JP2020516696A - 多嚢胞性卵巣症候群を治療するためのイソフムロン及びその誘導体の使用 - Google Patents
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Abstract
本開示は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)をテトラヒドロイソアルファ酸(THIAA)誘導体、並びにそれらの本質的に鏡像異性的に純粋な組成物及び医薬製剤、特にKDT500及びKDT501で治療する方法を提供する。
Description
優先権主張:本出願は、2017年4月12日に出願された米国仮出願第62/484,835号に対する優先権を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
女性の生殖機能は、外部環境の変化に鋭敏であるが、体内のホルモンや代謝環境の変化にも極めて敏感に反応する。動的なホルモン変化のタイミング又は大きさがわずかに変化しても、女性の生殖機能を混乱させる可能性がある。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、閉経前の女性の約5〜21%に影響を及ぼす複雑で不均一な疾患である。PCOSは、アンドロゲン過剰症及び無排卵/生理不順を特徴とし、多毛症、肥満、炎症、インシュリン抵抗性及び2型糖尿病と関連することが多い(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。PCOSはまた、卵巣に多数の嚢胞(液体で満たされた嚢、液嚢)が蓄積するという特徴がある。初期治療としては、高アンドロゲン血症を制御する経口避妊薬による治療(非特許文献4)、不妊治療の初期治療としてクロミフェンを用いる治療(非特許文献5)等があげられる。生活様式の改善及び/又は体重減少は、受胎能改善に効果があることが見いだされているが、これはおそらくインシュリン感受性の改善に関連している可能性がある(非特許文献6)。
PCOSはまた、女性において最も一般的な肥満関連内分泌症候群である。米国では、PCOSの女性の過体重及び肥満の有病率が80%にも達すると報告している研究もある。米国以外では、PCOS罹患女性における肥満の有病率は低いものの、経時的に増加しており、その割合が約20%にのぼるとのが報告ある。生活様式等の環境因子と多様な遺伝的要因の相互作用は、PCOSの肥満の発生に関与すると考えられている。
PCOSの表現型が複雑なため、少なくとも部分的には、適当な治療法が依然として必要とされている。
PCOSの表現型が複雑なため、少なくとも部分的には、適当な治療法が依然として必要とされている。
Lizneva et al. Fertil Steril 106(1): 6-15 (2016)
Norman et al. Lancet 370 (9588): 685-697 (2007)
Dimitriadis et al. Curr Pharm Design 22 (36): 5535-5546 (2016)
Legro et al. J Clin EndocrinolMetab 98 (12): 4565-4592 (2013)
Vause et al. J ObstetGynaecol Can 32 (5): 495-502 (2010)
Orio et al. Clin Endocrinol (Oxf) 85 (5): 764-771 (2016)
いくつかの態様では、本開示は、医薬的有効量のテトラヒドロイソアルファ酸誘導体及び/又はその塩をPCOSの治療が必要な哺乳動物に投与することを含む、当該哺乳動物のPCOSを治療する方法を提供する。これらの実施形態のいくつかでは、当該方法は、PCOSに関連する1若しくはそれ以上の症状の発症を予防又は遅延、及び/又はPCOSに関連する1若しくはそれ以上の症状の軽減又は除去を含む。
いくつかの実施形態では、PCOSは非インシュリン抵抗性PCOSである。
いくつかの実施形態では、当該哺乳動物に、THIAA誘導体及び/又はその塩並びにカルコンが投与される。他の実施形態では、当該哺乳動物に、THIAA誘導体及び/又はその塩並びにメトホルミンが投与される。
いくつかの実施形態では、予防、遅延、軽減、及び/又は取り除かれるPCOSに関連する症状としては、インシュリンレベル上昇、インシュリン感受性上昇、血中グルコース上昇、血清脂質レベル上昇、テストステロンレベル上昇、生殖障害、無月経、希発月経、及び無排卵のうちの1又はそれ以上があげられる。これらの実施形態のいくつかでは、血清脂質レベルはコレステロール及び/又はトリグリセリドである。これらの実施形態のいくつかでは、生殖障害が、少なくとも1の生殖マーカー、例えば周期及び/又は排卵の測定により検出される。
いくつかの実施形態では、THIAA誘導体及び/又はその塩が卵巣機能に直接作用する。
いくつかの実施形態では、哺乳動物は肝脂肪量の低下を示す。
いくつかの実施形態では、THIAA誘導体及び/又はその塩は、KDT500、KDT501、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、KDT501は、鏡像異性的に純粋な(+)KDT501である。
いくつかの実施形態では、THIAA誘導体及び/又はその塩は、当該哺乳動物に1日1回投与される。他の実施形態では、THIAA誘導体及び/又はその塩誘導体は、当該哺乳動物に1日に2回以上投与される。
いくつかの実施形態では、THIAA誘導体及び/又はその塩は、THIAA誘導体、及び/又はその塩の合成誘導体、テトラヒドロイソフムロン骨格である。
以下の説明は、単に本発明の様々な実施形態を例示することを意図したものである。すなわち、特定の変形が記載されているとしても、それにより本発明の範囲が制限されるものとして解釈されるべきではない。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な均等、変更、及び変形を行いうることが明らかであり、このような均等の実施形態が本明細書に含まれることが理解される。
本明細書で開示されているように、PCOSの治療のための、THIAA誘導体及び/又はその塩、例えばKDT501の新規な用途が見いだされた。本明細書のある実施形態では、PCOSの治療のためのTHIAA誘導体、及びその塩並びに当該塩の結晶を含むその結晶の使用がもたらされる。
定義
用語「約」が、範囲を含む温度、時間、量、濃度等の数値指定の前に用いられる場合、(+)又は(−)20%、10%、5%又は1%の幅があってもよい近似値を示す。
用語「約」が、範囲を含む温度、時間、量、濃度等の数値指定の前に用いられる場合、(+)又は(−)20%、10%、5%又は1%の幅があってもよい近似値を示す。
本明細書の用語「及び/又は」は、1又はそれ以上の関連する列挙された項目のありとあらゆる組合せ、並びに選択肢(「又は」)で解釈される場合は組み合わせの欠如を包含する。
用語「含む(comprising又はcomprises)」は、THIAA等の組成物、及び方法が、記載された要素を含み、他の要素も排除しないことを意味することを意図する。用語「本質的にからなる(consisting essentially of)」が組成物及び方法の特定に用いられる場合、記載された目的のための組合せにとって本質的に重要な他の要素を排除することを意味する。すなわち、本明細書で本質的に特定される要素からなる組成物は、クレームされた発明の基本的及び新規な特徴に本質的に影響を及ぼさない他の材料又は工程を除外しない。「からなる」とは、他の成分及び本質的な方法の工程の微細な要素を除外することをいう。これらの移行部の各用語で特定される実施形態は、本発明の範囲内である。
「投与する(administering又はadminister)」等の用語は、薬剤(例えば、THIAA)を哺乳動物に導入することをいう。典型的には、医薬的有効量が投与され、その量は、治療にあたる医師等により決定されうる。局所、皮下、腹膜、静脈内、動脈内、吸入、膣、直腸、鼻、経口、頬、又は体の部分への点滴等のいかなる投与経路を用いうる。用語及び語句「投与する(administering)」及び「の投与(administration of)」が化合物又は医薬組成物(及び文法上の同等物)に関連して用いられる場合、医療専門家による患者への投与又は患者の自己投与であってよい直接投与、及び/又は薬物を処方する行為であってよい間接投与の両方をいう。例えば、薬剤(例えば、THIAA)を自己投与するように患者に指示し、及び/又は薬剤の処方箋を患者に提供する医師は、薬剤を患者に投与する。「定期的投与(Periodic administration又はperiodically administering)」とは、日ごと、週ごと又は月ごとに行われる複数回の治療をいう。また、定期的投与とはまた、薬剤を1日に1回、2回、3回、又はそれ以上の回にわたって投与することであってよい。
本明細書で用いる用語「塩」は、例えば、カリウム、アルミニウム、カルシウム、銅、グアニジニウム、鉄、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、及び亜鉛塩等の無機塩基塩、及びシンコニジン、シンコニン、及びジエタノールアミン塩等の有機塩基塩を含む、いかなる医薬的に許容される塩であってよい。本発明による医薬的に許容される塩及び製剤のさらなる例は、例えば、Berge J Pharm Sci 66:1(1977)に見出しうる。
本明細書では「被験体」、「個体」又は「患者」は、互換的に用いられ、脊椎動物、例えば霊長類、哺乳動物、又は好ましくはヒトをいう。哺乳動物としては、ウマ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ネズミ、ラット、サル、ヒト、家畜、スポーツ動物及びペットがあげられるが、これらに限定されない。
疾患(例えば、PCOS)に関して本明細書で用いられる用語「治療する(treat若しくはtreating)」、又は「治療(treatment)」は、当該疾患の予防、当該疾患の除去、当該疾患の発症又は進行速度の遅延、当該疾患の発症リスクを低下させること、当該疾患に関連する1又はそれ以上の症状の発症の予防又は遅延、当該疾患に関連する1又はそれ以上の症状の軽減又は除去、又はそれらのいずれかの組み合わせをいう。
本明細書で用いられるTHIAA誘導体、その塩、及び/又は医薬組成物の「医薬的有効量」は、対象に所望の治療効果をもたらす組成物の量である。正確な治療有効量は、所定の被験体での治療効果に関して最も効果的な結果をもたらす化合物又は組成物の量である。この量は、治療化合物の特徴(例えば、活性、薬物動態、薬力学、及び生物学的利用能があげられる)、対象の生理学的状態(例えば、年齢、性別、疾患の種類とステージ、一般的な身体状態、所定の投与量に対する反応性、及び薬物の種類があげられる)、組成物中の医薬的に許容される担体の性質、及び投与経路があげられるが、これらに限定されない様々な因子に応じて多様化する。臨床分野及び薬理学分野の当業者であれば、日常的な実験、すなわち、化合物の投与に対する被験体の反応をモニターし、それに応じて投与量を調節することで、治療有効量を決定しうるであろう。その他のガイダンスについては、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 21st Edition, Univ.
of Sciences in Philadelphia (USIP), Lippincott Williams & Wilkins,
Philadelphia, PA, 2005に開示されており、その全開示は参照により本明細書に援用される。
of Sciences in Philadelphia (USIP), Lippincott Williams & Wilkins,
Philadelphia, PA, 2005に開示されており、その全開示は参照により本明細書に援用される。
本明細書のある実施形態では、本明細書でもたらされる1又はそれ以上のTHIAA誘導体を含む組成物が提供される。これらの実施形態のいくつかでは、当該組成物は本質的に鏡像異性的に純粋である。本明細書で用いられる用語「本質的に鏡像異性的に純粋」は、当該組成物中の特定の化合物の90%以上が第1鏡像異性体であり、10%以下が第2鏡像異性体である組成物をいう。ある実施形態では、化合物の「第1鏡像異性体」は、その鏡像異性体の塩及び結晶を含む。ある実施形態では、本質的に鏡像異性的な組成物は、化合物の第1鏡像異性体の91%、92%、93%、94%、95%、96%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.95%又は99.99%以上を含んでよい。
ホップ誘導体
ホップ(Humulus lupulus L.)は何世紀にもわたり医薬目的に用いられてきた植物であり、現在では醸造産業で用いられている。ホップはアルファ酸(フムロン)とベータ酸(ルプロン)をともに含む。アルファ酸/フムロンには以下の:
一般的な構造がある。
ホップ(Humulus lupulus L.)は何世紀にもわたり医薬目的に用いられてきた植物であり、現在では醸造産業で用いられている。ホップはアルファ酸(フムロン)とベータ酸(ルプロン)をともに含む。アルファ酸/フムロンには以下の:
一般的な構造がある。
アルファ酸の3つの主要なタイプは、フムロン(R=CH2CH(CH3)2)、コフムロン(R=CH(CH3)2)、及びアドフムロン(R=CH(CH3)CH2CH3)である。また、ホップには比較的まれなα酸であるプレフムロンとポストフムロンの2種類がある。アルファ酸は、アルファ酸の熱誘導異性化によりシス又はトランスのイソアルファ酸/イソフムロンに変換され、これらのイソアルファ酸は水素化によりシス又はトランスの還元型イソアルファ酸に変換される。還元型イソアルファ酸の3つの主要なタイプは、ジヒドロイソアルファ酸(ロイソアルファ酸としても知られる)、テトラヒドロイソアルファ酸、ヘキサヒドロイソアルファ酸(各々RIAA、THIAA、HIAA)である。
ホップ由来のいくつかの化合物には抗炎症活性があることが見いだされている(Hall 2008; Desai 2009; Tripp 2009; Konda 2010)。THIAA抽出物は、炎症を抑制し(Desai 2009)、コラーゲン誘発性関節炎のマウスモデルにおける関節炎の症状を軽減し(Konda 2010)、高脂肪食誘発性代謝性エンドトキシン血症モデルにおけるグルコースホメオスタシスを改善する(Everard 2012)ことが示されている。これらの各例では、THIAA化合物が置換1,3‐シクロペンタジオンモチーフを共有していた。
THIAA cis 3,4−ジヒドロキシ−2−(3−メチルブタノイル)−5−(3−メチルブチル)−4−(4−メチルペンタノイル)シクロペンタ−2−エン−1−オン(KDT500、システトラヒドロイソフムロンとしても知られる)には、2つの鏡像異性体:(+)−(4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−2−(3−メチルブタノイル)−5−(3−メチルブチル)−4−(4−メチルペンタノイル)シクロペンタ−2−エン−1−オン((+)−KDT500)及び(−)−(4R,5S)−3,4−ジヒドロキシ−2−(3−メチルブタノイル)−5−(3−メチルブチル)−4−(4−メチルペンタノイル)シクロペンタ−2−エン−1−オン((−)−KDT500)がある。THIAA誘導体及び/又はその塩の誘導体の非限定的な例である(+)−KDT500及び(−)−KDT500の構造は、各々、式II及びIIIに記載される。
その開示の全体が参照により本明細書に援用される米国特許第8,410,178号、第8,410,179号及び第8,829,056号は、KDT500及びそのカリウム塩KDT501、THIAA誘導体及び/又はその塩の精製及び特徴付けを記載する。ホップ処理中、主にシス型ジアステレオマーを含む濃縮THIAA抽出物を獲得し、向流クロマトグラフィー(CCC)を用いて精製し、単離した(+)‐KDT500を1当量のカリウム塩(例えばKOH)と反応させて(+)‐KDT501に変換した。
その開示の全体が参照により本明細書に援用される米国特許第8,410,178号、第8,410,179号及び第8,829,056号は、KDT500及びそのカリウム塩KDT501、THIAA誘導体及び/又はその塩の精製及び特徴付けを記載する。ホップ処理中、主にシス型ジアステレオマーを含む濃縮THIAA抽出物を獲得し、向流クロマトグラフィー(CCC)を用いて精製し、単離した(+)‐KDT500を1当量のカリウム塩(例えばKOH)と反応させて(+)‐KDT501に変換した。
その開示の全体が参照により本明細書に援用される米国特許第9,340,479号は、KDT501を含む特定のKDT500誘導体、及びその鏡像異性的に純粋な組成物を製造する他の方法を記載する。
(+)−KDT501は、抗炎症作用と抗糖尿病作用を示すことが以前より示されている。
本明細書で提供される方法、組成物及びキットのいくつかの実施形態では、THIAAは、KDT500、KDT501、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、当該KDT501は、(+)KDT501の鏡像異性的に純粋な組成物である。
組成物
ある実施形態では、本開示は、本明細書で供される1又はそれ以上のTHIAA誘導体の及び1又はそれ以上の医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物を含む組成物をもたらす。ある実施形態では、組成物は、本質的に鏡像異性的に純粋である。ある実施形態では、本質的に鏡像異性体組成物は、化合物(すなわち、THIAA誘導体及び/又はその塩)の第1鏡像体を、91%、92%、93%、94%、95%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.95%又は99.99%以上含みうる。
ある実施形態では、本開示は、本明細書で供される1又はそれ以上のTHIAA誘導体の及び1又はそれ以上の医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物を含む組成物をもたらす。ある実施形態では、組成物は、本質的に鏡像異性的に純粋である。ある実施形態では、本質的に鏡像異性体組成物は、化合物(すなわち、THIAA誘導体及び/又はその塩)の第1鏡像体を、91%、92%、93%、94%、95%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.95%又は99.99%以上含みうる。
本明細書で提供される組成物中の本質的に鏡像異性的に純粋なTHIAA誘導体及び/又はその塩(すなわち、KDT501)の濃度は多様であってよい。濃度は、選択された特定の投与方法及び生物学的システムの必要性に従い、流体量、粘度、体重等に基づいて選択しうる。ある実施形態では、本明細書で提供される組成物中の本質的に鏡像異性的に純粋なTHIAA誘導体及び/又はその塩の濃度は、約0.0001%〜100%、約0.001%〜約50%、約0.01%〜約30%、約0.1%〜約20%、又は約1%〜約10% wt/volであってよい。
ある実施形態では、本明細書で提供されるTHIAA誘導体の医薬組成物は、医薬上許容される担体を含む。本明細書で用いられる「医薬的に許容される担体」とは、対象化合物を身体の1の組織、臓器、又は部分から別の組織、臓器、又は部分へ運搬又は移送することに関与する医薬的に許容される材料、組成物、又はビヒクルをいう。当該担体は、例えば、液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、カプセル化材料、安定化剤、又はそれらの組合せを含んでよい。当該担体の各成分は、当該組成物の他の成分と適合しなければならず、かつ接触しうる身体のあらゆる組織、器官又は部分との接触に適さなければならず、すなわち、毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、又はその医薬的利益を過度に上回る他の合併症のリスクがあってはならない点で、「医薬的に許容される」ものでなければならない。
本明細書で提供される組成物に用いる医薬的に許容される担体の例としては、(1)ラクトース、グルコース、スクロース、又はマンニトール等の糖;(2)コーンスターチ及びジャガイモデンプン等のデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及びセルロースアセテート等のセルロース及びその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバター及び坐剤ワックス等の賦形剤;(9)落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油等の油;(10)プロピレングリコール等のグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール等のポリオール;(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル等のエステル;(13)寒天又は炭酸カルシウム等の崩壊剤;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等の緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェン非含有水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール及びプロパンアルコール等のアルコール;(20)リン酸塩緩衝液;(21)パラフィン;(22)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、又はラウリル硫酸ナトリウム等の潤滑剤;(23)着色剤;(24)コロイド状二酸化ケイ素、タルク、及びデンプン−又はトリ−塩基性リン酸カルシウム等の流動促進剤;及び(24)アセトン等の医薬組成物に用いられる他の非毒性適合性物質があげられるが、これらに限定されない。一実施形態では、本明細書で用いられる医薬的に許容される担体は、緩衝化生理食塩水等の水性担体である。他の実施形態では、医薬的に許容される担体は、アセトン及びアルコール等の極性溶媒である。
本明細書で提供される医薬組成物は、生理学的条件に近似するために必要とされる1又はそれ以上の医薬的に許容される補助物質をさらに含んでよい。例えば、組成物は、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等を含む、1又はそれ以上のpH調節剤、緩衝剤、又は毒性調節剤を含んでよい。
本明細書で提供される医薬組成物は、例えば、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、(香味ベース、通常はスクロース及びアラビアゴム又はトラガカントゴムを用いる)ロゼンジ、粉剤、顆粒剤、水性若しくは非水性液体中の溶液又は懸濁液、水中油又は油中水の乳化液、エリキシル又はシロップ、又は(ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴム等の不活性塩基を用いる)トローチ、及び/又は口腔洗浄剤等の適当な剤形に処方されてよく、各々、活性成分として所定量のTHIAA誘導体を含有する。ある実施形態では、組成物は、例えば、時間放出カプセル等の、時間放出性送達ビヒクルとして処方されてよい。本明細書で用いられる「時間放出ビヒクル」は、投与直後ではなく、一定期間にわたり活性剤を放出するいかなる送達ビヒクルをもいう。他の実施形態では、組成物は、即時放出送達ビヒクルとして処方されてよい。
錠剤は、場合により1又はそれ以上の補助成分と共に圧縮又は成形により作製されてよい。圧縮型錠剤は、バインダ(例えばゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えばナトリウム澱粉グリコレート又は架橋型カルボキシルメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を用いて作製されてよい。成形型錠剤は、粉末THIAA誘導体の本質的に鏡像異性的に純粋な混合物を適当な機械で成形するか、又は不活性液体希釈剤でさらに湿らせて作製できる。錠剤、並びに糖衣錠、カプセル、丸薬、及び顆粒等の他の固体投与形態は、場合によっては、腸溶コーティング、及び医薬製剤業界で周知の他のコーティング等のコーティング及びシェルでスコア化又は調製されてよい。それらは、例えば、所望の放出プロファイル、他のポリマーマトリックス、リポソーム及び/又はミクロスフェアを提供するために、様々な比率でヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、THIAA誘導体の徐放性又は制御放出をもたらすように製剤化されてよい。それらは、例えば、細菌を遮断するフィルターを通してろ過することにより、又は滅菌水又はその他の無菌注射可能媒体中に使用直前に溶解させうる無菌固体組成物型の滅菌剤を組み込むことにより、滅菌されてよい。これらの組成物はまた、場合によっては緩和剤を含んでよく、かつTHIAA誘導体のみを放出する組成物であってもよく、又は好ましくは、胃腸管の特定の部分で優先的に、場合によっては遅延させる方法で、放出する組成物であってよい。用いられうる包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスがあげられる。また、THIAA誘導体は、適当であれば、1又はそれ以上の上記賦形剤があるマイクロカプセル形態であってよい。
組成物は、埋め込み可能なデバイスに含まれうる。本発明が意図する適当な埋め込み可能なデバイスとしては、血管内ステント(例えば、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、及びステントグラフト)、足場、グラフト等があげられる。そのような埋め込み可能デバイスは、本開示の組成物を用いて、少なくとも1の表面上にコーティングされうるか、又は含浸されうる。
組成物は、ナノサイズ系を含む、当業者に公知のいかなる薬物送達系に組み込まれうる。ナノサイズシステムの非限定的な例としては、ナノ粒子、ミセル、リポソーム及び薬物結合体、ミクロスフェア、インプラント、及び注射可能なデポがあげられる。
本明細書で提供される組成物中のTHIAA誘導体の濃度は多様であってよい。濃度は、選択された特定の投与方法及び生物学的システムの必要性に従い、流体量、粘度、体重等に基づいて選択されてよい。ある実施形態では、本明細書で提供される組成物中のTHIAA誘導体の濃度は、約0.0001%〜100%、約0.001%〜約50%、約0.01%〜約30%、約0.1%〜約20%、又は約1%〜約10%wt/volであってよい。
ある実施形態では、組成物に含まれるTHIAA誘導体の鏡像異性体は単一である。他の実施形態では、組成物は、THIAA誘導体の鏡像異性体の混合物を含む。
治療の方法
本開示は、それが必要な被験体(例えば、哺乳動物)の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)及び/又はPCOSに関連する症状を治療する方法をもたらし、その方法は、THIAA誘導体及び/又はその塩の量を哺乳動物に投与することを含む。
本開示は、それが必要な被験体(例えば、哺乳動物)の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)及び/又はPCOSに関連する症状を治療する方法をもたらし、その方法は、THIAA誘導体及び/又はその塩の量を哺乳動物に投与することを含む。
本明細書で提供される当該方法のある実施形態では、被験体は哺乳動物であり、これらの実施形態のいくつかでは、哺乳動物はヒトである。「それが必要な被験体」とは、PCOS又はPCOSに関連する症状と診断された被験体、PCOSの1又はPCOSに関連する症状を呈するか又は呈した被験体、又はPCOS又はPCOSに関連する症状を発症するリスクがあるとみなされた被験体をいう。PCOSに関連する症状の非限定的な例としては、インシュリンのレベル及び/又は感受性の上昇、血中グルコースレベル上昇、血清脂質レベル上昇(例えば、コレステロール及び/又はトリグリセリド)、テストステロンレベル上昇、生殖障害、無月経、希発月経、無排卵、肝脂肪含有量上昇、又はこれらのいかなる組み合わせがあげられる。
いくつかの実施形態では、PCOSは、非インシュリン抵抗性PCOSである。インシュリン抵抗性PCOSはI型PCOSといわれる場合がある。I型PCOSの患者は、しばしば、体重増加、排卵の中断、顔面毛髪、脱毛、にきび、テストステロン上昇、及び糖尿病発症の可能性上昇等を含む、PCOSの古典的症状を発症する。患者はまた、インシュリン及びレプチン抵抗性を経験する場合もありうる。非インシュリン抵抗性PCOS又はII型PCOSは、PCOSの診断基準を満たすがインシュリン抵抗性を示さない患者に生じる。I型及びII型PCOSは最も一般的であるが、非伝統的PCOS I、非伝統的PCOS II及び特発性多毛症は他の既知のバリエーションである。いくつかの実施形態では、PCOSの1又はそれ以上のバリエーションは、本開示から明確に除外される。
ある実施形態では、本明細書で提供される化合物又は組成物は、1日に1回またはそれ以上投与されてよい。他の実施形態では、当該化合物又は組成物は、1日1回未満で送達されてよい。例えば、当該化合物又は組成物は、週に1回、月に1回、又は数ヶ月に1回投与されてよい。本明細書で提供される化合物又は組成物の投与は、あらかじめ決定された特定の治療期間にわたって実施されてよく、又は無期限に、又は特定の治療ベンチマークに達するまで実施されてよい。ある実施形態では、投与頻度は、治療の経過にわたり多様化してよい。例えば、被験体は、特定の治療ベンチマークが満たされた場合には、治療の経過にわたり投与頻度をより少なくしてよい。1の実施形態では、THIAA誘導体及び/又はその塩は、少なくとも約2週間、少なくとも約4週間、又は少なくとも約8週間は対象に毎日投与される。
いくつかの実施形態では、THIAA誘導体及び/又はその塩は、PCOS治療のために投与される唯一の薬剤である。ある実施形態では、THIAA誘導体及び/又はその塩は、第2薬剤と組み合わせて投与される。適当な第2薬剤の非限定的な例としては、血糖値を低下させる薬剤、ホルモン療法(例えば、避妊用ピル、パッチ、又は膣リング)、天然代替物(例えば、D−Chiro−イノシトール)、ヨウ素、ビタミンD、マグネシウム、亜鉛、天然プロゲステロン、テストステロンを低下させるハーブ製剤、アンドロゲン低下スピロノラクトン、メトホルミン、クロミフェン、又はそれらのいかなる組合せがあげられる。他の実施形態では、1又はそれ以上の第2薬剤、例えば、1又はそれ以上のカルコン(例えば、メチルヒドロキシカルコンポリマー(MHCP))又はそれらの誘導体及び/又はメトホルミン)が明確に除外される。THIAA誘導体及び/又はその塩及び第二の薬剤は、連続して又は組み合わせて投与されうる。
ある実施形態では、本開示による治療に際して、例えば、一定期間にわたり、被験体又は被験体群は、以下の1又はそれ以上の結果を示す。
(a)少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の被験体により報告された1又は複数のPCOSの症状の改善。
(b)少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の被験体が睡眠時無呼吸に起因して睡眠が妨げられたと報告した前週の日数の低下。
(c)例えば、超音波検査又は磁気共鳴画像法(MRI)により検出される黄体の数の、ベースライン、レファレンス、又はプラセボ対照と比較した、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の増加。
(d)ベースライン、レファレンス、又はプラセボ対照と比較した周期数及び/又は周期の規則性により測定される月経周期の改善。
(e)例えば、ベースライン、レファレンス、又はプラセボ対照と比較した、グルコース負荷試験(GTT)中の血糖値により検出されるグルコース代謝の改善。
(f)ベースライン、レファレンス、又はプラセボ対照と比較した、特に腹部領域における、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の体重減少の上昇。
(g)例えば、ベースライン、レファレンス、又はプラセボ対照と比較した、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約60%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の空腹時血糖値を低下させて検出されたインシュリン耐性の改善。
(h)ベースライン、レファレンス、又はプラセボ対照と比較した肝臓中の脂肪含有量の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の減少。
(i)ベースライン、レファレンス、又はプラセボ対照と比較した血清脂質(例えば、コレステロール及び/又はトリグリセリド)レベルの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の低下。
(j)ベースライン、レファレンス、又はプラセボ対照と比較した、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の炎症の少なくとも1のマーカー(例えば、TNF−α、アディポネクチン)の発現の低下。
(k)ベースライン、レファレンス、又はプラセボ対照と比較した、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の、例えば脂肪生検により検出される褐色脂肪の増強の上昇。
(k)ベースライン、レファレンス、又はプラセボ対照と比較した、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の血清中で検出された高分子量(HMW)アディポネクチンのレベルの上昇。及び/又は
(l)ベースライン、レファレンス、又はプラセボ対照と比較した、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、2年、3年、4年、又は5年以内に、測定可能な体重減少。
ある実施形態では、本開示の治療にあたり、例えば、一定期間にわたり、被験体又は被験体群の下垂体機能は、ベースライン、レファレンス、又はプラセボ対照と比較すると、全く又は本質的に全く変化を示さない。下垂体機能は、例えば、下垂体ゴナドトロピンレベル(例えば、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、及びそれらの比率)の測定を含む、当業者に公知のいかなる方法でも評価しうる。
ある実施形態では、本開示の治療にあたり、例えば、一定期間にわたって、被験体又は被験体群は、ベースライン、レファレンス、又はプラセボ対照と比較した、血清ホルモンレベルに全く又は本質的に全く変化を示さない。血清ホルモンレベル(例えば、血清インシュリン、レプチン、インターロイキン−6(IL−6))は、例えば、ビーズベースの多重アッセイを含む、当業者に公知の任意の方法により評価しうる。
本明細書で用いられる用語「ベースライン(baseline)」は、患者で検出された、又は現在の治療以前のある時点で患者から採取された生物学的試料で測定されたレベルをいう。用語「レファレンス(reference)」は、PCOSに罹患することが知られているか、又はPCOSに罹患しないことが知られている患者又は患者集団で検出されるレベルをいう。
ある実施形態では、THIAA誘導体及び/又はその塩は、卵巣機能に対して直接作用する。いくつかの実施形態では、この直接作用は、上記の結果の1又はそれ以上、例えば、周期性の改善及び/又は黄体数の増加の原因であるか、又は部分的に原因であると考えられる。いくつかの実施形態では、当該直接作用は苦味受容体を介して達成されることが検討される。
キット
ある実施形態では、THIAA誘導体及び/又はその塩、製剤処方、又は本明細書で提供される本質的に鏡像異性的に純粋な組成物の1又はそれ以上を含むキットが提供される。ある実施形態では、当該キットは、投与量又は投与説明書等の使用説明書を提供する。ある実施形態では、当該キットは、PCOSに関連する症状を治療するために用いられうる。
ある実施形態では、THIAA誘導体及び/又はその塩、製剤処方、又は本明細書で提供される本質的に鏡像異性的に純粋な組成物の1又はそれ以上を含むキットが提供される。ある実施形態では、当該キットは、投与量又は投与説明書等の使用説明書を提供する。ある実施形態では、当該キットは、PCOSに関連する症状を治療するために用いられうる。
以下の実施例は、請求項記載の発明をよりよく説明するために提供され、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。特定の材料が言及されている場合、それは単に例示の目的のためであり、本発明を限定することは意図されない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明能力を行使することなく、同等の手段又は反応物を開発できる。本発明の範囲内において、本明細書に記載した手順に多くの変形を加えうることが理解されよう。本発明者らは、このような変形が本発明の範囲に含まれることを意図する。
実施例1:KDT501は食餌誘発肥満(DIO)雌マウスの代謝機能及び生殖機能を改善する
KDT501は雌マウスのHFDの体重増加を抑制した
DIOマウスを作製するために、混合系統バックグラウンド(129SvJ、C57Bl6、CD1)の7週齢雌マウスを、試験前と試験期間の8週間、高脂肪食(HFD)で飼育した。高脂肪食は、エネルギー密度が5.24kcal/gmの脂肪由来の60%Kcalで構成された(D12492, Research Diets, Inc., New Brunswick, NJ, USA)。
KDT501は雌マウスのHFDの体重増加を抑制した
DIOマウスを作製するために、混合系統バックグラウンド(129SvJ、C57Bl6、CD1)の7週齢雌マウスを、試験前と試験期間の8週間、高脂肪食(HFD)で飼育した。高脂肪食は、エネルギー密度が5.24kcal/gmの脂肪由来の60%Kcalで構成された(D12492, Research Diets, Inc., New Brunswick, NJ, USA)。
標準的なトウモロコシ穂軸床ではマウスが飼料を補うために当該床を食べるため、これらのケージでは、それを防ぐために木片床を維持した。毎週マウスの体重を測定した。通常の食餌飼料(Tekland Global 18%タンパク質飼料)は、タンパク質由来の24%Kcal、炭水化物由来の58%Kcal、及び脂肪由来の18%Kcalで、エネルギー密度は3.1kcal/gであった(Harlan Laboratories, Indianapolis, IN, USA)。すべての手順は、ジョンズ・ホプキンス動物管理使用委員会の承認を得て、標準的な明暗サイクル下で行われた。
高脂肪食の導入から80日後、試験化合物をマウスに1日1回経口投与した。体重に基づいてマウスを無作為に3群(各群10〜14匹)に割り当てた。KDT501(100mg/kg)、ピオグリタゾン(PIO; 30mg/kg)及び溶媒(VEH;0.5%メチルセルロース及び0.2%Tween80(w/v))。
高脂肪食(脂肪由来の60%カロリー)を投与された雌マウスの体重は、8週間の試験期間で約4グラム増加した(図1)。PIO又は溶媒VEHを投与したマウス間で体重増加に差はなかった。KDT501を投与したマウスの体重は、8週間の試験期間では増加せず、PIO又はVEHを投与したマウスと比較して、体重の変化は有意に抑制された。すべてのデータをPrism Software 5 GraphPad Software (La Jolla, CA)を用いて分析し、平均±SEMで表した。有意性は、適当なポストホック検定を用いて、片側又は双方向ANOVA、非対称双方スチューデントt検定により判定した。P>0.05を統計的に有意とした。
下垂体ゴナドトロピン値はKDT501では変化しなかった。
LH、FSH、インシュリン、及びレプチンの血清レベルを測定するために、マウスの下顎出血で血清サンプルを採取した。マウスを一晩絶食させ、マウスの体重に応じてインシュリン又は生理食塩水をIP注射した(0.3単位/kg)。発情前期の夕方の午後遅くに生じる周期依存性のLHサージを避けるために、ベースラインのLHとFSHのための試料は午前9:00〜10:00の間に採取した。げっ歯類の早朝LH濃度は周期依存的に変化するとは考えられない(Helena et al.2006)。インシュリンの空腹時測定のための試料は、9:00〜10:00の間に採取した。インシュリン注射10分後に組織を採取し、液体窒素中で瞬間凍結した。タンパク質を上記のように獲得し、測定した(Brothers et al.2010)。インシュリン又は生理食塩水の注射後の各個体の異なる組織に対するリン酸化AKT(pAKT)及びAKTのレベルをBio−Plex PhosphoproteinDetectionMultiplexアッセイ(-Rad Laboratories, Hercules, CA)を用いて定量した。各組織由来のタンパク質(10mg)を96穴マイクロプレートにロードした。Luminex200システムを用いてアッセイを行った。値はリン光特異的シグナルの平均蛍光強度として評価した。LuminexMapマウス下垂体パネル(LH/FSH)及びMilliplexマウス代謝パネル(インシュリン/レプチン;Millipore,Billerica,MA,USA)を用いて、Luminex200ISプラットフォームで血清を分析した。LHの検出限界は0.0019ng/mL、FSHの検出限界は0.0095ng/mL、インシュリンの検出限界は13.0pg/mL、レプチンの検出限界は4.2pg/mLであった。血清テストステロンは、バージニア大学リガンドアッセイコアのラジオイムノアッセイで測定した。
LH、FSH、インシュリン、及びレプチンの血清レベルを測定するために、マウスの下顎出血で血清サンプルを採取した。マウスを一晩絶食させ、マウスの体重に応じてインシュリン又は生理食塩水をIP注射した(0.3単位/kg)。発情前期の夕方の午後遅くに生じる周期依存性のLHサージを避けるために、ベースラインのLHとFSHのための試料は午前9:00〜10:00の間に採取した。げっ歯類の早朝LH濃度は周期依存的に変化するとは考えられない(Helena et al.2006)。インシュリンの空腹時測定のための試料は、9:00〜10:00の間に採取した。インシュリン注射10分後に組織を採取し、液体窒素中で瞬間凍結した。タンパク質を上記のように獲得し、測定した(Brothers et al.2010)。インシュリン又は生理食塩水の注射後の各個体の異なる組織に対するリン酸化AKT(pAKT)及びAKTのレベルをBio−Plex PhosphoproteinDetectionMultiplexアッセイ(-Rad Laboratories, Hercules, CA)を用いて定量した。各組織由来のタンパク質(10mg)を96穴マイクロプレートにロードした。Luminex200システムを用いてアッセイを行った。値はリン光特異的シグナルの平均蛍光強度として評価した。LuminexMapマウス下垂体パネル(LH/FSH)及びMilliplexマウス代謝パネル(インシュリン/レプチン;Millipore,Billerica,MA,USA)を用いて、Luminex200ISプラットフォームで血清を分析した。LHの検出限界は0.0019ng/mL、FSHの検出限界は0.0095ng/mL、インシュリンの検出限界は13.0pg/mL、レプチンの検出限界は4.2pg/mLであった。血清テストステロンは、バージニア大学リガンドアッセイコアのラジオイムノアッセイで測定した。
その結果、LH及びFSHの朝のレベルは、VEHと比較すると、PIO又はKDT501による処理で有意に変化しなかったことが示された(図2A)。さらに、KDT501処理マウスとPIO処理マウスの間でLHとFSHレベルに有意差はなかった。LH/FSH比は卵巣のステロイド産生に影響を及ぼす可能性があるため、この比を算出したが、群間に有意差は認められなかった(図2B)。ホルモンに変化がなく、又はその変化に有意差がないことから、他の化合物と比較してKDT501の臨床的有効性は改善されたと考えられる。特に、女性のホルモンの変化は、排卵遅延、子宮内膜肥厚の減少、卵胞の成熟阻害、及び月経周期の長期化に対応する。LH/FSHに対する影響が認められないことは、KDT501活性が中枢神経系に一時的ではないことを意味し、したがって、関連する安全性のリスクを回避する。
KDT501及びPIOはDIO雌マウスの黄体数を増加させる
卵巣を切片化し、染色して(図3A)その黄体数を評価した。卵巣を採取し、直ちに10%ホルマリンに漬けた。5μmの厚さで卵巣の切片を作製し、10セクションごとに合計10回採取し、ジョンズ・ホプキンス分子及び比較病理生物学フェノタイピングコアでH&E染色した。各群のマウスの卵巣組織を、ジョンズ・ホプキンス大学病理コア施設でパラフィン切片とした。5μmの切片を、ラット抗マウスF4/80(1:100;Cedarlane、Burlington、Ontario、CA)のマクロファージ浸潤バイオマーカーで染色した(Kiefer et al.2010)。二次抗体AlexaFluor594ヤギ抗ラットIgG(H+L)(1:400)を、InvitrogenからThermo Fisher Scientific (Rockford, IL, USA)で得た。マウス1匹あたりの黄体数の合計を群間で比較した。黄体は排卵した卵胞から生成するため、マウスの最近の排卵歴が示される。本発明者らの以前の研究(Brothers et al.2010、Wu et al.2014)に基づいて予測されたように、VEH投与マウスではCLはほとんど観察されなかった。KDT501を投与したマウスの卵巣では、VEHマウスよりも有意に多くのCLが存在した(図3B)。
卵巣を切片化し、染色して(図3A)その黄体数を評価した。卵巣を採取し、直ちに10%ホルマリンに漬けた。5μmの厚さで卵巣の切片を作製し、10セクションごとに合計10回採取し、ジョンズ・ホプキンス分子及び比較病理生物学フェノタイピングコアでH&E染色した。各群のマウスの卵巣組織を、ジョンズ・ホプキンス大学病理コア施設でパラフィン切片とした。5μmの切片を、ラット抗マウスF4/80(1:100;Cedarlane、Burlington、Ontario、CA)のマクロファージ浸潤バイオマーカーで染色した(Kiefer et al.2010)。二次抗体AlexaFluor594ヤギ抗ラットIgG(H+L)(1:400)を、InvitrogenからThermo Fisher Scientific (Rockford, IL, USA)で得た。マウス1匹あたりの黄体数の合計を群間で比較した。黄体は排卵した卵胞から生成するため、マウスの最近の排卵歴が示される。本発明者らの以前の研究(Brothers et al.2010、Wu et al.2014)に基づいて予測されたように、VEH投与マウスではCLはほとんど観察されなかった。KDT501を投与したマウスの卵巣では、VEHマウスよりも有意に多くのCLが存在した(図3B)。
KDT501投与及びPIO投与のDIO雌マウスの発情周期が改善された
雌マウスの食餌誘発性肥満は、その発情周期を損なうことが報告されている(Brothers et al、Wu et al.)。本試験では、高脂肪食への変更後8週間目からDIOの雌にKDT501、PIO又はVEHを投与した。マウスの発情周期を薬物/VEH投与後10日目から連続15日間評価した。膣細胞診は、薬物治療後10日目から始まる連続15日間、毎日午前9時から10時の間に評価した。膣細胞を生理食塩水洗浄で採取し、次いで100%エタノールで固定し、DIFF Quick Stain Kit ((IMEB Inc., San Marcos, CA, USA)で染色し、膣細胞診(Nelson et al.1982)に基づいてステージを評価した。
角化上皮が優勢な場合は発情期を示し、有核細胞が優勢な場合は発情前期を示し、角化細胞と白血球は発情後期を示し、白血球が優勢な場合は発情間期を示した。各群の各周期ステージにおけるマウスの割合を算出した。
雌マウスの食餌誘発性肥満は、その発情周期を損なうことが報告されている(Brothers et al、Wu et al.)。本試験では、高脂肪食への変更後8週間目からDIOの雌にKDT501、PIO又はVEHを投与した。マウスの発情周期を薬物/VEH投与後10日目から連続15日間評価した。膣細胞診は、薬物治療後10日目から始まる連続15日間、毎日午前9時から10時の間に評価した。膣細胞を生理食塩水洗浄で採取し、次いで100%エタノールで固定し、DIFF Quick Stain Kit ((IMEB Inc., San Marcos, CA, USA)で染色し、膣細胞診(Nelson et al.1982)に基づいてステージを評価した。
角化上皮が優勢な場合は発情期を示し、有核細胞が優勢な場合は発情前期を示し、角化細胞と白血球は発情後期を示し、白血球が優勢な場合は発情間期を示した。各群の各周期ステージにおけるマウスの割合を算出した。
図4Aは、15日間で完全な発情周期を1、2又は3回完了したマウスの割合をプロットしたものである。VEHを投与したマウスの37%で完全な発情周期を完了したものはなかった。PIOを投与した結果、マウスの20%が不順であり、KDT501を投与したDIO雌で不順であったのは7.1%のみであった。VEHを投与したDIO雌で完全発情周期を3回完了したものはなかったが、KDT501の20%(2/10)及びPIOを投与したマウスの21%(3/14)は完全発情周期を3回完了した。このデータは、VEH投与対照と比較してPIO投与マウスの発情周期がわずかに改善されたことを示唆するが、VEH対照と比較すると、発情周期がより劇的に改善されたのはKDT501投与の結果である。図4Bでは、15日間の分析期間で完了した各マウスの周期数をプロットした。KDT501を投与したDIO雌の完全な発情周期は、VEHを投与したマウスよりも有意に多かった。また、PIO投与DIO雌マウスの完全周期はVEH投与マウスよりもが多かったが、有意差はなかった。
DIO雌マウスのグルコース及びインシュリン耐性
IP‐耐糖能試験(IP‐GTT)を行い、雌DIOマウスのグルコース代謝に対する薬物治療の効果を評価した。薬物投与から1か月後、マウスの耐糖能をIP‐GTTで試験した。マウスを一晩16時間絶食させ、血液を尾静脈から吸引し、OneTouch Ultraグルコメーターを用いてベースライン血糖を測定した。20%ブドウ糖をIP(2g/kg体重)で注射した。試料の血中グルコースは15、30、60、90及び120分毎に測定した。IP‐GTTから1週間後に、マウスの全身インシュリン感受性をインシュリン負荷試験(ITT)で試験した。マウスを7時間絶食させ、血液を尾静脈から吸引し、ベースライン血糖を上記のように測定した。インシュリン0.3単位/kgを腹腔内投与した。各マウスの血中グルコースを15、30、60、90及び120分毎に測定した。IP−GTT及びITTの曲線下面積(AUC)を算出した。
IP‐耐糖能試験(IP‐GTT)を行い、雌DIOマウスのグルコース代謝に対する薬物治療の効果を評価した。薬物投与から1か月後、マウスの耐糖能をIP‐GTTで試験した。マウスを一晩16時間絶食させ、血液を尾静脈から吸引し、OneTouch Ultraグルコメーターを用いてベースライン血糖を測定した。20%ブドウ糖をIP(2g/kg体重)で注射した。試料の血中グルコースは15、30、60、90及び120分毎に測定した。IP‐GTTから1週間後に、マウスの全身インシュリン感受性をインシュリン負荷試験(ITT)で試験した。マウスを7時間絶食させ、血液を尾静脈から吸引し、ベースライン血糖を上記のように測定した。インシュリン0.3単位/kgを腹腔内投与した。各マウスの血中グルコースを15、30、60、90及び120分毎に測定した。IP−GTT及びITTの曲線下面積(AUC)を算出した。
DIO雌マウスのグルコース注射に反応した耐糖能は、食餌を投与された雌マウスと比較して損なわれる(Wu et al.2012)。KDT501又はPIOを投与すると、VEHを投与したマウスと比較して耐糖能が改善された(図5A)。曲線下面積を算出すると、KDT501投与マウスの耐糖能は有意に改善されたものの、PIOの投与では耐糖能は有意に改善されなかった(図5B)。
全身インシュリン感受性をインシュリン負荷試験(ITT)で評価した。インシュリン注射後の血糖値を測定した(図6A)。DIO雌のインシュリン感受性は、食餌を投与された雌と比較すると、阻害される(Wu et al. 2012)。各マウスの曲線下面積(AUC)を算出し、図6Bに示した。PIO及びKDT501投与DIO雌マウスのインシュリン感受性は、VEH投与DIO雌マウスと比較して改善された。
KDT501とPIOによりDIO雌マウスの脂肪肝が減退する
肝組織を採取し、直ちに10%ホルマリンに漬けた。5μmの組織切片を、ジョンズ・ホプキンス分子及び比較病理生物学フェノタイピングコアでH&E染色した。NIH imageJソフトウェアを用いて肝組織中の脂肪領域の定量化測定し、群間で比較した。
肝組織を採取し、直ちに10%ホルマリンに漬けた。5μmの組織切片を、ジョンズ・ホプキンス分子及び比較病理生物学フェノタイピングコアでH&E染色した。NIH imageJソフトウェアを用いて肝組織中の脂肪領域の定量化測定し、群間で比較した。
肝臓のH&E染色により、VEH投与DIO雌マウスの脂質蓄積が明らかに示された(図7B)。KDT501を投与したマウスは、PIO又はVEHを投与したマウスよりも脂質蓄積が有意に少なかった(図7A及び図7Eで定量化)。PIO投与マウスの脂質沈着量は、VEH投与マウスよりも有意に低かった(図7C−7E)。
代謝ホルモンプロファイルはPIO又はKDT501の影響を受けない
空腹時血清インシュリン、レプチン及びIL6の濃度をLuminexアッセイで測定したところ、PIO、KDT501又はVEHで処理したDIO雌マウスで有意差は認められなかった(図8)。LH及びFSHの濃度に変化が認められなかったことから(図2)、排卵機能の改善はKDT又はPIO処置による代謝機能の改善に起因する可能性が示唆される。
空腹時血清インシュリン、レプチン及びIL6の濃度をLuminexアッセイで測定したところ、PIO、KDT501又はVEHで処理したDIO雌マウスで有意差は認められなかった(図8)。LH及びFSHの濃度に変化が認められなかったことから(図2)、排卵機能の改善はKDT又はPIO処置による代謝機能の改善に起因する可能性が示唆される。
これらの試験をまとめて、KDT501がDIO雌マウスの代謝状態の改善に寄与するとともに生殖機能障害を改善するか否かを検討した。この試験の対照マウスは体重が増加したが(図1)、以前に観察された程度には達しておらず(Brothers et al.2010、Wu et al.2012、Wu et al.2014)、これは、薬物送達に用いた強制経口投与法が摂餌行動に影響を及ぼすことを示唆する。これは、胃を充填する薬物の容積(容積がわずか150μlであったため、おそらくそうではないが)、又は、おそらく、DIOげっ歯類モデルの体重増加を減少させることが示されている慢性的に低レベルのストレス軸の活性化(Harris et al.1998)に起因すると考えられる。これは、雄で観察されたような体重増加を、PIOを投与されたDIO雌が示さなかった理由の説明でありえる(Konda et al.2014)。この差がストレスの影響に対する性特異的な差なのか、あるいは薬物の影響に対するより一般的な性差なのかは不明である。しかし、雌マウスにKDT501を投与すると、VEHを投与した対照群と比較して、HFDを投与した雌マウスの体重増加が有意に抑制された。雌の体重に対するKDT501の影響は、雄(Konda et al.2014)で観察された影響と近似しており、PIOの薬理学における性差を示唆する。
PIOの薬理学的影響における性特異的な差のさらなる証拠は、DIO雄マウスとDIO雌マウスでの肝脂肪症の劇的な相違である。前者では、VEH治療と比較してPIO治療に反応して肝臓の脂質含有量が有意に増加する。しかし、雌では、PIOではVEH処投与と比較して肝臓の脂質蓄積が有意に減少した(図7)。体重への影響については、KDT501は雄(これは雄の論文からの参考文献である)と雌(図7)で同様の肝脂質低下作用を示した。
不妊症の女性のDIOモデルの顕著な特徴の一つは、GnRHニューロン及び下垂体レベルでのインシュリン作用により誘導されるLH分泌が高いことであった(Brothers et al.2010、DiVall et al.2015)。LH及びFSH濃度に変化が認められなかったことから(図2)、排卵機能の改善は、KDT又はPIO処置による代謝機能の改善に対する卵巣の直接的な反応に起因することが示唆される。同様に、KDT投与DIO雌の発情周期の改善(図4)は、卵巣の内分泌機能が改善されたことに起因する可能性がある。
これらの試験は、KDT501投与後のDIO雌マウスの代謝機能が顕著に改善されたことを示す。PIO処置も耐糖能及びインシュリン感受性を改善することが観察されたが、驚くべきことに、このモデルではKDT501ほど有効ではなく、さらに、肝臓の脂質蓄積の改善効果は極めて低かった。PIO及もKDT501も、DIO雌マウスの生殖周期及び排卵機能を改善することが示されたが、PIOでの結果にはそれほど一貫性が見られず、これらのいずれの終点も統計学的有意性に達しなかった。本試験は、KDT501が、PCOSに関連した代謝及び生殖機能障害に罹患した女性の新たな治療選択肢となり得ることを示唆する。本試験はさらに、PCOSの治療におけるKDT501の効果が、メトホルミン、PIO等のチアゾリデンジオン、ホルモン、及びGnRH受容体拮抗薬を含む現在の治療法の効果とは異なることを示唆しており、これらのクラスの化合物と比較してKDT501の作用機序が異なることがさらに裏付けられる。KDT501活性は、少なくとも部分的に、苦味受容体との相互作用が介在しうると考えられる。
上記のように、これまでの記載は、単に、本発明の様々な実施形態を例示することを意図したものである。上記で検討された具体的な変形は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な同等物、変更、及び修正を行いうることが明らかであり、そのような同等な実施形態が本明細書に含まれることが理解される。本明細書に引用された全ての参考文献は、本明細書に完全に記載されているかのように、参照により援用される。
Claims (17)
- 医薬的有効量のテトラヒドロイソアルファ酸(THIAA)誘導体及び/又はその塩を哺乳動物に投与することを含む、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療が必要な哺乳動物のPCOSを治療する方法。
- 前記PCOSが非インシュリン抵抗性PCOSである、請求項1に記載の方法。
- 前記哺乳動物に、前記THIAA誘導体及び/又はその塩並びにカルコンが投与される、請求項1に記載の方法。
- 前記哺乳動物に、前記THIAA誘導体及び/又はその塩並びにメトホルミンが投与される、請求項1に記載の方法。
- 前記治療には、PCOSに関連する1又はそれ以上の症状の発症の予防又は遅延が含まれる、請求項1に記載の方法。
- 前記治療には、PCOSに関連する1又はそれ以上の症状を軽減又は除去が含まれる、請求項1に記載の方法。
- 前記1又はそれ以上の症状が、インシュリンレベル上昇、インシュリン感受性上昇、血中グルコース上昇、血清脂質レベル上昇、テストステロンレベル上昇、生殖障害、無月経、希発月経、及び無排卵からなる群より選択される、請求項5又は6に記載の方法。
- 前記血清脂質レベルがコレステロール及び/又はトリグリセリドである、請求項7記載の方法。
- 前記生殖障害が、少なくとも1の生殖マーカーの測定により検出される、請求項7に記載の方法。
- 前記少なくとも1の生殖マーカーが周期及び/又は排卵である、請求項9に記載の方法。
- 前記THIAA誘導体及び/又はその塩が卵巣機能に直接作用する、請求項1記載の方法。
- 前記哺乳動物が肝脂肪量の低下を示す、請求項1に記載の方法。
- 前記THIAA誘導体及び/又はその塩が、KDT500、KDT501、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
- 前記KDT501が、(+)KDT501の鏡像異性的に純粋な組成物として投与される、請求項13記載の方法。
- 前記THIAA誘導体及び/又はその塩が、前記哺乳動物に1日1回投与される、請求項1記載の方法。
- 前記THIAA誘導体及び/又はその塩が、前記哺乳動物に1日に2回以上投与される、請求項1に記載の方法。
- THIAA誘導体及び/又はその塩が、前記THIAA誘導体及び/又はその塩の合成誘導体である、請求項1に記載の方法。
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