JP2020524688A - 第viii因子亜種の精製 - Google Patents

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Abstract

本発明は、第VIII因子(FVIII)亜種を、FVIIIを含む組成物から精製するための方法であって、アニオン交換クロマトグラフィーステップ、サイズ排除クロマトグラフィーステップ、および濃縮ステップを含む方法に関する。本発明は、精製されたFVIII亜種を含む組成物にも関する。特に、第VIII因子を含む組成物から第VIII因子亜種を精製するための方法を開発するための取り組みにおいて、本発明者らは、2つのクロマトグラフィーステップ、すなわち、アニオン交換クロマトグラフィーステップおよびサイズ排除クロマトグラフィーステップ、その後、別のアニオン交換クロマトグラフィーステップであってよい濃縮ステップを使用することにより、前記第VIII因子亜種を高い純度および高濃度で含む組成物がもたらされることを見出した。

Description

発明の分野
本発明は、第VIII因子(FVIII)亜種を、FVIIIを含む組成物から精製するための方法であって、アニオン交換クロマトグラフィーステップ、サイズ排除クロマトグラフィーステップ、および濃縮ステップを含む方法に関する。本発明は、精製されたFVIII亜種を含む組成物にも関する。
背景
止血は、傷害または組織損傷が生じた後の失血を止めるための全ての反応を包含するプロセスである。止血は以下の3つの主要なステップを伴う:
1.血管収縮。これは、血流を減少させ、それにより、急性失血を減少させるための、周囲の筋線維の収縮による罹患血管の狭小化を意味する。
2.損傷を受けた血管壁を一時的に塞ぐための血小板血栓の形成。これは、傷害後の最初の1分以内に起こり、下にある結合組織のコラーゲンとのフォン・ヴィルブランド因子により媒介される接触に主に起因する(Clemetson, 2012)。
3.凝固。これは、血液凝固因子の活性化、および最終的に、トロンビンの活性化、フィブリンの形成、ならびにそれによる血栓安定化である。活性化は、カスケード様、増幅様式で起こり、それにより、下流に続く凝固因子のそれぞれの活性が増強される。
血液凝固因子は、わずかな例外を除いて、主にセリンプロテアーゼである。これらは、FVIIIおよびFVであり、補助因子として作用し、酵素的機能は示さない。血液凝固因子は、一般に、大文字のF、その後にローマ数字、例えば、FVIIと名付けられている。血液凝固因子が活性化されると、多くの場合、不活性チモーゲンから活性セリンプロテアーゼへの変換を示すために、さらに小文字の「a」を用い、例えば、FVIIaと示される。凝固カスケード自体は、トロンビン活性化の基本的なステップで交わる2つの異なる経路に分けることができる。
組織因子経路は、外因系経路としても公知であり、内皮下組織細胞の表面上に位置する47kDaの膜貫通タンパク質である組織因子への曝露で開始される。組織が傷害を受けると、因子FVIIが組織因子と複合体を形成し、それにより活性化される。この複合体は、外因性テナーゼ複合体とも称され、これにより今度はそれぞれ因子FIXが活性化されてFIXaになり、FXが活性化されてFXaになる。第2の経路は接触活性化経路または内因系経路と称され、血栓形成においては軽微な役割しか果たさない。接触活性化経路は、最初に因子FXII、FXIおよびFIXを必要とする。活性な因子FIXaは、その活性な補助因子FVIIIa、カルシウムイオンおよびリン脂質と、いわゆる内因性テナーゼ複合体を形成する。テナーゼ複合体は、因子FXを活性化してFXaにすることができる(概要に関しては図1を参照されたい)。
組織因子経路または接触活性化経路のいずれかによって活性化される因子FXaは、FVを活性化してFVaにする。因子FXaおよびFVaの両方がカルシウムイオンと共に補助因子としてプロトロンビンに作用してトロンビンを形成する。組織因子経路と接触活性化経路がこの時点で交わる。この最初の相ではほんの少量のトロンビンが形成され、十分なフィブリノーゲンをフィブリンに変換して安定なフィブリン塊を形成することができるわけではない。しかし、トロンビンはフィードフォワードループの一部であり、それにより、それ自体の形成を触媒する。トロンビンは、FV、FXIを活性化し、血流中を不活性複合体として循環しているvWFからFVIIIを遊離させる。それにより、FVIIIが活性化されてFVIIIaになる。前述の通り、FXIaはFIXを活性化し、それがFVIIIaおよびカルシウムイオンと共に内因性テナーゼ複合体を形成する。テナーゼ複合体は大量のFXを活性化し、それにより、さらに多くのトロンビンの生成が導かれる。トロンビンは、凝固の重要な目的である、未熟な血餅においてそれを安定化し、強化するためのフィブリノーゲンのフィブリンへの変換のために必要である。さらに、トロンビンは、FXIIIを活性化して、血餅内のフィブリンの架橋結合に関与するFXIIIaにする。
血液凝固第VIII因子は、最も大きな血液凝固因子の1つである。ネイティブな単鎖FVIIIは、通常、2332アミノ酸を含有し、その分子量は、大まかに300kDaである(ExPASy, 2016)。図2Aに示されている通り、FVIIIは6つのドメインで構成され、これらのドメインはA1−A2−B−A3−C1−C2と称される。
ネイティブな血液凝固FVIIIは、肝細胞、腎臓細胞、内皮細胞およびリンパ組織において1つの単一のポリペプチド鎖として合成される。細胞内フューリンプロテアーゼの影響下で、FVIIIは、2つの鎖、重鎖1つと軽鎖1つに切断される。単鎖FVIII全体を通して異なる位置が利用可能であり、そこにフューリンプロテアーゼが付着し、それを切断することができる。その結果、それぞれが重鎖1つと軽鎖1つを含む、ある特定の数の不均一な活性FVIII亜種がもたらされる。重鎖および軽鎖の長さは、Bドメイン短縮の程度に応じて変動する。Bドメインがない軽鎖は、ドメインA3−C1−C2からなり、一方、伸長型軽鎖はBドメインの画分をなお含有する。軽鎖バリアントの分子量は、それぞれ、標準軽鎖については80kDaであり、伸長型軽鎖については120kDaである。FVIII重鎖は、Bドメインの主要な画分がなお付着している全長バリアント(180kDa)、ならびに、Bドメインの量が減少している短縮型バリアント(150kDaおよび110kDa)、およびBドメインを全く含まないBドメイン枯渇重鎖(90kDa)として出現し得る。ドメインA1およびA2は、記載されている重鎖バリアントのそれぞれの一部である。
FVIIIは、分泌された後、大きな多量体糖タンパク質であるvWFと非共有結合により結合した不活性型として血流中を循環する。vWF結合性部位は、80kDa軽鎖のN末端付近に位置する高度に酸性の領域である(図2Aにおいてドメインの呼称の間の色付けされていない空間として示されている)(OBrien and Tuddenham, 1997)。トロンビンによってこの酸性領域が取り除かれた後、FVIIIがvWFから遊離する。2つの追加的な酸性領域が、それぞれドメインA1とA2の間、およびA2とBの間に位置する。トロンビンによりこれらの酸性領域の切断も引き起こされ、それにより、ドメインA1、A2およびBが分離される。次いで、FVIIIの活性型が、ドメインA1、A2および軽鎖A3−C1−C2を含むヘテロ三量体分子として形成される − Bドメインは活性FVIII分子の一部ではない。活性FVIII分子は、活性なプロテインCによるA2ドメインの切断によって不活化される。不活化されたFVIIIは血流から急速に一掃される。
各Aドメインは、およそ330アミノ酸を含有し、2つの高度に保存されたβバレルを形成する。重鎖と軽鎖がドメインA1およびA3に結合した二価金属イオンを介して接続している。ドメインA2は、特異的なFIXa結合性部位を含有する。不活性FXの結合性部位は、ドメインA1に位置する。したがって、活性FVIIIaは、FIXaとFXのメディエーターとして作用し得る。FVIIIa自体は酵素活性を有さない。Bドメインは、全てのFVIIIドメインの中で最も大きい。Bドメインは、高度にグリコシル化されており、細胞内プロセシングの間にフューリンプロテアーゼによって少なくとも部分的に取り除かれる。Bドメインは、FVIIIの細胞内輸送、標的化および分泌において役割を果たすと思われる。AドメインおよびCドメインは球状構造を形成するが、Bドメインは直鎖構造として大部分がアンフォールディングされたままである。Bドメインはまた、その高度に極性のグリコシル化およびシャペロンとの相互作用に起因して、細胞内凝集体の形成の防止において主要な役割を果たすと思われる(Pipe et al., 1998)。FVIIIにはCドメインが2つ存在し、それぞれが、およそ150〜160アミノ酸を含有する。これらはどちらもFVIII単鎖のC末端に存在する。C2ドメインの一部は疎水性領域を形成し、これは、リン脂質結合性部位として作用し、血液凝固の間のテナーゼ複合体の形成のために重要である(Mazurkiewicz-Pisarek et al., 2016)。C1ドメインは、vWFとの結合強度に影響を及ぼすと思われる(Liu et al., 2000)。
全体として、ヒト第VIII因子(FVIII)は、第X因子の第Xa因子への変換において第IXa因子の補助因子としての機能を果たすことによって血液凝固カスケードにおいて重要な役割を果たす血漿糖タンパク質である(Toole et al., 1984、Vehar et al., 1984)。FVIIIは、ドメイン構造NH−A1−a1−A2−a2−B−a3−A3−C1−C2−COOHを含む大きな単鎖タンパク質(2332アミノ酸)として肝臓類洞細胞によって主に産生される(Do et al., 1999)。Bドメインの変動する細胞内プロセシングおよび細胞外プロセシングの結果、血漿中を循環するヘテロ二量体の分子種の混合物が生じる。したがって、FVIIIは、一定のサイズの軽鎖(LC)(a3−A3−C1−C2)、および、A1−a1−A2−a2ドメインで最小に構成されるが、隣接するBドメインの一部または全部の存在に起因してサイズが変動する重鎖(HC)を含有する(Jankowski et al, 2007)(図2B)。HCとLCは、二価金属イオンを必要とする非共有結合性の連結によって会合している(Kaufman et al., 1988、Fay et al., 2006)。FVIIIは、フォン・ヴィルブランド因子(vWF)と複合体を形成して循環している(Krishnaswamy et al., 2015、Pipe et al., 2016)。FVIIIは、トロンビンにより、HCおよびLCの両方が特異的に切断されることによってその活性型(FVIIIa)に変換される(Lenting et al., 1998)。このタンパク質分解プロセスの間にBドメインは完全に取り除かれる(Myles et al., 2002)。
FVIII Bドメインは、他の公知のタンパク質とアミノ酸相同性を有さず、重度にグリコシル化されており、また、凝血促進活性には必要ない(Fay et al., 2006、Toole et al., 1986)。しかし、FVIII Bドメインは、S.W. Pipe(Pipe et al., 2009)によって詳細に検討されている通り、FVIIIの生活環全体を通して機能的影響を有することが示されている。Bドメインは、シャペロンと相互作用して正しいタンパク質フォールディングを補助すること(Pipe et al., 1998)、および、カーゴ特異的選別受容体と主に炭水化物部分を介して相互作用して分泌効率を上昇させること(Pipe et al., 2005、Zhang et al., 2005)により、FVIIIの細胞内プロセシングおよび輸送において主要な役割を果たし得る。さらに、Bドメインはおそらく、早すぎるタンパク質分解を防止し(Khrenov et al., 2006)、活性化された血小板に対する不活性FVIIIの親和性を低下させ(Li et al., 1997)、したがって、循環FVIIIを保護する。Bドメインは、溶液中の全体的なFVIII二次構造にはほとんど影響を及ぼさない(Grushin et al., 2014)。BDD−rFVIIIの三次構造が唯一入手可能なことから(Shen et al., 2008、Ngo et al., 2008)、Bドメインの結晶化の難しさが示される。最近、Bドメインは低Ca2+濃度下でFVIII分子のコアと密接に会合することが示されたので、非活性化条件下でのBドメインの安定化機能が提唱された(Bonazza et al., 2015)。
出血性障害は、傷害、外傷または外科手術後の血餅形成のプロセスにおけるあらゆる機能不良と定義される。血液凝固カスケードのあらゆる成分、すなわち、血液凝固因子、または一過性血小板血栓形成などの関連プロセスが影響を受ける可能性がある。全ての出血性障害で、共通して、血餅形成が実現されないかまたは部分的にのみ実現し、それにより、自然および/または拡張出血事象が導かれる。これらの疾患は、遺伝性の場合もあり、例えば薬の使用によるまたは他の疾患による後天性の場合もある。出血性障害の数例を以下に示す。
1.フォン・ヴィルブランド病は、フォン・ヴィルブランド因子の欠乏によって引き起こされる。結果として、vWFによって媒介される血小板接着が適正に働かない。
2.血友病Aは、血液凝固第VIII因子欠乏症に起因して生じる。一過性血小板接着および凝固の開始期は機能的であるが、凝固の伝播期における大規模トロンビン形成が進行できない。
3.血友病Bは、第IX因子欠乏症であり、血友病Aと同様の症状が生じる。内因性テナーゼ複合体を形成することができず、それにより、因子FXが大部分不活性のままになり、その結果、トロンビン活性化が非効率的になり、フィブリン生成が不十分になる。
血友病Aは、凝固FVIII欠乏によって引き起こされる遺伝性出血性障害である。影響を受けるF8A遺伝子はX染色体上に位置する。したがって、血友病Aは、男性生殖細胞系列に主に影響を及ぼす伴性、劣性疾患である。最も一般的な原因は、相同組換えの結果としてのエクソン1〜22の転座を伴う大きな逆位である(Mazurkiewicz-Pisarek et al., 2016)。血友病Aの突発の他の理由は、点突然変異、ならびに一般的ではないが観察される小さな欠失、挿入および逆位である。結果として、FVIIIタンパク質が全く発現されないか、またはタンパク質発現により、非機能的タンパク質が導かれる。傷害の場合、vWFによって媒介される、基礎をなす結合組織への血小板の接着を意味する一次止血が、適正に機能する。機能的FVIIIが存在しないことが、血液凝固カスケードの伝播期の間の問題を引き起こす最初の原因である。FIXa、FVIIIa、カルシウムイオンおよびリン脂質を含む内因性テナーゼ複合体を形成することができず、したがって、それが主に関与する因子FXのFXaへの活性化を行うことができない。その結果、フィブリノーゲン切断に必要な活性なトロンビンが欠如する。血餅を強化する水不溶性フィブリン分子が形成されず、したがって、血餅が非常に不安定になり、破壊されやすくなる。全体として、FVIIIの欠損または欠乏の結果、最も一般的な重症出血性障害である血友病Aが生じる(Mannucci et al., 2004)。
血友病Aは、血液中に存在する機能的な因子FVIIIの量によって分類される、3つの重症度の形態に分けられる。機能的FVIIIの量は、その活性によって定義され、これは、二段階凝固アッセイによって、またはより好ましくは発色アッセイによって決定することができる。発色アッセイの基本原理を以下に記載する。第VIII因子活性が非血友病A患者におけるFVIII活性の5〜40%に対応する5〜40IU/dLである患者は、一般に、軽症型血友病A患者とみなされる。自然出血事象はほとんどないが、外科手術後の出血はごく一般的である。中等症型血友病Aは、FVIII活性が1〜5IU/dL(正常の1〜5%)であることによって定義される。自然出血は低頻度で起こり、関節出血が時々生じるが、全ての中等症型患者が影響を受けるわけではない。重症型血友病A患者は、1IU/dL未満の機能的FVIII(正常の<1%)を示す。これらの患者では、身体活動中の自然筋肉内出血および関節内出血が生じる。再発する関節出血により、炎症が導かれる恐れがあり、さらにその結果として関節症および機能障害が導かれる恐れがある(Valentino, 2010)。
血友病Aの患者の、健康を脅かし、生活の質を低下させる疾患の増悪および関連する結果を防止するために、有効な治療の利用をもたらすことが必要である。一般に使用される薬物、ならびに、新しく開発段階にある薬物のいくつかの例を以下に示す。
欠乏した血液凝固因子、例えばFVIIIの投与は、補充療法(replacement or substitution therapy)と称される。補充療法は、予防のため、および急性出血の場合にオンデマンド治療として使用される。予防は、疾患に関連する関節破壊を防止するために、できるだけ早く開始すべきである。2つの異なる群の補充薬が存在する。血漿由来FVIIIを大きな血漿プールから分離し、その後、凍結乾燥させ、それにより、濃縮させる。しかし、少なくとも理論的には、これらの薬剤から生じるウイルスまたはプリオンなどの感染因子のリスクがある。組換えFVIIIは、哺乳動物細胞株に由来し、哺乳動物細胞株において産生され、また、ヒト血漿と接触していないので、はるかに安全であると考えられている。抗血友病因子FVIIIの供給源にかかわらず、幾分短い半減期およびこれらの薬物に対する抗体の発生という主要な欠点が残っている。血液中のFVIIIの典型的な半減期は、およそ8〜12時間であり、これにより、1週間当たり2〜3回という極めて頻繁な投与が必要になる。別の不都合は、免疫応答を急速に開始する抗体が発生すること、およびそれによる補充の低下である。
新しい手法は、半減期の増大を目的とするものである。FVIIIにポリエチレングリコールポリマーを付加すること、またはFVIIIをヒトアルブミンもしくはIgGのFc領域などの半減期がより長いタンパク質と融合することにより、半減期の増大が導かれたが、この改善は、ネイティブな因子FVIIIと比較して平均でたった1.5倍であった(Peyvandi et al., 2016)。
上記の通り、組換えタンパク質技術により、タンパク質補充療法によって血友病Aを処置するための組換えFVIII(rFVIII)製品の開発および生産が導かれた。これらの製品は、主に、Bドメインが存在するかしないかによって互いと区別され、それぞれ全長(FL−)rFVIIIおよびBドメイン欠失(BDD−)rFVIIIと称される(Jankowski et al., 2007、D'Amici et al., 2010、Thim et al., 2010、Peters et al., 2013、Kannicht et al., 2013)。
タンパク質治療薬であるFVIIIは、他のタンパク質に基づく治療薬と同じリスク、特に、製造、貯蔵および診療所における取扱いの間に凝集する傾向にさらされる(Joubert et al., 2011、Roberts et al., 2014)。臨床の場におけるタンパク質治療薬に関して、凝集体が存在することにより、患者において、治療の有効性に影響を及ぼし得る望ましくない免疫応答が誘導される可能性があることが実証されている(Moussa et al., 2016、Hermeling et al., 2003、van Beers et al., 2010、Barnard et al., 2013、Robbins et al., 1987a、Robbins et al., 1987b、Maislos et al., 1986、Ahmadi et al., 2015、Joubert et al., 2012)。
非補充療法は、異なる戦略に従う。以下の2つの手法は、失われた凝固因子を補充するのではなく、止血を改善しようとするものである。組織因子経路インヒビター(TFPI)を標的とするモノクローナル抗体によりTFPIの阻害効果が低下し、それにより、組織因子経路が活性な状態に維持される。第2の戦略では、FIXaおよびFXの両方に結合し、それにより、FVIIIaの補助因子の役割を模倣することができる二重特異性抗体を適用することにより、FVIIIの非存在を回避する。FIXa−二重特異性抗体−FXで構成される人工テナーゼ複合体を形成し、因子FXを活性化してFXaにすることができる。完全に異なる手法は遺伝子治療である。遺伝子治療は、重症度の持続的な低下を目的とするので、予防的というよりも治癒的である。非機能的F8遺伝子を置き換え、機能的な血液凝固FVIIIの発現を可能にするために、機能的なF8遺伝子を肝細胞−FVIII産生の部位に送達し、組み込むためにウイルスベクターが使用される。
組換えFVIII製品であるADVATEは、血友病A治療のために最も広範囲にわたって研究され、最も一般的に使用されており、副作用および有害事象の発生率が低い補充薬の1つである(FDA Approval 2003に従う)。したがって、ADVATEは、安全かつ効率的な薬剤であると考えられる。
哺乳動物細胞培養物において産生される組換え抗血友病FVIIIの、血漿由来ヒトFVIIIに対する類似性を組成の観点でさらに調査するため、および主要な亜種全ての性質ならびに挙動を特徴付けるためには、適切な量の各FVIII亜種を十分な純度で生成することが必要である。これらの精製されたFVIII亜種の1つもしくは複数、またはこれらの混合物を治療に使用することもできる。
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したがって、本発明は、クロマトグラフィーステップに基づく精製戦略を提供する。精製戦略は、以下が可能なものであることが好ましい:
1.十分な量の各FVIII亜種をもたらすこと。
2.最終製剤中の十分なFVIII亜種タンパク質濃度をもたらすこと。
3.例えば、その後の免疫学的研究において信頼できる結果をもたらすことができるように、不純物とみなされる他のFVIII亜種の量が十分に低い最終製剤をもたらすこと。最終生成物は、無菌かつ生物学的夾雑物を含まないものであるべきである。
4.最終的なFVIII亜種画分は、定義されたマトリックス、例えば、定義されたpHで塩ならびに界面活性物質を含めたバッファー成分を含有するマトリックス中に提供される。
5.さらに、本発明において有用であると評価されたプロセスのステップは、十分な量の生成物の生成を確実にするために分取スケールに容易にアップグレード可能である。
本発明は、スモールスケールクロマトグラフィーカラムに対する実現可能性実験の形態の初期開発期、ならびに分取スケールへのスケールアッププロセスおよび各FVIII亜種の最終生成スキームに関する。
発明の説明
本発明は、上記の必要性を満たし、当技術分野における上記の問題を、下記の実施形態を提供することによって解決する。
特に、第VIII因子を含む組成物から第VIII因子亜種を精製するための方法を開発するための取り組みにおいて、本発明者らは、2つのクロマトグラフィーステップ、すなわち、アニオン交換クロマトグラフィーステップおよびサイズ排除クロマトグラフィーステップ、その後、別のアニオン交換クロマトグラフィーステップであってよい濃縮ステップを使用することにより、前記第VIII因子亜種を高い純度および高濃度で含む組成物がもたらされることを見出した。驚いたことに、本発明者らは、さらに、第VIII因子を含む組成物のフューリンプロテアーゼ処理ならびにグラジエントの長さを延長したリニアグラジエント溶出による第1のアニオン交換クロマトグラフィーステップの実施により、クロマトグラフィーの間の第VIII因子亜種の分離がさらに改善され、したがって、前記第VIII因子亜種をさらに高い純度および濃度で含む組成物がもたらされることを見出した。
さらなる実験において、本発明者らは、本発明に従って得られた精製された第VIII因子亜種を特徴付けた。驚いたことに、本発明者らは、精製されたrFVIII種およびその混合物全てで、精製されていない出発材料と比較して活性の増大が示されることを見出した。さらに、本発明者らは、Bドメインの70%を含有する第VIII因子亜種は、Bドメイン全体を欠く第VIII因子亜種よりも凝集する傾向が有意に低く、オリゴマーを形成する傾向が高いことを示したことを見出した。したがって、本発明の方法に従って得られる精製された第VIII因子亜種は、潜在的に、改善された性質を有する薬学的に活性な組成物(すなわち、医薬)に製剤化することができる。薬学的に活性な組成物は、単一の精製されたFVIII亜種を含有し得る。あるいは、精製されたFVIII亜種の2つまたはそれよりも多くを、例えば、pdFVIIIにおいて、または患者を処置するために現在使用されているrFVIII製品において見出されるものと同じFVIII亜種の比率で混合することができる。そのような薬学的に活性な組成物を、血友病Aなどの出血性障害を有する患者を処置するために使用することができる。
追加的な実験において、本発明者らは、驚いたことに、組換えFVIIIのフューリン処理により、亜種精製をしない場合であってもFVIIIの活性が増大することを見出した。
全体として、本発明は、以下の項目1から86までに列挙する好ましい実施形態を提供することにより、第VIII因子を含む組成物から第VIII因子亜種を精製するための改善された手段を提供する:
1.第VIII因子(FVIII)亜種を、FVIIIを含む組成物から精製するための方法であって、
(1)FVIIIを含む組成物をアニオン交換クロマトグラフィーに供し、前記FVIII亜種を含む溶出液を収集するステップと、
(2)前記FVIII亜種を含むステップ(1)の溶出液をサイズ排除クロマトグラフィーに供し、前記FVIII亜種を含む溶出液を収集するステップと、
(3)前記FVIII亜種を含むステップ(2)の溶出液を濃縮するステップと
を含む方法。
2.濃縮ステップ(3)が、前記FVIII亜種を含むステップ(2)の溶出液をアニオン交換クロマトグラフィーに供し、前記FVIII亜種を含む溶出液を収集するステップである、項目1に記載の方法。
3.FVIIIが組換えFVIII(rFVIII)であり、FVIII亜種が組換えFVIII(rFVIII)亜種である、項目1または2に記載の方法。
4.FVIII亜種が、FVIII軽鎖と会合したFVIII重鎖である、項目1から3までのいずれか1つに記載の方法。
5.FVIII亜種が、FVIII軽鎖と会合したFVIII 180kDa重鎖である、項目1から4までのいずれか1つに記載の方法。
6.FVIII亜種が、FVIII軽鎖と会合したFVIII 150kDa重鎖である、項目1から4までのいずれか1つに記載の方法。
7.FVIII亜種が、FVIII軽鎖と会合したFVIII 110kDa重鎖である、項目1から4までのいずれか1つに記載の方法。
8.FVIII亜種が、FVIII軽鎖と会合したFVIII 90kDa重鎖である、項目1から4までのいずれか1つに記載の方法。
9.ステップ(1)において、ビーズサイズが20μm未満の高分解能Q−樹脂をアニオン交換クロマトグラフィーに使用する、項目1から8までのいずれか1つに記載の方法。
10.ビーズサイズが20μm未満の高分解能Q−樹脂が、MonoQ樹脂である、項目9に記載の方法。
11.ステップ(2)において、分解能が10000Da〜60000Daにわたるサイズ排除クロマトグラフィー樹脂をサイズ排除クロマトグラフィーに使用する、項目1から10までのいずれか1つに記載の方法。
12.分解能が10000Da〜60000Daにわたるサイズ排除クロマトグラフィー樹脂が、Superdex 200 pg樹脂である、項目11に記載の方法。
13.ステップ(3)において、SourceQ樹脂をアニオン交換クロマトグラフィーに使用する、項目2から12までのいずれか1つに記載の方法。
14.ステップ(1)の前に以下のステップ(0):
(0)組成物中に含まれるFVIIIをフューリンプロテアーゼ処理に供するステップ
をさらに含む、項目1から13までのいずれか1つに記載の方法。
15.フューリンプロテアーゼ処理を、フューリンを100IU/mLよりも高い最終濃度で使用して実施する、項目14に記載の方法。
16.ステップ(0)の後に以下のステップ(0’):
(0’)FVIIIを含む組成物を、孔径が約0.2μmのフィルターを通して濾過するステップ
をさらに含む、項目14または15に記載の方法。
17.FVIII軽鎖が、FVIII 80kDa軽鎖である、項目14から16までのいずれか1つに記載の方法。
18.ステップ(1)の溶出をリニアグラジエント溶出によって実施する、項目1から17までのいずれか1つに記載の方法。
19.ステップ(1)において、リニアグラジエント溶出のグラジエントの長さが少なくとも約16カラム体積である、項目18に記載の方法。
20.ステップ(1)において、リニアグラジエント溶出のグラジエントの長さが少なくとも約24カラム体積である、項目18に記載の方法。
21.ステップ(1)において、リニアグラジエント溶出のグラジエントの長さが少なくとも約32カラム体積である、項目18に記載の方法。
22.ステップ(1)において、溶出を、エチレングリコールを含むバッファーを使用して実施する、項目1から21までのいずれか1つに記載の方法。
23.ステップ(1)において、溶出を、エチレングリコールを含むバッファーを約10%(v/v)の濃度で使用して実施する、項目22に記載の方法。
24.ステップ(2)を、
(2)前記FVIII亜種を含むステップ(1)の溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィーに供するステップ
で置き換える、項目1から23までのいずれか1つに記載の方法。
25.ステップ(2)の前に以下のステップ(1’):
(1’)ステップ(1)の溶出液に含まれるFVIII亜種をフューリンプロテアーゼ処理に供するステップ
をさらに含む、項目24に記載の方法。
26.フューリンプロテアーゼ処理を、フューリンを100IU/mLよりも高い最終濃度で使用して実施する、項目25に記載の方法。
27.ステップ(1’)の後に、以下のステップ(1’’):
(1’’)前記FVIII亜種を含む溶出液を、孔径が約0.2μmのフィルターを通して濾過するステップ
をさらに含む、項目25または26に記載の方法。
28.FVIII軽鎖が、FVIII 80kDa軽鎖である、項目25から27までのいずれか1つに記載の方法。
29.疎水性相互作用クロマトグラフィーが、ネガティブモードクロマトグラフィーである、項目24から28までのいずれか1つに記載の方法。
30.FVIII亜種が、FVIII軽鎖と会合したFVIII 150kDa重鎖である、項目24から29までのいずれか1つに記載の方法。
31.FVIII亜種が、FVIII軽鎖と会合したFVIII 180kDa重鎖である、項目24から29までのいずれか1つに記載の方法。
32.ステップ(3)の溶出をステップグラジエント溶出によって実施する、項目2から31までのいずれか1つに記載の方法。
33.FVIII亜種がFVIII 90kDa重鎖であり、方法のステップ(2)を省略し、ステップ(3)において、前記FVIII亜種を含むステップ(1)の溶出液で前記FVIII亜種を含むステップ(2)の溶出液を置き換える、項目1から4まで、9、10、13から23まで、または32のいずれか1つに記載の方法。
34.項目1から33までのいずれか1つに従って入手可能な精製されたFVIII亜種を含む組成物。
35.組成物中の精製されたFVIII亜種の組成物中の他の全てのFVIII亜種に対する重量比が少なくとも9である、項目34に記載の精製されたFVIII亜種を含む組成物。
36.組成物中の精製されたFVIII亜種の組成物中の他の全てのFVIII亜種に対する重量比が少なくとも8である、項目34に記載の精製されたFVIII亜種を含む組成物。
37.精製されたFVIII亜種の濃度が少なくとも0.1mg/mLである、項目34から36までのいずれか1つに記載の精製されたFVIII亜種を含む組成物。
38.精製されたFVIII亜種の濃度が少なくとも0.3mg/mLである、項目34から36までのいずれか1つに記載の精製されたFVIII亜種を含む組成物。
39.精製された第VIII因子(FVIII)亜種を含む組成物。
40.FVIIIが組換えFVIII(rFVIII)であり、FVIII亜種が組換えFVIII(rFVIII)亜種である、項目39に記載の組成物。
41.FVIII亜種が、FVIII軽鎖と会合したFVIII 180kDa重鎖、FVIII軽鎖と会合したFVIII 150kDa重鎖、FVIII軽鎖と会合したFVIII 110kDa重鎖、またはFVIII軽鎖と会合したFVIII 90kDa重鎖である、項目39または40に記載の組成物。
42.組成物中の精製されたFVIII亜種の組成物中の他の全てのFVIII亜種に対する重量比が、少なくとも9、または少なくとも8である、項目39から41までのいずれか1つに記載の組成物。
43.精製されたFVIII亜種の濃度が、少なくとも0.1mg/mL、または少なくとも0.3mg/mLである、項目39から42までのいずれか1つに記載の組成物。
44.医薬として使用するための、項目34から43までのいずれか1つに記載の組成物。
45.出血性障害の処置に使用するための、項目34から44までのいずれか1つに記載の組成物。
46.血友病Aの処置に使用するための、項目34から45までのいずれか1つに記載の組成物。
47.いくつかのタンパク質またはタンパク質のいくつかのサブユニットを含む組成物からタンパク質またはタンパク質のサブユニットを精製するための方法であって、
(1)タンパク質またはタンパク質のサブユニットを含む組成物をアニオン交換クロマトグラフィーに供し、前記タンパク質またはタンパク質のサブユニットを含む溶出液を収集するステップと、
(2)前記タンパク質またはタンパク質のサブユニットを含むステップ(1)の溶出液をサイズ排除クロマトグラフィーに供し、前記タンパク質またはタンパク質のサブユニットを含む溶出液を収集するステップと、
(3)前記タンパク質またはタンパク質のサブユニットを含むステップ(2)の溶出液を濃縮するステップと
を含む方法。
48.濃縮ステップ(3)が、前記タンパク質またはタンパク質のサブユニットを含むステップ(2)の溶出液をアニオン交換クロマトグラフィーに供し、前記タンパク質またはタンパク質のサブユニットを含む溶出液を収集するステップである、項目47に記載の方法。
49.タンパク質またはタンパク質のサブユニットが、組換えタンパク質またはタンパク質の組換えサブユニットである、項目47または48に記載の方法。
50.ステップ(1)において、ビーズサイズが20μm未満の高分解能Q−樹脂をアニオン交換クロマトグラフィーに使用する、項目47から49までのいずれか1つに記載の方法。
51.ビーズサイズが20μm未満の高分解能Q−樹脂が、MonoQ樹脂である、項目50に記載の方法。
52.ステップ(2)において、分解能が10000Da〜60000Daにわたるサイズ排除クロマトグラフィー樹脂をサイズ排除クロマトグラフィーに使用する、項目47から51までのいずれか1つに記載の方法。
53.分解能が10000Da〜60000Daにわたるサイズ排除クロマトグラフィー樹脂が、Superdex 200 pg樹脂である、項目52に記載の方法。
54.ステップ(3)において、SourceQ樹脂をアニオン交換クロマトグラフィーに使用する、項目48から53までのいずれか1つに記載の方法。
55.ステップ(1)の前に以下のステップ(0):
(0)組成物に含まれるタンパク質またはタンパク質のサブユニットをフューリンプロテアーゼ処理に供するステップ
をさらに含む、項目47から54までのいずれか1つに記載の方法。
56.フューリンプロテアーゼ処理を、フューリンを100IU/mLよりも高い最終濃度で使用して実施する、項目55に記載の方法。
57.ステップ(0)の後に以下のステップ(0’):
(0’)タンパク質またはタンパク質のサブユニットを含む組成物を、孔径が約0.2μmのフィルターを通して濾過するステップ
をさらに含む、項目55または56に記載の方法。
58.ステップ(1)の溶出をリニアグラジエント溶出によって実施する、項目47から57までのいずれか1つに記載の方法。
59.ステップ(1)において、リニアグラジエント溶出のグラジエントの長さが少なくとも約16カラム体積である、項目58に記載の方法。
60.ステップ(1)において、リニアグラジエント溶出のグラジエントの長さが少なくとも約24カラム体積である、項目58に記載の方法。
61.ステップ(1)において、リニアグラジエント溶出のグラジエントの長さが少なくとも約32カラム体積である、項目58に記載の方法。
62.ステップ(1)において、溶出を、エチレングリコールを含むバッファーを使用して実施する、項目47から61までのいずれか1つに記載の方法。
63.ステップ(1)において、溶出を、エチレングリコールを含むバッファーを約10%(v/v)の濃度で使用して実施する、項目62に記載の方法。
64.ステップ(2)を、
(2)前記タンパク質またはタンパク質のサブユニットを含むステップ(1)の溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィーに供するステップ
で置き換える、項目47から63までのいずれか1つに記載の方法。
65.ステップ(2)の前に以下のステップ(1’):
(1’)ステップ(1)の溶出液に含まれるタンパク質またはタンパク質のサブユニットをフューリンプロテアーゼ処理に供するステップ
をさらに含む、項目64に記載の方法。
66.フューリンプロテアーゼ処理を、フューリンを100IU/mLよりも高い最終濃度で使用して実施する、項目65に記載の方法。
67.ステップ(1’)の後に、以下のステップ(1’’):
(1’’)前記タンパク質またはタンパク質のサブユニットを含む溶出液を、孔径が約0.2μmのフィルターを通して濾過するステップ
をさらに含む、項目65または66に記載の方法。
68.疎水性相互作用クロマトグラフィーがネガティブモードクロマトグラフィーである、項目64から67までのいずれか1つに記載の方法。
69.ステップ(3)の溶出をステップグラジエント溶出によって実施する、項目47から68までのいずれか1つに記載の方法。
70.方法のステップ(2)を省略し、ステップ(3)において、前記タンパク質またはタンパク質のサブユニットを含むステップ(1)の溶出液で前記タンパク質またはタンパク質のサブユニットを含むステップ(2)の溶出液を置き換える、項目47から51まで、54から63まで、または69のいずれか1つに記載の方法。
71.項目47から71までのいずれか1つに従って入手可能な精製されたタンパク質またはタンパク質のサブユニットを含む組成物。
72.組成物中の精製されたタンパク質またはタンパク質のサブユニットの組成物中の他の全てのタンパク質またはタンパク質のサブユニットに対する重量比が少なくとも9である、項目71に記載の精製されたタンパク質またはタンパク質のサブユニットを含む組成物。
73.組成物中の精製されたタンパク質またはタンパク質のサブユニットの組成物中の他の全てのタンパク質またはタンパク質のサブユニットに対する重量比が少なくとも8である、項目71に記載の精製されたタンパク質またはタンパク質のサブユニットを含む組成物。
74.精製されたタンパク質またはタンパク質のサブユニットの濃度が、少なくとも0.1mg/mLである、項目71から73までのいずれか1つに記載の精製されたタンパク質またはタンパク質のサブユニットを含む組成物。
75.精製されたタンパク質またはタンパク質のサブユニットの濃度が、少なくとも0.3mg/mLである、項目71から73までのいずれか1つに記載の精製されたタンパク質またはタンパク質のサブユニットを含む組成物。
76.医薬として使用するための、項目71から75までのいずれか1つに記載の組成物。
77.第VIII因子(FVIII)をフューリンプロテアーゼ処理に供する方法。
78.FVIIIが組換えFVIII(rFVIII)である、項目77に記載の方法。
79.FVIIIが単鎖FVIIIを含む、項目77または78に記載の方法。
80.フューリンプロテアーゼ処理を、フューリンを100IU/mLよりも高い最終濃度で使用して実施する、項目77から79までのいずれか1つに記載の方法。
81.FVIIIからフューリンプロテアーゼを分離するステップをさらに含む、項目77から80までのいずれか1つに記載の方法。
82.FVIIIの活性を増大させるためのものである、項目77から81までのいずれか1つに記載の方法。
83.FVIIIが、項目77から82までのいずれか1つに従って入手可能である、FVIIIを含む組成物。
84.医薬として使用するための、項目83に記載のFVIIIを含む組成物。
85.出血性障害の処置に使用するための、項目83または84に記載のFVIIIを含む組成物。
86.血友病Aの処置に使用するための、項目83から85までのいずれか1つに記載のFVIIIを含む組成物。
図1は、右側に組織因子依存性または外因系経路および左側に接触活性化または内因系経路を含み、黒色矢印がそれぞれの血液凝固因子の活性化を示し、「feed frow.」および「inact.」と記された断続線がそれぞれフィードフォワード不活化効果を示す、血液凝固カスケードを示す図である。図はSchaller et al. (2008)に基づく。
図2は、(A)上部に第VIII因子単鎖分子の、それに由来する重鎖断片を左側、および軽鎖断片を右側に示す概略図である。図は(Schaller et al. ,2008)に基づく。特定のタンパク質ドメインA1、A2、B、A3およびC1プラスC2が異なる灰色の濃淡で示されている。Bドメインが重鎖断片および軽鎖断片に異なる程度に分布している。色付きのドメイン領域間の白色の空間は、異なる機能を有する高度に酸性の配列を表す。(B)FVIIIの不均一性および分子種。FVIIIのドメイン構造。角括弧は、FL−FVIIIに存在する末端アミノ酸を有する主要なHC/Bドメイン種を示す。
図3は、(1)一点鎖線で示されている定組成溶出、(2)断続線で示されているステップ溶出、および(3)実線で示されているグラジエント溶出である3つの最も一般的な型の溶出方式の概略図である。
図4は、標準バッファーQA1およびQB1を用いてpH6.7で分離した、AIEX Mono 10Q樹脂でのFVIII分子亜種の溶出相のクロマトグラムである。グラジエント:8カラム体積において135.0〜750.0mMの塩化ナトリウム。カラム寸法:内径0.5cm×ベッド高5.0cm、カラム体積0.98mL。
図5は、標準バッファーQA1およびQB1を用いてpH6.7で分離した、Mono 10Q樹脂でのFVIII分子亜種の分離のSDS pageゲル電気泳動を示す図である。グラジエント:8カラム体積において135.0〜750.0mMの塩化ナトリウム。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、SB)サンプルバッファー、画分B7〜C8、NE)溶出後液(posteluate)。上から下まで:全長単鎖(300kDa)、180kDa重鎖、150kDaの短縮型重鎖、120kDaの伸長型軽鎖、110kDaの短縮型重鎖、Bドメインを有さない90kDa重鎖、80kDaの軽鎖。
図6は、標準バッファーQA1およびQB1を用いてpH6.7で分離した、AIEX Mono 10Q樹脂でのFVIII分子亜種分離のオーバーレイである。(1)グラジエント:8カラム体積において135.0〜750.0mMの塩化ナトリウム、破線:電気伝導率、実線:280nmにおける吸光度。(2)グラジエント:16カラム体積において135.0〜750.0mMの塩化ナトリウム、断続線:電気伝導率、点線:280nmにおける吸光度。カラム寸法:内径0.5cm×ベッド高5.0cm、カラム体積0.98mL。
図7は、pH6.7におけるAIEX Mono 10Q樹脂でのFVIII分子亜種分離のオーバーレイである。実線):標準バッファーQA1およびQB1を用いた16カラム体積において135.0〜750.0mMの塩化ナトリウム、破線)グラジエント:QA1およびQB1バッファーを含有する10%エチレングリコールを用いた32カラム体積において135.0〜750.0mMの塩化ナトリウム。カラム寸法:内径0.5cm×ベッド高5.0cm、カラム体積0.98mL。
図8は、フューリン処理したFVIII分子亜種およびフューリン処理していないFVIII分子亜種の、標準バッファーQA1およびQB1を用いてpH6.7で分離した、AIEX Mono 10Q樹脂での分離のオーバーレイである。グラジエント:16カラム体積において135.0〜750.0mMの塩化ナトリウム。(1)フューリン処理を伴わない試料:断続線)電気伝導率、破線)280nmにおける吸光度、(2)フューリン処理した試料:点線)電気伝導率、実線)280nmにおける吸光度。カラム寸法:内径0.5cm×ベッド高5.0cm、カラム体積0.98mL。
図9は、フューリン処理したFVIII分子亜種の、標準バッファーQA1およびQB1を用いてpH6.7で分離した、AIEX Mono 10Q樹脂での溶出相のクロマトグラムである。グラジエント:16カラム体積において135.0〜750.0mMの塩化ナトリウム。カラム寸法:内径0.5cm×ベッド高5.0cm、カラム体積0.98mL。
図10は、フューリン処理したFVIII分子亜種の、標準バッファーQA1およびQB1を用いてpH6.7で分離した、AIEX Mono 10Q樹脂での分離のSDS pageゲル電気泳動を示す図である。グラジエント:16カラム体積において135.0〜750.0mMの塩化ナトリウム。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、L)ロード、FT)フロースルー、W1)洗浄相1、W2)洗浄相2、W3)洗浄相3、VE)溶出前液(pre-eluate)、画分B5〜C7。
図11は、フューリン処理したFVIII分子亜種の、標準バッファーQA1およびQB1を用いてpH6.7で分離した、AIEX Mono 10Q樹脂での分離のSDS pageゲル電気泳動を示す図である。グラジエント:16カラム体積において135.0〜750.0mMの塩化ナトリウム。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、画分C8〜D12、NE)溶出後液。
図12は、110kDaの短縮型重鎖断片の、およそ300mMの塩化ナトリウムバッファーを用いてpH6.7で分離した、Superdex 200 Increaseでのサイズ排除クロマトグラフィー最終精製を示すグラフである。カラム寸法:内径1.0cm×ベッド高30.0cm、カラム体積23.56mL。
図13は、MonoQアニオン交換クロマトグラフィーによって得られた110kDaの短縮型重鎖断片およびそれぞれの出発材料(画分G4、G5およびG6)を精製するためのSECステップのSDS pageゲル電気泳動を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、画分C4〜E2。
図14は、180kDaの全長重鎖の、およそ300mMの塩化ナトリウムバッファーを用いてpH6.7で分離した、Superdex 200 Increaseでのサイズ排除クロマトグラフィー最終精製を示すグラフである。カラム寸法:内径1.0cm×ベッド高30.0cm、カラム体積23.56mL。
図15は、MonoQアニオン交換クロマトグラフィーによって得られた180kDaの全長重鎖断片およびそれぞれの出発材料(画分F4、F5およびF6)を精製するためのSECステップのSDS pageゲル電気泳動を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、画分C4〜D9。
図16は、高性能フェニルセファロースで分離したFVIII分子亜種の2次元溶出相のクロマトグラムである。1.グラジエント:20カラム体積において680.0〜0.0mMの塩化ナトリウム、2.グラジエント:16カラム体積において0〜50%エチレングリコール。カラム寸法:内径0.5cm×ベッド高5.0cm、カラム体積0.98mL。
図17は、フューリン処理した出発材料B14390000−30からFVIII分子亜種を精製するための2次元HICステップのSDS pageゲル電気泳動を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、FT)フロースルー、画分A5〜B12。図は、図18に続く。
図18は、フューリン処理した出発材料B14390000−10からFVIII分子亜種を精製するための2次元HICステップのSDS pageゲル電気泳動を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、画分C2〜G6。
図19は、高性能フェニルセファロースで分離したFVIII分子亜種の1次元溶出相のクロマトグラムである。グラジエント:40カラム体積において680.0〜0.0mMの塩化ナトリウム。カラム寸法:内径0.5cm×ベッド高5.0cm、カラム体積0.98mL。
図20は、フューリン処理した出発材料B14390000−10から150kDaの短縮型重鎖断片を精製するための1次元HICステップのSDS pageゲル電気泳動を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、FT)フロースルー、画分B2〜G11。
図21は、高性能フェニルセファロースで分離したFVIII分子亜種のネガティブモード洗浄相および溶出相のクロマトグラムである。洗浄相:30カラム体積に対して860mMの塩化ナトリウム、ステップ溶出:10カラム体積に対して0mMの塩化ナトリウム。カラム寸法:内径0.5cm×ベッド高5.0cm、カラム体積0.98mL。
図22は、150kDaの短縮型重鎖断片を精製するためのネガティブモードHICステップのSDS pageゲル電気泳動を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、画分A10〜C12。
図23は、FVIII分子亜種の分取精製プロセスの流れ図である。180kDa、150kDaおよび110kDaの分子量を有する亜種についての精製戦略は、AIEX(MonoQ)およびSEC(Superdex 200)による2つの精製ステップ、ならびに、最終的に、AIEX(SourceQ)による濃縮ステップを含む。Bドメイン枯渇重鎖断片にはサイズ排除クロマトグラフィーによるさらなる精製は必要なく、したがって、MonoQ AIEXに適用し、その後、SourceQ AIEXで濃縮する。
図24は、MonoQ樹脂で分離したFVIII分子亜種の分取スケールアニオン交換クロマトグラフィー溶出相のクロマトグラムである。グラジエント溶出:32カラム体積において135〜750mMの塩化ナトリウム。カラム寸法:内径1.6cm×ベッド高10.0cm、カラム体積20.160mL。画分サイズ:E1:22.6mL、E2:31.5mL、E3:34.6mL、E4:43.7mL、E5:28.9mL、E6:22.9mL、E7:26.1mL、E8:53.1mL。
図25は、FVIII分子亜種を精製するための分取アニオン交換クロマトグラフィーステップのSDS pageゲル電気泳動を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、L1)濾過前のロード、L2)濾過後のロード、FT)フロースルー、W1)洗浄ステップ1、W2)洗浄ステップ2、W3)洗浄ステップ3、VB)溶出前液、E1〜E8)溶出液プール1〜8、NE)溶出後液1、PE)溶出後液2。
図26は、MonoQ樹脂で分離したFVIII分子亜種の分取スケールアニオン交換クロマトグラフィー溶出相のクロマトグラム。グラジエント溶出:32カラム体積において135〜750mMの塩化ナトリウム。カラム寸法:内径1.6cm×ベッド高10.0cm、カラム体積20.160mL。画分サイズ:E1:114.9mL、E2:24.0mL、E3:22.8mL、E4:83.6mL。
図27は、FVIII分子亜種を精製するための分取スケールアニオン交換クロマトグラフィーステップのSDS pageゲル電気泳動を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、L1)濾過前のロード、L2)濾過後のロード、FT)フロースルー、W1)洗浄ステップ1、W2)洗浄ステップ2、画分1.E6〜3.B5、PE)溶出後液。
図28は、180kDaの全長重鎖を精製するための分取スケールサイズ排除クロマトグラフィーのクロマトグラムである。カラム寸法:内径5.0cm×ベッド高94.4cm、カラム体積1853.54mL。画分サイズE1:70.0mL。
図29は、分取MonoQアニオン交換クロマトグラフィーによって得られた180kDaの全長重鎖を精製するための分取スケールサイズ排除クロマトグラフィーステップのSDS pageゲル電気泳動を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、画分B5〜D1。
図30は、SourceQ樹脂で濃縮された180kDaの全長重鎖の分取スケールアニオン交換クロマトグラフィー溶出相のクロマトグラムである。ステップ溶出:300mMの塩化ナトリウム。カラム寸法:内径1.0cm×ベッド高3.9cm、カラム体積3.06mL。画分サイズE1:6.98mL。
図31は、分取スケールサイズ排除クロマトグラフィーによって得られた180kDaの全長重鎖を濃縮するためのSourceQ AIEXステップのSDS pageゲル電気泳動、銀染色(左)およびFVIIIウエスタンブロット(右)を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、L)ロード、SB)サンプルバッファー、FT)フロースルー、W)洗浄相、VE)溶出前液、E1)1:198希釈(銀染色)および1:264希釈(FVIIIウエスタンブロット)での溶出液プール、E2)1:66希釈(銀染色)および1:88希釈(FVIIIウエスタンブロット)での溶出液プール、NE)溶出後液。
図32は、(1)スモールスケールSECカラムSuperdex 200 Increase(実線)と分取スケールSECカラムSuperdex 200 Prep Grade(破線)の性能比較。両方の曲線は、それぞれの、分子量180kDaの全長重鎖の溶出相を示す。カラム寸法:(1)内径1.0cm×ベッド高30.0cm、カラム体積23.56mL、(2)内径5.0cm×ベッド高94.4cm、カラム体積1853.54mL。
図33は、150kDaの短縮型重鎖断片を精製するための分取スケールサイズ排除クロマトグラフィーのクロマトグラムである。カラム寸法:内径5.0cm×ベッド高94.4cm、カラム体積1853.54mL。画分サイズ:C1:15.80mL、C2:15.75mL、C3:15.74mL、E2:45.69mL。
図34は、分取MonoQアニオン交換クロマトグラフィーによって得られた150kDaの短縮型重鎖断片を精製するための分取スケールサイズ排除クロマトグラフィーステップのSDS pageゲル電気泳動を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、SB)サンプルバッファー、画分B7〜D1。
図35は、SourceQ樹脂で濃縮された150kDaの全長重鎖の分取スケールアニオン交換クロマトグラフィー溶出相のクロマトグラムである。ステップ溶出:300mMの塩化ナトリウム。カラム寸法:内径1.0cm×ベッド高3.9cm、カラム体積3.06mL。画分サイズE1:約7.5mL。
図36は、分取スケールサイズ排除クロマトグラフィーによって得られた150kDaの短縮型重鎖断片を濃縮するためのSourceQ AIEXステップのSDS pageゲル電気泳動、銀染色(左)およびFVIIIウエスタンブロット(右)を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、L)ロード、SB)サンプルバッファー、FT)フロースルー、W)洗浄相、VE)溶出前液、E1)1:120希釈(銀染色)および1:160希釈(FVIIIウエスタンブロット)での溶出液プール、E2)1:40希釈(銀染色)および1:53希釈(FVIIIウエスタンブロット)での溶出液プール、NE)溶出後液。
図37は、110kDaの短縮型重鎖断片を精製するための分取スケールサイズ排除クロマトグラフィーのクロマトグラムである。カラム寸法:内径5.0cm×ベッド高94.4cm、カラム体積1853.54mL。画分サイズ:B10〜C1:140mL、C2〜C3:70mL、C4:35mL、C5:35mL、C6:35mL、C7〜C8:70mL。
図38は、分取MonoQアニオン交換クロマトグラフィーによって得られた110kDaの短縮型重鎖断片を精製するための分取スケールサイズ排除クロマトグラフィーステップのSDS pageゲル電気泳動を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、画分B9〜C10。
図39は、SourceQ樹脂で濃縮された110kDaの全長重鎖の分取スケールアニオン交換クロマトグラフィー溶出相のクロマトグラムである。ステップ溶出:300mMの塩化ナトリウム。カラム寸法:内径1.0cm×ベッド高3.9cm、カラム体積3.06mL。画分サイズE1:7.20mL。
図40は、分取スケールサイズ排除クロマトグラフィーによって得られた110kDaの短縮型重鎖断片を濃縮するためのSourceQ AIEXステップのSDS pageゲル電気泳動、銀染色(左)およびFVIIIウエスタンブロット(右)を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、L)ロード、FT)フロースルー、W)洗浄相、VE)溶出前液、E1)1:147希釈(銀染色)および1:196希釈(FVIIIウエスタンブロット)での溶出液プール、E2)1:49希釈(銀染色)および1:65希釈(FVIIIウエスタンブロット)での溶出液プール、NE)溶出後液。
図41は、SourceQ樹脂で濃縮された90kDaの全長重鎖の分取スケールアニオン交換クロマトグラフィー溶出相のクロマトグラムである。ステップ溶出:300mMの塩化ナトリウム。カラム寸法:内径1.0cm×ベッド高8.9cm、カラム体積7.0mL。画分サイズE1:18.37mL。
図42は、分取スケールサイズ排除クロマトグラフィーによって得られた90kDaのBドメイン枯渇重鎖断片を濃縮するためのSourceQ AIEXステップのSDS pageゲル電気泳動、銀染色(左)およびFVIIIウエスタンブロット(右)を示す図である。M)分子量マーカー、AS)全ての関連する重鎖種および軽鎖種を示す、市販のFVIII原薬である標準物質、SB)サンプルバッファー、L)ロード、FT)フロースルー、W)洗浄相、E1)1:99希釈(銀染色)および1:132希釈(FVIIIウエスタンブロット)での溶出液プール、E2)1:33希釈(銀染色)および1:44希釈(FVIIIウエスタンブロット)での溶出液プール、NE)溶出後液。
図43は、FVIII分子亜種の分取精製プロセスの要約を示す図である。左から右に:180kDaの全長重鎖断片、150kDaの短縮型重鎖断片、110kDaの短縮型重鎖断片、90kDaのBドメイン枯渇重鎖断片。
図44は、FVIIIの不均一性および分子種を示す図である。(左)FL−rFVIII(1)、pdFVIII(2)、精製されたrFVIII種B70−rFVIII(3)、B20−rFVIII(4)、BDD−rFVIII(5)の銀染色SDS−PAGEゲルならびに(右)2005年(1)、2007年(2)、2008年(3)、2012年(4)、2013年(5)、2014年(6)および2015年(7)に生成されたFL−rFVIIIの歴史的ロット;HC、重鎖;LC、軽鎖;Mm、precision plus unstained protein standard(Bio−Rad)の銀染色SDS−PAGEゲル。
図45は、温度上昇時のrFVIIIの凝集を示すグラフである。FL−rFVIII(点線)、B70−rFVIII(点鎖線)、B20−rFVIII(断続線)およびBDD−rFVIII(実線)の熱により誘導された凝集体をDLSによって分析した。挿入図は、HPLC−SECによって分析された対応する試料を示す。
図46は、rFVIIIオリゴマーおよび凝集体の形成の経路を示すグラフである。FL−rFVIII(点線、C)、B70−rFVIII(点鎖線)、B20−rFVIII(断続線)、BDD−rFVIII(実線、D)およびpdFVIII(二点鎖線、E)を45℃で24時間インキュベートした。オリゴマーの量(A)、凝集体の量(B)および単量体の量(F)をHPLC−SECによって継続的に分析し、インキュベート時間に対してプロットした。
図47は、蛍光色素ThTのFVIIIのオリゴマーおよび凝集体への結合を示すグラフである。ThTのタンパク質オリゴマーおよび凝集体への結合能が、45℃で24時間インキュベートした後の440および280nm励起における蛍光シグナルの比として表されている。n=2〜4、エラーバーはSD値を示す。
図48は、rFVIII凝集の均一シーディングを示すグラフである。BDD−rFVIII、B70−rFVIIIおよびFL−rFVIIIを45℃で2、5、8または18時間のいずれかにわたってインキュベートすることによってシードを調製した。BDD−rFVII(A)、B70−rFVIII(B)およびFL−rFVIII(C)試料をそれぞれの予め形成されたシードと1:1混合し、45℃で24時間インキュベートした。オリゴマーの量(左側のパネル)および凝集体の量(右側のパネル)をHPLC−SECによって継続的に分析し、インキュベート時間に対してプロットした。
図49は、タンパク質を含有する肉眼では見えない粒子の形成を示すグラフである。FVIII試料(0.244μM)を撹拌およびずり応力に曝露し、フローサイトメトリーに基づく粒子分析に供した。対応のないt検定を使用することによって統計学的差異が示された。タンパク質粒子濃度はBDD−rFVIIIとFL−rFVIIIの間(P=0.0002)およびBDD−rFVIIIとpdFVIIIの間(P=0.0010)、ならびにB20−rFVIIIとFL−rFVIIIの間(P<0.0001)およびB20−rFVIIIとpdFVIIIの間(P<0.0001)で有意に異なることが示された;n=4〜6、エラーバーはSD値を示す。
図50は、rFVIIIを熱ストレスに曝露させた後のオリゴマーおよび凝集体の形成の図式モデルである。FL−rFVIIIがrFVIII種の不均一混合物として示されているが、実際の種の比を反映するものではない。矢印の長さにより、FL−rFVIIIおよびBDD−rFVIIIのオリゴマー形成および凝集速度の差異が示される。
図51は、高度に精製されたpdFVIII、FL−rFVIIIおよび精製されたrFVIII分子種の等モル濃度(0.122μM)でのサイズ排除クロマトグラフィープロファイルを示すグラフである。
図52は、B70−rFVIIIのHDX−MSヒートマップである。120ペプチドのHDX−MSカイネティクスを3秒、10秒、30秒、2分、10分、60分および3時間のインキュベート時間後に測定した。灰色のレベルにより重水素組み入れの%が示される。 図52は、B70−rFVIIIのHDX−MSヒートマップである。120ペプチドのHDX−MSカイネティクスを3秒、10秒、30秒、2分、10分、60分および3時間のインキュベート時間後に測定した。灰色のレベルにより重水素組み入れの%が示される。 図52は、B70−rFVIIIのHDX−MSヒートマップである。120ペプチドのHDX−MSカイネティクスを3秒、10秒、30秒、2分、10分、60分および3時間のインキュベート時間後に測定した。灰色のレベルにより重水素組み入れの%が示される。 図52は、B70−rFVIIIのHDX−MSヒートマップである。120ペプチドのHDX−MSカイネティクスを3秒、10秒、30秒、2分、10分、60分および3時間のインキュベート時間後に測定した。灰色のレベルにより重水素組み入れの%が示される。 図52は、B70−rFVIIIのHDX−MSヒートマップである。120ペプチドのHDX−MSカイネティクスを3秒、10秒、30秒、2分、10分、60分および3時間のインキュベート時間後に測定した。灰色のレベルにより重水素組み入れの%が示される。 図52は、B70−rFVIIIのHDX−MSヒートマップである。120ペプチドのHDX−MSカイネティクスを3秒、10秒、30秒、2分、10分、60分および3時間のインキュベート時間後に測定した。灰色のレベルにより重水素組み入れの%が示される。 図52は、B70−rFVIIIのHDX−MSヒートマップである。120ペプチドのHDX−MSカイネティクスを3秒、10秒、30秒、2分、10分、60分および3時間のインキュベート時間後に測定した。灰色のレベルにより重水素組み入れの%が示される。 図52は、B70−rFVIIIのHDX−MSヒートマップである。120ペプチドのHDX−MSカイネティクスを3秒、10秒、30秒、2分、10分、60分および3時間のインキュベート時間後に測定した。灰色のレベルにより重水素組み入れの%が示される。 図52は、B70−rFVIIIのHDX−MSヒートマップである。120ペプチドのHDX−MSカイネティクスを3秒、10秒、30秒、2分、10分、60分および3時間のインキュベート時間後に測定した。灰色のレベルにより重水素組み入れの%が示される。 図52は、B70−rFVIIIのHDX−MSヒートマップである。120ペプチドのHDX−MSカイネティクスを3秒、10秒、30秒、2分、10分、60分および3時間のインキュベート時間後に測定した。灰色のレベルにより重水素組み入れの%が示される。
図53は、FL−rFVIII凝集体の組成を示す図である。ネイティブなFL−rFVIII(1)および精製されたFL−rFVIIIの凝集体(2)の銀染色SDS−PAGEゲル;Mm、precision plus unstained protein standard(Bio−Rad)。
図54は、(A)FVIII一段凝固活性を示すグラフである。灰色の線は、FVIII種精製の出発材料であったSOS−E活性のレベルを示す。試料を2連で測定した。矢棒はSD値を示す。(B)FVIII発色活性。灰色の線は、FVIII種精製の出発材料であったSOS−E活性のレベルを示す。試料を2連で測定した。矢棒はSD値を示す。
図55は、FVIII種のトロンビンピークおよび遅延時間を示すグラフである。灰色の線は、FVIII種精製の出発材料であったSOS−E活性のレベルを示す。
図56は、FVIII生成物の銀染色SDS−PAGEを示す図である。
図57は、フューリン処理後のFL−rFVIIIの銀染色SDS−PAGEを示す図である。NuPAGE 3〜8%TrisAcetate Midi Gel(1.0mm;20ウェル、Invitrogen Cat.Nr WG1602BOX)。試料を、還元性LDS−SBと1:2で、37℃で1時間インキュベートした。750mMのヨードアセトアミド溶液を20μl/100μlで添加した。ゲルに150V(一定)で70分にわたって流し、銀染色した。
図58は、フューリン処理後のFL−rFVIIIのSDS−PAGEおよび抗FVIII−ウエスタンブロットを示す図である。NuPAGE 3〜8%TrisAcetate Midi Gel(1.0mm;20ウェル、Invitrogen Cat.Nr WG1602BOX)。試料を、還元性LDS−SBと1:2で、37℃で1時間インキュベートした。750mMのヨードアセトアミド溶液を20μl/100μlで添加した。ゲルに150V(一定)で70分にわたって流した。ウエスタンブロット:一次抗体:ヒツジ抗FVIII:C 二次抗体、ロバ抗ヒツジIgG ALP。
発明の詳細な説明
以下で特に定義されていなければ、本発明において使用される用語は、当業者に公知のそれらの一般的な意味に従って理解されるものとする。
本明細書において引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、あらゆる目的に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明によると、「含む(comprising)」という用語の各出現は、必要に応じて「からなる(consisting of)」という用語で置き換えることができる。
本開示では以下の略語を使用する:
略語 完全な文脈/説明
AIEX アニオン交換クロマトグラフィー
ALP アルカリホスファターゼ
AS FVIII標準物質
B14390000−30 SourceS由来の出発材料
B20/B70/B100−rFVIII Bドメインを20%/70%/100%含有するヒト組換え第VIII因子
BDD−rFVIII ヒトBドメイン欠失組換え第VIII因子
BDS バルク原薬
C18 炭素原子18個を含有する直鎖アルカン(n−オクタデカン)を用いた逆相HPLC固定相
C4 炭素原子4個を含有する直鎖アルカン(n−ブタン)を用いた逆相HPLC固定相
CHO チャイニーズハムスター卵巣
CIEX カチオン交換クロマトグラフィー
CL4B 架橋アガロースベースマトリックス
Crillet4HP ポリソルベート80の商品名
CV カラム体積
Cys2 シスチン
DLS 動的光散乱
DTT ジチオスレイトール
E1 溶出液プール1
E2 溶出液プール2
EG エチレングリコール
ELISA 酵素結合免疫吸着検定法
EtOH エタノール
ExPASy Swiss Institute of Bioinformatics Bioinformatics Resource Portal
F8_AD2_90kDa SourceQおよびMonoQの実行により得られた90kDaの亜種が濃縮された出発材料
F8A 血液凝固第VIII因子をコードする遺伝子座
Fc 結晶化可能断片
FIX 血液凝固第IX因子
FIXa 活性化された血液凝固第IX因子
FL−rFVIII (好ましくはヒト)全長組換え第VIII因子
FPLC 高速タンパク質液体クロマトグラフィー
Frac 画分収集器具
FT フロースルー
FV 血液凝固第V因子
FVa 活性化された血液凝固第V因子
FVII 血液凝固第VII因子
FVIIa 活性化された血液凝固第VII因子
FVIII 血液凝固第VIII因子
FVIIIa 活性化された血液凝固第VIIIa因子
FX 血液凝固第X因子
FXa 活性化された血液凝固第X因子
FXI 血液凝固第XI因子
FXIa 活性化された血液凝固第XI因子
FXII 血液凝固第XII因子
FXIII 血液凝固第XIII因子
FXIIIa 活性化された血液凝固第XIII因子
HAc 酢酸
HDX−MS 水素/重水素交換質量分析
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
HIC 疎水性相互作用クロマトグラフィー
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HPLC−SEC 高性能サイズ排除クロマトグラフィー
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
IgG 免疫グロブリンG
IPA イソプロピルアルコール
IU 国際単位
kDa キロダルトン
L ロード
LDS ドデシル硫酸リチウム
M 分子量マーカー
M モル濃度
mAB モノクローナル抗体
MES 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸
MilliQ 超純水1型
NaCl 塩化ナトリウム
NaOH 水酸化ナトリウム
NE 溶出後液
OC1 アルカリ性平衡化バッファー
Out1〜7 出口弁1〜7
P1 生成物プール1
P2 生成物プール2
pdFVIII(好ましくはヒト)血漿由来第VIII因子
PE 溶出後液
PETG ポリエチレンテレフタレート
ポリソルベート80 非イオン性界面活性物質
ProtParam タンパク質の種々の物理的および化学的パラメータを算出するためのツール
PVDF ポリビニルジスルホン
QA1 AIEX平衡化バッファー
QB1 AIEX溶出バッファー1
QB2 AIEX溶出バッファー2
Rel.Abs. 相対吸光度
rFVIII 組換え血液凝固第VIII因子
RP 逆相
S/D 溶媒/界面活性剤
SA3 CIEX平衡化バッファー
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
SDS−Page ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
SOP 標準操作手順
SOS−E SourceS溶出液
TFA トリフルオロ酢酸
TFPI 組織因子経路インヒビター
ThT チオフラビンT
TNBP リン酸トリブチル
Tris トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン
Triton X100 4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール
Trp トリプトファン
TWA 1Mの塩化ナトリウム溶液
Tween 80 ポリソルベート80の商品名
Tyr チロシン
UV 紫外線
v/v 体積/体積
VE 溶出前液
vWF フォン・ヴィルブランド因子
W1〜3 洗浄相1〜3
図2Aに示されている通り、全長単鎖第VIII因子(FVIII)は、A1、A2、B、A3、C1およびC2と称される6つの主要なドメインを含む。生合成の間に、単鎖FVIIIは2つの鎖、重鎖1つと軽鎖1つに切断される。単鎖FVIII全体を通して異なる切断位置が存在することにより、4つの重鎖バリアントおよび2つの軽鎖バリアント:全長重鎖バリアント(180kDa)、短縮型重鎖バリアント(150kDaおよび110kDa)およびBドメイン枯渇重鎖バリアント(90kDa)、標準軽鎖(80kDa)および伸長型軽鎖(120kDa)の生成が導かれる。本明細書では、重鎖バリアントは主にFVIII 180kDa重鎖またはB100−FVIII、FVIII 150kDa重鎖またはB70−FVIII、FVIII 110kDa重鎖またはB20−FVIII、およびFVIII 90kDa重鎖またはBDD−FVIIIと称される。これらの重鎖バリアントの1つと軽鎖の1つの会合により、それぞれが重鎖1つと軽鎖1つを含むいくつかの不均一FVIII亜種がもたらされる。
「FVIIIを含む組成物」という用語は、本明細書で使用される場合、全てのFVIIIが以下の通り定義される組成物を指す。別段の指定のない限り、「第VIII因子」または「FVIII」という用語は、本明細書で使用される場合、いくつかの不均一FVIII亜種を含む天然にプロセシングされたFVIIIを指す。しかし、天然にプロセシングされた後であっても、FVIIIは、残留単鎖(すなわち、切断されていない)FVIIIを含み得る(以下を参照されたい)。天然のプロセシングが非効率的である場合、FVIIIは、主に単鎖FVIIIを含むこともあり得る。したがって、「第VIII因子」または「FVIII」という用語は、本明細書で使用される場合、残留単鎖FVIIIまたはさらには主に単鎖FVIIIを含む天然にプロセシングされたFVIIIも指す。
当業者には分かる通り、「全長rFVIII」という用語は、本明細書で使用される場合、全長FVIII cDNAから発現されるrFVIIIを指す。上記の通り、全長rFVIIIは、rFVIII亜種の不均一混合物で構成される。
当業者には分かる通り、種々のFVIII重鎖の分子量、すなわち、180kDa、150kDa、110kDaおよび90kDa、ならびにFVIII軽鎖の分子量、すなわち、80kDaおよび120kDaは、SDS pageで示される「見かけの分子量」である。必要であれば、個々のFVIII重鎖および軽鎖の既知のアミノ酸配列に基づいて「真の分子量」をどのように算出することができるかが当業者には分かるであろう。
当業者には理解される通り、「単鎖FVIII」は、本明細書で使用される場合、一般に、切断されていないFVIIIを指す。図2Aに示されている通り、単鎖は、第VIII因子の全てのドメインを含み得る。しかし、全長FVIIIに存在するいくつかのドメイン、1つのドメイン、またはドメインの一部を欠くFVIIIを生成することも可能である。そのような場合、「単鎖FVIII」はなお、それぞれいくつかのドメイン、1つのドメイン、またはドメインの一部を欠く切断されていないFVIII生成物を指す。
当業者には理解される通り、本発明に従ってFVIII亜種を精製する方法では、FVIIIを含む組成物は、溶液であることが好ましいが、組成物は、本発明の方法を実施する前に溶解させる固体であってもよい。上記の通り、FVIIIの細胞内生成の結果、通常、いくつかの不均一活性FVIII亜種の生成がもたらされる。したがって、当業者には明らかになる通り、FVIIIを含む組成物は、1つよりも多くのFVIII亜種を含有する。
本明細書で使用される場合、「重量比」という用語は、重量の比を指す。例えば、組成物中の精製されたFVIII亜種の組成物中の他の全てのFVIII亜種に対する重量比は、組成物中の精製されたFVIII亜種の重量を組成物中の他の全てのFVIII亜種の重量で割ることによって算出される。
当業者には理解される通り、本発明に従ってFVIII亜種を精製する方法は、FVIII亜種の組成物に含まれる他の全てのFVIII亜種に対する重量比を増大させることを指す。本発明の方法の出発材料として使用されるFVIIIを含む組成物は、本発明の方法を実施した後の精製されたFVIII亜種を含む組成物とは異なるバッファーを含有し得、また、異なる体積を有し得る。それでも、本発明の方法を実施することによって重量比の増大を評価するため(すなわち、精製を評価するため)に、FVIII亜種の重量を、本発明の方法の出発材料として使用されるFVIIIを含む組成物において、および本発明の方法を実施した後の組成物において決定する。さらに、他の全ての亜種の重量を、本発明の方法の出発材料として使用されるFVIIIを含む組成物において、および本発明の方法を実施した後の組成物において決定する。次いで、FVIII亜種の他の全てのFVIII亜種に対する重量比を、本発明の方法の出発材料として使用されるFVIIIを含む組成物において、および本発明の方法を実施した後の組成物において算出することができ、そして、重量比の増大を決定することができる。
組成物中のFVIII亜種の他の全てのFVIII亜種に対する重量比を決定するために、FVIII亜種の重量を下記の通りC4逆相HPLCによって決定する。当業者には明らかになる通り、C4逆相HPLCを使用して、曲線下面積、したがって、組成物中のFVIII亜種の濃度を決定する(以下を参照されたい)。所与の体積を有する溶液では、FVIII亜種の濃度の他の全てのFVIII亜種の濃度に対する比は、FVIII亜種の他の全てのFVIII亜種に対する重量比と等しい。したがって、本発明では、曲線下面積の比、したがって、濃度の比を、FVIII亜種の組成物に含まれる他の全てのFVIII亜種に対する重量比の増大を評価するために使用する。
上記の通り、FVIII亜種は、通常、重鎖1つと軽鎖1つを含み、これらは互いと会合している。したがって、本発明に従ってFVIII亜種を精製するための方法では、出発材料として使用されるFVIIIを含む組成物および本発明の方法を実施した後の精製されたFVIII亜種を含む組成物は、重鎖1つと軽鎖1つで構成されるFVIII亜種を含むことが好ましい。しかし、本発明の方法を実施する前または実施中のいずれかに、FVIII重鎖とFVIII軽鎖を解離させることも可能である。したがって、本発明の方法の代替の実施形態では、本発明の方法の実施後、精製されたFVIII亜種は、重鎖を1つ含むが、軽鎖は含まない。そのような実施形態では、本発明の方法の出発材料として使用されるFVIIIを含む組成物は、重鎖1つで構成され、軽鎖がないか、または軽鎖1つと会合した重鎖1つで構成される1つまたは複数のFVIII亜種を含み得る。当然、本発明の方法の出発材料として使用されるFVIIIを含む組成物が、重鎖1つで構成され、軽鎖がないFVIII亜種を含む場合、解離した軽鎖はなお組成物中に存在し得る。
本明細書では、「FVIII種」という用語は、一般に、「FVIII亜種」と同等に使用される。しかし、時々、「FVIII種」という用語は、本明細書で使用される場合、単一のFVIII重鎖または軽鎖も指し得ることが当業者には明らかになろう。
当業者には明らかになる通り、本発明の方法の個々のステップを任意の次のステップに進む前に繰り返すことができる。そのような実施形態では、同じステップの各反復の結果得られた溶液(例えば、クロマトグラフィー溶出液)をプールし、次いで、次のステップの出発材料として使用することができる。
本発明のFVIIIはヒトFVIIIであることが好ましく、精製されるFVIII亜種はヒトFVIII亜種であることが好ましい。
本発明のFVIIIは組換えFVIIIであることが好ましく、精製されるFVIII亜種は組換えFVIII亜種であることが好ましい。しかし、本発明のFVIIIが血漿由来(pd)FVIIIであり、精製されるFVIII亜種が血漿由来(pd)FVIII亜種であることも可能である。
原理上は、第VIII因子を含む任意の組成物を、本発明に従って第VIII因子亜種を精製するための方法を実施するための出発材料として使用することができる。
例えば、組換えヒト抗血友病因子VIII ADVATE(Baxaltaの製品)またはADVATEバルク原薬(BDS)を本発明の方法に使用することができる。ADVATEは、あるいはOctocog alfaと称され、ADVATEに関するさらなる情報は、例えば、Keating et al.(Keating et al., 2012;その全体が本明細書に組み込まれる)において見出すことができる。ADVATE生成の間、組換えFVIIIが小胞輸送によって分泌され、したがって、発酵上清中に濃縮される。精製後、rFVIII生成物プールを−80℃で急速冷凍し、本明細書では、ADVATEバルク原薬(BDS)と称される。特に、ADVATE/ADVATE BDSは、いくつかの不均一FVIII亜種を含む。
あるいは、SOS−Eなどの溶出液を本発明の方法における出発材料として使用することができる。SOS−Eは上記のADVATE BDSとして生成されるが、最終的な精製ステップを欠く。
あるいは、ヒト全長FVIII(FL−FVIII)を含む他の組成物を本発明の方法における出発材料として使用することができる。特に、上記の通り、生合成の間、単鎖FVIIIがプロセシングされて異なる重鎖および軽鎖になる。したがって、本発明の方法の出発材料として使用することができるFL−FVIIIは、一般に、いくつかの不均一FVIII亜種を含み、そのそれぞれが重鎖1つと軽鎖1つを含む。
本発明の方法では、第VIII因子を含む組成物をフューリンプロテアーゼ処理することにより、クロマトグラフィーの間の第VIII因子亜種の分離が改善され、それにより、前記第VIII因子亜種をさらに高い純度および濃度で含む組成物がもたらされる。フューリン処理は、当業者には分かる通り実施される。例えば、フューリン処理は、FVIIIを含む組成物をフューリンと混合することによって、または、FVIIIを含む組成物をフューリンを含むカラムに適用することによって実施することができる。例えば、フューリンをカラムに固定化することができ、次いで、FVIIIを含む組成物をカラムに適用することができる。あるいは、FVIIIをカラムに結合させ、次いで、フューリンをカラムに適用することができる。本発明では、組成物中に含まれるFVIIIをフューリンプロテアーゼ処理に供する場合、フューリンの最終濃度は、100IU/mLよりも高いことが好ましい。最終濃度とは、本明細書で使用される場合、FVIIIを含む組成物をフューリンと共にインキュベートしている間、すなわち、FVIIIを含む組成物をフューリンと混合した後のフューリン濃度を指す。
フューリンプロテアーゼ処理の間、FVIIIを含む組成物中に含まれ得る伸長型FVIII軽鎖(120kDa)の大部分が切断されて標準軽鎖(80kDa)がもたらされる。したがって、本発明の方法がフューリンプロテアーゼ処理を伴う場合、精製されたFVIII亜種は、FVIII 80kDa軽鎖を含有し、FVIII 120kDa軽鎖をほとんど含有しないことが好ましい。FVIII 120kDa軽鎖をほとんど含有しないとは、FVIII 120kDa軽鎖の重量が、精製されたFVIII亜種の中の全てのFVIII軽鎖の総重量の5%未満、好ましくは1%未満であることを指す。
本発明の方法では、FVIII亜種を精製するために、いくつかのクロマトグラフィーステップを実施する。これらのクロマトグラフィーステップはそれぞれが「前記FVIII亜種を含む溶出液を収集すること」を含む。本明細書で使用される場合、「前記FVIII亜種を含む溶出液を収集すること」とは、通常、溶出液の画分、すなわち、精製されるFVIII亜種を含む画分だけを収集することを意味する。精製されるFVIIII亜種を含む前記画分は、溶出液中に存在する、精製されるFVIII亜種の全てを含む必要はない。そうではなく、精製されるFVIII亜種を含む画分は、精製されるFVIII亜種を最大量で含むと同時に他のFVIII亜種を最小量で含むように選択する。精製されるFVIII亜種を最大量で含むと同時に他のFVIII亜種を最小量で含む画分を選択するための種々の方法が当業者には分かるであろう。例えば、溶出液をいくつかの等体積の別々のアリコートとして収集することができる。次いで、各アリコート中の精製されるFVIII亜種の濃度および他の全てのFVIII亜種の濃度を、タンパク質濃度の分光光度測定による決定、ポリアクリルアミドゲル電気泳動プラス銀染色および/またはウエスタンブロッティング、またはクロマトグラフィーなどの公知の方法によって決定することができる。最後に、精製されるFVIII亜種を最高量で含有すると同時に他のFVIII亜種を最低量で含むアリコートを、精製されるFVIII亜種を含む画分として選択することができる。これらのアリコートをプールし、本発明によるFVIII亜種を含む溶出液として使用することができる。
当業者には明らかになる通り、精製されるFVIII亜種を最高量で含有すると同時に他のFVIII亜種を最低量で含有するアリコートを選択するプロセスは、本発明の方法を実施することによって得られる精製されたFVIII亜種の純度および濃度に影響を及ぼす。例えば、本発明によるFVIII亜種を含む溶出液から精製されるFVIII亜種を含有するアリコートがいくらかでも漏れると、本発明の方法を実施することによって得られる精製されたFVIII亜種の濃度が低下する。また、他のFVIII亜種を有意な量で含有するアリコートが含まれることによって、本発明の方法を実施することによって得られる精製されたFVIII亜種の純度が低下する。したがって、本発明の方法を実施することによって得られる精製されたFVIII亜種の所望の濃度および純度に応じて、当業者は、いずれのアリコートを、精製されるFVIIII亜種を含む画分として選択するかを決定する。
当業者には明らかになる通り、本発明の方法において、精製されるFVIII亜種を含む溶出液が1回または限られた回数決定されたら、方法を、精製されるFVIII亜種を含む溶出液を決定せずに繰り返すことができる。そのような実施形態では、精製されるFVIII亜種を含む溶出液を、精製されるFVIII亜種を含む溶出液についての前の決定に基づいて選択し、同じ溶出液を収集する。当然、本発明の方法を精製されるFVIII亜種を含む溶出液を決定せずに実施する場合であっても、精製されるFVIII亜種を最大量で含むと同時に他のFVIII亜種を最小量で含む画分の選択を、例えばクロマトグラムを使用してモニタリングすることができる。
本発明のFVIII亜種を精製するための方法は、いくつかのクロマトグラフィーステップを含む。当業者には分かる通り、本発明による方法におけるクロマトグラフィーを実施する異なる方式が存在する。例えば、わずかな不純物を伴い、対応する樹脂での挙動が全く異なるただ1つまたは2つの生成物を含有する試料の精製を、定組成溶出方式またはステップグラジエント溶出のいずれかを使用して実施することができ、結果は十分であると思われ得る。定組成溶出は溶出相全体を通して溶出液混合物を変化させずに実施するが、段階溶出では、1つの溶出液の分率を徐々に上昇させる。
上記の通り、典型的な全長組換えFVIIIの組成物は、全ての可能性のある重鎖断片および軽鎖断片を含むので、高度に不均一である。さらに、全ての亜種が同じ単鎖分子に由来するので、これらは大体同じ挙動を示す。したがって、一般に、定組成溶出では満足のいく結果が導かれない可能性がある。本発明の方法によるFVIII亜種を精製するための方法は、リニアグラジエント溶出であることが好ましい。これらに限定されないが、リニアグラジエント溶出の一般的な原理ならびに他の型の溶出に対する利点および不都合を含めた簡単な説明を以下に提供する(図3も参照されたい)。
定組成溶出方式とは対照的に、リニアグラジエント溶出における2つの溶出液の相対量は、時間の経過とともに変動する。リニアグラジエント溶出は、多くの場合、強力な溶出液を低パーセンテージで用いて開始される。次いで、その量を絶えず上昇させ、したがって、弱い溶出液の分率を低下させる。それにより、溶出液相の溶出を引き起こす性質、例えば、イオン交換クロマトグラフィーでは極性が、経時的に強化される。グラジエントの長さおよび傾きは、互いに反比例する。傾きが急であるほど、グラジエントの長さ、およびそれにより、溶出相が短くなる。グラジエントの長さは、ほとんどの場合、カラム体積の倍数として表される。グラジエントの傾きは、溶出挙動に大きな影響を及ぼす。親和性が弱い物質はグラジエントの最初に溶出し、強力な親和性を有する物質の固定相との連結を破壊するためには、強力な溶出液がより多量に必要になる。
リニアグラジエント溶出は、同様の分子の混合物に適したものであることが好ましい。他の溶出型とは対照的に、条件の全範囲がリニア溶出方式に包含される。これにより、ある特定の分子を溶出するための適切な条件がある時点でもたらされることが確実になる。2つの分子が高い類似性を示す場合であっても、それらの差異により、少なくともわずかに異なる溶出挙動が引き起こされる。グラジエントの傾きを平坦化することは、これらの2つの物質を、より弱い結合性物質を溶出し、親和性が高い結合性物質を付着したままにすることによって少なくとも部分的に分解するために役立ち得る。一般に、これにより、リニアグラジエント溶出が、多くの適用分野を有する非常に頑強なプロセスになる。しかし、グラジエントの傾きを平坦化することには欠点がある。グラジエントが平らになるほど、より多くの移動相がカラムを通って運ばれ、それにより、総体積がより大きくなる。ある特定の物質を溶出するのにより長くかかり、より多くの溶出液が必要になり、したがって、最終的な溶出液画分においてより希釈されることになる。クロマトグラムにおいていわゆるピークブロードニングが観察される。逆に、リニアグラジエントでは、定組成溶出と比較してピークブロードニングが最小限になり得る。定組成溶出では、分子が広範なピークの形態の長い範囲で溶出され得る。溶出挙動が分かっている場合、より急なリニアグラジエントを適用して別個の物質の溶出を加速することができる。得られるピークはより鋭く、溶出液画分はより高度に濃縮される。
本発明の方法の種々のクロマトグラフィーステップは、当業者には分かる通り実施される。以下に、本発明による方法において実施される異なるクロマトグラフィーステップの好ましい実施形態を記載する。しかし、本発明は、これらの実施形態に限定されない。
当業者には明らかになる通り、本発明の方法は、スモールスケールでまたはラージ(すなわち、分取)スケールで実施することができる。スモールスケールでは、方法を種々の異なる条件下で実施して最適な条件を見出し、次いでそれをラージスケールで使用することができる。本発明者らが特に適切であることを見出した条件を以下に示す。しかし、本発明はこれに限定されない。
本発明の全てのクロマトグラフィーの実行に先立って、クロマトグラフィーシステムを1Mの水酸化ナトリウム、1Mの酢酸および最終的に、衛生化のためにMilliQを用いて処理することができる。さらに、システムポンプおよび試料ポンプをパージして閉じ込められた空気をポンプ本体から取り除くことができる。最後に、全ての入口を対応するバッファーで流すことができる。
本発明の方法の第1のクロマトグラフィーステップ:
本発明による第VIII因子亜種を精製するための方法では、第1のクロマトグラフィーステップは、アニオン交換クロマトグラフィーステップである。本発明者らは、驚いたことに、その分解能が高いことにより、高い分離能がもたらされることを見出した。
スモールスケールでは、MonoQ樹脂を使用し、異なる条件下でいくつかの実行を実施して、最も適切なパラメータの組合せを評価することができる。そのような実行は、例えば、AKTA Avant 25またはAKTA Pure 25システムで、4℃において、カラム体積が0.982mLのMonoQスモールスケールカラムを使用して実施することができる。FVIII亜種の大まかな分離が実現される。
当業者には明らかになる通り、標準のMonoQバッファー系および標準の条件を本発明の方法の(第1の)アニオン交換クロマトグラフィーステップに使用することができる。本発明の方法において使用することができる例示的なMonoQバッファーを表9に列挙する。出発材料は、FL−rFVIIIを含む組成物、例えば、SourceS溶出液(SOS−E)と称される組成物であり得る。SOS−Eは、高イオン強度条件下で溶出され、−60℃未満で保管されている。活性の喪失を回避するために、出発材料を室温でゆっくりと解凍することが好ましい。その後、ネイティブな試料を、低イオン強度バッファー、例えば、QA1バッファーを用いて希釈係数4で希釈することができる。これにより、電気伝導率が十分な程度まで低下し、したがって、生成物がMonoQ樹脂に結合することが可能になる。試料溶液を最終的に、0.2μmのメンブランフィルターで滅菌濾過してカラムベッドの潜在的な混入または遮断を回避することができる。以下の表は、各クロマトグラフィーステップについてのバッファー、グラジエント、直線流速および滞留時間ならびにカラム体積および流れ方向に関する情報を含めた例示的な一般的なクロマトグラフィースキームを示す。
本発明による方法の第1のステップにおいてスモールスケールクロマトグラフィーをどのように実施するかに関する例示的な(「標準の」)実施形態を以下に記載する。当業者には明らかになる通り、条件は全て、ただ単に好ましいパラメータおよび条件を表し、本発明をそれらに限定するものではない。さらに、列挙されているパラメータおよび条件は全て、本発明の方法に従って第1のクロマトグラフィーステップを実施するために任意の他の列挙されているパラメータおよび条件と組み合わせることができる。最初に、カラムを4つの別個のステップで構成される集中的な平衡化相に供することが好ましい。カラムを、高イオン強度アルカリ性溶液であるOC1バッファーを用いて6カラム体積にわたって洗浄し、その後、OC1バッファーをカラムから取り除くために、超純水を用いた洗浄ステップを行う。OC1バッファーを用いた処理により、MonoQ樹脂の全ての第四級アンモニウム基がそれらの対応する対イオン、この場合には一価塩化物イオンにカップリングすることが確実になる。以前の保管または任意の他の残りの分子から生じる水酸化物イオンのようなイオンでの塩化物イオンの交換はアルカリ性条件下で優先的に起こる。最終的なバッファー組成に対するカラムを調製するために、樹脂を、65%QA1と35%QB1の混合物を用いて5カラム体積にわたって平衡化することができる。これらはどちらも50mMのTrisバッファーであり、塩化ナトリウム濃度のみが異なる。さらに、どちらのバッファーも、それぞれタンパク質構造の安定化および負に荷電した表面への吸着の防止のために必要である5mMの塩化カルシウムおよび0.1%ポリソルベート80を含有する。すでに述べたQA1バッファーとQB1バッファーの比により、塩化ナトリウム容量モル濃度およそ260mMがもたらされる。第4のおよび実際の平衡化ステップは、排他的にQA1バッファーを用いて実施することが好ましい。これが試料適用前の最後のステップであるので、総体積10カラム体積をカラムを通過させて、どちらもFVIII分子の樹脂への結合のために必要である低電気伝導率およびほぼ中性のpH条件を保証する。試料を上記の通り調製し、次いで、試料ポンプおよび空気センサーを使用してカラムに適用することができる。カラムロードは、およそ18,500IU/mLのMonoQ樹脂である。得られたフロースルーを出口弁を介して収集し、残りの結合していない生成物をさらに分析するために使用することができる。結合していない試料溶液を4カラム体積のQA1バッファーを使用した洗浄ステップによってカラムから取り出すことができる。軽微な不純物を低塩濃度によって取り除くことができる。したがって、どちらも10カラム体積の、13%および18%QB1バッファーを用いた2つの洗浄ステップを実行することが好ましい。これまでに記載したこれらのステップは全て、滞留時間8.40分に対応する直線流速35.71cm/hで実施することができる。リニアグラジエント溶出の間の流速は20.0cm/hまで低下させることが好ましく、8カラム体積にわたってQB1バッファーの濃度を18%から100%まで上昇させる。これにより、20mS/cmで始まり、最終的に、大まかに80mS/cmで終わる電気伝導率グラジエントがもたらされる。このレベルをさらなる5カラム体積にわたってほぼ同様の流速で維持して、最終的に、残りのFVIII亜種を取り除くことができる。3つの洗浄ステップの全てならびにグラジエントおよび直線ステップ溶出をその後の試料採取のために画分収集器具に妥当な画分サイズで集めることができる。溶出が完了したら、カラムを再生して、あらゆる種類の残りの物質、主にタンパク質およびペプチドを樹脂から取り除かなければならない。各ステップが5カラム体積である一連のMilliQ、75%酢酸、MilliQおよび1Mの水酸化ナトリウムを2回繰り返し、最終的に、別のMilliQすすぎのステップで完了することが好ましい。MonoQ樹脂の莫大な結合能に起因して結合はカラムの上部領域で起こることが想定されるので、流れは上方に方向付ける。能力の限界に達することはほとんどない。しかし、再生相におけるダウンフロー方式では、不純物が1つの結合性部位から次の結合性部位まで、最終的にカラム出口で取り除かれるまで単に輸送される。アップフロー方式では、対照的に、不純物がはるかに効率的に取り除かれる。さらに、カラム衛生化により、細菌または藻類による生物学的混入が防止される。再生サイクルの間の直線流速は、それぞれの溶液に依存する。MilliQは粘度が低いので、最大直線流速60.48cm/hのみを使用する。75%酢酸ははるかに粘性が高く、カラム内の圧力問題を引き起こす可能性がある。これを防止するために、その流れを19.05cm/h、大まかに最大流速の3分の1まで遅くすることができる。1Mの水酸化ナトリウム溶液を使用するステップは、中間の流速で動作させることが好ましい。最終ステップはカラム保管であり得る。MonoQ樹脂は、それらを無菌に保つため、または少なくとも微生物ファウリングを防止するために、10mMの水酸化ナトリウム溶液中で保管する。カラムを、10mMの水酸化ナトリウム溶液を5カラム体積で用い、ダウンフロー方式、中間の流速38.10cm/hで流すことができる。
本発明の方法による第1のクロマトグラフィーステップでは、溶出相におけるグラジエントの長さを延長することが好ましい。本発明者らは、驚いたことに、これにより、FVIII亜種の分離が増強されることを見出した。標準のリニアグラジエントの長さは、上記の通り8カラム体積に設定する。得られるグラジエントは、電気伝導率がその標的値にちょうど8カラム体積で達するので、比較的急勾配であり、持続時間が短い。グラジエントの長さを16カラム体積に倍加することにより、2倍平らな電気伝導率の上昇が導かれる。バッファー系自体および他の相をさらに改変する必要はない。
好ましい実施形態では、本発明による方法における第1のクロマトグラフィーステップの前にフューリンプロテアーゼ成熟化を実施することができる。フューリンプロテアーゼは、通常、プロペプチドおよび未成熟タンパク質を切断してそれらのそれぞれの活性型にすることに関与する。本発明者らは、驚いたことに、試料をある特定の量の活性なフューリンと共にインキュベートすることにより、不均一性の低減、したがって溶出の間の異なる挙動が導かれることを見出した。したがって、成熟化手順を標準の試料調製に含めることが好ましい。そのような実施形態では、ネイティブな試料を、そのイオン強度を低下させるため、および溶液温度を上昇させるために、例えば室温にしたQA1バッファーを用いて希釈係数2で希釈することができる。どちらも酵素が妥当な機能および活性を示すために必要である。次いで、ある特定の量の酵素溶液を添加し、その結果、この時点の濃度を、希釈された試料溶液1mL当たり少なくとも100IUすることができる。例えば最小の持続時間である4時間にわたって室温でインキュベートした後、酵素反応を停止させるため、および試料電気伝導率をさらに低下させるために、冷QA1バッファーを用いた別の希釈ステップ(1:2)を実施することができる。どちらの希釈ステップも、総希釈係数4に対応し得る。最終的に、試料溶液を0.2μmの滅菌フィルターカプセルを通して濾過して、最終的に存在する固体粒子を取り除き、カラム損傷を防止することができる。フューリンプロテアーゼ処理に加えて、上記の通りグラジエントの長さを延長する手法を適用することが好ましい。溶出相に対して16カラム体積のグラジエントの長さを保持することができる。
本発明の方法による第1のクロマトグラフィーステップのさらなる実施形態では、さらに延長されたグラジエントの長さおよび溶出相への添加剤としてのエチレングリコールによりFVIII亜種の分離が実現される。クロマトグラフィースキームは、表1に記載のものとグラジエントの長さおよびバッファー組成以外はほぼ同一であり得る。フューリンプロテアーゼで処理し、希釈した試料をカラムに適用し、その後、4カラム体積の元のQA1バッファーで流すことができる。次の2つの洗浄ステップは、QA1およびQB1バッファーを含有するエチレングリコールを用いて実施することができる。次いで、32カラム体積の増大されたグラジエントの長さにわたってQB1バッファーを含有するエチレングリコールのパーセンテージを18%から100%まで上昇させることにより、溶出を行うことができる。グラジエントの長さの延長により、FVIII亜種ピークの分布がさらに広がるはずである。エチレングリコールにより、溶出の間のバッファーの電気伝導率が低下する。エチレングリコールは、標的タンパク質の疎水性に対処することによって分解能を増大させるために添加することができる。
本発明による方法の第1のステップにおいてラージスケール(分取)クロマトグラフィーをどのように実施することができるかに関する例示的な実施形態を以下に記載する。当業者には明らかになる通り、条件は全て、ただ単に好ましいパラメータおよび条件を表し、本発明をそれらに限定するものではない。さらに、列挙されているパラメータおよび条件は全て、本発明の方法に従って第1のクロマトグラフィーステップを実施するために任意の他の列挙されているパラメータおよび条件と組み合わせることができる。FVIII亜種のラージスケール精製の第1のステップとして、MonoQ Prep Scaleカラムをおよそ20mLのカラム体積で使用して分取アニオン交換クロマトグラフィーを実施することができる。MonoQ樹脂および対応するカラムハードウェアに関するさらなる情報を以下に提示する。分取的実行を上記と同様の条件下で実施することができる。したがって、スモールスケールでの実行について記載されている好ましい実施形態は分取的実行の好ましい実施形態でもある。それでも、有用であると評価されたいくつかのパラメータを分取MonoQ実行のための例示的なクロマトグラフィースキームに実装することが好ましく、それを以下の表に示す。
スモールスケールでの実行と同様に、SOS−Eを分取的実行のための出発材料として使用することができる。カラムローディングをMonoQ樹脂1mL当たり20,000IUに設定することができる。カラムローディングに対応する必要量をゆっくりと解凍し、その後、例えば、室温にしたQA1バッファーを用いて希釈係数2で希釈することが好ましい。フューリンプロテアーゼ成熟化を、希釈された試料溶液1mL当たり≧100IUの活性レベルで、例えば室温で少なくとも4時間にわたって実施することができる。次いで、フューリン成熟化された試料溶液を、再度QA1バッファーを用いて希釈係数2で希釈し、したがって、総希釈度を1:4と等しくすることができる。この時は、溶液温度を低下させることによってフューリン活性を低下させるために、使用するQA1バッファーを4℃に冷却することが好ましい。最終的に、試料溶液を、蠕動ポンプおよび滅菌ケイ素チューブを使用して0.2μmの滅菌フィルターモジュールを流速50mL/分で通して濾過することができる。出発材料のバッファー組成には、例えば、それらが由来する異なるクロマトグラフィーステップに起因して差異があり得る。例えば、本発明では、F8_AD2_90kDaと称される90kDaの亜種のプールの精製により、改変された試料調製手順を開発することが必要になる。FVIII以外のタンパク質をそれほど伴わず出発材料に利用可能な発色値が存在しない場合、活性は、タンパク質濃度から、タンパク質1mg当たり5000IUである概算の比活性を使用して大まかに導き出すことができる。例を以下に示す:
ここで、4000IU/mLは、カラムローディングの上限である20,000IU/mLよりもかなり低く、したがって、試料プール全体を単一の実行でカラムに適用することができる。したがって、試料を解凍し、その後、例えば室温にしたQA1バッファーおよびSA3バッファーを用いて、電気伝導率11mS/cmおよびpH値6.5に達するまで希釈することができる。ネイティブな試料体積とQA1バッファーとSA3バッファーの比は、およそ1:4:2.9である。この手順により、バッファー組成、電気伝導率およびpH値に関して、SourceS溶出液から開始したものと同様の条件が保証される。材料がすでに精製サイクル全体を通っており、したがって、非常に純粋であるはずである場合には、フューリン成熟化および滅菌濾過を実施しないことが好ましい。一般的なクロマトグラフィーステップおよびバッファーを変化させずに保持することができる。カラム平衡化を、6カラム体積のアルカリ性OC1バッファーを直線流速71.0cm/hで用いて開始することができる。直線流速は、グラジエント溶出相まで維持することができる。その後、アルカリ性OC1バッファーを取り除くために、2カラム体積の超純水をカラムに適用することができる。実際のカラム平衡化は、標準手順と同様に実施することができる。まず、5カラム体積の、65%QA1バッファーおよび35%QB1バッファーを含有する混合物をカラムに適用し、その後、試料ローディングのための妥当な条件を実現するために、10カラム体積のQA1バッファーを適用することができる。試料適用は、試料ポンプおよび空気センサーを使用してカラムに直接適用することによって行うことができる。通過する液体を、最終的に結合していない試料成分をさらに分析するために収集することができる。その後、結合していない試料を4カラム体積のQA1バッファーによって洗い流すことができる。弱い結合の試料成分を、それぞれQA1バッファー中13%および18%QB1のステップグラジエントを用いた2つの洗浄ステップによって溶出することができる。どちらも相の長さは10カラム体積であり、直線流速71.0cm/hで実施することができる。リニアグラジエント溶出自体により、32カラム体積において18%から100%までのQB1溶出バッファーの量が生じる。スモールスケールでの実行における評価から、延長されたグラジエントの長さを使用することが好ましい。溶出相の間の流速は、40.0cm/hまで低下させることが好ましい。別の5カラム体積のQB1バッファー、直線流速39.0cm/hにより、カラムになお結合しているタンパク質が取り除かれると推測される。カラム再生は、上記の標準の再生相とほぼ同一であってよい。75%酢酸などの高い粘度溶液に対して超純水のような粘度が低い溶液を使用する場合の高圧条件を防止するために、後の相を1カラム体積に対して前の相の低い直線流速で動作させた後に流れを増加させることができる。カラム再生はアップフロー方式で駆動することができる。カラムを最終的に、10mMの水酸化ナトリウム溶液中で保管することができる。分取MonoQ実行は、AKTA Pure 150システムで実施することができる。試料適用から開始して直線溶出相で終了する全ての相を異なる出口および画分収集器具を通じて収集することができる。リニアグラジエント溶出相の最初の部分および最後は出口位置に収集することができるが、生成物が最終的に溶出する範囲は、その後のプールのために画分収集器具で小画分に収集されることが好ましい。
本発明の方法の第2のクロマトグラフィーステップ:
本発明による方法の第2のステップにおいてスモールスケールクロマトグラフィーをどのように実施することができるかに関する例示的な実施形態を以下に記載する。当業者には明らかになる通り、条件は全て、ただ単に好ましいパラメータおよび条件を表し、本発明をそれらに限定するものではない。さらに、列挙されているパラメータおよび条件は全て、本発明の方法に従って第2のクロマトグラフィーステップを実施するために任意の他の列挙されているパラメータおよび条件と組み合わせることができる。本発明の方法の第2のクロマトグラフィーステップとしてのサイズ排除クロマトグラフィーは、MonoQカラムでアニオン交換クロマトグラフィーによって生成した溶出液をさらに精製するためのプロセスのステップとしての機能を果たす。これは、軽微な不純物を取り除くための最終精製ステップとも称することができる。サイズ排除クロマトグラフィーの一般的な手順の展開は、ベッド高が30cmであり、おおよそのカラム体積が23.5mLの予め充填されたSuperdex Increaese 200カラムで実現することができる。サイズ排除クロマトグラフィーは、分子が出入りできるゲル体積がその分子のサイズに応じて異なることに基づく。したがって、SEC樹脂は標的タンパク質に結合するまたはそれを保持するいかなる官能基も有さない。したがって、特定の平衡化または溶出バッファーを有する必要はなく、そうではなく、平衡化、試料適用および溶出相の間にランニングバッファーとしての機能を果たすバッファーを有する。大まかに300mMの塩化ナトリウムを得るために、SECランニングバッファーは20%QA1バッファーおよび80%QB2バッファーで構成されることが好ましい。これは、生成物をMonoQ樹脂から溶出することが好ましい塩濃度と同じ範囲内である。一般的なクロマトグラフィースキームは表3に見出すことができる。第1の平衡化相を使用して、カラムを通常保管する20%エタノールを取り除く。したがって、1.5カラム体積のMilliQは、滞留時間90分に対応する20.0cm/hで流すことができる。次いで、カラムをSECランニングバッファー中、2カラム体積に対して直線流速45.0cm/hで平衡化することができる。これがカラム保管以外の全てのステップについてのデフォルト流速であってもよい。より高い流速を試験したが、高圧条件が時に引き起こされるので不適切であることが分かった。満足のいく分離結果を得るためには、推奨される試料体積は25μLから500μLまでにわたる。そのような小さな試料体積は、キャピラリーループを使用して適用することができる。分離が実際に起こる溶出相の間に試料を1.5カラム体積のランニングバッファーで洗い流すことができる。この体積は、画分収集器具を使用して小画分中に収集する。その後、カラムを、2カラム体積の0.5Mの水酸化ナトリウム溶液および2カラム体積の超純水を含む短い再生相にデフォルト流速で供することができる。最終的に、保管のために、カラムに2カラム体積の20%エタノールを低下させた直線流速20.0cm/hで流すことができる。
本発明による方法の第2のステップにおいてラージスケール(分取)クロマトグラフィーをどのように実施するかに関する例示的な実施形態を以下に記載する。当業者には明らかになる通り、条件は全て、ただ単に好ましいパラメータおよび条件を表し、本発明をそれらに限定するものではない。さらに、列挙されているパラメータおよび条件は全て、本発明の方法に従って第2のクロマトグラフィーステップを実施するために任意の他の列挙されているパラメータおよび条件と組み合わせることができる。分取スケールサイズ排除クロマトグラフィーの手順は、上記のスモールスケール手順に基づき、したがって、大多数のパラメータを一定に保つ。分取スケールSECカラムベッド高はほぼ100cmであるので、ゲルベッド圧縮に対する感受性がはるかに高い。したがって、超過圧力条件および潜在的に生じるカラム損傷を回避するために、流速を劇的に低下させる必要がある。保管溶液を取り除くために第1の平衡化のステップを使用し、これは、通常は0.1Mの水酸化ナトリウムであるが、一部の場合では20%エタノール溶液も使用される。その目的で、実際の平衡化相の前に1カラム体積の超純水をカラムに低下させた流速で流すことができる。この相は、2カラム体積のSEC平衡化/溶出バッファーを滞留時間596.21分に対応する流速9.5cm/hで用いて行うことができる。以下のステップは全て、滞留時間529.35分と等しいデフォルト流速10.7cm/hで実施することが好ましい。所望のFVIII亜種を含有するMonoQ溶出液試料およそ30〜35mLを室温でゆっくりと解凍し、50mLのスーパーループによってカラムに直接適用することができる。スモールスケール実験において好ましく使用された元の溶出相は1.5カラム体積の長さであり、完全に分画されたものであった。分取スケールカラムサイズでは、適切な画分において目的の溶出の範囲を収集できるようにするために、元の溶出相を3つの別個の溶出相に分けることが必要になる。他の溶出相と同様に、第1の溶出相は、SEC平衡化/溶出バッファーをデフォルト流速で用いて0.24カラム体積に対して実施することが好ましく、出口弁を通じて収集する。生成物の実際の溶出は、第2の溶出相において起こるはずである。総体積0.49カラム体積をそれぞれ約16.5mLである55画分中に収集することができる。第3の溶出相は、0.77カラム体積の長さであり、第1の溶出相と同様に、出口弁を通じて完全に収集することができる。3つの溶出相は全て合わせて、全部で1.5カラム体積であってよく、これは、元の好ましいスモールスケール実験の溶出手順と等しい。その後、0.5Mの水酸化ナトリウムおよび超純水を用いた処理を含有する短いカラム再生を行うことができる。両方の相のそれぞれは、2カラム体積の長さであってよく、デフォルト流速10.7cm/hで行うことができる。最終的に、保管のためにカラムに1.5カラム体積の0.1Mの水酸化ナトリウム溶液を流すことができる。同じFVIII亜種の2つまたはそれよりも多くのバッチが順次精製される場合には、カラム再生およびカラム保管を最終的にスキップすることができる。そのような場合では、SEC平衡化/溶出バッファーを用いた再平衡化を第3の溶出相の直後に置くことができる。
本発明による方法における第2のクロマトグラフィーステップの別の実施形態では、150kDaの亜種と180kDaの亜種を互いに分離する代替法として疎水性相互作用クロマトグラフィーを実施する。室温、AKTA Avant 25システムにおいて1.0mLのフェニルセファロース高性能カラムでの実行を実施することができる。種々のパラメータおよび条件を変動させ、試験することができる。標準の条件下での実行のための例示的なクロマトグラフィースキームを表5に見ることができる。疎水性相互作用クロマトグラフィーの機構はイオン交換クロマトグラフィーとは反対であるので、試料の結合は高塩濃度条件下で起こり、一方、溶出は低電気伝導率で引き起こされる。標準のセットアップは、強度が異なる溶出バッファーを用いた2つの連続したリニアグラジエントを使用する2次元クロマトグラフィーである。本発明による方法の第2のステップにおいて疎水性相互作用クロマトグラフィーをどのように実施することができるかに関する例示的な実施形態を以下に記載する。当業者には明らかになる通り、条件は全て、ただ単に好ましいパラメータおよび条件を表し、本発明をそれらに限定するものではない。さらに、列挙されているパラメータおよび条件は全て、本発明の方法に従って第2のクロマトグラフィーステップを実施するために任意の他の列挙されているパラメータおよび条件と組み合わせることができる。カラムローディングの上限を樹脂1mL当たり10,000lUと指定することができ、実際のカラムローディングはその限界をさらに下回るように選択することができる。ある特定の量の、例えばSourceS溶出液を室温でゆっくりと解凍することが好ましい。その後、フューリンプロテアーゼを、フューリン活性が試料溶液1mL当たり100IUを上回る程度まで添加することができる。室温で4時間にわたってフューリン成熟化したら、試料をHICバッファーAを用いて希釈係数2で希釈することができる。これは、塩濃度を上昇させるため、および試料の結合を可能にするために必要である。0.2μmのフィルターディスクを通す濾過滅菌を試料調製の最終ステップとすることができる。カラム保管には20%エタノール溶液が一般に使用される。カラムに、最初に2カラム体積のHIC平衡化バッファーE1を流して、エタノールをカラムから取り除くことができる。これは、直線流速10cm/hで行うことができる。その後、カラムを、5カラム体積の、バッファーDを含有するエチレングリコール、および5カラム体積の高塩濃度平衡化バッファーE1を用いて平衡化することができる。直線流速20cm/hをこれらの2つのステップならびにその後のステップの全てのデフォルト流速として使用することができる。カラムを高塩濃度条件で平衡化した後、試料を適用することができる。タンパク質表面上の疎水性領域は、高度に極性の周囲の水相との接触を回避するために、樹脂上の疎水性フェニル基に結合する傾向がある。試料適用は、試料ポンプおよび空気センサーを用い、試料体積全体がカラムを通過するまで行うことができる。フロースルー画分を、出口位置を経て収集することができる。カラムを5カラム体積の平衡化バッファーE1で洗浄した後、溶出相を開始することができる。最初に、溶出バッファーCのパーセンテージ画分を20カラム体積において0から100%まで上昇させることができる。このレベルを溶出の第2の部分を開始するまでさらに5カラム体積にわたって保つことが好ましい。バッファーDを含有するエチレングリコールのレベルを16カラム体積において100%まで上昇させ、さらなる5カラム体積にわたって維持することができる。両方のグラジエントを含む溶出相全体を、画分収集器具を使用して小画分に収集することができる。カラムを、一連の超純水、イソプロピルアルコール、超純水、1Mの水酸化ナトリウム溶液および最終的に、再度超純水によって再生することができる。その後、保管のために、カラムに5カラム体積の20%エタノール溶液を流すことができる。
本発明による方法の疎水性相互作用クロマトグラフィーステップの別の実施形態では、バッファーを調整し、グラジエントの長さを延長する。全体的な手順は上記の実施形態と同様であるが、この実施形態ではいくつかのパラメータを変動させることが好ましい。塩化ナトリウム容量モル濃度が750mMである新しい平衡化バッファーを実装することが好ましく、これは、HICバッファーE2と称される−その電気伝導率はおよそ71mS/cmである。出発材料を150kDaが富化されたMonoQ溶出液プールに置き換えることができる。そのような試料がMonoQカラムへのローディング前にすでにフューリンプロテアーゼで処理されている場合、第2のフューリン成熟化は必要ない。試料溶液の電気伝導率を、平衡化バッファーと同じレベルに調整するために、HICバッファーAおよび2Mの塩化ナトリウム溶液を用いておよそ71mS/cmまで上昇させることが好ましい。カラム平衡化、試料適用およびカラム再生は、標準手順と同じであってよい。試料適用後の洗浄相を、新しい平衡化バッファーE2を使用して10カラム体積に倍加することが好ましい。溶出相自体は、塩化ナトリウムを全く含有しない溶出バッファーCを使用し、ただ1つのグラジエントからなることが好ましい。バッファーCの量を、延長されたグラジエントの長さ40カラム体積において、100%まではるかに平らに上昇させることが好ましい。100%バッファーCのレベルをさらに5カラム体積にわたって保つことができる。その直後に、カラムを通常の再生手順に供すことができる。バッファーDを含有するエチレングリコールを使用した第2のグラジエントはもはや使用しないことが好ましい。
本発明による方法における第2のクロマトグラフィーステップの好ましい実施形態では、疎水性相互作用クロマトグラフィーは、ネガティブモードクロマトグラフィーである。ネガティブモードクロマトグラフィーは、生成物ではなく不純物を結合させることを目的とする。本発明では、150kDaの亜種以外の残りの亜種がカラムに結合すると予想され、一方、150kDaの亜種は、程度の差はあるがカラムを通過し、フロースルー画分中に溶出すると考えられる。ネガティブモードクロマトグラフィーの手順は他のHIC手法とは全く異なり、例示的な手順を表5に示す。本発明による方法の第2のステップにおいてネガティブモードクロマトグラフィーをどのように実施することができるかに関する例示的な実施形態を以下に記載する。当業者には明らかになる通り、条件は全て、ただ単に好ましいパラメータおよび条件を表し、本発明をそれらに限定するものではない。さらに、列挙されているパラメータおよび条件は全て、本発明の方法に従って第2のクロマトグラフィーステップを実施するために任意の他の列挙されているパラメータおよび条件と組み合わせることができる。試料は、分取精製ステップから得られた、150kDaの亜種が富化されたMonoQ溶出液プールであってよい。試料溶液を解凍し、同じ量の室温にしたバッファーAで希釈する(1:2希釈)ことが好ましい。次いで、高塩濃度のバッファーGを使用して電気伝導率を70.0mS/cmまでさらに上昇させることができる。平衡化バッファーE2を、バッファーGを添加することにより、電気伝導率レベル75.0mS/cmまで同様に調整することができる。カラムを標準手順に従って平衡化することができる。希釈および調整したMonoQ溶出液を、試料ポンプを使用してカラムに直接適用することができる。最大のカラムローディングをはるかに超える可能性があり、その場合、ある時点で、ブレークスルーが観察される可能性がある。洗浄相は、生成物がカラムから洗い流されることが予想されるステップであるので、30カラム体積に延長することが好ましい。単一画分の詳細な分析を可能にするために、洗浄相を小画分に収集することができる。カラム溶出のために、結合したタンパク質全てを取り除くためにカラムに10カラム体積の溶出バッファーCを流すことができる。カラム再生を標準手順に従って実施することができる。
本発明の方法の濃縮ステップ(例えば、第3のクロマトグラフィーステップ)
本発明の方法による濃縮ステップでは、濃縮のためにアニオン交換クロマトグラフィーを実施することができる。アニオン交換樹脂SourceQは、MonoQ樹脂と同様である。官能基は同一であるが、SourceQ粒子はMonoQ粒子の3倍の大きさである−したがって、SourceQ樹脂での分解能は低下する。SourceQアニオン交換体は、本発明では、FVIII亜種の分取精製の最終ステップとして使用され得る。しかし、サイズ排除クロマトグラフィーから生じる溶出液をさらに精製する代わりに、このステップを濃縮のために使用することができる。MonoQ溶出液は分取サイズ排除クロマトグラフィーの間に著しく希釈され、これにより、濃縮ステップが必要になる。一般的な手順は、カラム平衡化、試料適用、総タンパク質含量の小さな体積での迅速な溶出を目的とする急なステップ溶出相、ならびに最終的に、カラム再生および保管を含む。SEC溶出液を濃縮するために利用可能なSourceQカラムが2つ存在する。SourceQ樹脂の結合能は、非常に高い結合能を有するMonoQ樹脂と同等であるので、ほとんどの場合、カラム体積およそ3mLの小さなSourceQカラムの使用で十分である。表6に示されている好ましいクロマトグラフィースキームは、小さなSourceQカラムを指す。しかし、いくつかの生成物プールはタンパク質濃度が高いので、それらにはカラム体積7mLのより大きなSourceQカラムを使用することが必要になり得る。より大きなカラムのためのクロマトグラフィースキームは、原理上は表6に示されているものと同様である。それぞれのカラムの性質に応じて、滞留時間が一定に保たれるように直線流速をスケールアップする。
本発明による方法の第3のステップにおいてクロマトグラフィーをどのように実施することができるかに関する例示的な実施形態を以下に記載する。当業者には明らかになる通り、条件は全て、ただ単に好ましいパラメータおよび条件を表し、本発明をそれらに限定するものではない。さらに、列挙されているパラメータおよび条件は全て、本発明の方法による第3のクロマトグラフィーステップにおいてクロマトグラフィーを実施するために任意の他の列挙されているパラメータおよび条件と組み合わせることができる。官能基に塩化物イオンを対イオンとして会合させるために、平衡化を最初に6.8カラム体積のアルカリ性OC1バッファーを低下させた直線流速29.8cm/hで用いて開始することができる。その後、2カラム体積のMilliQを滞留時間2.97分に対応する流速78.8cm/hで用いてカラムをすすぐことによってOC1バッファーを取り除くことができる。その後、カラムを30%QA1バッファーと70%QB2バッファーの混合物を用いて5カラム体積にわたって処理することができる。この混合物は、およそ260mMの塩化ナトリウムを含有し、バッファー系が変化した時に対イオンである塩化物イオンが官能基から洗い流されるのを防止する。第4の平衡化相を、QA1バッファーを用いて排他的に実施することができる。カラムを試料適用に適した条件にするために、カラムに10カラム体積を流速2.97cm/hで適用することができる。試料適用は低電気伝導率条件においてのみ行う。分取サイズ排除クロマトグラフィーは、SourceQカラムへの試料の結合を防止すると思われるおよそ30mS/cmの電気伝導率レベルを引き起こす中間の塩化ナトリウム濃度で動作させることが好ましい。したがって、電気伝導率レベルを、QA1バッファーを添加することによって11mS/cmまたはそれ未満に達するまで低下させることが必要である。これにより、試料体積の大まかに5倍の増大が引き起こされ得る。試料を、試料ポンプおよび空気センサーを使用し、直線流速78.8cm/hでカラムに適用することができる。その後、溶出相を開始する前にカラムを4カラム体積のQA1バッファーで洗浄することができる。溶出は、80%QB2バッファーおよび20%QA1バッファーのステップグラジエントを用いて4カラム体積にわたって行うことが好ましい。これは、塩化ナトリウム濃度300mMまたは電気伝導率30mS/cmと相関する。それにより、標的タンパク質が小さな体積で急速に溶出する。画分を画分収集器具に収集することができる。それぞれの画分を、適切なタンパク質濃度が実現されるようにプールすることができる。第2のレベルの溶出は、375mMの塩化ナトリウム濃度に対応する100%QB2バッファーを用いて実施することが好ましい。次いで、一連の超純水、50%酢酸、超純水、1Mの水酸化ナトリウムおよび最終的に再度の超純水により、それぞれ5.5カラム体積の長さ、それらの粘度に応じた種々の流速でカラムを再生することができる。カラムに5カラム体積の10mMの水酸化ナトリウムを流すことによって抗菌保管条件を得ることができる。
当業者には明らかになる通り、任意の適切なクロマトグラフィーシステムを使用して本発明の方法を実施することができる。例えば、スモールスケールおよびラージスケール精製をAKTA FPLC(高速タンパク質液体クロマトグラフィー)システムで実施することができる。スモールスケールカラムおよび低流速にはAKTA Pure 25およびAKTA Avant 25システムが適しているが、より多量のタンパク質および付随するより大きなカラム直径ならびにより大きな流速の精製にはAKTA Pure 150システムが使用される。全てのAKTAクロマトグラフはUNICORNソフトウェアパッケージによって動作させることができる。
当業者には明らかになる通り、本発明の方法の最終濃縮ステップは必ずしもクロマトグラフィーステップではない。本発明の前述の(第2の)クロマトグラフィーステップのFVIII亜種を含む溶出液を濃縮するための多数の適切な代替が当業者には分かるであろう。例えば、限外濾過を濃縮に使用することができる。
当業者には明らかになる通り、本発明に従ってFVIII亜種を精製するための方法は、他のタンパク質またはタンパク質サブユニットをいくつかのタンパク質またはタンパク質サブユニットを含む組成物から高い純度で精製するために使用することもできる。当然、そのあと、精製されたタンパク質またはタンパク質サブユニットを含む組成物を例えば医薬として使用することができる。
驚いたことに、本発明者らは、亜種精製をしない場合であっても、組換えFVIIIのフューリン処理によりFVIIIの活性が増大することも見出した。そのようなFVIIIのフューリン処理は、フューリン処理に関して上記の通りFVIII亜種を精製するための方法の一部として実施することができる。単鎖(すなわち、切断されていない)FVIIIを含む組換えFVIIIを、本発明の亜種精製は伴わずにフューリン処理に供することが好ましい。そのようなフューリン処理は、フューリンを50IU/mLよりも高い、100IU/mLよりも高い、200IU/mLよりも高いまたは300IU/mLよりも高い最終濃度で使用して実施することができるが、フューリンを100IU/mLよりも高い最終濃度で使用して実施することが好ましい。フューリン処理は、室温で、すなわち、およそ21℃で1時間にわたって実施することができる。フューリン処理後、フューリンをFVIIIから分離することができる。フューリンで処理したFVIIIを、例えば、血友病Aなどの出血性障害を有する患者を処置するための医薬として使用することができる。
当業者には分かる通り、水溶液中のタンパク質濃度を決定するために利用可能な種々の方法が存在する。高度に精製されたタンパク質溶液に対しては280nmにおける紫外線領域での分光光度測定が適切であり、したがって、本発明において使用されることが好ましい。ランベルト・ベールの法則によると、
A=ε・l・c
は、タンパク質濃度c(M)、セル行路の長さ1(cm)および吸光係数ε(M−1cm−1)の一次関数である、測定される吸光度Aである。タンパク質溶液の280nmにおける吸光度に関する根本原理は、芳香族アミノ酸であるトリプトファンおよびチロシン、ならびに、総吸光度により少ない程度に寄与するシスチン、すなわち、ジスルフィド結合の含有量である。フェニルアラニンは、低波長においてのみ吸光度に寄与し、したがって、280nmにおけるUV測定には関連しない。水溶液からタンパク質濃度を観察できるようにするために、アミノ酸組成ならびに芳香族アミノ酸およびシスチンの存在量に主に依存する特定のタンパク質についての吸光係数を決定する必要がある。組換えFVIIIの組成は不均一であるので(上記を参照されたい)、精製された亜種画分についてタンパク質濃度を算出するために、各FVIII亜種に特異的な吸光係数が必要である。タンパク質濃度1mg/mLにおけるこれらの亜種に特異的な吸光係数の算出を以下に見出すことができる。これらの亜種に特異的な吸光係数に基づく換算係数を算出して、タンパク質濃度の算出をさらに単純化した。測定自体を、試料と同一のバッファー組成を含有するブランク溶液に対して実施する。吸収の度合いを、上記の方程式を使用してそれぞれのタンパク質濃度に変換することができる。この方法の標的値としてのタンパク質濃度を、例えば、クロマトグラフィー濃縮ステップがどのくらい有効に働くかの尺度として使用する。
当業者には分かる通り、ポリアクリルアミドゲル電気泳動は、高分子生体分子、例えばタンパク質を、それらのサイズ、コンフォメーションおよび電荷に応じて分離するために使用される技法である。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはドデシル硫酸リチウム(LDS)の使用により、複合体形成による二次および三次構造の破壊、ならびにそれにより、タンパク質の直鎖化が引き起こされる。ジスルフィド結合を分離するため、および再形成を防止するためにジチオスレイトール(DTT)およびヨードアセトアミドなどの還元剤を使用する。さらに、SDSの結合により、ポリペプチド鎖の負の正味の電荷が生じ、これにより、分離がタンパク質分子量にのみ依存するものになる。ゲル自体は、アクリルアミド単量体および架橋結合するビス−アクリルアミドで構成され、それによってゲルの密度および孔径がビス−アクリルアミドの濃度によって定義される。ゲルに電場を印加すると、タンパク質は正極(すなわち、陽極)に向かってそれらの実際の重量に応じて異なる速度で移動する。その後の染色により、分離されたタンパク質画分が可視化され、さらなる処理または解釈に利用できるようになる。ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、適用される試料の純度および濃度の両方に関する定性的記載が作成される。ポリアクリルアミドゲル電気泳動を実施する種々のやり方ならびに対応する染色手順が当業者には分かるであろう。例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動ならびに対応する染色手順は、Tris−酢酸緩衝器具を還元条件下で用いて実施することができる。例示的な器具および一般条件を以下の表に要約する。
当業者には分かる通り、ゲル電気泳動後の銀染色は、タンパク質バンドを検出するための迅速かつ非常に感度が高い方法である。その基本的な原理は、タンパク質表面への銀イオンの結合、およびその後の微細な金属銀への還元であり、これにより暗色のタンパク質バンドが生じる。非特異的シグナルの発生を回避するために、発色後に過剰な銀イオンを取り除かなければならない。基本的な染色プロトコールはまた、干渉するイオンの除去、感度およびコントラストの増大ならびにいくつかの洗浄ステップなどの追加的な調製ステップも含み得る。銀染色は、試料中に存在するあらゆるタンパク質を染色する非特異的な方法である。したがって、本発明において純度を評価するために使用することができる。
当業者には分かる通り、ウエスタンブロッティングはタンパク質バンドを検出するためのはるかに感度が高い方法である。さらに、ウエスタンブロッティングはまた、特定の型のタンパク質に特異的であり、それにより、標的タンパク質と不純物の区別が可能になる。ゲル電気泳動でタンパク質を分離した後、タンパク質をメンブレンに転写する。これは、種々の機構によって実現することができる。電場を使用してタンパク質をメンブレンに移動させるエレクトロブロッティングが最も有名である。発色には2つの異なる抗体を必要とする。抗体のメンブレン表面への非特異的結合を防止するために、メンブレンをウシ血清アルブミンまたは脱脂粉乳でブロッキングすることが不可欠である。一次抗体は、標的タンパク質(例えば、血液凝固FVIII)に高度に特異的である。二次抗体はアルカリホスファターゼ(ALP)とカップリングしており、一次抗体を対象とする。両方の抗体の結合後、ALPに特異的な基質を添加し、その後、それが不溶性の色の付いた形態に変換され、固定化されたFVIIIの極めて近傍に沈殿する。
当業者には分かる通り、FVIII発色アッセイは、その出現を405nmにおける分光光度測定によって追跡することができる発色性生成物の生成に依拠する。そのようなアッセイでは、FVIII試料を、トロンビン、リン脂質、FIXaおよびCa2+の溶液と混合する。トロンビンによって不活性FVIIIが活性化されてその活性型であるFVIIIaになり、FVIIIa、FIXa、リン脂質およびカルシウムを含有する複合体が形成される。この複合体は、FXを活性化して活性FXaにし、今度はそれを発色基質に分解することができる。この反応によりパラ−ニトロアニリンが遊離し、その形成は405nmにおける光度測定によって追跡することができる。消失の増加はFXaの量に正比例し、今度はこれが試料中のFVIIIの量と正比例する。本発明では、発色活性アッセイを当技術分野で公知の通り実施することができる。例えば、FVIII活性アッセイを、自動凝固分析機器(BCS XP、Siemens)で市販の試薬(Siemens、Germany)を用いて実施することができる。発色アッセイの第1のステップでは、未知量の機能的FVIIIを含有する試料を、トロンビン、活性化されたFIX(FIXa)、リン脂質、FXおよびカルシウムを含有するバッファーからなる反応混合物に添加することができる。FVIIIがトロンビンによって活性化される。活性化されたFVIII(FVIIIa)はリン脂質、FIXaおよびカルシウムと複合体を形成し、その結果、第X因子(FXa)が活性化される。発色アッセイの第2のステップでは、FXaをFXaに特異的なペプチドニトロアニリド基質の切断を通じて測定することができる。P−ニトロアニリンが生成し、それにより、405nmにおける吸光度によって光度測定で測定することができる色がもたらされる。生じる色は、試料中に存在する機能的FVIIIの量に正比例する。標準品は、WHO国際標準に対して較正された全長FVIIIであってよい。
一段凝固アッセイを当技術分野で公知の通り実施することができる。例えば、一段凝固アッセイによるFVIII活性を、自動凝固分析機器(BCS XP、Siemens、Germany)で市販のaPTT試薬、アクチンFSL(Siemens、Germany)を用いて実施することができる。未知量の機能的FVIIIを含有する試料をヒトFVIII欠乏血漿および活性化因子と混合することができる。+37℃でインキュベートした後、塩化カルシウムを添加することによって凝固が開始され得、血餅形成までの時間を記録する。凝固時間は、試料中のFVIII濃度に間接的に比例する。結果は、参照曲線からの読み取り、IU FVIII/mLで示すことができる。標準品は、WHO国際標準に帰することができる全長rFVIIIであってよい。
組織因子誘発性トロンビン生成アッセイを当技術分野で公知の通り実施することができる。例えば、トロンビン生成アッセイ(TGA)の一種である較正された自動トロンボグラフィー(CAT)、は、ex vivoにおける有効性パラメータとして、および研究ツールとして臨床研究における使用が増加している包括的止血アッセイである。トロンボグラムは、凝固血漿中のトロンビンの濃度を記載するものであり、したがって、生理的条件に近いところでの止血系の機能試験である。当該アッセイは、組織因子による凝固の開始時から経時的な、トロンビンによる蛍光発生基質Z−G−G−R−AMCの切断によって生じる蛍光の測定に基づく。当該アッセイは、96ウェルプレート蛍光光度計であるThrombograph(商標)で実施され、また、内部フィルター効果、血漿の色のドナー間の変動性、基質枯渇および機器による差異を補正するために必要なトロンビン較正物質を使用する。
以下のCATパラメータにより、血漿試料の止血の状態が特徴付けられる:
・遅延時間[分]:凝固時間、トロンビン生成の開始を表す
・ピークまでの時間[分]:最大量のトロンビンが生成するまでの時間
・トロンビンピーク[nM]:形成される最大トロンビン濃度
・内在性トロンビン潜在性(ETP)[nM 分]:生成されるトロンビンの総量を表すトロンビン生成曲線下面積。
当業者には分かる通り、酵素結合免疫吸着検定法は、抗原を検出し、数量化するための、抗体および通常は酵素によって媒介される呈色反応を使用する免疫学的手法である。抗原は、96ディープウェルプレートの表面上に直接固定化され得る、または試料適用前に表面上に固定化された抗体と結合する。それぞれの場合において、抗原は、抗原特異的な二次抗体が抗原に付着し得るように固定化される。多くの場合、二次抗体は、無色の基質を光度測定によって検出することができる色の付いた物質に変換することができる酵素とコンジュゲートしている。したがって、酵素結合免疫吸着検定法は、それぞれの試料中のFVIIIタンパク質の活性に関する情報をもたらす定量的方法である。結果を解釈するためには、同一の条件下で作成される標準曲線が必要である。
CHO細胞において産生された組換えタンパク質(例えば、rFVIII)を本発明の方法において使用する場合、CHO宿主細胞のタンパク質含有量の決定を使用して、出発材料の品質を解釈することができる。この目的のために、96ディープウェルプレートをCHO特異的ポリクローナルヤギIgG抗体で覆うことができる。種々の希釈度の試料溶液を添加することにより、一次抗CHO抗体と抗原とを含む免疫複合体の形成が導かれる。過度の試料タンパク質を洗浄によって取り除くことができる。HRPとコンジュゲートしたヤギ抗CHOポリクローナル二次抗体が免疫複合体を認識する。結合し、別の追加的な洗浄ステップを行ったら、基質溶液を添加することができる。この基質溶液は、西洋ワサビペルオキシダーゼの触媒作用下で黄色〜オレンジ色の2,3−ジアミノフェナジンに変換されるオルト−フェニレンジアミンを含有する。呈色の度合いは、試料中のCHO宿主細胞タンパク質の量に正比例し、光度測定により490nmにおいて検出することができる。
当業者には分かる通り、vWF抗原ELISAの基本原理は上記のものと同様である。ウサギ抗ヒトvWF抗体を使用して、試料中に存在するvWFを固定化する。HRPとコンジュゲートしたウサギ抗ヒトvWF二次抗体が免疫複合体に結合する。洗浄ステップ後、オルト−フェニレンジアミン溶液を添加し、西洋ワサビペルオキシダーゼの触媒作用下で2,3−ジアミノフェナジンに変換する。検出は上記のCHO抗原ELISAと同様である。
当業者には分かる通り、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、試料中の全成分を分析的に分離し、同定し、数量化することができる。従来の液体クロマトグラフィーは低圧で動作するが、HPLCは高圧条件下で実施される。逆相という用語は、固定相の疎水性を指し、これは、シリカゲルなどの極固定樹脂を使用する、歴史的に称される順相とは反対である。逆相樹脂は、シリカゲルマトリックスを、通常炭素原子4個から18個までにわたる(C4〜C18)様々な長さの炭水化物鎖でアルキル化することによって生成される。典型的な溶出液は、一方では極性の塩または酸の水溶液であり、他方ではアセトニトリルまたはメタノールなどの非極性の有機溶媒である。血液凝固FVIII亜種の分離は、C4逆相カラム(Jupiter(登録商標)5m C4 300Å、LCカラム150×2mm、Phenomenex)で、溶出液Aとして水中0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)、および溶出液Bとしてアセトニトリル中0.085%のTFAを、以下の表に例示される通り、溶出の間溶出液Bのパーセンテージを漸増させて用いて行うことが好ましい。
注入される試料の量は、それぞれタンパク質15μgまたは75IUに対応することが好ましい。疎水性相互作用は温度依存的であるので、分解能を増大させるためにカラムを60℃まで加熱することが好ましい。溶出するタンパク質をフォトダイオードアレイ検出器でペプチド結合の励起波長に対応する214nmにおいて検出することが好ましい。逆相HPLCは、それらの異なる疎水性に起因して、それだけでタンパク質の分離の原因となる。検出の方式は、分光光度測定性のものである。分離および検出の両方を合わせて、違うように溶出するタンパク質の吸光度強度の測定、および曲線下面積の組込み時のそれぞれのタンパク質濃度の算出が可能になる。これは、本発明における分離成功の質の尺度として使用することができるので、非常に重要であり、上記の通りFVIII亜種の重量比を決定するために使用される。
当業者には分かる通り、各FVIII亜種、ならびに全長単鎖分子についてのモル吸光係数の算出は、それぞれの分子の実際の性質に基づいた概算である。表12に示す一般的な情報は、ExPASyバイオインフォマティクスリソースポータルにより提供されるProtParamツール(インプット番号P00451)から得ることができる。これは、アミノ酸の数、理論的な等電点、アミノ酸骨格の分子量、およびFVIII亜種の1g/L溶液の波長280nmにおける概算の吸光係数を含む。グリコシル化および他の翻訳後修飾はアミノ酸骨格分子量データには含まれない。分子の理論的なモル吸収係数は、以下の方程式から導き出すことができる。
ε=N(Tyr)・ε(Tyr)+N(Trp)・ε(Trp)+N(Cys2)・ε(Cys2)
280nmにおける光吸収に寄与する3つのアミノ酸−チロシン、トリプトファンおよびシステイン−の数に、それらのそれぞれのモル吸光係数を掛ける。濃度1g/Lについて、3つの積全ての合計は分子の総吸光係数と等しい。算出には、グリコシル化およびチロシン硫酸化などの翻訳後修飾を含めない。さらに、シスチンは光吸収に寄与するがシステインは光吸収に寄与しないので、全てのシステイン残基がシスチンを形成することが想定される。フォールディングされたタンパク質におけるチロシン、トリプトファンおよびシスチン残基の実際の場所、したがって、最終的に生じる周囲の環境による影響はこの推定では考慮しない。各FVIII重鎖は80kDaの軽鎖または120kDaの伸長型軽鎖のいずれかと会合している。1つの重鎖種および1つの軽鎖種を含有する溶液は、それぞれ50%で構成されることが想定される。重鎖種および軽鎖種のどちらも、溶液の総吸収に寄与するそれらの別個の光吸収係数を、それらの質量分率の関数として示す。質量分率は、一方の亜種のアミノ酸骨格のそれぞれの分子量および両方の亜種の総分子量の商として算出される。
例えば、180kDa重鎖と80kDaの軽鎖の組合せでは、それぞれ0.65および0.35の質量分率がもたらされる。
これは、特異的な吸光係数が1.066M−1cm−1である180kDa重鎖が溶液の総吸光度の65%に寄与することを意味する。対照的に、80kDaの軽鎖は、たった35%という低い程度に寄与し、吸光係数は1.617M−1cm−1である。重鎖および軽鎖の両方についての質量分率と亜種に特異的な吸光係数εの積を合計することにより、1g/Lのタンパク質溶液についての総吸光係数εがもたらされる。
ε=ω重鎖・ε重鎖+ω軽鎖・ε軽鎖
したがって、80kDaの軽鎖と会合した180kDaの重鎖を含有するタンパク質溶液は、以下の方程式によって示されるおよその吸光係数を有する。
ε=0.65・1.066M−1cm−1+0.35・1.617M−1cm−1=1.26M−1cm−1
4つの重鎖バリアント(180kDa、150kDa、110kDaおよび90kDa)のそれぞれと80kDaの軽鎖の組合せを含有する溶液の総吸光係数εを同様に算出することができる。結果を表13に示す。
当業者には明らかになる通り、本発明の方法を実施するために、任意の適切な実験器具を使用することができる。しかし、以下の表に、本発明の方法に使用することができる例示的な小さな実験器具を示す。例示的な一覧は、バッファーの調製、試料調製、クロマトグラフィー実験自体、ならびに分析および保管のための器具を含む。製造者、製品コード、測定範囲などに関するいくつかの対応する情報が提示されている。
以下に、実施例によりそれらに限定することなく、本発明を例示する。
別段の指定のない限り、以下の実施例1〜16における方法のステップは全て、上の節「発明を実施するための形態」に詳しく記載されているそれぞれの(好ましい)実施形態に従って実施した。
(実施例1)
FVIII亜種を精製するための出発材料
以下の精製実験はほとんど全て、B14390000−30と称されるFL−rFVIIIを含有するSourceS溶出液(SOS−E)を用いて実施する。SOS−EはADVATE BDSとして生成されるが、最終的な精製ステップを欠く。
1つのラージスケール精製においてのみ使用する第2の出発材料は、富化された90kDaのFVIII亜種を低濃度で含有する、種々のMonoQおよびSourceQ溶出後液のプールである。単一の溶出後液をプールして、1つの大きな生成物プールを受け取った。このプールは、F8_AD2_90kDaと称される。
(実施例2)
FVIII亜種のスモールスケール精製−第1のクロマトグラフィーステップ
クロマトグラフィーの一般的な型−MonoQ樹脂を使用したアニオン交換クロマトグラフィーまたはSuperdex 200樹脂でのサイズ排除クロマトグラフィー−に関係なく、以下のスモールスケール実験の間にもたらされた結果を分取精製ステップのラージスケールプロセスに使用する。結果は、それぞれのクロマトグラフィー手順の構成に重要である。
アニオン交換クロマトグラフィーはFVIII亜種の第1の精製ステップであるので、動作条件の精密化のために非常に興味深い。MonoQは、サイズが10μmであり、形状がほぼ一様の単分散粒子を有する分析用AIEX樹脂として、はるかに群を抜いて優れた分解能および最も有望な分離性を示す。したがって、このステップは、試料調製を含めた多数のパラメータ試験および変動を受けている。
図4は、標準の条件下で分離した、フューリン処理していないSourceS溶出液B14390000−30のクロマトグラムを示す。溶出相は8カラム体積の長さであり、標準バッファーQA1およびQB1で動作する。溶出は、電気伝導率の最初の増大と共に比較的初期に開始される。わずかな広がったピークならびにUVシグナルの強度が増大するとすぐに認識できる非常に突出したピークが存在する。これらは、Bドメイン領域の異なるグリコシル化ならびに伸長型軽鎖と他の重鎖亜種の組合せによって引き起こされる可能性が最も高い、全長重鎖(180kDa)の違うように荷電したバリアントであることが分かっている。基礎をなす機構はまだ完全には理解されていないが、疎水性相互作用もこの特異的な溶出挙動の理由であり得る。画分番号B8およびB9において溶出した最も突出したピークは、対応するSDS pageの写真に見ることができる(図5)。これは180kDaの全長重鎖断片で主に構成される。しかし、ある特定の量の全長単鎖も存在し、ゲルの上部の250kDaマーカー位置の上に見ることができる。ゲルの下の部分には、120kDaの伸長型軽鎖によって引き起こされる100kDaのわずかに上の強いシグナルがある。真下には110kDaの短縮型重鎖亜種の痕跡がある。75kDaあたりに別の強力なバンドを見ることができる。これは、80kDaの軽鎖断片を表す。
別の強いピークが画分B10に収集されている。SDS pageゲルでのその組成は、上記のものと全く同様である。これは、主に180kDaの全長重鎖、ならびに120kDaの伸長型軽鎖および80kDaの軽鎖と、より少量の110kDa重鎖断片および全長単鎖の混合物から生じると思われる。しかし、さらに、画分B11およびB12も150kDaの領域に弱いシグナルを含有する。これは、150kDaの短縮型重鎖亜種であり、クロマトグラムのピークの下降側の小さな肩として同定可能である。
クロマトグラムにおいて次に興味深い点は、ベースラインで左隣のピークと分離されない、およその強度100mAUを有する小さなピークである。画分C1およびC2は、他の画分と比較して最大量の110kDa重鎖亜種が存在することを示す。これらの画分には、ある特定の量の180kDaの亜種も存在し、これは、樹脂分解能が両方のピークを分離するのに十分でないからである。それでも、この小さなピークは110kDaの短縮型重鎖断片の原因である。最後に、画分C4〜C6において、強度が大まかに40mAUの小さな2重のピークが存在する。このピークは、SDS pageによって示されるBドメイン枯渇90kDa重鎖を表す。したがって、電気伝導率の上昇に伴う一般的な溶出の順序は以下の通りである:
1.違うように荷電した重鎖亜種のバリアント、主に180kDaの全長断片、単鎖FVIIIおよび伸長型軽鎖と他の亜種の異なる組合せ
2.全長重鎖(180kDa)
3.部分的なBドメイン短縮を伴う重鎖(150kDa)
4.部分的なBドメイン短縮を伴う重鎖(110kDa)
5.Bドメイン枯渇重鎖(90kDa)
(実施例3)
FVIII亜種のスモールスケール精製−第1のクロマトグラフィーステップにおけるグラジエントの長さの最適化
強力な溶出液のパーセンテージ上昇はより遅いことに起因して、グラジエントがより平らであることは、分離がより良好であることと等しい。図6は、2つの異なる実現可能性実験のオーバーレイを示し、一方は、8カラム体積のグラジエントで動作し、UVシグナルについては実線で示され、電気伝導率については破線で示されており、他方は、16カラム体積のグラジエント溶出で実施され、UVシグナルについては点線で示され、対応する電気伝導率シグナルについては断続線で示されている。8カラム体積での溶出と比較して16カラム体積での溶出の間では電気伝導率の上昇がはるかに遅いことが明白に目に見える。それぞれのUVシグナルは、それらの全体的なパターンに関しては高い類似性を共有するが、溶出挙動は明らかに異なる。16カラム体積での溶出のUVシグナルを表す点線の曲線は、8カラム体積でのUV曲線と比較して広がっており、また、150kDaの亜種を表す小さな肩がよりよく目に見える。溶出相が収集される体積は16カラム体積での溶出については8カラム体積での溶出の2倍であるので、これらの構造の一部が別々の画分に収集され得る可能性もある。最も突出した差異は、通常、150kDaのBドメイン短縮型亜種がカラムから溶出する傾向がある領域において見ることができる。この領域は、8カラム体積の溶出相において幾分短い。これは、180kDaの完全重鎖シグナルの強度が急速に低下し、次いで、110kDaの亜種の溶出が起こったことに起因して再度上昇するかのように思われる。16カラム体積の溶出相では、対照的に、150kDaの亜種の溶出が分解される。分離の成功は全く満たされない可能性があるが、180kDaの全長重鎖ピークの下降側において、小さな肩が認識できる。これは、着実に上昇する電気伝導率条件下では、180kDaの完全重鎖が溶出するが150kDaのBドメイン短縮型鎖はなお結合しているある点がより長い期間にわたって保持されるからである。
図7は、実線で示されている16カラム体積の溶出相および破線で示されている10%エチレングリコールを添加剤として伴う32カラム体積の溶出相から得た2つのUV曲線のオーバーレイを示す。どちらの試料も試料適用前にフューリンプロテアーゼで処理されている。溶出相のピークブロードニング効果は、元が明白に目に見える限りは2倍である。32カラム体積の溶出相の間に150kDaのBドメイン短縮型重鎖の溶出から生じる肩は、16カラム体積の溶出相におけるものよりも突出している。さらに、その体積は、16カラム体積での溶出の2倍であり、したがって、適切な画分サイズで生じる分画を考慮すると、さらなる精製に適した富化された150kDaの生成物プールを生成することが可能であるはずである。
(実施例4)
FVIII亜種のスモールスケール精製−第1のクロマトグラフィーステップ前のフューリンプロテアーゼ処理
フューリンプロテアーゼは、FVIIIの細胞内プロセシングに関与するタンパク質分解酵素である。FVIII配列全体を通して、フューリンが付着し、その基質を切断することができる種々の位置が存在する。FVIIIは、組換え供給源に由来するものであっても、完全にはプロセシングされないので、高度の不均一性が存在する。不均一性に寄与するのはBドメインだけではない。異なる型のグリコシル化も、溶出の間のある特定のFVIII分子の挙動の仕方に影響を及ぼす可能性がある。これは、180kDaの全長重鎖に関して特に妥当である。この亜種はBドメイン全体をなお含有し、高度にグリコシル化されている(Pipe et al. (1998))。タンパク質表面の異なる種類のグリコシル化、したがって、違うように荷電した領域が、全長重鎖が単一のピークとして溶出しないだけでなく、2つの別個のピークとして溶出する理由であると思われる。
図8は、フューリン処理した試料のUV曲線(実線)と試料適用前にフューリンプロテアーゼで処理していない試料のUV曲線(破線)のオーバーレイを示す。どちらの実行も、電気伝導率曲線の類似性が高いことによって示される通り、16カラム体積の溶出相を用いて実施する。唯一の差異は、試料調製の型、フューリン成熟化を含めるか否かである。明白である最初のことは、溶出相の前半において、フューリン処理した試料のピーク強度が有意に低下することである。この領域は、違うように荷電した重鎖バリアントと伸長型軽鎖の組合せを主に表す。さらに、実線の曲線では、フューリン処理していない試料の最も突出したピークがほぼ完全に消失した。今度は、典型的な全長重鎖ピークが有意に強化される。フューリン成熟化により、他の亜種の強度も同様に増大すると思われる。さらにBドメイン枯渇90kDaの亜種および110kDaの亜種の強度はフューリン処理していない試料と比較して高い。
フューリン処理した試料の溶出を図9に示す。ほぼ全ての画分のそれぞれの組成を解明するために、それらをSDS page分析に適用する(図10および11)。画分番号B5〜C7は、それらの組成に関して事実上一様だと思われる。この領域はクロマトグラムにおける個々のピークを含有するが、これらは全て、明らかに、SDS pageでは差異が生じない異なるグリコシル化を有する全長重鎖バリアントからなる。以下の最も強いピークの上昇側について考察すると、全長重鎖断片(180kDa)のいくつかの画分(C8〜C10)がすでに存在し、これらは、さらなる精製に関して十分に純粋であると思われる。ピークの下降部分は、通常、150kDaの短縮型重鎖断片と混同されるが、どちらの種も、標準の、フューリン成熟化していない分離と比較して互いから離れて現れる。110kDaの短縮型亜種に関しては、特に画分D4およびD5が良く分離され、他の亜種をほんの微量含有する。Bドメインを有さない90kDa重鎖は、完全に分離され、さらには濃縮の準備が整っている可能性がある。最も注目すべき差異の1つは、軽鎖バリアントの分布に関する。これはゲル全体を通して見ることができるので、120kDaの伸長型軽鎖の痕跡は残っていない。120kDaの伸長型軽鎖は、明らかにフューリンプロテアーゼによって処理されており、その結果、ほぼ排他的に80kDaの軽鎖断片がもたらされ、これにより、出発材料の不均一性が著しく低下する。
以下のラージスケール(分取)精製のためにいくつかの改変を実装する:
1.FVIII亜種の不均一性を低下させるため、および全体的な分離の成功を改善するために、試料適用前に試料を>100IU/mLフューリンプロテアーゼで処理する。
2.リニアグラジエント溶出の長さを4倍に増大させて32カラム体積にする。溶出の後半における亜種特異的ピークの広がりの増大により、画分希釈の影響が克服されると思われる。
(実施例5)
FVIII亜種のスモールスケール精製−第2のクロマトグラフィーステップ
サイズ排除クロマトグラフィーを、すでに所望の生成物を高い純度で含有するプールから軽微な不純物を取り除くための最終精製ステップとして使用する。サイズ排除クロマトグラフィーは、FVIII分子亜種についての、MonoQアニオン交換クロマトグラフィーステップの後の第2の精製ステップとしても適切である。したがって、サイズ排除によって精製される予定の各試料は、当初はアニオン交換クロマトグラフィーによって導き出され、その後、所望の亜種を含有する画分をプールすることによって得られる。120kDaの伸長型軽鎖はフューリン成熟化の過程で完全に取り除かれていると仮定すると、それぞれの試料中に存在する各重鎖バリアントは、80kDaの軽鎖に排他的に結合するはずである。したがって、全ての亜種間の分子量の平均差異は、およそ50kDaであり、これは、満足のいく結果を得るために十分であるはずである。
(実施例6)
FVIII亜種のスモールスケール精製−第2のクロマトグラフィーステップにおける短縮型重鎖断片の精製
図13の右側は、前のMonoQアニオン交換クロマトグラフィー実行のSDS pageゲル電気泳動の一部を示す。画分G4、G5およびG6は、十分な純度の110kDa重鎖を示し、これらをサイズ排除クロマトグラフィーによるさらなる精製のためにプールし、使用した。大多数の画分の対応するクロマトグラムならびに銀染色ゲル電気泳動をそれぞれ図12および図13の左側において見ることができる。4つの重鎖亜種全てが試料中に明らかに存在するが、これらは、分子量およびサイズが異なるので、別個の時点でカラムから溶出する。全長重鎖(180kDa)は、全FVIIIバリアントの中で最も大きい。したがって、全長重鎖(180kDa)は、全ての亜種のなかでアクセスできる体積が最も少なく、最初に溶出する。これは、ゲルの画分C4〜C7において見ることができる。第2のピークは、画分C9〜C11において目に見え、これは、150kDaの短縮型重鎖種によって引き起こされる。最も突出したピークは予測通り110kDaの短縮型重鎖断片であり、これは、画分D1で溶出し始め画分D9まで進む。150kDaの断片および110kDaの断片は互いと明白に分離されるが、画分D5およびその後の画分ではBドメイン枯渇90kDa重鎖の痕跡が混入していることも目に見える。110kDaの亜種と90kDaの亜種はどちらも同様の細孔体積に浸透することができると思われ、これは、それらの分子量の差異がたったの20kDaであることから、驚くことではない。しかし、Bドメイン枯渇90kDaの亜種の強度は110kDaの標的タンパク質と比較して非常に低く、画分D2、D3およびD4は絶対的に純粋であると思われる。
(実施例7)
FVIII亜種のスモールスケール精製−第2のクロマトグラフィーステップにおける全長重鎖の精製
アニオン交換クロマトグラフィー溶出液は、全長重鎖断片のさらなる精製および最終精製の出発材料としての機能を果たす。図15に示されている画分F4、F5およびF6は、主に180kDaの亜種で構成される。軽微な不純物は短縮型重鎖種(110kDa)およびBドメイン枯渇重鎖断片(90kDa)から生じるが、より低い程度で150kDaの短縮型重鎖バリアントからも生じる。これらの画分をプールし、サイズ排除クロマトグラフィーに適用した。それぞれのクロマトグラムを図14において見ることができ、対応するSDS pageゲル電気泳動を図15の左側において見ることができる。この実験におけるタンパク質濃度は、一般に、110kDaの短縮型重鎖断片の精製結果と比較して高い。したがって、吸光度がより高く、SDS pageゲル電気泳動でのシグナルがより強い。すでに上記されている通り、180kDaの全長断片が最初にカラムから溶出する亜種である。180kDaの全長断片は、クロマトグラムで画分C4〜D1における吸光度がおよそ70mAUの大きなピークとして現れる。適当な銀染色SDS pageにより、このピークが排他的に180kDaの全長重鎖を起源とするものであることが明白に示されるが、画分C10〜D1では150kDaの短縮型重鎖の混入が存在する。それでも、ピークの前半(画分C4〜C9)は、明確に純粋であると思われる。150kDaの短縮型重鎖は、電気泳動ゲルにおいてのみ目に見え、クロマトグラムでは目に見えず、これは、180kDaの全長断片がなお溶出している時点で少量が溶出することが原因だと思われる。110kDaの短縮型重鎖断片、ならびにBドメイン枯渇重鎖断片は、強度が極めて低い特定のピークとして認められ得る。どちらもSDS pageにおいてそれぞれ画分D3〜D8およびD6〜D9として明らかである。実施例6においてすでに見られたように、150kDa種と110kDa種は十分に分離されている。全長重鎖および150kDa重鎖は十分には分離されず、純粋な生成物プールを得るために必要な画分を慎重に考えた上でプールする。同じことが110kDa種と90kDaのBドメインを有さない重鎖にも当てはまる。これらは、群を抜いて全く完全には分離されず、ここでも同様に慎重に考えてプールすることが必要になる。
(実施例8)
FVIII亜種のスモールスケール精製−第2のクロマトグラフィーステップにおける疎水性相互作用クロマトグラフィー
疎水性相互作用クロマトグラフィー手法を、アニオン交換クロマトグラフィーでは挙動が同様であり、それにより分離が極めて難しい全長重鎖(180kDa)と短縮型重鎖断片(150kDa)を区分するための可能性のある代替法としてスモールスケール相で試験した。
フューリン処理したSourceS溶出液の2次元溶出相のクロマトグラムを図16において見ることができる。2次元疎水性相互作用クロマトグラフィーの一般的な手順は、上記の節「発明を実施するための形態」に詳しく記載されているそれぞれの(好ましい)実施形態に従う。試料適用が完了したら、平衡化バッファーを用いた短い洗浄相を行う。電気伝導率の差異は、およそ2mS/cmだけであるが、UVシグナルの増大を引き起こすのにすでに十分であると思われる。およそ4mAUだけのUV吸光度であるこの最初の肩は対応するSDS pageにおいて画分番号A5〜B4として見ることができる(図17および18)。これは主に150kDaの短縮型重鎖亜種によって生じるものであり、これにより、150kDaの短縮型重鎖亜種が最も弱く結合し、低い電気伝導率低下ですでに溶出することが示される。
溶出相自体は、互いとすぐ隣の2つのリニアグラジエントを含有する。第1の溶出バッファーは塩化ナトリウムを含有せず、それにより、最初の迅速な電気伝導率の低下が導かれる。およそ3mS/cmのある特定のレベルの電気伝導率に達した後、第2の溶出バッファーをカラムに適用する。第2の溶出バッファーはエチレングリコールを含有し、したがって、電気伝導率がはるかに大きく1mS/cm未満まで低下する。溶出ピークはMonoQ樹脂におけるものほど明確ではない。この溶出ピークはどちらかというと広範に溶出するタンパク質の移行であり、互いと急激には分離されない。溶出の経過にわたる画分の実際の組成は、SDS pageゲル電気泳動でのみ目に見える。UVシグナルは第1のグラジエントの開始と共に急勾配で上昇し、その結果、下降側に第2のグラジエントを開始するまで続く肩がある非常に広がったピークがもたらされる。SDS pageにより、溶出のこの領域が、全てが大体同じ時点で結合解除し始める全長重鎖断片(180kDa)ならびに110kDaの短縮型重鎖断片およびBドメイン枯渇90kDa断片によって主に引き起こされることが示される。画分C12〜D6に収集される肩は、110kDaの短縮型断片に起因する可能性があり、これは、この時点で2回目に溶出すると思われる。エチレングリコールを含有する溶出バッファーを用いた第2のグラジエントにより、UVシグナルが減少する傾向の構造化されていないパターンが生じる。以前の実験から分かっている通り、この領域は、少量の180kDa、110kDaおよび90kDaの亜種の溶出によって引き起こされる。対応する80kDaの軽鎖は溶出相全体にわたってくまなく分布する。その強度はUVシグナルの一般的な強度に対して変動する。最後に、150kDaの短縮型重鎖断片は他の断片よりも前に−すでに洗浄相の間に溶出するので前方にシフトすることが顕著である。亜種はカラムに適用されたのと大体同じように溶出するので、溶出自体は他の亜種を実際に分離するものではない。
2次元HIC実験の結果に依拠すると、以下における主要な目的は、150kDaの短縮型重鎖種を他のもの、特に全長断片から分離することである。したがって、以下の1次元溶出手順は、上記の2次元疎水性相互作用クロマトグラフィーから導き出される。エチレングリコールバッファーを使用する第2のリニアグラジエント相はFVIII亜種の分離に実際には寄与しないので、これをスキップする。代わりに、試料適用後の洗浄相を倍加して10カラム体積にし、分離を増強するために実際の溶出相を40カラム体積まで延長する。さらに、カラムローディングを有意に減少させる。その結果として、UVシグナルの一般的な強度を低下させる(図19)。図20において見ることができる通り、150kDaの短縮型重鎖断片の隣接する180kDaの完全重鎖断片からの分離は有意には改善されない。さらに、収集された画分は高度に希釈され、分取プロセスが非常に非効率的であると思われるほど収率が低いと思われる。
(実施例9)
FVIII亜種のスモールスケール精製−第2のクロマトグラフィーステップにおけるネガティブモード疎水性相互作用クロマトグラフィー
ネガティブモードクロマトグラフィー手法は、ブレークスルーおよび洗浄相の間に150kDaの短縮型重鎖断片を洗い出すことを目的とし、一方で他の亜種はカラムに結合したままであると考えられる。この亜種は、移動相を通過する移動だけで自然に結合解除することができるほど弱く結合することが想定される。150kDaの亜種が富化されたMonoQ溶出液プールがロードとしての機能を果たし、カラムへの結合のためにその電気伝導率を上昇させる。この理由から元の洗浄相が著しく持続する。図21は、画分A9付近のどこかでカラムの能力を超えること示す。この時点でブレークスルーが起こり、UVシグナルの増加が導かれる。
SDS page電気泳動(図22)により、ブレークスルー(画分A10〜A12)であっても、高度に精製された150kDaの短縮型重鎖断片を含有することが示される。UVシグナルは画分B1の洗浄相の開始と共に減少し、当該相の終わりまで進む。SDS pageの対応する画分(B1〜C2)では主に150kDaの短縮型重鎖断片が示されるが、110kDaおよび90kDaの亜種、さらにはMonoQ精製ステップの前のフューリン成熟化が未完了であることから生じ得る120kDaの伸長型軽鎖の痕跡もある。溶出自体は100%溶出バッファーの急なステップとして行う。これにより、残りの全てのFVIIIタンパク質のカラムからの迅速な溶出が導かれる。この時点で180kDaの全長重鎖断片のほぼ全量が溶出するが、この時点よりも前では溶出しないことは注目に値する。ブレークスルーおよび洗浄相の間には180kDaの亜種は見出されないので他の亜種がはるかに強力に結合すると思われる。どちらの亜種もネガティブモードで容易に満足のいく程度まで分離され得る。
(実施例10)
FVIII亜種のラージスケール(分取)精製
FVIII亜種の分取スケール精製は、所望の重鎖断片を富化するための最初のMonoQアニオン交換クロマトグラフィーステップ、その後の、不純物とみなされる他の亜種を分離する分離能が十分であるラージスケールサイズ排除クロマトグラフィーカラムでの最終精製ステップを伴う。Bドメイン枯渇重鎖断片(90kDa)についてはサイズ排除ステップがスキップされるので、この亜種は例外である。この亜種は、MonoQ AIEXステップによってすでに満足のいく程度まで精製されており、さらなる最終精製が必要ない。4つの異なる亜種の全てについての最終ステップは、サイズ排除クロマトグラフィーの間に大きく希釈されることに起因する濃縮である。これは、SourceQアニオン交換樹脂での別のAIEXステップによって実施する。
図23は、それぞれのFVIII亜種についてのプロセス全体の概要を提示する。
(実施例11)
FVIII亜種のラージスケール(分取)精製−第1のクロマトグラフィーステップ
アニオン交換クロマトグラフィーはFVIII分子亜種の精製の一次ステップであり、適切な画分をさらなる精製のためにプールすることができるように、4つの所望の重鎖断片の全ての大まかな分離を実現する。図24は、ラージスケールMonoQカラムでのAIEXステップの溶出相の第1のクロマトグラムを示す。出発材料B14390000−30を上記の改変された標準手順に従って分離し、特有の溶出パターンを示し、これは、スモールスケール実験からすでに分かっている。溶出相を8つの生成物プールにプールし、そのそれぞれが、精製され、富化された形態のある特定の重鎖断片を含有する。溶出の前半は、大体分離されたピークで溶出する、違うようにグリコシル化された全長重鎖バリアントが優位を占めることが分かっている。隣のものと明白に区別することができるピークを個々の生成物プールのために使用するが、さらには評価しない。
表15は、どのように画分のプールを行うかの所見を示し、最初の4つの生成物プールE1〜E4が違うようにグリコシル化された全長重鎖バリアントに専有されることを示す。最も豊富な全長重鎖は、画分2.C2〜2.D3を含有する生成物プールE5に収集され、0.689mg/mLという適当なタンパク質濃度がもたらされる。図25に示されているSDS pageゲル電気泳動でもE5生成物プールの純度が確認され、さらに、この全長重鎖バリアントはその濃度がもっと高いので最も突出したものであることが示される。それに加えて、他の全ての全長重鎖バリアント(E1〜E4)がSDS pageでほぼ同じパターンを示す−それぞれのバンドの位置にほんのわずかな差があり、これにより、Bドメインのグリコシル化が異なるという仮定が裏付けられる。画分番号2.D7〜2.E6は、分子量150kDaの短縮型重鎖断片を含有するが、以前の実験から、この画分には通常、全長重鎖が混入していることがよく分かっており、これは、SDS page画像でも認めることができる。生成物プールE6は、約180kDaおよび約150kDaにおける比較的同様の強度の2つのバンドを示し、これにより、これらがどちらも同等量であることが示される。画分2.D4、2.D5および2.D6は、それらの画分が180kDaの亜種と150kDaの亜種の混合物を含有し、それらのいずれにも混入することになるので、隣接する生成物プールの両方のいずれにも使用しない。生成物プールE7は画分2.E7〜3.A7で構成され、110kDaの短縮型重鎖断片を含有する。クロマトグラムにおけるそれぞれのピークは、以前のものよりもはるかに良好に分離され、同様にSDS pageでもおよそ110kDaの短縮型重鎖断片が主に示されるが、ここでは全長重鎖の痕跡もある。第8の生成物プールは、90kDaの分子量を有するBドメイン枯渇重鎖断片を含有し、画分3.B8〜3.E1に収集される。
クロマトグラムにおいて、90kDaの亜種ピークがどちらかというと低いことがすでに目に見えており、したがって、この生成物プールのタンパク質濃度が0.025mg/mLであり、はるかに低いことは驚くことではない。他方では、それらのピークは、すでに溶出している他の全てからベースラインで分離され、したがって、この画分の純度は満足のいくものである。これにより、実際にサイズ排除クロマトグラフィーによる最終精製ステップをスキップし、直接濃縮に進行することが可能になる。同時に、これにより、4つの亜種が全く異なる量で出発材料中に存在し、それらを単純に分離することだけが問題なのではないことが明白になる。単に、出発材料中に多くの全長重鎖が含有されているので、存在量が少ない亜種を十分な量で収集することはどちらかというと困難であると思われる。この実行の生成物プールE6は、十分な量の150kDaの短縮型重鎖断片を含有し、これを分取スケールサイズ排除クロマトグラフィーカラムでのその後の精製のために選択する。対照的に、90kDaのBドメイン枯渇重鎖断片を含有する生成物プールE8はSourceQでのAIEXステップによって直接濃縮し、任意の他の種類の精製または最終精製はスキップする。適当な結果を以下で論じる。
分取スケールAIEXの溶出相の第2の例が図26に示されており、対応するSDS pageゲル画像が図27に示されている。プールの一般的な手順は以前に論じられたものとあまり変わらない。プールした画分および関連するタンパク質濃度の要約を表16に見出すことができる。
E2およびE3と称される生成物プールは、全長重鎖および110kDaの短縮型重鎖断片を含有し、分取スケールサイズ排除クロマトグラフィーステップでのさらなる精製および最終精製のために興味深い画分である。SDS page電気泳動での画分を全て見ることはできず、したがって、プールに使用する画分は光学的手段によって部分的に決定される。その代わりに、C4逆相HPLC分析から入手可能なデータ(表17)が存在し、それにより、生成物プールE2およびE3がどのように構成されるかに関するエビデンスがもたらされる。このデータから、全長重鎖生成物プールE2がおよそ91%の標的タンパク質をすでに含有し、その標的タンパク質が全ての180kDaの全長重鎖バリアントならびに両方の軽鎖バリアントを含むことが明らかになる。生成物プールE3では第1のAIEXステップ後に同等の純度は示されないが、タンパク質濃度0.119mg/mLで82.5%の標的タンパク質は、さらなる処理のための良好な基礎であると思われる。
(実施例12)
FVIII亜種のラージスケール(分取)精製−第2および第3のクロマトグラフィーステップにおける全長重鎖(180kDa)の精製および濃縮
図23のプロセスフロー図に示されている通り、全長重鎖の精製は真の精製ステップとしてAIEXおよびSEC、ならびに濃縮のための別のAIEXステップの3つのステップで構成される。第1のAIEX精製のSDS pageゲル電気泳動の評価に基づいて、高タンパク質含有量ならびに低分率の不純物の両方を示す最も有望な画分を選択し、プールし、分取SECカラムに適用する。サイズ排除クロマトグラフィーから収集されたアウトプットをSourceQカラムにさらに適用し、ステップ溶出によって最終的に濃縮する。それに応じた結果を以下に論じる。
図28は、富化された180kDaの全長重鎖を含有するAIEX生成物プールE2の、ラージスケールサイズ排除クロマトグラフィーカラムでのその後の精製を示す。分取スケールSECの一般的な手順は、上の「発明を実施するための形態」の節のそれぞれの実施形態に見出すことができる。軽微な不純物はAIEXでは完全に分離することができない150kDaの短縮型重鎖断片に由来すると考えられる。クロマトグラムの最も突出したピークは、およそ50mAUの吸光度強度を示し、画分1.B5中に溶出し始める。銀染色SDS pageゲル電気泳動の画像(図29)から、画分1.B5〜1.B11が80kDaの軽鎖と会合した所望の全長重鎖(180kDa)で主に構成されることが示される。150kDaの短縮型重鎖断片は画分1.C1〜1.C4中に溶出し、これはクロマトグラムでは検出することができない。これは180kDaの亜種ピークのテーリングのように見えるが、実際には150kDaの亜種である。これは、SDS page画像でも目に見え、標的ピークの後ろの画分で180kDaの分子量を有する亜種と150kDaの分子量を有する亜種が重複する傾向があり、それにより、これらはプールには不適当になる。どちらかというと低強度の2つのピークがそれぞれ画分1.C6〜1.C9および1.C10〜1.D3に現れる。それらのピークは、110kDaの短縮型重鎖断片およびBドメイン枯渇重鎖断片から生じ、これらはどちらも所望の全長重鎖ピークから明白に分離される。
サイズ排除クロマトグラフィーは最終的な真の精製ステップであるので、いずれの画分を最終生成物プールに進めるかを慎重に考えなければならない。一方では、標的ピークの最初と最後の画分をスキップすることにより、他の亜種が生成物プールに入る機会を減らすことができるが、他方では、プールに使用されない各画分が総タンパク質のうちおよそ1mgまたはさらにはそれよりも多くのタンパク質減少と等しいので、当該スキップにより、収率が劇的に低下する。画分1.B7〜1.B10を包含する生成物プールは、妥当な純度を生じさせることと、効率的なプロセスをなお維持することの間の最良の折衷である可能性が高い。この生成物ピークをE1と称し、その最も有意なパラメータを表18および19に列挙する。
最終的な試料体積は、およそ70mLであり、タンパク質濃度は0.134mg/mLであり、ほぼ10mgの全長重鎖FVIIIタンパク質がもたらされる。純度は92%の標的タンパク質まで、ほんのわずかだけ上昇し、150kDaの短縮型重鎖種がなお最も大きな混入源である(5.71%)。
SECカラムでの希釈に起因して、所望の最終濃度>0.3mg/mLを実現するために、それらの希釈された溶出液を濃縮するためのステップを実装することが必要である。希釈された画分を、Source30Q樹脂で実施する別のアニオン交換クロマトグラフィーステップに適用する。所望の最終的なバッファー組成と同等の組成のステップグラジエントにより、カラムに結合した全ての生成物の即時溶出がもたらされる。SEC画分1.B7〜1.B10を含有する生成物プールE1を濃縮のために第2のAIEXステップに適用し、図30に示されている通りステップグラジエントで溶出する。分離効果は全くないが、その代わりに、画分1.A6から開始してタンパク質含有量全体が溶出し、画分1.B7にまで達するピークテーリングの出現が示される。したがって、1.A6から1.B8の間の全ての画分を最終生成物プールにプールし、その結果、およそ7mLの生成物体積がもたらされる。その後のタンパク質濃度を決定するためのUV測定により、約0.982mg/mLの値がもたらされ、これは、総タンパク質6.85mgに対応する。図31は、左側に銀染色を伴うSDSゲル電気泳動の2つの画像および右側にFVIIIウエスタンブロットを示す。これらはどちらも、排他的に全長重鎖断片と80kDaの軽鎖バリアントの組合せを示し、間に他のシグナルを示さない。表20に示されている通り、C4逆相HPLCデータからも同様に満足のいく結果が示される。180kDaの全長重鎖の最終生成物溶液は、全ての全長重鎖バリアントおよび両方の軽鎖バリアントを含む、94.52%の標的タンパク質を含有する。比較すると、全タンパク質量のたった6%未満が短縮型重鎖種から主に生じる不純物であり、150kDaおよび110kDa種がそれぞれ3.28%および1.76%である。
この全長重鎖の精製の手順を数回繰り返して、所望の量のタンパク質をもたらした。これに応じたデータはさらに示していない。
スモールスケール実験の間に使用するクロマトグラフィー樹脂と分取精製プロセスの間に使用するクロマトグラフィー樹脂はわずかに異なるので、性能および分解能に関する差異を評価することが興味深い。図32は、同等の条件下で行った180kDaの全長重鎖の実現可能性実行と分取精製のオーバーレイを示す。ランニングバッファー、適用される試料、滞留時間および溶出相の長さは両方の実行で同様である。
方法は、1.5カラム体積の溶出相を有し、これにより、比較が容易になる−x軸がカラム体積に変換されると仮定する。曲線を、両方が同じ開始点、この場合には注入ステップの終了を有するようにシフトさせた。実線で示されている実現可能性実行の溶出はおよそ0.36CVで開始し、一方、断続線で示されている分取実行の溶出は、0.02CVまでわずかに遅延する。差異はわずかであり、カラムサイズおよび通過するバッファー体積が全く異なることを考慮すると、これは、値に基づいて申告する意味のあるものとは思えない。それでも、全体的な形状および第1の断片−180kDaの全長重鎖の溶出に必要なカラム体積の数に関しては、どちらの曲線も同一であると思われる。この場合、Superdex 200 Increaseは、Superdex 200 Prep Gradeカラムの大まかに3分の1だけの長さである、つまり、Superdex 200 Increaseの分離効率はSuperdex 200 Prep Gradeと比較しておよそ3倍良好である。しかし、任意の一定数量に応じたスケールアップは実施せず、その代わりに、このサイズおよび寸法のカラムの利用可能性を条件とした。したがって、それらのそれぞれの幾何学的形状を有する樹脂の両方を大体同様に実施することがはるかに有益であり、これは、それによりSEC実現可能性実験と分取サイズ排除精製が同等になるからである。
(実施例13)
FVIII亜種のラージスケール(分取)精製−第2および第3のクロマトグラフィーステップにおける短縮型重鎖断片(150kDa)の精製および濃縮
150kDaの短縮型重鎖断片を精製するための手順は、前の節に記載されている全長重鎖の精製に使用したものと原理上は同様である。150kDaの亜種として通常現れる典型的な肩により十分な純度のはるかに少ない画分が示されるので、この型のFVIII亜種の適切な総量を精製することはどちらかというと難しい。必要な実行の数および最後の各亜種の総量によって示される通り、図43は、同じ数の実行により、短縮型重鎖断片(6.74mg)が全長重鎖(62.97mg)と比較して約10分の1しかもたらされないことを示す。
分子量が150kDaである短縮型重鎖亜種(MonoQ AIEX生成物プールE6)のサイズ排除クロマトグラフィーによる精製が図33に示されている。溶出の一般的なパターンは全長重鎖断片の精製と異なる。その分子量が全長重鎖の分子量よりも30kDa下回るので、それはより多くの細孔、したがって、より大きな体積の樹脂に出入りすることができる。その溶出は、180kDaの亜種と110kDaの短縮型重鎖断片の間のどこかであると考えられるが、この断片についてはいかなる実現可能性実験もないので、正確な溶出挙動は分からない。強度が変動する異なるピークが溶出相全体を通して現れる。UVシグナルは画分1.B4で上昇し始め、2重ピーク様構造を示し、最大強度は画分1.B6および1.B9で観察される。SDS pageゲル電気泳動により明らかになる通り、どちらのピークも残存する全長重鎖(180kDa)に由来する(図34を参照されたい)。Bドメインのグリコシル化の変動に起因して異なる種類の全長重鎖断片が存在するという事実があるにもかかわらず、何故それらがサイズ排除クロマトグラフィーにおいて程度の差はあるが特定のピークとして溶出するのかは分からない。さらに、富化された180kDaの亜種の溶出では別個の全長重鎖ピークは示されない。画分1.B10〜1.C5は、最も高い強度のピークを含有し、これは所望の150kDaの短縮型重鎖断片によってもたらされることが明白である。しかし、所望の断片を排他的に含有し、同時に満足のいくタンパク質濃度を有する画分の数は大きく限定される。画分1.B11にはなお180kDaの全長重鎖が混入しているが、以下の画分は、画分1.C5はタンパク質濃度だけが低く、ある特定の量の120kDaの伸長型軽鎖が検出可能であるが、ほぼ純粋であると思われる。110kDaの短縮型重鎖断片の溶出は画分1.C6で始まり、次いで、分離されたピークとして現れないBドメイン枯渇重鎖と混同される。画分1.C1、1.C2および1.C3はタンパク質濃度が高く、また同様に他の亜種の混入が低いので、これらをE2と称される生成物プールに使用するために選択する。単一画分についてのタンパク質濃度測定値に応じて、プール全体のどちらかというと低いタンパク質濃度における総タンパク質量が2.67mgであると算出される。
前に最終精製された分取SEC画分E2および別の同様の150kDaの短縮型重鎖断片のSEC溶出液プールを濃縮するために、両方をプールし、SourceQ AIEXステップに適用する。その他に、図35のクロマトグラムに示されている通り、溶出が通常通り画分1.A6で始まり、ピークテーリング様式で画分1.B7まで続くように、全てのパラメータを一定に保つ。ピークの高さは、およそ1200mAUであり、これは、ただ1つの代わりに2つのSEC溶出液プールを1つのAIEXステップで濃縮した結果としてより多量のタンパク質がローディングされることによってもたらされる。主要な優先事項は、失われる生成物をできるだけ少なくすることであるので、UV吸光度を有する全ての画分(1.A6〜1.B8)を生成物プールのために使用する。
関連するSDSゲル電気泳動が図36に、左側に銀染色および右側にFVIIIウエスタンブロットで示されており、E1およびE2という呼称は、最終生成物プールの2つの希釈度に対応する(銀染色について1:40および1:120ならびにFVIIIウエスタンブロットについて1:53および1:160)。銀染色ではいかなる追加的なバンドも示されず、これにより、排他的に150kDaの短縮型重鎖種と80kDaの軽鎖バリアントの組合せという組成が示される。FVIIIウエスタンブロットは、対照的に、はるかに感度が高く、180kDa領域の呈色が少なく、これにより、全長重鎖の少なくとも軽微な不純物がなお残っていることが示唆される。150kDaの短縮型重鎖種のサイズ排除ステップの論述の間に既に述べた通り、この亜種についての1回の精製列の収率はどちらかというと低い。SECステージでは1回の通過後に精製することができる量はたった2.5mgである。したがって、必要量である純粋なFVIII 150kDaの短縮型重鎖10mgを精製するために、それぞれの精製列を数回繰り返すことが必要である。それらの実行は、同じ手順に従って実施し、結果は同等であるので、さらに論じない。4つのSEC溶出液プールの総数をその後の2つのSource30Q AIEXステップで濃縮し、その後、1つの単一の最終生成物プールにプールし、それをC4逆相HPLCによって分析する。
伸長型軽鎖、軽鎖および150kDa重鎖が標的タンパク質種であるとみなされ、他の全ての亜種が不純物とみなされる適当なデータを表22に示す。標的タンパク質のパーセンテージはほぼ92%であり、これは、分子量が150kDaである短縮型重鎖断片の最終生成物プールに関して他の亜種が10%未満という目的を果たすことができたことを意味する。
(実施例14)
FVIII亜種のラージスケール(分取)精製−第2および第3のクロマトグラフィーステップにおける短縮型重鎖断片(110kDa)の精製および濃縮
分子量が110kDaである短縮型重鎖亜種を、180kDaおよび150kDaのFVIII亜種に対してすでに使用された標準手順に従って精製する。第1のAIEXステップおよびサイズ排除クロマトグラフィーのどちらにおいても所望の断片のピークが隣のピークからはるかに良好に分離されるので、都合のよい画分を選択し、プールすることがはるかに容易であると思われる。結果を以下の2つの節に示す。
110kDaの短縮型重鎖亜種を含有するMonoQ AIEX生成物プールE3のさらなる最終精製は、問題がないものであると考えられる。Bドメイン枯渇90kDa重鎖はMonoQ AIEX精製ステップですでに十分に分離されており、ほんの少量だけがなお残っていることが予測される。図37のクロマトグラムは、初めの強度が低い3つのピークを示す。ゲル電気泳動で示される通り、それらのうち画分1.B10〜1.C1の2つは、どちらも全長重鎖バリアントから生じるものである(図38)。画分1.C2および1.C3の以下のピークは、微量の150kDaの短縮型重鎖断片によってもたらされる。吸光度値がおよそ10〜11mAUである最も強いピークは110kDaの短縮型重鎖断片によって引き起こされる。SDSゲル電気泳動により、所望の亜種を含有する3つの画分、すなわち、1.C4、1.C5および1.C6が示される。画分1.C4はピークの上昇部分を表し、これは、すでに比較的純粋であると思われる。最大のピークは画分1.C5に入り、これは、高いタンパク質濃度および満足のいく純度を同時に示す。ピークの下降部分は画分1.C6に収集され、これは、微量のBドメイン枯渇重鎖断片(90kDa)をすでに含有する。
クロマトグラムでは、この亜種が主要なピークの肩として現れ、したがって、生成物ピークの下降部分に混入すると思われることも見ることができる。表23は、生成物ピークを包含する画分番号1.C4、1.C5および1.C6のタンパク質濃度および総タンパク質量を示す。画分1.C4および1.C6は無視できる量のタンパク質を含有するので、潜在的な混入リスクが理由でそれらの画分をプールに使用することに価値がないと思われる。結果として、画分1.C5のみをSourceQカラムでのAIEX濃縮ステップに使用する。C4逆相HPLC分析からのデータを表24に示し、これにより、すでに画分1.C5だけで8.82%の不純物を含有しているので、画分1.C4および1.C6を廃棄するという決定が明白に確認される。
110kDaの短縮型重鎖断片についてのAIEX濃縮ステップのクロマトグラムを図39において見ることができる。3回の特定のサイズ排除クロマトグラフィーの実行の溶出液プールを同時にプールし、濃縮する。電気伝導率は、全ての結合した試料を迅速に溶出するために約30mS/cmまで急勾配で上昇させるまで、最初は約5mS/cmの安定レベルとする。UV曲線によって示される通り、試料は画分1.A7で溶出し始め、画分1.A9でその最大吸光度およそ1100mAUに達する。吸光度は、画分1.A10〜1.A12で急速に降下し、次いで、長いテーリング相に入り、最終的に、画分1.B6でベースラインレベルに達する。画分1.A7〜1.B8を最終生成物プールに使用する。
試料はすでに2つの異なる精製ステップを通過しているので、110kDaの短縮型重鎖断片のみを含有するはずである。これは、左側にSDS pageゲル電気泳動の銀染色画像が示され、右側にFVIIIウエスタンブロット発色が示されている図40によっても確認される。
どちらも、カラムローディング前にプロービングされたロード中に排他的に110kDaの短縮型重鎖断片と80kDaの軽鎖バリアントの組合せを示す。他の画分、すなわち、フロースルー、洗浄相および生成物プールには使用しない溶出相の第1の画分(VEと称される)は関連性のある量の生成物を示さない。これは、カラムの容量が試料量全体を結合させるのに十分に高いことを意味する。第2の濃縮ステップを同様に実施し、両方の溶出液を排他的に110kDaの短縮型重鎖断片で構成される1つの最終生成物プールにプールする。その生成物プールの2つの異なる希釈度−銀染色について1:147(P1)および1:49(P2)ならびにFVIIIウエスタンブロットについて1:196(P1)および1:65(P2)−は、ほぼ純粋な110kDaの短縮型重鎖断片と見ることができる。銀染色画像では他のいかなる亜種も示されないが、FVIIIウエスタンブロット画像では、P2希釈度に関して全長重鎖の低いシグナルが目に見える。表25は、濃縮されたSEC溶出液プール全てを含む最終生成物プールの組成に関する対応する分析データを提示する。最終的なプール中の標的タンパク質の分率は93.7%であり、120kDaの伸長型軽鎖および80kDaの軽鎖バリアントの両方ならびに110kDaの短縮型重鎖バリアントを含む。不純物の分率は6.3%であり、10%未満である。
(実施例15)
FVIII亜種のラージスケール(分取)精製−第3のクロマトグラフィーステップにおけるBドメイン枯渇重鎖(90kDa)断片の濃度
Bドメイン枯渇重鎖断片は、出発材料B1439000−30中に最少に存在するFVIII亜種である。満足のいく量のこの亜種を得るためには莫大な数のAIEX精製を実行することが必要になり、これには、どちらかというと利用可能性が限られているこの出発材料の大きな体積が必要になる。その結果として、約38%の90kDaの亜種という適当な含有量を有するF8_AD2_90kDaと称される第2の出発材料をこの目的のために使用する。その供給源とは無関係に、サイズ排除クロマトグラフィーによる最終精製ステップをスキップし、溶液をSourceQカラムに直接濃縮する。2つの異なるサイズの2つのカラムが利用可能である−どちらの出発材料の体積および総タンパク質含有量もスモールスケールSourceQカラムの容量を超えるので、カラム体積が7.0mLであるより大きなカラムを代わりに使用する。以下は、B14390000−30由来Bドメイン枯渇重鎖種の精製の結果に限定される。
すでに前述した通り、90kDaのBドメイン枯渇重鎖断片は、MonoQ AIEXステップで他の亜種からほぼ完全に分離され、したがって、サイズ排除クロマトグラフィーによるいかなるさらなる精製も最終精製も必要ない。90kDaのBドメイン枯渇重鎖断片は、すでに高度に希釈されているので、これにより、サイズ排除クロマトグラフィーにおける不十分な結果が導かれる可能性もあり、さらに、この特定の断片の大きな喪失も引き起こされ得る。実施例11に記載の生成物プールE8などの、90kDaのBドメイン枯渇種の典型的なMonoQ AIEX生成物プールは、タンパク質を0.025mg/mLしか含有せず、したがって、標的タンパク質10mgの所望の量を実現するためには、より多数のそのような生成物プールを濃縮することが必要になる。図41は、6つのMonoQ溶出液プールを同時に濃縮するためのAIEX SourceQ実行の溶出相を示す。生成物体積の有意な増大により室温における長すぎる試料保留時間が引き起こされることになるので、カラム体積が約3mLである小さなSourceQカラムはもはや適さない。したがって、保留時間を許容される範囲内で維持するためには、カラム体積を大まかに倍加して約7mLにすることは避けられなかった。溶出自体は前に論じられているものと同様であるが、ピークが広がると思われる。MonoQアニオン交換クロマトグラフィーの溶出相においてすでに見られた通り、Bドメイン枯渇重鎖断片は、結合解除のために全ての亜種の中で最も高い電気伝導率を必要とするので、最後に溶出する。SourceQ AIEXステップのステップグラジエントでは、Bドメイン枯渇断片を高速かつ急に溶出するのに十分に高い電気伝導率がもたらされない可能性がある。その代わりに、全てのタンパク質を樹脂から取り除き、それにより、ピークブロードニングを引き起こすためにより大きな体積の溶出バッファーを要する。しかし、タンパク質濃度0.493mg/mLおよび総タンパク質量9.06mgを示す最終生成物プールに画分1.A11〜1.D12を使用する。それぞれのSDSゲル電気泳動を図42において見ることができ、例によって、左側に銀染色ゲル画像が提示され、右側にFVIIIウエスタンブロット発色が提示されている。銀染色画像では極めて純度が高く見えるが、はるかに感度が高いFVIIIウエスタンブロット画像では、ロードおよび溶出液プール希釈液中になお有意な量の全長重鎖が目に見えることを見ることができる。C4逆相HPLC分析により、最終生成物プール中に3.84%の量の全長重鎖がなお存在することが確認されるが、94.49%の標的タンパク質を純度目標<10%の他の亜種とコンパイルする。この全長重鎖の精製の手順を数回繰り返して、所望の量のタンパク質をもたらした。
(実施例16)
ラージスケール(分取)精製の要約
FVIII亜種の分取精製プロセスは、最初の分離のためのMonoQでのAIEXステップ、最終精製のためのSuperdex 200樹脂でのSECステップ、および最終的に、アニオン交換樹脂Source30Qでの濃縮ステップを包含する。全長鎖ならびに2つの短縮型断片は、妥当な精製成功のためにはこれらの3つのステップを通過しなければならない。Bドメイン枯渇断片は精製が容易な例外であり、これは、最終精製ステップをスキップし、アニオン交換ステップに単に適用される。図43は、本発明の間に駆動される完全な精製プログラムの概要を示す。違うようにグリコシル化されたバリアント全てを含めた、分子量180kDaの全長重鎖には、総数で4回のAIEX精製実行、3回のSEC実行および濃縮のために3回のAIEX実行が必要であった。これにより、全ての全長重鎖バリアント、ならびに両方の軽鎖バリアントを含む標的タンパク質62.97mgがもたらされた。不純物のパーセンテージは、6.84%である、または言い換えれば、最終生成物プールは93.16%の純度を示し、タンパク質の量および純度に関する目標が実現される。不純物は主に2つの短縮型重鎖種から生じる。150kDaの短縮型重鎖断片は、精製が最も困難なものの1つである。短縮型重鎖種(150kDa)および両方の軽鎖バリアントを含むどちらかというと少量の標的タンパク質6.74mgをもたらすために総数で4回のMonoQでのAIEX実行、4回のSEC最終精製実行および濃縮のための2回のAIEX実行が必要であった。ほぼ排他的に全長重鎖から生じる不純物のパーセンテージは10%(8.04%)よりも下に保つことができ、これは、目標に見合う。110kDaの短縮型重鎖種を、5回のAIEX精製実行、その後の5回のSEC最終精製実行、および最終的に、2回のAIEX濃縮実行によって精製した。最終的な110kDaの短縮型重鎖断片8.57mgは、6.31%の不純物を示し、これは、他の亜種の全てによって引き起こされる。Bドメイン枯渇重鎖断片では、7回のAIEX実行およびラージスケールSource30Qカラムでの2回のAIEX濃縮実行が必要であった。この精製プロセスにより、90kDaの亜種バリアントの両方と2つの軽鎖バリアントの組合せを含むタンパク質総量15.31mgがもたらされた。不純物のパーセンテージは正確に5.00%であり、これは、全ての亜種の中で最低の不純物のパーセンテージ数であるが、中間の最終精製ステップは実施されていない。したがって、Bドメイン枯渇重鎖断片に関しては両方の目標が実現される。結論として、不純物が<10%という限界に関する目標は全ての亜種について実現することができた。タンパク質の総量は、全長重鎖断片については、出発材料中の存在量が多いことに起因して非常に満足のいくものであるが、Bドメイン枯渇重鎖断片についての結果も適正な範囲内に入る。
4つの最終生成物プール全てについてのタンパク質濃度は、全長重鎖については0.974mg/mL、150kDaの短縮型重鎖断片については0.568mg/mL、110kDaの短縮型重鎖断片については0.640mg/mL、およびBドメイン枯渇重鎖断片については0.537mg/mLである。したがって、0.3mg/mLの限界を上回ることである全ての生成物プールの目標が明白に実現される。さらに、生成物種の全てが所望のバッファーマトリックス中にもたらされる。
結論として、異なる条件およびパラメータを4つの異なる樹脂で試験したスモールスケール実験はスケールアップおよび最終的な精製プロセスのために非常に重要であった。この最終的な戦略により、満足のいく結果が導かれた。特に、分子量150kDaの短縮型重鎖断片は精製が極めて困難である。さらに、当該断片はまた、含有量がどちらかというと低いので、多くの出発材料を消費する。それでも、ほぼ7.0mgの当該断片をもたらすことができ、これは良好な結果である。最終的な精製戦略により、4つの亜種全てを精製するための簡単な手順がもたらされる。表27は、本発明の転帰を要約し、必要条件に関する評価を示す。
最初に、疎水性相互作用クロマトグラフィーは150kDaの短縮型重鎖種を全長重鎖からより分離させて溶出することができるので、これをMonoQ AIEXステップの代替と考えた。第1の実験から、疎水性相互作用クロマトグラフィーにより実際にそのような溶出がなされることが示されたが、150kDaの亜種の含有量が精製には比較的少ないと思われた。これに対する可能な解決法は、ネガティブモードHICをサイズ排除クロマトグラフィーの代替として組み入れることであった。1つの実験が実施され、それは上首尾であり、150kDaの亜種が富化されたプールを満足のいく程度まで精製することができることを示した。さらなる実験により、結合挙動に対して最大の影響を及ぼすと仮定される電気伝導率レベルに関する妥当な条件を明らかにすることができる。
最終的に、目標が達成され、FVIII亜種を精製するための新規かつ効率的に働く手順、ならびにサイズ排除クロマトグラフィーステップと置き換えるための新規の手法がもたらされた。さらに、4つの亜種全ての純粋なタンパク質溶液をもたらすことは、FVIII分子亜種の性質をさらに調査することを可能にする礎石になる。さらに、精製されたFVIII亜種またはこれらの混合物は、出血性障害の処置に有用であり得る。
(実施例17)
精製されたFVIII亜種の機能的特徴付け−材料および方法
以下に、「精製されたFVIII亜種の機能的特徴付け」に関する全ての実施例について実験の詳細を示す。
FVIII試料および化学物質
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)において産生されたFL−rFVIII(市販のFL−rFVIII製品のプロセス中間材料、0.23mg/ml)、FL−rFVIIIの歴史的ロット、および市販の凍結乾燥した血漿FVIII製品は、Shire、Vienna、Austriaによって提供された。化学物質は、Sigma Aldrich、MO、USAから購入した。別段の指定のない限り、FL−rFVIIIはヒトFL−rFVIIIを指し、pdFVIIIはヒトpdFVIIIを指す。
pdFVIIIおよびrFVIII分子種の精製
vWFを含まないpdFVIIIを市販の凍結乾燥した血漿FVIII製品から精製した。多数のバイアルの再構成をバッファー溶液で実施し、その後、プールして均一な出発材料を実現した。vWFおよびFVIIIの分離を化学的手段によって誘導した。FVIIIの捕捉を抗FVIIIアフィニティーカラムで実施した。vWFのさらなる枯渇を強力なカチオン交換クロマトグラフィーによって実現した。最終的に、バッファー交換および濃縮のために強力なアニオン交換樹脂での追加的な最終精製ステップを実施した。
Bドメイン短縮の程度が異なるrFVIII分子種をFL−rFVIIIから単離した。平らなグラジエントを用いた高分解能アニオン交換クロマトグラフィーステップを使用して、実体を予備分離した。次いで、富化された亜種を用いたプールを生成し、分取サイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製し、その後、強力なアニオン交換樹脂で濃縮し、バッファー交換した。
SDS−PAGE
SDS−PAGEを、Novex NuPAGE SDS−PAGE system(ThermoFisher Scientific、MA、USA)を使用して行った。試料(各50μl)を0.5Mのヨードアセトアミド20μlと混合し、37℃で30分インキュベートした。その後、脱イオン水15μl、NuPAGE LDS サンプルバッファー25μlおよびNuPAGE還元剤10μlを反応混合物に添加し、37℃で30分にわたってインキュベーションを継続した。各試料10μl(30ng)およびprecision plus unstained protein standard(Bio−Rad、CA、USA)2μlをNuPAGE 7%Tris−酢酸ミニゲルにローディングした。電気泳動を150Vで90分にわたって実行した。タンパク質バンドをSilverQuest銀染色キット(ThermoFisher Scientific)を用いて可視化した。
in silicoタンパク質分析
Bドメインの平均疎水性親水性指標を算出するために、Vector NTI Advance 11からのBioAnnotatorツールを使用した。
水素/重水素交換質量分析
rFVIIIの構造モチーフを特徴付けるために、水素/重水素交換質量分析(HDX−MS)を実施した。タンパク質構築物の局所アミドHDXカイネティクスを3秒、10秒、30秒、2分、10分、60分、3時間および3日間のインキュベート時間後に追跡した。HDX反応は、3秒のインキュベーション反応を6℃で行った以外は全て、室温(22℃)で実施した。rFVIII分子種B70−rFVIIを重水素化バッファー(50mMのTrisバッファー、pH6.7、5mMのCaClおよび260mMのNaClを含有する)と混合することによってHDX標識付け反応を開始した。100mMのトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンおよび3.3Mの尿素を含有する氷冷100mMリン酸バッファー、pH2.3を添加することによって反応を停止させ、その後、液体窒素で瞬間凍結した。重水素化された試料を、ブタ胃粘膜由来のペプシン−アガロース(Sigma−Aldrich)を充填し、2×10mmのC18プレカラム(ACE)で脱塩したHPLCカラム(2.1×30mm)(ACE、Aberdeen、UK)を使用して消化した。消化ペプチドを、2×50mmのHALO C18/1.8μmカラム(AMT、DE、USA)を使用した、MS(LC−MS)とカップリングした液体クロマトグラフィーに供した。アセトニトリルグラジエントによってペプチドを溶出し、Orbitrap XL質量分析計(m/z400で60,000分解能)(ThermoFisher Scientific)で分析した。重水素化されていないタンパク質試料の、重水素化された試料と同じ手順を使用した3回の独立したLC−MS/MS分析によって消化ペプチド同定を実施した。
FVIII発色活性
FVIII活性測定を、市販のFVIII発色活性アッセイキット(Siemens Healthcare、Erlangen、Germany)に従い、自動凝固分析機器(BCS XP)(Siemens Healthcare)で実施した。簡単に述べると、未知量の機能的FVIIIを含有する試料を、トロンビン、活性化された凝固第IX因子(FIXa)、リン脂質、凝固第X因子(FX)およびカルシウムを含有するバッファーからなる反応混合物に添加した。トロンビンによる切断後、FVIIIaはリン脂質、FIXaおよびカルシウムと複合体と形成し、その結果、FXが活性化される。活性化されたFX(FXa)を、FXaに特異的な発色性p−ニトロアニリン基質の切断を通じて光度測定により測定し、これは試料中に存在する機能的FVIIIの量と正比例した。標準品はWHO国際標準に対して較正された市販のFL−rFVIII(Shire)であった。
FVIII凝集体の調製
全てのFVIII試料を、0.9mMのCaClおよび0.5mMのMgClを含有するPBS(PBS++)に対して透析し、タンパク質濃度が0.122μM、0.244μMまたは0.61μMのいずれかになるまで希釈した。再現性を確実にするために、全ての実験を少なくとも2回実施した。
温度依存性凝集
タンパク質濃度が高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPLC−SEC)分析のために0.122μMであるか、または動的光散乱(DLS)分析のために0.61μMであるFVIII試料を全て、Synergy H4 Hybrid Reader(BioTek、VT、USA)中プレートシーラーで覆ったポリスチレン96ウェルマイクロプレート(Corning、NY、USA)中、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃または50℃のいずれかで20時間、10分ごとに20秒間培地を振とうしながらインキュベートした。その後、試料を−80℃で凍結させ、DLSおよびHPLC−SEC分析時まで置いた。
45℃における時間依存性凝集
全てのFVIII試料(0.122μM)を、PST−60HL plusサーモシェーカー(Biosan、MI、USA)中、プレートシーラーで覆ったポリスチレン96ウェルマイクロプレート(Corning)中、45℃で24時間インキュベートした。試料を種々の時間間隔後に抜き取り、−80℃で直ちに凍結させ、HPLC−SECによる試験まで置いた。
FVIII凝集の均一シーディング
シードを調製するために、FVIII試料(0.122μM)をPST−60HL plusサーモシェーカー(Biosan)中、プレートシーラーで覆ったポリスチレン96ウェルマイクロプレート(Corning)中、45℃で2、5、8または18時間インキュベートした。ネイティブなFVIII試料(0.122μM)をそれらの対応するシードと1:1で混合し、45℃における時間依存性凝集を実施した。試料をHPLC−SEC分析まで−80℃で保管した。
撹拌およびずり応力により誘導される凝集
タンパク質濃度0.244μMのFVIII溶液を使い捨てOmnifixシリンジ(Braun、Melsungen、Germany)中で、手動で10分間撹拌した。溶液をTerumo Europe、Belgiumからの「Winged infusion sets with needle protection」(23G×3/4’’;L=35cm、V=0.25mL)によって注入することによってずり応力を誘導した。この十分に制御されたストレス条件は、再構成および適用の間のrFVIII製品の潜在的な取り扱いミスを表すことを意図している。ストレス条件への曝露後の全ての試料をフローサイトメトリーに基づく粒子分析まで−80℃で保管した。
動的光散乱
Malvern NanoZetasizer ZSP(Malvern Instruments、Malvern、UK)を使用してDLSを実施した。全ての試料(0.244μM)を10,000rpmで5分間遠心分離し(Centrifuge 5415C)(Eppendorf、Vienna、Austria)、試料60μLをZEN0040使い捨てマイクロキュベットに充填した。操作温度を25℃に設定し、平衡化時間を2分間とした。角度を173°後方散乱に設定して、タンパク質の流体力学的直径を決定した。このパラメータを、DLSによってタンパク質の有効なサイズを分析するために使用した。試料当たり最低3回の実行を測定して平均結果を得た。
高性能サイズ排除クロマトグラフィー
HPLC−SECを、室温で、HPLC 1260 infinity system(Agilent Technologies、Santa Clara、CA、USA)とカップリングしたTSKgel G4000SWxlカラム(7.8×300mm)(Tosoh Bioscience、Tokio、Japan)およびTSKガードカラム(6×40mm)(Tosoh Bioscience)を使用して実施した。SECを、50mMのTris−HCl、5mMのCaCl、400mMのNaClおよび0.05%NaN、pH7.0からなる水性バッファーを使用し、定組成条件下、流速0.3ml/分で行った。試料体積100μl(タンパク質濃度0.122μM)を1mMのチオフラビンT(ThT)3μlと混合し、その後、カラムにローディングした。蛍光検出を用いてタンパク質の溶出をモニタリングするために、励起および放出波長をそれぞれ280nmおよびゼロ次に設定した。ThT蛍光を440nm励起およびゼロ次放出を用いてモニタリングした。空隙容量(保持時間18.0〜21.2分)、保持時間21.2〜27.0分および27.0〜43.0分を用いたピーク溶出を、それぞれ可溶性タンパク質凝集体、オリゴマーおよび単量体と名付けた。凝集体、オリゴマーおよび単量体の量をクロマトグラムにおける全てのピークの総面積に対するパーセンテージとして算出した。ThT結合をThT蛍光シグナルと内因性タンパク質蛍光シグナルの比として算出した。タンパク質に基づくゲル濾過標準物質(Bio−Rad)を試料の間に分析して、最適なカラム性能をモニタリングした。全ての試料を順不同で分析した。
曲線あてはめおよび統計解析
曲線あてはめをGraphPad Prism6によってコンピュータ処理した。オリゴマー形成についてのカイネティクス速度定数(koligo[h−1])を、方程式:y=y+(プラトー−y)*[1−exp(−koligo*x)];y=オリゴマー量[%];x=時間[h];y=xがゼロである場合のy値;プラトー=無限時間でのy値である)に従ってデータを一相会合モデルにあてはめることによって導き出した。凝集体の形成速度(kagg[h−1])を、方程式:y=ymin+(ymax−ymin)/(1+exp[(x1/2−x)/(1/kagg)];y=凝集体量[%];ymin=停滞期のy;ymax=凝集終了後のy;x=時間[h];x1/2=yが最大半量になる時間(Uversky et al., 2001)に従ってデータをBoltzmann S字モデルにあてはめることによって導き出した。
統計学的差異を、対応のないt検定を使用し、GraphPad Prism 6によってコンピュータ計算した。
フローサイトメトリーに基づく粒子分析
肉眼では見えない粒子を検出し、特徴付けるためのフローサイトメトリーに基づく粒子分析方法を使用した。フローサイトメトリーに基づく方法では、肉眼では見えない粒子を特徴付けるために、サイズ較正用ビーズ(Fluoresbrite(登録商標)YG Carboxylate Size Range beads)(Polyscience Inc.、PA、USA)、計数用ビーズ(CountBright(商標)Absolute Counting Beads)(Invitrogen Corp.、CA、USA)および蛍光プローブの組合せを使用する。タンパク質およびタンパク質を含有する粒子を肉眼では見えない非タンパク質粒子と区別するために、試料を蛍光色素4,4’−ジアニリノ−1,1’−ビナフチル−5,5’−ジスルホン酸二カリウム塩(Bis−ANS)で染色した。この方法は刊行物(Lubich et al., 2015)に詳細に記載されている。
(実施例18)
精製されたFVIII亜種の機能的特徴付け−pdFVIIIとFL−rFVIIIの類似した不均一性
以下の実験において、目的は、Bドメイン、ならびにFL−rFVIIIおよび血漿由来(pd)FVIIIにBドメインが存在することに起因する天然の不均一性の、タンパク質安定性および凝集に対する影響を調査することであった。Bドメインの構造特性を試験し、可変Bドメイン含有量を有するFL−rFVIII、pdFVIIIおよび精製されたrFVIII分子種の物理的ストレスに抵抗する能力を比較し、それらの凝集挙動を探求した。観察に基づいて、FL−rFVIIIおよびBDD−rFVIII凝集の図式モデルを構築し、FVIII分子の安定性を確実にすることにおけるBドメインおよび分子不均一性の新しい役割が示唆された。
FVIIIの多ドメイン構造の概略図が図2Bに示されている。角括弧は、FL−FVIIIのBドメイン内の複合体転写後プロセシングの結果生じる分子種を示す。100%(B100−)、70%(B70−)、20%(B20−)または0%(BDD−rFVIII)のBドメインを含有するrFVIII分子種は、FL−rFVIIIにおいて見出される主要なFVIII種を示す(Jankowski et al., 2007、内部の分析データは示していない)。Bドメイン含有量のパーセンテージを、それぞれのrFVIII HCの見かけの分子質量に基づいて算出した。アミノ酸Arg1313からArg1648までに達するBドメイン部分は、分泌されたFVIII HC種のいずれにおいても見出されなかったので、切断プロセス後に完全に取り除かれる可能性が高い(Jankowski et al., 2007)。
pdFVIIIを、プールされたヒト血漿から、アフィニティークロマトグラフィーとイオン交換クロマトグラフィーの組合せによって最高純度まで単離した。vWFの量はFVIII 1mg当たりvWF7.5μgまで枯渇した。銀染色SDS−PAGEゲルでpdFVIIIおよびCHO由来FL−rFVIIIについてほぼ同一の異成分からなるタンパク質プロファイルが同定された(図44の左側の画像、レーン1〜2)。どちらでも、およそ200kDaにおいて最も強いバンドが示され、これにより、グリコシル化されたB100−HC種、および分子量が低いいくつかの短縮型HC/Bドメイン種が、ゲルにおいてFL−rFVIIIとpdFVIIIで同等のレベルで移動することが示される。主要な分子FVIII種がFL−rFVIIIおよびpdFVIIIの両方に存在することは、SECプロファイルでさらに観察された(図51)。さらに、FL−rFVIIIの不均一性は2005年から2015年までに生成された歴史的ロットにわたって一貫性を示した(図44の右側の画像)。
(実施例19)
精製されたFVIII亜種の機能的特徴付け−rFVIII分子種の精製および特徴付け
単一のFVIII分子種をCHO由来FL−rFVIIIから、サイズ排除クロマトグラフィー法およびイオン交換クロマトグラフィー法を適用することによって精製した。BDD−rFVIII、B20−rFVIIIおよびB70−rFVIIIを、それぞれC4 HPLC分析に基づいて95%、94%および92%の純度まで単離した(データは示していない)。それぞれの種のLCについては75kDaの一定の見かけの分子量バンドが観察されたが、B70−rFVIII、B20−rFVIIIおよびBDD−rFVIIIのHCでは、様々な量のBドメインに起因して、それぞれSDS−PAGEゲルで150、110および90kDaの見かけの分子量が示された(図44の左側の画像、レーン3〜5)。精製されたrFVIII種の完全性をHPLC−SECによってさらに実証した(図51)。B100−FVIIIは以下では使用しない。
(実施例20)
精製されたFVIII亜種の機能的特徴付け−Bドメイン構造特性
Bドメインは、全体的な疎水性が低いアミノ酸配列を有する。KyteおよびDoolittle(Kyte et al., 1982)による疎水性親水性指標の平均は総Bドメインアミノ酸配列について0.751と算出された。低疎水性のクラスターはBドメイン配列の中で一様に分布する。B100−rFVIII、B70−rFVIIIおよびB20−rFVIIIのBドメイン配列は、それぞれ−0.779、−0.741および−0.896の同様の平均疎水性親水性指標値を示す。低疎水性は、一般には、Uversky(Uversky et al., 2002)によって詳細に検討されている通り、ネイティブにアンフォールディングされたタンパク質を特徴付ける。
FVIII分子種B70−rFVIIIを水素/重水素交換質量分析(HDX−MS)に供した。この手法では、タンパク質をDOに曝露することにより、不規則な領域では迅速なアミドHDXが誘導され、一方、密接にフォールディングされたエレメントは重水素の組み入れからはるかに大きく保護され、その結果、同位元素交換が遅くなるという事実を活用する(Konermann et al., 2011)。総タンパク質配列の63%およびB70−rFVIII Bドメイン配列の37%を包含するB70−rFVIII由来の120ペプチドのHDX−MSカイネティクスを測定した(図52)。Bドメインに属する配列から得た全てのペプチドで、重水素組み入れに関して非常に高速なカイネティクスが実証された。3秒間の最も短いインキュベート時間であっても、3日間の標識付け後に全てのペプチドでそれらの対応する完全に重水素化された試料と同じ量の重水素が組み入れられた。
HDX−MSデータから、アミノ酸配列特性と共に、B70−rFVIIIのBドメインは二次構造を欠くが、どちらかというと内因性に不規則かつ柔軟であると思われることが示される。上記のin silico分析に基づいて、同様の溶媒曝露および柔軟性をFVIII分子種に存在する総BドメインおよびいくつかのBドメイン短縮について予測することができる。
いかなるBドメインも欠失したHC配列のHDXカイネティクス結果(図52)は、A1ドメイン内の不規則な表面ループならびにA1ドメインとA2ドメインの間の柔軟なリンカー領域によって破壊される順序づけられた構造要素を示す公開されたFVIII結晶構造と良好に一致する(Shen et al., 2008)。
(実施例21)
精製されたFVIII亜種の機能的特徴付け−温度の上昇におけるFL−rFVIIIおよびrFVIII分子種の凝集挙動
FL−rFVIII、B70−rFVIII、B20−rFVIIIおよびBDD−rFVIIIの温度依存性凝集挙動を調査した。試料を温度の上昇(25〜50℃)に曝露し、DLSおよびHPLC−SECによって分析した(図45)。強度で重み付けられたタンパク質凝集体の流体力学的直径の平均を記載するZ平均はFL−rFVIIIおよびrFVIII種について25から35℃では変化しなかった。試験品目全てについて40℃から始まってZ平均の増加が観察されたが、rFVIII試料間で明白な差異があった。他方では、25〜50℃で観察された凝集体平均サイズの増大倍率は、BDD−rFVIIIについては9.2、およびB20−rFVIIIについては6.4であり、B70−rFVIIIについては3.4、およびFL−rFVIIIについては2.5にしか達しなかった。45℃および50℃で20時間インキュベートした後に検出されたBDD−rFVIII凝集体は、それぞれ、FL−rFVIII凝集体と比較してサイズが2.5倍および3.1倍であった。
DLSによって検出された凝集挙動と同じ傾向がHPLC−SECによるrFVIII凝集体分析後に示された(図45挿入図)。
HPLC−SECによってFL−rFVIII単量体から分離されたFL−rFVIII凝集体は、SDS−PAGEによって分析して、各rFVIII分子種をネイティブなFL−rFVIIIと同様の比で含有することが示された(図53)。
要約すると、温度の上昇に曝露すると、Bドメイン含有量が減少するにしたがって平均凝集体サイズが増大した(凝集傾向の順序BDD−rFVIII>B20−rFVIII>B70−rFVIII>FL−rFVIII)。FL−rFVIIIはrFVIII分子種の異成分からなる混合物であり、試験した全てのrFVIII試料の中で凝集体の形成の最低の傾向を示した。
(実施例22)
精製されたFVIII亜種の機能的特徴付け−FVIII凝集経路は分子不均一性およびBドメイン含有量に依存する
詳細な時間依存性凝集分析を、FVIII分子におけるコンフォメーションの変化の開始が報告された温度である45℃で実施した(Grillo et al., 2001、Ramani et al., 2005a)。45℃における凝集カイネティクス、その後のHPLC−SECにより、rFVIII分子種とFL−rFVIIIの間で凝集体の経路およびオリゴマー形成に明白な差異が明らかになった(図46)。使用するカラムの排除限界に基づいて、凝集体を、空隙容量で溶出する50〜100nmのサイズ範囲の可溶性タンパク質凝集体と定義した。オリゴマー(保持時間:21.2〜27.0分)を、サイズ排除カラムによって遅延するがタンパク質単量体よりも前に溶出する10〜50nmのサイズ範囲のタンパク質構造と定義した(保持時間:27.0〜43.0)。全てのFVIII試料のオリゴマー形成が一相会合曲線に従ったが、分析された分子が含有するBドメインが少ないほど、より急速にオリゴマーが形成された(図46A)。FL−rFVIII、B70−rFVIII、B20−rFVIIIおよびBDD−rFVIIIのオリゴマー形成の速度定数(koligo)は、それぞれ0.13±0.02、0.12±0.05、0.35±0.24および0.70±0.24h−1と算出された。凝集曲線はS字形状を示し、凝集体の形成率(kagg)は、重ねて、明白にBドメイン含有量応じて変動する(図46B)。Bドメインの不在下では、凝集体はより急速かつ過剰に形成された;kagg(FL−rFVIII)=0.11±0.00h−1、kagg(B70−rFVIII)=0.18±0.02h−1、kagg(B20−rFVIII)=0.21±0.07h−1、kagg(BDD−rFVIII)=0.21±0.08h−1。BDD−rFVIIIのオリゴマーの量は8時間後に最大22%まで増加し、その後連続的に減少したが、BDD−rFVIIIの凝集体の数量は、24時間インキュベートした後、1hの停滞期で48%まで過剰に増加した(図46D)。B20−rFVIIIオリゴマー含有量の最高値(31%)が17時間後に観察され、B20−rFVIII凝集体濃度(31%)は24時間後に同じであった。22〜24時間後に33%のB70−rFVIIIおよび44%のFL−rFVIIIオリゴマーがプラトーレベルで形成されたが、インキュベート時間の最後に、B70−rFVIIIおよびFL−rFVIIIについてそれぞれ17%および11%というほんの少しの凝集体含有量が観察された。FL−rFVIIIおよびBDD−rFVIIIの凝集経路は、それぞれ図46CおよびDに示されている通り、非常に好ましくなかった。pdFVIIIの凝集(図46E)は、FL−rFVIIIと非常に類似した経路に従い、速度定数koligo(pdFVIII)=0.24±0.04およびkagg(pdFVIII)=0.15±0.03h−1であった。オリゴマーおよび凝集体の形成速度と一致して、BDD−rFVIIIの単量体の消失はFL−rFVIIIおよびpdFVIIIと比較してより速かった(図46F)。試験した試料それぞれのFVIII活性は、単量体濃度の低下に応じて低下した(データは示していない)。
要約すると、Bドメイン含有量が増加するにしたがってオリゴマー形成の傾向が増加するが、凝集体形成の傾向は、逆であり、不均一FL−rFVIIIおよびpdFVIIIのどちらでも、rFVIIIのいずれの精製された単一成分からなる分子種に対しても、非常に類似しているがはるかに低い凝集体形成の傾向が示された。
(実施例23)
精製されたFVIII亜種の機能的特徴付け−凝集体の構造的差異によって誘発される凝集経路の分岐
検出された凝集挙動の差異の原因を調査するために、45℃で24時間インキュベートした後のrFVIII分子種、FL−rFVIIIおよびpdFVIIIのオリゴマーおよび凝集体に結合した際のThT蛍光をHPLC−SECによって分析した。ThTは、一般に使用される蛍光色素であり、クロスβシートリッチ構造に結合すると、蛍光の増強を示す(Biancalana et al., 2010)。ThTの凝集したFVIIIタンパク質構造への結合能力を、ThT蛍光と内因性タンパク質蛍光の比として表した(図47)。BDD−rFVIIIのオリゴマーへのThT結合の増加が、Bドメインを含有する種(B20−rFVIIIおよびB70rFVIII)のBドメインのオリゴマーと、ならびにFL−rFVIIIおよびpdFVIIIと比較して観察された。BDD−rFVIIIの凝集体では、FL−rFVIIIおよびpdFVIIIと比較してThT結合能力の3倍を超える増強が示された。さらに、B20−rFVIII凝集体のThT蛍光は、B70−rFVIII凝集体について観察されたものよりも大きかった。FL−rFVIIIおよびpdFVIIIのオリゴマーおよび凝集体へのThT結合の際に測定された蛍光は非常に類似していた(図47)。ThT蛍光と280nmにおけるタンパク質吸収シグナルの比により、試験したFVIII試料間で、ThT/内因性タンパク質蛍光比と比較して同じThT結合の差異が示された。いずれの分析したFVIII試料でも単量体へのThT結合は検出されなかった。
(実施例24)
精製されたFVIII亜種の機能的特徴付け−FVIII凝集の均一シーディング
凝集体を含有するクロスβシートは、ストレス条件に際してさらなるタンパク質凝集の核となるシードとして機能することが公知である(Gsponer et al., 2006、Jarrett et al, 1993)。凝集したBDD−rFVIII、B70−rFVIIIおよびFL−rFVIII(45℃で2、5、8または18時間)のそれぞれの試料の凝集プロセスにシーディングする能力を探求した。図48は、50%の予め形成されたシードを含有するFVIII試料の、シーディングされていないFVIII試料と比較した時間依存性オリゴマーおよび凝集体の形成を示す。B70−rFVIIIおよび不均一FL−rFVIIIの均一シーディング(それぞれ図48BおよびC)では、オリゴマー形成および凝集挙動は変更されなかった。Bドメインを欠くrFVIII分子種は異なる機構を示す。BDD−rFVIIIの最初の迅速なオリゴマー形成後、均一なシードの添加と共に曲線は平らになり、最終的に、10%のオリゴマー飽和濃度に達した。BDD−rFVIII凝集体の形成の停滞期は添加されるシードの型に応じて短縮した。45℃で8または18時間にわたってインキュベートすることによって生成したシードの添加後、BDD−rFVIII凝集曲線の停滞期は完全に消失した(図48A)。停滞期の短縮は、生物学的治療薬(biotherapeutic)であるインスリンを含めたいくつかのタンパク質に関して以前に記載されている核生成依存性重合の典型的な特性である(Arosio et al., 2015、Surmacz-Chwedoruk et al., 2014)。
BDD−rFVIIIのクロスβシートリッチ凝集体は、さらなるタンパク質凝集の均一シーディングにおいて有効であった。現象は、どちらもクロスβシート陽性凝集体を形成しないB70−rFVIIIでもFL−rFVIIIでも観察されなかった。興味深いことに、FL−rFVIIIは、BDD−rFVIIIのごく一部も含有するその天然の不均一性が原因になるにもかかわらず、単一成分rFVIII分子種と比較した場合に凝集およびシーディングしやすさが最小である。
(実施例25)
精製されたFVIII亜種の機能的特徴付け−撹拌およびずり応力下での肉眼では見えないFVIII粒子の形成
臨床的に関連するストレス条件をFL−rFVIII、pdFVIIIおよびrFVIII分子種に対して撹拌およびずり応力を適用することによってシミュレートした。0.75〜70μmのサイズの誘導された肉眼では見えないタンパク質含有粒子は、HPLC−SECの分析範囲を超え、フローサイトメトリーに基づく方法によって検出された(Lubich et al., 2015、Nishi et al., 2014)。撹拌およびずり応力への曝露後の、肉眼では見えないタンパク質含有粒子の検出濃度はFL−rFVIIIおよびpdFVIIIにおいて同様のレベルに達し、2.4〜4.2×10計数/mlの範囲であった(それぞれ平均値3.1×10計数/mlおよび3.2×10計数/ml)。BDD−rFVIIIにおいて有意に高い濃度が検出された(平均値6.0×10計数/ml;4.9〜6.9×10計数/mlの範囲)。Bドメイン短縮型分子種の肉眼では見えないタンパク質含有粒子濃度は、それぞれの種のBドメイン含有量に依存し、B20−rFVIII(平均値5.5×10計数/ml)ではB70−rFVIII(平均値3.9×10計数/ml)よりも高かった(図49)。ストレスを与えていない試料は、0.4〜4.6×10計数/mlの範囲の肉眼では見えないタンパク質粒子濃度を示した。
(実施例26)
精製されたFVIII亜種の機能的特徴付け−結果の考察
前の実施例において、CHO細胞において発現させたヒトFL−rFVIIIの不均一性、安定性および凝集挙動を調査し、高度に精製されたヒトpdFVIII、可変量のBドメインを含有する精製されたrFVIII分子種と比較した。Bドメインの構造特性を探究し、FVIII分子の安定化におけるそれらの潜在的な役割に取り組む。
データから、CHO細胞株において産生されたFL−rFVIIIがpdFVIIIと同様の天然の不均一性を示し、同様にpdFVIIIに存在する全ての分子Bドメイン種を有することが示される。完全には理解されていないが、FL−rFVIII分泌の間のBドメインのプロセシングは、これらの実験において示される歴史的にCHO細胞株により産生されたFL−rFVIIIのロットの同一の異成分からなるタンパク質プロファイルによって示される通り一貫しており、pdFVIIIと同一である。興味深いことに、ベビーハムスター腎臓細胞株において産生されたFL−rFVIIIは、CHO細胞株由来FL−rFVIIIおよびpdFVIIIとはわずかに異なるタンパク質プロファイルを示す(Jankowski et al., 2007)。一般に、FVIIIの不均一性は、HC/Bドメイン短縮の正確な長さに軽微な差異があるにしても、種に依存しない特性である。これは、これらの実験および以前の研究においてヒトpdFVIIIおよびFL−rFVIIIについて観察され(Jankowski et al., 2007)、ブタpdFVIIIについても観察された(Lollar et al., 1988)。対照的に、これらの実験において分析されたBDD−rFVIIIならびに販売されているBDD−rFVIII製品は、単一成分からなる、ほぼ人工的に出現するタンパク質パターンを示し、したがって、異成分からなるpdFVIIIと比較した場合に高い差異を示す(D'Amici et al., 2010; Thim et al., 2010; Peters et al., 2013)。
不均一性の役割およびFVIII凝集に対するBドメインの影響を探求した。FL−rFVIIIは、45℃で開始される三次構造の軽微な構造的変更に起因して凝集しやすいこと(Grillo et al., 2001)、およびC2ドメイン内の脂質結合性領域のコンフォメーションの変化の結果として凝集し始めること(Ramani et al., 2005a)が以前示された。本発明では、温度上昇時に、不均一FL−rFVIIIは最低の凝集傾向を示すが、単一成分からなるBDD−rFVIIIは広範囲にわたって凝集し、また、はるかに大きな凝集体を形成することが示された。rFVIII分子種のBドメイン含有量が減少するにしたがって凝集が上昇する傾向が観察された。熱ストレス(45℃)下でのオリゴマーおよび凝集体の形成の詳細な時間依存性分析により、異なるFVIII試料の多岐にわたる経路が明らかになった。熱ストレスを受けたFL−rFVIIIおよびpdFVIIIのオリゴマー形成が遅いことにより、凝集がほぼ阻害された。BDD−rFVIIIに関しては、はるかに速いオリゴマー形成および同じく速い凝集が観察された。rFVIIIの分子種は、残っているBドメインの量に依存してオリゴマー形成または凝集しやすかった。熱により誘導されたBDD−rFVIIIオリゴマーおよび凝集体ではThT陽性クロスβシートリッチ構造が検出されたが、Bドメインを含有するFVIIIでは低い程度で存在したかまたはさらには存在しなかった。BDD−rFVIIIオリゴマーにおけるクロスβシートにより、迅速かつ広範囲にわたる凝集が誘発され、BDD−rFVIIIとFL−rFVIIIの間の多岐にわたる凝集挙動が説明される可能性が最も高い。さらに、他のいずれの分析されたFVIII試料でも観察されなかったBDD−rFVIII凝集の効率的な均一シーディングは、ほぼ確実に、この構造的差異に起因して生じた。
本発明において熱により誘導される凝集から観察された結果に基づいて、BDD−rFVIIIおよびFL−rFVIIIオリゴマーおよび凝集体の形成の多岐にわたる経路を説明する図式モデルを構築した(図50)。FL−rFVIIIに関する最初の出発材料は全てのrFVIII種の異成分からなる混合物を表すが、BDD−rFVIIIは、1つの単一の種のみで存在する。モデルにおける矢印の長さは、オリゴマーおよび凝集体の形成の速度を示し、どちらも、BDD−rFVIIIではFL−rFVIIIと比較してはるかに速い。BDD−rFVIIIは、順序づけられた大きなクロスβシートリッチ凝集体を形成し、FL−rFVIII凝集体は反復性を欠き、種々の種で構成され、また、サイズがより小さい。順序づけられたクロスβ含有構造への可溶性タンパク質のアセンブリは、アルツハイマー病、パーキンソン病または海綿状脳症などの多くのヒト神経変性疾患の必須事象である(Chiti et al., 2006)。いったん臨床症状が検出されたそのような障害の迅速な発症は、それぞれの蓄積されたタンパク質凝集体のシーディング能力に関連付けられている(Jarrett et al., 1993)。
本発明では、Bドメインが溶媒曝露、不規則かつ柔軟であり、さらに、低疎水性を示すことが解明された。これらの知見から、FVIIIについて、α−シヌクレインなどの有意な不規則なセグメントを有する他のタンパク質において観察されたものと同様のBドメインの凝集保護機能を提唱することができる。α−シヌクレインのネイティブにアンフォールディングされた高度に荷電したC末端領域がタンパク質の凝集の安定化および防止に必須であることが示された。α−シヌクレインのC末端短縮型断片は、全長タンパク質よりも速く凝集した。短縮型断片の凝集は、C末端領域の長さに明白に依存し、不規則な領域の含有量が多くなるほど少なくなった(Murray et al., 2003; Serpell et al., 2000; Hoyer et al., 2004)。
興味深いことに、本発明において試験したFVIII試料全てのうち、Bドメイン含有rFVIII種、短縮型rFVIII種およびBドメイン欠失rFVIII種の混合物からなる異成分からなるFL−rFVIIIについて最低の凝集の傾向が観察された。不均一性により、個々のrFVIII種間の配列類似性の低下が引き起こされる。実際、以前の研究において、そのようなタンパク質の配列多様性が凝集しやすさおよびシーディングプロセスの低下に必須であることがすでに実証されている。多ドメインタンパク質タイチンの凝集挙動に関するWrightおよび共同研究者の発見により、異なるドメイン間の共凝集の効率は配列同一性が低下するにしたがって著しく低下することが示され、さらに、彼らは、タンパク質間の低い配列同一性を維持することが、生体系の込み入った環境において凝集を強力に阻害する重要な進化特性であると主張した(Wright et al., 2005)。同様に、リゾチームのシーディング原線維形成の効率は、それらの配列の類似性に強力に依存し、配列同一性が低いほどシーディング効率が低いことが示された(Krebs et al., 2004)。これらの知見は、異成分からなるFL−rFVIIIの単一成分からなるrFVIII種と比較して低い凝集傾向およびシーディング効率を明白に示す本発明の結果とよく相関する。
FVIII凝集に対する撹拌およびずり応力の影響も本発明において探究した。これらの臨床的に関連するストレス条件は、患者によるFVIII治療用製品の潜在的な取り扱いミスを模倣するものであり、タンパク質と、多くの場合にシリンジの内部表面に存在するケイ素油の相互作用を促進して、滑らかなプランジャーの動きを可能にし得る(Lubich et al., 2015、Thirumangalathu et al., 2009、Gerhardt et al., 2014)。これにより、一般には0.1〜50μmのサイズ範囲である肉眼では見えないタンパク質含有粒子の形成が導かれる(den Engelsman et al., 2011)。本発明では、撹拌およびずり応力での肉眼では見えないタンパク質含有粒子の形成は、熱により誘導される凝集に関して観察されたものと同様であり、Bドメイン含有量に明白に依存した。FL−rFVIIIおよびpdFVIIIにおける粒子濃度は同様のレベルに達したが、BDD−rFVIIIでは有意に多い粒子が検出された。
本発明は、FVIII凝集が、(i)クロスβシートリッチかつシーディングしやすい凝集体の形成を防止することによるFVIII分子に対する安定化効果を有するBドメインの含有量、および(ii)新たな配列多様性に起因する凝集を抑制する不均一性などの2つの主要なパラメータに依存し、今度はそれらのパラメータが互いに影響を及ぼす可能性があることを実証する。脱グリコシル化FL−rFVIIIの凝集抵抗性の低下によって示された通り、グリコシル化がFL−rFVIIIの安定性に有意に影響を及ぼすことが以前公開された(Kosloski et al., 2009)。N−グリコシル化部位の約80%がBドメイン内に分布していることを考慮すると(Fay et al., 2006)、このドメインの欠失により、タンパク質がより凝集しやすくなる可能性が高いと思われる。製造および製剤化が一般にFVIIIおよびタンパク質治療薬の凝集に影響を及ぼす別の重大な因子である(Eon-Duval et al, 2012)。医療専門家は、これらの品質の差異および結果生じる患者に対する潜在的な安全性の懸念についてよく分かっているはずである。
タンパク質凝集体は、タンパク質薬物の安定性および貯蔵寿命に影響を及ぼすだけでなく、それらの免疫原性の増強もなす(Eon-Duval et al, 2012)。タンパク質凝集体の反復性は、免疫細胞上のパターン認識受容体または架橋結合抗原受容体によって認識することができる。形成された抗薬物抗体は、タンパク質に対する中和効果を有し、それが今度はその効力または薬物動態学、および、特に内在性タンパク質に関連する治療薬の場合には、患者安全性のリスクに影響を及ぼす(Moussa et al., 2016)。FVIIIで処置された血友病A患者のおよそ5分の1で阻害性抗体が形成される(Gouw et al., 2013; Hay et al., 1998)。血友病Aマウスモデルにおける阻害性抗体の誘導におけるFVIII凝集体の影響が以前調査された。タンパク質凝集体により、in vivoモデルにおけるFVIII免疫原性が凝集体の性質およびそれらがどのように形成されたかに応じて違うようにモジュレートされることが示された(Ramani et al., 2005b; Pisal et al., 2012)。しかし、現在まで、FVIII製品におけるタンパク質凝集体によりヒトにおける生物学的治療薬の免疫原性がどのようにモジュレートされるか、ならびにこの研究において特徴付けられたFVIIIのオリゴマーおよび凝集体がどのような免疫原性を有し得るかについてのデータは存在しない。
要約すると、本発明は、FL−rFVIIIおよびpdFVIIIの同様のタンパク質不均一性を実証し、物理的ストレスに曝露した際のタンパク質凝集しやすさを低減することによる不均一性の有益な効果を示唆する。さらに、タンパク質凝集経路をモジュレートし、FVIIIを過剰な凝集から保護することによってFVIII分子の安定性を確実にすることにおけるBドメインの新しい役割を同定した。
上記の発見を、今後の新規FVIII治療薬の設計に、それらの安定性、貯蔵寿命、および、最も重要な安全性を改善するために使用することができる。
(実施例27)
FVIII種のタンパク質濃度の決定
FVIII種のタンパク質濃度をどのように決定することができるかの例を以下に示す。
280nmにおけるFVIII吸収係数の算出:
アミノ酸配列に基づき、全てのシステインがジスルフィド結合していると仮定して、280nmにおける吸収係数を算出した。チロシン硫酸化は算出に含めなかった。
吸収係数は、示されているタンパク質の1mg/ml溶液の理論的な吸収である。
SOS−Eの吸収係数を、C4クロマトグラフィー分析データから分かっているAdvateに存在する種の比に基づいて算出した。pdFVIII、およびFVIII亜種の混合物の吸収係数をSOS−Eに関しては同じであると仮定した。
FVIIIタンパク質濃度の決定:
280nmにおけるFVIII試料の吸収を分光光度により決定した。濃度を
濃度(mg/ml)=測定された吸収/280nmにおける吸収係数
に従って算出した。
(実施例28)
精製された組換えFVIII種およびそれらの混合物の活性
精製された組換えFVIII(rFVIII)種およびそれらの混合物の活性を測定し、FL−rFVIII(SOS−E)および血漿由来(pd)FVIIIの活性と比較した。
FVIII試料の活性を、
・発色活性アッセイ
・一段凝固アッセイ
・較正された自動トロンボグラフィーによる組織因子誘発性トロンビン生成アッセイ
によって測定した。
FVIII試料:
・精製されたrFVIII種(90kDa、110kDa、150kDa、180kDa)
・混合物:90kDa種、110kDa種、150kDa種および180kDa種のAdvate(C4クロマトグラフィー分析データに基づく)に存在するモル比での混合物
・SOS−E:FL−rFVIII、種精製の出発材料
・pdFVIII
全ての試料を、塩ならびに界面活性物質を含めたバッファー成分を含有する定義されたpHのバッファー中に0.244μMまで希釈した。FVIII種のサイズおよび分子量の差異に起因して、容量モル濃度0.244μMにおける種の濃度(μg/ml)は以下の通りであった:
FVIII試料 濃度(μg/ml)
90kDa 40
110kDa 42
150kDa 46
180kDa 55
混合物 52
SOS−E 52
pdFVIII 52
方法の説明:
一段凝固アッセイ
一段凝固アッセイによるFVIII活性を、市販のaPTT試薬、アクチンFSL(Siemens、Germany)を用いて自動凝固分析機器(BCS XP、Siemens、Germany)で実施した。未知量の機能的FVIIIを含有する試料をヒトFVIII欠乏血漿および活性化因子と混合する。+37℃でインキュベートした後、塩化カルシウムを添加することによって凝固を開始させ、血餅形成までの時間を記録する。凝固時間は、試料中のFVIII濃度に間接的に比例する。結果をIU FVIII/mL、参照曲線からの読み取りで示す。標準品はWHO国際標準に帰することができる全長rFVIIIであった。
発色活性アッセイ
FVIII活性アッセイを、市販の試薬(Siemens、Germany)を用い、自動凝固分析機器(BCS XP、Siemens)で実施した。発色アッセイの第1のステップでは、未知量の機能的FVIIIを含有する試料を、トロンビン、活性化されたFIX(FIXa)、リン脂質、FXおよびカルシウムを含有するバッファーからなる反応混合物に添加する。FVIIIがトロンビンによって活性化される。活性化されたFVIII(FVIIIa)はリン脂質、FIXaおよびカルシウムと複合体を形成し、その結果、第X因子(FXa)が活性化される。発色アッセイの第2のステップでは、FXaをFXaに特異的なペプチドニトロアニリド基質の切断を通じて測定する。P−ニトロアニリンが生成し、それにより、405nmにおける吸光度によって光度測定で測定することができる色がもたらされる。生じる色は、試料中に存在する機能的FVIIIの量に正比例する。標準品はWHO国際標準に対して較正された全長FVIIIであった。
組織因子誘発性トロンビン生成アッセイ
トロンビン生成アッセイ(TGA)の一種である較正された自動トロンボグラフィー(CAT)は、ex vivoにおける有効性パラメータとして、および研究ツールとして臨床研究における使用が増加している包括的止血アッセイである。トロンボグラムは、凝固血漿中のトロンビンの濃度を記載するものであり、したがって、生理的条件に近いところでの止血系の機能試験である。当該アッセイは、組織因子による凝固の開始時から経時的な、トロンビンによる蛍光発生基質Z−G−G−R−AMCの切断によって生じる蛍光の測定に基づく。当該アッセイは、96ウェルプレート蛍光光度計であるThrombograph(商標)で実施され、また、内部フィルター効果、血漿の色のドナー間の変動性、基質枯渇および機器による差異を補正するために必要なトロンビン較正物質を使用する。
以下のCATパラメータにより血漿試料の止血の状態を特徴付ける:
・遅延時間[分]:凝固時間、トロンビン生成の開始を表す
・ピークまでの時間[分]:最大量のトロンビンが生成するまでの時間
・トロンビンピーク[nM]:形成される最大トロンビン濃度
・内在性トロンビン潜在性(ETP)[nM 分]:生成されるトロンビンの総量を表すトロンビン生成曲線下面積。
血友病A患者血漿中の異なるrFVIII種およびそれらの混合物のトロンビン生成を、較正された自動トロンボグラフィー(CAT)によって測定した。rFVIII種および混合物の試料希釈物をサンプルバッファー(25mMのHEPES、175mMのNaCl、pH7.4、5mg/mLのBSA)中に調製した。試料を希釈して、アッセイにおける血漿中濃度を0.0625〜1nMのrFVIIIにした。96ウェルマイクロタイタープレート(Immulon 2HB、Thermo Labsystems、Waltham、MA USA)中、以下の成分を組み合わせた:rFVIII試料希釈物10μL、組織因子(TF)とリン脂質(PL)の混合物、最終濃度1pMのTFおよび4μMのPL(PPP−Reagent Low Thrombinoscope、Maastricht、Netherlands)10μL、ならびに血友病A患者由来の乏血小板血漿(PPP)プール80μL(FVIII<1%George King Biomedical)。血漿の事前活性化を回避するために、PPPをトウモロコシトリプシン阻害物質(Haematologic Technologies Inc)を62μg/mLで用いて前処理した。蛍光発生基質Z−G−G−R−AMCおよび塩化カルシウム(FluCa Kit、Thrombinoscope)20μLを添加することによって反応を開始した。Fluoroskan Ascent(Thermo Lab Systems)を使用して蛍光を検出した。トロンビン生成を、Thrombinoscope software(Thrombinoscope)を使用して算出した。Thrombinoscope softwareによる分析の結果、x軸が時間(分)であり、y軸がトロンビン(nM)であるトロンビン生成曲線がもたらされる。このソフトウェアにより、以下のパラメータを決定する:遅延時間(分;最初のトロンビン生成が起こるまでの時間);内在性トロンビン潜在性(ETP;nM;トロンビン生成曲線下面積−アッセイの経過にわたって生成したトロンビンの総量を反映する);ピークトロンビン(nM;アッセイのいずれか1つの時点で生成される最高量のトロンビン)、ピークまでの時間(分;アッセイのいずれか1つの時点で最高量のトロンビンが生成されるまでの時間)。異なるrFVIII試料の異なる濃度でのトロンビン生成活性を比較するために、トロンビンピークを主要なパラメータとして選択した。
結果:
濃度0.244mMにおけるFVIII試料の一段凝固活性を図54Aに示し、比較している。濃度0.244mMにおけるFVIII試料の発色活性を図54Bに示し、比較している。FVIII試料の濃度0.25mM、0.5mMおよび1mMでのトロンビンピークおよび遅延時間を図55に示し、比較している。これらの結果から、精製されたrFVIII種およびそれらの混合物の全てで発色性および一段凝固FVIII活性アッセイにおいてSOS−Eと比較して活性の増大が示されたことが示される。pdFVIIIは発色活性アッセイではSOS−Eと同様の活性が示したが、一段凝固アッセイでは活性の増大を示した。精製されたrFVIII種、それらの混合物およびpdFVIIIの全てで、TF誘発性トロンビン生成アッセイにおいてSOS−Eと比較してトロンビンピークの増大が示された。試験した試料の全てでSOS−Eと比較して遅延時間の短縮が示された。
(実施例29)
ADVATE BDSおよび中間体のフューリン成熟化
驚いたことに、図56は、単鎖FVIIIが種々の市販のFVIII製品中に存在することを示す。したがって、フューリン成熟化によりFL−rFVIIIの活性の増大が導かれるかどうかを試験した。試料およびそれらの調製を以下に記載する:
試料:
SOS−E:最終精製ステップを伴わないAdvateプロセス中間体
ADVATE BDS
バッファー:陰性対照
試料調製:
A:ネイティブな試料
B:ネイティブな試料+フューリンストック100μl+Milli−Q 22.4μl
C:ネイティブな試料+フューリンバッファー100μl+Milli−Q 22.4μl
D:ネイティブな試料+フューリンストック100μl+阻害剤ストック22.4μl
E:ネイティブな試料+フューリンバッファー100μl+阻害剤ストック22.4μl
B〜Eの総体積は等しく、したがって、直接比較が可能である。rFurin BDSを使用した。フューリンバッファーはフューリンを伴わないフューリンストックのみと等しいものであった。阻害剤ストック:100mMのベンズアミジン塩酸塩。
以下の表は、上記の試料を使用して実施した発色活性アッセイの結果を示す。
図57は、上記の通り調製した試料の銀染色SDS−PAGEゲルを示す。図58は、上記の通り調製した試料のSDS−PAGEゲルのウエスタンブロット分析を示す。
上記の結果から、全長FVIIIならびに伸長型軽鎖を、フューリンを200〜300IU/mlの活性で添加することによってさらに成熟させることができることが示される。それにより、発色活性が約17〜19%増大する。SDS−PAGEにより全長FVIIIならびに伸長型軽鎖についての成熟化が明白に示される。
本発明の方法は、例えば、工業製造プロセスに有用である。本発明の生成物は、例えば、医薬の製造に有用である。したがって、本発明は産業的に利用可能である。
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(項目1)
第VIII因子(FVIII)亜種を、FVIIIを含む組成物から精製するための方法であって、
(1)前記FVIIIを含む組成物をアニオン交換クロマトグラフィーに供し、前記FVIII亜種を含む溶出液を収集するステップと、
(2)前記FVIII亜種を含むステップ(1)の溶出液をサイズ排除クロマトグラフィーに供し、前記FVIII亜種を含む溶出液を収集するステップと、
(3)前記FVIII亜種を含むステップ(2)の溶出液を濃縮するステップと
を含む方法。
(項目2)
前記濃縮ステップ(3)が、前記FVIII亜種を含むステップ(2)の溶出液をアニオン交換クロマトグラフィーに供し、前記FVIII亜種を含む溶出液を収集するステップである、項目1に記載の方法。
(項目3)
FVIIIが組換えFVIII(rFVIII)であり、FVIII亜種が組換えFVIII(rFVIII)亜種である、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記FVIII亜種が、FVIII軽鎖と会合したFVIII重鎖である、項目1から3までのいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
ステップ(1)において、ビーズサイズが20μm未満の高分解能Q−樹脂をアニオン交換クロマトグラフィーに使用する、項目1から4までのいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
ステップ(2)において、分解能が10000Da〜60000Daにわたるサイズ排除クロマトグラフィー樹脂をサイズ排除クロマトグラフィーに使用する、項目1から5までのいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
ステップ(1)の前に、以下のステップ(0):
(0)前記組成物中に含まれるFVIIIをフューリンプロテアーゼ処理に供するステップ
をさらに含む、項目1から6までのいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
ステップ(1)の溶出をリニアグラジエント溶出によって実施し、前記リニアグラジエント溶出のグラジエントの長さが、少なくとも約16カラム体積、少なくとも約24カラム体積、または少なくとも約32カラム体積である、項目1から7までのいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
ステップ(2)を、
(2)前記FVIII亜種を含むステップ(1)の溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィーに供するステップであって、前記疎水性相互作用クロマトグラフィーがネガティブモードクロマトグラフィーである、ステップ
で置き換える、項目1から8までのいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記FVIII亜種が、FVIII軽鎖と会合したFVIII 90kDa重鎖であり、方法のステップ(2)を省略し、ステップ(3)において、前記FVIII亜種を含むステップ(1)の溶出液で前記FVIII亜種を含むステップ(2)の溶出液を置き換える、項目1から9までのいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
項目1から10までのいずれか一項に従って入手可能な精製されたFVIII亜種を含む組成物。
(項目12)
血友病Aなどの出血性障害の処置に使用するための、項目11に記載の組成物。
(項目13)
組換え第VIII因子(rFVIII)をフューリンプロテアーゼ処理に供する方法。
(項目14)
rFVIIIの活性を増大させるためのものである、項目13に記載の方法。
(項目15)
血友病Aなどの出血性障害の処置に使用するための、rFVIIIを含む組成物であって、前記rFVIIIが、項目13または14に従って入手可能である、組成物。

Claims (15)

  1. 第VIII因子(FVIII)亜種を、FVIIIを含む組成物から精製するための方法であって、前記FVIII亜種が、FVIII軽鎖と会合したFVIII重鎖であり、前記方法が、
    (1)前記FVIIIを含む組成物をアニオン交換クロマトグラフィーに供し、前記FVIII亜種を含む溶出液を収集するステップと、
    (2)前記FVIII亜種を含むステップ(1)の溶出液をサイズ排除クロマトグラフィーに供し、前記FVIII亜種を含む溶出液を収集するステップと、
    (3)前記FVIII亜種を含むステップ(2)の溶出液を濃縮するステップと
    を含む、方法。
  2. ステップ(1)の前に以下のステップ(0)
    (0)前記組成物中に含まれるFVIIIをフューリンプロテアーゼ処理に供するステップ
    をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記FVIII軽鎖が、FVIII 80kDa軽鎖である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記濃縮ステップ(3)が、前記FVIII亜種を含むステップ(2)の溶出液をアニオン交換クロマトグラフィーに供し、前記FVIII亜種を含む溶出液を収集するステップである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
  5. ステップ(3)において、SourceQ樹脂をアニオン交換クロマトグラフィーに使用する、請求項4に記載の方法。
  6. FVIIIが組換えFVIII(rFVIII)であり、FVIII亜種が組換えFVIII(rFVIII)亜種である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記FVIII亜種が、FVIII軽鎖と会合したFVIII 180kDa重鎖、またはFVIII軽鎖と会合したFVIII 150kDa重鎖、またはFVIII軽鎖と会合したFVIII 110kDa重鎖、またはFVIII軽鎖と会合したFVIII 90kDa重鎖である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
  8. ステップ(1)において、ビーズサイズが20μm未満の高分解能Q−樹脂をアニオン交換クロマトグラフィーに使用する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
  9. ステップ(2)において、分解能が10000Da〜60000Daにわたるサイズ排除クロマトグラフィー樹脂をサイズ排除クロマトグラフィーに使用する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
  10. ステップ(1)の溶出をリニアグラジエント溶出によって実施し、前記リニアグラジエント溶出のグラジエントの長さが、少なくとも約16カラム体積、少なくとも約24カラム体積、または少なくとも約32カラム体積である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  11. 精製された第VIII因子(FVIII)亜種を含む組成物であって、前記FVIII亜種が、FVIII軽鎖と会合したFVIII重鎖である、組成物。
  12. 前記組成物中の前記精製されたFVIII亜種の前記組成物中の他の全てのFVIII亜種に対する重量比が、少なくとも9、または少なくとも8である、請求項11に記載の組成物。
  13. 前記精製されたFVIII亜種の濃度が、少なくとも0.1mg/mL、または少なくとも0.3mg/mLである、請求項11または12に記載の組成物。
  14. 出血性障害の処置に使用するための、請求項11から13までのいずれか一項に記載の組成物。
  15. 血友病Aの処置に使用するための、請求項11から14までのいずれか一項に記載の組成物。
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