JP2020506326A - ガスタービンのための高温ガス部及び対応する高温ガス部の壁 - Google Patents

ガスタービンのための高温ガス部及び対応する高温ガス部の壁 Download PDF

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Abstract

本発明は、高温ガス部の壁(12)であって、冷却流体(17)が作用可能な第1の表面(14)と、第1の表面(14)の反対側に配置されている第2の表面(16)であって、高温ガス(15)が作用可能な第2の表面(16)と、第1の表面(14)から第2の表面(16)に冷却流体(17)を導くために、第1の表面(14)に配置されている入口領域(13)から第2の表面(16)の出口領域(19)に至るまで延在している少なくとも1つのフィルム冷却穴(18)と、を備えている壁(12)において、少なくとも1つのフィルム冷却穴(18)が、フィルム冷却穴(18)を通じる冷却流体(17)の流れの方向に関する出口領域(19)の上流に配置されているディフューザ区間(20)を備えており、ディフューザ区間(20)が、ディフューザ底壁(24)と2つの反対側に配置されたディフューザ側壁(22)とによって少なくとも境界づけられており、ディフューザ区間(20)が、冷却流体(17)の流れを2つの分岐流れ(17a,17b)に分割するためのデルタ状楔要素を備えており、デルタ状楔要素(26)が、冷却流体(17)の流れの方向に関して先縁部(28)から後端部(30)に至るまで延在しており、デルタ状楔要素(26)が、ディフューザ底壁(24)から階段状に突出しており、上面から見ると三角状に形成されており、デルタ状楔要素(26)が、冷却流体の流れにおいて一組のデルタ渦を生成する、壁(12)に関する。

Description

本発明は、ディフューザ区間を具備する少なくとも1つのフィルム冷却穴を備えている、例えばガスタービンの、高温ガス部の壁に関する。
ガスタービンのタービンブレード及びタービン羽根のような高温ガス部とそのフィルム冷却穴とは、従来技術においてよく知られている。熱的負荷を受ける部分をフィルム冷却するためにフィルム冷却穴が利用される場合には、冷却空気の層によって壁の表面を高温ガスから隔離することが望ましい。フィルム冷却穴から排出された冷却空気の噴流が、冷却空気の絶縁層に影響を及ぼす渦を生成する。しかしながら、渦は、フィルム冷却層を乱し、フィルム冷却効果を低減させる。
主に2つのタイプの渦が、このような乱れに貢献する。第1の逆回転する渦対は、冷却穴の入口において発生し、“キドニー渦”としても知られている。第2の渦対は、高温ガスの抵抗によって発生し、フィルム冷却穴の出口から排出される噴流の周囲及び下方に方向づけられ、“煙突渦(chimney vortex)”としても知られている。これら2つの渦対は、同様に回転し、互いに強度を高め合う。渦対が回転方向に起因して、渦対は、2つの隣り合うフィルム筋の間において絶縁フィルムの外側から、当初から高温ガスから隔離されるべきである表面に至るまで、高温ガスを妨げる。このような効果は、特にフィルム冷却効果を失わせるので、所望のフィルム冷却効果を達成させるために、より多くの冷却空気が消費されるが、このことは、ガスタービンの効率に悪影響を及ぼしている。
現在に至るまで、既存の冷却空気の噴流のモーメントを可能な限り低減させるように、ディフューザとシリンドリカル状のフィルム冷却穴の出口におけるフィルム冷却穴の出口面積とを形成すること、及び、研究者は、噴流が壁面から隔離されている冷却された表面の専有面積を大きくすることを試みている。これに関連して、特許文献1及び2は、フィルム冷却穴のディフューザに配置されている分割要素の異なる形状を開示している。当該形状それぞれは、横断方向における冷却空気の流れの広がりを大きくするようになっている。同一の目的のために、特許文献3は、フィルム冷却穴のディフューザの改善された開口形状を提案している。フィルム冷却穴は、中央部分から端側それぞれに至るディフューザ部分の出口表面が高温ガスの下流側に向かって傾くように、且つ、ディフューザの底面が中央において高温ガスの上流側に向かって傾くように形成されている。
さらに、特許文献4は、2つの関連するが完全に独立したディフューザ区間に隣接している一の共通する測定区間を備えているフィルム冷却穴を開示している。このような形状は、フィルム冷却穴の数量を低減させつつ横断方向開放角を大きくすることができる。しかしながら、2つの独立したディフューザ区間及び共通する計測区間を具備するフィルム冷却穴を製造することは、困難であり且つ時間を要するものである。
悪影響を及ぼす渦を低減するための他の技術的思想は、渦が互いに相殺されるように、ディフューザの形状とフィルム冷却穴の対の交差配置とを最適化することに取り組んでいる。
一般に、残留渦は認められており、残留渦の悪影響はフィルム冷却穴の数量を大きくすることによって相殺されている。
さらに、特許文献5には、キドニー渦の回転方向が逆転されるように、フィルム冷却穴の入口を改善することが開示されている。これにより、2つの隣り合う噴流の境界における空気の渦が、噴流自体の低温コア及びモーメントによって(抵抗が表面に向かう)中央における悪影響を相殺しつつ、当該表面から離隔する。
このような技術的思想は一見有益であるが、冷却空気がフィルム冷却穴を通じて移動する際に、フィルム冷却穴の内側における壁面抵抗が冷却空気のキドニー渦を減速させることが判明した。これにより、特に長尺のフィルム冷却穴のために、キドニー渦を相殺する逆煙突渦の渦が弱体化され、これによりフィルム冷却効果の利益も低減される。
特開2013−83272号公報 特開平10−89005号公報 欧州特許出願公開第1967696号明細書 英国特許出願公開第2409243号明細書 欧州特許出願公開第2990605号明細書
従って、本発明の目的は、高められたフィルム冷却容量を具備するフィルム冷却穴を提供することである。
本発明の目的は独立請求項によって達成される。独立請求項は、本発明の優位な発展形態及び変形例を説明している。優位な発展形態及び変形例の特徴は任意に組み合わせ可能とされる。
本発明は、高温ガス部の壁であって、冷却流体が作用可能な第1の表面と、第1の表面の反対側に配置されている第2の表面であって、高温ガスが作用可能な第2の表面と、第1の表面から第2の表面に冷却流体を導くために、第1の表面に配置されている入口領域から第2の表面の出口領域に至るまで延在している少なくとも1つのフィルム冷却穴と、を備えている壁において、少なくとも1つのフィルム冷却穴が、フィルム冷却穴を通じる冷却流体の流れの方向に関する出口領域の上流に配置されているディフューザ区間を備えており、ディフューザ区間が、ディフューザ底壁と2つの反対側に配置されたディフューザ側壁とによって少なくとも境界づけられており、ディフューザ区間が、冷却流体の流れを2つの分岐流れに分割するためのデルタ状楔要素を備えており、デルタ状楔要素が、冷却流体の流れの方向に関して先縁部から後端部に至るまで延在しており、デルタ状楔要素が、ディフューザ底壁から階段状に突出しており、上面から見ると三角状に形成されていることを特徴とする壁を提供する。
従って、本発明の主たる技術的思想は、フィルム冷却穴の出口領域の下流における煙突渦に反作用を付与する渦対を発生させることができるデルタ状楔要素を提供することである。このようなデルタ状楔要素は、フィルム冷却効果を改善させることができるので、フィルム冷却効果に関する円筒渦の悪影響を相殺することができる。
デルタ状楔要素は、先縁部及び後端部を備えている三角状に形成されている。デルタ状楔要素の先縁部は、接近してくる冷却流体の流れに対向して方向づけられている、鋭角の縁部とされる。好ましくは、先縁部は、階段状に、すなわちディフューザ区間の底部から階段を形成する状態で突出している。好ましくは、側面から見ると、先縁部は、ディフューザの底部から35°以上の角度で、最も好ましくは90°の角度で突出している。これら特徴によって、デルタ渦の発生が可能となり且つ維持される。
第1の好ましい実施例では、デルタ状楔要素は、一の頂面と2つの側面とを備えている。2つの側面は、先縁部において合流するように且つ後端部に向かって拡幅するようにV字状に配置されている。側面それぞれと頂面とは、対応してV字状に配置されている長手方向縁部において合流している。従って、動作の際に、デルタ状楔要素は、“デルタ渦発生器”として機能し、冷却流体が長手方向縁部の上方を流れる場合に渦対を発生させる。デルタ状楔要素は、デルタ状に形成されている場合には、先縁部と後端部との間の長さが同一とされる2つの長手方向縁部を具備して、対称に形成されている。当該実施例は、対称な側壁を具備するディフューザ区間に対して有益である。
有益には、2つの長手方向縁部はそれぞれ、先縁部から後端部に至るまで延在しており、先縁部と後端部との間に楔角βを形成しており、楔角βは好ましくは少なくとも15°とされる。このような楔角を具備するデルタ状楔要素は、本来の目的に対して一層良好である。
好ましくは、2つの互いに対して反対側に配置されたディフューザ側壁は、上方から見ると、横断方向開放角を形成しており、横断方向開放角は、楔角より小さい。このような優位な実施例では、デルタ状楔要素とディフューザ側壁それぞれとの間に形成された単一の通路の断面積は、冷却流体の流れ方向において小さくなっている。下流方向における当該通路それぞれの断面積の減少は、特に頂面が出口領域の下方に位置する場合に、デルタ状楔要素の直線状の長手方向縁部を交差させることによって、横断方向において当該通路から離隔するように冷却流体を付勢する。このことは、デルタ渦対の発生を促進させ、デルタ渦対の強度を維持させることができる。
代替的又は付加的な好ましい実施例では、デルタ状楔要素の頂面が、第2の表面と少なくとも部分的に同一平面上に配置されている。言い換えれば、頂面は、ディフューザの底部と比較して傾斜しており、及び/又は、出口領域に少なくとも部分的に配置されている。
当該傾斜によって、デルタ状楔要素の頂面と冷却流体の主流れの方向とが成す角度が決定され、これにより冷却流体の流れが、デルタ状楔要素の頂面及び2つの側面によって形成された長手方向縁部それぞれの上方を流れるように増大する。冷却流体の流れ方向に対する頂面の傾斜によって、冷却流体がデルタ状楔要素の長手方向縁部を通過すると、楔状の冷却流体の流れの伴流領域における圧力が低減され、冷却流体の流れは頂面の上において内側に曲げられる。このような初期モーメントから、継続する冷却流体の流れは、横断方向縁部それぞれに沿って、頂面の上において渦巻く渦を形成する。このように発生される渦は、デルタ渦と呼称される。
さらに好ましくは、デルタ状楔要素は、略平坦な唯一の頂面を備えている。当該実施例は、製造容易である。
従って、いわゆる楔であるデルタ状楔要素は、ディフューザの底面に形成されており、フィルム冷却穴の入口領域に対面している先縁部を備えている。計測区間から高速で流入する冷却流体は、デルタ状楔要素の先縁部に衝突し、上述の過程によってデルタ渦となるように方向づけられる。このようなデルタ渦対は、煙突渦と比較して理想的な反対方向の渦を有している。
大部分のフィルム冷却ディフューザは、ディフューザに残留する残り部分として楔を形成するために、レーザ技術によってタービン翼の表面の壁等に作られている。レーザによって除去されるべきディフューザの容積が、楔によって著しく低減されるので、このような新しいディフューザのタイプは、製造時間及び製造コストを低減することにも貢献する。
さらに、このような製造技術を利用することによって、ディフューザは、目標となるフィルム冷却の増大に最良に合致するように完全に設計可能となる。楔角、楔長さ、楔の先縁部の高さ、楔の後端部の幅、ディフューザ区間における楔の位置、楔の頂面の傾斜、楔の先縁部の角度、及び頂面と外壁との間における距離のようなパラメータは、所定の制限を満たせば自在に選択可能とされる。形状は、デルタ渦の発生を維持することができる限り、レーザのアクセス性によってのみ制限される。
デルタ状楔要素の最も単純な形状では、頂面が高温ガス部の表面の残り部分とされる。この場合には、頂面は、第2の表面と合流しているが、階段状に形成されていなければ、縁部も備えていない。
このような単純な形状は、楔がディフューザの側壁に向かって横断方向に冷却流体を押し出すという付加的な効果も有している。楔を具備しないディフューザでは、このような効果は、純粋に空気力学を考慮した拡散に委ねられるが、ディフューザの横断方向開放角とディフューザから排出された冷却流体フィルム筋の幅とを制限する。楔要素が高くなるに従って、冷却流体が横断方向に広がるために強固に支持される。
横断方向に変位する効果は、ディフューザにおいて流れを分割することなく、ディフューザの横断方向開放角を広げることに貢献する。これにより、横断方向開放角は、ディフューザにおける流れの分割によって一切制限されることが無くなり、横断方向開放角を著しく大きくすることができる。これにより、高温ガス部の表面の覆われる範囲が大きくなるので、デルタ渦の効果に加えて、フィルム冷却効果を高めることができる。これにより、高温ガス部は、高められた高温ガス温度においてもタービンを動作させることができる。逆に、ディフューザを幅広とすることに伴って、フィルム冷却穴及び冷却流体を減らすことが、間隙を有しない冷却フィルムで壁表面を覆うために必要とされる。これらすべてのことによって、壁がタービン部分で利用される場合に、タービンの効率及び出力を高めることに貢献する。
好ましくは、デルタ状楔要素は、ディフューザの内側に配置されており、これにより汚染及び高温ガスによる浸食から保護される。デルタ状楔要素は、形状を維持し、渦発生器としての効果を維持することができる。
これとは別に、デルタ渦が、フィルム冷却穴の出口において発生され、フィルム冷却穴の計測区間における抵抗は、代替的な方法と同様に、渦を弱体化させず、フィルム冷却穴の入口においてキドニー渦を発生させることができる。
さらに、デルタ状楔要素の頂面は、TBCで容易に覆うことができる。標準的な工程として、例えば翼のような大部分の高温ガス部品が、最初に接着塗料及びTBCで覆われ、その後にフィルム冷却穴がレーザ加工によって形成される。この工程は、デルタ状楔要素の頂面にTBC層を設け、楔の高さ及び幅を増大させ、これにより楔の渦発生効率と横断方向における冷却流体の変位とを最大化し、上述の冷却効果という利益を得ることができる。
高温ガス部は、1つ以上のフィルム冷却穴列に配置されている、少なくとも1つの、好ましくは複数の上述のフィルム冷却穴を具備する壁を備えている。高温ガス部は、ロータのタービンブレード、固定式タービン羽根、固定式タービンノズル、ガスタービンのリングセグメント、又はタービンシェル等として構成されている。また、ガスタービンの他の部分は、高温ガス部をフィルム冷却する必要がある場合に限り、本発明におけるフィルム冷却穴を備えている。
本発明に実施例について、添付図面を参照しつつ、例示することのみを目的として説明する。
第1の典型的な実施例としての本発明におけるフィルム冷却穴を備えている壁を貫通する断面図である。 図1に表わすフィルム冷却穴の斜視図である。 第2の典型的な実施例におけるフィルム冷却穴の斜視図である。 第2の典型的な実施例における列のうち2つのフィルム冷却穴の斜視図である。 本発明におけるフィルム冷却穴の1つ以上の列を備えている壁が形成されたタービンブレードの側面図である。 本発明におけるフィルム冷却穴の1つ以上の列を備えている壁が形成されたタービン羽根の側面図である。 本発明におけるフィルム冷却穴の1つ以上の列を備えている壁が形成されたリングセグメントの側面図である。
図面は、概略的な形態を表わす。異なる図面において、類似又は同一の要素には、同一の参照符号が付されていることに留意すべきである。さらに、単一の図面に表わす形体は、他の図面に表わす実施例と容易に組み合わせることができる。
図1は、ガスタービン(図示しない)に組み付けられるように且つ当該ガスタービンで利用されるように構成されている高温ガス部10の壁12の断面図である。壁12は、冷却流体17に曝されるようになっている第1の表面14を備えている。壁12は、第1の表面の反対側に、第2の表面16を備えている。第2の表面16は、高温ガス15に曝されるように特化されている。壁12には、複数のフィルム冷却穴18(図5〜図7参照)が配置されているが、図1では、一のフィルム冷却穴のみが図示されている。フィルム冷却穴18それぞれが、第1の表面14に配置されている入口領域13を備えている。さらに、フィルム冷却穴18は、第2の表面16に配置されている出口領域19を備えている。さらに、フィルム冷却穴18は、フィルム冷却穴18を通過する冷却流体の流れ方向に関して出口領域19の上流に配置されているディフューザ区間20を備えている。ディフューザ区間20の上流に、フィルム冷却穴18は、円状の断面を有する計測区間21を備えている。計測区間21の断面は、例えば楕円のような円以外の形状であっても良い。ディフューザ区間20は、少なくともディフューザ底壁24によって広げられており、2つの対向するディフューザ側壁22(図2参照)を介して計測区間21に隣接している。ディフューザ底壁24は、第1の表面14の反対側に配置されているフィルム冷却穴18の内面の一部である。ディフューザ底壁24は、横断方向において、ディフューザ側壁22それぞれに丸い縁部を介して連接している。
本発明では、冷却流体17の流れを少なくとも2つの分岐流れ17a,17bに分割するためのデルタ状楔要素26が、フィルム冷却穴18の内部においてディフューザ底壁24に配置されている。デルタ状楔要素26は、デルタ渦60を発生させるための手段として機能する。
図1及び図2に表わす第1の典型的な実施例では、デルタ状楔要素26は、デルタ渦60を発生させるための手段として、ディフューザ底壁24から階段状に突出している先縁部28を備えている。先縁部28は、直線状で且つ出口領域19の平面に対して直角に配置されている。図1に表わす断面図では、先縁部28とディフューザ底壁との間には、角度αが形成されている。製造可能性に従って、さらなる好ましい実施例では、角度αは、図3に表わすように90°又は90°近傍とされる。先縁部がデルタ渦60の発生を支援する限り、角度αの値を小さくすることも大きくすることもできる。一般に、デルタ状楔要素26は、3つの表面のみを、すなわち一の頂面50と2つの側面52とを備えている。
図1に表わすように、ディフューザ底壁24は、平面として構成されている。しかしながら、僅かに凸状又は凹状に湾曲していても良い。
図2に表わすように、デルタ状楔要素26は、冷却流体17の流れ方向において先縁部28から後端部30に延在している三角形を形成するように、楔状に成形されている。結果として、デルタ状楔要素26は、先縁部28から後端部30に延在している2つの長手方向縁部44を備えており、2つの長手方向縁部44の間には角度βが形成されている。好ましい実施例では、楔角βは、15°以上の値を有している。しかしながら、デルタ渦の有益な効果を最適化することが望ましい場合には、楔角βを大きくすることも小さくすることもできる。さらに好ましくは、楔角βは、製造を単純化するために、長手方向縁部44と楔要素26の側面52とがディフューザ側壁22に対して平行とされるように選定される。しかしながら、楔角βがディフューザの横断方向開放角より大きい場合には、頂面50の上で渦巻いているデルタ渦の強度が高められる。情報から見ると、ディフューザの横断方向開放角は、ディフューザ区間20の2つの側壁22の間から決定される。
図1に表わすように、デルタ渦要素の頂面50は、出口領域19の下方に完全に配置されている。しかしながら、頂面50は、出口領域19に対して傾斜している場合もある。図1のように、頂面50が平坦であって、出口領域19の下方に配置されている場合には、後端部30がディフューザ区間20の後縁部56から離隔している。
理想的な楔要素の形状は、図2に表わすように第2の表面16の平面より低い頂面50によって特徴づけられるべきである場合には、任意の理想的な頂面の形状を形成するために、レーザによって、任意の量の材料がデルタ状楔要素の上方において除去可能とされる。この場合には、楔は、ディフューザ表面の残り部分と同様に完全に露出している。
また、図3は、第2の典型的な実施例におけるフィルム冷却穴18の斜視図である。第2の典型的な実施例の主な特徴は、第1の典型的な実施例の特徴と同一であるので、第1の典型的な実施例と第2の典型的な実施例との間における相違点についてのみ、以下に説明する。第2の典型的な実施例では、デルタ状楔要素26の後端部30は、ディフューザ区間20の後縁部56と合流しているので、デルタ状楔要素26の頂面50は、第2の表面16に合流している。先縁部28の高さに従って、頂面50は、第2の表面16と同一平面上に配置された状態において、縁部を形成するか否かいずれかの態様で第2の表面16に合流するのか決定される。
本発明の効果について、図4に基づいて説明する。図4は、複数のフィルム冷却穴18から成るフィルム冷却穴18の列を表わすが、図4には、2つのフィルム冷却穴18のみを示す。図示するフィルム冷却穴18それぞれが、第2の典型的な実施例と同一の特徴を備えている。ガスタービンの動作の際に、高温ガス部は、フィルム冷却穴18を有している壁12を備えているので、高温ガス15は、壁12の第2の表面16に沿って流れる。高温ガス15は、上述の煙突渦62(chimney vortices)を発生させつつ、フィルム冷却穴18の出口領域19の全体に亘って且つフィルム冷却穴18から流出する冷却流体の噴流の周りに流れる。煙突渦62は、第1の旋回方向において対を成すように発生される。
壁12の第1の表面14に供給される冷却流体17は、フィルム冷却穴18の入口領域13に流入し、最初に計測区間21を通過するように流れる。ディフューザ区間20に流入した後に、冷却流体がデルタ状楔要素26の先縁部28に衝突し、2つの分岐流れに分割される。分岐流れそれぞれが、デルタ状楔要素26の側面52とディフューザの側壁との間に配置されている通路に沿って移動する。分岐流れそれぞれの一部が、長手方向縁部の上方を流れ、第2の旋回方向のデルタ渦60を発生させる。デルタ渦60は、長手方向縁部に沿って頂面50に向かって旋回する(spool)。デルタ状楔要素26の分流効果に起因して、デルタ渦は対を成すように発生される。
図4に示すように、第2の旋回方向のデルタ渦60は、煙突渦62の第1の旋回方向と比較して反対方向を有している。これら両方向が、2つの隣り合うフィルム冷却穴の煙突渦62同士の間において有害高温ガスを巻き込む効果を相殺する。その結果として、従来技術と比較して、フィルム冷却穴18の下流における横断方向のフィルム冷却効果が、壁の温度を低減させつつ高められる。改善された冷却効果は、列のフィルム冷却穴の数量を低減させるために、又は必要とされる冷却流体の量を低減させるために、単独でも組み合わせても利用可能とされる。要するに、冷却流体を節約することによって、上述のように本発明におけるフィルム冷却穴を高温ガス部で利用するガスタービンの効率を高めることができる。
図5及び図6は、ガスタービンのタービンブレード80及びタービン羽根90の側面図である。タービンブレード80及びタービン羽根90それぞれが、タービンブレード80及びタービン羽根90それぞれをキャリアに取り付けるための固定要素を備えている。タービンブレード80及びタービン羽根90は、プラットフォームと、空気力学を考慮して形成された翼100であって、フィルム冷却穴18の1つ以上の列を具備する翼100とを備えている。当該1つ以上の列のうち一の列のみが図示されている。フィルム冷却穴18それぞれ又は単一の列が、第1の典型的な実施例、第2の典型的な実施例、又は類する典型的な実施例に従って実現されている。
図7は、本発明におけるフィルム冷却穴18の2列を備えているリングセグメント110の斜視図である。図示のリングセグメントは、燃焼室要素としても利用可能とされる。
本発明について、好ましい実施例を参照しつつ詳述したが、本発明が開示された実施例に限定される訳では無いこと、及び当業者であれば発明の技術的範囲から逸脱することなく多様な付加的な変更及び変化を加えることができることに留意すべきである。
本出願において「一の」(“a”又は“an”)との記載は、複数の場合を除外するものではなく、「備えている」(“comprising”)との記載は、他のステップ又は要素を排除するものではないことに留意すべきである。また、特許請求の範囲における参照符号が、請求項の範囲を制限するように解釈されるべきでないことに留意すべきである。
10 高温ガス部
12 (高温ガス部10の)壁
13 (第1の表面14の)入口領域
14 (壁12の)第1の表面
15 高温ガス
16 (壁12の)第2の表面
17 冷却流体
17a 分岐流れ
17b 分岐流れ
18 フィルム冷却穴
19 (第2の表面16の)出口領域
20 ディフューザ区間
21 計測区間
22 ディフューザ側壁
24 ディフューザ底壁
26 デルタ状楔要素
28 (楔要素26の)先縁部
30 (楔要素26の)後端部
44 (楔要素26の)長手方向縁部
50 (楔要素26の)頂面
52 (楔要素26の)側面
56 (ディフューザ区間20の)後縁部
60 デルタ渦
62 煙突渦
80 タービンブレード
90 タービン羽根
100 翼
ルタ状楔要素は、一の頂面と2つの側面とを備えている。2つの側面は、先縁部において合流するように且つ後端部に向かって拡幅するようにV字状に配置されている。側面それぞれと頂面とは、対応してV字状に配置されている長手方向縁部において合流している。従って、動作の際に、デルタ状楔要素は、“デルタ渦発生器”として機能し、冷却流体が長手方向縁部の上方を流れる場合に渦対を発生させる。デルタ状楔要素は、デルタ状に形成されている場合には、先縁部と後端部との間の長さが同一とされる2つの長手方向縁部を具備して、対称に形成されている。当該実施例は、対称な側壁を具備するディフューザ区間に対して有益である。

Claims (13)

  1. 高温ガス部の壁(12)であって、
    冷却流体(17)が作用可能な第1の表面(14)と、
    前記第1の表面(14)の反対側に配置されている第2の表面(16)であって、高温ガス(15)が作用可能な前記第2の表面(16)と、
    前記第1の表面(14)から前記第2の表面(16)に前記冷却流体(17)を導くために、前記第1の表面(14)に配置されている入口領域(13)から前記第2の表面(16)の出口領域(19)に至るまで延在している少なくとも1つのフィルム冷却穴(18)と、
    を備えている前記壁(12)において、
    少なくとも1つの前記フィルム冷却穴(18)が、前記フィルム冷却穴(18)を通過する前記冷却流体(17)の流れの方向に関して前記出口領域(19)の上流に配置されているディフューザ区間(20)を備えており、前記ディフューザ区間(20)が、少なくともディフューザ底壁(24)と2つの反対側に配置されたディフューザ側壁(22)とによって境界づけられており、
    前記ディフューザ区間(20)が、前記冷却流体(17)の流れを2つの分岐流れ(17a,17b)に分割するためのデルタ状楔要素を備えており、
    前記デルタ状楔要素(26)が、前記冷却流体(17)の流れの方向に関して先縁部(28)から後端部(30)に至るまで延在しており、
    前記デルタ状楔要素(26)が、前記ディフューザ底壁(24)から階段状に突出しており、上方から見ると三角状に形成されていることを特徴とする壁(12)。
  2. 動作の際に、前記デルタ状楔要素(26)が、前記冷却流体の流れに一組のデルタ渦を生成することができることを特徴とする請求項1に記載の壁(12)。
  3. 前記フィルム冷却穴(18)を通過する断面で見ると、前記先縁部(28)が、前記ディフューザ底壁(24)の平面から少なくとも35°の角度で突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載の壁(12)。
  4. 前記デルタ状楔要素(26)が、デルタ渦を発生させるための手段として、2つの長手方向縁部(44)を備えており、
    前記長手方向縁部(44)それぞれが、前記先縁部(28)から前記後端部(30)に至るまで延在しており、
    2つの前記長手方向縁部(44)の間には、少なくとも15°の楔角βが形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の壁(12)。
  5. 2つの互いに反対側に配置された前記ディフューザ側壁(22)の間には、上方から見ると、前記ディフューザ区間の横断方向開放角が形成されており、
    前記横断方向開放角が、前記楔角βより小さいことを特徴とする請求項4に記載の壁(12)。
  6. 前記デルタ状楔要素(26)が、頂面(50)と2つの側面(52)とを備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の壁(12)。
  7. 前記デルタ状楔要素(26)の前記頂面(50)が、前記第2の表面(16)と少なくとも部分的に同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の壁(12)。
  8. 前記頂面(50)が、前記ディフューザ底壁(24)と比較して傾斜していることを特徴とする請求項6又は7に記載の壁(12)。
  9. 前記デルタ状楔要素(26)の前記頂面(50)が、前記第2の表面(16)より低いことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の壁(12)。
  10. 前記デルタ状楔要素(26)が、単一の頂面(50)のみを備えており、
    前記頂面(50)が、平坦とされることを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の壁(12)。
  11. 前記ディフューザ底壁(24)が、下流縁部(56)を備えており、
    前記下流縁部(56)において、前記ディフューザ区間(20)と前記第2の表面(16)とが階段状に又は縁部を形成するように合流しており、
    前記デルタ状楔要素(26)の前記後端部(30)が、前記ディフューザ底壁(24)の前記下流縁部(56)に又は、前記ディフューザ底壁(24)の上流に配置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の壁(12)。
  12. 前記壁(12)が、好ましくは前記フィルム冷却穴(18)の1つ以上の列に配置されている複数の前記フィルム冷却穴(18)を備えていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の壁(12)。
  13. ガスタービンのための高温ガス部(10)であって、
    請求項1〜12のいずれか一項に記載の壁(12)を備えていることを特徴とする高温ガス部(10)。
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