JP2020508651A - スクアレンホペンシクラーゼ、およびアンブロキサンを生成するためのその使用 - Google Patents

スクアレンホペンシクラーゼ、およびアンブロキサンを生成するためのその使用 Download PDF

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Abstract

グルコノバクター・モルビフェル(Gluconobacter morbifer)から単離したスクアレンホペンシクラーゼ(SHC)を提供し、変異体、およびホモファルネソールをアンブロキサンへと生体触媒的に変換するG.モルビフェル(G.morbifer)SHCを使用する方法も提供する。

Description

ドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン骨格を有する化合物は、芳香化学物質として非常に経済的に重要である。これらの中で、アンブロキサン(ambroxan)として公知の(3aR,5aS,9aS,9bR)−ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチルナフト[2,1−b]フランは、芳香組成物のベースノートを提供するために特に重要である。元来、マッコウクジラの竜涎香から得られ、合成法がアンブロキサンの生成のために開発されてきた。1つのアプローチにおいて、クラリセージ(クラリセージ(Salvia sclarea))の構成物であるスクラレオールが、出発材料として使用される。例えば、クロム酸、過マンガン酸塩、Hまたはオゾンによるスクラレオールの酸化的分解は、スクラレオリドを提供し、これは、例えば、LiAlHまたはNaBHを使用してそれに続いて還元され、アンブロクス−1,4−ジオールが得られる。代わりに、スクラレオリドは、ハイホジーマ・ロセオニガー(Hyphozyma roseoniger)を使用して生体内変化によってスクラレオールから調製することができる(欧州特許第0204009号明細書)。最終的に、アンブロクス−1,4−ジオールは、一連の化学プロセスにおいて環化されて、化合物アンブロキサン((−)−2)が得られる。アンブロキサンのラセミ化合物であるrac−2の調製は、とりわけ、ホモファルネシル酸および4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1−エニル)ブタン−2−オンを介して達成されてきた。
別のアプローチにおいて、アンブロキサンは、スクアレンホペンシクラーゼ(SHC;スキーム1)を使用して生体触媒的に調製される(Neumann,et al.(1986)Biol.Chem.Hoppe Seyler 367:723)。
SHCはホパンへのスクアレンの環化を天然に触媒する一方、アンブロキサンの触媒作用は、0.02mU/mgのタンパク質の特異的活性を伴う二次反応である。アリシクロバチルス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)(以前はバチルス・アシドカルダリウス(Bacillus acidocaldarius))、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)およびブラディリゾビウム・ジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum)からのSHCは、それらの天然基質(例えば、スクアレン)ならびに非天然基質(例えば、ホモファルネソールおよびシトラール)に関して精製および特性決定されてきた。例えば、国際公開第2010/139719号パンフレット、国際公開第2012/066059号パンフレット、特開2009060799号公報、およびSeitz,et al.(2012)J.Molecular Catalysis B:Enzymatic 84:72−77を参照されたい。さらに、国際公開第2016/170099号パンフレットは、記載されたアンブロキサンへのE,E−ホモファルネソールの変換の改善された割合を伴うSHC変異体について記載している。
本発明は、スクアレンホペンシクラーゼ(GHC)をコードする核酸分子を担持する組換えベクターを提供し、スクアレンホペンシクラーゼのアミノ酸配列は、配列番号2、または配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。一部の実施形態では、SHCは、配列番号2に対して、45位、46位、54位、86位、139位、142位、178位、184位、194位、239位、278位、326位、335位、386位、455位、460位、603位、623位、624位、656位、658位またはこれらの組合せにおいてアミノ酸置換を有する。組換えベクターを担持する組換え宿主細胞をまた提供し、SHCを発現している組換え宿主細胞にホモファルネソールを提供し(SHCのアミノ酸配列は、配列番号2または配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列である)、SHCによって生成されるアンブロキサンを収集することによる、アンブロキサンを生成するための方法も提供する。方法の一部の実施形態によると、ホモファルネソールは、可溶化剤、例えば、非イオン性界面活性剤の存在下で提供される。方法の他の実施形態によると、ホモファルネソールは、(3E,7E)ホモファルネソールを含む。本発明は、配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ配列番号2に対して、45位、46位、54位、86位、139位、142位、178位、184位、194位、239位、278位、326位、335位、386位、455位、460位、603位、623位、624位、656位、658位またはこれらの組合せにおいてアミノ酸置換を含む組換えSHCポリペプチドをさらに提供する。
図1A〜図1Cは、グルコノバクター・モルビフェル(Gluconobacter morbifer)スクアレンホペンシクラーゼ(GmSHC)と、Z.モビリス(Z.mobilis)(ZmSHC)、ブラディリゾビウム属の種(Bradyrhizobium sp.)(BspSHC)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)(RpSHC)、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)(ScSHC)、バークホルデリア・アンビファリア(Burkholderia ambifaria)(BamSHC)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)(BanSHC)およびA.アシドカルダリウス(A.acidocaldarius)(AaSHC)からのSHC酵素との、アミノ酸配列の比較を提供する。下線を引いた残基は、コア配列Gln−Xaa−Xaa−Xaa−Gly−Xaa−Trp(配列番号3)を表し、ボールド体の残基は、Asp−Xaa−Asp−Asp−Thr−Ala(配列番号4)活性部位モチーフを表す。 図1A〜図1Cは、グルコノバクター・モルビフェル(Gluconobacter morbifer)スクアレンホペンシクラーゼ(GmSHC)と、Z.モビリス(Z.mobilis)(ZmSHC)、ブラディリゾビウム属の種(Bradyrhizobium sp.)(BspSHC)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)(RpSHC)、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)(ScSHC)、バークホルデリア・アンビファリア(Burkholderia ambifaria)(BamSHC)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)(BanSHC)およびA.アシドカルダリウス(A.acidocaldarius)(AaSHC)からのSHC酵素との、アミノ酸配列の比較を提供する。下線を引いた残基は、コア配列Gln−Xaa−Xaa−Xaa−Gly−Xaa−Trp(配列番号3)を表し、ボールド体の残基は、Asp−Xaa−Asp−Asp−Thr−Ala(配列番号4)活性部位モチーフを表す。 図1A〜図1Cは、グルコノバクター・モルビフェル(Gluconobacter morbifer)スクアレンホペンシクラーゼ(GmSHC)と、Z.モビリス(Z.mobilis)(ZmSHC)、ブラディリゾビウム属の種(Bradyrhizobium sp.)(BspSHC)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)(RpSHC)、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)(ScSHC)、バークホルデリア・アンビファリア(Burkholderia ambifaria)(BamSHC)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)(BanSHC)およびA.アシドカルダリウス(A.acidocaldarius)(AaSHC)からのSHC酵素との、アミノ酸配列の比較を提供する。下線を引いた残基は、コア配列Gln−Xaa−Xaa−Xaa−Gly−Xaa−Trp(配列番号3)を表し、ボールド体の残基は、Asp−Xaa−Asp−Asp−Thr−Ala(配列番号4)活性部位モチーフを表す。 15mg/mLのホモファルネソールを伴う37℃での6時間および20時間のインキュベーションに続く、変異体GmSHC酵素によって生成されたアンブロキサンのピーク面積%を示す。破線は、野生型SHCによるアンブロキサンの生成を示す。 25%の酵素添加での50mg/mLのホモファルネソールを伴う37℃での6時間および20時間のインキュベーションに続く、変異体GmSHC酵素によるアンブロキサン生成物ピーク面積%を示す。
本発明は、スクアレンホペンシクラーゼ(SHC)、またはより好ましくは、グルコノバクター・モルビフェル(Gluconobacter morbifer)から単離したホモファルネソール−アンブロキサンシクラーゼ(HAC)、およびアンブロキサンへとホモファルネソールを生体触媒的に変換するためのG.モルビフェル(G.morbifer)SHC(GmSHC)を使用する方法を提供する。GmSHCのヌクレオチド配列は、配列番号1において提供する。GmSHCのアミノ酸配列(配列番号2)は、GENBANK受託番号WP_040507485およびEHH69691で利用可能である。GmSHCアミノ酸配列と、Z.モビリス(Z.mobilis)、ブラディリゾビウム属の種(Bradyrhizobium sp.)、R.パルストリス(R.palustris)、S.セリカラー(S.coelicolor)、B.アンビファリア(B.ambifaria)、B.アントラシス(B.anthracis)およびA.アシドカルダリウス(A.acidocaldarius)からのSHCアミノ酸配列とのアラインメント(図1A〜図1C)は、37%〜76%の範囲のアミノ酸配列同一性を示す(表1)。
GmSHCは、コア配列Gln−Xaa−Xaa−Xaa−Gly−Xaa−Trp(配列番号3)(Reipen,et al.(1995)Microbiology 141:155−161)、およびSHC活性部位と相関するAsp−Xaa−Asp−Asp−Thr−Ala(配列番号4)モチーフを含有する(Wendt,et al.(1997)Science 277:1811−5)。図1A〜図1Cを参照されたい。本明細書において提示するデータは、GmSHC酵素が、異種宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)において発現されているとき、ホモファルネソールをアンブロキサンへと容易に変換することができることを示す。したがって、GmSHC酵素、およびその誘導体は、ホモファルネソールを供給原料または出発材料として使用してアンブロキサンを調製する方法において有用である。
本明細書において使用する場合、用語「アンブロキサン(ambroxan)」は、(3aR,5aS,9aS,9bR)−ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチルナフト[2,1−b]フランを指し、これはAMBROX(Firmenich)、Ambroxan(Henkel)、AMBROFIX(Givaudan)、AMBERLYN(Quest)、CETALOX Laevo(Firmenich)、AMBERMOR(Aromor)および/またはNorambrenolide Ether(Pacific)として商業的に公知である。アンブロキサンの望ましい感覚に関する利益は、(+)エナンチオマーよりむしろ(−)立体異性体に由来する。(−)立体異性体の香りは、ムスク様、ウッディー系(woody)、暖かい感じ(warm)または琥珀系(ambery)として説明され、一方、(+)エナンチオマーは、相対的に弱い香りの様子(odor note)を有する。このように、(−)−アンブロキサンが富んだ材料は、本発明の1つの特徴である。
本明細書に記載のように、(−)−アンブロキサンは、ホモファルネソールから合成することができる(スキーム1)。ホモファルネソールの4つの公知の異性体、(3Z,7Z、すなわち、ZZ)、(3E,7Z、すなわち、EZ)、(3Z,7E、すなわち、ZE)および(3E,7E、すなわち、EE)異性体が存在する。Neumann,et al.((1986)Biol.Chem.Hoppe Seyler 367:723)によると、(−)−アンブロキサンは、EEホモファルネソールから主に得られる。米国特許出願公開第2012/0135477号明細書は、Z.モビリス(Z.mobilis)SHC酵素が、ZEホモファルネソールを(−)−アンブロキサンへと変換することができることを示す。しかし、Schaefer ((2011)Chemie Unserer Zeit 45:374−388)は、ZEホモファルネソールが、9b−epi−アンブロキサンにのみ変換され、(−)−アンブロキサンには変換されないことを示す。したがって、本発明のホモファルネソール供給原料/出発材料は、単一の異性体であるか、またはホモファルネソールの2種もしくはそれより多い異性体の混合物である。一部の実施形態では、ホモファルネソール出発材料は、4つの異性体EE:EZ:ZZ:ZEの混合物である。他の実施形態では、ホモファルネソール出発材料は、ZE:EE、ZE:EZまたはEE:EZの混合物である。EE:EZの混合物の使用を含めた実施形態では、好ましくは、EE:EZの重量比は、99:1〜約50:50の範囲である。より特定すると、ホモファルネソール出発材料は、80:20または70:30のEE:EZ重量比を有する。特定の実施形態では、ホモファルネソール出発材料は、>90の(3E,7E)ホモファルネソールを有する。ホモファルネソールの例示的なEE:EZ立体異性混合物は、35826−67−6のCAS番号を有する。
好ましくは、(−)−アンブロキサンの調製において使用される出発材料は、立体異性的に純粋な(3E,7E)ホモファルネソール(EEH)である。EEHを調製する方法は当技術分野において公知であり、例えば、Dodd,et al.(1992)J.Org.Chem.57:2794;Barrero,et al.(1996)J.Org.Chem.61:2215;Kocienski et al.(1989)J.Org.Chem.54:1215;国際公開第92/06063号パンフレットおよび米国特許第9,493,385号明細書によって記載されている。
本明細書において使用する場合、「GmSHC」は、グルコノバクター・モルビフェル(Gluconobacter morbifer)から単離したスクアレンホペンシクラーゼを指す。特に、「変異体」または「誘導体」によって修飾されていないとき、「GmSHC」は、配列番号2によるアミノ酸配列を有する野生型タンパク質を指す。比較すると、「変異体GmSHC」、「GmSHC変異体」または「GmSHC誘導体」は、配列番号2による参照(もしくは野生型)GmSHC配列のアミノ酸配列と比較して変化している、修飾または変異アミノ酸配列を指す。一実施形態では、GmSHC誘導体は、その基質(例えば、ホモファルネソール、特に、EEH)についての酵素の活性を修飾(例えば、増加)する少なくとも1つの変更を有する。別の実施形態では、GmSHC誘導体は、異種宿主細胞における酵素の安定性、局在化、または発現を修飾する少なくとも1つの変更を有する。
本明細書において使用する場合、用語「アミノ酸変更」は、1つもしくは複数のアミノ酸残基の挿入、1つもしくは複数のアミノ酸残基の欠失、または参照アミノ酸配列(例えば、配列番号2の野生型アミノ酸配列)のアミノ酸配列に対して1つもしくは複数の異なるアミノ酸による1つもしくは複数のアミノ酸残基の置換(保存的もしくは非保存的であり得る)を意味する。アミノ酸変更は、GmSHC誘導体アミノ酸配列のアミノ酸配列と参照GmSHCのアミノ酸配列の比較によって容易に同定することができる。
保存的アミノ酸置換は、例えば、関連するアミノ酸残基の極性、電荷、サイズ、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質における類似性に基づいて行い得る。20個の天然アミノ酸は、下記の6つの標準的なアミノ酸基へとグループ化することができる:(1)疎水性−Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性−Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性−Asp、Glu;(4)塩基性−His、Lys、Arg;(5)鎖の配向に影響を与える残基−Gly、Pro;および(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。したがって、本明細書において使用する場合、用語「保存的置換」は、上記で示した6つの標準的なアミノ酸基の同じ群内に列挙した別のアミノ酸による、アミノ酸の交換を意味する。例えば、GluによるAspの交換は、このように修飾されたポリペプチドにおいて1つの負の電荷を保持する。さらに、グリシンおよびプロリンは、アルファ−ヘリックスを中断させるそれらの能力に基づいて、互いに置換し得る。上記の6つの群内のいくつかの好ましい保存的置換は、下記の部分群内の交換である:(i)Ala、Val、LeuおよびIle;(ii)SerおよびThr;(iii)AsnおよびGin:(iv)LysおよびArg;ならびに(v)TyrおよびPhe。公知の遺伝コード、ならびに組換えおよび合成DNA技術を所与として、熟練した科学者は、保存的アミノ酸変異体をコードするDNAを容易に構築することができる。
本明細書において使用する場合、「非保存的置換」または「非保存的アミノ酸交換」は、上記で示したような6つの標準的なアミノ酸基(1)〜(6)の異なる群において列挙した別のアミノ酸による、アミノ酸の交換として定義される。典型的には、本開示のGmSHC誘導体は、野生型GmSHCの生物学的機能を変化させる非保存的置換を使用して調製される。
様々な実施形態では、アミノ酸変更、またはアミノ酸変更の組合せは、アミノ酸変更、またはアミノ酸変更の組合せを有さない野生型GmSHCと比較して、ホモファルネソールをアンブロキサンへと変換するためのGmSHC誘導体の活性を増進する。タンパク質モデリングを使用して、GmSHC参照配列においてこのような置換、欠失、または挿入をガイドし得る。例えば、GmSHCアミノ酸配列の構造モデルは、A.アシドカルダリウス(A.acidocaldarius)SHCについての座標を使用して生じさせ得る。このような相同性モデルは、アンブロキサンへとホモファルネソールを変換するためのGmSHC酵素の改善、例えば、参照野生型酵素よりホモファルネソール基質と接触させることによるアンブロキサンのより多い生成を誘導するのに有用である。
GmSHC誘導体酵素をもたらす、GmSHC配列へとこのような変化を導入するために使用し得るアミノ酸変更、例えば、アミノ酸置換は、PCR、遺伝子クローニング、cDNAの部位特異的突然変異誘発、宿主細胞のトランスフェクション、およびin vitroでの転写を含めた組換え遺伝子技術の公知のプロトコルを使用して導入し得る。次いで、誘導体は、GmSHC機能的活性についてスクリーニングすることができる。
GmSHC誘導体は、配列番号2による参照(もしくは野生型)GmSHC配列のアミノ酸配列に対して、約1〜約45個のアミノ酸変更、約1〜約40個のアミノ酸変更、約1〜約35個のアミノ酸変更、約1〜約30個のアミノ酸変更、約1〜約25個のアミノ酸変更、約1〜約20個のアミノ酸変更、約1〜約15個のアミノ酸変更、約1〜約10個のアミノ酸変更、または約1〜約5個のアミノ酸変更を有し得る。
代わりに、GmSHC誘導体は、配列番号2による参照(もしくは野生型)GmSHC配列のアミノ酸配列に対して、少なくとも5個または少なくとも10個のアミノ酸変更を有することができるが、約20個以下または30個以下のアミノ酸変更である。様々な実施形態では、GmSHC誘導体は、参照GmSHCに対して、約1個のアミノ酸変更、約2個のアミノ酸変更、約3個のアミノ酸変更、約4個のアミノ酸変更、約5個のアミノ酸変更、約6個のアミノ酸変更、約7個のアミノ酸変更、約8個のアミノ酸変更、約9個のアミノ酸変更、約10個のアミノ酸変更、約15個のアミノ酸変更、約20個のアミノ酸変更、約25個のアミノ酸変更、約30個のアミノ酸変更、約35個のアミノ酸変更、約40個のアミノ酸変更、約45個のアミノ酸変更、または約50個のアミノ酸変更を有し得る。
これらのまたは他の実施形態では、GmSHC誘導体は、参照GmSHC(配列番号2)と少なくとも約50%の配列同一性、少なくとも約55%の配列同一性、少なくとも約60%の配列同一性、少なくとも約65%の配列同一性、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも91%の配列同一性、少なくとも92%の配列同一性、少なくとも93%の配列同一性、少なくとも94%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、または少なくとも99%の配列同一性を共有する。
一部の実施形態では、GmSHC誘導体は、配列番号2に対して、45位、46位、54位、86位、139位、142位、178位、184位、194位、239位、278位、326位、335位、386位、455位、460位、603位、623位、624位、656位または658位の1つもしくは複数においてアミノ酸変更を含む。一部の実施形態では、GmSHC誘導体は、下記のアミノ酸置換の1つもしくは複数を有する。配列番号2に対してV45X、E46X、Q54X、S86X、F139X、Y142X、Q178X、M184X、R194X、G239X、I278X、T326X、L335X、E386X、I455X、F460X、Q603X、G623X、F624X、L656XまたはY658X、ここで:
V45XにおけるXは、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、WまたはYであり;
E46XにおけるXは、A、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYであり;
Q54XにおけるXは、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、WまたはYであり;
S86XにおけるXは、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、WまたはYであり;
F139XにおけるXは、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYであり;
Y142XにおけるXは、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、VまたはWであり;
Q178XにおけるXは、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、WまたはYであり;
M184XにおけるXは、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYであり;
R194XにおけるXは、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、WまたはYであり;
G239XにおけるXは、A、C、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYであり;
I278XにおけるXは、A、C、D、E、F、G、H、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYであり;
T326XにおけるXは、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、V、WまたはYであり;
L335XにおけるXは、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYであり;
E386XにおけるXは、A、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYであり;
I455XにおけるXは、A、C、D、E、F、G、H、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYであり;
F460XにおけるXは、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYであり;
Q603Xは、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、WまたはYであり;
G623XにおけるXは、A、C、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYであり;
F624XにおけるXは、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYであり;
L656XにおけるXは、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYであり;
Y658XにおけるXは、A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、またはWである。
ある特定の実施形態では、GmSHC誘導体は、配列番号2に対して、下記のアミノ酸置換V45I、V45Q、V45L、E46H、E46Q、Q54E、S86A、F139L、Y142R、Q178E、M184A、M184L、M184I、M184V、R194Q、G239V、I278V、T326S、L335F、E386Q、I455T、F460A、Q603H、G623A、G623V、F624Y、F624A、L656EおよびY658Fの1つまたは組合せを有する。他の実施形態では、GmSHC誘導体は、表2において提示したような配列番号2に対する置換の組合せ、または任意のこれらの組合せを有する。
A.アシドカルダリウス(A.acidocaldarius)SHC(AacSHC)における、GmSHCのF139L、Y142、I455、G239およびF624に対応するアミノ酸の位置におけるアミノ酸置換は、アンブロキサンへのEEHの変換に関してAacSHC酵素の活性を増加させることが示されてきた。国際公開第2016/170099号パンフレットを参照されたい。さらに、AacSHCのF601は、原核生物および真核生物のSHC種の間で、高度に保存されたアミノ酸残基として同定されてきた。AacSHC誘導体F601Yは、オキシドスクアレン基質(スクアレンではない)について非常に増加したVmaxを示すことが報告されてきた。しかし、F601Yは、スクアレンが使用されるとき、野生型AacSHCに対して、親和性(すなわち、より高いK)における減少および触媒効率/活性(Kcat/K)における減少を示す。Hoshino & Sato(2002)Chem.Commun.(4):291−301を参照されたい。特に、GmSHCにおけるF601Yと同等であるSHC誘導体は、F624Yである。
したがって、本発明のある特定の実施形態では、GmSHC誘導体は、配列番号2に対して、V45I、V45Q、V45L、E46H、E46Q、S86A、F139L、Q178E、M184A、M184L、M184I、M184V、R194Q、G239V、I278V、T326S、L335F、E386Q、I455T、F460A、Q603H、G623A、G623V、L656EおよびY658Fの少なくとも1つもしくは複数と組み合わせた、少なくとも置換Q54E、F624YまたはY142Rを有する。特定の実施形態では、GmSHC誘導体は、表2において一覧表示した変異の組合せを有する。一部の実施形態では、GmSHC誘導体は、配列番号2による野生型/参照アミノ酸配列と比較して、4つまでの変異を有するアミノ酸配列を有する修飾されたGmSHCポリペプチドであり、配列番号2に対して、少なくとも置換Q54E、F624YまたはY142Rを含む。
SHC活性を決定および定量化するためのアッセイは本明細書に記載されており、当技術分野において公知である。例示として、GmSHCおよび/またはGmSHC誘導体活性は、精製したGmSHC酵素、またはGmSHC酵素を生成している宿主細胞もしくは完全組換え宿主生物からの抽出物を、適当な基質と共に適当な条件下でインキュベートし、反応生成物の分析(例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)またはHPLC分析による)を行うことによって決定することができる。GmSHC酵素活性アッセイおよび反応生成物の分析についてのさらなる詳細は、実施例において提供する。これらのアッセイは、組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli))においてGmSHCを生成することを含む。
本明細書において使用する場合、用語「活性」は、基質と反応して、標的生成物を提供する酵素の能力を意味する。活性は、時間に応じた、標的生成物の増加、基質(もしくは出発材料)の減少によって、またはこれらのパラメータの組合せによって、活性試験として公知であるものにおいて決定することができる。本開示のGmSHCは、ホモファルネソールをアンブロキサンへと生物変換するその能力によって特性決定される。
GmSHC誘導体の使用を対象とする実施形態では、好ましくは、GmSHC誘導体は、参照GmSHCタンパク質より良好な標的収率を示す。用語「標的収率」は、1グラムの供給原料当たりの回復可能な生成物のグラムを指す(これはモル変換割合パーセントとして計算することができる)。さらに、GmSHC誘導体は、参照GmSHCタンパク質に対する、修飾された(例えば、増加した)標的生成能力を示すことができる。用語「標的生成能力」は、1時間の生物変換時間(すなわち、基質が加えられた後の時間)当たりの1リットルの発酵能力当たりのグラムでの回復可能な標的生成物の量を指す。さらに、GmSHC誘導体は、参照GmSHCタンパク質と比較した、修正された標的収率因子を示すことができる。用語「標的収率因子」は、反応媒体中の得られた生成物濃度、およびGmSHC誘導体(例えば、精製したGmSHC酵素、またはGmSHC酵素を発現している組換え宿主細胞からの抽出物)の濃度の間の比を指す。ある特定の実施形態では、GmSHC誘導体は、参照GmSHCタンパク質(例えば、配列番号2)に対して、酵素活性(例えば、アンブロキサンへのホモファルネソールの変換)における、少なくとも2倍、3倍、4倍、6倍、8倍、10倍、12倍、14倍、16倍、18倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、または100倍の増加を示す。
本明細書において開示されているGmSHCタンパク質の機能的ホモログはまた、本発明の範囲内に含まれる。「機能的ホモログ」は、参照ポリペプチドと配列類似性を有し、かつ参照ポリペプチドの生化学的機能または生理機能の1つもしくは複数を実行するポリペプチドである。機能的ホモログおよび参照ポリペプチドは、天然に生じたポリペプチドでよく、配列類似性は、収束進化または分岐進化事象により得る。したがって、機能的ホモログは、文献において、ホモログ、またはオーソログ、またはパラログとして示されることがある。天然に生じた機能的ホモログの変異体、例えば、野生型コード配列の変異体によってコードされるポリペプチドは、それら自体が機能的ホモログであり得る。機能的ホモログはまた、ポリペプチドについてのコード配列の部位特異的突然変異誘発を介して、または異なる天然に生じたポリペプチドについてのコード配列からのドメインを合わせること(「ドメインスワッピング」)によって生じさせることができる。所望の様式で、GmSHC酵素の特異的活性を増加させるか、基質特異性を変化させるか、発現レベルを変化させるか、または細胞内位置を変化させるために使用することができる、本明細書に記載されているGmSHC酵素の機能的ホモログを得るための技術は公知であり、とりわけ、定向進化技術、部位特異的突然変異誘発技術およびランダム突然変異誘発技術を含む。
望ましくは、GmSHC酵素および機能的ホモログは、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を共有する。好ましくは、機能的ホモログおよび参照ポリペプチドは、20、30、40、45、50、60、70、80、90、100またはそれ超のアミノ酸残基の連続した広がりに亘って示した配列同一性を示す。
GmSHC発現、ならびにアンブロキサンの生成および単離を促進するために、GmSHCもしくはGmSHC誘導体は、組換え宿主細胞において発現している。「遺伝子改変宿主細胞」または「トランスジェニック細胞」とまた称される用語「組換え宿主」は、異種核酸を含む宿主細胞を示すか、またはそのゲノムは、少なくとも1つの組み込まれたDNA配列によって増強されてきた。本開示の宿主細胞は、核酸分子、またはGmSHCもしくはGmSHC誘導体をコードする核酸分子を含有するベクターと共に遺伝子操作し得る。
用語「核酸分子」は、本明細書において使用する場合、DNA、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、またはRNAでよい本開示のポリヌクレオチドを指し、二本鎖または一本鎖、センスおよび/またはアンチセンス鎖でよい。用語「核酸分子」は特に、本明細書において使用する場合、GmSHCもしくはGmSHC誘導体、例えば、配列番号1をコードするポリヌクレオチド(例えば、完全長ヌクレオチド配列、またはその断片もしくは部分として)に適用される。この用語はまた、cDNA;フランキング遺伝子の少なくとも1つを欠いているゲノム断片;ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成され、かつフランキング遺伝子の少なくとも1つを欠いているcDNAまたはゲノムDNAの断片;フランキング遺伝子の少なくとも1つを欠いている制限酵素断片;および天然に生じたものでないタンパク質、例えば、融合タンパク質をコードするDNAを含む。融合タンパク質は、1つもしくは複数のアミノ酸を、通常タンパク質のN末端において、しかしまたC末端において、タンパク質(例えば、His−tag)に加えることができるか、またはタンパク質の領域内で融合される。このような融合タンパク質、またはこのようなタンパク質をコードする融合ベクターは典型的には、(i)組換えタンパク質の生成における増加;(ii)組換えタンパク質の溶解度における増加;および/または(iii)アフィニティー精製のためのリガンドを提供することによる組換えタンパク質の精製における補助を提供する。ある特定の実施形態では、GmSHCもしくはGmSHC誘導体は、組換え宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)におけるGmSHCもしくはGmSHC誘導体の発現および/または活性を支援するリーダー配列を含む。
用語「核酸分子」はまた、特定の組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli)宿主細胞)における発現に適したコドン最適化配列を含む。用語「コドン最適化」は、コドンの1つもしくは複数、または好ましくは、かなりの数を、細菌宿主細胞遺伝子においてより頻繁に使用されるコドンに置換することによって、原核生物または真核生物宿主細胞、特に、細菌宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)宿主細胞における発現に適合させたタンパク質コード配列を意味する。これに関しては、参照配列番号1をコードするヌクレオチド配列、および全てのその変異体/誘導体は、ソース(例えば、GmSHC)において見出されたような本来のものであり得るか、またはヌクレオチド配列は、選択した宿主生物、例えば、大腸菌(E.coli)のためにコドンを最適化することができる。
用語「単離されたDNA」は、本明細書において使用する場合、自然源(例えば、グルコノバクター・モルビフェル(Gluconobacter morbifer))から単離された核酸もしくはポリヌクレオチド、または組換えDNA技術によって生成された核酸もしくはポリヌクレオチド、例えば、宿主細胞中に任意選択で組み込まれている宿主細胞とは異種のポリヌクレオチドを含むDNA構築体を指す。キメラのヌクレオチド配列は、組換え分子として特に生成し得る。酵素に関して、用語「組換え」は、組換えDNA技術によって生成された、すなわち、所望の酵素をコードする外来DNA構築体によって形質転換された細胞から生成された酵素を指す。用語「組換え」は特に、クロスオーバーまたは遺伝子モザイクを達成する組換えを伴うかまたは伴わない、このようなポリヌクレオチドまたはその部分を一緒に合わせる、ポリヌクレオチドのアセンブリーに適用される。例えば、これは、所望の機能の核酸セグメントを一緒に結合させて、機能の所望の組合せを生じさせるために行われる。本明細書に記載されているポリペプチドをコードする組換え核酸分子は、ポリペプチドを発現させるのに適した1つもしくは複数の調節領域へとセンス配向で作動可能に連結しているそのポリペプチドについてのコード配列を含む。多くの微生物は、ポリシストロニックmRNAから複数の遺伝子産物を発現させることができるため、複数のポリペプチドは、必要に応じてそれらの微生物についての単一の調節領域の制御下で発現させることができる。
調節領域は配列の転写または翻訳を制御するのに有効であるように、調節領域およびコード配列が配置されているとき、コード配列および調節領域は、動作可能に連結されていると考えられる。転写/翻訳調節エレメントには、これらに限定されないが、当業者には公知であり、かつ遺伝子発現を推進またはその他の点で制御する、誘導性および非誘導性、構成的、細胞周期を制御する、代謝的に制御する、プロモーター、エンハンサー、オペレーター、サイレンサー、リプレッサーおよび他のエレメントが含まれる。このような調節エレメントには、これらに限定されないが、調節エレメント、例えば、CUP−1プロモーター;例えば、tet−onまたはtet−off系において用いられているようなtetリプレッサー;lac系、およびtrp系調節エレメントが含まれる。例として、イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)は、100μM〜1.0mMの濃度範囲で遺伝子発現の有効な誘導物質である。この化合物は、lacオペロンの転写を誘発するラクトース代謝物であるアロラクトースの分子模倣物であり、したがって、遺伝子がlacオペレーターの制御下であるとき、これは遺伝子発現を誘導するために使用される。遺伝子発現を誘発する調節エレメントの別の例は、ラクトースである。
本開示の核酸分子はまた、さらなるポリペプチド配列、例えば、マーカーまたはレポーターとして機能する配列をコードする雑種遺伝子の部分を形成することができる。マーカーおよびレポーター遺伝子の例は、ベータ−ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、lacZ(ベータ−ガラクトシダーゼをコードする)、およびキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)を含む。本開示の実施と関連する標準的な手順の多くと同様に、さらなる有用な試薬、例えば、マーカーまたはレポーターの機能を果たすことができるさらなる配列について当業者は承知している。
一部の実施形態では、本開示は、発現および任意選択の精製のためにベクター中に挿入し得る、上記の野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体をコードする組換え核酸分子を提供する。このようなベクターは、本明細書において、「発現ベクター」と称される。通常、DNA組換え技術に適した発現ベクターは、典型的には、プラスミドタイプのものである。発現ベクターは、本明細書に記載のような野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体をコードする組換え核酸分子、およびポリペプチドを発現させるのに適した必要な調節領域を含む。このようなベクターは、宿主細胞中に天然に存在しない核酸分子、通常、RNAへと転写されるかまたはタンパク質へと翻訳され(「発現され」)ない核酸分子、および宿主細胞中へと導入することを望む他の遺伝子または核酸分子を含む。典型的には、本明細書に記載されている組換え宿主細胞のゲノムは、1つもしくは複数の組換え核酸分子の安定な導入によって増強されることを認識されたい。しかし、自律的または複製プラスミドまたはベクターはまた、本開示の範囲内で使用することができる。さらに、本開示は、低コピー数、例えば、単一のコピー、または高コピー数のプラスミドまたはベクターを使用して実施することができる。ある特定の実施形態では、本開示のベクターは、プラスミド、ファージミド、ファージ、コスミド、人工細菌染色体もしくは人工酵母染色体、ノックアウトもしくはノックイン構築体、直鎖状ポリヌクレオチド、プラスミド、メガプラスミドの形態で生成された合成核酸分子もしくはカセット、合成もしくは人工染色体、例えば、植物、細菌、哺乳動物または酵母の人工染色体である。
本発明によれば、組換え核酸分子によってコードされるGmSHCもしくはGmSHC誘導体は、ベクターの導入によって、細胞内で構成的または誘導的に発現している。微生物細胞は、標準的な形質転換術を使用したGmSHCもしくはGmSHC誘導体をコードするベクターで形質転換される。適切な実施形態では、複製開始点を提供するDNAは、ベクター中に含まれる。複製開始点は、当業者が適切に選択し得る。配列が既に複製自体の起点として動作可能である遺伝子またはゲノムを提示する場合、遺伝子の性質によって、追加の複製開始点は必要とし得ない。
本発明の文脈では、外来または異種DNAが細胞内に導入されたとき、微生物細胞(例えば、細菌または酵母の細胞)は形質転換される。形質転換DNAは、細胞のゲノム中に統合され、すなわち、共有結合的に連結されていてもよいか、または連結されていなくてもよい。原核生物、および酵母において、例えば、形質転換DNAは、エピソームのエレメント、例えば、プラスミド上に維持し得る。真核細胞に関して、安定にトランスフェクトされた細胞は、トランスフェクトされたDNAが染色体中に統合されているものであり、その結果、トランスフェクトされたDNAは染色体複製によって娘細胞によって遺伝される。この安定性は、形質転換DNAを含有する娘細胞の集団を含めた細胞系またはクローンを確立する真核細胞の能力によって決定される。
本開示の目的のために使用し得る宿主細胞には、これらに限定されないが、原核細胞、例えば、本開示のGmSHC核酸分子を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、細菌人工染色体、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換することができる、細菌(例えば、大腸菌(E.coli)および枯草菌(B.subtilis));例えば、本開示のポリヌクレオチド分子を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換することができる、単純な真核細胞、例えば、酵母(例えば、サッカロマイセス属およびピキア属(Pichia));昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス昆虫細胞発現系);ヒト細胞(例えば、HeLa、CHOおよびJurkat)、ならびに植物細胞(Arabidopsisおよびタバコ)が含まれる。宿主細胞、および本開示の核酸分子を導入するために使用されるそれぞれのベクターによって、核酸分子は、例えば、染色体もしくはミトコンドリアDNAに統合されるか、または染色体外に、例えば、エピソームに維持することができるか、または細胞が一過性にのみ担持することができる。
真核細胞に関連する実施形態では、好ましくは、細胞は、真菌、哺乳動物または植物の細胞である。適切な真核細胞は、例えば、これらに限定されないが、哺乳動物細胞、酵母細胞(例えば、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、ピキア属(Pichia)およびアスペルギルス属)、または昆虫細胞(Sf9を含めた)、両生類細胞(メラノフォア細胞を含めた)、または線虫属(Caenorhabditis)(エレガンス線虫(Caenorhabditis elegans)を含めた)の細胞を含めた虫細胞を含む。適切な哺乳動物細胞は、例えば、これらに限定されないが、COS細胞(Cos−1およびCos−7を含めた)、CHO細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、または他のトランスフェクト可能な真核細胞系を含む。
原核生物に関連する実施形態では、好ましくは、細胞は、大腸菌(E.coli)、バチルス属の種(Bacillus sp.)、またはストレプトマイセス属の種(Streptomyces sp)である。好ましくは、大腸菌(E.coli)宿主細胞は、産業および監督機関によって組換えタンパク質発現に適したものとして認識されている大腸菌(E.coli)宿主細胞である(これらに限定されないが、大腸菌(E.coli)K12宿主細胞または大腸菌(E.coli)BL21宿主細胞を含めた)。ある特定の実施形態では、本発明の組換え宿主細胞は、大腸菌(E.coli)である。大腸菌(E.coli)について利用可能な変異体、プラスミドのライブラリー、代謝の詳細なコンピュータモデル、および他の情報が存在し、生成物収率を増進するための様々なモジュールの合理的な設計を可能とする。したがって、ある特定の実施形態では、GmSHCもしくはGmSHC誘導体コード配列をコードする核酸分子を発現している組換え大腸菌(E.coli)は、ホモファルネソールをアンブロキサンへと変換するために提供される。
本開示によって使用する別の好ましい宿主細胞は、合成生物学において広範に使用されている出芽酵母(S.cerevisiae)である。このように、組換え宿主細胞は、出芽酵母(S.cerevisiae)であり得る。出芽酵母(S.cerevisiae)について利用可能な変異体、プラスミドのライブラリー、代謝の詳細なコンピュータモデル、および他の情報が存在し、生成物収率を増進するための様々なモジュールの合理的な設計を可能とする。さらに、組換え出芽酵母(S.cerevisiae)微生物を作製するための方法は公知である。したがって、ある特定の実施形態では、GmSHCもしくはGmSHC誘導体コード配列をコードする核酸分子を発現している組換え出芽酵母(S.cerevisiae)は、ホモファルネソールをアンブロキサンへと変換するために提供される。
細胞の培養は、通常の様式で行われる。培養培地は、炭素源、少なくとも1つの窒素源および無機塩を含有し、ビタミンをこれに加える。この培地の構成物は、当該の宿主細胞の種を培養するために従来使用されるものでよい。本明細書に記載の方法において有用な炭素源は、組換え宿主細胞によって代謝されて、アンブロキサンの成長および/または生成を促進することができる任意の分子を含む。適切な炭素源の例には、これらに限定されないが、(例えば、糖蜜において見出されるような)スクロース、フルクトース、キシロース、グリセロール、グルコース、セルロース、デンプン、セロビオースまたは他のグルコース含有ポリマーが含まれる。
大腸菌(E.coli)を用いる実施形態では、確定した最少培地、例えば、M9Aを、細胞培養のために使用し得る。M9A培地の構成要素は、14g/LのKHPO、16g/LのKHPO、1g/Lのクエン酸Na・2HO、7.5g/Lの(NHSO、0.25g/LのMgSO・7HO、0.015g/LのCaCl・2HO、5g/Lのグルコースおよび1.25g/Lの酵母抽出物を含む。本開示の別の実施形態では、栄養素に富んだ培地、例えば、LBを使用する。LB培地の構成要素は、10g/Lのトリプトン、5g/Lの酵母抽出物、5g/LのNaClを含む。無機培地およびM9無機培地の他の例は、例えば、米国特許第6,524,831号明細書および米国特許出願公開第2003/0092143号明細書において開示されている。
酵母を宿主として用いる実施形態では、例えば、炭素源、例えば、スクロース、フルクトース、キシロース、エタノール、グリセロール、およびグルコースが適している。炭素源は、培養期間に亘って宿主生物に提供することができるか、または代わりに、生物は、ある期間、別のエネルギー源、例えば、タンパク質の存在下で成長し、次いで、フェドバッチ相の間のみ、炭素の源を提供されることができる。
本開示の方法において使用するための組換え宿主細胞の適合性は、周知の方法を使用した単純な試験手順によって決定し得る。例えば、試験される宿主細胞は、微生物の繁殖のために一般に使用されるpH、温度および通気条件下で、富栄養培地(例えば、LB培地、Bacto−トリプトン酵母抽出物培地、栄養素培地など)において繁殖し得る。組換え宿主細胞が生物変換の所望の生成物を生成すると同定されると、生成物は典型的には、生成宿主細胞系によって、適切な発現系および発酵、例えば、細胞培養物中の微生物生成によって大規模に生成される。
組換え宿主細胞は、バッチ、フェドバッチまたは連続的プロセスまたはこれらの組合せにおいて成長し得る。本明細書において使用する場合、用語「バッチ培養」は、培養培地が培養の間に加えられも回収もされない培養法である。比較すると、用語「フェドバッチ」は、培養培地が培養の間に加えられるが、回収されない培養法を意味する。典型的には、組換え宿主細胞は、培養系において成長し、ここで、組換え宿主細胞は、発酵槽中で確定した温度にて適切な栄養素源、例えば、炭素源の存在下で、所望の期間成長し、ホモファルネソールをアンブロキサンに生物変換し、かつ所望の量の(−)−アンブロキサンを含めたアンブロキサンを生成するのに十分な酵素を生成する。組換え宿主細胞は、任意の適切な様式で、例えば、バッチ培養またはフェドバッチ培養によって培養し得る。しかし、しばしば、より高い累積的生成物力価は、連続的プロセス、例えば、生成物除去、基質供給、およびバイオマス添加または(部分的)交換を実行することによって達成することができる。
本開示の一実施形態は、培養系において野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体を発現している組換え宿主細胞を提供し、ホモファルネソールを培養系(例えば、供給による)へと提供し、組換え宿主細胞によって生成されたGmSHCもしくはGmSHC誘導体を使用してホモファルネソールをアンブロキサンへと変換し、アンブロキサンを収集し、アンブロキサン(特に、(−)−アンブロキサン)を任意選択で単離することによる、組換え宿主細胞においてアンブロキサンを生成する方法を提供する。一部の実施形態では、組換え宿主細胞はまた、GmSHCの発現、またはアンブロキサンを作製するための生物変換経路を増進する役割を果たす他の核酸分子を発現している。
本開示の別の実施形態は、培養系において野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体を発現している組換え宿主細胞を提供し、ホモファルネソールを培養系へと提供し、アンブロキサンへのホモファルネソールの変換を促進するのに適した可溶化剤の存在下でホモファルネソール(例えば、EEH)を培養系に供給し、アンブロキサンを収集し、アンブロキサン(特に、(−)−アンブロキサン)を任意選択で単離することによる、組換え宿主細胞においてアンブロキサンを生成する方法を提供する。一部の実施形態では、変換は、可溶化剤、特に、非イオン性界面活性剤または洗剤、例えば、TWEEN80、TRITON X−100などを、反応混合物に加えることによって増進される。
組換え宿主細胞は、それに続く生物変換ステップのために、野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体を発現している細胞を適切な量で提供するために多くの方法で培養し得る。生物変換ステップに適用可能な宿主細胞は広範に変化するため(例えば、真菌、細菌、昆虫、哺乳動物および植物の細胞)、培養条件は、当然ながら、それぞれの種の特定の必要条件に調節され、これらの条件は周知であり、実証されている。組換え宿主細胞を成長させるための当該技術分野で公知の方法のいずれかを使用して、本開示のそれに続く生物変換ステップにおいて使用される細胞を生成し得る。典型的には、細胞は特定の密度(光学密度(OD)として測定可能)へと成長して、生物変換反応のための十分なバイオマスが生成される。
選択される培養条件は、得られる細胞の量(バイオマス)、およびどのようにバイオマスが生体触媒(すなわち、野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体を含有する細胞または細胞画分)となるかに影響を与えることができる。一部の実施形態では、生体触媒は、野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体を発現している組換え全細胞である。他の実施形態では、生体触媒は、野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体を発現している、組換え全細胞懸濁液または固定化細胞である。他の実施形態では、生体触媒は、野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体を発現している組換え宿主細胞から調製される膜画分または液体画分である。野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体を生成する組換え全細胞は、発酵槽(生物変換反応のための)から回収した全細胞、または発酵槽(これは次いでワンポット反応において使用される)中の細胞を含む。野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体を生成する組換え全細胞は、損なわれていない組換え全細胞および/または細胞デブリを含むことができる。どちらにしても、野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体は、基質(例えば、ホモファルネソール)を受け、かつ/または相互作用するために、膜(例えば、細胞膜)と何らかの方法で会合しており、この膜(例えば、細胞膜)は、全細胞(例えば、組換え全細胞)の部分であり得るか、または全細胞(例えば、組換え全細胞)を含み得る。野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体はまた、固定化形態(例えば、酵素担体と関連している)でよく、これによって、野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体が基質(例えば、ホモファルネソール)と相互作用することが可能となる。野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体はまた、可溶性形態で使用し得る。
一実施形態では、生体触媒は、(十分なバイオマスを生じさせるのに)十分な量で生成され、生物変換ステップの前に収集および洗浄(および任意選択で貯蔵(例えば、凍結または凍結乾燥))される。さらなる実施形態では、細胞は、(十分な生体触媒を生じさせるのに)十分な量で生成され、次いで、生物変換反応のために生体触媒を収集および洗浄する必要なく、反応条件を調節する。このワンステップ(もしくは「ワンポット」)方法は、コストを低減させる一方で、プロセスを単純化するため、有利である。細胞を成長させるために使用される培養培地はまた、生物変換反応における使用に適しているが、ただし、反応条件は調節され、生物変換反応を促進する。
細胞を成長させるための最適pHは、6.0〜7.0の範囲である。生物変換反応のための最適pHは、生物変換反応において使用されるSHC酵素、例えば、野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体によって決まり得る。pHは、当業者には周知の技術を使用してレギュレートされる。
用語「混合物」または「反応混合物」は、本開示において、用語「培地」と互換的に使用し得る(特に、これが「ワンポット」反応と関連するように)一方、十分なバイオマスを生じさせるように細胞を成長させることは、細胞培養物/発酵培地を必要とするが、反応緩衝液は適切なpHで十分であるため、培地は生物変換ステップのために必要とされないことに留意すべきである。
本開示の生物変換方法は、時間、温度、pHおよび可溶化剤の条件下で行われ、アンブロキサンへのホモファルネソール供給原料の変換をもたらす。反応混合物のpHは、GmSHC誘導体酵素について4〜8、好ましくは、5〜6.5、より好ましくは、4.8〜6.0の範囲であり、および野生型GmSHC酵素について約pH5.0〜約pH7.0の範囲であり得、反応混合物へと緩衝液を添加することによって維持することができる。使用される緩衝液は、クエン酸、リン酸、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、またはMES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)緩衝液であり得る。ある特定の実施形態では、緩衝液は、Tris−Cl緩衝液である。好ましい温度は、約15℃〜約45℃、好ましくは、約20℃〜約40℃である。温度は、生物変換プロセスの間に一定に保つことができるか、または変更することができる。
可溶化剤、例えば、界面活性剤、洗剤、溶解度増強剤、水混和性有機溶媒などの使用は、生物変換反応を改善させることが示されてきた。本明細書において使用する場合、用語「界面活性剤」は、2つの液体の間または液体および固体の間の表面張力(もしくは界面張力)を低下させる構成要素を意味する。界面活性剤は、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、および分散剤として作用し得る。ある特定の実施形態では、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または両性もしくは双性イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤の例には、これらに限定されないが、TRITON X−100(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコール、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコールtert−オクチルフェニルエーテル)、TWEEN80(ポリソルベート80)、およびTWEEN20(ポリソルベート20)が含まれる。例示的なアニオン性界面活性剤には、これらに限定されないが、タウロデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、およびラウリル硫酸ナトリウム(SLS)が含まれる。本明細書において提示する結果が示すように、TRITON X−100は、特に有用な可溶化剤である。したがって、TRITON X−100ならびに他の界面活性剤、例えば、SDSおよびTWEEN20を使用して、ホモファルネソールからアンブロキサンへの生物変換反応のために速度および収率を増加させることができる。可溶化剤は、反応物中の約0.005%〜0.48%、またはより好ましくは、反応混合物中の約0.05〜5%の濃度範囲で含むことができる。
本発明の方法によると、アンブロキサンは、それにホモファルネソール基質を加える生体触媒を使用して生成される。公知の手段(例えば、蠕動ポンプ、注入シリンジなど)を使用した供給によって、基質を加えることが可能である。ホモファルネソールは油溶性化合物であり、油フォーマットで提供される。生体触媒(微生物細胞、例えば、損なわれていない組換え全細胞および/または細胞デブリおよび/または固定化酵素)が水相中に存在することを考えれば、ホモファルネソールを生物変換反応混合物に加えるとき、生物変換反応は三相系(水相、固相および油相を含めた)として見なし得る。可溶化剤が存在するときでさえ、これはまた当てはまり得る。
一部の実施形態は完全な無傷の細胞または細胞抽出物の使用を含む一方、他の実施形態は、アンブロキサンへのホモファルネソールの生物変換のための、遊離の任意選択で精製したもしくは部分的に精製したGmSHC酵素、または固定化されたGmSHC酵素の使用を含む。この点において、可溶性野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体が生体触媒として使用されるとき、これは二相系と考えられる。
存在するホモファルネソール異性体の数は、反応のスピードに影響を与え得る。SHC誘導体酵素は、ホモファルネソール異性体の複合混合物(例えば、EE:EZ:ZE:ZZ)からのE,E−ホモファルネソールを(−)−アンブロキサンへと生物変換することができることが示されてきた(国際公開第2016/170099号パンフレットを参照されたい)。しかし、ホモファルネソール異性体の複合混合物を使用してより低い変換割合が典型的には観察され、EEH以外のホモファルネソール異性体が、SHC誘導体酵素へのアクセスについてEEHと競合し得、したがって、(−)−アンブロキサンへのEEHの変換のための拮抗阻害剤として作用し得、かつ/またはまた代替の基質として作用し得るという考え方とこれは一致する。したがって、本方法は好ましくは、2〜4つの異性体、好ましくは、2つの異性体の立体異性混合物から構成されるホモファルネソール基質の存在下で行われる。一部の実施形態では、ホモファルネソールの2つの異性体のみを、反応混合物に加える。ある特定の実施形態では、ホモファルネソール基質は、EE:EZ立体異性混合物から構成される。他の実施形態では、立体異性的に純粋なE,E−ホモファルネソールを、反応混合物に加える。
本発明の方法によって生成されるアンブロキサンは、例えば、蒸気抽出/蒸留または非水混和性溶媒(水相中にある生体触媒から反応生成物および未反応の基質を分離する)を使用した有機溶媒抽出、それに続くその後の溶媒の蒸発によって回収して、ガスクロマトグラフ(GC)分析によって決定するように粗反応生成物を得てもよい。蒸気抽出/蒸留および有機溶媒抽出方法は、当業者には公知である。例示として、このように得られたアンブロキサンは、有機溶媒、例えば、非水混和性溶媒(例えば、トルエン)を使用して全反応混合物から抽出し得る。代わりに、このように得られたアンブロキサンは、水混和性溶媒(例えば、エタノール)または非水混和性溶媒(例えば、トルエン)を使用して反応混合物の固相(例えば、遠心分離または濾過によって得られる)から抽出し得る。さらなる例として、アンブロキサンは、結晶として固相中で、もしくはアモルファス形態で存在し、また濾過を用いて、残った固相(細胞材料もしくはその細片)および液相から分離することができる。さらなる例として、アンブロキサンの融点を超える温度(概ね75℃)にて、アンブロキサンは、水相の上部上で油層を形成し得、ここで、油層を取り出し、回収することができる。油層が取り出された後のアンブロキサンの完全な回収を確実にするために、有機溶媒を、バイオマス中またはバイオマス上またはバイオマス周囲に含有される残留するアンブロキサンを抽出するために、結晶として水相に加え得る。有機層は、油層と合わせることができ、その後、全体をさらに処理して、アンブロキサンを単離および精製する。アンブロキサンは、さらに選択的に結晶化して、最終生成物からの副生成物(すなわち、(−)−アンブロキサン以外の異性体)および未反応のホモファルネソール基質を除去し得る。用語「選択的結晶化」は、それによって(−)−アンブロキサンが溶媒から結晶化することをもたらし、一方、残った異性体は、結晶化溶媒中で溶解されたままである工程ステップを指す。一部の実施形態では、単離された結晶性材料は、(−)−アンブロキサン生成物のみを含有する。他の実施形態では、単離された結晶性材料は、他の異性体を含有し、ここで前記異性体は、嗅覚の容認できる量でのみ存在する。
(−)−アンブロキサンの抽出および/または選択的結晶化における使用に適した適切な水混和性および非水混和性の有機溶媒の例には、これらに限定されないが、脂肪族炭化水素、好ましくは、5〜8個の炭素原子を有するもの、例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンまたはシクロオクタン;ハロゲン化脂肪族炭化水素、好ましくは、1個もしくは2個の炭素原子を有するもの、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンまたはテトラクロロエタン;芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンまたはジクロロベンゼン;脂肪族非環式および環式エーテルまたはアルコール、好ましくは、4〜8個の炭素原子を有するもの、例えば、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン;またはエステル、例えば、酢酸エチルまたはn−ブチルアセテートまたはケトン、例えば、メチルイソブチルケトンまたはジオキサン、またはこれらの混合物が含まれる。特に好ましくは使用される溶媒は、上記のヘプタン、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE、第三級ブチルメチルエーテルおよびiBMEとしてまた公知である)、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチルおよび/またはこれらの混合物である。好ましくは、水混和性溶媒、例えば、エタノールは、反応混合物の固相からの(−)−アンブロキサンの抽出のために使用される。エタノールの使用は、取り扱うことが容易であり、無毒性であり、環境に優しいため、有利である。
ある特定の実施形態では、最終生成物は、単離した(−)−アンブロキサンである。用語「単離されている」は、(−)−アンブロキサンに関連して使用されるように、生物変換生成物に付随する構成要素から分離または精製されている生物変換生成物を指す。そこから実体が天然に由来するソースとは異なる細胞系において生成される実体は、実体がそれに天然に付随する構成要素を必然的に含有しないため、「単離されている」。単離または純度の程度は、任意の適当な方法、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)、HPLCまたはNMR分析によって測定することができる。一部の実施形態では、最終生成物((−)−アンブロキサン)は、均一性、例えば、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、または89.5%純度または90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%純度へと単離および精製される。
最終(−)−アンブロキサン生成物の嗅覚的純度は、水中の10%エタノール抽出物を使用するか、または結晶性材料を試験することによって決定し得る。最終(−)−アンブロキサン生成物は、(−)−アンブロキサン生成物の市販の参照に対してその嗅覚的純度、質およびその感覚プロファイルについて試験し得る。(−)−アンブロキサン材料はまた、材料がその感覚受容性プロファイルに関して規格に合致するかを決定するために、専門家が適用研究において試験することができる。
GmSHC酵素の活性は、モルパーセントでの反応率(生成物の量/(生成物の量+残った出発材料の量))×100)によって定義される。好ましくは、野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体酵素の存在下で、または野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体を発現している組換え宿主細胞の存在下での(−)−アンブロキサンへのEEHの生物変換は、モルパーセントで示し、用いられるEEHのモルに基づいて、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100の(−)−アンブロキサンの収率を実現する。特に好ましくは、収率は、5〜100、10〜100、20〜100、25〜100、30〜100、35〜100、特に、40〜100、45〜100、50〜100、60〜100、70〜100である。
本発明の好ましい実施形態では、収率および/または反応率は、例えば、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、36時間または48時間の確定した期間に亘り決定し、この間に、EEHは、本開示によって野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体酵素をコードする核酸分子を担持する組換え宿主細胞によって(−)−アンブロキサンへと変換される。さらなる実施形態では、反応は、例えば、25℃、30℃、40℃、50℃または60℃の確定した条件下で行われる。
野生型GmSHCもしくはGmSHC誘導体酵素をコードする核酸分子を担持する大腸菌(E.coli)の組換え型菌株においてホモファルネソールから(−)−アンブロキサンを作製するための生物変換プロセスは、(−)−アンブロキサン生成のための低コストで産業上経済的なプロセスを提供することができる。
望ましくは、生成された(−)−アンブロキサンの量は、約1mg/L〜約20,000mg/L(20g/L)もしくはより高く、例えば、約20g/L〜約200g/Lまたは100〜200g/L、好ましくは、約125g/Lまたは150g/Lの範囲である。
(−)−アンブロキサンについての様々な用途には、これらに限定されないが、高級香料または消費者製品、例えば、本質的に全ての製品を含めた、布帛ケア、トイレタリー、美容およびクリーニング製品が含まれ、ここで、これらに限定されないが、AMBROX(Firmenich)、Ambroxan(Henkel)AMBROFIX(Givaudan)、AMBERLYN(Quest)、CETALOX Laevo(Firmenich)、AMBERMOR(Aromor)および/またはNorambrenolide Ether(Pacific)製品を含めた現在利用可能なアンブロキサン成分が商業的に使用される。(−)−アンブロキサンの選択的結晶化は、未反応のホモファルネソール基質の存在、およびまた(−)−アンブロキサンと他の検出可能な異性体の比によって影響を受け得る。たとえ(−)−アンブロキサンへのホモファルネソール基質の10%のみの変換が得られても、(−)−アンブロキサンの選択的結晶化は依然可能である。
下記の非限定的実施例を提供して、本発明をさらに例示する。
実施例1:PelBリーダー配列の挿入
GmSHCの酵素活性を増加させる1つのアプローチとして、pelBリーダー配列を、GmSHCをコードする核酸を含有するpET28b(+)ベクター中に挿入した。pelBリーダー配列をコードするオリゴヌクレオチドを、pET28b(+)ベクター中への挿入のためにNcoIおよびNdeI適合性末端と共に調製した。pET28b(+)ベクターをNcoIおよびNdeIで消化し、pelBリーダー配列のオリゴヌクレオチドを伴う一晩の連結反応において使用した。連結反応物を精製し、エレクトロコンピテント大腸菌(E.coli)の形質転換において使用した。このように得られた形質転換体である大腸菌(E.coli)のランダム標本を、相補性オリゴヌクレオチドプライマー「pelB−SHC−Fw」および「pET−XhoI−Rev」を伴うコロニーPCRによってアセスメントし、連結反応が成功したかどうかを決定した。クローンは、正確なサイズの挿入断片を含有すると同定された。それに続くDNA配列分析によって、pET28b(+)ベクターへのpelBリーダー配列の挿入を確認した。
実施例2:PelB−GmSHC融合タンパク質の発現分析
pelB−GmSHCクローンを含有するプラスミドを使用して、融合タンパク質の発現のために大腸菌(E.coli)BL21(DE3)を形質転換させた。形質転換に続いて、単一のコロニークローンを単離し、10mLのLB培地+カナマイシンを播種するために使用した。10mLの培養物を、200rpmで一晩振盪しながら37℃にてインキュベートした。一晩培養物を使用して、1LのLB培地+カナマイシンを含有するフラスコを播種し、これを、誘導の前に6時間、振盪しながら37℃にて200rpmでインキュベートした。タンパク質発現の誘導は、1mLのIPTG(1M)を加えることによって開始させた。誘導に続いて、インキュベーター温度を25℃に低下させ、培養物を振盪しながら200rpmで一晩静置した。一定分量(1.5mL)の25℃の一晩培養物をSDS−PAGEによる発現分析のために取り出し、残りの培養物は、さらなる処理のために遠心分離によって収集した。SDS−PAGE分析から、正確なサイズのpelB−GmSHC融合タンパク質が発現したことが観察された。
実施例3:全細胞スクリーニングアッセイ
pelBリーダー配列を含め、大腸菌(E.coli)細胞周辺腔中へのGmSHC酵素の輸送を促進し、それによって、細胞を取り巻く環境において、GmSHC酵素を基質にとってより利用可能であるようにした。このように、スクリーニングアッセイを行い、GmSHCと比較するように、pelB−GmSHCを含有する全細胞懸濁液によってアンブロキサンへのホモファルネソールの変換を分析した。反応物は、全細胞、100μlのクエン酸ナトリウム(1M)、pH4.9、可溶化緩衝液(0.05MのTris−Cl、pH8.0、0.01MのMgCl、1%v/v TRITON X−100)中の100μlのホモファルネソール(100mM)、および800μlの可溶化緩衝液を含んだ。反応物を37℃、200rpmでインキュベートし、試料を16時間および80時間後に取り出した。GC分析の前に、試料を2容のn−ヘプタンで抽出した。1mgの全細胞当たりの平均変換面積%を計算した。結果によれば、野生型GmSHC細胞懸濁液は、1時間当たり1mgの全細胞当たり平均0.033面積%を実現した一方、pelB−GmSHC細胞懸濁液は、アンブロキサンへのホモファルネソールの変換をもたらさなかったことが示された。したがって、pelBリーダー配列は、GmSHCの活性に悪影響を与えたようであった。
SHC酵素は補助因子非依存性であるため、GmSHCは、反応後に活性を保持し得ることが仮定された。活性が保持されるかどうかを決定するために、上記の16時間の時点からの細胞を取り出し、0.5mLの新鮮な反応混合物に再懸濁させた。次いで、これらの「二次通過」反応物を、37℃、200rpmにて概ね64時間インキュベートした。64時間後、反応物をGC分析のために2容のn−ヘプタンで抽出した。「初回通過」および「二次通過」の比較は、新鮮な反応混合物への反復曝露に続いて活性の最小の分解を示した(二次通過において0.037%に対して初回通過において0.033%)。したがって、これらのデータは、全細胞を再使用/リサイクルして、反復変換を行うことをできることを示し、プロセスの全体的なコストを最小化することが有利であると証明し得る。
実施例4:発酵におけるアンブロキサンへのホモファルネソールの変換
上記で示したように、GmSHCを発現している全細胞は、ホモファルネソールをアンブロキサンへと生物変換した。したがって、発酵における変換が達成することができるかを決定した。野生型GmSHCまたはR.パルストリス(R.palustris)SHC(RpSHC;国際公開第2010/139719号パンフレット)を発現している細胞を、下記の様式で成長および発現させた。一晩、GmSHCおよびRpSHCをコードする核酸を担持する細胞の10mLの(LB培地+カナマイシン、37℃、200RPM)開始培養物を使用して、1LのLB培地+カナマイシンを播種した。1Lの培養物を37℃、200rpmにて概ね4時間インキュベートした。それに続いて、1mLのIPTG(1M)を、培養物に加えて、SHCタンパク質発現を誘発し、培養物のインキュベーション温度を一晩のインキュベーションのために25℃に低減させた。
GmSHCおよびRpSHCの発現を確認するために、SDS−PAGEによる分析を細胞培養物上で行った。一定分量(1.5mL)の一晩培養物を取り出し、14,500rpmで2分間遠心した。上清を廃棄し、細胞ペレットを200μLのSDS添加緩衝液に再懸濁させた。次いで、再懸濁した細胞を95℃に5分間加熱した。14,500rpmでの10秒間の短時間の遠心分離に続いて、添加緩衝液中のSHCの試料を、プレキャスト4〜20%SDS−PAGEゲルのウェル中に入れた。この分析の結果は、GmSHCおよびRpSHCの両方が発現したことを示した。
GmSHCおよびRpSHCの発現の確認に続いて、表3において提供したように二重反復反応物を調製した。
反応物を調製し、37℃、200rpmでインキュベートした。16時間のインキュベーションの後に試料を取り出し、GC分析のために2容のn−ヘプタンで抽出した。40時間後、残った反応混合物を遠心し、細胞をペレット化し、GC分析のために上清を2容のn−ヘプタンで抽出した。1時間当たりの変換面積%の平均を、表4において提示する。
表4において提示した結果は、細胞培養培地中のSHCによるアンブロキサンへのホモファルネソールの変換を示す。結果はまた、タウロデオキシコール酸中のエマルジョンよりも、TRITON X−100中のホモファルネソールがアンブロキサンへとより容易に変換されたことを示す。
実施例5:GmSHC誘導体の合理的な設計
ホモロジーモデリング。ホモロジーモデリングを使用して、GmSHCの三次元構造を構築した。使用したテンプレートは結晶1GSZ(Lenhart,et al.(2002)Chem.Biol.9:639−45)および3SQC(Wendt,et al.(1999)J.Mol.Biol.286:175−87)であったが、これらはGmSHC配列の95%と44%および43%の配列同一性を共有する。
分子ドッキング。次いで、ホモファルネソールの基底状態の表示を、GmSHC構造の活性中心にドッキングした。これは、第1のプロトン供与体のプロトン化した酸素原子の中心にある3Dグリッドボックスを定義することによって達成された。このグリッドボックスは、活性中心ポケット領域を同定し、ここで、基質立体構造は分子ドッキングの実行の間に標本抽出する。次いで、Lamarckian遺伝子アルゴリズム(LGA;Morris,et al.(1998)J.Comput.Chem.19:1639−62;Morris,et al.(2009)J.Comput.Chem.30:2785−91)を使用して分子ドッキングを行った。系毎に全部で1000LGAの実行を行った。集団は300であり、GAエリーティズム=1であり、世代の最大数は27000であり、エネルギー評価の最大数は2500000であった。したがって、それぞれのLGAの実行について、第一世代は300のランダムな基質立体構造の集団で開始した。現在の集団における最良の基質立体構造は、自動的に次世代まで生き残る(GAエリーティズム=1)。したがって、次世代集団は、前の世代からの最も適切な基質立体構造および別の299の立体構造から始まる。最大世代数またはエネルギー評価に達するとき、LGAの実行は停止する。それぞれのLGAの実行について、1つの基質立体構造を得た。次いで、基質立体構造を、エネルギーおよび最小2乗偏差にしたがってソートした。最良の構造は、最も低い平均結合エネルギーを伴う最も集合したクラスターの最も低い結合エネルギー構造に対応した。
SHC構造分析および触媒機序。SHCは、二量体の3Dアレンジメントを採択する内在性モノトピック膜タンパク質である。各モノマーは、2つの高度に安定なα/α−バレルドメインを構築する多数のα−ヘリックスを密接に接続する(Wendt,et al.(1999)J.Mol.Biol.286:175−87)、8つのQWモチーフによって特性決定される(Sato,et al.(1998)Biosci.Biotechnol.Biochem.62:407−11)。活性中心空洞は2つのα/α−バレルドメイン内に埋没され、内側の疎水性チャネルを通してそのアクセスは可能である。AaSHCについて、チャネルおよび活性中心空洞は、基質認識に関与している、残基F166、V174、F434、およびC435によって構成される狭い狭窄部によって分離している(Lenhart,et al.(2002)Chem.Biol.9:639−45)。GmSHCについて、これらの残基は、F176、M184、F457およびC458に対応する。他に示さない限り、GmSHCに関して提供されるアミノ酸残基の位置は、配列番号2を基準にしている。活性中心空洞の上部において、保存DXDDモチーフを構成する残基(Wendt,et al.(1999)J.Mol.Biol.286:175−87)が観察される。これらの残基の1つは、第1のプロトン供与体であるD396であり、これは二重結合2および3へとプロトンを供与することによって環化を開始させる(スキーム2)。GmSHCにおいて、D396の酸素原子は、二重結合2、3の炭素3から4.6Åである。
DXDDモチーフの後に、強力なカチオン−π相互作用によってカチオン性中間体を安定化させることに関与しているトリプトファンおよびフェニルアラニン残基が続く(Dougherty (1996)Science 271:163−168)。空洞の底には最後のプロトン受容体であるグルタメート残基があり、これはヒドロキシル基からのプロトンを受け、第3の環の閉鎖および生成物であるアンブロクスの形成をもたらし得る。GmSHCの構造分析は、この酵素が、2つの可能な最後のプロトン受容体を有することを示す。しかし、ドッキング結果によると、GmSHCのE386は、最後のプロトン受容体である可能性が高い。ホモファルネソールヒドロキシル酸素およびE386の間の距離は、単に3.5Åである。明らかに、最後のプロトン受容体のこの配置は、この酵素の触媒有効性において重要な役割を果たしている。
分子モデルを使用して、カチオン性中間体および他の主要な触媒残基の安定化に関与しているカチオン−パイ相互作用を確立するGmSHC残基を決定した。特に、重要な触媒残基は、他のSHC酵素と共に保存されている。主な差異は、a)GmSHC活性中心が、残基45であり;b)GmSHC残基184が、残基176、457および458と一緒に、基質選択性と関連する、疎水性チャネルおよび活性中心空洞の間の狭い狭窄部に関与しており;c)QWモチーフのパターンがいくらか異なることを含む。
構造的ホットスポット。分子モデリングおよび分子ドッキング結果に基づいて、下記の構造的ホットスポットを同定した:残基V45、E46、Q54、F176、M184、F457、C458、W179、I278、Q279、T326、F385、E386、D397、F443、F460、F624、F654およびL656。
特異性決定位置および保存残基。特異性決定位置は、どの残基が所与の触媒特異性を共有するファミリーのタンパク質の部分群内で協調的に進化したかを示す。このように、これはタンパク質の同じファミリー内で生物学的機能の多様性を獲得することと関連する進化過程を追跡することを可能とする。特異性決定位置は、Xdetのアルゴリズムを使用して1000の相同配列を含有する複数の配列アラインメントから計算した。GmSHCの特異性決定位置は、Y113、V138、R141、F171、E225、E226、D227、Q324、G381、I455、H474、L476、S559、A568、L656およびE679である。
GmSHCの進化。アンブロクスへのホモファルネソールの触媒的変換を改善するために、GmSHCを修飾して、(1)ミカエリスメンテン複合体を改善し;(2)構造的および共進化ホットスポットに基づいて、カルボカチオン中間体のカチオン−π安定化を増加させることができる変異を導入し;(3)5環天然基質であるスクアレンの触媒作用にのみ不可欠である残基を変異させることによって触媒の空洞を開口し;(4)生成物形成を促進するために最後のプロトン受容体を補助する残基を変異させ;(5)活性中心を変化させ;(6)疎水性チャネルおよび活性中心空洞の間の狭い狭窄部に関与する残基を変異させ;(7)QWモチーフを増加させた。
ミカエリスメンテン複合体を改善し、かつカルボカチオン中間体のカチオン−π安定化を増加させるように設計されたGmSHC変異体は、分子ドッキングを使用してin silicoで試験した。この分析の結果を、表5において提示する。
上記で示した修飾のそれぞれに取り組むさらなる変異を、表6において一覧表示する。
SHC変異体酵素発現。表6の野生型およびGmSHC変異体を、pET28a(+)中に個々にクローン化した。これらのDNA構築体をBL21(DE3)大腸菌(E.coli)中に形質転換し、カナマイシンを含有する寒天プレート上に播種した。これらを、37℃にて一晩インキュベートした。単一の細菌のコロニーを採取し、96ウェルプレート中の500μLのLB+カナマイシンを播種するために使用した。このプレートを、撹拌しながら37℃にて一晩インキュベートした。これらの初代培養(10μL)を50mLのfalconチューブ中の10mLのLB+カナマイシンを播種するために使用し、これをそれに続いて37℃にて180rpmで約7時間インキュベートした。次いで、1mMのIPTGの添加によってタンパク質発現を誘発した。インキュベーター温度を25℃に低下させ、培養物を180rpmで一晩さらにインキュベートした。翌日、培養物を4000rpmにて10分間遠心し、上清を廃棄した。反応アッセイにおける使用の前に、細胞ペレットを2ラウンドの凍結/解凍に曝露させた。
細胞ペレット(1μL)をニトロセルロース膜上へとスポッティングし、30分間空気乾燥させた。膜を、穏やかに撹拌しながら5%粉乳中に室温にて1時間配置した。次いで、膜をリン酸緩衝食塩水(PBS)で3×5分すすいだ。抗ヒスチジン抗体溶液(10,000倍希釈)を加え、振盪しながら室温にて1時間インキュベートした。ブロットをそれに続いてPBS中で3×5分洗浄した。展開溶液(10mLのPBS中の6mgのジアミノベンジジン(DAB)および5μLの30%H)を、ブロットに加えた。展開すると、展開溶液を直ちに除去し、ブロットを水ですすいだ。
この分析の結果は、1mMのIPTGの添加に続いて、全ての構築体が25℃にてBL21(DE3)大腸菌(E.coli)において発現したことを示した。酵素の発現および処理に続いて、ドットブロットを行って、特定の変異の導入がタンパク質発現を変化させたかを評価した。特に、GmSHC変異体の大部分は、野生型GmSHC構築体と同様のレベルの発現を示した。
SHC変異体スクリーニング反応。クエン酸ナトリウム緩衝液pH5.3(等容量の1Mのクエン酸ナトリウム、pH4.9および0.1Mのクエン酸ナトリウム、pH6.5)を調製した。次いで、タウロデオキシコール酸(ホモファルネソール基質に関して2%w/w)を、クエン酸ナトリウム緩衝液に加えた。それに続いて、ホモファルネソール(3mg/mL、10mg/mLまたは15mg/mL)を、緩衝液に加えた。このように得られたエマルジョンを2つの96ウェルプレート中に移し、加えられるホモファルネソール濃度によって様々な期間(すなわち、3mg/mLのホモファルネソール、16時間のインキュベーション;10mg/mLのホモファルネソール、6時間および24時間のインキュベーション;15mg/mLのホモファルネソール、4時間および20時間のインキュベーション)、撹拌しながら37℃にてインキュベートした。研究が進行するにつれ、ホモファルネソール濃度は増加し、インキュベーション期間は減少し、調査した変異体の間のSHC活性におけるより明白な差異が可能となった。反応を停止させ、生成物を抽出するために、2容のヘプタンを、各ウェルに加えた。次いで、徹底的に混合するため撹拌しながら、プレートを37℃にて30分間インキュベートした。プレートを10分間4000rpmにて遠心し、細胞材料をペレット化した。次いで、上部の有機層を取り出し、クリーンなガスクロマトグラフィー(GC)バイアル中に入れた。
GC分析方法。GC分析方法を使用して、出発材料、およびスクリーニング反応において使用される生成物のそれぞれを検出した。生じた試料の容量によって、4.5分のみの実行時間を伴う速い方法を開発した。GC分析条件を、表7において提示する。
3mg/mLおよび10mg/mL両方のホモファルネソールの添加に続くSHC変異体反応試料の分析は、いくつかのSHC変異体/誘導体が、野生型酵素と比較して、改善された活性を示したことを示した。特に目的の変異体を、表8において一覧表示する。
結果によれば、酵素の多くが、アンブロキサンを生じさせるために使用されるホモファルネソール異性体の完全な消費に達したことが示された。このように、さらなる分析を行い、1つもしくは複数の最適なSHC酵素を同定した。特に、基質添加を15mg/mLに増加させ、インキュベーションは限定された期間(すなわち、4時間および20時間)の間進行させた。表9において示すように、野生型SHC酵素より高い活性を示した複数の変異体酵素が存在した。特に、F624Y SHC変異体は、4時間後に最も高い活性を示し、一方、E46Q SHC変異体は、20時間後に最も高い活性を示した。特に、活性中心へのアクセスを与える疎水性チャネルを変化させることによって酵素特異性に影響を与えるように設計された、184位において変異(M184L、M184V、M184IおよびM184A)を有する酵素のそれぞれは、より長いインキュベーション期間に続いて活性の増加を示した。
ホモファルネス酸からのスクラレオリド生成について、アンブロキサンに加えて、変異体をまた試験した。この分析は、G623V、I278V、L335FおよびQ54E変異体が、野生型GmSHCと比較して、スクラレオリド生成の増加を示したことを示した(表10)。
4時間のインキュベーションの後で、7つのみの変異体は、野生型SHC(破線より上の全てのバー)より高いアンブロキサン生成を示した一方、15の変異体は、20時間のインキュベーションに続いてより高い活性を示したことを図2は示す(図2)。特に、V45L+T326S、F624Y、E46Q、M184L、M184V、M184IおよびQ178E変異体は、両方の時点において増加した活性を示した。これらの7つの変異体に加えて、in silicoおよびin vitroでの分析は、G623A、Q54E、R194QおよびM184A変異体がまた目的のものであったことを示した。したがって、GmSHC酵素の活性を増加させる相加効果または相乗効果を示す組合せ変異体を提供する(表11)。
選択した組合せ変異体を50mg/mLのホモファルネソールと共に20時間インキュベートしたとき、変異体のそれぞれは、野生型GmSHCと比較して活性の増加を示したことが見出された(表12)。組合せ変異体が25%の酵素添加で50mg/mLのホモファルネソールと共に6時間または20時間インキュベートしたとき、同様の結果が観察された(図3)。
実施例6:GmSHC誘導体の要約
SHCは、二量体の3Dアレンジメントを採択する内在性モノトピック膜タンパク質である。各モノマーは、2つの高度に安定なα/α−バレルドメインを構築する多数のα−ヘリックスを密接に接続するQWモチーフによって特性決定される(Wendt et al.(1999)J.Mol.Biol.286:175−87)。活性中心空洞は2つのα/α−バレルドメイン内に埋没され、酵素の膜浸漬領域(membrane-immersed region)であることが示唆される内側の疎水性チャネルを通してそのアクセスは可能である(Lenhart,et al.(2002)Chem.Biol.9:639−45)。チャネルおよび活性中心空洞は、基質認識に関与している狭い狭窄部によって分離されている(Lenhart,et al.(2002)Chem.Biol.9:639−45)。GmSHCについて、これらの残基は、Phe176、Met184、Phe457およびCys458に対応する。保存DXDDモチーフを構成する残基(Wendt et al.(1999)J.Mol.Biol.286:175−87)は、活性中心空洞の上部において見出される。それらの残基の1つは、第1のプロトン供与体であるAsp396であり、これは二重結合C2=C3へとプロトンを供与することによってホモファルネソールの環化を開始させる。DXDDモチーフの後に、強力なカチオン−π相互作用によってカチオン性中間体を安定化させることに関与しているトリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニン残基が続く(Dougherty (1996)Science 271:163−8)。空洞の底上には、最後のプロトン受容体である負に帯電している残基があり、これはヒドロキシル基からプロトンを受け、それによって、第3の環の閉環およびアンブロキサンの形成がもたらされる。
アンブロキサンへのホモファルネソールの変換を改善させるために、GmSHCは、配列番号2の45位、46位、54位、178位、184位、194位、247位、278位、326位、386位、335位、460位、623位および624位における残基の1つもしくは複数において変異させた。
45位および326位。GmSHC相同性モデルおよび分子ドッキング計算によると、残基V45およびT326は、基質ヒドロキシル基の近くに置かれる。基質との分子間相互作用を増加させるために、GmSHC45位は、グルタミン、ロイシンまたはイソロイシンに変異させ、326位は、セリンに変異させる。これらの変異の両方の組合せ(V45L+T326S)は、15g/Lのホモファルネソールを伴う20時間のインキュベーションの後でアンブロキサン生成における1.4倍の増加を示した。
46位、54位および386位。GmSHC相同性モデルおよび分子ドッキング計算によると、残基E46またはE386は、最後のプロトン受容体として機能し、基質ヒドロキシル基からプロトンを受ける。AaSHC(Reinhert,et al.(2004)Chem.Biol.11:121−6)およびGmSHC相同性モデルの間の構造的アラインメントは、GmSHCのQ54が、この酵素の最後のプロトン受容体であるAaSHCの残基E45と重ねられることを示す(Dang & Prestwich (2000)Chem.Biol.7:643−9)。したがって、GmSHCの残基54はグルタミン酸(glutamate)に変異し、保存DXDDモチーフと関連する電荷ネットワーク上に悪影響を有することなしに、この位置における最後のプロトン受容体を組み込んだ。残基46はグルタミン、アラニンまたはヒスチジンに変異し、一方、残基386はグルタミンに変異し、最後のプロトン受容体の位置を変化させた。野生型酵素と比較したとき、E386位において変異を有する変異体は、酵素活性に対して効果は有さなかった。しかし、E46位およびQ54位における変異は両方とも、アンブロキサンへのホモファルネソールの変換における増加を示した。15g/Lのホモファルネソールの20時間のインキュベーションの後、E46QおよびE46H変異体はそれぞれ、活性における1.8倍および1.2倍の改善を示し、一方では、Q54E変異体は、野生型酵素と比較して、活性における1.4倍の改善を示した。
178位。GmSHC相同性モデルおよび相同ヒトラノステロールシンターゼの間の構造的アラインメント(Thoma,et al.(2004)Nature 432:118−22)は、GmSHCのQ178が、この酵素の最後のプロトン受容体であるヒトラノステロールシンターゼの残基H232と重ねられることを示す。したがって、GmSHCの残基178は、グルタミン酸に変異され、この位置における最後のプロトン受容体を組み込んだ。この変異の導入は、野生型酵素と比較して、アンブロキサンへのホモファルネソールの変換を1.4倍増加させた。
184位。残基M184は、基質認識に関与している狭い狭窄部中に配置される(Lenhart,et al.(2002)Chem.Biol.9:639−45)。このように、基質認識を変化させるために、GmSHCのM184は、非極性アミノ酸、すなわち、ロイシン、イソロイシン、バリンおよびアラニンに変異した。この位置を変異させることによって、メチオニン酸化現象も防止され、これは基質認識に悪影響を与えることができた。Leu、Ile、ValまたはAlaのいずれかの1つへのM184の変異は、活性の増加をもたらしたことが観察された。特に、M184I変異体は、アンブロキサンへのホモファルネソールの変換における1.7倍の改善を伴って、最も大きな増加を示した。
194位。QWモチーフはα−ヘリックスをしっかりと接続し、2つのα/α−バレルの構築に寄与する。これらの高度に安定なα/α−バレルは、高度にエネルギー発生性の触媒反応と関連するエネルギー放出に対して酵素を保護する。GmSHCの相同性モデルによると、残基R194は、残基W152近くに配置される。したがって、新規なQWモチーフをW152と共に導入するために、残基194をグルタミンに変異させ、それによって、酵素の構造的安定性を増加させた。実験的に、この変異は、アンブロキサンへのホモファルネソールの変換における1.3倍の改善を伴って、変換における改善を示した。
247位。GmSHC相同性モデルによれば、残基P247は、酵素の膜浸漬領域であることが示唆されるチャネル入口におけるループに配置される。残基P247は非プロリン残基に変異し、この領域におけるチャネルの動力学が変化した。組合せ変異体、V45L+T326S+M184I+R194Qにおいて試験したとき、40%の酵素添加で50g/Lのホモファルネソールと共にインキュベートしたとき、変換における2.7倍の改善が観察された。
278位。GmSHC相同性モデルおよび分子ドッキング計算によれば、残基I278は基質ヒドロキシル基の真下に配置される。残基I278がバリンに変異するとき、分子ドッキング計算は、基質C2=C3二重結合を第1のプロトン供与体であるD396の近くに配置することによって活性中心内の基質配置が改善することを示す。残基I278の変異は、ホモファルネソール変換において改善を示さなかった。しかし、酵素がホモファルネス酸と共にインキュベートされたとき、スクラレオリドへの酸の変換は、野生型酵素と比較したとき、10g/Lの基質添加および100%の酵素添加にて試験したとき2倍の改善を示した。
335位。GmSHC相同性モデルおよび分子ドッキング計算によれば、残基L335は、第1のプロトン供与体である残基D396の近くに配置され、フェニルアラニンに変異されたとき、これは基質カチオン性中間体との強力なカチオン−π相互作用を導入することができる。この位置における変異は、スクラレオリドへのホモファルネス酸の変換に関して1.8倍の改善を実現した。
460位。GmSHC相同性モデルによれば、GmSHCの残基F460は、基質認識に関与している狭い狭窄部の隣の活性中心空洞における残基である(Lenhart,et al.(2002)Chem.Biol.9:639−45)。残基F460はアラニンに変異し、活性中心空洞への基質のアクセスを増加させた。その結果、この変異は、15g/Lの基質添加でホモファルネソールと反応したとき、1.3倍の改善を示した。
623位。GmSHC相同性モデルおよび分子ドッキング計算によれば、残基G623は、基質のヒドロキシル基近くに位置する。したがって、残基G623はアラニンまたはバリンに変異し、基質との分子間相互作用を増加させた。G623A変異体は、15g/Lのホモファルネソールの存在下でアンブロキサン生成における1.6倍の改善を示した一方、G623V変異体は、スクラレオリドへのホモファルネス酸の変換において1.9倍の増加を示した。
624位。GmSHC相同性モデルおよび分子ドッキング計算によれば、残基F624は、強力なカチオン−π相互作用を確立し、カチオン性中間体を安定化させる。したがって、残基F624はチロシンまたはトリプトファンに変異し、基質カチオン性中間体とのさらにより強力なカチオン−π相互作用が導入された。この位置がトリプトファンに変化したとき、ホモファルネソールからのアンブロキサンの生成における1.45倍の改善が得られた。

Claims (8)

  1. スクアレンホペンシクラーゼ(SHC)をコードする核酸分子を含む組換えベクターであって、前記スクアレンホペンシクラーゼ(SHC)のアミノ酸配列が、配列番号2、または配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、組換えベクター。
  2. 前記SHCが、配列番号2に対して、45位、46位、54位、86位、139位、142位、178位、184位、194位、239位、278位、326位、335位、386位、455位、460位、603位、623位、624位、656位、658位またはこれらの組合せにおいてアミノ酸置換を含む、請求項1に記載の組換えベクター。
  3. 請求項1に記載の組換えベクターを含む組換え宿主細胞。
  4. 配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を含み、かつ配列番号2に対して、45位、46位、54位、86位、139位、142位、178位、184位、194位、239位、278位、326位、335位、386位、455位、460位、603位、623位、624位、656位、658位またはこれらの組合せにおいてアミノ酸置換を含む、組換えスクアレンホペンシクラーゼ(SHC)。
  5. アンブロキサン(ambroxan)を生成する方法であって、
    (a)スクアレンホペンシクラーゼ(SHC)を発現している組換え宿主細胞へとホモファルネソールを提供することであって、前記スクアレンホペンシクラーゼ(SHC)のアミノ酸配列が、配列番号2、または配列番号2と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列であることと、
    (b)前記SHCによって生成されたアンブロキサンを収集することと、
    を含む、方法。
  6. 前記ホモファルネソールが、可溶化剤の存在下で提供される、請求項5に記載の方法。
  7. 前記可溶化剤が、非イオン性界面活性剤を含む、請求項6に記載の方法。
  8. 前記ホモファルネソールが、(3E,7E)ホモファルネソールを含む、請求項5に記載の方法。
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