN/0.1%ギ酸であった。勾配条件は、0〜10% B(0〜5分)、10〜30%B(5〜105分)、30〜40%B(105〜119分)、40〜60%B(119〜124分)、60〜100%B(124〜126分)、100% B(126〜136分)、100−0% B(136〜138分)、0% B(138〜140分)であり、質量分析計は、データ依存性モードで操作された。フルスキャンMSのパラメーターは以下であった:350〜2000m/zにわたり、70,000の分解能、AGC 3e6および最大IT 50ミリ秒。フルMSスキャンに続いて、各サイクルの上位10個のプリカーサーイオンに対するMS/MSを実施し、34のNCE、および30秒の動的除外が行われた。質量スペクトルの生データファイル(.raw)は、Proteome Discoverer(Thermo社)およびMascot version 2.4.1(Matrix Science社)を使用して検索された。Mascot検索パラメーターは以下であった:プリカーサーイオンに対し、10ppmの質量許容差;断片イオン質量許容差に対し15mmu;2のトリプシン不完全切断;固定修飾(fixed modification)は、システインのカルバミドメチル化ならびにリシンのTMT 10plex修飾およびペプチドN末端;変動修飾(variable modification)は、メチオニン酸化、チロシンリン酸化、およびセリン/スレオニンリン酸化。TMT定量は、Proteome Discovererを使用して取得され、メーカーの説明書に従い同位体補正され、各TMTチャンネルの平均に対して正規化された。25以上のMascotスコア、および30以下の単離干渉(isolation interference)を有するペプチドのみが、データ解析に含まれた。
洗浄したプレカラムを、統合エレクトロスプレーチップ(〜1μmオリフィス)を備えた自作のパック済み分析キャピラリーカラム[5μm C18ビーズとパックされた50 μm ID x 12cm(YMCゲル、ODSAQ、12nm、S−5μm、AQ12S05)]と直列に接続した。ペプチドは、9〜70%アセトニトリルの0.2M酢酸溶液の140分(ホスホペプチド)または90分(総ペプチド)の勾配を使用し、0.2ml/分の流速、約10,000:1のフロースプリット(flow split)で溶出して、約20nL/分の最終エレクトロスプレー流速が得られた。各サンプルから総計で15の分画が収集された。ホスホペプチドは、以下の設定で、Thermo Q Exactive Hybrid Quadrupole−Orbitrap Plus質量分析計を使用して分析された:スプレー電圧、2kV;シース無しまたは補助ガス流、加熱キャピラリー温度、250℃;50%のS−レンズ高周波レベル。Q Exactiveは、データ依存性の取得モードで操作された。フルスキャンMSスペクトル[質量/電荷比(m/z)、350〜2000;分解能、m/z 200で70,000]は、過去のスキャンから得られた予測AGCに基づく3e6標的値でのイオン蓄積の後、Orbitrap分析計で検出された。フルスキャンごとに、15個の最も強いイオンが単離され(単離幅は0.4m/z)、高エネルギー衝突解離(HCD)によって断片化され(衝突エネルギー(CE):32%)、最大注入時間は300ミリ秒、および分解能は35,000であった。総ペプチド分析は、以下の設定を用いてLTQ Orbitrap XL質量分析計上で実施された:スプレー電圧、2kV;シース無し、または補助ガス流、加熱キャピラリー温度、250℃。分析は、データ依存性取得モードで実施された。フルスキャン質量スペクトル(m/zは400〜2000の範囲、分解能は60,000)は、Orbitrap分析計で検出された(イオン標的値 5x105)。フルスキャンごとに、10個の最も強いイオンが単離され(単離幅は3Da)、HCDセル中でHCD(CE:75%)により断片化され、次いでOrbitrap中で検出が行われ(イオン標的値 1x105)、iTRAQマーカーイオン定量が実施された。
質量分析ペプチドマッピングデータ分析:質量スペクトルの生データファイルは、Proteome Discoverer version 1.4.1.14(DBversion:79)(Thermo社)にロードされ、Mascot version 2.4(Matrix Science社)を使用してマウスSwissProtデータベースに対して検索された。TMTレポーター定量が抽出され、Proteome Discovererにおいて同位体補正された。タンデム質量スペクトルは、プリカーサー質量に対し10ppm、断片イオンに対し15mmuの初期質量許容差でマッチングされた。システインカルバミドメチル化、TMT標識リシン、およびタンパク質N末端を固定修飾として検索した。酸化メチオニン、ならびにセリン、スレオニン、およびチロシンのリン酸化を変動修飾として検索した。最小ペプチド長は、7アミノ酸であった。全ペプチドに対し、>20のイオンスコアによりデータセットをフィルタリングすることで、ペプチド識別およびリン酸化位置の高い信頼性を確保し、ペプチドに対し1%未満の(FDR)を実現した。ホスホペプチド定量は、粗ペプチド分析から取得されたメジアン相対的ペプチド定量に基づき正規化され、TMTチャンネル間のサンプル量のわずかな変動に対して補正された。各ホスホペプチドについては、相対的定量は、各分析サンプルからのTMTイオン強度と、含有される正規化チャンネルの間の比率として表された。
バイオインフォマティクス分析:有意に制御された比率で差次的に発現され、リン酸化されたペプチドを特定するために、<0.05の調整P値を有する±20%の差異の任意のカットオフを選択する。非制御バックグラウンドのプールは、0.8〜1.2の比率のペプチドからなる。ゆえに、それに続くバイオインフォマティクス分析には、その正規化チャンネルに対して、<0.8および>1.2の比率を有するペプチドが含まれ、それぞれ下方制御された、および上方制御されたとみなされた。タンパク質アクセッション番号からのタンパク質の名称は、Uniprot IDマッピング検索ツールを使用して遺伝子リストに変換された。タンパク質ネットワークは、STRINGデータベース(バージョン10.5)を使用して取得された。テキストマイニングを除き、すべてのアクティブな相互作用ソースが含まれ、高い信頼性を確保するために、0.9を超える信頼性スコアが必要とされた。遺伝子オントロジー(GO)用語のエンリッチメント分析は、最初にSTRING(http://string−db.org)、TOPPGENE(toppgene.cchmc.org)およびMetascape(http://metascape.org)バイオインフォマティクスリソースを使用して生物学的プロセスに関連する用語に対して実施され、その後に手動でフィルタリングを行い、これら三つのリソースから普遍的に存在する用語を探した。TOPPGENEで取得されたGO用語が報告された。個々のマウス系統(C57BL6/J、CK−p25、P301S tau−tgおよび5XFAD)それぞれについて、分析には、差次的に制御された総ペプチドまたはS/Tホスホペプチド(上方制御および下方制御)の各プールから導かれた遺伝子セットが含まれた。
行動
オープンフィールド:マウスをオープンフィールドボックス(寸法:長さ=460mm、幅=460mm、および高さ=400mm、TSE−Systems社)に入れ、5分間、Noldus(Ethovision社)を使用して追跡し、アリーナの中心および周辺領域で過ごした時間が測定された。
高架式十字迷路法(EPM:Elevated plus maze):マウスをEPM(ANY−Maze 寸法:アーム長=35cm、幅=5cm)の中心領域に入れ、10分間、Noldusプログラムを使用して追跡した。各アームおよびEPMの中心で過ごした時間は、オフラインで算出された。
CK−p25マウスおよびP301S tauマウスの新規物体認識:マウスをオープンフィールドアリーナに入れ、アリーナの中心で過ごした時間が算出される。翌日、マウスを再び同じオープンフィールドボックスに入れる。このとき、ボックスには追加で二つの慣れた物体(新規物体であるが、次のセッションでは慣れる)が入れられ、10分間、当該物体の探索が行われた。これに続き、最後の探索の10分後に同じアリーナにマウスを戻し、二つの物体のうちの一つを新しい物体に置き換えた。マウスの行動を7分間モニタリングした。慣れた物体と新規物体の両方の探索に費やされた時間がNoldusを使用して記録され、オフラインで計算された。
けいれん感受性:マウスにピクロトキシンを注射し(腹腔内注射)、オープンフィールドアリーナに置いて、30分間、Noldusを使用して記録を行い、サイドに取り付けられたカメラからも記録された。移動した距離はNoldusでオフラインで計算され、けいれんの重大性は手動でスコア化された。
モリス水迷路:MWMは、空間学習を評価するための検査である。MWMは、視覚的な目印を頼りにオープン遊泳アリーナの周囲にある開始位置から泳ぎ、水中の脱出プラットフォームを見つけ出すものである。装置は、水道水(22℃〜24℃)と溶液を不透明にするために添加された非毒性の白色塗料で満たされた環状のプール(直径122cm)から構成された。脱出プラットフォーム(直径10cm)には、しっかり掴むための平滑な隆起したへりがあり、水面下1インチ(約2.5cm)に沈んでいた。このプールを四つの均等な四分円に分割し、N(北)、E(東)、S(南)およびW(西)とラベリングした。60秒間のトライアルについて、試験全体で無作為な順序でマウスをへりから迷路に入れた。隠れたプラットフォームを見つけるために必要とした時間(潜時)が記録された。探索試験は、最後のトレーニングトライアルの24時間後に実施され、水中のプラットフォームは取り除かれた。すべてのトレーニングおよび探索試験のトライアルは、Noldusを使用して記録された。
CK−p25マウス、P301Sマウスおよび5XFADマウスに、朝(12pmまで)にGENUSを施し、午後(3〜7pm)にMWMで検査した。このため、行動検査時間は、1日あたり4時間のみに限定された。1日あたり最小で2回、最大で4回のトライアルをトレーニング中に行うことで、厳密な暗/明サイクルを維持しながらも、すべての群にMWMを実施することを確保した。トレーニング日数に差があったが、MWMで使用されたすべてのADマウスは、同等な回数の総トレーニングトライアルを行った。
統計解析
統計解析は、SPSS、MatlabまたはPrismで実施された。サンプルサイズは予め決められていなかった。統計的有意性は、独立標本t検定、ウィルコクソン順位和検定、一元配置ANOVAまたは二元配置反復測定ANOVAを、ボンフェローニの事後分析およびクラスカルウォリス検定とともに使用して計算された。統計的有意性は、0.05で設定された。
結論
本開示の発明に関する態様は、本明細書に記載する個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法を対象とする。加えて、二つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合、本開示の本発明の範囲内に含まれる。
また、様々な発明の概念が、一つ以上の方法として具現化されてもよく、その例を提供してきた。方法の一部として行われる行為は、任意の適切な手段で順序付けられうる。したがって、行為が例示するものとは異なる順序で行われる実施形態を構築してもよく、それは、例示的実施形態に連続する行為として示す場合であっても、一部の行為を同時に行うことを含みうる。
本明細書で言及するすべての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
本明細書で定義および使用するすべての定義は、辞書定義、参照により組み込まれる文書の定義、および/または定義された用語の通常の意味を統制するものと理解されるべきである。
本明細書で使用される場合、数値および/または範囲と併せて使用されるときの「約」および「およそ」という用語は、概して、列挙された数値および/または範囲の近くの数値および/または範囲を指す。一部の例では、「約」および「およそ」という用語は、列挙された値の±10%以内を意味する場合がある(列挙された値自体を包含する)。例えば一部の例では、「約100[単位]」は、100の±10%(例えば、90〜110)以内を意味する場合がある。他の例では、「約」および「およそ」という用語は、列挙された値の±5%以内を意味する場合がある(列挙された値自体を包含する)。さらに他の例では、「約」および「およそ」という用語は、列挙された値の±1%以内を意味する場合がある(列挙された値自体を包含する)。「約」および「およそ」という用語は相互交換可能に使用され得る。
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、不定冠詞「a」および「an」は、明確にそうでないと示されない限り、「少なくとも一つ」を意味すると理解されるべきである。
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、「および/または」という語句は、結合された要素の「いずれかまたは両方」を意味し、すなわち、一部の場合には接続的に存在し、他の場合には離接的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」で挙げられる複数の要素は、同じ形式、すなわち、等位接続される要素のうちの「一つ以上」と解釈されるべきである。他の要素は、具体的に識別される要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、「および/または」節によって具体的に識別される要素以外に、随意に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「備える」などの制限のない語法と連動して使われるときに、一実施形態においては、Aのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、AとBと両方(任意選択的に他の要素を含む)などを指すことができる。
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、「または」は、上で定義した「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離するとき、「または」または「および/または」は包括的なもの、すなわち、多数の要素または要素のリスト、および随意にリストに無い追加の項目のうちの少なくとも一つを含むが、二つ以上も含むと解釈されるものとする。反対であると明確に示される用語のみ、例えば、「〜のうちの一つのみ」もしくは「〜のうちの正確に一つ」、または特許請求の範囲において使用するときの「〜からなる」は、例えば多数の要素またはリストの要素のうちの正確に一つの要素の包含とみなす。概して、本明細書で使用する場合、「または」という用語は、「いずれか」、「のうちの一つ」、「のうちの一つのみ」、または「のうちの正確に一つ」など、排他性の用語が先行するときには、排他的な選択肢(すなわち、「両方ともでなくどちらか一方」)を示すとのみ解釈されるものとする。「から基本的に成る」は、特許請求の範囲で使用する場合、特許法の分野において使用される通常の意味を有するものとする。
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、一つ以上の要素のリストに関連する「少なくとも一つ」という語句は、要素のリストの中の要素のいずれか一つ以上から選択される、少なくとも一つの要素を意味するが、要素のリスト内で具体的に列挙したありとあらゆる要素のうちの、少なくとも一つを必ずしも含むわけではなく、要素のリストのいかなる要素の組み合せも除外するものではない、と理解されるべきである。この定義はまた、「少なくとも一つ」という語句が指す、要素のリスト内で具体的に識別される以外の要素が、具体的に識別される要素に関連するかまたは関連しないかにかかわらず、任意に存在しうることを許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうち少なくとも一つ」(または、等価的に、「AまたはBのうちの少なくとも一つ」、もしくは、等価的に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも一つ」)は、一実施形態においては、Bは存在せず、任意選択的に二つ以上のAを含む、少なくとも一つのA(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態においては、Aは存在せず、任意選択的に二つ以上のBを含む、少なくとも一つのB(任意選択的にA以外の要素を含む)、また別の実施形態においては、任意選択的に二つ以上のAを含む、少なくとも一つのA、および任意選択的に二つ以上のBを含む、少なくとも一つのB(任意選択的に他の要素を含む)などを指すことができる。
特許請求の範囲、ならびに上記の明細書で、すべての移行句、例えば、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「持つ(carrying)」、「有する(having)」、「包含する(containing)」、「伴う(involving)」、「保つ(holding)」、「から構成される(composed of)」、および類似のものは制限がないと理解され、すなわち、含むがそれに限定はされないということを意味する。「から成る(consisting of)」および「から基本的に成る(consisting essentially of)」という移行句のみが、米国特許局の特許審査手続便覧、セクション2111.03に記載されている、それぞれ閉鎖的または半閉鎖的な移行句であるものとする。