JP2020530594A - 視覚モデルを考慮した眼鏡レンズの最適化 - Google Patents

視覚モデルを考慮した眼鏡レンズの最適化 Download PDF

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Abstract

本発明は、眼鏡着用者の眼のための眼鏡レンズを計算(例えば、最適化)又は評価するためにコンピュータで実施される方法において、a)眼鏡レンズ系を通して物体を観察するときに、眼鏡着用者の視覚又は平均的な眼鏡着用者の視覚に対する眼鏡レンズ系の少なくとも1つの結像特性又は収差の割り当てを行なうステップと、b)計算又は評価されるべき眼鏡レンズのための目的関数を決定又は処方するステップであって、ステップ(a)からの割り当てが評価されるようになっているステップと、c)計算又は評価されるべき眼鏡レンズを、目的関数を評価することによって計算又は評価するステップであって、目的関数が少なくとも1回評価される、ステップとを含む方法に関する。本発明は、更に、眼鏡レンズを計算又は評価するための方法を実行するようにそれぞれが構成される、眼鏡レンズを計算(例えば、最適化)又は評価するための装置、製造方法、製造装置、及び、コンピュータプログラムプロダクトに関する。

Description

開示文書である国際公開第2013/104548号パンフレットは、目を通じた光の直接的な計算で決定される波面に基づく眼鏡レンズの最適化について記載する。波面は、典型的な方法で評価されるのではなく、眼の平面上の頂点球(SPK)で評価され、したがって、眼の特性に依存する。この方法を用いると、角膜の影響だけでなく、眼の他の全ての個々の特性−例えば、前房深度又は他の幾何学的パラメータの平均母集団からの偏差−の影響も、波面を介した眼鏡レンズの最適化に直接に関与し得る。この最適化方法の基礎は、計算される波面特性(それらの高次収差(HOA)を含む)に加えて、目における波面の特定の特性に必要となり得る目標仕様及び重み付けに依存する目的関数である。
これにより、目標仕様により理解されるべきものは、理想的な場合に望まれるような完全補正のための基準波面だけでなく、むしろ、特定の偏差に関する仕様、例えば、望ましくない非点収差の大きさの程度に関する仕様でもある。実際の用途において、眼鏡レンズの最適化は、これらの目標仕様及び重み/重み付けの適切な選択によって制御され得る。
しかしながら、開示文書である国際公開第2013/104548号パンフレットは、どのタイプの目標仕様及び重み付けが適切な眼鏡レンズをもたらすかについて記載していない。しかしながら、頂点球で使用されているのと同じ目標仕様及び重み付けが最適化のために使用される場合には、更なる広範な試験を伴わなければその使用が確保され得ない、全く異なる設計形態がもたらされることが分かってきた。したがって、眼の最適化のためには、全く新しい設計形態の合理的な目標仕様及び重み付けが必要になる。頂点球での最適化に関する従来技術で明らかなように、最初の段階で合理的な目標仕様及び重み付けを確立できるようにするためには、新規で進歩的なステップが必要である。
したがって、従来技術の手段を用いると、当業者は、目における波計算を実行して、ゼロから始め、適切な目標仕様及び重み付けを発見するための新たな知識を取得するか、或いは、目標仕様及び重み付けに関する従来技術を使用するがその後にそれのみをもって頂点球に関して最適化するといういずれかの選択に直面し得る。
更に、提案された波面計算は、波面偏差の評価のための一致する基準がなければ、最良の想定し得る評価平面に関しては進展するが、これは、場合により、眼鏡を通して見たときの知覚の改善をもたらさない。
国際公開第2013/104548号パンフレット
これを背景として、本発明の目的は、従来技術の前述の欠点を克服することである。現在の視覚モデルを使用するか或いは新たな視覚モデルを確立して、これが目標仕様及び重み付けの変換に関連して最適化の目的関数にどのように組み込まれるべきかに関する規則を定めることが、更なる目的である。
本発明の第1の態様は、眼鏡着用者の眼のための眼鏡レンズを計算するために(例えば最適化するために)コンピュータで実施される方法であって、
a)眼鏡レンズ系を通して物体を観察するときの、眼鏡レンズ系の少なくとも1つの結像特性又は収差と、眼鏡着用者の視覚又は平均的な眼鏡着用者の視覚との関連付けを行なうステップと、
b)計算されるべき眼鏡レンズのための目的関数又は品質関数を決定又は処方するステップであって、ステップ(a)からの関連付けが評価されるようになっている、又は、関連付けられる視覚値に依存する、ステップと、
c)計算されるべき眼鏡レンズを、目的関数を評価することによって計算するステップであって、目的関数が少なくとも1回、好ましくは複数回評価される、ステップと、
を含む方法に関する。計算は、特に、目的関数が繰り返し最小化又は最大化される最適化方法によって行なわれる。
上記のステップa)から与えられる関連付けを使用すると、眼鏡レンズの計算又は最適化を必ずしも実行する必要なく眼鏡レンズの評価を行なうこともできる。眼鏡レンズの評価は、例えば、品質管理のために行なわれてもよい。評価されるべき眼鏡レンズは、例えば、理論上の面積値を使用して及び/又は測定された面積値を使用して表わされ又は提供されてもよい。
本発明の第2の態様は、眼鏡着用者のための眼鏡レンズを評価するためにコンピュータで実施される方法において、
a)眼鏡レンズ系を通して物体を観察するときの、眼鏡レンズ系の少なくとも1つの結像特性又は収差と、眼鏡着用者の視覚又は平均的な眼鏡着用者の視覚との関連付けを行なうステップと、
b)評価されるべき眼鏡レンズのための目的関数又は品質関数を決定又は処方するステップであって、ステップ(a)からの関連付けが評価されるようになっている、又は、関連付けられる視覚値に依存する、ステップと、
c)目的関数又は品質関数を検討することによって眼鏡レンズを評価するステップであって、目的関数又は品質関数が少なくとも1回評価される、ステップと、
を含む方法に関する。
上記のステップa)において、関連付けは、評価表面上の複数の評価位置又は評価点で与えられてもよい。上記のステップc)において、目的関数又は品質関数は、評価表面上の複数の評価位置又は評価点で評価されてもよい。目的関数の評価は、複数の評価点で計算され又は評価されるべき眼鏡レンズの少なくとも1つの結像特性又は収差の計算を含んでもよい。
従来技術に係る眼鏡レンズを最適化するための方法では、眼鏡レンズの少なくとも1つの結像特性又は収差の実際の(実)値及び対応する目標値を含む目的関数を最小化又は最大化することにより、眼鏡レンズが最適化される。少なくとも1つの結像特性又は収差は、基準波面からの波面偏差の直接定量化に相当し得る。目的関数の一例は、例えば、関数:
Figure 2020530594
であり、この場合、
i(i=1〜N)は、眼鏡レンズの評価位置を示し、
real(i)は、i番目の評価位置での実際の球面効果又は屈折誤差を示し、
real(i)は、i番目の評価位置での目標球面効果又は目標屈折誤差を示し、
Astreal(i)は、i番目の評価位置での非点収差又は非点収差誤差を示し、
Asttarget(i)は、i番目の評価位置での目標非点収差又は目標非点収差誤差を示す。
変数GR,i,GA,i,…は、最適化で使用されるそれぞれの結像特性又は収差の重みである。
眼鏡レンズの結像特性又は収差は、例えば国際公開第2015/104548号パンフレットに記載されるように、頂点球で又は眼における評価平面又は評価表面で評価されてもよい。
眼鏡レンズの評価は、上記の目的関数を使用して同様に行なわれてもよく、この場合、評価されるべき眼鏡レンズの少なくとも1つの結像特性の実際の値は、評価されるべき眼鏡レンズの少なくとも1つの評価位置で計算されて、対応する目標値と比較される。
しかしながら、それに依存する焦点深度に起因して、有効瞳孔サイズを考慮に入れないジオプターにおける波面偏差の直接定量化が、眼鏡レンズを通じた眼鏡着用者の知覚を表わして評価するための最良の想定し得る基準ではないことが認識されてきた。
本発明の上記の態様によれば、従来の最適化方法又は評価方法とは対照的に、目的関数又は品質関数において視覚(視力)を直接に考慮に入れることが提案される。目的関数又は品質関数に入る視覚は、関連付けにより、眼鏡レンズ系の少なくとも1つの結像特性又は収差に依存し、この場合、少なくとも1つの結像特性又は収差は、(例えば頂点球での又は眼における)適切な評価表面で評価されてもよい。眼鏡レンズ系は、少なくとも1つの眼鏡レンズ(例えば、屈折眼鏡の眼鏡レンズ)から成っていてもよい。眼鏡レンズ系は、例えば、眼鏡着用者の平均値又は眼鏡着用者の眼の少なくとも1つの個々のパラメータに基づいてもよいモデル眼又は眼モデルなどの付加的な構成要素を備えることが好ましい。言い換えると、少なくとも1つの結像特性又は収差と眼鏡着用者の視覚との関連付けに基づく眼鏡レンズ系は、眼鏡レンズ−眼系であってもよい。
同様に、モデル眼は、計算される(例えば、最適化される)べき眼鏡レンズの計算において又は評価されるべき眼鏡レンズの評価において考慮に入れられる使用位置の構成要素であることが好ましい。同様に、使用位置は、角膜頂点間距離(CVD)、広角傾斜、瞳孔間距離などの付加的な平均又は個別のパラメータによって特徴付けられてもよい。
少なくとも1つの結像特性又は収差ΔUs,jと眼鏡着用者又は平均的な眼鏡着用者の視覚との関連付けによって視覚Vに依存する目的関数又は品質関数の一例は、以下の構造を有してもよい。
Figure 2020530594
上記の式において、V(ΔUs,j(i))は、評価表面におけるi番目の評価点(i=1、2、3、…、N)での眼鏡レンズ系の少なくとも1つの結像特性又は収差に対する視覚の依存性関数を示す。別の方法で表現すると、V(ΔUs,j(i))は、ステップa)からの関連付けの一例を表わす。引数ΔUs,jは、一般的であり、物体から発散する光ビームに対する眼鏡レンズ系の影響又は物体から発散する光ビームと眼の網膜上に収束する基準光ビームとに対する眼鏡レンズ系の影響の差を表わす眼鏡レンズ系の任意の結像特性又は収差を示してもよい。これにより、1つ以上の結像特性又は収差が目的関数又は品質関数に入ることができるとともに1つ以上の結像特性又は収差を評価でき、この場合、下付き文字j,j≧1は、j番目の結像特性又は収差を示す。
real(ΔUs,j(i))は、関連付けと、i番目の評価点で計算される(例えば、最適化される)又は評価されるべき眼鏡レンズの少なくとも1つの結像特性の実際の値とを使用して決定される視覚を示し、また、Vtarget(ΔUs,j(i))は、視覚の対応する目標値を示す。
少なくとも1つの結像特性又は収差は、適切な評価表面で計算又は評価されてもよい。したがって、下付き文字「s」は、少なくとも1つの結像特性又は収差ΔUs,jの任意の評価表面を表わす。例えば、評価表面は、平面(評価平面)又は湾曲した(例えば球状の)表面であってもよい。評価表面は、例えば、頂点球又は眼における表面、例えば、以下の平面又は表面のうちの1つであってもよい。
角膜の背後の平面又は(例えば球状の)表面、
眼のレンズの前面、又は、眼のレンズの前面に接する平面、
眼のレンズの後面、又は、眼のレンズの後面に接する平面、
射出瞳(AP)の平面、又は、
後光学面の背面の平面(L2)。
変数
Figure 2020530594
は、結像特性ΔUs,jとの関連付けによって規定されるi番目の評価点での視覚の重み付けを示す。
これにより、既存の視覚モデル又は以下で説明する視覚モデルのいずれかを使用することができ、また、実際には、好ましくは、これらの視覚モデルを、目標仕様及び重みの変換と関連して最適化の目的関数に視覚モデルをどのように組み込むべきかに関する規則と組み合わせて使用することができる。
少なくとも1つの結像特性又は収差ΔUs,jは、例えば、二次結像特性又は収差(例えば、非点収差又は非点収差誤差、球面効果又は屈折誤差など)、高次の結像特性又は収差(HOA)(例えば、コマ収差、トレフォイル収差、球面収差など)、又は、異なる結像特性又は収差の組み合わせであってもよい。したがって、例えば、高次の結像特性又は収差(HOA)は、所定のメトリック(例えば、線形メトリック)を介して2次結像特性又は収差にマッピングされてもよい。
少なくとも1つの結像特性又は収差の計算は、波面計算又はビーム計算又は波動場計算によって、好ましくは眼鏡レンズの使用位置で行なわれてもよい。波動場計算は、波面計算又はビーム計算とは対照的に、厳密な波動光学計算を伴い、これらはいずれも幾何光学からの伝統的な用語である。
方法は以下のステップも含む。
計算又は評価されるべき眼鏡レンズ系又は眼鏡レンズの少なくとも1つの表面を通じた波面計算(ウェーブトレーシング)又はビーム計算(レイトレーシング)又は波動場計算を用いて、少なくとも1つの観察方向に関して、物体から発散する少なくとも1つの光ビームを、眼鏡レンズ系における評価表面まで計算するステップ。計算は、好ましくは、眼鏡レンズ系或いは計算又は評価されるべき眼鏡レンズの少なくとも1つの表面と(眼鏡レンズ系の構成要素としての)モデル眼の光学要素とを通じて、モデル眼の評価表面に至るまで行なわれる。
また、方法は、
モデル眼の網膜上に収束する基準光ビームとの比較で、物体から発散する光ビームの、評価表面に存在する差を計算するステップ、
計算された差を使用して少なくとも1つの結像特性又は収差を決定するステップ、
を含んでもよい。
例えば、少なくとも1つの結像特性又は収差は、計算された差を直接に定量化してもよく又は直接に表わしてもよい。また、少なくとも1つの結像特性又は収差は、計算された差の関数であってもよい。
基準光ビームは、好ましくは、球状波面(基準波面)を有する。
物体から発散する少なくとも1つの光ビームの計算が波面計算(ウェーブトレーシング)を用いて行なわれることが好ましく、評価表面では、物体から発散する光ビームの波面と網膜上に収束する基準光ビームの波面との間の差(波面差)が計算される。好ましくは、眼鏡レンズを計算又は最適化するために使用される直接的な波面偏差又はジオプターにおける波面差ではなく、それに対応する、波面偏差の評価のための基準としての最大の想定し得る視覚と比較した視覚損失である。
波面差は、物体から発散する光ビームの波面と網膜上に収束する基準光ビームの波面との輻輳行列の差によって2次まで表わされてもよい。評価表面での2つの輻輳行列の差は、差分輻輳行列に相当する。高次結像誤差が考慮に入れられる場合、これらは、適切なメトリック(例えば線形メトリック)によって差分輻輳行列にマッピングされてもよい。
本発明の第2の態様(第1の態様から独立していてもよい)によれば、視覚は、評価表面で計算される波面偏差又は波面差と直接に関連付けられず、むしろ、少なくとも1つの付加的な光学特性が最初に計算される。視覚はこの光学特性と関連付けられる。
少なくとも1つの付加的な光学特性は、幾何光角の空間における光学特性であってもよい。その結果、方法は、(ベクトルの)幾何光角及び/又は幾何光角の空間における二次形状と、計算された波面差との関連付けを含んでもよく、この場合、少なくとも1つの結像特性又は収差は、幾何光角及び/又は二次形状の少なくとも1つの成分に依存する。
(ベクトルの)幾何光角及び/又は幾何光角の空間における二次形状と波面差との関連付けは、例えば、それぞれの波面に対応するモデル眼の網膜上の分散ディスクを使用して行なわれてもよい。
特に、任意の波面(例えば、完全に補正されない非点収差波面など)の場合には、楕円(分散楕円)により近似され得る分散ディスクが網膜上に存在する。単純なオーバーラップ基準によれば、2つの物体は、それらの分散ディスク又は分散楕円が重なり合わない場合には、依然として別個のものとして認識される。他の基準も同様に可能である。分散ディスクのパラメータは、網膜に入射する波面の波面特性に、したがって、眼鏡レンズ又は眼鏡レンズ系の結像特性に依存する。
網膜上の分散ディスクの代わりに、網膜上の分散ディスクに対応する、物体における幾何光角の空間(γ空間)内の分散ディスクが好ましくは使用される。ベクトルの幾何光角 γ=(γ,γ)は、眼における任意の評価表面又は評価平面「s」での有効瞳孔の縁部上のそれぞれの固定点r=(rsx,rsy)ごとに定められてもよい。スカラーの幾何光角γは、2つの規定された主光線HS0,HS(したがって、入射瞳の中央を通る光線)間の物体側角度である。主光線HSは、それが瞳孔縁部の点r=(rsx,rsy)がマッピングされる分散ディスクの縁部ポイントに当たるという点において確立される。他の主光線HS0は、基準の役割を果たし、分散ディスクの中央に当たる。ベクトルの幾何光角の定義は、r=(rsx,rsy)が2つの成分を有することが考慮に入れられ、したがって、角度γがx成分とy成分に分解され得るという点において達成される。xyz空間内の単位ベクトルとしての2つの主光線のパラメータ化の一例は、
HS0=(0,0,1)及びHS=(sinγcosφ,sinγsinφ,cosγ)
であり、この場合、光は正のz方向に進む。ベクトルの幾何光角は、γ=(γ,γ)=(sinγ,cosφ,sinφ)として与えられる。近軸近似では、sinγ≒γ、したがって、γ=(γ,γ)=γ(cosφ,sinφ)である。
それぞれの瞳孔の縁部上の点r=r(cosφ,sinφの周りの円軌道が想像される場合(r=一定)、γ空間(ベクトルγ=(γ,γ)の空間を意味する)内のγは楕円を表わす。2つの物体は、このとき、γ空間内のそれらの分散楕円が重なり合わなければ、(単純なオーバーラップ基準に関して)個別に知覚され得る。同様に、他の基準が規定されてもよい。
二次形式(例えば、行列の形式)を使用して、γ空間内の網膜上の分散ディスクを表わしてもよい。最適化されるべき眼鏡レンズ系又は眼鏡レンズの少なくとも1つの結像特性は、二次形式の成分のうちの少なくとも1つ又は二次形式の成分の組み合わせを使用して決定されてもよい。
物体側の幾何光角の空間内で最適化されるべき眼鏡レンズ系又は眼鏡レンズの結像特性を考慮することの1つの利点は、眼鏡着用者の視覚とのより良い及びより単純な比較可能性である。更なる利点は、瞳孔直径の自動考慮である。また、幾何光角は、誤差修正と所定の瞳孔直径との結合効果を視覚に不可欠な方法で正確に統合する。
眼鏡レンズ系の少なくとも1つの結像特性又は収差と眼鏡着用者の視覚との関連付け、すなわち、関数V(ΔUs,j(i))は、測定された初期視覚及び/又は眼鏡着用者の測定された感度にパラメトリックに依存し得る。
初期視覚は、眼鏡着用者のそれぞれの眼の屈折値によって決定される効果を伴って、すなわち、眼鏡着用者の眼の誤差の最適な補正を前提として、眼鏡レンズ系を通して見たときの眼鏡着用者の視覚に対応する。別の方法で表わすと、「初期視覚」によって理解されるものは、技術用語では「Visus cum correctione」又はVCCとも称される、最良の想定し得る補正(完全補正)を前提として達成可能な視覚の値である。眼鏡着用者の感度は、眼鏡着用者が所定の誤差補正を伴うレンズを通して見ることができるという点で測定されてもよく、その後、眼鏡着用者の視覚が決定される。例えば、誤差補正は+0.5dptから+3.0dptまでであってもよく、他の値も想定し得る。
眼鏡レンズ系の少なくとも1つの結像特性又は収差と眼鏡着用者の視覚との関連付けの一例は、以下の基本機能に基づく。
Figure 2020530594
ここで:
ΔUは、眼鏡レンズ系の結像特性又は収差を示し、
パラメータγは初期視覚の値に依存し、
パラメータk、m、pは、視覚損失をΔUの関数と見なすためのパラメータ(必ずしも整数パラメータではない)である。
好ましい単位において、V(ΔU)及びΔUは、無次元であり、すなわち、ラジアンで測定される。この仮定の下、典型的パラメータ値は0.5≦k≦4.0、0.5≦m≦4.0、1.0≦p≦2.0である。
前述のように、結像特性又は収差ΔUは、好ましくは、幾何光角の空間における二次形式の成分のうちの少なくとも1つ又は成分の組み合わせに対応し、この場合、二次形式は、評価表面で計算される波面差と関連付けられる。
上記の関数の出力値Vは、現在の視覚に対応する幾何光角(ラジアン)の意味を有することが好ましい。パラメータγ0は、現在の視覚に対応する幾何光角γ(ラジアン)の値によって直接に与えられることが好ましい。
眼鏡レンズ系の少なくとも1つの結像特性と視覚との関連付けは、1つ以上の与えられた値対を使用して行なわれてもよく、この場合、各値対は、i)眼鏡レンズ系を通して見るときの眼鏡着用者の片方の眼(眼鏡レンズが計算及び最適化される眼)の視覚値、及び、ii)眼鏡レンズ系の球面及び/又は非点収差屈折力から決定される。
したがって、方法は、i)所定の球面及び/又は非点収差屈折力を有する眼鏡レンズ系を通して(例えば、一対の屈折眼鏡の眼鏡レンズを通して)見たときの眼鏡着用者の眼の視覚の値と、ii)眼鏡レンズ系の球面及び/又は非点収差屈折力と、から成る少なくとも1つの値対の検出を含んでもよい。眼鏡レンズ系の屈折力は、好ましくは、球面屈折力及び非点収差屈折力の両方に関連する。例えばメトリックを用いて球面及び/又は非点収差屈折力に対してマッピングされてもよい高次特性又は結像誤差(HOA)が随意的に考慮に入れられてもよい。
眼鏡レンズ系の所定の球面及び/又は非点収差屈折力が与えられた場合の視覚値の決定は、従来技術から知られており、例えば、ランドルト試験などの様々な試験を使用して単眼又は両眼で行なわれてもよい。1つの例において、少なくとも眼鏡着用者の眼の視覚は、眼鏡着用者の視覚の最適な補正をもたらす眼鏡レンズ系の球面及び/又は非点収差屈折力が与えられると検出される。
値対のうちの1つが与えられると、屈折力は、眼鏡着用者の片方の眼の屈折値によって与えられ得る。値対のうちの1つが与えられると、屈折力は、眼鏡着用者の片方の眼の屈折値と、球面及び/又は非点収差かすみ、つまり、眼の屈折値によって導入される更なる屈折効果とによって与えられ得る。更なる屈折効果は、球面効果、円柱効果、又は、この2つの組み合わせであってもよい。
眼の屈折値からの屈折距離、すなわち、かすみに対応する前述屈折距離は、0.5dpt〜3.0dptの値を有してもよい。他の値も同様に想定し得る。
複数の値対は、好ましくは、異なる球面及び/又は非点収差かすみが与えられた場合に検出され、また、視覚と少なくとも1つの結像特性との関連付けがそこから決定される。
前述のように、計算される(例えば最適化される)又は評価されるべき眼鏡レンズ系及び眼鏡レンズの使用位置は、少なくとも1つの結像特性又は収差のいずれが決定されるのかに基づき、モデル眼又は眼モデルを備えてもよく、この場合、モデル眼は、以下のパラメータ、すなわち、眼の長さ、屈折表面の距離及び曲率、屈折媒体の屈折率、瞳孔直径、瞳孔の位置のうちの少なくとも1つを用いて表わされる。モデル眼は、例えば、屈折異常(屈折障害)が右視力のある基本眼に重ね合わされる確立されたモデル眼であってもよい。モデル眼及び眼鏡レンズとモデル眼とから成る眼鏡レンズ系の説明は、例えばDr.Roland Enders、「Die Optik des Auges und der Sehhilfen」[「Optics of the Eye and of Vision Aids」]、OptischeFachveroffentlichungGmbH、ハイデルベルク、1995年、25ページ以降、及びDiepes、Blendwoske、「Optik und Technik der Brille」[「眼鏡の光学とエンジニアリング」]、OptischeFachveroffentlichungGmbH、ハイデルベルク、47ページ以降に含まれる。これらの出版物は、使用される技術用語に関して同様に参照されるが、それらの対応する記述は、本出願の不可欠な構成要素を表わす。
モデル眼のパラメータは、平均的なパラメータであってもよい。しかしながら、モデル眼のパラメータのうちの少なくとも1つは、眼鏡着用者で個別に測定されてもよく、及び/又は、個々の測定値から決定されてもよい。個々の測定値を使用する個々のモデル眼又は個々の眼モデルの決定は、例えば、ドイツ特許第102017000772.1号に記載されており、その対応する記述は、本出願の不可欠な構成要素を表わす。
最適化されるべき眼鏡レンズの計算又は最適化は、視覚を直接に伴う上記の目的関数の最小化又は最大化によって行なわれる。目的関数は、少なくとも1回、好ましくは複数回評価される。眼鏡レンズの表面のうちの少なくとも1つが変化されることが好ましく、また、各変化ステップにおいて、所定の使用位置に配置される眼鏡レンズの少なくとも1つの結像特性又は収差が計算される。計算された結像特性又は収差及び所定の関連付けを使用して、対応する視覚値(実際の視覚値)が決定されて所定の目標視覚値と比較されてもよい。上記のステップは、所定の最適化基準に到達するまで繰り返される。
本発明の更なる態様は、眼鏡着用者の眼のための眼鏡レンズを計算する(例えば、最適化する)ためのデバイス、それを評価するためのデバイス、及び、前述の態様及び/又は例のいずれかに係る眼鏡レンズを計算する(例えば最適化する)又は評価するための方法にしたがって眼鏡レンズを計算する(例えば最適化する)又は評価するように設計されるそれぞれの計算手段(例えば計算又は計算など)を備える眼鏡レンズを製造するためのデバイスに関する。また、眼鏡レンズを製造するためのデバイスは、計算又は最適化の結果にしたがって眼鏡レンズを処理するように設計される処理手段も備える。処理手段は、例えば、決定された最適化仕様にしたがってブランクを直接処理するためのCNC制御機械を備えてもよい。或いは、眼鏡レンズが鋳造法によって製造されてもよい。完成した眼鏡レンズは、単純な球面又は回転対称な非球面と、本発明に係る方法にしたがって及び眼鏡着用者の個々のパラメータにしたがって計算又は最適化される表面とを有する。単純な球面又は回転対称な非球面は、眼鏡レンズの前表面(物体側の表面を意味する)であることが好ましい。しかしながら、勿論、眼鏡レンズの前表面として最適化された表面を配置することが可能である。眼鏡レンズの両方の表面が最適化されてもよい。眼鏡レンズは、単視眼鏡レンズ又は累進眼鏡レンズであってよい。
眼鏡レンズを計算する(例えば、最適化する)ため、眼鏡レンズを評価するため、又は、眼鏡レンズを製造するためのデバイスは、以下の構成要素、すなわち、
−眼鏡レンズ系を通して物体を観察する際に、眼鏡レンズ系の少なくとも1つの結像特性又は収差と、眼鏡着用者又は平均的な眼鏡着用者の視覚との関連付けを行なうための視覚関連付けモジュール、
−最適化されるべき眼鏡レンズのための目的関数を決定又は処方するための目的関数仕様及び/又は決定モジュールであって、方法のステップ(a)からの関連付けが評価される、目的関数仕様及び/又は決定モジュール、
最適化されるべき眼鏡レンズを、目的関数を最小化又は最大化することによって計算又は最適化する計算モジュールであって、目的関数が少なくとも1回評価される、計算モジュール、
評価されるべき眼鏡レンズを、目的関数を評価することにより評価するための評価モジュールであって、目的関数が少なくとも1回評価される、評価モジュール、
のうちの少なくとも1つを備えてもよい。
眼鏡レンズを計算する(例えば最適化する)ため、眼鏡レンズを評価するため、又は、眼鏡レンズを製造するためのデバイスは、以下の構成要素、すなわち、
眼鏡レンズ系を通して見たときに眼鏡着用者の片方の眼の視覚値から成る少なくとも1つの値対を検出して、眼鏡レンズ系の効果を検出するための視覚検出モジュール、
少なくとも1つの値対を使用して、眼鏡レンズ系の少なくとも1つの結像特性又は収差と視覚との関連付けを決定するための視覚モデル決定モジュール、
屈折欠損又は屈折値を検出し、随意的に眼鏡着用者の少なくとも片方の眼の少なくとも1つの更なるパラメータを検出するための眼パラメータ検出モジュール、
眼鏡着用者の眼の少なくとも1つのパラメータを使用してモデル眼を決定するための眼モデル決定モジュール、
最適化されるべき眼鏡レンズの使用位置の少なくとも1つの個々のパラメータを決定するための使用位置パラメータ検出モジュール、
計算又は最適化されるべき眼鏡レンズの第1の表面及び第2の表面(開始表面)を事前に決定するための表面モデルデータベース、
最適化される又は評価されるべき眼鏡レンズ系又は眼鏡レンズの少なくとも1つの表面を通じた、適用可能な場合にはモデル眼の光学要素を通じたウェーブトレーシング又はレイトレーシング又は波動場計算を用いて、少なくとも1つの観察方向に関して、物体から発散する少なくとも1つの光ビームを、眼鏡レンズ系における評価表面に至るまで、例えば眼における評価表面まで計算するためのモジュール、
眼の網膜上に収束する基準光ビームとの比較で、物体から発散する光ビームの、評価表面に存在する差を評価するための評価モジュール、及び/又は、
計算された差を使用して少なくとも1つの結像特性又は収差を評価又は決定するための評価モジュール、
のうちの少なくとも1つを備えてもよい。
計算手段(例えば、計算又は最適化手段)及び対応する計算又は決定又は評価モジュールは、適切なインタフェースを用いて少なくとも1つの記憶装置と信号接続を成す、特に記憶装置内に記憶されるデータを読み出す及び/又は変更する、適切に構成される又はプログラムされるコンピュータ、専用ハードウェア、及び/又は、コンピュータネットワーク又はコンピュータシステム等を備えてもよい。例えば、検出手段は、グラフィカルユーザインタフェース、電子インタフェースなどによって実現されてもよい。計算又は最適化手段は、ユーザがデータを入力及び/又は変更できるようにする少なくとも1つの好ましくはインタラクティブなグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を備えてもよい。
また、本発明は、特に、プログラムコードを含む記憶媒体又はデータストリームの形態を成すコンピュータプログラムプロダクトも提供し、該コンピュータプログラムプロダクトは、コンピュータに取り込まれて実行されるときに上記の態様及び/又は例のいずれかにしたがって眼鏡レンズを計算する(例えば、最適化する)又は評価するための方法を実施するように設計される。
更に、本発明は、
上記の態様及び/又は例のいずれかに係る眼鏡レンズを計算する(例えば最適化する)方法にしたがった眼鏡レンズの計算又は最適化、及び、
そのようにして計算された(例えば最適化された)眼鏡レンズの製造、
を含む眼鏡レンズを製造するための方法を提供する。
更に、本発明は、眼鏡着用者の屈折異常の補正のための、所定の眼鏡着用者の眼の前方の眼鏡レンズの所定の平均的な又は理想的な使用位置での本発明に係る製造方法にしたがって製造される眼鏡レンズの使用を提供する。
上記の態様及び例のいずれかに係る提案された方法及びデバイスを用いると、眼鏡レンズの結像特性又は収差の評価を改善し、眼鏡レンズを通して見たときの眼鏡着用者の実際の知覚に適合させることができる。眼における計算の利点は、従来技術が頂点球でしか存在しない目標仕様及び重みを見出すという経験とも関連付けられ得る。これにより、点球での従来の目標仕様及び重みは、眼の内側で最初からではなく繰り返される。これの代わりに、頂点球での既存の目標仕様及び重みは、眼の内側の全ての望ましい評価表面又は評価平面で適切な規則により変換されることが好ましい。更に、構成規則は、頂点球における眼鏡レンズのためのいずれの既存の設計(したがって、眼鏡レンズの最適化の結果)が最適化を前提として目標仕様及び重みの適切な変換により眼の内側の所望の評価平面又は評価表面で再現され得るかにしたがって定められることが好ましい。これは正規化方法によって行なわれてもよく、該正規化方法により、例えば、開示文書である国際公開第2013/104548号パンフレットに記載される方法は、本質的に新しい設計をもたらすのではなく、むしろ、事前に確立されるべき標準値からのパラメータの偏差(眼のモデルパラメータ及び結像誤差)とだけ組み合わせてそのようにする。したがって、パラメータの変化は、設計形態の変化に直接に変換され得る。
以下では、図面を少なくとも部分的に参照して、本発明の好ましい実施形態が一例として説明される。これにより、以下が示される。
概略的な眼鏡−目系である。 視覚モデルの一例である。 視覚モデルの一例のパラメータ化の自由度である。 頂点球における眼鏡レンズの標準的な最適化の結果である。 視覚を考慮した本発明に係る眼鏡レンズの最適化の一例の結果である。
一般に、この明細書中では、太字の小文字がベクトルを示し、太字の大文字が行列(例えば(2×2)輻輳行列Sなど)を示すようになっている。イタリック体の小文字(例えばdなど)はスカラー変数を示す。
更に、太字のイタリック体の大文字は、全体として波面又は表面を示すようになっている。例えば、Sは、同様に名付けられた波面Sの輻輳行列を示し、Sだけが、Sに含まれる2次収差を除き、波面の全ての高次収差(HOA)の全体も包含する。数学的に考えると、Sは、所定の座標系に関して波面を(十分正確に)記載するために必要な全てのパラメータのセットを表わす。Sは、好ましくは、瞳孔半径を有するゼルニケ係数のセット又はテイラー級数の係数のセットを表わす。Sは、特に好ましくは、2次の波面特性を記載するための輻輳行列Sからのセット、及び、2次のものを除く残りの全ての波面特性を記載するのに役立つゼルニケ係数(瞳半径を伴う)のセット、又は、テイラー分解に係る係数のセットを表わす。同様の記述が波面の代わりに表面に適用される。
好ましくは、それは、ジオプターにおける直接的な波面偏差ではなく、むしろ、波面偏差を評価するための基準として利用/使用される最大の可能な視覚に対するそれに対応する視覚喪失である。これにより、既存の視覚モデル又は以下で説明する視覚モデルのいずれかを使用することができ、また、実際には、好ましくは、これらの視覚モデルを、目標仕様及び重みの変換と関連して最適化の目的関数に視覚モデルをどのように組み込むべきかに関する規則と組み合わせて使用することができる。
眼鏡レンズを計算する又は最適化するための方法の第1の例は、以下のステップを含んでもよい。
ステップS1:ウェーブトレーシング又はレイトレーシングを用いて、眼の光学要素を通って、眼の評価平面又は評価表面に至るまで、例えば角膜の背後まで、眼レンズの前面に至るまで、眼レンズの後面に至るまで、射出瞳APに至るまで、又は、レンズの後面L2まで、物体から発散する少なくとも1つの光ビームを計算する。
ステップS2:網膜上に収束する基準光ビームに対する光ビームの差を評価平面又は評価表面で計算する。
ステップS3:例えば網膜上の分散ディスクのサイズに起因して、基準光ビームと比較した光ビームの差を評価する。
ステップS4:視覚値をステップS3からの光ビームの評価された差と関連付ける。
ステップS5:関連付けられた視覚値に依存する目的関数を構築する。
個々のステップは、より特殊な形式でそれぞれ実施されてもよい。
ステップS1:射出瞳APに至るまで又はレンズの後面L2まで、眼の光学要素を通る波面を計算する。
ステップS2:これらの波面と球状の基準波面との比較によって差を計算し、微分波面を計算する。
ステップS3:AP/L2における微分波面に対する幾何光角(又は幾何光角の物体側空間内の楕円を描くための二次形式)の関連付けにより、基準光ビームと比較した最初の光ビームの差を評価する。
ステップS4:視覚値を二次形式と関連付け、関連付け規則は、患者の測定された出力視覚(及び測定された感度)にパラメトリックに依存する。
ステップS5:関連付けられた視覚値に依存する目的関数を構築する。
特に視覚モデルに関連する方法の更なる例は、開始点として上記のステップ4を使用する。この方法は以下のステップを含んでもよい。
ステップS1’:物体から発散する光ビームに対する光学系の影響と、光学系を通して物体を見たときの人の視覚との関連付けを行なう。
ステップS2’:眼鏡レンズを最適化するための目的関数を構築し、この場合、ステップ(a)からの関連付けが評価されるべきである。
ステップS3’:目的関数を最小化することにより眼鏡レンズを計算し、目的関数は少なくとも1回評価される。
好ましい実施形態では、ステップが改良されてもよい。
ステップS1’の場合:
光学系の効果と視覚との行なわれた関連付けは、以下から与えられる1つ以上の値対を使用して決定されてもよい。
−(例えば屈折眼鏡の眼鏡レンズの)光学系を通して見たときの人の眼の視覚値
−光学系の球面及び/又は非点収差の屈折力。
また:
−値対のうちの1つが与えられると、眼の屈折値によって屈折力が与えられてもよく、及び/又は、
−値対のうちの1つが与えられると、眼の屈折値と球面及び/又は非点収差かすみとによって屈折力が与えられてもよく、
この場合、かすみに対応する屈折距離は、0.5dpt〜3.0dptの値を有することが好ましい。
光学系の効果と視覚との関連付けは、眼モデルを使用して実施されてもよい。眼モデルは、以下のパラメータ、すなわち、眼の長さ、屈折表面の距離及び曲率、屈折媒体の屈折率、瞳孔直径、瞳孔の位置のうちの少なくとも1つを用いて表わされてもよく、この場合、眼球モデルのパラメータのうちの少なくとも1つは、好ましくは、例えばドイツ特許第102017000772.1号に記載されるように、人で個別に測定されている及び/又は個々の測定値から決定されている。
ステップS3’の場合:
目的関数を評価するため、物点から発散する光ビームは、眼の光学要素を通じて、眼の評価平面に至るまで、例えば角膜の背後まで、眼レンズの前面に至るまで、眼レンズの後面に至るまで、射出瞳APに至るまで、又は、レンズの後面L2まで、ウェーブトレーシング又はレイトレーシングを用いて、少なくとも1つの観察方向に関して決定されてもよい。
目的関数を評価するため、網膜上に収束する基準光ビームとの比較で、評価平面又は評価表面に存在する光ビームの差が計算されてもよく、この場合、計算された差は、例えば網膜上の分散ディスクのサイズにより、目的関数の評価で判断される。
図1は、モデル眼を備える眼鏡レンズ系の概略図を示すとともに、幾何学的/光学的角の決定を例示し、この場合、従来技術(例えば欧州特許第2499534号参照)に係る残留非点収差の計算が「(1)」で示され、また、微分波面及び幾何学的/光学的角の計算が「(2)」で示される。
特に、これに関しては、光ビームが球状波面を伴う物点から発散して第1の眼鏡レンズ表面まで伝搬すると仮定される。そこで、光ビームは、屈折した後、第2の眼鏡レンズ表面まで伝搬し、そこで再び屈折される。眼鏡レンズから出た光ビームは、その後、それが角膜に当たるまで眼の方向に伝搬し、そこで再び屈折される。眼の前房内で眼のレンズまで更に伝搬した後、光ビームは眼のレンズによっても屈折されて網膜まで伝搬する。
眼鏡レンズとモデル眼とから成る光学系が物体から発散する光ビームに及ぼす影響は、レイトレーシングによって又はウェーブトレーシングによって決定されてもよい。ウェーブトレーシングが行なわれることが好ましく、この場合、好ましくは、1つの光線(好ましくは眼の回転中心を通って進む主光線)及び波面の上昇高さの導関数だけが、眼鏡レンズの観測点ごとに、横座標(主光線に対して直交する)にしたがって計算される。これらの導関数は所望の次数まで考慮に入れられ、この場合、2次導関数は、波面の局所的な曲率特性を表わし、2次の結像特性又は収差と一致する。波面のより高次の導関数は、より高次の結像特性又は収差と一致する。
眼鏡レンズを通って眼の内部に至る光の計算では、波面の局所導関数がビーム経路中の適切な位置で決定され、そこで、該波面と眼の網膜上の1点に収束する基準波面とが比較される。特に、2つの波面(眼鏡レンズからくる波面及び基準波面を意味する)は、評価平面(例えば評価表面)で互いに比較される。その曲率の中心点が眼の網膜上にある球状波面が、基準波面としての機能を果たしてもよい。
頂点球SPK(SKとも称される)では、式(S)の輻輳行列S,SBG及び眼鏡レンズからの波面(SBG)が以下の形式を有する。
Figure 2020530594
この場合、パワーベクトルの非点収差成分は、
Figure 2020530594
それにより、上記の輻輳行列、又は、2次の結像特性又は収差を含むパワーベクトルは、以下のように、すなわち、直接的な2次ウェーブトレーシングにより又はメトリックを用いて2次誤差又は収差においてその後に考慮に入れられる高次収差(HOA)を含むウェーブトレーシングにより生じ得る。
波面の計算
2次ウェーブトレーシング:
簡単のため、以下では、平面L2(後レンズ表面)が評価平面と見なされる。しかしながら、L2の代わりに、眼における任意の異なる評価平面又は評価表面「s」が使用されてもよい。
波面が眼に入ると、波面が繰り返し伝搬されて屈折され、これが転送行列により表わされる。
Figure 2020530594
眼における波面を計算するために、輻輳行列SBGが以下のようにTの適用に対応して晒されなければならない。
Figure 2020530594
しかしながら、それは、基準輻輳としての機能を果たす処方Sの輻輳行列から導き出される変数ではなく、むしろ、基準輻輳行列DLRを伴う球面基準輻輳である。
従来技術のようにSBGをSと比較する、すなわち、頂点球SPK又はSKにおける基準波面と比較する代わりに、眼鏡レンズは、変換された輻輳行列SBGが基準輻輳行列DLRと比較されるという点で、球面基準輻輳行列DLR及び変換された輻輳行列SBGに基づいて最適化されてもよい。
式(5)からの二次計算は、内容に関して、国際公開第2013/104548号パンフレットの計算に対応し、式(2)では輻輳行列S’がもたらされる。
高次(2よりも大きい次数の意味)結像誤差又はHOAを含むウェーブトレーシング:
HOAを含むウェーブトレーシングは国際公開第2013/104548号パンフレットに記載されている。S’によって表わされる代わりに、計算の結果は、このとき、高次結像誤差も考慮に入れる対応する波面表示によって表わされてもよい。ゼルニケ係数が好ましくはこのために使用され、また、特に好ましくは、テイラー表示が使用され、それにより、波面の局所微分W’xx,W’xy,W’yy,W’xxx,W’xxy,W’xyy,W’yyy,W’xxxxなどが後者で直接に使用されてもよい。眼における評価表面は一般に「s」により示され、この場合、評価表面は好ましくは射出瞳又は後レンズ表面である(「s」=「AP」又は「s」=「L2」を意味する)。有効二次波面S’がメトリックによってこの波面と関連付けられてもよい。メトリックは、例えば、線形メトリックであってもよい。
微分波面の計算
二次計算
この場合、更なる手順に関し、開始点は、微分輻輳行列ΔSDによって2次で表わされてもよい差又は微分波面である。
Figure 2020530594
HOAを含む計算:
一般的な場合、波面S’と基準波面R’との差が計算される。この差は、好ましくは、輻輳行列の空間内のメトリックによってマッピングされる。
Figure 2020530594
メトリックが線形であることが好ましい場合、式(6b)の結果は、以下のようにそれがそこで設定されれば、式(6a)の結果と同じである。
S’BG=Metric(S’
LR=Metric(R’)(6c)
1つの想定し得るメトリックは、ゼルニケ係数の形式での
Figure 2020530594
の表示に関連する。例えば、瞳孔半径rを使用し、さもなければ2次のゼルニケ係数のみを使用するRMSメトリックとして知られているものが使用されてもよい。すなわち、
Figure 2020530594
このとき、パワーベクトル成分は以下のようになる。
Figure 2020530594
また、このとき、微分行列は以下によって与えられる。
Figure 2020530594
メトリックの更なる例は、欧州特許第2115527号明細書及びJ.Porter、H.Quener、J.Lin、K.Thorn及びA.Awwal、Adaptive Optics for Vision Science(Wiley 2006)において見出され得る。
光ビームと基準光ビームとの間の差の評価
眼鏡レンズ及び眼を通じた伝搬の後、波面は一般にもはや球状ではない。完全に補正されないそのような非点収差波面の場合、網膜上には、楕円(分散楕円)で近似され得る分散ディスクが存在する。
基準光ビームと比較した光ビームの差の評価は、網膜上の分散ディスクのパラメータ(例えば、サイズなど)を介して行なわれてもよい。好ましい実施形態において、差の評価は、網膜上の分散ディスクに対応する幾何光角の物体側空間内の分散ディスクのパラメータを介して行なわれる。基準光ビームと比較した光ビームの差の評価は、特に、i)幾何光角、又は、ii)評価表面での微分波面に対する幾何光角の物体側空間内の分散ディスクを表わすための2次形式の関連付けを含み得る。
幾何光角の関連付け
好ましい例では、変数ΔSDが最適化のために直接に使用されず、むしろ、最初に、更に計算されなければならない変数が、ΔSDから、すなわち、幾何光角γから算出される(図1参照)。
前述のように、非点収差の完全に補正されない波面の場合、楕円(分散楕円)で近似され得る分散ディスクが網膜上にある。網膜上の分散楕円は、物体側幾何光角の空間内の楕円に対応する。幾何光角γ=(γ,γ)は、射出瞳の縁部(a:s=“A”の場合)で、後レンズ表面上の有効瞳孔の縁部(b:s=“L”の場合)で、又は、眼における任意の評価平面“s”における有効瞳孔の縁部でそれぞれの固定点r=(rsx,rsy)ごとに指定され得る。それぞれの瞳孔の縁部における1つの点r=r(cosφ,sinφの周りで円軌道(r=const.)が想像されれば、γはγ空間内の楕円を表わす。2つの物体は、その後、それらの分散楕円がγ空間内で重なり合わなければ、(予備的かつ単純なオーバーラップ基準に関して)個別に知覚され得る。
評価表面「s」における微分波面ΔSDは、以下の相関に基づいて表わされ得る分散楕円に対応する。
γ=ΔQs(7a)
この場合
Figure 2020530594
ここで
Figure 2020530594
この場合
Figure 2020530594
...
前述の式において:
σは、射出瞳APから評価表面又は評価平面を特徴付ける(減少された、つまり、光学屈折率に対して)長さを示し、
は、眼における評価平面又は評価表面での有効瞳孔の半径を示し、
APは、眼の射出瞳の半径を示し、
τALは、後レンズ表面での有効瞳孔の半径を示す。
その後、実際の分散楕円を仮定
Figure 2020530594
を介して生成することができ、これは、二次形式が
Figure 2020530594
であるからで、
この場合、対称行列は
Figure 2020530594
ここで
ΔV=rΔQ,(9a)
は、その半軸が行列ΔWの逆固有値からの根によって与えられるγ空間内(つまり、幾何光角の空間内)の楕円を表わす。
行列ΔVは、一般に対称ではなく、したがって、対称行列ΔSD(角度(ラジアン)のΔVの単位であり、波面メトリックのジオプターではない)よりも1つ多い自由度を有する。しかしながら、第4の更なる自由度は、像の鮮明度とは関係なく、むしろぼやけの軸方向位置を回転させるにすぎないため、第4の自由度は対称化規則によって変換され得る。
このため、回転行列Rが決定され、
Figure 2020530594
これにより、行列ΔU
Figure 2020530594
は対称的であり、つまり
Figure 2020530594
がゼロに設定されなければならない。
対称行列ΔUは視力を評価するのに十分であるため、これは、又は、少なくともそこから導出される変数は、レンズを計算する又は最適化するために使用される目的関数で用いられることが好ましく、また、実際には、以下に記載されるように、直接に使用されず、むしろ、視覚値の関連付けによって使用される。
行列ΔUから導出される変数は、行列ΔUの異方性成分及び等方性成分であってもよい。これに適しているのは、ΔUの等方性部分及び異方性部分への分解、又は、ΔUの固有値を介して規定される等方性成分及び異方性成分への分解である。
Figure 2020530594
ΔUの等方性部分又は等方性成分ΔUs,isoは以下のように規定される。
Figure 2020530594
ΔUの異方性部分又は異方性成分ΔUs,anisoは以下のように規定される。
Figure 2020530594
ステップS4:視覚値と光ビームの評価された差との関連付け
光ビームの評価された差と視覚値との関連付けは、分散楕円を表わす二次形式ΔU又は二次形式から導出される変数と視覚値との関連付けを含む。
1つの例において、変数ΔUs,iso,ΔUs,anisoは、眼鏡レンズの最適化のために直接に利用されない。これの代わりに、変数ΔUs,iso,ΔUs,anisoは、所定の視覚モデルにより規定される方法でΔUs,iso,ΔUs,anisoに属する視覚を決定するために開始点としての機能を果たす。この目的のため、患者データ又は眼鏡着用者データ、特に完全な補正VAccが与えられる視覚が必要な場合がある。
視覚モデルにより理解されるものは、特に以下の特徴を有する任意の関数V(ΔU)である。
−引数ΔUは、式(11)で規定される行列、又は、少なくとも行列ΔUから導出される変数、例えばその成分の少なくとも1つ又は成分の組み合わせである。成分ΔUs,iso,ΔUs,anisoによって形成されるその組み合わせが好ましい。
−V(ΔU)はスカラー値を有し、計算値は視覚を表わす。ラジアン(したがって、幾何光角の意味で)或いは分角又は小数単位(例えば、V=0.8;1.0;1.25;1.6;2.0)で又はlogMARの単位(例えばV=−0.3;−0.2;−0.1;0.0;0.1;…)で定められることが好ましい。これにより、以下の関連付けが適用される。
表1
Figure 2020530594
適切な視覚モデルは従来技術から知られている。しかしながら、好ましくは、以下の基本関数に基づく新たな視覚モデルが提案される。
Figure 2020530594
それにより、以下が適用される。
−引数ΔUは、一般的であり、変数ΔUs,iso,ΔUs,aniso、これらの変数の組み合わせ、行列ΔUから導き出される他の変数、又は、それらの組み合わせのうちの1つであってもよい。
−パラメータγは、初期視覚に対応する幾何光角γ(ラジアン)の値によって直接に与えられる。
−パラメータk、m、pは、(必ずしも整数ではない)ΔUの関数として視力低下を表わすためのパラメータである。
−式(16)における関数の出力値Vは、現在の視覚に対応する幾何光角(ラジアン)の意味を有する。他の全ての視覚測定値(したがって、分角の幾何光角又は10進法での視覚又はlogMARの視覚)は、表1にしたがって変換されてもよい。
図2は、V(ΔUs,iso,ΔUs,aniso)における視覚モデルの一例を示す。
1次元の場合(すなわち、1つのタイプのかすみだけ、例えば焦点ぼけが存在する場合)には、式(16)からの基本関数が直接に使用されてもよい。すなわち、眼の全ての成分が回転対称である場合、ΔUs,aniso=0が当てはまり、視力低下は純粋にΔUs,isoのみの関数である。
2次元の場合には、ΔUs,iso,ΔUs,anisoから極座標に移行して、行列ΔUから導き出される以下の変数を規定することができる。
Figure 2020530594
本発明によれば、以下の単純化モデルの仮定がなされる:
a)関数γmeas(ΔUs,iso,ΔUs,aniso)は、等方性部分の代数符号とは無関係である、γmeas(−ΔUs,iso,ΔUs,aniso)=γmeas(+ΔUs,iso,ΔUs,aniso
b)関数γmeas(ΔUs,iso,ΔUs,aniso)は、異方性部分の代数符号とは無関係である、γmeas(ΔUs,iso,−ΔUs,aniso)=γmeas(ΔUs,iso,+ΔUs,aniso
c)所定のφの場合、関数γmeas(ΔUs,r,φ)は、式(16)の場合のような幾何学の関数である。
仮定c)は、例えば、以下のアプローチによって実現されてもよい。
Figure 2020530594
この場合、式(16)は、パラメータk、p、m(ただしγではない)が角度座標φの関数と見なされるという点で拡張される。
条件a)及びb)は
Figure 2020530594
を必要とし、周期πを伴う周期性を意味する。
γmeas(ΔUs,r,φ+π)=γmeas(ΔUs,r,φ)(20)
これは、φにおいて偶数であるフーリエ級数のアプローチをもたらし、項1、cos2φ、cos4φ、cos6φ、…に関し、等価な基数1、sinφ、sin2φ、sin3φ、…を代わりに使用することが都合良いことが分かってきた。これは、このとき、φ=0の場合に、最初の関数を除く実質的に全ての基本関数が消失するからである。この場合、sin2φの程度までの拡張で十分であるように思われる。したがって、例えば、以下の近似が行なわれてもよい。
k(φ)=k(1+κsinφ+κsin2φ)
p(φ)=p(1+πsinφ+πsin2φ)
m(φ)=m(1+μsinφ+μsin2φ)(21)
これにより、φ=0に関して、したがって、ΔUの純粋に等方性の部分に関しては、k,p,mがパラメータであり、また、κ,π,μが異方性部分の存在のための視覚モデルを表わす。これらのパラメータの効果が図3に示される。
図3は、m(φ)の例における式(21)からの視覚モデルのφパラメータ化の自由度を示し、この場合、mは等方性ベースφ=0の円半径であり、mμは、異方性軸の方向の偏差を表わし(ほぼ楕円、φ=90°)、また、mμは、φ=45°方向における楕円からの偏差を表わす。
これにより、視覚モデルのパラメータを自由に確立することができる又は眼鏡着用者の視覚テストへのデータ適合によって取得できる。個別に変化せず又は個別に僅かにだけ変化し、その結果、事前調査の代表的なアンサンブルに適合され得る規定されるパラメータが好ましくは特定される。このとき、残りのパラメータのみが現在の眼鏡着用者に適合される必要がある。
幾つかのパラメータが最初からゼロに等しく設定されているために全く決定される必要がない視覚モデルの構築が特に好ましい。これの1つの実施形態は、簡略化されたモデル
k(φ)=k
p(φ)=p
m(φ)=m(1+μsinφ+μsin2φ)(22)
と形式
Figure 2020530594
の多次元視覚モデルとに対応するκ=κ=π=π=0によって規定される。
この実施形態は、パラメータk,p,μ,μがデータの集まりに一度適合されるのに対して、パラメータm及びγが眼鏡着用者に個別に適合される手順と組み合わせて特に好ましい。例えば、パラメータγは、初期視覚のlogMAR値によって直接に与えられる。パラメータmは、感度によって、したがって、明確なかすみ(例えばΔSNeb=1.5dpt)が与えられた時点で視覚VNebが決定されるという点において決定されてもよい。
関連付けられた視覚値に依存する目的関数の設計
従来技術では、
Figure 2020530594
のタイプの目的関数が頂点球での最適化に関して最小化され、この場合、最初の2つの項GR,i(Rreal(i)−Rtarget(i))及びGA,i(Areal(i)−Atarget(i))が頂点球での屈折誤差及び非点収差の残差に属し、また、更なる項は、最適化されるべき頂点球の更なる想定し得る特徴の残差に対応する。変数GSPK,R,i,GSPK,A,i,GSPK,C,i,GSPK,Si,…は、頂点球での最適化で利用される重みである。
従来技術では、眼におけるウェーブトレーシング後の最適化(国際公開第2013/104548号パンフレット)に関し、項が眼における計算後の波面の対応する特徴に属するという点でのみ式(24)の場合と同じタイプの目的関数が最小化される。
Figure 2020530594
これとは対照的に、本発明の1つの態様によれば、最適化が視覚変数で直接に行なわれる。したがって、目的関数の一例は以下の構造を有する。
Figure 2020530594
好ましくは、最初の2つの残差の後に更なる項が生じない。
式(26)において、ΔSDs,real(i)は、式(7c)にしたがった変数ΔSDの実際の値を表わし、それにしたがって、眼鏡レンズがi番目の評価点で計算される。
変数Vs,iso,target(i)及びVs,aniso,target(i)は、
等方性又は異方性の寄与のためのi番目の評価点での目標視覚の値を表わす。
Figure 2020530594
及び
Figure 2020530594
は対応する重み付けである。
例1:
第1の例では、目標視覚及び重み付けのための値が自由に選択され得る。
例2:
第2の例では、重みのみが自由に選択可能であり、また、目標視覚のための値は、頂点球での最適化の経験によって既に証明されてきた目標仕様からの変換によって得られてもよい。
Figure 2020530594
この場合、ΔSDs,iso,nominal(i),ΔSDs,aniso,nominal(i)は、i番目の評価ポイントでの式(7c)にしたがった変数ΔSDの目標値を表わし、頂点球での目標仕様の関数である。
例2.1:
HOAを考慮に入れない例2.1の進展の例では、式(5)にしたがって、
Figure 2020530594
が適用され、この場合、
Figure 2020530594
は、目標仕様の選択又は目標仕様全体に属する輻輳行列である。
例2.1.2:
HOAを考慮に入れる例2.1の他の進展では、式(6)にしたがって
Figure 2020530594
が適用され、この場合、
Figure 2020530594
は、目標仕様の選択又は目標仕様全体に属する輻輳行列である。更に、
Figure 2020530594
は、選択された波面表示でそれと関連付けられる波面である。
例2.2:
例2の進展において、ΔSDs,iso,target(i),ΔSDs,aniso,target(i)は同じ関数によって与えられない
例2.2.1:
HOAを考慮に入れない例2.2の進展では、式(5)にしたがって、
Figure 2020530594
が適用され、この場合、
Figure 2020530594
は、目標仕様の独立の選択又は目標仕様全体の両方に属する輻輳行列である。
Figure 2020530594
が特に好ましく、
この場合
Figure 2020530594
は、屈折誤差又は非点収差の目標値に対応する輻輳行列である。
例2.2.2:
HOAを考慮に入れる例2.2の進展において、式(6)にしたがって、
Figure 2020530594
視覚モデルのパラメータ:
HOAを伴わない場合における変換
Figure 2020530594
及びHOAを伴う場合における変換
Figure 2020530594
は依然として以下のパラメータに依存し、すなわち、ΔS又はΔSのΔSDへの移行は、そのパラメータがベクトルAにおいて要約される眼モデルに依存し、ΔSDからΔUへの移行は、眼モデルAに依存するとともに更に入射瞳rEPに依存し、また、rEPからVへの移行は、そのパラメータがベクトルωにおいて要約される視覚モデルに依存する。好ましい視覚モデルに関しては、
Figure 2020530594
が適用され、また、HOAを伴わない純粋に球状の場合における好ましい眼モデルに関しては、
Figure 2020530594
が適用され、HOAを伴わない球状円柱の場合には、
Figure 2020530594
が適用され、また、HOAを含む一般的な場合には、
Figure 2020530594
が適用され、この場合、(M,J)は主観的な分類のパワーベクトルであり、Akkは適応である。
上記の式において、
Cは、高次を含む角膜データセットを示し、
は、高次を含む前レンズ表面のためのデータセットを示し、
は、高次を含む後レンズ表面のためのデータセットを示す。
それによって使用される用語は、刊行物である国際公開第2013/104548号パンフレットの用語に対応する。
更に、平均母集団値によって規定されることが好ましいこれらのモデルの標準母集団が与えられる。パラメータの標準値は、上付き文字「0」によって特徴付けられる。
記号
Figure 2020530594
は、標準的な入射瞳を表わし、標準的な視覚モデルに関しては、
Figure 2020530594
が適用され、HOAを伴わない純粋に球状の場合における好ましい標準的な眼モデルに関しては、
Figure 2020530594
が適用され、HOAを伴わない球状円柱の場合には、
Figure 2020530594
が適用され、HOAを含む一般的な場合には、
Figure 2020530594
が適用され、この場合、標準的なHOAを伴う屈折異常M,J,J45と関連付けられる波面Wは、
Figure 2020530594
によって与えられる。
現在の計算に関し、視覚Vは個々のパラメータを用いて実行されることが好ましく、一方、目標視覚の計算は標準パラメータを使用して実行される。パラメータのサブセットのみが既知である場合(例えば、眼モデルのパラメータが個別に存在するが、視覚モデルのパラメータが存在しないため)、不明なパラメータも現在の計算で標準値に置き換えられることが好ましい。
例3:
特に好ましい例では、重みも目標仕様も、自由に選択できず、むしろ、頂点球に対する最適化で既に実験的に証明されている重みと目標仕様とからの変換によって得られ得る。
目標仕様は、上記の実施形態2.1、2..1、…、2.2.2と併せて決定されてもよい。重みに関して、想定し得る実施形態は、どのモデルパラメータがどの変換で使用されるかで異なる。式(35)又は式(36)からの関数は、以下のように示されてもよい。
ΔSD(ΔSBG,A)
ΔU(ΔSD,A,rEP
V(ΔU,ω)(42)
全てのパラメータが標準パラメータに対応する(
Figure 2020530594
)眼鏡着用者の場合には、式(26)の目的関数Fsによる最適化が従来技術にしたがった式(24)からの目的関数FSPKによる最適化と同じ眼鏡レンズをもたらすことが規定される。これにより、従来技術に関する改善が、それらの標準値からのパラメータの偏差によって具体的に制御され得ることが確保される。
本発明の1つの実施形態において、最適化結果の均一性は、標準値の場合に、目的関数Fからの各項が目的関数FSPKからの対応する項に等しいという点で確保される。
1つの実施形態では、これが規定
Figure 2020530594
によって確保され、これは重みに関して
Figure 2020530594
を意味する。
更に好ましい実施形態では、これが規定
Figure 2020530594
によって確保され、これは重みに関して
Figure 2020530594
を意味する。
本発明に係る手順の1つの利点は、目的関数
Figure 2020530594
が標準値に関してFSPKまで減少、一方、非標準値に関しては、目的関数が、所定のパラメータ(例えば視覚モデル)に関して利点を引き起こす方法で、眼鏡レンズの収差が異なって分布する変動をもたらす。
図4は、球面Sph=−4.25dpt、円柱Cyl=0dpt、及び、加入度Add=2.5dptの処方に関して頂点球(SPK)での眼鏡レンズの標準的な最適化の結果を示す。図4aは非点収差(Asti)の分布を示し、図4bは視覚の分布を示し、また、図4cは、眼鏡レンズの前表面上の主線に沿う屈折誤差(破線)及び非点収差(実線)の曲線を示す。眼鏡レンズは、角膜、HOA、及び、視覚モデルのための標準値:初期視覚=1.25(10進)で最適化され、一方、1.3dptを伴うかすみが与えられた従来技術にしたがって頂点球で視覚=0.97のみが最適化される。
図5は、眼の計算と、標準から逸脱した視覚モデルのパラメータとを伴う、つまり初期視覚が不十分な眼鏡レンズの最適化の結果を示す。図5aは非点収差(Asti)の分布を示し、図5bは視覚の分布を示し、また、図5cは、眼鏡レンズの前表面上の主線に沿う屈折誤差(破線)及び非点収差(実線)の曲線を示す。
Sph=−4.25dpt、Cyl=0dpt、及びAdd=2.5dptを有する図4に示される眼鏡レンズが逸脱する視覚データを有する眼鏡着用者(一方で、1.3dptを伴うかすみが与えられた初期視覚1.00(10進数)、僅か0.9の視覚)に関して最適化される場合には、図5に示される結果が生じる。式(45)における適合された重み係数の結果として眼鏡レンズが周辺非点収差を得ることは明らかである。眼鏡レンズでは見やすいゾーンは僅かに小さくなる(ただし、初期視覚が低い眼鏡レンズにおいては深刻な欠点を与えない)が、この利点は、僅かな周辺非点収差とそれに関連する少ない揺れの影響とに起因して支配的である。
EP 眼の入射瞳
AP 眼の射出瞳
SK 頂点球
e 角膜頂点距離
ここでは一般的に、ゼルニケ係数を介した記述が与えられる基準半径としてのみ使用される
瞳孔半径
分散ディスクの半径
LR 射出瞳からの後レンズ表面の距離
AR 網膜からの後レンズ表面の距離

Claims (16)

  1. 眼鏡着用者の眼のための眼鏡レンズを計算又は評価するためにコンピュータで実施される方法であって、
    a)眼鏡レンズ系を通して物体を観察するときの、前記眼鏡レンズ系の少なくとも1つの結像特性又は収差と、眼鏡着用者の視覚又は平均的な眼鏡着用者の視覚との関連付けを行なうステップと、
    b)計算又は評価されるべき前記眼鏡レンズのための目的関数を決定又は処方するステップであって、前記ステップ(a)からの前記関連付けが評価されるようになっているステップと、
    c)計算又は評価されるべき前記眼鏡レンズを、前記目的関数を評価することによって計算又は評価するステップであって、前記目的関数が少なくとも1回評価される、ステップと、
    を含む、方法。
  2. 前記計算は、前記目的関数を最小化又は最大化することによる前記眼鏡レンズの最適化を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記方法は、
    計算又は評価されるべき前記眼鏡レンズ系及び/又は前記眼鏡レンズを通じたウェーブトレーシング、レイトレーシング、又は、波動場計算を用いて、少なくとも1つの観察方向に関して、物体から発散する少なくとも1つの光ビームを、前記眼鏡レンズ系における評価表面まで計算するステップも含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記方法は、
    モデル眼の網膜上に収束する基準光ビームとの比較で、物体から発散する光ビームの、評価表面に存在する差を計算するステップ、
    計算された差を使用して少なくとも1つの結像特性又は収差を決定するステップ、
    も含む、請求項3に記載の方法。
  5. 物体から発散する少なくとも1つの光ビームの計算がウェーブトレーシングを用いて行なわれ、前記評価表面に存在する差を計算する前記ステップは、物体から発散する光ビームの波面と網膜上に収束する基準光ビームの波面との間の波面差の計算を含み、前記波面差が前記評価表面で計算される、請求項3又は4に記載の方法。
  6. 幾何学的/光学的角及び/又は幾何学的/光学的角の空間における二次形式と、計算されるべき前記波面差との関連付けも含み、前記少なくとも1つの結像特性又は収差は、前記幾何学的/光学的角及び/又は前記二次形式の少なくとも1つの成分に依存する、請求項5に記載の方法。
  7. 前記眼鏡レンズ系の前記少なくとも1つの結像特性又は収差と眼鏡着用者の視覚との前記関連付けは、測定された初期視覚及び/又は測定された眼鏡着用者の感度にパラメトリックに依存し、眼鏡着用者の測定された感度は、特に、所定の不完全な補正を前提として測定された眼鏡着用者の視覚に対応する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記眼鏡レンズ系の前記少なくとも1つの結像特性又は収差と視覚との前記関連付けは、
    前記眼鏡レンズ系を通して見たときの眼鏡着用者の片方の眼の視覚値、及び、
    前記眼鏡レンズ系の球面及び/又は非点収差屈折力、
    から与えられる1つ以上の値対を使用して決定される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記値対のうちの1つが与えられると、前記屈折力は、眼鏡着用者の片方の眼の屈折値によって与えられ、
    前記値対のうちの1つが与えられると、前記屈折力は、眼鏡着用者の片方の眼の屈折値と、球面及び/又は非点収差かすみと、によって与えられる、請求項8に記載の方法。
  10. 前記かすみに対応する、モデル眼の屈折値からの屈折間隔が、0.5dpt〜3.0dptの値を有する、請求項9に記載の方法。
  11. 前記眼鏡レンズ系が眼鏡レンズ及びモデル眼を備え、前記モデル眼は、以下のパラメータ、
    眼の長さ、屈折表面の分離及び曲率、屈折媒体の屈折率、瞳孔直径、瞳孔の位置、
    のうちの少なくとも1つを用いて表わされる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記モデル眼のパラメータのうちの少なくとも1つは、眼鏡着用者において個別に測定されている、及び/又は、個々の測定値から決定される、請求項11に記載の方法。
  13. 請求項1から12のいずれか一項に記載の眼鏡レンズを計算又は評価するための方法にしたがって眼鏡レンズを計算又は評価するように構成される計算手段を備える、眼鏡着用者のための眼鏡レンズを計算又は評価するための装置。
  14. コンピュータに取り込まれて実行されるときに請求項1から12のいずれか一項に記載の眼鏡レンズを計算又は評価するための方法を実施するように設計及び構成されるプログラムコードを含むコンピュータプログラムプロダクト。
  15. 眼鏡レンズを製造するための方法であって、
    請求項1から12のいずれか一項に記載の眼鏡レンズを計算するための方法にしたがって眼鏡レンズを計算するステップと、
    このようにして計算された眼鏡を製造するステップと、
    を含む方法。
  16. 眼鏡レンズを製造するための装置であって、
    請求項1から12のいずれか一項に記載の眼鏡レンズを計算するための方法にしたがって前記眼鏡レンズを計算するように設計される計算又は最適化手段と、
    計算の結果にしたがって前記眼鏡レンズを処理するように設計される処理手段と、
    を含む装置。
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