JP2020524223A - 飛行機の胴体製造のためのアルミニウム−銅−リチウム合金製薄板 - Google Patents

飛行機の胴体製造のためのアルミニウム−銅−リチウム合金製薄板 Download PDF

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Abstract

本発明は、12mm未満の厚みのAl−Cu−Li合金製のブラッシングされた圧延製品の製造方法を対象とし、該製造方法は、圧延製品の調製、溶体化処理そして焼入れ、応力除去、任意に時効、ブラッシングの工程を含み、該製造方法は、ブラッシングツールが、ブラッシングされた製品の表面に圧縮残留応力を生成する力を圧延製品に押し当て、ブラッシングされていない圧延製品の表面から少なくとも9μmに等しい厚みを取り除くことを特徴とし、該製造方法において、ブラッシング工程は、少なくとも1回のサーキュラタイプのブラッシングを含む。本発明による方法によって得られる圧延製品は有利である。航空機用胴体パネルにおけるそのような製品の利用は有利である。【選択図】図2c

Description

本発明は、リチウムを含むアルミニウムを主成分とする2000系合金製のブラッシングされた圧延製品に概して関するものであり、より詳細には、航空宇宙産業において有益な、胴体の用途における利用に適したそのような製品に関している。本発明はまた、そのような製品の製造方法にも関している。
アルミニウム合金製圧延製品は、特に航空機産業および宇宙産業用の胴体構成要素を製造するために開発されている。
Al−Cu−Li合金は、このタイプの製品を製造するためにとりわけ興味深く、なぜなら、該合金は、とりわけ疲労と、損傷許容性と、機械的強度との間の妥協点という観点からの、従来の合金よりも一般的に高い、特性の妥協点を提供するからである。
国際公開第2013/054013号は、とりわけ航空機産業のための、圧延製品の製造方法を記述しており、該圧延製品は、2.1〜3.9重量%のCu、0.7〜2.0重量%のLi、0.1〜1.0重量%のMg、0〜0.6重量%のAg、0〜1重量%のZn、多くて0.20重量%のFe+Si、Zr、Mn、Cr、Se、HfおよびTiの中で選択される少なくとも1つの元素であって、選択された場合の前記元素の量がZrについては0.5〜0.18重量%、Mnについては0.1〜0.6重量%、Crについては0.05〜0.3重量%、Seについては0.02〜0.2重量%、Hfについては0.05〜0.5重量%、そしてTiについては0.01〜0.15重量%である元素、他の元素は各々多くて0.05重量%で合計0.15重量%であり、残りはアルミニウムの組成を有するアルミニウム合金を含み、前記方法は、少なくとも0.5%で3%未満の全変形量を伴う引張りおよび/またはレベリングと、シートメタルが0.1〜13時間の間130℃と170℃との間の温度に達している短時間の熱処理とを含む。Al−Cu−Li合金製展伸材の特性の有利な妥協点は、これらの製品の厚みを減らすことをとりわけ可能にし、さらにそのうえ、これらの製品がもたらす重量の減少を最大にする。一般的な応力は、しかしながら、それにより増した状態になり、それゆえ疲労亀裂発生のより高いリスクが生じる。したがって、Al−Cu−Li合金製製品の耐疲労性、とりわけ胴体用シートメタルのような陽極処理製品の耐疲労性を改善することが興味深い。
Nazida Sidhom氏他の次のように題された論文「Effects of Brushing and Shot−Peening Residual Stresses on the Fatigue Resistance of Machined Metal Surfaces:Experimental and predicting Approaches」、Materials Science Forum vol.681,290−295ページ(2011年)は、AA5083H11合金製シートメタルのリニアの機械的ブラッシングと、圧縮応力、粗さおよび疲労性能に対するその効果とを記述している。
米国特許出願公開第2009/029631号明細書は、不規則な表面の外形を典型的に有する金属表面を、表面調整装置を用いて金属表面をこすることによって調整するための方法および器具を記述しており、該表面調整装置は、多数の毛を有し、これらの毛は、こすっている間、金属表面と接触しており、そして金属表面の破損層または引張応力を減少させる。
独国特許出願公開第102010043285号明細書は、コンポーネントの表面の少なくとも一部が、圧縮残留応力を生成するための物質によって衝撃を与えられる、コンポーネントの処理を記述しており、投射用媒質は、コンポーネントの表面が照射されるとき、実質的にコンポーネントの残留応力の状態が修正されるように設計される粒状物と液体とを含む。
米国特許第5791009号明細書は、こてブレードの下方の作業面に、および/または上方の取付け面に、残留応力が故意に加えられる製造方法を記述している。応力は例えば、金属製こてブレードのグラスビードピーニング、ショットブラスト、圧延および/またはブラッシングによって加えられることができる。
国際公開第2013/054013号 米国特許出願公開第2009/029631号明細書 独国特許出願公開第102010043285号明細書 米国特許第5791009号明細書
Nazida Sidhom氏他、論文「Effects of Brushing and Shot−Peening Residual Stresses on the Fatigue Resistance of Machined Metal Surfaces:Experimental and predicting Approaches」、Materials Science Forum vol.681,290−295ページ(2011年)
一方、そのような製品の製造の際、製造業者から飛行機の機体組立工へ輸送する半製品が受ける応力を考慮に入れることが重要である。そのような輸送の際、半製品は、通常、陽極処理されておらず、また時には極端な温度および湿度条件にさらされることがある。半製品はまた、非常に長い期間にわたって保管され得る。これらの条件にもかかわらず、製造業者が、半製品の特性、とりわけ、特に表面の腐食という観点から満足のゆく表面の様子の保持を保証することができることが重要である。Al−Cu−Li合金製、さらにそのうえAl−Cu−Li−Mg合金製の半製品は、極端な温度および湿度条件において、非常に長い期間にわたって保管されるとき、反応する傾向がより顕著である。
既知の製品の特性と比べて、低密度を有しながらも、とりわけ耐疲労性、静的機械的強度の特性および耐腐食性という観点から、改善された特性を有するアルミニウム−銅−リチウム合金製製品に対する要求がある。また、これらの薄板の単純で経済的な獲得方法に対する要求がある。
[発明の対象]
本発明は、12mm未満の厚みのAl−Cu−Li合金製のブラッシングされた圧延製品の製造方法を対象とし、該製造方法は、ブラッシングツールが、
−ブラッシングされた製品の表面に圧縮残留応力を生成し、
−ブラッシングされていない圧延製品の表面から少なくとも9μmに等しい厚みを取り除く、
ようなブラッシング工程を含み、
該製造方法において、ブラッシング工程は、少なくとも1回のサーキュラタイプのブラッシングを含む。
本発明は、また、本発明の方法によって得られる、12mm未満の厚みのAl−Cu−Li合金製のブラッシングされた圧延製品も対象とする。
最後に、本発明は、本発明による方法によって得られるブラッシングされた圧延製品の、航空機用胴体パネルにおける利用を対象とする。
スムーズ疲労試験のために利用される試験片の図である。寸法はmmで示されている。 リニアのブラッシングを概略的に示している。 サーキュラかつリニアのブラッシングを概略的に示している。 サーキュラかつオービタルのブラッシングを概略的に示している。
[発明の説明]
相反する言及のないかぎり、合金の化学組成に関して表示されているものは全て、合金の総重量に基づく重量百分率として表現されている。1.4Cuと表現されている場合、重量%で表現された銅含有量を1.4倍するという意味である。合金の呼称は、当業者に知られている、アルミニウム協会の規定に従ったものである。濃度がppm(百万分率)で表現されている場合、この表示はまた、質量濃度にも関連している。
相反する言及のないかぎり、欧州規格EN515(1993)中に記されている冶金学的状態の定義が適用される。
相反する言及のないかぎり、規格EN12258の定義が適用される。
平滑試験片での疲労特性が、方向T−Lにおいてシートメタル中の全厚みで採取される、K=1の、図1で示されるような試験片に関して、周囲空気で、さまざまな応力レベルについて、40Hzの周波数で、応力比R=0.1で測定される。
疲労特性は、100000サイクル時の平均破断応力値σの決定によって評価される。
そうするために、応力値σmaxが、検査される各シートメタルについて、増大する応力を用いるステアケース法での疲労試験を実現することによって決定される(100000サイクル時に未破断の各段階につき+20Mpa)。このように、第一の疲労試験が応力σで行われ、もし試験片が100000サイクル後に壊れていなければ、応力σ+20MPaで試験は続行される。応力σmaxは、応力σ+(n*20)、単位はMPa、に相当し、そこで破断が起こる。
各シートメタルについて、3つの疲労試験がこのように、あらかじめ決定された応力値σmaxで行われる。ウォーカー方程式が、100000サイクル時の破断応力値σを決定するために利用される。
Figure 2020524223
この方程式で、σmaxは、与えられたサンプルに適用される最大応力であり、Nは、破断までのサイクル数であり、Nは、100000と等しく、またn=−4.5である。
所定のシートメタルについて、100000サイクル時の平均破断応力値σは、3つの応力値σの平均に相当する。
本発明において、規格NF EN ISO 4287に準じて測定される2つの粗さパラメータが利用される、すなわち
−Rz:粗さプロファイルの最大高さ、
−Ra:粗さ平均偏差、すなわち、評価長さにわたったプロファイルのすべての縦座標の相加平均。
これらのパラメータが、本発明の範囲内でシートメタルのL方向およびT方向において、光干渉法によって評価される(61のプロファイルがL方向およびT方向において抽出され、パラメータRaおよびRzは、分析される表面の90%を表し、p=0.90)。
表面の残留応力が、リニア検出器とアセンブリωとを備えた回折計を使って、X線回折によって評価される。利用される測定パラメータは、
−Cr−Kα線、
−アルミニウム相の結晶面{311}、
−回折角2θ=139.31°、
である。
分析は、サンプルの結晶学的組織の影響をさほど受けない、横手方向において実行される。後処理ソフトウェアStressATが、+/−2の標準偏差の不確定性を考慮に入れながら利用された。残留応力計算のために利用されるラジオクリスタログラフィック定数は、S[MPa]=−5.11*10−6、および1/2S[MPa]=19.54*10−6である。
残留応力の評価が、サンプルの最表面から0μm、5μm、10μm、20μmおよび50μmの深さで行われた。最表面から5〜50μmの分析のために、材料の連続除去が、新たな残留応力を導入しないように化学的手段(NaOH)によって行われた。
本発明者らは、驚いたことに、より優れた耐表面腐食性と同時に、同等の、またさらには、改善された耐疲労性の特性を有し、またこのことは、製品があとで陽極処理される場合でさえも同様である、12mm未満の厚みのAl−Cu−Li合金製圧延製品を、前記圧延製品の製造プロセス後に、完全に特定のブラッシング工程を実現することによって、得ることが可能であることを確認した。ブラッシング工程は、とりわけ、製品の取り除かれる厚み、ブラッシングの際に押し当てられる力、および、回転軸の方向づけという観点からの特有かつ重大なパラメータによって特徴づけられる。
複数のブラッシング法が区別され、それらは図2a〜2c中に示されている。
図2aは、いわゆるリニアのブラッシングを概略的に示している。このタイプのブラッシングにおいて、ブラシ1は、ブラッシングされる面3に平行な回転軸2の周りを回転し、またこの面に対してまっすぐに移動する。典型的には、シートメタルが動き、ブラシは動かない。
図2bは、いわゆるサーキュラかつリニアのブラッシングを概略的に示している。このタイプのブラッシングにおいて、ブラシ1は、ブラッシングされる面3と直角に交わる回転軸2の周りを回転し、またこの面に対してまっすぐに移動する。典型的には、シートメタルが動き、ブラシは動かない。
図2cは、いわゆるサーキュラかつオービタルのブラッシングを概略的に示している。このタイプのブラッシングにおいて、ブラシ1は、ブラッシングされる面3と直角に交わる回転軸2の周りを回転し、またシートメタルの表面に対して前進しつつ、この面に対して軌道4を描きながら移動する。軌道は、典型的には楕円形である。典型的には、シートメタルが動き、ブラシは動かない。
このように、サーキュラタイプのブラッシングにおいて、ブラシが周りを回転する回転軸は、ブラッシングされる面と直角に交わっている。
本発明による方法の一実施形態において、Al−Cu−Li合金製圧延製品が調製され、前記圧延製品は、あとで溶体化処理そして焼入れされ、好ましくは引張りによって、応力除去が行われ、また任意に時効が行われる。溶融金属浴は、好ましくは2〜4重量%のCu、より好ましくは2.2〜3.6重量%のCu、またさらにより好ましくは2.6〜3.4重量%のCuを含む。本発明によるAl−Cu−Li合金は、有利には0.1重量%からのLi、また好ましくは3重量%までのLi、好ましくは0.5〜1.1重量%のLiを含む。
別の実施形態において、溶融金属浴は、好ましくは2.0〜3.0重量%のCu、またより好ましくは2.3〜2.7重量%のCu、および1.0〜2.0重量%のLi、また好ましくは1.3〜1.6重量%のLiを含む。
任意に、溶融金属浴は以下もまた含む、
0.5重量%までのAg、好ましくは0.1〜0.4重量%のAg、
2重量%までのMg、好ましくは0.2〜0.8重量%のMg、
ZrとTiのうちで選択される少なくとも1つの元素であって、また選択される場合、好ましくはZrが0.11〜0.20重量%、またTiが0.01〜0.15重量%である元素、
任意に、Mn、V、Cr、ScおよびHfの中で選択される少なくとも1つの元素であって、選択される場合、元素の量が、Mnについては0.01〜0.8重量%、Vについては0.05〜0.2重量%、Crについては0.05〜0.3重量%、Scについては0.02〜0.3重量%、Hfについては0.05〜0.5重量%である元素、
0.6重量%未満の量のZn、各々0.1重量%以下の量のFeおよびSi、および各々0.05重量%以下で合計0.15重量%以下の含有量の不可避不純物。
完全に特定の一実施形態によると、溶融金属浴の合金は、AA2198合金である。
溶融金属浴は、スラブ形状に鋳造される。スラブは、好ましくは450℃と515℃との間に含まれる温度で均質化され、ついで12mm以下の厚みを有するシートメタルに熱間圧延される。任意に、シートメタルは、また冷間圧延によっても圧延され、0.2mmと6mmとの間、好ましくは0.5mmと3.3mmとの間に含まれる最終的な厚みを有する薄板になり、冷間圧延によって実現される厚みの減少は、1mmと3.5mmとの間に含まれる。シートメタルは次に、好ましくは450℃と515℃との間に含まれる温度で溶体化処理され、ついで焼入れされる。溶体化処理され焼入れされたシートメタルは、応力除去が行われる。
任意に、応力除去は引張りによって行われ、また好ましくは、引張りは、0.5〜5%の永久ひずみを伴う制御された仕方で行われる。
一実施形態によると、応力除去されたシートメタルは、好ましくは130℃と170℃との間、またさらにより好ましくは150℃と160℃との間に含まれる温度で5〜100時間、有利には10〜40時間時効を受ける。
特におよそ400℃を超える温度での工程を少なくとも一つ含む製造プロセスのあとで、Al−Cu−Li合金製シートメタルの表面は、リチウム、酸素、炭素、及び合金の組成に応じてマグネシウムを含む、100nm(0.1μm)を超え、典型的には1μmさらには2μmを超える酸化物層を含む。
製造プロセスのあとで、本発明による製品は、Al−Cu−Li合金製製品に特別に適合した、完全に特定のブラッシング工程を受ける。ブラッシングは、−前記製品の表面に圧縮残留応力を生成し、
−ブラッシングされていない圧延製品の表面から少なくとも9μmに等しい厚みを取り除くような、ブラッシングツールを使って実現され、
また、ブラッシング工程は、少なくとも1回のサーキュラタイプのブラッシングを含む。
本発明の趣旨において、「表層圧縮残留応力または表面圧縮残留応力」とは、およそ表面上にある残留応力を意味し、これらの応力は、最表面(製品の表面に対して0μm)から−50μmまで、好ましくは−30μm、さらにより好ましくは最表面から−20μm、さらには最表面から−10μmの製品に影響している。ブラッシングの際に製品に押し当てられる力しだいで、圧縮残留応力は、より少ない厚みで製品に影響することができる。
このようにブラッシングされた圧延製品は、主に酸素とアルミニウムとを含む、1μm未満、好ましくは0.4μm未満、またさらにより好ましくは0.2μm未満の酸化物層を有する。本出願書類において、「主に酸素とアルミニウム」で、70重量%以上、好ましくは85重量%以上、さらにより好ましくは90重量%以上、さらには95重量%以上含む酸化物を意味する。
有利には、ブラッシング工程の際に圧延製品に押し当てられる力は、ブラッシングされた状態の製品の最表面から少なくとも5μm、好ましくは少なくとも10μmの厚みまで圧縮残留応力を生成する。
本発明者らは、ブラッシング工程の際のそのような力を受けた製品が、ブラッシングされていない製品と比べて、改善された疲労特性をとりわけ有し、またこのことは、ブラッシングされた製品があとで陽極処理される場合、特におよそ1μmに近い陽極層の厚みを生成しうる航空機産業の典型的なクロム酸陽極処理を受ける場合でさえも同様であることを確認した。
一実施形態によると、ブラッシング工程の際に圧延製品に押し当てられる力は、以下のようである:
−最表面で、L.I.(ブラッシング済)−L.I.(未ブラッシング)>0.2°、好ましくは>0.3°またさらにより好ましくは>0.35°であり、
−最表面から−5μmで、L.I.(ブラッシング済)−L.I.(未ブラッシング)>0.05°、好ましくは>0.1°またさらにより好ましくは>0.14°であり、
ここで用いられているL.I.は、X線測定回折ピークの半分の高さでの積分幅であり、度で表現されており、L.I.(ブラッシング済)は、ブラッシング工程後の圧延製品で測定された積分幅であり、またL.I.(未ブラッシング)は、ブラッシング工程前の圧延製品で測定された積分幅であり、
−ブラッシングされた状態の圧延製品の最表面でのT方向における圧縮残留応力は、少なくとも−25MPa、好ましくは−45MPa、またさらにより好ましくは−50MPaに等しい。
有利な一実施形態によると、ブラッシングツールは、ブラッシングされていない圧延製品の表面から、少なくとも10μmに等しい、好ましくは、少なくとも15μmに等しい厚みを取り除く。この実施形態にしたがって、耐表面腐食性という観点からとりわけ、卓越した結果が得られたのであり、またこのことは腐食を特に助長する環境においてでさえも同様であった。
冶金学的状態T8のシートメタルにとりわけ適合した、本発明の一実施形態において、ブラッシングは、
ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRaが1.5μm以下であり、
ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRzが8μm未満であるような、
また好ましくは、
−ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRaが、0.2μmと1.2μmとの間、好ましくは0.5μmと1.2μmとの間に含まれ、
−ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRzが、1.3μmと8μmとの間、好ましくは1.5μmと8μmとの間、さらにより好ましくは2μmと8μmとの間に含まれるような、
圧延製品の表面の獲得を可能にする。
この実施形態において、本発明者らは、製品が陽極処理されようがされまいが、ブラッシングされた製品の耐疲労性という観点からとりわけ、非常に優れた結果を得た。
冶金学的状態T3のシートメタルにとりわけ適合した、本発明の別の実施形態において、ブラッシングは、
−ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRaが4μm以下であり、
−ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRzが17μm未満であるような、
また好ましくは、
−ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRaが、0.5μmと3.5μmとの間、好ましくは1.0μmと3.0μmとの間に含まれ、
−ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRzが、8μmと16μmとの間、好ましくは10μmと15μmとの間に含まれるような、
圧延製品の表面の獲得を可能にする。
ブラッシング工程は、少なくとも1回のサーキュラタイプのブラッシングを含む。サーキュラのブラッシングは、サーキュラかつリニアのブラッシング、またはサーキュラかつオービタルのブラッシング、またはこれらのブラッシングの組合せであり得る。ブラッシングは有利には、サーキュラかつオービタルタイプである。本発明者らは実際に、方法の生産性が、サーキュラかつオービタルのブラッシングの場合に改善されることを確認した。
本発明はまた、本発明による方法によって得られる製品にも関している。
有利には、本発明による方法によって得られる12mm未満の厚みのAl−Cu−Li合金製のブラッシングされた圧延製品は、とりわけ質別T8で、以下を有する:
−1.5μm以下の、ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRa、
−8μm未満の、ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRz、
また好ましくは、
−0.2μmと1.2μmとの間、好ましくは0.5μmと1.2μmとの間に含まれる、ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRa、
−1.3μmと8μmとの間、好ましくは1.5μmと8μmとの間、さらにより好ましくは2μmと8μmとの間に含まれる、ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRz、および/または、
−T方向における表面残留応力であって、
最表面で、残留応力は、少なくとも、−25MPa、好ましくは−45MPa、またさらにより好ましくは−50MPaに等しい圧縮応力であり、
最表面で、L.I.(ブラッシング済)>1.5°、好ましくは>1.6°であり、
最表面から−5μmで、L.I.(ブラッシング済)>01.4°、好ましくは>1.5°であり、
ここで用いられているL.I.は、X線測定回折ピークの半分の高さでの積分幅であり、度で表現されている、ような表面残留応力、および/または
−主な元素として酸素とアルミニウムとを含む表面の酸化物であって、ブラッシングされた製品の表面でのこれらの酸化物の厚みは、1μm未満、好ましくは0.4μm未満またさらにより好ましくは0.2μm未満である。
別の実施形態において、本発明による方法によって得られる12mm未満の厚みのAl−Cu−Li合金製のブラッシングされた圧延製品は、とりわけ質別T3で、以下を有する:
−4μm以下の、ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRa、
−17μm未満の、ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRz、
また好ましくは、
−0.5μmと3.5μmとの間、好ましくは1.0μmと3.0μmとの間に含まれる、ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRa、
−8μmと16μmとの間、好ましくは10μmと15μmとの間に含まれる、ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRz、および/または、
−T方向における表面残留応力であって、
最表面で、残留応力は、少なくとも−25MPa、好ましくは−45MPa、またさらにより好ましくは−50MPaに等しい圧縮応力であり、
最表面で、L.I.(ブラッシング済)>1.5°、好ましくは>1.6°であり、
最表面から−5μmで、L.I.(ブラッシング済)>01.4°、好ましくは>1.5°であり、
ここで用いられているL.I.は、X線測定回折ピークの半分の高さでの積分幅であり、度で表現されている、ような表面残留応力、および/または
−主な元素として、酸素とアルミニウムとを含む表面の酸化物であって、ブラッシングされた製品の表面でのこれらの酸化物の厚みは、1μm未満、好ましくは0.4μm未満またさらにより好ましくは0.2μm未満である。
このような製品は同時に、製品が長期間の保管および/またはとりわけ不利な温度および湿度条件における保管の対象になるときでさえも、卓越した耐表面腐食性の特性を有する。
本発明によるブラッシングされた製品は、ブラッシングされていない同一の製品と比べて、改善された疲労特性を有しており、この2つの製品は、陽極処理されている状態、またはされていない状態である。有利な一実施形態によると、製品は、ブラッシングされていない同一の製品と比べて改善された疲労特性、好ましくは、ブラッシングされていない同一の製品の値を超える100000サイクル時の平均破断応力値σAさえも有する。
有利には、本発明による製品は、シートメタル、またより好ましくは薄板、さらにより好ましくは胴体用薄板である。従って、本発明による製品は、有利には、航空機用胴体パネルにおいて利用されることができる。
これらの態様、および、本発明の他の態様は、説明に役立つものであって制限するものではない、以下の例を用いてより詳細に説明される。
[実施例]
以下の実施例はすべて、3.1mmの厚みのAA2198合金製シートメタルについて得られた。該シートメタルは、鋳造、均質化、熱間圧延ついで冷間圧延、溶体化処理および焼入れ、引張り、そして任意に時効の工程を含むプロセスによって調製された。前記プロセスのあとで、時効を受けたシートメタルは、冶金学的状態T8、より具体的には冶金学的状態T851であり、一方、時効を受けなかった試験2cのシートメタルは、質別T3である。
さまざまなタイプの表面処理が、先に記述されたシートメタルに利用されたが、これらの処理のパラメータは以下の表1中で詳細に説明されている。このように処理されたシートメタルは、規格ASTM B117に準じた中性塩水噴霧腐食試験(1時間)を受けた。表面に孔食「pitting」がないと、シートメタルは腐食試験に合格することになる(腐食試験は表1中に「合格」と示される)。
Figure 2020524223
取り去られた厚みが本発明に該当する例は、腐食試験で満足のゆく結果を示している。
表2は、取り去られた厚みが本発明に該当するシートメタルの疲労特性(Kt=1)を示している。さまざまなタイプのブラッシング、つまり、ブラッシングなし、または、リニアのブラッシング、サーキュラかつリニアのブラッシング、サーキュラかつオービタルのブラッシングの影響が分析された。疲労が、ブラッシング後、および本出願書類中に記述されるような陽極処理後に、本明細書中に直接あらかじめ記述されたように、評価された。粗さ(RaおよびRz)もまた、先に記述された方法にしたがって測定された。
Figure 2020524223
サーキュラタイプのブラッシングが行われた試験は、ブラッシングされていない同一の製品の値を超える100000サイクル時の平均破断応力値σをとりわけ伴う、改善された疲労性能を示している。
ブラッシングされていないシートメタル、および、ブラッシングされたシートメタル(サーキュラのブラッシングとオービタルのブラッシングとの組合せ)での表面残留応力が、本出願書類中に先に記述された方法にしたがって評価された。T方向における圧縮応力が、最表面、および最表面から−50μmまでのシートメタルの厚みにおいて評価された。ブラッシングが引き起こした塑性変形にかかわる領域は、回折ピークの積分幅L.I.の増加と相関している。
Figure 2020524223
1 ブラシ
2 回転軸
3 ブラッシングされる面
4 オービタル

Claims (13)

  1. 12mm未満の厚みのAl−Cu−Li合金製のブラッシングされた圧延製品の製造方法であって、
    ブラッシングツールが、
    −ブラッシングされた製品の表面に圧縮残留応力を生成し、
    −ブラッシングされていない圧延製品の表面から少なくとも9μmに等しい厚みを取り除く、
    ようなブラッシング工程を含み、
    ブラッシング工程が、少なくとも1回のサーキュラタイプのブラッシングを含む製造方法。
  2. ブラッシング工程に先立って、以下の工程、すなわち
    −圧延製品の調製、
    −溶体化処理および焼入れ、
    −好ましくは引張りによる、応力除去、
    −任意に時効、
    を含む、請求項1に記載の方法。
  3. ブラッシング工程の際に圧延製品に押し当てられる力が、ブラッシングされた状態の製品の最表面から少なくとも5μm、好ましくは少なくとも10μmの厚みまで圧縮残留応力を生成するような、請求項1または2に記載の方法。
  4. ブラッシング工程の際に圧延製品に押し当てられる力が、
    −最表面で、L.I.(ブラッシング済)−L.I.(未ブラッシング)>0.2°、好ましくは>0.3°またさらにより好ましくは>0.35°であり、
    −最表面から−5μmで、L.I.(ブラッシング済)−L.I.(未ブラッシング)>0.05°、好ましくは>0.1°またさらにより好ましくは>0.14°であり、
    ここで用いられているL.I.は、X線測定回折ピークの半分の高さでの積分幅であり、度で表現されており、L.I.(ブラッシング済)は、ブラッシング工程後の圧延製品で測定された積分幅であり、またL.I.(未ブラッシング)は、ブラッシング工程前の圧延製品で測定された積分幅であり、
    −ブラッシングされた状態の圧延製品の最表面でのT方向における圧縮残留応力は、少なくとも−25MPa、好ましくは−45MPa、またさらにより好ましくは−50MPaに等しい、
    のようである、請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
  5. ブラッシングツールが、ブラッシングされていない圧延製品の表面の少なくとも10μmに等しい、好ましくは少なくとも15μmに等しい厚みを取り除くような、請求項1から4のいずれか一つに記載の方法。
  6. ブラッシングツールが、
    −ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRaが1.5μm以下であり、
    −ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRzが8μm未満であり、また好ましくは、
    −ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRaが、0.2μmと1.2μmとの間、好ましくは0.5μmと1.2μmとの間に含まれ、
    −ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRzが、1.3μmと8μmとの間、好ましくは1.5μmと8μmとの間、さらにより好ましくは2μmと8μmとの間に含まれるような、
    前記圧延製品の表面の獲得を可能にするような、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。
  7. ブラッシングツールが、
    −ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRaが4μm以下であり、
    −ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRzが17μm未満であり、また好ましくは、
    −ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRaが、0.5μmと3.5μmとの間、好ましくは1.0μmと3.0μmとの間に含まれ、
    −ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRzが、8μmと16μmとの間、好ましくは10μmと15μmとの間に含まれるような、
    前記圧延製品の表面の獲得を可能にするような、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。
  8. 請求項1から7のいずれか一つに記載の方法によって得ることができる、12mm未満の厚みのAl−Cu−Li合金製のブラッシングされた圧延製品。
  9. ブラッシングされた圧延製品であって、
    −1.5μm以下の、ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRa、
    −8μm未満の、ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRz、および/または、
    −T方向における表面残留応力であって、
    最表面で、残留応力は、少なくとも−25MPa、好ましくは−45MPa、またさらにより好ましくは−50MPaに等しい圧縮応力であり、
    最表面で、L.I.(ブラッシング済)>1.5°、好ましくは>1.6°であり、
    最表面から−5μmで、L.I.(ブラッシング済)>1.4°、好ましくは>1.5°であり、
    ここで用いられているL.I.は、X線測定回折ピークの半分の高さでの積分幅であり、度で表現されている、ような表面残留応力、および/または
    −主な元素として酸素とアルミニウムとを含む表面の酸化物であって、ブラッシングされた製品の表面でのこれらの酸化物の厚みは、1μm未満、好ましくは0.4μm未満またさらにより好ましくは0.2μm未満である酸化物、
    を有することを特徴とする、請求項8に記載のブラッシングされた圧延製品。
  10. ブラッシングされた圧延製品であって、
    −4μm以下の、ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRa、
    −17μm未満の、ブラッシングされた圧延製品の2つの方向(L)および(T)における粗さRz、および/または、
    −T方向における表面残留応力であって、
    最表面で、残留応力は、少なくとも−25MPa、好ましくは−45MPa、またさらにより好ましくは−50MPaに等しい圧縮応力であり、
    最表面で、L.I.(ブラッシング済)>1.5°、好ましくは>1.6°であり、
    最表面から−5μmで、L.I.(ブラッシング済)>1.4°、好ましくは>1.5°であり、
    ここで用いられているL.I.は、X線測定回折ピークの半分の高さでの積分幅であり、度で表現されている、ような表面残留応力、および/または
    −主な元素として酸素とアルミニウムとを含む表面の酸化物であって、ブラッシングされた製品の表面でのこれらの酸化物の厚みは、1μm未満、好ましくは0.4μm未満、またさらにより好ましくは0.2μm未満である酸化物、
    を有することを特徴とする、請求項8に記載のブラッシングされた圧延製品。
  11. 0.2mmと6mmとの間、好ましくは0.5mmと3.3mmとの間に含まれる厚みの薄板であるような、請求項8から10のいずれか一つに記載の製品。
  12. ブラッシングされていない同一の製品と比べて、改善された疲労特性、好ましくはブラッシングされていない同一の製品の値を超える100000サイクル時の平均破断応力値σを有することを特徴とする、請求項8から11のいずれか一つに記載の製品。
  13. 航空機用胴体パネルにおける、請求項8から12のいずれか一つに記載のブラッシングされた圧延製品の利用。
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