JP2020515242A - 抗masp−1抗体およびその使用方法 - Google Patents

抗masp−1抗体およびその使用方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、抗MASP-1(マンナン結合レクチン(mannan-binding lectin:MBL)関連セリンプロテアーゼ 1)抗体および同抗体を使用する方法を提供する。いくつかの態様において、本発明の抗MASP-1抗体は、MASP-1に結合するが、MASP-3に結合しない。本発明はまた、本発明の抗MASP-1抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸も提供する。本発明はさらに、本発明の抗MASP-1抗体と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。

Description

本発明は、抗MASP-1抗体および同抗体を使用する方法に関する。
補体系は、自然免疫応答において重大な役割を果たす(非特許文献1)。3種類の異なる経路:古典的経路(classical pathway:CP)、レクチン経路(lectin pathway:LP)、および副経路(alternative pathway:AP)によって、補体系が活性化され得ることが広く認められている。これらの経路の活性化は、炎症細胞の動員、貪食作用の増大、および標的細胞の表面上での膜侵襲複合体(membrane attack complex:MAC)の形成を含む、いくつかの免疫学的エフェクター機能をもたらす。
LPの第1段階は、マンナン結合レクチン(mannan-binding lectin:MBL)、コレクチン-10、コレクチン-11、およびフィコリン(フィコリン-1、フィコリン-2、およびフィコリン-3)などのパターン認識分子(pattern-recognition molecule:PRM)の、リガンドのパターン、例えば、病原体または損傷した自己組織上の表面連結炭水化物またはアセチル基などへの結合である(非特許文献2)。PRMは次いで、3種類のMBL関連セリンプロテアーゼ(MASP-1、MASP-2、およびMASP-3)と会合する。MASP-2は当初、自己活性化する、LPにおける唯一の活性プロテアーゼであると見なされていた。しかしながら、多くの最近の報告は、MASP-1がMASP-2を活性化し、LPにとって必須であることを示す。PRM-MASP複合体が標的細胞に結合すると、MASP-1は最初に自己活性化し、次いでMASP-2およびMASP-3を活性化する。活性化したMASP-2はC4をC4a、C4b、およびC4cに切断し、活性化したMASP-1およびMASP-2はC2をC2aおよびC2bに切断する。C4a断片およびC2b断片の会合は、C3転換酵素C4bC2aの形成をもたらし、続いて補体系を活性化する。その補体活性化特性に加えて、MASP-1は凝固を媒介し、さらに、ブラジキニン放出、ならびに内皮および血小板活性化を通じて、より強力な免疫反応にも寄与する(非特許文献3)。
適正に機能するLPは、感染性微生物に対する強固な防御および組織ホメオスタシスの維持をもたらす一方で、LPの不適切な調節は、例えば、血栓症(非特許文献4);IgA腎症(非特許文献5);および移植された腎臓における移植片機能の遅れ(非特許文献6)を含む、様々な障害の病態形成に関係づけられている。これらのことから、MASP-1阻害剤は、LP活性化によって引き起こされる疾患の治療において有効な治療選択肢として機能するはずである。
MASP-1およびMASP-3はMASP-1遺伝子の選択的スプライシング変異体である。それらは、C末端で異なるセリンプロテアーゼドメインによって延長される同一の5個のドメイン(CUB1-EGF-CUB2-CCP1-CCP2)を含む。MASP-1遺伝子における変異は、聴力喪失と、両眼隔離、瞼裂狭小、および球状眉(highly arched eyebrows)を含む特有の顔特徴とによって特徴付けられる、3MC症候群の原因であることが見出された。正常なMASP-1によるMASP-3の破壊は、3MC症候群を引き起こすのに十分であることが見出された(非特許文献7)。したがって、血栓症および他のレクチン経路媒介性障害を有する患者に対して強力な有効性を提供しかつ有害な作用を防ぐ、治療的に有効なMASP-1特異的阻害剤を開発する必要性が存在する。
Holers, V. M., Annual review of immunology 32, 433-459, 2014 Jozsef, D, et.al, Immunological Reviews 274, 98-111, 2016 Peter G, et.al., Immunological Reviews 274, 74-97, 2016 La Bonte L.R., et.al., J. Immunol., 188, 885-891, 2012 Liu L.L., et.al., Clinical & Experimental Immunology, 174, 152-160, 2013 Giuseppe C, et.al., American Journal of Pathology, 176 (4), 1648-1659, 2010 Tahir A, et.al., Orphanet Journal of Rare Diseases, 10, 128, 2015
本発明の目的は、抗MASP-1抗体および同抗体を使用する方法を提供することである。
本発明は、抗MASP-1抗体および同抗体を使用する方法を提供する。
いくつかの態様において、本発明の抗MASP-1抗体はMASP-1に特異的に結合する。いくつかの態様において、本発明の抗MASP-1抗体は、MASP-1に結合するが、MASP-3に結合しないかもしくは実質的に結合しない。さらなる態様において、本発明の抗MASP-1抗体は、MASP-1のセリンプロテアーゼドメインに結合する。
いくつかの態様において、本発明の抗MASP-1抗体はMASP-1の活性を阻害する。いくつかの態様において、本発明の抗MASP-1抗体はMASP-3の活性を阻害しない。特定の態様において、MASP-1の活性はMASP-1によって媒介される補体レクチン経路活性化であり、MASP-3の活性はMASP-3によって媒介される補体レクチン経路活性化である。
いくつかの態様において、本発明の抗MASP-1抗体は、
(a)配列番号:32の HVR-H1配列、配列番号:33のHVR-H2配列、配列番号:34のHVR-H3配列、配列番号:35のHVR-L1配列、配列番号:36のHVR-L2配列、および配列番号:37のHVR-L3配列を含む抗体;
(b)配列番号:38のHVR-H1配列、配列番号:39のHVR-H2配列、配列番号:40のHVR-H3配列、配列番号:41のHVR-L1配列、配列番号:42のHVR-L2配列、および配列番号:43のHVR-L3配列を含む抗体;
(c)配列番号:44のHVR-H1配列、配列番号:45のHVR-H2配列、配列番号:46のHVR-H3配列、配列番号:47のHVR-L1配列、配列番号:48のHVR-L2配列、および配列番号:49のHVR-L3配列を含む抗体;
(d)配列番号:50のHVR-H1配列、配列番号:51のHVR-H2配列、配列番号:52のHVR-H3配列、配列番号:53のHVR-L1配列、配列番号:54のHVR-L2配列、および配列番号:55のHVR-L3配列を含む抗体;
(e)配列番号:56のHVR-H1配列、配列番号:57のHVR-H2配列、配列番号:58のHVR-H3配列、配列番号:59のHVR-L1配列、配列番号:60のHVR-L2配列、および配列番号:61のHVR-L3配列を含む抗体;ならびに
(f)配列番号:62のHVR-H1配列、配列番号:63のHVR-H2配列、配列番号:64のHVR-H3配列、配列番号:65のHVR-L1配列、配列番号:66のHVR-L2配列、および配列番号:67のHVR-L3配列を含む抗体
からなる群より選択される。
いくつかの態様において、本発明の抗MASP-1抗体は、
(a)配列番号:32のHVR-H1配列、配列番号:33のHVR-H2配列、配列番号:34のHVR-H3配列、配列番号:35のHVR-L1配列、配列番号:36のHVR-L2配列、および配列番号:37のHVR-L3配列を含む抗体;
(b)配列番号:38のHVR-H1配列、配列番号:39のHVR-H2配列、配列番号:40のHVR-H3配列、配列番号:41のHVR-L1配列、配列番号:42のHVR-L2配列、および配列番号:43のHVR-L3配列を含む抗体;
(c)配列番号:44のHVR-H1配列、配列番号:45のHVR-H2配列、配列番号:46のHVR-H3配列、配列番号:47のHVR-L1配列、配列番号:48のHVR-L2配列、および配列番号:49のHVR-L3配列を含む抗体;
(d)配列番号:50のHVR-H1配列、配列番号:51のHVR-H2配列、配列番号:52のHVR-H3配列、配列番号:53のHVR-L1配列、配列番号:54のHVR-L2配列、および配列番号:55のHVR-L3配列を含む抗体;
(e)配列番号:56のHVR-H1配列、配列番号:57のHVR-H2配列、配列番号:58のHVR-H3配列、配列番号:59のHVR-L1配列、配列番号:60のHVR-L2配列、および配列番号:61のHVR-L3配列を含む抗体;ならびに
(f)配列番号:62のHVR-H1配列、配列番号:63のHVR-H2配列、配列番号:64のHVR-H3配列、配列番号:65のHVR-L1配列、配列番号:66のHVR-L2配列、および配列番号:67のHVR-L3配列を含む抗体
からなる群より選択される参照抗体と同じエピトープに結合する。
いくつかの態様において、本発明の抗MASP-1抗体は、ヒトMASP-1、カニクイザルMASP-1、および/またはマウスMASP-1に結合し、その活性を阻害することができる。
いくつかの態様において、本発明の抗MASP-1抗体は、0.35 μg/mL未満のIC 50でC3および/またはC4活性化を阻害する。
いくつかの態様において、本発明の抗MASP-1抗体はモノクローナル抗体である。さらなる態様において、本発明の抗MASP-1抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。特定の態様において、本発明の抗MASP-1抗体は、MASP-1に結合する抗体断片である。
本発明はまた、本発明の抗MASP-1抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸も提供する。本発明はまた、本発明の核酸を含む組換えベクターも提供する。本発明はまた、本発明の核酸または組換えベクターを含む組換え細胞も提供する。本発明はまた、抗体が製造されるように本発明の組換え細胞を培養する工程を含む、抗体を製造する方法も提供する。
本発明はまた、本発明の抗MASP-1抗体と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物も提供する。
本発明の抗MASP-1抗体は、医薬としての使用のためのものであってもよい。本発明の抗MASP-1抗体は、補体レクチン経路活性化よって引き起こされる疾患の治療における使用のためのものであってもよい。特定の態様において、補体レクチン経路活性化よって引き起こされる疾患は血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)である。特定の態様において、対象はヒトである。
いくつかの態様において、本発明の抗MASP-1抗体は、MASP-1によって媒介される補体レクチン経路活性化の阻害における使用のためのものであってもよい。いくつかの態様において、本発明の抗MASP-1抗体は、C3および/またはC4活性化の阻害における使用のためのものであってもよい。
本発明はまた、補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患を有する対象を治療する方法も提供する。いくつかの態様において、本発明の方法は、本発明の抗体の有効量を対象に投与する工程を含む。特定の態様において、補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患は血栓性微小血管症(TMA)である。特定の態様において、対象はヒトである。
本発明はまた、対象においてMASP-1によって媒介される補体レクチン経路活性化を阻害する方法も提供する。いくつかの態様において、本発明の方法は、本発明の抗体の有効量を対象に投与する工程を含む。本発明はまた、対象においてC3および/またはC4活性化を阻害する方法も提供する。いくつかの態様において、本発明の方法は、本発明の抗体の有効量を対象に投与する工程を含む。
本発明の抗MASP-1抗体は、医薬の製造で用いられてもよい。いくつかの態様において、医薬は、補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患を治療するためのものである。特定の態様において、補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患は血栓性微小血管症(TMA)である。
本発明はまた、血清におけるC3および/またはC4活性化を阻害する方法も提供する。いくつかの態様において、本発明の方法は、抗体のMASP-1に対する結合が許容される条件下で、マンナンと、MBL(マンノース結合レクチン)、MASP-1、C2、およびC4を含む生物学的サンプルとを、本発明の抗体と接触させる工程を含む。いくつかの態様において、生物学的サンプルは、ヒト血清、カニクイザル血清、またはマウス血清である。
本発明はまた、MASP-1の存在を検出する方法も提供する。いくつかの態様において、本発明の方法は、
(a)抗体のMASP-1に対する結合が許容される条件下で本発明の抗体と生物学的サンプルを接触させる工程;および
(b)抗体とMASP-1との間で複合体が形成されたかどうかを検出する工程
を含む。
本発明はまた、MASP-1活性を阻害するがMASP-3活性を阻害しない抗MASP-1抗体を製造するための方法も提供する。いくつかの態様において、本発明の方法は、
(a)(i) マンナンおよび血清を含む生物学的サンプルを試験抗体と接触させる工程であって、血清がMASP-1を含むがMASP-3を含まない、工程、および
(ii) C3および/またはC4活性化の阻害を測定する工程;
(b)(i) マンナンおよび血清を含む生物学的サンプルを試験抗体と接触させる工程であって、血清がMASP-3を含むがMASP-1を含まない、工程、および
(ii) C3および/またはC4活性化の阻害を測定する工程;
(c) 試験抗体が、工程(a)においてC3および/またはC4活性化を阻害するが、工程(b)においてC3および/またはC4活性化を阻害しない場合、MASP-1活性を阻害するがMASP-3活性を阻害しない試験抗体を選択する工程;
(d) 工程(c)で選択した抗MASP-1抗体のアミノ酸配列情報を得る工程;および
(e) 工程(d)で得られたアミノ酸配列をコードする遺伝子を宿主細胞に導入する工程
を含む。
より具体的には、本発明は以下を提供する:
[1] MASP-1に特異的に結合する抗MASP-1抗体。
[2] MASP-1に結合するが、MASP-3に結合しない、抗MASP-1抗体。
[3] MASP-1のセリンプロテアーゼドメインに結合する、抗MASP-1抗体。
[4] MASP-1活性を阻害する、[1]から[3]のいずれか1つに記載の抗MASP-1抗体。
[5] MASP-3活性を阻害しない、[1]から[4]のいずれか1つに記載の抗MASP-1抗体。
[6] MASP-1活性がMASP-1媒介性補体レクチン経路活性化であり、MASP-3活性がMASP-3媒介性補体レクチン経路活性化である、[5]に記載の抗MASP-1抗体。
[7](a)配列番号:32のHVR-H1配列、配列番号:33のHVR-H2配列、配列番号:34のHVR-H3配列、配列番号:35のHVR-L1配列、配列番号:36のHVR-L2配列、および配列番号:37のHVR-L3配列を含む、抗体;
(b)配列番号:38のHVR-H1配列、配列番号:39のHVR-H2配列、配列番号:40のHVR-H3配列、配列番号:41のHVR-L1配列、配列番号:42のHVR-L2配列、および配列番号:43のHVR-L3配列を含む、抗体;
(c)配列番号:44のHVR-H1配列、配列番号:45のHVR-H2配列、配列番号:46のHVR-H3配列、配列番号:47のHVR-L1配列、配列番号:48のHVR-L2配列、および配列番号:49のHVR-L3配列を含む、抗体;
(d)配列番号:50のHVR-H1配列、配列番号:51のHVR-H2配列、配列番号:52のHVR-H3配列、配列番号:53のHVR-L1配列、配列番号:54のHVR-L2配列、および配列番号:55のHVR-L3配列を含む、抗体;
(e)配列番号:56のHVR-H1配列、配列番号:57のHVR-H2配列、配列番号:58のHVR-H3配列、配列番号:59のHVR-L1配列、配列番号:60のHVR-L2配列、および配列番号:61のHVR-L3配列を含む、抗体;および
(f)配列番号:62のHVR-H1配列、配列番号:63のHVR-H2配列、配列番号:64のHVR-H3配列、配列番号:65のHVR-L1配列、配列番号:66のHVR-L2配列、および配列番号:67のHVR-L3配列を含む、抗体
からなる群より選択される抗体と、MASP-1への結合に関して競合する、[1]から[6]のいずれか1つに記載の抗MASP-1抗体。
[8](a)配列番号:32のHVR-H1配列、配列番号:33のHVR-H2配列、配列番号:34のHVR-H3配列、配列番号:35のHVR-L1配列、配列番号:36のHVR-L2配列、および配列番号:37のHVR-L3配列を含む、抗体;
(b)配列番号:38のHVR-H1配列、配列番号:39のHVR-H2配列、配列番号:40のHVR-H3配列、配列番号:41のHVR-L1配列、配列番号:42のHVR-L2配列、および配列番号:43のHVR-L3配列を含む、抗体;
(c)配列番号:44のHVR-H1配列、配列番号:45のHVR-H2配列、配列番号:46のHVR-H3配列、配列番号:47のHVR-L1配列、配列番号:48のHVR-L2配列、および配列番号:49のHVR-L3配列を含む、抗体;
(d)配列番号:50のHVR-H1配列、配列番号:51のHVR-H2配列、配列番号:52のHVR-H3配列、配列番号:53のHVR-L1配列、配列番号:54のHVR-L2配列、および配列番号:55のHVR-L3配列を含む、抗体;
(e)配列番号:56のHVR-H1配列、配列番号:57のHVR-H2配列、配列番号:58のHVR-H3配列、配列番号:59のHVR-L1配列、配列番号:60のHVR-L2配列、および配列番号:61のHVR-L3配列を含む、抗体;および
(f)配列番号:62のHVR-H1配列、配列番号:63のHVR-H2配列、配列番号:64のHVR-H3配列、配列番号:65のHVR-L1配列、配列番号:66のHVR-L2配列、および配列番号:67のHVR-L3配列を含む、抗体
からなる群より選択される参照抗体が結合するのと同じエピトープに結合する、[1]から[7]のいずれか1つに記載の抗MASP-1抗体。
[9] ヒト MASP-1、カニクイザル MASP-1、および/またはマウスMASP-1に結合し、それらの活性を阻害することができる、[1]から[8]のいずれか1つに記載の抗MASP-1抗体。
[10] 0.35 μg/mL未満のIC 50でC3および/またはC4活性化を阻害する、[1]から[9]のいずれか1つに記載の抗MASP-1抗体。
[11] モノクローナル抗体である、[1]から[10]のいずれか1つに記載の抗MASP-1抗体。
[12] ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、[1]から[11]のいずれか1つに記載の抗MASP-1抗体。
[13] MASP-1に結合する抗体断片である、[1]から[11]のいずれか1つに記載の抗MASP-1抗体。
[14] [1]から[13]のいずれか1つの抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
[15] [14]の核酸を含む、組換えベクター。
[16] [14]の核酸または[15]の組換えベクターを含む、組換え細胞。
[17] 抗体が製造されるように[16]の組換え細胞を培養する工程を含む、抗体を製造する方法。
[18] [1]から[13]のいずれか1つに記載の抗体および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
[19] [1]から[13]のいずれか1つに記載の抗体を含む、対象における補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患の治療における使用のための、薬学的組成物。
[20] 補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患がTMAである、[19]に記載の薬学的組成物。
[21] 対象がヒトである、[19]または[20]に記載の薬学的組成物。
[22] TMAを治療する方法での使用のための、[1]から[13]のいずれか1つに記載の抗体。
[23] 補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患を有する対象を治療する方法であって、[1]から[13]のいずれか1つに記載の抗体の有効量を当該対象に投与する工程を含む、方法。
[24] 補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患がTMAである、[23]に記載の方法。
[25] 対象がヒトである、[23]または[24]に記載の方法。
[26] 補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患を治療する医薬の製造における、[1]から[13]のいずれか1つに記載の抗体の使用。
[27] 補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患がTMAである、[26]に記載の使用。
[28] 抗体のMASP-1に対する結合が許容される条件下で、マンナンとMBL(マンナン結合レクチン)、MASP-1、C2、およびC4を含む生物学的サンプルとを、[1]から[13]のいずれか1つに記載の抗体と接触させる工程を含む、血清においてC3および/またはC4活性化を阻害する方法。
[29] 生物学的サンプルが、ヒト血清、カニクイザル血清、またはマウス血清である、[28]に記載の方法。
[30] (a) 抗体のMASP-1に対する結合が許容される条件下で[1]から[13]のいずれか1つに記載の抗体と生物学的サンプルを接触させる工程;および
(b) 抗体とMASP-1との間で複合体が形成されたかどうかを検出する工程
を含む、MASP-1の存在を検出する方法。
[31] (a)(i) マンナンおよび血清を含む生物学的サンプルを試験抗体と接触させる工程であって、血清がMASP-1を含むがMASP-3を含まない、工程、および
(ii) C3および/またはC4活性化の阻害を測定する工程;
(b)(i) マンナンおよび血清を含む生物学的サンプルを試験抗体と接触させる工程であって、血清がMASP-3を含むがMASP-1を含まない、工程、および
(ii) C3および/またはC4活性化の阻害を測定する工程;
(c) 試験抗体が、工程(a)においてC3および/またはC4活性化を阻害するが、工程(b)においてC3および/またはC4活性化を阻害しない場合、MASP-1活性を阻害するがMASP-3活性を阻害しない試験抗体を選択する工程;
(d) 工程(c)で選択した抗MASP-1抗体のアミノ酸配列情報を得る工程;ならびに
(e) 工程(d)で得たアミノ酸配列をコードする遺伝子を宿主細胞に導入する工程
を含む、MASP-1活性を阻害するがMASP-3活性を阻害しない抗MASP-1抗体を製造するための方法。
[32] [1]から[13]のいずれか1つに記載の抗体を含む、MASP-1によって媒介される補体レクチン経路活性化の阻害における使用のための、薬学的組成物。
[33] [1]から[13]のいずれか1つに記載の抗体を含む、C3および/またはC4活性化の阻害における使用のための、薬学的組成物。
[34] [1]から[13]のいずれか1つに記載の抗体の有効量を対象に投与する工程を含む、対象においてMASP-1によって媒介される補体レクチン経路活性化を阻害する方法。
[35] [1]から[13]のいずれか1つに記載の抗体の有効量を対象に投与する工程を含む、対象においてC3および/またはC4活性化を阻害する方法。
ヒト MASP-1のSPドメイン(配列番号:7)とヒト MASP-3のSPドメイン(配列番号:11)のアミノ酸配列の比較を示す。 ヒト MASP-1(配列番号:7)、サルMASP-1(配列番号:8)、およびマウスMASP-1(配列番号:9)のSPドメインのアミノ酸配列の比較を示す。 抗MASP-1モノクローナル抗体によるC3cまたはC4c沈着の阻害を示す。 PBS中で40℃にて2週間のインキュベーション後の、抗MASP-1キメラmAb(MAS0141aa)を用いるカニクイザルC3c沈着アッセイの結果を示す。 蛍光発生ペプチドによるMASP-1酵素活性に対する抗MASP-1モノクローナル抗体の阻害作用を図示する。 マウスにおけるレクチン経路に対する抗MASP-1モノクローナル抗体 MAS0154-mF18のインビボ阻害作用を図示する。
I.定義
本明細書の趣旨での「アクセプターヒトフレームワーク」は、下で定義するヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン (VL) フレームワークまたは重鎖可変ドメイン (VH) フレームワークのアミノ酸配列を含む、フレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに「由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらの同じアミノ酸配列を含んでもよいし、またはアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの態様において、アミノ酸の変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と、配列が同一である。
「アフィニティ」は、分子(例えば、抗体)の結合部位1個と、分子の結合パートナー(例えば、抗原)との間の、非共有結合的な相互作用の合計の強度のことをいう。別段示さない限り、本明細書で用いられる「結合アフィニティ」は、ある結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する、固有の結合アフィニティのことをいう。分子XのそのパートナーYに対するアフィニティは、一般的に、解離定数 (Kd) により表すことができる。アフィニティは、本明細書に記載のものを含む、当該技術分野において知られた通常の方法によって測定され得る。結合アフィニティを測定するための具体的な実例となるおよび例示的な態様については、下で述べる。
「アフィニティ成熟」抗体は、改変を備えていない親抗体と比較して、1つまたは複数の超可変領域 (hypervariable region: HVR) 中に抗体の抗原に対するアフィニティの改善をもたらす1つまたは複数の改変を伴う、抗体のことをいう。
用語「抗MASP-1抗体」または「MASP-1に結合する抗体」は、充分なアフィニティでMASP-1と結合することのできる抗体であって、その結果その抗体がMASP-1を標的化したときに診断剤および/または治療剤として有用であるような、抗体のことをいう。一態様において、無関係な非MASP-1タンパク質への抗MASP-1抗体の結合の程度は、(例えば、放射免疫測定法 (radioimmunoassay: RIA) により)測定したとき、抗体のMASP-1への結合の約10%未満である。特定の態様において、MASP-1に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M〜10-13M、例えば、10-9M〜10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。特定の態様において、抗MASP-1抗体は、異なる種からのMASP-1間で保存されているMASP-1のエピトープに結合する。
本明細書で用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限りは、これらに限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を含む、種々の抗体構造を包含する。
いかなる理論にも拘束されることを意図しないが、抗体は複数のHVRにおけるアミノ酸によりその抗原に結合する。
「抗体断片」は、完全抗体が結合する抗原に結合する当該完全抗体の一部分を含む、当該完全抗体以外の分子のことをいう。抗体断片の例は、これらに限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab’-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいてその参照抗体が自身の抗原へする結合を50%以上阻止する抗体のことをいい、また逆にいえば、参照抗体は、競合アッセイにおいて前述の抗体が自身の抗原へする結合を50%以上阻止する。例示的な競合アッセイが、本明細書で提供される。
「阻止」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を(部分的にまたは完全にのいずれでも)有意に阻害する抗体である。
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来する一方で、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なった供給源または種に由来する抗体のことをいう。
抗体の「クラス」は、抗体の重鎖に備わる定常ドメインまたは定常領域のタイプのことをいう。抗体には5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMである。そして、このうちいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられてもよい。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2である。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインを、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ぶ。
本明細書でいう用語「細胞傷害剤」は、細胞の機能を阻害するまたは妨げる、および/または細胞の死または破壊の原因となる物質のことをいう。細胞傷害剤は、これらに限定されるものではないが、放射性同位体(例えば、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212PbおよびLuの放射性同位体);化学療法剤または化学療法薬(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド類(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他のインターカレート剤);増殖阻害剤;核酸分解酵素などの酵素およびその断片;抗生物質;例えば、低分子毒素または細菌、真菌、植物、または動物起源の酵素的に活性な毒素(その断片および/または変異体を含む)などの、毒素;および、以下に開示される、種々の抗腫瘍剤または抗がん剤を含む。
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する、抗体のアイソタイプによって異なる生物学的活性のことをいう。抗体のエフェクター機能の例には次のものが含まれる:C1q結合および補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity:CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity: ADCC);貪食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;および、B細胞活性化。
ある剤(例えば、薬学的製剤)の「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために有効である、必要な用量におけるおよび必要な期間にわたっての、量のことをいう。
本明細書で用語「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然型配列のFc領域および変異体Fc領域を含む。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。ただし、Fc領域のC末端のリジン (Lys447) またはグリシン‐リジン(Gly446-Lys447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書では別段特定しない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD 1991 に記載の、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)にしたがう。
用語「Fc領域含有抗体」は、Fc領域を含む抗体のことをいう。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムにしたがえば残基447)またはFc領域のC末端グリシン−リジン(残基446-447)は、例えば抗体の精製の間にまたは抗体をコードする核酸の組み換え操作によって除去され得る。したがって、本発明によるFc領域を有する抗体を含む組成物は、G446-K447を伴う抗体、G446を伴いK447を伴わない抗体、G446-K447が完全に除去された抗体、または上記3つのタイプの抗体の混合物を含み得る。
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域 (HVR) 残基以外の、可変ドメイン残基のことをいう。可変ドメインのFRは、通常4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。それに応じて、HVRおよびFRの配列は、通常次の順序でVH(またはVL)に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
用語「全長抗体」、「完全抗体」、および「全部抗体」は、本明細書では相互に交換可能に用いられ、天然型抗体構造に実質的に類似した構造を有する、または本明細書で定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体のことをいう。
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」は、相互に交換可能に用いられ、外来核酸を導入された細胞(そのような細胞の子孫を含む)のことをいう。宿主細胞は「形質転換体」および「形質転換細胞」を含み、これには初代の形質転換細胞および継代数によらずその細胞に由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸の内容において完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。オリジナルの形質転換細胞がスクリーニングされたまたは選択された際に用いられたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も、本明細書では含まれる。
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を用いる非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を備える抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒトの抗原結合残基を含むヒト化抗体を、明確に除外するものである。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択群において最も共通して生じるアミノ酸残基を示すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。通常、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3におけるサブグループである。一態様において、VLについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループκIである。一態様において、VHについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループIIIである。
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含む、キメラ抗体のことをいう。ある態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、当該可変領域においては、すべてのもしくは実質的にすべてのHVR(例えばCDR)は非ヒト抗体のものに対応し、かつ、すべてのもしくは実質的にすべてのFRはヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化された形態」は、ヒト化を経た抗体のことをいう。
本明細書で用いられる用語「超可変領域」または「HVR」は、配列において超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」(complementarity determining region))、および/または構造的に定まったループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原接触残基(「抗原接触」)を含む、抗体の可変ドメインの各領域のことをいう。通常、抗体は6つのHVRを含む:VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)である。本明細書での例示的なHVRは、以下のものを含む:
(a) アミノ酸残基26-32 (L1)、50-52 (L2)、91-96 (L3)、26-32 (H1)、53-55 (H2)、および96-101 (H3)のところで生じる超可変ループ (Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b) アミノ酸残基24-34 (L1)、50-56 (L2)、89-97 (L3)、31-35b (H1)、50-65 (H2)、 および95-102 (H3)のところで生じるCDR (Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c) アミノ酸残基27c-36 (L1)、46-55 (L2)、89-96 (L3)、30-35b (H1)、47-58 (H2)、および93-101 (H3) のところで生じる抗原接触 (MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));ならびに、
(d) HVRアミノ酸残基46-56 (L2)、47-56 (L2)、48-56 (L2)、49-56 (L2)、26-35 (H1)、26-35b (H1)、49-65 (H2)、93-102 (H3)、および94-102 (H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組合せ。
一態様において、HVR残基は、表6に提供する重鎖可変領域または軽鎖可変領域において示されたものを含む。
別段示さない限り、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabatらにしたがって番号付けされる。
「イムノコンジュゲート」は、1つまたは複数の異種の分子にコンジュゲートされた抗体である(異種の分子は、これに限定されるものではないが、細胞傷害剤を含む)。
「個体」または「被験体」は哺乳動物である。哺乳動物は、これらに限定されるものではないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む。特定の態様では、個体または被験体は、ヒトである。
「単離された」抗体は、そのもともとの環境の成分から分離されたものである。いくつかの態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点分離法 (isoelectric focusing: IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)で測定して、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度の評価のための方法の総説として、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007) を参照のこと。
「単離された」核酸は、そのもともとの環境の成分から分離された核酸分子のことをいう。単離された核酸は、その核酸分子を通常含む細胞の中に含まれた核酸分子を含むが、その核酸分子は染色体外に存在しているかまたは本来の染色体上の位置とは異なる染色体上の位置に存在している。
「抗MASP-1抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖および軽鎖(またはその断片)をコードする1つまたは複数の核酸分子のことをいい、1つのベクターまたは別々のベクターに乗っている核酸分子、および、宿主細胞中の1つまたは複数の位置に存在している核酸分子を含む。
本明細書でいう用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体のことをいう。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、生じ得る変異抗体(例えば、自然に生じる変異を含む変異抗体、またはモノクローナル抗体調製物の製造中に発生する変異抗体。そのような変異体は通常若干量存在している。)を除いて、同一でありおよび/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるものである、という抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造を求めるものと解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、これらに限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含んだトランスジェニック動物を利用する方法を含む、様々な手法によって作成されてよく、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
「裸抗体」は、異種の部分(例えば、細胞傷害部分)または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体のことをいう。裸抗体は、薬学的製剤中に存在していてもよい。
「天然型抗体」は、天然に生じる様々な構造を伴う免疫グロブリン分子のことをいう。例えば、天然型IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VH) を有し、それに3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)が続く。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VL) を有し、それに定常軽鎖 (CL) ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる、2つのタイプの1つに帰属させられてよい。
用語「添付文書」は、治療用品の商用パッケージに通常含まれ、そのような治療用品の使用に関する、適応症、用法、用量、投与方法、併用療法、禁忌、および/または警告についての情報を含む使用説明書のことをいうために用いられる。
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント (%) アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を得るように配列を整列させてかつ必要ならギャップを導入した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとしたときの、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の、百分率比として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決める目的のアラインメントは、当該技術分野における技術の範囲内にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megalign (DNASTAR) ソフトウェア、またはGENETYX(登録商標)(株式会社ゼネティックス)などの、公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントをとるための適切なパラメーターを決定することができる。
ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、ジェネンテック社の著作であり、そのソースコードは米国著作権庁 (U.S. Copyright Office, Wasington D.C., 20559) に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社 (Genentech, Inc., South San Francisco, California) から公に入手可能であるし、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、Digital UNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされる。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する、ある%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列A、ということもできる)は、次のように計算される:分率X/Yの100倍。ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、当該プログラムのAおよびBのアラインメントにおいて同一である一致としてスコアされたアミノ酸残基の数であり、YはB中のアミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへの%アミノ酸配列同一性は、BのAへの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが、理解されるであろう。別段特に明示しない限り、本明細書で用いられるすべての%アミノ酸配列同一性値は、直前の段落で述べたとおりALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られるものである。
用語「薬学的製剤」は、その中に含まれた有効成分の生物学的活性が効果を発揮し得るような形態にある調製物であって、かつ製剤が投与される被験体に許容できない程度に毒性のある追加の要素を含んでいない、調製物のことをいう。
「薬学的に許容される担体」は、被験体に対して無毒な、薬学的製剤中の有効成分以外の成分のことをいう。薬学的に許容される担体は、これらに限定されるものではないが、緩衝液、賦形剤、安定化剤、または保存剤を含む。
本明細書でいい換え可能に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーのことをいい、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらのアナログ、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによってまたは合成反応によってポリマーに組み込まれ得る任意の物質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそれらのアナログなどの修飾ヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドの配列に、非ヌクレオチド成分が割り込んでいてもよい。ポリヌクレオチドは、標識へのコンジュゲーションなどの、合成後になされる修飾を含み得る。他のタイプの修飾は、例えば、「キャップ」、1つまたは複数の天然に存在するヌクレオチドとアナログとの置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電連結(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミド酸、カルバメート等)および荷電連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)を伴うもの、例えばタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジン等)などのペンダント部分を含むもの、インターカレート剤(例えば、アクリジン、ソラレン等)を伴うもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属等)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾連結(例えば、アルファアノマー核酸等)や非修飾形態のポリヌクレオチドを伴うものを含む。さらに、通常糖に存在する任意のヒドロキシル基は、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基によって置換され得、標準的な保護基によって保護され得、もしくはさらなるヌクレオチドへのさらなる連結を生成するよう活性化され得、または固体もしくは半固体支持体にコンジュゲートされ得る。5’および3’末端のOHは、リン酸化またはアミンもしくは1〜20炭素原子の有機キャップ基部分で置換され得る。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基に誘導体化され得る。ポリヌクレオチドはまた、例えば以下のものを含む、当技術分野で一般に公知となっているリボースまたはデオキシリボース糖の類似形態を含み得る:2'-O-メチル-、2'-O-アリル-、2'-フルオロ-、または2'-アジド-リボース、炭素環式糖アナログ、α-アノマー糖、アラビノースまたはキシロースまたはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログ、およびメチルリボシドなどの塩基性ヌクレオシドアナログ。1つまたは複数のホスホジエステル結合は、代替の連結基によって置き換えられ得る。これらの代替の連結基は、これらに限定されるものではないが、ホスフェートが以下のものによって置き換えられている態様を含む:P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR'、CO、またはCH2(「ホルムアセタール」)、ここで、各RまたはR'は独立してH、または、任意でエーテル(-O-)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアラルジルを含む置換もしくは非置換アルキル(1〜20C)である。ポリヌクレオチド中のすべての連結が同一である必要はない。上記の説明は、RNAおよびDNAを含む本明細書で言及されるすべてのポリヌクレオチドに適用される。
本明細書で用いられる表現「実質的に減少した」、「実質的に阻害する」、または「実質的に異なる」は、2つの数値の間(通常、ある分子に関するものと、参照/比較用分子に関するものの間)の差が、当業者がそれら2つの数値の間の差が該数値(例えば、Kd値)によって測定される生物学的特徴の観点で統計学的に有意であるとみなす程度に、充分に大きいことをいう。
本明細書で用いられる用語「実質的に類似の」または「実質的に同じ」は、2つの数値の間(例えば、本発明の抗体に関するものと、参照/比較用抗体に関するものの間)の類似性が、当業者がそれら2つの数値の間の差が該数値(例えば、Kd値)によって測定される生物学的特徴の観点でほとんどまたはまったく生物学的および/または統計学的に有意性がないとみなす程度に、充分高いことをいう。
本明細書で用いられる用語「MASP-1」は、別段示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型MASP-1のことをいう。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないMASP-1も、細胞中でのプロセシングの結果生じるいかなる形態のMASP-1も包含する。この用語はまた、自然に生じるMASP-1の変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。例示的なヒトMASP-1のアミノ酸配列を配列番号:1に示し、例示的なヒト MASP-1をコードするヌクレオチド配列を配列番号:2に示す。例示的なサルMASP-1およびマウスMASP-1のアミノ酸配列をそれぞれ、配列番号:3および4に示す。
例示的なMASP-1のアクセッション番号は以下の通りである:
ヒトMASP-1タンパク質:NCBI RefSeq NP_001870
ヒトMASP-1ヌクレオチド:NCBI RefSeq NM_001879
マウスMASP-1タンパク質:NCBI RefSeq NP_032581
マウスMASP-1ヌクレオチド:NCBI RefSeq NM_008555。
本明細書で用いられる用語「MASP-3」は、別段示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型MASP-3のことをいう。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないMASP-3も、細胞中でのプロセシングの結果生じるいかなる形態のMASP-3も包含する。この用語はまた、自然に生じるMASP-3の変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。例示的なヒトMASP-3のアミノ酸配列を配列番号:5に示す。
例示的な MASP-3のNCBI RefSeqアクセッション番号を以下に示す:
ヒトMASP-3タンパク質:Genbank AAK84071.1
ヒトMASP-3ヌクレオチド:GenBank AF284421.1
サルMASP-3タンパク質:GenBank AAI06947
マウスMASP-3タンパク質:GenBank BAB69688。
MASP-1およびMASP-3は、MASP-1遺伝子の選択的スプライシング変異体である。MASP-1およびMASP-3は、N末端から、CUB1(C1r/s、Uegf、骨形成タンパク質 1)、EGF(上皮成長因子)、CUB2(C1r/s、Uegf、骨形成タンパク質 2)、CCP1(補体調節タンパク質 1)、およびCCP2(補体調節タンパク質 2)を含む、同一の重鎖/α鎖を有する。MASP-1およびMASP-3は、MASP活性化の際に重鎖と軽鎖を分離する切断部位を含むSP(セリンプロテアーゼ)ドメインを含む、C末端にある異なる軽鎖/β鎖を有する。
MASP-1では、配列番号:1のアミノ酸残基1から19は、シグナルペプチドを構成する。例示的なヒトMASP-1の重鎖/α鎖のアミノ酸配列は配列番号:6であり、配列番号:1のアミノ酸残基20から448に対応する。例示的なヒトMASP-1のCUB1ドメイン、EGFドメイン、CUB2ドメイン、CCP1ドメイン、およびCCP2ドメインのアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号:1のアミノ酸残基20から138、139から182、185から297、299から364、および365から434である。例示的なヒトMASP-1のSPドメインのアミノ酸配列は配列番号:7であり、配列番号:1のアミノ酸残基449から699に対応する。例示的なサルMASP-1のSPドメインのアミノ酸配列は配列番号:8であり、配列番号:3のアミノ酸残基449から699に対応する。例示的なマウスMASP-1のSPドメインのアミノ酸配列は配列番号:9であり、配列番号:4のアミノ酸残基454から704に対応する。
MASP-3では、例示的なヒトMASP-3の重鎖/α鎖のアミノ酸配列は配列番号:10であり、配列番号:5のアミノ酸残基20から449に対応する。MASP-3では、配列番号:5のアミノ酸残基1から19はシグナルペプチドを構成する。例示的なヒトMASP-3のCUB1ドメイン、EGFドメイン、CUB2ドメイン、CCP1ドメイン、およびCCP2ドメインのアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号:5のアミノ酸残基20から138、139から182、185から297、299から364、および365から434である。例示的なヒトMASP-3のSPドメインのアミノ酸配列は配列番号:11であり、配列番号:5のアミノ酸残基450から728に対応する。
本明細書で用いられる用語「MASP-2」は、別段示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型MASP-2のことをいう。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないMASP-2も、細胞中でのプロセシングの結果生じるいかなる形態のMASP-2も包含する。この用語はまた、自然に生じるMASP-2の変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。例示的なヒトMASP-2のアミノ酸配列を配列番号:12に示す。
例示的なMASP-2のアクセッション番号は以下の通りである:
ヒトMASP-2タンパク質:NCBI RefSeq NP_006601
ヒトMASP-2ヌクレオチド:NCBI RefSeq NM_006610
マウスMASP-2タンパク質:NCBI RefSeq NP_001003893、XP_358353
マウスMASP-2ヌクレオチド:NCBI RefSeq NM_001003893 XM_358353。
例示的なヒトMASP-2の重鎖/α鎖のアミノ酸配列は配列番号:13であり、配列番号:12のアミノ酸残基16から444に対応する。例示的なヒトMASP-2のSPドメインのアミノ酸配列は配列番号:14であり、配列番号:12のアミノ酸残基445から686に対応する。
図1は、ヒトMASP-1のSPドメイン(配列番号:7)およびヒトMASP-3のSPドメイン(配列番号:11)のアミノ酸配列の比較を示す。図2は、ヒトMASP-1(配列番号:7)、サルMASP-1(配列番号:8)、およびマウスMASP-1(配列番号:9)のSPドメインのアミノ酸配列の比較を示す。同一のアミノ酸を枠で囲む。
ヒトMASP-1、MASP-2、およびMASP-3タンパク質の重鎖/α鎖間および軽鎖/β鎖間のパーセント同一性を以下の表1に提供する。パーセントアミノ酸配列同一性を、ALIGNを用いることによって決定した。
(表1)
Figure 2020515242
ヒトMASP-1、サルMASP-1、マウスMASP-1タンパク質のSPドメイン間のパーセント同一性を以下の表2に提供する。パーセントアミノ酸配列同一性を、ALIGNを用いることによって決定した。
(表2)
Figure 2020515242
本明細書で用いられる「治療」(および、その文法上の派生語、例えば「治療する」、「治療すること」など)は、治療される個体の自然経過を改変することを企図した臨床的介入を意味し、予防のためにも、臨床的病態の経過の間にも実施され得る。治療の望ましい効果は、これらに限定されるものではないが、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患による任意の直接的または間接的な病理的影響の減弱、転移の防止、疾患の進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および寛解または改善された予後を含む。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせる、または疾患の進行を遅くするために用いられる。
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体を抗原へと結合させることに関与する、抗体の重鎖または軽鎖のドメインのことをいう。天然型抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、通常、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域 (FR) および3つの超可変領域 (HVR) を含む、類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007) 参照。)1つのVHまたはVLドメインで、抗原結合特異性を与えるに充分であろう。さらに、ある特定の抗原に結合する抗体は、当該抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使ってそれぞれVLまたはVHドメインの相補的ライブラリをスクリーニングして、単離されてもよい。例えばPortolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991) 参照。
本明細書で用いられる用語「ベクター」は、それが連結されたもう1つの核酸を増やすことができる、核酸分子のことをいう。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および、それが導入された宿主細胞のゲノム中に組み入れられるベクターを含む。あるベクターは、自身が動作的に連結された核酸の、発現をもたらすことができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」とも称される。
II.組成物および方法
一局面において、本発明は、抗MASP-1抗体およびその使用に一部基づくものである。特定の態様において、MASP-1に結合する抗体が提供される。本発明の抗体は、例えば、補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患、好ましくは、血栓性微小血管症(TMA)、膜性腎症、加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)、心筋梗塞、および/または脳卒中の診断または治療のために、有用である。
A.例示的抗MASP-1抗体
一局面において、本発明はMASP-1に結合する、単離された抗体を提供する。特定の態様において、抗MASP-1抗体は、
・MASP-1に特異的に結合する、
・MASP-1の活性型または不活性型に結合する、
・MASP-1に結合するが、MASP-3に結合しないまたはMASP-3に実質的に結合しない、
・MASP-1のセリンプロテアーゼドメインに結合する、
・MASP-1の活性を阻害するが、MASP-3の活性を阻害しない、
・本明細書に記載のいずれかの抗MASP-1抗体と同じエピトープに結合する、
・ヒトMASP-1、カニクイザルMASP-1、および/またはマウスMASP-1に結合し、それらの活性を阻害することができる、
・0.35 μg/mL未満のIC 50でC3および/またはC4活性化を阻害する。
一局面において、本発明は、(a)配列番号:32のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:33のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:34のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:35のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:36のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:37のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、抗MASP-1抗体を提供する。
一局面において、本発明は、(a)配列番号:38のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:39のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:40のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:41のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:42のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:43のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、抗MASP-1抗体を提供する。
一局面において、本発明は、(a)配列番号:44のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:45のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:46のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:49のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、抗MASP-1抗体を提供する。
一局面において、本発明は、(a)配列番号:50のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:51のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:52のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:53のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:54のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:55のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、抗MASP-1抗体を提供する。
一局面において、本発明は、(a)配列番号:56のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:57のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:59のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:60のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:61のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、抗MASP-1抗体を提供する。
一局面において、本発明は、(a)配列番号:62のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:64のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:65のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:66のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および、(f)配列番号:67のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、抗MASP-1抗体を提供する。
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:32のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) 配列番号:33のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:34のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:35のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:36のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:37のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:38のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) 配列番号:39のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:40のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:41のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:42のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:43のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:44のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) 配列番号:45のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:46のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:49のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:50のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) 配列番号:51のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:52のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:53のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:54のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:55のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:56のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) 配列番号:57のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:59のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:60のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:61のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
別の局面において、本発明の抗体は、(a)VHドメインであって、(i)配列番号:62のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii) 配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号:64のアミノ酸配列を含むHVR-H3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVH HVR配列を含む、VHドメインと;(b)VLドメインであって、(i)配列番号:65のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号:66のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号:67のアミノ酸配列を含むHVR-L3より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つすべてのVL HVR配列を含む、VLドメインとを含む。
別の局面において、本発明は(a)配列番号:32のアミノ酸配列を含むHVR-H1と; (b) 配列番号:33のアミノ酸配列を含むHVR-H2と; (c)配列番号:34のアミノ酸配列を含むHVR-H3と; (d)配列番号:35のアミノ酸配列を含むHVR-L1と; (e)配列番号:36のアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(f)配列番号:37より選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗体を提供する。
別の局面において、本発明は(a)配列番号:38のアミノ酸配列を含むHVR-H1と; (b) 配列番号:39のアミノ酸配列を含むHVR-H2と; (c)配列番号:40のアミノ酸配列を含むHVR-H3と; (d)配列番号:41のアミノ酸配列を含むHVR-L1と; (e)配列番号:42のアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(f)配列番号:43より選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗体を提供する。
別の局面において、本発明は(a)配列番号:44のアミノ酸配列を含むHVR-H1と; (b) 配列番号:45のアミノ酸配列を含むHVR-H2と; (c)配列番号:46のアミノ酸配列を含むHVR-H3と; (d)配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1と; (e)配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(f)配列番号:49より選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗体を提供する。
別の局面において、本発明は(a)配列番号:50のアミノ酸配列を含むHVR-H1と; (b) 配列番号:51のアミノ酸配列を含むHVR-H2と; (c)配列番号:52のアミノ酸配列を含むHVR-H3と; (d)配列番号:53のアミノ酸配列を含むHVR-L1と; (e)配列番号:54のアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(f)配列番号:55より選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗体を提供する。
別の局面において、本発明は(a)配列番号:56のアミノ酸配列を含むHVR-H1と; (b) 配列番号:57のアミノ酸配列を含むHVR-H2と; (c)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H3と; (d)配列番号:59のアミノ酸配列を含むHVR-L1と; (e)配列番号:60のアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(f)配列番号:61より選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗体を提供する。
別の局面において、本発明は(a)配列番号:62のアミノ酸配列を含むHVR-H1と; (b) 配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H2と; (c)配列番号:64のアミノ酸配列を含むHVR-H3と; (d)配列番号:65のアミノ酸配列を含むHVR-L1と; (e)配列番号:66のアミノ酸配列を含むHVR-L2と;(f)配列番号:67より選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3とを含む、抗体を提供する。
上述の態様の任意のものにおいて、抗MASP-1抗体は、ヒト化されている。一態様において、抗MASP-1抗体は、上述の態様の任意のものにおけるHVRを含み、かつさらに、アクセプターヒトフレームワーク(例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク)を含む。
別の局面において、抗MASP-1抗体は、配列番号:20、22、24、26、28、または30のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン (VH) 配列を含む。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗MASP-1抗体は、MASP-1に結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:20、22、24、26、28、または30において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗MASP-1抗体は、配列番号:20、22、24、26、28、または30におけるVH配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
別の局面において、配列番号:21、23、25、27、29、または31のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン (VL) を含む、抗MASP-1抗体が提供される。特定の態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、当該配列を含む抗PRO抗体は、PROに結合する能力を保持する。特定の態様において、合計1個から10個のアミノ酸が、配列番号:21、23、25、27、29、または31において、置換、挿入、および/または欠失される。特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FRの中)で生じる。任意で、抗MASP-1抗体は、配列番号:21、23、25、27、29、または31におけるVL配列を、当該配列の翻訳後修飾を含んだものも含めて、含む。翻訳後修飾は、重鎖又は軽鎖N末端のグルタミン又はグルタミン酸のピログルタミル化によるピログルタミン酸への修飾を含むが、これに限定されない。
別の局面において、上述の態様の任意のものにおけるVH、および上述の態様の任意のものにおけるVLを含む、抗MASP-1抗体が提供される。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される抗MASP-1抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。例えば、特定の態様において、
(a)配列番号:32のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:33のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:34のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:35のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:36のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f)配列番号:37から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗MASP-1抗体、
(a)配列番号:38のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:39のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:40のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:41のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:42のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f)配列番号:43から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗MASP-1抗体、
(a)配列番号:44のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:45のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:46のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:47のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:48のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f)配列番号:49から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗MASP-1抗体、
(a)配列番号:50のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:51のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:52のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:53のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:54のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f)配列番号:55から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗MASP-1抗体、
(a)配列番号:56のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:57のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:58のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:59のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:60のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f)配列番号:61から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗MASP-1抗体、または
(a)配列番号:62のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号:63のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号:64のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号:65のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号:66のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f)配列番号:67から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、抗MASP-1抗体
と同じエピトープに結合する抗体が提供される。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される抗MASP-1抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。例えば、特定の態様において、
配列番号:20のVH配列および配列番号:21のVL配列を含む、抗MASP-1抗体、
配列番号:22のVH配列および配列番号:23のVL配列を含む、抗MASP-1抗体、
配列番号:24のVH配列および配列番号:25のVL配列を含む、抗MASP-1抗体、
配列番号:26のVH配列および配列番号:27のVL配列を含む、抗MASP-1抗体、
配列番号:28のVH配列および配列番号:29のVL配列を含む、抗MASP-1抗体、または
配列番号:30のVH配列および配列番号:31のVL配列を含む、抗MASP-1抗体
と同じエピトープに結合する抗体が提供される。
特定の態様において、ヒトMASP-1のセリンプロテアーゼ(SP)ドメイン(配列番号:7)の範囲内のエピトープに結合する抗体が提供される。
本発明のさらなる局面において、上述の態様の任意のものによる抗MASP-1抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。一態様において、抗MASP-1抗体は、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、またはF(ab’)2断片などの、抗体断片である。別の態様において、抗体は、例えば、完全IgG1、IgG2、またはIgG4や、本明細書で定義された他の抗体クラスまたはアイソタイプの、全長抗体である。
さらなる局面において、上述の態様の任意のものによる抗MASP-1抗体は、単独または組み合わせで、以下の項目1〜13に記載の任意の特徴を取り込んでもよい。
1.MASP-1に結合するがMASP-3に結合しない抗体
特定の態様において、MASP-1に特異的に結合する抗体が提供される。別の態様において、抗MASP-1抗体は、MASP-1に結合するが、MASP-3に結合しない。別の態様において、抗MASP-1抗体は、MASP-1に結合するが、MASP-3に実質的に結合しない。
MASP-1に結合するモノクローナル抗体の例を、表3において後述する。表3中のMASP-1に結合するモノクローナル抗体は全て、MASP-3にも結合する。
(表3)
Figure 2020515242
特定の局面において、抗MASP-1抗体は、MASP-3に結合しないか、またはMASP-3に実質的に結合しない。特定の態様において、抗MASP-1抗体は、MASP-3に対するものより高いアフィニティでMASP-1に結合する。特定の態様において、本発明の抗体は、例えば、解離定数(dissociation constant:Kd)に基づいて比較したときに、MASP-3に対するものより少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、100000倍、またはそれを上回る高いアフィニティでMASP-1に結合する。特定の態様において、MASP-3タンパク質に対する抗体の結合は、例えば、放射免疫測定法(radioimmunoassay:RIA)または酵素結合免疫吸着測定法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay:ELISA)によって測定する場合、MASP-1に対する抗体の結合の約50%、40%、30%、20%、または10%未満である。
本明細書で述べるように、本発明者らは、MASP-1に結合するがMASP-3に結合しないモノクローナル抗体を予想外に発見している。本発明者らはまた、MASP-1に結合するがMASP-3に結合しないモノクローナル抗体がMASP-1に対する阻害活性を有することも確認している。WO2013/180834は、(i)MASP-1とMASP-3との間で共有される重鎖/α鎖および(ii)セリンプロテアーゼドメインを含む異なる軽鎖/β鎖を用いる、MASP-1およびMASP-3に対する結合体について平行スクリーニングを含む、MASP-1抗原結合の選択方法(WO2013/180834の実施例15)を開示する。しかしながら、MASP-1に特異的に結合するモノクローナル抗体は実際には得られなかった。MASP-1の触媒活性が、急速な自己活性化および自己分解によってその発現を抑制することが報告されている(Protein Expr Purif Vol 88, Issue 2, April 2013, pp173-182)。また、MASP-1は自己活性化できることが公知であり、その高い活性のせいで、MASP-1はさらに、自己分解の傾向があるように思われる。MASP-1の軽鎖/β鎖(セリンプロテアーゼドメイン)は、MASP-1の触媒領域(CCP1-CCP2-SPドメイン)の一部であることから、安定なMASP-1 SPドメインを精製または製造することおよびMASP-1のSPドメインに結合する抗体をスクリーニングすることは困難であった。
2.MASP-1のSP(セリンプロテアーゼ)ドメインに結合する抗体
特定の態様において、ヒトMASP-1のセリンプロテアーゼ(SP)ドメイン(配列番号:7)内のエピトープに結合する抗体が提供される。
MASP-1およびMASP-3は、MASP-1遺伝子の選択的スプライシング変異体である。それらは、C末端で異なる軽鎖/β鎖(SPドメイン)によって延長される同一の重鎖/α鎖(CUB1-EGF-CUB2-CCP1-CCP2ドメイン)を含む。したがって、特定の態様において、MASP-1に結合するがMASP-3に結合しない抗体は、MASP-1のSPドメインに結合するかまたはそれに特異的に結合することが予想される。
特定の態様において、抗MASP-1抗体は、ヒトMASP-1、サルMASP-1、およびマウスMASP-1と交差反応する抗体である。特定の態様において、抗MASP-1抗体は、ヒト、サル、およびマウス由来のMASP-1 SPドメイン間で保存されるMASP-1のエピトープに結合する。さらなる態様において、ヒトMASP-1、サルMASP-1、およびマウスMASP-1と交差反応する抗体は、ヒト、サル、およびマウス由来のMASP-1 SPドメイン間で保存されるMASP-1のエピトープに結合することが予想される。ヒト、サル、およびマウス由来のMASP-1 SPドメイン間で保存される例示的なアミノ酸配列は、配列番号:7のアミノ酸残基1から8、13から34、39から51、60から69、71から75、100から104、135から151、153から161、172から178、180から204、211から216、223から236、または239から245である。(図2)
3.MASP-1の活性型または不活性型に結合する抗体
特定の態様において、抗MASP-1抗体は、MASP-1の活性型に結合する抗体である。MASP-1は、C末端で軽鎖/β鎖(SPドメイン)によって延長される重鎖/α鎖(CUB1-EGF-CUB2-CCP1-CCP2ドメイン)を含む。MASP-1は、重鎖/α鎖および軽鎖/β鎖を分離する、活性化ペプチドでの切断によって活性化される。2つの鎖は次いで、鎖間システイン架橋(ジスルフィド架橋)によって一緒に保持される。特定の態様において、抗MASP-1抗体は、MASP-1酵素活性の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%超を阻害する。
特定の態様において、抗MASP-1抗体は、MASP-1の活性型に結合するがMASP-1の不活性型に結合しない抗体である。特定の態様において、抗MASP-1抗体は、MASP-1の不活性型に結合するがMASP-1の活性型に結合しない抗体である。特定の態様において、抗MASP-1抗体は、MASP-1の活性型および不活性型の両方に結合する抗体である。
4.補体活性化のLP(レクチン経路)を阻害する抗体
特定の態様において、抗MASP-1抗体は、MASP-1活性を阻害する抗体である。さらなる態様において、MASP-1活性は、MASP-1媒介性補体レクチン経路活性化である。いかなる理論にも束縛されることを意図しないが、MASP-1は、補体活性化のレクチン経路の構成成分として機能する。結合すると、MASP-1はまず自己活性化し、次いでMASP-2およびMASP-3を活性化する。活性化MASP-2はC4をC4a、C4b、およびC4cに切断し、活性化MASP-1およびMASP-2はC2をC2aおよびC2bに切断する。C4a断片およびC2b断片の会合は、C3転換酵素C4bC2aの形成をもたらす。C4bC2aはC3をC3aおよびC3bに切断し、続いて、第I因子によってC3bをC3cおよびC3dに切断する。特定の態様において、抗MASP-1抗体は、MASP-1に結合し、MASP-1活性を阻害して、MASP-2およびMASP-3を活性化する。さらなる態様において、抗MASP-1抗体は、MASP-1に結合し、レクチン経路の活性化を阻害する。
特定の態様において、抗MASP-1抗体は、0.5μg/mL、0.45 μg/mL、0.40 μg/mL、0.35 μg/mL、0.34 μg/mL、0.33 μg/mL、0.32 μg/mL、0.31 μg/mL、0.3 μg/mL、0.29 μg/mL、0.28 μg/mL、0.27 μg/mL、0.26 μg/mL、0.25 μg/mL、0.24 μg/mL、0.23 μg/mL、0.22 μg/mL、0.21 μg/mL、0.2 μg/mL、0.19 μg/mL、0.18 μg/mL、0.17 μg/mL、0.16 μg/mL、0.15 μg/mL、0.14 μg/mL、0.13 μg/mL、または0.12μg/mL未満、好ましくは、0.35 μg/mL、0.34 μg/mL、0.33 μg/mL、0.32 μg/mL、0.31 μg/mL、または0.3 μg/mL未満、より好ましくは、0.35 μg/mL未満のIC 50でレクチン経路の活性化を阻害する。
5.MASP-1活性を阻害するがMASP-3活性を阻害しない抗体
特定の態様において、抗MASP-1抗体は、MASP-1活性を阻害するがMASP-3活性を直接的に阻害しない抗体である。MASP-3を直接的に阻害する抗体は、MASP-3に結合しその活性を阻害する抗体であり、MASP-3を間接的に阻害する抗体は、MASP3以外の分子に結合しMASP-3活性を阻害する抗体である(例えば、MASP-3活性化を阻害する抗MASP-1抗体)。MASP-1はMASP-3を活性化して、副経路活性化酵素D因子をその酵素前駆体形態からその酵素的に活性な形態に変換することが報告されている(J. Immunol. 187:3751-58(2011))。D因子の活性化を評価する方法は当技術分野において既知である(例えば、J Immunol January 15, 2016, 196(2) 857-865)。
6.安定な抗MASP-1抗体
特定の態様において、抗MASP-1抗体は、1週間、2週間、またはそれ以上40℃にてPBS中でインキュベートした後に安定である。本明細書で用いられる用語「安定」は、インキュベーション後の抗MASP-1抗体が、インキュベーション前の抗MASP-1抗体と実質的に同等のMASP-1阻害活性を有することを意味する。本明細書で用いられる用語「安定」は、インキュベーション後の抗MASP-1抗体が、インキュベーション前の抗MASP-1抗体の50%、60%、70%、80%、または90%を超えるMASP-1阻害活性を有することを意味する。
7.抗体のアフィニティ
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M〜10-13M、例えば10-9M〜10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。
一態様において、Kdは、放射性標識抗原結合測定法 (radiolabeled antigen binding assay: RIA) によって測定される。一態様において、RIAは、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液中結合アフィニティは、非標識抗原の漸増量系列の存在下で最小濃度の (125I) 標識抗原によりFabを平衡化させ、次いで結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングされたプレートにより捕捉することによって測定される。(例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999) を参照のこと)。測定条件を構築するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート (Thermo Scientific) を50mM炭酸ナトリウム (pH9.6) 中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体 (Cappel Labs) で一晩コーティングし、その後に室温(およそ23℃)で2〜5時間、PBS中2% (w/v) ウシ血清アルブミンでブロックする。非吸着プレート (Nunc #269620) において、100 pMまたは26 pMの [125I]-抗原を、(例えば、Presta et al., Cancer Res. 57:4593-4599 (1997) における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と同じように)目的のFabの段階希釈物と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が確実に達成されるよう、より長時間(例えば、約65時間)継続され得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉プレートに移す。次いで溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター (Packard) においてプレートを10分間カウントする。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選択する。
別の態様によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000 (BIAcore, Inc., Piscataway, NJ) を用いる測定法が、およそ10反応単位 (response unit: RU) の抗原が固定されたCM5チップを用いて25℃で実施される。一態様において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ (CM5、BIACORE, Inc.) は、供給元の指示にしたがいN-エチル-N’- (3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド (EDC) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS) を用いて活性化される。抗原は、およそ10反応単位 (RU) のタンパク質の結合を達成するよう、5μl/分の流速で注入される前に、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8を用いて5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈される。抗原の注入後、未反応基をブロックするために1Mエタノールアミンが注入される。キネティクスの測定のために、25℃、およそ25μl/分の流速で、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤含有PBS (PBST) 中のFabの2倍段階希釈物 (0.78nM〜500nM) が注入される。結合速度 (kon) および解離速度 (koff) は、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて、結合および解離のセンサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数 (Kd) は、koff/kon比として計算される。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999) を参照のこと。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによってオン速度が106M-1s-1を超える場合、オン速度は、分光計(例えばストップフロー式分光光度計 (Aviv Instruments) または撹拌キュベットを用いる8000シリーズのSLM-AMINCO(商標)分光光度計 (ThermoSpectronic))において測定される、漸増濃度の抗原の存在下でのPBS、pH7.2中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、バンドパス16nm)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いることによって決定され得る。
8.抗体断片
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片は、これらに限定されるものではないが、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、および scFv断片、ならびに、後述する他の断片を含む。特定の抗体断片についての総説として、Hudson et al. Nat. Med. 9:129-134 (2003) を参照のこと。scFv断片の総説として、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp.269-315 (1994);加えて、WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および第5,587,458号を参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含みインビボ (in vivo) における半減期の長くなったFabおよびF(ab')2断片についての論説として、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
ダイアボディは、二価または二重特異的であってよい、抗原結合部位を2つ伴う抗体断片である。例えば、EP404,097号; WO1993/01161; Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003); Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993) 参照。トリアボディ (triabody) やテトラボディ (tetrabody) も、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003) に記載されている。
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分、または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、抗体断片である。特定の態様において、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516号B1参照)。
抗体断片は、これらに限定されるものではないが、本明細書に記載の、完全抗体のタンパク質分解的消化、組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌 (E. coli) またはファージ)による産生を含む、種々の手法により作ることができる。
9.キメラおよびヒト化抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号;および、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984) に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、親抗体のものからクラスまたはサブクラスが変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片も含む。
特定の態様において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性およびアフィニティを維持したままでヒトへの免疫原性を減少させるために、ヒト化される。通常、ヒト化抗体は1つまたは複数の可変ドメインを含み、当該可変ドメイン中、HVR(例えばCDR(またはその部分))は非ヒト抗体に由来し、FR(またはその部分)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性またはアフィニティを回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)からの対応する残基で置換されている。
ヒト化抗体およびその作製方法は、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)において総説されており、また、例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); 米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、および第7,087,409号;Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005)(特異性決定領域 (specificity determining region: SDR) グラフティングを記載);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (リサーフェイシングを記載); Dall’Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (FRシャッフリングを記載);ならびに、Osbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) およびKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRシャッフリングのための「ガイドセレクション」アプローチを記載) において、さらに記載されている。
ヒト化に使われ得るヒトフレームワーク領域は、これらに限定されるものではないが:「ベストフィット」法(Sims et al. J. Immunol. 151:2296 (1993) 参照)を用いて選択されたフレームワーク領域;軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(Carter et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992) および Presta et al. J. Immunol., 151:2623 (1993) 参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008) 参照);および、FRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997) および Rosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996) 参照)を含む。
10.ヒト抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において知られる種々の手法によって製造され得る。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001) および Lonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008) に、概説されている。
ヒト抗体は、抗原チャレンジ(負荷)に応答して完全ヒト抗体またはヒト可変領域を伴う完全抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物へ免疫原を投与することにより、調製されてもよい。そのような動物は、典型的にはヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分を含み、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分は、内因性の免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または、染色体外にもしくは当該動物の染色体内にランダムに取り込まれた状態で存在する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性の免疫グロブリン遺伝子座は、通常不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説として、Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005) を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載した米国特許第6,075,181号および第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載した米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許第7,041,870号;ならびに、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許出願公開第2007/0061900号を、併せて参照のこと。このような動物によって生成された完全抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせるなどして、さらに修飾されてもよい。
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づいた方法でも作ることができる。ヒトモノクローナル抗体の製造のための、ヒトミエローマおよびマウス‐ヒトヘテロミエローマ細胞株は、既に記述されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);およびBoerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991) 参照。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体も、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006) に述べられている。追加的な方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の製造を記載)、および、Ni, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)(ヒト−ヒトハイブリドーマを記載)に記載されたものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005) およびVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することでも生成できる。このような可変ドメイン配列は、次に所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する手法を、以下に述べる。
11.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の1つまたは複数の活性を伴う抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離してもよい。例えば、ファージディスプレイライブラリの生成や、所望の結合特性を備える抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングするための、様々な方法が当該技術分野において知られている。そのような方法は、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001) において総説されており、さらに例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554;Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks and Bradbury, in Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);およびLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004) に記載されている。
特定のファージディスプレイ法において、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction: PCR) により別々にクローニングされ、無作為にファージライブラリ中で再結合され、当該ファージライブラリは、Winter et al., Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994) に述べられているようにして、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、単鎖Fv (scFv) 断片としてまたはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築することを要さずに、免疫源に対する高アフィニティ抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993) に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、免疫化することなしに、広範な非自己および自己抗原への抗体の単一の供給源を提供することもできる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992) に記載されるように、幹細胞から再編成前のV-遺伝子セグメントをクローニングし、超可変CDR3領域をコードしかつインビトロ (in vitro) で再構成を達成するための無作為配列を含んだPCRプライマーを用いることにより、合成的に作ることもできる。ヒト抗体ファージライブラリを記載した特許文献は、例えば:米国特許第5,750,373号、ならびに、米国特許出願公開第2005/0079574号、2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、および第2009/0002360号を含む。
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片と見なす。
12.多重特異性抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に結合特異性を有する、モノクローナル抗体である。特定の態様において、結合特異性の1つは、MASP-1に対するものであり、もう1つは他の任意の抗原へのものである。特定の態様において、二重特異性抗体は、MASP-1の異なった2つのエピトープに結合してもよい。二重特異性抗体は、MASP-1を発現する細胞に細胞傷害剤を局在化するために使用されてもよい。二重特異性抗体は、全長抗体としてまたは抗体断片として調製され得る。
多重特異性抗体を作製するための手法は、これらに限定されるものではないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖ペアの組み換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)、WO93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991) 参照)、およびknob-in-hole技術(例えば、米国特許第5,731,168号参照)を含む。多重特異性抗体は、Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果 (electrostatic steering effects) を操作すること (WO2009/089004A1);2つ以上の抗体または断片を架橋すること(米国特許第4,676,980号およびBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)参照);ロイシンジッパーを用いて2つの特異性を有する抗体を作成すること(Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992) 参照);「ダイアボディ」技術を用いて二重特異性抗体断片を作製すること(Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993) 参照);および、単鎖Fv (scFv) 二量体を用いること(Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994) 参照);および、例えばTutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991) に記載されるように三重特異性抗体を調製すること、によって作製してもよい。
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を伴う改変抗体も、本明細書では含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号A1参照)。
本明細書で抗体または断片は、MASP-1と別の異なる抗原とに結合する1つの抗原結合部位を含む、「デュアルアクティングFab」または「DAF」も含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号参照)。
13.抗体変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異体も、考慮の内である。例えば、抗体の結合アフィニティおよび/または他の生物学的特性を改善することが、望ましいこともある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入すること、または、ペプチド合成によって、調製されてもよい。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列中への挿入、および/または抗体のアミノ酸配列中の残基の置換を含む。最終構築物が所望の特徴(例えば、抗原結合性)を備えることを前提に、欠失、挿入、および置換の任意の組合せが、最終構築物に至るために行われ得る。
a)置換、挿入、および欠失変異体
特定の態様において、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換的変異導入の目的部位は、HVRおよびFRを含む。保存的置換を、表4の「好ましい置換」の見出しの下に示す。より実質的な変更を、表4の「例示的な置換」の見出しの下に提供するとともに、アミノ酸側鎖のクラスに言及しつつ下で詳述する。アミノ酸置換は目的の抗体に導入されてもよく、産物は、例えば、保持/改善された抗原結合性、減少した免疫原性、または改善したADCCまたはCDCなどの、所望の活性についてスクリーニングされてもよい。
(表4)
Figure 2020515242
アミノ酸は、共通の側鎖特性によって群に分けることができる:
(1) 疎水性:ノルロイシン、メチオニン (Met)、アラニン (Ala)、バリン (Val)、ロイシン (Leu)、イソロイシン (Ile);
(2) 中性の親水性:システイン (Cys)、セリン (Ser)、トレオニン (Thr)、アスパラギン (Asn)、グルタミン (Gln);
(3) 酸性:アスパラギン酸 (Asp)、グルタミン酸 (Glu);
(4) 塩基性:ヒスチジン (His)、リジン (Lys)、アルギニン (Arg);
(5) 鎖配向に影響する残基:グリシン (Gly)、プロリン (Pro);
(6) 芳香族性:トリプトファン (Trp)、チロシン (Tyr)、フェニルアラニン (Phe)。
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、別のクラスのものに交換することをいう。
置換変異体の1つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基の置換を含む。通常、その結果として生じ、さらなる研究のために選ばれた変異体は、親抗体と比較して特定の生物学的特性における修飾(例えば、改善)(例えば、増加したアフィニティ、減少した免疫原性)を有する、および/または親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例示的な置換変異体は、アフィニティ成熟抗体であり、これは、例えばファージディスプレイベースのアフィニティ成熟技術(例えば本明細書に記載されるもの)を用いて適宜作製され得る。簡潔に説明すると、1つまたは複数のHVR残基を変異させ、そして変異抗体をファージ上に提示させ、特定の生物学的活性(例えば、結合アフィニティ)に関してスクリーニングを行う。
改変(例えば、置換)は、例えば抗体のアフィニティを改善するために、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008) を参照のこと)および/または抗原に接触する残基において行われ得、得られた変異VHまたはVLが結合アフィニティに関して試験され得る。二次ライブラリからの構築および再選択によるアフィニティ成熟が、例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001)) に記載されている。アフィニティ成熟のいくつかの態様において、多様性は、任意の様々な方法(例えば、エラープローンPCR、チェーンシャッフリングまたはオリゴヌクレオチド指向変異導入)によって成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリは、所望のアフィニティを有する任意の抗体変異体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4〜6残基)を無作為化するHVR指向アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えばアラニンスキャニング変異導入またはモデリングを用いて、具体的に特定され得る。特に、CDR-H3およびCDR-L3がしばしば標的化される。
特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に減少させない限り、1つまたは複数のHVR内で行われ得る。例えば、結合アフィニティを実質的に減少させない保存的改変(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)が、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、例えば、HVRの抗原接触残基の外側であり得る。上記の変異VHおよびVL配列の特定の態様において、各HVRは改変されていないか、わずか1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含む。
変異導入のために標的化され得る抗体の残基または領域を同定するのに有用な方法は、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085によって記載される、「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれるものである。この方法において、一残基または一群の標的残基(例えば、荷電残基、例えばアルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、およびグルタミン酸)が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンもしくはポリアラニン)で置き換えられ、抗体と抗原の相互作用が影響を受けるかどうかが決定される。この初期置換に対して機能的感受性を示したアミノ酸位置に、さらなる置換が導入され得る。あるいはまたは加えて、抗体と抗原の間の接触点を同定するために、抗原抗体複合体の結晶構造を解析してもよい。そのような接触残基および近隣の残基を、置換候補として標的化してもよく、または置換候補から除外してもよい。変異体は、それらが所望の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされ得る。
アミノ酸配列の挿入は、配列内部への単一または複数のアミノ酸残基の挿入と同様、アミノ末端および/またはカルボキシル末端における1残基から100残基以上を含むポリペプチドの長さの範囲での融合も含む。末端の挿入の例は、N末端にメチオニル残基を伴う抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体のN-またはC-末端に、酵素(例えば、ADEPTのための)または抗体の血漿半減期を増加させるポリペプチドを融合させたものを含む。
b)グリコシル化変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加させるまたは減少させるように改変されている。抗体へのグリコシル化部位の追加または削除は、1つまたは複数のグリコシル化部位を作り出すまたは取り除くようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成可能である。
抗体がFc領域を含む場合、そこに付加される炭水化物が改変されてもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然型抗体は、典型的には、枝分かれした二分岐のオリゴ糖を含み、当該オリゴ糖は通常Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-リンケージによって付加されている。例えば、Wright et al. TIBTECH 15:26-32 (1997) 参照。オリゴ糖は、例えば、マンノース、N‐アセチルグルコサミン (GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸などの種々の炭水化物、また、二分岐のオリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに付加されたフコースを含む。いくつかの態様において、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を伴う抗体変異体を作り出すために行われてもよい。
一態様において、Fc領域に(直接的または間接的に)付加されたフコースを欠く炭水化物構造体を有する抗体変異体が提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%または20%〜40%であり得る。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されるようにMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に付加されたすべての糖構造体(例えば、複合、ハイブリッド、および高マンノース構造体)の和に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域の297位のあたりに位置するアスパラギン残基を表す(Fc領域残基のEUナンバリング)。しかし、複数の抗体間のわずかな配列の多様性に起因して、Asn297は、297位の±3アミノ酸上流または下流、すなわち294位〜300位の間に位置することもあり得る。そのようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号 (Presta, L.) ;第2004/0093621号 (Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd) を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例は、US2003/0157108; WO2000/61739; WO2001/29246; US2003/0115614; US2002/0164328; US2004/0093621; US2004/0132140; US2004/0110704; US2004/0110282; US2004/0109865; WO2003/085119; WO2003/084570; WO2005/035586; WO2005/035778; WO2005/053742; WO2002/031140; Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004); Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004) を含む。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例は、タンパク質のフコシル化を欠くLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願公開第US2003/0157108号A1、Presta, L;およびWO2004/056312A1、Adams et al.、特に実施例11)およびノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006);およびWO2003/085107を参照のこと)を含む。
例えば抗体のFc領域に付加された二分枝型オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体変異体がさらに提供される。そのような抗体変異体は、減少したフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体変異体の例は、例えば、WO2003/011878 (Jean-Mairet et al.) ;米国特許第6,602,684号 (Umana et al.);およびUS2005/0123546 (Umana et al.) に記載されている。Fc領域に付加されたオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。そのような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体変異体は、例えば、WO1997/30087 (Patel et al.);WO1998/58964 (Raju, S.); およびWO1999/22764 (Raju, S.) に記載されている。
c)Fc領域変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入して、それによりFc領域変異体を生成してもよい。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸ポジションのところでアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含んでもよい。
特定の態様において、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を備える抗体変異体も、本発明の考慮の内であり、当該エフェクター機能は、抗体を、そのインビボでの半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体およびADCCなど)は不要または有害である場合の適用に望ましい候補とするものである。CDCおよび/またはADCC活性の減少/欠乏を確認するために、インビトロ および/またはインビボ の細胞傷害測定を行うことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合測定は、抗体がFcγR結合性を欠く(よってADCC活性を欠く蓋然性が高い)一方でFcRn結合能を維持することを確かめるために行われ得る。ADCCを媒介するプライマリ細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、一方単球はFcγRI、FcγRII、FcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991) の第464頁のTable 3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロ測定法(アッセイ)の非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、 Hellstrom, I. et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986) 参照)および Hellstrom, I et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987) 参照)に記載されている。あるいは、非放射性の測定法を用いてもよい(例えば、ACT1(商標)non-radioactive cytotoxicity assay for flow cytometry (CellTechnology, Inc. Mountain View, CA);および、CytoTox 96(登録商標)non-radioactive cytotoxicity assays 法 (Promega, Madison, WI) 参照)。このような測定法に有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞 (peripheral blood mononuclear cell: PBMC) およびナチュラルキラー (natural killer: NK) 細胞を含む。あるいはまたは加えて、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998) に記載されるような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。また、抗体がC1qに結合できないこと、よってCDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合測定を行ってもよい。例えば、WO2006/029879 および WO2005/100402のC1qおよびC3c結合ELISAを参照のこと。また、補体活性化を評価するために、CDC測定を行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg, M.S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003);およびCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004) 参照)。さらに、FcRn結合性およびインビボでのクリアランス/半減期の決定も、当該技術分野において知られた方法を用いて行い得る(例えばPetkova, S.B. et al., Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006) 参照)。
減少したエフェクター機能を伴う抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329の1つまたは複数の置換を伴うものを含む(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体は、残基265および297のアラニンへの置換を伴ういわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸ポジション265、269、270、297、および327の2つ以上の置換を伴うFc変異体を含む。
FcRsへの増加または減少した結合性を伴う特定の抗体変異体が、記述されている。(米国特許第6,737,056号;WO2004/056312、およびShields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001) を参照のこと。)
特定の態様において、抗体変異体は、ADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換(例えば、Fc領域のポジション298、333、および/または334(EUナンバリングでの残基)のところでの置換)を伴うFc領域を含む。
いくつかの態様において、例えば米国特許第6,194,551号、WO99/51642、およびIdusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000) に記載されるように、改変された(つまり、増加したか減少したかのいずれかである)C1q結合性および/または補体依存性細胞傷害 (CDC) をもたらす改変が、Fc領域においてなされる。
増加した半減期、および新生児型Fc受容体(FcRn:母体のIgG類を胎児に移行させる役割を負う(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994)))に対する増加した結合性を伴う抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号A1(Hinton et al.) に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合性を増加する1つまたは複数の置換をその中に伴うFc領域を含む。このようなFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434の1つまたは複数のところでの置換(例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号))を伴うものを含む。
Fc領域変異体の他の例については、Duncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびWO94/29351も参照のこと。
d)システイン改変抗体変異体
特定の態様において、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換された、システイン改変抗体(例えば、「thioMAbs」)を作り出すことが望ましいだろう。特定の態様において、置換を受ける残基は、抗体の、アクセス可能な部位に生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性のチオール基が抗体のアクセス可能な部位に配置され、当該反応性のチオール基は、当該抗体を他の部分(薬剤部分またはリンカー‐薬剤部分など)にコンジュゲートして本明細書でさらに詳述するようにイムノコンジュゲートを作り出すのに使用されてもよい。特定の態様において、以下の残基の任意の1つまたは複数が、システインに置換されてよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるようにして生成されてもよい。
e)抗体誘導体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野において知られておりかつ容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むように、さらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分は、これに限定されるものではないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、これらに限定されるものではないが、ポリエチレングリコール (PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ1,3ジオキソラン、ポリ1,3,6,トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれでも)、および、デキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール類(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、および、これらの混合物を含む。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水に対する安定性のために、製造において有利であるだろう。ポリマーは、いかなる分子量でもよく、枝分かれしていてもしていなくてもよい。抗体に付加されるポリマーの数には幅があってよく、1つ以上のポリマーが付加されるならそれらは同じ分子であってもよいし、異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、これらに限定されるものではないが、改善されるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下での療法に使用されるか否か、などへの考慮に基づいて、決定することができる。
別の態様において、抗体と、放射線に曝露することにより選択的に熱せられ得る非タンパク質部分との、コンジュゲートが提供される。一態様において、非タンパク質部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線はいかなる波長でもよく、またこれらに限定されるものではないが、通常の細胞には害を与えないが抗体‐非タンパク質部分に近接した細胞を死滅させる温度まで非タンパク質部分を熱するような波長を含む。
B.組み換えの方法および構成
例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるとおり、抗体は組み換えの方法や構成を用いて製造することができる。一態様において、本明細書に記載の抗MASP-1抗体をコードする、単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードしてもよい。さらなる態様において、このような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる態様において、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。このような態様の1つでは、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または、(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のベクターと抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二のベクターを含む(例えば、形質転換されている)。一態様において、宿主細胞は、真核性である(例えば、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞)またはリンパ系の細胞(例えば、Y0、NS0、Sp2/0細胞))。一態様において、抗MASP-1抗体の発現に好適な条件下で、上述のとおり当該抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養すること、および任意で、当該抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することを含む、抗MASP-1抗体を作製する方法が提供される。
抗MASP-1抗体の組み換え製造のために、(例えば、上述したものなどの)抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニングおよび/または宿主細胞中での発現のために、1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を用いて容易に単離および配列決定されるだろう(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることで)。
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞を含む。例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合は、細菌で製造してもよい。細菌での抗体断片およびポリペプチドの発現に関して、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号を参照のこと。(加えて、大腸菌における抗体断片の発現について記載したCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp.245-254も参照のこと。)発現後、抗体は細菌細胞ペーストから可溶性フラクション中に単離されてもよく、またさらに精製することができる。
原核生物に加え、部分的なまたは完全なヒトのグリコシル化パターンを伴う抗体の産生をもたらす、グリコシル化経路が「ヒト化」されている菌類および酵母の株を含む、糸状菌または酵母などの真核性の微生物は、抗体コードベクターの好適なクローニングまたは発現宿主である。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)および Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006) を参照のこと。
多細胞生物(無脊椎生物および脊椎生物)に由来するものもまた、グリコシル化された抗体の発現のために好適な宿主細胞である。無脊椎生物細胞の例は、植物および昆虫細胞を含む。昆虫細胞との接合、特にSpodoptera frugiperda細胞の形質転換に用いられる、数多くのバキュロウイルス株が同定されている。
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するための、PLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照のこと。
脊椎動物細胞もまた宿主として使用できる。例えば、浮遊状態で増殖するように適応された哺乳動物細胞株は、有用であろう。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40で形質転換されたサル腎CV1株 (COS-7);ヒト胎児性腎株(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977) などに記載の293または293細胞);仔ハムスター腎細胞 (BHK);マウスセルトリ細胞(Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980) などに記載のTM4細胞);サル腎細胞 (CV1);アフリカミドリザル腎細胞 (VERO-76);ヒト子宮頸部癌細胞 (HELA);イヌ腎細胞 (MDCK);Buffalo系ラット肝細胞 (BRL 3A);ヒト肺細胞 (W138);ヒト肝細胞 (Hep G2);マウス乳癌 (MMT 060562);TRI細胞(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982) に記載);MRC5細胞;および、FS4細胞などである。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR− CHO細胞 (Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980)) を含むチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞;およびY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の総説として、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003) を参照のこと。
C.測定法(アッセイ)
本明細書で提供される抗MASP-1抗体は、当該技術分野において知られている種々の測定法によって、同定され、スクリーニングされ、または物理的/化学的特性および/または生物学的活性について明らかにされてもよい。
1.結合測定法およびその他の測定法
一局面において、本発明の抗体は、例えばELISA、ウエスタンブロット等の公知の方法によって、その抗原結合活性に関して試験される。
別の局面において、MASP-1への結合に関して本明細書に記載の任意の抗MASP-1抗体と競合する抗体を同定するために、競合アッセイが使用され得る。特定の態様において、そのような競合抗体は、本明細書に記載の任意の抗MASP-1抗体によって結合されるのと同じエピトープ(例えば、線状または立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングする、詳細な例示的方法は、Morris (1996) “Epitope Mapping Protocols,” in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。
例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたMASP-1は、MASP-1に結合する第1の標識された抗体およびMASP-1への結合に関して第1の抗体と競合する能力に関して試験される第2の未標識の抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清に存在し得る。対照として、固定化されたMASP-1が、第1の標識された抗体を含むが第2の未標識の抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のMASP-1に対する結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、余分な未結合の抗体が除去され、固定化されたMASP-1に結合した標識の量が測定される。固定化されたMASP-1に結合した標識の量が対照サンプルと比較して試験サンプルにおいて実質的に減少している場合、それは第2の抗体がMASP-1への結合に関して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY) を参照のこと。
2.活性測定法
一局面において、生物学的活性を有する抗MASP-1抗体のそれを同定するための測定法が提供される。生物学的活性は、例えば、MASP-1に対する阻害活性を含んでよい。また、このような生物学的活性をインビボおよび/またはインビトロで有する抗体が、提供される。
特定の態様において、本発明の抗体は、このような生物学的活性について試験される。
特定の態様において、本発明の抗体は、例えば、ELISA、放射免疫測定法(RIA)、ウエスタンブロット、BIACORE(登録商標)等の公知の結合アッセイによって、MASP-1およびMASP-3に対するその交差反応性について試験される。特定の態様において、例えば、解離定数(Kd)に基づいて比較したときに、MASP-3に対するものより少なくとも2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、400、1000、10000、100000倍、またはそれを上回る高いアフィニティでMASP-1に結合する抗体が選択される。特定の態様において、例えば、放射免疫測定法(RIA)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって測定される場合、そのMASP-3に対する結合がMASP-1対する抗体の結合の約50%、40%、30%、20%、または10%未満である抗体が、選択される。
特定の態様において、本発明の抗体は、補体系のレクチン経路に対するその阻害活性について試験される。補体活性化のレクチン経路に対する試験抗体の阻害活性は、例えば、レクチン経路によって生じる補体成分(例えば、C4cまたはC3c等)の沈着を検出および/または測定することによって決定することができる。そのような検出方法は、例えばPetersen et al., Journal of Immunological Methods 257:107-116(2001)に記載されているように、公知である。例示的な検出方法において、試験抗体をインビトロで正常な血清と接触させ、マンナンでコーティングしたプレート中でインキュベートし、C4cまたはC3cの沈着をELISAなどの従来の方法によって検出および/または測定する。あるいは、試験抗体は、それを動物に投与することによってインビボで正常な血清と接触させる。血液を動物から収集し、遠心分離して、血清を分離し、分離された血清をマンナンでコーティングしたプレート中でインキュベートして、上記のようにC4cまたはC3c沈着を検出および/または測定する。負の対照と比較して、C4cまたはC3c沈着が試験抗体によって減少する場合、試験抗体は、補体活性化のレクチン経路に対する阻害活性を有すると判断される。特定の態様において、本発明の抗体は、アッセイにおいて測定した場合、負の対照と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、またはそれを上回って補体活性化のレクチン経路を阻害する可能性がある。アッセイの結果に基づき、GraphPad Prism(登録商標)などの適切な分析ソフトウェアを用いて、IC50値を算出してもよい。
特定の態様において、本発明の抗体は、MASP-1の活性型の酵素活性に対するその阻害活性について試験される。MASP-1の活性型の酵素活性には、これらに限定されるものではないが、エンドペプチダーゼ活性が含まれる。MASP-1の活性型の酵素活性に対する試験抗体の阻害活性は、例えば、Degn et al., Protein Expression and Purification 88:173-182(2013)に記載されているようなペプチド切断アッセイによって、検出および/または測定することができる。例示的な方法において、Boc-VPR-AMCなどの人工蛍光発生ペプチド基質が、MASP-1の基質として用いられる。ペプチド基質は試験抗体の存在下でMASP-1と反応することが可能であり、ペプチドの切断は相対的蛍光強度として測定される。蛍光が、試験抗体の非存在下における場合と比較して、試験抗体の存在下で低下する場合、試験抗体は、MASP-1の酵素活性に対する阻害活性を有すると判断される。特定の態様において、本発明の抗体は、アッセイにおいて測定される負の対照と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%、またはそれを上回って、MASP-1の活性型の酵素活性を阻害してもよい。
D.イムノコンジュゲート
本発明はまた、1つまたは複数の細胞傷害剤(例えば化学療法剤または化学療法薬、増殖阻害剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物もしくは動物起源のタンパク質毒素、酵素的に活性な毒素、もしくはそれらの断片)または放射性同位体)にコンジュゲートされた本明細書の抗MASP-1抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。
一態様において、イムノコンジュゲートは、抗体が、これらに限定されるものではないが以下を含む1つまたは複数の薬剤にコンジュゲートされた、抗体−薬剤コンジュゲート (antibody-drug conjugate: ADC) である:メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、第5,416,064号、および欧州特許第0,425,235号B1参照);例えばモノメチルオーリスタチン薬剤部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)(米国特許第5,635,483号および第5,780,588号および第7,498,298号参照)などのオーリスタチン;ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体(米国特許第5,712,374号、第5,714,586号、第5,739,116号、第5,767,285号、第5,770,701号、第5,770,710号、第5,773,001号、および第5,877,296号;Hinman et al., Cancer Res. 53:3336-3342 (1993);ならびにLode et al., Cancer Res. 58:2925-2928 (1998) 参照);ダウノマイシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al., Current Med. Chem. 13:477-523 (2006);Jeffrey et al., Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362 (2006);Torgov et al., Bioconj. Chem. 16:717-721 (2005);Nagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834 (2000);Dubowchik et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532 (2002);King et al., J. Med. Chem. 45:4336-4343 (2002);および米国特許第6,630,579号参照);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、およびオルタタキセルなどのタキサン;トリコテセン;ならびにCC1065。
別の態様において、イムノコンジュゲートは、これらに限定されるものではないが以下を含む酵素的に活性な毒素またはその断片にコンジュゲートされた、本明細書に記載の抗体を含む:ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) 由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ (Aleurites fordii) タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ (Phytolacca americana) タンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ツルレイシ (momordica charantia) 阻害剤、クルシン (curcin)、クロチン、サボンソウ (saponaria officinalis) 阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン (mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、ならびにトリコテセン。
別の態様において、イムノコンジュゲートは、放射性コンジュゲートを形成するために放射性原子にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗体を含む。様々な放射性同位体が放射性コンジュゲートの製造に利用可能である。例は、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212PbおよびLuの放射性同位体を含む。放射性コンジュゲートを検出のために使用する場合、放射性コンジュゲートは、シンチグラフィー検査用の放射性原子(例えばTc-99mもしくは123I)、または、核磁気共鳴 (NMR) イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとしても知られる)用のスピン標識(例えばここでもヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、または鉄)を含み得る。
抗体および細胞傷害剤のコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質連結剤を用いて作製され得る。例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート (SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート (SMCC)、イミノチオラン (IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)である。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., Science 238:1098 (1987) に記載されるようにして調製され得る。炭素-14標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸 (MX-DTPA) は、抗体への放射性核種のコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。WO94/11026を参照のこと。リンカーは、細胞内での細胞傷害薬の放出を促進する「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res. 52:127-131 (1992);米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
本明細書のイムノコンジュゲートまたはADCは、(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aから)市販されているBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、およびスルホ-SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない架橋試薬を用いて調製されるコンジュゲートを明示的に考慮するが、これらに限定されない。
E.診断および検出のための方法および組成物
特定の態様において、本明細書で提供される抗MASP-1抗体のいずれも、生物学的サンプルにおけるMASP-1の存在を検出するのに有用である。本明細書で用いられる用語「検出」は、定量的または定性的な検出を包含する。特定の態様において、生物学的サンプルは、細胞または組織、例えば、血清、全血、血漿、生検試料、組織試料、細胞懸濁液、唾液、痰、口腔液、脳脊髄液、羊水、腹水、乳汁、初乳、乳腺分泌物、リンパ液、尿、汗、涙液、胃液、関節液、腹膜液、眼球水晶体液、または粘液を含む。
一態様において、診断方法または検出方法において使用するための抗MASP-1抗体が提供される。さらなる局面において、生物学的サンプル中のMASP-1の存在を検出する方法が提供される。特定の態様において、この方法は、MASP-1への抗MASP-1抗体の結合が許容される条件下で本明細書に記載の抗MASP-1抗体と生物学的サンプルを接触させること、および抗MASP-1抗体とMASP-1の間で複合体が形成されたかどうかを検出することを含む。そのような方法は、インビトロの方法またはインビボの方法であり得る。一態様において、抗MASP-1抗体は、例えばMASP-1が患者を選択するためのバイオマーカーである場合、抗MASP-1抗体を用いる治療に適合する被験体を選択するために使用される。
本発明の抗体を用いて診断され得る例示的な障害は、補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患、例えば、血栓性微小血管症(TMA)、膜性腎症、加齢黄斑変性(AMD)、心筋梗塞、および脳卒中を含む。
特定の態様において、標識された抗MASP-1抗体が提供される。標識は、直接的に検出される標識または部分(例えば、蛍光標識、発色標識、高電子密度標識、化学発光標識、および放射性標識)ならびに、例えば酵素反応または分子間相互作用を通じて間接的に検出される部分(例えば酵素またはリガンド)を含むが、これらに限定されない。例示的な標識は、これらに限定されるものではないが、以下を含む:放射性同位体32P、14C、125I、3Hおよび131I、希土類キレートなどの発蛍光団またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)などのルシフェラーゼ、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ (horseradish peroxidase: HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、単糖オキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなどの複素環オキシダーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化する酵素(例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはミクロペルオキシダーゼ)と連結されたもの、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカル類、ならびにこれらに類するもの。
F.薬学的製剤
本明細書に記載の抗MASP-1抗体の薬学的製剤は、所望の純度を有する抗体を、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体 (Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)) と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製される。薬学的に許容される担体は、概して、用いられる際の用量および濃度ではレシピエントに対して非毒性であり、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む、抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどの、砂糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン類;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはポリエチレングリコール (PEG) などの非イオン系表面活性剤。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体は、さらに、可溶性中性活性型ヒアルロニダーゼ糖タンパク質 (sHASEGP)(例えば、rHuPH20 (HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.) などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質)などの間質性薬剤分散剤を含む。特定の例示的sHASEGPおよびその使用方法は(rHuPH20を含む)、米国特許出願公開第2005/0260186号および第2006/0104968号に記載されている。一局面において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つまたは複数の追加的なグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水溶液抗体製剤は、米国特許第6,171,586号およびWO2006/044908に記載のものを含み、後者の製剤はヒスチジン−アセテート緩衝液を含んでいる。
本明細書の製剤は、治療される特定の適応症のために必要であれば1つより多くの有効成分を含んでもよい。互いに悪影響を与えあわない相補的な活性を伴うものが好ましい。このような有効成分は、意図された目的のために有効である量で、好適に組み合わせられて存在する。
有効成分は、例えば液滴形成(コアセルベーション)手法によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル)に取り込まれてもよいし、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)に取り込まれてもよいし、マクロエマルションに取り込まれてもよい。このような手法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980) に開示されている。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含んだ固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含み、当該マトリクスは例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形態である。
生体内 (in vivo) 投与のために使用される製剤は、通常無菌である。無菌状態は、例えば滅菌ろ過膜を通して濾過することなどにより、容易に達成される。
G.治療的方法および治療用組成物
本明細書で提供される抗MASP-1抗体のいずれも、治療的な方法において使用されてよい。
一局面において、医薬としての使用のための抗MASP-1抗体が提供される。さらなる局面において、補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患の治療における使用のための抗MASP-1抗体が提供される。特定の態様において、治療方法における使用のための抗MASP-1抗体が提供される。特定の態様において、本発明は、補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患を有する個体を治療する方法であって、当該個体に抗MASP-1抗体の有効量を投与する工程を含む方法における使用のための、抗MASP-1抗体を提供する。このような態様の1つにおいて、本方法は、当該個体に少なくとも1種の(例えば後述するような)追加治療剤の有効量を投与する工程をさらに含む。さらなる態様において、本発明は、MASP-1によって媒介される補体レクチン経路活性化の阻害における使用のための抗MASP-1抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、個体においてMASP-1によって媒介される補体レクチン経路活性化を阻害する方法であって、MASP-1によって媒介される補体レクチン経路活性化を阻害するために当該個体に抗MASP-1抗体の有効量を投与する工程を含む方法における使用のための、抗MASP-1抗体を提供する。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。さらなる態様において、本発明は、C3および/またはC4活性化の阻害における使用のための、抗MASP-1抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、個体においてC3および/またはC4活性化を阻害する方法であって、C3および/またはC4活性化を阻害するために当該個体に抗MASP-1抗体の有効量を投与する工程を含む方法における使用のための、抗MASP-1抗体を提供する。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
さらなる局面において、本発明は、医薬の製造または調製における抗MASP-1抗体の使用を提供する。一態様において、医薬は、補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患の治療のためのものである。さらなる態様において、医薬は、補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患を治療する方法であって、補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患を有する個体に医薬の有効量を投与する工程を含む方法における使用のためのものである。このような態様の1つにおいて、本方法は、当該個体に少なくとも1種の(例えば後述するような)追加治療剤の有効量を投与する工程をさらに含む。さらなる態様において、医薬は、MASP-1によって媒介される補体レクチン経路活性化の阻害のためのものである。さらなる態様において、医薬は、個体においてMASP-1によって媒介される補体レクチン経路活性化を阻害する方法であって、MASP-1によって媒介される補体レクチン経路活性化を阻害するために当該個体に医薬の有効量を投与する工程を含む方法における使用のためのものである。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってもよい。さらなる態様において、医薬は、C3および/またはC4活性化のためのものである。さらなる態様において、医薬は、個体におけるC3および/またはC4活性化の方法であって、C3および/またはC4活性化を阻害するために当該個体に医薬の有効量を投与する工程を含む方法における使用のためのものである。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってもよい。
さらなる局面において、本発明は、補体レクチン経路活性化によって引き起こされる疾患を治療するための方法を提供する。一態様において、本方法は、補体レクチン経路活性化によって引き起こされるそのような疾患を有する個体に抗MASP-1抗体の有効量を投与する工程を含む。そのような態様の1つにおいて、本方法は、当該個体に少なくとも1種の(後述するような)追加治療剤の有効量を投与する工程をさらに含む。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってもよい。
さらなる局面において、本発明は、個体においてMASP-1によって媒介される補体レクチン経路活性化を阻害するための方法を提供する。一態様において、本方法は、MASP-1によって媒介される補体レクチン経路活性化を阻害するために個体に抗MASP-1抗体の有効量を投与する工程を含む。一態様において、「個体」は、ヒトである。
さらなる局面において、本発明は、個体においてC3および/またはC4活性化を阻害するための方法を提供する。一態様において、本方法は、C3および/またはC4活性化を阻害するために個体に抗MASP-1抗体の有効量を投与する工程を含む。一態様において、「個体」は、ヒトである。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される抗MASP-1抗体の任意のものを含む、薬学的製剤を提供する(例えば上述の治療的方法の任意のものにおける使用のための)。一態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗MASP-1抗体の任意のものと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗MASP-1抗体の任意のものと、少なくとも1つの(例えば後述するような)追加治療剤とを含む。
本発明の抗体は、療法において、単独または他の剤との組み合わせのどちらでも使用され得る。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与されてもよい。
上述したような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同じまたは別々の製剤に含まれる)、および個別投与を包含し、個別投与の場合、本発明の抗体の投与が追加治療剤の投与に先立って、と同時に、および/または、続いて、行われ得る。一態様において、抗MASP-1抗体の投与および追加治療剤の投与は、互いに、約1か月以内、または約1、2、または3週間以内、または約1、2、3、4、5、または6日以内に行われる。
本発明の抗体(および、任意の追加治療剤)は、非経口投与、肺内投与、および経鼻投与、また局所的処置のために望まれる場合は病巣内投与を含む、任意の好適な手段によって投与され得る。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。投薬は、投与が短期か長期かに一部応じて、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によるなど、任意の好適な経路によってなされ得る。これらに限定されるものではないが、単回投与または種々の時点にわたる反復投与、ボーラス投与、および、パルス注入を含む、種々の投薬スケジュールが本明細書の考慮の内である。
本発明の抗体は、優良医療規範 (good medical practice) に一致したやり方で、製剤化され、投薬され、また投与される。この観点から考慮されるべきファクターは、治療されているその特定の障害、治療されているその特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、障害の原因、剤を送達する部位、投与方法、投与のスケジュール、および医療従事者に公知の他のファクターを含む。抗体は、必ずしもそうでなくてもよいが、任意で、問題の障害を予防するまたは治療するために現に使用されている1つまたは複数の剤とともに、製剤化される。そのような他の剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または治療のタイプ、および上で論じた他のファクターに依存する。これらは通常、本明細書で述べたのと同じ用量および投与経路で、または本明細書で述べた用量の約1から99%で、または経験的/臨床的に適切と判断される任意の用量および任意の経路で、使用される。
疾患の予防または治療のために、本発明の抗体の適切な用量(単独で用いられるときまたは1つまたは複数の他の追加治療剤とともに用いられるとき)は、治療される疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度および経過、抗体が予防的目的で投与されるのか治療的目的で投与されるのか、薬歴、患者の臨床歴および抗体に対する応答、ならびに、主治医の裁量に依存するだろう。抗体は、患者に対して、1回で、または一連の処置にわたって、好適に投与される。疾患のタイプおよび重症度に応じて、例えば、1回または複数回の別々の投与によるにしても連続注入によるにしても、約1μg/kgから15 mg/kg(例えば、0.1mg/kg〜10mg/kg)の抗体が、患者に対する投与のための最初の候補用量とされ得る。1つの典型的な1日用量は、上述したファクターに依存して、約1μg/kgから100mg/kg以上まで、幅があってもよい。数日またはより長くにわたる繰り返しの投与の場合、状況に応じて、治療は通常疾患症状の所望の抑制が起きるまで維持される。抗体の1つの例示的な用量は、約0.05mg/kg から約 10mg/kgの範囲内である。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、もしくは 10mg/kgの1つまたは複数の用量(またはこれらの任意の組み合わせ)が、患者に投与されてもよい。このような用量は、断続的に、例えば1週間毎にまたは3週間毎に(例えば、患者が約2から約20、または例えば約6用量の抗体を受けるように)、投与されてもよい。高い初回負荷用量の後に、1回または複数回の低用量が投与されてもよい。この療法の経過は、従来の手法および測定法によって、容易にモニタリングされる。
上述の製剤または治療的方法のいずれについても、抗MASP-1抗体の代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを用いて実施してもよいことが、理解されよう。
H.製品
本発明の別の局面において、上述の障害の治療、予防、および/または診断に有用な器材を含んだ製品が、提供される。製品は、容器、および当該容器上のラベルまたは当該容器に付属する添付文書を含む。好ましい容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器類は、ガラスやプラスチックなどの、様々な材料から形成されていてよい。容器は組成物を単体で保持してもよいし、症状の治療、予防、および/または診断のために有効な別の組成物と組み合わせて保持してもよく、また、無菌的なアクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって突き通すことのできるストッパーを有する静脈内投与用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの有効成分は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が選ばれた症状を治療するために使用されるものであることを示す。さらに製品は、(a)第一の容器であって、その中に収められた本発明の抗体を含む組成物を伴う、第一の容器;および、(b)第二の容器であって、その中に収められたさらなる細胞傷害剤またはそれ以外で治療的な剤を含む組成物を伴う、第二の容器を含んでもよい。本発明のこの態様における製品は、さらに、組成物が特定の症状を治療するために使用され得ることを示す、添付文書を含んでもよい。あるいはまたは加えて、製品はさらに、注射用制菌水 (BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液などの、薬学的に許容される緩衝液を含む、第二の(または第三の)容器を含んでもよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジなどの、他の商業的観点またはユーザの立場から望ましい器材をさらに含んでもよい。
上述の製品のいずれについても、抗MASP-1抗体の代わりにまたはそれに追加して、本発明のイムノコンジュゲートを含んでもよいことが、理解されよう。
III.実施例
以下は、本発明の方法および組成物の実施例である。上述の一般的な記載に照らし、種々の他の態様が実施され得ることが、理解されるであろう。
実施例1
組換えヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP)、ヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP S646A)、およびヒトMASP-3(CCP1-CCP2-SP S664A)の発現および精製
N末端にFlagタグと融合させたヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP)(配列番号:15)を、FreeStyle293-F細胞株(Thermo Fisher)を用いて一過性に発現させた。ヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP)を発現する培養上清を、抗Flag M2アフィニティレジン(Sigma)を充填したカラムにアプライし、Flagペプチド(Sigma)で溶出した。ヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP)を含むフラクションを回収し、続いて、1×PBSで平衡化したSuperdex 200ゲルろ過カラム(GE healthcare)に供した。次いで、ヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP)を含むフラクションをプールし、-80℃で保存した。
自己消化を防ぐために、ヒトMASP-1の646位のSerをAlaに置換し、MASP-3の664位のSerをAlaに置換した。Ser646Ala変異を保有するヒトMASP-1 CCP1-CCP2-SPドメインをヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP S646A)(配列番号:16)と名付け、Ser664Ala変異を保有するヒトMASP-3 CCP1-CCP2-SPドメインをヒトMASP-3(CCP1-CCP2-SP S664A)(配列番号:17)と名付けた。MASP-1の646位は配列番号:15および16のアミノ酸376位に対応し、ヒトMASP-3の664位は配列番号:17のアミノ酸394位に対応する。N末端にFlagをタグ付けしたヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP S646A)およびN末端にFlagをタグ付けしたヒトMASP-3(CCP1-CCP2-SP S664A)の発現および精製は、N末端にFlagをタグ付けしたヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP)と全く同じように実施した。
実施例2
組換え抗体の発現および精製
別段示さない限り、組換え抗体は、FreeStyle293-F細胞株(Thermo Fisher)を用いて、一過性に発現させた。抗体を発現する条件培地からの精製は、プロテインAを用いる従来法によって行った。必要に応じて、ゲルろ過をさらに実行した。
実施例3
抗MASP-1抗体の作製
3.1 抗体スクリーニング
以下のように、抗MASP-1抗体を調製し、選択し、アッセイした:
12から16週齢のNZWウサギに、ヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP)またはヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP S646A)(50〜100 μg/投与/ウサギ)を皮内に免疫接種した。この投与を1ヶ月にわたって3回繰り返した。最後の免疫接種の1週間後に、免疫接種したウサギから脾臓および血液を収集した。抗原特異的B細胞を、標識化した抗原で染色し、FCMセルソーター(FACS aria III, BD)で選別し、25,000細胞/ウェルのEL4細胞(European Collection of Cell Cultures)および20倍に希釈した活性化ウサギT細胞条件培地と一緒に1細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートにプレーティングして、7〜12日間培養した。EL4細胞をマイトマイシンC(Sigma, Cat No. M4287)で2時間処理し、予め3回洗浄した。フィトヘマグルチニン-M(Roche, Cat No. 1 1082132-001)、ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(Sigma, Cat No. P1585)、および2%FBSを含むRPMI-1640中でウサギ胸腺細胞を培養することによって、活性化ウサギT細胞条件培地を調製した。培養後、B細胞培養上清をさらなる分析のために収集し、ペレットを凍結保存した。
ELISAアッセイを用いて、B細胞培養上清中の抗体の特異性を試験した。ストレプトアビジン(GeneScript, Cat No. Z02043)を、PBS中50 nMで、384ウェルMAXISorp(Nunc, Cat No. 164688)の上に、室温にて一晩コーティングした。次いでプレートを、5倍に希釈したBlocking One(Nacalai Tesque, Cat No. 03953-95)でブロックした。ヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP S646A)をNHS-PEG4-ビオチン(PIERCE, Cat No. 21329)で標識し、ブロックしたELISAプレートに添加し、1時間インキュベートし、0.05%Tween20を含むPBSで洗浄した。B細胞培養上清をELISAプレートに添加し、1時間インキュベートし、洗浄した。ヤギ抗ウサギIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ(BETHYL, Cat No. A120-111P)によって、続いてABTS(KPL, Cat No. 50-66-06)の添加によって、結合を検出した。
合計15,524のB細胞株をヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP S646A)に対する結合についてスクリーニングし、94の細胞株を選択し、MTA0095〜0188と名付けた。ZR-96 Quick-RNAキット(ZYMO RESEARCH, Cat No. R1053)を用いることによって、それらのRNAを凍結保存した細胞ペレットから精製した。それらの抗体重鎖可変領域のDNAを逆転写PCRによって増幅し、Fcγ受容体(Fc gamma receptor:FcγR)に無反応な改変ヒトIgG4重鎖定常領域であるF760G4(配列番号:18)をコードするDNAと再結合させた。それらの抗体軽鎖可変領域のDNAを逆転写PCRによって増幅し、改変ヒトκ軽鎖定常領域であるk0MTC(配列番号:19)をコードするDNAと再結合させた。クローニングした抗体をFreeStyle(商標)293-F細胞(Invitrogen)において発現させ、培養上清から精製して、機能活性を評価した。ヒトMASP-1に対するキメラモノクローナル抗体の阻害活性を、後述(実施例4)のように、hC4c(ヒトC4c)沈着アッセイの阻害を試験することによって評価した。
3.2 ヒトMASP-1およびヒトMASP-3に対する交差反応性
ELISAアッセイを用いて、ヒトMASP-1およびヒトMASP-3に対して3.1において作製したキメラモノクローナル抗体の交差反応性を確認した。ヤギ抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Thermo Scientific, H10500)をPBS(-)で1 μg/mlに希釈し、384ウェル MAXISorpプレート(Nunc, Cat No. 164688)に添加した。プレートを室温にて1時間インキュベートし、5倍に希釈したBlocking One(Nacalai Tesque, Cat No. 03953-95)でブロックした。プレートを1時間インキュベートし、洗浄し、抗MASP-1抗体を添加し、1時間インキュベートした。ヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP S646A)またはヒトMASP-3(CCP1-CCP2-SP S664A)をNHS-PEG4-ビオチン(PIERCE, Cat No. 21329)で標識した。インキュベーション後、プレートを洗浄し、8 nMの標識化抗原を添加し、1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを洗浄し、ストレプトアビジン-HRPコンジュゲート(Thermo Scientific 21130)を添加した。1時間インキュベーション後、ビオチン化抗原の結合をABTS(KPL, Cat No. 50-66-06)の添加によって検出した。表5に挙げた抗MASP-1モノクローナル抗体をMASP-1特異的抗体として選択し、さらなる分析に用いた。選択した抗体の可変領域およびHVRの配列をそれぞれ、表6および7に示す。
(表5)ヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP S646A)に対する選択したモノクローナル抗体の特異的結合
Figure 2020515242
値は、バックグラウンド減算後の405 nmでの吸光度を示す。
(表6)選択したモノクローナル抗体の可変領域の配列
Figure 2020515242
(表7)選択した抗体のHVRの配列
Figure 2020515242
実施例4
4.1 抗MASP-1モノクローナル抗体によるレクチン経路の阻害
レクチン経路(LP)は、マンナン結合レクチン(MBL)のマンナンへの結合によって活性化される。MBLは続いて、MASPと会合する。いかなる理論にも束縛されることを意図しないが、結合すると、MASP-1は最初に自己活性化し、次いでMASP-2およびMASP-3を活性化する。活性化MASP-2はC4をC4a、C4b、およびC4cに切断し、活性化MASP-1およびMASP-2はC2をC2aおよびC2bに切断する。C4a断片およびC2b断片の会合は、C3転換酵素C4bC2aの形成をもたらす。C4bC2aはC3をC3aおよびC3bに切断し、続いて、因子IによってC3bをC3cおよびC3dに切断する。実施例3で得られた抗MASP-1キメラmAbを、C4cまたはC3c ELISAアッセイによって補体系のレクチン経路の阻害について試験した。マンナン(20 μg/mL)を4℃にて一晩96ウェルプレート上にコーティングした。プレートを、0.5%ウシ血清アルブミン(Roche Diagnostics)を含むTBSブロッキングバッファー(Block Ace Powder, DS Pharma Biomedical)で37℃にて2時間ブロックした。55 μLの正常ヒト血清(4%)(Biopredic, SER019)を55 μLの希釈抗MASP-1 mAbと96ウェルプレート中で混合し、振とう機で25℃にて1時間インキュベートした。抗MASP-1 mabを含む血清サンプルをマンナンでコーティングしたプレートに移し、37℃にて1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、100 μLのウサギ抗ヒトC4c(Dako)を各ウェルに添加し、室温で1時間反応させた。次いで、プレートを洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ(BETHYL)によって、続いて、ABTS(KPL)の添加によって、C4c沈着を検出した。図3は、抗MASP-1 mAb:MAS0102dd、MAS0114bb、MAS0116aa、MAS0154dd、およびMAS0177hhが、ヒト C4c沈着を阻害したことを示すデータを示す。同様に、これらの抗体はカニクイザルC3c沈着も阻害した(図3B)。MAS0116aa以外の抗体は全て、マウス C4c沈着も同様に阻害した(図3C)。
4.2 抗MASP-1 mAbのIC 50値
4.1に記載したヒト血清を用いるC4c ELISAアッセイの結果から、各キメラモノクローナル抗体のIC50値をGraphPad Prism(登録商標)によって算出した。算出したIC50値を表8に示す。
(表8)
Figure 2020515242
4.3 抗MASP-1 mAbの安定性
抗MASP-1キメラmAb:MAS0141aaをPBS中で40℃にて2週間インキュベートし、抗体の安定性を評価した。2週間のインキュベーション後、カニクイザル C3c ELISAアッセイによって、MAS0141aaを補体系のレクチン経路の阻害について試験した。図4に示すように、MAS0141aaは、インキュベーション後のカニクイザルC3c沈着を有意に阻害した。インキュベーションの前と後の間でMAS0141aaの中和活性に差はなかった。
4.4 抗MASP-1 mAbによるMASP-1の活性型の酵素活性の阻害
抗MASP-1 mAb(MAS0102ddおよびMAS0116aa)を、組換えヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP)(配列番号:15)の阻害について、ペプチド切断アッセイにより試験した。Boc-VPR-AMCをMASP-1の人工蛍光発生基質として用いた。25 μLの組換え活性型ヒトMASP-1(CCP1-CCP2-SP)(0.4 μg/mL)を、25 μLの希釈mAbおよび基質として50 μL のBoc-VPR-AMC(0.2mM, R&D system)と96ウェルプレート(MS-8596K, Sumitomo Bakelite)中で混合した。プレートを37℃にて30分間インキュベートし、相対蛍光単位(relative fluorescence unit:RFU)を380 nmの励起波長および460 nmの発光波長で測定した。図5は、MAS0102ddおよびMAS0116aaの両方がヒトMASP-1の活性型を中和できることを表す。
実施例5
C57BLマウスにおける抗MASP1 mAbのインビボ試験
レクチン経路のインビボでの中和を、C57BLマウス(In Vivos, Singapore)において抗MASP-1 mAbの投与後に評価した。
実施例3で得たキメラmAb MAS0154ddからMAS0154dd01-mF18を作製した。MAS0154dd01-mF18の重鎖可変領域はMAS0154ddと同じであった。MAS0154dd(配列番号:29)の軽鎖可変領域中の80位にあるCysをSerで置換して、軽鎖可変領域のフレームワーク3においてCys残基を取り除くことによって、MAS0154dd01-mF18(配列番号:68)の軽鎖可変領域を作製した。MAS0154ddの重鎖および軽鎖定常領域をそれぞれ、mF18(配列番号:69)およびmk1(配列番号:70)に変更した。
MAS0154-mF18(3 mg/ml)を10 ml/kgの用量で尾静脈内に1回投与した。血液を投与から1日、3日、および7日後に収集した。収集した血液を直ちに14,000 rpmおよび4℃にて10分間遠心分離し、血漿を分離した。分離した血漿をアッセイ前に冷凍庫中で-80℃にて保存した。C4活性化を測定するために、96ウェルプレートを4℃にて一晩マンナン(20 μg/mL)でコーティングし、続いて、0.5%ウシ血清アルブミン(Roche Diagnostics)を含むTBSブロッキングバッファー(Block Ace Powder, DS Pharma Biomedical)で37℃にて2時間ブロックした。50 μLのマウス血漿サンプル(0.5%)をマンナンでコーティングしたプレート内に移し、37℃にて1時間インキュベートした。プレートの洗浄後、社内でビオチン化したウサギ抗C4c抗体(Dako)、続いてストレプトアビジン-HRP、およびABTS(KPL)による発色を用いて、C4c沈着を検出した。図6に示すように、抗MASP-1 mab MAS0154-mF18はマウスにおいてレクチン経路活性を阻害した。
前述の発明は、明確な理解を助ける目的のもと、実例および例示を用いて詳細に記載したが、本明細書における記載および例示は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用したすべての特許文献および科学文献の開示は、その全体にわたって、参照により明示的に本明細書に組み入れられる。

Claims (15)

  1. MASP-1に特異的に結合する抗MASP-1抗体。
  2. MASP-1に結合するが、MASP-3に結合しない、抗MASP-1抗体。
  3. MASP-1のセリンプロテアーゼドメイン結合する、抗MASP-1抗体。
  4. MASP-1活性を阻害する、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗MASP-1抗体。
  5. MASP-3活性を阻害しない、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗MASP-1抗体。
  6. MASP-1活性がMASP-1媒介性補体レクチン経路活性化であり、MASP-3活性がMASP-3媒介性補体レクチン経路活性化である、請求項5に記載の抗MASP-1抗体。
  7. (a)配列番号:32のHVR-H1配列、配列番号:33のHVR-H2配列、配列番号:34のHVR-H3配列、配列番号:35のHVR-L1配列、配列番号:36のHVR-L2配列、および配列番号:37のHVR-L3配列を含む抗体;
    (b)配列番号:38のHVR-H1配列、配列番号:39のHVR-H2配列、配列番号:40のHVR-H3配列、配列番号:41のHVR-L1配列、配列番号:42のHVR-L2配列、および配列番号:43のHVR-L3配列を含む抗体;
    (c)配列番号:44のHVR-H1配列、配列番号:45のHVR-H2配列、配列番号:46のHVR-H3配列、配列番号:47のHVR-L1配列、配列番号:48のHVR-L2配列、および配列番号:49のHVR-L3配列を含む抗体;
    (d)配列番号:50のHVR-H1配列、配列番号:51のHVR-H2配列、配列番号:52のHVR-H3配列、配列番号:53のHVR-L1配列、配列番号:54のHVR-L2配列、および配列番号:55のHVR-L3配列を含む抗体;
    (e)配列番号:56のHVR-H1配列、配列番号:57のHVR-H2配列、配列番号:58のHVR-H3配列、配列番号:59のHVR-L1配列、配列番号:60のHVR-L2配列、および配列番号:61のHVR-L3配列を含む抗体;ならびに
    (f)配列番号:62のHVR-H1配列、配列番号:63のHVR-H2配列、配列番号:64のHVR-H3配列、配列番号:65のHVR-L1配列、配列番号:66のHVR-L2配列、および配列番号:67のHVR-L3配列を含む抗体
    からなる群より選択される抗体と、MASP-1への結合に関して競合する、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗MASP-1抗体。
  8. (a)配列番号:32のHVR-H1配列、配列番号:33のHVR-H2配列、配列番号:34のHVR-H3配列、配列番号:35のHVR-L1配列、配列番号:36のHVR-L2配列、および配列番号:37のHVR-L3配列を含む抗体;
    (b)配列番号:38のHVR-H1配列、配列番号:39のHVR-H2配列、配列番号:40のHVR-H3配列、配列番号:41のHVR-L1配列、配列番号:42のHVR-L2配列、および配列番号:43のHVR-L3配列を含む抗体;
    (c)配列番号:44のHVR-H1配列、配列番号:45のHVR-H2配列、配列番号:46のHVR-H3配列、配列番号:47のHVR-L1配列、配列番号:48のHVR-L2配列、および配列番号:49のHVR-L3配列を含む抗体;
    (d)配列番号:50のHVR-H1配列、配列番号:51のHVR-H2配列、配列番号:52のHVR-H3配列、配列番号:53のHVR-L1配列、配列番号:54のHVR-L2配列、および配列番号:55のHVR-L3配列を含む抗体;
    (e)配列番号:56のHVR-H1配列、配列番号:57のHVR-H2配列、配列番号:58のHVR-H3配列、配列番号:59のHVR-L1配列、配列番号:60のHVR-L2配列、および配列番号:61のHVR-L3配列を含む抗体;ならびに
    (f)配列番号:62のHVR-H1配列、配列番号:63のHVR-H2配列、配列番号:64のHVR-H3配列、配列番号:65のHVR-L1配列、配列番号:66のHVR-L2配列、および配列番号:67のHVR-L3配列を含む抗体
    からなる群より選択される参照抗体が結合するのと同じエピトープに結合する、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗MASP-1抗体。
  9. ヒト MASP-1、カニクイザル MASP-1、および/またはマウスMASP-1に結合し、それらの活性を阻害することができる、請求項1から8のいずれか一項に記載の抗MASP-1抗体。
  10. 0.35 μg/mL未満のIC 50でC3および/またはC4活性化を阻害する、請求項1から9のいずれか一項に記載の抗MASP-1抗体。
  11. ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、請求項1から10のいずれか一項に記載の抗MASP-1抗体。
  12. 請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
  13. 請求項1から11のいずれか一項に記載の抗体および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
  14. 血清中でC3および/またはC4活性化を阻害する方法であって、抗体のMASP-1に対する結合が許容される条件下で、マンナンとMBL(マンナン結合レクチン)、MASP-1、C2、およびC4を含む生物学的サンプルとを、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の抗体と接触させる工程を含む、方法。
  15. MASP-1の存在を検出する方法であって、
    (a)抗体のMASP-1に対する結合が許容される条件下で請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の抗体と生物学的サンプルを接触させる工程;および
    (b)抗体とMASP-1との間で複合体が形成されたかどうかを検出する工程
    を含む、方法。
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