様々な図面内の類似の参照記号は、類似の要素を示す。
本明細書では、陽子又はイオン治療システムなどの、システムにおいて使用するための粒子加速器の一例について説明する。システムは、ガントリー上に取り付けられた粒子加速器−−この例では、シンクロサイクロトロン−−を含む。ガントリーは、以下に詳述するように、加速器を患者の位置の周りに回転させることを可能にする。幾つかの実施例では、ガントリーは鋼製であり、患者の両側に配設された2つの軸受それぞれに回転するように取り付けられた2つの脚部を有する。粒子加速器は、患者が横たわる治療領域を跨設するに十分に長い鉄骨トラスによって支持されており、鉄骨トラスは、その両端においてガントリーの回転式脚部に安定して取り付けられている。患者の周りをガントリーが回転する結果、粒子加速器も回転する。
例示的な一実施例では、粒子加速器(例えば、シンクロサイクロトロン)は、磁場(B)を発生する電流を伝導するための超電導コイルを保持する低温保持装置を備える。この例では、低温保持装置は、コイルを超電導温度、例えば、4°ケルビン(K)に維持するために液体ヘリウム(He)を使用する。磁気ヨークは、低温保持装置に隣接し(例えば、周りにあり)、粒子が加速されるキャビティを画成する。低温保持装置は、ストラップ又は同様のものを通じて磁気ヨークに取り付けられる。このように取り付けること、及び低温保持装置の内側に超電導コイルを取り付けることで、超電導コイルの移動は制限されるが、コイルの移動が完全に妨げられるわけではない。例えば、幾つかの実施例では、ガントリーが回転している間の重力による引っ張る力の結果、超電導コイルは、わずかな量(例えば、幾つかの場合において数10ミリメートル)だけ移動可能である。以下で説明されているように、この移動は、引き出しチャネルで受ける粒子ビームのエネルギーの量に影響を及ぼし、それにより、粒子加速器の出力に影響を及ぼし得る。
この例示的な実施例では、粒子加速器は、プラズマ柱をキャビティに供給するために粒子源(例えば、ペニングイオンゲージ−−PIG源)を備える。水素ガスは電離されてプラズマ柱を生成する。電圧源は、高周波(RF)電圧をキャビティに印加して粒子をプラズマ柱から加速する。指摘されているように、この例では、粒子加速器はシンクロサイクロトロンである。したがって、プラズマ柱から粒子を引き出すときに、粒子に対する相対論的効果(例えば、粒子質量が増加する)を考慮してRF電圧が一定範囲の周波数にわたって掃引される。コイルによって発生した磁場により、プラズマ柱から加速された粒子はキャビティ内の軌道上で加速する。磁場再生器は、キャビティの内側の既存の磁場を調整するようにキャビティ内に位置決めされ、それによりプラズマ柱から加速された粒子の連続的軌道の配置が変更され、これにより最終的に粒子がヨーク内を通る引き出しチャネルに出力される。再生器は、キャビティ内のある地点における磁場を増大し(例えば、キャビティのある領域において磁場「バンプ」を作り出し)、これにより、その地点の粒子のそれぞれの連続的軌道が引き出しチャネルの入口点に向かって外向きに歳差運動し、最終的に引き出しチャネルに到達することができる。引き出しチャネルは、プラズマ柱から加速された粒子を受け、受けた粒子をキャビティから出力する。
超電導コイルの移動は、キャビティの内側の軌道の配置に影響を及ぼし得る。例えば、一方の方向に移動すると、より低いエネルギーの軌道は再生器に衝突し得るが、他方の方向に移動すると、より高いエネルギーの軌道は再生器に衝突し得る(粒子軌道エネルギーは、発生元のプラズマ柱からの径方向距離に比例する)。したがって、過度に低いエネルギーの軌道が再生器に衝突する場合、粒子ビームは、上で指摘されているように、引き出しチャネルの内端にぶつかるものとしてよい。過度に高いエネルギーの軌道が再生器に衝突する場合、粒子ビームは、上で指摘されているように、引き出しチャネルの外端にぶつかるものとしてよい。本明細書で説明されている例示的なシステムでは、回転(例えば、重力の効果)によって生じる超電導コイルの運動の結果であるこれらの効果を補償する技術を使用する。これらの技術の要約を以下に提示し、その後、これらの技術が実装され得る例示的な粒子治療システムの説明を、さらに、これらの様々な技術の詳細な説明を続ける。
例示的な一技術では、構造体が、引き出しチャネルの近く(例えば、入口又は内側)に組み込まれる。構造体は、車輪に似た形状を有する回転可能な変厚くさびであってよい。構造体は、粒子ビームのエネルギーを吸収し、それによってより低いエネルギーの(例えば、適切なエネルギーを与えられた)ビームを引き出しチャネルに通すことができる。構造体のより厚い部分は、構造体のより薄い部分に比べて多くのエネルギーを吸収する。幾つかの実施例では、構造体は、粒子ビームがエネルギー吸収なしで通過することが意図されている地点にはいっさい物質を含み得ない。あるいは、構造体は、ビーム経路から出て移動可能であってもよい。したがって、この構造体では、ビームのエネルギーの量を様々な変化させて調整することができる。幾つかの実施例では、構造体は、粒子加速器の回転位置に基づき制御される。例えば、ガントリーの位置が決定され、その位置を使用してエネルギー吸収構造体の回転位置を制御することができる。理想的には、構造体は、ビームの散乱を最小限度量に抑えるが、実際には、存在し、許容可能である散乱の量があり得る。
別の例示的な技術では、キャビティ内の再生器の物理的位置は、超電導コイルの移動を補償するように調整可能であるものとしてよい。例えば、コンピュータ制御アクチュエータは、例えば、粒子加速器の回転位置に基づき、キャビティ内の再生器の位置を調整するために使用され得る。再生器の位置をそうして調整することによって、再生器から結果としてなされる磁場への適切な調整が、粒子加速器の回転位置に関係なく適切な粒子軌道に衝突するように再生器を位置決めすることが可能であるものとしてよい。
再生器は、典型的には、強磁性体から作られる。したがって、1つ又は複数の磁気シムを使用して再生器の磁気強度を調整することが可能である。したがって、別の例示的な技術では、再生器の磁場を調整する(例えば、再生器によって引き起こされる磁場バンプを増加又は低減する)か、又は再生器を物理的に移動することなく再生器によって引き起こされる磁場摂動の有効な配置を移動することが可能である。例えば、超電導コイルの移動の結果、より低いエネルギーの軌道が再生器に衝突する場合、再生器の磁場は、より高いエネルギーの軌道がそれに達するまでビーム軌道を摂動し始めないように低減され得る。また、これは、軌道が再生器による影響を受ける前により高いエネルギーを獲得するように同じ全体的強度(ピーク場)を維持しながら径方向外向きに効果的に移動させることが可能である。同様に、超電導コイルの移動の結果、より高いエネルギーの軌道が再生器に衝突する場合、再生器の強度は、より低いエネルギーにおける軌道と相互作用するように高められるか、又は径方向内向きに位置決めされ得る。例示的な一実施例では、磁場は、再生器の近くにある磁気ヨーク内のスロット/穴内で磁気シム(例えば、金属プランジャ)を移動することによって調整される。磁気シムは、強磁性体から作られ、再生器との近接度が再生器の磁場に影響を及ぼす。磁気シムを動かして再生器に近づけると(例えば、スロットのさらに内側)、再生器によって引き起こされる磁場が増加し、磁気シムを動かして再生器から遠ざけると(例えば、スロット内の上方、又は外側)、再生器によって引き起こされる磁場は減少する。別の例では、磁気シムは、再生器の磁気中心よりもサイクロトロンの中心に近い径方向位置に置かれ得る。シムが、加速平面に近づけられると、これは、ピーク磁場強度を顕著に変化させることなく再生器磁場摂動の実効中心を移動する。磁気シムは、例えば、粒子加速器の回転位置に基づき、その位置を変化させるようにコンピュータ制御され得る。
幾つかの実施例では、複数の磁気シムが使用され得る。さらに他の実施例では、小型磁石は磁気シムとして使用され、中を通る電流は例えば、粒子加速器の回転位置に基づき制御され得る。
別の例では、低温保持装置全体をヨークに対して移動し、超電導コイルの移動を補償することができる。例えば、低温保持装置の移動は、粒子のどの軌道が再生器に衝突するかに影響を及ぼし得る。したがって、超電導コイルの移動が、一方向に行われる場合、低温保持装置は、その移動を補償する方向に移動され、超電導コイルの適切な位置変更を行わせることができる。
粒子加速器内の粒子ビームのエネルギーを調整するための前述の技術は、単一の粒子加速器内で個別に使用され得るか、又はこれらの技術のうち2つ又はそれ以上が、単一の粒子加速器内で適切に組み合わせて使用され得る。前述の技術が使用され得る粒子治療システムの一例を以下に提示する。
図1を参照すると、荷電粒子線治療システム500は、ビーム発生粒子加速器502を備えており、ビーム発生粒子加速器502の重量及び大きさは、ビーム発生粒子加速器502の出力が加速器ハウジングから患者50に向かう直線方向に(すなわち、実質的に直接)方向づけられている状態において、向けられた出力を有する回転式ガントリー504に取り付け可能とされる大きさである。
幾つかの実施例では、鋼製ガントリー504は、2つの脚部508、510を有しており、2つの脚部508、510は、患者の両側に配設された2つの軸受512、514それぞれに回転するように取り付けられている。ビーム発生粒子加速器502は、患者が横たわる治療領域518を跨設するに十分に長い(患者の所望の標的領域をビームライン上に維持した状態で空間内において背の高いヒトを完全に回転させることができるように、例えば当該背の高いヒトの身長の2倍の長さとされる)鉄骨トラス516によって支持されており、その両端においてガントリーの回転式脚部に安定に取り付けられている。
幾つかの例では、ガントリー504の回転が360°未満の範囲520、例えば、約180°に制限され、これにより、治療システムを収納するボールト524の壁から患者治療領域内部に至るまで床522を延在させることができる。また、ガントリー504の回転範囲520が制限されることによって、患者治療領域の外側に居る人々を放射線から遮蔽するための壁のうち幾つかの壁の必要な厚さを薄くすることができる。ガントリー504の回転範囲520を180°とすれば、すべての治療アプローチ角に対応するのに十分であるが、移動範囲を拡大することは優位である。例えば、回転範囲520は、180°〜330°としても、依然として治療のための床面積に対するクリアランスを確保することができる。
ガントリー504の水平回転軸線532は、患者と療法士とが治療システムをインタラクティブに操作する場所の床より公称1メートル上方に配置されている。この床は、荷電粒子線治療システム500を遮蔽しているボールト524の最下床より約3メートル上方に位置決めされている。ビーム発生粒子加速器502は、治療ビームを回転軸線の下方から照射するために高床の下方において旋回可能とされる。患者用カウチは、ガントリー504の回転軸線532に対して略平行とされる水平面内において移動及び回転する。カウチは、このような構成によって水平面内において約270°の範囲534にわたって回転可能とされる。ガントリー504及び患者の回転範囲520、534と自由度との組合せによって、療法士は、ビームについての任意のアプローチ角を実質的に選択することができる。必要に応じて、患者を反対の向きでカウチに載置することによって、想定し得るすべての角度が利用可能となる。
幾つかの実施例では、ビーム発生粒子加速器502は、超高磁界超電導電磁構造体を有しているシンクロサイクロトロンを利用する。所定の運動エネルギーを具備する荷電粒子の曲率半径は、当該荷電粒子に印加される磁場の増大に正比例して小さくなるので、超高磁界磁場超電導磁気構造体を利用することによって、加速器を小型かつ軽量にすることができる。シンクロサイクロトロンは、回転角度が一様とされる磁場であって、半径が大きくなるに従って強度が低下する磁場を利用する。このような磁場形状は、磁場の規模に関係なく実現されるので、シンクロサイクロトロン内で利用可能とされる磁場の強度(ひいては、固定された半径において結果として得られる粒子エネルギー)についての上限は理論上存在しない。
非常に高い磁場の存在下において、超電導体はその超電導特性を失う。非常に高い磁場を実現するために、高性能な超電導線からなる巻線が利用される。
超電導体は、一般に、その超電導特性が得られる低温状態に至るまで冷却される必要がある。本明細書で説明されている幾つかの例では、超電導コイル巻線を絶対零度近傍の温度に冷却するために、冷凍機が利用される。冷凍機を利用することによって、複雑性及びコストが低減される。
シンクロサイクロトロンは、ビームが患者に対して直接生成されるようにガントリーに支持されている。ガントリーは、患者の体内の点又は患者の近傍の点(アイソセンター540)を含む水平回転軸線を中心としてサイクロトロンを回転させることができる。水平回転軸線に対して平行とされる分割式トラスが、サイクロトロンをその両側で支持している。
ガントリーの回転範囲は、制限されているので、アイソセンターを中心とする広い領域内に患者支持領域を収容することができる。アイソセンターを中心として広範囲にわたって床を延在させることができるので、患者支持台は、アイソセンターを通過する垂直軸線542に対して相対的に移動するように、かつ垂直軸線542を中心として回転するように位置決めされ、ガントリーの回転と患者支持台の移動及び回転との組合せによって、患者の任意の部位に向けて任意の角度でビームを方向づけることができる。2つのガントリーアームは、背の高い患者の身長の2倍を超える長さで離隔されているので、高床の上方に位置する水平面内において、患者を乗せたカウチを回転及び並進運動させることができる。
ガントリーの回転角度を制限することによって、治療室を囲む壁のうち少なくとも1つの壁の厚さを低減することができる。一般にコンクリートから構成された厚肉の壁によって、治療室の外に居るヒトは放射線から防護される。陽子ビームを阻止するための下流側の壁は、同等のレベルの防護を実現するために、治療室の反対側の壁の約2倍の厚さとされる場合がある。ガントリーの回転を制限することによって、治療室を3つの側面においてアースグレード(earth grade)より低く設定することができる一方、占有領域を最も薄肉の壁に隣接させることができるので、治療室を建築するコストを低減することができる。
図1に示されている例示的な実施例では、超電導シンクロサイクロトロン502は、シンクロサイクロトロンの磁極間隙において8.8テスラのピーク磁場で動作する。シンクロサイクロトロンは、250MeVのエネルギーを有する陽子ビームを発生する。他の実施例では、場の強度は、4から20テスラ又は6から20テスラの範囲内とすることが可能であり、陽子エネルギーは、150から300MeVの範囲内とすることが可能である。
この例で説明されている放射線治療システムは陽子放射線治療に使用されるが、同じ原理及び詳細は、重イオン(イオン)治療システムで使用するための類似のシステムにおいて適用され得る。
図2、図3、図4、図5、及び図6に示されているように、例示的なシンクロサイクロトロン10(例えば、図1の502)は、粒子源90を収容する磁石システム12、高周波駆動システム91、及びビーム引き出しシステム38を含む。磁石システムによって確立される磁場は、環状超電導コイル40、42の分割されたペアと成形された強磁性(例えば、低炭素鋼)磁極面44、46のペアとの組合せを使用して、内部に存在する陽子ビームの集束を維持するのに適切な形状を有する。
2つの超電導磁気コイルは、共通軸47を中心とし、この軸に沿って相隔てて並ぶ。図7及び図8に示されているように、コイルは、撚り合わせたケーブルインチャネル導体形態で配設される直径0.8mmのNb3Sn系超電導線48(最初に、銅シースによって囲まれているニオブスズコアを備える)から形成される。7本の個別の線がまとめられてケーブルにされた後、これらは加熱され、ワイヤ状の最終(脆い)超電導体を形成する反応を引き起こす。材料が反応した後、ワイヤは銅チャネル(外径3.18×2.54mm及び内径2.08×2.08mm)内にハンダ付けされ及び、絶縁体52(この例では、ガラス繊維織布)で覆われる。次いで、ワイヤ53を収容する銅チャネルコイル状に巻き取られ、これは8.55cm×19.02cmの矩形の断面を有し、26の層を有し、層毎に49回の巻き数を有する。次いで、この巻きコイルは、エポキシ化合物で真空含浸される。完成したコイルは、環状ステンレスリバースボビン56上に取り付けられる。ヒーターブランケット55は間隔をあけて巻線の層内に入れられ、磁石クエンチが生じた場合にアセンブリを保護する。
次いで、コイル全体を銅板で覆って熱伝導性及び機械的安定性を付与し、次いで、追加エポキシ層内に収容する。コイルの事前圧縮は、ステンレス製リバースボビンを加熱し、コイルをリバースボビン内に嵌め込むことによって行われ得る。リバースボビンの内径は、質量全体が4Kまで冷却されたときに、リバースボビンがコイルと接触したままになり、ある程度の圧縮をもたらすように選択される。ステンレス製のリバースボビンを約50℃に加熱し、コイルを100度のケルビン温度でコイルを嵌合すると、これが達成され得る。
コイルの幾何学的形状は、コイルを矩形リバースボビン56内に取り付けて、コイルが通電されたときに発生する歪みを起こす力に抗して作用する復元力60を与えることによって維持される。図5に示されているように、コイル位置は、一組の高温−低温支持ストラップ402、404、406を使用して磁石ヨーク及び低温保持装置に対して維持される。低温質量を細いストラップで支持することにより、剛体支持システムによって低温質量に与えられる熱漏洩が低減される。ストラップは、磁石が搭載された状態でガントリーを回転するときにコイルにかかる変化する重力に耐えるように構成される。これらは、重力と、磁気ヨークに対して完全対称位置から摂動したときにコイルによって生じる大きな偏心力との複合効果に耐える。それに加えて、リンクは、位置が変わった場合にガントリーが加減速する際にコイルに与えられる動的な力を低減する働きをする。それぞれの高温−低温支持体は、1つのS2ガラス繊維リンクと1つの炭素繊維リンクとを含む。幾つかの実施例では、炭素繊維リンクは、高温のヨークと中間温度(50〜70K)との間のピン上で支持され、S2ガラス繊維リンク408は、中間温度ピン及び低温質量に取り付けられたピン上で支持される。それぞれのリンクは長さ5cm(ピン中心からピン中心までの間)、幅17mmである。リンクの厚さは、9mmである。それぞれのピンは、高張力ステンレス鋼から作られ、直径は40mmである。
図3を参照すると、半径の関数としての場の強度プロファイルは、大部分がコイルの幾何学的形状及び磁極面の形状の選択によって決定され、透磁性ヨーク材料の磁極面44、46は、磁場の形状を微調整して加速時に粒子ビームの収束を確実に保つように、起伏が付けられ得る。
超電導コイルは、限定された一組の支持点71、73を除き、コイル構造体の周りに自由空間を設ける真空にされた環状アルミニウム又はステンレス製低温保持槽70の内側にコイルアセンブリ(コイル及びボビン)を封じ込めることによって絶対零度近くの温度(例えば、約4ケルビン)に維持される。代替的バージョン(図4)において、低温保持装置の外壁は、低炭素鋼で作られ、磁場に対する追加の帰還磁路をもたらすことができる。
幾つかの実施例では、絶対零度近くの温度は、1つの単段ギフォードマクマホン冷凍機と3つの2段ギフォードマクマホン冷凍機とを使用して達成され、維持される。それぞれの2段冷凍機は、ヘリウム蒸気を液体ヘリウムに再凝縮する凝縮器に取り付けられた第2段低温端部を有する。冷凍機のヘッドには、圧縮機から圧縮ヘリウムが供給される。単段ギフォードマクマホン冷凍機は、電流を超電導巻線に供給する高温(例えば、50〜70ケルビン)のリード線を冷却するように構成される。
幾つかの実施例では、絶対零度近くの温度は、コイルアセンブリ上の異なる位置に配置された2つのギフォードマクマホン冷凍機72、74を使用して達成され、維持される。それぞれの冷凍機は、コイルアセンブリと接触する低温端部76を有する。冷凍機のヘッド78には、圧縮機80から圧縮ヘリウムが供給される。他の2つのギフォードマクマホン冷凍機77、79は、電流を超電導巻線に供給する高温(例えば、60〜80ケルビン)のリード線を冷却するように構成される。
コイルアセンブリ及び低温保持槽は、ピルボックス形状の磁石ヨーク82の2つの半分81、83内に取り付けられ、完全に封じ込められる。この例では、コイルアセンブリの内径は、約74.6cmである。鉄ヨーク82は、帰還磁束84に対する経路となり、磁極面44、46の間の容積部86を磁気遮蔽して外部からの磁気的影響がその容積部内の磁場の形状を摂動するのを防ぐ。ヨークは、加速器の付近の漂遊磁場を減少させる働きもする。幾つかの実施例では、シンクロサイクロトロンは、漂遊磁場を低減する能動的帰還システムを有するものとしてよい。能動的帰還システムの一例は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている特許文献1で説明されている。能動的帰還システムにおいて、本明細書で説明されている比較的大きな磁気ヨークは、磁極片と称される、より小さな磁気構造体で置き換えられる。超電導コイルは、本明細書で説明されている主コイルの反対側に電流を流し、磁気帰還をもたらし、それによって、漂遊磁場を低減する。
図3及び図9に示されているように、シンクロサイクロトロンは、磁気構造体82の幾何学的中心92の近くに配置されているペニングイオンゲージ形態の粒子源90を含む。粒子源は、以下に説明されているとおりであるか、又は粒子源は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている特許文献2で説明されている種類のものであってよい。
粒子源90は、水素の供給部99からガス管路101及び気体水素を送達する管194を通して供給される。電気ケーブル94は電流源95から電流を運び、磁場200の方向に揃えられた陰極192、190からの電子の放出を刺激する。
幾つかの実施例では、ガス管101内のガスは、水素と1つ又は複数の種類の他のガスとの混合物を含み得る。例えば、混合物は、水素と希ガス、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、及び/又はラドンのうち1つ又は複数を含み得る(混合物は希ガスとの使用に制限されない)。幾つかの実施例では、混合物は、水素とヘリウムとの混合物であってもよい。例えば、混合物は、水素を約75%以上、ヘリウムを約25%以下(残留ガスが含まれ得る)含有することができる。別の例では、混合物は、水素を約90%以上、ヘリウムを約10%以下(残留ガスが含まれ得る)含有することができる。例では、水素/ヘリウム混合物は、>95%/<5%、>90%/<10%、>85%/<15%、>80%/<20%、>75%/<20%などのうちいずれかであってよい。
粒子源中で希ガス(又は他のガス)を水素と組み合わせて使用する利点として考えられるのは、ビーム強度の増大、陰極の寿命の増加、及びビーム出力の定常性の増大である。
この例では、放出される電子は、管194から小さな穴を通して出て来るガスを電離し、磁石構造体と1つのダミーディープレート102とによって囲まれた空間の半分にかかる1つの半円形(ディー形状)高周波プレート100によって加速する陽イオン(陽子)の供給部を形成する。遮断された粒子源の場合(その一例は、特許文献2で説明されている)、プラズマを収容する管の全部(又は実質的な部分)が加速領域で取り除かれ、これにより、比較的高い磁場内でイオンをより高速に加速することができる。
図10に示されているように、ディープレート100は、磁石構造体によって囲まれた空間の周りの回転の半分において陽子が加速される空間107を囲む2つの半円形表面103、105を有する中空金属構造体である。空間107内に開いているダクト109は、ヨークを通り、真空ポンプ111が取り付けられ得る外部の場所に延在し、これにより、空間107及び、加速が行われる真空槽119内の空間の残り部分を真空にする。ダミーディー102は、ディープレートの露出されている縁の近くに間隔をあけて並ぶ矩形の金属リングを備える。ダミーディーは、真空槽及び磁気ヨークに接地される。ディープレート100は、高周波伝送路の終端部に印加される高周波信号によって駆動され、電場を空間107内に発生させる。高周波電場は、加速された粒子ビームが幾何学的中心からの距離を増やすにつれ時間に関して変化させられる。高周波電場は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている特許文献3で説明されているように制御され得る。
ビームが中央に配置された粒子源から現れて粒子源構造体をクリアし、外向きに螺旋を描き始めると、幾つかの実施例では、高い電圧差が高周波プレート上に必要になる。高周波プレートに20,000Vが印加される。幾つかのバージョンでは、8,000から20,000ボルトが高周波プレートに印加され得る。この高い電圧を駆動するために必要な電力を低減するために、磁石構造体は、高周波プレートと接地との間の静電容量を減らすように構成される。これは、高周波構造から外側ヨーク及び低温保持装置ハウジングまで十分な間隔をあけて穴を形成し、磁極面の間に十分な空間を確保することによって行われる。
ディープレートを駆動するこの高電圧の交流電位は加速サイクルにおいて、陽子の増大する相対論的質量と減少する磁場とを考慮して、周波数が低くなるように掃引される。ダミーディーは、真空槽壁と共に接地電位にあるので中空半円筒形構造体を必要としない。基本周波数の異なる位相又は倍数の周波数で駆動される加速電極の複数のペアなどの、他のプレート構成も使用することが可能である。RF構造は、例えば、互いにかみ合う回転及び静止ブレードを有する回転コンデンサを使用することによって、必要な周波数掃引においてQを高く保つように調整することができる。ブレードのかみ合い毎に、静電容量が増加し、したがって、RF構造の共振周波数が下がる。ブレードは、必要な正確な周波数掃引がもたらされる形状に成形され得る。回転コンデンサ用の駆動モータは、正確な制御を行うためにRF発生器に位相固定され得る。一群の粒子が、回転コンデンサのブレードのかみ合い毎に加速される。
幾つかの実施例では、加速が行われる真空槽119は、中央が薄く、縁が厚い、一般的に円筒形の容器である。真空槽は、RFプレート及び粒子源を封じ込め、真空ポンプ111によって真空にされる。高真空を維持することで、加速するイオンが気体分子との衝突で失われないことが保証され、アーク地絡を生じることなくRF電圧をより高いレベルに保つことが可能になる。
陽子は、粒子源から始まる一般的に螺旋状の軌道経路を横断する。螺旋経路のそれぞれのループの半分において、陽子は、空間107内のRF電場を通過するときにエネルギーを獲得する。イオンがエネルギーを獲得すると、螺旋経路のそれぞれの連続するループの中心軌道の半径は、ループ半径が磁極面の最大半径に達するまで前のループより大きくなる。その位置で、磁場及び電場摂動はイオンを磁場が急速に減少する領域内に導き、イオンは高い磁場の領域から出て、本明細書では引き出しチャネルと称される真空管38に通され、サイクロトロンのヨークから出る。磁場摂動を変えてイオンの向きを決めるために磁気再生器が使用され得る。サイクロトロンから出たイオンは、サイクロトロンの周りの部屋内に存在する著しく減少する磁場の領域に入ると分散する傾向を有する。引き出しチャネル38内のビーム成形要素107、109は、イオンが空間的広がりを制限された真っ直ぐなビーム状態を保つようにイオンの向きを変える。
幾つかの実施例では、磁極間隙内の磁場は、加速するときに真空槽内にビームを維持する幾つかの特性を有している必要がある。磁場指数nは、式
n = −(r/B)dB/dr
で表され、この「弱い」集束を維持するように正に保たれなければならない。ここで、rはビームの半径であり、Bは磁場である。それに加えて、幾つかの実施例では、磁場指数は、0.2未満に維持される必要があるが、それは、この値では、ビームの径方向振動及び鉛直方向振動の周期がvr=2vzの共振で一致するからである。ベータトロン周波数は、vr=(1−n)1/2及びvz=n1/2によって定義される。強磁性磁極面は、磁場指数nが所定の磁場内で250MeVのビームと一致する最小の直径において正に維持され、0.2未満となるようにコイルによって生成される磁場を成形するように設計される。
ビームが引き出しチャネルから出るときに、ビームはビームに対する散乱角及び飛程変調の所望の組合せを形成するようにプログラム可能に制御され得るビーム形成システム125(図5)−例えば、走査システム又は散乱システム−に通される。ビーム形成システム125は、ビームを患者に導くために内側ガントリー601(図14)と共に使用され得る。
動作時に、プレートは、プレートの表面に沿った導通抵抗の結果として、印加される高周波場からエネルギーを吸収する。このエネルギーは、熱として現れ、熱交換器113(図3)内に熱を放出する水冷管路108を使用してプレートから取り出される。
サイクロトロンから出る漂遊磁場は、ピルボックス磁石ヨーク(シールドとしても働く)と別の磁気シールド114の両方によって制限される。別の磁気シールドは、空間116によって隔てられる、ピルボックスヨークを囲む強磁性体(例えば、鋼又は鉄)の層117を含む。ヨーク、空間、及びシールドのサンドイッチを含むこの構成は、より低い重量で所定の漏れ磁場に対する適切な遮蔽を形成する。
上述のように、ガントリー504は、シンクロサイクロトロンを水平回転軸線532を中心として回転させる。トラス構造体516は、2つの略平行なスパン580、582を有する。シンクロサイクロトロンは、脚部508、510同士の間における略中央にかつスパン580、582同士の間に配設されている。ガントリーは、トラスの反対側に位置する脚部508、510の端部に取り付けられた釣合いおもり122、124を利用することによって軸受512、514を中心として回転するようにバランスされている。
ガントリー504は電気モータによって回転駆動され、電気モータはガントリー504の少なくとも1つの脚部に取り付けられており、駆動歯車を介して軸受ハウジングに接続されている。ガントリー504の回転位置は、ガントリー504の駆動モータ及び駆動歯車に組み込まれた軸角エンコーダによって付与される信号から導き出される。
イオンビームがサイクロトロンから出る位置において、ビーム形成システム125は、患者の治療に適した特性をイオンビームに付与するようにイオンビームに作用する。例えば、ビームを拡散させ、当該ビームの貫入深さを変化させることによって、所定の目標体積に対して均一に放射することができる。ビーム形成システムは、本明細書で説明されているように(例えば、図42から図45を参照)、能動的走査要素に加えて、受動的散乱要素を備えている場合がある。
シンクロサイクロトロンの能動的システムのすべて(例えば、電流駆動式超電導コイル、RF駆動式プレート、真空加速室のための真空ポンプ、超電導コイル冷却室のための真空ポンプ、電流駆動式粒子源、水素ガス源、及びRFプレート冷却装置)が、例えば制御を効果的に実施するために適切なプログラムでプログラムされた1つ以上のコンピュータを含む、適切なシンクロサイクロトロンを制御するための電子機器(図示しない)によって制御される。
ガントリー、患者支持体、能動的ビーム成形要素、及びシンクロサイクロトロンは、適切な治療を制御するための電子機器(図示しない)によって、治療セッションを実施するために制御される。
図1、図11、及び図12に示されているように、ガントリー504の軸受512、514は、サイクロトロンのボールト524の壁によって支持されている。ガントリー504は、患者の上方位置、側方位置、及び下方位置を含む180°(又は180°以上)の回転範囲520にわたって、加速器を旋回させることができる。ボールト524は、ガントリー504の運動の上端及び下端点においてガントリー504が通過可能とされるのに十分な高さを有している。壁148、150を側面とする迷路146は、療法士及び患者のための出入り口経路とされる。少なくとも1つの壁152は、サイクロトロンからの直接的な陽子ビームの照射範囲に存在しないので、当該壁は、比較的薄くすることができ、依然として遮蔽機能を発揮させることができる。治療室の他の3つの側壁154、156、150/148は、遮蔽を比較的厳重にする必要があり、盛り土(図示しない)に埋設されている。土自体が必要な遮蔽の一部分を果たすことができるので、側壁154、156、158の必要な厚さは低減される。
図11、図12及び図13を参照すると、安全上及び美観上の理由から、治療室160は、ボールト524の内部に構成されている。治療室160は、旋回するガントリーが通過可能とされるように、かつ、治療室の床面積164の範囲を最大限に拡張するように、壁154、156、150及び収容室の基部162からガントリー504の脚部508、510同士の間に形成された空間の内部に向かって片持ち梁として形成されている。ビーム発生粒子加速器502の定期的整備は、高床の下方の空間内で実施可能とされる。ビーム発生粒子加速器502がガントリー504の下方位置に至るまで回転された場合、治療領域から離隔された空間内において、加速器全体に対してアクセス可能とされる。電源、冷却機器、真空ポンプ、及び他の支援機器は、当該離隔された空間内において高床の下方に配置されている。患者支持体170は、支持体を上下動させると共に患者を様々な位置及び向きに回転及び移動させることができる様々な態様で、治療室160の内部に取り付け可能とされる。
図14のシステム602では、本明細書で説明されているタイプのビーム発生粒子加速器が、当該実施例ではシンクロサイクロトロン604が回転式ガントリー605に取り付けられている。回転式ガントリー605は、本明細書で説明されているタイプのものであり、患者支持体606の周りで角度的に回転することができる。この特徴によって、シンクロサイクロトロン604は、様々な角度から粒子ビームを患者に直接照射することができる。例えば、図14に示すように、シンクロサイクロトロン604が患者支持体606の上方に位置している場合には、粒子ビームは患者に向かって下方に方向づけられている。代替的には、シンクロサイクロトロン604が患者支持体606の下方に位置している場合には、粒子ビームは患者に向かって上方に方向づけられている。中間ビーム経路指定機構が必要ないという意味では、粒子ビームは患者に直接印加される。本発明では、成形又はサイズ決定機構がビームの経路変更をするのではなく、同一かつ一般的なビーム軌道を維持しつつビームのサイズ及び/又は形状を決定するという点において、中間ビーム経路指定機構は成形又はサイズ決定機構と相違する。
上述のシステムの例示的な実施例に関するさらなる詳細は、特許文献4及び特許文献5に見出され得る。特許文献4及び特許文献5の内容は、参照により本開示に組み込まれている。幾つかの実施例では、シンクロサイクロトロンは、その内容が参照により本明細書に組み込まれている特許文献6で説明されているような、可変エネルギーデバイスであってもよい。
図15は、粒子が軌道上で(例えば、外向きの螺旋状軌道内で)加速されるキャビティ700の一部の上面図を示している。例が上で説明されている粒子源701は、キャビティのほぼ中心に配設されている。荷電粒子(例えば、陽子又はイオン)は、粒子源701によって生成されるプラズマ柱から引き出される。荷電粒子は磁気再生器702に向かって軌道740内で外向きに加速して、最終的に磁気再生器702に到達する。この例示的な実施例では、再生器702は、例えば、鋼鉄、鉄、又は他の種類の強磁性体から作られる強磁性構造体である。再生器702は、外向きの軌道上の加速を引き起こす背景磁場を変化させる。この例では、再生器702は、その磁場を増大させる(例えば、場にバンプをもたらす)。背景磁場内のバンプは、軌道を引き出しチャネル703に向かって外向きに移動させる形で粒子軌道に影響を及ぼす。最終的に、軌道は、引き出しチャネル703に入り、そこから出る。
さらに詳しく述べると、粒子ビーム軌道は、再生器702に接近し、相互作用する。磁場の増大の結果、粒子ビームはそこで少し向きを変え、円形である代わりに、引き出しチャネルへ歳差運動する。図16は、粒子源702に対して半径(r)に対してプロットされた磁場(B)を示している。図16に示されているように、この例では、Bは約9テスラ(T)から約−2Tまで変化する。9Tは、キャビティ700のほぼ中心699のところで出現する。磁場の極性は、磁場が超電導コイルを横切った後に変化し、その結果コイルの外に約−2Tが生じ、最終的に、約0まで減少して行く。磁場バンプ705は、再生器の地点に生じる。図16は、2つの超電導コイル709、710の間に引き出しチャネル703を有するリバースボビン706の断面706に関する磁場のプロットも示している。
図17を参照すると、再生器702は、軌道710の角度及びピッチの変化を、引き出しチャネル703への移動が行われるように引き起こす。引き出しチャネルの地点で、磁場の強度は、粒子ビームが引き出しチャネル内に入り、その中を進行することを可能にする十分な低さである。図15を再び参照すると、引き出しチャネル703は、双極子場への加算及び/又は減算を行い、入ってくる粒子ビームを引き出しチャネル703に通しビーム成形要素に導くための様々な磁気構造体711を収容する。引き出しチャネル内の磁気構造の他の例は、限定はしないが、図5の構造107、109を含む。
出口点に到達するために、粒子ビームは適切な量のエネルギーを有しているべきである。その地点に到達するために必要なエネルギーの量は、例えば、加速器のサイズ及び引き出しチャネルの長さ(この例では、引き出しチャネルの長さは約1.7又は2メートルである)に基づき変化し得る。この点で、引き出しチャネル703の少なくとも一部は、超電導コイルの上にある。そのようなものとして、引き出しチャネル内の磁場は、加速器の回転に応答してわずかに変化し得る。したがって、粒子ビームが引き出しチャネルを横断するのに必要なエネルギーの量は、粒子加速器の回転に応答して顕著に変化し得ない。
上で説明されているように、超電導コイルは、回転中に移動すると、再生器702の影響を受ける軌道は、コイルの重力移動により変化する。指摘されているように、この移動は、数10ミリメートルとわずかであり得る。しかしながら、結果として、引き出しチャネルに入る粒子ビームのエネルギーは、チャネル全体を横断するのに必要なエネルギーと異なることがある。引き出しチャネルに入る粒子のエネルギーのこの変化に適応するために、構造体715を引き出しチャネル703の内側、又は入口点に置くとよい。この構造体は、粒子ビームの過剰なエネルギーを吸収するために使用され得る。この例では、構造体715は、車輪に似た形状を有するものとしてよい、回転可能な変厚くさびである。構造体715の一例は、図18及び図18Aに示されている。これらの図に示されているように、構造体715は、連続的に変化する厚さを有することができる。あるいは、厚さは階段状に変化してもよい。
構造体は、引き出しチャネル内の/引き出しチャネルに入る粒子ビームから適切な量のエネルギーを吸収するように移動させる(例えば、回転させる)ことができる。この実施例では、構造体のより厚い部分715aは、より薄い部分715bに比べて多くのエネルギーを吸収する。したがって、構造体は、粒子ビームにおいて異なる量のエネルギーを吸収するように移動させる(例えば、回転させる)ことができる。幾つかの実施例では、構造体は、粒子ビームが変化することなく通過することを許す、物質を収容しない(例えば、厚さ「ゼロ」の)部分を有するものとしてよい。あるいは、そのような場合に、構造体は、ビーム経路から完全に又は一部だけ移動されてもよい。幾つかの実施例では、最大の厚さは、数センチメートルのオーダーであってよいが、最大の厚さは、例えば、エネルギー吸収要求条件に基づき、システム毎に異なる。図18Aは、例えば、検出されたガントリー位置に応答して、構造体715を回転させる心棒を制御するモータ716も示している。
構造体は、粒子ビームのエネルギーを吸収することができる適切な材料から作ることができる。上で指摘されているように、理想的には、この構造体は引き出しチャネル内の粒子ビームの散乱を最小限度に抑えるが、実際には、存在し、許容可能である散乱の量があり得る。この構造体に使用され得る材料の例として、限定はしないが、ベリリウム、水素を含むプラスチック、及びカーボンが挙げられる。これらの材料は、単独で、組み合わせて、又は他の材料と組み合わせて使用することができる。
構造体の移動(例えば、回転)は、より大きな粒子治療システムの一部である制御システムを使用してコンピュータ制御され得る。コンピュータ制御は、運動を発生させるアクチュエータ及びモータなどの、機械的デバイスの移動を制御するための1つ又は複数の制御信号を発生するステップを含み得る。構造体715の回転は、粒子加速器が取り付けられているガントリー(例えば、ガントリーの回転を示している図1、図11、及び図12を参照)の回転位置によって測定されるような、粒子加速器の回転位置に基づき制御され得る。ガントリーの位置に対して構造体の回転位置を設定するために使用される様々なパラメータは、経験的に測定され、制御システムのコンピュータにプログラムされ得る。
上で指摘されているように、幾つかの実施例では、引き出しチャネル内の磁場は、加速器の回転に応答して、ごくわずかではあるが、変化し得る。変化の量は、例えば、数10パーセントであり得る。特定の例では、これは、超電導コイル中を流れる通常〜2000アンペアから約6アンペア(amps)の電流の変化によって反映される。これは、粒子ビームが引き出しチャネルを横断するのに必要なエネルギーに影響を及ぼし得る。磁場のこのような小さな変化は、超電導コイル内を流れる電流を制御することによって、又は構造体715の回転を制御することによって調整され得る。
他の実施例では、引き出しチャネルに到達する粒子ビームのエネルギーを調整するステップは、異なる回転位置で、再生器が異なる粒子軌道に影響を及ぼすように再生器702を物理的に移動することによって実現され得る。上記のように、再生器702の移動は、粒子治療システムの一部である制御システムを通じてコンピュータ制御され得る。例えば、再生器702の移動は、粒子加速器が取り付けられているガントリーの回転位置によって測定されるような、粒子加速器の回転位置に基づき制御され得る。ガントリーの回転位置に対して再生器の配置を設定するために使用される様々なパラメータは、経験的に測定され、制御システムのコンピュータにプログラムされ得る。1つ又は複数のコンピュータ制御アクチュエータは、再生器の実際の移動を行わせることができる。
例えば、図19を参照すると、再生器702は、最初に配置717、例えば、加速器の予め定められている初期位置に位置決めされ得る。この位置で、再生器によって形成される磁場バンプは、軌道719に一次的な影響を有する(その軌道位置にある粒子を引き出しチャネルに導く)。軌道720は、軌道719よりも、プラズマ柱の配置721からさらに隔たる。その結果、軌道720は、軌道719に比べて高いエネルギーを有する。軌道722は、軌道719よりも、プラズマ柱の配置721に近い。その結果、軌道722は、軌道719に比べて低いエネルギーを有する。図20に示されているように、回転の結果超電導コイルが移動すると、より低いエネルギーの軌道722は、再生器702が主として軌道722に影響を及ぼすように再生器702の経路内に移動し得る。しかし、軌道722は、より低いエネルギーの軌道であるため、引き出しチャネルを横断することはできず、出る前に引き出しチャネルの内壁に衝突し得る。したがって、再生器702は、再生器702が再び主として軌道719に衝突するように配置717から配置723(図21の矢印724によって示されているように)移動されるものとしてよい。この逆も同様に当てはまる。すなわち、超電導コイルが、過度に高いエネルギーの軌道720が再生器702によって主として衝突されるように移動する場合、再生器702は、主として低いエネルギーの軌道719(これも移動している)に衝突するように他方の方向(例えば、配置721に向かう方向)に移動され得る。これらの図は、1つの次元(径方向)の再生器の移動を示しているが、再生器は、2つ又は3つの次元で移動することができ、例えば、直交座標のX、Y、及び/又はZ方向に移動することができる。
他の実施例では、再生器の影響を主として受ける軌道は、磁場を変化させること(磁場バンプ)によって変更され得る。これは、例えば、再生器のすぐ近くで強磁性体の量を変化させることによって行うことができる。一実施例では、1つ又は複数の磁気シムが、再生器によって発生する磁場の形状及び/又は強度を変えるために使用され得る。この点で、再生器は、鋼鉄などの、強磁性体から作ることができる(鋼鉄の代わりに、又はそれに加えて、他の材料を使用することもできる)。磁気シムは、再生器を作る材料と異なるか、又は同じである強磁性体であってよい。
この実施例では、磁気シムは、1つ又は複数の鉄もしくは鋼鉄製磁気シムを含む。一例は、図22に示されている磁気シム730であるが、適切な形状であればどのような形状も使用することができる。例えば、磁気シム730は、ロッドの形状をとり得るか、又は他の適切な形状を有することができる。図23を参照すると、磁気シム730a、730bは、再生器702の近く又は再生器それ自体の中の対応するヨーク731a、731bのスロット内に置かれ得ることがわかる。磁気シムを下方に移動し、ヨーク内のスロットのさらに内側に入れると、再生器の近くの強磁性体の量が増えて、それにより、再生器によってもたらされる磁場バンプの配置及びサイズが変わる。対照的に、磁気シムを上方に移動し、ヨークから外に出すと、再生器の近くの強磁性体の量が減って、それにより、再生器によってもたらされる磁場バンプの配置及びサイズが変わる。強磁性体の量を増やすと、磁場バンプが内向きに(プラズマ柱に向かって例えば図19から図21を参照)移動して、それによって、より低いエネルギーの粒子軌道に主として影響を及ぼす。強磁性体の量を減らすと、磁場バンプが外向きに(プラズマ柱から遠ざかる方向に)移動して、それによって、より高いエネルギーの粒子軌道に主として影響を及ぼす。
磁気シムは、ヨーク内に永久的にねじ込まれ、ねじを使って適所に保持され得るか、又はリアルタイムで制御され得る。この点で、磁気シムの移動は、粒子治療システムの一部である制御システムを通じてコンピュータ制御され得る。例えば、それぞれの磁気シム730a、730bの移動は、粒子加速器が取り付けられているガントリーの回転位置によって測定されるような、粒子加速器の回転位置に基づき制御され得る。加速器の回転位置に対して磁気シムの配置を設定するために使用される様々なパラメータは、経験的に測定され、制御システムのコンピュータにプログラムされ得る。1つ又は複数のコンピュータ制御アクチュエータは、磁気シムの実際の移動を行わせることができる。磁気シムは2つしか図示されていないが、磁気シムは幾つでも使用できる(例えば、1つ又は複数)。
幾つかの実施例では、磁気シム(例えば、上で説明されている磁気シム)は、その代わりに、1つ又は複数の小型電磁石であるか、又は備えるものとしてよく、その中を流れる電流は上で説明されている様式で再生器によって発生する磁場に影響を及ぼすように制御される。1つ又は複数の電磁石内を流れる電流は、粒子治療システムの一部である制御システムを通じてコンピュータ制御され得る。例えば、電流は、粒子加速器が取り付けられているガントリーの回転位置によって測定されるような、粒子加速器の回転位置に基づき制御され得る。加速器の回転位置に対して電流を設定するために使用される様々なパラメータは、経験的に測定され、制御システムのコンピュータにプログラムされ得る。
他の実施例では、引き出しチャネルに到達する粒子ビームのエネルギーを調整するステップは、回転の結果としてのコイルの移動を補償するように低温保持装置を物理的に移動することによって実現され得る。例えば、低温保持装置は、コイルが移動する方向と反対の方向に移動され得る。上記のように、低温保持装置の移動は、粒子治療システムの一部である制御システムを通じてコンピュータ制御され得る。例えば、低温保持装置の移動は、粒子加速器が取り付けられているガントリーの回転位置によって測定されるような、粒子加速器の回転位置に基づき制御され得る。ガントリーの回転位置に対して低温保持装置の移動を設定するために使用される様々なパラメータは、経験的に測定され、制御システムのコンピュータにプログラムされ得る。1つ又は複数のコンピュータ制御アクチュエータは、低温保持装置の実際の移動を行わせることができる。低温保持装置を移動するために使用され得るアクチュエータ、したがってそこに収容されているコイルの例は、以下において、図34及び図35に関して説明される。
図24を参照すると、例えば、加速器の回転により、コイル709、710が各チャンバー内で矢印735の方向に移動し得る。それに応答して、低温保持装置736の位置が変化し得る、例えば、低温保持装置736は、例えば、矢印737の方向に(例えば、反対の量だけ反対方向に)移動され得る。この移動により、コイル709、710の対応する移動が生じて、それによって、コイル709、710は再生器に対して適切に整列するように元の位置に戻される。
本明細書で説明されている例示的な粒子治療システムにおいて使用される粒子加速器は、可変エネルギー粒子加速器であるものとしてよい。
引き出される粒子ビーム(加速器から出力される粒子ビーム)のエネルギーは、治療時の粒子ビームの使用に影響を及ぼし得る。幾つかの機械では、粒子ビーム(又は粒子ビーム中の粒子)のエネルギーは、引き出し後に増加しない。しかし、エネルギーは、引き出し後と治療前に治療の必要性に基づき低減され得る。図25を参照すると、例示的な治療システム910は、加速器912、例えば、シンクロサイクロトロンを備え、そこから可変エネルギーを有する粒子(例えば、陽子)ビーム914が引き出され、身体922の標的ボリューム924に照射される。適宜、走査ユニット916もしくは散乱ユニット916、1つ又は複数の監視ユニット918、及びエネルギーデグレーダ920などの、1つ又は複数の追加のデバイスが、照射方向928に沿って置かれる。これらのデバイスは、引き出されたビーム914の断面をインターセプトし、治療用の引き出されたビームの1つ又は複数の特性を変える。
治療のため粒子ビームを照射される標的ボリューム(照射標的)は、典型的には、3次元構成を有する。幾つかの例では、治療を実施するために、標的ボリュームは、照射が層毎に行われるように粒子ビームの照射方向に沿って幾つかの層に分割される。陽子などの幾つかの種類の粒子について、標的ボリューム内の貫入深さ(又はビームが到達する層)は、もっぱら、粒子ビームのエネルギーによって決定される。所定のエネルギーの粒子ビームは、そのエネルギーに対する対応する貫入深さを実質的に超えて到達することはない。標的ボリュームの一方の層から他方の層にビーム照射を移動するために、粒子ビームのエネルギーが変えられる。
図25に示されている例では、標的ボリューム924は、照射方向928に沿って9つの層926a〜926iに分割される。例示的なプロセスにおいて、照射は、最も深い層926iから始まり、1回に層1つずつ徐々により浅い層に進み、最も浅い層926aで終わる。身体922に印加する前に、粒子ビーム914のエネルギーは、実質的に身体又は標的ボリューム、例えば、層926e〜926iの中にさらに、又は身体のさらに奥深くまで貫入することなく、粒子ビームが所望の層、例えば、層926dで停止できるレベルに制御される。幾つかの例では、粒子ビーム914の所望のエネルギーは、治療層が粒子加速に対して浅くなって行くにつれ減少する。幾つかの例では、標的ボリューム924の隣接する層を治療するためのビームエネルギーの差は、約3MeVから約100MeV、例えば、約10MeVから約80MeVであるが、他の差も、例えば、層の厚さ及びビームの特性に応じて可能である。
標的ボリューム924の異なる層を治療するためのエネルギー変化は、幾つかの実施例では、加速器912から粒子ビームが引き出された後に追加のエネルギー変化が不要になるように加速器912において実行され得る(例えば、加速器側でエネルギーを変化させることができる)。したがって、治療システム10内のオプションのエネルギーデグレーダ920は、システムから排除され得る。幾つかの実施例では、加速器912は、約100MeVから約300MeVまでの間、例えば、約115MeVから約250MeVまでの間で変化するエネルギーを有する粒子ビームを出力することができる。変化は、連続的又は非連続的、例えば、1回1ステップずつであってよい。幾つかの実施例では、連続的な、又は非連続的な変化は、比較的高い率、例えば、毎秒約50MeVまで又は毎秒約20MeVまでの率で生じ得る。非連続的変化は、約10MeVから約90MeVのステップサイズで1回に1ステップずつ実行され得る。
1つの層で照射が完了すると、加速器912は、次の層を照射するために、例えば、数秒以内、又は1秒未満の間に、粒子ビームのエネルギーを変化させることができる。幾つかの実施例では、標的ボリューム924の治療は、実質的な中断なしで、又はいかなる中断も伴わずに、継続することができる。幾つかの状況において、非連続的エネルギー変化のステップサイズは、標的ボリューム924の2つの隣接する層を照射するために必要とされるエネルギーの差に対応するように選択される。例えば、ステップサイズは、エネルギーの差と同じであるか、又は何分の1かであってよい。
幾つかの実施例では、加速器912及びデグレーダ920は、一体となって、ビーム914のエネルギーを変化させる。例えば、加速器912で粗調整を行い、デグレーダ920で微調整を行う、又はその逆を行う。この例では、加速器912は、約10〜80MeVの変化ステップでエネルギーを変化させる粒子ビームを出力することができ、デグレーダ920は、約2〜10MeVの変化ステップでビームのエネルギーを調整する(例えば、低減する)。
飛程調整器を備え得る、エネルギーデグレーダの使用を減らす(か、又は使用しない)ことで、加速器からの出力ビームの特性及び品質、例えば、ビーム強度を維持しやすくなる。粒子ビームの制御は、加速器で実行され得る。副作用、例えば、粒子ビームがデグレーダ920を通るときに発生する中性子からの副作用が低減されるか、又は排除され得る。
粒子ビーム914のエネルギーは、標的ボリューム924における治療の完了後に別の身体又は身体部分922’内の別の標的ボリューム930を治療するように調整され得る。標的ボリューム924、930は、同じ身体(又は患者)内にあるか、又は異なる患者に属していてもよい。身体922’の表面からの標的ボリューム930の深さDは、標的ボリューム924の深さと異なることがあり得る。デグレーダ920によって何らかのエネルギー調整が実行され得るが、デグレーダ920は、ビームエネルギーを低減するだけであって、ビームエネルギーを増大させることはあり得ない。
この点で、幾つかの場合において、標的ボリューム930を治療するのに必要なビームエネルギーは、標的ボリューム924を治療するのに必要なビームエネルギーより大きい。このような場合に、加速器912は、標的ボリューム924を治療した後、標的ボリューム930を治療する前に、出力ビームエネルギーを増大させることができる。他の場合には、標的ボリューム930を治療するのに必要なビームエネルギーは、標的ボリューム924を治療するのに必要なビームエネルギーより小さい。デグレーダ920は、エネルギーを低減し得るが、加速器912は、デグレーダ920の使用を減らすか、又は排除するためにより低いビームエネルギーを出力するように調整することができる。標的ボリューム924、930の幾つかの層への分割は、異なることも、同じであることもあり得る。また、標的ボリューム930は、標的ボリューム924の治療と層毎に類似の仕方で治療され得る。
同じ患者の異なる標的ボリューム924、930の治療は、実質的に連続的である、例えば、停止時間を2つの容積部が約30分以内より長くない、例えば、25分以内、20分以内、15分以内、10分以内、5分以内、又は1分以内となるものとしてよい。本明細書で説明されているように、加速器912は、移動可能なガントリー上に取り付けることができ、ガントリーの移動で、加速器を異なる標的ボリュームを目指して移動させることができる。幾つかの状況において、加速器912は、治療システムが標的ボリューム924の治療を完了した後、及び標的ボリューム930の治療を開始する前に(ガントリーを移動するなどの)調整を行っているときに出力ビーム914のエネルギー調整を完了することができる。加速器と標的ボリューム930との整列が行われた後、治療は調整された所望のビームエネルギーで開始することができる。異なる患者に対するビームエネルギー調整は、比較的効率よく完了させることもできる。幾つかの例では、ビームエネルギーを増大/低減するステップ及び/又はガントリーを移動するステップを含む、すべての調整は、約30分以内、例えば、約25分以内、約20分以内、約15分以内、約10分以内、又は約5分以内に行われる。
標的ボリュームの同じ層において、走査ユニット916を使用してビームを層の2次元表面の端から端まで移動する(走査ビームとも称される)ことによって照射線量が印加される。あるいは、層は、散乱ユニット16の1つ又は複数の散乱体に引き出されたビーム(散乱ビームとも称される)を通すことによって照射を受けるものとしてよい。
エネルギー及び強度などの、ビーム特性は、治療前に選択され得るか、又は治療中に、走査ユニット/散乱体916、デグレーダ920、及び図示されていない他のものなどの、加速器912及び/又は他のデバイスを制御することによって調整され得る。この例示的な実施例では、上で説明されている例示的な実施例と同様に、システム910は、システム内の1つ又は複数のデバイスと通信する、コンピュータなどの制御装置932を備える。制御は、1つ又は複数のモニター918によって実行される監視、例えば、ビーム強度、線量、標的ボリューム内のビーム配置、などの監視の結果に基づくものとしてよい。モニター918は、デバイス916とデグレーダ920との間にあるものとして図示されているが、1つ又は複数のモニターをビーム照射経路に沿った他の適切な配置に置くことができる。制御装置932は、(同じ患者及び/又は異なる患者の)1つ又は複数の標的ボリュームに対する治療計画を格納することもできる。治療計画は治療が開始する前に決定され、標的ボリュームの形状、照射層の数、それぞれの層に対する照射線量、それぞれの層が照射を受ける回数、などのパラメータを備えることができる。システム910内のビーム特性の調整は、治療計画に基づき実行され得る。追加の調整は、治療時、例えば、治療計画からの逸脱が検出されたときに実行され得る。
幾つかの実施例では、加速器912は、粒子ビームが加速される磁場を変化させることによって出力粒子ビームのエネルギーを変化させるように構成される。例示的な一実施例では、1つ又は複数のコイルセットが、変動電流を受けて、キャビティ内に変動磁場を発生する。幾つかの例では、1つのコイルセットが固定電流を受けるが、1つ又は複数の他のコイルセットはコイルセットが受ける全電流が変化するように変動電流を受ける。幾つかの実施例では、すべてのコイルセットが超電導である。他の実施例では、固定電流に対するセットなどの幾つかのコイルセットは、超電導であるが、変動電流に対する1つ又は複数のセットなどの他のコイルセットは、非超電導である。幾つかの例では、すべてのコイルセットが非超電導である。
一般的に、磁場の大きさは、電流の大きさと共に一定の比率で増減し得る。コイルの全電流を所定の範囲内に調整することで、対応する所定の範囲内で変化する磁場を発生することができる。幾つかの例では、電流の連続的調整により、磁場の連続的変動及び出力ビームエネルギーの連続的変動を引き起こすことができる。あるいは、コイルに印加される電流が、非連続的な段階的様式で調整される場合、磁場及び出力ビームエネルギーも、それに応じて非連続的な(段階的)様式で変化する。磁場を電流に応じて一定の比率で増減させることにより、ビームエネルギーを比較的正確に変化させることができるが、ときには、入力電流以外の微調整を実施することができる。
幾つかの実施例では、可変エネルギーを有する粒子ビームを出力するために、加速器912は、それぞれの範囲が異なる出力ビームエネルギーに対応する、異なる周波数範囲にわたって掃引するRF電圧を印加するように構成される。例えば、加速器912が、3つの異なる出力ビームエネルギーを発生するように構成されている場合、RF電圧は、3つの異なる周波数範囲にわたって掃引することができる。別の例では、連続的ビームエネルギー変化に対応することで、RF電圧は、連続的に変化する周波数範囲にわたって掃引する。異なる周波数範囲は、異なる下限周波数境界及び/又は上限周波数境界を有することができる。
引き出しチャネルは、可変エネルギー粒子加速器によってもたらされる異なるエネルギーの範囲に適応するように構成され得る。異なるエネルギーを有する粒子ビームは、単一のエネルギーを有する粒子ビームを引き出すために使用される再生器の特徴を変えることなく加速器912から引き出され得る。他の実施例では、可変粒子エネルギーに適応するために、再生器を移動して上で説明されている様式で異なる粒子軌道を乱し(例えば、変化させて)、及び/又は鉄製ロッド(磁気シム)を加えるか、又は取り外して再生器によってもたらされる磁場バンプを変化させることができる。より具体的には、異なる粒子エネルギーは、典型的には、キャビティ内で異なる粒子軌道にある。再生器を本明細書で説明されている様式で移動することによって、粒子軌道を指定されたエネルギーのところでインターセプトし、それによって、指定されたエネルギーにおける粒子が引き出しチャネルに到達するようにその軌道の正しい摂動をもたらすことが可能である。幾つかの実施例では、再生器の移動(及び/又は磁気シムの追加/取り外し)は、加速器によって出力される粒子ビームエネルギーのリアルタイムの変化とリアルタイムで一致するように実行される。他の実施例では、粒子エネルギーは、治療毎に調整され、再生器の移動(及び/又は磁気シムの追加/取り外し)は、治療の前に実行される。いずれの場合の、再生器の移動(及び/又は磁気シムの追加/取り外し)は、コンピュータ制御され得る。例えば、コンピュータは、再生器及び/又は磁気シムの移動を引き起こす1つ又は複数のモータを制御することができる。
幾つかの実施例では、再生器は、適切な配置に移動するように制御可能とされる1つ又は複数の磁気シムを使用して実装される。
幾つかの実施例では、構造体715(上で説明されている)は、粒子加速器によって生成される異なるエネルギーに適応するように制御される。例えば、構造体715は、適切な厚さで、特定のエネルギーを有する粒子ビームをインターセプトするように回転され得る。したがって、構造体715は、粒子ビームのエネルギーの少なくとも一部を吸収し、これにより、上で説明されているように、粒子ビームに引き出しチャネルを横断させることができる。
例えば、Table 1(表1)は、例示的な加速器912が粒子ビームを出力することができる3つの例示的なエネルギー準位を示している。3つのエネルギー準位を生成するための対応するパラメータも一覧に挙げてある。この点で、磁石電流は、加速器912内の1つ又は複数のコイルセットに印加される全電流を指しており、最高及び最低周波数は、RF電圧が掃引する範囲を定義し、「r」は、場所から粒子が加速されるキャビティの中心までの径方向距離である。
可変エネルギーを有する荷電粒子を生成する例示的な粒子加速器に含まれ得る細部について以下で説明する。加速器はシンクロサイクロトロンであり、粒子は陽子であるものとしてよい。粒子は、パルスビームとして出力されてもよい。粒子加速器から出力されるビームのエネルギーは、患者体内の一方の標的ボリュームを治療している間、又は同じ患者もしくは異なる患者の異なる標的ボリュームの治療から次の治療までの間に、変化させることができる。幾つかの実施例では、加速器のセッティングは、加速器からビーム(又は粒子)が出力されないときにビームエネルギーを変化させるように変更される。エネルギー変化は、所望の範囲にわたって連続的又は非連続的であってよい。
図1に示されている例を参照すると、上で説明されている粒子加速器912のような可変エネルギー粒子加速器であってよい、粒子加速器(シンクロサイクロトロン502)は、可変エネルギーを有する粒子ビームに対して構成され得る。可変エネルギーの範囲は、約200MeVから約300MeV以上、例えば、200MeV、約205MeV、約210MeV、約215MeV、約220MeV、約225MeV、約230MeV、約235MeV、約240MeV、約245MeV、約250MeV、約255MeV、約260MeV、約265MeV、約270MeV、約275MeV、約280MeV、約285MeV、約290MeV、約295MeV、又は約300MeV以上である上限境界を有することができる。この範囲は、約100MeV以下から約200MeVまで、例えば、約100MeV以下、約105MeV、約110MeV、約115MeV、約120MeV、約125MeV、約130MeV、約135MeV、約140MeV、約145MeV、約150MeV、約155MeV、約160MeV、約165MeV、約170MeV、約175MeV、約180MeV、約185MeV、約190MeV、約195MeV、約200MeVである下限境界も有することができる。
幾つかの例では、この変化は、非連続的であり、変化ステップは、約10MeV以下、約15MeV、約20MeV、約25MeV、約30MeV、約35MeV、約40MeV、約45MeV、約50MeV、約55MeV、約60MeV、約65MeV、約70MeV、約75MeV、又は約80MeV以上のサイズを有することができる。エネルギーを1ステップサイズだけ変化させるのに要する時間は、30分以内、例えば、約25分以内、約20分以内、約15分以内、約10分以内、約5分以内、約1分以内、又は約30秒以内であり得る。他の例では、この変化は、連続的であり、加速器は粒子ビームのエネルギーを比較的高い率、例えば、毎秒最大約50MeVまで、毎秒最大約45MeVまで、毎秒最大約40MeVまで、毎秒最大約35MeVまで、毎秒最大約30MeVまで、毎秒最大約25MeVまで、毎秒最大約20MeVまで、毎秒最大約15MeVまで、又は毎秒最大約10MeVまでに調整することができる。加速器は、粒子エネルギーを、連続的にも、非連続的にも調整するように構成され得る。例えば、連続的変化と非連続的変化の組合せを、一方の標的ボリュームの治療に、又は異なる標的ボリュームの治療に使用することができる。柔軟な治療計画及び柔軟な治療が実現され得る。
可変エネルギーを有する粒子ビームを出力する粒子加速器は、照射治療を正確にすることができ、また治療に使用される追加のデバイス(加速器以外)の数を減らすことができる。例えば、出力粒子ビームのエネルギーを変化させるためのデグレーダの使用が低減されるか、又は使用しないようにできる。強度、集束などの粒子ビームの特性は、粒子加速器側で制御され、粒子ビームは、追加のデバイスからの実質的な妨害を受けることなく標的ボリュームに到達することができる。ビームエネルギーの比較的高い変化率は、治療時間を短縮し、治療システムの効率的な使用を可能にし得る。
幾つかの実施例では、図1のシンクロサイクロトロン502などの、加速器は、加速器内の磁場を変化させることによって粒子又は粒子ビームを可変エネルギー準位まで加速するが、これは、磁場を発生させるためにコイルに印加される電流を変化させることによって実現され得る。図3、図4、図5、図6、及び図7に示されているように、例示的なシンクロサイクロトロン10(例えば、図1の502)は、粒子源90を収容する磁石システム、高周波駆動システム91、及びビーム引き出しシステム38を備える。図28は、可変エネルギー加速器で使用され得る磁石システムの一例を示している。この例示的な実施例では、磁石システム1012によって確立される磁場は、2つのコイルセット40aと40b、42aと42bが発生することができる磁場の最大値の約5%から約35%まで変化し得る。磁石システムによって確立される磁場は、2つのコイルセットと成形された強磁性(例えば、低炭素鋼)構造体のペアとの組合せを使用して収容されている陽子ビームの集束を維持するのに適切な形状を有し、その例は上に提示されている。
それぞれのコイルセットは、電流を受けるための環状コイルの分割ペアであってよい。幾つかの状況において、両方のコイルセットが超電導である。他の状況では、ただ1つのコイルセットのみが超電導であり、他のセットは非超電導又は常電導である(以下でさらに説明されているように)。また、両方のコイルセットが非超電導であることも可能である。コイルに使用するのに適した超電導体は、ニオブ3スズ(Nb3Sn)及び/又はニオブチタンを含む。他の常電導体は、銅を含むことができる。コイルセットの作製例について以下でさらに説明する。
2つのコイルセットは、直列又は並列に電気的に接続され得る。幾つかの実施例では、2つのコイルセットが受ける全電流は、約200万アンペア回数から約1000万アンペア回数、例えば、約250万から約750万アンペア回数、又は約375万アンペア回数から約500万アンペア回数までを含み得る。幾つかの例では、一方のコイルセットは、全可変電流の固定(又は一定)部分を受けるように構成され、他方のコイルセットは、全電流の可変部分を受けるように構成される。2つのコイルセットの全電流は、一方のコイルセット内の電流の変化と共に変化する。他の状況では、両方のコイルセットに印加される電流は変化し得る。2つのコイルセット内の可変全電流は、変化する大きさを有する磁場を発生することができ、次いで、これは、粒子の加速経路を変化させ、可変エネルギーを有する粒子を発生する。
一般的に、コイルによって生成される磁場の大きさは、コイルに印加される全電流の大きさに応じて一定の比率で増減し得る。この一定の比率の増減に基づき、幾つかの実施例では、磁場強度の直線的変化はコイルセットの全電流を直線的に変化させることによって実現され得る。全電流は比較的高速で調整することができ、これにより、磁場及びビームエネルギーが比較的高速で調整される。
上記のTable 1(表1)に反映されている例では、コイルリングの幾何学的中心における電流の値と磁場の値との比は、1990:8.7(約228.7:1)、1920:8.4(約228.6:1)、1760:7.9(約222.8:1)である。したがって、超電導コイルに印加される全電流の大きさを調整することで、磁場の大きさを比例調整することができる(比に基づき)。
Table 1(表1)の例における全電流に対する磁場の一定の比率の増減も、図26のプロットに示されており、BZは、Z方向に沿った磁場であり、Rは、Z方向に垂直な方向に沿ったコイルリングの幾何学的中心から測定された径方向距離である。磁場は、幾何学的中心に最高値を有し、距離Rが増大するにつれ減少する。曲線1035、1037は、それぞれ1760アンペア及び1990アンペアである異なる全電流を受ける同じコイルセットによって生成される磁場を表す。引き出される粒子の対応するエネルギーは、それぞれ、211MeV及び250MeVである。2つの曲線1035、1037は、実質的に同じ形状を有し、曲線1035、1037の異なる部分は、実質的に平行である。結果として、曲線1035又は曲線1037のいずれかが、他方の曲線と実質的に一致するように直線的にシフトされるものとしてよく、これは磁場がコイルセットに印加される全電流に応じて一定の比率で増減し得ることを示す。
幾つかの実施例では、全電流に対する磁場の一定の比率の増減は、完全でない場合がある。例えば、磁場とTable 1(表1)に示されている例に基づき計算された電流との間の比は一定でない。また、図26に示されているように、一方の曲線を直線的にシフトさせても、他方の曲線と完全には一致し得ない。幾つかの実施例では、全電流は、一定の比率の増減が完全であるという仮定の下でコイルセットに印加される。標的磁場(一定の比率の増減が完全であるという仮定の下)は、それに加えてコイルの特徴、例えば、幾何学的形状を、一定の比率の増減の不完全さを相殺するように変えることによって生成され得る。一例では、強磁性体(例えば、鉄)のロッド(磁気シム)を磁気構造体の一方又は両方から挿入するか、又は取り出すことができる。コイルの特徴は、一定の比率の増減が完全であり電流のみを調整すればよいという状況と比較して磁場調整の速度が実質的な影響を受けないように比較的高速に変えることができる。鉄製ロッドの例では、ロッドは、秒又は分の時間尺度、例えば、5分以内、1分以内、30秒未満、又は1秒未満の時間で追加又は取り外しを行うことができる。
幾つかの実施例では、コイルセットに印加される電流などの、加速器のセッティングは、コイルセット内の全電流に対する磁場の一定の比率の実質的な増減に基づき選択され得る。
一般的に、所望の範囲内で変化する全電流を発生させるために、2つのコイルセットに印加される電流の組合せが使用され得る。一例では、コイルセット42a、42bは、磁場の所望の範囲の下限境界に対応する固定された電流を受けるように構成され得る。Table 1(表1)に示されている例では、固定された電流は、1760アンペアである。それに加えて、コイルセット40a、40bは、磁場の所望の範囲の上限境界と下限境界との間の差に対応する上限境界を有する可変電流を受けるように構成され得る。Table 1(表1)に示されている例では、コイルセット40a、40bは、0アンペアと230アンペアとの間で変化する電流を受けるように構成される。
別の例では、コイルセット42a、42bは、磁場の所望の範囲の上限境界に対応する固定された電流を受けるように構成され得る。Table 1(表1)に示されている例では、固定された電流は、1990アンペアである。それに加えて、コイルセット40a、40bは、磁場の所望の範囲の下限境界と上限境界との間の差に対応する上限境界を有する可変電流を受けるように構成され得る。Table 1(表1)に示されている例では、コイルセット40a、40bは、−230アンペアと0アンペアとの間で変化する電流を受けるように構成される。
粒子を加速するための可変全電流によって生成される全可変磁場は、4テスラより大きい、例えば5テスラより大きい、6テスラより大きい、7テスラより大きい、8テスラより大きい、9テスラより大きい、又は10テスラより大きく、最大約20テスラまで、例えば、最大約18テスラまで、最大約15テスラまで、又は最大約12テスラまでの、最大の大きさを有するものとしてよい。幾つかの実施例では、コイルセット内の全電流の変化により、磁場は約0.2テスラから約4.2テスラ以上、例えば、約0.2テスラから約1.4テスラ又は約0.6テスラから約4.2テスラだけ変化し得る。幾つかの状況において、磁場の変化量は、最大の大きさに比例し得る。
図27は、粒子ビームのそれぞれのエネルギー準位について一定のRF周波数範囲にわたってディープレート100上で電圧を掃引し、粒子ビームエネルギーが変化するときに周波数範囲を変化させるための例示的なRF構造体を示している。ディープレート100の半導体表面103、105は、内部導体1300に接続され、外部導体1302内に収納される。電源を内部導体に結合する電力結合デバイス1304を通して電源(図示せず、例えば、振動する電圧入力)から高電圧がディープレート100に印加される。幾つかの実施例では、結合デバイス1304は、内部導体1300上に位置決めされ、電源からディープレート100への電力伝送を行う。それに加えて、ディープレート100は可変リアクタンス素子1306、1308に結合されており、それぞれの粒子エネルギー準位についてRF周波数掃引を実行し、異なる粒子エネルギー準位についてRF周波数範囲を変更する。
可変リアクタンス素子1306は、モータ(図示せず)によって回転可能である複数のブレード1310を有する回転コンデンサであってよい。RF掃引のそれぞれのサイクルにおいてブレード1310をかみ合わせるか、又はかみ合わせを外すことによって、RF構造体のキャパシタンスが変化し、そのため、RF構造体の共振周波数が変化する。幾つかの実施例では、モータの1/4サイクル毎に、ブレード1310は互いにかみ合う。RF構造体のキャパシタンスが大きくなり、共振周波数が下がる。このプロセスは、ブレード1310のかみ合わせが外れるときに逆転する。結果として、ディープレート103に印加される高電圧を発生させるために要求される、またビームを加速するために必要な電力を、大幅に減らすことができる。幾つかの実施例では、ブレード1310の形状を、時間に対する共振周波数の必要な依存性を生じるように機械加工する。
RF周波数の発生は、共振器内のRF電圧の位相を感知し、RFキャビティの共振周波数の近くで交流電圧をディープレート上で維持することによってブレード回転と同期する。(ダミーディーは、接地されるが、図27には示されていない)。
可変リアクタンス素子1308は、プレート1312と内部導体1300の表面1316とによって形成されるコンデンサであるものとしてよい。プレート1312は、表面1316に向かう、又は表面1316から遠ざかる方向1314に沿って移動可能である。コンデンサのキャパシタンスは、プレート1312と表面1316との間の距離Dが変化すると変化する。1つの粒子エネルギーについて掃引されるそれぞれの周波数範囲について、距離Dは設定値にあり、周波数範囲を変化させるために、プレート1312は出力ビームのエネルギーの変化に応じて移動される。
幾つかの実施例では、内部導体1300及び外部導体1302は、銅、アルミニウム、又は銀などの、金属材料から形成される。ブレード1310及びプレート1312も、導体1300、1302と同じ、又は異なる金属材料から形成され得る。結合デバイス1304は、導電体とすることができる。可変リアクタンス素子1306、1308は他の形態を有することができ、他の方法でディープレート100に結合し、それによりRF周波数掃引及び周波数範囲変更を実行することができる。幾つかの実施例では、単一の可変リアクタンス素子は、両方の可変リアクタンス素子1306、1308の機能を実行するように構成され得る。他の実施例では、2つよりも多い可変リアクタンス素子が使用され得る。
また本明細書において説明されているのは、限定はしないが、図1から図28のシステムに関して説明されている磁石コイルを含む磁石コイルの位置を制御するためのシステムの例である。一般に、磁石は、電流を伝導し磁場を発生する1つ又は複数のコイルを備えるものとしてよい。限定はしないが、磁石の全回転又は部分的回転を含む移動は、結果として、コイルの意図しない変位を引き起こし得る。例えば、運動中に受ける重力は、望まれも予測されもしなかった仕方でコイルを移動させる可能性がある。他の要因も、同様に望ましくない又は予測されないコイル変位を引き起こし得る。例えば、磁石構造が変更される、例えば、構成要素が置き換えられるか、又は構成要素が緩むかもしくは固定される可能性がある。コイル変位は、予想外の又は望ましくない仕方で磁石が発生する磁場を変化させることもできる。幾つかの例では、変位したコイルを使用して発生した磁場の形状及び/又は強度は、意図されたものと異なることがある。磁場の変化は、磁石を採用しているシステムの動作に悪影響を及ぼし得る。示されているように、幾つかの用途では、例えば、ミリメートル以下の範囲内の非常に小さな変位であっても、重大な影響を有することがある。
したがって、本明細書で説明されている例示的なシステムは、1つ又は複数の磁石コイルの変位を補償する、例えば、補正するために使用され得る。本明細書で説明されている例示的なシステムは、限定はしないが、磁石の全回転又は部分的回転の結果生じるものを含む重力によって引き起こされる変位を補正するための可動磁石コイルに対応できる。しかしながら、コイル位置決めシステムは、この文脈での使用に限定されず、磁石コイル又は他の電磁構造の位置を変更するために適切な任意の文脈において使用され得る。例示的なコイル位置決めシステムは、例えば、ミリメートル以下の移動からミリメートル、センチメートル、デシメートル、メートルなどのオーダーの移動までの任意の適切な粒度で、コイル移動を発生させるように構成され得る。
この点に関して、1つ又は複数の磁石コイルの変位を補償する、例えば、補正することは、コイルを元の(例えば、所定の)位置に移動して戻すことを含み得るか、又はコイルを任意の適切な位置に移動して望ましい磁場の形状及び/又は大きさを生み出すことを含み得る。例えば、コイルが移動され得る先の最終位置は、基準点に対して相対的に元の位置であり得るか、又はそうでなくてもよい。むしろ、移動は、磁場分布が特定の用途に対して望ましい分布であるようにコイルの磁場分布を調整するために実行されてよい。幾つかの実施例では、コイルは、磁場に対する目標分布(例えば、特定の用途に対して望ましい分布)に達するように移動され得る。幾つかの実施例では、目標分布は、公称標的から許容可能な所定の量以下、又はそれ以上ずれた分布を含む。
例示的な実施例では、コイル位置決めシステムは、移動されるべき1つの(又は複数の)コイルへの物理的結合を含む。この物理的結合は、コイルを移動するように構成されているデバイスの間の直接的物理的接続、又はコイルとコイルを移動するように構成されているデバイスとの間の1つ又は複数の介在構造を含む間接的物理的接続であってもよい。いずれの場合も、例示的な物理的結合は、物理的結合に印加される適切な力がコイルの移動を引き起こすように構成され、配置構成され、コイルに接続される。幾つかの実施例では、力は、物理的結合を引っ張り、移動を生じさせることを含み得る。例えば、物理的結合は、コイルの移動を生じさせるように張力が高められ得る1つもしくは複数のストラップ又は他の部材を備え得る。幾つかの実施例では、力は、物理的結合を押して移動を生じさせることを含み得る。例えば、物理的結合は、コイルを押すことによってコイルの移動を生じさせるように印加された圧力に応答する1つもしくは複数の剛体部材を含み得る。物理的結合は、剛体、半剛体、及び非剛体の結合の任意の適切な組合せを含み得る。
物理的結合を介したコイルの移動は、コンピュータ制御されるものとしてよい。例えば、1つ又は複数の処理デバイス(「処理デバイス」と称される)は、物理的結合を介してコイルの移動を制御するための適切な命令を実行し得る。処理デバイスは、移動前、移動中、及び移動後のコイルの位置に関する情報を受信し、コイルが正しい位置で終わるようにコイルの物理的位置を制御するものとしてよい。
コイルの位置に関する情報は、コイルの位置が決定されるか、又は推論され得る際に基づくコイルの位置もしくは他の情報を指示する測定結果を含むか、又は測定結果であってよい。幾つかの実施例では、コイル位置決めシステムは1つ又は複数の変位センサを備えるものとしてよく、これは磁石を保持するハウジングに、又は別の適切な構造に取り付けられ、磁石の移動(例えば、回転)前、移動中、及び移動後のコイルの位置(例えば、ハウジングに対して相対的な)の測定結果を取得し得る。変位センサの例は、限定はしないが、光センサを含む。センサによって取得される測定結果は、移動前、移動中、及び移動後にコイルの位置を決定し、それによって、もしあれば意図しない移動があったかどうかを決定するために処理デバイスによって使用され得る。次いで、コイル位置決めシステムは、コイルを意図した位置まで移動するために物理的結合を介してコイルの位置を制御し得る。例えば、コイルは、コイルの磁場分布を調整する(例えば、補正する)ためにハウジング内の所定の又は他の適切な位置に移動させられるものとしてよい。
幾つかの実施例では、コイル位置決めシステムは、ハウジングに、又は別の適切な構造に取り付けられた1つ又は複数の磁場センサを備え得る。磁場センサの例は、限定はしないが、ホール効果センサを含む。磁場センサは、磁場センサに対して相対的なコイルによって生成される磁場の変化を検出するように構成され得る。磁場のこの検出された変化は、コイルの移動(例えば、ハウジングに対して相対的な)又は他の何らかの望ましくないもしくは意図されていない原因を指示するものとしてよく、その移動の大きさ及び方向を決定するために使用され得る。例えば、処理デバイスは、磁石の特定の配向に対して磁場の予想される大きさ及び形状を表すデータにアクセスできるものとしてよい。磁場センサによって検出される磁場は、処理デバイスからアクセス可能なデータによっても表され得る。処理デバイスは、予想される磁場に関するデータ及び磁場センサによって検出される磁場の変化に関するデータを使用して、意図した磁場を発生させるためにコイルの位置をどのように変更するかを決定し得る。例えば、コイルは、望ましい配向から望ましくない配向に移動している可能性がある。コイル位置決めシステムは、例えば、コイルをそれらが元々移動された方向とは反対の方向に移動することによって、コイルを望ましい配向に移動して戻すために物理的結合を介してコイルの位置を制御し得る。幾つかの実施例では、コイル位置決めシステムはコイルをその元の位置に戻すのではなく、望ましい磁場分布を発生する任意の適切な位置に移動し得る。
コイルの位置決めを物理的に、例えば、物理的結合を介してコイルに力を加えることによって、制御することは、コイル位置決めの他の方法に勝る利点を有し得る。例えば、物理的位置決めはコイル移動を直接制御し、コイルに物理的に接触することなくコイル位置を制御するシステムに比べて高い精度のコイル位置決めを可能にし得る。
本明細書で説明されているコイル位置決めシステムは、任意の適切な文脈において使用され得る。図29は、地面1416に対して相対的に、例えば、矢印1412の方向の回転を行うマウント1411上で支持されている磁石1410を示すブロック図である。マウント1411の一部のみが、図29に示されている。マウントによって可能にされる回転は、360°の回転又は360°未満の回転、言い換えると、部分的回転であってよい。マウントの例は、限定はしないが、回転式ガントリー、ロボットアーム、回転可能心棒もしくは軸、加速器が移動し得る際に沿う軌道、又は他の適切な構造を含み得る。磁石1410は、電流を伝導し磁場を発生するコイル1413、1414を備えるものとしてよい。2つのコイルが図示されているが、幾つかの実施例では、磁石は、単一のコイル又は2つより多いコイルを有し得る。コイルは、超電導又は非超電導であってよい。超電導コイルの場合、任意の適切な超電導材料が使用されてよい。例えば、超電導材料は、限定はしないが、ニオブ−スズ/トリニオブ−スズ(Nb3Sn)、ニオブ−チタン(NbTi)、バナジウム−ガリウム(V3Ga)、ビスマスストロンチウムカルシウム酸化銅(BSCCO)、イットリウムバリウム酸化銅(YBCO)、又は二ホウ化マグネシウム(MgB2)の材料のうち1つ又は複数を、単独で、又は組み合わせて含み得る。非超電導コイルについては、材料は、銅又は任意の他の適切な導体であるか、又はこれらを含み得る。
図29の例では、磁石1410は、コイルが発生する磁場を整形する1つ又は複数の磁極片(例えば、磁気ヨーク)を備え得る。幾つかの実施例では、磁極片は、省かれてよい。図29の例では、磁石1410は、地面1416などの基準点に対して相対的な回転などの、移動時に磁石1410を保持するハウジング1415を備える。ハウジング1415は、真空エンクロージャ、磁気ヨーク、磁極片、これらの任意の適切な組合せ、又は単独で、又は真空エンクロージャ、磁気ヨーク、もしくは磁極片と組み合わせた任意の他の適切な構造であるか、又はこれらを含み得る。ハウジングを含む実施例では、支持体は磁石をハウジングの内側に保持する(例えば、懸架する)ものとしてよい。任意の適切な数の支持体が使用され得る。この例では、ハウジング1415は破線輪郭形態で図示されており、ハウジングの内側にある磁石が見えるように、ハウジングが磁石の外部にあることを指示する。この例では、ハウジングは実質的に磁石を囲み、しかしながら、他の例では、ハウジングは磁石に隣接するか、磁石の境界を形成するか、磁石を囲むか、又は磁石を部分的に囲んでいる場合がある。ハウジングは、導電性又は非導電性材料から作られるものとしてよく、磁気及び/又は熱シールドを構造内に組み込み得る。幾つかの実施例では、ハウジングは完全に省かれてもよく、磁石はハウジングを介して間接的に結合される代わりにマウント1411に直接結合されてもよい。
磁石1410は、限定はしないが、患者治療システム又は撮像システムなどの、医療システムを含むより大型のシステムの一構成要素であり得る。幾つかの実施例では、磁石は、粒子(例えば、陽子)治療システムなどの放射線治療システムの一部であってよく、その例は図1から図28に関して説明されている。例えば、磁石1410は、本明細書において説明されているような、粒子加速器の加速磁石であってよい。磁石1410は、偏向磁石であってよい。例えば、磁石1410は、粒子ビーム走査システムの場合のように、粒子ビームを照射標的に向かって、及び照射標的を横切って、導くように構成され得る。磁石1410は、集束磁石であってよい。例えば、磁石1410は、出力する前に粒子ビームを集束させるように構成され得る。ここで取り上げた例示的な磁石用途は、実例として示したものであり、網羅していない。
限定はしないが、磁石の配向の変化を含む磁石の移動の結果生じる力(例えば、重力)は、コイルの望ましくない変位を引き起こし得る。例えば、コイルは、ハウジングに対して相対的に、又はコイルの予想される標的位置に対して相対的に単純に、変位され得る。この変位は、磁石が発生する磁場の大きさ及び/又は形状に影響を及ぼすことがあり、それによってその磁石が一部となっているシステムの動作に影響を及ぼす。例えば、粒子治療システムの場合、コイルの望ましくない変位は、粒子加速器によって出力される粒子のエネルギー、腫瘍の走査中の粒子ビームの標的設定、及び/又は集束が正しく実行されない場合の粒子ビームの鮮明度もしくは強度に影響を及ぼし得る。
したがって、磁石1410は、本明細書で説明されているコイル位置決めシステムの一実施例を備える。この例では、コイル位置決めシステムはコンピュータ制御される、すなわち、コイル位置決めシステムは適切な命令(例えば、コンピュータプログラム)を実行する1つ又は複数の処理デバイスによって制御される。幾つかの実施例では、磁石、ハウジング、又は他の接続されている構造は、独立して、又はコンピューティングシステム1419と連携して、のいずれかで、コイル位置決めシステムの動作を制御する1つ又は複数の組み込み処理デバイス1418を備える。幾つかの実施例では、磁石はオンボードインテリジェント機能を備えず、コイル位置決めシステムはコイル位置決めシステムを操作する電子機器に直接的に、コンピューティングシステム1419によって提供されるコマンド及び/又は制御信号1407によって制御される。本明細書において、「処理デバイス」への参照は複数の処理デバイスを含み、「コンピューティングシステム」又は「コンピュータシステム」への参照は1つ又は複数の処理デバイスを含み得る。
この例では、コイル位置決めシステムは、磁石もしくは関連する構造(例えば、磁石ハウジング)上に取り付けられるか、又は他の何らかの形で接続される、1つ又は複数のアクチュエータ1420aから1420dを備える。図29の例では、4つのアクチュエータがあるが、本明細書において説明されているように、任意の適切な数のアクチュエータが使用されてよい。幾つかの実施例では、各アクチュエータは、少なくとも幾つかの回転角度に対してビーム性能を改善するために試験することによって決定される補正コイル位置を再現するように構成される。幾つかの実施例では、各アクチュエータは、コイル位置と共に変化するコイルが発生する磁場を測定するために使用されるセンサからのビーム方向又は読み出しなどの、制御パラメータに合わせて能動的に維持するように構成されているサーボ制御アクチュエータであってよい。
各アクチュエータは、それぞれの物理的結合1421aから1421dを介してコイルに接続される。各物理的結合は、アクチュエータとコイルとの間の力の伝達を可能にする任意の適切な物理的構造もしくは物理的構造の組合せであるか、又はこれらを含み得る。したがって、アクチュエータとコイルとの間の物理的結合は、直接物理的接続であり得るか、又は1つもしくは複数の介在構成要素を含む物理的接続であり得る。介在構成要素が存在するにもかかわらず、幾つかの実施例では、物理的結合は、力がコイルの移動及びしたがって位置を制御するためにアクチュエータからコイルに向かって、又はコイルから遠ざかる方へ向けられるように構成され得る。コイルの位置決め又は位置変更は、リアルタイムで実行され得るか、又はコイルの位置決めがコイル移動の後に実行され得る。幾つかの例では、リアルタイム制御は、コイルがまだ動いている間に望ましくないコイル移動を補正するようにコイルの位置決め及び位置変更を徐々に行うことを含む。
幾つかの実施例では、単一のアクチュエータがそれぞれの物理的結合を介して複数のコイルに接続されてよい。例えば、幾つかの実施例では、単一のアクチュエータは、単一のアクチュエータが接続される複数のコイルのうち選択された1つを制御するように構成され得る。幾つかの実施例では、単一のアクチュエータは、単一のアクチュエータが接続されるすべてのコイルを、同時に、制御するように構成され得る。
幾つかの実施例では、各物理的結合は、磁石コイルに直接的に又は間接的に、のいずれかで、一方の端部のところで接続され、アクチュエータに直接的に又は間接的に、のいずれかで、他方の端部のところで接続されている1つ又は複数の部材を備える。物理的結合は、剛体結合、非剛体結合、又は半剛体結合であってよい。剛体である結合は、数十トンのオーダーの重さが存在しても弾性をほとんど又は全く有しない結合を含み得る。半剛体である結合は、例えば数十トンのオーダーの、より大きな重さが存在している場合に弾性を有する結合を含み得る。非剛体である結合は、説明されているものより小さい例示的な重さであっても弾性を有する結合を含み得る。
剛体結合は、コイルに向かう方向に力を加えることで、すなわち、剛体結合を介してコイルを押すことによって、コイル位置の制御を可能にし得る。剛体結合は、また、コイルから遠ざかる方向に力を加えることによって、すなわち、剛体結合を介してコイルを引っ張ることによって、コイル位置の制御が実装されることを可能にし得る。幾つかの場合において、移動されるべきコイル及び関連する構造の重量に応じて、コイルに向かって、又はコイルから遠ざかる方へ力を加えることで、コイル位置を制御するために半剛体物理的結合も使用され得る。半剛体結合又は非剛体結合は、コイルから遠ざかる方向に力を加えることによって、すなわち、コイルを引っ張ることによって、コイル位置の制御が実装されることを可能にし得る。言い換えると、コイルを引っ張る力で移動を行わせるために、結合にかかる張力が増加させられ得る。半導体又は非剛体物理的結合を実装するための材料は、それが受ける荷重の下で破壊に耐える十分な引張強さを有する。例えば、数十トン(例えば、30トン)の測定された荷重の場合、図5に関して説明されているようなカーボンファイバ及びグラスファイバなどの材料は、引張応力の下で物理的結合を実装するために使用され得る。物理的結合の一部の一例は、図5に関して説明されているストラップ402、404、406である。このストラップは、図29の物理的結合において使用されてよいが、物理的結合に対する他の構成も、そのストラップに加えて、又はそのストラップの代わりに、図29のシステムにおいて使用されてよい。
図29は、コイル1413、1414の位置決めを制御するため磁石1410の近くに取り付けられた4つのアクチュエータ、コイル毎に2つのアクチュエータ、を示している。この点に関して、幾つかの実施例では、アクチュエータは磁石の構成要素上に取り付けられてよく、幾つかの実施例では、アクチュエータは別の場所に(例えば、ハウジングに)、ただしコイルへの物理的結合により取り付けられ得る。4つのアクチュエータが図29に示されているが、任意の適切な数のアクチュエータが使用されてよい。例えば、ただ1つのアクチュエータがあるか、又は2つ又はそれ以上のアクチュエータがあってもよい。幾つかの実施例では、以下で説明されているように、磁石の各側に4つのアクチュエータがあってよい。例えば、本明細書で説明されているように、8個のアクチュエータが対称的に、磁石のハウジングの各側に4個、配置されてもよい。この点に関して、幾つかの実施例では、アクチュエータは、磁石に対して相対的に対称的に配置され、これにより各アクチュエータ上の荷重を均一に平衡させるか、及び/又はコイルの位置決めの仕方を決定する際の自由度を高め得る。一例では、1つのアクチュエータが各磁極面に配置される、2つのアクチュエータが単一の磁極面の対向する側に配置される、などであってよい。使用されるアクチュエータの数、及びその配置は、荷重(磁石の)サイズ、移動の予想される方向、などの多数の要因に依存し得る。動作時に、アクチュエータのうちいずれか1つ、2つ、又はそれ以上は、同時に動作してコイルを移動し望ましくないコイル変位を補正するように制御可能とされるものとしてよい。
幾つかの実施例では、磁石1410はコイル1413、1414を保持するための支持構造を備える。そのような支持構造の例は、図16及び図24に示されているものなどの、リバースボビンであるか、又はこれを含むが、他の種類の支持構造が使用されてもよい。この例では、コイル1413、1414への物理的結合は、支持構造/リバースボビン、ストラップなどの1つ又は複数の部材、図5のストラップ、及びアクチュエータ1420aから1420dを含み得る。幾つかの実施例では、各コイルへの物理的結合は、ストラップではなく、支持構造/リバースボビン及びアクチュエータを含み得る。幾つかの実施例では、各コイルへの物理的結合は、支持構造/リバースボビンではなく、ストラップ及びアクチュエータを含み得る。アクチュエータ1420aから1420dは、それぞれの矢印1425aから1425dのいずれかの方向に力を加えることによってコイルを移動させるように、個別に、又は2つもしくはそれ以上組み合わせて、のいずれかで制御可能とされる。すべてのアクチュエータが磁気コイルを移動させるように動作する必要はない。例えば、いずれか1つ、2つ、又は他の適切なサブセットが、他のアクチュエータが動作していない間に、力を加え得る。本明細書において説明されているように、アクチュエータは、磁石の移動(例えば、回転)によって引き起こされる基準に対して相対的なコイルの変位を補正するように1つ又は複数のセンサ1424の出力に基づきコンピュータ制御されてよい。
図34及び図35は、コイル位置決めシステム内で使用され得るアクチュエータ1460の一例を示している。図34は、アクチュエータの斜視図を示し、図35Aはアクチュエータの側面図を示し、図35Bは直線A−Aに沿った図35Aのアクチュエータの側面破断図を示す。説明されているように、アクチュエータ1460は、コイル(例えば、図29のコイル1413又は1414)への物理的結合(例えば、1421a、1421b、1421c、又は1421d)に接続し、またその一部である。そのようなものとして、アクチュエータ1460は、コイルの1つ又は複数の位置を、磁場制御に似た間接的手段を通じてではなくむしろ物理的に変更するように制御可能とされる。この例では、アクチュエータ1460は、本体部1461と、本体部を通過するシャフト内に収められ、そのシャフトを通り、それに相対的に移動する、差動ネジ1462と呼ばれる高ギア比アクチュエータとを備える。
図34及び図35の例では、アクチュエータ1460の本体部1461は、磁石又は磁石ハウジングに取り付け得る。例えば、本体部及びハウジングは一緒に溶接されるか、又は任意の他の適切な方式では嵌め合わされ得る。幾つかの実施例では、ハウジングは、磁石を真空環境内に維持する、真空エンクロージャであるか、又はそれを含み得る。これに似た例では、アクチュエータと磁石ハウジング(真空エンクロージャ)との間の接続は気密である。
ハウジングの穴(図示せず)は、差動ネジ1462と実質的に整列し、アクチュエータがコイルへの物理的結合に接続し、したがってその一部となることを可能にする。この例では、差動ネジ1462は、コイルを保持する支持構造に接続する部材に接続する。本体部1461内のシャフトを通る差動ネジの移動を制御することによって、対応するコイルへの物理的結合は、コイルの移動及び位置決め/位置変更を可能にする。この例では、差動ネジ1462は矢印1463の方向に移動可能であり、それによって、コイルへの物理的結合にかかる張力を増大させ、コイルの移動を実施する。差動ネジ1462は矢印1464の方向に移動して、コイルへの物理的結合にかかる張力を解放し、異なる方向へのコイルの移動を可能にする(例えば、別のアクチュエータが移動を制御することを可能にする)。幾つかの実施例では、差動ネジ1462は、矢印1464の方向に移動して、事実上、コイルを押すものとしてよい。
差動ネジ1462が物理的結合に引張荷重を印加してコイルを移動させる例では、アクチュエータの本体部1461はそれが取り付けられる構造(例えば、真空エンクロージャハウジング)に対して圧縮力を加えている状態にある。より具体的には、例示的な動作において、差動ネジ1462は方向1463に移動し、物理的結合にかかる張力を増大させ(例えば、図5のストラップ又は他の適切な構造を引っ張ることによって)、支持構造(例えば、図16及び図24のリバースボビン)を移動し、そうして、それによって支持されているコイルを移動する。この引っ張る動作は、アクチュエータ本体部1461をハウジングに押し付ける。したがって、ハウジングは、典型的には、損傷することなく著しい力に十分抵抗できる金属又は他の材料から作られる。モータ(図示せず)が、磁石に向かっての、及び磁石から遠ざかる方への差動ネジの移動を駆動するためにコイル位置決めアクチュエータ1460の本体部内に備えられるか、又は接続されてよい。モータ(図示せず)は、組み込み処理デバイス又は外部処理デバイスからのコマンドに応答してねじを駆動するように構成される。4つのアクチュエータが図29に示されているが、コイルを位置決めするために任意の適切な数のアクチュエータが使用されてよく、アクチュエータはハウジング上の任意の適切な位置に配置され得る。
コイル位置決めシステムは、適宜、図1から図28に関して説明されている例示的な粒子治療システムに組み込まれ得る。図30から図33及び図36から図45も、コイル位置決めシステムの実施例を含み得る例示的な粒子治療システムの構成要素を示している。
コイル位置決めシステムを含み得る粒子治療システムの一例は、陽子又はイオン治療システムである。例示的な粒子治療システムは、移動可能なデバイス上に取り付けられた粒子加速器(この例では、シンクロサイクロトロン)を含む。幾つかの例では、移動可能なデバイスは、シンクロサイクロトロンからの粒子ビームが患者体内の任意の標的に当たることを可能にするように患者の位置の周りで加速器を少なくとも部分的に、及び幾つかの場合において完全に回転させることを可能にするガントリーである。粒子加速器を保持し、粒子加速器を患者に対して相対的に回転運動、並進運動、及び/又は枢動運動で移動させるためにガントリーを含む、任意の適切なデバイスが使用されてよい。例えば、粒子加速器は、患者に対して相対的な運動を可能にするように1つ又は複数の軌道に取り付けられ得る。別の例では、粒子加速器は、患者に対して相対的な運動を可能にするように1つ又は複数のロボットアームに取り付けられ得る。回転運動、並進運動、及び/又は枢動運動のうちいずれか1つ又は複数が行われた結果、望ましくないコイル移動が生じ、これはコイル位置決めシステムによって補正できる。
特に、粒子治療システムは、ガントリーによる使用、回転ガントリーによる使用、又は本明細書で説明されている例示的なガントリー構成による使用に限定されない。幾つかの実施例では、例示的なシンクロサイクロトロンは、高い磁場超電導電磁構造を有する。一般に、超電導体は、閾値温度以下に冷却されたときに、すべてではないとしてもほとんどの電気抵抗を失う要素又は金属合金である。その結果、電流が実質的に妨げられることなく超電導体を通って流れる。超電導コイルは、したがって、同じサイズの通常のワイヤに比べて超電導状態でより大きい電流を伝導することができる。超電導コイルが伝導できる電流が大きいので、超電導コイルを採用する磁石は粒子加速に対して高い磁場(B)を発生することができる。さらに、所定の運動エネルギーを有する荷電粒子の曲率半径は、荷電粒子に印加される磁場の増大に正比例して小さくなるので、高磁場超電導電磁構造は、シンクロサイクロトロンをコンパクトに、例えば、比較的小型軽量にすることを可能にする。より具体的には、使用される磁場が高ければ高いほど、粒子回転半径はきつくなり得、それによって、比較的小さい容積内で行われ得る回転の数が増える(すなわち、より大きい非超電導シンクロサイクロトロンに比べて)。その結果、望ましい粒子エネルギー(回転の数が増大すると増加する)は、比較的小さいサイズ及び重量を有するシンクロサイクロトロンを使用して得ることができる。幾つかの実施例では、シンクロサイクロトロンは、患者に対して相対的な陽子センターにおける任意の適切な位置から患者体内の任意の標的に到達できる十分なエネルギーを有する粒子ビームを発生するように構成される。回転半径がきついので、コンパクトな加速器は、例えば、ミリメートル以下のコイル移動によって発生し得る、磁場の小さい誤差の影響を受けやすい場合がある。
例えば、幾つかの実施例では、シンクロサイクロトロンの加速キャビティ内で(例えば、キャビティの中心で)発生する最大磁場は、4テスラ(T)から20Tの範囲内であり得る。幾つかの実施例では、シンクロサイクロトロンの重量は40トン未満である。例えば、シンクロサイクロトロンは、5トンから30トンの範囲内にある重量を有するものとしてよい。幾つかの実施例では、シンクロサイクロトロンは、4.5立方メートル未満の容積を占有する。例えば、シンクロサイクロトロンは、0.7立方メートルから4.5立方メートルの範囲内の容積を占有し得る。幾つかの実施例では、シンクロサイクロトロンは、少なくとも150MeVのエネルギー準位を有する陽子又はイオンビームを発生する。例えば、シンクロサイクロトロンは、150MeVから300MeVの範囲内にある、例えば、230MeVである出力エネルギー準位を有する陽子又はイオンビームを発生し得る。シンクロサイクロトロンの異なる実施例は、述べられていない値を含む、サイズ、容積、及びエネルギー準位に対する異なる値又は値の組合せを有し得る。有利には、本明細書において説明されているシンクロサイクロトロンのコンパクトであるという特質は、治療を1つの部屋、例えば、陽子センターで実施することを可能にする。
図36は、粒子治療システムにおいて使用され得る例示的な超電導シンクロサイクロトロンの構成要素1480の断面図を示している。例えば、構成要素1480は、図1から図28に関して説明されているシステム内の対応する構成要素に対して置き換えられ得る。この例では、構成要素1480は、超電導磁石1481を備える。超電導磁石は、超電導コイル1482及び1483を備える。各超電導コイル1482及び1483は、本明細書で説明されている種類の支持構造であるリバースボビン1488、1489内に取り付けられる。
超電導コイルは、例えば、それ自体が超電導であっても非超電導(例えば、銅)であってもよい中心ストランドの周りに巻かれた複数の超電導ストランド(例えば、4本のストランド又は6本のストランド)から形成され得る。超電導コイル1482、1483の各々は磁場(B)を発生する電流を伝導するためのものである。結果として得られる磁場は、磁気ヨーク1484、1485によって整形される。一例では、低温保持装置は、各コイルを超電導温度、例えば、約4°ケルビン(K)に維持するために液体ヘリウム(He)を使用する。磁気ヨーク1484、1485(又はより小さな磁極片)は、加速される粒子が中に置かれるキャビティ1486の形状を画成する。幾つかの実施例では、磁気シム(図示せず)は、磁気ヨーク又は磁極片を通過し、キャビティ内の磁場の形状及び/又は大きさを変化させ得る。低温保持装置内のコイルの位置に対する変更は、場の形状に、したがってその結果得られる粒子ビームに影響を及ぼすことができる。
この例では、超電導磁石は、超電導コイル1482、1483を保持するためのコイル室を備えるリバースボビン1488、1489を備える、1つ又は複数の支持構造を具備する(図16及び図24も参照)。各コイル室は、事前に巻かれた超電導コイルを保持する。幾つかの実施例では、超電導コイルはリバースボビン内に固定されないが、むしろ、対応するコイル室内に単に置かれ、比較的自由に動く。超電導磁石の動作中に、フープ力が、超電導コイルが外向きに拡大し、それによって超電導コイルをコイル室の外側内壁に押し付けることを引き起こし得る。このフープ力は、移動時にコイルをリバースボビン内の適所に抑えることができる。しかしながら、自由に動く台のせいで、加速器の回転中にコイルが望ましくない移動の影響を受けやすくなり得る。リバースボビン及び超電導コイルを含むアセンブリは、低温質量部と称される構造の一部であるが、それは、アセンブリの少なくとも一部が動作中に低い、例えば、超電導(4°K)の温度に維持されるからである。低温質量部は、支持ストラップによって真空エンクロージャの内側で懸架され得る。これらの支持ストラップは一定の張力がかかっているものとしてよく、本明細書で説明されているように、コイルと、コイル位置決めシステムの一部であるコイル位置決めアクチュエータとの間の物理的結合(幾つかの実施例ではリバースボビンも含み得る)の一部であってよい。
図36に示されている磁石アセンブリの他の特徴は、引き出しチャネル1490と、RF(高周波)ポート1491とを含む。引き出しチャネル1490は、粒子ビームが通る経路である。RFポート1491は、RFエネルギーが加速キャビティに与えられるときに通る経路である。この例では、図36の支持ストラップ1492aから1492dは、磁石アセンブリの一部であってよく、以下でより詳しく説明されるように、低温質量部アセンブリを真空エンクロージャに接続するために使用される。
幾つかの実施例では、磁石の動作は、RFポート1491の半径方向に対して相対的なコイル移動の影響を特に受けやすい。この方向に相対的なコイルの移動は、以下で説明されているように、再生器と向かい合うコイルによって生成される磁場に影響を及ぼし得る。
図37、図38、及び図39を参照すると、超電導磁石アセンブリ1444、例えば、低温質量部は真空エンクロージャ1493内に閉じ込められる。図37は、超電導磁石アセンブリを閉じ込める真空エンクロージャ1493を輪郭形態で示している。図38は、超電導磁石アセンブリの一部を露出させるように切り取られた、真空エンクロージャ1493の図である。アセンブリ1444の周りの熱シールド1497も図示されている。真空エンクロージャ1493は、周波数掃引RF電圧を加速キャビティに導入するためのRFポート1491と、粒子ビームを出力するための引き出しチャネル1490とを含む。図39に輪郭形態で図示され、図36に関して説明されている、磁気ヨーク1484、1485は、図37及び図38の真空エンクロージャ1493を収容する。例えば、ヨーク内に真空エンクロージャを保持する物理的接続があってもよい。この例では、低温質量部を含む、超電導磁石アセンブリ1444は、8本の支持ストラップ1492a、1492b、1492c、1492d、1492e、1492f、1492g、及び1492hを介して真空エンクロージャに取り付けられるが、任意の適切な数の支持ストラップも使用され得る。ストラップの例が、本明細書において説明されている。
図40は、低温質量部(例えば、1444)に接続されているこれらのストラップ1492aから1492hを示している。これらの例では、ストラップ1492aから1492hまで8本の支持ストラップがある。すべてのストラップが、図36から図39の各々に示されているわけではない。これらの例では、アセンブリの各側1498、1499に4本のストラップがある。これらのストラップは、真空エンクロージャからの低温質量部を支持するために一定の外向きの張力を受けている。事実上、低温質量部はストラップによって真空エンクロージャ内に懸架されている。この文脈において、支持ストラップの例示的な外向きの(すなわち、低温質量部から遠ざかる方への)張力は、図40において、真空エンクロージャの方に向けられた低温質量部からの力ベクトル1500aから1500hによって表される。
ストラップは、低温質量部を引っ張るように張力をかけられているが、図38から図40の例では、ストラップは低温質量部を真空エンクロージャ1493(図40を参照)の外周1501に対して相対的に内向きに引っ張る。例えばストラップを矢印1500aから1500hの方向に引っ張ることによって、ストラップにかかる内向きの張力を維持することによって、ストラップを含めても、加速器の全体のサイズを著しく増大させることにはなり得ない。他の実施例(図示せず)において、ストラップは、真空エンクロージャの外面1501に対して相対的に外向きに低温質量部を引っ張るものとしてよい。
説明されているように、単一の真空エンクロージャ内の単一の低温質量部を支持するストラップが複数(例えば、8本のストラップ)あってもよい。以下でより詳しく説明されているように、図34及び図35に示されている種類のコイル位置決めアクチュエータは、ストラップのうち1つ又は複数に接続されてよく、ストラップにかかる張力を制御して低温質量部、及びしたがって磁気コイルを、真空エンクロージャに対して相対的に移動するために使用され得る。これは、患者の治療中に生じ得るような加速器の移動時に、低温質量部、及びしたがって磁気コイルの望ましくない移動を補正又は補償するために行われ得る。幾つかの実施例では、真空エンクロージャは、ヨークに接続され、ヨークの内側にあり、したがって、低温質量部、及びしたがって磁気コイルのこの移動も、ヨークに関する磁気コイルの移動をなすものであってよい。
幾つかの実施例では、図34及び図35に示されている種類のコイル位置決めアクチュエータは、図5に示されている種類のストラップ402、404、406のうち1つ又は複数に接続されてよく、本明細書において説明されている理由から、ストラップにかかる張力を制御して低温質量部、及びしたがって磁気コイルを移動するために使用され得る。
真空エンクロージャ内の低温質量部を支持する複数のストラップのうち幾つか又はすべては、本明細書で説明されているものと異なる構成を有し得る。例えば、支持ストラップは、低温質量部と真空エンクロージャとの間の物理的結合として働く単一要素を備え得る。一般に、任意の適切な物理的結合が、真空エンクロージャ内の低温質量部を支持するために使用されるものとしてよく、本明細書で説明されている種類のコイル位置決めアクチュエータと共に使用され得る。
図41は、本明細書で説明されている種類の粒子加速器1530(例えば、シンクロサイクロトロン)の一部を示している。この例では、磁気ヨークが真空エンクロージャを収納し、この磁気ヨークの一例は磁気ヨーク1484である。コイル位置決めアクチュエータ1460は、ヨーク1484内の穴を通して、真空エンクロージャに接続されているストラップ(図示せず)に接続する。コイル位置決めアクチュエータは、図34及び図35に示されている種類のものであってよい。それらの図を参照すると、この例では、差動ネジ1462がストラップの構造を通過し、その中に入っている。例えば、ストラップの構造は、ねじ切りされ、コイル位置決めアクチュエータの差動ネジを受け入れ、それに嵌合し/接続する、内部シャフトを有する。ストラップの構造のシャフト内で差動ネジが移動すると、ストラップが移動し、次いで、これにより低温質量部が移動し、次いで、これにより低温質量部によって支持されているコイルが移動する。例えば、ストラップの構造のシャフト内で差動ネジが移動すると、差動ネジがどのように作動されるかに応じて、ストラップの張りが強くなったり弱くなったりする。
この点に関して、ストラップは、真空エンクロージャからの低温質量部を支持するために張力がかかっている状態に維持される。差動ネジが作動されると(例えば、処理デバイスからの命令に応答して)、この張力が増大し、それによってコイルが望ましい位置に第1の方向で移動され得る。ストラップが差動ネジによってすでに大きな張力を受けている場合、差動ネジが作動されて張力が減少し、それによって、例えば、第1の方向と反対の第2の方向へのコイルの移動を円滑にするか、又は可能にし得る。特に、この例では、コイル位置決めアクチュエータは、真空エンクロージャ内に低温質量部を支持されたままにするのに必要な自然張力より低くなるようにストラップの張力を減少させるためには使用されない。任意の1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のコイル位置決めアクチュエータは、同時に動作して低温質量部、及びしたがって超電導コイルを適切な位置に位置決めするように制御され得る。例えば、コイル位置決めアクチュエータは、コイルを何らかの基準に対して相対的に元の位置に置くために使用され得る。
説明されているように、コイル位置決めアクチュエータはコンピュータ制御され、コイル移動を増加的に補正するようにリアルタイムで動作可能であるか、又はコイル移動に続きコイルを意図された磁場分布を達成するのに適切な位置に、例えば、コイルの所定の意図された位置に、位置変更するように動作可能であるものとしてよい。図41は、本明細書で説明されているようにコイル移動を制御する制御信号をコイル位置決めアクチュエータに伝送するための有線接続1531を示している。代替的に、ワイヤレス信号は、コイル位置決めアクチュエータを制御するために使用され得る。
図36を再び参照すると、幾つかの実施例では、粒子加速器は、電離プラズマ柱をキャビティ1486に供給するために粒子源1487(例えば、ペニングイオンゲージ−(PIG源))を備える。PIG源は、上で説明されている種類のものであってよい。例えば、水素ガス、又は水素ガスと希ガスとの組合せは、電離されると、プラズマ柱を発生する。電圧源は、可変高周波(RF)電圧をキャビティ1486に印加してキャビティ内のプラズマ柱から粒子のパルスを加速する。キャビティ内の磁場は、粒子にキャビティ内の軌道上を移動させる形状をとる。コイル位置決めシステムは、キャビティ内の磁場がすべての加速器配向に対して適切な形状を維持することを確実にするために使用され得る。幾つかの実施例では、超電導コイルが発生する最大磁場は、本明細書において説明されているように、4テスラ(T)から2Tの範囲内にあるものとしてよい。例示的なシンクロサイクロトロンは、回転角度が一様とされる磁場であって、半径が大きくなるに従って強度が低下する磁場を採用する。幾つかの実施例では、そのような磁場形状は、磁場の大きさに関係なく達成され得る。
指摘されているように、一例では、粒子加速器はシンクロサイクロトロンである。したがって、加速キャビティ内の粒子を加速するときに、粒子に対する相対論的効果(例えば、粒子質量が増加する)を考慮してRF電圧が一定範囲の周波数にわたって掃引される。超電導コイルに電流を流すことよって発生した磁場は、キャビティの形状と合わせて、プラズマ柱から加速された粒子がキャビティ内の軌道上で加速し、回転の数を増やす毎にエネルギーを増大することを引き起こす。
例示的なシンクロサイクロトロンにおいて、磁場再生器(例が図15、図17、及び図19から図21に関して説明されている)は、キャビティの外側の近く(例えば、その内縁)に位置しており、キャビティの内側の既存の磁場を調整し、これにより、プラズマ柱から加速された粒子の連続的な軌道の、ピッチ及び角度などの配置を変更し、最終的に、粒子は低温保持装置を通る引き出しチャネルに出力される。再生器は、キャビティ内のある地点における磁場を増大し(例えば、キャビティのある領域において約2テスラかそこらの磁場「バンプ」を作り出し)、これにより、その地点の粒子のそれぞれの連続的軌道が引き出しチャネルの入口点に向かって外向きに、粒子が引き出しチャネルに到達するまで進行し得る。引き出しチャネルは、キャビティから、キャビティ内で加速された粒子を受け、パルス粒子ビーム内でキャビティから受けた粒子を出力する。引き出しチャネルは、粒子ビームを粒子加速器から出し、走査又は散乱システムに向かって導くための磁石及び他の構造を含み得る。本明細書において説明されているコイル位置決めシステムは、磁石移動に続き引き出しチャネルの磁石及び他の構造の位置変更を行うために使用され得る。
幾つかの実施例では、再生器に対して相対的な、例えば半径方向のコイル移動は、加速器の動作に特に有害な効果をもたらし得る。例えば、再生器に向かっての、又は再生器から遠ざかるコイルの移動は、再生器の近くの位置の磁場の大きさを変化させ得る。磁場のこの変化は、それらの位置における粒子軌道の形状に影響を及ぼす可能性があり、またそれらの軌道を引き出しチャネルに向けるために必要な要求磁場バンプに影響を及ぼす可能性がある。すなわち、再生器は予想される磁場に基づき較正され得る。しかしながら、再生器のところ、又はその近くの磁場が予想と異なる場合、再生器が発生する磁場は十分でないか、又は強すぎることがあり、このため、粒子が引き出しチャネル内に予想されたとおりに向かわない可能性がある。これらの種類の誤差は、出力された粒子ビームが間違ったエネルギーを有する原因となり得る。本明細書において説明されている例示的なコイル位置決めシステムは、限定はしないが、再生器に対して相対的な加速コイルの変位を補正することを含めて、加速器コイルの変位を補正するために粒子治療システムと共に使用され得る。コイル位置決めシステムが使用され得る再生器の例は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている特許文献7において説明されている。
指摘されているように、超電導コイル(主コイルと呼ばれる)は、比較的高い磁場を発生することができる。例示的な一実施例では、主コイルによって(例えば、加速キャビティの中心で)生成される最大磁場は、4Tから20T又はそれ以上の範囲内にあり得る。例えば、超電導コイルは、4.0T、4.1T、4.2T、4.3T、4.4T、4.5T、4.6T、4.7T、4.8T、4.9T、5.0T、5.1T、5.2T、5.3T、5.4T、5.5T、5.6T、5.7T、5.8T、5.9T、6.0T、6.1T、6.2T、6.3T、6.4T、6.5T、6.6T、6.7T、6.8T、6.9T、7.0T、7.1T、7.2T、7.3T、7.4T、7.5T、7.6T、7.7T、7.8T、7.9T、8.0T、8.1T、8.2T、8.3T、8.4T、8.5T、8.6T、8.7T、8.8T、8.9T、9.0T、9.1T、9.2T、9.3T、9.4T、9.5T、9.6T、9.7T、9.8T、9.9T、10.0T、10.1T、10.2T、10.3T、10.4T、10.5T、10.6T、10.7T、10.8T、10.9T、11.0T、11.1T、11.2T、11.3T、11.4T、11.5T、11.6T、11.7T、11.8T、11.9T、12.0T、12.1T、12.2T、12.3T、12.4T、12.5T、12.6T、12.7T、12.8T、12.9T、13.0T、13.1T、13.2T、13.3T、13.4T、13.5T、13.6T、13.7T、13.8T、13.9T、14.0T、14.1T、14.2T、14.3T、14.4T、14.5T、14.6T、14.7T、14.8T、14.9T、15.0T、15.1T、15.2T、15.3T、15.4T、15.5T、15.6T、15.7T、15.8T、15.9T、16.0T、16.1T、16.2T、16.3T、16.4T、16.5T、16.6T、16.7T、16.8T、16.9T、17.0T、17.1T、17.2T、17.3T、17.4T、17.5T、17.6T、17.7T、17.8T、17.9T、18.0T、18.1T、18.2T、18.3T、18.4T、18.5T、18.6T、18.7T、18.8T、18.9T、19.0T、19.1T、19.2T、19.3T、19.4T、19.5T、19.6T、19.7T、19.8T、19.9T、20.0T、20.1T、20.2T、20.3T、20.4T、20.5T、20.6T、20.7T、20.8T、20.9T、もしくはそれ以上のうち1つ又は複数の大きさの、又はこれらを超える大きさの磁場を発生するために使用され得る。さらに、超電導コイルは、4Tから20Tの範囲外にあるか、又は4Tから20Tの範囲内にあるが、上に特には挙げられていない、磁場を発生する際に使用され得る。
図3、図4、及び図36に示されている実施例などの、幾つかの実施例では、比較的大型の強磁性磁気ヨークは、超電導コイルによって生成される漂遊磁場に対する帰還として働く。幾つかのシステムでは、磁気シールド(図示せず)がヨークを囲んでいる。帰還ヨーク及びシールドは、一緒になって漂遊磁場を減少させ、それによって、漂遊磁場が粒子加速器の動作に悪影響を及ぼす確率を低減する働きをする。
幾つかの実施例では、帰還ヨーク及び遮蔽は、能動的帰還システムによって置き換えられるか、又は増強され得る。例示的な一能動的帰還システムは、主超電導コイルを通る電流と反対の方向に電流を流す1つ又は複数の能動的帰還コイルを備える。幾つかの例示的な実施例では、それぞれの超電導主コイルに対して能動的帰還コイルがある、例えば、2つの能動的帰還コイル(それぞれの主超電導コイルに対して1つ)がある。それぞれの能動的帰還コイルは、対応する主超電導コイルの外側を同心円状に囲む超電導コイルであってもよい。使用され得る能動的帰還システムの一例は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている特許文献1において説明されている。
能動的帰還システムでは、電流は、主コイルを通過する電流の方向と反対の方向で能動的帰還コイルを通過する。これにより、能動的帰還コイルを通過する電流は、主コイルによって生成される磁場と極性が反対である磁場を発生する。その結果、能動的帰還コイルによって生成される磁場は、対応する主コイルから結果として生じる比較的強い漂遊磁場の少なくとも一部を減少させることができる。能動的帰還コイルが加速器の移動中に不意に移動した場合、それによって生成される磁場は、主コイルが発生する場を低減又は散逸させるうえでそれほど効果的でない場合がある。例示的なコイル位置決めシステムは、能動的帰還コイルの変位を補正するための能動的帰還システムを有する粒子治療システムと共に使用され得る。
粒子加速器の引き出しチャネルの出力のところ、又はその近くに、走査システム及び/又は散乱システムなどの、1つもしくは複数のビーム整形要素があり得る。走査システム及び散乱システムは、ビーム拡散器の例である。これらのシステムの構成要素は、治療中の患者に比較的近いところに位置決めするためにノズル上に取り付けられるか、又は他の何らかの方法でそれに付着され得る。しかしながら、幾つかの実施例では、構成要素は、加速器又はガントリーそれ自体により近い位置に(例えば、その上に)取り付けられ(そこに取り付けられている加速器が存在しない場合にはガントリーに取り付けられ)得る。ガントリーは外側ガントリーと称されるが、それは、幾つかの実施例が、外側ガントリーの移動を追い、ビームを送達するためのノズルを備える内部ガントリーを備えるからである。
図42を参照すると、例示的な実施例では、シンクロサイクロトロン1541(本明細書で説明されているような構成を有するものとしてよい(例えば、図3、図4、図36を参照))の引き出しチャネル1540の出力のところに、照射標的の全部又は一部にわたって粒子ビームを走査するために使用され得る例示的な走査構成要素1542がある。図43は、図42の構成要素の例も示している。これらは、限定はしないが、走査磁石1544、電離箱1545、エネルギーデグレーダ1546、及び設定変更可能なコリメータ1548を含む。
動作例では、走査磁石1544は、2次元内で制御可能であり(例えば、直交座標のXY次元)、これにより、これら2次元内で粒子ビームを位置決めし、粒子ビームを照射標的の少なくとも一部(例えば、断面)を横切って移動させる。電離箱1545では、ビームの線量を検出し、その情報を制御システムにフィードバックしてビーム移動を調整する。エネルギーデグレーダ1546は、材料(例えば、1つ又は複数の個別のプレート)を粒子ビームの経路内に及び経路外に移動させて、粒子ビームのエネルギー、したがって粒子ビームが照射標的を貫通する深さを変化させるように制御可能とされる。設定変更可能なコリメータ1548は、粒子ビームが照射標的に到達する前に粒子ビームをトリミングするように制御可能とされる。
図44及び図45は、例示的な走査磁石1544を示している。この例示的な実施例では、走査磁石1544は、X方向の粒子ビーム移動を制御する2つのコイル1561と、Y方向の粒子ビーム移動を制御する2つのコイル1562とを備える。制御は、幾つかの実施例では、一方のコイルの組又は両方の組を通る電流を変化させ、それによって、発生する磁場を変化させることによって達成される。磁場を適切に変化させることによって、粒子ビームは、照射標的上をX及び/又はY方向に移動することができる。走査磁石は、本明細書において説明されている治療プロセスにおける粒子ビームの配置及び/又は方向を制御するために利用され得る。
幾つかの実施例では、走査磁石は、粒子加速器と共に回転する。幾つかの実施例では、走査磁石は、粒子加速器に対して相対的に物理的に移動可能でない。幾つかの実施例では、走査磁石は、粒子加速器に対して相対的に物理的に移動可能であるものとしてよい(例えば、ガントリーによってもたらされる移動に加えて)。幾つかの実施例では、走査磁石は、走査されている照射標的の層の、少なくとも一部、及び場合によっては全部の上で粒子ビームの途切れのない運動があるように粒子ビームを絶えず移動するように制御可能とされるものとしてよい。幾つかの実施例では、走査磁石は、間隔を置いて、又は特定の時刻に制御可能とされる。幾つかの実施例では、粒子ビームを位置決めし、走査中にX及び/又はY方向の粒子ビームのすべての又は部分的な移動を制御するために2つもしくはそれ以上の異なる走査磁石があり得る。幾つかの実施例では、走査磁石1544は、空芯、強磁性(例えば、鉄)芯、又は空気と強磁性体材料との組合せである芯を有し得る。
運動中、走査磁石は、粒子加速に使用される超電導磁石と同じ重力の影響を受ける。すなわち、走査磁石の芯は、意図された(所定の)位置に対して相対的に、移動し、したがって変位され得る。本明細書において説明されているコイル位置決めシステムは、走査磁石のコイルを移動させて回転の結果生じる走査磁石の望ましくない移動を補正又は補償するために使用され得る。例えば、コイル位置決めシステムは、コイルを元の、意図された位置に、又は意図された磁場分布をもたらす任意の適切な位置(コイルの元の位置であってもなくてもよい)に移動するために使用され得る。
図42を再び参照すると、電流センサ1547は、走査磁石1544に接続されるか、又は他の何らかの方法で関連付けられ得る。例えば、電流センサは、走査磁石と通信するが、接続され得ない。幾つかの実施例では、電流センサは、磁石に印加される電流をサンプリングし、これはX方向に走査するビームを制御するためのコイルへの電流及び/又はY方向に走査するビームを制御するためのコイルへの電流を含み得る。動作時に、磁石電流の大きさ(例えば、値)は、線量の量(例えば、強度)と共に、線量が送達される配置毎に記憶され得る。加速器上にあるか、又は加速器から離れた場所にあってよい、ならびにメモリ及び1つ又は複数の処理デバイスを含み得る、コンピュータシステムは、磁石電流と放射線標的内の座標との相関を求めるものとしてよく、それらの座標は、線量の量と共に記憶され得る。例えば、配置は、深さ毎の層の数及び直交XY座標によって、又は直交XYZ座標(深さ毎の層がZ座標に対応している)によって識別され得る。幾つかの実施例では、磁石電流の大きさ及び座標配置は両方とも、各配置における線量と共に記憶され得る。前記の情報は、加速器上の、又は加速器から離れた場所のいずれかの、メモリに記憶されてよい。この情報は、本明細書で説明されているように、同じ又は異なる量の複数の線量を同じ配置に印加して隣接する/順次的なビーム場の間の重なり領域を含む、標的積算線量を達成するために走査時に使用され得る。
幾つかの実施例では、走査システムは開ループで稼動し、その場合、走査磁石を制御することによって、粒子ビームは照射標的上を自由に途切れることなく移動し、実質的に標的を放射線で覆う。放射線が送達されると共に、粒子治療制御システムによって制御される線量測定で、配置毎の放射線の量及び放射線が送達された配置に対応する情報を記録(又は記憶)する。放射線が送達された配置は、座標として、又は1つもしくは複数の磁石電流値として記録されてよく、送達された放射線の量は、グレイ単位の線量として記録され得る。システムは、開ループで稼動するので、放射線の送達は、粒子加速器の動作(例えば、その高周波(RF)サイクル)に同期しない。不十分な線量が堆積された標的上の配置は、望ましい線量に達するまで任意の適切な回数により粒子ビームで治療され得る。同じ配置の異なる治療は、本明細書で説明されている強度変調陽子治療(IMPT)の場合のように同じビーム角度から(例えば、同じ投影/ビーム場から)又は異なるビーム角度(投影/ビーム場)からであってよい。
設定変更可能なコリメータ1548は、図42及び図43に示されているように、走査磁石のビーム下流及びエネルギーデグレーダのビーム下流に配置されてよい。設定変更可能なコリメータは、走査中に粒子ビームの移動時にスポット毎に粒子ビームをトリミングするものとしてよい。例えば、設定変更可能なコリメータは、互いに面し、開口形状を形成するようにキャリッジ内に及びキャリッジから移動可能であるリーフのセットを含み得る。開口形状を超える粒子ビームの部分はブロックされ、患者には届かない。患者に届くビームの部分は少なくとも部分的にコリメートされ、それによって比較的正確なエッジをビームに持たせる。一例では、設定変更可能なコリメータ内のリーフの各セットは、エッジの第1の側の粒子ビームの第1の部分が複数のリーフによってブロックされるように、またエッジの第2の側の粒子ビームの第2の部分が複数のリーフによってブロックされないように粒子ビームの経路内に移動可能であるエッジを画成するように制御可能とされる。各セット内のリーフは、単一のスポットと同じくらい小さい領域をトリミングするように走査中に個別に制御可能であり、より大きいマルチスポット領域をトリミングするためにも使用され得る。
図30及び図31は、本明細書で説明されているコイル位置決めシステムを使用し得るガントリー上に取り付けられている粒子加速器(この例では、超電導シンクロサイクロトロン)を収容する粒子治療システム1582の一例の一部を示している。幾つかの実施例では、ガントリーは鋼製であり、患者の両側に配設された2つのそれぞれの軸受に回転するように取り付けられた2つの脚部(図示せず)を有する。ガントリーは、図1に関して説明されている種類であってよい。
図30及び図31の実施例では、患者は、アーム1585を介して制御可能とされる、治療テーブル1584上に配設される。外側ガントリー(図示せず)は内部ガントリー1580と共に移動し、患者を治療するノズル1581の位置を決める。ノズル、及び設定変更可能なコリメータなどの、その上に取り付けられている任意の構成要素は、ビームを出力用に構成する。
図32は、本明細書の別のところで説明されているガントリー構成の一例を示しており、治療を実施するために本明細書で説明されている方式で制御可能とされる粒子治療システムの代替的実施例の構成要素を含む。図32の例示的な粒子治療システムは、ノズル1591を有する内部ガントリー1590と、治療台1592と、患者身体の周りの少なくとも途中まで回転させて患者体内の標的に放射線を送達するために外側ガントリー1594上に取り付けられている粒子加速器1593(例えば、本明細書で説明されている種類のシンクロサイクロトロン)とを備える。治療台1592は、本明細書で説明されている方式で患者を回転させ、並進運動させるように制御可能であり、構成される。
図32の例では、粒子加速器は、また、アーム1596に沿って矢印1595の方向に粒子加速器の直線運動(例えば、並進運動)を可能にするようにも外側ガントリー1594に取り付けられる。したがって、加速器は、治療のため加速器、及びしたがってビームを位置決めするためにアーム1596に沿った第1の配置から、アーム1596に沿った第2の配置へ、アーム1596に沿った第3の配置へ、などと、治療台、及びしたがって患者に対して相対的に、移動可能である。この並進運動は、本明細書で説明されている制御システムによって制御され、本明細書で説明されている粒子治療システム内の粒子ビームを位置決めするために追加の自由度として使用され得る。単一次元の並進運動(矢印1595に沿った)が図37に示されているが、粒子治療システムは、2次元並進運動に対して、及び/又は3次元並進運動に対しても同様に(例えば、直交座標系のX、Y、及びZ方向に沿って)構成され得る。
図32にも示されているように、粒子加速器1593は、ガントリーに対して相対的な枢動運動を行うようにジンバル1599に接続され得る。この枢動運動は、治療のため加速器、及びしたがってビームを位置決めするために使用され得る。この枢動運動は、本明細書で説明されている制御システムによって制御されてよく、本明細書で説明されている粒子治療システム内の粒子ビームを位置決めするために1つ又は複数の追加の自由度として使用され得る。幾つかの実施例では、枢動は、加速器を治療中に第1の配向から、第2の配向へ、第3の配向へ、などと移動することを可能にし得る。粒子加速器は、1次元、2次元、及び/又は3次元内で患者に対して相対的な枢動を可能にするように取り付けられ得る。
図32のシステムによって達成可能な種類の加速器の移動の結果、磁気コイルが変位し得る。したがって、本明細書で説明されているコイル位置決めシステムは、図32のシステム内に組み込まれ、磁気コイルを移動してそのような変位を補正するために使用されてよい。
本明細書で説明されているように、幾つかの実施例では、粒子加速器全体を外側ガントリー(又は他のデバイス)に取り付けるのではなく、加速器の代わりに、又はそれに加えて走査もしくは他の放射線指向磁石(radiation−directing magnet)が単独で取り付けられ、放射標的に対して相対的に移動され得る。本明細書で説明されているコイル位置決めシステムは、これと同様の実施例では、コイル変位を補正するようにコイルを移動するために使用されてよい。
図30、図31、及び図32を参照すると、内部ガントリーが、治療台に対して相対的に移動してビームの出力を患者の方に向けるように構成され得る。これらの例では、内部ガントリーはC字形をしており、その移動は、シンクロサイクロトロンが取り付けられる外側ガントリーの移動と同時に行われる。説明されているように、内部ガントリーはノズルを備え、その上に1つ又は複数のビームライン構成要素(例えば、エネルギーデグレーダ及び設定変更可能なコリメータ)が取り付けられ、ビームを整形し、他の何らかの方法で調整する。幾つかの実施例では、内部ガントリーは、ミリメートル未満のビーム位置決めに対応する。幾つかの実施例では、内部ガントリーはなく、本明細書において内部ガントリー上に取り付けられていると説明されているすべての構成要素は加速器又は外側ガントリーに取り付けられ得る。
図33を参照すると、本明細書において説明されている粒子治療システム1551の制御は、限定はしないが、加速器の移動に対する制御と、本明細書で説明されているアクチュエータを含む、コイル位置決めシステムの動作に対する制御とを含み得る。そのような制御は、制御システム1550によって実装され得る。制御システム1550は、本明細書で説明されているような1つもしくは複数のコンピュータシステム及び/又は他の制御電子機器を含み得る。例えば、粒子治療システム及びその様々な構成要素の制御は、ハードウェア又はハードウェアとソフトウェアとの組合せを使用して実施され得る。例えば、本明細書で説明されているようなシステムは、様々な地点に配置された様々なコントローラ及び/又は処理デバイスを備えるものとしてよく、例えば、コントローラ又は他の種類の処理デバイスは各制御可能デバイス又はシステムに組み込まれ得る。中央コンピュータは、様々なコントローラ又は他の種類の処理デバイスの間の動作を調整し得る。中央コンピュータ、コントローラ、及び/又は処理デバイスは、テスト、較正、及び粒子治療の制御及び調整を行わせるために様々なソフトウェアルーチンを実行し得る。
本明細書で説明されている例示的な粒子治療システムの動作、ならびにそのすべての又は幾つかの構成要素の動作は、1つ又は複数のデータ処理装置、例えば、プログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、複数のコンピュータ、及び/又はプログラム可能な論理コンポーネントによる実行のため、又はその動作を制御するために、1つ又は複数のコンピュータプログラム製品、例えば、1つ又は複数の非一時的機械可読媒体中に明確に具現化された1つ又は複数のコンピュータプログラムを使用することで少なくとも一部は(適宜)制御され得る。
コンピュータプログラムは、コンパイル言語又はインタプリタ言語を含む、任意の形態のプログラミング言語で書かれ得、スタンドアロンプログラム、又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、又はコンピューティング環境において使用するのに適している他のユニットを含む、任意の形態で配備され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、又は1つのサイトにあるか、又は複数のサイトにまたがって分散され、ネットワークによって相互接続されている複数のコンピュータ上で実行されるように配備され得る。
本明細書で説明されている例示的な粒子治療システムの動作の全部又は一部を実施することに関連するアクションは、1つ又は複数のコンピュータプログラムを実行して本明細書で説明されている機能を実行する1つ又は複数のプログラム可能なプロセッサによって実行され得る。これらの動作の全部又は一部は、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、及び/又はASIC(特定用途向け集積回路)を使用して実装され得る。
コンピュータプログラムの実行に適しているプロセッサは、例えば、汎用マイクロプロセッサ、専用マイクロプロセッサ、及び任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ又は複数のプロセッサを含む。一般的に、プロセッサは、リードオンリー記憶領域又はランダムアクセス記憶領域又はその両方から命令及びデータを受け取る。コンピュータ(サーバを含む)の要素は、命令を実行するための1つ又は複数のプロセッサならびに命令及びデータを記憶するための1つ又は複数の記憶領域デバイスを含む。一般的に、コンピュータは、データを記憶するための大容量PCBなどの1つ又は複数の機械可読記憶媒体、例えば、磁気ディスク、磁気光ディスク、又は光ディスクも備え、これらからデータを受け取るか、又はこれらにデータを転送するか、又はその両方を行うように動作可能なように結合される。コンピュータプログラムの命令及びデータを具現化するのに好適な非一時的機械可読記憶媒体は、例えば、半導体記憶領域デバイス、例えば、EPROM、EEPROM、及びフラッシュ記憶領域デバイス、磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスク又はリムーバブルディスク、光磁気ディスク、ならびにCD−ROM及びDVD−ROMディスクを含む、あらゆる形態の不揮発性記憶領域を含む。
本明細書で使用されているような「電気的接続」は、直接的物理的接続、又は介在する構成要素を含むが、それにもかかわらず、電気的信号が接続されている構成要素間を流れることを許す有線接続又は無線接続を暗示するものとしてよい。信号を流すことができる電気回路を伴う「接続」は、断りのない限り、電気的接続であり、「電気的」という単語が「接続」を修飾するために使用されているかどうかに関係なく必ずしも直接的物理的接続ではない。
本明細書で説明されている異なる実施例の要素は、特に上で述べていない他の実施例を形成するように組み合わせることもできる。要素は、その動作に悪影響を及ぼすことなく本明細書で説明されているプロセス、システム、装置などから外してもよい。本明細書で説明されている機能を実行するために、様々な別々の要素を1つ又は複数の個別の要素に組み合わせることができる。
幾つかの実施例では、本明細書で説明されている粒子治療システムにおいて使用されるシンクロサイクロトロンは、可変エネルギーシンクロサイクロトロンであるものとしてよい。幾つかの実施例では、可変エネルギーシンクロサイクロトロンは、粒子ビームが加速される磁場を変化させることによって出力粒子ビームのエネルギーを変化させるように構成される。使用され得る可変エネルギーシンクロサイクロトロンの一例は、図25から図28に関して説明されている。例えば、電流は、対応する磁場を発生するように複数の値のうち1つに設定され得る。例示的な一実施例では、超電導コイルの1つ又は複数のセットが、変動電流を受けて、キャビティ内に変動磁場を生成する。幾つかの例では、1つのコイルセットが固定電流を受けるが、1つ又は複数の他のコイルセットはコイルセットが受ける全電流が変化するように変動電流を受ける。幾つかの実施例では、すべてのコイルセットが超電導である。幾つかの実施例では、固定電流に対するセットなどの幾つかのコイルセットは、超電導であるが、変動電流に対する1つ又は複数のセットなどの他のコイルセットは、非超電導(例えば、銅)コイルである。コイル位置決めアクチュエータを含む、本明細書で説明されているコイル位置決めシステムは、固定電流を受けたコイル及び変動電流を受けたコイルの両方を移動するために使用され得る。例示的な粒子治療システムにおいて使用され得る可変エネルギーシンクロサイクロトロンの一例は、参照により本明細書に組み込まれている特許文献6で説明されている。
幾つかの実施例では、本明細書で説明されている粒子治療システムにおいてシンクロサイクロトロン以外の粒子加速器が使用され得る。例えば、サイクロトロン、シンクロトロン、直線加速器、又は同様のものは、本明細書で説明されているシンクロサイクロトロンの代替えとなり得る。回転ガントリーが説明されているが(例えば、外側ガントリー)、本明細書で説明されている例示的な粒子治療システムは、回転ガントリーとの使用に限定されない。むしろ、粒子加速器の移動を実装するために任意の種類のロボット又は他の制御可能機構(本明細書ではガントリーの種類として特徴付けられる)上に、適宜、粒子加速器が取り付けられてよい。例えば、粒子加速器及び/又はビーム拡散器は、患者に対して相対的な加速器及び/又は拡散器の回転運動、枢動運動、及び/又は並進運動を実装するために1つ又は複数のロボットアーム上に取り付けられ得る。コイル位置決めアクチュエータを含む、本明細書で説明されているコイル位置決めシステムは、適切な状況の下でこれらの他の例示的な粒子加速器のコイルを移動するために使用され得る。
幾つかの実施例では、粒子加速器それ自体は、本明細書で説明されているように、患者に対して相対的に移動し得ない。例えば、幾つかの実施例では、粒子加速器は、固定された機械であり得るか、又は患者に対して相対的な移動のために少なくとも取り付けられ得ない。このような例では、粒子加速器は、その粒子ビームを引き出しチャネルから伝送チャネルへ出力し得る。伝送チャネルは、粒子ビームを1つ又は複数の治療室などの1つ又は複数の離れた場所に運ぶためにその中に収容される磁場を制御する磁石及び同様のものを備え得る。各治療室内では、伝送チャネルは、ビームを、本明細書で説明されているような移動のために取り付けられるビーム拡散器又は他の装置に(例えば、外側ガントリーもしくは他のデバイスに)導くものとしてよい。例示的なビーム拡散器は、図44及び図45に関して説明されている種類の走査磁石であるか、又は含み得る。コイル位置決めアクチュエータを含む、本明細書で説明されているコイル位置決めシステムは、回転中に望ましくない又は予想外の運動を考慮してビーム拡散器の1つもしくは複数のコイルを移動するために使用され得る。例えば、コイル位置決めシステムは、コイルを元の、意図された位置に、又は意図された磁場分布をもたらす任意の適切な位置(コイルの元の位置であってもなくてもよい)に移動するために使用され得る。幾つかの実施例では、コイルはその予想される(例えば、所定の)位置に移動され、拡散器の結果生じる治療誤差の発生確率を小さくすることができる。
幾つかの実施例では、磁石の移動以外の要因が結果として、意図されない、又は望ましくない磁場分布を引き起こすことがある。例えば、温度は、磁石を流れる電流の伝導性に影響を及ぼすことがあり、これは磁石のその結果得られる磁場分布に影響を及ぼし得る。例えば、環境湿度は、磁石を流れる電流の伝導性に影響を及ぼすことがあり、これは磁石のその結果得られる磁場分布に影響を及ぼし得る。例えば、環境内に存在するガスは、磁石を流れる電流の伝導性に影響を及ぼすことがあり、これは磁石のその結果得られる磁場分布に影響を及ぼし得る。本明細書で説明されているコイル位置決めシステムは、単独の、又はコイル移動の結果生じる望ましくないもしくは好ましくない磁場分布と組み合わせたこれらの要因などの結果生じる望ましくないもしくは好ましくない磁場分布を補償する(例えば、補正する)ために使用され得る。すなわち、コイル位置決めシステムは、本明細書で説明されているように、磁石コイルを移動し、それにより、コイルは幾つかの状況下で望ましい磁場分布を発生させるか、又はできる限り近くもしくは許容可能な程度まで望ましい磁場分布を近似させるものとしてよい。コイル位置決めシステムは、本明細書で説明されているように動作し、磁場分布を感知し、適宜コイルを移動するものとしてよい。温度センサ、湿度センサ、及びガスセンサなどの、他のセンサは、磁場分布の決定(例えば、処理デバイスによる)を知らせ得る。
本明細書で説明されているコイル位置決めシステムが実装され得る粒子治療システムの例示的な一実施例は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている特許文献4において説明されている。参照により組み込まれている内容は、限定はしないが、シンクロサイクロトロン及び特許文献4に記載されているシンクロサイクロトロンを保持するガントリーシステムの説明を含む。
本明細書で特に説明されていない他の実施例も、以下の請求項の範囲内に収まる。