JP2020204094A - イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及び電解槽 - Google Patents

イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及び電解槽 Download PDF

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雄太 小滝
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慎一 貝原
浩司 岡本
Koji Okamoto
浩司 岡本
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Abstract

【課題】電気分解に供した際に電解電圧を低減できることに加え、電解液中の不純物による電解性能への影響が少なく、安定した電解性能を発揮する、イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及び電解槽を提供する。【解決手段】イオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む膜本体と、前記膜本体の少なくとも一方の面上に配された被覆層と、を有するイオン交換膜であって、前記被覆層が、無機物粒子とバインダーとを含み、前記被覆層における前記無機物粒子及びバインダーの総質量に対し、前記バインダーの質量比が0.3以上0.9以下であり、前記被覆層による前記膜本体の被覆率が50%以上である、イオン交換膜。【選択図】なし

Description

本発明は、イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及び電解槽に関する。
含フッ素イオン交換膜は、耐熱性や耐薬品性などが優れており、塩化アルカリ電解用、オゾン発生電解用、燃料電池用、水電解用、塩酸電解用などの電解用隔膜として、各種用途に広く使用され、更に新しい用途に広がりつつある。
これらの中で、塩素と水酸化アルカリを製造する塩化アルカリの電解では、近年、イオン交換膜法が主流となっている。加えて、電力原単位の削減のため、イオン交換膜法による塩化アルカリ電解には、イオン交換膜と陽極、及び陰極が密着した自然循環型ゼロギャップ電解槽が主流となってきている。
塩化アルカリの電解に用いられるイオン交換膜には、様々な性能が求められている。その中でも、特に生産性の観点から流した電流に対する生産効率が高いこと、経済性の観点から電解電圧が低いことが要望されている。なお、塩化アルカリ電解においては、工業レベルでの電解を実施する場合、その電解電圧を僅かでも下げることができ、電流効率を僅かでも上げることができるならば、それにより大幅な省エネルギー化を達成することができる。
塩化アルカリ電解では、電解反応により発生するガスがイオン交換膜表面に付着することにより、電解電圧が上昇することが一般に知られている。この対策として、例えば、特許文献1では、親水性のバインダーと無機物粒子を含む層(表面層)を膜の表面に設けることにより、イオン交換膜表面へのガス付着を抑制し、電解電圧を低減することが提案されている。
また、塩化アルカリ水溶液中には、金属等の不純物が存在し、これらの不純物が、陽イオン交換膜の内部に蓄積すると、電解電圧の増加、電流効率の低下、アルカリ中の不純物濃度の増大を引き起こす。特に、Iは、CaやMgなどの陽イオンの不純物とは異なり、電解液を事前に処理しても、削減することが難しい不純物であるため、Iに対して影響を受けにくい陽イオン交換膜であることが求められている。この対策として、例えば、特許文献2では、イオン交換膜に塗布されるコーティングを特定の無機微粒子とすることで、電解液中の不純物による電解性能への影響が少なく、安定した電解性能を得ることが提案されている。
国際公開第2015/098769号 特開2014−58707号公報
膜表面を親水化し、十分なガス付着防止効果を得るためには、表面層に含まれる無機物粒子及びバインダーの合計に対するバインダーの質量比を高めつつ、膜表面に均一な表面層を形成することが求められる。
しがしながら、特許文献1に記載の方法では、バインダーの質量比を高めた場合には、均一な表面層が形成されず、ガス付着を防止する効果が低減してしまう。
また、特許文献1及び2に記載のイオン交換膜は、不純物に対する耐性が未だ十分ではなく、不純物に対するイオン交換膜の電解性能の安定性が依然として十分ではない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電気分解に供した際のガス付着を防止することにより電解電圧を低減できることに加え、電解液中の不純物による電解性能への影響を抑制できる、イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及び電解槽を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、被覆層による膜本体の被覆率を一定以上とすることにより、ガス付着抑制効果が発現し、更に電解液中の不純物による電解性能への影響を抑制できることを見出した。この結果をもとに、更なる鋭意研究を重ねた結果、被覆層形成時の塗布液におけるバインダー比を大きくする場合であっても、当該塗布液の粘度を低くすることで、上記のような被覆率が得られることを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
イオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む膜本体と、
前記膜本体の少なくとも一方の面上に配された被覆層と、
を有するイオン交換膜であって、
前記被覆層が、無機物粒子とバインダーとを含み、
前記被覆層における前記無機物粒子及びバインダーの総質量に対し、前記バインダーの質量比が0.3以上0.9以下であり、
前記被覆層による前記膜本体の被覆率が50%以上である、イオン交換膜。
[2]
前記無機物粒子が、周期律表IV族元素の酸化物、周期律表第IV族元素の窒化物及び周期律表第IV族元素の炭化物からなる群より選択される少なくとも一種の無機物を含む粒子である、[1]に記載のイオン交換膜。
[3]
前記無機物粒子が酸化ジルコニウムの粒子である、[1]又は[2]に記載のイオン交換膜。
[4]
前記バインダーが、含フッ素系重合体を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のイオン交換膜。
[5]
前記バインダーが、カルボキシル基又はスルホ基由来のイオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載のイオン交換膜。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載のイオン交換膜の製造方法であって、
無機物粒子、バインダー及び溶剤を含む塗布液をスプレー方式で噴霧し、乾燥することで膜本体の表面に被覆層を形成する工程を含み、
前記塗布液の粘度が13mPa・s以下である、イオン交換膜の製造方法。
[7]
[1]〜[5]のいずれかに記載のイオン交換膜を備える、電解槽。
本発明によれば、電気分解に供した際に電解電圧を低減できることに加え、電解液中の不純物による電解性能への影響が少なく、安定した電解性能を発揮する、イオン交換膜、イオン交換膜の製造方法及び電解槽を提供することができる。
イオン交換膜の一実施形態を示す断面模式図である。 電解槽の一実施形態を示す断面模式図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面中上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。ただし、当該図面は本実施形態の一例を示すものに過ぎず、本実施形態はこれらに限定して解釈されるものではない。
本実施形態のイオン交換膜は、イオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む膜本体と、前記膜本体の少なくとも一方の面上に配された被覆層と、を有するイオン交換膜であって、前記被覆層が、無機物粒子とバインダーとを含み、前記被覆層における前記無機物粒子及びバインダーの総質量に対し、前記バインダーの質量比が0.3以上0.9以下であり、前記被覆層による前記膜本体の被覆率が、50%以上である。このように構成されているため、本実施形態のイオン交換膜は、電気分解に供した際に電解電圧を低減できることに加え、電解液中の不純物による電解性能への影響が少なく、安定した電解性能を発揮できる。したがって、本実施形態のイオン交換膜及びこれを含む電解槽は、塩化アルカリ電気分解(特に食塩電気分解)に好ましく用いることができる。
図1は、イオン交換膜の一実施形態を示す断面模式図である。本実施形態のイオン交換膜1は、イオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む膜本体10と、膜本体10の両面に形成された被覆層11a及び11bを有する。
図1に例示されるように、イオン交換膜1において、膜本体10は、スルホ基由来のイオン交換基(−SO3 -で表される基、以下「スルホン酸基」ともいう。)を有するスルホン酸層3と、カルボキシル基由来のイオン交換基(−CO2 -で表される基、以下「カルボン酸基」ともいう。)を有するカルボン酸層2と、を備えるものとすることができ、さらに補強材4により強度及び寸法安定性が強化されていてもよい。イオン交換膜1が、スルホン酸層3とカルボン酸層2とを備える場合、イオン交換膜としてより優れた性能を発現する傾向にある。
本実施形態のイオン交換膜は、図1に例示した構成に限定されず、スルホン酸層及びカルボン酸層のいずれか一方のみを有するものであってもよい。また、本実施形態のイオン交換膜は、必ずしも補強材により強化されている必要はなく、補強材の配置状態も図1の例に限定されるものではない。さらに、被覆層は必ずしも膜本体の両面に配されている必要はなく、膜本体の一方の表面のみに配されるものであってもよい。
(膜本体)
まず、本実施形態のイオン交換膜1を構成する膜本体10について説明する。
膜本体10は、陽イオンを選択的に透過する機能を有し、イオン交換基を有する含フッ素系重合体を含むものであればよく、その構成や材料は特に限定されず、種々公知の含フッ素系重合体を適宜選択して用いることができる。
膜本体10におけるイオン交換基を有する含フッ素系重合体は、例えば、加水分解等によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する含フッ素系重合体から得ることができる。具体的には、例えば、主鎖がフッ素化炭化水素からなり、加水分解等によりイオン交換基に変換可能な基(イオン交換基前駆体)をペンダント側鎖として有し、かつ、溶融加工が可能な重合体(以下、場合により「含フッ素系重合体(a)」という。)を用いて膜本体10の前駆体を作製した後、イオン交換基前駆体をイオン交換基に変換することにより、膜本体10を得ることができる。
含フッ素系重合体(a)は、例えば、下記第1群より選ばれる少なくとも一種の単量体と、下記第2群及び/又は下記第3群より選ばれる少なくとも一種の単量体と、を共重合することにより製造することができる。また、下記第1群、下記第2群、及び下記第3群のいずれかより選ばれる1種の単量体の単独重合により製造することもできる。
第1群の単量体としては、以下に限定されないが、例えば、フッ化ビニル化合物が挙げられる。フッ化ビニル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等が挙げられる。特に、本実施形態のイオン交換膜をアルカリ電解に用いる場合、フッ化ビニル化合物は、パーフルオロ単量体であることが好ましく、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる群より選ばれるパーフルオロ単量体が好ましい。
第2群の単量体としては、以下に限定されないが、例えば、カルボン酸型イオン交換基(カルボン酸基)に変換し得る官能基を有するビニル化合物が挙げられる。カルボン酸基に変換し得る官能基を有するビニル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、CF2=CF(OCF2CYF)s−O(CZF)t−COORで表される単量体等が挙げられる(ここで、sは0〜2の整数を表し、tは1〜12の整数を表し、Y及びZは、各々独立して、F又はCF3を表し、Rは低級アルキル基を表す。低級アルキル基は、例えば炭素数1〜3のアルキル基である。)。
これらの中でも、CF2=CF(OCF2CYF)n−O(CF2m−COORで表される化合物が好ましい。ここで、nは0〜2の整数を表し、mは1〜4の整数を表し、YはF又はCF3を表し、RはCH3、C25、又はC37を表す。
なお、本実施形態のイオン交換膜をアルカリ電解用のイオン交換膜として用いる場合、単量体としてパーフルオロ化合物を少なくとも用いることが好ましいが、エステル基のアルキル基(上記R参照)は加水分解される時点で重合体から失われるため、アルキル基(R)は全ての水素原子がフッ素原子に置換されているパーフルオロアルキル基でなくてもよい。
第2群の単量体としては、上記の中でも下記に表す単量体がより好ましい。
CF2=CFOCF2−CF(CF3)OCF2COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF22COOCH3
CF2=CF[OCF2−CF(CF3)]2O(CF22COOCH3
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF23COOCH3
CF2=CFO(CF22COOCH3
CF2=CFO(CF23COOCH3
第3群の単量体としては、例えば、スルホン型イオン交換基(スルホン酸基)に変換し得る官能基を有するビニル化合物が挙げられる。スルホン酸基に変換し得る官能基を有するビニル化合物としては、例えば、CF2=CFO−X−CF2−SO2Fで表される単量体が好ましい(ここで、Xはパーフルオロアルキレン基を表す。)。これらの具体例としては、下記に表す単量体等が挙げられる。
CF2=CFOCF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO2F、
CF2=CF(CF22SO2F、
CF2=CFO〔CF2CF(CF3)O〕2CF2CF2SO2F、
CF2=CFOCF2CF(CF2OCF3)OCF2CF2SO2F。
これらの中でも、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO2F、及びCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fがより好ましい。
これら単量体から得られる共重合体は、フッ化エチレンの単独重合及び共重合に対して開発された重合法、特にテトラフルオロエチレンに対して用いられる一般的な重合方法によって製造することができる。例えば、非水性法においては、パーフルオロ炭化水素、クロロフルオロカーボン等の不活性溶媒を用い、パーフルオロカーボンパーオキサイドやアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で、温度0〜200℃、圧力0.1〜20MPaの条件下で、重合反応を行うことができる。
上記共重合において、上記単量体の組み合わせの種類及びその割合は、特に限定されず、得られる含フッ素系重合体に付与したい官能基の種類及び量によって選択決定することができる。例えば、カルボン酸基のみを含有する含フッ素系重合体とする場合、上記第1群及び第2群から各々少なくとも1種の単量体を選択して共重合させればよい。また、スルホン酸基のみを含有する含フッ素系重合体とする場合、上記第1群及び第3群の単量体から各々少なくとも1種の単量体を選択して共重合させればよい。さらに、カルボン酸基及びスルホン酸基を有する含フッ素系重合体とする場合、上記第1群、第2群及び第3群の単量体から各々少なくとも1種の単量体を選択して共重合させればよい。この場合、上記第1群及び第2群よりなる共重合体と、上記第1群及び第3群よりなる共重合体とを、別々に生成し、後に混合することによっても目的の含フッ素系重合体を得ることができる。また、各単量体の混合割合は、特に限定されないが、単位重合体当たりの官能基の量を増やす場合、上記第2群及び第3群より選ばれる単量体の割合を増加させればよい。
含フッ素系重合体の総イオン交換容量は特に限定されないが、0.5当量/g以上2.0mg当量/g以下であることが好ましく、0.6当量/g以上1.5mg当量/g以下であることがより好ましい。ここで、総イオン交換容量とは、乾燥樹脂の単位重量あたりの交換基の当量のことをいい、中和滴定等によって測定することができる。
図1に例示するイオン交換膜1の膜本体10においては、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体を含むスルホン酸層3と、カルボン酸基を有する含フッ素系重合体を含むカルボン酸層2とが積層されている。このような層構造の膜本体10とする場合、ナトリウムイオン等の陽イオンの選択的透過性が一層向上する傾向にある。
図1に例示するイオン交換膜1を電解槽に配置する場合、通常、スルホン酸層3が電解槽の陽極側に、カルボン酸層2が電解槽の陰極側に、それぞれ位置するように配置される。
スルホン酸層3は、電気抵抗が低い材料から構成されていることが好ましく、膜強度の観点から、膜厚がカルボン酸層2より厚いことが好ましい。スルホン酸層3の膜厚は、好ましくはカルボン酸層2の2倍以上25倍以下であり、より好ましくは3倍以上15倍以下である。
カルボン酸層2は、膜厚が薄くても高いアニオン排除性を有するものであることが好ましい。ここでいうアニオン排除性とは、イオン交換膜1へのアニオンの侵入や透過を妨げようとする性質をいう。アニオン排除性を高くするためには、スルホン酸層に対し、イオン交換容量の小さいカルボン酸層を配すること等が有効である。
スルホン酸層3に用いる含フッ素系重合体としては、例えば、第3群の単量体としてCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fを用いて得られた重合体を用いることが好ましい。
カルボン酸層2に用いる含フッ素系重合体としては、例えば、第2群の単量体としてCF2=CFOCF2CF(CF2)O(CF22COOCH3を用いて得られた重合体を用いることが好ましい。
(被覆層)
本実施形態のイオン交換膜は、膜本体の少なくとも一方の面上に配された被覆層を有する。また、図1に例示されるイオン交換膜1においては、膜本体10の両面上にそれぞれ被覆層11a及び11bが形成されている。
本実施形態における被覆層は無機物粒子とバインダーとを含み、当該被覆層による膜本体の被覆率は、50%以上である。ここで、上記被覆率は、後述する実施例に記載の測定方法によって算出される値である。本実施形態において、上記被覆率が十分に大きいことにより、電解中におけるイオン交換膜へのガス付着を抑制することができ、結果として電解電圧を十分に低減することができる。同様の観点から、上記被覆率は、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらに好ましい。被覆率は高い方が好ましく、かかる観点から被覆率を100%とすることもできる。
具体的な被覆率の測定方法は以下のとおりである。
被覆層を有するイオン交換膜を、被覆層側からマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−6000、倍率500倍)を用いて観察する。被覆部は無機物粒子とバインダーによる光の散乱により、明度が高く観察されるため、観察像の明度150以上の領域を被覆部、明度150未満を非被覆部とし、二値化処理を行う。観察像全体を100としたときの、被覆部の割合を被覆率として算出する。
被覆率は、前述のマイクロスコープの視野範囲(0.7×0.5mm)において得られる、被覆層に関する情報である。これに対して、後述する被覆層の分布密度は、蛍光X線の測定範囲(10×10mm)において得られる、被覆層に関する情報である。このように、上記被覆率によれば、分布密度よりもミクロな領域の情報が得られる。
本実施形態における被覆層の被覆率は、以下に限定されないが、例えば、後述するとおり、スプレーによる塗布液噴霧時の塗布液の粘度を十分に小さくすることにより、上記範囲に調整することができる。
本実施形態における無機物粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.90μm以上であることが好ましい。無機物粒子の平均粒径が0.90μm以上である場合、不純物への耐久性がより向上する傾向にある。本実施形態では、不規則状の無機物粒子を用いることが好ましく、原石粉砕により得られる無機物粒子を用いることがより好ましい。
また、無機物粒子の平均粒径は、2μm以下とすることができる。無機物粒子の平均粒径が2μm以下であれば、無機物粒子に起因する膜損傷を一層防止できる傾向にある。無機物粒子の平均粒径は、より好ましくは、0.90μm以上1.2μm以下である。さらに好ましくは、1μm以上1.2μm以下である。
本明細書中、平均粒径とは、メディアン径(D50)を意味し、粒度分布計(「SALD2200」島津製作所)によって測定することができる。
本実施形態における無機物粒子は、親水性であることが好ましい。親水性とは、固体表面が水に濡れやすい性質を示す。一般的には、接触角が小さいものを親水性と評価することができ、例えば、接触角が90°程度の無機物粒子も親水性と評価でき、接触角は90°以下が好ましく、40°以下であることがより好ましい。ここで、接触角とは、固体と液体の接点における液体表面の接線と固体表面とがなす角度を意味し、接触角計(「DMo−601」、協和界面化学製)を用いて、固体表面へ液滴を接触させ、着滴時の画像を解析することで算出できる。無機物粒子が親水性である場合、被覆層の表面に配向することで電解中におけるイオン交換膜へのガス付着をより抑制できる傾向にある。周期律表第IV族元素の酸化物、周期律表第IV族元素の窒化物、及び周期律表第IV族元素の炭化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の無機物を含むことがより好ましい。これらの具体例としては、以下に限定されないが、酸化ジルコニウム、酸化シリカ、酸化スズ、酸化チタン、酸化ニッケル、SiC、ZrC等が挙げられる。耐久性の観点から、酸化ジルコニウムの粒子がさらに好ましい。
本実施形態における無機物粒子は、無機物粒子の原石を粉砕されることにより製造された無機物粒子であることが好ましい。なお、無機物粒子の原石を溶融して精製することによって、無機物粒子を製造し、粒子の径が揃った球状の粒子を無機物粒子として被覆層に使用することもできる。
粉砕方法としては、特に限定されないが、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、エッジミル、製粉ミル、ハンマーミル、ペレットミル、VSIミル、ウィリーミル、ローラーミル、ジェットミルなどが挙げられる。また、粉砕後、洗浄されることが好ましく、そのとき洗浄方法としては、酸処理されることが好ましい。それによって、無機物粒子の表面に付着した鉄等の不純物を削減することができる。
本実施形態において、被覆層はバインダーを含む。バインダーは、無機物粒子をイオン交換膜の表面に保持して、被覆層を成す成分である。バインダーは、電解液や電解による生成物への耐性の観点から、含フッ素系重合体を含むことが好ましい。バインダーとして被覆層に含まれる含フッ素系重合体は、膜本体を構成する含フッ素系重合体と同種のものを用いることができ、また、異なる種類のものを用いることもできる。このような含フッ素系重合体以外にも、被覆層におけるバインダー成分として種々公知の化合物を用いることができるが、バインダー中の含フッ素系重合体の含有量は、90質量%以上が好ましい。
本実施形態におけるバインダーとしては、電解液や電解による生成物への耐性、及びイオン交換膜の表面への接着性の観点から、カルボン酸基又はスルホン酸基を有する含フッ素系重合体であることがより好ましい。スルホン酸基を有する含フッ素系重合体を含む層(スルホン酸層)上に被覆層を設ける場合、当該被覆層のバインダーとしては、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体を用いることがさらに好ましい。また、カルボン酸基を有する含フッ素系重合体を含む層(カルボン酸層)上に被覆層を設ける場合、当該被覆層のバインダーとしては、カルボン酸基を有する含フッ素系重合体を用いることがさらに好ましい。
本実施形態において、被覆層における前記無機物粒子及びバインダーの総質量に対し、前記バインダーの質量比は0.3以上0.9以下である。本発明者らは、被覆層における上記バインダーの質量比を上昇させることにより、イオン交換膜自体のイオン透過抵抗が低減されることを見出した。すなわち、バインダーの質量比が0.3以上にすることによって、イオン交換膜自体のイオン透過抵抗が一層低減されるため、上述したとおり被覆層の被覆率を大きくすることと相俟って、電解電圧を大きく低減させることができる。また、バインダー質量比が0.9以下であることによって、無機物粒子によるガス付着防止効果が得られるため、電解電圧を低減させることができる。同様の観点から、前記バインダーの質量比は0.32以上0.9以下であることが好ましく、0.35以上0.9以下であることがより好ましく、0.4以上0.9以下であることがさらに好ましい。
イオン交換膜における被覆層の分布密度は、特に限定されないが、1cm2当り0.05mg以上2mg以下であることが好ましく、1cm2当り0.5mg以上2mg以下であることがより好ましい。上記分布密度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。また、上記分布密度は、例えば、塗布の噴霧時の吐出量を変更することや塗り重ね回数変更などにより、上記範囲に調整することができる。
(補強材)
本実施形態のイオン交換膜は、膜本体の内部に配置された補強材を有することが好ましい。
本実施形態において、補強材とは、強化糸及び犠牲糸の少なくとも一方として機能するものであり、その例としては、以下に限定されないが、強化糸及び犠牲糸を織った織布等が挙げられる。補強材を膜本体の内部に配置させることで、特に、イオン交換膜の伸縮を所望の範囲に制御することができる。かかるイオン交換膜は、電解時等において、必要以上に伸縮せず、長期に優れた寸法安定性を維持することができる。
補強材の構成は、特に限定されず、例えば、強化糸と呼ばれる糸を紡糸して形成させてもよい。ここでいう強化糸とは、補強材を構成する部材であって、イオン交換膜に所望の寸法安定性及び機械的強度を付与できるものであり、かつ、イオン交換膜中で安定に存在できる糸のことをいう。かかる強化糸を紡糸した補強材を用いることにより、一層優れた寸法安定性及び機械的強度をイオン交換膜に付与することができる。
補強材及びこれに用いる強化糸の材料は、特に限定されないが、酸やアルカリ等に耐性を有する材料であることが好ましく、長期にわたる耐熱性、耐薬品性を付与する観点から、含フッ素系重合体から構成される繊維が好ましい。
補強材に用いられる含フッ素系重合体としては、前述した膜本体に用いられるものを同じく使用できるが、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、トリフルオロクロルエチレン−エチレン共重合体及びフッ化ビニリデン重合体(PVDF)等を例示できる。これらのうち、特に耐熱性及び耐薬品性の観点からは、ポリテトラフルオロエチレンから構成される繊維を用いることが好ましい。
補強材に用いられる強化糸の糸径は、特に限定されないが、好ましくは20〜300デニール、より好ましくは50〜250デニールである。織り密度(単位長さあたりの打ち込み本数)は、好ましくは5〜50本/インチである。補強材の形態としては、特に限定されず、例えば、織布、不織布、編布等が用いられるが、織布の形態であることが好ましい。また、織布の厚みは、好ましくは30〜250μm、より好ましくは30〜150μmのものが使用される。
織布又は編布は、モノフィラメント、マルチフィラメント又はこれらのヤーン、スリットヤーン等が使用でき、織り方は平織り、絡み織り、編織り、コード織り、シャーサッカ等の種々の織り方が使用できる。
膜本体における補強材の織り方及び配置は、特に限定されず、イオン交換膜の大きさや形状、イオン交換膜に所望する物性及び使用環境等を考慮して適宜好適な配置とすることができる。
例えば、膜本体の所定の一方向に沿って補強材を配置してもよいが、寸法安定性の観点から、所定の第一の方向に沿って補強材を配置し、かつ第一の方向に対して略垂直である第二の方向に沿って別の補強材を配置することが好ましい。膜本体の縦方向膜本体の内部において、略直行するように複数の補強材を配置することで、多方向において一層優れた寸法安定性及び機械的強度を付与することができる。例えば、膜本体の表面において縦方向に沿って配置された補強材(縦糸)と横方向に沿って配置された補強材(横糸)を織り込む配置が好ましい。縦糸と横糸を交互に浮き沈みさせて打ち込んで織った平織りや、2本の経糸を捩りながら横糸と織り込んだ絡み織り、2本又は数本ずつ引き揃えて配置した縦糸に同数の横糸を打ち込んで織った斜子織り(ななこおり)等とすることが、寸法安定性、機械的強度及び製造容易性の観点からより好ましい。
特に、イオン交換膜のMD方向(Machine Direction方向)及びTD方向(Transverse Direction方向)の両方向に沿って補強材が配置されていることが好ましい。すなわち、MD方向とTD方向に平織りされていることが好ましい。ここで、MD方向とは、後述するイオン交換膜の製造工程において、膜本体や補強材が搬送される方向(流れ方向)をいい、TD方向とは、MD方向と略垂直の方向をいう。そして、MD方向に沿って織られた糸をMD糸といい、TD方向に沿って織られた糸をTD糸という。通常、電解に用いるイオン交換膜は、矩形状であり、長手方向がMD方向となり、幅方向がTD方向となることが多い。MD糸である補強材とTD糸である補強材を織り込むことで、多方向において一層優れた寸法安定性及び機械的強度を付与することができる。
補強材の配置間隔は、特に限定されず、イオン交換膜に所望する物性及び使用環境等を考慮して適宜好適な配置とすることができる。
補強材の中でも、特に好ましい形態は、耐薬品性及び耐熱性の観点から、PTFEを含むテープヤーン又は高配向モノフィラメントである。具体的には、PTFEからなる高強度多孔質シートをテープ状にスリットしたテープヤーン、又はPTFEからなる高度に配向したモノフィラメントの50〜300デニールを使用し、かつ、織り密度が10〜50本/インチである平織りであり、その厚みが50〜100μmの範囲である補強材であることがより好ましい。かかる補強材を含むイオン交換膜の開口率は60%以上であることが更に好ましい。
強化糸の形状としては、丸糸、テープ状糸等が挙げられる。好ましくは、丸糸である。
(連通孔)
本実施形態のイオン交換膜は、膜本体の内部に連通孔を有することが好ましい。
連通孔とは、電解の際に発生する陽イオンや電解液の流路となり得る孔をいう。また、連通孔とは、膜本体内部に形成されている管状の孔であり、後述する補強材(犠牲糸)が溶出することで形成される。連通孔の形状や径等は、補強材(犠牲糸)の形状や径を選択することによって制御することができる。
イオン交換膜に連通孔を形成することで、電解の際に発生するアルカリイオンや電解液の移動性を確保できる。連通孔の形状は特に限定されないが、後述する製法によれば、連通孔の形成に用いられる補強材(犠牲糸)の形状とすることができる。
本実施形態において、連通孔は、補強材の陽極側(スルホン酸層側)と陰極側(カルボン酸層側)を交互に通過するように形成されることが好ましい。かかる構造とすることで、補強材の陰極側に連通孔が形成されている部分では、連通孔に満たされている電解液を通して輸送された陽イオン(例えば、ナトリウムイオン)が、補強材の陰極側にも流れることができる。その結果、陽イオンの流れが遮蔽されることがないため、イオン交換膜の電気抵抗を更に低くすることができる。
連通孔は、本実施形態のイオン交換膜を構成する膜本体の所定の一方向のみに沿って形成されていてもよいが、より安定した電解性能を発揮するという観点から、膜本体の縦方向と横方向との両方向に形成されていることが好ましい。
〔製造方法〕
本実施形態に係るイオン交換膜の製造方法としては、上述した構成のイオン交換膜が得られる限り特に限定されないが、以下の(1)工程〜(6)工程を有する方法により製造することが好ましい。
(1)工程:イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する含フッ素系重合体を製造する工程。
(2)工程:必要に応じて、複数の強化糸と、酸又はアルカリに溶解する性質を有し、連通孔を形成する犠牲糸と、を少なくとも織り込むことにより、隣接する強化糸同士の間に犠牲糸が配置された補強材を得る工程。
(3)工程:イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体を有する前記含フッ素系重合体をフィルム化する工程。
(4)工程:前記フィルムに必要に応じて前記補強材を埋め込んで、前記補強材が内部に配置された膜本体を得る工程。
(5)工程:(4)工程で得られた膜本体を加水分解する工程(加水分解工程)。
(6)工程:(5)工程で得られた膜本体に被覆層を設ける工程(コーティング工程)。
本実施形態のイオン交換膜の製造方法は、(6)コーティング工程において、塗布液の粘度を調整することを主な特徴とする。以下、各工程について詳述する。
(1)工程:含フッ素系重合体を製造する工程
(1)工程では、上記第1群〜第3群に記載した原料の単量体を用いて含フッ素系重合体を製造する。含フッ素系重合体のイオン交換容量を制御するためには、各層を形成する含フッ素系重合体の製造において、原料の単量体の混合比を調整すればよい。
(2)工程:補強材の製造工程
補強材とは、強化糸を織った織布等である。補強材が膜内に埋め込まれることで、補強材が内在する膜本体を得ることができる。
(3)工程:フィルム化工程
(3)工程では、前記(1)工程で得られた含フッ素系重合体を、押出し機を用いてフィルム化する。フィルムは単層構造でもよいし、上述したように、スルホン酸層とカルボン酸層との2層構造でもよいし、3層以上の多層構造であってもよい。
(4)工程:膜本体を得る工程
(4)工程では、(2)工程で得た補強材を、(3)工程で得たフィルムの内部に埋め込むことで、補強材が内在する膜本体を得る。
膜本体の好ましい形成方法としては、(i)陰極側に位置するカルボン酸基前駆体(例えば、カルボン酸エステル官能基)を有する含フッ素系重合体(以下、これからなる層を第一層という)と、スルホン酸基前駆体(例えば、スルホニルフルオライド官能基)を有する含フッ素系重合体(以下、これからなる層を第二層という)を共押出し法によってフィルム化し、必要に応じて加熱源及び真空源を用いて、表面上に多数の細孔を有する平板またはドラム上に、透気性を有する耐熱性の離型紙を介して、補強材、第二層/第一層複合フィルムの順に積層して、各重合体が溶融する温度下で減圧により各層間の空気を除去しながら一体化する方法;(ii)第二層/第一層複合フィルムとは別に、スルホン酸基前駆体を有する含フッ素系重合体(第三層)を予め単独でフィルム化し、必要に応じて加熱源及び真空源を用いて、表面上に多数の細孔を有する平板又はドラム上に透気性を有する耐熱性の離型紙を介して、第三層フィルム、補強材、第二層/第一層からなる複合フィルムの順に積層して、各重合体が溶融する温度下で減圧により各層間の空気を除去しながら一体化する方法が挙げられる。
ここで、第一層と第二層とを共押出しすることは、界面の接着強度を高めることに寄与するため好ましい。
また、減圧下で一体化する方法は、加圧プレス法に比べて、補強材上の第三層の厚みが大きくなる傾向にあり、更に、補強材が膜本体の内面に固定されているため、イオン交換膜の機械的強度が十分に保持できる傾向にあるため好ましい。
なお、ここで説明した積層のバリエーションは一例であり、所望する膜本体の層構成や物性等を考慮して、適宜好適な積層パターン(例えば、各層の組合せ等)を選択した上で、共押出しすることができる。
なお、イオン交換膜の電気的性能をさらに高める目的で、第一層と第二層との間に、カルボン酸基前駆体とスルホン酸基前駆体の両方を有する含フッ素系重合体からなる第四層をさらに介在させることや、第二層の代わりにカルボン酸基前駆体とスルホン酸基前駆体の両方を有する含フッ素系重合体からなる第四層を用いることも可能である。
第四層の形成方法は、カルボン酸基前駆体を有する含フッ素系重合体と、スルホン酸基前駆体を有する含フッ素系重合体と、を別々に製造した後に混合する方法でもよく、カルボン酸基前駆体を有する単量体とスルホン酸基前駆体を有する単量体とを共重合したものを使用する方法でもよい。
第四層をイオン交換膜の構成とする場合には、第一層と第四層との共押出しフィルムを成形し、第三層と第二層はこれとは別に単独でフィルム化し、前述の方法で積層してもよいし、第一層/第四層/第二層の3層を一度に共押し出しでフィルム化してもよい。
この場合、押出しされたフィルムが流れていく方向が、MD方向である。このようにして、イオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む膜本体を、補強材上に形成することができる。
また、本実施形態のイオン交換膜は、スルホン酸層からなる表面側に、スルホン酸基を有する含フッ素系重合体からなる突出した部分、すなわち凸部を有することが好ましい。このような凸部を形成する方法としては、特に限定されず、樹脂表面に凸部を形成する公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、膜本体の表面にエンボス加工を施す方法が挙げられる。例えば、前記した複合フィルムと補強材等とを一体化する際に、予めエンボス加工された離型紙を用いることによって、上記の凸部を形成させることができる。エンボス加工により凸部を形成する場合、凸部の高さや配置密度の制御は、転写するエンボス形状(離型紙の形状)を制御することで行うことができる。
(5)加水分解工程
(5)工程では、(4)工程で得られた膜本体を加水分解して、イオン交換基前駆体をイオン交換基に変換する工程(加水分解工程)を行う。
また、(5)工程では、膜本体に含まれている犠牲糸を酸又はアルカリで溶解除去することで、膜本体に溶出孔を形成させることができる。なお、犠牲糸は、完全に溶解除去されずに、連通孔に残っていてもよい。また、連通孔に残っていた犠牲糸は、イオン交換膜が電解に供された際、電解液により溶解除去されてもよい。
犠牲糸は、イオン交換膜の製造工程や電解環境下において、酸又はアルカリに対して溶解性を有するものであり、犠牲糸が溶出することで当該部位に連通孔が形成される。
(6)コーティング工程
(6)工程では、無機物粒子、バインダー及び溶剤を含む塗布液をスプレー方式で噴霧し、乾燥することで膜本体の表面に被覆層を形成する。
本実施形態においては、塗布液の粘度を十分に小さくすることで、当該塗布液を噴霧した際に、当該塗布液が膜本体表面上に濡れ広がりやすくなり、形成される被覆層が均一に膜本体表面に形成される。このように、塗布液の粘度を十分に小さくすることで、バインダー比率が高い塗布液を使用しているにもかかわらず、被覆層の被覆率を十分に大きくすることができる。
無機物粒子としては、原石粉砕により得られたものを好ましく用いることができ、バインダーとしては、イオン交換基前駆体を有する含フッ素系重合体を、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び水酸化カリウム(KOH)を含む水溶液で加水分解した後、塩酸に浸漬してイオン交換基の対イオンをH+に置換したバインダー(例えば、カルボキシル基又はスルホ基を有する含フッ素系重合体)を好ましく用いることができる。かかるバインダーは、後述する水やエタノールに溶解しやすくなるため、好ましい。
このバインダーを、例えば、水とエタノールを混合した溶液に溶解することが好ましい。なお、水とエタノールの好ましい体積比10:1〜1:10であり、より好ましくは、5:1〜1:5であり、さらに好ましくは、2:1〜1:2である。
このようにして得た溶解液中に、無機物粒子をボールミルで分散させて塗布液を得る。このとき、分散する際の、時間、回転速度を調整することで、無機物粒子の平均粒径並びに塗布液の粘度を調整することができる。
無機物粒子とバインダーの好ましい配合量は、イオン交換膜自体のイオン透過抵抗を一層低減する観点から、上記塗布液における無機物粒子及びバインダーの総質量に対する、前記バインダー比として0.3以上0.9以下である。なお、上記した仕込み比としての塗布液中のバインダー質量比は、被覆層を形成した後のバインダー比率と一致するため、イオン交換膜における被覆層中のバインダー比率は、仕込み比から特定することができる。
また、無機物粒子を分散させる際に、界面活性剤を分散液に添加してもよい。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が好ましく、以下に限定されないが、例えば、日油株式会社製HS−210、NS−210、P−210、E−212等が挙げられる。
このようにして得られた塗布液は、粘度は13mPa・s以下であることが好ましく、11mPa・s以下であることがより好ましい。粘度が低いと、膜表面に均一に濡れ広がり、ガス付着防止効果を十分に発揮することができる。
粘度の制御には、公知の方法を採用することができる。例えば、バインダーポリマー溶解時の諸条件の変更、無機物粒子分散時の諸条件の変更、前述の界面活性剤や粘度調整剤の添加などが挙げられる。上記塗布液の粘度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
得られた塗布液を、スプレー塗布で膜本体の少なくとも一方の表面に塗布することで被覆層が形成され、本実施形態のイオン交換膜が得られる。
上記のとおり、本実施形態のイオン交換膜の製造方法は、無機物粒子、バインダー及び溶剤を含む塗布液をスプレー方式で噴霧し、乾燥することで膜本体の表面に被覆層を形成する工程を含み、前記塗布液の粘度が13mPa・s以下であることが好ましい。
〔電解槽〕
本実施形態のイオン交換膜は、電解槽の構成部材として使用することができる。すなわち、本実施形態の電解槽は、本実施形態のイオン交換膜を備える。図2は、本実施形態に係る電解槽の一実施形態の模式図である。
本実施形態の電解槽100は、陽極200と、陰極300と、陽極200と陰極300との間に配置された、本実施形態のイオン交換膜1と、を少なくとも備える。ここでは、上記したイオン交換膜1を備えた電解槽100を一例として説明しているが、これに限定されるものではなく、本実施形態の効果の範囲内で種々構成を変形して実施することができる。
かかる電解槽100は、種々の電解に使用できるが、以下、代表例として、塩化アルカリ水溶液の電解に使用する場合について説明する。
電解条件は、特に限定されず、公知の条件で行うことができる。例えば、陽極室に2.5〜5.5規定(N)の塩化アルカリ水溶液を供給し、陰極室は水又は希釈した水酸化アルカリ水溶液を供給し、直流電流にて電解を実施する。
本実施形態に係る電解槽の構成は、特に限定されず、例えば、単極式でも複極式でもよい。電解槽100を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、陽極室の材料としては、塩化アルカリ及び塩素に耐性があるチタン等が好ましく、陰極室の材料としては、水酸化アルカリ及び水素に耐性があるニッケル等が好ましい。電極の配置は、イオン交換膜1と陽極200との間に適当な間隔を設けて配置してもよいが、陽極200とイオン交換膜1が接触して配置されていても、何ら問題なく使用できる。また、陰極は一般的にはイオン交換膜と適当な間隔を設けて配置されているが、この間隔がない接触型の電解槽(ゼロギャップ式電解槽)であっても、何ら問題なく使用できる。
以下に、本実施形態を実施例に基づいて更に詳細に説明する。本実施形態はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(粘度測定)
E型粘度計(TV−35L、東機産業株式会社製、標準コーンロータ)を用い、温度25℃、回転数10rpmにて塗布液の粘度測定を行った。
(被覆率)
イオン交換膜を、被覆層側からマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−6000、倍率500倍)を用いて観察した。被覆部は無機物粒子とバインダーによる光の散乱により、明度が高く観察されるため、観察像の明度150以上の領域を被覆部、明度150未満を非被覆部とし、二値化処理を行った。観察像全体を100としたときの、被覆部の割合を被覆率として算出した。
(被覆層の分布密度)
蛍光X線分析装置(X−MET8000、株式会社堀場製作所製)により乾燥後の被覆層に存在するジルコニウムの定量を行い、事前に作成した検量線によりバインダーを含む被覆層の全重量に換算し、分布密度を算出した。検量線の作成には、重量測定により分布密度が既知のサンプルを使用し、検量線はバインダー比率が異なる塗布液毎に作成した。
[電解評価]
電解に用いる電解槽としては、陽極と陰極との間にイオン交換膜を配置した構造であり、自然循環型のゼロギャップ電解セルを4個直列に並べたものを用いた。
陰極としては、触媒として酸化セリウム、酸化ルテニウムが塗布された直径0.15mmのニッケルの細線を50メッシュの目開きで編んだウーブンメッシュを用いた。陰極とイオン交換膜を密着させるため、ニッケル製のエキスパンドメタルからなる集電体と陰極との間に、ニッケル細線で編んだマットを配置した。陽極としては、触媒としてルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物が塗布されたチタン製のエキスパンドメタルを用いた。
上記電解槽を用いて、陽極側に205g/Lの濃度になるように調整しつつ塩水を供給し、陰極側の苛性ソーダ濃度を32質量%に保ちつつ水を供給した。電解槽の温度を85℃に設定して、6kA/m2の電流密度で、電解槽の陰極側の液圧が陽極側の液圧よりも5.3kPa高い条件で電解を行った。電解槽の陽陰極間の対間電圧を、KEYENCE社製電圧計TR−V1000で毎日測定し、7日間の平均値を電解電圧として求めた。
〔不純物耐性試験〕
上記電解槽を用いて、陽極側に205g/Lの濃度になるように調整しつつ塩水を供給し、陰極側の苛性ソーダ濃度を32質量%に保ちつつ水を供給した。そして、不純物としてIを10ppm含有しBaを0.03ppm含有する塩水を用いて、電解槽の温度を85℃に設定して、6kA/m2の電流密度で、電解槽の陰極側の液圧が陽極側の液圧よりも5.3kPa高い条件で電解を9日間行った。その後、電解1日目の電流効率の値から、電解後9日目の電流効率の値の増減を測定し、1日単位での変化率として求めた。
本試験は通常の電解条件で許容される不純物濃度より大過剰量の濃度で不純物を添加した加速試験であり、本試験での電流効率の低下が0.75%/日以下であれば、通常の電解条件において不純物の影響による電流効率の低下は引き起こさないものと評価した。加えて、本試験での電流効率の低下が0.55%/日以下であれば、塩水精製系のトラブル等によって発生する一次的な不純物濃度の増加の影響による電流効率の低下を抑制できるものと評価した。
[実施例1]
強化糸として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製であり、100デニールのテープヤーンに900回/mの撚りを掛けて糸状にしたものを用いた(以下、PTFE糸という。)。経糸の犠牲糸として、35デニール、8フィラメントのポリエチレンテレフタレート(PET)を200回/mの撚りを掛けた糸を用いた(以下、PET糸という。)。また、緯糸の犠牲糸として、35デニール、8フィラメントのポリエチレンテレフタレート(PET)を200回/mの撚りを掛けた糸を用いた(以下、PET糸という。)。まず、PTFE糸が24本/インチ、犠牲糸が隣接するPTFE糸間に2本配置するように平織りして、厚さ100μmの織布を得た。
次に、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOCH3との共重合体でイオン交換容量が0.85mg当量/gである乾燥樹脂のポリマー(A1)、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体でイオン交換容量が1.03mg当量/gである乾燥樹脂のポリマー(B1)を準備した。これらのポリマー(A1)及び(B1)を使用し、共押出しTダイ法にて、ポリマー(A1)層の厚みが20μm、ポリマー(B1)層の厚みが94μmである、2層フィルムXを得た。なお、各ポリマーのイオン交換容量は、各ポリマーのイオン交換基前駆体を加水分解してイオン交換基に変換した際のイオン交換容量を示す。
CF2=CF2とCF2=CFO−CF2CF(CF3)O−(CF22−SO2Fとの共重合体でイオン交換容量が1.05mg当量/gのポリマーを得た。これを単層Tダイで押し出し、厚み20μmの単層フィルムYを得た。
続いて、内部に加熱源及び真空源を有し、その表面に微細孔を有するドラム上に、予めエンボス加工した離型紙、フィルムY、補強材(上記で得られた織布)及びフィルムXの順に積層し、ドラム温度240℃、減圧度0.067MPaの条件で2分間加熱減圧した後、離型紙を取り除くことで凹凸形状を有する複合膜を得た。得られた複合膜を、90℃のジメチルスルホキシド(DMSO)30質量%、水酸化カリウム(KOH)15質量%を含む水溶液に1時間浸漬することでケン化した後に、90℃の0.5NのNaOHに1時間浸漬して、イオン交換基についたイオンをNaに置換し、続いて水洗した。さらに60℃で乾燥し、膜本体を得た。
また、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体でイオン交換容量が1.05mg当量/gである乾燥樹脂のポリマー(B3)を加水分解した後、塩酸で酸型にした。この酸型のポリマー(B3)を、水及びエタノールの50/50(質量比)混合液に5質量%の割合で溶解させた溶液に、一次粒子径が1.15μmの酸化ジルコニウム粒子を、ポリマー(B3)と酸化ジルコニウム粒子の合算質量に対する、ポリマー(B3)質量比が0.4となるように加えた。その後、ボールミルで酸化ジルコニウム粒子の懸濁液中での平均粒径が0.94μmになるまで分散させて塗布液を得た。得られた塗布液に対し、ノニオン系界面活性剤として日油株式会社製のHS−210を添加し、塗布液の粘度を9.3mPa・sに調整した。なお、塗布液の粘度は上述の方法により測定し、酸化ジルコニウムとしては、原石粉砕したものを用いた。
この懸濁液をスプレー法で膜本体の両表面に塗布し、乾燥することにより、ポリマー(B3)と酸化ジルコニウム粒子を含む被覆層を有するイオン交換膜を得た。
前述した方法にて測定された分布密度は、1cm2当たり0.5mgであった。また、前述した方法にて測定された被覆率は83.3%であった。
イオン交換膜を2質量%増となるように湿潤させたのち、このイオン交換膜を用いて電解性能評価を行った結果、電圧は、3.07Vと低い値を示し、不純物耐性試験を行った結果、電流効率の低下は0.51%/日と小さく、高い不純物耐久性を示した。
[実施例2]
実施例1において、HS−210の使用量を減らし粘度を12.0mPa・sに変更したこと以外は、実施例1と同様にイオン交換膜を作製した。このイオン交換膜において、バインダー中の含フッ素系重合体の含有量は、100質量%であった。
分布密度を実施例1と同様に測定した結果、1cm2当たり0.5mgであった。また、被覆率を実施例1と同様に測定した結果、56.5%であった。
[電解評価]
このイオン交換膜を使用し、実施例1と同一の条件で電解性能評価を行った結果、電圧は、3.08Vと低い値を示し、不純物耐性測定を行った結果、電流効率の低下は0.74%/日と小さく、高い不純物耐久性を示した。
[実施例3]
実施例1において、HS−210の使用量を増やし粘度を8.5mPa・sに変更したこと以外は、実施例1と同様にイオン交換膜を作製した。このイオン交換膜において、バインダー中の含フッ素系重合体の含有量は、100質量%であった。
分布密度を実施例1と同様に測定した結果、1cm2当たり0.5mgであった。また、被覆率を実施例1と同様に測定した結果、92.9%であった。
[電解評価]
このイオン交換膜を使用し、実施例1と同一の条件で電解性能評価を行った結果、電圧は、3.06Vと低い値を示し、不純物耐性測定を行った結果、電流効率の低下は0.42%/日と小さく、高い不純物耐久性を示した。
[実施例4]
実施例1において、ポリマー(B3)と酸化ジルコニウム粒子の合算質量に対する、ポリマー(B3)質量比が0.7とした懸濁液を使用したこと以外は、実施例1と同様にイオン交換膜を作製した。このとき、HS−210の使用量は実施例1と同量であり、塗布液の粘度は11.0mPa・sであった。このイオン交換膜において、バインダー中の含フッ素系重合体の含有量は、100質量%であった。
分布密度を実施例1と同様に測定した結果、1cm2当たり0.5mgであった。また、被覆率を実施例1と同様に測定した結果、66.8%であった。
[電解評価]
このイオン交換膜を使用し、実施例1と同一の条件で電解性能評価を行った結果、電圧は、3.06Vと低い値を示し、不純物耐性測定を行った結果、電流効率の低下は0.27%/日と小さく、高い不純物耐久性を示した。
[実施例5]
実施例1において、ポリマー(B3)と酸化ジルコニウム粒子の合算質量に対する、ポリマー(B3)質量比が0.32とした懸濁液を使用したこと以外は、実施例1と同様にイオン交換膜を作製した。このとき、HS−210の使用量は実施例1と同量であり、塗布液の粘度は8.6mPa・sであった。このイオン交換膜において、バインダー中の含フッ素系重合体の含有量は、100質量%であった。
分布密度を実施例1と同様に測定した結果、1cm2当たり0.5mgであった。また、被覆率を実施例1と同様に測定した結果、90.1%であった。
[電解評価]
このイオン交換膜を使用し、実施例1と同一の条件で電解性能評価を行った結果、電圧は、3.08Vと低い値を示し、不純物耐性測定を行った結果、電流効率の低下は0.61%/日と小さく、高い不純物耐久性を示した。
[比較例1]
実施例1において、ポリマー(B3)と酸化ジルコニウム粒子の合算質量に対する、ポリマー(B3)質量比が0.2とした懸濁液を使用したこと以外は、実施例1と同様にイオン交換膜を作製した。このとき、HS−210の使用量は実施例1と同量であり、塗布液の粘度は8.6mPa・sであった。このイオン交換膜において、バインダー中の含フッ素系重合体の含有量は、100質量%であった。
分布密度を実施例1と同様に測定した結果、1cm2当たり0.5mgであった。また、被覆率を実施例1と同様に測定した結果、98.1%であった。
[電解評価]
このイオン交換膜を使用し、実施例1と同一の条件で電解性能評価を行った結果、電圧は、3.13Vと高い値を示し、不純物耐性測定を行った結果、電流効率の低下は1.01%/日と大きく、不純物の影響を強く受けた。
[比較例2]
実施例1において、ポリマー(B3)と酸化ジルコニウム粒子の合算質量に対する、ポリマー(B3)質量比が0.2とした懸濁液を使用し、HS−210による粘度調整を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にイオン交換膜を作製した。このとき、塗布液の粘度は9.0mPa・sであり、このイオン交換膜において、バインダー中の含フッ素系重合体の含有量は、100質量%であった。
分布密度を実施例1と同様に測定した結果、1cm2当たり0.5mgであった。また、被覆率を実施例1と同様に測定した結果、97.7%であった。
[電解評価]
このイオン交換膜を使用し、実施例1と同一の条件で電解性能評価を行った結果、電圧は、3.14Vと高い値を示し、不純物耐性測定を行った結果、電流効率の低下は1.02%/日と大きく、不純物の影響を強く受けた。
[比較例3]
実施例1において、HS−210による粘度調整を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にイオン交換膜を作製した。このとき、塗布液の粘度は14.0mPa・sであり、このイオン交換膜において、バインダー中の含フッ素系重合体の含有量は、100質量%であった。
分布密度を実施例1と同様に測定した結果、1cm2当たり0.5mgであった。また、被覆率を実施例1と同様に測定した結果、40.0%であった。
[電解評価]
このイオン交換膜を使用し、実施例1と同一の条件で電解性能評価を行った結果、電圧は、3.12Vと高い値を示し、不純物耐性測定を行った結果、電流効率の低下は0.91%/日と大きく、不純物の影響を強く受けた。
[比較例4]
実施例1において、ポリマー(B3)と酸化ジルコニウム粒子の合算質量に対する、ポリマー(B3)質量比が0.6とした懸濁液を使用し、HS−210による粘度調整を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にイオン交換膜を作製した。このとき、塗布液の粘度は22.0mPa・sであり、このイオン交換膜において、バインダー中の含フッ素系重合体の含有量は、100質量%であった。
分布密度を実施例1と同様に測定した結果、1cm2当たり0.5mgであった。また、被覆率を実施例1と同様に測定した結果、30.0%であった。
[電解評価]
このイオン交換膜を使用し、実施例1と同一の条件で電解性能評価を行った結果、電圧は、3.11Vと高い値を示し、不純物耐性測定を行った結果、電流効率の低下は0.82%/日と大きく、不純物の影響を強く受けた。
上記結果をまとめて下記表1に示す。
1…イオン交換膜、2…カルボン酸層、3…スルホン酸層、4…補強材、10…膜本体、11a,11b…被覆層、100…電解槽、200…陽極、300…陰極

Claims (7)

  1. イオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む膜本体と、
    前記膜本体の少なくとも一方の面上に配された被覆層と、
    を有するイオン交換膜であって、
    前記被覆層が、無機物粒子とバインダーとを含み、
    前記被覆層における前記無機物粒子及びバインダーの総質量に対し、前記バインダーの質量比が0.3以上0.9以下であり、
    前記被覆層による前記膜本体の被覆率が50%以上である、イオン交換膜。
  2. 前記無機物粒子が、周期律表IV族元素の酸化物、周期律表第IV族元素の窒化物及び周期律表第IV族元素の炭化物からなる群より選択される少なくとも一種の無機物を含む粒子である、請求項1に記載のイオン交換膜。
  3. 前記無機物粒子が酸化ジルコニウムの粒子である、請求項1又は2に記載のイオン交換膜。
  4. 前記バインダーが、含フッ素系重合体を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のイオン交換膜。
  5. 前記バインダーが、カルボキシル基又はスルホ基由来のイオン交換基を有する含フッ素系重合体を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のイオン交換膜。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のイオン交換膜の製造方法であって、
    無機物粒子、バインダー及び溶剤を含む塗布液をスプレー方式で噴霧し、乾燥することで膜本体の表面に被覆層を形成する工程を含み、
    前記塗布液の粘度が13mPa・s以下である、イオン交換膜の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のイオン交換膜を備える、電解槽。
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